JP2004215570A - 退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製法 - Google Patents
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Abstract
【課題】βカロテン等の着色料で着色されたコンニャク等の食品において、退色を防止する。
【解決手段】食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料で着色された、或いはカロチノイド、フラボノイド、アントシアニン等の天然色素で着色されて銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有する食品の退色を防止のために、重合りん酸塩、くえん酸塩アミノ酸、さらに好ましくは、アミノ酸の高次構造体であるペプチドや蛋白質、例えば、小麦やその精製物であるグルテン等の蛋白質を添加する。
【選択図】 なし
【解決手段】食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料で着色された、或いはカロチノイド、フラボノイド、アントシアニン等の天然色素で着色されて銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有する食品の退色を防止のために、重合りん酸塩、くえん酸塩アミノ酸、さらに好ましくは、アミノ酸の高次構造体であるペプチドや蛋白質、例えば、小麦やその精製物であるグルテン等の蛋白質を添加する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属イオンを含有し、合成着色料や天然色素で色づけされている食品であって退色防止処理の施された食品(これを本明細書では「退色防止食品」という。)、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法に関し、特にコンニャク食品等、金属イオンを含有する食品分野における退色防止食品、このような食品中に添加された色素の退色を防止する退色防止方法及び退色防止食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の技術分野の一例であるコンニャクを例に説明すると、コンニャクはその独特の食感を楽しむために長年にわたり料理の材料として用いられてきた。一方、近年、コンニャクは、ダイエット食品や健康食品として、低カロリーで、しかも食物繊維を多く含有するので、空腹感を満たすことの出来る食材として女性や肥満体の方を中心に食されている。
【0003】
また、コンニャクは、生活習慣病である高血圧や糖尿病や高脂血症の治療食としても、低カロリーで食物繊維を多く含有し、おいしく食べられる食材への需要が高まってきている。
【0004】
コンニャクの食形態はさまざまなものがあり、従来のコンニャク料理であるおでん等々だけでなく、ご飯形態のものや麺状の形態のものが生産されそのバラエティーを広げている。
【0005】
特に、麺状の製品の場合、コンニャクを精製紛であるグルコマンナンで生産すると透明感のある白色の製品となるため、ラーメン麺やパスタ麺の様な黄色い麺を作製するには黄色素を添加する必要があった。一般的に、通常のラーメン麺等の黄色付けにはβカロテン等の黄色素が添加される。このβカロテンは、麺の他に菓子類の着色等にも使われている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−62724号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、βカロテンをコンニャクに添加した場合、太陽光照射ですぐさま退色し、白色化してしまう問題が生じていた。本発明の目的は、このようなコンニャク等の低蛋白質食品に色素を添加して色づけした食品において、βカロテン等の色素の退色を防止する方法、及びβカロテン等で色付けされていても退色しないコンニャク等の食品を実現することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、金属イオンを含有し、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品であって、アミノ酸、ペプチド、蛋白質分解物又は蛋白質が、前記色素の退色防止のために添加されて成ることを特徴とする退色防止食品を提供する。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、金属イオンを含有し、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品に、アミノ酸、ペプチド又は蛋白質を添加することにより、前記色素の退色を防止することを特徴とする着色食品の退色を防止する方法を提供する。
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品を製造する際に、金属イオンを除去することにより前記色素の退色を防止することを特徴とする着色食品の退色を防止する方法を提供する。
【0011】
上記金属イオンは、銅イオン又は鉄イオンであることが好ましい。
【0012】
上記天然色素は、カロチノイド、フラボノイド又はアントシアニンであることが好ましい。
【0013】
上記蛋白質は、小麦粉又はその精製物であるグルテンであることが好ましい。
【0014】
上記食品としては、コンニャク食品等がある。
【0015】
上記金属イオンは、銅イオンが0.1ppm以下及び/又は鉄イオンが20ppm以下含まれているものが考えられる。
【0016】
金属イオンの除去は、活性炭による吸着、上記金属イオンよりイオン化傾向の強い物質若しくは凝集剤による沈殿除去、又はイオン交換若しくは活性炭の金属吸着能のあるカラムを使用することにより行ってもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法の実施の形態を、その特徴とする構成を説明するとともに、その実施例及び効果確認のための試験例について説明する。本発明は、金属イオンを含有し、合成着色料や天然色素で色づけされている食品に関するものであるが、ここではコンニャク食品を例示してその退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法について説明する。
【0018】
βカロテンをコンニャクに添加してコンニャクを黄色に着色した場合、日にあてるとすぐ退色し、白色化してしまう。この退色現象が生じる原因について発明者らは、鋭意検討し本発明を想到するに至った。この検討乃至発明の想到について以下述べる。
【0019】
コンニャクは、pH11〜pH12のアルカリ性の食品である。一方食品の成分分析表を見ると、コンニャクには、銅イオンが一定量含まれている(しらたきで0.2ppm)。このような成分のコンニャク食品にβカロテンを用いて着色し、日を当てると、晴れた日であれば30分程度ですぐに退色してしまう。
【0020】
これらのことより、コンニャクのβカロテンの色素の退色の原因として、
▲1▼強アルカリのpH
▲2▼銅イオンの存在
▲3▼光の照射
の3要素に発明者らは着目した。
【0021】
ここで、これらの要因で退色が生じることを確認するために、pH12の溶液に、βカロテンを添加し、更に、銅イオンを無添加の溶液と添加した溶液を準備し、これに、日光を照射し、各溶液のβカロテンの退色の早さを観察した(試験例1参照)。これより、この退色の現象には、三つの要因が必須であること、特に、銅イオンの存在が必須であることがわかった。
【0022】
以上のことを踏まえ、コンニャクにおけるβカロテンの退色の防止方法について、上記▲1▼〜▲3▼に対応して次の(1)〜(3)の方法について検討した。
【0023】
(1)pHを中性域に移行させる。しかしながら、コンニャク製品は中性域では日持ちしないという問題がある。
(2)光に当てない。しかしながら、遮光包装では、製品形態が限定されるという問題がある。
