JP2004216951A - 電動パワーステアリング装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】電流制御系の電流周波数特性をモータ・駆動回路系本来の特性に近づけることにより応答性を向上させた電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】電動パワーステアリング装置において、目標電流値と実電流値との偏差を算出し、その偏差に基づいてPI制御部15が電圧指令値を生成する。このPI制御部15は、モータのインダクタンスL、モータの内部抵抗R、配線および駆動回路等の外部抵抗R’に基づき設計される。この時、PI制御部15の伝達関数は、G(s)=2πf(Ls+R+R’)/sとする。ここで、fはPI制御部のPIゲイン、sはラプラス演算子である。そして2πf=(R+R’)/Lと設定すると、電流制御系の伝達関数はモータ・駆動回路系の伝達関数と同じ特性を持つようになるため、応答性が向上して所望のトルク周波数特性が得られる。
【選択図】 図9

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、比例積分制御(PI制御)によりモータに流れる電流を制御する電動パワーステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、電動パワーステアリング装置において、操舵トルクの大きさに応じた電流をモータに流すための電流制御が行われている。この電動パワーステアリング装置には、操舵のための操作手段であるハンドルに加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサが設けられており、そのトルクセンサで検出される操舵トルクに基づきモータに流すべき電流の目標値(以下「目標電流値」という)が設定される。また、この目標電流値とモータに実際に流れる電流の量(以下「実電流値」という)との偏差に基づき、モータの駆動手段に与えるべき指令値を比例積分演算により生成するPI制御部が設けられている。
【0003】
電流制御としては、前記のような、目標電流値と実電流値との偏差を算出し、その偏差に基づいた比例積分演算を行う比例積分制御(以下「PI制御」という)が一般的である。該比例積分制御により、モータに流す電流の指令値がモータ駆動回路に与えられ、その指令値に基づいて、モータ駆動回路がモータに電圧を印加している(以下、モータ駆動回路とモータとをひとつの伝達要素とみなしたものを「モータ・駆動回路系」という)。
【0004】
ところで、電流制御系において応答性を向上させるためには、PI制御部のゲイン(以下「PIゲイン」という)を高めることが一般的に行われている。しかし、PIゲインを高めるにしたがってシステム全体の安定性が低下する。そのため、実用的な安定性が得られる範囲までPIゲインを低くして、応答性が低下する周波数帯域については、位相補償器や慣性補償器を設けることにより応答性の低下の度合いを低減している。
【0005】
また、特開2001−61292号公報では、目標電流値と実電流値との偏差に修正ゲインを乗じるモデル誤差修正手段を設け、その修正ゲインを十分に大きくすることにより一定の電流応答を実現する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−61292号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
電流制御系の特性を調べるために、電流制御系への入力を目標電流値とし、電流制御系からの出力を実電流値とした場合の周波数の違いによるゲインと位相の変化を測定することが一般に行われている(以下、電流制御系への入力を目標電流値とし、電流制御系からの出力を実電流値とした場合の周波数の違いによるゲインと位相の変化のことを「電流周波数特性」という)。上記のような従来の方法で電流制御系を設計した場合、モータ・駆動回路系本来の電流周波数特性が得られておらず、実用的な周波数帯域において応答性が十分ではない。そのため、例えば以下のような問題点がある。
【0008】
