JP2004175230A - 車両制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】転舵遅れに起因する実際の走行軌跡の意図された走行軌跡からの外れの低減と車両重量や製造コストの増大を軽減することとを共に達成する。
【解決手段】車両制御装置のステアリング制御装置60において、車速vが設定車速Vより小さい場合(例えばUターン時等の低速時)に、転舵遅れ(転舵アクチュエータ22の作動遅れ)が発生しているかを検出する。検出された転舵遅れの程度に応じて車両の加速制限値Pを決定する。このP値は、0のとき加速を制限せず、1のとき最も厳しく加速を制限することを示す値である。このP値をエンジン制御装置70に送信し、P値に基づいてスロットル弁装置74のスロットル弁の開度(エンジン出力)を制限することにより、車両の加速を制限する。加速を制限すれば、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行できる。車両の加速制限中に車速vが設定車速V以上となった場合には、その加速制限を段階的に解除する。
【選択図】 図1
【解決手段】車両制御装置のステアリング制御装置60において、車速vが設定車速Vより小さい場合(例えばUターン時等の低速時)に、転舵遅れ(転舵アクチュエータ22の作動遅れ)が発生しているかを検出する。検出された転舵遅れの程度に応じて車両の加速制限値Pを決定する。このP値は、0のとき加速を制限せず、1のとき最も厳しく加速を制限することを示す値である。このP値をエンジン制御装置70に送信し、P値に基づいてスロットル弁装置74のスロットル弁の開度(エンジン出力)を制限することにより、車両の加速を制限する。加速を制限すれば、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行できる。車両の加速制限中に車速vが設定車速V以上となった場合には、その加速制限を段階的に解除する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の制御装置に関するものであり、特に、操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、検出した操舵量に応じてアクチュエータを作動させて車両の走行方向を制御する動力操舵装置を含む車両制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
動力操舵装置の代表的なものは、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムである。このシステムは、ステアリングホイール等の操舵部材と操舵車輪との機械的な連結をなくし、操舵部材の操舵量を電気的に検出し、電気信号によって電動モータ等のアクチュエータを制御することによって、車両の走行方向を制御するものである。このステア・バイ・ワイヤシステムにおいては、例えば、車両の車庫に対する出し入れ時、縦列駐車時,Uターン時等に操舵部材が素早く操作される割りに、操舵車輪と路面との間の摩擦抵抗が大きいために、アクチュエータの作動遅れ(転舵遅れ)が生じ易い。そして、作動遅れが生ずれば、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から外れることとなる。
【0003】
この不都合を解消するための一手段が既に提案されている。転舵用のアクチュエータを制御する転舵制御部の制御ゲインを大きくするのである(例えば、特許文献1参照)。しかし、制御ゲインを大きくしても、アクチュエータの駆動能力が十分に大きくなければ、上述の転舵遅れの影響を十分に低減させることができず、アクチュータを駆動能力の高いものとすれば、動力操舵装置が大形化し、車両重量や製造コストの増大を招く。以上はステア・バイ・ワイヤシステムに関して説明したが、他の動力操舵装置においても同様な問題が発生する。また、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図したものから外れる現象は、動力操舵装置の機能が低下した場合等にも発生する。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−46639公報
【特許文献2】
特開2001−206229公報
【特許文献3】
特開平5−125971号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、以上の事情を背景とし、動力操舵装置において、転舵遅れに起因する実際の走行軌跡の意図された走行軌跡からの外れの低減と車両重量や製造コストの増大の軽減とを共に達成することを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の車両制御装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0006】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(3)項が請求項2に、(7)項が請求項3に、(8)項が請求項4に、(9)項が請求項5にそれぞれ相当する。
【0007】
(1)操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、検出した操舵量に応じてアクチュエータを作動させて車両の走行方向を制御する動力操舵装置と、駆動源を備えて車両の駆動輪を駆動する駆動装置とを含む車両制御装置であって、
前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対して前記アクチュエータの作動が設定状態以上遅れた場合に、前記駆動装置による前記駆動車輪の駆動を抑制する駆動抑制装置を含むことを特徴とする車両制御装置。
例えば、操舵車輪と路面との摩擦抵抗が大きい状態で操舵部材が素早く操作されたような場合にも、アクチュエータの作動遅れが実用上問題となる大きさにならないようにするためには、アクチュエータを駆動能力の高いものとすることが必要になり、動力転舵装置の大形化,高コスト化等を招く。それに対し、本発明に従って、アクチュエータの作動遅れが大きい場合には駆動抑制装置により駆動車輪の駆動が抑制されるようにすれば、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行可能となる。また、アクチュエータを高能力化する必要がなく、車両重量や製造コストの増大を回避することができる。
【0008】
(2)前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対する前記アクチュエータの作動遅れ量を検出する転舵遅れ量検出装置を含む (1)項に記載の車両制御装置。
転舵遅れ量検出装置は、例えば、操舵量検出装置により検出された操舵量に設計上対応するアクチュエータの作動量から実際の作動量を引いた場合の差や、アクチュエータの実際の作動量に対応する操舵量を、操舵量検出装置により検出された操舵量から引いた場合の差として検出することができる。さらに、操舵量検出装置により検出された操舵量および車両の走行速度に基づいて取得される目標ヨーレイトと、ヨーレイトセンサ等により検出されたり、横加速度センサの検出値から取得されたりする実ヨーレイトとの差として取得することもできる。アクチュエータの作動遅れの設定状態としては、例えば、上記差のいずれかとそのいずれかの変化勾配(単位時間当たりの変化量を含む)との少なくとも一方の設定値が好適である。操舵部材は、回転操作されるステアリングホイールとされる場合が多く、その場合の操舵量検出装置としては、回転角センサが好適である。また、アクチュエータの作動量を検出する作動量検出装置としては、例えば、アクチュエータにより長手方向に移動させられて操舵車輪の向きを変える駆動ロッドの長手方向の移動量を検出するリニアセンサを採用することができる。また、アクチュエータが回転駆動源である場合には、アクチュエータまたはそれの回転を伝達する回転伝達機構の構成要素の回転角度を検出する回転センサを採用することもできる。
