JP2004237915A - 頭部保護エアバッグ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】頭部保護エアバッグ20は、膨張用ガスGを流入させた膨張完了時に、車両の前席側方の窓を覆い可能な前席用膨張部21を備える。また、エアバッグ20は、前席用膨張部21における車内側と車外側との壁部22・23相互の離隔距離を規制可能に、車内側壁部22と車外側壁部23とに連結されるテザー25を備える。そして、膨張完了時の前席用膨張部21は、テザー25により、前部21a側の下部21d側から少なくとも後斜め上方に向かう直線LTのエリアにおいて、順次、車内外方向の厚さを厚くするように、構成されている。
【選択図】図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、頭部保護エアバッグ装置のエアバッグに関し、詳しくは、膨張用ガスを流入させた膨張完了時に、車両の前席側方の窓を覆い可能な前席用膨張部を備えた頭部保護エアバッグに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、頭部保護エアバッグでは、膨張用ガスを流入させた膨張完了時に、車両の前席側方の窓を覆い可能な前席用膨張部を備えるとともに、前席用膨張部における車内側と車外側との壁部相互の離隔距離を規制可能に、車内側壁部と車外側壁部とに連結されるテザーを備えて構成されるものがあった(例えば、特許文献1)。
【0003】
このようなエアバッグでは、袋織りで形成するエアバッグに比べて、膨張部のエリアでは、車内側壁部と車外側壁部との厚さが極めて薄くするような部位が配設されず、前席の乗員をクッション性良く保護できる。
【0004】
すなわち、頭部保護エアバッグでは、膨張完了時に、円柱状等の厚く丸く膨張するのではなく、乗員と窓との狭い隙間で、かつ、窓に沿って広い範囲で、板状に膨張できるように、車内側壁部と車外側壁部とを部分的に連結する必要があるが、その場合、袋織りで形成する膨張部では、内部に、車内側壁部と車外側壁部とを離して連結させるようなテザーを設けることができず、車内側壁部自体と車外側壁部自体とを、相互に、直接、結合させるように袋織りすることとなって、その結合部位には、ガスが流入せず、クッション性を確保できない。
【0005】
これに対し、車内側壁部と車外側壁部とに連結されるテザーを備えたエアバッグでは、車内側壁部と車外側壁部とを離して連結できることから、膨張部のエリア内に、ガスの非流入部位がなく、クッション性が良好となる。
【0006】
【特許文献1】
特開平10−138860号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、車内側壁部と車外側壁部とに連結されるテザーを備えた従来の頭部保護エアバッグでは、膨張部の厚さを、車両の前後方向に沿って略均一にしているだけであることから、前席に着座する乗員の体格等に対応させて、最適に保護する点に、改善の余地がった。
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、前席に着座する乗員に対応して、適切に保護可能な頭部保護エアバッグを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアバッグは、膨張用ガスを流入させた膨張完了時に、車両の前席側方の窓を覆い可能な前席用膨張部を備えるとともに、前席用膨張部における車内側と車外側との壁部相互の離隔距離を規制可能に、車内側壁部と車外側壁部とに連結されるテザーを備えて構成される頭部保護エアバッグあって、
膨張完了時の前席用膨張部が、テザーにより、前部側の下部側から少なくとも後斜め上方のエリアにおいて、順次、車内外方向の厚さを厚くするように、構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る頭部保護エアバッグの前席用膨張部では、膨張完了時、少なくとも、前部側下部から後斜め上方に延びた位置の後部側上部が、前部側下部に比べて、厚く膨張する。そして、前席に着座する乗員が大柄な人であれば、その大柄な乗員は、通常、前席を車両後方側にスライドさせ、膨張を完了させた前席用膨張部の後部側に、シートを配置させる場合が多く、その場合、その大柄な乗員の頭部は、膨張を完了させた前席用膨張部の後部側における上部側に位置し、かつ、車両の側面衝突時の車外側への運動エネルギーも大きい。そして、本発明に係る頭部保護エアバッグの前席用膨張部では、膨張完了時、後部側上部が前部側下部に比べて厚く膨張することから、大柄な乗員の頭部を、適切に保護することが可能となる。
