JP2004182962A - トリプチセン骨格を有するポリイミド樹脂及び光部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】複屈折を低減できるポリイミド材料、ポリイミド樹脂、及びこれを用いた光部品を提供すること。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物とトリプチセンジアミン類を反応させて得られるポリアミド酸;このポリアミド酸を加熱、硬化して得られるポリイミド樹脂;及びこのポリイミド樹脂を使用した光導波路、光フィルタ、又はレンズ等の光部品。
【解決手段】テトラカルボン酸二無水物とトリプチセンジアミン類を反応させて得られるポリアミド酸;このポリアミド酸を加熱、硬化して得られるポリイミド樹脂;及びこのポリイミド樹脂を使用した光導波路、光フィルタ、又はレンズ等の光部品。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光導波路、光フィルタ、レンズ等の光部品のための、耐熱性に優れ、かつ屈折率及び複屈折率の小さいポリイミド樹脂及びこれを用いた光部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、電気的特性、機械的物性に優れたエンジニアリングプラスチックとして知られており、電子機器分野における保護材料、絶縁材料あるいは構造材料として広く用いられている。このような分野では、例えばLSIの層間絶縁膜やプリント板などでは、低誘電率、低熱膨張係数、低吸湿性を有することが求められてきた。また、最近ではポリイミドは光通信分野にも適用され始めている。光通信分野特に光導波路用材料としては、上記のようなポリイミドの特性に併せて屈折率が低いことが期待されている。また、一般に光学材料として有機ポリマを適用しようとした場合、耐熱性、光透過性、低屈折性、低熱膨張性、低吸湿性などのほかに複屈折率の低いことが期待されている。光が複屈折を有する透明媒体中に進入した場合、媒体の光学的異方性により、方向により光の速度が異なる結果、例えば、複屈折の大きい材料を光学レンズに使用すると、光のコントラストが低下し、鮮明な像が得られないなどの問題が生じるからである。
光学部品用ポリイミドとしては、ポリイミド骨格を剛直構造にし、フッ素置換基を導入することにより、熱膨張係数、誘電率、屈折率を低減できるという報告が示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、光部品用材料として重要な複屈折率については全く触れられていない。
【特許文献1】
特開平2−251564号公報
【特許文献2】
特開平3−72528号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のポリイミド特に光学用ポリイミドで問題であった複屈折を低減できるポリイミド材料、ポリイミド樹脂、及びこれを用いた光部品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物とトリプチセンジアミン類を反応させて得られるポリアミド酸を提供するものである。
本発明においてトリプチセンジアミン類とは、好ましくは、トリプチセンの2つの芳香核にそれぞれ1つのアミノ基を有するトリプチセンジアミン又はその誘導体を意味する。トリプチセンジアミン誘導体としては、3つの芳香核にそれぞれ1〜3個、又は1〜4個のハロゲン又はハロゲン化アルキルを有するものが挙げられ、さらに好ましくは下記の一般式(I)で表されるものが挙げられる。
【0005】
【化2】
[式中、R1、R2、R3は同じでもあるいは異なっていてもよい、水素、ハロゲン又はハロゲン化アルキルを示す。]
【0006】
本発明においては、トリプチセンジアミン類の一部が、トリプチセンジアミン類以外のジアミンにより置換されていてもよい。この場合、トリプチセンジアミン類の量は、トリプチセンジアミン類とトリプチセンジアミン類以外のジアミンの合計量に対して50モル%以上であることが好ましい。
本発明はさらに上記ポリアミド酸を加熱、硬化して得られるポリイミド樹脂を提供するものである。
本発明はまた、上記ポリイミド樹脂を使用した光部品、例えば、光導波路、光フィルタ、レンズを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記一般式(I)で表されるジアミンを使用することを特徴とするものである。
式中、R1、R2、R3は同じでもあるいは異なっていてもよく、水素、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ハロゲン化アルキル、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素で置換された炭素原子数1〜8のアルキルを示す。
【0008】
本発明でジアミン成分として使用する上記一般式(I)のトリプチセンジアミン類は、置換アントラセンとベンザインとの反応によって得られる置換トリプチセンの置換基をアミノ基に化学的に誘導することによって合成することが出来る。この一般式(I)で表されるジアミン化合物としては、1,5−ジアミノトリプチセン、1,6−ジアミノトリプチセン、1,7−ジアミノトリプチセン、1,8−ジアミノトリプチセン、2,6−ジアミノトリプチセン、2,7−ジアミノトリプチセン、1,6−ジアミノ−12−フルオロトリプチセン、2,6−ジアミノ−13−フルオロトリプチセン、2,7−ジアミノ−12−フルオロトリプチセン、1,7−ジアミノ−14−トリフルオロメチルトリプチセン、1,6−ジアミノ−12−クロロトリプチセン、2,6−ジアミノ−12−クロロトリプチセン等が挙げられる。これらのトリプチセンジアミンはその1種類のみを使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0009】
