JP2004176856A - トルクリミッタ - Google Patents
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Abstract
【課題】各部品の組み立て精度が設定トルク値に与える悪影響を可及的に低減させて、設定トルク値の安定化を図ることができ、且つ小型であっても充分な大きさの設定トルク値を確保することができるトルクリミッタを提供する。
【解決手段】同軸廻りに配置された外輪2及び内輪4の相互間に介設された複数のローラ5と、内輪4の外周に複数の係合子収容部9を配列させるべく形成されたカム面4aと、各ローラ5を保持する保持器6とを備え、伝達トルクが設定トルク以下の時に、ローラ5が係合子収容部9で楔係合することにより、外輪2と内輪4との間でトルクを伝達し、伝達トルクが設定トルクを超えた時に、ローラ5が外輪2を半径方向に弾性変形させつつ、隣接する係合子収容部9のカム面4aに乗り移ることにより、外輪2と内輪4との間でトルクの伝達を遮断する。
【選択図】 図1
【解決手段】同軸廻りに配置された外輪2及び内輪4の相互間に介設された複数のローラ5と、内輪4の外周に複数の係合子収容部9を配列させるべく形成されたカム面4aと、各ローラ5を保持する保持器6とを備え、伝達トルクが設定トルク以下の時に、ローラ5が係合子収容部9で楔係合することにより、外輪2と内輪4との間でトルクを伝達し、伝達トルクが設定トルクを超えた時に、ローラ5が外輪2を半径方向に弾性変形させつつ、隣接する係合子収容部9のカム面4aに乗り移ることにより、外輪2と内輪4との間でトルクの伝達を遮断する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝達トルクが設定トルク以下の時に外側回転部材と内側回転部材との間でトルクを伝達すると共に、伝達トルクが設定トルクを超えた時にそのトルクの伝達を遮断するように構成したトルクリミッタに関する。
【0002】
【従来技術】
周知のように、駆動モータ等の駆動源とこれに基づいて被動される被動部とを備えた各種の装置や設備等においては、駆動源から被動部に至るトルク伝達経路の途中にトルクリミッタを介設することが広汎に亘って行われている。このトルクリミッタは、被動側に過負荷が発生した場合に、駆動側からのトルクの伝達を自動的に遮断する機能を有するものである。
【0003】
例えば、電動パワーステアリングでは、タイヤの縁石乗り上げ時などに過大トルクがモータに加わり、また自動車パワーシートでは、衝突時などに過大トルクがモータに加わることになるが、モータと負荷との間のトルク伝達経路にトルクリミッタを設置すれば、設定トルクを超える負荷トルクがモータに加わらなくなるため、モータの保護に役立つことになる。そして、この種のトルクリミッタとしては、機械的手段を用いてトルクの伝達及びその遮断を行う構造が広く普及されている。
【0004】
その第1の具体例として、下記の特許文献1によれば、駆動軸及び被動軸に互いに相対回転自在な状態で一体連結された駆動回転体及び被動回転体と、被動回転体に対して相対回転自在な状態で面接触する摩擦プレートと、この摩擦プレートを被動回転体側に向けて付勢する皿バネと、被動回転体に対して相対回転可能とされ且つ駆動回転体に対して一体回転するケースとを備えたトルクリミッタが開示されている。
【0005】
また、第2の具体例として、下記の特許文献2によれば、内輪の外周に第1コイルスプリングを締まり嵌めに巻くと共に、その内輪の内周に第2コイルスプリングを同方向に巻いて圧入し、第1コイルスプリングの端部を外輪に係止させて正方向のトルク値を決定し、且つ第2コイルスプリングの端部を側輪に係止させて逆方向のトルク値を決定するようにしたトルクリミッタが開示されている。
【0006】
更に、第3の具体例として、下記の特許文献3によれば、トルク伝達軸に対して回転可能に装着されたハウジングと、該ハウジングの外周面に設けた回転動力源との連結手段と、その内側でトルク伝達軸に装着したクラッチ円板と、該クラッチ円板の一方の面に当接する複数のクラッチボールと、これらのクラッチボールをクラッチ円板側に押圧するスプリングと、クラッチ円板を支持する複数の支持ボールと、ハウジング内で支持ボールを保持するスラスト受け部材とを備えたトルクリミッタが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−087299号公報
【特許文献2】
特開2002−155973号公報
【特許文献3】
特開2002−227875号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の特許文献1に開示されたトルクリミッタは、被動回転体としてのディスクに対して皿バネの付勢力を利用して摩擦プレートを押し付けることによりトルク伝達力を得るようにした所謂ディスクブレーキ形式の構造を採用したものである。このような構造によれば、設定トルク値すなわち摩擦力に抗して滑りが生じ始めるトルク値は、皿バネによる付勢力と摩擦プレートによる摩擦力とに応じて主として決まることになるが、この付勢力や摩擦力は、各部品の組み立て誤差等に起因してバラツキが生じるものであり、しかも経時変化をも生じるものである。このため、設定トルク値が変化し易く、初期の設計に合致した動作が行われなくなるおそれがあると共に、その構造上、充分な設定トルク値を得るには大型化を招くという欠点がある。
【0009】
また、上記の特許文献2に開示されたトルクリミッタも、構造は上記の場合と相違するものの、設定トルク値は、内輪に対するコイルスプリングの緊縛力とコイルスプリングによる摩擦力とに応じて決まるものであるため、上記と同様にして設定トルク値が変化し易く、またその構造上、設定トルク値の大きなトルクリミッタを製作することは困難となる。
【0010】
更に、上記の特許文献3に開示されたトルクリミッタは、設定トルク値が、クラッチ円板にクラッチボールを圧接させる押圧力つまりスプリングの付勢力と、クラッチ円板の窪みからのクラッチボールの離脱性とに応じて主として決まるものであり、この付勢力や離脱性も、各部品の組み立て誤差等に起因してバラツキが生じるものである。したがって、この場合にも、設定トルク値が変化し易くなるばかりでなく、大型化を招くという難点がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、各部品の組み立て精度が設定トルク値に与える悪影響を可及的に低減させて、設定トルク値の安定化を図ることができ、且つ小型であっても充分な大きさの設定トルク値を確保することができるトルクリミッタを提供することを技術的課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明に係るトルクリミッタは、同軸廻りに配置された外側回転部材及び内側回転部材と、両回転部材の相互間に介設された複数の係合子と、両回転部材の何れか一方に形成され且つ各係合子を他方の回転部材との間で楔係合可能に収容する複数の係合子収容部を区分形成するカム面と、各係合子を保持する保持器とを備え、伝達トルクが設定トルク以下の時に、係合子が係合子収容部で楔係合することにより、両回転部材間でトルクを伝達し、伝達トルクが設定トルクを超えた時に、係合子が外側回転部材と内側回転部材との少なくとも何れか一方を半径方向に弾性変形させつつ、隣接する係合子収容部のカム面に乗り移ることにより、両回転部材間でトルクの伝達を遮断するように構成したことを特徴とするものである。
【0013】
このような構成によれば、外側と内側との何れか一方の回転部材に形成されたカム面と、このカム面に対向する他方の回転部材の対向面との間に、係合子収容部が設けられ、この係合子収容部で係合子が楔係合して、一方の回転部材を他方の回転部材に対してロック状態とすることにより、両回転部材間でトルクが伝達される。そして、外側と内側との少なくとも何れか一方の回転部材を係合子が弾性変形させつつ隣接する係合子収容部のカム面に乗り移るか否かに応じて、設定トルク値が主として決まることになる。換言すれば、回転部材の形状等による剛性(弾性変形量)のみによって設定トルク値が主として決まることになるため、各部品の組み立て時に設定トルク値調整用の予備部品等が不要になり、組み立て作業が容易になると共に、各部品の組み立て精度が設定トルク値に影響を与えることが適切に回避される。加えて、カム面の摩擦係数が設定トルク値に影響を与えるという事態や経時変化も生じ難くなり、設定トルク値の安定化を図ることが可能となる。しかも、トルクの伝達及び遮断を、係合子収容部での係合子の楔係合及び乗り移りによって行う構造であるから、その構造が簡素化され、トルクリミッタの小型化を図ることが可能となる。また、設定トルク値を変更する場合には、僅かな変更であれば、係合子の大きさ(例えば係合子がローラである場合にはローラの径)を変えるだけで済み、また大幅な変更であれば、隣接する係合子収容部相互間の境界に対応する部位の高さ(係合子が乗り移る時点のカム面の高さ)を変えるだけで済むことになる。