【0011】
一方、前席に着座する乗員が小柄な人であれば、その小柄な乗員は、通常、前席を車両前方側にスライドさせ、膨張を完了させた前席用膨張部の前部側に、シートを配置させる場合が多く、その場合、その小柄な乗員の頭部は、膨張を完了させた前席用膨張部の前部側における下部側に位置し、かつ、車両の側面衝突時の車外側への運動エネルギーも、大柄な人に比べて、小さい。そして、本発明に係る頭部保護エアバッグの前席用膨張部では、膨張完了時、前部側下部が、後部側上部に比べて薄いものの、所定の厚さで膨張できることから、その小柄な乗員の頭部を、適切に保護することが可能となる。
【0012】
そして勿論、前席に着座する乗員が平均的な体格の人であれば、その乗員は、膨張を完了させた前席用膨張部の前後方向の中間部位に位置し、また、その頭部の高さも大柄な乗員と小柄な乗員との略中間の高さで、かつ、その頭部の運動エネルギーも大柄な乗員と小柄な乗員との略中間となるが、膨張を完了させた前席用膨張部では、前部側下部から後部側上部にかけるエリアが、略連続的に、順次、厚さを厚くしており、その平均的な体格の乗員の頭部を、的確に保護することができる。
【0013】
以上のように、本発明に係る頭部保護エアバッグでは、前席に着座する乗員に対応させて、前席用膨張部の膨張完了形状が設定されており、膨張完了時、前席に着座する乗員を適切に保護することができる。また、本発明に係る頭部保護エアバッグでは、前席用膨張部の全域を厚く膨張させるわけではないことから、ガスを流入させる部位の容積を不必要に大きくせず、膨張開始から膨張完了までの時間が長くなることを防止できる。さらに勿論、本発明に係る頭部保護エアバッグでは、車内側壁部と車外側壁部とに連結されるテザーを備えて構成されており、前席用膨張部のエリアでは、クッション性を確保できないような車内側壁部と車外側壁部とを直接結合させる部位がなく、前席の乗員をクッション性良く保護できる。
【0014】
そして、請求項2に記載したように、前席用膨張部に配設されるテザーを、車内側壁部と車外側壁部との連結部位相互の離隔距離を、後方側に向かって広げるように、配設させれば、膨張完了時の前席用膨張部において、後部側を厚くし、前部側を後部側に比べて薄くすることができる。そのため、テザー自体の車内側・車外側壁部との連結部位相互の幅寸法を調整するだけで、前席の乗員を適切に保護可能なエアバッグを、容易に、製造することができる。
【0015】
また、請求項3に記載したように、前席用膨張部に配設させるテザーを、上下に複数段配設させるとともに、それぞれ、略前後方向に延びるように配設させて、さらに、各テザーにおける上下方向の相互の間隔を、後方側に向かって広げるように、配設させれば、各テザー間の車内側壁部と車外側壁部との上下方向の膜長を、前席用膨張部の前部側では短く、前席用膨張部の後部側では長くできる。そのため、このように構成すれば、膨張完了時の前席用膨張部におけるテザー間の部位において、後部側を厚くし、前部側を後部側に比べて薄くすることができて、複数のテザーの配置位置を所定位置に設定するだけで、前席の乗員を適切に保護可能なエアバッグを、容易に、製造することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態の頭部保護エアバッグ20が使用される頭部保護エアバッグ装置HPは、図1に示すように、車両Vの窓(サイドウィンド)W1・W2及びリヤピラー部RPの上縁側におけるフロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRに、搭載されている。なお、この車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、略上下方向に沿うセンターピラー部CPを配設させるとともに、リヤピラー部RPの後方に後壁部BPを配設させて、前席FSと後席BSとの二列シートのピックアップ車である。
【0017】
頭部保護エアバッグ装置HPは、図1に示すように、インフレーター8、取付ブラケット9・13、取付ボルト10・14、及び、エアバッグ20、を備えて構成され、車両Vへの搭載時に、車内側をエアバッグカバー16に覆われて収納されている。エアバッグカバー16は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ3の下縁側部位と、ルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング4の下縁側部位と、から構成されている。
