ところが、上記のチップマウント方法およびチップマウント装置によれば、次のような、解決すべき問題点がある。
(1)コレット34によって、半導体チップ31を1個ずつピックアップして基板33に搬送し、コレット34で半導体チップ31を加圧すると共に、基板33の下方に配置した加熱ヒータ35によって樹脂32を加熱溶融して圧着するので、コレット34により半導体チップ31を圧着する接合プロセスに1秒以上の時間を要し、マシンインデックスは、この接合プロセス+コレット34による半導体チップ31のピックアップ〜マウントサイクルで決定されるため、高速化ができず生産性が低かった。
(2)半導体チップ31の圧着時には、半導体チップ31を10〜20Nm/10×10mm程度の高荷重で加圧することが必要で、従来の樹脂ボンド用ダイボンダ(〜10Nm/10×10mm)では対応できなかった。
(3)半導体チップ31を上記の高荷重で加圧するためには、コレット34の半導体チップの吸着部(押圧部)34aは半導体チップ31の大きさに応じた大きさが要求されると共に、この吸着部(押圧部)34aに高荷重を付加するための荷重付与手段(図示省略)が必要で、コレット34を含む可動部が大重量化して、その慣性が大きいために、前述のピックアップ〜マウントサイクルの高速化ができなかった。
(4)基板33の下方に加熱ヒータ35を配置して、基板33を100〜200℃程度に加熱して樹脂32を加熱溶融するようにしているので、積層する半導体チップ31の積層数が増大すると、n層目の半導体チップ31nは下層の半導体チップ311〜31n-1および樹脂321〜32n-1を介して樹脂32nを加熱溶融しなければならないため、温度勾配により、上層部での温度低下が生じ、あるいは温度低下に対応すべく加熱溶融時間を増大しなければならないという問題があった。このため、メモリの大容量化のために半導体チップ31の積層数が増大する最近の趨勢から、ますます高速化が困難になっていた。
(5)上記の理由で、上層の半導体チップ31になるほど、加熱不足が生じ易く、半導体チップの接合信頼性に難が生じていた。
(6)前述のように、半導体チップ31の積層数が多くなると、上層の半導体チップ31ほど温度低下により樹脂32の加熱溶融が困難になるので、加熱ヒータ35の加熱温度を高くしなければならず、その消費電力が大きくなっていた。
(7)半導体チップ31をほぼ同じ大きさのコレット34で加圧して一気に圧着しているので、エッジ効果により半導体チップ31の中央部よりも周縁部に高面圧がかかる。半導体チップ31がその周縁部から圧着されると、半導体チップ31に取り込まれた空気は、逃げ場を失いボイド(気泡)が発生する。ボイドは、半導体装置30の発熱により膨張し、半導体装置30が冷却されることで収縮する。このようにボイドが膨縮を繰り返すことで、半導体チップ31の剥離現象が発生する。特に、薄くて大きな半導体チップ31を低流動性接着剤32(例えばエポキシ樹脂系接着剤)を使用して積層する場合に、半導体チップ31の剥離現象が多く見受けられる。この理由としては、薄くて大きな半導体チップ31は、コレット34による吸着で窪み、この状態で基板33上に載置されるために空気を取り込み易いことと、低流動性接着剤32は、半導体チップ31に取り込まれた空気を移動させ難いことが挙げられる。このため、従来は、高流動性接着剤32(例えばポリイミド樹脂系接着剤)を使用してボイドを抑制してが、低流動性接着剤よりも単価が高いので、半導体装置30の製造コストが嵩む。このため、高流動性接着剤の数〜十数分の一の単価で入手できる廉価な低流動性接着剤であっても、ボイドが発生しないチップマウント方法および装置が要望されている。
そこで、本発明は、半導体チップをコレットによって基板に搬送して圧着するチップマウント方法およびチップマウント装置において、チップマウント作業の高速化および高信頼性化が可能なチップマウント方法およびチップマウント装置を提供することを目的とするものである。
本発明のチップマウント方法は、基板の複数箇所にコレットによって裏面に接着剤を有する半導体チップを搬送し積層してマウントするチップマウント方法において、前記コレットによって、半導体チップの搬送と仮圧着を行い、前記コレットとは別に設けた本圧着治具によって、仮圧着された半導体チップの本圧着を行うことを特徴とするものである(請求項1)。
ここで、上記の「接着剤」とは、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの樹脂や、銀ペーストなどを含む。また、上記の「半導体チップの仮圧着」とは、接着剤を完全に溶融させて圧着することなく、コレットによって搬送された半導体チップが、コレットによる押圧力と接着剤の接着力とによって後述する本圧着までの間に移動しない程度の圧着状態にすることを意味する。したがって、樹脂の場合は60℃程度で軟化して接着性が現出する程度の加熱により、また、銀ペーストの場合は常温でも接着性が得られるので、仮圧着が可能である。
上記のチップマウント方法によれば、コレットとは別に設けた本圧着治具によって、仮圧着された半導体チップの本圧着を行う間に、コレットによる半導体チップの搬送と仮圧着とを行える。コレットは、本圧着に要する高荷重を必要としないから、コレットの軽量化と共に慣性を小さくでき、コレットの高速動作が可能になる。また、接着剤が完全に溶融するまでコレットで半導体チップを加圧しなくてもよいから、コレットによる半導体チップの仮圧着に長時間を要しない。したがって、コレットによる半導体チップの搬送と仮圧着を短時間で行える。また、本圧着治具は、仮圧着された半導体チップに高荷重を掛けて本圧着するために重量は大きいが、コレットに比較して移動距離が小さいので、重量大で慣性が大きくても、接合プロセス時間が長くなることがない。したがって、チップマウント作業を高速化することができる。なお、コレットによる半導体チップの仮圧着は、半導体チップの全体に限らず一部であっても構わない。