(3)銅イオンに対する対応を考慮する。
以上からすると、(1)及び(2)では、上記問題があるので、現実のコンニャク食品には適用できない。よって、(3)の銅イオンへの対応について着目した。
【0024】
この銅イオンの問題を解決する本発明について、本発明者らは次の二つの実施の形態を検討した。
(a)第1の実施の形態としては、銅が含まれているコンニャク食品でも、陽イオンである銅イオンと錯体を形成する陰イオン賦与物質を添加すれば、そのフリーな金属イオン量を低減化させる作用により食品の色素の退色を防止する。
(b)第2の実施の形態としては、コンニャク中の銅イオンを積極的に除去することにより食品の色素の退色を防止する。
【0025】
以上、分かりやすく説明するために、βカロテンで着色された銅イオンを含むコンニャク食品について、第1及び第2の退色防止の実施の形態を説明したが、以上の退色現象は、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料、及び/又はカロチノイド、フラボノイド若しくはアントシアニン等の天然着色料で着色された銅イオンや鉄イオン等の金属イオンを含む食品についても同様に生じる。
【0026】
よって、これらの食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等で着色された合成着色料含有食品及びカロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等で着色された天然色素含有食品についても、銅イオンや鉄イオン等の金属イオンに対する退色防止手段として、上記第1及び第2の実施の形態が適用できる。
【0027】
(第1の実施の形態)
本発明に係る退色防止食品及びその製法の第1の実施の形態は、合成着色料含有食品又は天然色素食品の退色防止のために、後述する食品添加物を添加して成る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法である。
【0028】
ここで、上記合成着色料含有食品としては、銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有し、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等で着色された合成着色料含有食品等がある。
【0029】
又、上記天然色素食品としては、鉄イオン等の金属イオンを含有しカロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素で着色された天然色素食品等である。
【0030】
そして、上記退色防止のための食品添加物としては、銅イオン等の金属イオンと錯体を形成する物質、例えば、従来よりキレート剤として知られている重合りん酸、クエン酸3ナトリウム又はアミノ酸、さらに好ましくは、ペプチド、蛋白質又は蛋白質分解物、例えば、小麦粉、より好ましくは、その蛋白質成分の精製物であるグルテン等の蛋白質又はその蛋白質分解物等の添加物である。
【0031】
銅イオン等の金属イオンと錯体を形成する物質の2以上を組み合わせて使用することもできる。特に、従来よりキレート剤として知られている重合りん酸、クエン酸3ナトリウム等と蛋白質もしくは蛋白質の分解物との組み合わせにおいて相乗的な退色防止効果が得られる。
【0032】
この第1の実施の形態では、その退色防止作用のメカニズムは明確には解明されていないが、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成色素や、カロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素に対して、退色促進作用を持つ銅イオン、鉄イオン等の金属イオンが、当該の食品のpH値下で陰イオンの電荷を持つアミノ酸、ペプチド、タンパク質等と結合した結果、フリーな金属イオンの量が減少することによるものと考えられる。
【0033】
要するに、本発明では、食品に含有される金属イオンによる色素の退色作用を、重合りん酸、クエン酸3ナトリウム、アミノ酸、ペプチド、タンパク質等の金属イオンと錯体を形成する物質で抑えるという知見に基づいて、これを食品の退色防止用途に適用したものである。
【0034】
このような知見に基づいて、食品に含有される金属イオンによる色素の退色作用を防止するという積極的意図で、アミノ酸、ペプチド、タンパク質等を含有させて成る食品又は食品の退色防止方法は、本出願前に公知ではない。
【0035】
特に、この本発明の第1の実施の形態では、コンニャク等の低蛋白質含有食品のpH10以上のアルカリ領域にある食品であっても著しい退色防止効果を得ることができるという特徴を有する。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明に係る退色防止食品及びその製法の第2の実施の形態は、合成着色料含有食品又は天然色素食品の色素の退色防止のために、食品中に含有される銅イオンや鉄イオン等の金属イオンを除去して成る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法である。
【0037】
上記合成着色料含有食品としては、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料含有食品がある。
【0038】
又、上記天然色素食品としては、銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有する食品、或いは、カロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素で着色された銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有する天然色素食品がある。
【0039】
特に、上記の金属イオンの除去の目標値として、銅イオンであれば0.1ppm以下、鉄イオンであれば20ppm以下にすることが重要である。
【0040】
ここで、銅イオンや鉄イオン等の金属イオンの除去手段としては、活性炭による吸着、対象金属イオンよりイオン化傾向の強い物質や凝集剤による沈殿除去、イオン交換や活性炭等の金属吸着能のある各種カラムを使用する。
【0041】
このように、食品中の銅イオンや鉄イオン等の金属イオンを除去すると、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料で着色された食品やカロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素で着色された食品の退色防止効果を図ることが可能となった。
【0042】
本発明の効果を実証するために、本発明者らの行った試験及びその結果を、以下の試験例として説明する。
【0043】
(試験例1)
試験例1は、βカロテン水溶液に日光を照射する際に、銅イオンを共存させると退色を促進するが、小麦粉を共存させると退色を抑制することを実証する試験である。
【0044】
βカロテン水溶液(1.5ppm、pH12)に硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加しない群、添加する群、添加し、かつ、小麦粉(最終濃度0.25%)を添加する群の3群を準備した。そして、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化について、βカロテンのスペクトルにおいてピークを示す吸光度500nmの経時変化を5分毎に50分まで測定した。
【0045】
試験例1の結果を表1に示す。銅イオンを添加しなかったサンプルでは、50分経ってもβカロテンの黄色い色調は減少しなかったが、銅イオンが入ったものでは、βカロテンの黄色い色調は、ほぼ5分の一に低下した。この結果より、この退色の現象には、アルカリ性のpH、太陽光照射、銅イオンの存在の三つの要因が必要なこと。中でも銅イオンの存在が必須であることがわかった。一方、小麦粉を添加したものでは、銅イオンは存在するものの、ほとんど、色調は低下しなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