また、式Iで表されるジアミンと組み合わせて用いる事のできる式I以外のジアミンとしては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−p−テルフェニルなどが挙げられる。
ジアミン類を組み合わせて用いる場合は、トリプチセンジアミン類を50モル%以上、好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上含有させるようにして使用するのがよく、これによって得られたポリイミド樹脂は優れた耐熱性、低熱膨張性、低複屈折率性を示す。トリプチセンジアミン類の含有量が50モル%未満の場合には複屈折率が十分に小さくならない場合が生じることがある。
【0010】
本発明に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、1,4−ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,4−ジ(ペンタフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ヘプタフルオロプロピルピロメリット酸二無水物などが挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物はその1種類のみを使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0011】
本発明のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸の製造方法は、通常のポリアミド酸の製造条件と同じでよく、一般的にはN−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの極性有機溶媒中で反応させる。
本発明においては、ジアミンまたはテトラカルボン酸二無水物共に単一化合物ばかりではなく、複数のジアミン、複数のテトラカルボン酸二無水物を混合して用いることができる。その場合は、単一又は複数のジアミンのモル数と単一又は複数のテトラカルボン酸二無水物のモル数が等しいかほぼ等しくなるようにする。次に、ポリアミド酸をイミド化してポリイミドを合成するのには、通常の合成法が適用できる。その例としては、加熱脱水によるイミド化、酸無水物、例えば、無水酢酸などを用いる化学的な脱水方法によるイミド化を挙げることが出来る。
【0012】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(合成例1) 1,6−ジアミノトリプチセンの合成
1−カルボキシ−6−アセトアミノトリプチセン2gを無水エーテル30mlに溶解し、塩化チオニル5gを加え、1時間還流し、溶媒を溜去すると酸塩化物が得られた。これをテトラヒドロフラン15mlに溶解し、アジ化ナトリウム0.6gの水溶液10mlを氷冷下に加え4時間攪拌した。減圧下に溶媒を追い出し、水を加えてエーテルで抽出した。このようにして得られた酸アジド化合物をエタノール25mlと共に14時間還流し、ウレタン化合物を得た。これを加熱下(90℃)に、酢酸30ml中、濃塩酸10mlを加えて加水分解し、反応終了後、水を加え炭酸ナトリウムで中和、エーテルで抽出し、抽出液を水、次いで飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣をトルエンから再結晶して殆ど白色結晶として、1.4g(収率87%)の1,6−ジアミノトリプチセンを得た(融点:250℃)。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.20(s、4H)、5.20(s、1H)、5.32(s、1H)、6〜7.6(m、10H)
【0013】
(合成例2) 1,7−ジアミノトリプチセンの合成
1−カルボキシ−7−アセトアミノトリプチセンを用いた以外は合成例1と同じ方法で同様な反応を行った。トルエンから再結晶を行って、融点235℃の1,7−ジアミノトリプチセンを収率87%で得た。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.53(s、4H)、5.27(s、1H)、5.25(s、1H)、6〜7.5(m、10H)
【0014】
(合成例3) 2,6−ジアミノトリプチセンの合成
2−アセトアミノ−6−ニトロトリプチセン2.2gのテトラヒドロフラン50ml溶液に塩酸10mlを加え、この中に、室温で攪拌下に亜鉛末8.5gを少量ずつ添加した。8時間攪拌を続け、薄層クロマトグラフィ(TLC)でニトロ体が消失したことを確認し、溶媒を減圧で濃縮した。水を加えて炭酸ナトリウムでアルカリ性とし、生じた沈殿を濾取した。かくして、2−アセトアミノ−6−アミノトリプチセンの粗生成物を得、これを酢酸エチルとヘキサンを展開溶媒として、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィによって精製した。殆ど白色の結晶として、2−アセトアミノ−6−アミノトリプチセンが1.8g(収率:90%)得られた。次いで、これを酢酸100mlに溶解し、濃塩酸15mlを加え100℃で加熱した。TLCで反応が完結したことを確認して、冷却後水を加え、炭酸ナトリウムでアルカリ性にし、生じる沈殿物を濾取、水洗、乾燥し、2,6−ジアミノトリプチセンを得た(1.5g、反応収率:96%)。シリカゲル及び/あるいはアルミナでカラムクロマトを行って精製した(融点226℃)。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.49(s、4H)、5.15(s、2H)、6.25(m、2H)、6.74(m、2H)、6.92(m、2H)、7.10(m、2H)、7.29(m、2H)
