JP2004179261A - 太陽電池モジュールの製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ダイヤフラム3を具備した上チャンバー1と、太陽電池モジュールとなる被ラミネート体8を加熱するヒーター盤6を具備した下チャンバー5と、この下チャンバー5を減圧するための真空ポンプ10とを備えた太陽電池モジュールの製造装置であって、上記ヒーター盤6に上記被ラミネート体8の周縁部を固定する鉤状のつめ9を設けた。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池モジュールの製造装置及び製造方法に関し、特に透光性基板と充填材を用いて太陽電池素子を封入する太陽電池モジュールの製造装置及び製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
太陽電池素子は単結晶シリコン基板や多結晶シリコン基板を用いて作製することが多い。このため太陽電池素子は物理的衝撃に弱く、また野外に太陽電池を取り付ける場合、これを雨などから保護する必要があり、太陽電池素子を透光性基板とエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)などを主成分とする充填材で封入して太陽電池モジュールを作成することが通常行われている。
【0003】
この太陽電池素子を透光性基板とEVAなどで封止するラミネート装置はラミネーターとよばれ、膨張自在なダイヤフラムを具備した上チャンバーと被ラミネート体を加熱するためのヒーター盤を備えた下チャンバー及び下チャンバーを減圧するための真空ポンプから成っている。
【0004】
ラミネート工程はまず下チャンバーにあるヒーター盤上に透光性基板を置き、その上にEVAシート、配線を行った太陽電池素子、EVAシート、さらに最上部に裏面材を置く。この状態で上下両チャンバーを閉じた後、下チャンバーを減圧するとともに、被ラミネート体を加熱する。さらに、上チャンバーに徐々に大気を導入して透光性基板を上チャンバーのダイヤフラムシートと下チャンバーとの間で加熱加圧してラミネートする。
【0005】
上述のラミネート工程における加熱の際に、ヒーター盤に接している透光性基板はヒーターからの加熱による透光性基板の上下面の温度差のために反りが発生する。特に大面積の太陽電池モジュールを作製する場合、大きな反りのために透光性基板に大きな温度の不均一が生じ、その状態で加圧するとEVA等の充填材の熱収縮が不均一になって裏面材に皺が発生する。また、この皺の発生を防ぐためにラミネートするときの温度を上げるとEVAが発泡してモジュール内部に気泡が残ってしまうことがある。
【0006】
この問題を避けるために加熱状態で温度差がなくなるまで保持した後に加圧することが行われている。しかし、この方法ではラミネートに時間がかかって生産性が大きく低下するという問題があった。
【0007】
さらに、この問題の対策として下チャンバーにあるヒーター盤内のヒーターを分割して各ヒーター毎に通電を制御できるようにして透光性基板などの被ラミネート体の特定領域から他の特定領域に向けて徐々に加熱できるようにして反りの発生を防ぐことが提案されている。
【0008】
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のようなものがある。
【0009】
【特許文献】
特開平10−214987号公報参照
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の下チャンバーにあるヒーター盤内のヒーターを分割して各ヒーター毎に通電を制御する方法では、分割したヒーター毎にその温度を計測するためのセンサーや所定温度に保つための温度コントローラーや電気をON、OFFするリレー等が必要になり、ラミネート装置が複雑かつ高価なものになってしまう。
【0011】
さらに、上述の方法では分割したヒーター毎に徐々に加熱できるようにするために昇温が一気に行われず、所定の温度に到達するまでに時間がかかるという問題があった。
【0012】
本発明はこのような従来装置の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は被ラミネート体に反りが発生せず、所定の温度に到達するまでの時間が短い太陽電池モジュールの製造装置と製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る太陽電池モジュールの製造装置では、ダイヤフラムを具備した上チャンバーと、太陽電池モジュールとなる被ラミネート体を加熱するヒーター盤を具備した下チャンバーと、この下チャンバーを減圧するための真空ポンプとを備えた太陽電池モジュールの製造装置において、前記ヒーター盤に前記被ラミネート体の周縁部を固定する鉤状のつめを設けたことを特徴とする。
【0014】
さらに、前記太陽電池モジュールの製造装置では、前記被ラミネート体の大きさもしくは形状に応じて前記つめの位置を可変できることが望ましい。
