JP2004255988A - ラックピニオン式舵取装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】操舵部材に連結されたピニオン軸と、ピニオン軸に噛合するラック軸2と、ラック軸2を軸長方向への移動自在に収容する筒状のハウジング1と、ハウジング1とラック軸2との間に介装された筒状のブッシュ11とを備えるラックピニオン式舵取装置において、環状凹部13の端面13a,12aと、該端面に対向するブッシュ11の端面との間に弾性部材14a,14bを配設するようにした。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の舵取装置の一形式として広く利用されているラックピニオン式舵取装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ラックピニオン式舵取装置は、操舵部材(ステアリングホイール)に連結されたピニオン軸と、該ピニオン軸に噛合されてラックハウジング内で軸長方向への移動自在に支持されたラック軸とを備え、操舵部材の回動に連動するピニオン軸の回動をラック軸の軸長方向への移動に変換する。この変換によりラック軸の両端部に連結された左右の車輪を操向する。
【0003】
また、ラックハウジングの内部にはブッシュが嵌合されてラック軸を軸長方向へ滑らかに移動案内する。
【0004】
図5は、従来のラックピニオン式舵取装置のラックハウジングにおけるブッシュの嵌合状態を示す縦断面図である。
【0005】
図において20は円筒状をなすラックハウジングであり、ラックハウジング20の内部にはラック軸21が配設され、ラックハウジング20の内面には、周方向に形成された環状凹部20aが設けられている。ラックハウジング20及びラック軸21の間には、ポリエステル系の合成樹脂により円筒状に形成されたブッシュ22が介装されており、このブッシュ22は一端部にフランジ部23を備えている。ブッシュ22は環状凹部20aに嵌め合わされており、ブッシュ22及び環状凹部20aの嵌め合いは中間ばめ程度にしてある。また、ブッシュ22及びラック軸21の間は、ラック軸21が滑らかに摺動することが可能な嵌め合い精度にしている。ブッシュ22は、ラックハウジング20に固定されたストッパ24がフランジ部23に当接することにより位置決めされている。以上の構成によりブッシュ22はラック軸21を軸長方向への移動自在に支持する作用をなす。
【0006】
また、前述したブッシュ22と同様にラック軸21を軸長方向への移動自在に支持する軸受として、合成樹脂からなるアウターブッシュと、該アウターブッシュ内に固定されたインナーブッシュとを備える軸受が開示されている(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−315990号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ラック軸21には、操向車輪からの路面反力等の外力が加えられるため、このような外力に耐え得るようにラック軸21を支持するブッシュ22は高剛性であることが要求される。
【0009】
一方、ブッシュ22は、ラック軸21の軸長方向への滑らかな摺動を確保するために、低フリクション性も要求される。
【0010】
よって、ブッシュ22には、高剛性及び低フリクション性の両方の性能を兼ね備えた材料が要求されるため、ブッシュ22を形成する材料選定の自由度が低いという問題があった。
【0011】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、ラックハウジング及びブッシュの構造を改良することによりラック軸を支持するブッシュの材料選定の自由度を高めたラックピニオン式舵取装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るラックピニオン式舵取装置は、操舵部材に連結されたピニオン軸と、該ピニオン軸に噛合するラック軸と、該ラック軸を軸長方向への移動自在に収容する筒状のハウジングと、該ハウジングの内面に設けられ、前記ハウジングの周方向に形成された環状凹部と、前記ラック軸及びハウジングの間に介装され、前記環状凹部に嵌合された筒状のブッシュとを備えるラックピニオン式舵取装置において、前記環状凹部の端面と、該端面に対向する前記ブッシュの端面との間に弾性部材を配設したことを特徴とする。