【0014】
上記の構成において、外側回転部材と内側回転部材との対向する何れか一方の周面は、複数の凹状のカム面を近接配列させてなる波形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
このように構成すれば、外側と内側との何れか一方の回転部材の周面に形成された複数の凹状のカム面と、これに対向する他方の回転部材の周面との相互間に、複数の係合子収容部が区分して形成される。そして、伝達トルクが設定トルク以下の時には、係合子収容部に存在している係合子が凹状のカム面に沿って周方向に移動しようとすることにより、その係合子が係合子収容部の周方向一方側に楔係合し、これに伴って一方の回転部材が他方の回転部材に対してロックされた状態になる。これに対して、伝達トルクが設定トルクを超えた時には、係合子が凹状のカム面の周方向一端部を乗り越えて、隣接する係合子収容部のカム面に乗り移ることになる。この場合、複数の凹状のカム面が近接して配列されていると、各カム面相互間の境界部をなす頂部の周方向寸法が短くなることから、回転部材を弾性変形させる領域も小さくなり、これに伴って係合子の円滑な乗り移り動作が行われ得ることになる。
【0016】
以上の構成において、係合子収容部は、係合子が正逆両回転方向に対して楔係合するように形成されていることことが好ましい。
【0017】
このように構成すれば、一方の回転部材が正逆何れの方向に回転する場合であっても、係合子は係合子収容部で楔係合して他方の回転部材との間でロック状態となるため、両回転方向に対してトルク伝達を行うことができ、ひいては両回転方向に対してトルクリミッタとしての機能を有することになる。
【0018】
この場合、外側回転部材は単一の部材で構成され、係合子は外側回転部材のみを弾性変形させるように構成されていることが好ましい。
【0019】
すなわち、外側回転部材は内側回転部材よりも係合子との接触面の半径が大きこと、及び外側回転部材には係合子の半径方向移動に伴って弾性変形する際に引張応力が作用するのに対して内側回転部材には圧縮応力が作用すること等を考慮すれば、外側回転部材の方が内側回転部材よりも不当な変形を生じることなく無理なく弾性変形を生じさせることができ、係合子の円滑な乗り移り性や回転部材の耐久性等の面で有利となる。しかも、外側回転部材は単一の部材で構成されているため、部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。この場合、外側回転部材を、薄板のプレス成型品で構成すれば、加工及び製作の容易化やコストの削減等を図る上で有利となる。なお、薄板のプレス成型品としては、鋼板をプレス成型して熱処理を施したものが一例として挙げられる。
【0020】
以上の構成において、保持器は、外側回転部材と内側回転部材とのうちカム面が形成されていない回転部材に予圧を付与されて接触していることが好ましい。
【0021】
このように構成すれば、保持器には、カム面が形成されていない回転部材の作用により、カム面に対して相対回転しようとする力が働くため、保持器に保持されている係合子にも同様に、カム面に対して相対回転しようとする力が働く。したがって、係合子は、カム面によって区分形成されている係合子収容部で円滑に楔係合して両回転部材間をロック状態にできることになるため、一方から他方の回転部材へのトルク伝達動作が確実化されると共に、隣接する係合子収容部のカム面に係合子が乗り移る動作も円滑に行われるため、トルク伝達の解除動作も確実化される。
【0022】
以上の構成において、外側回転部材と内側回転部材との何れか一方に入力軸が設けられ、他方に出力軸が設けられ、入力軸と出力軸とが両回転部材の内周側で突合せ状に配置されていることが好ましい。
【0023】
このように構成すれば、仮に外側回転部材の外周側に入力軸または出力軸を設けた場合には、トルクリミッタ及びその周辺部が大型になるが、上記のように入力軸と出力軸とが両回転部材の内周側で突合せ状に配置されていることにより、トルクリミッタ及びその周辺部のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
この場合、外側回転部材に入力軸が設けられ、内側回転部材に出力軸が設けられ、内側回転部材は、入力軸をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受を備えていることが好ましい。
【0025】
このように構成すれば、出力軸が設けられた内側回転部材を有効利用して入力軸をラジアル方向に回転自在に支持できることになり、各部品の配置の適切化及びレイアウトの最適化が図られ、更なるコンパクト化に寄与できることになる。
【0026】
以上の構成において、外側回転部材及び内側回転部材がハウジングにより覆われ、ハウジングの側面部と、カム面が形成されていない回転部材の側面部との間に、保持器が軸方向に予圧を付与されて介在していることが好ましい。
【0027】
このように構成すれば、既に述べたように一方の回転部材から他方の回転部材へのトルク伝達動作、並びにトルクの解除動作が確実化されると共に、両回転部材を覆うハウジングの側面部が、保持器に軸方向予圧を付与するために有効利用され、これによっても部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。
【0028】
この場合、ハウジングが入力軸側ハウジング部材と出力軸側ハウジング部材とに2分割され、この両ハウジング部材は、両者の対向端部を嵌合させて一体化されていることが好ましい。
【0029】
このように構成すれば、内側回転部材、係合子、保持器、及び外側回転部材を所要の状態に組み立てた後、この組み立て体を軸方向両側からのそれぞれの作業によって入力軸側ハウジング部材と出力軸側ハウジング部材とで覆い、この両者の対向端部を圧入等により嵌合固定させることによって、ハウジングの組み付けが完了する。したがって、上述の内側回転部材及び外側回転部材を含む組み立て体の外周側のみならず軸方向両側をもハウジングで適正に覆うことができると共に、そのハウジングの組み付け作業を容易に行うことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の実施形態に係るトルクリミッタの全体構成を示す縦断側面図、図2は、図1のA−A線にしたがって切断した縦断正面図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、この実施形態に係るトルクリミッタは、入力軸1と一体回転可能な外側回転部材としての外輪2と、出力軸3と一体回転可能な内側回転部材としての内輪4と、外輪2及び内輪4の相互間に介設された複数の係合子としてのローラ(ころ)5と、これらのローラ5を保持する保持器6と、外輪2及び内輪4の外周囲を覆うハウジング7とを主たる要素として構成される。
【0032】
前記外輪2は、鋼板のプレス成型品であって、円環板状の側板部2aと、該側板部2aの外周端から軸方向の一方側に連続して延びた軌道輪形成部である筒状部2bと、該筒状部2bの先端開口部に形成された湾曲状拡径部2cとを主体として構成される。前記側板部2aの内周端は、円筒状のカラー8の外周にスプラインS1で嵌合されると共に、カラー8の内周は、入力軸1の外周にスプラインS2で嵌合され、これにより外輪2は入力軸1と一体回転する構成とされている。なお、外輪2の全部またはその内周面(軌道面2c)に対しては、例えば、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の熱処理が施されている。
【0033】