また、本発明のチップマウント方法は、前記本圧着治具によって、仮圧着された半導体チップの加圧および加熱を行って本圧着することを特徴とするものである(請求項2)。
上記のチップマウント方法によれば、本圧着治具によって、仮圧着された半導体チップの加圧および加熱を行って本圧着するので、基板の下方に配置した加熱ヒータのみによって基板を介して接着剤を加熱溶融する従来方法に比較して、半導体チップの上下両方から加熱するため、半導体チップの積層数が増大しても上層の接着剤を短時間で加熱溶融させて、半導体チップを短時間で本圧着することができるので、チップマウント作業を高速化することができる。
また、本発明のチップマウント方法は、前記本圧着治具によって、基板の複数箇所に仮圧着された半導体チップを同時に加圧および加熱を行って本圧着することを特徴とするものである(請求項3)。
上記のチップマウント方法によれば、本圧着治具によって、基板の複数箇所に仮圧着された半導体チップを同時に加圧および加熱を行って本圧着するので、半導体チップを1個ずつ加圧および加熱を行って本圧着する場合に比較して、本圧着作業の回数を低減することができ、チップマウント作業を高速化することができる。しかも、加圧面積の拡大によって、本圧着治具の傾斜が小さくなり、積層された半導体チップ上面の傾きのばらつきが減少するので、後続工程で半導体チップ上面にワイヤボンディングを行う場合、ワイヤボンディング作業が容易、かつ、確実に行えるため、高品質のスタック型半導体装置などのチップマウント構体を製造することができる。
また、本発明のチップマウント方法は、前記本圧着治具によって、半導体チップの本圧着を半導体チップの一部から広げて行うことを特徴とするするものである(請求項4)。
上記のチップマウント方法によれば、本圧着治具によって、半導体チップの本圧着を一部から全体に広げつつ行うことで、半導体チップを基板上に搬送した際に半導体チップに取り込まれた空気が外部へ押し出され、ボイドが発生しない。すなわち、半導体チップの仮圧着と本圧着とを別々に行うと、半導体チップの高速搬送と、半導体チップの圧着精度に重点をおいた本圧着とを行える。これにより半導体チップの剥離現象が起こらない半導体装置を製造でき、チップマウント作業の高信頼化が達成される。ここで、「半導体チップの一部」は、半導体チップの中心部、前後方向又は左右方向の中央部、一辺部、一角部などが挙げられる。
また、本発明のチップマウント方法は、前記本圧着治具を半導体チップに対して順次ずらして本圧着を行うことを特徴とするものである(請求項5)。
上記のチップマウント方法は、前記本圧着治具を半導体チップに対して順次ずらすことで、半導体チップの本圧着を一部から全体に広げて行える。本圧着治具をずらす範囲は、半導体チップに取り込まれた空気が外側へ移動できる範囲内で適宜設定する。半導体チップの一部の本圧着を行ったのち、当該本圧着範囲を含むより広範囲の本圧着、或いは当該本圧着範囲に隣接する範囲の本圧着を行い、半導体チップの一部から本圧着範囲を段階的に広げていく。最初の本圧着では、本圧着範囲が狭く、低流動性接着剤であってもその流動により、半導体チップに取り込まれた空気が当該本圧着範囲外へ逃げる。また、次の本圧着では、新たに本圧着される範囲が狭いので、半導体チップに取り込まれた空気は、当該新たな本圧着範囲よりも外側へ逃げる。このように、本圧着治具を半導体チップに対して順次ずらして本圧着を行うと、半導体チップに取り込まれた空気は、段階的に外側へ押し出されて外部へ排出されるので、ボイドが発生しない。これにより半導体チップの剥離現象が起こらない半導体装置を製造できる。
また、本発明のチップマウント方法は、前記半導体チップの一部を中央部とし、前記半導体チップの中央部から外側に向かって半導体チップの圧着を行うことを特徴とするものである(請求項6)。
ここで、「半導体チップの中央部」は、半導体チップの中心部若しくは前後方向又は左右方向の中央部である。これらの場合、半導体チップの中心部から放射状に広げて本圧着を行うか、或いは半導体チップの前後方向又は左右方向の中央部から前後の辺部又は左右の辺部に向けて本圧着を行う。このように半導体チップの中央部から外側に向かって本圧着を行うことで、半導体チップに取り込まれた空気は、ほぼ最短ルートで外部へ押し出される。したがって、半導体チップに取り込まれた空気を、半導体チップと基板の間、若しくは半導体チップ積層方向相互間から排出し易くなる。
本発明のチップマウント装置は、基板の複数箇所にコレットによって裏面に接着剤を有する半導体チップを搬送し積層してマウントするチップマウント装置において、半導体チップの搬送と仮圧着を行うコレットと、前記コレットとは別に、基板上に仮圧着された半導体チップを本圧着する本圧着治具とを設けたことを特徴とするものである(請求項7)。
上記のチップマウント装置によれば、コレットによって、半導体チップの搬送および仮圧着を行い、本圧着治具で本圧着を行うので、コレットは本圧着に要する高荷重を必要とせず軽量化でき慣性を小さくできると共に、接着剤を完全に溶融させる本圧着を行わなくてもよいことにより、半導体チップの加圧時間を大幅に短縮することができるため、半導体チップの積層数が増加しても、半導体チップのピックアップ〜マウントサイクル時間がそれほど増大しない。また、本圧着治具は、仮圧着された半導体チップを所定の高荷重によって本圧着するために重量が大きいが、コレットに比較して移動距離が小さいので、重量大で慣性が大きくても、接合プロセス時間が長くなることがない。したがって、チップマウント作業を高速化することができ、スタック型半導体装置などのスタック型チップマウント構体の生産性が向上する。
また、本発明のチップマウント装置は、前記基板の下方に加熱ヒータが配置され、前記本圧着治具が、加熱ヒータを内蔵していることを特徴とするものである(請求項8)。
