JP2004157788A - 建物性能総合評価システム及びその方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】住宅性能に対して、正確に評価可能な評価項目を選定し、この選定された評価項目毎に数値的な性能評価を行い、要求性能の実現及び検証を行う建物性能総合評価システム及びその方法を提供する。
【解決手段】本発明の建物性能総合評価システムは、建物の性能を評価する機能を性格にで区分して階層を作成し、階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、機能項目の性能評価を行い、各階層,各段階毎の性能の判定を行う建物性能総合評価システムで、機能項目毎の性能評価を数値化した性能判定値と、各段階の機能項目に対し設定された一対比較表とを記憶したデータベース4と、一対比較表により、各段階における機能項目毎の寄与率を求める寄与率演算部1と、寄与率及び性能判定値により、各段階毎の性能判定値から、上位段階の性能判定値を順次ファジィ演算するλ−ファジィ積分演算部2とを有する。
【選択図】 図18

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ファシリティマネジメント(以下「FM」という。)業務に使用する電気通信事業用建物及び事務所用建物の性能評価を行う建物性能総合評価システム及びその方法に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】
FMにおいては、企業・団体の建物を経営資源の一つとみなし、その費用対効用が最大の状態を建物の最適状態と考える。
最適化(最適状態にすること)による経営改善への貢献は、FMの最大の使命であるが、最適化の形態は建替えや改修から用途変更や売却まで様々であり、建物毎に決定される必要がある。
【0003】
FMでは、建物の戦略・計画、取得、運営維持及び評価の各段階が一つの建物利用のサイクルを構成すると考え、このサイクルをFMサイクル(社会法人日本ファシリティマネジメント推進協会が提唱)と呼ぶ。
最適化の形態を決定するためには、FMサイクルの評価段階における建物性能評価が不可欠であり、いくつかの建物機能における性能評価技術が開発されている(例えば、非特許文献1,2)。
【0004】
<建物性能評価に係わる社会動向>
建物性能については、次のような背景から、近年特に注目を集めるに至った。
(1) PL法の制定を契機とした、建物購入者・利用者の品質明示・保証要求の高まり。
(2)建物設計者の創意工夫手段としての性能規定化要求の高まり。
(3)各種基準の国際化や規制緩和の進展。
(4)土地価格の急落を契機とした、建物性能の客観的評価の機運。
また、以上の動向に対応して、法制化の分野においては近年次のような動きがあった。
(1) 建築関連法令が性能規定化の方針に基づき抜本的に改正され、2001年6月に施行された。
(2) 住宅の品質確保と消費者保護とを目的とした「住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称「品確法」)」が2000年に施行され、構造上主要な部分等の10年保証の義務化とともに、任意制度で性能表示制度が導入された。
【0005】
【非特許文献1】
山田享,小林利文,高井和則,高橋好明,浦野清、”建物性能評価手法の研究(その1)”、日本建築学会大会学術講演梗概集、E分冊、p1073−1074、1993年度大会
【非特許文献2】
浅沼龍一,小林利文,高井和則,山田享、”建物性能評価手法の研究−その2 代用特性としての建物外観デザイン評価”、日本建築学会大会学術講演梗概集、E分冊、p1075−1076、1993年度大会
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来の建物性能評価技術は、▲1▼耐震性能、▲2▼防火性能、▲3▼省エネルギー性能、▲4▼快適性能、▲5▼耐久性能等、一部機能の性能評価に関するものが過半を占め、全機能を定量的且つ総合的に評価する手法は皆無と言ってよかった。
そのため、最適化施策の判断根拠として不十分なばかりでなく、結果的にそれらの機能の性能評価結果が総合性能に占める影響度についての過大評価を来たし、最適化の方向性を誤る危険性もあった。
【0007】
建物性能評価においては、その前提条件となるべき次の諸点に関する議論や検討が遅れていることも問題である。
(1)何を評価するのか。
(2)誰の視点で評価するのか。
(3)どのように評価するのか。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は次の通りである。
(1)企業が保有する建物を経営資源として最適化するための方向付け(最適化分類)を、電気通信事業用建物及び事務所用建物において実現すること。また、そのために、従来の技術の抱える問題点を解消する総合的且つ定量的な建物性能評価手法を開発するとともに、その前提条件を明らかにすること。
(2)時間・経済的制約の多い条件下においても、効率的且つ的確に前項の最適化分類を可能にするため、前項の性質を保持しつつ簡易な性能評価手法を開発すること。
(3)地球環境保護や良好な都市環境形成に貢献する建物ストックの有効利活用に貢献するため、(1)項の用途以外の建物についても最適化を可能にする一般化された性能評価手法の開発方法論を構築すること。
【0009】
本発明は、機能の階層化及びFMサイクルの各段階の分析を通じて独自に構築した機能項目構成に基づき、正確に評価可能な機能項目を選定し、この選定された機能項目毎に定量的な性能評価を行い、要求性能の実現及び検証を行う建物性能総合評価システム及びその方法を提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の建物性能総合評価システムは、建物の性能を評価する機能を、機能の性格により区分して階層を作成し、この階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、この機能項目の性能評価を行い、各階層毎及び各段階毎の性能の判定を行う建物性能総合評価システムであり、前記機能項目毎の性能評価を定量化した性能判定値と、各段階の機能項目に対して設定された一対比較表とを記憶したデータベースと、この一対比較表に基づき、各段階における機能項目毎の寄与率を求める寄与率演算部と、前記寄与率及び性能判定値に基づき、前記各段階毎の性能判定値から、この上位段階の性能判定値を順次λ−ファジィ積分演算するλ−ファジィ積分演算部とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明の建物性能総合評価システムは、前記段階毎のλ−ファジィ測度(λ−ファジィ積分に使用する変数の一つ)を求めるためのλが、前記データベースに各段階毎に登録されており、前記λ−ファジィ積分演算部が前記λと前記寄与率とを用いて、所定の演算式により、各段階毎のλ−ファジィ測度を算出し、このλ−ファジィ測度とその段階に含まれる機能項目の性能判定値とにより、各段階の性能判定値を演算することを特徴とする。
【0012】
本発明の建物性能総合評価システムは、前記λ−ファジィ積分演算部が、前記複数の段階において、上位段階に含まれる複数の下位段階を機能項目とし、この下位段階の性能判定値から、この上位段階の性能判定値を、順次演算することにより、各階層毎の総合性能判定値を求めること特徴とする。
本発明の建物性能総合評価システムは、前記各階層の総合性能判定値を用いて、評価対象の建物の最適な施策を判定する最適化分類部を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の建物性能総合評価方法は、建物の性能を評価する機能を、機能の性格により区分して階層を作成し、この階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、この機能項目の性能評価を行い、各階層毎及び各段階毎の性能の判定を行う建物性能総合評価方法であり、前記機能項目毎の性能評価を定量化した性能判定値と、各段階の機能項目に対して設定された一対比較表とをデータベースに記憶する記憶過程と、この一対比較表に基づき、各段階における機能項目毎の寄与率を求める寄与率演算過程と、前記寄与率及び性能判定値に基づき、前記各段階毎の総合性能判定値を、λ−ファジィ積分演算するλ−ファジィ積分演算過程とを有することを特徴とする。
【0014】
本発明の建物性能総合評価方法は、前記段階毎のλ−ファジィ測度を求めるためのλが、前記データベースに各段階毎に登録する登録過程を有し、前記λ−ファジィ積分演算において、前記λと前記寄与率とを用いて、所定の演算式により、各段階毎のλ−ファジィ測度を算出し、このλ−ファジィ測度とその段階に含まれる機能項目の性能判定値とにより、各階層毎の総合性能判定値及び各段階毎の性能判定値が演算されることを特徴とする。
本発明の建物性能総合評価方法は、前記λ−ファジィ積分演算過程において、前記複数の段階において、上位段階に含まれる複数の下位段階を機能項目とし、この下位段階の性能判定値から、この上位段階の性能判定値が、順次演算されることにより、各階層毎の総合性能判定値が演算されることを特徴とする。
【0015】
本発明のプログラムは、建物の性能を評価する機能を、機能の性格により区分して階層を作成し、この階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、この機能項目の性能評価を行い、各階層毎及び各段階毎の性能の判定を行う、コンピュータにより実行可能な建物性能総合評価プログラムであり、前記機能項目毎の性能評価を定量化した性能判定値と、各段階の機能項目に対して設定された一対比較表とをデータベースに記憶する記憶処理と、この一対比較表に基づき、各段階における機能項目毎の寄与率を求める寄与率演算処理と、前記寄与率及び性能判定値に基づき、前記各段階毎の性能判定値を、λ−ファジィ積分演算するλ−ファジィ積分演算処理とを有することを特徴とするコンピュータにより実行可能な建物性能総合評価プログラムである。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の主体がデータベースに記憶された建物性能の評価に関するデータと、このデータの演算処理とであるため、必然的に、データベースに記憶されるデータの説明の分量が多くなる。
このため、システム構成及び動作説明と、データベースのデータの説明とを分離して行う必要があるため、全体の目次を以下に作成して説明の順番を明確にし、理解を容易にしたい。
目次
1.本発明の概要
1.1 建物の機能と性能
1.2 本発明の建物性能総合評価システムにおける機能と性能
1.3 建物の性能低下要因
1.4 建物単位
1.5 性能判定値
1.6 機能項目の設定
1.7 性能判定基準の作成
1.8 総合性能の判定
2.第1の実施形態の説明
2.1 建物性能総合評価システムの構成
2.1.1 寄与率演算部
2.1.2 λ−ファジィ積分演算部
2.1.3 最適化分類部
2.1.4 データベース
2.2 建物性能総合評価システムの動作説明
2.2.1 動作の概要
2.2.2 フローチャートによる動作例説明
3.第2の実施形態の説明
4.本発明における性能評価対象の一般化
5.みなし仕様と性能判定基準とのテーブルの説明
5.1 階層A:安全・信頼性のみなし仕様及び性能判定基準
5.2 階層B:快適・利便性のみなし仕様及び性能判定基準
5.3 階層C:社会性のみなし仕様及び性能判定基準
5.4 階層D:資産性のみなし仕様及び性能判定基準
6.一致比較表の説明
6.1 階層の一対比較表の説明
6.2 大項目の一対比較表の説明
6.3 中項目の一対比較表の説明
7.λ一欄テーブル
以下、上述した目次に従い、本願発明による建物性能総合評価システムについて、順次説明を行う。
【0017】
1.本発明の概要
本発明はFMサイクルの評価段階において、寄与率演算部1、λ−ファジィ積分演算部2、最適化分類部3及びデータベース4を有する建物性能総合評価システムを使用して、次のP1〜P17の一連のプロセスを踏むことにより実施する。
このうち、P1〜P5は小項目の性能判定を目的とする現地調査等作業、P6〜P12は性能判定値・総合性能判定値算出及びグラフ作成等の中間作業そしてP13〜P17は、最適化分類を含む成果物関連作業である。
(1)現地調査作業
P1 :資料収集及び現地調査
P2 :現地調査結果(小項目各条項の満足度の○×及び所見)の画面入力
P3 :小項目の性能判定値の算出・表示
P4 :全小項目が判定されたかの確認
P5 :現地調査データの格納
(2)中間作業
P6 :現地調査データの読み込み
P7 :小項目性能判定値棒グラフの作成・表示及び所見の表示
P8 :中・大項目の性能判定値及び総合性能判定値の算出
P9 :総合性能判定値及び大項目性能判定値のレーダーチャートの作成・表示
P10:総合性能判定値及び大・中・小項目性能判定値の一覧表示
P11:中間処理が完了したかの確認
P12:中間処理データの格納
(3)成果物関連作業
P13:中間処理データの読み込み
P14:最適化分類の実施
P15:性能判定結果及び最適化分類情報の表示
P16:全項目が表示されたかの確認
P17:成果物データの格納
以下、本発明の建物性能総合評価システムにおいて用いられる言葉の概念及び建物の性能判定の概念について、順次以下に説明する。
【0018】
1.1 建物の機能と性能
発明の構成を説明する前に、本発明で評価する建物の機能と性能とについて、簡単に説明する。
一般に、建物の機能(Function)とは、建物等が本来的に又は使用に際して備えているかもしくは備えるべき固有の働き(または役割)であり、「物差し」に例えることもできる。
そして、機能を物差しとすると、性能(Performance)はその物差しによる実測値または目標値に例えることができる。
【0019】
例えば、耐震性という性質自体が機能(物差し)に帰属するのに対し、耐震指標はその能力を表わす数値であり、性能に帰属している。
「建築物の調査・劣化診断・修繕の考え方(案)・同解説」(社団法人日本建築学会 1993年)においては、機能が「目的又は要求に応じてものが果たす役割」、性能が「目的又は要求に応じてものが発揮する能力」と定義されており、上記の一般的定義と本質的に同様である。
【0020】
1.2 本発明の建物性能総合評価システムにおける機能と性能
本発明の建物性能総合評価システムにおける機能・性能は、上述した定義の示す内容と基本的に同様である。
ただし、機能については、日常的には物理的な機能を指すのに対し、本発明の建物性能総合評価システムにおいては、精神的(満足度等)、社会的(調和性等)及び資産的(収益性等)なものまで概念を拡張している。なお、資産的な機能(収益性等)については、不動産鑑定評価に通じる要素もあるが、市場価値ではなく、現用状態での使用価値の評価を行う点が異なっている。
また、性能については、本発明の建物性能総合評価システムにおいては、現用状態、すなわち、現用途・使用形態に対する適合性を意味し、設計・施工性能の他に、完成後の用途や使用形態の変更に対する適合性、現時点での社会制度や技術水準への適合性及び利用者満足度や第三者への影響度を含んでいる。
【0021】
1.3 建物の性能低下要因
建物の性能は、一般的に、竣工後時間の経過とともに低下する。
このため、FM業務においては、新築時に限らず、建物のライフサイクルのすべての期間において、継続的に建物の性能を評価し、この性能を確保することが重要である。
そのためには、性能低下とその要因について明らかにしておく必要がある。 本発明においては、性能低下要因を次の通り整理する。
【0022】
(1)経年劣化
躯体、仕上げ、設備等の経年に伴う劣化であり、物理的劣化と呼ばれることもある。
その中でも、屋根や外壁の物理的劣化等は、雨漏り防止性、耐火性及び遮音性等の低下をもたらす。
このように、一般に建物の基本的部位の物理的劣化は、複数の機能の性能低下の要因となることが多い。
【0023】
(2)陳腐化
技術革新の激しい分野においては、物理的性能は維持されていても、社会通念としての要求がおのずから高度になり、その結果、既存の建物が性能不足と感じられるようになることがある。
例えば、空調設備やエレベータ設備の制御能力等は、よく引き合いに出されるものである。
なお、陳腐化は、前項の物理的劣化に対して社会的劣化と呼ばれることもある。
【0024】
(3)建物の使用条件の変化に伴う乖離
事業上の要請に基づき、入居人数や収容する電気通信設備の変更が行われると、一般にスペース、床荷重又は設備容量等が不足又は過大となる。これらは当初の設計・施工上の問題ではないが、その時点での要求性能(明文化されないことが多い。)を満たしていないという意味で、広義の性能低下と考えることができる。
なお、用途変更や業務の移転・廃止も広義の使用条件の変化である。
【0025】
(4)周辺環境の変化
近隣に危険物を取り扱う施設や騒音源となる施設が建設されたり、周辺地域の開発により水害が発生しやすい立地状況になるなど、周辺環境変化(一般的には悪化)の結果として建物の性能低下をきたすことがある。
【0026】
1.4 建物単位
本発明の建物性能総合評価システムにおいては、性能評価は、対象建物の棟単位に、且つ、次の(1)〜(6)項の資産等をすべて含めて実施するものとし、対象建物とこれらとの組合わせを建物単位と呼ぶ。
なお、次の各項の資産等を2棟以上の対象建物が共用する場合は、その旨を明記のうえ、各対象建物毎に重複を厭わず計上して評価対象とする。
(1)土地
対象建物の敷地。
(2)建物附属設備
対象建物の附属設備。
(3)鉄塔、鉄柱及びコンクリート柱
対象建物と機能上不可分の鉄塔、鉄柱及びコンクリート柱。
(4)構築物
対象建物と機能上不可分の構築物。
(5)その他の建物
対象建物の敷地内に建つ倉庫、車庫等の建物。
(6)環境等
対象建物の立地環境及び屋内環境並びに対象建物の近隣環境への影響度等。
【0027】
1.5 性能判定値
本発明の建物性能総合評価システムにおいては、性能評価(判定)が、図1のテーブルに示される性能判定区分により定量化された数値(以下「性能判定値」という。)を、機能項目単位に付与することにより実施される。
性能判定値とは、建物等の性能を定量化して判定するときに用いる数値をいい、図1のテーブルに記載された項目に従い、各項目毎に性能の高い順に1・2・3の3段階の数値で設定されているものとする。
【0028】
なお、上記性能判定値は、調査に基づいて付与する最小の判定単位である上記機能項目における小項目(後述)において、図1のテーブルのように整数値として設定されているが、小項目の性能判定値に基づいて算定する上位項目の性能判定値においては小数点以下の数字も含めて評価を行う。
従って、実際には、上位項目の性能判定に際しては、図1のテーブルにおける小項目の性能判定値を1以上3以下の実数に拡張した図2のテーブルにおける性能判定値の基準を併用する。
【0029】
1.6 機能項目の設定
次に、本発明の建物性能総合評価システムにおける機能項目及びその構造を次の定義により設定する。
(1)機能の階層化
建物の機能は、古来人間生活に不可欠であった「雨露をしのぐ」、「外敵から身を守る」という基本的な機能の他に、快適性・利便性等利用者の満足度に関わる機能その他複雑多岐にわたっている。
これらは数が膨大であるだけでなく、ある種の階層を構成していると考えられる。
そこで、個々の機能項目の決定を行う前に、まずそれらの階層化を行う。
WHO報告書(EXPERT COMMITTEE ON THE PUBLIC HEALTH OF HOUSING −First Report−, WORLD HELTH ORGANIZATION 1961年)における「安全」・「健康」・「効率」・「快適」という構成は、階層を明確に示している。
【0030】
本発明の建物性能総合評価システムにおいては、上記WHO報告書の構成を基本としつつ、建物保有者が利用者・関係者・社会一般に対して果たすべき責任や建物の経営資源としての性格を考慮し、「社会性(本発明では階層C)」(社会的存在としての建物に要求される機能)及び「資産性(本発明では階層D)」(現用資産としての優良性)を追加して、図3の概念図に示す性能判定における階層構成を設定する。
この図3においては下位の機能ほど基本的であり、優先的に満足される必要があることを示している。
例えば、「安全・信頼性(階層A)」と「快適・利便性(階層B)」の2つの階層を比較した場合、前者の確保が後者に優先することを意味し、優先順位の逆転は、実質的な性能判定とならない。
【0031】
(2)機能の想定
機能の想定は、FMサイクルの各段階で発生する作業毎の機能を、(1)で設定した各階層(本発明では階層A,B,C,Dの4つの階層)と対応させることにより実施する。
各段階に関連する主な機能種別は▲1▼〜▲5▼の通りであり、これらと各階層との組合わせにより整理した結果を図4のテーブル(FMサイクルと図3の階層との関係で整理した建物機能)に示す。
▲1▼ 当初の敷地選定段階の作業に必要な敷地選定方針から想定した機能。
▲2▼ 計画段階の作業に必要な要求条件から想定した機能。
▲3▼ 設計段階の作業に必要な設計仕様から想定した機能。
▲4▼ 使用開始後に、建物保有者、利用者(入居者・外来者等)及び関係者(保守・清掃作業者等)が建物に期待する機能。
▲5▼ 使用開始後に、第三者(近隣居住者及び一般通行者等)が建物に期待する機能及び建物から受け得る影響から想定した機能。
【0032】
(3)想定機能の構造化
(2)で想定した機能を、相互独立的且つ網羅的なツリー構造に変形する。その結果を図5,図6の構造化した想定機能をツリー構造とした概念図に示す。
【0033】
そして、上記(3)において、図5に示すように、ツリー構造で示した構造化された想定機能を、4階層(階層A,B,C,D)に整理し、各階層毎に3段階に整理・細分化して、細分・名称を決定して機能項目化する。この構造化された機能項目を、図7〜12のツリー構造の概念図に示す。
ここで、機能項目の分類記号の付与方法は、図13の概念図の通りとし、機能項目の一覧表として、図14〜17に、分類記号付きの機能項目一覧のテーブルを示す。
【0034】
1.7 性能判定基準の作成
次に、性能判定基準の構成及び記述方法の説明を行う。
(1)性能判定基準は、各小項目毎に次の構成で作成する。
▲1▼ 要求性能
当該小項目に要求される性能を、性能規定としての定性的表現で記述する。
▲2▼ 要求性能の仕様化
調査結果との照合による性能評価を行うため、要求性能を満足するための「みなし仕様」を定量的基準を含めて箇条書きとする。
ただし、定量的基準が複雑な場合やその分量が多く簡潔に記述できない場合、後述する「みなし仕様の解説」を引用する。
▲3▼ 性能判定方法(性能判定の基準)
性能評価結果を数値化するため、「みなし仕様」の各条項の満足度と性能判定区分(1点・2点・3点)との関連付けを記述する。「みなし仕様」のすべての条項を満足していれば最高の1点、満足していない条項があればその程度により2点また3点とする。
【0035】
(2)上述した性能判定基準毎にに対応して、必要に応じて次の各事項を、補足説明としてデータベース4に登録する。(ただし▲2▼・▲3▼は、解説での引用を行っている。)
▲1▼ みなし仕様の解説
当該小項目の意味・目的及び要求性能の仕様化の補足説明を記述する。
▲2▼ 法令
当該小項目の要求性能の根拠となる,またはそれに関連する法令の該当箇所を引用する。
▲3▼ 技術資料
当該小項目の根拠となる,またはそれに関連する技術基準及び技術資料等を引用する。
【0036】
1.8 総合性能の判定
本発明の建物性能総合評価システムにおいて、建物の性能は、大・中・小の各機能項目単位及びその上位の階層A,B,C,Dの各階層単位のいずれのレベルにおいても論じることができる。
本発明の建物性能総合評価システムにおいては、各階層単位の性能を総合性能と呼ぶ。
そして、総合性能の判定とは、各機能項目について実施する結果得られる建物の性能判定値を、各階層毎に求めることをいい、その算定方法については後述する。
【0037】
なお、さらに進んで、A,B,C,Dの各階層の性能を一つにまとめたものがファシリティの究極的な総合性能であるということができ、それによる包括的な性能評価を行うことも可能である。しかし、包括的な性能評価結果は抽象化の度合いが増し、それに対応する人間の感覚尺度が曖昧になる結果、実用上の意味が希薄になる。
このため、本実施形態においては、一つの包括的な性能判定値を求める代りに、各階層間の総合性能判定値の大小関係による4つの類型を設定し、各々の類型に対応した最適化の処方箋を示す方法としており、これにより、性能特性の直感的把握や最適化の方向付けの容易な性能評価が可能となっている。
【0038】
建物は、全機能項目について常に性能判定値が1である状態が理想的である。しかしながら、一般には、老朽化(物理的な劣化)、技術水準の向上に伴なう陳腐化(社会的劣化)、使用条件の変化に起因する不適合、又は周囲の環境条件の変化等により、いずれかの項目において、初期の建物の性能と評価した時点における要求性能との乖離が発生する。
【0039】
このため、本発明の建物性能総合評価システムの評価手法において、最適化とは、これらの乖離を解消することであるという言い方もできる。
また、膨大な数の建物を保有する企業においては、最適化された状態を常に維持するためには、事業上の優先順位を明らかにすることにより、資金計画上の要請に柔軟に対応するとともに、費用・投資対効果の極大化を図っていく必要がある。
このとき、総合性能判定値は、対象となる建物のグループにおける個々の建物性能の順位付けを可能にするため、最適化の優先順位を与える尺度としても重要なものとなる。
【0040】
また、上述したA,B,C,Dの4つの階層は、歴史的に概ねこの順番に認識・要求され、発展してきたと考えられる。
従って、すでに述べた様に、下位の階層に帰属する機能ほど基本的であり、事業への継続的使用を前提とする建物の性能確保に際しては、基本的にこの順位を遵守する必要がある。
なお、「D.資産性」は経営資源としての建物の優劣の評価を行うものであり、その中でも収益性が重要な評価指標である。
【0041】
各階層の性能は、上記の順位を遵守しつつ、相互にバランス良く満足されている必要がある。
例えば、収益性の低い建物は、安全で快適・利便で地域に調和したものであっても、最適使用状態や目的整合性の未達成・不足の建物である。
また、反対に、例えば安全性に不備があっても収益性の高い建物があり得るが、それは見かけの収益性であり、実際には災害や賠償等による損失のリスクを内包していると考えるべきである。
判定結果における総合性能の性能判定値(総合性能判定値)の具体的運用の考え方については、後述する。
【0042】
また、性能判定値のみでは、個々の建物の態様は明らかにならないため、最適化施策の検討段階において、野帳における調査結果や各種資料・図面等を参照し、常に性能判定値との比較対照を行いながら、具体的に判断する必要がある。
野帳(野外調査で、観察・聞き取り・実測などの事項を記録するフィールド−ノート)に添付する資料・図面は次のものが代表的である。
a. 建物台帳情報(属性・容量・方式・人数等)
b. 周辺地図
c. 活断層図
d. 柱状図
e. ハザードマップ
f. 設計図書
g. 工事記録
h. 設備リスト
i. 受電回路図
j. 設備点検票
k. 写真一式(判定時に撮影したもの)
【0043】
2.第1の実施形態の説明
次に、図を用いて、本発明の構成を説明する。
図18は、本発明の建物性能総合評価システムの一構成例を示すブロック図である。
上記建物性能総合評価システムは、寄与率演算部1,λ−ファジィ積分演算部2,最適化分類部3及びデータベース4から構成されている。
建物性能総合評価システムは、
(1)性能評価は、下位項目から上位項目の性能判定値を順次算定し、最終的にA,B,C,Dの階層毎の総合性能判定値を求める手順により実施する。
(2)本評価手法においては膨大な機能項目を扱うため、性能評価に際しては、機能項目の重み付け(下位項目の上位項目への寄与率の決定)を行う。
そして、寄与率の決定には、AHP(Analytic Hierarchy Process;階層分析)法を採用する。
(3)上位項目の性能の判定及び総合性能の判定は、λ−ファジィ積分法により実施する。ただし、全体の傾向を簡便に把握したい場合に限り、加重平均法を適用する。
【0044】
加重平均法は、下位項目の性能判定値を寄与率で加重平均して上位項目の性能判定値を求める方法であり、重み付けを行う点を除いては、個々の評価と全体の評価との関係は単純な上、計算も簡単である。
しかしながら、実際には、各要素が正しく評価され、且つ重み付けが適切であっても、それらの総和は必ずしも全体の評価にはならない。
これは、各要素どうしの相乗効果や減殺効果等が起こるからである。
特に、本評価手法のように多数の機能項目を扱う場合には、上位の項目になるほど、相乗効果や減殺効果等を無視することの無理(誤差)が拡大すると考えられる。
【0045】