【0009】
(3)前記駆動抑制装置が、前記車両の加速を抑制する加速抑制部を含む (1)項または (2)項に記載の車両制御装置。
駆動抑制装置は、後述のように、車両の走行速度を制限するものとすることも可能であるが、車両の加速を抑制するものとすることが望ましい。後者の方が制御が容易である場合が多いのである。
(4)前記加速抑制部が、加速度を上限加速度以下に制限する加速抑制部を含む(3)項に記載の車両制御装置。
上限加速度が0に設定されるようにすることも可能であるが、0ではない値に設定されるようにすることが望ましい。駆動操作部材を操作しているにもかかわらず、車両が加速しなければ、運転者に違和感を与え易いからである。
(5)前記加速抑制部が、前記上限加速度を前記アクチュエータの作動遅れ量が大きいほど小さい値に決定する上限加速度決定部を含む (4)項に記載の車両制御装置。
加速抑制部による加速抑制は、当然、できる限り緩くされることが望ましい。本項の上限加速度決定部を設ければ、アクチュエータの作動遅れの程度に応じて上限加速度が決定されることとなり、車両の加速性能の低下を良好に回避しつつアクチュエータの作動遅れに対処することができる。上限加速度は2段階以上に変えられればよいが、3段階以上の多段階に変えられることが望ましく、無限段階に変えられること(連続値とされること)がさらに望ましい。
【0010】
(6)前記駆動抑制装置が、前記車両の走行速度を前記アクチュエータの作動遅れ量が大きいほど小さい値に制限する (1)項ないし (5)項のいずれかに記載の車両制御装置。
(7)前記車両の走行速度が設定速度以上の領域においては前記駆動抑制装置の作動を禁止する駆動抑制禁止部を含む (1)項ないし (6)項のいずれかに記載の車両制御装置。
前述のように、アクチュエータの作動遅れは、車両の車庫に対する出し入れ時、縦列駐車時,Uターン時等に発生し易いのであるが、これらの場合には、車両の走行速度は低いのが普通である。車両の走行速度が大きい領域においては、操舵車輪と路面との摩擦抵抗が小さいため、アクチュエータの駆動能力が不足する事態は生じないことが多く、また、意図せず加速が制限されてしまうと違和感等の不具合が発生するおそれがある。したがって、本項におけるように、車両の走行速度が設定速度以上の領域においては駆動抑制装置の作動が禁止されるようにすることが望ましい。
(8)前記駆動車輪の駆動の抑制中に前記車両の走行速度が前記設定速度以上になった場合に、前記駆動抑制装置による前記駆動車輪の駆動の抑制の解除を少なくとも2段階以上で行う抑制解除部を含む (7)項に記載の車両制御装置。
駆動抑制禁止部が設けられれば、駆動車輪の駆動の抑制中に車両の走行速度が設定速度以上になった場合に、駆動の抑制が解除されることとなるが、この抑制解除が急激に行われると乗り心地やコントロール性が悪くなる。したがって、駆動抑制の解除は少なくとも2段階以上で行われるようにすることが望ましく、3段階以上の多段階で、あるいは連続的(無限段階)に行われるようにすることがさらに望ましい。
【0011】
(9)前記駆動抑制装置が、前記駆動源の作動を抑制する駆動源抑制装置と、前記駆動車輪に制動トルクを作用させる制動装置との少なくとも一方を含む (1)項ないし (8)項のいずれかに記載の車両制御装置。
駆動源抑制装置により駆動車輪の駆動抑制を行えば、エネルギの無駄な消費を回避し得る利点があり、制動装置により駆動抑制を行えば、迅速な抑制が可能になる利点がある。当初制動装置による駆動抑制が行われ、後に駆動源抑制装置による駆動抑制が行われるようにすることも可能である。
【0012】
(10)前記動力操舵装置が少なくともアクチュエータについて2以上の冗長度を有するものであり、複数のアクチュエータの一部のものが作動不能となることにより冗長度が低下した場合に、前記駆動源抑制装置を作動させる冗長度低下時駆動源抑制部を含む (1)項ないし (9)項のいずれかに記載の車両制御装置。
例えば、アクチュエータとそれを制御する制御装置とが共に2以上の冗長度を有するものとされている場合に、アクチュエータの一部のものが故障して作動不能となることもあり、複数の制御装置の一部のものが故障することによりアクチュエータの一部が作動不能となることもある。これらの場合に、冗長度低下時駆動源抑制部により駆動源抑制装置が作動させられれば、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態である車両制御装置について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である車両制御装置の基本的な構成を示す概念図である。車両制御装置は、動力操舵装置10と駆動装置12とを含む。本実施形態における動力操舵装置10は、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムであって、操舵部材としてのステアリングホイール20の操舵量たる操舵角に応じて転舵アクチュエータ22を作動させて車両の走行方向を制御する。転舵アクチュエータ22は、例えば、ブラシレスモータ等の電動モータにより構成することができる。転舵アクチュエータ22の回転がボールねじ等の運動変換機構24により操舵車輪(例えば左右前輪)26の転舵運動に変換される。
【0014】
運動変換機構24は、転舵アクチュエータ22のロータの回転運動を、駆動ロッド30の長手方向(車両の車幅方向)の直線運動に変換するものである。駆動ロッド30の運動は、タイロッド32を介してナックルアーム34に伝達され、ナックルアーム34が一軸線まわりに回動させられる。このナックルアーム34の回動により、ナックルアーム34に支持された車輪26の向きが変えられる。
【0015】
ステアリングホイール20は、車体に対して回転可能に設けられた回転軸40に連結されている。この回転軸40には、ステアリングホイール20に操舵反力を与えるための反力アクチュエータ42が設けられている。反力アクチュエータ42は、例えば、回転軸40と一体的な出力軸を有するブラシレスモータ等の電動モータにより構成することができる。回転軸40のステアリングホイール20とは反対側の端部と車体との間には、付勢装置の一種である弾性部材(例えば、トーションバー、ねじりコイルばね等)46が配設されている。反力アクチュエータ42がステアリングホイール20にトルクを付与しない状態で、弾性部材46の弾性力によってステアリングホイール20を直進操舵位置に復帰させるためである。
【0016】
回転軸40には、ステアリングホイール20の操舵量を検出する操舵量検出装置として、回転軸40の回転角を操舵角として検出する操舵角センサが設けられている。操舵角センサ50には各種の回転角センサを使用可能である。また、回転軸40には、ステアリングホイール20に加えられる操舵(操作)トルクを検出するためのトルク検出装置たるトルクセンサ52が設けられている。操舵角センサ50は、例えば、ステアリングホイール20が中立位置(直進操舵位置)から右方向に操舵された右方向操舵位置にあるときには正の検出値を出力し、中立位置から左方向に操舵された左方向操舵位置にあるときには負の検出値を出力する。
【0017】
転舵アクチュエータ22の作動量を検出するための転舵量検出装置として、車輪26の転舵角θを検出する転舵角センサ54が設けられている。転舵角センサ54は、例えば、転舵アクチュエータ22による駆動ロッド30の長手方向の移動量を検出するリニアセンサにより構成することができる。転舵角θは、例えば、車輪26が右方向に切られている状態では正の値をとり、左方向に切られている状態では負の値をとる。転舵アクチュエータ22はその回転位置がロータリエンコーダ56によって検出される。