【0018】
フロントピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4は、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側に、取り付けられている。そして、これらの下縁側部位は、展開膨張時のエアバッグ20を突出可能に、下端側を車内側に開くように、構成されている。
【0019】
インフレーター8は、略円柱状とされて、先端(前端)側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口が、配設されている。そして、このインフレーター8は、ガス吐出口付近を含めた先端付近をエアバッグ20の接続口部37に挿入させ、接続口部37の後端付近に外装されるクランプ11を利用して、エアバッグ20に対して、連結されている。また、インフレーター8は、インフレーター8を保持する取付ブラケット9と、取付ブラケット9をボディ1側のインナパネル2に固定するための取付ボルト10とを利用して、インナパネル2に取り付けられている。
【0020】
なお、このインフレーター8の車両Vへの搭載は、インフレーター8とエアバッグ20とを組み付けた状態のエアバッグ組付体として、行なわれる。
【0021】
エアバッグ20は、図1〜6に示すように、折り畳まれた状態で、斜め上方に延びるように配設されたフロントピラー部FPから、センターピラー部CPの上方を越えて、リヤピラー部RPの上方となる位置までのルーフサイドレール部RRに、収納されている。そして、エアバッグ20は、展開膨張時、図1の二点鎖線に示すように、前席FSの側方における窓W1、後席BSの側方における窓W2、さらには、センターピラー部CP・リヤピラー部RP、のそれぞれの車内側を覆うように、構成されている。
【0022】
このエアバッグ20は、膨張用ガスGを流入させて膨らむ膨張部として、前席FSの側方の窓W1を覆う前席用膨張部21と、後席BSの側方の窓W2を覆う後席用膨張部31と、を備えている。前席用膨張部21と後席用膨張部31とは、エアバッグ20の上縁20a側で前後方向に沿って延びるように配置される連通膨張部30によって、連通されている。そして、エアバッグ20は、上縁20a側における前後方向の中央付近に、インフレーター8からの膨張用ガスGを膨張部21・30・31内に導入できるように、インフレーター8の前端に外装される筒状の接続口部37を、配設させている。
【0023】
連通膨張部30の下方には、前席用・後席用膨張部21・31の間に位置して、膨張用ガスGを流入させない非流入部38が配設されている。この非流入部38は、乗員Mが位置しない領域、すなわち、センターピラー部CPの後方側における窓W2の前部側に配置されている。この非流入部38は、エアバッグ20の全体形状を確保するとともに、膨張用ガスGを流入させる部位の容積を減らして、エアバッグ20の膨張開始から膨張完了前の時間を極力短くするために配設されている。
【0024】
また、エアバッグ20の上縁20a側には、エアバッグ20をインナパネル2にボルト14止めするための複数の取付部39が、上方へ突出するように配設されている。各取付部39は、ボルト14を挿通させる取付孔39aを備えるとともに、当板としての取付ブラケット13を取り付けられて、ブラケット13ごと、インナパネル2にボルト14止めされている。
【0025】
さらに、前席用・後席用膨張部21・31内には、車内側壁部22・32と車外側壁部23・33との離隔距離を規制して、各膨張部21・31を略板状に膨張させるためのテザー25・35が、略前後方向に沿って配設されている。
【0026】
前席用膨張部21内に配設されるテザー25は、膨張完了時の前席用膨張部21が、前部21a側の下部21d側の部位27から後部21b側の上部21側の部位28にかけるエリアにおいて、順次、車内側Iと車外側Oとを結ぶ車内外方向の厚さを、順次、厚くするように、配設されている。なお、実施形態の場合、このように厚くなる部位27・28は、テザー25の下方におけるエアバッグ20の下縁20b側の領域において、順次、厚くなるように、設定されている。
【0027】