λ−ファジィ積分法はファジィ理論の一つで、下位項目相互の相乗効果や減殺効果を上位項目の性能判定値に反映させる方法である。
本評価手法においては、特に理由がない場合にはこの手法を適用する。
なお、これらの方法の他に、例えば単純平均法(同一階層内の性能判定値を単純平均する方法)や、クリティカルアイテム法(最悪値に着目する方法)も考えられる。
このうち、単純平均法は、全機能項目の重要度を一律とみなすことから、項目数が多くなると問題が大きくなる。そのため、本評価手法においては使用しない。
一方、クリティカルアイテム法は、上位項目の性能判定値を下位項目の性能判定値の最悪値で代表させる手法である。この手法は最低レベルのチェック機能を有するため、総合性能判定値を求めるためというよりも、最適化施策の検討段階においてこの考え方を併用すれば効果的である。
【0046】
2.1 建物性能総合評価システムの構成
以下、順次、図18のブロック構成図に対応して、各ブロックの機能説明を行う。
2.1.1 寄与率演算部
寄与率演算部1は、寄与率を、後に述べるλ−ファジィ積分及び加重平均演算と同様に、AHP法により算定する。
上記寄与率演算部1が算定する手順を、以下に説明する。
(1)同一の上位項目に帰属するすべての機能項目相互の重要度の比較(一方の他方に対する重要度の比較をいい、「一対比較」と呼ばれる。)を評価尺度として使用して数値化し、一対比較表を作成する。
(2)(1)において作成した一対比較表を、1つの行列とみなした固有値問題を解く演算を行う。
【0047】
ここで、固有値問題とは、n次の正方行列(行数・列数ともにnである行列)Aに対し、以下に
【数1】
Figure 2004157788
を満たすスカラーΔ及びn次のベクトルxを求める問題をいい、スカラーΔを行列Aの固有値、そのときのベクトルxを固有ベクトルという。
一般に固有値は複数存在するが、その最大値に対応する固有ベクトルの成分(固有ベクトルにおける各成分の合計が1になるように規格化した場合の)が、n個の機能項目の寄与率(重み係数)となる。
寄与率演算部1は、高次(最大で7次)の行列に対する上記固有値問題を、数値計算により演算して、機能項目毎の寄与率を求める。
【0048】
(3)本評価手法におけるAHP法を採用することの特徴及び運用上の注意点を以下に示す。
▲1▼ 各機能項目毎に寄与率を考慮するため、A,B,C,Dの階層毎の総合性能の評価が可能である。
▲2▼ 寄与率を算定することにより、総合性能判定値が得られるだけでなく、大・中項目の任意のレベルでの性能判定値の算定が行えるため、これらの任意のレベルにおける性能判定値のみを問題にする必要がある場合(限定された機能項目の比較を行なう場合等)にも、対応可能である。
▲3▼ 運用上の注意点として、一対比較は主観により行うため、それに続く計算結果の一人歩きを防止するため、一対比較表を作成する時点において、実務上の裏付けや決定過程を明らかにしておくことが大切である。
【0049】
(4)一対比較の評価尺度
一対比較の評価尺度の事例を、図19に示す一対比較の評価尺度のテーブルを用いて行う。
▲1▼ AHP法考案者のサーティは、1,3,5,7,9の数値尺度を提唱し、更に必要に応じて、更に区分を細かくし、2,4,6,8を中間に使用することとしているが、数値については必ずしもこの通りでなければならないという訳ではない。
▲2▼ 本評価手法においては後の計算の便を考え、「同程度」を1とする2の累乗の系列を採用している。
【0050】
(5)一対比較表の一例
次に、図20のテーブルにおいて、機能項目数が4の場合の一対比較表の一例を示す。
▲1▼ 以降の計算では、一対比較表は一つの正方行列(この事例では4行4列)として扱われる。
▲2▼ 行i・列jの番号1〜4は、同一の上位項目に帰属する4つの機能項目の番号を表わしている。
▲3▼ 行列の要素aijは行iの列jに対する重要度を、図19の数値化された尺度で表わしたものであり、この尺度を採用する場合は必ずaij =1/ajiとし、かつaii(同一項目の場合)=1となる。
そして、寄与率演算部1で用いられる一対比較表及び寄与率は、上述した方法により個々に求め、あらかじめデータベース4に設定(格納)される。
【0051】
2.1.2 λ−ファジィ積分演算部
次に、λ−ファジィ積分演算部2は、加重平均法の欠点を解消する目的で、上述したAHP法によって算定した寄与率を修正し、各評価項目の相乗効果や相殺効果等を考慮した重み付け係数(これを「λ−ファジィ測度」という。)を求め、この重み付け係数を使用して上位項目の性能判定値を求めている。
ここで、λ−ファジィ積分演算部2は、上記λ−ファジィ測度を、λ−ファジィ積分と呼ばれる手法の所定の式により算定する。
このとき、λ−ファジィ積分演算部2は、以下に示す演算課程によりλ−ファジィ測度の算出を行う。
ここでは4つの小項目の上位の1つの中項目における算定事例を併せて示すこととする。
【0052】
λ−ファジィ積分演算部2に対して、λ−ファジィ測度を演算させるための設定値として、以下の処理によりλを設定する。
▲1▼ その求める中項目の下位のすべての小項目を要素とする集合を抽出する。
▲2▼ ▲1▼の集合のすべての部分集合(この集合自身と空集合も含む。)を書き出す。部分集合の個数は、▲1▼の集合の要素の個数をNとすると2個である。
▲3▼ 相乗効果や減殺効果を反映させるλ(>−1)の値を項目の性質に応じて設定し、あらかじめデータベース4に登録する。
【0053】
ここで、対象となる中項目の総合性能判定値は、λ<0とした場合、λが「0」に対して小さくなる程最大値による評価(本評価手法では悪い面の相乗効果)に近づき、λ>0とした場合、λが増加するにつれて最小値による評価に近づく(減殺効果)。
一方、λ=0とした場合、λ−ファジィ測度は、加重平均値と同様の数値となる。
そして、ファジィ積分演算部2は、λ=0とした場合、各小項目(評価項目)の寄与率で各小項目の性能判定値を加重平均した結果と同じ値を、この各中項目の性能判定値として出力する。
【0054】
▲4▼ λ−ファジィ積分演算部2は、データベース4に設定されたλの値から、λ−ファジィ測度を求める機能項目に対応したλを参照して、このλを用いて目的とする部分集合の中間的なパラメータ(以下「中間値ρ」とする)を算定する。
この中間値ρの値は、全体集合のλ−ファジィ測度が1に等しいという性質(正規性)を利用して、次の式により算定する。
【数2】
Figure 2004157788
上記式において、μλ(X)は全体集合のλ−ファジィ測度であり、nは小項目数、b(i)はn個の寄与率のうち、i番目の寄与率を最大寄与率で除したものを、それぞれ表わす。
ここで、λ−ファジィ測度は、λ−ファジィ積分演算部2において、λに対して、寄与率の規格化された値b(i)と中間値ρとを乗算し、「1」を加算したものを順次乗算した後、「1」を減算して、λで除算することにより求められる。この式における規格化された寄与率としては、寄与率演算部1が求めた寄与率が用いられる。
すなわち、この規格化された寄与率b(i)は、寄与率演算部1が求めた4つの小項目の寄与率各々を、この寄与率の最大の数値で除算したものである(λ−ファジィ積分演算部2が除算処理を行う)。
【0055】
▲5▼ そして、λ−ファジィ積分演算部2は、中間値ρの値を使用して、各部分集合のλ−ファジィ測度を算定する。
ここで、λ−ファジィ測度はλ−ファジィ積分に使用する一般化された寄与率であり、λ=0の場合を除いて、いわゆる「加法性」が成立しない。
▲6▼ 次に、λ−ファジィ積分演算部2は、λ−ファジィ測度を使用してλ−ファジィ積分値を演算して求め、この求めた値を、中項目の性能判定値として出力する。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、上述した処理と同様の処理を行い、他の中項目や上位の項目の性能判定値も算出する。
【0056】
次に、λ−ファジィ積分演算部2で行われる演算処理の理解を容易とするため、4つの小項目からなる中項目の性能判定値の計算例を示す。
ここで、図21のテーブルに示す5つの建物を例にとり、λ−ファジィ積分演算部2におけるλ−ファジィ積分値の演算処理の一例を示す。
なお、本評価手法において実際に使用する各種パラメータはこの以下に示す方法により個々に求める。
この図21に示された寄与率w(i)は寄与率演算部1が演算したものであり、寄与率w(1)が最大の寄与率である(ここでは0.430)。
▲1▼ 図22のテーブルに、図21のテーブルにおける4つの機能項目のすべての部分集合(この集合自身と空集合も含む。この例では、部分集合の個数は、2 =16個である。)と、λ=−0.9とした場合の各々のλ−ファジィ測度を示す。これらのλ−ファジィ測度の算定方法は以下に示す。
【0057】
▲2▼ λ−ファジィ積分演算部2は、各部分集合のλ−ファジィ測度μλ(i)を求める前に、中間値ρの値を求める。
ここで、λ−ファジィ積分演算部2は、中間値ρの値が全体集合のλ−ファジィ測度μλ(16)の1に等しいという性質(正規性)を表わす所定の方程式により演算して求める。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、この例において、機能項目数が4つあるので、正規性を表す次に示す所定の方程式により、上記中間値ρの算出を行う。
【0058】
以下の式において、b(i)各々は図21に示す値であり、また、大括弧及び中括弧の中は、4つの小括弧の積と1との差を表わす4次式である。
【数3】
Figure 2004157788
すなわち、
【数4】
Figure 2004157788
この方程式を解くと、ρ=0.761となる。
【0059】
▲3▼ そして、λ−ファジィ積分演算部2は、各部分集合のλ−ファジィ測度μλ(i)を求める演算を行う。
このため、λ−ファジィ積分演算部2は、上の方程式の中括弧の中のb(i)の積の組合せを各部分集合に応じて選定し、中間値ρの値を代入して、順次、λ−ファジィ測度μλ(i)の演算を行う。
例えば、λ−ファジィ積分演算部2は、図22のテーブルのμλ(12)について、以下のλ−ファジィ測度μλ(12)を、以下に示すように演算して出力する。
【数5】
Figure 2004157788
【0060】
▲4▼ λ−ファジィ積分演算部2は、λ−ファジィ積分値を、図21,18のテーブル及び上記の演算処理により求めたλ−ファジィ測度を用いて、例えばEビルについては次の(1)式〜(6)式の演算処理により求める。なお、h(i)は小項目i の性能判定値を表している。
h(1)=2 ……(1)
h(2)=h(3)=h(4)=3 ……(2)
【0061】
そして、上記(1),(2)式から
h(2)=h(3)=h(4)> h(1) ……(3)
ここで、小項目1〜4の最低点は、機能項目(小項目)1の2点であり、他の機能項目はすべて2点よりも高いと判定する。
このとき、λ−ファジィ積分演算部2は、「1〜2点の間の評点にはすべての機能項目を含む。」と判定する。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、この区間(1〜2点)の評点として、機能項目1の2点に全体集合 {1,2,3,4}のλ−ファジィ測度を乗じた、以下に示す(4)式の値を算出する。
h(1)・μλ(1,2,3,4) ……(4)
なお、本評価手法では点数と性能とは大小関係が逆であるが、計算上は欠陥の点数を扱っていると考えて問題はない。
【0062】
次に、λ−ファジィ積分演算部2は、図21のテーブルから機能項目2,3,4すべてが最高点の3点であると判定する。
このとき、λ−ファジィ積分演算部2は、「2〜3点の間の評点に、機能項目2,3,4を含む。」と判定する。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、この区間(2〜3点)の評点として、3点と2点との差に部分集合{2,3,4} のλ−ファジィ測度を乗じた、以下に示す(5)式の値を算出する。
{h(2)−h(1)}・μλ(2,3,4) ……(5)
【0063】
以上から、Eビルの中項目のλ−ファジィ積分値は、(4)式と(5)式との和(加算)である、以下に示す(6)式の値となる。
h(1)・μλ(1,2,3,4)+{h(2)−h(1)}・μλ(2,3,4) =2.758 ……(6)
また、G〜Iの3ビルのλ−ファジィ積分値を、(7)式〜(9)式に示す。なお、Fビルは配点がEビルと全く同じであるため、λ−ファジィ積分演算部2は、Fビルのλ−ファジィ積分値として、Eビルと同じ2.758の数値を出力する。
【0064】
・Gビル:
λ−ファジィ積分値=h(2)・μλ(1,2,3,4)+{h(1)−h(2)}・μλ(1,4) +{h(4)−h(1)}・μλ(4)
=1.969 ……(7) ・Hビル:
λ−ファジィ積分値=h(1)・μλ(1,2,3,4)
=1.000 ……(8) ・Iビル:
λ−ファジィ積分値=h(1)・μλ(1,2,3,4)+{h(2)−h(1)}・μλ(2,3,4)
=2.516 ……(9)
【0065】
そして、以上の算出結果を加重平均値と比較すると、図23に示すテーブルのようになる。
上述した、λ−ファジィ積分演算部2の計算例においては、4つの機能項目間に強い相乗効果を想定してλの値を設定した。
このような、λ<0のモデルは、これら4つの機能のうち一つでも不備があると、その上位の機能に著しい支障をきたすようなケースに該当する。
図23のテーブルを確認すると、この事例においては、ビルによって加重平均値とλ−ファジィ積分値の値とにかなりの相違が見られる(特にGビルで著しい。)。
【0066】
これらについては、図21および図23から、次のような考察が可能である。・Eビル及びFビル:
λ−ファジィ積分値では、元の小項目に1点が1つもないことが強調され、2.8点に近づいている。緊急の改善対策が必要である。
・Iビル:
λ−ファジィ積分値では2点台の後半となり、E・Fに続き最低レベルに近づいている。
これは、2番目に寄与率の大きい小項目の性能不足の影響が大きいためと考えられる。
【0067】
・Gビル:
1点の小項目が2つあり、加重平均値では大きな問題はなかったが、λ−ファジィ積分値では約2点で要注意のレベルとなる。これは、寄与率の最も大きい基本的な小項目の性能不足の影響が大きいためと考えられる。
・Hビル:
全ての小項目としての機能項目が最高レベルの1点であるため、中項目の性能判定値は加重平均値、λ−ファジィ積分値いずれの算定方法でも同じく最高レベルの1点となる。
【0068】
2.1.3 最適化分類部
次に、最適化分類部3は、各階層の判定値である総合性能判定値に基づき建物の最適化施策を判定及び抽出するとき、建物の種類に応じて以下の(1)〜(3)の処理及びそれらに基づく(4)の最適化分類処理を行う。
(1)階層A,B,Cの総合性能判定値の最大値(最悪値)を選別する。
【0069】
(2)(1)の階層A,B,Cの総合性能判定値の最大値(最悪値)及び階層Dの総合性能判定値の各々について、図2により小数値を整数値に変換した結果が、「1であるか?」若しくは「2又は3であるか?」を判別する。
(3)階層A,B,Cの総合性能判定値の最大値(最悪値)及び階層Dの総合性能判定値の各々の整数値をE1及びE2とし、それらの組合せによる2次元座標上の点E(E1,E2)を定義する。この点Eは、当該建物の性能特性を表わす。
【0070】
(4)最適化分類部3は、上述した当該建物の性能特性を表わす2次元座標上の点E(E1,E2)を、図24に示すグラフ上の領域1〜4のいずれかに表示する。
ここで、図24の領域1〜4は、建物の4種類の性能特性を表わす領域であり、各々の特性に対応した最適化施策が表示される。従って、図24のグラフに当該建物の性能特性を表わす点E(E1,E2)を表示した結果は、そのまま当該建物の最適化分類を与えることとなる。そして、この最適化分類を行うことが本発明の建物性能総合評価システムの特徴である。
すなわち、最適化分類部3は、各階層の総合性能判定値を用いて、評価対象建物の最適な施策を判定する。
【0071】
図24において、横軸は階層A,B,Cの総合性能判定値の最大値(最悪値)、縦軸は階層Dの総合性能判定値を示している。
また、図24において、閾値Sabcは総合性能判定値A,B,Cの最大値(最悪値)に対する閾値1.5であり、閾値Sdは最適化分類部Dに対する閾値1.5である。
そして、最適化分類部3は、領域1に対応する建物を「現状維持」とし、領域2に対応する建物を「改修」又は「建替」とし、領域3に対応する建物を「施設運営費低減及び利用度向上」若しくは「他の建物への機能集約後に転用又は売却」とし、領域4に対応する建物を「改修且つ利用度の向上」又は「他の建物へ機能集約後に撤去(除却)」とし、これらの判定結果を表示画面に表示する。
【0072】
(5)個々の建物における最適化施策の検討に際しては、現用・非現用区分や使用条件変更の有無の確認に基づいて、図24の枠組みを適用し、かつこの一連の処理過程をFMサイクルとして循環させる必要がある。
図25は、FMサイクルの循環の一例を示す概念図である。
【0073】
2.1.4 データベース
次に、データベース4には、上述した階層(A,B,C,D)の総合性能判定値、大・中・小項目の性能判定値ならびに図10〜13のテーブルに記載されている小項目毎のみなし仕様及び性能判定基準(判定方法)が格納されている。 後に、みなし仕様と性能判定基準とのテーブルの説明の項目において、データベース4に記憶されている機能項目の説明及び設定されている機能の性能判定基準について、図26〜図116を用いて説明する。
上記みなし仕様と性能判定基準とのテーブルの説明の項目における説明は、図10〜13に示されたテーブルにおける各大項目・中項目・小項目の順番に順次行う。
【0074】
また、寄与率演算部1は、各機能項目に対する仕様に対して、図26〜図116に示す要求性能及び性能判定値、すなわち、図26〜図116の(b)のテーブルを表示画面に順次表示する。
さらに、寄与率演算部1は、表示画面から、各機能項目毎に利用者が表示画面上で選択した性能判定値を、データベース4へ記憶させ、各機能項目に対応した一対比較表の数値に基づき、寄与率を演算する。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、すでに述べた演算処理により、この性能判定値と、寄与率と、λ−ファジィ測度を求めるλとに基づき、λ−ファジィ積分の演算を行い、得られたλ−ファジィ積分値を、各機能項目が属する上位段階の性能判定値として出力する。
【0075】
また、データベース4には、全ての機能項目において、共通の上位項目に帰属する項目相互の重要度を、「同程度」を1とする2の累乗の系列による評価尺度を使用して数値化した一対比較表がテーブルとして設定されている。
一対比較表の一例として、後に説明するが、データベース4に格納された各階層に属する大項目,中項目及び小項目に対する一対比較表を図118〜図160に示す。
【0076】
また、データベース4には、λ−ファジイ測度を演算するために用いるλの数値が、機能項目名毎に、すなわち、中項目,大項目及び階層毎に、図161〜図166に示す構成で設定されている。
例えば、図162〜図166のテーブルには各階層と階層Aの大項目とのλが示されており、図161に示す階層単位の基準に基づき、図14〜図17のテーブルに示すように、λが、中項目,大項目及び階層全ての各機能項目毎に対応して、あらかじめデータベース4に設定されている。
一致比較テーブル及びλの数値,及び各数値を設定した根拠については、後に説明する。
したがって、上述してきたように、一対比較表及びλは、図14〜図17に示す中項目,大項目及び階層の各項目に対応して、データベース4に格納されている。
【0077】
2.2 建物性能総合評価システムの動作説明
2.2.1 動作の概要
次に、図18、および図167を参照し、一実施形態の動作例を説明する。図167は、図18の建物性能総合評価システムの動作例を示すフローチャートである。
説明の前に、本発明は、建物の性能を評価する機能を、機能の性格により区分して階層を作成し、この階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、この機能項目の性能評価を行い、各階層毎及び各段階毎の性能の判定を行う建物性能総合評価システムである。
このため、フローチャートには示されていないが、すでに述べたように、機能項目毎の性能評価を数値化した性能判定値と、各段階の機能項目に対して設定された一対比較表と、段階毎のλ−ファジィ測度を求めるためのλとを、あらかじめ、各段階毎にデータベース4に格納しておく。
【0078】
そして、寄与率演算部1は、この一対比較表に基づいて、各段階における機能項目毎の寄与率を求め、λ−ファジィ積分演算部2はこの寄与率に基づいて、所定の演算式により、各段階毎のλ−ファジィ測度を算出し、このλ−ファジィ測度と段階に含まれる機能項目の性能判定値とにより、各段階毎の性能判定値をλ−ファジィ積分演算することになる。
このとき、λ−ファジィ積分演算部2は、複数の段階において、上位段階に含まれる複数の下位段階を機能項目とし、この下位段階の性能判定値を性能判定値として、この上位段階の性能判定値を、順次演算する。
【0079】
2.2.2 フローチャートによる動作例説明
以下、図167のフローチャートに従い、本発明の建物性能総合評価システムの動作例を説明する。
ステップS1において、寄与率演算部1は、小項目の性能判定値を演算するための、各小項目毎の各条項の規定が満足されているか否かの判定入力を利用者に促すため、図170に示すデータ入力画面(野帳データシート)を表示する。
このとき、利用者は建物性能を評価するため、設計図を含む資料収集及び現地調査を行い、この現地調査結果を後に入力しても良いし、ノートパソコンに直接入力処理を行っても良い。
そして、寄与率演算部1は、利用者が判定入力欄に入力した、各小項目の各条項の規定が満足されているか否かを示す情報に基づき、各小項目の性能判定値を演算する。
ここで、判定入力欄に入力される判定値は、例えば、マウスなどによりクリックすることにより、条項の規定である「a.盛り土をした敷地ではない」が満足されている場合「○」を判定値として入力し、満足されていない場合「×」を判定値として入力する。
そして、寄与率演算部1は、各条項の規定の満足度の「○」及び「×」を検出することにより、この検出結果から図26〜112(すでに説明した各図の(b)に示されている判定方法に従う)のテーブルに示された性能判定基準に従い、各小項目毎の性能判定値を演算する。
すなわち、寄与率演算部1が、機能項目としての各小項目毎に、利用者が仕様化された要求性能(例えば、図26(a))において満足しているもの、またはしていないものを、表示画面の各条項の規定の○(満足している)/×(満足していない)の選択ボタン(図示しない)からクリックして選択して、この選択された各条項の規定の満足度のデータ(満足しているもの及び満足していないものの数)に基づいて、判定基準(例えば、図26(b))により性能判定値を判定して、各小項目毎の性能判定値を得る。
【0080】
このとき、寄与率演算部1は、図170において、「要求性能の仕様化」の欄に、各小項目の要求性能の概要が記載されているが、また、利用者が調査結果を入力する補助として、表示画面における機能項目の文字部分(例えば、図170の「A−1−1−1 地盤堅固性」)をクリックすることにより、対応する機能項目の仕様化された性能判定基準、すなわち図26〜112の中から対応するテーブルを、表示画面に表示する。
そして、寄与率演算部1は、利用者の表示要求が入力されることにより、データベース4に記憶されている、この小項目に対応する機能評価の解説,関連法令及び性能判定基準の参考となる技術資料などを表示画面に表示するようにしてもよい。
また、利用者が野帳等の内容をコメントとして、図170の所見・メモ欄に記入することにより、寄与率演算部1が、演算された性能判定値とともに、この所見・メモ欄に書かれた文字データを、各小項目に対応させて、データベース4に記憶させるようにしてもよい。
そして、寄与率演算部1は、全ての小項目毎の各条項の規定の満足度が入力され、かつ各小項目毎の性能判定値の演算が終了すると、各小項目毎の性能判定値を示す棒グラフ等及び利用者の所見を画面に表示して、処理をステップS2へ進める。
【0081】
次に、ステップS2において、寄与率演算部1は、対応する中項目毎に設定された一対比較表のテーブルをデータベース4から読み出し、この一対比較表において、数値化された各機能項目(小項目)の尺度に基づき、この小項目の属する中項目毎に、各小項目の属する中項目における寄与率を、すでに述べた演算を行うことにより各々算出する。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、この演算した寄与率と、データベース4から読み出す、中項目各々に対応するλとから、各々の中項目のλ−ファジィ測度を求める。
次に、λ−ファジィ積分演算部2は、上記λ−ファジィ測度と、対応する中項目に属する小項目の性能判定値(利用者の入力した、小項目の機能項目の性能判定値)とから、すでに述べたようにλ−ファジィ積分演算を行い、この中項目の性能判定値の算出を行う。
【0082】
次に、ステップS3において、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層(すなわち、階層A,B,C,D)にわたり、全ての中項目の性能判定値の演算が終了したか否かの判定を行う。
このとき、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層のそれぞれの大項目にわたり、含まれる全ての中項目の性能判定値の演算が終了したと判定した場合、処理をステップS4へ進める。
一方、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層のそれぞれの大項目にわたり、含まれる全ての中項目の性能判定値の演算が終了していないと判定した場合、処理をステップS2へ戻し、各階層における残りの中項目の性能判定値の演算処理を進める。
そして、ステップS4において、寄与率演算部1は、演算した各中項目の性能判定値を、各中項目毎に対応させてデータベース4へ記憶させる。
【0083】
次に、ステップS5において、寄与率演算部1は、各階層における機能項目としての大項目毎に、データベース4から一対比較表のテーブルを読み出し、この一対比較表の数値化された尺度により、各中項目の各々属する大項目における寄与率を、すでに述べたλ−ファジィ積分演算により算出する。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、この演算した寄与率と、データベース4から読み出す、各々の大項目に対応するλとから、各々の大項目のλ−ファジィ測度を求める。
次に、λ−ファジィ積分演算部2は、上記λ−ファジィ測度と、対応する大項目に属する中項目の性能判定値(各大項目に属する中項目の、ステップS2で小項目の性能判定値から算出した性能判定値を用いる)とから、すでに述べたようにλ−ファジィ積分演算を行い、この大項目の性能判定値の算出を行う。
【0084】
次に、ステップS6において、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層にわたり、全ての大項目の性能判定値の演算が終了したか否かの判定を行う。
このとき、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層にわたり、各階層に含まれる全ての大項目の性能判定値の演算が終了したと判定した場合、処理をステップS4へ進める。
一方、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層にわたり、各階層に含まれる全ての大項目の性能判定値の演算が終了していないと判定した場合、処理をステップS2へ戻し、残りの大項目の性能判定値の演算処理を進める。
そして、ステップS7において、λ−ファジィ積分演算部2は、演算した各大項目の性能判定値を、大項目毎に対応させてデータベース4へ記憶させる。
【0085】
次に、ステップS8において、寄与率演算部1は、この機能項目としての階層毎に、対応する一対比較表のテーブルを読み出し、この一対比較表の数値化された尺度により、各大項目の各々属する階層における寄与率を、すでに述べたように算出する。
そして、λ−ファジィ積分演算部2は、この演算された寄与率と、データベース4から読み出す、各階層毎に対応するλとから、各々対応する大項目のλ−ファジィ測度を求める。
次に、λ−ファジィ積分演算部2は、上記λ−ファジィ測度と、対応する階層に属する大項目の性能判定値(各階層に属する大項目の性能判定値を用いる)とから、すでに述べたようにλ−ファジィ積分演算を行い、各階層の総合性能判定値の算出を行う。
【0086】
次に、ステップS9において、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層全ての総合性能判定値の演算が終了したか否かの判定を行う。