【0018】
操舵角センサ50,トルクセンサ52,転舵角センサ54およびロータリエンコーダ56は、CPU,ROM,RAM,入出力部を含むコンピュータを主体とするステアリング制御装置60に接続されている。ステアリング制御装置60には、さらに、車両の走行速度vを検出する走行速度検出装置たる車速センサ62が接続されている。ステアリング制御装置60は、駆動回路66,68を介して転舵アクチュエータ22と反力アクチュエータ42とを制御する。
【0019】
ステアリング制御装置60にはまた、通信装置等を介して、コンピュータを主体とするエンジン制御装置70が接続されており、これらの間で情報の交換が行われる。エンジン制御装置70は、スロットル弁およびそれの駆動源たるスロットル弁用アクチュエータ72を含む電動式スロットル弁装置74(厳密には、そのアクチュエータ72)等を制御する。スロットル弁装置74は、正常時にはスロットル弁の開度がアクセル操作部材たるアクセルペダルの踏込量に対応するように制御され、スロットル弁の開度に一対一に対応するエンジンの駆動トルクが駆動車輪である車輪26に加えられる。ただし、本実施形態においては、後に詳しく説明するが、スロットル弁の最大開度が制限される場合がある。エンジン制御装置70,スロットル弁装置74,アクセルペダル等が図示を省略するエンジンと共に駆動装置12を構成している。なお、アクセルペダルの踏込量に応じて開度が制御される主スロットル弁と、アクセルペダルとは無関係に開度が制御される副スロットル弁とを設け、副スロットル弁の開度が制限されるようにすることも可能である。
【0020】
本ステアリング制御装置60においては、転舵角センサ54によって検出された転舵角θが操舵角センサ50に検出された操舵角に対応するように転舵アクチュエータ22が制御されるのであるが、転舵アクチュエータ22の作動遅れが大きくなる場合がある。例えば、車両の車庫に対する出し入れ時、縦列駐車時、Uターン時等に、ステアリングホイール20が素早く操作される割りに、車輪26と路面との間の摩擦抵抗が大きいために、転舵アクチュエータ22の作動遅れ(転舵遅れ)が生じ易い。この作動遅れに対処するために、ステアリング制御装置60に記憶された駆動抑制プログラムが実行される。
【0021】
この駆動抑制プログラムを図2にフローチャートで示す。本プログラムのステップ1(以下、「S1」と略称する。その他のステップについても同じ)において、ステアリングホイール20の操舵量が操舵角センサ50から読み込まれる。そして、S2において、車速センサ62から車速(車両の走行速度)vが読み込まれる。S3では、S1で読み込まれた操舵量に基づいて、その操舵量に設計上対応する転舵アクチュエータ22の作動量を表す目標転舵角θTが演算される。また、S4において、転舵アクチュエータ22が検出された操舵量に応じて駆動される。
【0022】
S5において、車速vが設定車速Vより小さいか否かが判定される。設定車速Vは、車輪26の加速度を制限するか否かの車速しきい値であり、前述の車庫への出し入れ時,縦列駐車時,Uターン時等の低速時では、車速vが設定車速Vより小さくなるように、この設定車速Vが設定されている。
【0023】
例えば、通常走行時には車速vが設定車速V以上となるため、S5の判定はNOとなり、S6〜S8をスキップしてS9が実行される。S9において、加速制限値Pが0であるか否かが判定される。加速制限値Pは、後に詳しく説明するが、ステアリングホイール20の操舵量に対して転舵アクチュエータ22の作動遅れが生じている場合に、その作動遅れの程度に応じて設定される車両の加速制限の程度を示す値である。このP値に基づいて、スロットル弁装置74のスロットル弁の開度(エンジン出力)が制限される。P値は0から1までの値をとり得、P値が0である場合には車両の加速は制限されず、P値が1である場合には加速が最も厳しく制限される。通常走行時には、車両の加速を制限する必要がなく、P値が0に設定されているため、S9の判定がYESとなり、S25において、そのP値(=0)がエンジン制御装置70に送信されて、本プログラムの1回の実行が終了する。つまり、車速vが設定車速V以上の領域では、加速制限が解除されることになるのである。
【0024】
S5において、車速vが設定車速Vより小さければ判定がYESとなって、S6以降が実行され、転舵遅れが発生しているか否かが判定される。S6において、実際の転舵角(実転舵角)θが転舵角センサ54から読み込まれる。そして、S7において、転舵遅れ量Δθが取得される。転舵遅れ量Δθは、目標転舵角θTから実転舵角θを引いた差の絶対値で表される。S8において、転舵遅れ量Δθが第1しきい値Aより小さいか否かが判定される。第1しきい値Aは、転舵遅れ量が加速制限制御を実施すべき大きさであるか否かを判定するためのしきい値である。この第1しきい値Aより転舵遅れ量Δθが小さければ、加速制限する必要はないと判定される。具体的には、S8の判定がYESとなり、S9を経て、S25においてP値(=0)がエンジン制御装置70に送信される。
【0025】
S8の判定がNOであれば、S15において、転舵遅れ量Δθが、第1しきい値A以上であり、かつ、第2しきい値Bより小さいか否かが判定される。第2しきい値Bは、加速制限値の上限値(本実施形態では1)を設定すべき領域か否かを判定するためのしきい値である。今回検出された転舵遅れ量Δθが第1しきい値A以上であり、かつ、第2しきい値Bより小さければS15の判定がYESとなって、S16において今回の転舵遅れ量に応じた加速制限値Pが設定される。加速制限値Pは、転舵遅れ量Δθから第1しきい値Aを引いた差を、第2しきい値Bからしきい値Aを引いた差で割った商で表される。このようにして演算された加速制限値Pが、S25においてエンジン制御装置70に送信される。
【0026】
S15の判定がNOである場合、つまり、転舵遅れ量Δθが第2しきい値B以上である場合には、S17において加速制限値Pが1に設定され、S25においてそのP値(=1)がエンジン制御装置70に送信される。
【0027】
以上のようにしてエンジン制御装置70に送信されたP値に基づいて、エンジン制御装置70では、車両の加速が制限される(エンジンの出力が制限される)。つまり、本実施形態では、スロットル弁装置74のスロットル弁の開度がP値に応じて制限されるようにスロットル弁用アクチュエータ72が制御される。エンジン制御装置70では、図3に示すグラフに基づいてエンジン出力(スロットル弁の開度)が制御される。図3のグラフは、P値を横軸に、エンジン出力値(スロットル弁の開度)を縦軸にとり、各P値とエンジン出力の上限値との関係を示すものである。P値が0の場合には、エンジン出力に制限は加えられないが、P値が1に近づく(転舵遅れが大きくなる)ほどそのエンジン出力の上限値が漸減させられる。つまり、本実施形態では、車両の上限加速度が、転舵遅れ量Δθが大きくなるほど小さくなる連続的な値(無限段階の値)に決定されるのである。ただし、本実施形態では、エンジンの最小出力は0よりも大きくされており、P値が1の場合でも、エンジンの出力が0にならないようにされている。図3のグラフのエンジン出力の上限値と、アクセルペダルの踏込量に対応するエンジン出力値とのいずれか小さい方が、実際のエンジン出力となるように制御される。つまり、エンジン出力が図3の上限値を超えないように制御されるのである。
【0028】
