JP2004204892A - 転がり軸受装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の車速検出装置では、装置そのものに着磁パルサリングと磁気センサとのギャップを正確に設定する手段は有していない。
【解決手段】第二環体２７を、外輪部材２の内周面端部に嵌着される第二筒状部２９と、第二筒状部２９から径方向に立上げられるとともに第一環体２６の環状取付け部３７の側面に所定の隙間を介して対向するセンサ支持部３９とから形成し、センサ支持部３９を、第二筒状部２９の端部から径方向内方に折曲した外径部４０と、外径部４０の端部から軸方向に沿うよう折曲した延長部４１と、延長部４１の端部から径方向内方に向けて折曲した内径部４２とから形成しているので、第二環体２７の外径部４０は、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を設定する基準となり、着磁リング３８および磁気センサ４３の所定離隔距離を正確に設定することができる。
【選択図】 図２
【解決手段】第二環体２７を、外輪部材２の内周面端部に嵌着される第二筒状部２９と、第二筒状部２９から径方向に立上げられるとともに第一環体２６の環状取付け部３７の側面に所定の隙間を介して対向するセンサ支持部３９とから形成し、センサ支持部３９を、第二筒状部２９の端部から径方向内方に折曲した外径部４０と、外径部４０の端部から軸方向に沿うよう折曲した延長部４１と、延長部４１の端部から径方向内方に向けて折曲した内径部４２とから形成しているので、第二環体２７の外径部４０は、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を設定する基準となり、着磁リング３８および磁気センサ４３の所定離隔距離を正確に設定することができる。
【選択図】 図２
Description
【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、車軸用の転がり軸受装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、車軸用の転がり軸受装置における外輪部材と内輪部材との間の環状空間を密封する密封装置に着磁パルサリングを取付け、この着磁パルサリングに軸方向で対向する位置に磁気センサを配置するよう、密封装置とは別部材に磁気センサを取付けたものがある（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
【特許文献１】
特開平５−２６２３３号
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の転がり軸受装置では、着磁パルサリングと磁気センサとの間のギャップを正確に設定することが困難であった。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明の転がり軸受装置は、固定輪と、この固定輪に同心に配置された回転輪と、前記固定輪と回転輪の対向周面間に配置された回転検出装置とを備え、前記回転検出装置は、前記回転輪に取付けられる第一環体と、前記固定輪に取付けられる第二環体と、シールリングとを有し、前記第一環体は、前記回転輪における前記固定輪との対向周面に嵌着される第一筒状部とこの第一筒状部から径方向に沿うように前記固定輪側に向けて立上げられた第一環状部とを有し、前記第二環体は、前記固定輪における前記回転輪との対向周面に嵌着される第二筒状部とこの第二筒状部から径方向に沿うよう前記回転輪側に向けて立上げられて前記第一環状部と軸方向に対向する第二環状部とを備え、前記シールリングは、前記第二環体の第二筒状部に嵌着される芯金とこの芯金に取付けられて前記第一環体の少なくとも第一筒状部の周面に摺接するシールリップを有する弾性シール体とを備え、前記第一環状体の第一環状部の側面に周方向に交互に磁気特性を変化させたパルサーリングを設け、前記第二環状体の第二環状部に前記パルサーリングと対向してパルサーリングの回転を検出する検出部を設けている。
【０００６】
この構成によれば、芯金に第二環体の第二筒状部を外嵌するようにして、芯金の端面に第二環体の第二環状部の固定輪側基部を当てることで、第一環体の第一環状部と第二環体の第二環状部との間に所定の軸方向距離を有する隙間が生じる。これにより、回転検出装置を回転輪と固定輪との間の空間に装着するのに先立って、第二環状部の固定輪側基部を基準に、第一環体の第一環状部と第二環体の第二環状部との間の距離を正確に設定することができる。
【０００７】
このようにして回転検出装置を組立てた後は、例えば第二環状部の固定輪側基部を軸方向に押圧することで、回転検出装置を回転輪と固定輪との間に、容易にかつ正確に装着することができる。