このとき、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層の総合性能判定値の演算が終了したと判定した場合、処理をステップS10へ進める。
一方、λ−ファジィ積分演算部2は、各階層の総合性能判定値の演算が終了していないと判定した場合、処理をステップS8へ戻し、残りの階層の総合性能判定値の演算処理を進める。
そして、ステップS10において、λ−ファジィ積分演算部2は、演算した各階層の総合性能判定値を、各階層A,B,C,D毎に対応させてデータベース4へ記憶させる。
【0087】
次に、ステップS11において、最適化分類部3は、上述した演算処理により算出された、各階層の総合性能判定値,大項目及び中項目の性能判定値をグラフ化して、すなわち、図171(一例として、各階層の評価のグラフ(例えば、レーダーチャート)として図171(a)と、階層Aの大項目の評価のグラフ(例えば、レーダーチャート)として図171(b))を作成し、表示画面に表示するとともに、各階層及び各大項目に対応させて、データベース4に記憶させる。そして、ステップS12において、最適化分類部3は、上述において作成された階層のグラフと、上述した総合性能判定値とをデータベース4から各々読み出し、階層のグラフ及び階層A,B,C,Dの総合性能判定値に基づいて、図24のグラフに評価対象の建物の最適化分類の演算を行う。
次に、ステップS13において、最適化分類部3は、上述において演算された判定結果(評価結果)として、図171に示すグラフにおけるように、判定された建物に対する最適化施策を示す象限にドットで表示し、かつドットの位置に対応して、このグラフの横に建物の総合所見を表示する。
【0088】
これにより、利用者は、建物の現在の性能と、最適化に必要な施策を確認することができる。
そして、利用者は、評価した建物に対して、階層A,B,C,D毎及び全階層において、実地調査を含めた建物の状況に対するコメントを、記入欄に記入することができる。
【0089】
そして、最適化分類部3は、上記コメントを、階層A,B,C,D毎及び全階層に対応させて、データベース4に記憶させる。
上述した処理により、本発明の建物性能総合評価システムは、複数の建物に対して、性能評価の結果が格納されているため、アクセスを許可された第三者が容易に、所定の建物における必要とする評価データを、階層,大項目,中項目,小項目毎に、詳細に得ることができる。
【0090】
上述してきたように、本発明の建物性能総合評価システムは、建築実務の現場からの要求に基づき、寄与率演算部1及びλ−ファジィ積分演算部2において、建物の機能項目に対する性能評価を、性能判定値を用いることにより定量的に行い、この定量的な評価結果によって、最適化分類部3が評価対象の建物の最適化の方向付け(最適化分類)を実現することができる。
また、本発明の建物性能総合評価システムは、上述したように、階層,大項目,中項目,小項目各々のレベルにおいて、性能評価を行うため、利用者が知りたい建物の性能要求を、各々独立して確認することができ、各機能項目毎にきめ細かい評価を行うことができる。
【0091】
また、本発明の建物性能総合評価システムは、FMサイクルの分析を通じて、独自に構築した機能項目構成に基づき、包括的な性能評価が可能な機能項目を選定し、各機能項目毎に、評価結果が数値化された性能判定値により上位項目の性能判定値を、λ−ファジィ積分演算部2が各機能項目毎にλ−ファジィ積分によって順次算出することにより、機能項目の相乗結果及び相殺効果を考慮した要求性能の検証を行うことができる。
なお、本実施形態の建物性能総合評価システムは、後に述べるように、上記の建物用途を超えて、社会的ストックとしての既存建物一般の有効活用への展開も可能である・
【0092】
次に、本発明の実施の形態によるコンピュータが実行するためのプログラムについて説明する。
図167のフローチャートに基づいて、図18における建物性能総合評価システムにおけるコンピュータシステムのCPUが実行するためのプログラムは、本発明によるプログラムを構成する。
このプログラムを格納するための記録媒体としては、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ、磁気記録媒体等を用いることができ、これらをROM、RAM、CD−ROM、フレキシブルディスク、メモリカード等に構成して用いてよい。
【0093】
また上記記録媒体は、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部のRAM等の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持するものも含まれる。
また上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから伝送媒体を介して、あるいは伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されるものであってもよい。上記伝送媒体とは、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体をいうものとする。
【0094】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
従って、このプログラムを図18のシステム又は装置とは異なるシステム又は装置において用い、そのシステム又は装置のコンピュータがこのプログラムを実行することによっても、上記実施の形態で説明した機能及び効果と同等の機能及び効果を得ることができ、本発明の目的を達成することができる。
【0095】
3.第2の実施形態の説明
以上、本発明の一実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
次に、第2の実施形態として、建物性能総合評価システムの適用条件及び適用領域の拡大を目的として、まず、本評価手法の適用項目を簡略化した手頃な評価手法とした。
・性能評価システムの簡略化
一実施形態においては、機能評価項目が90の小項目から構成されるため、建物保有組織によっては、時間的・経済的な事情等により、全項目の実施が困難な場合が発生することも想定される。
【0096】
このため、第2の実施形態としては、こうした事態にも対処できるよう、機能項目を簡素化しつつ、極力包括的な性能評価を可能とする。
簡略化の課題は、本発明の建物性能総合評価システムにおいて、評価に必要な機能の構造を比較的忠実に保持し、且つ簡素な構成として推奨できる機能項目表(以下、「簡易項目表」という。)の作成により解決される。
すなわち、第2の実施形態による建物性能総合評価システムは、図18のブロック構成であり、構成要素としては一実施形態と同様であり、各機能項目における性能判定値の算出の動作も同様であり、異なるのはデータベース4に格納されている、性能評価に用いる機能項目の数が異なるのみである。
以下に、性能評価に用いる機能項目の削減の手法について述べる。
【0097】
(1)原則
同一レベル毎に、寄与率とλとの大きさの組合せに基づいて機能項目の絞り込みを行う。
・原則−1:λが大(=相乗効果が小)の場合は、寄与率が小の項目を省略しても、上位項目の性能判定値への影響は小さいため、寄与率が下位の項目の削除を比較的大胆に行うことができる。
・原則−2:λが小(=相乗効果が大)の場合は、上位項目の性能判定値への影響に配慮し、寄与率が小の項目であっても、その削除については慎重に判断する必要がある。
【0098】
(2)調整
(1)の原則のみでは機能項目の絞り込みを十分に実施できない場合は、次の調整を併用し、更に絞り込みを行う。なお、調整により削除された機能項目については、性能判定値の向上に必要な施策のうち主要な施策を整理し、実行管理を別途行うことにより対応する。
・調整−1:原則−2の対象となる機能項目毎に、性能判定値の向上に必要な施策の経済的・時間的難易度を検討し、比較的軽微な施策で実現可能な機能項目を削除する。
・調整−2:根拠となる社会的基準が大幅に変更になり、既存建物の性能が低いことが評価の実施前から明らかな機能項目を削除する。
【0099】
上述した考え方を適用した絞り込みの内容は以下に示す通りである。
A.安全・信頼性
(1)調整−2により、大項目の中からA−5.雷害安全・信頼性を削除する。
(2)原則−1により、中項目の中からA−1−2.緊急対応性、A−1−3.公害回避性、A−2−2.耐風性、A−4−2.雨漏り防止性、A−6−3.防犯性、A−7−2.電磁波障害防止性及びA−7−3.騒音・振動防止性を削除する。
(3)調整−3により、中項目の中からA−2−3.耐雪性及びA−2−4.耐寒性を削除する。
(4)原則−1により、小項目の中からA−1−1−3.爆発・延焼等回避性、A−6−1−2.転倒防止性、A−6−1−2.危険物障害防止性、A−6−2−3.給水給湯品質安全性及びA−6−2−4.排水処理安全性を削除する。
【0100】
B.快適・利便性
(1)調整−4により、大項目の中からB−1.立地快適性を削除する。
(2)原則−1により、中項目の中からB−3−1.構造快適性、B−3−3.内装快適性、B−4−1.照明快適性及びB−6−1.執務利便性を削除する。
(3)調整−1及び調整−4により、小項目の中からB−3−2−1.面積快適性を削除する。
(4)原則−1により、小項目の中からB−4−2−4.音環境快適性を削除する。
(5)調整−1により、小項目の中からB−5−1−2.情報端子対応性、B−5−1−3.情報配線対応性及びB−5−1−4.画像障害防止性を削除する。
【0101】
C.社会性
(1)原則−1により、中項目の中からC−2−2.企業理念伝達性を削除する。
(2)原則−1により、小項目の中からC−1−1−2.風害防止性、C−1−1−4.騒音障害防止性、C−1−1−5.排気障害防止性、C−1−1−6.排水障害防止性及びC−1−1−7.外構維持保全性、を削除する。
D.資産性
(1)原則−1により、大項目の中からD−1.権利保全性を削除する。
【0102】
以上の簡易化の操作により作成した簡易項目表を図168.169に示す。
図168.169の簡易項目表において、機能項目としての小項目数は、一実施形態の機能項目表の90項目に対し、約1/3の33項目に圧縮されている。小項目の性能判定値に基づいて、中項目,大項目及び階層の性能判定値(総合性能判定値)の求め方は、一実施形態と同様である。
ここで、図168.169の簡易項目表の適用上の留意点は次の通りである。(1)簡易項目表は、一実施形態の機能の構造を保持するとの条件の下に、一実施形態における機能項目表を根拠として作成したものである。このため、各寄与率の相対的関係及びλの値は変更しないものとする。
したがって、図168.169の簡易項目表における寄与率は、上述した考え方に従い、各ランクの合計が1になるような修正のみを施したものである。
(2)小項目6−1−1の調整により、簡易項目表から除外した機能項目については、主要な最適化施策を定型化し、その実行管理を徹底する。
【0103】
(3)階層A・B・Cの総合性能判定値の最悪値が2以上の場合における最適化施策の選択に際しては、簡易項目表を適用する場合においても、一実施形態と同様に、実施難易度が判断基準となる。
(4)簡易項目表を適用する場合においては、最適化施策に(2)の施策も加える必要がある。
その場合は、一実施形態の機能項目の構造に基づき展開した結果との一貫性を保持するため、当該施策が本来帰属する機能項目に従って判断するものとする。
【0104】
4.本発明における性能評価対象の一般化
次に、本評価システムの性能評価プロセスを基本にして、任意の用途の建物に適用可能な性能評価プロセスと機能項目設定方法の一般化の処理、及びその注意点について説明する。
図173に示す建物性能評価プロセスのフローを示し、この本評価手法におけるプロセスは、建物の用途に関わりなく適用され、かつ、すでに述べたように、適用項目(評価する機能項目)を絞っても同様である。
以下、評価プロセスと機能項目設定方法の一般化とを開示し、併せて評価における留意点を明確とする。
【0105】
任意の用途の建物における図173のプロセスフローの適用に際しては、[1]の機能階層の設定はすでに述べた評価手法で採用したA.安全・信頼性、B.快適・利便性、C.社会性及びD.資産性をそのまま適用する。
また、[2]〜[4]が本発明の核心部分であり、[2]の設定方法の一般化について述べる。
[3]及び[4]については、[2]を基本的枠組みとすれば、作成はさほど困難ではないと考えられる。[5]〜[12]は第1の実施形態で述べた評価手法を準用する。
また、[6]では一対比較が必要となるが、第1の実施形態で述べた評価手法と共通の項目についてはその結果を援用することができる。
【0106】
そして、建物機能の一般的表現を追求することにより、図173の[2]の方法の一般化を行う。
ここで、機能表現の一般化は、図4に示す建物機能の考え方を発展させることにより、行うことが可能である。
図4のテーブルにおいては、電気通信事業用及び事務所用という建物用途を前提として、考えられる機能項目を各階層・段階の枠組みの中に当てはめるという演繹的手法に拠った。
これに対して、評価対象の建物用途を特定しない機能項目の想定は、図4のテーブルの各機能の表現を帰納的手法で一般化する作業により行う。
このような作業により拡張された諸要素(以下「機能要素」という。)は、基本計画条件(事業上の要請に基づく建物の用途・性格、対象者、利用形態、規模及び運営方式等の総称。以下同じ。)への適合性の観点から設定した次の9つの要素である。
▲1▼ 立地及び敷地
立地条件及び敷地の規模・形状・地盤等を表わす。建物を基本計画条件に適合させるために最初に考慮すべき要素である。なお、一般的にはこれと反対に、土地が先にあってその最適な利用形態としての建物用途を検討する場合もある。本発明では前者の場合のみを対象とするが、立地及び敷地と基本計画条件との対応関係という点では、両者は本質的に同じである。それは、土地価格が最有効利用に基づいて決定されるという原則にも合致している。
【0107】
▲2▼ 建物配置及び外部空間配分
敷地が基本計画条件に適合した最高度の性能を発揮するための、建物と外部空間(通路・広場・庭園等)との最適な配分をいい、いわゆる建物配置と外構計画に相当する。これらは、安全性、快適・利便性及び社会性に広く関わっている。
▲3▼ 内部空間配分
建物が基本計画条件に適合した最高度の性能をを発揮するための、内部空間(諸室・経路等)の最適な配分をいい、いわゆる平面・断面計画に相当する。主として安全性及び快適・利便性に関わる他、敷地外部に面する空間では社会性にも関連がある。
【0108】
▲4▼ 構造
基本計画条件に適合した構造形式、設計用積載荷重、開口、スパン、階高及び躯体・外装の外皮機能(防水・断熱等のシェルター機能)をいい、主として安全性や利便性に関わる。安全性では、建物の造りに起因する日常災害の防止にも関連がある。
▲5▼ 附属設備容量・能力・方式
基本計画条件に適合した附属設備の容量・能力・方式をいい、主として快適・利便性に関わるが、附属設備全般の安全性や環境保全面での社会性にも関連がある。
【0109】
▲6▼ 区画
基本計画条件に適合した区画をいい、主として安全性及び利便性に関わる。
▲7▼ 動線・系統
建物内外の人・物・エネルギー・情報の出入や循環に関わる動線・系統をいい、建物を人に例えれば、新陳代謝の経路に相当する。主として安全性や利便性に関わるが、搬出入経路や敷地出入口の近隣への影響度のように、社会性にも関連がある。
▲8▼ 単位空間
部屋別要求条件に相当し、基本計画条件及び各空間用途に適合した形状、寸法・規模、内装及び環境等の、当該空間毎に満足すべき機能をいう。
【0110】
▲9▼ 心理的影響度
安全性の代わりに安心感、快適・利便性の代わりに満足感・喜び、社会性の代わりに親しみ・誇りといった、主として建物に対する肯定的な情緒反応をいい、利用者満足度の概念を拡張したものと考えることができる。これらを定量化することは容易ではないが、個々の建物に対する具体的な記述を展開すれば、その建物の基本コンセプトとして、あるべき姿を端的に表現できるため、他の指標の充足度の確認に有効と考え、参考指標として追加した。
上述した▲1▼〜▲9▼の考え方により、図4のテーブルを一般化したものが図174,175である。
この図174,175のテーブルにおいては、各行は図4のテーブルのようなFMサイクルの各段階ではなく、上述した▲1▼〜▲9▼の9つの機能要素を表わしている。
【0111】
次に、以下に示す9種類の建物用途において、図174,175のテーブルにおいて想定した一般化された建物機能の個別展開を行う。
▲1▼ 集合住宅(マンション)
▲2▼ 宿泊・集会施設(ホテル)
▲3▼ 医療施設(病院)
▲4▼ 教育施設(小・中・高等学校)
▲5▼ 文化施設−1(美術館)
▲6▼ 文化施設−2(劇場)
▲7▼ スポーツ施設(競技場)
▲8▼ 物販・飲食施設(百貨店)
▲9▼ 産業用施設(工場)
【0112】
なお、本評価手法では建物の性能は保有者の視点で評価するが、この本発明の評価の基本概念において述べた通り、それは建物の利用者・関係者や社会一般の評価を包含し反映させたものでなければ、精度の高い評価を行ったこととならない。
従って、拡大された建物用途を対象とする、評価法の一般化においては、これら評価を行う人々を整理しておくことが有意義である。
上記▲1▼集合住宅から▲9▼産業用施設まで、9種類の用途の建物評価に関わる人々は、概ね図176の代表的な建物用途とその評価に関わる人(外部関係者及び入居者,補助者,利用者そして事業関係者)との対応関係のテーブルに示す通りである。
【0113】
図177,178,179のテーブルには、▲1▼集合住宅(マンション)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図177,178,179のテーブルにおいては入居者層,家族構成及び利用者の生活様式をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
図180,181,182のテーブルには、▲2▼宿泊・集会施設(ホテルなど)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図180,181,182のテーブルにおいてはホテルの性格,利用形態をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
【0114】
図183,184,185のテーブルには、▲3▼医療施設(病院)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図183,184,185のテーブルにおいては病院の性格,医療内容及び患者の行動特性をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
図186,187,188のテーブルには、▲4▼教育施設(小学校・中学校・高等学校など)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図186,187,188のテーブルにおいては学校の種類,教育方針及び教育内容をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
【0115】
図189,190,191のテーブルには、▲5▼文化施設−1(美術館)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図189,190,191のテーブルにおいては展示,鑑賞,教育及び研究活動をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
図192,193,194のテーブルには、▲6▼文化施設−2(劇場)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図192,193,194のテーブルにおいては鑑賞,憩い,社交及び伝統をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
【0116】
図195,196,197のテーブルには、▲7▼スポーツ施設(競技場)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図195,196,197のテーブルにおいては競技,娯楽,鑑賞,集会及び管理をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
図198,199,200のテーブルには、▲8▼物販・飲食施設(百貨店)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図198,199,200のテーブルにおいては買い物,飲食,文化及び生活をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
図201,202,203のテーブルには、▲9▼産業用施設(工場)の評価すべき項目の個別展開した機能表現が、各階層単位に建物の機能要素毎に示されている。この図201,202,203のテーブルにおいては基本レイアウト,細部レイアウト,作業環境及び公害防止をキーワードとして、1〜9の各機能要素の項目内容が設定されている。
【0117】
上述した図177〜図203のテーブルで示されているように、図174,175における9つの機能要素に基づいて、一般化の例として9種類の建物の用途の別に関わらず、建物機能を共通の表現形式において、かつ網羅的に評価内容を記述することができる。
そして、図177〜図203の機能要素に対応させ、性能評価を行う機能項目として、すでに図26〜図116のテーブルに示した形式により、各階層毎に大項目・中項目・小項目を抽出し、一対比較表及びλの数値等の必要なデータをデータベース4に設定することにより、図18に示した建物性能総合評価システムにより、一般化した建物評価を実現することができる。
【0118】
上述したように、本発明の建物性能総合評価システムは、上述してきたように事業所の建物の性能評価の観点で説明したが、性能判定を行う機能項目の内容を、目的とする建物、例えば、集合住宅(マンション等),宿泊・集会施設(ホテル等),医療施設(病院等),教育施設(小,中,高等学校等),文化施設(美術館及び劇場等),スポーツ施設(競技場等),物販・飲食施設(デパート等),産業用施設(工場等)に対応させることで、建物の種類毎に個別展開することが可能であり、いずれの種類の建物機能の判定に用いることもできる。
【0119】
5.みなし仕様と性能判定基準とのテーブルの説明
次に、予めデータベース4に格納(登録)されている性能判定値と、この性能判定値を得るための性能判定基準を説明する。
以下の説明において、図14〜図17のテーブルにおける性能判定に用いる機能項目の分類に対応して、階層A,B,C,Dの順番に順次行っていく。
5.1 階層A:安全・信頼性のみなし仕様及び性能判定基準
A―1.立地安全・信頼性(大項目)
A―1―1.災害回避性(中項目)
A―1―1―1.地盤堅固性(小項目)
・要求性能の説明
建物の敷地は、沈下及び崩壊並びに地震による液状化及び亀裂等を回避できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図26(a)に示すみなし仕様)
建物の敷地は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.盛土をした敷地であってはならない。
b.がけ崩れ等による被害を防止できる擁壁の設置等の措置が講じられていなければならない。
c.砂地盤等を避け、堅固な支持地盤を有していなければならない。堅固な地盤でない場合は、地盤改良処理が施されていなければならない。
d.活断層の直上及び直近を避けて立地していなければならない。
e.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、劣化又は状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―1―1―1.地盤堅固性」の性能判定値及び性能判定基準は、図26(b)のテーブルに記載されており、上述した図26(a)のテーブルのみなし仕様のa〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、仕様のいずれかが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0120】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、地震時の建物の異常な挙動や経年による沈下等を防止できる堅固な地盤性状を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建物の敷地が堅固な地盤性状を有していない場合は、地盤改良により、所期の性能が確保されていなければならない。
3.建物の敷地が活断層の直上又は直近に立地している場合は、地盤改良によっても所期の性能を確保できないため、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
4.盛土の有無や擁壁の現状は、設計図書及び現地調査により確認する。
5.支持地盤は、柱状図により確認する。
6.活断層の有無は、市販の活断層図により確認する。
【0121】
A―1―1―2.水害回避性
・要求性能の説明
建物の敷地は、河川・内水の氾濫や高潮・津波等による影響を回避できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図27(a))
建物の敷地は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.地方公共団体から災害危険区域に指定された区域に立地してはならない。
b.谷あい若しくは河川又は海岸の直近に立地してはならない。
c.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―1―1―2.水害回避性」の性能判定値及び判定基準は、図27(b)のテーブルに記載されており、上述した図27(a)のテーブルのみなし仕様のa〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様のいずれかが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0122】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、河川・内水の氾濫や高潮・津波等による水没や浸水の危険の少ない立地性や形状を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建築基準法第19条では、敷地の衛生及び安全の観点から敷地と道路との関係を規定している。また、同法第39条では、地方公共団体が条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい地域を災害危険区域として指定することができる旨を規定している。
3.建物の敷地が水没や浸水の危険の少ない立地性や形状を有していない場合は、建物又は室のレベルで、水没や浸水の防止が確保されていなければならない。これについては「A−4−1.水防性」の項を参照のこと。
4.建物の敷地が水没や浸水の危険の著しく大きい場合は、建物又は室のレベルでは所期の性能を確保できないため、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
5.災害危険区域指定の有無は、当該地方自治体に確認する。
6.立地条件は、地形図及び現地調査により確認する。
【0123】
A―1―1―3.爆発・延焼等回避性
・要求性能の説明
建物の敷地は、近隣の爆発及び炎上等による災害の波及を回避できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図28(a))
建物の敷地は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.爆発又は炎上等の恐れのある施設から、十分な距離を有していなければならない。
b.木造家屋密集地に隣接した立地又は木造家屋密集地と道路一本を隔てた立地であってはならない。
c.前項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―1―1―3.爆発・延焼等回避性」の性能判定値及び判定基準は、図28(b)のテーブルに記載されており、上述した図28(a)のテーブルのみなし仕様のa〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様のいずれかが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0124】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、近隣の爆発及び炎上等による災害の波及の可能性の低い立地性を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.爆発又は炎上等の恐れのある施設は、建築基準法・同施行令に定める危険物の製造・販売・貯蔵施設のみでなく、危険物となり得る物品を取り扱う各種工場、処理場、研究所等様々で特定が困難なため、因果関係の明確な火薬関係施設及び木造住宅密集地に限定する。なお、ガソリンスタンドは、事故が皆無といえる状況にあるため対象に含めない。