前記内輪4は、外輪2よりも厚肉の円筒状部材であって、その内周が、出力軸3の外周にスプラインS3で嵌合され、これにより内輪4は出力軸3と一体回転する構成とされている。この場合、内輪4の内周には、スプラインS3の軸方向一方側にラジアル軸受部R3が形成され、このラジアル軸受部R3に、入力軸1の一端に形成された小径部1aが回動自在に支持されている。これにより、入力軸1(小径部1a)と出力軸3とは、適正な同軸度を維持した上で、僅かな隙間を介在させて突合せ状に配置されている。この場合、上述のスプラインS1、S2、S3に代えて、セレーションや2面幅カットを採用することも可能である。
【0034】
前記外輪2は、その内周に、平滑な周面からなる軌道面2cを有しているのに対し、前記内輪4は、その外周に、複数の凹状のカム面4aが近接して配列された波形状の軌道面4bを有している。そして、内輪4の各カム面4aと、外輪2の軌道面2cとの相互間には、各ローラ5をそれぞれ正逆両回転方向に楔係合可能に収容する複数の係合子収容部9が形成されている。この場合、全て(図例では6個)のローラ5は、全て(図例では18個)の係合子収容部9のうち、複数(図例では2個)の係合子収容部9おきに収容されている。したがって、この実施形態では、係合子収容部9の数(カム面4aの数)が、ローラ5の数の2倍以上とされている。なお、係合子収容部9の数(カム面4aの数)は、ローラ5の数と同一であってもよい。
【0035】
そして、入力軸1及び外輪2の回転時に、各ローラ5が係合子収容部9で楔係合することによって、入力軸1から出力軸3にトルクが伝達される一方、各ローラ5が外輪2の筒状部2bとの接触部位を弾性変形させつつ楔係合状態から隣接する係合子収容部9のカム面4aに乗り移ることによって、入力軸1から出力軸3へのトルク伝達が遮断されるようになっている。したがって、入力軸1から出力軸3に対するトルクの伝達動作と遮断動作とを区別する設定トルク値は、外輪2の筒状部2bの弾性変形量が各ローラ5を隣接するカム面4aに乗り移らせるに足る量であるか否かに基づいて、換言すれば外輪2の筒状部2bの剛性に基づいて決められていることになる。
【0036】
前記保持器6は、外輪2よりも厚肉で且つ内輪4よりも薄肉の円筒状部材であって、外輪2と内輪4との相互間に、内外周両側に隙間を存して介設されると共に、周方向等間隔おきに各ローラ5を収納保持する複数(図例では6個)のポケット(開口部)6aを備えている。この場合、保持器6の各ポケット6aは、各ローラ5に対する回転方向の隙間が、ローラ5の径の5%以下、或いは各ポケット6aの回転方向寸法よりもローラ5の径の方が大きくなるように製作されている。そして、この保持器6は、外輪2の側板部2a内面に予圧を付与された状態で接触している。この場合、保持器6の軸方向の両端面または何れか一方側の端面は、平面であってもよいが、保持器6の肉厚よりも薄肉とされた円環状の単一の突起や多数の突起を設けることが好ましい。このようにすれば、保持器6が軸方向に予圧を受けた時に、突起が容易に変形して他の部品の寸法誤差を許容するこができる。更に、内輪4と外輪2とを各ローラ5を介在させて組み立てた状態におけるラジアル方向の隙間は、ローラ5の径の3%以下、或いは隙間が零で各ローラ5が内輪4及び外輪2から圧縮力を付与される状態で組み立てが行われている。
【0037】
前記ハウジング7は、入力軸側ハウジング部材7aと出力軸側ハウジング部材7bとに軸方向に2分割されている。入力軸側ハウジング部材7aは、外輪2の軸方向一方側(反出力軸3側)に近接配置された円環状の基板部7a1と、該基板部7a1の内周端から軸方向一方側(反出力軸3側)に連続して延びた軸筒部7a2と、該基板部7a1の外周端から軸方向他方側(出力軸3側)に延びて外輪2の外周側を覆うドラム部7a3とから構成される。また、出力軸側ハウジング部材7bは、内輪4の軸方向一方側(反入力軸1側)に近接配置された円環状の基板部7b1と、該基板部7b1の内周端から軸方向一方側(反入力軸1側)に連続して延びた軸筒部7b2と、該基板部7b1の外周端から軸方向他方側(入力軸1側)に延びて外輪2の外周側を覆うドラム部7b3とから構成される。
【0038】
前記入力軸側ハウジング部材7aのドラム部7a3は、出力軸側ハウジング部材7bのドラム部7b3の内周に圧入により嵌合固定されている。この場合、前記保持器6は、出力軸側ハウジング部材7bの基板部7b1内面と、外輪2の側板部2a内面との間に、軸方向の予圧を付与されて介設されている。なお、入力軸側ハウジング部材7aの軸筒部7bとカラー8との間、及び出力軸側ハウジング部材7bの筒軸部7b2と出力軸3との間にはそれぞれ、僅かな隙間が介在しており、したがって入力軸1及び出力軸3はそれぞれ両ハウジング部材7a、7bに対して回転可能とされている。
【0039】
次に、以上のような構成を備えたトルクリミッタの主たる動作を、図3及び図4に基づいて説明する。
【0040】
図3は、外輪2から内輪4への伝達トルクが零であって、各ローラ5が係合子収容部9の中立位置(カム面4aの最低部)にある状態を示すものである。そして、このような状態から、入力軸1と一体回転する外輪2が同図時計方向に回転した場合には、外輪2に予圧を付与されて接触する保持器6からローラ5を同方向に回転させようとする力が働くことにより、内輪4に形成されたカム面4aの回転方向前側の傾斜面(カム面4aの同図右側の傾斜面)と、外輪2に形成された軌道面2cとの間に、ローラ5が楔係合する。この場合、外輪2から内輪4への伝達トルクが設定トルク以下であり且つ設定トルクよりもかなり小さなトルクである場合には、外輪2を殆ど変形させることなくローラ5が楔係合した状態に維持される。これにより、内輪4は外輪2に対してロックされた状態となり、入力軸1からのトルクは外輪2から内輪4に伝達されるため、内輪4と一体回転可能な出力軸3が時計方向に回転する。
【0041】
また、各ローラ5が係合子収容部9の中立位置にある状態から、上記とは逆に外輪2が同図反時計方向に回転した場合には、同様に保持器6からローラ5に付与される力により、内輪4に形成されたカム面4aの回転方向前側の傾斜面(カム面4aの同図左側の傾斜面)と、外輪2に形成された軌道面2cとの間に、ローラ5が楔係合する。この場合にも、外輪2から内輪4への伝達トルクが設定トルク以下であり且つ設定トルクよりもかなり小さなトルクである場合には、外輪2を殆ど変形させることなくローラ5が楔係合した状態に維持されて、内輪4が外輪2に対してロックされた状態となるため、入力軸1からのトルクは外輪2から内輪4に伝達され、この結果、出力軸3が反時計方向に回転する。
【0042】
一方、図4に示すように、外輪2が時計方向に回転する際に、外輪2から内輪4への伝達トルクが大きくなった場合には、各ローラ5が、外輪2を外周側に向かって部分的に膨出させる弾性変形を生じさせつつ、カム面4aの回転方向前側の傾斜面に乗り上がる。この場合、外輪2から内輪4への伝達トルクが設定トルク以下であれば、各ローラ5は、上記カム面4aの傾斜面の途中で停止した状態に維持されるため、上記カム面4aの傾斜面と外輪2の軌道面2cとの間、詳しくは係合子収容部9における楔角度がθの楔隙間に、各ローラ5が楔係合する。したがって、内輪4は外輪2に対してロックされた状態となり、入力軸1からのトルクが外輪2から内輪4に伝達されるため、出力軸3は時計方向に回転する。また、外輪2が反時計方向に回転する際に、伝達トルクが大きくなった場合にも、同様に外輪2の弾性変形を伴って、各ローラ5が楔係合することにより、内輪4が外輪2に対してロックされた状態となり、出力軸3が反時計方向に回転する。
【0043】
このような状態から、伝達トルクが更に大きくなって設定トルクを超えた場合には、各ローラ5が、外輪2を更に弾性変形させると共に、乗り上がり状態にある傾斜面を有するカム面4aとそれに隣接するカム面4aとの境界をなす頂点を乗り越え、その隣接するカム面4aに乗り移る。そして、伝達トルクが設定トルクを超えている期間中は、このような動作が継続して行われるため、内輪4の外輪2に対するロック状態が解除され、外輪2から内輪4へのトルク伝達が遮断される。したがって、外輪2及び入力軸1は空転状態となる。また、外輪2が反時計方向に回転する場合にも、伝達トルクが設定トルクを超えていれば、これと同様の動作が行われる。
【0044】