そして、テザー25は、前端25aを、前席用膨張部21の前部21a側における上下方向の略中間部位に、配置させて、後端25aを、後上がりとするように、前席用膨張部21の後部21b側における上部21c側に、配置させている。すなわち、エアバッグ20の下縁20bからテザー25までの車内側壁部22と車内側壁部23とのそれぞれの上下方向の膜長LI(LIF・LIB)・LO(LOF・LOB)に関して、前部21a側の膜長LIF・LOFより後部21b側の膜長LIB・LOBを、長くするように、設定して、膨張完了時の前席用膨張部21が、前部21a側の下部21d側の部位27から後部21b側の上部21側の部位28にかけて、順次、連続的に厚くなるように、構成されている。
【0028】
さらに、このテザー25は、前席膨張部21の膨張完了時における車内側壁部22と車外側壁部23との連結部位25c・25d相互の離隔距離に関して、前部21a側より後部21b側が広くなるように、前部25a側から後部25b側にかけて、車内側端部25cと車外側端部25dとの間の幅寸法FW・BWをテーパ状に広げるように、構成されている。すなわち、テザー25自体による車内側壁部22と車外側壁部23との離隔距離の調整によって、前部21a側の下部21d側の部位27から後部21b側の上部21側の部位28にかけて、順次、厚くなるように、構成されている。
【0029】
そして、これらの構成によって、前席用膨張部21のテザー25の下方エリアでは、膨張完了時の縦断面での厚さの最も厚い頂部が、前部21側では、厚さB1として下縁20bからの高さをh1とした部位27となり、後部21b側では、厚さをB2として下縁20bからの高さをh2とした部位28となって、それらの部位27・28を結ぶ直線LTが、後方に向かうに従って斜め上方向に延び、かつ、その直線LTの部位が、順次、後方に向かうにつれて、連続的に厚さを厚くするように、構成されている(h1<h2でかつB1<B2としている)。
【0030】
後席用膨張部31内に配設されるテザー35は、前端35aを、後席用膨張部31の前部31aの上部31c側に、配置させて、後端35bを、後席用膨張部31の後部31bの上下方向の略中間部位に、配置させている。また、このテザー35は、車内側端部35cと車外側端部35dとの連結部位35c・35d相互の離隔距離を略等しくするように、長方形板状としている(図5参照)。
【0031】
なお、各テザー25・35は、上下に貫通する複数の挿通孔25e・35eを備えている。
【0032】
エアバッグ20の製造について述べれば、このエアバッグ20は、袋織りで製造するものでなく、可撓性を有したポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した織布の所定部位を結合させて製造するものであり、実施形態の場合、縫合糸46を使用した縫製エアバッグとしている。さらに、実施形態の場合、図5・6に示すように、エアバッグ20は、二つ折りして使用する本体布41、本体布41の前端側に連結される前側布42、及び、各テザー25・35を形成するテザー用布43・44の計4枚の織布を使用している。本体布41は、前席用膨張部21、後席用膨張部31、連通膨張部30、及び、接続口部37、を形成するものである。そして、本体布41は、エアバッグ20の下縁20bとなる位置に、折目F0を入れて、二つ折りし、重ねた部位における膨張部21・30・31や接続口部37の外周縁となる箇所を、縫合糸46によって、縫合することによって、前席用膨張部21、後席用膨張部31、連通膨張部30、及び、接続口部37、を形成している。なお、縫合時には、各テザー25・35の車内側端部25a・35aや車外側端部25b・35bを、本体布41における前席用膨張部21の車内側壁部22や車外側壁部23、あるいは、後席用膨張部31の車内側壁部32や車外側壁部33となる部位に、縫合して、テザー25・35を各膨張部21・31内に配設させている。
【0033】
本体布41の前端側に連結される前側布42は、エアバッグ20の膨張完了時、フロントピラー部FPからその下方に展開して配置されるもので、上縁側に二つの取付部39を配置させている。これらの取付部39は、二枚重ねとなるように、構成されており、平らに展開された状態から折り返して、縫合糸46によって縫合されて、形成されている。なお、この取付部39の形成時、図6のA・Bに示すように、同時に、前側布42は、本体布41の前端側に、縫合糸46によって縫合されている。
【0034】
そして、このように製造したエアバッグ20は、非膨張状態の平らに展開した状態から、図2の二点鎖線に示すように、上縁20aと平行な折目F1を付けて、下縁20b側が上縁20a側に接近するように略上下方向に折り重ねる蛇腹折りにより、折り畳む。折り畳んだ後には、エアバッグ20の周囲に、破断可能な図示しないラッピング材を巻き付ける。その後、各取付部39を引き出して、所定の取付ブラケット13を取り付けるとともに、接続口部37に、取付ブラケット9を取付済みのインフレーター8を挿入して、クランプ11により、接続口部37とインフレーター8とを連結して、エアバッグ組付体を形成する。そして、各取付ブラケット9・13を、インナパネル2の所定位置に配置させてボルト10・14止めすれば、エアバッグ組付体を車両Vに搭載することができる。