3.消防法では、第2条及び別表で危険物の類別、性質及び品名を規定し、危険物の規制に関する政令で、取り扱い等を含め、詳細を規定している。消防法別表による危険物の内訳は、酸化性、可燃性、発火性、引火性及び自己反応性等を有する物質であり、危険物の規制に関する政令で追加指定を行っている。
4.都市計画法では、開発行為の許可に関連して、第34条で、危険物の貯蔵又は処理に供する建築物等で主に火薬類に関するものを、市街化区域内において建築し又は建設することが不適当なものとし、市街化調整区域内において建築を許可する旨を規定している。
したがって、本判定方法を適用するファシリティが市街化調整区域に立地する場合は、近隣に火薬類に関する施設がないかどうかを確認する必要がある。
5.建物の敷地が近隣の爆発及び炎上等による災害の波及の可能性の低い立地性を有していない場合は、建物又は室のレベルでは所期の性能を確保できないため、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
6.上記と反対に、本判定方法を適用するファシリティの敷地内に危険物を貯蔵する場合については「A−3−1−2.内部火災拡大防止性」及び「A−6−1−5.危険物傷害防止性」の項を参照のこと。
7.爆発又は炎上等の恐れのある施設の有無は、地図及び現地調査により確認する。「十分な距離」の目安としては、化学工場で300m、火薬工場で1.5kmの住宅被災事例を参考とする。
【0125】
A―1―2.緊急対応性
A―1―2―1.道路接続性
・要求性能の説明
建物の敷地は、緊急時の避難、消火活動、通信装置の保守及び物品の搬出入等が円滑に行えるような道路接続性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図29(a))
建物の敷地は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.幅員が6m以上且つ両側通行で自動車専用道路又は高架道路以外の公道に6m以上接していなければならない。
b.消防車及び工事車両等の進入が容易な経路を有していなければならない。
c.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―1―2―1.道路接続性」の性能判定値及び判定基準は、図29(b)のテーブルに記載されており、上述した図29(a)のテーブルのみなし仕様のa〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様のいずれかが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0126】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、前面道路の幅員、形状、通行条件、接道長さ及び敷地との高低差等において常時及び非常時の安全を確保できる性能を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建築基準法第43条では、前項の観点から敷地と道路との関係を規定している。
3.建物の敷地が要求される道路接続性を有していない場合で、敷地内の空地の確保又は敷地の一部提供による道路拡幅等により要求性能を満足できる場合は、改善提案及び行政庁との協議を行わなければならない。
4.建物の敷地が要求される道路接続性を有していない場合で、かつ、道路の広範囲の幅員不足又はその道路と他の道路との接続上の問題等のために、前項の対策によっては所期の性能を確保できない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
5.接道状況及び車両進入経路は、建築現況図、地図及び現地調査により確認する。
【0127】
A―1―3.公害回避性
A―1―3―1.環境無害性
・要求性能の説明
建物の敷地は、人体の健康上及び衛生上安全な品質を確保できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図30(a))
建物の敷地は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.大気中の有害物質の含有量は、大気汚染に係る環境基準を満足していなければならない。
b.土壌中の有害物質の含有量は、土壌汚染に係る環境基準を満足していなければならない。
c.地下水を使用している場合、地下水中の有害物質の含有量は、地下水に係る環境基準を満足していなければならない。
d.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―1―3―1.環境無害性」の性能判定値及び判定基準は、図30(b)のテーブルに記載されており、上述した図30(a)のテーブルのみなし仕様のa〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様のいずれかが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0128】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、大気汚染及び騒音、振動等の人体及び通信機器等に有害な影響を及ぼす要因のない立地性を有していなければならない。また、土壌や地下水が人体に有害な物質によって汚染されていてはならない。これらは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建築基準法及び消防法等に規定する危険物のうち、有害ガスを発生するものはこの項の対象となる。
3.都市計画法第4条では、周辺の地域の環境の悪化をもたらすおそれがある施設を「特定工作物」として規定し、都市計画法施行令で詳細を規定している。4.大気汚染防止法では、大気汚染の原因となるばい煙、粉じん、有害大気汚染物質及び自動車排出ガスを定義するとともに、それらの処理施設、排出基準及び総量規制基準等について規定している。
5.建物の敷地が騒音、振動等の問題がある場合で、建物又は室のレベルでそれらの防止を確保できる場合については「A−7−3.騒音・振動防止性」の項を参照のこと。
6.敷地が有害物質を取り扱う工場や廃棄物処理場の跡地である場合又はそれらの施設が近接している場合は、土壌及び地下水の汚染の可能性がある。
7.環境庁告示第46号(平成3年8月23日)では、土壌や地下水の有害物質の含有量を規制している。また、地方自治体の中には、この告示に基づきながら独自に規制値を定めている所もある。
8.建物の敷地の土壌や地下水が人体に有害な物質によって汚染されている場合は、土壌改良等により、所期の性能が確保されていなければならない。
9.大気が著しく汚染され、換気に支障のある場合、又は騒音、振動等が著しい場合は、建物又は室のレベルではそれらの防止を確保できないため、建物の敷地が要求される環境無害性を有していない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
10.建物の敷地の土壌や地下水の人体に有害な物質による汚染が土壌改良等によっても解消さ
れない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
11.「地域の環境の悪化をもたらすおそれがある施設」及び「騒音、振動等により他周辺の地域の環境の悪化をもたらすおそれがある施設」の立地状況は、地図及び現地調査により確認する。
12.土壌中の有害物質及び地下水中の有害物質の調査は、環境計量士の有資格者に委託して実施する。敷地が工場跡地や埋立地である場合は、特に注意して実施する。
【0129】
A―2.構造安全・信頼性
A―2―1.耐震性
A―2―1―1.地震損傷防止性(建物・鉄塔)
・要求性能の説明
建物(図31(a),(b))及び鉄塔(図31(c))は、地震力から生命、財産及び設備を保護できる次の性能を有していなければならない。
図31(建物及び鉄塔の各震度に対する要求性能が示されている)において、公共性の高い建物(役所,病院、駅など)を重要ビルとして定義し、それ以外の建物を一般ビルと定義している。
・要求性能の仕様化(図32(a))
建物及び鉄塔は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.建物の耐震性能級別は、I級でなければならない。
b.屋上鉄塔(複数ある場合はすべて)の耐震性能級別は、I級又はII級でなければならない。
c.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―2―1―1.地震損傷防止性(建物・鉄塔)」の性能判定値及び判定基準は、図32(b)のテーブルに記載されており、上述した図32(a)のテーブルのみなし仕様のa〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様のいずれかが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0130】
・みなし仕様の解説
1.建物・鉄塔の地震損傷防止性(耐震性)は、人命及び電気通信設備の安全性を確保するため重要である。
2.耐震性については、建築基準法第20条(構造耐力)で他の外力や荷重に対する耐力とともに規定しているほか、階数が3以上でかつ床面積の合計が1千m以上の事務所は、建築物の耐震改修の促進に関する法律第2条で規定する特定建築物に該当し、所有者に対して、耐震診断及び耐震改修を行う努力が課せられている。
3.建築基準法施行令では、第81条(適用)〜第88条(地震力)で構造計算方法を規定している。
4.NTTの建物及び鉄塔については、法令及び技術資料に基づき、耐震性、設計方法、耐震診断及び耐震改修(補強)等について規定している。
5.建物の地震損傷防止性(耐震性能)は、(4)の耐震診断に基づき、IからVまでの5段階
の耐震性能級別で区分する。性能級別の区分は構造調査の結果をもとに、保有性能基本指標、形状指標及び経年指標に基づいて算出した構造耐震指標の数値により区分して実施する。性能級別I級以外は耐震性能が不足している。
6.鉄塔の地震損傷防止性(耐震性能)は、(4)の耐震診断に基づき、IからVまでの5段階の耐震性能級別で区分する。性能級別の区分は、建物に準じて地震荷重に対する鉄塔強度指標の数値により区分して実施する。性能級別I級又はII級以外は耐震性能が不足している。
7.耐震級別は、建物及び鉄塔の耐震データにより確認する。
【0131】
A―2―1―2.地震損傷防止性(建物附属設備)
・要求性能の説明
建物附属設備は、地震力から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図33(a))
建物附属設備は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.エレベータを除く機器、配管、配線及び風道は次の震度に対して安全でなければならない。
(注)1.()内は防振設置機器の場合を示す。
2.高層建物等で、動的解析により設計用地震荷重を設定している場合は、個別に安全性を確認しなければならない。
b.エレベータは、次の水平震度及び鉛直震度(水平震度の1/2)に対して安全でなければならない。
c.通信用空調機は、通信用設備に準じた耐震設計目標に基づいて設計されていなければならない。
d.各種蓄電池は、定期的に交換されていなければならない。
e.発動発電装置用蓄電池は、シール鉛蓄電池又は現行工法で設置された液式鉛蓄電池となっていなければならない。
f.発動発電装置近傍に、補水水槽が設置されていなければならない。
g.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、劣化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―2―1―2.地震損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図33(b)のテーブルに記載されており、上述した図33(a)のテーブルのみなし仕様のa〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様のいずれかが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0132】
・みなし仕様の解説
1.建物附属設備の地震損傷防止性(耐震性)は、建物・鉄塔と並んで人命及び電気通信設備の安全性を確保するために重要である。
2.建物附属設備の耐震性については、建築基準法では、第2条で建築物の定義に建築設備を含むため、建築本体と併せて建築基準法第20条(構造耐力)で規定していると考えることができる。その他には、第32条(電気設備)及び第34条(昇降機)で構造安全性について間接的に言及している。
3.建築基準法施行令では、第39条の2(屋上から突出する水槽等)、第129条の2の2(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)、第129条の2の4(冷却塔設備)及び第129条の4(エレベーターの主索、綱車、巻胴、支持ばり及びレールの構造)等で耐震性について規定している。
4.屋上水槽及び煙突等については、建築基準法施行令(昭和25年 政令第338号)第39条の2の規定に基づき、建設省告示第1101号(昭和56年6月1日)で、外力の算定等について規定している。
5.高さが6mを超える煙突については、建築基準法施行令(昭和25年 政令第338号)第39条の2の規定に基づき、建設省告示第1104号(昭和56年6月1日)で、外力の算定等について規定している。
6.NTTの建物附属設備については、建物・鉄塔に準じて法令及び技術資料に基づき、耐震性、設計方法、耐震診断及び耐震改修(補強)等について規定している。中でも、電気通信設備の安全性の観点から、通信用空調設備、非常用電源設備及び屋上水槽等に高い耐震性を要求している。
7.建物附属設備の地震損傷防止性(耐震性)の確認は、次の通り実施する。
▲1▼ 設備現況図及び現地調査により、耐震金物等による補強の状況を確認する。
▲2▼ 建物等維持管理業務報告書及び土地・建物データシート等により、エレベータの耐震対策実施状況を確認する。
▲3▼ 電力設備現況図及び現地調査により、蓄電池及び補水水槽等の状況を確認する。
▲4▼ 定期点検報告書を参照する。
【0133】
A―2―1―3.地震損傷防止性(二次部材等)
・要求性能の説明
二次部材等は、地震力から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図34(a))
二次部材等は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.二次部材等は、次の震度に対して安全でなければならない。
b.液状化の恐れのある地域における塀は、コンクリートブロック塀又は鉄筋コンクリート塀ではなく、金網柵、鋼管柵又は金属製のルーバーフェンスが使用されていなければならない。また、コンクリートブロック塀は液状化の恐れのない地域でも使用されてはならない。
c.液状化の恐れのある地域では、コンクリート舗床は建物際や塀際に密着させず、築庭・砂利敷等で分離されていなければならない。
d.液状化の恐れのある地域では、とう道の継ぎ手はゴム製の可とう継ぎ手の採用等、不等沈下に対応可能な構造でなければならない。
e.下地の伸縮やクラックに対応するため、アスファルト防水層は絶縁工法が採用されていなければならない。
f.エキスパンションジョイントは正確に把握された変位量に合ったものでなければならない。
g.RC躯体が排気筒として使用されている場合は、その躯体は一般ビル本体と同等の地震損傷防止性を有し、且つ地震時の躯体の変形に十分に追随できるライニング材が併用されていなければならない。
h.通信機械室等は、次の各仕様を満足していなければならない。
▲1▼ 床及び直上階の床には、塗膜防水材が使用されていなければならない。
▲2▼ 室内のRC壁仕上には、モルタルが使用されてはならない。
▲3▼ 室内の耐震壁の周囲には、復旧工事用スペースが確保されていなければならない。
▲4▼ 室まわりの間仕切壁には、ブロック積み間仕切壁が使用されてはならない。
▲5▼ 軽量壁には、家具及び備品類の固定のため、下地金物の位置がわかるようにマーキングや色分けの表示等がされていなければならない。
▲6▼ 通信機械室室及び災害時の拠点室等の重要室の固定ガラス及び避難等に影響の大きい欄間のガラスには、飛散防止フィルムが貼られていなければならない。
i.RC壁に囲まれた避難上重要な扉は、枠が変形しても開閉が可能なように欄間や耐震扉が使用されていなければならない。
j.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、劣化又は状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―2―1―3.地震損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図34(b)のテーブルに記載されており、上述した図34(a)のテーブルのみなし仕様a〜jを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜jのうちいずれか4つ以下が満足されていない場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜jのうちいずれか5以上満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0134】
・みなし仕様の解説
1.建物等が倒壊に至らない場合であっても、二次部材(間仕切、ガラス、天井及び塀等)に倒壊、落下、破損又は変形等が発生すると、人命に重大な危害を与えるほか、電気通信設備の障害や雨漏り等の原因となる場合がある。また、設備による二次災害の危険もある。
2.建築基準法施行令では、第39条(屋根ふき材等の緊結)、第39条の2(屋上から突出する水槽等)及び第115条(建築物に設ける煙突)等で二次部材の耐震性について規定している。
3.ガラスに関しては、日本建築学会が、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS 17 ガラス工事」の中で耐震性及び計算方法等について規定している。
4.二次部材全般に対しては、日本建築学会が、「非構造部材の耐震設計指針」で耐震性及び計算方法等について規定している。
5.NTTの建物等の二次部材については、阪神・淡路大震災の検討結果も反映させ、技術資料で耐震性及び設計方法等について規定している。
6.二次部材等の地震損傷防止性(耐震性)の確認は、次の通り実施する。
▲1▼ 液状化の恐れの有無は、柱状図及び当該地方自治体の液状化マップにより確認する。
▲2▼ その他の項目は、設計図書、現況図及び現地調査により確認する。
【0135】
A―2―2.耐風性
A―2―2―1.暴風損傷防止性(建物・鉄塔)
・要求性能の説明
建物及び鉄塔は、暴風から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図35(a))
建物及び鉄塔は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.地域特性、受風面積、形状、地上高及び取付け状況に応じて、適切に設定された風圧力に基づいて設計されていなければならない。
b.暴風による変形は、支障となる範囲未満でなければならない。
c.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、劣化又は状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―2―2―1.暴風損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図35(b)のテーブルに記載されており、上述した図35(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0136】
・みなし仕様の解説
1.風圧力は地震力と並んで建物等に作用する外力であり、耐風性は耐震性と並んで人命及び電気通信設備の安全性を確保するために重要である。
2.風圧力は一般に、変形量の大きい鉄骨造の建物及び鉄塔において構造設計上主要な要素となる。これらの建物等では、地震力でなく、風圧力が最大の外力となることが多い。これに対してコンクリート系の建物では、質量が大きく且つ剛性が高いため、地震力が最大の外力となる。
3.耐風性については、建築基準法第20条(構造耐力)で地震力を含む他の外力や荷重に対する耐力とともに規定している。
4.建築基準法施行令では、第39条(屋根ふき材等の緊結)、第39条の2(屋上から突出する水槽等)等で耐震性とともに耐風性について規定するとともに、第87条で風圧力について規定している。
5.NTTの建物及び鉄塔については、法令及び技術資料に基づき、耐風性及び設計方法等について規定している。
【0137】
A―2―2―2.暴風損傷防止性(構築物等)
・要求性能の説明
構築物等は、暴風から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図36(a))
高置水槽、給水塔、袖看板、自立型表示板、旗竿、予備エンジン排気筒、鋼製煙突及び外灯等の構築物等(二次部材で屋外に面するものを含む。)は、次の各仕様等を満足していなければならない。
a.地域特性、受風面積、形状、地上高及び取付け状況に応じて、適切に設定された風圧力に基づいて設計されていなければならない。
b.自立型構築物等の基礎の形状、寸法、土中深さ及び基礎への埋込及び取付け方法等は、風圧力による引抜き及び破断等に耐える構造でなければならない。
c.建物の屋上及び外壁等に取付けた袖看板等の構築物等は、風圧力による引抜き及び破断等に耐える構造でなければならない。
d.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、劣化又は状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「A―2―2―2.暴風損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図36(b)のテーブルに記載されており、上述した図36(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0138】
・みなし仕様の解説
1.構築物等(高置水槽、給水塔、袖看板、自立型表示板、旗竿、予備エンジン排気筒、鋼製煙突及び外灯等〔二次部材で屋外に面するものを含む。〕)をいう。この項において以下同じ。)は、建物等が十分な耐風性を有している場合であっても、暴風による飛散、落下等や変形を生ずる場合がある。特に、飛散、落下等により構築物等が人や物に衝突すると、人命や財産に重大な危害を生じる。このため構築物等には建物等に劣らない耐風性が求められる。
2.構築物等の耐風性については、建築基準法では第2条で建築物の定義に建築設備を含むため高置水槽や給水塔等については建築本体と併せて建築基準法第20条(構造耐力)で規定していると考えることができるが、その他の構築物の耐風性については明確な規定はない。
3.建築基準法施行令では、第39条(屋根ふき材等の緊結)、第39条の2(屋上から突出する水槽等)等で耐震性とともに耐風性について規定している。4.構築物等の耐風性を確保するための設計方法や構造計算方法についての体系的な規定は法令にはないが、一般的には次の通りである。
▲1▼ 構築物等が設置される地域の特性、地上からの高さ及び風向等に応じて、構築物等に作用する風圧力を最大瞬間風速に基づいて適切に設定する。
▲2▼ 基礎の深さ、形状及び寸法等(構築物等を基礎に埋め込む場合はその埋め込み深さを含む。)の適切な選定を行う。特に、外灯等の高さのある構築物等にあっては、基礎は上記に加えて構築物等の寸法とのバランスや地盤性状等に十分配慮して設計する。
▲3▼ 適切に設定された風圧力に応じて、取付けボルト等の本数、径、埋め込み長さ及び配置等の適切な選定を行い、引抜き及び破断等に対する耐力を確保する。
▲4▼ 構築物等が袖看板のように受風面積の大きな物である場合は、前各号に加えて、構築物等自体の耐風圧強度を確保し、暴風による破壊又は過度の変形が生じないようにする。
5.二次部材で外部に面するもののうち、ガラスに関しては、日本建築学会が、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS 17 ガラス工事」の中で耐風性及び計算方法等について規定している。なお、ガラスについては、暴風時にはガラス自体の強度を確保すると同時に、他の飛来物の衝突を防止するための措置も必要である。
【0139】
これ以降は、仕様化された要求性能については、図を参照することとし、「発明の詳細な説明」における記載を省略する。
A―2―3.耐雪性
A―2―3―1.積雪損傷防止性(建物・構築物)
・要求性能
積雪地における建物及び構築物は、積雪から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図37(a))
積雪地における建物及び構築物は、図37(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―3―1.積雪損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図37(b)のテーブルに記載されており、上述した図37(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0140】
・みなし仕様の解説
1.「多雪区域」については、建築基準法施行令第86条で、特定行政庁が建設大臣の定める基準に基づいて規則で多雪区域を指定することができる旨規定しており、これを定義とみなすこともできる。
2.耐積雪性については、建築基準法第20条(構造耐力)で地震力を含む他の外力や荷重に対する耐力とともに規定している。
3.積雪荷重の算定については、建築基準法施行令第86条に規定されているが、これの適用に際しては、地域性や建物等の特性を十分考慮し、反映させることが必要である。一般的な留意点は次の通りである。
▲1▼ 多雪地区の場合は、当該地区の積雪の実態を十分把握し、適正な積雪荷重を選定する。積雪は、新雪のみかけ比重は 0.1に満たないが、降り積もるにつれて圧密され、次第に単位重量が増加する。また、昼間気温の上昇によって生じた融雪や、冬季の降雨も下層の雪に吸収され、積雪荷重増加の原因となる。笹淵(山形)、高田(新潟)、藤原(福井)等の多雪地では、いずれも積雪全体の平均みかけ比重が 0.3を上回っている。
▲2▼ 第86条第7項の、雪おろしを習慣とする地方の最大積雪深度を1mとしてよいという規定については、豪雪時における雪おろしの作業集中の時間的制約を考慮に入れる。
▲3▼ 屋根の積雪量は、風の影響を受けて、しばしば著しい不均等分布を示す。塔屋の風上側では屋根雪がえぐり取られるが、風下では地上雪の2倍以上の吹き溜まりを生ずる。
【0141】
A―2―3―2.積雪損傷防止性(建物附属設備)
・要求性能の説明
積雪地における建物附属設備は、積雪から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図38(a)参照)
積雪地における建物附属設備は、図38(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―3―2.積雪損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図38(b)のテーブルに記載されており、上述した図38(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0142】
・みなし仕様の解説
1.「多雪区域」については、建築基準法施行令第86条で、特定行政庁が建設大臣の定める基準に基づいて規則で多雪区域を指定することができる旨規定しており、これを定義とみなすこともできる。
2.建物附属設備の耐積雪性については、建築基準法では、第2条で建築物の定義に建築設備を含むため、建築本体と併せて建築基準法第20条(構造耐力)で規定していると考えることができる。
