JP2004189892A - 水性エマルジョンの製法および接着剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐水性、低温、とくに氷点に近い極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れた水性エマルジョンおよび接着剤を提供すること。
【解決手段】1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下に、ビニルエステル系単量体を乳化重合するに際し、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することを特徴とする水性エマルジョンの製法および得られる水性エマルジョンからなる接着剤。
【選択図】なし
【解決手段】1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下に、ビニルエステル系単量体を乳化重合するに際し、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することを特徴とする水性エマルジョンの製法および得られる水性エマルジョンからなる接着剤。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水性、低温、とくに氷点近くの極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れる水性エマルジョンの製法および接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)はエチレン性不飽和単量体、特に酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体の乳化重合用保護コロイドとして広く用いられており、これを保護コロイドとして用いて乳化重合して得られるビニルエステル系水性エマルジョンは紙用、木工用およびプラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用および不織製品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で広く用いられている。
しかしながら、このような水性エマルジョンのあるものは、耐水性が悪く、エマルジョン粘度の温度依存性が大きいなどの欠点を有している。特に接着剤用途においては耐水性が問題とされる場合が多い。
【0003】
乳化重合用分散剤としてのPVA系重合体は、一般的には鹸化度98モル%程度のいわゆる“完全鹸化PVA”と鹸化度88モル%程度の“部分鹸化PVA”があり、前者を使用した場合、比較的耐水性は良好なものの、いまだ十分とはいえず、さらにエマルジョン粘度の温度依存性が大きいという欠点がある。他方、後者のPVA系重合体を使用した場合、エマルジョン粘度の温度依存性は余り大きくないものの、いまだ十分とはいえず、さらに耐水性に劣る欠点を有している。このような欠点を改良するために、両者のPVA系重合体の併用、両者の中間的な鹸化度のPVA系重合体の使用等が行われているが、耐水性、エマルジョン粘度の温度依存性を同時に改善することはできなかった。そこで、エチレン単位を含有するビニルアルコール系重合体が提案(特許文献1)され、耐水性と低温放置安定性が改善された。さらに、少量のアクリル酸を含むPVA系重合体を保護コロイドとする手法が提案(特許文献2)されたが、未だ低温における粘度安定性は十分とはいえず、また、氷点下になるような過酷な条件下における安定性も十分ではなかった。また、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体を分散剤として使用した、耐水性、温度依存性の小さい、水性エマルジョンが提案されている(特許文献3)が、氷点近くの極低温における粘度安定性はかならずしも充分優れているとは言えない。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−81666号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平7−145363号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2001−220484号公報(特許請求の範囲、[0010])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、耐水性、低温、とくに氷点近くの極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れる水性エマルジョンの製法および接着剤を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下に、ビニルエステル系単量体を乳化重合するに際し、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することを特徴とする水性エマルジョンの製法および接着剤を提供することによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、分散剤として使用するビニルアルコール系重合体の1,2−グリコール結合の含有量は1.9モル%以上であることが必要であり、より好ましくは1.95モル%以上、さらには2.0モル%以上、最適には2.1モル%以上である。1,2−グリコール結合の含有量が1.9モル%未満の場合、耐水性が低下し、低温、とくに極低温における粘度安定性が低下し、さらには重合安定性も低下する懸念が生じる。また、1,2−グリコール結合の含有量は4モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.5モル%以下、最適には3.2モル%以下である。ここで、1,2−グリコール結合の含有量はNMRスペクトルの解析から求められる。
【0008】