前回のプログラムの実行で、S15およびS16を経るか、あるいは、S15およびS17を経ることにより、車両の加速が制限されている状態において、車速vが設定車速V以上になった場合には、車両加速の制限の解除が行われるのであるが、本実施形態では、その制限の解除が多段階で行われる。S1〜S4を経てS5において判定がNOになると、S9において加速制限値Pが0であるか否かが判定される。加速制限中であるためP=0ではなく、S9の判定がNOとなり、S20でタイマ値tが設定タイマ値Tを超えたか否かが判定される。このタイマ値はS9の判定がYESからNOに変わった時に、S20において0にリセット後スタートさせられるタイマの値であり、設定タイマ値Tは適宜の値に設定可能である。S20の判定がNOであれば、S21においてタイマ値tが1増やされて今回の実行が終了する。タイマ値が設定タイマ値Tを超え、S20の判定がYESとなれば、S22において、加速制限値Pが、現在設定されている加速制限値Pから設定量ΔP減少させられる。それと同時にタイマ値tが0にリセットされる。したがって、次にS20が実行される場合には判定がNOになり、タイマ値tが再び設定タイマ値Tを超えることが待たれ、超えれば加速制限値Pが設定量ΔP減少させられる。この繰り返しにより、設定タイマ値に相当する一定時間の経過毎に設定量ΔPずつ減少させられた加速制限値がS25においてエンジン制御装置70に送信される。それによって、加速制限の解除が急激に行われて乗り心地が悪くなることが回避される。やがて、加速制限値Pが負になるため、S23の判定がYESとなり、S24において加速制限値Pが0にされる。したがって、次にS9が実行されれば、判定がYESとなり、S20ないしS24をスキップする通常の状態に復帰する。
【0029】
本実施形態においては、操舵角センサ50,転舵角センサ54およびステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムを実行する部分が駆動抑制装置を構成している。また、転舵遅れ量Δθが第1しきい値A以上である場合が、操舵量に対してアクチュエータたる転舵アクチュエータ22の作動が設定状態以上遅れた場合に相当する。さらに、操舵角センサ50,転舵角センサ54およびステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS1,S3,S6およびS7を実行する部分が転舵遅れ量検出装置を構成している。ステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS8,S15ないしS17を実行する部分が上限加速度決定部を構成し、この上限加速度決定部とステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS25を実行する部分が加速制限部を構成している。本発明に係る加速抑制部は上記加速制限部を含むものである。さらに、ステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS5,S9を実行する部分が駆動抑制禁止部を構成している。ステアリング制御装置60の駆動制御プログラムのS9,S20ないしS24を実行する部分が抑制解除部を構成している。本実施形態における駆動抑制装置は、駆動源たるエンジンのスロットル弁用アクチュエータ72の作動を抑制することにより車両の駆動を抑制するものである。
【0030】
本実施形態におけるステアリング制御装置60においては、転舵アクチュエータ22の作動遅れが設定状態以上である場合に、上記駆動抑制装置により車輪26の駆動が抑制されるため、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行可能となる。また、転舵アクチュエータを高能力化する必要がなく、車両重量や製造コストの増大を回避することができるのである。
【0031】
動力操舵装置には、転舵アクチュエータについて2以上の冗長度を有するものもある。例えば、図4に示す動力操舵装置100においては、互いに同じ構成を有し、通常走行時にはそれぞれ単独で転舵を行うことができる転舵アクチュエータ102,104が設けられて冗長度が2とされるとともに、それら転舵アクチュエータ102,104を制御するステアリング制御装置106,108が設けられている。ステアリング制御装置106,108は、互いに同じ構成を有し、いずれの転舵アクチュエータ102,104をも制御し得るものである。本実施形態の動力操舵装置100は、転舵アクチュエータ102,104およびステアリング制御装置106,108がそれぞれ2の冗長度を有する点以外は、図1〜図3に示す動力操舵装置10と同じであるため、同じ部分の説明は省略する。本動力操舵装置100においては、縦列駐車時,Uターン時等の低速走行時に、操舵車輪と路面との摩擦抵抗が大きい状態で、ステアリングホイール20が素早く操作されたような場合に、転舵アクチュエータ102,104を共に作動させてあたかも1つのアクチュエータであるかのように使用することで、アクチュエータの駆動能力が高くされ、転舵遅れが低減させられる。一方、通常走行時には、それほど大きい駆動能力は必要ないため、転舵アクチュエータ102,104のいずれか一方のみが転舵用駆動源として使用される。つまり、厳密には、通常走行時に2の冗長度を有するのであるが、Uターン時等には転舵アクチュエータ102,104の冗長度が1になるのである。なお、通常走行時に、転舵アクチュエータ102,104を共に作動させ、例えばそれぞれ半分ずつの出力で転舵させることもできる。
【0032】
このように構成された動力操舵装置100において、転舵アクチュエータ102,104のいずれか一方が故障して作動不能となった場合(冗長度の低下時)には、上記Uターン時等に必要な駆動能力が不足する。したがって、転舵遅れが発生することとなり、この転舵遅れに起因する実際の走行軌跡の意図された走行軌跡からの外れを低減するために、前記実施形態において説明したのと同様にして、駆動車輪の駆動の抑制が行われる。本実施形態の動力操舵装置100においては、冗長度の低下時に車両の駆動源としてのエンジンの駆動抑制プログラムを実行する部分がアクチュエータ冗長度低下時駆動源抑制部を構成しているのである。
【0033】
転舵アクチュエータ22の作動遅れが大きくなる場合に、前記実施形態のように車両(駆動車輪)の駆動源の作動を抑制するのに代えて、あるいはそれと共に、駆動輪に制動装置によって制動トルクを作用させることにより、車輪の駆動を抑制することも可能である。その一例を図5に示す。本実施形態における制動装置200は、トラクション制御の可能な制動装置であって、公知のものであるため簡単に説明する。ブレーキ操作部材たるブレーキペダル202が操作されていない状態で、マスタシリンダ204と車輪26のブレーキを作動させるブレーキシリンダ206とを接続する主液通路209に設けられたカット弁210が閉状態とされるとともに、増圧弁212が開状態,減圧弁214が閉状態とされ、さらに補給通路217に設けられた流入制御弁218が開状態とされることによって、マスタシリンダ204から作動液がポンプ通路219に供給可能とされる。その状態で、加圧装置222を構成するポンプモータ224およびポンプ226が作動させられ、マスタシリンダ204から作動液が汲み上げられ(リザーバ220内に作動液があればリザーバ220の作動液も汲み上げられる)て、加圧された作動液がブレーキシリンダ206に供給されることにより、車輪26に制動トルクが加えられ、車輪26の駆動が抑制される。ブレーキシリンダ206の液圧は、増圧弁212および減圧弁214の制御により所望の大きさに制御可能である。なお、図5には、前後輪のうちの一方の車輪26(例えば左右前輪)の液圧系統についてのみ示されているが、他方の車輪(左右後輪)についても同じ構成とすることができる。
【0034】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である車両制御装置の全体構成を概念的に示す図である。
【図2】上記車両制御装置に格納された駆動抑制プログラムを示すフローチャートである。
【図3】上記駆動抑制プログラムにおいて取得された加速制限値とエンジン出力との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の別の実施形態である車両制御装置の全体構成を概念的に示す図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態である車両制御装置のうちの制動装置を示す液圧回路図である。