【0015】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法では、ダイヤフラムを具備した上チャンバーと、太陽電池モジュールとなる被ラミネート体を加熱するヒーター盤を具備した下チャンバーと、この下チャンバーを減圧するための真空ポンプとを備えたラミネート装置でラミネートする太陽電池モジュールの製造方法において、前記ヒーター盤に設けられた鉤状のつめで前記被ラミネート体の周縁部を固定しながらラミネートすることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るラミネート装置の一実施形態を示す断面図である。図1において、1は上チャンバー、2は上チャンバー真空領域、3はダイヤフラムシート、4は上チャンバー用真空ポンプ、5は下チャンバー、6はヒーター盤、7はヒーター、8は太陽電池モジュールとなる被ラミネート体、9は鉤状のつめ、10は下チャンバー用真空ポンプ、11は下チャンバー真空領域である。
【0017】
上チャンバー1の内部にはシリコンゴムなどから成るダイヤフラムシート3が設けられている。このダイヤフラムシート3と上チャンバー1に囲まれた内部の領域2は減圧できるようにチャンバーの外にある真空ポンプ4が接続されている。また、上チャンバー1と下チャンバー5は開閉可能な構造となっている。
【0018】
下チャンバー5には、その内部11を減圧するための真空ポンプ10が接続されており、またその内部のほぼ中央にはヒーター盤6が配置されている。このヒーター盤6はアルミニウムやステンレス等の金属部材から成り、例えば2m×1m程度の大きさでその内部にヒーター7がヒーター盤6と絶縁状態に配置されている。このヒーター盤6の上面には、その上に配置される被ラミネート体8の熱による反りの発生を防ぐための鉤状のつめ9が設けられている。
【0019】
図2及び図3はつめとレール部分を示す図である。図2はつめとレールの形状を示す図であり、図3はつめをレールにセットする方法を示す図である。図2及び図3において、9はつめ、12はレール、13はレール上面に設けられた溝である。
【0020】
図2に示すように、つめ9は上部に反りを押さえ込むための延出した鉤状部を備え、下半分がレール12の中に入ったときにレール12から抜けないように広がった形状になっている。また、鉤状のつめ9の材質は反りを押さえ込む強度が必要であるため、ステンレス(特に高強度のSUS630がよい)やチタンでつくられる。さらに、鉤状のつめ9の被ラミネート体8と接する部分には被ラミネート体8が傷つかないようにメラミン樹脂やポリ四フッ化エチレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、シリコン樹脂等の耐熱性の樹脂やゴムを貼り付けることが望ましい。
【0021】
レール12は鉤状のつめ9を移動したり固定するものである。レール12は鉤状のつめ9がラミネートするときに被ラミネート体8の反りのために持ち上げられても変形などが発生しないように厚さ1mm程度のステンレスで作られる。
【0022】
これらの鉤状のつめ9は、図3に示すように、つめ9がレール12の上面に設けられた溝13とが平行な状態でつめ9の下半分をレール12上の溝13の中に入れ、その後つめ9の上部の延出部が被ラミネート体8と接するように90度回転させて用いる。
【0023】
図4はヒーター盤に配置された被ラミネート体とレールとつめとの状態を示す図である。レール12a、12b、12c、12dは被ラミネート体8を囲むように配置され、つめ9が被ラミネート体8の周縁部5に2mm程度かかる位置にネジなどによってヒーター盤6上に固定される。このときつめ9が被ラミネート体8の周縁部に深くかかりすぎるとその部分がラミネートされなくなり、またあまりに浅くしかかからないと被ラミネート体8の透光性基板14にカケが発生したり、裏面材18が傷ついたりするので注意が必要である。
【0024】
レール12a、12b、12c、12dには各々2個の鉤状のつめ9が入っており、被ラミネート体8の周縁部を押さえるような形で配置される。この鉤状のつめ9の位置や個数は被ラミネート体8の大きさに応じて決定すればよい。つまり、レール12a、12b、12c、12dはその取付位置が可変できる。したがって、三角形、正方形や長方形や台形などの四角形、あるいは他の様々な多角形の被ラミネート体8でもその辺の長さに応じてレール12a、12b、12c、12dの長さと配置を変更すればよく、さらに被ラミネート体8の辺が曲線である場合もレール12a、12b、12c、12dをその曲線にするか、またはレール12a、12b、12c、12dを短くしてそれをつなぎ合わせるような形で曲線状に配置することも可能である。このように被ラミネート体8の大きさや形状に応じて鉤状のつめ9の数と位置を変更することができる。
【0025】
また、鉤状のつめ9は被ラミネート体8の反りを防止するものであるから、被ラミネート体8が反り始めたときにその周縁部を押圧できるものであればよく、被ラミネート体8が反る前にはその周縁部を押圧して固定する必要はない。
【0026】
図5は本発明の装置と方法によって形成される太陽電池モジュールの構造を示す図である。図5において、14は透光性基板、15、17は充填材、16は配線を行った複数の太陽電池素子、18は裏面材である。透光性基板14は厚さ3〜5mm程度の強化ガラス等が多く使用される。
【0027】
太陽電池素子16は厚み0.3mm程度の単結晶シリコンや多結晶シリコン基板などから成り、概略の大きさは例えば多結晶シリコン太陽電池でおよそ150mm角である。太陽電池モジュールを作成するときには、この太陽電池素子16の電極(不図示)にハンダメッキなど施したした銅箔などのインナーリード(不図示)を接続し、さらに太陽電池モジュールから所定の電気出力を取り出すことができるように、インナーリード(不図示)で太陽電池素子16を直並列に接続する。