上記の1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法が使用可能である。一例としてビニレンカーボネートを上記の1,2−グリコール結合量になるようにビニルエステルと共重合する方法、ビニルエステルの重合温度を通常の条件より高い温度、例えば75〜200℃で、加圧下に重合する方法などが挙げられる。後者の方法においては、重合温度は95〜190℃であることが好ましく、100〜180℃であることが特に好ましい。また加圧条件としては、重合系が沸点以下になるように選択することが重要であり、好適には0.2MPa以上、さらに好適には0.3MPa以上である。また上限は5MPa以下が好適であり、さらに3MPa以下がより好適である。
【0009】
また、本発明においては、上記の1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体は、さらにα−オレフィン単位を1〜20モ%含有することが好ましい形態のひとつである。α−オレフィン単位の含有量は、好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは1.5〜8モル%である。この重合体を使用することにより、水性エマルジョンの極低温下における粘度安定性がより改善される。
α−オレフィン単位としてはエチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられ、好適にはエチレンが用いられる。
【0010】
この重合体の製法としては、例えば、ビニレンカーボネートを上記の1,2−グリコール結合量になるようα−オレフィンとビニルエステル系単量体とを共重合する方法、α−オレフィンとビニルエステル系単量体を共重合する際、重合温度を通常の条件より高い温度、例えば70〜200℃で、加圧下に重合する方法などが挙げられる。後者の方法において、好ましい重合温度は、70〜190℃であり、より好ましくは75〜160℃である。重合はラジカル重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などいずれの方法でも行うことができるが、溶液重合、とくにメタノールを溶媒とする溶液重合法が好適である。このようにして得られたビニルエステル重合体を通常の方法によりけん化することによりビニルアルコール系重合体が得られる。
また、ここで、ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、一般に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0011】
また、上記の1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合し、またはビニルエステルとエチレンを共重合して得られた(共)重合体をけん化することによって得られる末端にメルカプト基またはカルボキシル基を有する変性物も用いることができる。
【0012】
1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体のけん化度は、特に制限されないが、60モル%以上が好適であり、より好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上である。けん化度が60モル%未満の場合には、ビニルアルコール系重合体本来の性質である水溶性が低下する懸念が生じる。また本発明の目的とする水性エマルジョンを得るためには該ビニルアルコール系重合体の重合度(粘度平均重合度)は100〜8000であることが好ましく、300〜3000がより好ましい。
【0013】
次に、本発明において乳化重合に用いられるビニルエステル系単量体としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、酢酸ビニルが経済的にみて好ましい。
本発明において、乳化重合時に、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することは重要である。カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量が0.1重量%未満では低温、とくに氷点近くの極低温における粘度安定性、耐水性が低下する恐れがある。また10重量%をこえた場合、水性エマルジョンの粘度が高くなり、コーティングなどの作業に支障をきたす恐れがあり、また氷点近くの極低温における粘度安定性が低下する。カルボキシル基含有不飽和単量体の下限値の好適な含有量は、0.2重量%以上、最適には0.3重量%以上である。また上限値の好適な含有量は7重量%以下、最適には5重量%以下である。
カルボキシル基含有不飽和単量体としては、カルボキシル基またはその酸無水物基を有する不飽和化合物であれば特に限定されない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸などが挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0014】
カルボキシル基含有不飽和単量体は、乳化重合時のどの段階で添加してもよいが、カルボキシル基含有不飽和単量体を、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の水系に添加し、さらに重合開始剤を添加して、カルボキシル基含有不飽和単量体をあらかじめ重合し、次いでビニルエステル系単量体を添加して乳化重合する方法が最適である。この場合、カルボキシル基含有不飽和単量体は、カルボキシル基含有不飽和単量体の重合体の単量体成分として、また1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体のグラフト成分して、さらにまた残部のカルボキシル基含有不飽和単量体はビニルエステル系単量体との共重合成分として、それぞれ使用される。
また、カルボキシル基含有不飽和単量体は、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体からなる水系に、ビニルエステル系単量体および触媒と共に添加し、乳化重合することもできる。この場合は、カルボキシル基含有不飽和単量体は、主にビニルエステルとの共重合成分として使用される。
【0015】