【符号の説明】
10:動力操舵装置 12:駆動装置 20:ステアリングホイール 22:転舵アクチュエータ 26:車輪 54:転舵角センサ 60:ステアリング制御装置 62:車速センサ 70:エンジン制御装置 100:動力操舵装置 102,104:転舵アクチュエータ 106,108:ステアリング制御装置
【発明の属する技術分野】
本発明は車両の制御装置に関するものであり、特に、操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、検出した操舵量に応じてアクチュエータを作動させて車両の走行方向を制御する動力操舵装置を含む車両制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
動力操舵装置の代表的なものは、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムである。このシステムは、ステアリングホイール等の操舵部材と操舵車輪との機械的な連結をなくし、操舵部材の操舵量を電気的に検出し、電気信号によって電動モータ等のアクチュエータを制御することによって、車両の走行方向を制御するものである。このステア・バイ・ワイヤシステムにおいては、例えば、車両の車庫に対する出し入れ時、縦列駐車時,Uターン時等に操舵部材が素早く操作される割りに、操舵車輪と路面との間の摩擦抵抗が大きいために、アクチュエータの作動遅れ(転舵遅れ)が生じ易い。そして、作動遅れが生ずれば、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から外れることとなる。
【0003】
この不都合を解消するための一手段が既に提案されている。転舵用のアクチュエータを制御する転舵制御部の制御ゲインを大きくするのである(例えば、特許文献1参照)。しかし、制御ゲインを大きくしても、アクチュエータの駆動能力が十分に大きくなければ、上述の転舵遅れの影響を十分に低減させることができず、アクチュータを駆動能力の高いものとすれば、動力操舵装置が大形化し、車両重量や製造コストの増大を招く。以上はステア・バイ・ワイヤシステムに関して説明したが、他の動力操舵装置においても同様な問題が発生する。また、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図したものから外れる現象は、動力操舵装置の機能が低下した場合等にも発生する。
【0004】
【特許文献1】
特開2002−46639公報
【特許文献2】
特開2001−206229公報
【特許文献3】
特開平5−125971号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
本発明は、以上の事情を背景とし、動力操舵装置において、転舵遅れに起因する実際の走行軌跡の意図された走行軌跡からの外れの低減と車両重量や製造コストの増大の軽減とを共に達成することを課題としてなされたものであり、本発明によって、下記各態様の車両制御装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0006】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(3)項が請求項2に、(7)項が請求項3に、(8)項が請求項4に、(9)項が請求項5にそれぞれ相当する。
【0007】
(1)操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、検出した操舵量に応じてアクチュエータを作動させて車両の走行方向を制御する動力操舵装置と、駆動源を備えて車両の駆動輪を駆動する駆動装置とを含む車両制御装置であって、
前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対して前記アクチュエータの作動が設定状態以上遅れた場合に、前記駆動装置による前記駆動車輪の駆動を抑制する駆動抑制装置を含むことを特徴とする車両制御装置。
例えば、操舵車輪と路面との摩擦抵抗が大きい状態で操舵部材が素早く操作されたような場合にも、アクチュエータの作動遅れが実用上問題となる大きさにならないようにするためには、アクチュエータを駆動能力の高いものとすることが必要になり、動力転舵装置の大形化,高コスト化等を招く。それに対し、本発明に従って、アクチュエータの作動遅れが大きい場合には駆動抑制装置により駆動車輪の駆動が抑制されるようにすれば、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行可能となる。また、アクチュエータを高能力化する必要がなく、車両重量や製造コストの増大を回避することができる。
【0008】
(2)前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対する前記アクチュエータの作動遅れ量を検出する転舵遅れ量検出装置を含む (1)項に記載の車両制御装置。
転舵遅れ量検出装置は、例えば、操舵量検出装置により検出された操舵量に設計上対応するアクチュエータの作動量から実際の作動量を引いた場合の差や、アクチュエータの実際の作動量に対応する操舵量を、操舵量検出装置により検出された操舵量から引いた場合の差として検出することができる。さらに、操舵量検出装置により検出された操舵量および車両の走行速度に基づいて取得される目標ヨーレイトと、ヨーレイトセンサ等により検出されたり、横加速度センサの検出値から取得されたりする実ヨーレイトとの差として取得することもできる。アクチュエータの作動遅れの設定状態としては、例えば、上記差のいずれかとそのいずれかの変化勾配(単位時間当たりの変化量を含む)との少なくとも一方の設定値が好適である。操舵部材は、回転操作されるステアリングホイールとされる場合が多く、その場合の操舵量検出装置としては、回転角センサが好適である。また、アクチュエータの作動量を検出する作動量検出装置としては、例えば、アクチュエータにより長手方向に移動させられて操舵車輪の向きを変える駆動ロッドの長手方向の移動量を検出するリニアセンサを採用することができる。また、アクチュエータが回転駆動源である場合には、アクチュエータまたはそれの回転を伝達する回転伝達機構の構成要素の回転角度を検出する回転センサを採用することもできる。
【0009】
(3)前記駆動抑制装置が、前記車両の加速を抑制する加速抑制部を含む (1)項または (2)項に記載の車両制御装置。
駆動抑制装置は、後述のように、車両の走行速度を制限するものとすることも可能であるが、車両の加速を抑制するものとすることが望ましい。後者の方が制御が容易である場合が多いのである。
(4)前記加速抑制部が、加速度を上限加速度以下に制限する加速抑制部を含む(3)項に記載の車両制御装置。
上限加速度が0に設定されるようにすることも可能であるが、0ではない値に設定されるようにすることが望ましい。駆動操作部材を操作しているにもかかわらず、車両が加速しなければ、運転者に違和感を与え易いからである。
(5)前記加速抑制部が、前記上限加速度を前記アクチュエータの作動遅れ量が大きいほど小さい値に決定する上限加速度決定部を含む (4)項に記載の車両制御装置。
加速抑制部による加速抑制は、当然、できる限り緩くされることが望ましい。本項の上限加速度決定部を設ければ、アクチュエータの作動遅れの程度に応じて上限加速度が決定されることとなり、車両の加速性能の低下を良好に回避しつつアクチュエータの作動遅れに対処することができる。上限加速度は2段階以上に変えられればよいが、3段階以上の多段階に変えられることが望ましく、無限段階に変えられること(連続値とされること)がさらに望ましい。
【0010】