【０００８】
また、本発明の転がり軸受装置は、前記第一環体の第一筒状部は、第一環状部の基端部から軸方向に延設された延設部を有し、この延設部の周面と前記第二環体の第二環状部の周縁部との間に径方向に微小な寸法を有する密封部が設けられている。
【０００９】
このように第一環状部の延設部周面と第二環体の第二環状部の周縁部との間に非接触の密封部を設けた構成により、回転検出装置は密封装置として、その密封性をいっそう向上させることができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る転がり軸受装置を、車軸用転がり軸受装置を例に、図面に基づいて説明する。
【００１１】
図１は車軸用転がり軸受装置の全体構成を示す断面図、図２は要部部分拡大断面図である。
【００１２】
まず、図１に基づいて車軸用転がり軸受装置１の全体構成を説明する。すなわち、車体側に非回転に支持される固定輪としての外輪部材２と、この外輪部材２に２列の転動体（玉）３を介して軸心回りに回転自在に支持される回転輪としての内輪部材４とを備えている。
【００１３】
外輪部材２の車両インナ側（図において右側）Ｂ外周面に、車体側に組込まれたナックル５を取付けるための取付けフランジ６が一体的に形成される。外輪部材２は、取付けフランジ６にナックル５を介して、車体に軸心回りに非回転に組込まれる。
【００１４】
内輪部材４は、外輪部材２の径方向内方に対向する小径部７と、この小径部７の車両アウタ側（図において左側）Ａに一体的に形成された大径部８とを有する。小径部７の車両インナ側Ｂ端部外周面に環状溝１０が形成され、この環状溝１０に環状部材１１が嵌着されている。小径部７の外周面および環状部材１１の外周面に、保持器１２によって円周方向等配位置に保持された各列の転動体３の内輪軌道面１３ａ，１３ｂがそれぞれ形成されている。内輪部材４の中心には、不図示の駆動軸が挿通する挿通穴１５が形成されている。外輪部材２の内周面に、各列の転動体３の外輪軌道面１４ａ，１４ｂが形成されている。
【００１５】
大径部８の外周面に、ブレーキディスク１６およびタイヤホイール１７を重ねて取付けるためのハブフランジ１８が径方向外方に突出するよう一体的に形成されている。ハブフランジ１８のさらに車両アウタ側Ａに、ブレーキディスク１６およびタイヤホイール１７をハブフランジ１８に取付ける際に案内するための案内部１９が形成されている。
【００１６】
外輪部材２と内輪部材４との間の環状空間２０を軸方向両側で密封するためのインナ側密封装置２１およびアウタ側密封装置２２が設けられている。アウタ側密封装置２２は、図示しないが、外輪部材２の車両アウタ側Ａ端部内周面に嵌着される芯金と、この芯金に固着されて内輪部材４の外周面に接触するシールリップを有する弾性シール体とから構成されている。
【００１７】
次に、図２に基づいてインナ側密封装置２１の構成を詳細に説明する。これは、内輪部材４の軸心回りの回転状態（回転数）を検出する回転検出装置を兼用するものである。すなわちインナ側密封装置２１は、内輪部材４に取付けられた第一環体２６と、シールリップ２４を有する弾性シール体２５を取付けた芯金２３（シールリング）と、外輪部材２に取付けられた第二環体２７とを有する。
【００１８】
第一環体２６は、内輪部材４の車両インナ側Ｂ端部外周面（対向周面に相当する）に嵌着されて所定の軸方向幅を有する第一筒状部２８と、この第一筒状部２８に所定の軸方向幅（後述のラジアルリップ３１，３２が接触するのに充分な幅分）を残して重ね合わせるよう折曲された折曲部（延設部に相当する）３３と、この折曲部３３の車両アウタ側Ａ端部から径方向外方、すなわち外輪部材２側に立上げられて所定の高さ（後述のアキシャルリップ３６が接触するのに充分な幅分）を有する、第一環状部としての環状取付け部３７とを有している。これら第一筒状部２８、折曲部３３および環状取付け部３７は、鋼板をプレス成形することで一体に形成されている。
【００１９】
この環状取付け部３７の車両インナ側Ｂ面には、着磁リング（パルサーリングともいう）３８が固着されている。第一筒状部２８および折曲部３３の折曲部分３３ａの車両インナ側Ｂ端部位置は、環状部材１１の車両インナ側Ｂ端面に軸方向で一致した位置に設定されている。
【００２０】
第二環体２７は、外輪部材２の車両インナ側Ｂ内周面端部（対向周面）に嵌着される第二筒状部２９と、この第二筒状部２９から径方向に沿って、すなわち環状部材１１側に立上げられるとともに第一環体２６の環状取付け部３７の側面に、所定の軸方向距離を有する隙間を介して対向する、第二環状部としてのセンサ支持部３９とを備えている。
【００２１】