操舵トルクに対して得られるトルクの大きさの周波数の違いによる変化のことをトルク周波数特性というが、操舵トルクの大きさに応じた所望のトルク周波数特性が得られない。所望のトルク周波数特性が得られた場合でも、例えば、外乱の多い路面の走行時や、不感帯とアシスト域の境界付近の操舵時には、頻繁に変化する目標電流値に対して実電流値が追従しないことからハンドルがふらつく。また、実用的な周波数帯域において、モータ単体のトルクリップルの補償のための補償値を目標電流値に対して加算する場合にも当該目標電流値に対して実電流値が追従しないことからその補償を十分に行うことができない。
【0009】
そこで本発明では、電流制御系の設計を見直すことにより、実用的な周波数帯域において電流制御系の電流周波数特性がモータ・駆動回路系本来の電流周波数特性に近づけられた電動パワーステアリング装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
第1の発明は、車両操舵のための操作に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
前記操作に応じて前記電動モータに供給すべき電流の目標値を設定する目標電流設定手段と、
前記電流目標値と前記電動モータに実際に流れる電流の値との偏差に基づく比例積分制御演算により、前記電動モータに対するフィードバック制御のための指令値を生成する比例積分制御手段と、
前記指令値に応じて前記電動モータを駆動するモータ駆動回路とを備え、
前記比例積分制御手段の制御パラメータは、前記電動モータのインダクタンスと、前記電動モータの内部抵抗と、前記電動モータおよび前記モータ駆動回路の配線抵抗を含む外部抵抗とに基づき設定されることを特徴とする。
【0011】
このような第1の発明によれば、比例積分制御手段の制御パラメータが外部抵抗を考慮して設定されることにより、電流制御系の電流周波数特性をモータ・駆動回路系本来の電流周波数特性に近づけ、十分な応答性を確保することができる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
前記比例積分制御手段の伝達関数をω(τ・s+1)/sとおいた場合における前記比例積分制御手段の第1の制御パラメータであるτは、前記電動モータと前記モータ駆動回路とを含む1次遅れ要素であるモータ・駆動回路系の時定数に相当する値に設定されていることを特徴とする。
【0013】
このような第2の発明によれば、比例積分制御手段の第1の制御パラメータτは1次遅れ系であるモータ・駆動回路系の時定数に等しいので、電流制御系(閉ループ伝達関数)は一次遅れ系となる。これより、電流制御系の電流周波数特性はモータ・駆動回路系本来の電流周波数特性に近づき十分な応答性の確保が可能となる。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、
前記比例積分制御手段の第2の制御パラメータであるωは、前記比例積分制御手段と前記モータ駆動回路と前記電動モータとを含む電流制御系の閉ループ伝達関数に相当する1次遅れ要素の時定数が前記モータ・駆動回路系の時定数に等しくなるように設定されていることを特徴とする。
【0015】
このような第3の発明によれば、電流制御系の閉ループ伝達関数に相当する1次遅れ要素の時定数がモータ・駆動回路系の時定数に等しくなるので、電流制御系は、モータ・駆動回路系本来の電流周波数特性と同様の特性を有するようになる。
【0016】
【発明の実施の形態】
<1.基礎検討>
従来技術による電流制御系の課題を解決するにあたり、従来技術で問題が生じる原因を究明するために、まず基礎的な検討を行った。以下、本発明の実施形態を説明する前に、この基礎検討について添付図面を参照しつつ説明する。
【0017】
まず、モータ・駆動回路系の特性について説明する。図1は、モータ・駆動回路系に所定の信号を入力した場合の入力に対する出力のゲインと位相とを示すボード線図である。図1に示されるように、モータ・駆動回路系の折点周波数は約57Hzであり、折点周波数での位相の遅れは45度である。また、周波数に対する位相の遅れは、以下のようになっていることがわかる。例えば、周波数が10Hzのときは位相の遅れが約10度、周波数が20Hzのときは位相の遅れが約20度、周波数が100Hzのときは位相の遅れが約60度である。
【0018】
次に、電流制御系の特性について説明する。従来、PI制御部は、伝達関数G(s)が次式(1)となるように設計されていた。
(s)=2πf(Ls+R)/s ・・・(1)
