JP2004218018A - 加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板ならびにそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い加工性を有するとともに歪時効硬化特性にも優れ、かつ室温での時効劣化も小さい高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板を提供する。
【解決手段】C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、N:0.0050〜0.025mass%を含有する鋼スラブを、1000℃以上に加熱した後、仕上圧延出側温度を800℃以上として熱間圧延を行い、650℃以下の温度で巻取った後、冷間圧延を行い、次いで950℃以下でかつオーステナイト相分率が50%以上となる温度で連続焼鈍し、20℃/sec以上の冷却速度で少なくとも500℃まで冷却し、その後、必要に応じてさらにめっき処理を施す。
【選択図】 なし
【解決手段】C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、N:0.0050〜0.025mass%を含有する鋼スラブを、1000℃以上に加熱した後、仕上圧延出側温度を800℃以上として熱間圧延を行い、650℃以下の温度で巻取った後、冷間圧延を行い、次いで950℃以下でかつオーステナイト相分率が50%以上となる温度で連続焼鈍し、20℃/sec以上の冷却速度で少なくとも500℃まで冷却し、その後、必要に応じてさらにめっき処理を施す。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性と歪時効硬化特性に優れた高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板ならびにそれらの製造方法に関し、特に自動車用鋼板等として用いられる場合に、高強度化によって板厚の減少を導いて車体の軽量化に寄与することができる他、成形部品のより一層の信頼性向上を導いて安全性の向上にも寄与することができる鋼板、すなわち加工性と歪時効硬化特性に優れた引張強度(TS)が590MPa以下の高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板ならびにそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車体には、各種の薄鋼板が使用され、とくに成形性に優れた冷延鋼板が多く使われているが、最近、とくに高張力鋼板の使用量が増大している。その理由は、昨今の地球環境問題に由来する自動車の排気ガス規制などから、車体重量の軽減が求められているところ、高張力鋼板を採用すると、鋼板の薄肉化に寄与できるからである。
【0003】
しかし、単に高張力鋼板を用いれば足りるのではなく、例えば、自動車用部品を、降伏応力または引張強度の高い高強度鋼板からプレス成形する場合、次のような問題点があった。
1)降伏強度の上昇により、スプリングバック量が増加し、形状凍結性が低下する結果、ねじれ、ひねれ、反りなどの問題を生ずる。
2)鋼板の延性が低下し、成形時に割れやネッキングなどの不具合を生ずる。
3)単純に、高強度鋼板を適用して薄肉化を図った場合、剛性、耐デント性(局部的な圧縮荷重負荷により生ずる凹みに対する抵抗性)が低下する。
そして、これらの問題点は、自動車車体への高強度鋼板の適用を妨げるものである。
【0004】
こうした問題点を打開する方法として、例えば、自動車外板用の冷延鋼板においては、極低炭素鋼を素材とし、最終的に固溶状態で残存するC量を適正範囲に制御した鋼板を製造する技術が提案されている。この技術は、プレス成形後に行われる170℃×20min程度の塗装焼付工程で起こる歪時効による硬化現象を利用するものである。すなわち歪時効硬化現象を利用することにより、プレス成形時は軟質で、形状凍結性の低下を生ずることがなく、一方、成形後は、焼付けによる歪時効硬化によって部品としての強度や耐デント性を確保しようとするものである。
【0005】
しかし、固溶C量の増加によって硬化量を大きくした塗装焼付硬化型の冷延鋼板の場合、室温での時効劣化、すなわち時間の経過とともに顕著な降伏応力の増加と伸びの低下が生ずることが知られており、広範囲な適用は困難である。さらに、表面欠陥であるストレッチャーストレインを防止する必要性から、その強度上昇量は限られたものとなり、鋼板の薄肉化に寄与するところは小さいという難点がある。
【0006】
そこで、高加工性が要求される用途では、従来あまり積極的に利用されていなかった窒素を強化元素として活用し、この窒素の作用による大きな歪時効硬化現象を活用し、成形性の向上と成形後の高強度化とを両立させた技術が開示されている。例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.0015〜0.025%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.02%以下、Al:0.02%以下、Nb:0.002〜0.050%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0050〜0.0250%を含み、かつN/Alが0.3以上、固溶状態としてのNを0.0010%以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で5%以上のアシキュラフェライト相と平均結晶粒径:20μm以下のフェライト相から成る組織を有し、r値:1.3以上であることを特徴とする成形性、歪時効硬化特性および耐常温時効性に優れた高張力冷延鋼板が開示されている。
【0007】
上記技術は、鋼板素材を極低炭素鋼とした上で、NbおよびBを必須の元素として添加することにより、アシキュラフェライト相が5%以上存在したフェライト組織として、良好な延性と歪時効硬化性を付与するものである。また、この技術は、BH量が80MPa以上、△TSが40MPa以上という高い歪み時効硬化特性を得ることを可能としている。
【0008】
ここで上記BH量とは、引張試験片に5%の引張予歪を付与した後、170℃×20minの条件で時効処理を施したとき、この時効処理前後の変形応力の増加量、すなわちBH量=(時効処理後の降伏応力)−(時効処理前の予変形応力)を意味し、また、△TSとは、上記予歪+時効処理前後の引張強さの増加量、すなわち△TS=(時効処理後の引張強さ)−(予変形前の引張強さ)を意味するものである。
【0009】
【特許文献1】特開2002−206138
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された鋼板が有する歪時効硬化特性は、実際の成形品に適用した場合、必ずしも十分な強度上昇をもたらすものではなく、また大きなばらつきが存在していた。そのため、信頼性が要求される強度部品への適用の障害となっていた。そこで、BH量や△TSそのものを高レベル化し、かつこれらを実使用した場合に歪時効硬化特性を安定して発現させることができる技術が望まれていた。
【0011】
また、上記技術では、NbとBの複合添加によりアシキュラフェライト相を得やすくしているが、その一方、フェライト相(α)とオーステナイト(γ)相が共存する温度域が高くなるため、アシキュラフェライト相を得るための焼鈍温度が高温化し、板厚が薄い冷延鋼板あるいはめっき鋼板を製造する場合には、微妙な張力制御が必要である等のため製造条件の調整が難しく、生産性や歩留りが悪いという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術が抱える問題点を解決し、高い加工性を有するとともに歪時効硬化特性にも優れかつ室温での時効劣化も小さいという諸特性を満足する、主として自動車に用いられる高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板を提供するとともに、それらの鋼板を工業的に安定して製造できる技術を提案することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者は、上記の問題を解決するために種々の成分組成の鋼板を、種々の方法で製造し、多くに材質評価実験を行った。その結果、微視組織的にはアシキュラフェライトとポリゴナルフェライトが混合した複合組織とし、これらを微細な組織とすることが重要であることを知見した。また、従来、加工性が要求される材料にはあまり積極的に利用されていなかった窒素(N)を有効に活用するために、固溶状態のNを一定量以上確保し、それと自動車の塗装焼付あるいはさらに積極的に成形後熱処理とを結合させ大きな歪時効硬化現象を発現させることが有効であることを知見した。
【0014】
すなわち、本発明は、Al含有量を適正な範囲に制御し、さらに熱延、冷延および焼鈍条件を適正化して、微視組織を適正化し、適正量の固溶N量を確保することにより、従来の固溶強化型のC−Mn鋼や析出強化鋼に比べて、格段に優れた成形性(高r値、高延性)と歪時効硬化特性を有する鋼板を得ることに成功した。
【0015】
また、Nb,Bを複合添加したときに焼鈍温度が高温化する問題に対しては、Mnを1%を超えて含有せしめるとともに、その他成分を調整することにより、Nb,Bを必須とすることなく、アシキュラフェライト相とポリゴナルフェライト相からなる微細な結晶組織を得ることができることを見出し、しかも、BH量が80MPa以上、△TSが60MPa以上という優れた歪時効硬化特性と、伸びが30%以上、r値が1.3以上という優れた加工性を有し、しかも室温時効劣化のない鋼板が得られることを見出した。