(試験例2)
βカロテン等の色素に対して、錯体形成作用を発揮するキレート剤として従来より知られているEDTA、重合りん酸塩(ピロりん酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム)、クエン酸3ナトリウムを夫々添加した場合の退色を防止する効果を実証する試験である。
【0048】
調製したpH12の溶液にβカロテン添加濃度1.5ppm、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、退色防止剤として、何も添加しない群とEDTA、重合りん酸塩(ピロりん酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム)、クエン酸3ナトリウムを添加する群の計5群を準備し、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0049】
試験例2の試験結果を表2に示す。この表2中、退色した状況を×、やや色の残った状況を△、ほとんど退色しなかった状況を○で示した。何も添加しなかった群やクエン酸3ナトリウムを10mM添加した群では、一時間でともに退色したが、クエン酸3ナトリウム20mM添加では退色をやや抑制した。EDTA、重合りん酸塩(ピロりん酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム)を10mM添加した群では、明らかに退色のスピードは抑制され、強い錯体形成能(キレート作用とも言う)を持つ物質は、退色抑制作用があることが確認された。
【0050】
【表2】
【0051】
(試験例3)
金属との錯体形成が退色防止につながる試験例1の知見より、銅イオン等の金属イオンは陽イオンであることから、中性域やアルカリ性域において負の電荷を持つアミノ酸およびアミノ酸の高次構造体であるペプチドや蛋白質が、中性域やアルカリ性域下において銅イオン等と錯体を形成しβカロテン等の色素の退色を防止する効果が期待された。この試験例3では、上記の考えに基づき、食品に利用する上で種々の食品成分である炭水化物や蛋白質や脂質の退色防止効果を検討した。
【0052】
調製したpH12の溶液にβカロテン添加濃度1.5ppm、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、退色防止剤として、何も添加しない(蒸留水添加)群と炭水化物(小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、砂糖)、脂質(大豆油)、蛋白質(小麦粉、グルテン)をそれぞれ2%添加する群の計7群を準備し、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化をβカロテンの特異な黄色の色調の変化を一時間後に観察した。
【0053】
試験例3の試験結果を表3に示す。この表3中、退色した状況を×、やや色の残った状況を△、ほとんど退色しなかった状況を○で示した。何も添加しなかった群や炭水化物(小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、砂糖)、脂質(大豆油)を0.2%添加した群では、60分でともに退色し、添加の効果は見られなかった。一方、蛋白質(小麦粉、グルテン)を添加した群では、退色が抑制された。
【0054】
【表3】
【0055】
(試験例4)
食品成分の中で蛋白質が退色防止につながる試験例2の知見より、種々の蛋白質性食品材料の退色防止効果を検討した。
【0056】
調製したpH12の溶液にβカロテン添加濃度1.5ppm、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、退色防止剤として、陰性コントロールとしての小麦澱粉添加群と試験群である卵蛋白質(全卵、卵白、卵黄)、乳蛋白質(カゼイン、ホエイ)、小麦粉、大豆蛋白質、チキンエキス、鶏肉のミンチ、しょう油を各0.2%をそれぞれ添加する群の計11群を準備し、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0057】
試験例4の試験結果を表4に示す。この表4中、退色した状況を×、やや色の残った状況を△、ほとんど退色しなかった状況を○で示した。陰性コントロールとしての小麦澱粉添加群では、60分でともに退色し、退色防止効果は見られなかった。一方、卵蛋白質質(全卵、卵白、卵黄)、乳蛋白質(カゼイン、ホエイ)、小麦、大豆蛋白質、チキンエキス、鶏肉のミンチ、しょう油を添加した群では、いずれも退色が抑制された。
【0058】
【表4】
【0059】
(試験例5)
小麦粉(薄力粉)等の蛋白質性食品の各色素に対する退色防止効果を調べた。
【0060】
カロテンベース色素水溶液(1.5ppm、pH12)、アントシアニン系色素水溶液(1.5ppm、pH12)、フラボノイド系色素水溶液(1.5ppm、pH12)、食用黄色4号水溶液(1.5ppm、pH12)、食用赤色2号水溶液(1.5ppm、pH12)のそれぞれに、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)と小麦粉(最終濃度0.2%)を添加した。そして、3群それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0061】
この結果を表5に示す。この表5中、0は退色なしの状態、5は真っ白に退色した状態である。この表5によると、いずれの色素においても小麦粉無添加区ではほぼ完全に退色したが、小麦粉添加区では、何れの合成着色料及び天然色素に対して退色防止効果を示すことが確認された。
【0062】
【表5】
【0063】
(試験例6)
アミノ酸とペプチドと蛋白質における退色防止効果とそのpHにおける影響を確認するために以下の試験を行った。βカロテン水溶液(1.5ppm、pH12及びpH10)に硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、かつ、小麦グルテン蛋白質(0.05%)と小麦グルテン蛋白質加水分解物由来ペプチド(0.2%)とアミノ酸(0.2%)とイノシン酸ナトリウム(0.2%)を添加する群の8群を準備した。そして、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0064】
この結果を表6に示す。この表6中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。この表6によると、アミノ酸に比べ、ペプチドや蛋白質では、より優れた抑制効果が示された。この効果の差は、よりアルカリ側(pH12)でより強く現れた。
【0065】
【表6】
【0066】
(試験例7)
この試験例7は、βカロテンが添加されたコンニャク芋製粉について、銅イオン、鉄イオンの退色効果と金属イオン濃度との関係を実証する試験である。
【0067】
コンニャク芋製粉0.1kg、カロテンベース色素1.5g(最終製品濃度6ppm)を水3.6kg(イオン交換水を用い、製品の最終濃度が銅イオン0.01 ppm、0.02 ppm、0.03 ppm、0.04 ppm、0.05 ppm、0.06 ppm、0.2 ppm、鉄イオン0.5 ppm、2 ppm、4ppm、8 ppm、12 ppm、16 ppm、20 ppmになるよう添加調整)に溶解し、均一になるまで攪拌し、2時間放置してペースト状にした。
【0068】
このペーストに2重量%濃度の石灰乳0.36kgを添加混合して粘性をもたせた後、所定の麺の形状で押し出して90℃、5分間加熱を行いゲル化させた。その後、太陽光(5万ルクス)を50分間照射し、退色状況を見た。尚、最終製品のβカロテン濃度は6ppmでpHは12であった。
【0069】