ただし、fはPIゲイン、Lはモータのインダクタンス、sはラプラス変換に基づく変数であって微分演算子に相当する演算子(以下「ラプラス演算子」と略する)、Rはモータの内部抵抗である。なお、PI制御部の伝達関数が上記式(1)で示すように設定された場合、電流制御系全体は上記PIゲインfを折点周波数とする一次遅れ要素となる(ただし、後述の外部抵抗R’は無視するものとする)。
【0019】
図2は、PI制御部の伝達関数が上記G(s)となるように設計した従来構成における電流制御系のゲイン特性を示す電流周波数特性図である。図3は、前記従来構成における電流制御系の位相特性を示す電流周波数特性図である。図2に示されるように、PIゲインfが低いときよりもPIゲインfが高いときの方が、電流制御系のゲインが高いことがわかる。また図3に示されるように、PIゲインfが低いときよりもPIゲインfが高いときの方が、電流制御系の位相の遅れが小さいことがわかる。
【0020】
図3においてf=100Hzのときの位相特性を見ると、周波数が10Hzのときは位相の遅れが約10度、周波数が20Hzのときは位相の遅れが約20度、周波数が約60Hzのときは位相の遅れが45度である。ここで、このf=100Hzの位相特性が、図1に示されるモータ・駆動回路系の位相特性と近い特性を示しており、fが100Hzより小さくなると、fが100Hzのときよりも位相の遅れが大きくなることがわかる。以上のように、図1と図2および図3とを比較すると、電流制御系の電流周波数特性が、PIゲインを高くするにしたがって、モータ・駆動回路系の電流周波数特性に近づくと言える。しかし、PIゲインを25Hzから100Hzまで高くするにしたがって、周波数の変化に対するゲイン特性および位相特性の改善があまり見られなくなることがわかる。これは、PIゲインを高くしてもモータの性能が追従しなくなるためである。また、従来構成における電流制御系では、f=100Hzの場合にモータ・駆動回路系の位相特性と近い特性が得られ、fが100Hz以下になると位相の遅れが大きくなることから、モータ・駆動回路系の折点周波数である57Hzよりも低い周波数帯域で位相が遅れていることがわかる。
【0021】
上記のように、電流制御系の電流周波数特性とモータ・駆動回路系の電流周波数特性とは差異がある。その原因を究明するため、まず、電流制御系の設計を見直すことにした。電流制御系では、目標電流値と実電流値との偏差に基づいて、PI制御部がモータ・駆動回路系に電圧指令値を与えている。ここで、モータ・駆動回路系には、モータを駆動させるための回路が含まれており、モータ以外の抵抗も存在する。しかし、従来、電流制御系の設計の際には、モータの内部抵抗についてのみ考慮され、モータ以外の抵抗については考慮されていなかった。
【0022】
そこで、従来電流制御系の設計の際に考慮されていなかった配線や駆動回路等の外部抵抗(以下、配線や駆動回路等の外部抵抗を「R’」により示す)が、少なからず電流制御系に影響を与えているのではないかと推測し、外部抵抗R’が電流制御系に与える影響について検討することにした。
【0023】
図4は、伝達関数を用いて示した、従来構成における電流制御系のブロック線図である。電流制御系は、PI制御部15と、モータ・駆動回路系200と、電流検出器19とを備えている。電流検出器19は、モータに流れる実電流値を検出し出力する。目標電流値と実電流値との偏差をPI制御部15が受け取る。また、電流検出器19には、特定の周波数以下の信号が通過するようにローパスフィルタが備えられている。該電流検出器19の伝達関数G(s)は次式(2)のように示される。
(s)=1/(τs+1) ・・・(2)
ただし、τはローパスフィルタの時定数であり、sはラプラス演算子である。
ここで、ローパスフィルタの折点周波数は数KHzであるのに対して、本発明に係る電流制御系の実用的な周波数帯域は50Hz以下の低周波数帯域であるので、電流検出器19が電流制御系の閉ループ伝達関数に与える影響は考慮しなくてもよい。すなわち電流検出器19の伝達関数G(s)は、次式で表される伝達関数G’(s)と等しい関数であるものとみなすことができる。
’(s)=1 ・・・(3)
【0024】
以上より、図4の構成における電流制御系の閉ループ伝達関数G(s)は次式(4)のように示される。
【数1】
Figure 2004216951
ただし、Lはモータのインダクタンス、sはラプラス演算子、Rはモータの内部抵抗、R’は配線や駆動回路等の外部抵抗である。
【0025】
次に、外部抵抗R’が電流制御系に与える影響を全くないものと仮定した場合、電流制御系の閉ループ伝達関数G(s)は、G(s)においてR’=0を代入した次式のように示される。