【0028】
充填材15、17は上述のようにエチレンビニルアセテート共重合体(EVA)のほか、ポリビニルブチラール(PVB)などを主成分とするものも多く用いられる。裏面材18はアルミ箔を挟持した耐候性を有するフッ素系樹脂などが用いられる。
【0029】
ラミネート工程は、まず図1に示すラミネート装置の下チャンバー5内のヒーター盤6上の所定の位置に透光性基板14を置いて、その上に充填材15、配線を行った太陽電池素子16、充填材17、さらに最上部に裏面材18をこの順に置く。
【0030】
その後、鉤状のつめ9をレール12a、12b、12c、12dの所定の位置にセットする。この状態で上下両チャンバー1、5を閉じて真空ポンプ4、10で上チャンバー真空領域2及び下チャンバー真空領域11を66〜133Pa程度に減圧する。
【0031】
その後、ヒーター盤6で被ラミネート体8を加熱して昇温を開始する。この加熱によって被ラミネート体8の温度が130〜180℃に達し、EVA等の充填材15、17が軟化したら上チャンバー真空領域2を徐々に大気圧に戻すことによってダイヤフラムシート3を膨張させて被ラミネート体8を上チャンバー1のダイヤフラムシート3とヒーター盤6との間で加熱押圧する。この状態を3〜10分間程度維持し、被ラミネート体8の内部にある気泡を追い出すと共に、軟化した充填材15、17を太陽電池素子16の周囲に万遍なく充填させる。
【0032】
その後、下チャンバー真空領域11も大気圧に戻し、上チャンバー1と下チャンバー5を開いて被ラミネート体8を取り出す。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば単結晶シリコンや多結晶シリコンなどの結晶系太陽電池を用いる太陽電池モジュールに限らず、薄膜系太陽電を用いる太陽電池モジュールにも適用できる。
【0034】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る太陽電池モジュールの製造装置によれば、ヒーター盤に被ラミネート体の周縁部を固定する鉤状のつめを設けたことから、被ラミネート体に反りが発生せず、さらにヒーターを部分的に弱くすることなくラミートできるために、所定の温度に達するまでの時間が短く、作業能率のよいラミネートが可能になる。また、反り防止用のつめを固定するレールの長さや配置を変更するだけで、多様な寸法や形状の被ラミネート体に対応することが可能となる。
【0035】
また、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法によれば、ヒーター盤に設けられた鉤状のつめで被ラミネート体の周縁部を固定しながらラミネートすることから、被ラミネート体に反りが発生せず、さらにヒーターを部分的に弱くすることなくラミートできるために、所定の温度に達するまでの時間が短く、作業能率のよいラミネートが可能になる。また、反り防止用のつめを固定するレールの長さや配置を変更するだけで、多様な寸法や形状の被ラミネート体に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽電池モジュールの製造装置を示す図である。
【図2】本発明に係る太陽電池モジュールの製造装置におけるつめとレール部分を示す図である。
【図3】本発明に係る太陽電池モジュールの製造装置におけるつめをレールにセットする方法を示す図である。
【図4】本発明に係る太陽電池モジュールの製造装置におけるつめとレールの全体構成を示す図である。
【図5】本発明の装置と方法によって形成される太陽電池モジュールを分解して示す図である。
【符号の説明】
1:上チャンバー、2:上チャンバー真空領域、3:ダイヤフラムシート、4:上チャンバー用真空ポンプ、5:下チャンバー、6:ヒーター盤、7:ヒーター、8:ラミネートする太陽電池モジュール、9:反りを防ぐためのつめ、10:下チャンバー用真空ポンプ、11:下チャンバー真空領域、12、12a、12b、12c、12d:レール、13:レール上面に設けられた溝、14:透光性基板、15、17:充填材、16:配線を行った複数の太陽電池素子、18:裏面材
Claims (3)
- ダイヤフラムを具備した上チャンバーと、太陽電池モジュールとなる被ラミネート体を加熱するヒーター盤を具備した下チャンバーと、この下チャンバーを減圧するための真空ポンプとを備えた太陽電池モジュールの製造装置において、前記ヒーター盤に前記被ラミネート体の周縁部を固定する鉤状のつめを設けたことを特徴とする太陽電池モジュールの製造装置。
- 前記被ラミネート体の大きさもしくは形状に応じて前記つめの位置を可変できることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュールの製造装置。
- ダイヤフラムを具備した上チャンバーと、太陽電池モジュールとなる被ラミネート体を加熱するヒーター盤を具備した下チャンバーと、この下チャンバーを減圧するための真空ポンプとを備えたラミネート装置でラミネートする太陽電池モジュールの製造方法において、前記ヒーター盤に設けられた鉤状のつめで前記被ラミネート体の周縁部を固定しながらラミネートすることを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
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