試験例7の結果を表7に示す。この表7中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。この結果、銅イオンは、製品中の銅イオン濃度が0.12ppmで明らかな退色効果を示した。一方、鉄イオン濃度では、250倍の30ppmで退色効果を示した。
【0070】
【表7】
【0071】
次に、本発明に係る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法のいろいろな実施例を説明するとともに、その効果を比較例と比較した結果を説明する。
【0072】
(実施例1)
コンニャク芋製粉1kg、0.2カロテンベース色素15g(最終製品濃度6ppm)、そして、全卵(最終製品濃度0.2%)を添加し、水36kg(無処理)に溶解し、均一になるまで攪拌し、2時間放置してペースト状にした。このペーストに2重量%濃度の石灰乳3.6kgを添加混合して粘性を持たせた後、所定の表面の形状で押し出し90℃、5分間加熱してゲル化させた。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0073】
(実施例2)
実施例1の全卵の代わりに卵白(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0074】
(実施例3)
実施例1の全卵の代わりに卵黄(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0075】
(実施例4)
実施例1の全卵の代わりにカゼインナトリウム(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0076】
(実施例5)
実施例1の全卵の代わりにホエイ(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0077】
(実施例6)
実施例1の全卵の代わりに小麦粉(最終製品濃度0.6%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0078】
(実施例7)
実施例1の全卵の代わりに大豆蛋白質(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0079】
(実施例8)
実施例1の全卵の代わりにチキンエキス(最終製品濃度0.1%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0080】
(比較例1)
実施例1の全卵の代わりに小麦澱粉(最終製品濃度0.5%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0081】
以上の実施例1〜8と比較例1を用いて、蛋白質などの退色防止効果を、5段階評価で退色状況を見ることにより調べた。この結果を以下の表8に示す。この表8中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。
【0082】
【表8】
【0083】
以下の実施例9〜13と比較例1を用いて、従来より知られているキレート剤と蛋白性食品材料の退色防止効果の相乗作用を調べた。
【0084】
(実施例9)
実施例6の小麦粉を最終製品濃度が0.1%となるように添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0085】
(実施例10)
実施例9の小麦粉の代わりにトリポリりん酸ナトリウムを最終製品濃度が(3mM)となるように添加したことを除いては実施例9と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0086】
(実施例11)
実施例10のトリポリりん酸ナトリウムの代わりにクエン酸3ナトリウムを最終製品濃度が(0.3%)となるように添加したことを除いては実施例10と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0087】
(実施例12)
実施例10のトリポリりん酸ナトリウムに小麦粉(最終濃度0.1%)を添加したことを除いては実施例10と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0088】
(実施例13)
実施例11のクエン酸3ナトリウムに小麦粉(最終濃度0.1%)を添加したことを除いては実施例11と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0089】
実施例9〜13と比較例1との比較結果を表9に示す。この表9に示すように、小麦粉(0.1%)、トリポリりん酸ナトリウム(3mM)、クエン酸ナトリウム(0.3%)の単独添加群の退色防止効果は弱いものの、小麦粉(0.1%)+トリポリりん酸ナトリウム(3mM)、小麦粉(0.1%)+クエン酸ナトリウム(0.3%)のようなキレート剤と蛋白性食品材料を組み合わせて添加した区分では優れた退色防止の相乗効果が認められた。
【0090】
【表9】
【0091】
以下の実施例14〜17と比較例1を用いて金属イオン除去による退色防止効果を、調べた。
【0092】
(実施例14)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりにイオン交換カラム処理水36kgを使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.02ppm 、pHは12であった。
【0093】
(実施例15)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりに凝集剤処理水36kgを使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.08ppm 、pHは12であった。
【0094】
(実施例16)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりに活性炭処理水36kgを使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.1ppm 、pHは12であった。
【0095】
(実施例17)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりに水20kg(無処理)及びイオン交換カラム処理水16kgを混合して使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.12ppm 、pHは12であった。
【0096】
以上の実施例14〜17と比較例1を用いて、金属イオン除去による退色防止効果を、5段階評価で退色状況を見ることにより調べた。この結果を以下の表10に示す。この表10中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。
【0097】
この表10によると、無処理の水及び無処理の水とイオン交換水を5:4で混合した水で作成したコンニャクは、0.2ppm及び0.12ppmの銅イオン濃度があり、速やかに退色したが、活性炭や凝集剤やイオン交換カラム処理をした製品は製品中の銅イオン濃度が0.1ppm以下で、ほとんど退色しなかった。また、この操作の効果は、鉄イオンの多い水を使用した場合にも効果を示した。
【0098】
【表10】
【0099】
以上、本発明に係る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法の実施の形態を試験例、実施例とともに説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施の態様があることは言うまでもない。