したがって、このトルクリミッタの設定トルク値は、各ローラ5が、隣り合う一対のカム面4aの境界をなす頂点を通過するか否か、換言すれば外輪2の変形量が、各ローラ5を上記の頂点を通過させるに足る量となるか否かに応じて決まる。そして、外輪2は、薄板プレス成型品を熱処理して製作されているので、その肉厚や形状は安定しており、このような外輪2の変形量のみに応じて設定トルク値を決めることができるため、その設定トルク値が各部品の組み立て精度や摩擦係数の影響を受けることがなくなる。更に、このトルクリミッタの設定トルク値を変更する場合には、僅かな変更であれば、各ローラ5の径を異ならせれば良く、また大幅な変更であれば、外輪2の肉厚或いはカム面4aの上記頂点の高さを異ならせれば良い。したがって、設定トルク値の変更を容易に行うことができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、外側回転部材としての外輪2に入力軸1を一体回転可能に設け、内側回転部材としての内輪4に出力軸3を一体回転可能に設ける構成としたが、これとは逆に、外輪に出力軸を一体回転可能に設け、内輪に入力軸を一体回転可能に設ける構成としても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、係合子をローラ5で構成したが、これに代えて例えば係合子を球状体で構成しても良い。
【0047】
更に、上記実施形態では、内輪4の外周面にカム面4aを形成したが、この外周面を平滑な周面とした上で、外輪4の内周面にカム面を形成しても良い。
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明に係るトルクリミッタによれば、伝達トルクが設定トルク以下の時に、係合子が係合子収容部で楔係合することにより、外側と内側との両回転部材間でトルクを伝達し、伝達トルクが設定トルクを超えた時に、係合子が少なくとも何れか一方の回転部材を半径方向に弾性変形させつつ、隣接する係合子収容部のカム面に乗り移ることにより、両回転部材間でトルクの伝達を遮断するように構成したから、少なくとも何れか一方の回転部材を係合子が弾性変形させつつ隣接する係合子収容部のカム面に乗り移るか否かに応じて、換言すれば、回転部材の形状等による剛性(弾性変形量)のみによって設定トルク値が主として決まることになる。したがって、各部品の組み立て時に設定トルク値調整用の予備部品等が不要になり、組み立て作業が容易になると共に、各部品の組み立て精度が設定トルク値に影響を与えることが適切に回避され、更には、カム面の摩擦係数が設定トルク値に影響を与えるという事態や経時変化も生じ難くなり、設定トルク値の安定化を図ることが可能となる。しかも、トルクの伝達及び遮断を、係合子収容部での係合子の楔係合及び乗り移りによって行う構造であるから、その構造が簡素化され、トルクリミッタの小型化が可能となる。また、設定トルク値の変更も容易に行えることから、特性が相違するトルクリミッタの製作に要する手間が好適に省かれる。
【0049】
そして、外側回転部材と内側回転部材との対向する何れか一方の周面が、複数の凹状のカム面を近接配列させてなる波形状に形成されていれば、各カム面相互間の境界部をなす頂部の周方向寸法が短くなることから、回転部材を弾性変形させる領域も小さくなり、係合子の乗り移り動作つまりトルク伝達の遮断動作が円滑に行われ得ることになる。
【0050】
また、係合子収容部を、係合子が正逆両回転方向に対して楔係合可能となるように形成すれば、両回転方向に対してトルク伝達及び遮断を行うことができ、ひいては両回転方向に対してトルクリミッタとしての機能を持たせることが可能となる。
【0051】
この場合、外側回転部材を単一の部材で構成し、係合子が外側回転部材のみを弾性変形させるように構成すれば、不当な変形を生じることなく無理なく弾性変形を生じさせることが可能となり、係合子の円滑な乗り移り性や回転部材の耐久性等の面で有利となると共に、部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。
【0052】
更に、保持器を、外側回転部材と内側回転部材とのうちカム面が形成されていない回転部材に予圧を付与して接触させれば、保持器には、カム面に対して相対回転しようとする力が働くため、保持器に保持されている係合子にも同様に、カム面に対して相対回転しようとする力が働く。したがって、係合子は、カム面によって区分形成されている係合子収容部で円滑に楔係合して両回転部材間をロック状態にできることになるため、一方から他方の回転部材へのトルク伝達動作が確実化されると共に、隣接する係合子収容部のカム面に係合子が乗り移る動作も円滑に行われるため、トルク伝達の解除動作も確実化される。
【0053】
また、外側回転部材と内側回転部材との何れか一方に入力軸を設け、他方に出力軸を設け、入力軸と出力軸とを両回転部材の内周側で突合せ状に配置すれば、仮に外側回転部材の外周側に入力軸または出力軸を設ける場合と比較して、トルクリミッタ及びその周辺部のコンパクト化を図ることができる。
【0054】
この場合、外側回転部材に入力軸を設け、内側回転部材に出力軸を設け、且つ内側回転部材が、入力軸をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受を備えるようにすれば、出力軸が設けられた内側回転部材を有効利用して入力軸をラジアル方向に回転自在に支持できることになり、各部品の配置の適切化及びレイアウトの最適化が図られ、更なるコンパクト化に寄与できることになる。
【0055】
更に、外側回転部材及び内側回転部材をハウジングで覆い、ハウジングの側面部と、カム面が形成されていない回転部材の側面部との間に、保持器を軸方向に予圧を付与して介在させれば、一方の回転部材から他方の回転部材へのトルク伝達動作、並びにトルクの解除動作が確実化されると共に、両回転部材を覆うハウジングの側面部が、保持器に軸方向予圧を付与するために有効利用され、これに伴って部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。
【0056】
この場合、ハウジングを入力軸側ハウジング部材と出力軸側ハウジング部材とに2分割し、この両ハウジング部材を、両者の対向端部を嵌合させて一体化させるようにすれば、内側回転部材、係合子、保持器、及び外側回転部材を所要の状態に組み立てた組み立て体の外周側のみならず軸方向両側をもハウジングで適正に覆うことができ、またハウジングの組み付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るトルクリミッタの全体構成を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るトルクリミッタを示す縦断正面図であって、図1のA−A線にしたがって切断した断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るトルクリミッタの作用を説明するための一部省略縦断正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るトルクリミッタの作用を説明するための一部省略縦断正面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 外輪(外側回転部材)
3 出力軸
4 内輪(内側回転部材)
4a カム面
5 ローラ(係合子)
6 保持器
7 ハウジング
7a 入力軸側ハウジング
7b 出力軸側ハウジング
9 係合子収容部
【発明の属する技術分野】
本発明は、伝達トルクが設定トルク以下の時に外側回転部材と内側回転部材との間でトルクを伝達すると共に、伝達トルクが設定トルクを超えた時にそのトルクの伝達を遮断するように構成したトルクリミッタに関する。
【0002】
【従来技術】
周知のように、駆動モータ等の駆動源とこれに基づいて被動される被動部とを備えた各種の装置や設備等においては、駆動源から被動部に至るトルク伝達経路の途中にトルクリミッタを介設することが広汎に亘って行われている。このトルクリミッタは、被動側に過負荷が発生した場合に、駆動側からのトルクの伝達を自動的に遮断する機能を有するものである。
【0003】