【0015】
(合成例4) 2,7−ジアミノトリプチセンの合成
2−アセトアミノ−7−ニトロトリプチセンを用いた以外は合成例3と同じ方法で、反応収率95%で2,7−ジアミノトリプチセンを得た(融点240℃)。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.50(s、4H)、5.13(s、1H)、5.18(s、1H)、6.25(m、2H)、6.74(m、2H)、6.92(m、2H)、7.10(m、2H)、7.29(m、2H)
【0016】
(実施例1)
温度計、撹拌装置、乾燥管及び窒素導入管を備えた100ml三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド82.5g、2,6−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)を入れ、均一溶液になるまで撹拌した。溶液温度を10℃以下に保ちながら、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物4.44g(10mmol)を加え4時間撹拌、その後室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られたポリマの重量平均分子量は43,000であり、分散度は1.9であった。また、得られたポリマをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は416℃であった。また、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5890、TMモードで1.5855であり、複屈折率は0.0035であった。
【0017】
(実施例2)
2,7−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)と2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物4.44g(10mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド82.5gに溶解し、この溶液を窒素雰囲気下、室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られたポリマの重量平均分子量は38,000であり、分散度は1.6であった。また、得られたポリマをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は405℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5898、TMモードで1.5856であり、複屈折率は0.0042であった。
【0018】
(実施例3)
1,6−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)を用いた以外は実施例1と同様に2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物と反応を行ってポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。このものをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は405℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5890、TMモードで1.5855であり、複屈折率は0.0035であった。
【0019】
(実施例4)
1,7−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)と2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物4.44g(10mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド82.5gに溶解し、この溶液を窒素雰囲気下、室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。このものをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は403℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5890、TMモードで1.5855であり、複屈折率は0.0035であった。
【0020】
(実施例5)