【0035】
その後、さらに、インフレーター8に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、フロントピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4を、ボディ1に取り付け、さらに、センターピラーガーニッシュ5やリヤピラーガーニッシュ6を、ボディ1に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置HPを、車両Vに搭載させることができる。
【0036】
エアバッグ装置HPの車両Vへの搭載後、インフレーター8が作動されれば、膨張用ガスGが、インフレーター8から吐出され、接続口部37を経て、さらに、前席用膨張部21・連通膨張部30・後席用膨張部31に流れることから、エアバッグ20は、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、フロントピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4の下縁側からなるエアバッグカバー16を押し開き、図1の二点鎖線で示すように、窓W1・W2やセンターピラー部CP・リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0037】
この時、実施形態のエアバッグ20の前席用膨張部21では、エアバッグ20の下縁20bからテザー25までの車内側壁部22と車内側壁部23とのそれぞれの上下方向の膜長LI・LOに関して、前部21a側の膜長LIF・LOFより後部21b側の膜長LIB・LOBを長くしていることから、膨張完了時、前部側下部27から後部側上部28の直線LTのエリアにかけて、順次、厚くなる。さらに、テザー25が、前席膨張部21の膨張完了時における車内側壁部22と車外側壁部23との連結部位25c・25d相互の離隔距離に関して、前部21a側より後部21b側が広くなるように、車内側端部25cと車外側端部25dとの間の幅寸法FW・BWをテーパ状に広げるように、構成されている。
【0038】
そのため、前席用膨張部21では、膨張完了時、略前後方向に沿って配設されているテザー25の下方領域においては、後部側上部28の領域が、一番厚く膨張する。そして、前席FSに着座する乗員MBが大柄な人であれば、その大柄な乗員MBは、通常、前席FSを車両後方側にスライドさせ、膨張を完了させた前席用膨張部21の後部21b側に、シートFSを配置させる場合が多く、その場合、その大柄な乗員MBの頭部Hは、膨張を完了させた前席用膨張部21の後部側上部28に位置し、かつ、車両Vの側面衝突時の車外側への運動エネルギーも大きい。そして、実施形態の頭部保護エアバッグ20の前席用膨張部21では、膨張完了時、後部側上部28が一番厚く膨張することから、大柄な乗員MBの頭部Hを、適切に保護することができる。
【0039】
一方、前席FSに着座する乗員MSが小柄な人であれば、その小柄な乗員MSは、通常、前席FSを車両前方側にスライドさせ、膨張を完了させた前席用膨張部21の前部21a側に、シートFSを配置させる場合が多く、その場合、その小柄な乗員MSの頭部Hは、膨張を完了させた前席用膨張部21の前部側下部27の領域に位置し、かつ、車両Vの側面衝突時の車外側への運動エネルギーも、大柄な人MBに比べて、小さい。そして、実施形態の頭部保護エアバッグ20の前席用膨張部21では、膨張完了時、前部側下部27の領域が、後部側上部28に比べて薄いものの、所定の厚さB1で膨張できることから、その小柄な乗員MSの頭部Hを、適切に保護することができる。
【0040】
以上のように、実施形態の頭部保護エアバッグ20では、前席FSに着座する乗員MB・MSに対応させて、前席用膨張部21の膨張完了形状が設定されており、膨張完了時、前席FSに着座する乗員MB・MSを適切に保護することができる。
【0041】