【0016】
すなわち、上記知見に基づく本発明は、C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、N:0.0050〜0.025mass%、固溶状態としてのNを0.0030mass%以上含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、体積分率で25%以上のアシキュラフェライト相と残部がポリゴナルフェライト相からなると共に、平均結晶粒径が10μm以下である結晶組織を有することを特徴とする加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度冷延鋼板である。
【0017】
なお、本発明の上記高強度冷延鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、下記A群および/またはB群を含む成分組成からなり、あるいはさらにCa,REMの1種または2種を合計で0.0010〜0.010mass%含む成分組成からなることが好ましい。
記
A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
B群:Nb,TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下
【0018】
また、本発明の鋼板は、上記冷延鋼板表面にさらにめっき層を有する高強度めっき鋼板とすることもできる。
【0019】
さらに、本発明は、C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、N:0.0050〜0.025mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1000℃以上に加熱した後、仕上圧延出側温度を800℃以上として熱間圧延を行い、650℃以下の温度で巻取った後、冷間圧延を行い、次いで950℃以下でかつオーステナイト相分率が50%以上となる温度で連続焼鈍し、20℃/sec以上の冷却速度で少なくとも500℃以下まで冷却することにより、固溶状態のNを0.0030mass%以上とし、体積分率で25%以上のアシキュラフェライト相と残部がポリゴナルフェライト相からなり、平均結晶粒径が10μm以下の結晶組織とすることを特徴とする加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法を提案する。
【0020】
なお、本発明の製造方法における上記鋼スラブは、上記成分組成に加えてさらに、下記A群および/またはB群を含む成分組成からなり、あるいはさらにCa,REMの1種または2種を合計で0.0010〜0.010mass%含む成分組成からなることが好ましい。
記
A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
B群:Nb,TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下
【0021】
また、本発明の他の製造方法によれば、上記冷却後の冷延鋼板表面にめっき処理を施すことにより、加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度めっき鋼板を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る鋼板について、その特徴、用途等について説明する。
本発明の鋼板は、原板の状態では引張強度(TS)が340〜590MPaと高強度鋼板としては比較的低い強度を有する反面、プレス成形後の熱処理(通常の塗装焼付処理あるいはさらに後熱処理)により、顕著に歪時効硬化することが特徴である。また一方で、室温時効劣化が実質的にないという特徴も有する。
【0023】
すなわち、本発明の鋼板は、成形時には軟質(低TS、低降伏比(YR))でかつ優れた延性と深絞り性(高r値)を有しているため、鋼板の単純な高強度化に伴って発生するプレス成形時のしわや割れの発生、形状凍結性の低下やねじれ等による形状不良等の問題を生ずることはない。しかも、本発明の鋼板は、大きな塗装焼付硬化特性(BH性)を有するため、成形後の熱処理により顕著に歪時効硬化し、高強度鋼板を適用したのと同等の部品強度が得られ、強度部品の薄肉化を容易に達成できる。なお、本発明は、高強度冷延鋼板のみならず、各種のめっき処理を施した高強度めっき鋼板にも適用することができる。
【0024】
続いて、本発明に係る鋼板の成分組成を限定した理由について説明する。
C:0.015mass%以下
Cは、高r値を得るためには低く制御する必要がある。特に、連続焼鈍法による本発明では、C含有量が0.015mass%を超えると、r値≧1.3の高r値を得ることができない。そのため、Cは0.015mass%以下に制限するが、より成形性の向上を求める場合には、Cは0.010mass%以下にするのが好ましい。一方、Cを低減し過ぎて0.001mass%未満となると、本発明の重要な要件である結晶組織の微細化が困難となり、これに伴い歪時効硬化特性も低下する。そのため、Cの含有量は、0.001〜0.010mass%の範囲とするのが好ましい。
【0025】
Si:0.5mass%以下
Siは、高強度と高延性を両立させるために有用な元素である。しかし、本発明では、固溶Nを確保し、高い歪時効硬化特性を得るために、添加量を0.5mass%以下に制限する必要がある。一方、Si添加量の下限値は、特に限定する必要がないが、脱珪(脱Si)コストの点から、0.005mass%程度とするのが望ましい。なお、例えば溶融めっきのようなめっき鋼板を対象とする場合には、不めっきを発生させないために、0.3mass%以下の添加量とするのが望ましい。
【0026】
Mn:1.0〜3.5mass%
Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素である。また、結晶粒を微細化する効果を有するため、本発明のような極低炭素鋼において、十分な結晶粒の微細化効果を得るためには、1.0mass%以上の添加が必要である。また、Mnは、固溶Nを安定して確保するという観点からも添加することが望ましい。さらに、Mnは、冷延製品の高強度化に有効であるが、熱間圧延時の変形抵抗を高める効果は小さいため、工業的に安定して製造するのに有利な元素である。以上の観点からMnの添加量は、1.0mass%以上とする。なお、Mnの添加量をさらに高めることで、熱延条件の変動に対する鋼板の機械的性質とくに歪時効硬化特性の感受性が改善されるという利点があるため、1.2mass%以上の添加が望ましい。しかし、Mnを過度に添加すると、鋼板の強度が増加する反面、r値が低下する傾向があり好ましくない。さらに、フェライトの生成が抑制されるため、延性が低下するという問題がある。そのため、Mnの添加量の上限は3.5mass%とした。より良好な耐食性と成形性が求められる用途では、3.0mass%以下が望ましい。
【0027】
P:0.10mass%以下
Pは、固溶強化に有効な元素であるが、過度に含有する場合には、鋼を脆化させ、さらに鋼板の伸びフランジ性を低下させる。また、鋼中において偏析する傾向が強いため、それに起因した溶接部の脆化をもたらし好ましくない。さらに、Pの含有量が0.10mass%を超えると、鋼板の室温における耐時効性が低下する傾向にある。以上のことから、その上限を0.10mass%とした。これらの特性の低下が特に問題となる場合には、Pは0.03mass%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.005mass%以下である。
【0028】
S:0.003mass%以下
Sは、鋼中に介在物として存在し、鋼板の延性を減少させ、さらに耐食性の劣化をもたらす元素なので、その上限を0.003mass%とした。特に、伸びフランジ性はS量に敏感なため、厳しい加工用途の場合には0.002mass%以下とすることが望ましい。また、詳細な機構は不明であるが、Sを0.003mass%以下まで低減することは、歪時効硬化特性を安定して高いレベルに維持するのに有効である。
【0029】
Al:0.02mass%以下
Alは、鋼の脱酸元素として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有用な元素であり、鋼の組織微細化のためにも添加が望ましい元素である。しかし本発明においては、Al含有量が多くなると固溶Nの顕著な低下につながり、本発明の目的である極めて大きな時効硬化特性を得ることが困難となる。そのため、Al含有量の上限は、従来鋼より低い0.02mass%とした。材質の安定性という観点からは、0.001〜0.015mass%含有されることが望ましい。なお、従来の知見では、Al添加量の低減は、結晶粒の粗大化につながる懸念があるが、本発明では、Mn等他の合金元素を適量添加することと、焼鈍条件を最適な範囲とすることでこれらの問題を有効に防止することができる。
【0030】
N:0.0050〜0.0250mass%