【0013】
本発明においては、弾性部材の弾性変形範囲内においてブッシュが軸長方向へ移動でき、この構造自体によって低フリクション性を達成できる。これによりブッシュの材料選定における低フリクション性の要求の程度を改めることができるから、ブッシュの材料選定の自由度を向上できる。また、ブッシュが移動することによるハウジングとの衝突は、弾性部材により緩衝できるから、ブッシュに対する衝撃負荷が加わること及び衝突音が発生することを低減できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
【0015】
実施の形態1
図1は、実施の形態1のラックピニオン式舵取装置の全体構成を示す模式図である。
【0016】
図において1は円筒状をなすラックハウジングであり、ラックハウジング1は軸長方向を左右方向として車体(図示せず)に固定支持されている。このラックハウジング1の内部には、ラック軸2が軸長方向への移動自在に収容されている。このラック軸2の両端部は、ラックハウジング1の左右両側に突出させてあり、この突出端は、車両を操向するための操向車輪5,5(一般的には前輪)に連結されている。
【0017】
ラックハウジング1の一端部側には、軸心間に適宜の距離をもって交叉するように、円筒状をなすピニオンハウジング6が連設されており、このピニオンハウジング6の内部には、ピニオン軸7が回動自在に支持されている。このピニオン軸7の一端部は、ピニオンハウジング6から上方に向けて突出しており、操舵部材10が連結されたコラム軸9に中間軸8を介して連結されている。
【0018】
ピニオンハウジング6内に延設されたピニオン軸7の他端部には、図示しないピニオンが一体形成されており、このピニオンは、ラック軸2に噛合させてある。ラック軸2は、ピニオンとの噛合部の反対側を押圧し、ラック軸2の軸長方向への移動を案内するラックガイド(図示せず)と、ラックハウジング1の他端部に配したブッシュ11(図2参照)とにより支持されている。
【0019】
図2は、ラックハウジング1の他端部の縦断面図である。
【0020】
図において11は円筒状をなすブッシュであり、ブッシュ11はポリアミド系の合成樹脂により作製されており、ブッシュ11の両端部夫々には、端面から軸長方向に適長に亘って縮径された嵌合部11a,11aが設けられている。ブッシュ11の内径は、ラック軸2が滑らかに摺動可能な嵌め合い精度に管理されている。
【0021】
ラックハウジング1の内面には、周方向に形成された環状凹部13が形成されており、この環状凹部13の軸長方向の長さは、ブッシュ11の軸長方向の長さよりも長くされている。また、環状凹部13の直径は、ブッシュ11との嵌め合いが隙間ばめ程度になる寸法精度が確保されている。環状凹部13よりもラックハウジング1の他端部側(図において右側)は拡径され、後述するストッパ12が圧入固定される係止孔15とされている。
【0022】
ブッシュ11は、環状凹部13に嵌め合わされており、ラック軸2が挿通されている。係止孔15には略円筒のストッパ12が圧入固定されており、環状凹部13の端面13aと、この端面13aに対向するブッシュ11の一端面との間、及び環状凹部13の端面となるストッパ12の端面12aと、この端面12aに対向するブッシュ11の他端面との間には夫々空隙tがある。この空隙tには、ブッシュ11の嵌合部11a,11aに外嵌し、ゴム等により形成された環状をなす弾性部材14a,14bが夫々配設されている。ブッシュ11の一端面側に配設された弾性部材14aは、環状凹部13の端面13aと環状凹部13の周面13bとに当接しており、ブッシュ11の他端面側に配設された弾性部材14bは、ストッパ12の端面12aと環状凹部13の周面13bとに当接している。
【0023】
以上の構成により、ブッシュ11の軸長方向両側には空隙tがあるから、ブッシュ11は軸長方向へ移動することができる。これにより、構造自体によって低フリクション性を達成できるから、従来は高剛性及び低フリクション性を兼ね備えた限られた材料しか採用できなかったブッシュ11の材料選定の自由度を高められる。
【0024】