このセンサ支持部３９は、第二筒状部２９の車両インナ側Ｂ端部から径方向内方に向けて折曲された固定輪側基部に位置する外径部４０と、この外径部４０の径方向内方端部から軸方向に沿うよう車両インナ側Ｂに折曲して延長された延長部４１と、この延長部４１の端部から径方向内方に向けて折曲された内径部４２とから、鋼板をプレス成形することで一体的に形成されている。
【００２２】
なお、磁気センサ４３が、内径部４２の車両アウタ側Ａ面に取付けられている。磁気センサ４３の径方向中心と着磁リング３８の径方向中心とは互いに一致するよう、それぞれ内径部４２および環状取付け部３７に取付けられている。
【００２３】
センサ支持部３９（内径部４２）の中心に開口３９ａが形成され、この開口３９ａの内径Ｄ１は、折曲部３３の外径Ｄ２よりもわずかに大きく形成されてセンサ支持部３９の内周縁部と折曲部３３の外周面部との間にわずかな隙間δが形成され、かつ開口３９ａと折曲部３３とが軸方向で重なる位置に配置されることで、前記隙間δが非接触の密封部、すなわちシール用のラビリンスとして用いられている。
【００２４】
磁気センサ４３は、コネクタ４４を介して不図示の車体側の制御装置に電気的に接続され、このコネクタ４４は、外輪部材２に形成された取付け孔４５に挿通支持されている。なお、コネクタ４４の径方向内方端部位置と、センサ支持部３９の開口３９ａの内径面とは一致している。
【００２５】
芯金２３は、外輪部材２の内周面端部に前記第二環体２７の第二筒状部２９を介して嵌着される芯金筒状部３０と、この芯金筒状部３０の端部から径方向内方に沿って折曲された芯金環状部４６とから一体的に形成されている。
【００２６】
芯金２３に、弾性シール体２５が固着され、この弾性シール体２５は、前記ラジアルリップ３１，３２およびアキシャルリップ３６を有し、ラジアルリップ３１，３２は第一環体２６の第一筒状部２８表面（外周面）に所定の緊迫力でもって接触し、アキシャルリップ３６は環状取付け部３７の側面に所定の緊迫力でもって接触する。
【００２７】
センサ支持部３９の外径部４０の径方向高さは、芯金２３の芯金筒状部３０の厚みよりわずかに大きく設定され、センサ支持部３９の外径部４０における車両アウタ側Ａ面と芯金２３の芯金筒状部３０における車両インナ側Ｂ端面とが軸方向で接触されている。
【００２８】
上記構成において、内輪部材４とともに着磁リング３８が軸心回りに回転することにより、その回転状態を磁気センサ４３が検出して、例えば内輪部材４の回転数、すなわち車輪の回転数を検出するようになる。
【００２９】
ところで、インナ側密封装置２１は、転動体３を介して外輪部材２および内輪部材４を組付けた後、車両インナ側Ｂから環状空間２０に向けて装着されるものである。従って、インナ側密封装置２１は、環状空間２０に装着するに先立って組立てておく。インナ側密封装置２１を組立てるに際しては、次のようにして行う。
【００３０】
まず、第一環体２６と芯金２３とを、弾性シール体２５を介して互いに組付けるようにし、その後、第二環体２７を第一環体２６および芯金２３の組品に装着するようにする。このとき、芯金２３の芯金環状部４６における車両アウタ側Ａ面を不図示の受け具で受けた状態で、第二環体２７の第二筒状部２９を芯金２３の芯金筒状部３０外周面に外嵌するようにし、かつ第二環体２７のセンサ支持部３９の開口３９ａを第一環体２６の折曲部３３に外嵌するようにして、第二環体２７の第二筒状部２９を芯金２３の芯金筒状部３０外周面に押圧・圧入するようにする。
【００３１】
そしてセンサ支持部３９の外径部４０における車両アウタ側Ａ面が、芯金２３の芯金筒状部３０端面に当接するところで、第二環体２７の押圧・圧入を終了する。このとき、第一環体２６の環状取付け部３７に取付けられている着磁リング３８と、第二環体２７に取付けられている磁気センサ４３との軸方向のギャップは所定の量となる。すなわち、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を組立てる際の基準となる機能を有する。
【００３２】
上記のような、第一環体２６、芯金２３および第二環体２７の組品を、第二環体２７の第二筒状部２９の外周面を外輪部材２の内周面に、第一環体２６の第一筒状部２８の内周面を環状部材１１の外周面に押圧・圧入するようにして、外輪部材２および環状部材１１の間の環状空間２０に装着する。
【００３３】
このとき、上記組品を押圧・圧入する治具を用いて、少なくとも第二環体２７の外径部４０の車両インナ側Ｂ端面と、第一筒状部２８および折曲部３３の折曲部分の端部位置とを押圧するようにして、前記組品を装着する。すなわち、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着する際の押圧部として用いられる。
【００３４】
このようにして第一環体２６、芯金２３および第二環体２７の組品を、環状空間２０に装着した後、コネクタ４４を外輪部材２に形成してある取付け孔４５に挿通してコネクタ４４を介して不図示の車体側の制御装置に電気的に接続する。