例えば、電動パワーステアリングでは、タイヤの縁石乗り上げ時などに過大トルクがモータに加わり、また自動車パワーシートでは、衝突時などに過大トルクがモータに加わることになるが、モータと負荷との間のトルク伝達経路にトルクリミッタを設置すれば、設定トルクを超える負荷トルクがモータに加わらなくなるため、モータの保護に役立つことになる。そして、この種のトルクリミッタとしては、機械的手段を用いてトルクの伝達及びその遮断を行う構造が広く普及されている。
【0004】
その第1の具体例として、下記の特許文献1によれば、駆動軸及び被動軸に互いに相対回転自在な状態で一体連結された駆動回転体及び被動回転体と、被動回転体に対して相対回転自在な状態で面接触する摩擦プレートと、この摩擦プレートを被動回転体側に向けて付勢する皿バネと、被動回転体に対して相対回転可能とされ且つ駆動回転体に対して一体回転するケースとを備えたトルクリミッタが開示されている。
【0005】
また、第2の具体例として、下記の特許文献2によれば、内輪の外周に第1コイルスプリングを締まり嵌めに巻くと共に、その内輪の内周に第2コイルスプリングを同方向に巻いて圧入し、第1コイルスプリングの端部を外輪に係止させて正方向のトルク値を決定し、且つ第2コイルスプリングの端部を側輪に係止させて逆方向のトルク値を決定するようにしたトルクリミッタが開示されている。
【0006】
更に、第3の具体例として、下記の特許文献3によれば、トルク伝達軸に対して回転可能に装着されたハウジングと、該ハウジングの外周面に設けた回転動力源との連結手段と、その内側でトルク伝達軸に装着したクラッチ円板と、該クラッチ円板の一方の面に当接する複数のクラッチボールと、これらのクラッチボールをクラッチ円板側に押圧するスプリングと、クラッチ円板を支持する複数の支持ボールと、ハウジング内で支持ボールを保持するスラスト受け部材とを備えたトルクリミッタが開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−087299号公報
【特許文献2】
特開2002−155973号公報
【特許文献3】
特開2002−227875号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の特許文献1に開示されたトルクリミッタは、被動回転体としてのディスクに対して皿バネの付勢力を利用して摩擦プレートを押し付けることによりトルク伝達力を得るようにした所謂ディスクブレーキ形式の構造を採用したものである。このような構造によれば、設定トルク値すなわち摩擦力に抗して滑りが生じ始めるトルク値は、皿バネによる付勢力と摩擦プレートによる摩擦力とに応じて主として決まることになるが、この付勢力や摩擦力は、各部品の組み立て誤差等に起因してバラツキが生じるものであり、しかも経時変化をも生じるものである。このため、設定トルク値が変化し易く、初期の設計に合致した動作が行われなくなるおそれがあると共に、その構造上、充分な設定トルク値を得るには大型化を招くという欠点がある。
【0009】
また、上記の特許文献2に開示されたトルクリミッタも、構造は上記の場合と相違するものの、設定トルク値は、内輪に対するコイルスプリングの緊縛力とコイルスプリングによる摩擦力とに応じて決まるものであるため、上記と同様にして設定トルク値が変化し易く、またその構造上、設定トルク値の大きなトルクリミッタを製作することは困難となる。
【0010】
更に、上記の特許文献3に開示されたトルクリミッタは、設定トルク値が、クラッチ円板にクラッチボールを圧接させる押圧力つまりスプリングの付勢力と、クラッチ円板の窪みからのクラッチボールの離脱性とに応じて主として決まるものであり、この付勢力や離脱性も、各部品の組み立て誤差等に起因してバラツキが生じるものである。したがって、この場合にも、設定トルク値が変化し易くなるばかりでなく、大型化を招くという難点がある。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、各部品の組み立て精度が設定トルク値に与える悪影響を可及的に低減させて、設定トルク値の安定化を図ることができ、且つ小型であっても充分な大きさの設定トルク値を確保することができるトルクリミッタを提供することを技術的課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記技術的課題を解決するためになされた本発明に係るトルクリミッタは、同軸廻りに配置された外側回転部材及び内側回転部材と、両回転部材の相互間に介設された複数の係合子と、両回転部材の何れか一方に形成され且つ各係合子を他方の回転部材との間で楔係合可能に収容する複数の係合子収容部を区分形成するカム面と、各係合子を保持する保持器とを備え、伝達トルクが設定トルク以下の時に、係合子が係合子収容部で楔係合することにより、両回転部材間でトルクを伝達し、伝達トルクが設定トルクを超えた時に、係合子が外側回転部材と内側回転部材との少なくとも何れか一方を半径方向に弾性変形させつつ、隣接する係合子収容部のカム面に乗り移ることにより、両回転部材間でトルクの伝達を遮断するように構成したことを特徴とするものである。
【0013】
このような構成によれば、外側と内側との何れか一方の回転部材に形成されたカム面と、このカム面に対向する他方の回転部材の対向面との間に、係合子収容部が設けられ、この係合子収容部で係合子が楔係合して、一方の回転部材を他方の回転部材に対してロック状態とすることにより、両回転部材間でトルクが伝達される。そして、外側と内側との少なくとも何れか一方の回転部材を係合子が弾性変形させつつ隣接する係合子収容部のカム面に乗り移るか否かに応じて、設定トルク値が主として決まることになる。換言すれば、回転部材の形状等による剛性(弾性変形量)のみによって設定トルク値が主として決まることになるため、各部品の組み立て時に設定トルク値調整用の予備部品等が不要になり、組み立て作業が容易になると共に、各部品の組み立て精度が設定トルク値に影響を与えることが適切に回避される。加えて、カム面の摩擦係数が設定トルク値に影響を与えるという事態や経時変化も生じ難くなり、設定トルク値の安定化を図ることが可能となる。しかも、トルクの伝達及び遮断を、係合子収容部での係合子の楔係合及び乗り移りによって行う構造であるから、その構造が簡素化され、トルクリミッタの小型化を図ることが可能となる。また、設定トルク値を変更する場合には、僅かな変更であれば、係合子の大きさ(例えば係合子がローラである場合にはローラの径)を変えるだけで済み、また大幅な変更であれば、隣接する係合子収容部相互間の境界に対応する部位の高さ(係合子が乗り移る時点のカム面の高さ)を変えるだけで済むことになる。
【0014】
上記の構成において、外側回転部材と内側回転部材との対向する何れか一方の周面は、複数の凹状のカム面を近接配列させてなる波形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
このように構成すれば、外側と内側との何れか一方の回転部材の周面に形成された複数の凹状のカム面と、これに対向する他方の回転部材の周面との相互間に、複数の係合子収容部が区分して形成される。そして、伝達トルクが設定トルク以下の時には、係合子収容部に存在している係合子が凹状のカム面に沿って周方向に移動しようとすることにより、その係合子が係合子収容部の周方向一方側に楔係合し、これに伴って一方の回転部材が他方の回転部材に対してロックされた状態になる。これに対して、伝達トルクが設定トルクを超えた時には、係合子が凹状のカム面の周方向一端部を乗り越えて、隣接する係合子収容部のカム面に乗り移ることになる。この場合、複数の凹状のカム面が近接して配列されていると、各カム面相互間の境界部をなす頂部の周方向寸法が短くなることから、回転部材を弾性変形させる領域も小さくなり、これに伴って係合子の円滑な乗り移り動作が行われ得ることになる。
【0016】
以上の構成において、係合子収容部は、係合子が正逆両回転方向に対して楔係合するように形成されていることことが好ましい。
【0017】
このように構成すれば、一方の回転部材が正逆何れの方向に回転する場合であっても、係合子は係合子収容部で楔係合して他方の回転部材との間でロック状態となるため、両回転方向に対してトルク伝達を行うことができ、ひいては両回転方向に対してトルクリミッタとしての機能を有することになる。
【0018】
この場合、外側回転部材は単一の部材で構成され、係合子は外側回転部材のみを弾性変形させるように構成されていることが好ましい。
【0019】