勿論、前席FSに着座する乗員Mが平均的な体格の人であれば、その乗員Mは、膨張を完了させた前席用膨張部21の前後方向の中間部位に位置し、また、その頭部の高さも大柄な乗員MBと小柄な乗員MSとの略中間の高さで、かつ、その頭部の運動エネルギーも大柄な乗員MBと小柄な乗員MSとの略中間となるが、膨張を完了させた前席用膨張部21では、前部側下部27から後部側上部28にかける直線LTのエリアが、連続的に、順次、厚さを厚くしており、その平均的な体格の乗員Mの頭部を、的確に保護することができる。
【0042】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ20では、前席用膨張部21の全域を厚く膨張させるわけではないことから、ガスGを流入させる部位の容積を不必要に大きくせず、膨張開始から膨張完了までの時間が長くなることを防止できる。さらに勿論、実施形態の頭部保護エアバッグ20では、車内側壁部22と車外側壁部23とに連結されるテザー25を備えて構成されており、前席用膨張部21のエリアでは、クッション性を確保できないような車内側壁部22と車外側壁部23とを直接結合させる部位がなく、前席FSの乗員MB・MSをクッション性良く保護できる。
【0043】
そして、実施形態では、テザー25自体の車内側・車外側壁部22・23との連結部位25c・25d相互の幅寸法FW・BWを調整するだけで、前席FSの乗員MB・MSを適切に保護可能なエアバッグ20を、容易に、製造することができる。
【0044】
なお、実施形態では、一つのテザー25を前席用膨張部21内に配設させたが、前後方向に複数のテザーを配設させ、それらのテザーが、車内側壁部22と車外側壁部23との連結部位相互の幅寸法を、順次、後方に向かうにしたがって、幅広となるように、設定してもよい。
【0045】
また、実施形態の場合、膨張完了時の前席用膨張部21が、前部21a側の下部21d側の部位27から後部21b側の上部21側の部位28にかけるエリアにおいて、順次、厚くするために、まず、テザー25の前端25aを、前席用膨張部21の前部21a側における上下方向の略中間部位に、配置させ、かつ、後端25aを、後上がりとするように、前席用膨張部21の後部21b側における上部21c側に、配置させて、エアバッグ20の下縁20bからテザー25までの車内側壁部22と車内側壁部23とのそれぞれの上下方向の膜長LI・LOに関して、前部21aより後部21b側を、長くするように、設定した。また、テザー25の幅寸法に関し、前部21a側より後部21b側が広くなるように、車内側端部25cと車外側端部25dとの間の寸法を広げるように、構成した。しかし、どちらか一方の構成だけで、エアバッグを構成してもよい。
【0046】
さらに、実施形態では、テザー25自体の配置されていない部位27・28を結ぶ直線LTの位置するエリアに関して、厚さを、順次、連続的に厚くする場合を示したが、前席用膨張部において、テザーが配置されている部位を交差して、前部側の下部側から、少なくとも、後方に向かう斜め上方向に、厚さを順次厚くするように、構成しても良い。この場合、膨張完了時の前席用膨張部では、テザーの配置部位が、厳密には、周囲より部分的に厚さを小さくなることが避けられない。しかし、その近傍のテザーの配置されていない部位で、前部側の下部側から、少なくとも、後方に向かう斜め上方向に、厚さを順次厚くするように、構成されておれば、乗員の頭部自体を保護できることから、本発明の作用・効果を達成でき、このような構成でも、本発明の特許請求の範囲内の構成となる。
【0047】
さらに、図7〜9に示す頭部保護エアバッグ20Aのように構成してもよい。このエアバッグ20Aは、前席用膨張部21内に、上下二段に配置される二つのテザー55・56を備えて、構成されている。これらのテザー55・56は、それぞれ、略前後方向に延びて後上がりとするように配設されている。そして、各テザー55・56が、上下方向の相互の間隔を、後方側に向かって広げるように、配設されている。なお、下段のテザー56は、平らに展開したエアバッグ20Aの下縁20bとの間の間隔も、後方側に向かって広げるように、前端56a側より後端56b側を上方に配置させている。
【0048】
このエアバッグ20Aでは、他の構成は、エアバッグ20と同様であり、エアバッグ20と同様の部位には、同一符号を付して、説明を省略する。また、このエアバッグ20Aは、エアバッグ20と同様にインフレーター8と組み付けられて車両Vに搭載される。
【0049】