上記のチップマウント装置によれば、基板の下方に加熱ヒータが配置され、前記本圧着治具が、加熱ヒータを内蔵しているので、基板の下方に配置された加熱ヒータによって、半導体チップの裏面の接着剤を下方から加熱して半導体チップを仮圧着することができると共に、仮圧着された半導体チップを下方の加熱ヒータと、加熱ヒータを内蔵した本圧着治具とによって、上下両方から加熱して本圧着できるので、基板の下方に配置した加熱ヒータのみによって接着剤を加熱溶融して本圧着する従来装置に比較して、上層の半導体チップでも温度低下が少なく短時間で加熱して本圧着することができるので、チップマウント作業を高速化することができる。また、基板の下方に配置する加熱ヒータの加熱温度を低減して、節電することができる。
また、本発明のチップマウント装置は、前記本圧着治具が、基板上の複数個所に仮圧着された半導体チップに対して、同時に本圧着を行うことが可能な大きさを有することを特徴とするものである(請求項9)。
上記のチップマウント装置によれば、基板の複数箇所に仮圧着された半導体チップを、本圧着治具によって同時に加圧および加熱を行って本圧着することができるので、本圧着治具によって半導体チップを1個ずつ加圧および加熱を行って本圧着する場合に比較して、本圧着治具による本圧着作業回数が低減され、本圧着作業が高速化できる。しかも、本圧着治具の加圧面積が大きいことによって、本圧着治具の傾斜が小さくなり、積層された半導体チップ上面の傾きのばらつきが減少するので、後続工程で半導体チップ上面にワイヤボンディングする場合、ワイヤボンディング作業が容易、かつ、確実に行えるため、高品質のスタック型半導体装置などのチップマウント構体を製造することができる。
また、本発明のチップマウント装置は、加圧面の大きさが相違する複数個の本圧着治具を備え、加圧面の小さな本圧着治具から同心状に順次本圧着を行うことを特徴とするものである(請求項10)。
上記のチップマウント装置によれば、加圧面の小さな本圧着治具によって半導体チップの一部の本圧着を行ったのち、当該本圧着治具よりも加圧面の大きな本圧着治具によって、既に本圧着された部位も含めてより広範な部位の本圧着を行い、半導体チップの一部から本圧着範囲を段階的に広げていく。加圧面の小さな本圧着治具による本圧着では、本圧着範囲が狭く、低流動性接着剤であってもその流動により半導体チップに取り込まれた空気が当該本圧着範囲外へ逃げる。また、加圧面の小さな本圧着治具よりも加圧面が大きな本圧着治具による本圧着では、新たに本圧着される範囲が狭いので、半導体チップに取り込まれた空気は、当該新たな本圧着範囲よりも外側へ逃げる。このように、加圧面の小さな本圧着治具から同心状に順次本圧着を行っていくと、半導体チップに取り込まれた空気は、段階的に外側へ押し出され、最終的に外部へ排出されるので、ボイドが発生しない。これにより半導体チップの剥離現象が起こらない半導体装置を製造できる。
また、本発明のチップマウント装置は、前記本圧着治具の下部に弾性材からなる加圧部を設け、かつ、前記加圧部の加圧面の一部を突出形成したことを特徴とするものである(請求項11)。
上記のチップマウント装置によれば、基板に仮圧着された半導体チップに対する本圧着治具の加圧力を高めていくと、本圧着治具の加圧面が弾性変形して平らになっていく。本圧着治具の加圧面が平らになっていくのに追従して半導体チップの本圧着範囲が徐々に広がる。これと同時に半導体チップと基板との間若しくは半導体チップの積層方向相互間から空気が押し出されるので、ボイドが発生しない。これにより半導体チップの剥離現象が起こらない半導体装置を製造できる。
また、本発明のチップマウント装置は、基板を載置する台座部を備え、前記台座部の基板上のチップ積層位置に対応する部位に弾性材からなる加圧部を設けると共に前記加圧部の加圧面の一部を突出形成したことを特徴とするものである(請求項12)。
上記のチップマウント装置によれば、基板に仮圧着された半導体チップに対する本圧着治具の加圧力を高めていくと、台座部に設けた加圧部の加圧面が弾性変形して平らになっていく。台座部の加圧面が平らになっていくのに追従してコレットの本圧着範囲が徐々に広がる。これと同時に半導体チップと基板との間若しくは半導体チップの積層方向相互間から空気が押し出されるので、ボイドが発生しない。これにより半導体チップの剥離現象が起こらない半導体装置を製造できる。
ここで、本圧着治具又は台座部に設けた加圧部は、その加圧面の一部が他の部位よりも突出したものであり、例えば加圧部の加圧面全体を階段状や曲面状に突出形成したものも含む。加圧面の一部としては、加圧面の中心部、前後方向又は左右方向の中央部、一辺部、一角部などが挙げられる。
また、本発明のチップマウント装置は、前記加圧部の加圧面の一部を加圧面の中央部とし、前記加圧部の加圧面を中央部から外側に向かって傾斜させたことを特徴とするものであるものである(請求項13)。
上記のチップマウント装置によれば、基板に仮圧着された半導体チップに対する本圧着治具の加圧力を高めていくと、半導体チップの中央部から外側へ向かって徐々に本圧着範囲が広がる。これと同時に半導体チップに取り込まれた空気は、半導体チップの中央部から外側へ向かって徐々に押し出されるので、ボイドが発生しない。
また、本発明のチップマウント装置は、前記加圧部の加圧面を球面状、円錐状又は角錐状に形成したものであるものである(請求項14)。
上記のチップマウント装置によれば、基板に仮圧着された半導体チップに対する本圧着治具の加圧力を高めていくと、半導体チップの中心部から外側へ向かって徐々に本圧着範囲が広がる。これと同時に半導体チップに取り込まれた空気は、半導体チップの中心部から外側へ向かって徐々に押し出されるので、ボイドが発生しない。