乳化重合においては、水、重合触媒、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体からなる分散剤、ビニルエステル系単量体、カルボキシル基含有不飽和単量体をそれぞれ適宜同時添加、または逐次添加する方法が採用される。ここで、重合開始剤としては、通常乳化重合に用いられる、過酸化水素、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム等の過酸化物が用いられ、酒石酸、酒石酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリット、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤と共に用いても構わない。
【0016】
本発明においては、上記ビニルエステル系単量体とカルボキシル基含有不飽和単量体以外に、これらと共重合しうる他の単量体を使用することもできる。これらの単量体としては、、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン;塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリドなどのハロゲン化オレフィン;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物;さらには、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩などのアクリルアミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンスルホン酸およびナトリウム、カリウム塩などのスチレン系単量体;その他N−ビニルピロリドンなど;また、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体が挙げられ、これらは単独あるいは二種以上混合して用いることができる。これらの単量体の使用量は使用する全単量体に対し50重量%以下が好適であり、さらには40重量%以下がより好適である。これらの単量体のうちエチレンは、後述する実施例からも明らかなように、とくに極低温下における粘度安定性、さらには凍結融解安定性を向上させることから好適な態様である。エチレンを使用する場合のエチレン含有量の好適な下限値は全単量体に対し2重量%以上、最適には好適3重量%以上であり、好適な上限値は50重量%以下、さらには40重量%以下である。
【0017】
本発明の目的を達成するためには、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の使用量はビニルエステル系単量体とカルボキシル基含有単量体などの使用する全単量体の合計量100重量部に対して1〜20重量部であることが好適であり、より好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部の範囲である。
【0018】
上記の方法で得られた水性エマルジョンは、そのまま用いることもできるが、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の各種エマルジョンを添加して用いることができる。さらにまた、必要に応じて、従来公知のアニオン性、ノニオン性あるいはカチオン性の界面活性剤や、ヒドロキシエチルセルロースを併用することができるし、また本発明の目的を損なわない範囲で1,2−グリコール結合量が1.9モル%より少ないビニルアルコール系重合体を併用することもできる。
【0019】
このようにして得られた水性エマルジョンは、耐水性、低温、とくに氷点に近い極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れているため、各種接着剤、とくに紙管、製袋、合紙、段ボール用等の紙、パルプなどの紙加工用接着剤、フラッシュパネル、集成材、ツキ板、合板加工用、合板二次加工用(練り合わせ)、一般木工等の木工用接着剤および各種プラスチック用の接着剤等として好適に用いられる。
【0020】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。また、得られた接着剤の物性(耐水性、低温における粘度安定性、凍結融解安定性、耐皮張り性)を下記の要領で評価した。
【0021】
(エマルジョンの評価)
(1)耐水性
得られた接着剤を紙管用原紙に30g/m2塗布し、ただちに他の紙管用原紙と接着した。ハンドロールで3回圧締し、室温で24時間放置した。その後、得られたサンプルを30℃の水中に24時間浸漬後、接着状態を観察し、以下の基準により評価した。
◎完全に材破、○ほぼ材破、△一部材破、×剥離
(2)低温における粘度安定性
接着剤を0℃において1週間放置、放置後の粘度(0℃)を放置前の30℃における粘度で割った数値を低温における粘度安定性の指標とした。粘度はB型粘度計(20rpm)を用いて測定。
(3)凍結融解安定性
接着剤50gをポリエチレン製のびんに取り、試料を−15℃で16時間保った後、30℃の恒温水槽中に1時間放置し、その後状態を観察、以下の基準により評価した。
◎流動性良好、○増粘するも流動性有り、△混ぜれば流動性戻る、×ゲル化
(3)耐皮張り性
エマルジョンをPETフィルム上に200g/m2で流延、経時的にエマルジョン塗布面に先端の鋭い治具(千枚通し)を横断させ、形成される魚骨模様を観察し、5秒以上軌跡が残る場合に皮張り時間とした。
【0022】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300g、PVA−1(重合度1700、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量2.2モル%)26gおよびアクリル酸2.6gを仕込み95℃で完全に溶解した。その後80℃に調整し、過硫酸カリウムの1%水溶液を5g添加し30分間、アクリル酸の重合を行った。次に、系を冷却、200rpmで撹拌しながら、60℃に調整した後、酒石酸の10%水溶液を4.4gおよび5%過酸化水素水3gを添加後、酢酸ビニル26gを仕込み重合を開始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量1重量%未満)を確認した。次に酒石酸の10%水溶液を0.9gおよび5%過酸化水素水3gを添加後、酢酸ビニル234gを2時間にわたって連続的に添加し、重合温度80℃に維持して重合を完結させた。冷却後、60メッシュのステンレス製金網を用い、ろ過した。以上の結果、固形分濃度47.5%のポリ酢酸ビニル系エマルジョンが得られた。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果を表1に示す。表中DHはけん化度を示し、Etはエチレンを示す。