そして、このエアバッグ20Aでも、膨張用ガスGを流入させて膨張を完了させれば、各テザー55・56間の車内側壁部22と車外側壁部23との上下方向の膜長LIUF・LIUB・LOUF・LOUB、あるいは、テザー56と下縁20b間の車内側壁部22と車外側壁部23との上下方向の膜長LIDF・LIDB・LODF・LODBを、前席用膨張部21の前部21a側では短く、前席用膨張部21の後部21b側では長くできる。そのため、このように構成すれば、膨張完了時の前席用膨張部21のテザー55付近の下方領域において、後部21b側の上部21c側の部位28を厚くし、前部21a側の下部21d側の部位27を後部側上部28に比べて薄くすることができて(B3<B4)、直線LTのエリアを、後方に向かって順次厚くしていることから、前席FSの乗員MB・MSを適切に保護することができる。
【0050】
そして、この場合でも、複数のテザー55・56の配置位置を所定位置に設定するだけで、前席FSの乗員MB・MSを適切に保護可能なエアバッグ20Aを、容易に、製造することができる。
【0051】
なお、実施形態のエアバッグ20・20Aでは、本体布41・前側布42・テザー用布43・44・55・56の結合を、縫合によって行なう場合を示したが、接着や熱融着等を利用して、エアバッグを製造してもよい。
【0052】
また、実施形態のエアバッグ20・20Aでは、前席用膨張部21と後席用膨張部31とを備えた二列シート用の車両に搭載する場合を示したが、前席だけの一列シートの車両に対応するエアバッグ、二列シートの前席だけの乗員を保護するエアバッグ、あるいは、三列シート等の複数列のシートに着座した各乗員を保護可能な膨張部を備えたエアバッグに、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施形態のエアバッグを使用した頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た正面図である。
【図2】実施形態のエアバッグの正面図である。
【図3】実施形態のエアバッグの膨張時の縦断面図であり、図2のIII−III部位に対応する。
【図4】実施形態のエアバッグの膨張時の縦断面図であり、図2のIV−IV部位に対応する。
【図5】実施形態のエアバッグを構成する布材の分解平面図である。
【図6】実施形態のエアバッグの製造時を示す説明図である。
【図7】他の実施形態のエアバッグの正面図である。
【図8】図7に示すエアバッグの膨張時の縦断面図であり、図7のVIII−VIII部位に対応する。
【図9】図7に示すエアバッグの膨張時の縦断面図であり、図7のIX−IX部位に対応する。
【符号の説明】
20・20A…エアバッグ、
21…前席用膨張部、
21a…前部、
21b…後部、
21c…上部、
21d…下部、
22…車内側壁部、
23…車外側壁部、
25・55・56…テザー、
25a…前端、
25b…後端、
25c…(車内側)端部、
25d…(車外側)端部、
27…前部側下部、
28…後部側上部、
V…車両、
FS…前席、
W1…窓、
I…車内側、
O…車外側、
M…乗員、
MB…(大柄な)乗員、
MS…(小柄な)乗員、
H…頭部、
HP…頭部保護エアバッグ装置。
Claims (3)
- 膨張用ガスを流入させた膨張完了時に、車両の前席側方の窓を覆い可能な前席用膨張部を備えるとともに、該前席用膨張部における車内側と車外側との壁部相互の離隔距離を規制可能に、前記車内側壁部と前記車外側壁部とに連結されるテザーを備えて構成される頭部保護エアバッグあって、
膨張完了時の前記前席用膨張部が、前記テザーにより、前部側の下部側から少なくとも後斜め上方のエリアにおいて、順次、車内外方向の厚さを厚くするように、構成されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ。 - 前記前席用膨張部に配設されるテザーが、前記車内側壁部と前記車外側壁部との連結部位相互の離隔距離を、後方側に向かって広げるように、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ。
- 前記前席用膨張部に配設されるテザーが、上下に複数段配設されるとともに、それぞれ、略前後方向に延びるように配設され、
前記各テザーが、上下方向の相互の間隔を、後方側に向かって広げるように、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ。
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- 2003-02-07 JP JP2003031108A patent/JP4019963B2/ja not_active Expired - Lifetime
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