【数2】
Figure 2004216951
分母についてG(s)とG(s)とを比較すると、sの1次の係数については、G(s)の方がG(s)よりもR’/L大きくなっている。1次遅れ系の伝達関数の周波数応答においては、1次の係数が大きくなるにしたがい低周波数帯域での位相の遅れが大きくなる。すなわちR’=0とみなすことができない場合、sの1次の係数が大きくなり、外部抵抗R’が電流制御系に与える影響が位相の遅れとなって現れる。
【0026】
前述のとおり、従来構成における電流制御系の電流周波数特性は、モータ・駆動回路系の折点周波数である57Hzよりも低い周波数帯域で位相が遅れているので、上記外部抵抗R’が電流制御系に与える影響があるものと推測される。
【0027】
そこで、電流制御系に影響を与える外部抵抗R’をも考慮に入れてPIゲインを設定した場合、電流制御系の閉ループ伝達関数G(s)は次式のように示される。
【数3】
Figure 2004216951
上記G(s)において、2πf=(R+R’)/Lと設定した場合の伝達関数G(s)は次式で表される。
(s)=(R+R’)/(Ls+R+R’) ・・・(7)
ここで、モータ・駆動回路系の伝達関数G(s)は次式で表される。
(s)=1/(Ls+R+R’) ・・・(8)
(s)とG(s)とを比較すると、両者の時定数は共にL/(R+R’)であって同一となっている。すなわち、外部抵抗R’を含めてPI制御のパラメータ(比例ゲインおよび積分ゲインまたは積分時間)を設定した場合、数式上においては、電流制御系の特性としてモータ・駆動回路系と同様の特性が得られることになる。
【0028】
次に、外部抵抗R’を含めてPIゲインを設定した場合の実験データによる検討を行った。図5は、外部抵抗R’を含めてPIゲインを設定したPI制御をおこなった場合の電流制御系のゲイン特性を示す電流周波数特性図である。図6は、外部抵抗R’を含めてPIゲインを設定したPI制御をおこなった場合の電流制御系の位相特性を示す電流周波数特性図である。一方、従来構成における電流制御系の電流周波数特性は、前述のとおり図2および図3に示している。図2と図5とを比較すると、図5ではゲイン特性が改善されていることがわかり、図3と図6とを比較すると、図6では位相特性が改善されていることがわかる。すなわち、外部抵抗R’を含めてPIゲインを設定したPI制御をおこなうと、電流制御系の電流周波数特性がモータ・駆動回路系の電流周波数特性に近づき、応答性が高くなることがわかる。
【0029】
以上のように、数式および実験データに基づく検討の結果、外部抵抗R’が電流制御系に影響を与えており、外部抵抗R’を考慮に入れて電流制御系を設計することにより、電流制御系の電流周波数特性がモータ・駆動回路系本来の特性に近づくことがわかった。
【0030】
そこで、上記の基礎検討の結果に基づき、実際に外部抵抗R’を考慮に入れて電動パワーステアリング装置の電流制御系の設計を行い、その設計により得られる電動パワーステアリング装置を本発明の一実施形態として以下に説明する。
【0031】
<2.実施形態>
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成を、それに関連する車両構成と共に示す概略図である。この電動パワーステアリング装置は、操舵のための操作手段としてのハンドル(ステアリングホイール)100に一端が固着されるステアリングシャフト102と、そのステアリングシャフト102の他端に連結されたラックピニオン機構104と、ハンドル100の操作によってステアリングシャフト102に加えられる操舵トルクを検出するトルクセンサ3と、ハンドル操作(操舵操作)による運転者の負荷を軽減するための操舵補助力を発生させる電動モータ6と、そのモータ6の発生する操舵補助力をステアリングシャフト102に伝達する減速ギヤ7と、車載バッテリ8から電源の供給を受けて、トルクセンサ3や車速センサ4からのセンサ信号に基づきモータ6の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)5とを備えている。
【0032】