Nは、本発明において最も重要な添加元素の1つである。すなわち、適正範囲のNを添加して、製造条件を制御することにより、最終製品の状態で必要かつ十分な固溶状態のNを確保することが可能となり、固溶強化と歪時効硬化による降伏応力および引張強度の上昇効果が安定して得られる。また、Nは、鋼の変態点を低下させる効果があり、薄物材の圧延のように変態点以下での熱間圧延を避けたい場合には、Nの添加は有効である。このような効果は、0.0050mass%以上の添加によって安定して得られる。しかし0.0250mass%を超えて添加した場合には、連続鋳造時のスラブ割れなどの危険性が増加したり、ブローホールなどの内部欠陥の発生率が高くなったりするため、その上限は0.0250mass%とした。製造のし易さ、材質や品質の安定性という観点からは、0.0070〜0.0170mass%の範囲で含有させるのがより好ましい。なお、窒素は、本発明の範囲内で添加しても、アーク溶接、スポット溶接などの溶接性にはまったく影響はない。
【0031】
固溶状態のN:0.0030mass%以上
鋼板強度が十分に確保され、さらにNによる歪時効硬化が有効に発揮されるためには、固溶状態のNは0.0030mass%以上であることが必要である。ここで、本発明の固溶Nとは、鋼中の全N量から、電解抽出による溶解法で求めた析出Nを差し引いた値である。この方法を用いる理由は、析出Nの分析法について種々検討した結果、この電解抽出法による析出N量を用いて求めた固溶N量が最も材質の変化と対応したことに基づく。さらに大きな歪時効硬化によるYS、TSの増加が必要な場合には、固溶Nを0.0050mass%以上さらには0.0070mass%以上とすることが有効である。
【0032】
本発明に係る鋼板は、上記した成分に加え、さらに次のA群および/またはB群の成分を含有することが、下記の効果を得るために好ましい。
・A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
・B群:Nb、TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下
A群の元素は、固溶強化元素であり、単独あるいは複合で添加してもこれらの望ましい効果が相殺されることはない。これらの元素が含有されることで、本発明の重要な要件の一つである結晶粒径の均一微細化を達成しやすくなる。しかし、これら元素の添加により、製品としての鋼板強度が高まる反面、その副作用として熱間圧延での変形抵抗の増加が大きく、また、化成処理性を含む広義の表面処理特性が悪化する傾向があり、さらには、溶接部の硬化に起因し、溶接部の成形性の低下も起こる。そこで、これらの元素は、合計で1.0mass%以下に制限する。一方、B群の元素は、結晶粒を微細化する効果が顕著であるが、特にNとの親和力が強く、多量の添加は固溶Nの低下をもたらし、本発明が目指す大きな歪時効硬化特性を得ることができなくなる。そのため、これらの元素は合計で0.05mass%以下であれば添加することができる。なお、A群、B群の各元素を単独あるいは複合添加しても、あるいはA,B群にわたって複合添加しても、これらの望ましい効果は相殺されることはない。
【0033】
さらに、本発明において、特に伸びフランジ性が特に要求される場合には、Ca,REMを添加して介在物の形態制御を行うことも有効である。それらの添加量は、合計で0.0010〜0.010mass%とすることにより、表面欠陥の発生などを伴うことなく伸びフランジ性を改善することができる。なお、本発明では、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
【0034】
次に、本発明に係る鋼板の微細組織について説明する。
鋼板組織:ポリゴナルフェライト+25vol%以上のアシキュラフェライト
本発明の鋼板は、高い歪時効硬化特性に加えて、高延性、高r値等の高い加工性が要求される自動車用鋼板を主に対象としており、そのためには、延性を低下させる0.1μm以下の微細な炭化物、窒化物等は含まないフェライト単相組織(ポリゴナルフェライト)であることが望ましい。しかし、フェライト単相組織では、本発明が目的とする高強度を得ることができない。そこで、本発明では、広義のフェライト相であるアシキュラフェライトを25vol%以上含むものとする。このアシキュラフェライトは、本発明の組成のような極低炭素鋼に特有の、内部に炭化物を伴わない低温変態相で、内部の転位密度が高くてポリゴナルフェライトより硬質であり、高強度と優れた歪時効硬化特性を得るのに有利な組織である。なお、このアシキュラフェライトは、光学顕微鏡観察により通常のポリゴナルフェライトとは明確に区別することができる。一方、アシキュラフェライトは、25vol%を超えて含まれるようになると延性が低下しやすくなるため、上限は25vol%に制限することが好ましい。
【0035】
平均結晶粒径:10μm以下
鋼板組織を微細化することは、本発明においては極めて重要な要件である。その理由は、結晶粒が微細なほど、歪時効硬化に寄与するC,Nなどの元素を結晶粒界に多く貯えることができるため、室温時効劣化を有効に抑制しつつ、塗装・焼付時の歪時効硬化を発現することができるからである。このような効果は、平均結晶粒径を10μm以下とすることにより得ることができる。さらに大きな歪時効硬化を得るためには8μm以下の微細組織とすることが望ましい。なお、上記平均結晶粒径とは、組織を構成するアシキュラフェライト相およびポリゴナルフェライト相を含めた平均の結晶粒径である。
【0036】
次に、本発明に係る鋼板が有すべき好ましい機械的特性(引張特性、時効特性)について説明する。
全伸び
本発明の鋼板は、いわゆるフォーム成形を主体として、深絞り、張出しおよびそれらの複合成形により複雑な形状に成形される部品に使用される。それらの部品について必要とされる伸び特性について調査した結果、全伸びが30%以上であれば、ほとんどの部品に適用可能であることが明らかとなった。さらに広範囲に適用されるためには、全伸びが33%以上であることが好ましい。
【0037】
歪時効硬化特性
BH,ΔTSで表される歪時効硬化特性は、本発明の鋼板が有する重要な特性の一つであり、これらの特性値は、予歪の量と時効条件に大きく影響される。本発明では、上記歪時効硬化量(BH,ΔTS)の測定条件を、予歪量:5%、時効条件:170℃×20minとした。そして本発明の鋼板は、上記条件で測定した時のBHが80MPa以上、ΔTSが60MPa以上であることが好ましい。
【0038】
上記値に設定した理由は、多くの成形後の部品について平均歪量を測定したところ概ね5%であったこと、自動車用鋼板で通常おこなわれる時効条件は一般に100℃以上300℃以下で30sec以上20分以下であることが多く、またこの条件内であれば温度、時間による変化は小さく、再現性もあるからであり、そのため時効条件は、通常、塗装焼付処理条件として採用している170℃×20minとした。また、このような時効条件で、変形応力の増加量BHが80Mpa以上、引張強度の増加量ΔTSが60MPa以上であれば、成形部品の形状や加工歪量の大小にかかわらず、吸収エネルギーの顕著な増加が得られるからである。
【0039】
室温時効特性
高い歪時効硬化特性と並ぶ本発明の鋼板が有する特徴である室温での耐時効性は、40℃で6ヶ月の時効処理を施す前後の引張試験における全伸びの低下量ΔElを測定し評価する。この条件における延性の低下量ΔElが3%以下であれば、成形条件の最適化により割れ発生などの不具合発生を防止できるため、実用上、非時効であると判断できる。
【0040】
次に、本発明の鋼板を製造する条件について説明する。
本発明の鋼板の製造方法は、極低炭素−高Mn−高N鋼を素材とし、常法により冷延鋼板とした後、再結晶焼鈍をオーステナイト(γ)単相域またはフェライト(α)と50%以上のオーステナイトの共存域(α+γ)2相域で行った後、急冷し、25vol%以上のアシキュラフェライトとポリゴナルフェライトとからなる複合微細組織とする点に特徴がある。
【0041】
まず、鋼スラブの成分組成は、固溶状態のNを除き、上記鋼板の成分組成と同様とする。鋼スラブの製造方法は、成分のマクロな偏析を防止するためには連続鋳造法で製造することが望ましい。しかし、造塊法、薄スラブ鋳造法によって製造することも可能である。
【0042】
製造された鋼スラブは、いったん室温まで冷却し、その後再加熱する従来法に加えて、冷却せずに温片のまま加熱炉に装入する、あるいはわずかの保熱を行った後、直ちに圧延する直送圧延あるいは直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用することができる。特に固溶状態のNを有効に確保するためには、直送圧延を採用することが有効である。
【0043】
熱間圧延条件については、以下のように規定する。
スラブ加熱温度(SRT):1000℃以上
スラブを加熱してから熱間圧延する場合のスラブ加熱温度は、初期状態において固溶状態のNを確保するという観点から、下限温度は1000℃以上とする必要がある。上限温度は、材質特性面からは特に規制されないが、酸化ロスの増加による歩留り低下の点から1280℃以下とすることが望ましい。
【0044】
熱延仕上圧延温度(FDT):800℃以上
熱延仕上圧延温度は、800℃以上とすることにより、均一微細な熱延母板組織を得ることができる。しかし、仕上圧延温度が800℃を下回ると、加工組織が残留して鋼板組織が不均一となり、冷延、焼鈍後にも組織の不均一性が消えずに残るため、プレス成形時に種々の不具合を発生する可能性がある。また、この問題を回避するために、高温巻き取りを採用しても、逆に、粗大粒を発生して同様の不具合を招くほか、固溶N量も低下するため、目標とする340MPa以上の引張強度を得る事が難しくなる。従って、仕上圧延温度は800℃以上とする必要がある。さらに機械的性質を安定させるにためには820℃以上であることが望ましい。なお、仕上圧延温度を過度に高くした場合には、スケール疵等に起因した表面欠陥を引き起こすため、上限温度は1000℃以下とすることが好ましい。