また、空隙tに弾性部材14a,14bを配設したから、ラック軸2の移動による作用又は車両走行時の振動による作用によりブッシュ11が軸長方向へ移動しても、環状凹部13の端面13a及びブッシュ11の一端面の衝突と、ストッパ12の端面12a及びブッシュ11の他端面の衝突とは防止され、ブッシュ11に衝撃負荷が加わることがないと共に、衝突音は発生しない。また、弾性部材14a,14bは環状凹部13の周面13bにも当接しているから、ブッシュ11と環状凹部13の周面13bとの衝突も防止されてブッシュ11に衝撃負荷が加わることがないと共に、衝突音は発生しない。
【0025】
なお、ブッシュ11は、ポリアミド系の合成樹脂により作製したが、ポリウレタン系、ポリプロピレン又はフッ素樹脂等の合成樹脂により作製してもよい。また、合成樹脂以外の材料にて作製してもよく、例えば金属製の筒状材にフッ素樹脂等をコーティングしたものにより作製してもよい。
【0026】
実施の形態2
本実施の形態2のラックピニオン式舵取装置の全体構成は、実施の形態1のラックピニオン式舵取装置と略同様のため、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。異なる構成は、ラックハウジング1の他端部に配されたブッシュ11A近傍の態様である。
【0027】
図3は、実施の形態2におけるラックハウジング1の他端部の縦断面図である。
【0028】
円筒状をなすブッシュ11Aの他端部は拡径されてフランジ部11bを形成しており、このフランジ部11bには、ブッシュ11Aの他端面から適長縮径された嵌合部11aが設けられている。
【0029】
ラックハウジング1の内面には、前述のフランジ部11bに対応するように拡径された部分を備える環状凹部13Aが形成されている。この拡径された部分の軸長方向の長さは、フランジ部11bの軸長方向の長さに、図に示した寸法t1とt2とを加えた長さとされている。なお、寸法t2はt1よりも長くされている。
【0030】
環状凹部13Aの端面13aと、この端面13aに対向するブッシュ11Aの一端面との間の空隙t1には、環状凹部13Aの端面13a及び周面13bにより形成される角部と、ブッシュ11Aの嵌合部11aから拡径される角部とに当接する弾性部材としての皿ばね16aが配設されている。また、ストッパ12の端面12aと、この端面12aに対向するブッシュ11Aの他端面との間の空隙tには、ストッパ12の端面12a及び環状凹部13Aの拡径された部分の周面13cにより形成される角部と、フランジ部11b側の嵌合部11aから拡径される角部とに当接する弾性部材としての皿ばね16bが配設されている。
【0031】
本実施の形態2においては、実施の形態1の弾性部材14a,14bに変えて皿ばね16a,16bを空隙t1に配設したから、ブッシュ11Aが軸長方向に移動する外力の値を皿ばね16a,16bのばね定数を変更することにより任意に設定できる。これにより、ラックハウジング1及びブッシュ11Aの構造自体による低フリクション性の程度を任意に設定できる。なお、皿ばね16a,16bに変えてコイルスプリング等を用いることも可能である。
【0032】
実施の形態3
本実施の形態3は、実施の形態2と同様に、実施の形態1に対し、ラックハウジング1の他端部に配されたブッシュ11B近傍の態様が異なる。その他の構成は、実施の形態1のラックピニオン式舵取装置と略同様のため、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
図4は、実施の形態3におけるラックハウジング1の他端部の縦断面図である。
【0034】
円筒状をなすブッシュ11Bの他端部は拡径されてフランジ部11bを形成しており、このフランジ部11bには、ブッシュ11Bの他端面から適長縮径された嵌合部11aが設けられている。フランジ部11bの周方向には、ブッシュ11Bの他端面から軸長方向へブッシュ11Bの略中央まで達する割り溝18が数箇所設けられている(図4には一箇所のみ図示)。
【0035】
ラックハウジング1の内面には、フランジ部11bに対応するように拡径された部分を備える環状凹部13Aが形成されており、拡径された部分の軸長方向の長さは、実施の形態2と同様に構成してある。環状凹部13Aよりもラックハウジング1の他端部側には、係止孔15が形成されておらず、環状凹部13Aの拡径された部分でない位置の周面13bと略同一の径を有する孔が形成されている。
【0036】