すなわち、外側回転部材は内側回転部材よりも係合子との接触面の半径が大きこと、及び外側回転部材には係合子の半径方向移動に伴って弾性変形する際に引張応力が作用するのに対して内側回転部材には圧縮応力が作用すること等を考慮すれば、外側回転部材の方が内側回転部材よりも不当な変形を生じることなく無理なく弾性変形を生じさせることができ、係合子の円滑な乗り移り性や回転部材の耐久性等の面で有利となる。しかも、外側回転部材は単一の部材で構成されているため、部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。この場合、外側回転部材を、薄板のプレス成型品で構成すれば、加工及び製作の容易化やコストの削減等を図る上で有利となる。なお、薄板のプレス成型品としては、鋼板をプレス成型して熱処理を施したものが一例として挙げられる。
【0020】
以上の構成において、保持器は、外側回転部材と内側回転部材とのうちカム面が形成されていない回転部材に予圧を付与されて接触していることが好ましい。
【0021】
このように構成すれば、保持器には、カム面が形成されていない回転部材の作用により、カム面に対して相対回転しようとする力が働くため、保持器に保持されている係合子にも同様に、カム面に対して相対回転しようとする力が働く。したがって、係合子は、カム面によって区分形成されている係合子収容部で円滑に楔係合して両回転部材間をロック状態にできることになるため、一方から他方の回転部材へのトルク伝達動作が確実化されると共に、隣接する係合子収容部のカム面に係合子が乗り移る動作も円滑に行われるため、トルク伝達の解除動作も確実化される。
【0022】
以上の構成において、外側回転部材と内側回転部材との何れか一方に入力軸が設けられ、他方に出力軸が設けられ、入力軸と出力軸とが両回転部材の内周側で突合せ状に配置されていることが好ましい。
【0023】
このように構成すれば、仮に外側回転部材の外周側に入力軸または出力軸を設けた場合には、トルクリミッタ及びその周辺部が大型になるが、上記のように入力軸と出力軸とが両回転部材の内周側で突合せ状に配置されていることにより、トルクリミッタ及びその周辺部のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
この場合、外側回転部材に入力軸が設けられ、内側回転部材に出力軸が設けられ、内側回転部材は、入力軸をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受を備えていることが好ましい。
【0025】
このように構成すれば、出力軸が設けられた内側回転部材を有効利用して入力軸をラジアル方向に回転自在に支持できることになり、各部品の配置の適切化及びレイアウトの最適化が図られ、更なるコンパクト化に寄与できることになる。
【0026】
以上の構成において、外側回転部材及び内側回転部材がハウジングにより覆われ、ハウジングの側面部と、カム面が形成されていない回転部材の側面部との間に、保持器が軸方向に予圧を付与されて介在していることが好ましい。
【0027】
このように構成すれば、既に述べたように一方の回転部材から他方の回転部材へのトルク伝達動作、並びにトルクの解除動作が確実化されると共に、両回転部材を覆うハウジングの側面部が、保持器に軸方向予圧を付与するために有効利用され、これによっても部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。
【0028】
この場合、ハウジングが入力軸側ハウジング部材と出力軸側ハウジング部材とに2分割され、この両ハウジング部材は、両者の対向端部を嵌合させて一体化されていることが好ましい。
【0029】
このように構成すれば、内側回転部材、係合子、保持器、及び外側回転部材を所要の状態に組み立てた後、この組み立て体を軸方向両側からのそれぞれの作業によって入力軸側ハウジング部材と出力軸側ハウジング部材とで覆い、この両者の対向端部を圧入等により嵌合固定させることによって、ハウジングの組み付けが完了する。したがって、上述の内側回転部材及び外側回転部材を含む組み立て体の外周側のみならず軸方向両側をもハウジングで適正に覆うことができると共に、そのハウジングの組み付け作業を容易に行うことができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。図1は、本発明の実施形態に係るトルクリミッタの全体構成を示す縦断側面図、図2は、図1のA−A線にしたがって切断した縦断正面図である。
【0031】
図1及び図2に示すように、この実施形態に係るトルクリミッタは、入力軸1と一体回転可能な外側回転部材としての外輪2と、出力軸3と一体回転可能な内側回転部材としての内輪4と、外輪2及び内輪4の相互間に介設された複数の係合子としてのローラ(ころ)5と、これらのローラ5を保持する保持器6と、外輪2及び内輪4の外周囲を覆うハウジング7とを主たる要素として構成される。
【0032】
前記外輪2は、鋼板のプレス成型品であって、円環板状の側板部2aと、該側板部2aの外周端から軸方向の一方側に連続して延びた軌道輪形成部である筒状部2bと、該筒状部2bの先端開口部に形成された湾曲状拡径部2cとを主体として構成される。前記側板部2aの内周端は、円筒状のカラー8の外周にスプラインS1で嵌合されると共に、カラー8の内周は、入力軸1の外周にスプラインS2で嵌合され、これにより外輪2は入力軸1と一体回転する構成とされている。なお、外輪2の全部またはその内周面(軌道面2c)に対しては、例えば、浸炭焼入れ焼戻し、浸炭窒化焼入れ焼戻し、高周波焼入れ焼戻し、ずぶ焼入れ焼戻し等の熱処理が施されている。
【0033】
前記内輪4は、外輪2よりも厚肉の円筒状部材であって、その内周が、出力軸3の外周にスプラインS3で嵌合され、これにより内輪4は出力軸3と一体回転する構成とされている。この場合、内輪4の内周には、スプラインS3の軸方向一方側にラジアル軸受部R3が形成され、このラジアル軸受部R3に、入力軸1の一端に形成された小径部1aが回動自在に支持されている。これにより、入力軸1(小径部1a)と出力軸3とは、適正な同軸度を維持した上で、僅かな隙間を介在させて突合せ状に配置されている。この場合、上述のスプラインS1、S2、S3に代えて、セレーションや2面幅カットを採用することも可能である。
【0034】
前記外輪2は、その内周に、平滑な周面からなる軌道面2cを有しているのに対し、前記内輪4は、その外周に、複数の凹状のカム面4aが近接して配列された波形状の軌道面4bを有している。そして、内輪4の各カム面4aと、外輪2の軌道面2cとの相互間には、各ローラ5をそれぞれ正逆両回転方向に楔係合可能に収容する複数の係合子収容部9が形成されている。この場合、全て(図例では6個)のローラ5は、全て(図例では18個)の係合子収容部9のうち、複数(図例では2個)の係合子収容部9おきに収容されている。したがって、この実施形態では、係合子収容部9の数(カム面4aの数)が、ローラ5の数の2倍以上とされている。なお、係合子収容部9の数(カム面4aの数)は、ローラ5の数と同一であってもよい。
【0035】
そして、入力軸1及び外輪2の回転時に、各ローラ5が係合子収容部9で楔係合することによって、入力軸1から出力軸3にトルクが伝達される一方、各ローラ5が外輪2の筒状部2bとの接触部位を弾性変形させつつ楔係合状態から隣接する係合子収容部9のカム面4aに乗り移ることによって、入力軸1から出力軸3へのトルク伝達が遮断されるようになっている。したがって、入力軸1から出力軸3に対するトルクの伝達動作と遮断動作とを区別する設定トルク値は、外輪2の筒状部2bの弾性変形量が各ローラ5を隣接するカム面4aに乗り移らせるに足る量であるか否かに基づいて、換言すれば外輪2の筒状部2bの剛性に基づいて決められていることになる。
【0036】