【0100】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、コンニャク等の色素を添加して色づけされた食品において、βカロテン等の色素の退色を防止することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属イオンを含有し、合成着色料や天然色素で色づけされている食品であって退色防止処理の施された食品(これを本明細書では「退色防止食品」という。)、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法に関し、特にコンニャク食品等、金属イオンを含有する食品分野における退色防止食品、このような食品中に添加された色素の退色を防止する退色防止方法及び退色防止食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
本発明の技術分野の一例であるコンニャクを例に説明すると、コンニャクはその独特の食感を楽しむために長年にわたり料理の材料として用いられてきた。一方、近年、コンニャクは、ダイエット食品や健康食品として、低カロリーで、しかも食物繊維を多く含有するので、空腹感を満たすことの出来る食材として女性や肥満体の方を中心に食されている。
【0003】
また、コンニャクは、生活習慣病である高血圧や糖尿病や高脂血症の治療食としても、低カロリーで食物繊維を多く含有し、おいしく食べられる食材への需要が高まってきている。
【0004】
コンニャクの食形態はさまざまなものがあり、従来のコンニャク料理であるおでん等々だけでなく、ご飯形態のものや麺状の形態のものが生産されそのバラエティーを広げている。
【0005】
特に、麺状の製品の場合、コンニャクを精製紛であるグルコマンナンで生産すると透明感のある白色の製品となるため、ラーメン麺やパスタ麺の様な黄色い麺を作製するには黄色素を添加する必要があった。一般的に、通常のラーメン麺等の黄色付けにはβカロテン等の黄色素が添加される。このβカロテンは、麺の他に菓子類の着色等にも使われている(特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平6−62724号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、βカロテンをコンニャクに添加した場合、太陽光照射ですぐさま退色し、白色化してしまう問題が生じていた。本発明の目的は、このようなコンニャク等の低蛋白質食品に色素を添加して色づけした食品において、βカロテン等の色素の退色を防止する方法、及びβカロテン等で色付けされていても退色しないコンニャク等の食品を実現することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記課題を解決するために、金属イオンを含有し、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品であって、アミノ酸、ペプチド、蛋白質分解物又は蛋白質が、前記色素の退色防止のために添加されて成ることを特徴とする退色防止食品を提供する。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、金属イオンを含有し、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品に、アミノ酸、ペプチド又は蛋白質を添加することにより、前記色素の退色を防止することを特徴とする着色食品の退色を防止する方法を提供する。
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品を製造する際に、金属イオンを除去することにより前記色素の退色を防止することを特徴とする着色食品の退色を防止する方法を提供する。
【0011】
上記金属イオンは、銅イオン又は鉄イオンであることが好ましい。
【0012】
上記天然色素は、カロチノイド、フラボノイド又はアントシアニンであることが好ましい。
【0013】
上記蛋白質は、小麦粉又はその精製物であるグルテンであることが好ましい。
【0014】
上記食品としては、コンニャク食品等がある。
【0015】
上記金属イオンは、銅イオンが0.1ppm以下及び/又は鉄イオンが20ppm以下含まれているものが考えられる。
【0016】
金属イオンの除去は、活性炭による吸着、上記金属イオンよりイオン化傾向の強い物質若しくは凝集剤による沈殿除去、又はイオン交換若しくは活性炭の金属吸着能のあるカラムを使用することにより行ってもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明に係る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法の実施の形態を、その特徴とする構成を説明するとともに、その実施例及び効果確認のための試験例について説明する。本発明は、金属イオンを含有し、合成着色料や天然色素で色づけされている食品に関するものであるが、ここではコンニャク食品を例示してその退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法について説明する。
【0018】
βカロテンをコンニャクに添加してコンニャクを黄色に着色した場合、日にあてるとすぐ退色し、白色化してしまう。この退色現象が生じる原因について発明者らは、鋭意検討し本発明を想到するに至った。この検討乃至発明の想到について以下述べる。
【0019】
コンニャクは、pH11〜pH12のアルカリ性の食品である。一方食品の成分分析表を見ると、コンニャクには、銅イオンが一定量含まれている(しらたきで0.2ppm)。このような成分のコンニャク食品にβカロテンを用いて着色し、日を当てると、晴れた日であれば30分程度ですぐに退色してしまう。
【0020】
これらのことより、コンニャクのβカロテンの色素の退色の原因として、
▲1▼強アルカリのpH
▲2▼銅イオンの存在
▲3▼光の照射
の3要素に発明者らは着目した。
【0021】
ここで、これらの要因で退色が生じることを確認するために、pH12の溶液に、βカロテンを添加し、更に、銅イオンを無添加の溶液と添加した溶液を準備し、これに、日光を照射し、各溶液のβカロテンの退色の早さを観察した(試験例1参照)。これより、この退色の現象には、三つの要因が必須であること、特に、銅イオンの存在が必須であることがわかった。
【0022】
以上のことを踏まえ、コンニャクにおけるβカロテンの退色の防止方法について、上記▲1▼〜▲3▼に対応して次の(1)〜(3)の方法について検討した。
【0023】
(1)pHを中性域に移行させる。しかしながら、コンニャク製品は中性域では日持ちしないという問題がある。
(2)光に当てない。しかしながら、遮光包装では、製品形態が限定されるという問題がある。
(3)銅イオンに対する対応を考慮する。
以上からすると、(1)及び(2)では、上記問題があるので、現実のコンニャク食品には適用できない。よって、(3)の銅イオンへの対応について着目した。
【0024】
この銅イオンの問題を解決する本発明について、本発明者らは次の二つの実施の形態を検討した。
(a)第1の実施の形態としては、銅が含まれているコンニャク食品でも、陽イオンである銅イオンと錯体を形成する陰イオン賦与物質を添加すれば、そのフリーな金属イオン量を低減化させる作用により食品の色素の退色を防止する。
(b)第2の実施の形態としては、コンニャク中の銅イオンを積極的に除去することにより食品の色素の退色を防止する。
【0025】
以上、分かりやすく説明するために、βカロテンで着色された銅イオンを含むコンニャク食品について、第1及び第2の退色防止の実施の形態を説明したが、以上の退色現象は、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料、及び/又はカロチノイド、フラボノイド若しくはアントシアニン等の天然着色料で着色された銅イオンや鉄イオン等の金属イオンを含む食品についても同様に生じる。
【0026】
よって、これらの食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等で着色された合成着色料含有食品及びカロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等で着色された天然色素含有食品についても、銅イオンや鉄イオン等の金属イオンに対する退色防止手段として、上記第1及び第2の実施の形態が適用できる。