【0023】
比較例1
実施例1において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−2{(株)クラレ製PVA−117:重合度1700、けん化度98.5モル%、1,2−グリコール含有量1.6モル%}を用いた他は、実施例1と同様にして固形分濃度47.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0024】
実施例2
窒素吹き込み口、温度計、攪拌機を備えた耐圧オートクレーブにPVA−1の7.5%水溶液100gおよびアクリル酸4gを仕込み、80℃において過硫酸カリウムの1%水溶液を5g添加し30分間、アクリル酸の重合を行った。その後、系を60℃に昇温してから、窒素置換を行った。酢酸ビニル8gを仕込んだ後、エチレンを4.4MPa(45kg/cm2)まで加圧し、2.5%過酸化水素水溶液0.9gおよび2%酒石酸ナトリウム水溶液1.35gを圧入し、重合を開始した。30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量1重量%未満)を確認した。次に、80℃に昇温後、酢酸ビニル72g、1%過酸化水素水溶液4.5gおよび2%酒石酸ナトリウム水溶液1.35gを2時間にわたって圧入し、重合温度80℃に維持しながら、重合を完結させた。冷却後、実施例1と同様にろ過し、固形分濃度50.3%、エチレン含量15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンが得られた。評価を前述の方法により行った。結果を表1に示す。
【0025】
比較例2
実施例2において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−2を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0026】
実施例3
実施例2において、PVA−1の代わりにPVA−3(重合度500、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量2.5モル%)を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0027】
比較例3
実施例2において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−4{(株)クラレ製PVA−105:重合度500、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量1.6モル%}を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0028】
実施例4
実施例2において、PVA−1の代わりにPVA−5(重合度500、けん化度95モル%、1,2−グリコール含有量2.2モル%)を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0029】
比較例4
実施例2において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−6{(株)クラレ製PVA−617:重合度1700、けん化度95モル%、1,2−グリコール含有量1.6モル%}を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0030】
実施例5
実施例2において、アクリル酸の代わりに同量のメタクリル酸を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.2%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0031】
実施例6
実施例2において、PVA−1の代わりにPVA−7(エチレン変性量5モル%、重合度1700、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量2.1モル%)を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0032】
比較例5
実施例1において、アクリル酸を使用しない他は、実施例1と同様にして固形分濃度47.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0033】
比較例6
実施例1において、アクリル酸2.6gの代わりにアクリル酸39g(酢酸ビニルに対し15重量%)を使用した他は、実施例1と同様にしてエマルジョンを得ようとしたが、満足なエマルジョンが得られなかった。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明により得られる水性エマルジョンは、耐水性、低温、とくに氷点に近い極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れているため、紙管、製袋、合紙、段ボール用等の紙、パルプなどの紙加工用接着剤、フラッシュパネル、集成材、ツキ板、合板加工用、合板二次加工用(練り合わせ)、一般木工等の木工用接着剤および各種プラスチック用の接着剤等として好適に用いられる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水性、低温、とくに氷点近くの極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れる水性エマルジョンの製法および接着剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)はエチレン性不飽和単量体、特に酢酸ビニルに代表されるビニルエステル系単量体の乳化重合用保護コロイドとして広く用いられており、これを保護コロイドとして用いて乳化重合して得られるビニルエステル系水性エマルジョンは紙用、木工用およびプラスチック用などの各種接着剤、含浸紙用および不織製品用などの各種バインダー、混和剤、打継ぎ材、塗料、紙加工および繊維加工などの分野で広く用いられている。