(6)前記駆動抑制装置が、前記車両の走行速度を前記アクチュエータの作動遅れ量が大きいほど小さい値に制限する (1)項ないし (5)項のいずれかに記載の車両制御装置。
(7)前記車両の走行速度が設定速度以上の領域においては前記駆動抑制装置の作動を禁止する駆動抑制禁止部を含む (1)項ないし (6)項のいずれかに記載の車両制御装置。
前述のように、アクチュエータの作動遅れは、車両の車庫に対する出し入れ時、縦列駐車時,Uターン時等に発生し易いのであるが、これらの場合には、車両の走行速度は低いのが普通である。車両の走行速度が大きい領域においては、操舵車輪と路面との摩擦抵抗が小さいため、アクチュエータの駆動能力が不足する事態は生じないことが多く、また、意図せず加速が制限されてしまうと違和感等の不具合が発生するおそれがある。したがって、本項におけるように、車両の走行速度が設定速度以上の領域においては駆動抑制装置の作動が禁止されるようにすることが望ましい。
(8)前記駆動車輪の駆動の抑制中に前記車両の走行速度が前記設定速度以上になった場合に、前記駆動抑制装置による前記駆動車輪の駆動の抑制の解除を少なくとも2段階以上で行う抑制解除部を含む (7)項に記載の車両制御装置。
駆動抑制禁止部が設けられれば、駆動車輪の駆動の抑制中に車両の走行速度が設定速度以上になった場合に、駆動の抑制が解除されることとなるが、この抑制解除が急激に行われると乗り心地やコントロール性が悪くなる。したがって、駆動抑制の解除は少なくとも2段階以上で行われるようにすることが望ましく、3段階以上の多段階で、あるいは連続的(無限段階)に行われるようにすることがさらに望ましい。
【0011】
(9)前記駆動抑制装置が、前記駆動源の作動を抑制する駆動源抑制装置と、前記駆動車輪に制動トルクを作用させる制動装置との少なくとも一方を含む (1)項ないし (8)項のいずれかに記載の車両制御装置。
駆動源抑制装置により駆動車輪の駆動抑制を行えば、エネルギの無駄な消費を回避し得る利点があり、制動装置により駆動抑制を行えば、迅速な抑制が可能になる利点がある。当初制動装置による駆動抑制が行われ、後に駆動源抑制装置による駆動抑制が行われるようにすることも可能である。
【0012】
(10)前記動力操舵装置が少なくともアクチュエータについて2以上の冗長度を有するものであり、複数のアクチュエータの一部のものが作動不能となることにより冗長度が低下した場合に、前記駆動源抑制装置を作動させる冗長度低下時駆動源抑制部を含む (1)項ないし (9)項のいずれかに記載の車両制御装置。
例えば、アクチュエータとそれを制御する制御装置とが共に2以上の冗長度を有するものとされている場合に、アクチュエータの一部のものが故障して作動不能となることもあり、複数の制御装置の一部のものが故障することによりアクチュエータの一部が作動不能となることもある。これらの場合に、冗長度低下時駆動源抑制部により駆動源抑制装置が作動させられれば、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態である車両制御装置について図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である車両制御装置の基本的な構成を示す概念図である。車両制御装置は、動力操舵装置10と駆動装置12とを含む。本実施形態における動力操舵装置10は、いわゆるステア・バイ・ワイヤシステムであって、操舵部材としてのステアリングホイール20の操舵量たる操舵角に応じて転舵アクチュエータ22を作動させて車両の走行方向を制御する。転舵アクチュエータ22は、例えば、ブラシレスモータ等の電動モータにより構成することができる。転舵アクチュエータ22の回転がボールねじ等の運動変換機構24により操舵車輪(例えば左右前輪)26の転舵運動に変換される。
【0014】
運動変換機構24は、転舵アクチュエータ22のロータの回転運動を、駆動ロッド30の長手方向(車両の車幅方向)の直線運動に変換するものである。駆動ロッド30の運動は、タイロッド32を介してナックルアーム34に伝達され、ナックルアーム34が一軸線まわりに回動させられる。このナックルアーム34の回動により、ナックルアーム34に支持された車輪26の向きが変えられる。
【0015】
ステアリングホイール20は、車体に対して回転可能に設けられた回転軸40に連結されている。この回転軸40には、ステアリングホイール20に操舵反力を与えるための反力アクチュエータ42が設けられている。反力アクチュエータ42は、例えば、回転軸40と一体的な出力軸を有するブラシレスモータ等の電動モータにより構成することができる。回転軸40のステアリングホイール20とは反対側の端部と車体との間には、付勢装置の一種である弾性部材(例えば、トーションバー、ねじりコイルばね等)46が配設されている。反力アクチュエータ42がステアリングホイール20にトルクを付与しない状態で、弾性部材46の弾性力によってステアリングホイール20を直進操舵位置に復帰させるためである。
【0016】
回転軸40には、ステアリングホイール20の操舵量を検出する操舵量検出装置として、回転軸40の回転角を操舵角として検出する操舵角センサが設けられている。操舵角センサ50には各種の回転角センサを使用可能である。また、回転軸40には、ステアリングホイール20に加えられる操舵(操作)トルクを検出するためのトルク検出装置たるトルクセンサ52が設けられている。操舵角センサ50は、例えば、ステアリングホイール20が中立位置(直進操舵位置)から右方向に操舵された右方向操舵位置にあるときには正の検出値を出力し、中立位置から左方向に操舵された左方向操舵位置にあるときには負の検出値を出力する。
【0017】
転舵アクチュエータ22の作動量を検出するための転舵量検出装置として、車輪26の転舵角θを検出する転舵角センサ54が設けられている。転舵角センサ54は、例えば、転舵アクチュエータ22による駆動ロッド30の長手方向の移動量を検出するリニアセンサにより構成することができる。転舵角θは、例えば、車輪26が右方向に切られている状態では正の値をとり、左方向に切られている状態では負の値をとる。転舵アクチュエータ22はその回転位置がロータリエンコーダ56によって検出される。
【0018】
操舵角センサ50,トルクセンサ52,転舵角センサ54およびロータリエンコーダ56は、CPU,ROM,RAM,入出力部を含むコンピュータを主体とするステアリング制御装置60に接続されている。ステアリング制御装置60には、さらに、車両の走行速度vを検出する走行速度検出装置たる車速センサ62が接続されている。ステアリング制御装置60は、駆動回路66,68を介して転舵アクチュエータ22と反力アクチュエータ42とを制御する。
【0019】
ステアリング制御装置60にはまた、通信装置等を介して、コンピュータを主体とするエンジン制御装置70が接続されており、これらの間で情報の交換が行われる。エンジン制御装置70は、スロットル弁およびそれの駆動源たるスロットル弁用アクチュエータ72を含む電動式スロットル弁装置74(厳密には、そのアクチュエータ72)等を制御する。スロットル弁装置74は、正常時にはスロットル弁の開度がアクセル操作部材たるアクセルペダルの踏込量に対応するように制御され、スロットル弁の開度に一対一に対応するエンジンの駆動トルクが駆動車輪である車輪26に加えられる。ただし、本実施形態においては、後に詳しく説明するが、スロットル弁の最大開度が制限される場合がある。エンジン制御装置70,スロットル弁装置74,アクセルペダル等が図示を省略するエンジンと共に駆動装置12を構成している。なお、アクセルペダルの踏込量に応じて開度が制御される主スロットル弁と、アクセルペダルとは無関係に開度が制御される副スロットル弁とを設け、副スロットル弁の開度が制限されるようにすることも可能である。
【0020】