【0027】
(第1の実施の形態)
本発明に係る退色防止食品及びその製法の第1の実施の形態は、合成着色料含有食品又は天然色素食品の退色防止のために、後述する食品添加物を添加して成る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法である。
【0028】
ここで、上記合成着色料含有食品としては、銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有し、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等で着色された合成着色料含有食品等がある。
【0029】
又、上記天然色素食品としては、鉄イオン等の金属イオンを含有しカロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素で着色された天然色素食品等である。
【0030】
そして、上記退色防止のための食品添加物としては、銅イオン等の金属イオンと錯体を形成する物質、例えば、従来よりキレート剤として知られている重合りん酸、クエン酸3ナトリウム又はアミノ酸、さらに好ましくは、ペプチド、蛋白質又は蛋白質分解物、例えば、小麦粉、より好ましくは、その蛋白質成分の精製物であるグルテン等の蛋白質又はその蛋白質分解物等の添加物である。
【0031】
銅イオン等の金属イオンと錯体を形成する物質の2以上を組み合わせて使用することもできる。特に、従来よりキレート剤として知られている重合りん酸、クエン酸3ナトリウム等と蛋白質もしくは蛋白質の分解物との組み合わせにおいて相乗的な退色防止効果が得られる。
【0032】
この第1の実施の形態では、その退色防止作用のメカニズムは明確には解明されていないが、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成色素や、カロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素に対して、退色促進作用を持つ銅イオン、鉄イオン等の金属イオンが、当該の食品のpH値下で陰イオンの電荷を持つアミノ酸、ペプチド、タンパク質等と結合した結果、フリーな金属イオンの量が減少することによるものと考えられる。
【0033】
要するに、本発明では、食品に含有される金属イオンによる色素の退色作用を、重合りん酸、クエン酸3ナトリウム、アミノ酸、ペプチド、タンパク質等の金属イオンと錯体を形成する物質で抑えるという知見に基づいて、これを食品の退色防止用途に適用したものである。
【0034】
このような知見に基づいて、食品に含有される金属イオンによる色素の退色作用を防止するという積極的意図で、アミノ酸、ペプチド、タンパク質等を含有させて成る食品又は食品の退色防止方法は、本出願前に公知ではない。
【0035】
特に、この本発明の第1の実施の形態では、コンニャク等の低蛋白質含有食品のpH10以上のアルカリ領域にある食品であっても著しい退色防止効果を得ることができるという特徴を有する。
【0036】
(第2の実施の形態)
本発明に係る退色防止食品及びその製法の第2の実施の形態は、合成着色料含有食品又は天然色素食品の色素の退色防止のために、食品中に含有される銅イオンや鉄イオン等の金属イオンを除去して成る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法である。
【0037】
上記合成着色料含有食品としては、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料含有食品がある。
【0038】
又、上記天然色素食品としては、銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有する食品、或いは、カロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素で着色された銅イオン、鉄イオン等の金属イオンを含有する天然色素食品がある。
【0039】
特に、上記の金属イオンの除去の目標値として、銅イオンであれば0.1ppm以下、鉄イオンであれば20ppm以下にすることが重要である。
【0040】
ここで、銅イオンや鉄イオン等の金属イオンの除去手段としては、活性炭による吸着、対象金属イオンよりイオン化傾向の強い物質や凝集剤による沈殿除去、イオン交換や活性炭等の金属吸着能のある各種カラムを使用する。
【0041】
このように、食品中の銅イオンや鉄イオン等の金属イオンを除去すると、食用黄色4号、同5号、食用青色1号、同2号、食用赤色2号、同3号、同40号、同102号、同104号、同105号、同106号等の合成着色料で着色された食品やカロチノイド、フラボノイド又はアントシアニン等の天然色素で着色された食品の退色防止効果を図ることが可能となった。
【0042】
本発明の効果を実証するために、本発明者らの行った試験及びその結果を、以下の試験例として説明する。
【0043】
(試験例1)
試験例1は、βカロテン水溶液に日光を照射する際に、銅イオンを共存させると退色を促進するが、小麦粉を共存させると退色を抑制することを実証する試験である。
【0044】
βカロテン水溶液(1.5ppm、pH12)に硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加しない群、添加する群、添加し、かつ、小麦粉(最終濃度0.25%)を添加する群の3群を準備した。そして、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化について、βカロテンのスペクトルにおいてピークを示す吸光度500nmの経時変化を5分毎に50分まで測定した。
【0045】
試験例1の結果を表1に示す。銅イオンを添加しなかったサンプルでは、50分経ってもβカロテンの黄色い色調は減少しなかったが、銅イオンが入ったものでは、βカロテンの黄色い色調は、ほぼ5分の一に低下した。この結果より、この退色の現象には、アルカリ性のpH、太陽光照射、銅イオンの存在の三つの要因が必要なこと。中でも銅イオンの存在が必須であることがわかった。一方、小麦粉を添加したものでは、銅イオンは存在するものの、ほとんど、色調は低下しなかった。
【0046】
【表1】
【0047】
(試験例2)
βカロテン等の色素に対して、錯体形成作用を発揮するキレート剤として従来より知られているEDTA、重合りん酸塩(ピロりん酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム)、クエン酸3ナトリウムを夫々添加した場合の退色を防止する効果を実証する試験である。
【0048】
調製したpH12の溶液にβカロテン添加濃度1.5ppm、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、退色防止剤として、何も添加しない群とEDTA、重合りん酸塩(ピロりん酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム)、クエン酸3ナトリウムを添加する群の計5群を準備し、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0049】
試験例2の試験結果を表2に示す。この表2中、退色した状況を×、やや色の残った状況を△、ほとんど退色しなかった状況を○で示した。何も添加しなかった群やクエン酸3ナトリウムを10mM添加した群では、一時間でともに退色したが、クエン酸3ナトリウム20mM添加では退色をやや抑制した。EDTA、重合りん酸塩(ピロりん酸ナトリウム、トリポリりん酸ナトリウム、ヘキサメタりん酸ナトリウム)を10mM添加した群では、明らかに退色のスピードは抑制され、強い錯体形成能(キレート作用とも言う)を持つ物質は、退色抑制作用があることが確認された。
【0050】
【表2】
【0051】
(試験例3)