2,6−ジアミノトリプチセン5.11g(18mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.4g(12mmol)及び2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物13.3g(30mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド12gに溶解し、この溶液を窒素雰囲気下、室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られたポリマの重量平均分子量は59,000であり、分散度は2.2であった。このものをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は332℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5883、TMモードで1.5828であり、複屈折率は0.0055であった。
【0021】
(比較例1)
実施例1と同様の方法により、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルと2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このもののガラス転移温度は326℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.539、TMモードで1.529であり、複屈折率は0.010であった。
【0022】
(比較例2)
実施例1と同様の方法により、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このもののガラス転移温度は308℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.558、TMモードで1.548であり、複屈折率は0.010であった。
【0023】
(比較例3)
実施例1と同様の方法により、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとピロメリット酸二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このもののガラス転移温度は410℃、屈折率(830nm)はTEモードで1.625、TMモードで1.501であり、複屈折率は0.124であった。
【0024】
(比較例4)
実施例1と同様の方法により、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このものの熱分解温度は600℃、屈折率(830nm)は1.784であった。
【0025】
(実施例6)
図1に示すような構成の光導波路と回折格子を用いた光合分波器を作製した。このような構成の光合分波器では部品数の削減、小型化が可能である。しかし、用いる光導波路の膜平面に平行な方向の光(TE)に対する光導波路コア層の屈折率と、膜平面に垂直な方向の光(TM)に対する光導波路コア層の屈折率の差(複屈折率)が大きい場合、入力信号光の偏光方向によって出力信号光の波長が変動することが知られている。このような光合分波器においては、複屈折により生じる波長変動は5nm以下であることが求められている。
そこで、光導波路コア層として、実施例1のポリイミドを、光導波路クラッド層として、日立化成工業製 OPI−N3265 を使用し、Si基板上に光導波路を形成したもの(波長1300nmにおける光導波路コア層の複屈折率 0.004)と、石英を母材とした回折格子を組み合わせ、図1のような光合分波器を作製し、偏光方向と分波特性の関係を測定したところ、波長変動は3nmであり、上記要求特性を満足していた。
【0026】
(比較例5)
光導波路コア層として、日立化成工業製 OPI−N3265 を、光導波路クラッド層として、同 OPI−N3115 を使用し、Si基板上に光導波路を形成したもの(波長1300nmにおける光導波路コア層の複屈折率 0.009)と、石英を母材とした回折格子を組み合わせ、光合分波器を作製し、偏光方向と分波特性の関係を測定した。この場合、光導波路に入射する信号光がTE偏光あるいはTM偏光であるかにより、分波特性が異なり、8nmの波長変動が生じた。
【0027】
これらの結果から、本発明のトリプチセン構造を含むポリイミド材料は、従来の耐熱性に優れたポリイミド樹脂や耐熱性及び低屈折率特性に優れた含フッ素ポリイミド材料と比較して、耐熱性、低屈折率特性に加えて、光学材料として望ましい低複屈折性を併せ持つことが明らかとなった。
以上説明したように、本発明のトリプチセン構造を含むポリイミド材料は、耐熱性、透明性、低屈折率性及び低複屈折性を併せ持つために、光導波路、光フィルタ、レンズ等の光部品への適用が可能である。
【0028】
【発明の効果】
本発明のトリプチセン骨格を有するポリイミド樹脂は、アミノトリプチセン構造をポリイミドの基本骨格に導入することにより、堅固で非平面的構造を持つイミド結合を形成、このため剛直性や低複屈折性が付与され、極めて高い耐熱性と優れた寸法安定性や機械的強度及び電気的特性並びに優れた光学的特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態を示す光合分波器の構成図であり、(b)は(a)のA−A’面における断面図、(c)は(a)のB−B’面における断面図である。
【符号の説明】
1・・・光導波路
2・・・光導波路コア層
3・・・光導波路クラッド層
4・・・回折格子
5・・・基板
【発明の属する技術分野】