本発明のチップマウント方法は、基板の複数箇所にコレットによって裏面に接着剤を有する半導体チップを搬送し積層してマウントするチップマウント方法において、前記コレットによって、半導体チップの搬送と仮圧着を行い、前記コレットとは別に設けた本圧着治具によって、仮圧着された半導体チップの本圧着を行うものであるから、コレットによって半導体チップの搬送および加圧を行って本圧着する従来のチップマウント方法に比較して、コレットによる本圧着のための加圧時間が省略され、コレットによる半導体チップのピックアップ〜仮圧着〜半導体チップ吸着作業と、本圧着治具による本圧着作業とを並行して行うので、チップマウント作業を高速化することができると共に、上層の半導体チップの接合信頼性が向上する。
本発明のチップマウント装置は、基板の複数箇所にコレットによって裏面に接着剤を有する半導体チップを搬送し積層してマウントするチップマウント装置において、半導体チップの搬送と仮圧着を行うコレットと、前記コレットとは別に、基板上に仮圧着された半導体チップを本圧着する本圧着治具とを設けたので、コレットによって半導体チップの搬送および加圧を行って本圧着する従来のチップマウント装置に比較して、コレットによる本圧着のための加圧時間が省略され、コレットによる半導体チップのピックアップ〜仮圧着〜半導体チップ吸着作業と、本圧着治具による本圧着作業とを並行して行うことができるので、チップマウント作業を高速化することができると共に、上層の半導体チップの接合信頼性が向上する。
以下、本発明のチップマウント方法およびチップマウント装置の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、図1は本発明のチップマウント装置10の概略斜視図を示す。
図1は、本発明の第1〜第3実施形態に使用するチップマウント装置10を例示している。このチップマウント装置10は、裏面に接着剤、例えば、流動性に優れたポリイミド樹脂系の熱圧着フィルム121A,122A,…(以下、総称する場合は、熱圧着フィルム12という。)を有する半導体チップ111A,112A,…(以下、総称する場合は、半導体チップ11という。)をピックアップし、台座部15に内蔵した加熱ヒータ15a(図2(A)〜(C)参照)によって加熱されているリードフレームなどの基板13上の所定位置に搬送し、短時間だけ加圧して、仮圧着するコレット14を有すると共に、このコレット14とは別に、基板13上にコレット14によって仮圧着された半導体チップ11を加圧および加熱して本圧着する本圧着治具16を具備している。この本圧着治具16は、加圧面が平らで、かつ、基板13上の複数箇所、例えば、図示例では2個所に仮圧着された半導体チップ111A,111Bを同時に本圧着できる大きさに形成され、図2(C)に示すように、加熱ヒータ17を内蔵している。
次に、図1のチップマウント装置10による本発明の第1実施形態のチップマウント方法について、図1〜図4(A)〜(C)を参照して説明する。まず、図19(A)〜(C)に示すようにして製造された、裏面に熱圧着フィルム12を有する多数の半導体チップ11が整列状態で接着されたダイシングシート340を、X−Yテーブル(図示省略)上に配置する。
X−YテーブルをX方向および/またはY方向に移動させて、裏面に熱圧着フィルム121Aを有する半導体チップ111Aをピックアップポジションに位置させる。このピックアップポジションで、図1に示すように、コレット14が下降して(1)、吸着部14aにより裏面に熱圧着フィルム121Aを有する半導体チップ111Aをピックアップし(2)、水平移動(3)およびマウントポジションで下降動作して(4)、下方に配置した加熱ヒータ15aによって所定温度、例えば、100〜200℃に加熱されている基板13上の第1のマウント位置Aに搬送して、所定の本圧着荷重よりも小さい加重、例えば、1〜2Nm/10×10mm程度で、従来よりも短時間、例えば、0.05〜0.1秒だけ加圧することにより、熱圧着フィルム121Aを軟化させて、図2(A)に示すように、半導体チップ111Aを基板13に仮圧着する。
仮圧着を終わったコレット14は、マウントポジションで上昇し(5)、水平移動して(6)、再びピックアップポジションに戻る。なお、コレット14は、マウントポジションで下降動作(4)、仮圧着作業および上昇動作(5)を行うが、本圧着治具16は、コレット14の横方向に位置しており、コレット14による半導体チップ11の仮圧着作業を邪魔しない。また、上記コレット14のピックアップポジションでの上昇(2)〜下降動作(1)の間に、X−Yテーブルを1ピッチ分水平移動させて、裏面に熱圧着フィルム121Bを有する半導体チップ111Bをピックアップポジションに位置させる。したがって、コレット14はピックアップポジションで下降動作して(1)、この半導体チップ111Bをピックアップする。
半導体チップ111Bをピックアップした(2)コレット14は、再び水平移動(3)および次のマウントポジションである基板13の第2マウント位置Bに下降動作して(4)、下方に配置した加熱ヒータ15aによって所定温度に加熱されている基板13上に、所定の本圧着荷重よりも小さい加重で短時間加圧することにより、熱圧着フィルム121Bを軟化させて、図2(B)に示すように、半導体チップ111Bを基板13に仮圧着する。このとき、コレット14の移動位置を第2マウント位置Bに変更させる代わりに、基板13を移動させて第2マウント位置Bをマウントポジションに変更させてもよい。
基板33の複数のマウント位置、図示例では、基板13の第1マウント位置Aおよび第2マウント位置Bに半導体チップ111A,111Bの仮圧着が終了すると、図2(C)に示すように、加熱ヒータ17を内蔵した本圧着治具16が水平移動(または基板13が水平移動)および下降動作して、基板13の第1マウント位置Aに仮圧着された半導体チップ111Aと、第2マウント位置Bに仮圧着された半導体チップ111Bとを、同時に、所定の荷重,例えば、10〜20Nm/10×10mmおよび所定時間,例えば、0.3〜0.5秒程度で加圧および加熱して、各半導体チップ111A,111Bの熱圧着フィルム121A,121Bを溶融させて、基板13の第1マウント位置Aおよび第2マウント位置Bに仮圧着された半導体チップ111Aおよび111Bを同時に本圧着する。