本ステアリング制御装置60においては、転舵角センサ54によって検出された転舵角θが操舵角センサ50に検出された操舵角に対応するように転舵アクチュエータ22が制御されるのであるが、転舵アクチュエータ22の作動遅れが大きくなる場合がある。例えば、車両の車庫に対する出し入れ時、縦列駐車時、Uターン時等に、ステアリングホイール20が素早く操作される割りに、車輪26と路面との間の摩擦抵抗が大きいために、転舵アクチュエータ22の作動遅れ(転舵遅れ)が生じ易い。この作動遅れに対処するために、ステアリング制御装置60に記憶された駆動抑制プログラムが実行される。
【0021】
この駆動抑制プログラムを図2にフローチャートで示す。本プログラムのステップ1(以下、「S1」と略称する。その他のステップについても同じ)において、ステアリングホイール20の操舵量が操舵角センサ50から読み込まれる。そして、S2において、車速センサ62から車速(車両の走行速度)vが読み込まれる。S3では、S1で読み込まれた操舵量に基づいて、その操舵量に設計上対応する転舵アクチュエータ22の作動量を表す目標転舵角θTが演算される。また、S4において、転舵アクチュエータ22が検出された操舵量に応じて駆動される。
【0022】
S5において、車速vが設定車速Vより小さいか否かが判定される。設定車速Vは、車輪26の加速度を制限するか否かの車速しきい値であり、前述の車庫への出し入れ時,縦列駐車時,Uターン時等の低速時では、車速vが設定車速Vより小さくなるように、この設定車速Vが設定されている。
【0023】
例えば、通常走行時には車速vが設定車速V以上となるため、S5の判定はNOとなり、S6〜S8をスキップしてS9が実行される。S9において、加速制限値Pが0であるか否かが判定される。加速制限値Pは、後に詳しく説明するが、ステアリングホイール20の操舵量に対して転舵アクチュエータ22の作動遅れが生じている場合に、その作動遅れの程度に応じて設定される車両の加速制限の程度を示す値である。このP値に基づいて、スロットル弁装置74のスロットル弁の開度(エンジン出力)が制限される。P値は0から1までの値をとり得、P値が0である場合には車両の加速は制限されず、P値が1である場合には加速が最も厳しく制限される。通常走行時には、車両の加速を制限する必要がなく、P値が0に設定されているため、S9の判定がYESとなり、S25において、そのP値(=0)がエンジン制御装置70に送信されて、本プログラムの1回の実行が終了する。つまり、車速vが設定車速V以上の領域では、加速制限が解除されることになるのである。
【0024】
S5において、車速vが設定車速Vより小さければ判定がYESとなって、S6以降が実行され、転舵遅れが発生しているか否かが判定される。S6において、実際の転舵角(実転舵角)θが転舵角センサ54から読み込まれる。そして、S7において、転舵遅れ量Δθが取得される。転舵遅れ量Δθは、目標転舵角θTから実転舵角θを引いた差の絶対値で表される。S8において、転舵遅れ量Δθが第1しきい値Aより小さいか否かが判定される。第1しきい値Aは、転舵遅れ量が加速制限制御を実施すべき大きさであるか否かを判定するためのしきい値である。この第1しきい値Aより転舵遅れ量Δθが小さければ、加速制限する必要はないと判定される。具体的には、S8の判定がYESとなり、S9を経て、S25においてP値(=0)がエンジン制御装置70に送信される。
【0025】
S8の判定がNOであれば、S15において、転舵遅れ量Δθが、第1しきい値A以上であり、かつ、第2しきい値Bより小さいか否かが判定される。第2しきい値Bは、加速制限値の上限値(本実施形態では1)を設定すべき領域か否かを判定するためのしきい値である。今回検出された転舵遅れ量Δθが第1しきい値A以上であり、かつ、第2しきい値Bより小さければS15の判定がYESとなって、S16において今回の転舵遅れ量に応じた加速制限値Pが設定される。加速制限値Pは、転舵遅れ量Δθから第1しきい値Aを引いた差を、第2しきい値Bからしきい値Aを引いた差で割った商で表される。このようにして演算された加速制限値Pが、S25においてエンジン制御装置70に送信される。
【0026】
S15の判定がNOである場合、つまり、転舵遅れ量Δθが第2しきい値B以上である場合には、S17において加速制限値Pが1に設定され、S25においてそのP値(=1)がエンジン制御装置70に送信される。
【0027】
以上のようにしてエンジン制御装置70に送信されたP値に基づいて、エンジン制御装置70では、車両の加速が制限される(エンジンの出力が制限される)。つまり、本実施形態では、スロットル弁装置74のスロットル弁の開度がP値に応じて制限されるようにスロットル弁用アクチュエータ72が制御される。エンジン制御装置70では、図3に示すグラフに基づいてエンジン出力(スロットル弁の開度)が制御される。図3のグラフは、P値を横軸に、エンジン出力値(スロットル弁の開度)を縦軸にとり、各P値とエンジン出力の上限値との関係を示すものである。P値が0の場合には、エンジン出力に制限は加えられないが、P値が1に近づく(転舵遅れが大きくなる)ほどそのエンジン出力の上限値が漸減させられる。つまり、本実施形態では、車両の上限加速度が、転舵遅れ量Δθが大きくなるほど小さくなる連続的な値(無限段階の値)に決定されるのである。ただし、本実施形態では、エンジンの最小出力は0よりも大きくされており、P値が1の場合でも、エンジンの出力が0にならないようにされている。図3のグラフのエンジン出力の上限値と、アクセルペダルの踏込量に対応するエンジン出力値とのいずれか小さい方が、実際のエンジン出力となるように制御される。つまり、エンジン出力が図3の上限値を超えないように制御されるのである。
【0028】
前回のプログラムの実行で、S15およびS16を経るか、あるいは、S15およびS17を経ることにより、車両の加速が制限されている状態において、車速vが設定車速V以上になった場合には、車両加速の制限の解除が行われるのであるが、本実施形態では、その制限の解除が多段階で行われる。S1〜S4を経てS5において判定がNOになると、S9において加速制限値Pが0であるか否かが判定される。加速制限中であるためP=0ではなく、S9の判定がNOとなり、S20でタイマ値tが設定タイマ値Tを超えたか否かが判定される。このタイマ値はS9の判定がYESからNOに変わった時に、S20において0にリセット後スタートさせられるタイマの値であり、設定タイマ値Tは適宜の値に設定可能である。S20の判定がNOであれば、S21においてタイマ値tが1増やされて今回の実行が終了する。タイマ値が設定タイマ値Tを超え、S20の判定がYESとなれば、S22において、加速制限値Pが、現在設定されている加速制限値Pから設定量ΔP減少させられる。それと同時にタイマ値tが0にリセットされる。したがって、次にS20が実行される場合には判定がNOになり、タイマ値tが再び設定タイマ値Tを超えることが待たれ、超えれば加速制限値Pが設定量ΔP減少させられる。この繰り返しにより、設定タイマ値に相当する一定時間の経過毎に設定量ΔPずつ減少させられた加速制限値がS25においてエンジン制御装置70に送信される。それによって、加速制限の解除が急激に行われて乗り心地が悪くなることが回避される。やがて、加速制限値Pが負になるため、S23の判定がYESとなり、S24において加速制限値Pが0にされる。したがって、次にS9が実行されれば、判定がYESとなり、S20ないしS24をスキップする通常の状態に復帰する。
【0029】