しかしながら、このような水性エマルジョンのあるものは、耐水性が悪く、エマルジョン粘度の温度依存性が大きいなどの欠点を有している。特に接着剤用途においては耐水性が問題とされる場合が多い。
【0003】
乳化重合用分散剤としてのPVA系重合体は、一般的には鹸化度98モル%程度のいわゆる“完全鹸化PVA”と鹸化度88モル%程度の“部分鹸化PVA”があり、前者を使用した場合、比較的耐水性は良好なものの、いまだ十分とはいえず、さらにエマルジョン粘度の温度依存性が大きいという欠点がある。他方、後者のPVA系重合体を使用した場合、エマルジョン粘度の温度依存性は余り大きくないものの、いまだ十分とはいえず、さらに耐水性に劣る欠点を有している。このような欠点を改良するために、両者のPVA系重合体の併用、両者の中間的な鹸化度のPVA系重合体の使用等が行われているが、耐水性、エマルジョン粘度の温度依存性を同時に改善することはできなかった。そこで、エチレン単位を含有するビニルアルコール系重合体が提案(特許文献1)され、耐水性と低温放置安定性が改善された。さらに、少量のアクリル酸を含むPVA系重合体を保護コロイドとする手法が提案(特許文献2)されたが、未だ低温における粘度安定性は十分とはいえず、また、氷点下になるような過酷な条件下における安定性も十分ではなかった。また、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体を分散剤として使用した、耐水性、温度依存性の小さい、水性エマルジョンが提案されている(特許文献3)が、氷点近くの極低温における粘度安定性はかならずしも充分優れているとは言えない。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−81666号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平7−145363号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開2001−220484号公報(特許請求の範囲、[0010])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、耐水性、低温、とくに氷点近くの極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れる水性エマルジョンの製法および接着剤を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下に、ビニルエステル系単量体を乳化重合するに際し、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することを特徴とする水性エマルジョンの製法および接着剤を提供することによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、分散剤として使用するビニルアルコール系重合体の1,2−グリコール結合の含有量は1.9モル%以上であることが必要であり、より好ましくは1.95モル%以上、さらには2.0モル%以上、最適には2.1モル%以上である。1,2−グリコール結合の含有量が1.9モル%未満の場合、耐水性が低下し、低温、とくに極低温における粘度安定性が低下し、さらには重合安定性も低下する懸念が生じる。また、1,2−グリコール結合の含有量は4モル%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3.5モル%以下、最適には3.2モル%以下である。ここで、1,2−グリコール結合の含有量はNMRスペクトルの解析から求められる。
【0008】
上記の1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法が使用可能である。一例としてビニレンカーボネートを上記の1,2−グリコール結合量になるようにビニルエステルと共重合する方法、ビニルエステルの重合温度を通常の条件より高い温度、例えば75〜200℃で、加圧下に重合する方法などが挙げられる。後者の方法においては、重合温度は95〜190℃であることが好ましく、100〜180℃であることが特に好ましい。また加圧条件としては、重合系が沸点以下になるように選択することが重要であり、好適には0.2MPa以上、さらに好適には0.3MPa以上である。また上限は5MPa以下が好適であり、さらに3MPa以下がより好適である。
【0009】
また、本発明においては、上記の1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体は、さらにα−オレフィン単位を1〜20モ%含有することが好ましい形態のひとつである。α−オレフィン単位の含有量は、好ましくは1〜10モル%、さらに好ましくは1.5〜8モル%である。この重合体を使用することにより、水性エマルジョンの極低温下における粘度安定性がより改善される。
α−オレフィン単位としてはエチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられ、好適にはエチレンが用いられる。
【0010】
この重合体の製法としては、例えば、ビニレンカーボネートを上記の1,2−グリコール結合量になるようα−オレフィンとビニルエステル系単量体とを共重合する方法、α−オレフィンとビニルエステル系単量体を共重合する際、重合温度を通常の条件より高い温度、例えば70〜200℃で、加圧下に重合する方法などが挙げられる。後者の方法において、好ましい重合温度は、70〜190℃であり、より好ましくは75〜160℃である。重合はラジカル重合開始剤の存在下、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などいずれの方法でも行うことができるが、溶液重合、とくにメタノールを溶媒とする溶液重合法が好適である。このようにして得られたビニルエステル重合体を通常の方法によりけん化することによりビニルアルコール系重合体が得られる。
また、ここで、ビニルエステルとしては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、一般に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0011】