【００３５】
上記のように、本発明の実施の形態では、第二環体２７を、外輪部材２の内周面端部に嵌着される第二筒状部２９と、第二筒状部２９から径方向に沿って立上げられるとともに第一環体２６の環状取付け部３７の側面に所定の軸方向距離を有する隙間を介して対向するセンサ支持部３９とから構成している。
【００３６】
そして、センサ支持部３９を、第二筒状部２９の端部から径方向内方に向けて折曲された外径部４０と、外径部４０の端部から軸方向に沿うよう折曲して延長された延長部４１と、延長部４１の端部から径方向内方に向けて折曲された内径部４２とから一体的に形成している。
【００３７】
この構成により、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を組立てる際に、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を設定するための基準となる。従って、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着するに先立って正確に設定することができる。
【００３８】
また、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着した後も、着磁リング３８と磁気センサ４３の軸方向の所定距離を正確に保持することができる。
【００３９】
また、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着する際に、インナ側密封装置２１を押圧・圧入する際の治具の被押圧部としての機能を有することから、装着の容易性もあわせて実現することができる。
【００４０】
さらに、センサ支持部３９の開口３９ａの内径Ｄ１は、折曲部３３の外径Ｄ２よりもわずかに大きく形成されて内径部４２と折曲部３３との間にわずかな隙間δが形成され、この隙間δがシール用のラビリンスとして用いられている構成であるので、インナ側密封装置２１の密封性を良好にすることができる。
【００４１】
なお上記実施の形態では、磁気センサ４３は、第二環体２７の内径部４２の車両アウタ側面に取付けたが、これに限定されるものではなく、車両インナ側面に取付けてもよく、この場合、インナ側密封装置２１の軸方向寸法をいっそう小型化させることができる。
【００４２】
さらに上記実施の形態では、第一環体２６の環状取付け部３７には、着磁リング３８を別体で設けているが、着磁リング３８を設けることなく第一環体２６の環状取付け部３７そのものの車両インナ側面Ｂに凹凸部を形成してパルス発生用の被検出部として用いることもできる。この場合も上記実施の形態と同様に、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着するに先立って正確に設定することができ、かつ装着の容易性もあわせて実現することができる。
【００４３】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明によれば、着磁パルサリングと磁気センサとの間のギャップを正確に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態を示す車軸用転がり軸受装置の全体構成を示す断面図である。
【図２】同じく要部部分拡大断面図である。
【符号の説明】
１ 車軸用転がり軸受装置
２ 外輪部材
４ 内輪部材
２１ インナ側密封装置
２２ アウタ側密封装置
２３ 芯金
２４ シールリップ
２５ 弾性シール体
２６ 第一環体
２７ 第二環体
２８ 第一筒状部
３３ 折曲部
３７ 環状取付け部
３８ 着磁リング
３９ センサ支持部
４０ 外径部
４１ 延長部
４２ 内径部
δ 隙間
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、車軸用の転がり軸受装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、車軸用の転がり軸受装置における外輪部材と内輪部材との間の環状空間を密封する密封装置に着磁パルサリングを取付け、この着磁パルサリングに軸方向で対向する位置に磁気センサを配置するよう、密封装置とは別部材に磁気センサを取付けたものがある（例えば、特許文献１参照）。
【０００３】
【特許文献１】
特開平５−２６２３３号