本発明は、光導波路、光フィルタ、レンズ等の光部品のための、耐熱性に優れ、かつ屈折率及び複屈折率の小さいポリイミド樹脂及びこれを用いた光部品に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミド樹脂は、耐熱性、電気的特性、機械的物性に優れたエンジニアリングプラスチックとして知られており、電子機器分野における保護材料、絶縁材料あるいは構造材料として広く用いられている。このような分野では、例えばLSIの層間絶縁膜やプリント板などでは、低誘電率、低熱膨張係数、低吸湿性を有することが求められてきた。また、最近ではポリイミドは光通信分野にも適用され始めている。光通信分野特に光導波路用材料としては、上記のようなポリイミドの特性に併せて屈折率が低いことが期待されている。また、一般に光学材料として有機ポリマを適用しようとした場合、耐熱性、光透過性、低屈折性、低熱膨張性、低吸湿性などのほかに複屈折率の低いことが期待されている。光が複屈折を有する透明媒体中に進入した場合、媒体の光学的異方性により、方向により光の速度が異なる結果、例えば、複屈折の大きい材料を光学レンズに使用すると、光のコントラストが低下し、鮮明な像が得られないなどの問題が生じるからである。
光学部品用ポリイミドとしては、ポリイミド骨格を剛直構造にし、フッ素置換基を導入することにより、熱膨張係数、誘電率、屈折率を低減できるという報告が示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。しかし、光部品用材料として重要な複屈折率については全く触れられていない。
【特許文献1】
特開平2−251564号公報
【特許文献2】
特開平3−72528号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来のポリイミド特に光学用ポリイミドで問題であった複屈折を低減できるポリイミド材料、ポリイミド樹脂、及びこれを用いた光部品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、テトラカルボン酸二無水物とトリプチセンジアミン類を反応させて得られるポリアミド酸を提供するものである。
本発明においてトリプチセンジアミン類とは、好ましくは、トリプチセンの2つの芳香核にそれぞれ1つのアミノ基を有するトリプチセンジアミン又はその誘導体を意味する。トリプチセンジアミン誘導体としては、3つの芳香核にそれぞれ1〜3個、又は1〜4個のハロゲン又はハロゲン化アルキルを有するものが挙げられ、さらに好ましくは下記の一般式(I)で表されるものが挙げられる。
【0005】
【化2】
[式中、R1、R2、R3は同じでもあるいは異なっていてもよい、水素、ハロゲン又はハロゲン化アルキルを示す。]
【0006】
本発明においては、トリプチセンジアミン類の一部が、トリプチセンジアミン類以外のジアミンにより置換されていてもよい。この場合、トリプチセンジアミン類の量は、トリプチセンジアミン類とトリプチセンジアミン類以外のジアミンの合計量に対して50モル%以上であることが好ましい。
本発明はさらに上記ポリアミド酸を加熱、硬化して得られるポリイミド樹脂を提供するものである。
本発明はまた、上記ポリイミド樹脂を使用した光部品、例えば、光導波路、光フィルタ、レンズを提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、上記一般式(I)で表されるジアミンを使用することを特徴とするものである。
式中、R1、R2、R3は同じでもあるいは異なっていてもよく、水素、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ハロゲン化アルキル、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素で置換された炭素原子数1〜8のアルキルを示す。
【0008】
本発明でジアミン成分として使用する上記一般式(I)のトリプチセンジアミン類は、置換アントラセンとベンザインとの反応によって得られる置換トリプチセンの置換基をアミノ基に化学的に誘導することによって合成することが出来る。この一般式(I)で表されるジアミン化合物としては、1,5−ジアミノトリプチセン、1,6−ジアミノトリプチセン、1,7−ジアミノトリプチセン、1,8−ジアミノトリプチセン、2,6−ジアミノトリプチセン、2,7−ジアミノトリプチセン、1,6−ジアミノ−12−フルオロトリプチセン、2,6−ジアミノ−13−フルオロトリプチセン、2,7−ジアミノ−12−フルオロトリプチセン、1,7−ジアミノ−14−トリフルオロメチルトリプチセン、1,6−ジアミノ−12−クロロトリプチセン、2,6−ジアミノ−12−クロロトリプチセン等が挙げられる。これらのトリプチセンジアミンはその1種類のみを使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0009】
また、式Iで表されるジアミンと組み合わせて用いる事のできる式I以外のジアミンとしては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−p−テルフェニルなどが挙げられる。
ジアミン類を組み合わせて用いる場合は、トリプチセンジアミン類を50モル%以上、好ましくは65モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上含有させるようにして使用するのがよく、これによって得られたポリイミド樹脂は優れた耐熱性、低熱膨張性、低複屈折率性を示す。トリプチセンジアミン類の含有量が50モル%未満の場合には複屈折率が十分に小さくならない場合が生じることがある。
【0010】