また、上記の1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合したものでも良い。このようなエチレン性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)−アンモニウムクロリド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、臭化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ビニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類が挙げられる。また、チオール酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で、酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合し、またはビニルエステルとエチレンを共重合して得られた(共)重合体をけん化することによって得られる末端にメルカプト基またはカルボキシル基を有する変性物も用いることができる。
【0012】
1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体のけん化度は、特に制限されないが、60モル%以上が好適であり、より好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上である。けん化度が60モル%未満の場合には、ビニルアルコール系重合体本来の性質である水溶性が低下する懸念が生じる。また本発明の目的とする水性エマルジョンを得るためには該ビニルアルコール系重合体の重合度(粘度平均重合度)は100〜8000であることが好ましく、300〜3000がより好ましい。
【0013】
次に、本発明において乳化重合に用いられるビニルエステル系単量体としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなどが挙げられるが、酢酸ビニルが経済的にみて好ましい。
本発明において、乳化重合時に、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することは重要である。カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量が0.1重量%未満では低温、とくに氷点近くの極低温における粘度安定性、耐水性が低下する恐れがある。また10重量%をこえた場合、水性エマルジョンの粘度が高くなり、コーティングなどの作業に支障をきたす恐れがあり、また氷点近くの極低温における粘度安定性が低下する。カルボキシル基含有不飽和単量体の下限値の好適な含有量は、0.2重量%以上、最適には0.3重量%以上である。また上限値の好適な含有量は7重量%以下、最適には5重量%以下である。
カルボキシル基含有不飽和単量体としては、カルボキシル基またはその酸無水物基を有する不飽和化合物であれば特に限定されない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸などが挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。
【0014】
カルボキシル基含有不飽和単量体は、乳化重合時のどの段階で添加してもよいが、カルボキシル基含有不飽和単量体を、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の水系に添加し、さらに重合開始剤を添加して、カルボキシル基含有不飽和単量体をあらかじめ重合し、次いでビニルエステル系単量体を添加して乳化重合する方法が最適である。この場合、カルボキシル基含有不飽和単量体は、カルボキシル基含有不飽和単量体の重合体の単量体成分として、また1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体のグラフト成分して、さらにまた残部のカルボキシル基含有不飽和単量体はビニルエステル系単量体との共重合成分として、それぞれ使用される。
また、カルボキシル基含有不飽和単量体は、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体からなる水系に、ビニルエステル系単量体および触媒と共に添加し、乳化重合することもできる。この場合は、カルボキシル基含有不飽和単量体は、主にビニルエステルとの共重合成分として使用される。
【0015】
乳化重合においては、水、重合触媒、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体からなる分散剤、ビニルエステル系単量体、カルボキシル基含有不飽和単量体をそれぞれ適宜同時添加、または逐次添加する方法が採用される。ここで、重合開始剤としては、通常乳化重合に用いられる、過酸化水素、過硫酸アンモニウムおよび過硫酸カリウム等の過酸化物が用いられ、酒石酸、酒石酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリット、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤と共に用いても構わない。
【0016】