前記保持器6は、外輪2よりも厚肉で且つ内輪4よりも薄肉の円筒状部材であって、外輪2と内輪4との相互間に、内外周両側に隙間を存して介設されると共に、周方向等間隔おきに各ローラ5を収納保持する複数(図例では6個)のポケット(開口部)6aを備えている。この場合、保持器6の各ポケット6aは、各ローラ5に対する回転方向の隙間が、ローラ5の径の5%以下、或いは各ポケット6aの回転方向寸法よりもローラ5の径の方が大きくなるように製作されている。そして、この保持器6は、外輪2の側板部2a内面に予圧を付与された状態で接触している。この場合、保持器6の軸方向の両端面または何れか一方側の端面は、平面であってもよいが、保持器6の肉厚よりも薄肉とされた円環状の単一の突起や多数の突起を設けることが好ましい。このようにすれば、保持器6が軸方向に予圧を受けた時に、突起が容易に変形して他の部品の寸法誤差を許容するこができる。更に、内輪4と外輪2とを各ローラ5を介在させて組み立てた状態におけるラジアル方向の隙間は、ローラ5の径の3%以下、或いは隙間が零で各ローラ5が内輪4及び外輪2から圧縮力を付与される状態で組み立てが行われている。
【0037】
前記ハウジング7は、入力軸側ハウジング部材7aと出力軸側ハウジング部材7bとに軸方向に2分割されている。入力軸側ハウジング部材7aは、外輪2の軸方向一方側(反出力軸3側)に近接配置された円環状の基板部7a1と、該基板部7a1の内周端から軸方向一方側(反出力軸3側)に連続して延びた軸筒部7a2と、該基板部7a1の外周端から軸方向他方側(出力軸3側)に延びて外輪2の外周側を覆うドラム部7a3とから構成される。また、出力軸側ハウジング部材7bは、内輪4の軸方向一方側(反入力軸1側)に近接配置された円環状の基板部7b1と、該基板部7b1の内周端から軸方向一方側(反入力軸1側)に連続して延びた軸筒部7b2と、該基板部7b1の外周端から軸方向他方側(入力軸1側)に延びて外輪2の外周側を覆うドラム部7b3とから構成される。
【0038】
前記入力軸側ハウジング部材7aのドラム部7a3は、出力軸側ハウジング部材7bのドラム部7b3の内周に圧入により嵌合固定されている。この場合、前記保持器6は、出力軸側ハウジング部材7bの基板部7b1内面と、外輪2の側板部2a内面との間に、軸方向の予圧を付与されて介設されている。なお、入力軸側ハウジング部材7aの軸筒部7bとカラー8との間、及び出力軸側ハウジング部材7bの筒軸部7b2と出力軸3との間にはそれぞれ、僅かな隙間が介在しており、したがって入力軸1及び出力軸3はそれぞれ両ハウジング部材7a、7bに対して回転可能とされている。
【0039】
次に、以上のような構成を備えたトルクリミッタの主たる動作を、図3及び図4に基づいて説明する。
【0040】
図3は、外輪2から内輪4への伝達トルクが零であって、各ローラ5が係合子収容部9の中立位置(カム面4aの最低部)にある状態を示すものである。そして、このような状態から、入力軸1と一体回転する外輪2が同図時計方向に回転した場合には、外輪2に予圧を付与されて接触する保持器6からローラ5を同方向に回転させようとする力が働くことにより、内輪4に形成されたカム面4aの回転方向前側の傾斜面(カム面4aの同図右側の傾斜面)と、外輪2に形成された軌道面2cとの間に、ローラ5が楔係合する。この場合、外輪2から内輪4への伝達トルクが設定トルク以下であり且つ設定トルクよりもかなり小さなトルクである場合には、外輪2を殆ど変形させることなくローラ5が楔係合した状態に維持される。これにより、内輪4は外輪2に対してロックされた状態となり、入力軸1からのトルクは外輪2から内輪4に伝達されるため、内輪4と一体回転可能な出力軸3が時計方向に回転する。
【0041】
また、各ローラ5が係合子収容部9の中立位置にある状態から、上記とは逆に外輪2が同図反時計方向に回転した場合には、同様に保持器6からローラ5に付与される力により、内輪4に形成されたカム面4aの回転方向前側の傾斜面(カム面4aの同図左側の傾斜面)と、外輪2に形成された軌道面2cとの間に、ローラ5が楔係合する。この場合にも、外輪2から内輪4への伝達トルクが設定トルク以下であり且つ設定トルクよりもかなり小さなトルクである場合には、外輪2を殆ど変形させることなくローラ5が楔係合した状態に維持されて、内輪4が外輪2に対してロックされた状態となるため、入力軸1からのトルクは外輪2から内輪4に伝達され、この結果、出力軸3が反時計方向に回転する。
【0042】
一方、図4に示すように、外輪2が時計方向に回転する際に、外輪2から内輪4への伝達トルクが大きくなった場合には、各ローラ5が、外輪2を外周側に向かって部分的に膨出させる弾性変形を生じさせつつ、カム面4aの回転方向前側の傾斜面に乗り上がる。この場合、外輪2から内輪4への伝達トルクが設定トルク以下であれば、各ローラ5は、上記カム面4aの傾斜面の途中で停止した状態に維持されるため、上記カム面4aの傾斜面と外輪2の軌道面2cとの間、詳しくは係合子収容部9における楔角度がθの楔隙間に、各ローラ5が楔係合する。したがって、内輪4は外輪2に対してロックされた状態となり、入力軸1からのトルクが外輪2から内輪4に伝達されるため、出力軸3は時計方向に回転する。また、外輪2が反時計方向に回転する際に、伝達トルクが大きくなった場合にも、同様に外輪2の弾性変形を伴って、各ローラ5が楔係合することにより、内輪4が外輪2に対してロックされた状態となり、出力軸3が反時計方向に回転する。
【0043】
このような状態から、伝達トルクが更に大きくなって設定トルクを超えた場合には、各ローラ5が、外輪2を更に弾性変形させると共に、乗り上がり状態にある傾斜面を有するカム面4aとそれに隣接するカム面4aとの境界をなす頂点を乗り越え、その隣接するカム面4aに乗り移る。そして、伝達トルクが設定トルクを超えている期間中は、このような動作が継続して行われるため、内輪4の外輪2に対するロック状態が解除され、外輪2から内輪4へのトルク伝達が遮断される。したがって、外輪2及び入力軸1は空転状態となる。また、外輪2が反時計方向に回転する場合にも、伝達トルクが設定トルクを超えていれば、これと同様の動作が行われる。
【0044】
したがって、このトルクリミッタの設定トルク値は、各ローラ5が、隣り合う一対のカム面4aの境界をなす頂点を通過するか否か、換言すれば外輪2の変形量が、各ローラ5を上記の頂点を通過させるに足る量となるか否かに応じて決まる。そして、外輪2は、薄板プレス成型品を熱処理して製作されているので、その肉厚や形状は安定しており、このような外輪2の変形量のみに応じて設定トルク値を決めることができるため、その設定トルク値が各部品の組み立て精度や摩擦係数の影響を受けることがなくなる。更に、このトルクリミッタの設定トルク値を変更する場合には、僅かな変更であれば、各ローラ5の径を異ならせれば良く、また大幅な変更であれば、外輪2の肉厚或いはカム面4aの上記頂点の高さを異ならせれば良い。したがって、設定トルク値の変更を容易に行うことができる。
【0045】
なお、上記実施形態では、外側回転部材としての外輪2に入力軸1を一体回転可能に設け、内側回転部材としての内輪4に出力軸3を一体回転可能に設ける構成としたが、これとは逆に、外輪に出力軸を一体回転可能に設け、内輪に入力軸を一体回転可能に設ける構成としても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、係合子をローラ5で構成したが、これに代えて例えば係合子を球状体で構成しても良い。
【0047】
更に、上記実施形態では、内輪4の外周面にカム面4aを形成したが、この外周面を平滑な周面とした上で、外輪4の内周面にカム面を形成しても良い。
【0048】
【発明の効果】
以上のように本発明に係るトルクリミッタによれば、伝達トルクが設定トルク以下の時に、係合子が係合子収容部で楔係合することにより、外側と内側との両回転部材間でトルクを伝達し、伝達トルクが設定トルクを超えた時に、係合子が少なくとも何れか一方の回転部材を半径方向に弾性変形させつつ、隣接する係合子収容部のカム面に乗り移ることにより、両回転部材間でトルクの伝達を遮断するように構成したから、少なくとも何れか一方の回転部材を係合子が弾性変形させつつ隣接する係合子収容部のカム面に乗り移るか否かに応じて、換言すれば、回転部材の形状等による剛性(弾性変形量)のみによって設定トルク値が主として決まることになる。したがって、各部品の組み立て時に設定トルク値調整用の予備部品等が不要になり、組み立て作業が容易になると共に、各部品の組み立て精度が設定トルク値に影響を与えることが適切に回避され、更には、カム面の摩擦係数が設定トルク値に影響を与えるという事態や経時変化も生じ難くなり、設定トルク値の安定化を図ることが可能となる。しかも、トルクの伝達及び遮断を、係合子収容部での係合子の楔係合及び乗り移りによって行う構造であるから、その構造が簡素化され、トルクリミッタの小型化が可能となる。また、設定トルク値の変更も容易に行えることから、特性が相違するトルクリミッタの製作に要する手間が好適に省かれる。