【0045】
熱延巻取温度(CT):650℃以下
熱延巻取温度は、低温である程、鋼板強度、歪時効特性は上昇する傾向にある。車体の軽量化に寄与する十分に高い引張強度、歪時効硬化量を得るにためには、650℃以下の巻取温度とすることが必要である。下限は、材質上は厳しく限定はされないが、200℃を下回ると鋼板の形状が乱れ、また、材質の均一性も低下する傾向にあり望ましくない。従って、熱延巻取温度は200℃以上とすることが好ましい。高い材質均一性が要求される場合には、300℃以上とすることが望ましい。
【0046】
冷間圧延
冷間圧延は、常法に従って行えばよい。なお、冷間圧延の前に、通常行われている酸洗を行うことが好ましいが、極めて薄いスケールの状態であれば、酸洗を行わずに直接冷間圧延することも可能である。
【0047】
連続焼鈍
・焼鈍温度:γ分率 50%の温度〜950℃以下
冷間圧延後の再結晶焼鈍は、焼鈍中のオーステナイト相分率が50%以上となる温度で、連続焼鈍により行う必要がある。オーステナイト相の分率が50%以上となる(α+γ)2相域温度あるいはオーステナイト単層域温度にて焼鈍をおこない、その後、後述のように、20℃/sec以上で少なくとも500℃まで急冷することにより、アシキュラフェライトとポリゴナルフェライトからなる微細な結晶組織を形成することができ、室温時効劣化のない、加工性と歪時効硬化特性に優れた鋼板を製造することができる。一方、焼鈍温度が950℃を超えると、部分的に巨大な組織を含む不均一な組織となり結晶粒径を微細にすることができなくなる。そのため、焼鈍温度の上限は950℃以下に制限する。
【0048】
プロセス制御として、冷却中のある時点で残留しているγ量をモニタリングし、その結果に基づき焼鈍温度や冷却速度をフィードバック制御することは有効である。なお、上記焼鈍中にオーステナイト相の分率が50%となる温度は、例えば、連続焼鈍を模擬した焼鈍実験で、所定の温度まで昇温後、直ちに水槽中に焼入れた後、鋼板組織を観察することにより求めることができる。なお、本発明の鋼板は、Mnを1%以上含有しているためA1変態点が低下しており、比較的低い温度でもオーステナイト相の分率を50%以上とすることができる。
【0049】
・冷却速度:少なくとも500℃まで20℃/sec以上
焼鈍後の鋼板は、20℃/sec以上の冷却速度で500℃以下まで冷却することが必要である。20℃/sec未満の速度で冷却した場合には、組織の均一微細化が困難であり、また、歪時効硬化特性も低下する。これらの特性をさらに安定させるためには30℃/sec以上とすることが望ましい。また、上記急速冷却は、少なくとも500℃まで継続する必要がある。500℃以上の温度で急冷を中断した場合には、固溶N量が低減し、歪時効硬化特性が低下するため好ましくない。また、転位密度が低下し、目標とする高強度を得ることができない。
【0050】
めっき処理
上記冷延鋼板とした後、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっき等の各種めっき処理を施してもよい。めっきの種類としては、亜鉛めっき(合金、非合金)、アルミニウムめっき、亜鉛−アルミニウムめっき、錫めっき、クロムめっき、ニッケルめっき等、いずれも好ましく適用しうる。めっき条件は、常法に従って行えばよい。これらのめっき後の鋼板は、めっき前と同程度のTS、BH量、ΔTS量を示す。
【0051】
なお、溶融めっきを行う場合は、連続溶融めっきラインにて行うことが好ましい。この場合、溶融めっきに先だって行われる連続焼鈍の条件は、前述した連続焼鈍に準ずる必要がある。また、通常、連続溶融亜鉛めっきラインでは、一つのラインで焼鈍と溶融亜鉛めっきを連続して行うが、これらの処理を個別に行っても同様の製品を製造することができる。この際、溶融めっきを行う前に、ラインの入側で酸洗処理を施すことにより、最終製品のめっき密着性をより向上させることができる。
【0052】
調質圧延またはレベラー加工
連続焼鈍後あるいはめっき処理後の鋼板は、その後、形状の矯正、表面粗度を付与するために必要に応じて調質圧延(スキンパス圧延)あるいはレベラー加工を行うことができる。調質圧延を行う場合には、その圧下率は0.5%以上15%以下の範囲で行うのが好ましい。
【0053】
【実施例】
<実施例1>
表1に示した成分組成を有し、残部が実質的にFeからなる鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法にて鋼スラブとした後、この鋼スラブを表2に示す条件で熱間圧延、冷間圧延した後、さらに連続焼鈍ラインにて焼鈍と調質圧延を行い、冷延鋼板を製造した。また、一部の冷間圧延後の鋼板については、連続溶融亜鉛めっきラインにて焼鈍後、溶融亜鉛めっきし溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、上記焼鈍は、前記のような焼鈍実験によりオーステナイト分率が50〜55vol%となる温度を予め求めておき、この温度以上の温度で行った。このようにして製造した各種の鋼板について、微視組織、固溶N量、機械的性質および時効特性の調査を行った。ここで、固溶N量の分析は、前述した電解抽出法により行い、また、引張特性は圧延方向を引張方向とする JIS 5号試験片を使用し、歪時効硬化特性(BH,ΔTS)の測定は、5%予歪みで170℃×20minの時効条件で、室温時効性は、40℃×6ヶ月の時効条件で行った。微視組織は、鋼板の圧延方向に対し直角方向の断面を光学顕微鏡で観察し、各組織の分率(面積率)を求め、これを体積分率とした。また、平均結晶粒径は、鋼板の圧延方向に対し直角方向の断面を光学顕微鏡にて400倍で5視野観察し、JIS G 0552に規定された切断法に準じて算出した。
【0054】
上記測定の結果を、表3に示した。この表から、本発明の成分組成および製造条件を満たして製造されたNo.1〜15の鋼板は、いずれも鋼板組織中のアシキュラフェライトの分率が25vol%以上、平均結晶粒径が10μm以下、固溶N量0.0030mass%以上が得られており、その結果、引張強度が425〜490MPa、平均r値が1.4以上、さらにBH量が108〜125MPa、ΔTSが80〜95MPaという優れた加工性と大きな歪時効硬化特性を有し、かつΔEl≦1.0%と室温での時効劣化がほとんどない特性を有していることがわかる。一方、本発明の成分組成を満たさないNo.16〜20の鋼板は、いずれもアシキュラフェライト分率、平均結晶粒径または固溶N量のいずれか1つ以上が本発明の条件を満たさず、その結果、BH量が80MPa未満、ΔTSが60MPa未満でしかなく、しかもΔElも大きく、本発明鋼板と比較して劣っていることがわかる。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
<実施例2>
C:0.0045%、Si:0.01%、Mn:1.25%、P:0.005%、S:0.001%、Al:0.015%およびN:0.0125%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを素材とし、表4に示したように製造条件を幅広く変化させて冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板を製造し、実施例1と同様の項目について調査を行った。
【0059】
上記測定の結果を表5に示す。この表から、本発明の条件を満たして製造されたNo.21〜25の鋼板は、いずれも鋼板組織中のアシキュラフェライトの分率が25vol%以上、平均結晶粒径が10μm以下、固溶N量0.0030mass%以上が得られており、その結果、引張強度が459〜495MPa、平均r値が1.4以上、さらにBH量が113〜125MPa、ΔTSが68〜75MPaという優れた加工性と大きな歪時効硬化特性を有し、かつΔElが0%で、室温での時効劣化がほとんどない特性を有していることがわかる。一方、本発明の成分組成を満たさないNo.26〜30の鋼板は、いずれもアシキュラフェライト分率または平均結晶粒径のいずれか1つ以上が本発明の条件を満たさず、その結果、BH量が80MPa未満、ΔTSが60MPa未満でしかなく、しかもΔElも大きく、本発明鋼板と比較して劣っていることがわかる。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、成分組成、熱延条件および冷延後の焼鈍条件を適正化し、鋼板の微細組織をアシキュラフェライトとポリゴナルフェライトの複合組織としかつ固溶N量を十分確保することによって、優れた加工性と加工後の塗装・焼付による歪時効硬化によって十分な強度上昇が得られかつ室温時効劣化のない高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板を製造することができる。また、これらの鋼板を自動車車体の部品に適用することにより、車体の軽量化に大きく寄与することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工性と歪時効硬化特性に優れた高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板ならびにそれらの製造方法に関し、特に自動車用鋼板等として用いられる場合に、高強度化によって板厚の減少を導いて車体の軽量化に寄与することができる他、成形部品のより一層の信頼性向上を導いて安全性の向上にも寄与することができる鋼板、すなわち加工性と歪時効硬化特性に優れた引張強度(TS)が590MPa以下の高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板ならびにそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車の車体には、各種の薄鋼板が使用され、とくに成形性に優れた冷延鋼板が多く使われているが、最近、とくに高張力鋼板の使用量が増大している。その理由は、昨今の地球環境問題に由来する自動車の排気ガス規制などから、車体重量の軽減が求められているところ、高張力鋼板を採用すると、鋼板の薄肉化に寄与できるからである。