3.積雪荷重の算定については、建築基準法施行令第86条に規定されているが、これの適用に際しては、地域性や建物等の特性を十分考慮し、反映させることが必要である。一般的な留意点は次の通りである。
▲1▼ 多雪地区の場合は、当該地区の積雪の実態を十分把握し、適正な積雪荷重を選定する。積雪は、新雪のみかけ比重は 0.1に満たないが、降り積もるにつれて圧密され、次第に単位重量が増加する。また、昼間気温の上昇によって生じた融雪や、冬季の降雨も下層の雪に吸収され、積雪荷重増加の原因となる。笹淵(山形)、高田(新潟)、藤原(福井)等の多雪地では、いずれも積雪全体の平均みかけ比重が 0.3を上回っている。
▲2▼ 第86条第7項の、雪おろしを習慣とする地方の最大積雪深度を1mとしてよいという規定については、豪雪時における雪おろしの作業集中の時間的制約を考慮に入れる。
▲3▼ 屋根の積雪量は、風の影響を受けて、しばしば著しい不均等分布を示す。塔屋の風上側では屋根雪がえぐり取られるが、風下では地上雪の2倍以上の吹き溜まりを生ずる。
4.屋上及び地上の風下部分並びに風上に面するバルコニーに設置される建物附属設備については、吹き溜まりを考慮した積雪荷重に対する十分な耐力を有している必要がある。
5.屋外に面して可動部分又は空気若しくは熱の出入のための開口部を有する建物附属設備については、積雪荷重ではなく、積雪自体がそれらの正常な機能に支障を与え、損傷の原因ともなる。これらに対しては、次のような措置が必要である。
▲1▼ 空調屋外機、冷却塔、電気温水器及びバランス型ガス器具等は、方位、風向その他の条件により雪の吹き溜まり又は付着が発生するおそれのある場所へは設置しない。やむを得ずこのような場所に設置しなければならない場合は、囲い又は覆い等の措置を講じる。
▲2▼ 外気取入口は、方位、風向その他の条件により雪の吹き溜まり又は付着が発生するおそれのある場所へは設置しない。やむを得ずこのような場所に設置しなければならない場合は防雪フードを取り付ける。
▲3▼ 外気取入口、排気口等の外壁に設置するガラリに接続するダクトは、雪の浸入を防止するため、外側に勾配を取る。
▲4▼ 屋外に設置するボンベ等は、方位、風向その他の条件により雪の吹き溜まり又は付着が発生するおそれのある場所へは設置しない。
【0143】
A―2―3―3.落雪事故防止性
・要求性能の説明
積雪地における建物は、落雪から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図39(a))
積雪地における建物は、図39(a)に示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―3―3.落雪事故防止性」の性能判定値及び判定基準は、図39(b)のテーブルに記載されており、上述した図39(a)のテーブルのみなし仕様a及びbを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a及びbのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0144】
・みなし仕様の解説
1.落雪は、周囲の建物、塀、車両等に損傷を及ぼすばかりでなく、人に対しては死傷事故につながる場合がある。このため、積雪地においては落雪事故の防止は安全性の観点から極めて重要である。
2.落雪の経路は放物線を描くため、高い建物からの落雪は、水平距離の離れた人や他の建物や塀等にも影響を及ぼす。
3.落雪事故の防止は、落雪させないことを前提とする場合と、落雪させることを前提とする場合とがある。一般には、後者は建物の設計用積雪荷重の低減による経済化を目的として民家等に適用されることが多いが、NTTの建物等においては、低層の建物又は渡り廊下等、落雪の影響の軽微な場合を除いては後者の考え方をとっており、パラペット付きの陸屋根とした設計が一般的である。また、都市部においては、建物の密集や排雪溝の建設・維持費の増大等の事情から、落雪の処理が年々困難となっており、その点からも、民家等一部の建物を除いて積雪は落雪させないで融雪して処理すべきであるといえる。
4.パラペット付きの陸屋根とした建物については、積雪深度に対応した高さのパラペットを有していることが必要である
5.勾配屋根の場合は、勾配方向の落雪が膨大な量となるため、特に出入口や通路、隣地等に面する部分への落雪事故防止の配慮(落雪させないポーチや車寄せを出入口に設けたり、軒先と隣地等との間隔を十分大きくとること等)が必要である。勾配屋根の場合においても、建築基準法施行令第86条に規定されている積雪荷重を見込む他、屋根に雪止めを設ける必要がある。雪止めは落雪を完全に防止できるものではないが、落雪の水平距離を低減する効果もある。なお、建築基準法施行令第86条の規定によれば、勾配屋根で積雪荷重を考慮しなくてもよいのは、屋根勾配が60度を超える場合のみである。このことからも、落雪事故の防止がほとんどの勾配屋根に対して必要であることが想像できる。
6.勾配屋根の建物においては、落雪の他に、軒先に発生するつららが落下して人や物に危害を及ぼす場合がある。軒先のつららの発生を防止するためには、部屋の天井の断熱を十分に行い、屋根裏空間の温度をなるべく外気温と等しくするのがよいとされている。ただし、この場合は、屋根裏の配管、配線、設備機器等の凍結防止等の措置が必要である。
7.建物附属設備における落雪事故は、建物の機能に重大な支障を及ぼす。これを防止するための一般的な措置は次の通りである。
▲1▼ 空調屋外機、量水器等、屋外に設置する設備機器は、特別に防護の措置が取られた場合を除き、落雪の直撃を受けるおそれのある場所には設置しない。また、万一落雪した場合には人命やその設備の機能に支障なく安全に除雪作業ができるように区画及び表示を行う。
▲2▼ 切妻屋根の建物においては、架空引込線は建物の妻側から引き込むことを原則とする。
【0145】
A―2―3―4.滞雪事故防止性
・要求性能の説明
積雪地における建物は、滞雪から生命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図40(a))
積雪地における建物は、図40(a)に示すテーブルの各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―3―4.滞雪事故防止性」の性能判定値及び判定基準は、図40(b)のテーブルに記載されており、上述した図40(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0146】
・みなし仕様の解説
1.滞雪(地表に積もった雪をいう。この項において同じ。)は人や車両の通行の支障となる。特に非常時の滞雪は消火活動や避難行動等を阻害し、大きな災害の原因となることがある。
2.滞雪は、多雪区域においては次のような影響も及ぼす。
▲1▼ 滞雪は、時間の経過とともに圧密を起こして沈降する。建物等が全面的に雪に埋没した状態で沈降が起きると、滞雪が 0.5kg/cm2 前後の引張強度をもっているため滞雪層が簡単には切断されず、建物等に対し、周囲の滞雪の重量が加算される。その結果、屋外の工作物等がわん曲する場合等がある。沈降による害を防止するためには、除雪によって周囲の滞雪層との縁を切っておく必要がある。
▲2▼ 落下して堆積した滞雪は、建物等に側圧を及ぼす。また、その雪が解けて外壁を濡らし、汚染や凍害を発生させる場合がある。これらを防止するためには、外壁周囲の滞雪を防止又は除去することが必要である。
3.外壁周囲の滞雪とその害を防止するための一般的な方法と留意点は、次の通りである。
4.多雪区域においては、人や車の出入の多い出入口や屋外の舗床及び通路等には、落雪による滞雪を防止するために、前項▲2▼の方法に加えて、融雪装置並びに排雪装置(流雪溝)の設置が望ましい。その他、人や車両の通行の支障となる場所の除雪作業を確実に実行することが必要である。
【0147】
A―2―4.耐寒性
A―2―4―1.凍結損傷防止性(建物)
・要求性能の説明
寒冷地における建物は、凍結及び融解による損傷を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図41(a))
寒冷地における建物は、図41(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―4―1.凍結損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図41(b)のテーブルに記載されており、上述した図41(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0148】
・みなし仕様の解説
1.寒冷地の明確な定義はないが、次のいずれかに該当する地域を寒冷地とする場合が多い。
▲1▼ 1月(いちがつ)の日平均気温の月平均値が0℃以下の地域
▲2▼ 1月(いちがつ)の日最低気温の月平均値が−5℃以下の地域
▲3▼ 1月(いちがつ)の暖房度日数D18−18が2,500℃day以上の地域
(注)暖房度日数とは、室内の所要気温(暖房時における室内気温)と毎日の平均外気温との差を加算したものをいう。ここでは、平均外気温が18℃以下となった日の気温と18℃との温度差を積算した。 これらに該当する地域は、おおむね次の通りである。
北海道全域/東北地方(福島県海岸部を除く)/新潟県(海岸部を除く)/関東地方(山岳部)/長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、富山県、石川県、福井県(いずれも山岳部)/和歌山県、奈良県、兵庫県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、愛媛県、大分県、熊本県(いずれも内陸部の一部)
2.凍害は、材料中の水分の凍結によって発生する。コンクリートの凍害に関しては、内部の水分の凍結による水の移動圧に起因するという水圧説が定説となっている。一方、各種材料についての耐凍害性は、まだ明らかになっていない。仕上げ材の選定に際しては、石・レンガは吸水率の小さいもの、防水・吹付け塗装材は、塗膜が厚く且つ色が薄く熱の吸収の少ないもの、タイルは釉薬の凍害が大きいため、釉薬を施していないか又は薄く透明な釉薬のものを使用することが望ましい。
3.コンクリートの凍害の原因には、外的因子と内的因子とがある。
▲1▼ 外的因子
気温の年格差・日格差及び日射は、融雪水の発生・浸入による凍結融解回数の増大をもたらし、凍害の原因となる。また、夏季の乾燥に伴う亀裂も外的因子となる。凍害は露出したコンクリートに発生し、水平亀裂やパラペット打継部周りの亀裂となる。
▲2▼ 内的因子
内的因子としては、コンクリートの調合や使用材料に起因するものとが代表的である。吸水性の高い骨材を使用したコンクリートではポップアウトと呼ばれる剥落が発生する。
4.コンクリートの凍害の防止対策は次の通りである。
▲1▼ 材料やセメントペーストの細孔構造をできるだけ緻密にし、吸水や透水を少なくする。
・水セメント比を小さくし、硬めのコンクリートとする。
・微細な毛細管を持つ軟石を骨材に使用しない。
▲2▼ 乾燥亀裂を防止する。
・コンクリート打設時に、十分な湿潤養生を行う。
・温度応力を考慮した鉄筋の割増や抜けやすい差し筋の禁止等を行う。
▲3▼ 融雪水がコンクリートに浸み込まない設計上の工夫を行う。
▲4▼ コンクリートの施工時期は、冬の直前は避ける。
【0149】
A―2―4―2.凍結損傷防止性(建物附属設備)
・要求性能の説明
寒冷地における建物附属設備は、凍結による機能停止及び損傷を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図42(a))
寒冷地ににおける建物附属設備は、図42(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―4―2.凍結損傷防止性」の性能判定値及び判定基準は、図42(b)のテーブルに記載されており、上述した図42(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0150】
・みなし仕様の解説
1.寒冷地の明確な定義はないが、次のいずれかに該当する地域を寒冷地とする場合が多い。
▲1▼ 1月(いちがつ)の日平均気温の月平均値が0℃以下の地域
▲2▼ 1月(いちがつ)の日最低気温の月平均値が−5℃以下の地域
▲3▼ 1月(いちがつ)の暖房度日数D18−18が2,500℃day以上の地域
(注)暖房度日数とは、室内の所要気温(暖房時における室内気温)と毎日の平均外気温との差を加算したものをいう。ここでは、平均外気温が18℃以下となった日の気温と18℃との温度差を積算した。
これらに該当する地域は、おおむね次の通りである。
北海道全域/東北地方(福島県海岸部を除く)/新潟県(海岸部を除く)/関東地方(山岳部)/長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、富山県、石川県、福井県(いずれも山岳部)/和歌山県、奈良県、兵庫県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、愛媛県、大分県、熊本県(いずれも内陸部の一部)
2.寒冷地における凍結による建物附属設備の破損事故は、生活環境を損なうばかりでなく、防災機能の麻痺に発展する場合もあるため、その確実な防止が必要である。
3.建物附属設備の耐凍結性については、建築基準法施行令第129条の2の2(給水、排水その他の配管設備の設置及び構造)で、給水管の凍結による破壊のおそれのある部分には、有効な防凍のための措置を講ずることと規定されているが、設備全体の凍害を防止するためには、この他にも各種の措置が必要である。
4.機械室等は露出配管が多いので、室温が氷点下になる場所ではヒータ(サーモスタット付)を設置する。エレベータ及び排風機室等が隣接の場合は、外気を隣接室に入れて温度上昇した空気を機械室等に通して排気する方法をとる。また、外壁に面する洗面所・便所は、できれば低温型の暖房を行う。
5.配管等の凍結防止措置としては、保温、水抜き及び勾配の確保を行う。また、監視装置を有する給水・給湯設備においては、各部配管部にセンサを設置し、監視装置を介して凍結防止ヒータ、水抜き弁、循環ポンプ等を自動的に作動させることが望ましい。
6.防露式タンク、寒冷地型の衛生器具(トラップ部分に凍結防止用ヒータの付いているもの)、不凍結型洗浄弁及び給水栓等の使用を検討する。地上に設置する量水器の位置、場所、方位、保温箱取り付け等を検討する。また、給油口はマンホールの凍結や積雪を考慮し、冬期の給油が可能な位置に立ち上げる。
【0151】
A―2―4―3.凍結転倒防止性
・要求性能の説明
寒冷地における建物は、凍結による転倒事故を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図43(a))
寒冷地における建物は、図43(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―4―3.凍結転倒防止性」の性能判定値及び判定基準は、図43(b)のテーブルに記載されており、上述した図43(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0152】
・みなし仕様の解説
1.寒冷地の明確な定義はないが、次のいずれかに該当する地域を寒冷地とする場合が多い。
▲1▼ 1月(いちがつ)の日平均気温の月平均値が0℃以下の地域
▲2▼ 1月(いちがつ)の日最低気温の月平均値が−5℃以下の地域
▲3▼ 1月(いちがつ)の暖房度日数D18−18が2,500℃day以上の地域
(注)暖房度日数とは、室内の所要気温(暖房時における室内気温)と毎日の平均外気温との差を加算したものをいう。ここでは、平均外気温が18℃以下となった日の気温と18℃との温度差を積算した。
これらに該当する地域は、おおむね次の通りである。
北海道全域/東北地方(福島県海岸部を除く)/新潟県(海岸部を除く)/関東地方(山岳部)/長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、富山県、石川県、福井県(いずれも山岳部)/和歌山県、奈良県、兵庫県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、愛媛県、大分県、熊本県(いずれも内陸部の一部)
2.寒冷地においては路面が凍結しやすく、これによる転倒事故の危険性が高いが、これに関する法令の特別な規定はない。寒冷地の条例等においても雪の対策や凍結損傷、凍上及び結露の対策に比べて、凍結転倒事故の防止に関する規定は非常に少ない。
3.凍結転倒事故の防止のためには、通常の転倒防止と同様、すべりにくい床材料の使用、段差や勾配の低減及び手すりの設置が必要であるが、それに加えて屋外の舗床及び通路表面の凍結水を少なくことが重要である。このためには、次の点に留意する必要がある。
▲1▼ 床材料は、吸水率が低く、かつ表面が粗面のものを使用する。吸水率の高い材料は、凍結・融解による損傷が激しく、且つ損傷した床面が転倒の原因ともなる。
▲2▼ 屋外の舗床及び通路は必要かつ十分な排水勾配を確保し、かつ排水設備を設置する。排水勾配は概ね 1/100〜1/50程度が適正と思われる。勾配が少すぎると凍結水が増え、逆に勾配が多過ぎるとスリップを生じやすくなる。
▲3▼ 凍結水の多くは融雪が原因となるため、融雪装置の設置が凍結転倒事故の防止にも寄与する。
【0153】
A―2―4―4.浮上り防止性
・要求性能の説明
寒冷地における建物等は、地盤の凍結による浮上りを防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図44(a))
寒冷地における建物等は、図44(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―4―4.浮上り防止性」の性能判定値及び判定基準は、図44(b)のテーブルに記載されており、上述した図44(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、なし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0154】
・みなし仕様の解説
1.寒冷地の明確な定義はないが、次のいずれかに該当する地域を寒冷地とする場合が多い。
▲1▼ 1月(いちがつ)の日平均気温の月平均値が0℃以下の地域
▲2▼ 1月(いちがつ)の日最低気温の月平均値が−5℃以下の地域
▲3▼ 1月(いちがつ)の暖房度日数D18−18が2,500℃day以上の地域
(注)暖房度日数とは、室内の所要気温(暖房時における室内気温)と毎日の平均外気温との差を加算したものをいう。ここでは、平均外気温が18℃以下となった日の気温と18℃との温度差を積算した。
これらに該当する地域は、概ね次の通りである。
北海道全域/東北地方(福島県海岸部を除く)/新潟県(海岸部を除く)/関東地方(山岳部)/長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、富山県、石川県、福井県(いずれも山岳部)/和歌山県、奈良県、兵庫県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、愛媛県、大分県、熊本県(いずれも内陸部の一部)
2.気温が0℃以下になると、積雪のない地盤は凍結する。地中のある深さで凍結の潜熱と冷却との間に熱平衡が成立するような場合には、霜柱が発達しつつも、地盤の凍結はその深さで停滞している。この部分の土の温度は概ね0℃であって、この位置を凍結線といい、地表から凍結線までの深さを凍結深度という。
3.気温の降下が急激な場合には、熱平衡が破れて凍結線はさらに深部へ移動し、新しい霜柱層が発生して再び熱平衡が成立する。この現象の繰返しによって地中に数層ないし数十層の霜柱層ができて、地表面は次第に***する。これを地盤の凍上といい、これによる建物等の浮上りは凍上害と呼ばれる。
4.凍上の各種要因と凍上量
▲1▼ 土質:黒土は凍上しやすいが、霜柱層が粗で砕けやすい。粘土層は保水性が大きいので霜層ができやすく、かつ霜柱層が密であるため凍上量が大きい。砂、砂利層は霜柱層を生じ難くコンクリート状に凍結するため、凍上はほとんど起こらない。
▲2▼ 水分:水はけの悪い地盤は凍上量が大きい。地下水位が浅い場合、凍結線は地下水の位置より深くはならないが凍上量は著しく大きくなる。
▲3▼ 積雪:積雪は地盤の冷却防止に役立つ。多雪地では凍結線は積雪前の位置のまま停止し、凍上量は小さい。常時除雪を行なう所や、風の影響で積雪の少なくなる所では凍結深度が大となり、積雪におおわれている部分との凍上差が著しくなる。
5.建築物の凍上対策(次の2つないし3つを組合せて実施する。)
▲1▼ 基礎底深さをその地盤の最大凍結深度より深くする。
▲2▼ 基礎の負担する重量を十分大きくする。
▲3▼ 基礎と土の凍着力を小さくする。例えば基礎周辺の地盤を砂・切込砂利などで置換える。
ただしこの場合、置換層の深さは、元の地盤の最大凍結深度より深くする。
▲4▼ 基礎周辺の排水を良くする。
【0155】
A―2―4―5.結露防止性
・要求性能の説明
寒冷地における建物は、内外温度差に起因する室内及び部材内部の結露を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図45(a))
寒冷地における建物は、図45(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―2―4―5.結露防止性」の性能判定値及び判定基準は、図45(b)のテーブルに記載されており、上述した図45(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0156】
・みなし仕様の解説
1.寒冷地の明確な定義はないが、次のいずれかに該当する地域を寒冷地とする場合が多い。
▲1▼ 1月(いちがつ)の日平均気温の月平均値が0℃以下の地域
▲2▼ 1月(いちがつ)の日最低気温の月平均値が−5℃以下の地域
▲3▼ 1月(いちがつ)の暖房度日数D18−18が2,500℃day以上の地域
(注)暖房度日数とは、室内の所要気温(暖房時における室内気温)と毎日の平均外気温との差を加算したものをいう。ここでは、平均外気温が18℃以下となった日の気温と18℃との温度差を積算した。
これらに該当する地域は、概ね次の通りである。
北海道全域/東北地方(福島県海岸部を除く)/新潟県(海岸部を除く)/関東地方(山岳部)/長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、富山県、石川県、福井県(いずれも山岳部)/和歌山県、奈良県、兵庫県、鳥取県、島根県、徳島県、高知県、愛媛県、大分県、熊本県(いずれも内陸部の一部)
2.空気が冷却されて、今まで含んでいた量の水蒸気を含むことのできる最低の温度(露点温度)以下になると、余分となった水蒸気は凝縮して水滴となる。これが結露である。結露にはその発生場所により表面結露(壁体や材料の表面で発生)と内部結露(材料の内部で発生)の2種類がある。結露の分類はこの他に、発生時期によって行う方法もある。
3.寒冷地における建物は内外の温度差が大きいため、結露の発生する可能性が高い。結露が発生すると、水滴の落下、材料の汚損・剥落又は建具の結霜・凍結など、日常生活や建物の耐久性に与える影響が大きく、且つ持続的である。
4.表面結露防止の一般的方法は、空気の絶対湿度(空気中の水蒸気と乾燥空気の重量比)を下げること又は壁面温度を上げることである。
5.内部結露防止の一般的方法は、温度が低下する前に水蒸気圧を十分下げておくこと(高温側に防湿層を入れること)及び二重窓では気密度の高い建具を室内側に使用することである。なお、透湿抵抗が無限大と考えられる外部材料(アスファルト防水された陸屋根、金属外壁等)では、内部結露を皆無にすることはできない。この場合は、室内湿度の低減、安全を見込んだ表面温度の保持や外気側への放湿等を行う。
【0157】
A―3.火災安全・信頼性
A―3―1.延焼防止性
A―3―1―1.もらい火防止性
・要求性能の説明
建物は、近隣からのもらい火を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図46(a))
建物は、図45(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―3―1―1.もらい火防止性」の性能判定値及び判定基準は、図46(b)のテーブルに記載されており、上述した図46(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0158】
・みなし仕様の解説
1.防火関係の機能項目は、耐震性と並んで安全性・信頼性の重要な項目であり、法令の規定も膨大な量に上っている。
2.防火関係の性能は、建物内外の火災の延焼防止、避難、通報及び消火に関するものに分類される。もらい火防止性(建物外で発生した火災の延焼防止性)について、法令の規定のうち主要なものを3〜6に示す。
3.建築基準法
第21条(大規模の建築物の主要構造部)
第22条(屋根)
第23条(外壁)
第26条(防火壁)
第27条(耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない特殊建築物)
第41条の2(適用区域)
第61条(防火地域内の建築物)〜第66条(看板等の防火措置)
4.建築基準法施行令
第70条(柱の防火被覆)
第107条(耐火構造)〜第110条(防火戸の構造)
5.消防法
第1条
(目的)
第2条(用語の定義)
6.消防法施行令
第1条の2(防火対象物の指定)
7.NTTの建物及び鉄塔については、法令及び技術資料に基づき、防火設計の要求条件及び防火管理の実施方法等について規定している。
8.外装及び構造は、設計図書、建築現況図及び現地調査により確認する。
【0159】
A―3―1―2.内部火災拡大防止性
・要求性能の説明
建物は、内部で発生した火災の拡大を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図47(a))
建物は、図47(a)のテーブルの示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―3―1―2.内部火災拡大防止性」の性能判定値及び判定基準は、図47(b)のテーブルに記載されており、上述した図47(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0160】
・みなし仕様の解説
1.防火関係の機能項目は、耐震性と並んで安全性・信頼性の重要な項目であり、法令の規定も膨大な量に上っている。
2.防火関係の性能は、建物内外の火災の延焼防止、避難、通報及び消火に関するものに分類される。内部火災拡大防止性(建物内で発生した火災の延焼防止性)について、法令の規定のうち主要なものを3〜6に示す。
3.建築基準法
第21条(大規模の建築物の主要構造部)
第22条(屋根)
第23条(外壁)
第26条(防火壁)
第27条(耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない特殊建築物)
第32条(電気設備)
第34条(昇降機)
第35条の2(特殊建築物等の内装)
第35条の3(無窓の居室等の主要構造部)
第41条の2(適用区域)
第61条(防火地域内の建築物)〜第64条(開口部の防火戸)
4.建築基準法施行令
第70条(柱の防火被覆)
第107条(耐火構造)〜第110条(防火戸の構造)
5.消防法
第1条
(目的)
第2条(用語の定義)
6.消防法施行令
第1条の2(防火対象物の指定)
7.NTTの建物及び鉄塔については、法令及び技術資料に基づき、防火設計の要求条件及び防火管理の実施方法等について規定している。
8.内装及び防火区画は、設計図書、建築現況図及び現地調査により確認する。模様替えが頻繁に行われている建物においては特に注意する。
9.電気を使用する設備の火災発生防止措置の有無は、現地調査により確認する。
【0161】
A―3―2.避難確実性
A―3―2―1.避難行動確実性
・要求性能の説明
建物は、避難行動が迅速且つ確実に行うことができる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図48(a))
建物は、図48(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―3―2―1.避難行動確実性」の性能判定値及び判定基準は、図48(b)のテーブルに記載されており、上述した図48(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0162】
・みなし仕様の解説
1.防火関係の機能項目は、耐震性と並んで安全性・信頼性の重要な項目であり、法令の規定も膨大な量に上っている。
2.防火関係の性能は、建物内外の火災の延焼防止、避難、通報及び消火に関するものに分類される。避難行動確実性について、法令の規定のうち主要なものを3〜6に示す。
3.建築基準法