図8は、上記電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。上記電動パワーステアリング装置の制御装置であるECU5は、位相補償フィルタ10と、目標電流設定部12と、減算器14と、PI制御部15と、モータ駆動回路20と、電流検出器19とを備えている。位相補償フィルタ10には、トルクセンサ3によって検出される操舵トルクの検出値Tsが入力される。位相補償フィルタ10は、検出値Tsに基づき位相補償を施し、その位相補償後の信号を操舵トルク信号Tとして出力する。目標電流設定部12は、この操舵トルク信号Tと、車速センサ4によって検出される車両速度の検出値とを受け取り、モータに供給すべき目標電流値Itを算出する。減算器14は、目標電流設定部12から出力される目標電流値Itと電流検出器19から出力される電流検出値Isとの偏差It−Isを算出する。PI制御部15は、この偏差It−Isに基づき比例積分制御演算によって、電圧指令値Vを出力する。モータ駆動回路20は、PI制御部15が出力する電圧指令値Vに基づいて、モータに電圧を印加する。この電圧印加によりモータ6に電流が流れる。
【0033】
図9は、伝達関数を用いて示した、本実施形態に係る電流制御系のブロック線図である。ここでは、図8における、PI制御部15と、電流検出器19と、モータ駆動回路およびモータをひとつの伝達要素とみなしたモータ・駆動回路系200とを伝達関数を用いて示している。図9において、電流検出器19の伝達関数はG’(s)に示したとおり、「1」とみなすことができる。また、モータ・駆動回路系200の伝達関数G(s)は次式で表される。
(s)=1/(Ls+R+R’) ・・・(9)
ただし、Lはモータのインダクタンス、sはラプラス演算子、Rはモータの内部抵抗、R’は配線や駆動回路等の外部抵抗である。
【0034】
PI制御部15は、前述のとおり、目標電流値と実電流値との偏差に基づいて、モータ・駆動回路系200に与える電圧指令値Vを出力する。ここで、本実施形態では伝達関数G(s)が次式となるようにPI制御部15を設計する。すなわち、PI制御部15の伝達関数G(s)をω(τ・s+1)/sとおいた場合における当該PI制御部15の第1の制御パラメータであるτを、上記モータ・駆動回路系200の時定数L/(R+R’)に等しくなるように設定する。
(s)=2πf(Ls+R+R’)/s ・・・(10)
すなわち、τ=L/(R+R’)、ω=2πf(R+R’)
ただし、fはPIゲイン、Lはモータのインダクタンス、sはラプラス演算子、Rはモータの内部抵抗、R’は配線や駆動回路等の外部抵抗である。なお、測定データの一例を示すと、L=0.092mH、R=0.026Ω、R’=0.036Ωであり、外部抵抗R’は内部抵抗Rに比べて無視できない値を有していることがわかる。この外部抵抗R’には、モータ駆動回路20で使用される電界効果型トランジスタ(FET)のオン抵抗が数mΩ、配線抵抗が数mΩ〜数十mΩ、コネクタ抵抗が数mΩ〜数十mΩ含まれている。
【0035】
以上のように設計すると、この電流制御系の閉ループ伝達関数G10(s)は次式で表される。
【数4】
Figure 2004216951
このようにして電流制御系は1次遅れ要素(1次遅れ系)となり、その時定数は、1/(2πf)であるので、PIゲインfが電流制御系の折点周波数となる。ところで、式(9)よりモータ・駆動回路系200の時定数はL/(R+R’)である。そこで本実施形態では、電流制御系の時定数1/(2πf)がモータ・駆動回路系200の時定数L/(R+R’)に等しくなるように、PIゲインf
=(R+R’)/(2πL)
と設定する。これは、電流制御系の時定数1/(2πf)がモータ・駆動回路系200の時定数L/(R+R’)に等しくなるように、PI制御部15の比例ゲイン2πfLをR+R’に設定したこと(すなわちPI制御部15の第2の制御パラメータであるωを(R+R’)/Lに設定したこと)と等価である。
【0036】
PI制御部15のPIゲインfまたは比例ゲイン2πfLまたは第2の制御パラメータωをこのように設定することにより、電流制御系の閉ループ伝達関数G10(s)とモータ・駆動回路系200の伝達関数G(s)とは、下記式に示す関係となる。
10(s)=(R+R’)/(Ls+R+R’)
=(R+R’)G(s) ・・・(12)
上記より、電流制御系とモータ・駆動回路系200とは、同一の折点周波数f=(R+R’)/(2πL)を有する1次遅れ系であって、同一の周波数特性(ゲイン特性および位相特性)を有することになる。すなわち、両者の伝達関数は同一の周波数特性を持つ。
【0037】