【0049】
そして、外側回転部材と内側回転部材との対向する何れか一方の周面が、複数の凹状のカム面を近接配列させてなる波形状に形成されていれば、各カム面相互間の境界部をなす頂部の周方向寸法が短くなることから、回転部材を弾性変形させる領域も小さくなり、係合子の乗り移り動作つまりトルク伝達の遮断動作が円滑に行われ得ることになる。
【0050】
また、係合子収容部を、係合子が正逆両回転方向に対して楔係合可能となるように形成すれば、両回転方向に対してトルク伝達及び遮断を行うことができ、ひいては両回転方向に対してトルクリミッタとしての機能を持たせることが可能となる。
【0051】
この場合、外側回転部材を単一の部材で構成し、係合子が外側回転部材のみを弾性変形させるように構成すれば、不当な変形を生じることなく無理なく弾性変形を生じさせることが可能となり、係合子の円滑な乗り移り性や回転部材の耐久性等の面で有利となると共に、部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。
【0052】
更に、保持器を、外側回転部材と内側回転部材とのうちカム面が形成されていない回転部材に予圧を付与して接触させれば、保持器には、カム面に対して相対回転しようとする力が働くため、保持器に保持されている係合子にも同様に、カム面に対して相対回転しようとする力が働く。したがって、係合子は、カム面によって区分形成されている係合子収容部で円滑に楔係合して両回転部材間をロック状態にできることになるため、一方から他方の回転部材へのトルク伝達動作が確実化されると共に、隣接する係合子収容部のカム面に係合子が乗り移る動作も円滑に行われるため、トルク伝達の解除動作も確実化される。
【0053】
また、外側回転部材と内側回転部材との何れか一方に入力軸を設け、他方に出力軸を設け、入力軸と出力軸とを両回転部材の内周側で突合せ状に配置すれば、仮に外側回転部材の外周側に入力軸または出力軸を設ける場合と比較して、トルクリミッタ及びその周辺部のコンパクト化を図ることができる。
【0054】
この場合、外側回転部材に入力軸を設け、内側回転部材に出力軸を設け、且つ内側回転部材が、入力軸をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受を備えるようにすれば、出力軸が設けられた内側回転部材を有効利用して入力軸をラジアル方向に回転自在に支持できることになり、各部品の配置の適切化及びレイアウトの最適化が図られ、更なるコンパクト化に寄与できることになる。
【0055】
更に、外側回転部材及び内側回転部材をハウジングで覆い、ハウジングの側面部と、カム面が形成されていない回転部材の側面部との間に、保持器を軸方向に予圧を付与して介在させれば、一方の回転部材から他方の回転部材へのトルク伝達動作、並びにトルクの解除動作が確実化されると共に、両回転部材を覆うハウジングの側面部が、保持器に軸方向予圧を付与するために有効利用され、これに伴って部品点数の削減や構成の簡素化が図られる。
【0056】
この場合、ハウジングを入力軸側ハウジング部材と出力軸側ハウジング部材とに2分割し、この両ハウジング部材を、両者の対向端部を嵌合させて一体化させるようにすれば、内側回転部材、係合子、保持器、及び外側回転部材を所要の状態に組み立てた組み立て体の外周側のみならず軸方向両側をもハウジングで適正に覆うことができ、またハウジングの組み付け作業を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るトルクリミッタの全体構成を示す縦断側面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るトルクリミッタを示す縦断正面図であって、図1のA−A線にしたがって切断した断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るトルクリミッタの作用を説明するための一部省略縦断正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るトルクリミッタの作用を説明するための一部省略縦断正面図である。
【符号の説明】
1 入力軸
2 外輪(外側回転部材)
3 出力軸
4 内輪(内側回転部材)
4a カム面
5 ローラ(係合子)
6 保持器
7 ハウジング
7a 入力軸側ハウジング
7b 出力軸側ハウジング
9 係合子収容部
Claims (10)
- 同軸廻りに配置された外側回転部材及び内側回転部材と、前記両回転部材の相互間に介設された複数の係合子と、前記両回転部材の何れか一方に形成され且つ前記各係合子を他方の回転部材との間で楔係合可能に収容する複数の係合子収容部を区分形成するカム面と、前記各係合子を保持する保持器とを備え、
伝達トルクが設定トルク以下の時に、前記係合子が前記係合子収容部で楔係合することにより、前記両回転部材間でトルクを伝達し、
伝達トルクが設定トルクを超えた時に、前記係合子が前記外側回転部材と内側回転部材との少なくとも何れか一方を半径方向に弾性変形させつつ、隣接する係合子収容部のカム面に乗り移ることにより、前記両回転部材間でトルクの伝達を遮断するように構成したことを特徴とするトルクリミッタ。 - 前記外側回転部材と内側回転部材との対向する何れか一方の周面は、複数の凹状のカム面を近接配列させてなる波形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクリミッタ。
- 前記係合子収容部は、前記係合子が正逆両回転方向に対して楔係合するように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のトルクリミッタ。
- 前記外側回転部材は単一の部材で構成され、前記係合子は前記外側回転部材のみを弾性変形させるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクリミッタ。
- 前記外側回転部材は、薄板のプレス成型品であることを特徴とする請求項4に記載にトルクリミッタ。
- 前記保持器は、前記外側回転部材と内側回転部材とのうち前記カム面が形成されていない回転部材に予圧を付与されて接触していることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載にトルクリミッタ。
- 前記外側回転部材と内側回転部材との何れか一方に入力軸が設けられ、他方に出力軸が設けられ、前記入力軸と出力軸とが前記両回転部材の内周側で突合せ状に配置されていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のトルクリミッタ。
- 前記外側回転部材に入力軸が設けられ、前記内側回転部材に出力軸が設けられ、前記内側回転部材は、前記入力軸をラジアル方向に回転自在に支持するラジアル軸受を備えていることを特徴とする請求項7に記載のトルクリミッタ。
- 前記外側回転部材及び内側回転部材がハウジングにより覆われ、前記ハウジングの側面部と、前記カム面が形成されていない回転部材の側面部との間に、前記保持器が軸方向に予圧を付与されて介在していることを特徴とする請求項6に記載のトルクリミッタ。
- 前記ハウジングが入力軸側ハウジング部材と出力軸側ハウジング部材とに2分割され、この両ハウジング部材は、両者の対向端部を嵌合させて一体化されていることを特徴とする請求項9に記載のトルクリミッタ。
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CN107956624A (zh) * | 2016-10-17 | 2018-04-24 | 索恩格汽车德国有限责任公司 | 用于电机的具有集成的滑动离合器的行星齿轮传动机构 |
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2002
- 2002-11-28 JP JP2002345985A patent/JP2004176856A/ja not_active Withdrawn
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