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の転がり軸受装置では、着磁パルサリングと磁気センサとの間のギャップを正確に設定することが困難であった。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本発明の転がり軸受装置は、固定輪と、この固定輪に同心に配置された回転輪と、前記固定輪と回転輪の対向周面間に配置された回転検出装置とを備え、前記回転検出装置は、前記回転輪に取付けられる第一環体と、前記固定輪に取付けられる第二環体と、シールリングとを有し、前記第一環体は、前記回転輪における前記固定輪との対向周面に嵌着される第一筒状部とこの第一筒状部から径方向に沿うように前記固定輪側に向けて立上げられた第一環状部とを有し、前記第二環体は、前記固定輪における前記回転輪との対向周面に嵌着される第二筒状部とこの第二筒状部から径方向に沿うよう前記回転輪側に向けて立上げられて前記第一環状部と軸方向に対向する第二環状部とを備え、前記シールリングは、前記第二環体の第二筒状部に嵌着される芯金とこの芯金に取付けられて前記第一環体の少なくとも第一筒状部の周面に摺接するシールリップを有する弾性シール体とを備え、前記第一環状体の第一環状部の側面に周方向に交互に磁気特性を変化させたパルサーリングを設け、前記第二環状体の第二環状部に前記パルサーリングと対向してパルサーリングの回転を検出する検出部を設けている。
【０００６】
この構成によれば、芯金に第二環体の第二筒状部を外嵌するようにして、芯金の端面に第二環体の第二環状部の固定輪側基部を当てることで、第一環体の第一環状部と第二環体の第二環状部との間に所定の軸方向距離を有する隙間が生じる。これにより、回転検出装置を回転輪と固定輪との間の空間に装着するのに先立って、第二環状部の固定輪側基部を基準に、第一環体の第一環状部と第二環体の第二環状部との間の距離を正確に設定することができる。
【０００７】
このようにして回転検出装置を組立てた後は、例えば第二環状部の固定輪側基部を軸方向に押圧することで、回転検出装置を回転輪と固定輪との間に、容易にかつ正確に装着することができる。
【０００８】
また、本発明の転がり軸受装置は、前記第一環体の第一筒状部は、第一環状部の基端部から軸方向に延設された延設部を有し、この延設部の周面と前記第二環体の第二環状部の周縁部との間に径方向に微小な寸法を有する密封部が設けられている。
【０００９】
このように第一環状部の延設部周面と第二環体の第二環状部の周縁部との間に非接触の密封部を設けた構成により、回転検出装置は密封装置として、その密封性をいっそう向上させることができる。
【００１０】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態に係る転がり軸受装置を、車軸用転がり軸受装置を例に、図面に基づいて説明する。
【００１１】
図１は車軸用転がり軸受装置の全体構成を示す断面図、図２は要部部分拡大断面図である。
【００１２】
まず、図１に基づいて車軸用転がり軸受装置１の全体構成を説明する。すなわち、車体側に非回転に支持される固定輪としての外輪部材２と、この外輪部材２に２列の転動体（玉）３を介して軸心回りに回転自在に支持される回転輪としての内輪部材４とを備えている。
【００１３】
外輪部材２の車両インナ側（図において右側）Ｂ外周面に、車体側に組込まれたナックル５を取付けるための取付けフランジ６が一体的に形成される。外輪部材２は、取付けフランジ６にナックル５を介して、車体に軸心回りに非回転に組込まれる。
【００１４】
内輪部材４は、外輪部材２の径方向内方に対向する小径部７と、この小径部７の車両アウタ側（図において左側）Ａに一体的に形成された大径部８とを有する。小径部７の車両インナ側Ｂ端部外周面に環状溝１０が形成され、この環状溝１０に環状部材１１が嵌着されている。小径部７の外周面および環状部材１１の外周面に、保持器１２によって円周方向等配位置に保持された各列の転動体３の内輪軌道面１３ａ，１３ｂがそれぞれ形成されている。内輪部材４の中心には、不図示の駆動軸が挿通する挿通穴１５が形成されている。外輪部材２の内周面に、各列の転動体３の外輪軌道面１４ａ，１４ｂが形成されている。
【００１５】
大径部８の外周面に、ブレーキディスク１６およびタイヤホイール１７を重ねて取付けるためのハブフランジ１８が径方向外方に突出するよう一体的に形成されている。ハブフランジ１８のさらに車両アウタ側Ａに、ブレーキディスク１６およびタイヤホイール１７をハブフランジ１８に取付ける際に案内するための案内部１９が形成されている。
【００１６】
外輪部材２と内輪部材４との間の環状空間２０を軸方向両側で密封するためのインナ側密封装置２１およびアウタ側密封装置２２が設けられている。アウタ側密封装置２２は、図示しないが、外輪部材２の車両アウタ側Ａ端部内周面に嵌着される芯金と、この芯金に固着されて内輪部材４の外周面に接触するシールリップを有する弾性シール体とから構成されている。
【００１７】