本発明に用いるテトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、トリフルオロメチルピロメリット酸二無水物、1,4−ジ(トリフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、1,4−ジ(ペンタフルオロメチル)ピロメリット酸二無水物、ヘプタフルオロプロピルピロメリット酸二無水物などが挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物はその1種類のみを使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0011】
本発明のポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸の製造方法は、通常のポリアミド酸の製造条件と同じでよく、一般的にはN−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどの極性有機溶媒中で反応させる。
本発明においては、ジアミンまたはテトラカルボン酸二無水物共に単一化合物ばかりではなく、複数のジアミン、複数のテトラカルボン酸二無水物を混合して用いることができる。その場合は、単一又は複数のジアミンのモル数と単一又は複数のテトラカルボン酸二無水物のモル数が等しいかほぼ等しくなるようにする。次に、ポリアミド酸をイミド化してポリイミドを合成するのには、通常の合成法が適用できる。その例としては、加熱脱水によるイミド化、酸無水物、例えば、無水酢酸などを用いる化学的な脱水方法によるイミド化を挙げることが出来る。
【0012】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
(合成例1) 1,6−ジアミノトリプチセンの合成
1−カルボキシ−6−アセトアミノトリプチセン2gを無水エーテル30mlに溶解し、塩化チオニル5gを加え、1時間還流し、溶媒を溜去すると酸塩化物が得られた。これをテトラヒドロフラン15mlに溶解し、アジ化ナトリウム0.6gの水溶液10mlを氷冷下に加え4時間攪拌した。減圧下に溶媒を追い出し、水を加えてエーテルで抽出した。このようにして得られた酸アジド化合物をエタノール25mlと共に14時間還流し、ウレタン化合物を得た。これを加熱下(90℃)に、酢酸30ml中、濃塩酸10mlを加えて加水分解し、反応終了後、水を加え炭酸ナトリウムで中和、エーテルで抽出し、抽出液を水、次いで飽和食塩水で洗浄した。洗浄後の抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、減圧濃縮した。残渣をトルエンから再結晶して殆ど白色結晶として、1.4g(収率87%)の1,6−ジアミノトリプチセンを得た(融点:250℃)。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.20(s、4H)、5.20(s、1H)、5.32(s、1H)、6〜7.6(m、10H)
【0013】
(合成例2) 1,7−ジアミノトリプチセンの合成
1−カルボキシ−7−アセトアミノトリプチセンを用いた以外は合成例1と同じ方法で同様な反応を行った。トルエンから再結晶を行って、融点235℃の1,7−ジアミノトリプチセンを収率87%で得た。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.53(s、4H)、5.27(s、1H)、5.25(s、1H)、6〜7.5(m、10H)
【0014】
(合成例3) 2,6−ジアミノトリプチセンの合成
2−アセトアミノ−6−ニトロトリプチセン2.2gのテトラヒドロフラン50ml溶液に塩酸10mlを加え、この中に、室温で攪拌下に亜鉛末8.5gを少量ずつ添加した。8時間攪拌を続け、薄層クロマトグラフィ(TLC)でニトロ体が消失したことを確認し、溶媒を減圧で濃縮した。水を加えて炭酸ナトリウムでアルカリ性とし、生じた沈殿を濾取した。かくして、2−アセトアミノ−6−アミノトリプチセンの粗生成物を得、これを酢酸エチルとヘキサンを展開溶媒として、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィによって精製した。殆ど白色の結晶として、2−アセトアミノ−6−アミノトリプチセンが1.8g(収率:90%)得られた。次いで、これを酢酸100mlに溶解し、濃塩酸15mlを加え100℃で加熱した。TLCで反応が完結したことを確認して、冷却後水を加え、炭酸ナトリウムでアルカリ性にし、生じる沈殿物を濾取、水洗、乾燥し、2,6−ジアミノトリプチセンを得た(1.5g、反応収率:96%)。シリカゲル及び/あるいはアルミナでカラムクロマトを行って精製した(融点226℃)。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.49(s、4H)、5.15(s、2H)、6.25(m、2H)、6.74(m、2H)、6.92(m、2H)、7.10(m、2H)、7.29(m、2H)
【0015】
(合成例4) 2,7−ジアミノトリプチセンの合成
2−アセトアミノ−7−ニトロトリプチセンを用いた以外は合成例3と同じ方法で、反応収率95%で2,7−ジアミノトリプチセンを得た(融点240℃)。
1H−核磁気共鳴スペクトル(CDCl3)δ(ppm):3.50(s、4H)、5.13(s、1H)、5.18(s、1H)、6.25(m、2H)、6.74(m、2H)、6.92(m、2H)、7.10(m、2H)、7.29(m、2H)