【0003】
しかし、単に高張力鋼板を用いれば足りるのではなく、例えば、自動車用部品を、降伏応力または引張強度の高い高強度鋼板からプレス成形する場合、次のような問題点があった。
1)降伏強度の上昇により、スプリングバック量が増加し、形状凍結性が低下する結果、ねじれ、ひねれ、反りなどの問題を生ずる。
2)鋼板の延性が低下し、成形時に割れやネッキングなどの不具合を生ずる。
3)単純に、高強度鋼板を適用して薄肉化を図った場合、剛性、耐デント性(局部的な圧縮荷重負荷により生ずる凹みに対する抵抗性)が低下する。
そして、これらの問題点は、自動車車体への高強度鋼板の適用を妨げるものである。
【0004】
こうした問題点を打開する方法として、例えば、自動車外板用の冷延鋼板においては、極低炭素鋼を素材とし、最終的に固溶状態で残存するC量を適正範囲に制御した鋼板を製造する技術が提案されている。この技術は、プレス成形後に行われる170℃×20min程度の塗装焼付工程で起こる歪時効による硬化現象を利用するものである。すなわち歪時効硬化現象を利用することにより、プレス成形時は軟質で、形状凍結性の低下を生ずることがなく、一方、成形後は、焼付けによる歪時効硬化によって部品としての強度や耐デント性を確保しようとするものである。
【0005】
しかし、固溶C量の増加によって硬化量を大きくした塗装焼付硬化型の冷延鋼板の場合、室温での時効劣化、すなわち時間の経過とともに顕著な降伏応力の増加と伸びの低下が生ずることが知られており、広範囲な適用は困難である。さらに、表面欠陥であるストレッチャーストレインを防止する必要性から、その強度上昇量は限られたものとなり、鋼板の薄肉化に寄与するところは小さいという難点がある。
【0006】
そこで、高加工性が要求される用途では、従来あまり積極的に利用されていなかった窒素を強化元素として活用し、この窒素の作用による大きな歪時効硬化現象を活用し、成形性の向上と成形後の高強度化とを両立させた技術が開示されている。例えば、特許文献1には、質量%で、C:0.0015〜0.025%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.08%以下、S:0.02%以下、Al:0.02%以下、Nb:0.002〜0.050%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0050〜0.0250%を含み、かつN/Alが0.3以上、固溶状態としてのNを0.0010%以上含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる組成と、面積率で5%以上のアシキュラフェライト相と平均結晶粒径:20μm以下のフェライト相から成る組織を有し、r値:1.3以上であることを特徴とする成形性、歪時効硬化特性および耐常温時効性に優れた高張力冷延鋼板が開示されている。
【0007】
上記技術は、鋼板素材を極低炭素鋼とした上で、NbおよびBを必須の元素として添加することにより、アシキュラフェライト相が5%以上存在したフェライト組織として、良好な延性と歪時効硬化性を付与するものである。また、この技術は、BH量が80MPa以上、△TSが40MPa以上という高い歪み時効硬化特性を得ることを可能としている。
【0008】
ここで上記BH量とは、引張試験片に5%の引張予歪を付与した後、170℃×20minの条件で時効処理を施したとき、この時効処理前後の変形応力の増加量、すなわちBH量=(時効処理後の降伏応力)−(時効処理前の予変形応力)を意味し、また、△TSとは、上記予歪+時効処理前後の引張強さの増加量、すなわち△TS=(時効処理後の引張強さ)−(予変形前の引張強さ)を意味するものである。
【0009】
【特許文献1】特開2002−206138
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に開示された鋼板が有する歪時効硬化特性は、実際の成形品に適用した場合、必ずしも十分な強度上昇をもたらすものではなく、また大きなばらつきが存在していた。そのため、信頼性が要求される強度部品への適用の障害となっていた。そこで、BH量や△TSそのものを高レベル化し、かつこれらを実使用した場合に歪時効硬化特性を安定して発現させることができる技術が望まれていた。
【0011】
また、上記技術では、NbとBの複合添加によりアシキュラフェライト相を得やすくしているが、その一方、フェライト相(α)とオーステナイト(γ)相が共存する温度域が高くなるため、アシキュラフェライト相を得るための焼鈍温度が高温化し、板厚が薄い冷延鋼板あるいはめっき鋼板を製造する場合には、微妙な張力制御が必要である等のため製造条件の調整が難しく、生産性や歩留りが悪いという問題があった。
【0012】
本発明の目的は、上記従来技術が抱える問題点を解決し、高い加工性を有するとともに歪時効硬化特性にも優れかつ室温での時効劣化も小さいという諸特性を満足する、主として自動車に用いられる高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板を提供するとともに、それらの鋼板を工業的に安定して製造できる技術を提案することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
さて、発明者は、上記の問題を解決するために種々の成分組成の鋼板を、種々の方法で製造し、多くに材質評価実験を行った。その結果、微視組織的にはアシキュラフェライトとポリゴナルフェライトが混合した複合組織とし、これらを微細な組織とすることが重要であることを知見した。また、従来、加工性が要求される材料にはあまり積極的に利用されていなかった窒素(N)を有効に活用するために、固溶状態のNを一定量以上確保し、それと自動車の塗装焼付あるいはさらに積極的に成形後熱処理とを結合させ大きな歪時効硬化現象を発現させることが有効であることを知見した。
【0014】
すなわち、本発明は、Al含有量を適正な範囲に制御し、さらに熱延、冷延および焼鈍条件を適正化して、微視組織を適正化し、適正量の固溶N量を確保することにより、従来の固溶強化型のC−Mn鋼や析出強化鋼に比べて、格段に優れた成形性(高r値、高延性)と歪時効硬化特性を有する鋼板を得ることに成功した。
【0015】
また、Nb,Bを複合添加したときに焼鈍温度が高温化する問題に対しては、Mnを1%を超えて含有せしめるとともに、その他成分を調整することにより、Nb,Bを必須とすることなく、アシキュラフェライト相とポリゴナルフェライト相からなる微細な結晶組織を得ることができることを見出し、しかも、BH量が80MPa以上、△TSが60MPa以上という優れた歪時効硬化特性と、伸びが30%以上、r値が1.3以上という優れた加工性を有し、しかも室温時効劣化のない鋼板が得られることを見出した。
【0016】
すなわち、上記知見に基づく本発明は、C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、N:0.0050〜0.025mass%、固溶状態としてのNを0.0030mass%以上含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、体積分率で25%以上のアシキュラフェライト相と残部がポリゴナルフェライト相からなると共に、平均結晶粒径が10μm以下である結晶組織を有することを特徴とする加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度冷延鋼板である。
【0017】
なお、本発明の上記高強度冷延鋼板は、上記成分組成に加えてさらに、下記A群および/またはB群を含む成分組成からなり、あるいはさらにCa,REMの1種または2種を合計で0.0010〜0.010mass%含む成分組成からなることが好ましい。
記
A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
B群:Nb,TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下
【0018】
また、本発明の鋼板は、上記冷延鋼板表面にさらにめっき層を有する高強度めっき鋼板とすることもできる。
【0019】
さらに、本発明は、C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、N:0.0050〜0.025mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1000℃以上に加熱した後、仕上圧延出側温度を800℃以上として熱間圧延を行い、650℃以下の温度で巻取った後、冷間圧延を行い、次いで950℃以下でかつオーステナイト相分率が50%以上となる温度で連続焼鈍し、20℃/sec以上の冷却速度で少なくとも500℃以下まで冷却することにより、固溶状態のNを0.0030mass%以上とし、体積分率で25%以上のアシキュラフェライト相と残部がポリゴナルフェライト相からなり、平均結晶粒径が10μm以下の結晶組織とすることを特徴とする加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法を提案する。