このように、複数のマウント位置A,Bの半導体チップ111A,111Bを、加熱ヒータ17を内蔵した本圧着治具16によって同時に加圧加熱して本圧着すると、半導体チップ111A,111Bを1個ずつ個別に本圧着する場合に比較して、半導体チップ111A,111Bの本圧着時間が短縮されると共に、半導体チップ111A,111Bの傾斜のばらつきが減少する。
なお、基板33の第1マウント位置Aおよび第2マウント位置Bの半導体チップ111A,111Bの本圧着が終了すると、必要に応じて、半導体チップ111A,111Bにワイヤボンディングを行う。
同様に、コレット14により基板13の第3マウント位置C、第4マウント位置Dに順次半導体チップ111C,111D(符号省略)を仮圧着した後、本圧着治具16によって、これらの半導体チップ111C,111Dを本圧着し、必要に応じて、半導体チップ111C,111Dにワイヤボンディングを行う。
以下、同様にして、基板13の第5マウント位置E、第6マウント位置Fに、コレット14によって半導体チップ111E,111F(符号省略)を仮圧着し、本圧着治具16によって、これらの半導体チップ111E,111Fを本圧着し、必要に応じて、半導体チップ111E,111Fにワイヤボンディングを行う。
なお、上記の実施形態では、基板13上の2個所に半導体チップ111を本圧着するごとにワイヤボンディングを行う場合について説明したが、第1層目の全半導体チップ111A〜111Fを本圧着した後に、一括してワイヤボンディングを行うようにしてもよい。
上記のようにして、基板13の複数のマウント位置A,B,…に第1層目の半導体チップ111の本圧着が終了すると、あるいは、さらに必要に応じて、ワイヤボンディングが終了すると、コレット14によって、図3(A)に示すように、基板13の第1マウント位置Aにマウントされている半導体チップ111Aの上に、前述と同様の動作によって、第2層目の半導体チップ112Aが仮圧着され、続いて、図3(B)に示すように、基板13の第2のマウント位置Bにマウントされている半導体チップ111Bの上に、前述と同様の動作によって、第2層目の半導体チップ112Bが仮圧着される。
上記のようにして、基板13の第1マウント位置Aおよび第2マウント位置Bに第2層目の半導体チップ112A,112Bが積層して仮圧着されると、図3(C)に示すように、加熱ヒータ17を内蔵した本圧着治具16が下降して、基板13の第1マウント位置Aおよび第2マウント位置Bに仮圧着された半導体チップ112A,112Bを、同時に所定の荷重および所定時間だけ加圧加熱して、各半導体チップ112A,112Bの熱圧着フィルム122A,122Bを溶融させて、半導体チップ112A,112Bを本圧着する。
この本圧着治具16による半導体チップ112A,112Bの本圧着作業中に、コレット14は並行して、基板13の第3マウント位置C,第4マウント位置Dに、半導体チップ112C,112D(符号省略)を順次仮圧着していく。基板13の第3マウント位置C,第4マウント位置Dに、第2層目の半導体チップ112C,112Dを仮圧着し終わると、本圧着治具16がこれらの半導体チップ112C,112Dを所定の荷重で、所定時間だけ加圧加熱して、本圧着する。
以下、同様の動作によって、基板13上の第5マウント位置E,第6マウント位置Fにコレット14によって第2層目の半導体チップ112E,112F(符号省略)を仮圧着し、本圧着治具16によって所定荷重および所定時間だけ加圧および加熱して、仮圧着した半導体チップ112E,112Fを本圧着する。
さらに、同様の動作によって、図4(A)に示すように、基板13上の第1マウント位置Aにマウントされた半導体チップ112Aの上に、コレット14によって第3層目の半導体チップ113Aを仮圧着し、図4(B)に示すように、第2マウント位置Bにマウントされた半導体チップ112Bの上に、第3層目の半導体チップ113Bを仮圧着した後、図4(C)に示すように、半導体チップ113A,113Bを本圧着治具16によって同時に所定荷重で所定時間だけ加圧および加熱して、本圧着する。
以下、同様の動作によって、基板13の複数個所に、コレット14によって所定数の半導体チップ11を積層して仮圧着し、続いて本圧着治具16で加圧加熱して本圧着する。
したがって、上記のチップマウント方法によれば、コレット14により半導体チップ11を加圧して仮圧着する所要時間は、従来のコレット34によって1個ずつ半導体チップ31を加圧して加熱ヒータ35により熱圧着フィルム12を溶融させて本圧着する接合プロセス時間に比較して格段に短くなり、しかも、コレット14は高荷重で加圧する必要が無いので軽量化することができ、その慣性を小さくして、高速動作させることができる。
また、本圧着治具16は、本圧着に必要な高荷重を必要とするので、慣性が大きくても、コレット14の移動距離に比較して本圧着治具16の移動距離が小さく、しかも、上述のように、コレット14の複数サイクル、例えば、図示例の場合は、2サイクルの動作につき1回だけ動作すればよく、しかも、各半導体チップ11の熱圧着フィルム12は、基板13の下方に配置された加熱ヒータ15aと、本圧着治具16に内蔵された加熱ヒータ17とによって、上下両方から加熱されるため、本圧着に要する接合プロセス時間は、従来の基板33の下方に配置した加熱ヒータ35のみにより熱圧着フィルム12を溶融させて本圧着する接合プロセスに要する総所要時間に比較して格段に短くなる。さらに、この本圧着治具16による本圧着作業は、上述のように、コレット14による仮圧着作業と並行して行われるので、本圧着治具16による本圧着作業時間は無視することができる。