【0016】
(実施例1)
温度計、撹拌装置、乾燥管及び窒素導入管を備えた100ml三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド82.5g、2,6−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)を入れ、均一溶液になるまで撹拌した。溶液温度を10℃以下に保ちながら、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物4.44g(10mmol)を加え4時間撹拌、その後室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られたポリマの重量平均分子量は43,000であり、分散度は1.9であった。また、得られたポリマをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は416℃であった。また、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5890、TMモードで1.5855であり、複屈折率は0.0035であった。
【0017】
(実施例2)
2,7−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)と2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物4.44g(10mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド82.5gに溶解し、この溶液を窒素雰囲気下、室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られたポリマの重量平均分子量は38,000であり、分散度は1.6であった。また、得られたポリマをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は405℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5898、TMモードで1.5856であり、複屈折率は0.0042であった。
【0018】
(実施例3)
1,6−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)を用いた以外は実施例1と同様に2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物と反応を行ってポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。このものをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は405℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5890、TMモードで1.5855であり、複屈折率は0.0035であった。
【0019】
(実施例4)
1,7−ジアミノトリプチセン2.84g(10mmol)と2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物4.44g(10mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド82.5gに溶解し、この溶液を窒素雰囲気下、室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。このものをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は403℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5890、TMモードで1.5855であり、複屈折率は0.0035であった。
【0020】
(実施例5)
2,6−ジアミノトリプチセン5.11g(18mmol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル2.4g(12mmol)及び2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物13.3g(30mmol)をN,N−ジメチルアセトアミド12gに溶解し、この溶液を窒素雰囲気下、室温で3日間攪拌し、ポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。得られたポリマの重量平均分子量は59,000であり、分散度は2.2であった。このものをシリコン基板上にスピンコートし、100℃で30分、200℃で30分、350℃で1時間加熱、キュアした。このものの赤外線吸収スペクトルから、イミド化が完全に進行していることが確認できた。このもののガラス転移温度は332℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.5883、TMモードで1.5828であり、複屈折率は0.0055であった。
【0021】
(比較例1)
実施例1と同様の方法により、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルと2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このもののガラス転移温度は326℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.539、TMモードで1.529であり、複屈折率は0.010であった。