本発明においては、上記ビニルエステル系単量体とカルボキシル基含有不飽和単量体以外に、これらと共重合しうる他の単量体を使用することもできる。これらの単量体としては、、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン;塩化ビニル、フッ化ビニル、ビニリデンクロリド、ビニリデンフルオリドなどのハロゲン化オレフィン;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸、メタクリル酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル;アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルおよびこれらの四級化物;さらには、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸およびそのナトリウム塩などのアクリルアミド系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンスルホン酸およびナトリウム、カリウム塩などのスチレン系単量体;その他N−ビニルピロリドンなど;また、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体が挙げられ、これらは単独あるいは二種以上混合して用いることができる。これらの単量体の使用量は使用する全単量体に対し50重量%以下が好適であり、さらには40重量%以下がより好適である。これらの単量体のうちエチレンは、後述する実施例からも明らかなように、とくに極低温下における粘度安定性、さらには凍結融解安定性を向上させることから好適な態様である。エチレンを使用する場合のエチレン含有量の好適な下限値は全単量体に対し2重量%以上、最適には好適3重量%以上であり、好適な上限値は50重量%以下、さらには40重量%以下である。
【0017】
本発明の目的を達成するためには、1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の使用量はビニルエステル系単量体とカルボキシル基含有単量体などの使用する全単量体の合計量100重量部に対して1〜20重量部であることが好適であり、より好ましくは3〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部の範囲である。
【0018】
上記の方法で得られた水性エマルジョンは、そのまま用いることもできるが、必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の各種エマルジョンを添加して用いることができる。さらにまた、必要に応じて、従来公知のアニオン性、ノニオン性あるいはカチオン性の界面活性剤や、ヒドロキシエチルセルロースを併用することができるし、また本発明の目的を損なわない範囲で1,2−グリコール結合量が1.9モル%より少ないビニルアルコール系重合体を併用することもできる。
【0019】
このようにして得られた水性エマルジョンは、耐水性、低温、とくに氷点に近い極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れているため、各種接着剤、とくに紙管、製袋、合紙、段ボール用等の紙、パルプなどの紙加工用接着剤、フラッシュパネル、集成材、ツキ板、合板加工用、合板二次加工用(練り合わせ)、一般木工等の木工用接着剤および各種プラスチック用の接着剤等として好適に用いられる。
【0020】
【実施例】
次に、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。また、得られた接着剤の物性(耐水性、低温における粘度安定性、凍結融解安定性、耐皮張り性)を下記の要領で評価した。
【0021】
(エマルジョンの評価)
(1)耐水性
得られた接着剤を紙管用原紙に30g/m2塗布し、ただちに他の紙管用原紙と接着した。ハンドロールで3回圧締し、室温で24時間放置した。その後、得られたサンプルを30℃の水中に24時間浸漬後、接着状態を観察し、以下の基準により評価した。
◎完全に材破、○ほぼ材破、△一部材破、×剥離
(2)低温における粘度安定性
接着剤を0℃において1週間放置、放置後の粘度(0℃)を放置前の30℃における粘度で割った数値を低温における粘度安定性の指標とした。粘度はB型粘度計(20rpm)を用いて測定。
(3)凍結融解安定性
接着剤50gをポリエチレン製のびんに取り、試料を−15℃で16時間保った後、30℃の恒温水槽中に1時間放置し、その後状態を観察、以下の基準により評価した。
◎流動性良好、○増粘するも流動性有り、△混ぜれば流動性戻る、×ゲル化
(3)耐皮張り性
エマルジョンをPETフィルム上に200g/m2で流延、経時的にエマルジョン塗布面に先端の鋭い治具(千枚通し)を横断させ、形成される魚骨模様を観察し、5秒以上軌跡が残る場合に皮張り時間とした。
【0022】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、温度計、窒素吹込口を備えた1リットルガラス製重合容器に、イオン交換水300g、PVA−1(重合度1700、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量2.2モル%)26gおよびアクリル酸2.6gを仕込み95℃で完全に溶解した。その後80℃に調整し、過硫酸カリウムの1%水溶液を5g添加し30分間、アクリル酸の重合を行った。次に、系を冷却、200rpmで撹拌しながら、60℃に調整した後、酒石酸の10%水溶液を4.4gおよび5%過酸化水素水3gを添加後、酢酸ビニル26gを仕込み重合を開始した。重合開始30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量1重量%未満)を確認した。次に酒石酸の10%水溶液を0.9gおよび5%過酸化水素水3gを添加後、酢酸ビニル234gを2時間にわたって連続的に添加し、重合温度80℃に維持して重合を完結させた。冷却後、60メッシュのステンレス製金網を用い、ろ過した。以上の結果、固形分濃度47.5%のポリ酢酸ビニル系エマルジョンが得られた。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果を表1に示す。表中DHはけん化度を示し、Etはエチレンを示す。
【0023】
比較例1
実施例1において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−2{(株)クラレ製PVA−117:重合度1700、けん化度98.5モル%、1,2−グリコール含有量1.6モル%}を用いた他は、実施例1と同様にして固形分濃度47.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0024】
実施例2