ブッシュ11Bは、割り溝18の溝幅を狭めるようにフランジ部11bを縮径されて環状凹部13A内に挿入され、嵌合されており、ストッパ12は配設されていない。ブッシュ11Bの一端面側の空隙t1には、実施の形態1と同様に弾性部材14aが配設されている。また、ブッシュ11Bの他端面側の空隙t1には、フランジ部11bの嵌合部11aに外嵌された弾性部材14bが配設されており、この弾性部材14bは、環状凹部13Aの拡径された部分の周面13cと、拡径された部分の端面(ラックハウジング1の他端部側)とに当接している。
【0037】
本実施の形態3においては、ブッシュ11Bのフランジ部11bに割り溝18を数箇所設け、フランジ部11bを縮径して環状凹部13Aが備える拡径した部分に嵌め合わせるから、ストッパ12が不要となり、部品点数の削減及び組み付け工数の削減が可能となる。
【0038】
以上の実施の形態1、2及び3においては、環状凹部13,13Aの端面13aと、この端面13aに対向するブッシュ11,11A,11Bの一端面との間、及び端面13aとは逆側の環状凹部13,13Aの端面(ストッパ12の端面12a又は環状凹部13,13Aの拡径された部分のラックハウジング1他端側端面)と、この端面13aに対向するブッシュ11,11A,11Bの他端面との間には、弾性部材14a,14b又は弾性部材としての皿ばね16a,16bが配設されているが、この部分に配設される部材は、弾性部材14a,14b又は皿ばね16a,16b等に限らず、弾性を有する部材であればよい。
【0039】
また、空隙tは、ブッシュ11,11A,11Bの軸長方向両側にあるが、両側にあるようにする必要はなく、片側だけに空隙tができるように構成してもよい。
【0040】
さらに、前述した実施の形態1、2及び3は、運転者により操舵部材10に加えられる操作力のみで舵取りを行わせるマニュアルステアリング装置への適用例について述べたが、本発明は、油圧アクチュエータ又は電動モータの発生力により舵取りを補助するパワーステアリング装置への適用も可能であることは言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明に係るラックピニオン式舵取装置においては、ブッシュの端面と環状凹部の端面との間に弾性部材が配設されており、ブッシュは、弾性部材の弾性変形範囲内において軸長方向に移動できるから、ハウジング及びブッシュの構造自体によって低フリクション性を達成できる。これによりブッシュの材料選定における低フリクション性の要求の程度を改めることができるから、ブッシュの材料選定の自由度を向上できる。また、ブッシュが移動することによるハウジングとの衝突は、弾性部材により緩衝できるから、ブッシュに対する衝撃負荷が加わること及び衝突音が発生することを低減できる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るラックピニオン式舵取装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】ラックハウジングの他端部の縦断面図である。
【図3】ラックハウジングの他端部の縦断面図である。
【図4】ラックハウジングの他端部の縦断面図である。
【図5】従来のラックピニオン式舵取装置のラックハウジングにおけるブッシュの嵌合状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ラックハウジング(ハウジング)
2 ラック軸
7 ピニオン軸
10 操舵部材
11,11A,11B ブッシュ
13,13A 環状凹部
14a,14b 弾性部材
16a,16b 皿ばね(弾性部材)
Claims (1)
- 操舵部材に連結されたピニオン軸と、該ピニオン軸に噛合するラック軸と、該ラック軸を軸長方向への移動自在に収容する筒状のハウジングと、該ハウジングの内面に設けられ、前記ハウジングの周方向に形成された環状凹部と、前記ラック軸及びハウジングの間に介装され、前記環状凹部に嵌合された筒状のブッシュとを備えるラックピニオン式舵取装置において、
前記環状凹部の端面と、該端面に対向する前記ブッシュの端面との間に弾性部材を配設したことを特徴とするラックピニオン式舵取装置。
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