第35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
4.建築基準法施行令
第13条の3(避難施設等の範囲)
第13条の4(避難施設等に関する工事に含まれない軽易な工事)
第116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等)〜第126条(屋上広場等)
第126条の2(排煙設備の設置)
第126条の3(排煙設備の構造)
第126条の4(非常用の照明装置の設置)
第126条の5(非常用の照明装置の構造)
第128条(敷地内の通路)
5.消防法
第1条
(目的)
第2条(用語の定義)
第17条(学校等の消防用設備等の設置及び維持義務)
6.消防法施行令
第1条の2(防火対象物の指定)
第7条(消防用設備等の種類)第4項 避難設備
第25条(避難器具に関する基準)
第26条(誘導灯及び誘導標識に関する基準)
7.NTTの建物及び鉄塔については、法令及び技術資料に基づき、技術資料で防火設計の要求条件及び防火管理の実施方法等について規定している。
8.避難経路及び避難設備は、設計図書、建築現況図、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。模様替えが頻繁に行われている建物においては特に注意する。
【0163】
A―3―3.消火確実性
A―3―3―1.火災通報確実性
・要求性能の説明
建物は、火災を迅速且つ確実に感知し、表示及び警報発出を行うことができる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図49(a))
建物の警報設備は、図49(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―3―3―1.火災通報確実性」の性能判定値及び判定基準は、図49(b)のテーブルに記載されており、上述した図49(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0164】
・みなし仕様の解説
1.防火関係の機能項目は、耐震性と並んで安全性・信頼性の重要な項目であり、法令の規定も膨大な量に上っている。
2.防火関係の性能は、建物内外の火災の延焼防止、避難、通報及び消火に関するものに分類される。火災通報確実性について、法令の規定のうち主要なものを3及び4に示す。
3.消防法
第1条
(目的)
第2条(用語の定義)
第17条(学校等の消防用設備等の設置及び維持義務)
4.消防法施行令
第1条の2(防火対象物の指定)
第7条(消防用設備等の種類)第3項 警報設備
第21条(自動火災報知設備に関する基準)
第21条の2(ガス漏れ火災警報設備に関する基準)
第22条(漏電火災警報器に関する基準)
第23条(消防機関へ通報する火災報知設備に関する基準)
第24条(非常警報器具又は非常警報設備に関する基準)
5.NTTの建物及び鉄塔については、法令及び技術資料に基づき、技術資料で防火設計の要求条件及び防火管理の実施方法等について規定している。
6.警報設備及び収容人員は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。模様替えが頻繁に行われている建物においては特に注意する。
【0165】
A―3―3―2.消火活動確実性
・要求性能の説明
建物は、火災を迅速且つ確実に消火し、人命、財産及び設備を保護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図50(a))
建物は、図50(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―3―3―2.消火活動確実性」の性能判定値及び判定基準は、図50(b)のテーブルに記載されており、上述した図50(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0166】
・みなし仕様の解説
1.防火関係の機能項目は、耐震性と並んで安全性・信頼性の重要な項目であり、法令の規定も膨大な量に上っている。
2.防火関係の性能は、建物内外の火災の延焼防止、避難、通報及び消火に関するものに分類される。消火活動確実性について、法令の規定のうち主要なものを3〜5に示す。
3.建築基準法施行令
第116条の2(窓その他の開口部を有しない居室等)
第126条の2(排煙設備の設置)
第126条の3(排煙設備の構造)
第126条の4(非常用の照明装置の設置)
第126条の5(非常用の照明装置の構造)
第126条の6(非常用の進入口の設置)
第126条の7(非常用の進入口の構造)
第128条(敷地内の通路)
第137条の3の3(非常用の昇降機関係)
4.消防法
第1条
(目的)
第2条(用語の定義)
第17条(学校等の消防用設備等の設置及び維持義務)
5.消防法施行令
第1条の2(防火対象物の指定)
第7条(消防用設備等の種類)第4項 避難設備
第25条(避難器具に関する基準)
第26条(誘導灯及び誘導標識に関する基準)
6.NTTの建物及び鉄塔については、法令及び技術資料に基づき、技術資料で防火設計の要求条件及び防火管理の実施方法等について規定している。
7.消火設備、消火活動用施設及び防火水槽等は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。模様替えが頻繁に行われている建物においては特に注意する。
【0167】
A―4.水害安全・信頼性
A―4―1.水防性
A―4―1―1.水防確実性
・要求性能の説明
建物は、河川、内水、高潮及び津波による氾濫から人命、設備及び財産を防御できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図51(a))
建物は、図51(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―4―1―1.水防確実性」の性能判定値及び判定基準は、図51(b)のテーブルに記載されており、上述した図51(a)のテーブルのみなし仕様a〜fを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜fのうちeのみが満足していない場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜fのうちeと共に、e以外の仕様のいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0168】
・みなし仕様の解説
1.水防性は水害から人命、設備及び財産を防御できる機能項目である。特に電気通信設備を収容する建物においては、耐震性及び防火性と並んで重要な項目である。
2.水防性は、敷地や建物を氾濫水から遮断する機能(水防確実性)と、浸入した水を確実に排出する機能(水害時排水確実性)とに大別される。
3.水防性については、建築基準法では第19条(敷地の衛生及び安全)及び第20条(構造耐力)で、水害に対する敷地の地盤面及び排水並びに建物の水圧に対する構造強度について規定している。
4.建築基準法施行令は第142条(擁壁)で擁壁の構造強度及び排水について規定している。
5.NTTの建物については、法令及び技術資料に基づき、電気通信設備の水防性の確保を目的として独自に水防設計方法及び水防管理方法について規定している。水防設計方法は、河川・内水・高潮・津波の最高の想定水位に基づいて設計水位を決定し、これに基づき防御面(水防区画)を構成する方法である。
6.防御方法は、敷地防御、建物防御及び通信機器収容室防御の中から適切なものを選択する。
7.油タンクの給油口及び通気口並びに衛生器具の単独通気口は、設計水位以上に立上げる。
8.防御面の水密性を確保する。
9.水防設備の構成及びその管理方法等は、水防管理実施細則で規定している。
10.設計水位、防御面及び開口部等は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
11.設計水位の設定後に敷地周辺の開発が著しい建物においては、内水氾濫防止のため、設計水位の見直しを検討する。
12.無人の建物(集約により無人となった建物を含む。)においては水防扉又は水防板の状況に特に注意する。
【0169】
A―4―1―2.水害時排水確実性
・要求性能の説明
建物及び敷地は、水害時に万一侵入した水を迅速確実に排出できる排水性能及び逆流防止性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図52(a))
建物及び敷地は、図52(a)のテーブルの示す各仕様を満足していなければならない。
この小項目「A―4―1―1.水防確実性」の性能判定値及び判定基準は、図52(b)のテーブルに記載されており、上述した図52(a)のテーブルのみなし仕様a〜fを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜fのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0170】
・みなし仕様の解説
1.水防性は水害から人命、設備及び財産を防御できる機能項目である。特に電気通信設備を収容する建物においては、耐震性及び防火性と並んで重要な項目である。
2.水防性は、敷地や建物を氾濫水から遮断する機能(水防確実性)と、浸入した水を確実に排出する機能(水害時排水確実性)とに大別される。
3.水防性については、建築基準法では第19条(敷地の衛生及び安全)及び第20条(構造耐力)で、水害に対する敷地の地盤面及び排水並びに建物の水圧に対する構造強度について規定している。
4.排水設備については、法令では次の規定があるが、水害時の排水設備についての特別の定めはない。
▲1▼ 建築基準法第19条(敷地の衛生及び安全)
▲2▼ 建築基準法施行令第129条の2の2(給水、排水その他の配管設備)
▲3▼ 下水道法第10条(排水設備の設置等)
5.NTTの建物については、法令及び技術資料に基づき、電気通信設備の水防性の確保を目的として独自に水防設計方法及び水防管理方法について規定しているが、水防用排水設備についても詳細を定めている。
6.水防用排水設備は逆流防止弁、排水ポンプ、排水配管及び電源等から構成される。これらは平常あまり使用されないので、維持管理が重要である。また、停電時の排水用電源を予備エンジンにより供給する場合は、電源系統の確認及び負荷の検討を行っておく必要がある。水防設備の構成及びその管理方法等は、水防管理実施細則で規定している。
8.排水設備及び排水方法等は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
9.設計水位の設定後に敷地周辺の開発が著しい建物においては、内水氾濫防止のため、設計水位の見直しに合わせて排水方法の変更を検討する。
10.無人の建物(集約により無人となった建物を含む。)においては排水設備の状況に特に注意する。
【0171】
A―4―2.雨漏り防止性
A―4―2―1.建物防水確実性
・要求性能の説明
建物は、雨水並びに上階又は隣室等で発生した水損事故による漏水の侵入を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図53(a))
建物は、図53(a)のテーブルの示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―4―2―1.建物防水確実性」の性能判定値及び判定基準は、図53(b)のテーブルに記載されており、上述した図53(a)のテーブルのみなし仕様a〜gを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜gのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0172】
・みなし仕様の解説
1.建物の雨漏り防止性は最も基本的な機能の一つである。このため、法令等では材料レベルでの防水性能及びその試験方法等を規定しているが、建物全体の雨漏り防止性については、当然有するべき機能と考えられるためか、特別の規定はない。しかし現実には、建物の雨漏りの発生頻度は遺憾ながら高い。
2.建物の雨漏り防止性は雨を漏らさない機能(建物防水確実性)と、雨水等を排水系統に従って確実に排出する機能(日常排水確実性)に大別される。
3.建物防水確実性は次の各部位の防水確実性の総合性能と考えることができ、維持管理を適切に行わない場合には、建物防水確実性は経年に伴うこれらの物理的劣化とともに低下する。
▲1▼ 屋根(躯体、防水層若しくは屋根材、屋上排水溝、ルーフドレン等)
▲2▼ 外壁(躯体、仕上げ材及びシーリング材等)
▲3▼ 外部建具(建具枠、扉、ガラス、ガラリ及びシーリング材等)
▲4▼ バルコニー及びテラス等
▲5▼ 屋外水槽及び油槽等
4.NTTの建物については、「建物調査・点検ハンドブック 1993」で屋根、外壁及び外部建具等の物理的劣化の診断方法について規定しており、これを根拠として建物の雨漏り防止性の評価を行うことができる。ただし、屋根防水として最も一般的な押さえアスファルト屋根防水は、防水層の欠陥状況を判定することが非常に難しいため、漏水又はその痕跡を判定要素とできる場合の他は専門家に調査を依頼する必要がある。
5.参考に、前項の各部位の代表的なものについて、簡易な劣化判定方法を次頁に紹介する。この方法は、外観劣化、経年劣化又は基本機能劣化のいずれか(これらのうち複数の診断が可能な場合は最も厳しい診断)により判定を行う方法である。なお、経年劣化による診断を行う場合は経年幅の慎重な設定(表中の年数を必要に応じて修正する)及び改修工事の履歴情報が必要である。
6.屋根、バルコニー及び外壁等の状況は、設計図書、建築現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0173】
A―4―2―2.日常排水確実性
・要求性能の説明
建物及び敷地は、雨水並びに建物及び敷地内部で発生した汚水及び雑排水を敷地外に円滑に排出できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図54(a))
建物及び敷地は、次の各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―4―2―2.日常排水確実性」の性能判定値及び判定基準は、図54(b)のテーブルに記載されており、上述した図54(a)のテーブルのみなし仕様a〜gを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜gのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0174】
・みなし仕様の解説
1.建物の雨漏り防止性は最も基本的な機能の一つである。このため、法令等では材料レベルでの防水性能及びその試験方法等を規定しているが、建物全体の雨漏り防止性については、当然有するべき機能と考えられるためか、特別の規定はない。しかし現実には、建物の雨漏りの発生頻度は遺憾ながら高い。
2.建物の雨漏り防止性は雨を漏らさない機能(建物防水確実性)と、雨水等を排水系統に従って確実に排出する機能(日常排水確実性)に大別される。
3.日常排水の対象には次のものがあり、これらの各々に対して排水が確保される必要がある。また、NTTの通信用建物においては、通信サービスに支障を及ぼさないための措置として通信用空調機等の確実な排水と漏水の早期検知が重要である。
▲1▼ 便所で発生する汚水
▲2▼ 洗面所、厨房、浴室、機械室等からの雑排水
▲3▼ 雨水、地下浸透水等の自然水
4.排水設備については、法令では次の規定がある。
▲1▼ 民法第218条(雨水注瀉工作物設置の禁止)
▲2▼ 建築基準法第19条(敷地の衛生及び安全)
▲3▼ 建築基準法施行令第30条(特殊建築物及び特定区域の便所の構造)、第32条(水洗便所の屎尿浄化槽)、第33条(漏水検査)及び第129条の2の2(給水、排水その他の配管設備)
▲4▼ 下水道法第10条(排水設備の設置等)及び第11条の3(水洗便所への改造義務等)
5.日本工業規格(JIS)には、排水設備に関する様々な規定がある。
6.日常排水確実性は、維持管理を行わない場合には排水設備の物理的劣化とともに低下する。
7.排水については衛生面からの人体への影響も評価する必要があるが、これについては「A−6−2−4.排水処理安全性」で扱う。
8.排水設備、排水系統及び漏水検知設備等の状況は、設計図書、建築現況図、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0175】
A―5.雷害安全・信頼性
A―5―1.外部雷防護性
A―5―1―1.雷撃遮蔽性
・要求性能の説明
建物は、直撃雷又は接近した雷撃を受雷部に誘導し、各部位をそれらの雷撃から遮蔽できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図55(a))
建物は、図55(a)のテーブルの示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―5―1―1.雷撃遮蔽性」の性能判定値及び判定基準は、図55(b)のテーブルに記載されており、上述した図55(a)のテーブルのみなし仕様a〜hを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜hのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0176】
・みなし仕様の解説
1.雷現象は雷雲(上空の氷の粒が摩擦で帯電することにより発生)相互間や雷雲と大地・建物等との間の放電現象であり、後者を落雷という。落雷に対しては、雷電流を大地に放流するとともに、建物内に電位差を発生させないことが重要である。
2.雷保護システムは、外部雷保護システムと内部雷保護システムとで構成され、前者は受雷部システム、引下げ導線シテム及び接地システムで構成されている。
3.雷撃遮蔽性は、雷撃を受雷部に確実に誘導することにより建物等を防護し、被害を防止できる機能である。
4.建築基準法は、第33条(避雷設備)で原則として高さ20mを超える建築物への避雷設備(避雷針)の設置を義務付けている。
5.JIS A 4201 改正案の受雷部に関する要点は次の通りである。
▲1▼ 受雷部システムは、突針、水平導体及びメッシュ導体の各要素又はその組合せによる。
▲2▼ 受雷部の保護範囲の算定は、次の方法を個別に又は組合わせて実施する。
i.保護角法 :受雷部の地上高さと保護レベルに対応して保護角が変動する方法である。受雷部高さ60m超過は適用できない。
ii.回転球体法:2つ以上の受雷部に同時に接するように球体を回転させたときに、球体表(新規定) 面の包絡面から被保護物側を保護範囲とする方法である。
iii.メッシュ法:メッシュ導体で覆われた内側を保護範囲とする方法である。
▲3▼ 立地条件や建物の種類・重要度に応じてI.II.III.IVの4段階の保護レベルを設定し被保護物の種類、重要度等から妥当と考えられる保護レベルを選定して、これに対応する雷保護システムを施設する。
6.現況の詳細は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0177】
A―5―1―2.避雷用接地確実性
・要求性能の説明
建物は、受雷部に誘導した雷撃電流を大地に確実に放流できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図56(a))
建物は、図56(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―5―1―2.避雷用接地確実性」の性能判定値及び判定基準は、図56(b)のテーブルに記載されており、上述した図56(a)のテーブルのみなし仕様a〜hを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜hのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0178】
・みなし仕様の解説
1.雷現象は雷雲(上空の氷の粒が摩擦で帯電することにより発生)相互間や雷雲と大地・建物等との間の放電現象であり、後者を落雷という。落雷に対しては、雷電流を大地に放流するとともに、建物内に電位差を発生させないことが重要である。
2.雷保護システムは、外部雷保護システムと内部雷保護システムとで構成され、前者は受雷部システム、引下げ導線シテム及び接地システムで構成されている。
3.避雷用接地確実性は、受雷部に誘導された雷電流を大地に放流することにより建物等を防護し、被害を防止できる機能である。なお接地には避雷用の他、保安用及び機能用があり、内部雷保護においては三者のバランスを保つことが特に重要である。
4.JIS A 4201 改正案の避雷用接地に関する要点は次の通りである。
▲1▼ 雷電流を安全に地中へ放流するとともに、建物内の電位頻度をできるだけ小さくするため建物の鉄骨、鉄筋を積極的に引下げ導線として利用する。
▲2▼ 引下げ導線の等電位化のため、垂直方向最大20m間隔毎に水平環状導体を設置し引下げ導線と接続する。(ただし鉄骨、鉄筋を引下げ導線として使用する場合は必要ない。)
▲3▼ 構造体を使用した統合単一の接地システムが望ましく、また各種の接地目的(雷保護、低圧電力系統、通信系統)にとっても適切である。
▲4▼ やむを得ず接地システムを分離しなければならない場合は、内部雷保護システムの規定に適合する等電位ボンディングによって統合した1点へ接続する。
▲5▼ 接地極の形態は、基本的にA型(放射状接地極、垂直接地極又は板状接地極)、B型(環状接地極、基礎接地極又は網状接地極)の二つとする。
▲6▼ 地下躯体は接地抵抗値が低く分布が一様性なため接地極として使用することが望ましい。なお、引下げ導線としての鉄骨・鉄筋と基礎鉄筋とは建物建設時に接続が必要である。
5.現況の詳細は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0179】
A―5―2.内部雷防護性
A―5―2―1.電気通信設備防護性
・要求性能の説明
建物は、内部雷から電気通信設備を防護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図57(a))
電気通信設備を収容する建物は、図57(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―5―2―1.電気通信設備防護性」の性能判定値及び判定基準は、図57(b)のテーブルに記載されており、上述した図57(a)のテーブルのみなし仕様a〜fを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜fのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0180】
・みなし仕様の解説
1.雷現象は雷雲(上空の氷の粒が摩擦で帯電することにより発生)相互間や雷雲と大地・建物等との間の放電現象であり、後者を落雷という。落雷に対しては、雷電流を大地に放流するとともに、建物内に電位差を発生させないことが重要である。
2.雷保護システムは、外部雷保護システムと内部雷保護システムとで構成されている。
3.電気通信設備防護性は、落雷による装置の破損や異常な作動を防止できる機能であり、広義には外部雷からの通信線の防護を含むが、ここでは内部雷に関わるものをまとめている。
4.通信装置自体の雷防護の基本原理は、雷サージの低減、入出力線の等電位化及び装置間の等電位化の3点であり、建物は、そのようにして構成された通信システムが所期の性能を発揮できるように保証することが求められる。
5.通信装置の新接地方法は次の通りである。(出典:電気設備学会誌 1999年10月)
▲1▼ 避雷針用接地を除く各種接地極を1箇所で接続する(統合接地極)。そして最上階から最下階まで配線した接地母線と統合接地極との接続点をインターフェースAと定義し、ここで電力用接地と通信用接地(通信用、MDF用)を統合して相互の電位差をなくす。
▲2▼ 接地母線と各通信システム用接地線との各階の接続点をインターフェースB、異なる階の通信システム間を直流的に絶縁する点をインターフェースCと定義する。
▲3▼ 既存の送受信所用建物では避雷用引下げ導線が鉄筋等と多点において既に接触しているため、費用対効果の観点から避雷用接地はインターフェースAに接続しない。
▲4▼ インターフェースBで接地線を鉄筋と接続し、各装置の接地と鉄筋間の等電位化を図る。
▲5▼ 装置の接地方法には、鉄骨・鉄筋と絶縁しインターフェースBと一点で接続する方法(アイソレーテッド接地)と、鉄骨・鉄筋とも接続する方法(インテグレーテッド接地)の2種類がある。交換・伝送系装置には前者を、導波管を有し鉄骨・鉄筋と絶縁できない無線系装置には後者を適用する。
▲6▼ インターフェースCにおいて、異なる通信システム間を接続する通信線を、絶縁トランスや光リンクによって絶縁する。
7.現況の詳細は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0181】
A―5―2―2.附属設備・機器防護性
・要求性能の説明
建物は、内部雷から附属設備や各種機器を防護できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図58(a))
建物は、図58(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―5―2―2.附属設備・機器防護性」の性能判定値及び判定基準は、図58(b)のテーブルに記載されており、上述した図58(a)のテーブルのみなし仕様a〜iを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜iのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0182】
・みなし仕様の解説
1.雷現象は雷雲(上空の氷の粒が摩擦で帯電することにより発生)相互間や雷雲と大地・建物等との間の放電現象であり、後者を落雷という。落雷に対しては、雷電流を大地に放流するとともに、建物内に電位差を発生させないことが重要である。
2.雷保護システムは、外部雷保護システムと内部雷保護システムとで構成されている。
3.附属設備・機器防護性は、落雷による機器の破損、異常な作動及び関連する災害を防止できる機能であり、広義には外部雷からの電力線・通信線の防護を含むが、ここでは内部雷に関わるものをまとめている。なお、BAS、防災防犯システム、自動制御システム等との融合が進んでいる自家用の情報通信装置も本項目の対象とする。
4.附属設備・機器の雷保護は、従来は配電システムや特殊な設備を除いて特に考慮されていなかったが、近年は、電子化や省エネ化による過電圧耐力の低い設備の普及や情報ネットワーク化により、電気通信設備同様内部雷による被害が発生しやすい状況となっている。
5.附属設備・機器の雷保護のためには、通信装置同様、設備自体の遮蔽、雷サージ耐力向上や電位差防止等に配慮するとともに、全体を1つのシステムとしてとらえ、総合的な防護措置を講ずる必要がある。基本的考え方は次の通りである。
▲1▼ 建物内部の金属部分を相互に接続し、等電位化を図る。
▲2▼ 複数のケーブルが導入されている場合はケーブルルートを同一とし、ループを作らない。
▲3▼ ケーブルは金属管に挿入したり、シールドケーブルを使用し遮蔽を行う。
▲4▼ 適切な動作電圧の避雷器を電子機器内部又は直近に接続し、安全電圧以下に制限する。
6.統合レベルの設定は、施設や機器・装置固有のニーズを踏まえて行う必要がある。
7.現況の詳細は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0183】
A―6.生活安全・信頼性
A―6―1.傷害・損傷防止性
A―6―1―1.転落防止性
・要求性能の説明
建物は、日常の使用や維持管理等の作業における転落を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図59(a))
建物は、図59(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―1―1.転落防止性」の性能判定値及び判定基準は、図59(b)のテーブルに記載されており、上述した図59(a)のテーブルのみなし仕様a〜kを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜kのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0184】
・みなし仕様の解説
1.建物は、日常の使用や維持管理等の作業において、人や設備の傷害・損傷が防止できるものでなければならない。これらの傷害・損傷の要因としては、転落、転倒、落下物、設備及び危険物がある。
2.転落、転倒、落下物、設備及び危険物の危険に対しては、日常の安全活動等による建物の居住者や利用者の意識の高揚も不可欠であるが、それと併せて建物等の構造に起因する要因は未然に除去しておかなければならない。