その結果、コレット14によるn層目の半導体チップ11nのピックアップ〜仮圧着〜n+1層目の半導体チップ11n+1の吸着サイクルと、これと並行して行われる本圧着治具16による本圧着の接合プロセス時間とによる、総マウント所要時間を、格段に短縮することができ、ダイボンダの著しい高速化が実現できる。
また、半導体チップ11の積層数が増大しても、上層の半導体チップ11の熱圧着フィルム12は、本圧着治具16に内蔵されている加熱ヒータ17により上方から加熱するので、上層の半導体チップ11における熱圧着フィルム12の加熱不足が生じなくなり、接合信頼性が向上する。
さらに、基板13を下方から加熱する加熱ヒータ15aは、上層の半導体チップ11の熱圧着フィルム12を加熱溶融させる必要がないので、その加熱温度を低減することができ、節電することができる。
さらにまた、基板13上の複数箇所に仮圧着された半導体チップ11を同時に本圧着治具16によって加圧および加熱して本圧着するので、本圧着された半導体チップ11上面の傾きのばらつきが低減される結果、半導体チップ11上にワイヤボンディングする場合は、ワイヤボンディング作業が容易、かつ、確実に行えるようになり、ワイヤボンディングの信頼性が向上する。
なお、上記の実施形態では、基板13の第1マウント位置Aおよび第2マウント位置Bに半導体チップ11A,11Bを仮圧着してから、これらの半導体チップ11A,11Bを、同時に加圧および加熱して本圧着する場合について説明したが、本発明のチップマウント方法は、このような方法に限定されるものではなく、各種の変更が可能である。
図5(A)〜(C)は、本発明の第2実施形態に係るチップマウント方法の説明図で、図5(A)に示すように、基板13の第1マウント位置Aにコレット14によって半導体チップ111Aを仮圧着した後、図5(B)に示すように、加熱ヒータ17aを内蔵する本圧着治具16aによって加圧および加熱して本圧着し、さらに、図5(C)に示すように、基板13の第2マウント位置Bにコレット14によって半導体チップ111Bを仮圧着し、その後、図示は省略するが、この半導体チップ111Bを本圧着治具16aによって加圧および加熱して本圧着する動作を、基板13の複数のマウント位置C〜Fで繰り返して、基板13の複数個所に所定数の半導体チップ11を積層してマウントする。
このようなチップマウント方法によれば、図2に示すように、同時に、基板13上の複数箇所の半導体チップ11を本圧着治具16により本圧着する場合に比較すると、本圧着時間は増大するが、従来方法に比較すればマウント時間を大幅に短縮できる、また、本圧着治具16aを小型化できると共に、加熱面積の減少により加熱ヒータ17aの加熱電力を低減することができる。
図6(A)〜(C)は、本発明方法による第3実施形態のチップマウント方法の説明図で、中間層の半導体チップにワイヤボンディングを行わないで、かつ、半導体チップ11の積層数が少ない場合に好適な方法である。図6(A)に示すように、コレット14によって基板13の第1マウント位置Aに所定数、例えば、3個の半導体チップ111A〜113Aを順次仮圧着した後、図6(B)に示すように、加熱ヒータ17bを内蔵する本圧着治具16bで加圧および加熱して本圧着し、次に、図6(C)に示すように、コレット14によって基板13の第2マウント位置Bに所定数、例えば、3個の半導体チップ111B〜113Bを順次仮圧着した後、図示は省略するが、この半導体チップ111B〜113Bを本圧着治具16bによって加圧および加熱して本圧着する。
このようなチップマウント方法によれば、図2〜図4に示す、同時に基板13上の複数箇所の半導体チップ11を本圧着治具16によって本圧着する場合や、図5に示す、半導体チップ11を1個ずつ本圧着治具16によって本圧着する場合に比較して、本圧着回数をさらに低減することができる。
なお、上記実施形態では、基板13の下方に配置された加熱ヒータ15aが、本圧着される半導体チップ11のみを加熱し得る大きさの場合を示しているが、通常のダイボンダにおけるヒータレールのように、1個ないし数個のリードフレームなどの基板13を加熱し得る大きさにしてもよい。
また、上記実施形態は、いずれも半導体チップ11のマウント方法およびチップマウント装置について説明したが、半導体チップ以外の、半導体チップコンデンサや、半導体チップ抵抗器などの半導体チップ型電子部品を積層したスタック型電子部品などにおけるチップマウントにも同様に適用することができる。
図7は、本発明の第4実施形態に使用するチップマウント装置10を例示している。このチップマウント装置10は、半導体チップ11の中心部を吸着・仮圧着するようにコレット14を構成した点と、加圧面積が異なる複数個(例えば3個)の本圧着治具16c〜16eを備え、加圧面積の小さい本圧着治具16c〜16eから順に配列してある点で、上記第1〜第3実施形態のチップマウント装置10と相違している。なお、図7において、台座部15は、基板13を順次搬送可能に構成してある。他の点については、上記第1〜第3実施形態のチップマウント装置10と同じであるから、同一部位には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
半導体チップ11は、概ね2〜25mm角程度の大きさのものがあり、5mm角以上の大きさのものにボイドが発生し易いことが経験的に分かっている。ここでは、ボイドが発生し易い半導体チップ11として、便宜上、10mm角程度の大きさのものを使用する。また、半導体チップ11の裏面には、ポリイミド樹脂よりも流動性が低いエポキシ樹脂系の熱圧着フィルム12を接着してある。エポキシ樹脂系の熱圧着フィルム12は、ポリイミド樹脂系のものと比較して単価が数〜十数分の一と安い反面、溶融しても流動性が低いために、半導体チップ11が取り込んだ空気を外部に逃がし難いものである。
コレット14は、直径5mm程度の円筒状の部材で、吸着面が半導体チップ11よりも狭くなっている。