次に、図２に基づいてインナ側密封装置２１の構成を詳細に説明する。これは、内輪部材４の軸心回りの回転状態（回転数）を検出する回転検出装置を兼用するものである。すなわちインナ側密封装置２１は、内輪部材４に取付けられた第一環体２６と、シールリップ２４を有する弾性シール体２５を取付けた芯金２３（シールリング）と、外輪部材２に取付けられた第二環体２７とを有する。
【００１８】
第一環体２６は、内輪部材４の車両インナ側Ｂ端部外周面（対向周面に相当する）に嵌着されて所定の軸方向幅を有する第一筒状部２８と、この第一筒状部２８に所定の軸方向幅（後述のラジアルリップ３１，３２が接触するのに充分な幅分）を残して重ね合わせるよう折曲された折曲部（延設部に相当する）３３と、この折曲部３３の車両アウタ側Ａ端部から径方向外方、すなわち外輪部材２側に立上げられて所定の高さ（後述のアキシャルリップ３６が接触するのに充分な幅分）を有する、第一環状部としての環状取付け部３７とを有している。これら第一筒状部２８、折曲部３３および環状取付け部３７は、鋼板をプレス成形することで一体に形成されている。
【００１９】
この環状取付け部３７の車両インナ側Ｂ面には、着磁リング（パルサーリングともいう）３８が固着されている。第一筒状部２８および折曲部３３の折曲部分３３ａの車両インナ側Ｂ端部位置は、環状部材１１の車両インナ側Ｂ端面に軸方向で一致した位置に設定されている。
【００２０】
第二環体２７は、外輪部材２の車両インナ側Ｂ内周面端部（対向周面）に嵌着される第二筒状部２９と、この第二筒状部２９から径方向に沿って、すなわち環状部材１１側に立上げられるとともに第一環体２６の環状取付け部３７の側面に、所定の軸方向距離を有する隙間を介して対向する、第二環状部としてのセンサ支持部３９とを備えている。
【００２１】
このセンサ支持部３９は、第二筒状部２９の車両インナ側Ｂ端部から径方向内方に向けて折曲された固定輪側基部に位置する外径部４０と、この外径部４０の径方向内方端部から軸方向に沿うよう車両インナ側Ｂに折曲して延長された延長部４１と、この延長部４１の端部から径方向内方に向けて折曲された内径部４２とから、鋼板をプレス成形することで一体的に形成されている。
【００２２】
なお、磁気センサ４３が、内径部４２の車両アウタ側Ａ面に取付けられている。磁気センサ４３の径方向中心と着磁リング３８の径方向中心とは互いに一致するよう、それぞれ内径部４２および環状取付け部３７に取付けられている。
【００２３】
センサ支持部３９（内径部４２）の中心に開口３９ａが形成され、この開口３９ａの内径Ｄ１は、折曲部３３の外径Ｄ２よりもわずかに大きく形成されてセンサ支持部３９の内周縁部と折曲部３３の外周面部との間にわずかな隙間δが形成され、かつ開口３９ａと折曲部３３とが軸方向で重なる位置に配置されることで、前記隙間δが非接触の密封部、すなわちシール用のラビリンスとして用いられている。
【００２４】
磁気センサ４３は、コネクタ４４を介して不図示の車体側の制御装置に電気的に接続され、このコネクタ４４は、外輪部材２に形成された取付け孔４５に挿通支持されている。なお、コネクタ４４の径方向内方端部位置と、センサ支持部３９の開口３９ａの内径面とは一致している。
【００２５】
芯金２３は、外輪部材２の内周面端部に前記第二環体２７の第二筒状部２９を介して嵌着される芯金筒状部３０と、この芯金筒状部３０の端部から径方向内方に沿って折曲された芯金環状部４６とから一体的に形成されている。
【００２６】
芯金２３に、弾性シール体２５が固着され、この弾性シール体２５は、前記ラジアルリップ３１，３２およびアキシャルリップ３６を有し、ラジアルリップ３１，３２は第一環体２６の第一筒状部２８表面（外周面）に所定の緊迫力でもって接触し、アキシャルリップ３６は環状取付け部３７の側面に所定の緊迫力でもって接触する。
【００２７】
センサ支持部３９の外径部４０の径方向高さは、芯金２３の芯金筒状部３０の厚みよりわずかに大きく設定され、センサ支持部３９の外径部４０における車両アウタ側Ａ面と芯金２３の芯金筒状部３０における車両インナ側Ｂ端面とが軸方向で接触されている。
【００２８】
上記構成において、内輪部材４とともに着磁リング３８が軸心回りに回転することにより、その回転状態を磁気センサ４３が検出して、例えば内輪部材４の回転数、すなわち車輪の回転数を検出するようになる。
【００２９】
ところで、インナ側密封装置２１は、転動体３を介して外輪部材２および内輪部材４を組付けた後、車両インナ側Ｂから環状空間２０に向けて装着されるものである。従って、インナ側密封装置２１は、環状空間２０に装着するに先立って組立てておく。インナ側密封装置２１を組立てるに際しては、次のようにして行う。
【００３０】