3.建物の日常の使用や維持管理等の作業において発生する転落の要因で建物等の構造に起因するものは、次の通りである。
▲1▼ 識別困難な床開口
▲2▼ 手すりの不備
▲3▼ 照度不足(特にたて穴シャフト)
▲4▼ 表示の不備
▲5▼ 作業用安全措置の不備
4.建築基準法施行令では、第25条(階段及びその踊場の手すり)及び第126条(屋上広場等)で転落防止のための手すりに関する規定がある。
5.労働安全衛生法第3条(事業者等の責務)では、職場における労働者の安全と健康の確保等に関する事業者の責務について規定している。
6.NTTの通信用建物については、技術資料で「勤務者、来訪者が建物を安全に利用できるように設計する」旨規定している他、転落防止に関する次の規定がある。
▲1▼ 外壁に設ける機器搬入口における手すりの構造及び安全帯用吊り金物の設置
▲2▼ 屋上にメンテナンスの必要な機器がある場合の手すり等の設置
▲3▼ バルコニー、ゴンドラ等の設置が困難な窓の室内側へのロープ掛金物等の設置
▲4▼ たて穴シャフトの転落防止措置
▲5▼ 鉄塔プラットホームの手すり等
7.転落防止措置の状況は、設計図書、建築現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0185】
A―6―1―2.転倒防止性
・要求性能の説明
建物は、日常の使用や維持管理等の作業における転倒を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図60(a))
建物の床は、図60(a)のテーブルの示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―1―2.転倒防止性」の性能判定値及び判定基準は、図60(b)のテーブルに記載されており、上述した図60(a)のテーブルのみなし仕様a〜fを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜fのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0186】
・みなし仕様の解説
1.建物は、日常の使用や維持管理等の作業において、人や設備の傷害・損傷が防止できるものでなければならない。これらの傷害・損傷の要因としては、転落、転倒、落下物、設備及び危険物がある。
2.転落、転倒、落下物、設備及び危険物の危険に対しては、日常の安全活動等による建物の居住者や利用者の意識の高揚も不可欠であるが、それと併せて建物等の構造に起因する要因は未然に除去しておかなければならない。
3.建物の日常の使用や維持管理等の作業において発生する転倒の要因で建物等の構造に起因するものは、次の通りである。
▲1▼ 識別困難な床の段差又は勾配
▲2▼ 識別困難な床の段差又は勾配の色分け又は表示等の不備
▲3▼ 照度不足
▲4▼ 床表面の仕上げ
4.建築基準法施行令では、転倒防止性に関しては階段等について次の各条文で間接的に規定している。
第23条(階段及びその踊場の幅並びに階段のけあげ及び踏面の寸法)
第24条(踊場の位置及び踏幅)
第26条(階段に代わる傾斜路)
5.労働安全衛生法第3条(事業者等の責務)では、職場における労働者の安全と健康の確保等に関する事業者の責務について規定している。
6.NTTの通信用建物については、技術資料で「勤務者、来訪者が建物を安全に利用できるように設計する」旨規定している他、通信機械室の照度の確保及び予備灯の設置等の規定がある。
7.転倒防止措置の状況は、設計図書、建築現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。必要に応じて、通信機器収容室の水平面照度を計測する。
【0187】
A―6―1―3.落下物防止性
・要求性能の説明
建物等は、それを構成する部材、設備及び構築物等の落下による人身及び設備等への危害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図61(a))
建物の屋根材、外壁材、外部建具並びに屋上及びバルコニー等に設置された建物附属設備及び構築物等は、図61(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―1―3.落下物防止性」の性能判定値及び判定基準は、図61(b)のテーブルに記載されており、上述した図61(a)のテーブルのみなし仕様a〜fを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜fのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0188】
・みなし仕様の解説
1.建物は、日常の使用や維持管理等の作業において、人や設備の傷害・損傷が防止できるものでなければならない。これらの傷害・損傷の要因としては、転落、転倒、落下物、設備及び危険物がある。
2.転落、転倒、落下物、設備及び危険物の危険に対しては、日常の安全活動等による建物の居住者や利用者の意識の高揚も不可欠であるが、それと併せて建物等の構造に起因する要因は未然に除去しておかなければならない。
3.道路や広場等、人車の通行の頻繁な場所で物が落下すると、重大な人身事故や物損事故につながる。
このため、落下事故の防止に対しては、建物の所有者(NTT)、占有者(NTT等)及び管理者(NTTファシリティーズ)は重い社会的責任を負っている。民法第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)は、落下事故防止においては特に念頭に置いておく必要がある。
4.落下物としては、屋上の設備又は構築物若しくは躯体又は仕上げ材等がほとんどであり、落下の原因は次の2つに大別される。
ただし▲1▼の据え付けの強度不足については、据え付けボルト等の経年劣化が原因で発生する場合もある。
▲1▼ 調合、据え付け又は付着等の強度不足
▲2▼ 経年劣化による剥落
5.経年劣化による剥落が発生する場合は、一般に建物の劣化が相当進んでおり、他の機能(例えば防水性、耐火性、遮音性等)も低下している可能性が高い。
6.建築基準法では、落下物防止性に関して第37条(建築材料の品質)で間接的に規定している。
7.建築基準法施行令では、落下物防止性に関して次の各条文で間接的に規定している。
第39条(屋根ふき材等の緊結)
第39条の2(屋上から突出する水槽等)
第115条(建築物に設ける煙突)
第139条(煙突及び煙突の支線)
第141条(広告塔又は高架水槽等)
8.労働安全衛生法第3条(事業者等の責務)では、職場における労働者の安全と健康の確保等に関する事業者の責務について規定している。
9.NTTの通信用建物については、技術資料で「勤務者、来訪者が建物を安全に利用できるように設計する」旨規定している。
10.落下物防止措置の状況は、設計図書、建築現況図、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0189】
A―6―1―4.設備傷害防止性
・要求性能の説明
建物附属設備は、日常の使用における人身への危害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図62(a))
建物附属設備は、図62(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―1―4.設備傷害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図62(b)のテーブルに記載されており、上述した図62(a)のテーブルのみなし仕様a〜hを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜hのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0190】
・みなし仕様の解説
1.建物は、日常の使用や維持管理等の作業において、人や設備の傷害・損傷が防止できるものでなければならない。これらの傷害・損傷の要因としては、転落、転倒、落下物、設備及び危険物がある。
2.転落、転倒、落下物、設備及び危険物の危険に対しては、日常の安全活動等による建物の居住者や利用者の意識の高揚も不可欠であるが、それと併せて建物等の構造に起因する要因は未然に除去しておかなければならない。
3.建物の日常の使用や維持管理等の作業において発生する設備障害の内訳は次の通りであり、これらの防止に関しては、法令で多数の規定がある。
▲1▼ 感電
▲2▼ 火傷
▲3▼ ガス中毒
▲4▼ 爆発
▲5▼ 物理的傷害(落下、衝突、接触又は巻込み等)
4.建築基準法では設備障害防止性に関して次の第32条(電気設備)及び第34条(昇降機)で規定している。
5.建築基準法施行令では、設備障害防止性に関して第129条の4(エレベーターの主索、綱車、巻胴、支持ばり及びレールの構造)等の各条で規定しており、これを補足する種々の建設省告示がある。
6.電気設備に関する技術基準を定める省令(通商産業省令第52号(平成9年))では電気設備の安全に関して第4条(電気設備における感電、火災等の防止)等の各条で規定している。
7.ガス事業法では、ガス用品の安全に関して第39条の8(第一種ガス用品の型式の承認)等の各条で規定している。
8.労働安全衛生法第3条(事業者等の責務)では、職場における労働者の安全と健康の確保等に関する事業者の責務について規定している。
9.ボイラー及び圧力容器安全規則(昭和47年労働省令第33号)では、ボイラー及び圧力容器の設置等について規定している。
10.NTTの通信用建物については、技術資料で「勤務者、来訪者が建物を安全に利用できるように設計する」旨規定している他、通信機器収容室の床の帯電防止や排気筒のガス漏れ防止等についての規定がある。
11.建物附属設備の人身事故防止措置の状況は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0191】
A―6―1―5.危険物傷害防止性
・要求性能の説明
建物は、その保管する燃料用可燃物の流出又は引火等による人身及び設備等への危害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図63(a))
建物は、図63(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―1―5.危険物傷害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図63(b)のテーブルに記載されており、上述した図63(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0192】
・みなし仕様の解説
1.建物は、日常の使用や維持管理等の作業において、人や設備の傷害・損傷が防止できるものでなければならない。これらの傷害・損傷の要因としては、転落、転倒、落下物、設備及び危険物がある。
2.転落、転倒、落下物、設備及び危険物の危険に対しては、日常の安全活動等による建物の居住者や利用者の意識の高揚も不可欠であるが、それと併せて建物等の構造に起因する要因は未然に除去しておかなければならない。
3.建物の日常の使用や維持管理等の作業において発生する危険物障害の内訳は、次の通りである。
▲1▼ 引火
▲2▼ 爆発
▲3▼ 流出
▲4▼ 汚染
4.建物の日常の使用や維持管理等の作業において発生する危険物障害の防止のための措置は次の通りである。
▲1▼ 危険物保管場所の選定
▲2▼ 危険物保管場所の構造の選定及び換気設備等の設置
▲3▼ 危険物の類別・性質・品名の管理及び数量表示
5.建築基準法では第27条(耐火建築物又は準耐火建築物としなければならない特殊建築物)及び第48条(用途地域)で、危険物に関わる建物の建築を規制している。
6.建築基準法施行令では、危険物に関して第116条(危険物の数量)等の各条で規定している。
7.消防法では、危険物に関して第10条(危険物の貯蔵・取扱の制限等)等の各条で規定している。
8.危険物の規制に関する政令では、危険物に関して第10条(屋内貯蔵所の基準)等の各条で規定しており、貯蔵所の構造、規模、設備及び表示等についての定めがある。
9.NTTの通信用建物については技術資料で「勤務者、来訪者が建物を安全に利用できるように設計する」旨規定している他、「危険物の爆発に対する配慮を行う。」との定めがある。
10.危険物による危害の防止措置の状況は、設計図書、建築現況図、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0193】
A―6―2.人体無害性
A―6―2―1.建材無害性
・要求性能の説明
建物は、人体の健康上安全な性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図64(a))
建物に使用される建材は、図64(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―2―1.建材無害性」の性能判定値及び判定基準は、図64(b)のテーブルに記載されており、上述した図64(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0194】
・みなし仕様の解説
1.人体無害性とは、有害物質、空気汚染及び水質汚染等から人命及び健康を保護することができる機能である。
2.建物の高層化に伴う高密閉化、空調の経済化、設備や材料選択の不備等により、室内空気質が低下して発生する健康障害(シックビル症候群)が問題となっている。
3.建材無害性は、シックビル症候群の直接の原因の一つにもなっている建材等において、有害物質を含有又は発散しないものを選定することによって確保される。
4.建築基準法では、建材等の選定に関しては第37条(建築材料の品質)で衛生上の見地からも規定している。
5.建築基準法施行令では、第144条の3(安全上、防火上又は衛生上重要である建築物の部分)で衛生上の見地から重要な部位について規定している。
6.NTTの建物等においては、技術資料で「特別管理産業廃棄物に指定されている等、人体や環境に影響を与える物質や特別な廃棄処理を必要とする物質(以下有害物質)は原則として使用しないこと。」と規定している。この場合の対象となる有害物質は、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」に定める「特別管理産業廃棄物」に指定されている物質であり、具体的には、PCB、アスベスト及び防腐処理木材である。
7.建材に含まれる主な化学物質と症状は図172に示す通りである。
8.建材使用の状況は、設計図書、建築現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0195】
A―6―2―2.空気品質安全性
・要求性能の説明
建物は、人体の健康上及び衛生上安全な空気品質を確保できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図65(a))
空調設備及び換気設備は、図65のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―2―2.空気品質安全性」の性能判定値及び判定基準は、図65(b)のテーブルに記載されており、上述した図65(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0196】
・みなし仕様の解説
1.人体無害性とは、有害物質、空気汚染及び水質汚染等から人命及び健康を保護することができる機能である。
2.建物の高層化に伴う高密閉化、空調の経済化、設備や材料選択の不備等により、室内空気質が低下して発生する健康障害(シックビル症候群)が問題となっている。
3.空気品質安全性は、浮遊物質や有害な気体の含有率を規制し、それを達成するための空調設備及び換気設備の運転を健全な状態に維持することによって確保される。
4.建築基準法では、第28条(居室の採光及び換気)で居室における新鮮空気の確保のための開口部及び換気設備について規定している。
5.建築基準法施行令では、第20条の2(換気設備の技術的基準)等の各条で換気設備の構造や性能について規定しており、これらを補足するいくつかの建設省告示がある。
6.建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称「ビル衛生管理法」又は「ビル管法」)では、第1条(特定建築物)及び第4条(環境衛生管理基準)で規定している。
7.建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令では、環境衛生管理基準等について規定している。
8.労働安全衛生法では、労働災害の中にガス、粉じん等による疾病等を含めており、それらの防止の観点から衛生管理について規定している。
9.労働安全衛生法施行令では、衛生管理に関して第4条(衛生管理者を選任すべき事業場)及び第21条(作業環境測定を行うべき作業場)で規定している。
10.空調設備及び換気設備の状況は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
11.空調吹出口の汚れの目立つ建物は、空調配管の汚れが進行している可能性が高いため、全面清掃を前提とした詳細調査を実施する。
12.法定償却年数を超過した空調用の機器及び配管は錆び、腐食又は損傷が進行している可能性が高いため、更改を前提とした詳細調査を実施する。
【0197】
A―6―2―3.給水給湯品質安全性
・要求性能の説明
建物は、人体の健康上及び衛生上安全な給水品質及び給湯品質を確保できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図66(a))
給水設備及び給湯設備は、図66(a)に示すテーブルの各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―2―3.給水給湯品質安全性」の性能判定値及び判定基準は、図66(b)のテーブルに記載されており、上述した図66(a)のテーブルのみなし仕様a〜fを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜fのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0198】
・みなし仕様の解説
1.人体無害性とは、有害物質、空気汚染及び水質汚染等から人命及び健康を保護することができる機能である。
2.給水給湯品質安全性は、人が毎日生活に使用する給水給湯品質の水質汚染を未然に防止し、健康と衛生を保持するとともに、給水給湯を使用する設備機器の正常な作動を保証することができる機能である。
3.建築基準法では、第87条の2(建築設備への準用)及び第88条(工作物への準用)等で建築設備の衛生の確保について間接的に規定している。
4.建築基準法施行令では、第129条の2の2(給水、排水その他の配管設備)等の各条で給水給湯設備の基準について規定しており、飲料水の配管設備については、これらを補足する建設省告示がある。
5.建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称「ビル衛生管理法」又は「ビル管法」)では、第1条(特定建築物)及び第4条(環境衛生管理基準)で規定している。
6.建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令では、環境衛生管理基準等について第1条(特定建築物)及び第2条(建築物環境衛生管理基準)で規定している。
7.NTTの建物等においては、技術資料で飲料用給水栓における水の残留塩素量及び設備機器に補給水の水質について規定している。
8.給水設備及び給湯設備の状況は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
9.法定償却年数を超過した給水・給湯用の機器及び配管は錆び、腐食又は損傷が進行している可能性が高いため、更改を前提とした詳細調査を実施する。
【0199】
A―6―2―4.排水処理安全性
・要求性能の説明
建物は、人体の健康上及び衛生上安全な排水処理を実施できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図67(a))
排水設備は、図67(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―2―4.排水処理安全性」の性能判定値及び判定基準は、図67(b)のテーブルに記載されており、上述した図67(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0200】
・みなし仕様の解説
1.人体無害性とは、有害物質、空気汚染及び水質汚染等から人命及び健康を保護することができる機能である。
2.排水処理安全性は、毎日の生活で発生する下水を敷地外に確実に排出し、健康と衛生を確保することができる機能である。
3.生活廃水、その他の排水は、適切な管径と勾配を有する設備により、人体に害を及ぼすことなく確実かつ、衛生的に排出しなければならない。また、生活廃水、その他の排出は地域の排水施設の状況に適応させ適切な水質及び方法により排出しなければならない。
4.排水管には、管のつまり、管及び接合部の損傷、可燃性溶剤等下水処理機能に悪影響を与える物質を排出してはならない。その主なる物質を下に示す。
▲1▼ 油・グリース(脂肪)その他可燃性溶剤。
▲2▼ 土砂・石粉・硝子くず・金剛砂・石こう。
▲3▼ 金銀材の切片・削り粉・水銀。
▲4▼ 毛髪
▲5▼ その他薬品類(特殊排水用として処理する場合を除く)
5.建築基準法では、第87条の2(建築設備への準用)及び第88条(工作物への準用)等で建築設備の衛生の確保について間接的に規定している。
6.建築基準法施行令では、第129条の2の2(給水、排水その他の配管設備)等の各条で排水設備の基準について規定しており、これらを補足する建設省告示がある。
7.建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称「ビル衛生管理法」又は「ビル管法」)では第1条(特定建築物)及び第4条(環境衛生管理基準)で規定している。
8.建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令では、環境衛生管理基準等について第1条(特定建築物)及び第2条(建築物環境衛生管理基準)で規定している。
9.排水設備の状況は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
10.法定償却年数を超過した排水配管は錆び、腐食又は損傷が進行している可能性が高いため、更改を前提とした詳細調査を実施する。
11.法定償却年数を超過した排水ポンプは作動不安定又は能力低下等の可能性が高いため、更改を前提とした詳細調査を実施する。
【0201】
A―6―2―5.廃棄物処理安全性
・要求性能の説明
建物は、その敷地内で発生するすべての一般廃棄物及び産業廃棄物その他の有害物質(他の敷地内で発生する産業廃棄物その他の有害物質を保管する場合を含む。)の流出による人身・設備等への危害及び地球環境の悪化を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図68(a))
建物は、図68(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―2―5.廃棄物処理安全性」の性能判定値及び判定基準は、図68(b)のテーブルに記載されており、上述した図68(a)のテーブルのみなし仕様a〜kを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜kのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0202】
・みなし仕様の解説
1.廃棄物処理の不備は、人体に深刻な危害を及ぼすとともに、企業イメージの低下にもつながる事態を招く。このため、継続的且つ適切な保管・処理の実施が必要である。
2.「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)」によると、「廃棄物」とは、「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であって、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによって汚染された物を除く。)をいう。」と定義されている。
3.廃棄物は、「一般廃棄物」と「産業廃棄物」とに大別される。「一般廃棄物」とは、生活の場から発生するごみ、粗大ごみ、し尿、糞尿等をいい、「産業廃棄物」とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち政令で定めるもの(廃油、廃酸、廃アルカリ、撤去に伴い発生するコンクリート屑等の合計19種類)をいう。
また、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性のあるものを政令で定めており、これを「特別管理産業廃棄物」と呼んでいる。廃石綿、廃PCB等がこれに含まれる。本項目で扱う廃棄物処理安全性は産業廃棄物及び特別管理産業廃棄物を対象とする。ただし一般廃棄物の適切な処理が必要であることは言うまでもない。
4.送受信所用建物及び事務所用建物で発生する有害物質としては、ターボ冷凍機に使用されているフロンガス、予備エンジン室の吸音材等に使用されたアスベスト、電気設備の絶縁剤等に使用されたPCB、通信機械室の消火設備に使用されたハロンガス、駐車場等の消火設備に使用されたCO2 が代表的であり、現在NTT及びファシリティーズではこれらの管理が実施されている。
5.PCBについては、従来は処理方法がなかったため、所有者による保管が義務付けられてきたが、最近現地での無害化処理技術が実用化されており、NTTにおいても近隣の合意が得られれば実施されるものと予想される。
6.やや古いデータではあるが、厚生白書(昭和52年版)は全国の産業廃棄物の量は約3億2千万tと推定している。
7.敷地内の産業廃棄物等の保管場所、保管方法及び搬出・処分方法は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。保管方法及び搬出・処分方法の現地調査においては、建物入居者へのヒアリングを主体とする。
【0203】
A―6―3.防犯性(セキュリティ)
A―6―3―1.不審者侵入防止性
・要求性能の説明
建物は、不審者の侵入を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図69(a))
建物は、図69(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―3―1.不審者侵入防止性」の性能判定値及び判定基準は、図69(b)のテーブルに記載されており、上述した図69(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0204】
・みなし仕様の解説
1.NTTの建物への不審者の侵入を防止することは、生命・財産の保護はもとより、電気通信サービスの信頼性の確保のために不可欠である。
2.不審者の侵入防止に関わる業務は、建物管理者と警備業者とが密接な連携を図って実施する必要がある。警備業の業務内容等に関しては警備業法で規定している。
3.NTTの通信用建物においては、通信機械室への不審者侵入防止を目的として、敷地、建物又は室のいずれかを単位とした警戒線の設定と、警戒線の構造や建物使用形態に見合ったレベルの施錠管理方式の適用とを要求している。
4.前項に加え、NTTの建物においては、建物管理の効率化を目的として、警備の無人化が進められている。警備員が常駐していないこれらの建物のセキュリティを確保するためには、出入口の施錠管理を徹底することが必要である。
5.NTTファシリティーズでは、前各項の考え方に基づき、NTTの協力の下に、例えば、トータルセーフティシステム(登録商標:NTTファシリティーズの施錠管理システム。通称WAKENET)の導入を推進している。このトータルセーフティシステム(登録商標)は、ISDN回線とICカードを使用した施錠管理システムであり、入退館システムと警報監視システムとで構成されている。
6.警戒線及び施錠管理方式の状況は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0205】
A―6―3―2.侵入通報確実性
・要求性能の説明
建物は、万一不審者が侵入した場合には迅速且つ確実に建物管理者等に通報できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図70(a))