本実施形態においては、操舵角センサ50,転舵角センサ54およびステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムを実行する部分が駆動抑制装置を構成している。また、転舵遅れ量Δθが第1しきい値A以上である場合が、操舵量に対してアクチュエータたる転舵アクチュエータ22の作動が設定状態以上遅れた場合に相当する。さらに、操舵角センサ50,転舵角センサ54およびステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS1,S3,S6およびS7を実行する部分が転舵遅れ量検出装置を構成している。ステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS8,S15ないしS17を実行する部分が上限加速度決定部を構成し、この上限加速度決定部とステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS25を実行する部分が加速制限部を構成している。本発明に係る加速抑制部は上記加速制限部を含むものである。さらに、ステアリング制御装置60の駆動抑制プログラムのS5,S9を実行する部分が駆動抑制禁止部を構成している。ステアリング制御装置60の駆動制御プログラムのS9,S20ないしS24を実行する部分が抑制解除部を構成している。本実施形態における駆動抑制装置は、駆動源たるエンジンのスロットル弁用アクチュエータ72の作動を抑制することにより車両の駆動を抑制するものである。
【0030】
本実施形態におけるステアリング制御装置60においては、転舵アクチュエータ22の作動遅れが設定状態以上である場合に、上記駆動抑制装置により車輪26の駆動が抑制されるため、転舵遅れがあっても、車両の実際の走行軌跡が運転者の意図した走行軌跡から大きく外れることなく走行可能となる。また、転舵アクチュエータを高能力化する必要がなく、車両重量や製造コストの増大を回避することができるのである。
【0031】
動力操舵装置には、転舵アクチュエータについて2以上の冗長度を有するものもある。例えば、図4に示す動力操舵装置100においては、互いに同じ構成を有し、通常走行時にはそれぞれ単独で転舵を行うことができる転舵アクチュエータ102,104が設けられて冗長度が2とされるとともに、それら転舵アクチュエータ102,104を制御するステアリング制御装置106,108が設けられている。ステアリング制御装置106,108は、互いに同じ構成を有し、いずれの転舵アクチュエータ102,104をも制御し得るものである。本実施形態の動力操舵装置100は、転舵アクチュエータ102,104およびステアリング制御装置106,108がそれぞれ2の冗長度を有する点以外は、図1〜図3に示す動力操舵装置10と同じであるため、同じ部分の説明は省略する。本動力操舵装置100においては、縦列駐車時,Uターン時等の低速走行時に、操舵車輪と路面との摩擦抵抗が大きい状態で、ステアリングホイール20が素早く操作されたような場合に、転舵アクチュエータ102,104を共に作動させてあたかも1つのアクチュエータであるかのように使用することで、アクチュエータの駆動能力が高くされ、転舵遅れが低減させられる。一方、通常走行時には、それほど大きい駆動能力は必要ないため、転舵アクチュエータ102,104のいずれか一方のみが転舵用駆動源として使用される。つまり、厳密には、通常走行時に2の冗長度を有するのであるが、Uターン時等には転舵アクチュエータ102,104の冗長度が1になるのである。なお、通常走行時に、転舵アクチュエータ102,104を共に作動させ、例えばそれぞれ半分ずつの出力で転舵させることもできる。
【0032】
このように構成された動力操舵装置100において、転舵アクチュエータ102,104のいずれか一方が故障して作動不能となった場合(冗長度の低下時)には、上記Uターン時等に必要な駆動能力が不足する。したがって、転舵遅れが発生することとなり、この転舵遅れに起因する実際の走行軌跡の意図された走行軌跡からの外れを低減するために、前記実施形態において説明したのと同様にして、駆動車輪の駆動の抑制が行われる。本実施形態の動力操舵装置100においては、冗長度の低下時に車両の駆動源としてのエンジンの駆動抑制プログラムを実行する部分がアクチュエータ冗長度低下時駆動源抑制部を構成しているのである。
【0033】
転舵アクチュエータ22の作動遅れが大きくなる場合に、前記実施形態のように車両(駆動車輪)の駆動源の作動を抑制するのに代えて、あるいはそれと共に、駆動輪に制動装置によって制動トルクを作用させることにより、車輪の駆動を抑制することも可能である。その一例を図5に示す。本実施形態における制動装置200は、トラクション制御の可能な制動装置であって、公知のものであるため簡単に説明する。ブレーキ操作部材たるブレーキペダル202が操作されていない状態で、マスタシリンダ204と車輪26のブレーキを作動させるブレーキシリンダ206とを接続する主液通路209に設けられたカット弁210が閉状態とされるとともに、増圧弁212が開状態,減圧弁214が閉状態とされ、さらに補給通路217に設けられた流入制御弁218が開状態とされることによって、マスタシリンダ204から作動液がポンプ通路219に供給可能とされる。その状態で、加圧装置222を構成するポンプモータ224およびポンプ226が作動させられ、マスタシリンダ204から作動液が汲み上げられ(リザーバ220内に作動液があればリザーバ220の作動液も汲み上げられる)て、加圧された作動液がブレーキシリンダ206に供給されることにより、車輪26に制動トルクが加えられ、車輪26の駆動が抑制される。ブレーキシリンダ206の液圧は、増圧弁212および減圧弁214の制御により所望の大きさに制御可能である。なお、図5には、前後輪のうちの一方の車輪26(例えば左右前輪)の液圧系統についてのみ示されているが、他方の車輪(左右後輪)についても同じ構成とすることができる。
【0034】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である車両制御装置の全体構成を概念的に示す図である。
【図2】上記車両制御装置に格納された駆動抑制プログラムを示すフローチャートである。
【図3】上記駆動抑制プログラムにおいて取得された加速制限値とエンジン出力との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の別の実施形態である車両制御装置の全体構成を概念的に示す図である。
【図5】本発明のさらに別の実施形態である車両制御装置のうちの制動装置を示す液圧回路図である。
【符号の説明】
10:動力操舵装置 12:駆動装置 20:ステアリングホイール 22:転舵アクチュエータ 26:車輪 54:転舵角センサ 60:ステアリング制御装置 62:車速センサ 70:エンジン制御装置 100:動力操舵装置 102,104:転舵アクチュエータ 106,108:ステアリング制御装置
Claims (5)
- 操舵部材の操作量である操舵量を操舵量検出装置により検出し、検出した操舵量に応じてアクチュエータを作動させて車両の走行方向を制御する動力操舵装置と、駆動源を備えて車両の駆動輪を駆動する駆動装置とを含む車両制御装置であって、
前記操舵量検出装置により検出された操舵量に対して前記アクチュエータの作動が設定状態以上遅れた場合に、前記駆動装置による前記駆動車輪の駆動を抑制する駆動抑制装置を含むことを特徴とする車両制御装置。 - 前記駆動抑制装置が、前記車両の加速を抑制する加速抑制部を含む請求項1に記載の車両制御装置。
- 前記車両の走行速度が設定速度以上の領域においては前記駆動抑制装置の作動を禁止する駆動抑制禁止部を含む 請求項1または2に記載の車両制御装置。
- 前記駆動車輪の駆動の抑制中に前記車両の走行速度が前記設定速度以上になった場合に、前記駆動抑制装置による前記駆動車輪の駆動の抑制の解除を少なくとも2段階以上で行う抑制解除部を含む請求項3に記載の車両制御装置。
- 前記駆動抑制装置が、前記駆動源の作動を抑制する駆動源抑制装置と、前記駆動車輪に制動トルクを作用させる制動装置との少なくとも一方を含む請求項1ないし4のいずれかに記載の車両制御装置。
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