以上説明したように、前述した基礎検討の結果にしたがい外部抵抗R’を考慮に入れて電流制御系を設計することにより、電流制御系の伝達関数とモータ・駆動回路系200の伝達関数とが同じ特性を持つ伝達関数となった。
【0038】
したがって、本実施形態に係る電流制御系の電流周波数特性は、モータ・駆動回路系が本来持つ電流周波数特性を引き出すこととなり、十分な応答性を確保することができる。これにより、所望のトルク周波数特性が得られ、例えば10Hz以上の折点周波数(1次遅れ系では45度位相遅れ、2次遅れ系では90度位相遅れとなる周波数)にも対応可能となる。また、外乱の多い路面の走行時や不感帯とアシスト域の境界付近の操舵時におけるハンドルのふらつきも防止することができる。さらに、モータ単体のトルクリップルの補償を十分に行うことができるようになる。さらにまた、電流制御系全体でモータ・駆動回路系200自体と同等の電流周波数特性を有するようになるので、慣性補償やダンピング補償等のダイナミック補償のための制御手段の機能がより十分に発揮されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るモータ・駆動回路系に信号を入力した場合の入力に対する出力のゲインと位相とを示すボード線図である。
【図2】従来構成における電流制御系のゲイン特性を示す電流周波数特性図である。
【図3】従来構成における電流制御系の位相特性を示す電流周波数特性図である。
【図4】従来構成における制御装置において、伝達関数を用いて示した電流制御系のブロック線図である。
【図5】本実施形態に係る電流制御系のゲイン特性を示す電流周波数特性図である。
【図6】本実施形態に係る電流制御系の位相特性を示す電流周波数特性図である。
【図7】本実施形態に係る電動パワーステアリング装置の構成をそれに関連する車両構成と共に示す概略図である。
【図8】本実施形態に係る電動パワーステアリング装置を制御的観点から見た構成を示すブロック図である。
【図9】本実施形態に係る制御装置において、伝達関数を用いて示した電流制御系のブロック線図である。
【符号の説明】
3 …トルクセンサ
4 …車速センサ
5 …電子制御ユニット(EUC)
6 …モータ
7 …減速ギヤ
8 …バッテリ
10 …位相補償フィルタ
12 …目標電流設定部
14 …減算部
15 …PI制御部
19 …電流検出器
20 …モータ駆動回路
100…ハンドル(ステアリングホイール)
102…ステアリングシャフト
104…ラックピニオン機構
200…モータ・駆動回路系
It …目標電流値
Is …電流検出値
T …操舵トルク信号
Ts …操舵トルクの検出値
V …電圧指令値
…PIゲイン
L …モータのインダクタンス
R …モータの内部抵抗
R’ …外部抵抗

Claims (3)

  1. 車両操舵のための操作に応じて電動モータを駆動することにより当該車両のステアリング機構に操舵補助力を与える電動パワーステアリング装置であって、
    前記操作に応じて前記電動モータに供給すべき電流の目標値を設定する目標電流設定手段と、
    前記電流目標値と前記電動モータに実際に流れる電流の値との偏差に基づく比例積分制御演算により、前記電動モータに対するフィードバック制御のための指令値を生成する比例積分制御手段と、
    前記指令値に応じて前記電動モータを駆動するモータ駆動回路とを備え、
    前記比例積分制御手段の制御パラメータは、前記電動モータのインダクタンスと、前記電動モータの内部抵抗と、前記電動モータおよび前記モータ駆動回路の配線抵抗を含む外部抵抗とに基づき設定されることを特徴とする、電動パワーステアリング装置。
  2. 前記比例積分制御手段の伝達関数をω(τ・s+1)/sとおいた場合における前記比例積分制御手段の第1の制御パラメータであるτは、前記電動モータと前記モータ駆動回路とを含む1次遅れ要素であるモータ・駆動回路系の時定数に相当する値に設定されていることを特徴とする、請求項1に記載の電動パワーステアリング装置。
  3. 前記比例積分制御手段の第2の制御パラメータであるωは、前記比例積分制御手段と前記モータ駆動回路と前記電動モータとを含む電流制御系の閉ループ伝達関数に相当する1次遅れ要素の時定数が前記モータ・駆動回路系の時定数に等しくなるように設定されていることを特徴とする、請求項2に記載の電動パワーステアリング装置。
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