本圧着治具16c,16dは、加熱ヒータ17c,17d(図8(D)参照)を有する治具本体16C1,16D1の底面部に、基板13上のマウント位置に対応して加圧部16C2,16D2を突出形成したものである。本圧着治具16cは、加圧部16C2の加圧面を、コレット14の吸着面とほぼ同じ大きさ(直径5mm程度)に形成してある。本圧着治具16dは、加圧部16D2の加圧面を、コレット14の吸着面と半導体チップ11のほぼ中間の大きさ(直径7mm程度)に形成してある。本圧着治具16eは、加熱ヒータ17e(図8(D)参照)を有し、その底面部で半導体チップ11の上面全体を加圧・加熱するものである。
次に、図8(A)〜(D)及び図9(A)〜(D)を参照して、図7のチップマウント装置10による本発明の第4実施形態のチップマウント方法について説明する。なお、図8(A)〜(D)では、第1、第3及び第5マウント位置A,C,Eでの半導体チップ111A,111C,111Eのマウント工程を例示しており、第2、第4及び第6マウント位置B,D,Fでのマウント工程については図示及び説明を省略する。
図8(A)に示す工程は、コレット14によって基板13の第1マウント位置Aに搬送した半導体チップ111Aの中心部の仮圧着を行う工程である。このとき、半導体チップ111Aは、図9(A)の斜線で示すように、その中心部が仮圧着される。
図8(B)に示す工程は、基板13を移動させて、加熱ヒータ17cを内蔵する本圧着治具16cで半導体チップ111Aを加圧および加熱して半導体チップ111Aの中心部の本圧着を行うと共に、コレット14によって基板13上の第3マウント位置Cに搬送した半導体チップ111Cの中心部の仮圧着を行う工程である。このとき、半導体チップ111Aは、図9(B)の網目で示すように、その中心部が本圧着される。図8(A)の工程で半導体チップ111Aを基板13上に載置した際に取り込まれた空気(図示略)は、本圧着された半導体チップ111Aの中心部が本圧着治具16cの加圧面に対応した狭い範囲(直径5mm程度)であるから、低流動性のエポキシ樹脂系の熱圧着フィルム121Aであってもその流動により、半導体チップ111Aの中心部よりも外側へ逃げる。
図8(C)に示す工程は、基板13をさらに移動させて加熱ヒータ17dを内蔵する本圧着治具16dで半導体チップ111Aを加圧および加熱して半導体チップ111Aの中心部と周縁部の間の中間部まで本圧着を行うと共に、本圧着治具16cによる半導体チップ111Cの中心部の本圧着を行い、さらにコレット14によって基板13上の第5マウント位置Eに搬送した半導体チップ111Eの中心部の仮圧着を行う工程である。このとき、半導体チップ111Aは、図9(C)の網目で示すように、その中間部まで本圧着される。半導体チップ111Aに取り込まれた空気は、図8(C)の工程による本圧着範囲が本圧着治具16c,16dの加圧面積の差に対応した狭い範囲であるから、半導体チップ111Aの中間部よりも外側へ逃げる。
図8(D)に示す工程は、基板13をさらに移動させて加熱ヒータ17eを内蔵する本圧着治具16eで半導体チップ111Aを加圧および加熱して半導体チップ111Aの周縁部までの本圧着を行うと共に、本圧着治具16dによる半導体チップ111Cの中間部までの本圧着と、本圧着治具16cによる半導体チップ111Eの中心部の本圧着とを行う工程である。このとき、半導体チップ111Aは、図9(D)の網目で示すように、全体が本圧着される。半導体チップ111Aに取り込まれた空気は、図8(D)の工程で本圧着された範囲が本圧着治具16d,16eの加圧面積の差に対応した狭い範囲であるから、半導体チップ111Aの外部へ排出される。なお、コレット14は、次の基板(図示略)が搬送されてくるまでの間、ピックアップポジションで待機している。
図8(D)の工程が終わったのち、さらに、基板13を移動させて、本圧着治具16d,16eによって、半導体チップ111Cの全体の本圧着と、半導体チップ111Eの中間部までの本圧着とを行う間に、図8(A)に示すように、コレット14で次の基板13上の第1マウント位置Aへ半導体チップ111Aを搬送する。以上の工程を繰り返して、搬送手段15aによって搬送される各基板13に第1層目の半導体チップ111を圧着する。さらに、第1層目の半導体チップ111が圧着された基板13に対して、図8(A)〜(D)の工程を繰り返して、第n層目まで半導体チップ11を積層する。
第4実施形態のチップマウント方法及び装置によれば、本圧着治具16c〜16eで順次半導体チップ11の本圧着を行い、半導体チップ11の中心部から図9各図の網目で示す本圧着範囲を段階的に広げていくので、半導体チップ11に取り込まれた空気は、外側へ押し出されていき、半導体チップ11の全体を本圧着した段階で全て排出される。これによりボイドが発生しないから、半導体チップ11の剥離現象が起こらない信頼性の高い半導体装置30を製造できる。また、第4実施形態のチップマウント方法及び装置では、低流動性のエポキシ樹脂系の熱圧着フィルム12を使用しても、ボイドが発生しないから、半導体装置30の製造コストを大幅に低減にできる。
なお、第4実施形態では、半導体チップ11の中心部の仮圧着を行い、当該中心部から外側に向かって段階的に本圧着を行っているが、例えば、上記第1〜第3実施形態で使用するコレット14の如く、半導体チップ11とほぼ大きさの吸着部14aを有するものによって、図10(A)及び図11(A)の斜線で示すように、半導体チップ11の全体の仮圧着を行い、図10(B)〜(D)及び図11(B)〜(D)の網目で示す半導体チップ11の本圧着範囲を、半導体チップ11の一辺部や一角部から対向辺部や対向角部へ向かって段階的に広げて、半導体チップ11の本圧着を行っても構わない。