【0020】
なお、本発明の製造方法における上記鋼スラブは、上記成分組成に加えてさらに、下記A群および/またはB群を含む成分組成からなり、あるいはさらにCa,REMの1種または2種を合計で0.0010〜0.010mass%含む成分組成からなることが好ましい。
記
A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
B群:Nb,TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下
【0021】
また、本発明の他の製造方法によれば、上記冷却後の冷延鋼板表面にめっき処理を施すことにより、加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度めっき鋼板を得ることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
まず、本発明に係る鋼板について、その特徴、用途等について説明する。
本発明の鋼板は、原板の状態では引張強度(TS)が340〜590MPaと高強度鋼板としては比較的低い強度を有する反面、プレス成形後の熱処理(通常の塗装焼付処理あるいはさらに後熱処理)により、顕著に歪時効硬化することが特徴である。また一方で、室温時効劣化が実質的にないという特徴も有する。
【0023】
すなわち、本発明の鋼板は、成形時には軟質(低TS、低降伏比(YR))でかつ優れた延性と深絞り性(高r値)を有しているため、鋼板の単純な高強度化に伴って発生するプレス成形時のしわや割れの発生、形状凍結性の低下やねじれ等による形状不良等の問題を生ずることはない。しかも、本発明の鋼板は、大きな塗装焼付硬化特性(BH性)を有するため、成形後の熱処理により顕著に歪時効硬化し、高強度鋼板を適用したのと同等の部品強度が得られ、強度部品の薄肉化を容易に達成できる。なお、本発明は、高強度冷延鋼板のみならず、各種のめっき処理を施した高強度めっき鋼板にも適用することができる。
【0024】
続いて、本発明に係る鋼板の成分組成を限定した理由について説明する。
C:0.015mass%以下
Cは、高r値を得るためには低く制御する必要がある。特に、連続焼鈍法による本発明では、C含有量が0.015mass%を超えると、r値≧1.3の高r値を得ることができない。そのため、Cは0.015mass%以下に制限するが、より成形性の向上を求める場合には、Cは0.010mass%以下にするのが好ましい。一方、Cを低減し過ぎて0.001mass%未満となると、本発明の重要な要件である結晶組織の微細化が困難となり、これに伴い歪時効硬化特性も低下する。そのため、Cの含有量は、0.001〜0.010mass%の範囲とするのが好ましい。
【0025】
Si:0.5mass%以下
Siは、高強度と高延性を両立させるために有用な元素である。しかし、本発明では、固溶Nを確保し、高い歪時効硬化特性を得るために、添加量を0.5mass%以下に制限する必要がある。一方、Si添加量の下限値は、特に限定する必要がないが、脱珪(脱Si)コストの点から、0.005mass%程度とするのが望ましい。なお、例えば溶融めっきのようなめっき鋼板を対象とする場合には、不めっきを発生させないために、0.3mass%以下の添加量とするのが望ましい。
【0026】
Mn:1.0〜3.5mass%
Mnは、Sによる熱間割れを防止するのに有効な元素である。また、結晶粒を微細化する効果を有するため、本発明のような極低炭素鋼において、十分な結晶粒の微細化効果を得るためには、1.0mass%以上の添加が必要である。また、Mnは、固溶Nを安定して確保するという観点からも添加することが望ましい。さらに、Mnは、冷延製品の高強度化に有効であるが、熱間圧延時の変形抵抗を高める効果は小さいため、工業的に安定して製造するのに有利な元素である。以上の観点からMnの添加量は、1.0mass%以上とする。なお、Mnの添加量をさらに高めることで、熱延条件の変動に対する鋼板の機械的性質とくに歪時効硬化特性の感受性が改善されるという利点があるため、1.2mass%以上の添加が望ましい。しかし、Mnを過度に添加すると、鋼板の強度が増加する反面、r値が低下する傾向があり好ましくない。さらに、フェライトの生成が抑制されるため、延性が低下するという問題がある。そのため、Mnの添加量の上限は3.5mass%とした。より良好な耐食性と成形性が求められる用途では、3.0mass%以下が望ましい。
【0027】
P:0.10mass%以下
Pは、固溶強化に有効な元素であるが、過度に含有する場合には、鋼を脆化させ、さらに鋼板の伸びフランジ性を低下させる。また、鋼中において偏析する傾向が強いため、それに起因した溶接部の脆化をもたらし好ましくない。さらに、Pの含有量が0.10mass%を超えると、鋼板の室温における耐時効性が低下する傾向にある。以上のことから、その上限を0.10mass%とした。これらの特性の低下が特に問題となる場合には、Pは0.03mass%以下とするのが好ましく、より好ましくは0.005mass%以下である。
【0028】
S:0.003mass%以下
Sは、鋼中に介在物として存在し、鋼板の延性を減少させ、さらに耐食性の劣化をもたらす元素なので、その上限を0.003mass%とした。特に、伸びフランジ性はS量に敏感なため、厳しい加工用途の場合には0.002mass%以下とすることが望ましい。また、詳細な機構は不明であるが、Sを0.003mass%以下まで低減することは、歪時効硬化特性を安定して高いレベルに維持するのに有効である。
【0029】
Al:0.02mass%以下
Alは、鋼の脱酸元素として添加され、鋼の清浄度を向上させるのに有用な元素であり、鋼の組織微細化のためにも添加が望ましい元素である。しかし本発明においては、Al含有量が多くなると固溶Nの顕著な低下につながり、本発明の目的である極めて大きな時効硬化特性を得ることが困難となる。そのため、Al含有量の上限は、従来鋼より低い0.02mass%とした。材質の安定性という観点からは、0.001〜0.015mass%含有されることが望ましい。なお、従来の知見では、Al添加量の低減は、結晶粒の粗大化につながる懸念があるが、本発明では、Mn等他の合金元素を適量添加することと、焼鈍条件を最適な範囲とすることでこれらの問題を有効に防止することができる。
【0030】
N:0.0050〜0.0250mass%
Nは、本発明において最も重要な添加元素の1つである。すなわち、適正範囲のNを添加して、製造条件を制御することにより、最終製品の状態で必要かつ十分な固溶状態のNを確保することが可能となり、固溶強化と歪時効硬化による降伏応力および引張強度の上昇効果が安定して得られる。また、Nは、鋼の変態点を低下させる効果があり、薄物材の圧延のように変態点以下での熱間圧延を避けたい場合には、Nの添加は有効である。このような効果は、0.0050mass%以上の添加によって安定して得られる。しかし0.0250mass%を超えて添加した場合には、連続鋳造時のスラブ割れなどの危険性が増加したり、ブローホールなどの内部欠陥の発生率が高くなったりするため、その上限は0.0250mass%とした。製造のし易さ、材質や品質の安定性という観点からは、0.0070〜0.0170mass%の範囲で含有させるのがより好ましい。なお、窒素は、本発明の範囲内で添加しても、アーク溶接、スポット溶接などの溶接性にはまったく影響はない。
【0031】
固溶状態のN:0.0030mass%以上
鋼板強度が十分に確保され、さらにNによる歪時効硬化が有効に発揮されるためには、固溶状態のNは0.0030mass%以上であることが必要である。ここで、本発明の固溶Nとは、鋼中の全N量から、電解抽出による溶解法で求めた析出Nを差し引いた値である。この方法を用いる理由は、析出Nの分析法について種々検討した結果、この電解抽出法による析出N量を用いて求めた固溶N量が最も材質の変化と対応したことに基づく。さらに大きな歪時効硬化によるYS、TSの増加が必要な場合には、固溶Nを0.0050mass%以上さらには0.0070mass%以上とすることが有効である。
【0032】
本発明に係る鋼板は、上記した成分に加え、さらに次のA群および/またはB群の成分を含有することが、下記の効果を得るために好ましい。
・A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
・B群:Nb、TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下
A群の元素は、固溶強化元素であり、単独あるいは複合で添加してもこれらの望ましい効果が相殺されることはない。これらの元素が含有されることで、本発明の重要な要件の一つである結晶粒径の均一微細化を達成しやすくなる。しかし、これら元素の添加により、製品としての鋼板強度が高まる反面、その副作用として熱間圧延での変形抵抗の増加が大きく、また、化成処理性を含む広義の表面処理特性が悪化する傾向があり、さらには、溶接部の硬化に起因し、溶接部の成形性の低下も起こる。そこで、これらの元素は、合計で1.0mass%以下に制限する。一方、B群の元素は、結晶粒を微細化する効果が顕著であるが、特にNとの親和力が強く、多量の添加は固溶Nの低下をもたらし、本発明が目指す大きな歪時効硬化特性を得ることができなくなる。そのため、これらの元素は合計で0.05mass%以下であれば添加することができる。なお、A群、B群の各元素を単独あるいは複合添加しても、あるいはA,B群にわたって複合添加しても、これらの望ましい効果は相殺されることはない。