窒素吹き込み口、温度計、攪拌機を備えた耐圧オートクレーブにPVA−1の7.5%水溶液100gおよびアクリル酸4gを仕込み、80℃において過硫酸カリウムの1%水溶液を5g添加し30分間、アクリル酸の重合を行った。その後、系を60℃に昇温してから、窒素置換を行った。酢酸ビニル8gを仕込んだ後、エチレンを4.4MPa(45kg/cm2)まで加圧し、2.5%過酸化水素水溶液0.9gおよび2%酒石酸ナトリウム水溶液1.35gを圧入し、重合を開始した。30分後に初期重合終了(酢酸ビニルの残存量1重量%未満)を確認した。次に、80℃に昇温後、酢酸ビニル72g、1%過酸化水素水溶液4.5gおよび2%酒石酸ナトリウム水溶液1.35gを2時間にわたって圧入し、重合温度80℃に維持しながら、重合を完結させた。冷却後、実施例1と同様にろ過し、固形分濃度50.3%、エチレン含量15重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンが得られた。評価を前述の方法により行った。結果を表1に示す。
【0025】
比較例2
実施例2において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−2を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0026】
実施例3
実施例2において、PVA−1の代わりにPVA−3(重合度500、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量2.5モル%)を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0027】
比較例3
実施例2において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−4{(株)クラレ製PVA−105:重合度500、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量1.6モル%}を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0028】
実施例4
実施例2において、PVA−1の代わりにPVA−5(重合度500、けん化度95モル%、1,2−グリコール含有量2.2モル%)を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0029】
比較例4
実施例2において、PVA−1の代わりに従来の方法により製造されたPVA−6{(株)クラレ製PVA−617:重合度1700、けん化度95モル%、1,2−グリコール含有量1.6モル%}を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.1%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0030】
実施例5
実施例2において、アクリル酸の代わりに同量のメタクリル酸を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.2%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0031】
実施例6
実施例2において、PVA−1の代わりにPVA−7(エチレン変性量5モル%、重合度1700、けん化度98モル%、1,2−グリコール含有量2.1モル%)を用いた他は、実施例2と同様にして固形分濃度50.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0032】
比較例5
実施例1において、アクリル酸を使用しない他は、実施例1と同様にして固形分濃度47.3%のエマルジョンを得た。このエマルジョンの評価を前述の方法により行った。結果をあわせて表1に示す。
【0033】
比較例6
実施例1において、アクリル酸2.6gの代わりにアクリル酸39g(酢酸ビニルに対し15重量%)を使用した他は、実施例1と同様にしてエマルジョンを得ようとしたが、満足なエマルジョンが得られなかった。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】
本発明により得られる水性エマルジョンは、耐水性、低温、とくに氷点に近い極低温における粘度安定性、凍結融解安定性に優れ、さらには耐皮張り性にも優れているため、紙管、製袋、合紙、段ボール用等の紙、パルプなどの紙加工用接着剤、フラッシュパネル、集成材、ツキ板、合板加工用、合板二次加工用(練り合わせ)、一般木工等の木工用接着剤および各種プラスチック用の接着剤等として好適に用いられる。
Claims (5)
- 1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下に、ビニルエステル系単量体を乳化重合するに際し、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することを特徴とする水性エマルジョンの製法。
- 1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体の存在下に、ビニルエステル系単量体とエチレンを乳化重合するに際し、カルボキシル基含有不飽和単量体をビニルエステル系単量体に対し0.1〜10重量%添加することを特徴とする水性エマルジョンの製法。
- 1,2−グリコール結合を1.9モル%以上有するビニルアルコール系重合体が、α−オレフィン単位を1〜20モル%含有するビニルアルコール系重合体である請求項1または2記載の水性エマルジョンの製法。
- カルボキシル基含有不飽和単量体が、アクリル酸またはメタクリル酸である請求項1〜3のいずれかに記載の水性エマルジョンの製法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製法により得た水性エマルジョンからなる接着剤
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JP2010280994A (ja) * | 2009-06-02 | 2010-12-16 | Nisshin Chem Ind Co Ltd | 複合材料用繊維処理剤及びガラスクロス |
WO2021201083A1 (ja) * | 2020-04-02 | 2021-10-07 | 株式会社クラレ | 水性エマルジョン及びその製造方法 |
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