まず、第一環体２６と芯金２３とを、弾性シール体２５を介して互いに組付けるようにし、その後、第二環体２７を第一環体２６および芯金２３の組品に装着するようにする。このとき、芯金２３の芯金環状部４６における車両アウタ側Ａ面を不図示の受け具で受けた状態で、第二環体２７の第二筒状部２９を芯金２３の芯金筒状部３０外周面に外嵌するようにし、かつ第二環体２７のセンサ支持部３９の開口３９ａを第一環体２６の折曲部３３に外嵌するようにして、第二環体２７の第二筒状部２９を芯金２３の芯金筒状部３０外周面に押圧・圧入するようにする。
【００３１】
そしてセンサ支持部３９の外径部４０における車両アウタ側Ａ面が、芯金２３の芯金筒状部３０端面に当接するところで、第二環体２７の押圧・圧入を終了する。このとき、第一環体２６の環状取付け部３７に取付けられている着磁リング３８と、第二環体２７に取付けられている磁気センサ４３との軸方向のギャップは所定の量となる。すなわち、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を組立てる際の基準となる機能を有する。
【００３２】
上記のような、第一環体２６、芯金２３および第二環体２７の組品を、第二環体２７の第二筒状部２９の外周面を外輪部材２の内周面に、第一環体２６の第一筒状部２８の内周面を環状部材１１の外周面に押圧・圧入するようにして、外輪部材２および環状部材１１の間の環状空間２０に装着する。
【００３３】
このとき、上記組品を押圧・圧入する治具を用いて、少なくとも第二環体２７の外径部４０の車両インナ側Ｂ端面と、第一筒状部２８および折曲部３３の折曲部分の端部位置とを押圧するようにして、前記組品を装着する。すなわち、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着する際の押圧部として用いられる。
【００３４】
このようにして第一環体２６、芯金２３および第二環体２７の組品を、環状空間２０に装着した後、コネクタ４４を外輪部材２に形成してある取付け孔４５に挿通してコネクタ４４を介して不図示の車体側の制御装置に電気的に接続する。
【００３５】
上記のように、本発明の実施の形態では、第二環体２７を、外輪部材２の内周面端部に嵌着される第二筒状部２９と、第二筒状部２９から径方向に沿って立上げられるとともに第一環体２６の環状取付け部３７の側面に所定の軸方向距離を有する隙間を介して対向するセンサ支持部３９とから構成している。
【００３６】
そして、センサ支持部３９を、第二筒状部２９の端部から径方向内方に向けて折曲された外径部４０と、外径部４０の端部から軸方向に沿うよう折曲して延長された延長部４１と、延長部４１の端部から径方向内方に向けて折曲された内径部４２とから一体的に形成している。
【００３７】
この構成により、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を組立てる際に、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を設定するための基準となる。従って、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着するに先立って正確に設定することができる。
【００３８】
また、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着した後も、着磁リング３８と磁気センサ４３の軸方向の所定距離を正確に保持することができる。
【００３９】
また、第二環体２７の外径部４０は、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着する際に、インナ側密封装置２１を押圧・圧入する際の治具の被押圧部としての機能を有することから、装着の容易性もあわせて実現することができる。
【００４０】
さらに、センサ支持部３９の開口３９ａの内径Ｄ１は、折曲部３３の外径Ｄ２よりもわずかに大きく形成されて内径部４２と折曲部３３との間にわずかな隙間δが形成され、この隙間δがシール用のラビリンスとして用いられている構成であるので、インナ側密封装置２１の密封性を良好にすることができる。
【００４１】
なお上記実施の形態では、磁気センサ４３は、第二環体２７の内径部４２の車両アウタ側面に取付けたが、これに限定されるものではなく、車両インナ側面に取付けてもよく、この場合、インナ側密封装置２１の軸方向寸法をいっそう小型化させることができる。
【００４２】
さらに上記実施の形態では、第一環体２６の環状取付け部３７には、着磁リング３８を別体で設けているが、着磁リング３８を設けることなく第一環体２６の環状取付け部３７そのものの車両インナ側面Ｂに凹凸部を形成してパルス発生用の被検出部として用いることもできる。この場合も上記実施の形態と同様に、着磁リング３８および磁気センサ４３の軸方向の所定離隔距離を、インナ側密封装置２１を環状空間２０に装着するに先立って正確に設定することができ、かつ装着の容易性もあわせて実現することができる。