【0033】
さらに、本発明において、特に伸びフランジ性が特に要求される場合には、Ca,REMを添加して介在物の形態制御を行うことも有効である。それらの添加量は、合計で0.0010〜0.010mass%とすることにより、表面欠陥の発生などを伴うことなく伸びフランジ性を改善することができる。なお、本発明では、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。
【0034】
次に、本発明に係る鋼板の微細組織について説明する。
鋼板組織:ポリゴナルフェライト+25vol%以上のアシキュラフェライト
本発明の鋼板は、高い歪時効硬化特性に加えて、高延性、高r値等の高い加工性が要求される自動車用鋼板を主に対象としており、そのためには、延性を低下させる0.1μm以下の微細な炭化物、窒化物等は含まないフェライト単相組織(ポリゴナルフェライト)であることが望ましい。しかし、フェライト単相組織では、本発明が目的とする高強度を得ることができない。そこで、本発明では、広義のフェライト相であるアシキュラフェライトを25vol%以上含むものとする。このアシキュラフェライトは、本発明の組成のような極低炭素鋼に特有の、内部に炭化物を伴わない低温変態相で、内部の転位密度が高くてポリゴナルフェライトより硬質であり、高強度と優れた歪時効硬化特性を得るのに有利な組織である。なお、このアシキュラフェライトは、光学顕微鏡観察により通常のポリゴナルフェライトとは明確に区別することができる。一方、アシキュラフェライトは、25vol%を超えて含まれるようになると延性が低下しやすくなるため、上限は25vol%に制限することが好ましい。
【0035】
平均結晶粒径:10μm以下
鋼板組織を微細化することは、本発明においては極めて重要な要件である。その理由は、結晶粒が微細なほど、歪時効硬化に寄与するC,Nなどの元素を結晶粒界に多く貯えることができるため、室温時効劣化を有効に抑制しつつ、塗装・焼付時の歪時効硬化を発現することができるからである。このような効果は、平均結晶粒径を10μm以下とすることにより得ることができる。さらに大きな歪時効硬化を得るためには8μm以下の微細組織とすることが望ましい。なお、上記平均結晶粒径とは、組織を構成するアシキュラフェライト相およびポリゴナルフェライト相を含めた平均の結晶粒径である。
【0036】
次に、本発明に係る鋼板が有すべき好ましい機械的特性(引張特性、時効特性)について説明する。
全伸び
本発明の鋼板は、いわゆるフォーム成形を主体として、深絞り、張出しおよびそれらの複合成形により複雑な形状に成形される部品に使用される。それらの部品について必要とされる伸び特性について調査した結果、全伸びが30%以上であれば、ほとんどの部品に適用可能であることが明らかとなった。さらに広範囲に適用されるためには、全伸びが33%以上であることが好ましい。
【0037】
歪時効硬化特性
BH,ΔTSで表される歪時効硬化特性は、本発明の鋼板が有する重要な特性の一つであり、これらの特性値は、予歪の量と時効条件に大きく影響される。本発明では、上記歪時効硬化量(BH,ΔTS)の測定条件を、予歪量:5%、時効条件:170℃×20minとした。そして本発明の鋼板は、上記条件で測定した時のBHが80MPa以上、ΔTSが60MPa以上であることが好ましい。
【0038】
上記値に設定した理由は、多くの成形後の部品について平均歪量を測定したところ概ね5%であったこと、自動車用鋼板で通常おこなわれる時効条件は一般に100℃以上300℃以下で30sec以上20分以下であることが多く、またこの条件内であれば温度、時間による変化は小さく、再現性もあるからであり、そのため時効条件は、通常、塗装焼付処理条件として採用している170℃×20minとした。また、このような時効条件で、変形応力の増加量BHが80Mpa以上、引張強度の増加量ΔTSが60MPa以上であれば、成形部品の形状や加工歪量の大小にかかわらず、吸収エネルギーの顕著な増加が得られるからである。
【0039】
室温時効特性
高い歪時効硬化特性と並ぶ本発明の鋼板が有する特徴である室温での耐時効性は、40℃で6ヶ月の時効処理を施す前後の引張試験における全伸びの低下量ΔElを測定し評価する。この条件における延性の低下量ΔElが3%以下であれば、成形条件の最適化により割れ発生などの不具合発生を防止できるため、実用上、非時効であると判断できる。
【0040】
次に、本発明の鋼板を製造する条件について説明する。
本発明の鋼板の製造方法は、極低炭素−高Mn−高N鋼を素材とし、常法により冷延鋼板とした後、再結晶焼鈍をオーステナイト(γ)単相域またはフェライト(α)と50%以上のオーステナイトの共存域(α+γ)2相域で行った後、急冷し、25vol%以上のアシキュラフェライトとポリゴナルフェライトとからなる複合微細組織とする点に特徴がある。
【0041】
まず、鋼スラブの成分組成は、固溶状態のNを除き、上記鋼板の成分組成と同様とする。鋼スラブの製造方法は、成分のマクロな偏析を防止するためには連続鋳造法で製造することが望ましい。しかし、造塊法、薄スラブ鋳造法によって製造することも可能である。
【0042】
製造された鋼スラブは、いったん室温まで冷却し、その後再加熱する従来法に加えて、冷却せずに温片のまま加熱炉に装入する、あるいはわずかの保熱を行った後、直ちに圧延する直送圧延あるいは直接圧延などの省エネルギープロセスも問題なく適用することができる。特に固溶状態のNを有効に確保するためには、直送圧延を採用することが有効である。
【0043】
熱間圧延条件については、以下のように規定する。
スラブ加熱温度(SRT):1000℃以上
スラブを加熱してから熱間圧延する場合のスラブ加熱温度は、初期状態において固溶状態のNを確保するという観点から、下限温度は1000℃以上とする必要がある。上限温度は、材質特性面からは特に規制されないが、酸化ロスの増加による歩留り低下の点から1280℃以下とすることが望ましい。
【0044】
熱延仕上圧延温度(FDT):800℃以上
熱延仕上圧延温度は、800℃以上とすることにより、均一微細な熱延母板組織を得ることができる。しかし、仕上圧延温度が800℃を下回ると、加工組織が残留して鋼板組織が不均一となり、冷延、焼鈍後にも組織の不均一性が消えずに残るため、プレス成形時に種々の不具合を発生する可能性がある。また、この問題を回避するために、高温巻き取りを採用しても、逆に、粗大粒を発生して同様の不具合を招くほか、固溶N量も低下するため、目標とする340MPa以上の引張強度を得る事が難しくなる。従って、仕上圧延温度は800℃以上とする必要がある。さらに機械的性質を安定させるにためには820℃以上であることが望ましい。なお、仕上圧延温度を過度に高くした場合には、スケール疵等に起因した表面欠陥を引き起こすため、上限温度は1000℃以下とすることが好ましい。
【0045】
熱延巻取温度(CT):650℃以下
熱延巻取温度は、低温である程、鋼板強度、歪時効特性は上昇する傾向にある。車体の軽量化に寄与する十分に高い引張強度、歪時効硬化量を得るにためには、650℃以下の巻取温度とすることが必要である。下限は、材質上は厳しく限定はされないが、200℃を下回ると鋼板の形状が乱れ、また、材質の均一性も低下する傾向にあり望ましくない。従って、熱延巻取温度は200℃以上とすることが好ましい。高い材質均一性が要求される場合には、300℃以上とすることが望ましい。
【0046】
冷間圧延
冷間圧延は、常法に従って行えばよい。なお、冷間圧延の前に、通常行われている酸洗を行うことが好ましいが、極めて薄いスケールの状態であれば、酸洗を行わずに直接冷間圧延することも可能である。
【0047】
連続焼鈍
・焼鈍温度:γ分率 50%の温度〜950℃以下
冷間圧延後の再結晶焼鈍は、焼鈍中のオーステナイト相分率が50%以上となる温度で、連続焼鈍により行う必要がある。オーステナイト相の分率が50%以上となる(α+γ)2相域温度あるいはオーステナイト単層域温度にて焼鈍をおこない、その後、後述のように、20℃/sec以上で少なくとも500℃まで急冷することにより、アシキュラフェライトとポリゴナルフェライトからなる微細な結晶組織を形成することができ、室温時効劣化のない、加工性と歪時効硬化特性に優れた鋼板を製造することができる。一方、焼鈍温度が950℃を超えると、部分的に巨大な組織を含む不均一な組織となり結晶粒径を微細にすることができなくなる。そのため、焼鈍温度の上限は950℃以下に制限する。
【0048】
プロセス制御として、冷却中のある時点で残留しているγ量をモニタリングし、その結果に基づき焼鈍温度や冷却速度をフィードバック制御することは有効である。なお、上記焼鈍中にオーステナイト相の分率が50%となる温度は、例えば、連続焼鈍を模擬した焼鈍実験で、所定の温度まで昇温後、直ちに水槽中に焼入れた後、鋼板組織を観察することにより求めることができる。なお、本発明の鋼板は、Mnを1%以上含有しているためA1変態点が低下しており、比較的低い温度でもオーステナイト相の分率を50%以上とすることができる。
【0049】
・冷却速度:少なくとも500℃まで20℃/sec以上
焼鈍後の鋼板は、20℃/sec以上の冷却速度で500℃以下まで冷却することが必要である。20℃/sec未満の速度で冷却した場合には、組織の均一微細化が困難であり、また、歪時効硬化特性も低下する。これらの特性をさらに安定させるためには30℃/sec以上とすることが望ましい。また、上記急速冷却は、少なくとも500℃まで継続する必要がある。500℃以上の温度で急冷を中断した場合には、固溶N量が低減し、歪時効硬化特性が低下するため好ましくない。また、転位密度が低下し、目標とする高強度を得ることができない。