また、第4実施形態では、加圧面積の異なる複数個の本圧着治具16c〜16eを使用しているが、図12(C)の如く、加圧面の大きさが同じ複数個の本圧着治具16f1,16f2,16f3によって、本方法を行うことも可能である。この場合、本圧着治具16f1,16f2,16f3は、加圧面が長方形状の加圧部16f4,16f5,16f6を有し、図12(A)〜(C)及び図13に示すように、半導体チップ11の左辺部、左右方向の中央部、右辺部の本圧着を順次行う。なお、図13のように、先に本圧着を行う本圧着治具16f1による本圧着範囲の端縁を、本圧着治具16f2による後の本圧着時に重複して本圧着を行うと、半導体チップ11の左辺部から中央部へ押し込まれた空気が、後の本圧着時に左辺部側へ逆戻りしない。
図14は、本発明の第5実施形態に使用するチップマウント装置10を例示している。このチップマウント装置10は、第4実施形態と同様に、ボイドが発生し易い5mm角以上の半導体チップ11を基板13にマウントするのに好適なものであって、本圧着治具16の底面部にフッ素樹脂等の耐熱性を有する弾性材からなる加圧部18,18を設けた点で、上記の第1実施形態のチップマウント装置10と相違している。なお、他の点については、第1実施形態のチップマウント装置10と同じであるから、同一部位には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
加圧部18,18は、加圧面が半導体チップ11とほぼ同じ大きさで、かつ、加圧面の中心部を突出させると共に外側に向かって徐々に傾斜した球面状に形成してある。また、加熱ヒータ17(図15(A)〜(C)参照)としては、加圧部18,18が熱伝導性の低いフッ素樹脂で構成されているので、超音波加熱ヒータや非接触式の加熱ヒータを使用することが望ましい。
次に、図15(A)〜(C)及び図16(A)〜(C)を参照して、図14のチップマウント装置10による本発明の第5実施形態のチップマウント方法について説明する。
図15(A)に示す工程は、コレット14によって基板13の第1マウント位置Aに搬送した半導体チップ111Aの中心部の仮圧着を行う工程である。このとき、半導体チップ111Aは、図16(A)の斜線で示すように、その中心部が仮圧着される。
図15(B)及び(C)に示す工程は、基板13を移動させて加熱ヒータ17を内蔵する本圧着治具16で加圧および加熱して半導体チップ111Aの本圧着を行う工程である。図15(B)の工程では、半導体チップ111Aの中心部に本圧着治具16の加圧部18を接触させると共に本圧着治具16の加圧力を徐々に高めて、その加圧部18の加圧面中心部が弾性変形により平らになる。このとき、図16(B)の網目で示す本圧着範囲が、同図の矢印で示すように、半導体チップ11の中心点Oから放射状に徐々に広がる。さらに、本圧着治具16の加圧力を高めていくと、図15(C)に示すように、加圧部18の加圧面全体が平らになる。これにより、図16(C)の網目で示す本圧着範囲が、半導体チップ11の全体に広がる。
以上の工程を繰り返して第1層目の半導体チップ111を基板13上に圧着し、さらに、第n層目の半導体チップ11nを第(n−1)層目の半導体チップ11n-1上にマウントしていく。
上記のチップマウント方法及び装置によれば、半導体チップ111Aを基板13上に載置した際に取り込まれた空気が、本圧着時に半導体チップ111Aの中心部から外側へ向かって徐々に押し出される。これにより半導体チップ11を本圧着した段階で、半導体チップ111に取り込まれた空気が外部へ排出され、ボイドが発生しない。
図17(A)〜(C)は、本発明の第6実施形態のチップマウント方法及び装置10を例示している。このチップマウント装置10は、BT基板の如く半導体チップ11よりも軟質で変形し易い基板13に対して半導体チップ11をマウントする際に、ボイドを防止するのに好適なものであって、基板13を載置する台座部15aの上面部にフッ素樹脂等の耐熱性を有する弾性材からなる加圧部18を設けた点で、上記の第1実施形態のチップマウント装置10と相違している。なお、加圧部18は、台座部15aの上面であって、基板13上のマウント位置に対応して配設されるが、図17各図では、便宜上、一の加圧部18しか図示していない。また、他の点については、第1実施形態のチップマウント装置10と同じであるから、同一部位には同一符号を付して詳しい説明を省略する。
図17(A)に示す工程は、コレット14によって基板13のマウント位置Aに搬送した半導体チップ111Aの中心部の仮圧着を行う工程である。このとき、半導体チップ111Aは、図16(A)の斜線で示すように、その中心部が仮圧着される。
図17(B)及び(C)に示す工程は、基板13を移動させて加熱ヒータ17を内蔵する本圧着治具16で加圧および加熱して半導体チップ111Aの本圧着を行う工程である。図15(B)の工程では、半導体チップ111Aの中心部に本圧着治具16の加圧部18を接触させると共に本圧着治具16の加圧力を徐々に高めて、その加圧部18の加圧面中心部が弾性変形により平らになる。このとき、図16(B)の網目で示す本圧着範囲が、同図の矢印で示すように、半導体チップ11の中心点Oから放射状に徐々に広がる。さらに、本圧着治具16の加圧力を高めていくと、図15(C)に示すように、加圧部18の加圧面全体が平らになる。これにより、図16(C)の網目で示す本圧着範囲が、半導体チップ11の全体に広がる。このように半導体チップ11の本圧着範囲が広がるのに伴って、半導体チップ11に取り込まれた空気が、本圧着時に半導体チップ11の中心部から外側へ向かって徐々に押し出されるので、ボイドが発生しない。
以上、本発明の第1〜第6実施形態につき説明したが、本発明は、裏面に接着剤12を具備しない半導体チップ11をマウントする場合にも適用可能である。接着剤3を具備しない半導体チップ11nの場合、そのマウント時に基板13上又は基板13に実装された既設の半導体チップ11n-1上にペースト状又はフィルム状の接着剤12nを供給してから、コレット14によって新設の半導体チップ11nの搬送と仮加圧を行う。