【0022】
(比較例2)
実施例1と同様の方法により、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルと2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このもののガラス転移温度は308℃、屈折率(632.8nm)はTEモードで1.558、TMモードで1.548であり、複屈折率は0.010であった。
【0023】
(比較例3)
実施例1と同様の方法により、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとピロメリット酸二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このもののガラス転移温度は410℃、屈折率(830nm)はTEモードで1.625、TMモードで1.501であり、複屈折率は0.124であった。
【0024】
(比較例4)
実施例1と同様の方法により、4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとピロメリット酸二無水物を等モルずつ用いてポリアミド酸のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。これを用いて実施例1と同様にしてポリイミドフィルムを得た。このものの熱分解温度は600℃、屈折率(830nm)は1.784であった。
【0025】
(実施例6)
図1に示すような構成の光導波路と回折格子を用いた光合分波器を作製した。このような構成の光合分波器では部品数の削減、小型化が可能である。しかし、用いる光導波路の膜平面に平行な方向の光(TE)に対する光導波路コア層の屈折率と、膜平面に垂直な方向の光(TM)に対する光導波路コア層の屈折率の差(複屈折率)が大きい場合、入力信号光の偏光方向によって出力信号光の波長が変動することが知られている。このような光合分波器においては、複屈折により生じる波長変動は5nm以下であることが求められている。
そこで、光導波路コア層として、実施例1のポリイミドを、光導波路クラッド層として、日立化成工業製 OPI−N3265 を使用し、Si基板上に光導波路を形成したもの(波長1300nmにおける光導波路コア層の複屈折率 0.004)と、石英を母材とした回折格子を組み合わせ、図1のような光合分波器を作製し、偏光方向と分波特性の関係を測定したところ、波長変動は3nmであり、上記要求特性を満足していた。
【0026】
(比較例5)
光導波路コア層として、日立化成工業製 OPI−N3265 を、光導波路クラッド層として、同 OPI−N3115 を使用し、Si基板上に光導波路を形成したもの(波長1300nmにおける光導波路コア層の複屈折率 0.009)と、石英を母材とした回折格子を組み合わせ、光合分波器を作製し、偏光方向と分波特性の関係を測定した。この場合、光導波路に入射する信号光がTE偏光あるいはTM偏光であるかにより、分波特性が異なり、8nmの波長変動が生じた。
【0027】
これらの結果から、本発明のトリプチセン構造を含むポリイミド材料は、従来の耐熱性に優れたポリイミド樹脂や耐熱性及び低屈折率特性に優れた含フッ素ポリイミド材料と比較して、耐熱性、低屈折率特性に加えて、光学材料として望ましい低複屈折性を併せ持つことが明らかとなった。
以上説明したように、本発明のトリプチセン構造を含むポリイミド材料は、耐熱性、透明性、低屈折率性及び低複屈折性を併せ持つために、光導波路、光フィルタ、レンズ等の光部品への適用が可能である。
【0028】
【発明の効果】
本発明のトリプチセン骨格を有するポリイミド樹脂は、アミノトリプチセン構造をポリイミドの基本骨格に導入することにより、堅固で非平面的構造を持つイミド結合を形成、このため剛直性や低複屈折性が付与され、極めて高い耐熱性と優れた寸法安定性や機械的強度及び電気的特性並びに優れた光学的特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施の形態を示す光合分波器の構成図であり、(b)は(a)のA−A’面における断面図、(c)は(a)のB−B’面における断面図である。
【符号の説明】
1・・・光導波路
2・・・光導波路コア層
3・・・光導波路クラッド層
4・・・回折格子
5・・・基板
Claims (7)
- テトラカルボン酸二無水物とトリプチセンジアミン類を反応させて得られるポリアミド酸。
- トリプチセンジアミン類の一部が、トリプチセンジアミン類以外のジアミンにより置換されている請求項1又は2記載のポリアミド酸。
- トリプチセンジアミン類の量が、トリプチセンジアミン類とトリプチセンジアミン類以外のジアミンの合計量に対して50モル%以上である請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアミド酸。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載のポリアミド酸を加熱、硬化して得られるポリイミド樹脂。
- 請求項5記載のポリイミド樹脂を使用した光部品。
- 光導波路、光フィルタ、又はレンズである請求項6記載の光部品。
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