【0050】
めっき処理
上記冷延鋼板とした後、溶融めっき、電気めっき、蒸着めっき等の各種めっき処理を施してもよい。めっきの種類としては、亜鉛めっき(合金、非合金)、アルミニウムめっき、亜鉛−アルミニウムめっき、錫めっき、クロムめっき、ニッケルめっき等、いずれも好ましく適用しうる。めっき条件は、常法に従って行えばよい。これらのめっき後の鋼板は、めっき前と同程度のTS、BH量、ΔTS量を示す。
【0051】
なお、溶融めっきを行う場合は、連続溶融めっきラインにて行うことが好ましい。この場合、溶融めっきに先だって行われる連続焼鈍の条件は、前述した連続焼鈍に準ずる必要がある。また、通常、連続溶融亜鉛めっきラインでは、一つのラインで焼鈍と溶融亜鉛めっきを連続して行うが、これらの処理を個別に行っても同様の製品を製造することができる。この際、溶融めっきを行う前に、ラインの入側で酸洗処理を施すことにより、最終製品のめっき密着性をより向上させることができる。
【0052】
調質圧延またはレベラー加工
連続焼鈍後あるいはめっき処理後の鋼板は、その後、形状の矯正、表面粗度を付与するために必要に応じて調質圧延(スキンパス圧延)あるいはレベラー加工を行うことができる。調質圧延を行う場合には、その圧下率は0.5%以上15%以下の範囲で行うのが好ましい。
【0053】
【実施例】
<実施例1>
表1に示した成分組成を有し、残部が実質的にFeからなる鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法にて鋼スラブとした後、この鋼スラブを表2に示す条件で熱間圧延、冷間圧延した後、さらに連続焼鈍ラインにて焼鈍と調質圧延を行い、冷延鋼板を製造した。また、一部の冷間圧延後の鋼板については、連続溶融亜鉛めっきラインにて焼鈍後、溶融亜鉛めっきし溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。なお、上記焼鈍は、前記のような焼鈍実験によりオーステナイト分率が50〜55vol%となる温度を予め求めておき、この温度以上の温度で行った。このようにして製造した各種の鋼板について、微視組織、固溶N量、機械的性質および時効特性の調査を行った。ここで、固溶N量の分析は、前述した電解抽出法により行い、また、引張特性は圧延方向を引張方向とする JIS 5号試験片を使用し、歪時効硬化特性(BH,ΔTS)の測定は、5%予歪みで170℃×20minの時効条件で、室温時効性は、40℃×6ヶ月の時効条件で行った。微視組織は、鋼板の圧延方向に対し直角方向の断面を光学顕微鏡で観察し、各組織の分率(面積率)を求め、これを体積分率とした。また、平均結晶粒径は、鋼板の圧延方向に対し直角方向の断面を光学顕微鏡にて400倍で5視野観察し、JIS G 0552に規定された切断法に準じて算出した。
【0054】
上記測定の結果を、表3に示した。この表から、本発明の成分組成および製造条件を満たして製造されたNo.1〜15の鋼板は、いずれも鋼板組織中のアシキュラフェライトの分率が25vol%以上、平均結晶粒径が10μm以下、固溶N量0.0030mass%以上が得られており、その結果、引張強度が425〜490MPa、平均r値が1.4以上、さらにBH量が108〜125MPa、ΔTSが80〜95MPaという優れた加工性と大きな歪時効硬化特性を有し、かつΔEl≦1.0%と室温での時効劣化がほとんどない特性を有していることがわかる。一方、本発明の成分組成を満たさないNo.16〜20の鋼板は、いずれもアシキュラフェライト分率、平均結晶粒径または固溶N量のいずれか1つ以上が本発明の条件を満たさず、その結果、BH量が80MPa未満、ΔTSが60MPa未満でしかなく、しかもΔElも大きく、本発明鋼板と比較して劣っていることがわかる。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
<実施例2>
C:0.0045%、Si:0.01%、Mn:1.25%、P:0.005%、S:0.001%、Al:0.015%およびN:0.0125%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを素材とし、表4に示したように製造条件を幅広く変化させて冷延鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板を製造し、実施例1と同様の項目について調査を行った。
【0059】
上記測定の結果を表5に示す。この表から、本発明の条件を満たして製造されたNo.21〜25の鋼板は、いずれも鋼板組織中のアシキュラフェライトの分率が25vol%以上、平均結晶粒径が10μm以下、固溶N量0.0030mass%以上が得られており、その結果、引張強度が459〜495MPa、平均r値が1.4以上、さらにBH量が113〜125MPa、ΔTSが68〜75MPaという優れた加工性と大きな歪時効硬化特性を有し、かつΔElが0%で、室温での時効劣化がほとんどない特性を有していることがわかる。一方、本発明の成分組成を満たさないNo.26〜30の鋼板は、いずれもアシキュラフェライト分率または平均結晶粒径のいずれか1つ以上が本発明の条件を満たさず、その結果、BH量が80MPa未満、ΔTSが60MPa未満でしかなく、しかもΔElも大きく、本発明鋼板と比較して劣っていることがわかる。
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、成分組成、熱延条件および冷延後の焼鈍条件を適正化し、鋼板の微細組織をアシキュラフェライトとポリゴナルフェライトの複合組織としかつ固溶N量を十分確保することによって、優れた加工性と加工後の塗装・焼付による歪時効硬化によって十分な強度上昇が得られかつ室温時効劣化のない高強度冷延鋼板および高強度めっき鋼板を製造することができる。また、これらの鋼板を自動車車体の部品に適用することにより、車体の軽量化に大きく寄与することができる。
Claims (8)
- C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、
Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、
S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、
N:0.0050〜0.025mass%、
固溶状態としてのNを0.0030mass%以上含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、体積分率で25%以上のアシキュラフェライト相と残部がポリゴナルフェライト相からなると共に、平均結晶粒径が10μm以下である結晶組織を有することを特徴とする加工性と歪時効硬化特性に優れる高強度冷延鋼板。 - 上記成分組成に加えてさらに、下記A群および/またはB群を含む成分組成からなることを特徴とする請求項1に記載の高強度冷延鋼板。
記
A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
B群:Nb,TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下 - 上記成分組成に加えてさらに、Ca,REMの1種または2種を合計で0.0010〜0.010mass%含む成分組成からなることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度冷延鋼板。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼板表面にめっき層を有することを特徴とする高強度めっき鋼板。
- C:0.015mass%以下、Si:0.5mass%以下、
Mn:1.0〜3.5mass%、P:0.10mass%以下、
S:0.003mass%以下、Al:0.02mass%以下、
N:0.0050〜0.025mass%、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブを、1000℃以上に加熱した後、仕上圧延出側温度を800℃以上として熱間圧延を行い、650℃以下の温度で巻取った後、冷間圧延を行い、次いで950℃以下でかつオーステナイト相分率が50%以上となる温度で連続焼鈍し、20℃/sec以上の冷却速度で少なくとも500℃まで冷却することを特徴とする加工性および歪時効硬化特性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。 - 鋼スラブが、上記成分組成に加えてさらに、下記A群および/またはB群を含む成分組成からなることを特徴とする請求項5に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
記
A群:Cu,Ni,CrおよびMoのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で1.0mass%以下
B群:Nb,TiおよびVのうちから選ばれるいずれか1種または2種以上を合計で0.05mass%以下 - 上記成分組成に加えてさらに、Ca,REMの1種または2種を合計で0.0010〜0.010mass%含む成分組成からなることを特徴とする請求項5または6に記載の高強度冷延鋼板の製造方法。
- 請求項5〜7のいずれか1項に記載の製造方法において、冷却後の鋼板表面にめっき処理を施すことを特徴とする高強度めっき鋼板の製造方法。
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