【００４３】
【発明の効果】
以上の説明から明らかな通り、本発明によれば、着磁パルサリングと磁気センサとの間のギャップを正確に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態を示す車軸用転がり軸受装置の全体構成を示す断面図である。
【図２】同じく要部部分拡大断面図である。
【符号の説明】
１ 車軸用転がり軸受装置
２ 外輪部材
４ 内輪部材
２１ インナ側密封装置
２２ アウタ側密封装置
２３ 芯金
２４ シールリップ
２５ 弾性シール体
２６ 第一環体
２７ 第二環体
２８ 第一筒状部
３３ 折曲部
３７ 環状取付け部
３８ 着磁リング
３９ センサ支持部
４０ 外径部
４１ 延長部
４２ 内径部
δ 隙間
Claims (2)
- 固定輪と、この固定輪に同心に配置された回転輪と、前記固定輪と回転輪の対向周面間に配置された回転検出装置とを備えた転がり軸受装置であって、
前記回転検出装置は、前記回転輪に取付けられる第一環体と、前記固定輪に取付けられる第二環体と、シールリングとを有し、
前記第一環体は、前記回転輪における前記固定輪との対向周面に嵌着される第一筒状部とこの第一筒状部から径方向に沿うように前記固定輪側に向けて立上げられた第一環状部とを有し、
前記第二環体は、前記固定輪における前記回転輪との対向周面に嵌着される第二筒状部とこの第二筒状部から径方向に沿うよう前記回転輪側に向けて立上げられて前記第一環状部と軸方向に対向する第二環状部とを備え、
前記シールリングは、前記第二環体の第二筒状部に嵌着される芯金とこの芯金に取付けられて前記第一環体の少なくとも第一筒状部の周面に摺接するシールリップを有する弾性シール体とを備え、
前記第一環状体の第一環状部の側面に周方向に交互に磁気特性を変化させたパルサーリングを設け、前記第二環状体の第二環状部に前記パルサーリングと対向してパルサーリングの回転を検出する検出部を設けた、ことを特徴とする転がり軸受装置。 - 請求項１の転がり軸受装置において、
前記第一環体の第一筒状部は、第一環状部の基端部から軸方向に延設された延設部を有し、この延設部の周面と前記第二環体の第二環状部の周縁部との間に径方向に微小な寸法を有する密封部が設けられた、ことを特徴とする転がり軸受装置。
Priority Applications (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002372497A JP2004204892A (ja) | 2002-12-24 | 2002-12-24 | 転がり軸受装置 |
Applications Claiming Priority (1)
| Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
|---|---|---|---|
| JP2002372497A JP2004204892A (ja) | 2002-12-24 | 2002-12-24 | 転がり軸受装置 |
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| JP2004204892A true JP2004204892A (ja) | 2004-07-22 |
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ID=32811089
Family Applications (1)
| Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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| JP2002372497A Pending JP2004204892A (ja) | 2002-12-24 | 2002-12-24 | 転がり軸受装置 |
Country Status (1)
| Country | Link |
|---|---|
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| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
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-
2002
- 2002-12-24 JP JP2002372497A patent/JP2004204892A/ja active Pending
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