金属との錯体形成が退色防止につながる試験例1の知見より、銅イオン等の金属イオンは陽イオンであることから、中性域やアルカリ性域において負の電荷を持つアミノ酸およびアミノ酸の高次構造体であるペプチドや蛋白質が、中性域やアルカリ性域下において銅イオン等と錯体を形成しβカロテン等の色素の退色を防止する効果が期待された。この試験例3では、上記の考えに基づき、食品に利用する上で種々の食品成分である炭水化物や蛋白質や脂質の退色防止効果を検討した。
【0052】
調製したpH12の溶液にβカロテン添加濃度1.5ppm、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、退色防止剤として、何も添加しない(蒸留水添加)群と炭水化物(小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、砂糖)、脂質(大豆油)、蛋白質(小麦粉、グルテン)をそれぞれ2%添加する群の計7群を準備し、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化をβカロテンの特異な黄色の色調の変化を一時間後に観察した。
【0053】
試験例3の試験結果を表3に示す。この表3中、退色した状況を×、やや色の残った状況を△、ほとんど退色しなかった状況を○で示した。何も添加しなかった群や炭水化物(小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、砂糖)、脂質(大豆油)を0.2%添加した群では、60分でともに退色し、添加の効果は見られなかった。一方、蛋白質(小麦粉、グルテン)を添加した群では、退色が抑制された。
【0054】
【表3】
【0055】
(試験例4)
食品成分の中で蛋白質が退色防止につながる試験例2の知見より、種々の蛋白質性食品材料の退色防止効果を検討した。
【0056】
調製したpH12の溶液にβカロテン添加濃度1.5ppm、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、退色防止剤として、陰性コントロールとしての小麦澱粉添加群と試験群である卵蛋白質(全卵、卵白、卵黄)、乳蛋白質(カゼイン、ホエイ)、小麦粉、大豆蛋白質、チキンエキス、鶏肉のミンチ、しょう油を各0.2%をそれぞれ添加する群の計11群を準備し、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0057】
試験例4の試験結果を表4に示す。この表4中、退色した状況を×、やや色の残った状況を△、ほとんど退色しなかった状況を○で示した。陰性コントロールとしての小麦澱粉添加群では、60分でともに退色し、退色防止効果は見られなかった。一方、卵蛋白質質(全卵、卵白、卵黄)、乳蛋白質(カゼイン、ホエイ)、小麦、大豆蛋白質、チキンエキス、鶏肉のミンチ、しょう油を添加した群では、いずれも退色が抑制された。
【0058】
【表4】
【0059】
(試験例5)
小麦粉(薄力粉)等の蛋白質性食品の各色素に対する退色防止効果を調べた。
【0060】
カロテンベース色素水溶液(1.5ppm、pH12)、アントシアニン系色素水溶液(1.5ppm、pH12)、フラボノイド系色素水溶液(1.5ppm、pH12)、食用黄色4号水溶液(1.5ppm、pH12)、食用赤色2号水溶液(1.5ppm、pH12)のそれぞれに、硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)と小麦粉(最終濃度0.2%)を添加した。そして、3群それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0061】
この結果を表5に示す。この表5中、0は退色なしの状態、5は真っ白に退色した状態である。この表5によると、いずれの色素においても小麦粉無添加区ではほぼ完全に退色したが、小麦粉添加区では、何れの合成着色料及び天然色素に対して退色防止効果を示すことが確認された。
【0062】
【表5】
【0063】
(試験例6)
アミノ酸とペプチドと蛋白質における退色防止効果とそのpHにおける影響を確認するために以下の試験を行った。βカロテン水溶液(1.5ppm、pH12及びpH10)に硫酸銅水溶液(最終濃度0.6ppm)を添加し、かつ、小麦グルテン蛋白質(0.05%)と小麦グルテン蛋白質加水分解物由来ペプチド(0.2%)とアミノ酸(0.2%)とイノシン酸ナトリウム(0.2%)を添加する群の8群を準備した。そして、それぞれに5万ルクスの日光を照射し、色調の変化を一時間後に観察した。
【0064】
この結果を表6に示す。この表6中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。この表6によると、アミノ酸に比べ、ペプチドや蛋白質では、より優れた抑制効果が示された。この効果の差は、よりアルカリ側(pH12)でより強く現れた。
【0065】
【表6】
【0066】
(試験例7)
この試験例7は、βカロテンが添加されたコンニャク芋製粉について、銅イオン、鉄イオンの退色効果と金属イオン濃度との関係を実証する試験である。
【0067】
コンニャク芋製粉0.1kg、カロテンベース色素1.5g(最終製品濃度6ppm)を水3.6kg(イオン交換水を用い、製品の最終濃度が銅イオン0.01 ppm、0.02 ppm、0.03 ppm、0.04 ppm、0.05 ppm、0.06 ppm、0.2 ppm、鉄イオン0.5 ppm、2 ppm、4ppm、8 ppm、12 ppm、16 ppm、20 ppmになるよう添加調整)に溶解し、均一になるまで攪拌し、2時間放置してペースト状にした。
【0068】
このペーストに2重量%濃度の石灰乳0.36kgを添加混合して粘性をもたせた後、所定の麺の形状で押し出して90℃、5分間加熱を行いゲル化させた。その後、太陽光(5万ルクス)を50分間照射し、退色状況を見た。尚、最終製品のβカロテン濃度は6ppmでpHは12であった。
【0069】
試験例7の結果を表7に示す。この表7中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。この結果、銅イオンは、製品中の銅イオン濃度が0.12ppmで明らかな退色効果を示した。一方、鉄イオン濃度では、250倍の30ppmで退色効果を示した。
【0070】
【表7】
【0071】
次に、本発明に係る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法のいろいろな実施例を説明するとともに、その効果を比較例と比較した結果を説明する。
【0072】
(実施例1)
コンニャク芋製粉1kg、0.2カロテンベース色素15g(最終製品濃度6ppm)、そして、全卵(最終製品濃度0.2%)を添加し、水36kg(無処理)に溶解し、均一になるまで攪拌し、2時間放置してペースト状にした。このペーストに2重量%濃度の石灰乳3.6kgを添加混合して粘性を持たせた後、所定の表面の形状で押し出し90℃、5分間加熱してゲル化させた。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0073】
(実施例2)
実施例1の全卵の代わりに卵白(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0074】
(実施例3)
実施例1の全卵の代わりに卵黄(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0075】
(実施例4)
実施例1の全卵の代わりにカゼインナトリウム(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0076】
(実施例5)
実施例1の全卵の代わりにホエイ(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0077】
(実施例6)
実施例1の全卵の代わりに小麦粉(最終製品濃度0.6%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0078】
(実施例7)
実施例1の全卵の代わりに大豆蛋白質(最終製品濃度0.2%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0079】
(実施例8)
実施例1の全卵の代わりにチキンエキス(最終製品濃度0.1%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0080】
(比較例1)
実施例1の全卵の代わりに小麦澱粉(最終製品濃度0.5%)を添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0081】
以上の実施例1〜8と比較例1を用いて、蛋白質などの退色防止効果を、5段階評価で退色状況を見ることにより調べた。この結果を以下の表8に示す。この表8中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。
【0082】
【表8】
【0083】
以下の実施例9〜13と比較例1を用いて、従来より知られているキレート剤と蛋白性食品材料の退色防止効果の相乗作用を調べた。
【0084】
(実施例9)
実施例6の小麦粉を最終製品濃度が0.1%となるように添加したことを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0085】
(実施例10)
実施例9の小麦粉の代わりにトリポリりん酸ナトリウムを最終製品濃度が(3mM)となるように添加したことを除いては実施例9と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0086】
(実施例11)
実施例10のトリポリりん酸ナトリウムの代わりにクエン酸3ナトリウムを最終製品濃度が(0.3%)となるように添加したことを除いては実施例10と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0087】
(実施例12)
実施例10のトリポリりん酸ナトリウムに小麦粉(最終濃度0.1%)を添加したことを除いては実施例10と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0088】
(実施例13)
実施例11のクエン酸3ナトリウムに小麦粉(最終濃度0.1%)を添加したことを除いては実施例11と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.2ppm、pHは12であった。
【0089】
実施例9〜13と比較例1との比較結果を表9に示す。この表9に示すように、小麦粉(0.1%)、トリポリりん酸ナトリウム(3mM)、クエン酸ナトリウム(0.3%)の単独添加群の退色防止効果は弱いものの、小麦粉(0.1%)+トリポリりん酸ナトリウム(3mM)、小麦粉(0.1%)+クエン酸ナトリウム(0.3%)のようなキレート剤と蛋白性食品材料を組み合わせて添加した区分では優れた退色防止の相乗効果が認められた。
【0090】
【表9】
【0091】
以下の実施例14〜17と比較例1を用いて金属イオン除去による退色防止効果を、調べた。
【0092】
(実施例14)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりにイオン交換カラム処理水36kgを使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.02ppm 、pHは12であった。
【0093】
(実施例15)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりに凝集剤処理水36kgを使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.08ppm 、pHは12であった。
【0094】
(実施例16)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりに活性炭処理水36kgを使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.1ppm 、pHは12であった。
【0095】
(実施例17)
実施例1の全卵を添加しなかったことと、水36kg(無処理)の代わりに水20kg(無処理)及びイオン交換カラム処理水16kgを混合して使用したこととを除いては実施例1と同様に処理した。尚、最終製品の銅イオン濃度は0.12ppm 、pHは12であった。
【0096】
以上の実施例14〜17と比較例1を用いて、金属イオン除去による退色防止効果を、5段階評価で退色状況を見ることにより調べた。この結果を以下の表10に示す。この表10中、0は退色なしで黄色い状態、5は真っ白に退色した状態である。
【0097】
この表10によると、無処理の水及び無処理の水とイオン交換水を5:4で混合した水で作成したコンニャクは、0.2ppm及び0.12ppmの銅イオン濃度があり、速やかに退色したが、活性炭や凝集剤やイオン交換カラム処理をした製品は製品中の銅イオン濃度が0.1ppm以下で、ほとんど退色しなかった。また、この操作の効果は、鉄イオンの多い水を使用した場合にも効果を示した。
【0098】
【表10】
【0099】
以上、本発明に係る退色防止食品、退色防止方法及び退色防止食品の製造方法の実施の形態を試験例、実施例とともに説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的事項の範囲内でいろいろな実施の態様があることは言うまでもない。
【0100】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、コンニャク等の色素を添加して色づけされた食品において、βカロテン等の色素の退色を防止することができる。
Claims (11)
- 金属イオンを含有し、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品であって、アミノ酸、ペプチド、蛋白質分解物又は蛋白質が、前記色素の退色防止のために添加されて成ることを特徴とする退色防止食品。
- 上記金属イオンは、銅イオン又は鉄イオンであることを特徴とする請求項1記載の退色防止食品
- 上記天然色素は、カロチノイド、フラボノイド又はアントシアニンであることを特徴とする請求項1又は2記載の退色防止食品
- 上記蛋白質は、小麦粉又はその精製物であるグルテンであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の退色防止食品。
- 上記食品は、コンニャク食品であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の退色防止食品。
- 上記金属イオンは、銅イオンが0.1ppm以下及び/又は鉄イオンが20ppm以下含まれていることを特徴とする請求項1、3、4又は5記載の退色防止食品。
- 金属イオンを含有し、合成着色料又は天然色素で色付けされた食品に、アミノ酸、ペプチド又は蛋白質を添加することにより、前記色素の退色を防止することを特徴とする着色食品の退色を防止する方法。
- 合成着色料又は天然色素で色付けされた食品を製造する際に、金属イオンを除去することにより前記色素の退色を防止することを特徴とする着色食品の退色を防止する方法。
- 金属イオンの除去は、活性炭による吸着、上記金属イオンよりイオン化傾向の強い物質若しくは凝集剤による沈殿除去、又はイオン交換若しくは活性炭の金属吸着能のあるカラムを使用することを特徴とする請求項8記載の着色食品の退色を防止する方法。
- 上記金属イオンは、銅イオン又は鉄イオンであることを特徴とする請求項7、8又は9記載の着色食品の退色を防止する方法。
- 上記食品は、コンニャク食品であることを特徴とする請求項6、7、8又は9記載の着色食品の退色を防止する方法。
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