建物は、図70(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―6―3―2.侵入通報確実性」の性能判定値及び判定基準は、図70(b)のテーブルに記載されており、上述した図70(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0206】
・みなし仕様の解説
1.業務用の建物においては、建物管理の効率化を目的として警備の無人化が進められている。警備員が常駐していないこれらの建物に万一不審者が侵入した場合に的確に対応するためには、警備の一次対応機能を有する警報監視センタに対して、不審者侵入の警報が確実に転送されることが必要である。また、警報の受信と対応に関しては、建物管理者と警備業者とが密接な連携を図って実施する必要がある。警備業の業務内容等に関しては警備業法で規定している。
2.上記業務用の建物の管理においては、例えば、前項の考え方に基づき、これらへのトータルセーフティシステム(登録商標)がある。
3.トータルセーフティシステム(登録商標)は、ISDN(登録商標)回線とICカードを使用した施錠管理システムであり、入退館システムと警報監視システムとで構成されている。このうち警報監視システムの構成は、次の通りである。
火災 :火災の発生
防犯 :違法な侵入
水位 :受水層・高架水槽などの低水位・高水位
ICカードリーダユニット:故障、施錠不良等の異常
4.無人ビルにおける対応は次の通りである。
5.警備方式及び警報装置の状況は、設計図書、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0207】
A―7.通信機械室内環境安全・信頼性
A―7―1.空気品質信頼性
A―7―1―1.温湿度信頼性
・要求性能の説明
建物は、電気通信設備が常に正常に作動するための温湿度環境を維持できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図71(a))
建物は、図71(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―7―1―1.温湿度信頼性」の性能判定値及び判定基準は、図71(b)のテーブルに記載されており、上述した図71(a)のテーブルのみなし仕様a及びbの双方(全て)を満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a及びdのいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0208】
・みなし仕様の解説
1.通信機械室内の空気品質は、電気通信サービスの信頼性確保のうえで極めて重要である。
2.通信機械室内の空気品質は、温湿度と空気清浄度とに大別される。
3.温湿度に関しては、NTTが通信装置の種別に対応して要求条件を定めている。
4.通信装置の作動の保証とは別に、保守者が常駐する建物及び保守頻度の高い建物においては保守作業者の健康・衛生、ひいては保守の確実性の観点から、居室に準拠した温湿度条件を確保する必要がある。
5.温湿度は、設計段階における空調装置の信頼性の向上と、運転を健全な状態に維持することによって確保される。
6.設計段階における空調装置の信頼性を向上させるには、空調機・系統の多重化を行い、機器構成はできるだけ単純で、かつ使用部品を少なくする他、予備電源の確保、冷水槽の設置及び冷却水の確保等を含む空調システム全体の信頼性の向上が必要である。
7.通信機械室内の温湿度状況は、現地計測(同一室内複数箇所実施)により確認する。
8.温度は床からの高さにより差があり、上部になるほど上昇する傾向があるため、温度の判定は最も高さの大きい架の上端の位置において実施する。
【0209】
A―7―1―2.空気清浄度信頼性
・要求性能の説明
建物は、電気通信設備が常に正常に作動するための空気清浄度を維持できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図72(a))
建物は、図72(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―7―1―2.空気清浄度信頼性」の性能判定値及び判定基準は、図72(b)のテーブルに記載されており、上述した図72(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0210】
・みなし仕様の解説
1.通信機械室内の空気品質は、電気通信サービスの信頼性確保のうえで極めて重要である。
2.通信機械室内の空気品質は、温湿度と空気清浄度とに大別される。
3.空気清浄度に関しては、NTTは、浮遊粉塵量、一酸化炭素含有率、二酸化炭素含有率等の含有率を通信機器の機能上、および保健衛生上の影響が無い値を目標としなければならないとしている。
4.通信機器の機能と空気清浄度の最低条件との対応関係は必ずしも明確でなく、このことは通信機械室の清掃仕様の決定に際しても議論の対象となることがある。
しかし、保守作業者の健康・衛生、ひいては保守の確実性を考えれば、居室に準拠した現行の要求条件の設定は妥当であるといえる。
5.空気品質清浄度は、空調設備及び換気設備の運転を健全な状態に維持することによって確保される。
6.建築基準法では、第28条(居室の採光及び換気)で居室における新鮮空気の確保のための開口部及び換気設備について規定している。
7.建築基準法施行令では、第20条の2(換気設備の技術的基準)等の各条で換気設備の構造や性能について規定しており、これらを補足するいくつかの建設省告示がある。
8.建築物における衛生的環境の確保に関する法律(通称「ビル衛生管理法」又は「ビル管法」)では、第1条(特定建築物)及び第4条(環境衛生管理基準)で規定している。
9.建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令では、環境衛生管理基準等について第1条(特定建築物)及び第2条(建築物環境衛生管理基準)で規定している。
10.労働安全衛生法では、労働災害の中にガス、粉じん等による疾病等を含めており、それらの防止の観点から衛生管理について規定している。
11.労働安全衛生法施行令では、衛生管理に関して第4条(衛生管理者を選任すべき事業場)及び第21条(作業環境測定を行うべき作業場)で規定している。
12.通信機械室内の空気清浄度(浮遊粉塵量、CO2 濃度及びCO濃度)状況は、現地計測(同一室内複数箇所実施)により確認する。
【0211】
A―7―2.電磁波障害防止性
A―7―2―1.外部電磁波障害防止性
・要求性能の説明
建物は、建物の外部で発生する電磁波の電気通信設備に及ぼす害をを防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図73(a))
建物は、図73(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―7―2―1.外部電磁波障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図73(b)のテーブルに記載されており、上述した図73(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0212】
・みなし仕様の解説
1.近年、急激な電子機器の普及に伴い、建物内外の空間に様々な電磁波が錯綜して電磁環境が悪化しており、建物面での電磁波防護の必要性が増している。
2.通信施設を有する建物等においては、電磁波は通信装置に悪影響を及ぼし、通信サービスの障害を発生させる危険があるため、電磁環境の的確な評価と障害防止措置が必要である。装置側での規制の動きは年々強まっており、シールドキャビネットを採用する等、対策は既に行われているが、建物による遮蔽措置が必要な場合もある。
3.外部の電磁波の中で、通信装置に害を及ぼす妨害波に対しては、建物内への侵入を防止するための遮蔽措置が必要である。主な遮蔽措置としては、外壁の室内側に金属箔を貼る方法がある。その場合、金属箔の継ぎ目が遮蔽の弱点になりやすいため、十分な重ねをとることが必要である。
4.遮蔽措置が必要な建物においては、3項に加えて、窓等の開口部は、できるだけふさぎ、且
5.電磁波については、ISO9001でも要求事項を定めている。
6.外部電磁波防止措置の状況は、設計図書、建築現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0213】
A―7―2―2.内部電磁波障害防止性
・要求性能の説明
建物は、建物の内部で発生する電磁波の電気通信設備に及ぼす害をを防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図74(a))
建物は、図74(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―7―2―2.内部電磁波障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図74(b)のテーブルに記載されており、上述した図74(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0214】
・みなし仕様の解説
1.近年、急激な電子機器の普及に伴い、建物内外の空間に様々な電磁波が錯綜して電磁環境が悪化しており、建物面での電磁波防護の必要性が増している。
2.NTTの建物等においては、電磁波は通信装置に悪影響を及ぼし、通信サービスの障害を発生させる危険があるため、電磁環境の的確な評価と障害防止措置が必要である。装置側での規制の動きは年々強まっており、シールドキャビネットを採用する等、対策は既に行われているが、建物による遮蔽措置が必要な場合もある。
3.機械室スペース等の事情により、電力室付近等に通信装置を設置する場合においては、電力装置等から発生する電磁波が通信装置に害を及ぼさないようにこれを遮蔽する必要がある。遮蔽措置としては、まず電力装置等からの距離をできる限り離すことが必要であるが、十分な離隔距離を確保できない場合においては、間仕切壁等に金属箔又はエキスパンドメタルを貼り、遮蔽性能を高める必要がある。
4.遮蔽壁には、できるだけ開口部を設けないようにし、やむを得ず開口部を設けるときは、前室の設置による扉の二重化や、ケーブル貫通部周りの導電性巾着の使用等が望ましい。
5.電磁波については、ISO9001でも要求事項を定めている。
6.内部電磁波防止措置の状況は、設計図書、建築現況図、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0215】
A―7―3.騒音・振動防止性
A―7―3―1.外部騒音障害防止性
・要求性能の説明
建物は、建物の外部で発生する騒音の電気通信設備に及ぼす害をを防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図75(a))
建物は、図75(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―7―3―1.外部騒音障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図75(b)のテーブルに記載されており、上述した図75(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0216】
・みなし仕様の解説
1.騒音は、安全・信頼性よりも快適性に関わる部分が大きいが、ここでは電気通信設備の信頼性への影響のみを対象とする。参考に、騒音(内部・外部を問わず)の分類を示す。
▲1▼ 透過音:機械室内に設置された冷凍機、ボイラ、ポンプ、送風機などで発生する騒音が、壁体等を透過して隣接する居室などに伝えられるものである。
▲2▼ 伝達音:送風機やポンプの騒音がダクトや配管によって伝達されるものである。
▲3▼ 固体音:機器類の振動が基礎から建物構造体に伝えられ、居室内の天井や壁が振動して新たな音源となり、室内に騒音を発するものである。
2.外部騒音対策のほとんどは、透過音の防止(遮音)である。このため構造躯体(特に外壁)及び外部建具の遮音性能を確保することが重要である。
3.敷地に近接して工場、線路敷又は通過交通量の大きな道路等の騒音源がある場合は、建築設備の内部騒音許容値の測定方法に倣って電気通信設備近傍の騒音レベルを確認する。なお、外部騒音源は、電磁波の発生を伴う場合があるため、その影響も併せて確認する。
4.騒音一般に関しては、著しい騒音を発生する工場又は事業場を「特定施設」に指定して騒音レベルを規制している。
5.通信用建物においては、外部建具の気密性能を規定することとする。
6.外部騒音レベルの確認は、現地計測により実施する。
7.通信機械室に面する外部窓及び外部扉等の遮音性能の状況は、設計図書、建築現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0217】
A―7―3―2.内部騒音障害防止性
・要求性能の説明
建物は、建物の内部で発生する騒音の電気通信設備に及ぼす害をを防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図76(a))
建物は、図76(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―7―3―2.内部騒音障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図76(b)のテーブルに記載されており、上述した図76(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0218】
・みなし仕様の解説
1.内部騒音は、外部騒音同様、安全・信頼性よりも快適性に関わる部分が大きいが、ここでは電気通信設備の信頼性への影響のみを対象とする。参考に、内部騒音の分類を示す。
▲1▼ 透過音:機械室内に設置された冷凍機、ボイラ、ポンプ、送風機などで発生する騒音が、壁体等を透過して隣接する居室などに伝えられるものである。
▲2▼ 伝達音:送風機やポンプの騒音がダクトや配管によって伝達されるものである。
▲3▼ 固体音:機器類の振動が基礎から建物構造体に伝えられ、居室内の天井や壁が振動して新たな音源となり、室内に騒音を発するものである。
2.内部騒音対策は、前項の分類に対応して次の通りである。このうち透過音の防止(遮音)は外部騒音の対策と同様であるが、内部の建具や間仕切等も対象となる点が異なる。内部騒音のうち伝達音及び固体音(躯体等を伝達され、音源から離れたところで新たな騒音源となって発生する騒音)は経路が複雑かつ多様である。これらを防止するためには、騒音源に近い所から、伝達経路となり得る設備配管との接続部や躯体と接する個所に対して優先的に対策を講ずるのが賢明といえる。
▲1▼ 室内の騒音源の減少
▲2▼ 透過音の防止(遮音)
▲3▼ 伝達音の防止
▲4▼ 固体音の防止
3.電気通信設備に対する騒音許容値は、「設備機器からの騒音レベルは、本体より1m離れた高さ1.5m の地点において60dB(A)以下とする。」と規定されている。
(注)音圧レベルには、次に示すC特性音圧レベルとA特性音圧レベルの2種類がある。
C特性音圧レベル:63kHz〜4kHz(一般騒音の主要な周波数範囲)では特性がフラットであるC特性のフィルターを掛けて求める音圧レベルをいい、騒音の物理的な音の強さにほぼ等しい。
A特性音圧レベル:騒音レベルとも呼ばれる。測定する騒音に人の聴感に合わせて補正する回路(A特性)のフィルターを掛けて求める音圧レベルである。人が聞いた時に感じる音の大きさ(ラウドネス)は、音の強さだけでなく、周波数にも関係があり、耳の感度は2kHz〜4kHzが最も良く、低い周波数では非常に悪くなる。A特性は、ラウドネス曲線(各周波数の音が1kHzの音と同じ大きさに聞こえる音圧レベルを示す曲線)の40phonの逆特性に近似した特性である。
4.空調設備の騒音は、一般に種々の周波数成分を広範に連続的に含み、時間的な変動は比較的少い。しかし、場合によってはある周波数成分が特に大きいものや、断続的に変化する騒音もある。このような騒音に対しては、補正を加えることが望ましいといわれている。
5.内部騒音レベル、透過音、伝達音又は固体音の確認は、現地計測及び現地調査により実施する。
【0219】
A―7―3―3.振動障害防止性
・要求性能の説明
建物は、建物の内部及び外部で発生する振動の電気通信設備に及ぼす害をを防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図77(a))
建物は、図77(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「A―7―3―3.振動障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図77(b)のテーブルに記載されており、上述した図77(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうちいずれかでも満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0220】
・みなし仕様の解説
1.振動は、騒音同様、安全・信頼性よりも快適性に関わる部分が大きいが、ここでは電気通信設備の信頼性への影響のみを対象とする。
2.振動の発生源は次の通りである。
▲1▼ 冷凍機
圧縮機の振動が主である。吸収式冷凍機は圧縮機を持たないが、直焚き形のものでは燃焼器や燃焼空気用の送風機の振動が問題になることがある。
▲2▼ ポンプ、送風機
羽根車の不つりあいによるもの、流体の脈動によるものなどがある。前者は回転数及びその整数倍の振動数の振動が大きい。
▲3▼ 配管、ダクト
配管では、一般にはポンプから伝わる機械振動と、ポンプで与えられた水の脈動による振動である。ダクトでは渦流などにより鉄板の板振動が起こり騒音を発生させる。
3.冷凍機、ポンプ及び送風機等で発生した振動は機械基礎、配管及びダクトから建物構造体に伝達される。また、配管及びダクト内では、流体運動によって起こる振動もある。
4.防振対策は、設備機器の基礎の防振と、ダクト等接続部の対策から成る。
▲1▼ 防振基礎
設備機器と基礎床板との防振材を挿入し、床への伝達力を非常に小さくする方法である。
▲2▼ 配管の防振
たわみ継手を使用して、ポンプから配管への振動伝達を防止する他、配管から建物構造体への振動伝達を減少するように、つり金物や支持金物に防振材を使用する。
5.敷地に近接して工場、線路敷又は通過交通量の大きな道路等がある場合は、外部騒音の場合と同様に、電気通信設備近傍の振動レベルを確認する。
6.通信機器及び情報処理機器に対する振動の許容値は「振動加速度レベル値(VAL)85dB以下」と規定されている。
7.振動加速度レベルの確認は、現地計測により実施する。
【0221】
5.2 階層B:快適・利便性のみなし仕様及び性能判定基準
B−1.立地快適性
B−1−1.環境障害回避性
B−1−1−1.日照・通風確保性
・要求性能の説明
建物及び敷地は、隣接建物等による日照障害が回避されていなければならない。
・要求性能の仕様化(図78(a))
建物及び敷地は、図78(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−1−1−1.日照・通風確保性」の性能判定値及び判定基準は、図78(b)のテーブルに記載されており、上述した図78(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目、すなわち、全てではないがいずれか1つまたは複数の、みなし仕様が満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0222】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、快適な立地性を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建物の敷地が、必要且つ可能な対策を講じても健全な事業活動に必要な快適性を確保できない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
3.環境障害回避性は建物及び敷地が第三者に起因する環境障害を回避できていることをいい、快適性の重要な要素の一つである。
4.環境障害の内容としては日照・通風障害、風害、電波障害、騒音、振動及び悪臭等がある。環境障害回避性は、加害者と被害者の立場を逆転させれば、C−1−1.公害防止性と同等となり、受忍限度の判定も同様である。
5.送受信所用建物及び事務所用建物が立地する地域は、建築基準法の日影規制適用対象外である場合が多いが、主要な執務室の日照は確保すべきである。
6.本項目の日照・通風障害とは、第三者の建物等により建物又は敷地の日照・通風の悪化が受忍限度を超えることをいう。
【0223】
B−1−1−2.風害回避性
・要求性能の説明
建物は、隣接建物等の風害による業務への障害が回避されていなければならない。
・要求性能の仕様化(図79(a))
建物及び敷地は、図79(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−1−1−2.風害回避性」の性能判定値及び判定基準は、図79(b)のテーブルに記載されており、上述した図79(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜eの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0224】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、快適な立地性を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建物の敷地が、必要且つ可能な対策を講じても健全な事業活動に必要な快適性を確保できない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
3.環境障害回避性は建物及び敷地が第三者に起因する環境障害を回避できていることをいい、快適性の重要な要素の一つである。
4.環境障害の内容としては日照・通風障害、風害、電波障害、騒音、振動及び悪臭等がある。環境障害回避性は、加害者と被害者の立場を逆転させれば、C−1−1.公害防止性と同等となり、受忍限度の判定も同様である。
5.本項目の風害とは、第三者の建物等により建物又は敷地が受けるビル風が受忍限度を超えることをいう。
【0225】
B−1−1−3.電波障害回避性
・要求性能の説明
建物は、隣接建物等の電波による業務への障害が回避されていなければならない。
・要求性能の仕様化(図80(a))
建物は、図80(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−1−1−3.電波障害回避性」の性能判定値及び判定基準は、図80(b)のテーブルに記載されており、上述した図80(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0226】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、快適な立地性を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建物の敷地が、必要且つ可能な対策を講じても健全な事業活動に必要な快適性を確保できない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
3.環境障害回避性は建物及び敷地が第三者に起因する環境障害を回避できていることをいい、快適性の重要な要素の一つである。
4.環境障害の内容としては日照・通風障害、風害、電波障害、騒音、振動及び悪臭等がある。環境障害回避性は、加害者と被害者の立場を逆転させれば、C−1−1.公害防止性と同等となり、受忍限度の判定も同様である。
5.本項目の電波障害とは、第三者の建物等により敷地内のTV画像の悪化が受忍限度を超えることをいう。
【0227】
B−1−1−4.騒音障害回避性
・要求性能の説明
建物及び敷地は、隣接建物等の騒音による業務への障害が回避されていなければならない。
・要求性能の仕様化(図81(a))
建物及び敷地は、図81(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−1−1−4.騒音障害回避性」の性能判定値及び判定基準は、図81(b)のテーブルに記載されており、上述した図81(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0228】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、快適な立地性を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建物の敷地が、必要且つ可能な対策を講じても健全な事業活動に必要な快適性を確保できない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
3.環境障害回避性は建物及び敷地が第三者に起因する環境障害を回避できていることをいい、快適性の重要な要素の一つである。
4.環境障害の内容としては日照・通風障害、風害、電波障害、騒音、振動及び悪臭等がある。環境障害回避性は、加害者と被害者の立場を逆転させれば、C−1−1.公害防止性と同等となり、受忍限度の判定も同様である。
5.本項目の騒音障害とは、第三者の建物等により敷地内の騒音レベルが受忍限度を超えることをいう。
【0229】
B−1−1−5.振動・悪臭障害回避性
・要求性能の説明
建物及び敷地は、隣接建物等の振動又は悪臭による業務への障害が回避されていなければならない。
・要求性能の仕様化(図82(a))
建物及び敷地は、図82(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
a.振動により業務に支障のある状態であってはならない。
b.悪臭により業務に支障のある状態であってはならない。
c.前各項の仕様が常時適切な状態に維持管理され、劣化又は状況変化による要求性能の低下が防止又は回復されていなければならない。
この小項目「B−1−1−5.振動・悪臭障害回避性」の性能判定値及び判定基準は、図82(b)のテーブルに記載されており、上述した図82(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0230】
・みなし仕様の解説
1.建物の敷地は、快適な立地性を有していなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。
2.建物の敷地が、必要且つ可能な対策を講じても健全な事業活動に必要な快適性を確保できない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
3.環境障害回避性は建物及び敷地が第三者に起因する環境障害を回避できていることをいい、快適性の重要な要素の一つである。
4.環境障害の内容としては日照・通風障害、風害、電波障害、騒音、振動及び悪臭等がある。環境障害回避性は、加害者と被害者の立場を逆転させれば、C−1−1.公害防止性と同等となり、受忍限度の判定も同様である。
5.本項目の振動・悪臭障害とは、第三者の建物等により建物又は敷地の振動又は悪臭の悪化が受忍限度を超えることをいう。
【0231】
B−2.立地利便性
B−2−1.交通利便性
B−2−1−1.交通機関充実性
・要求性能の説明
建物の敷地は、通勤及び移動に便利な環境を確保できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図83(a))
建物の敷地は、図83(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−2−1−1.交通機関充実性」の性能判定値及び判定基準は、図83(b)のテーブルに記載されており、上述した図83(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜eの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0232】
・みなし仕様の解説
1.建物(人が常駐しない建物を除く。)の敷地は、通勤及び移動のための交通の便のよい立地でなければならない。これは敷地選定の段階において考慮されなければならない。なお、交通機関としては鉄道の他に公共輸送機関としてのバス等も含まれる。
2.広義の交通機関充実性として、自家用車(車両による通勤を認めていない場合は除く。)、営業・工事等車両及び来訪者車両のために駐車場が確保されていなければならない。事務所ビルの駐車場は、駐車場法とそれに基づく地方自治体の条例によって付置義務台数等が規定されている。下記は東京都駐車場条例の概要を示す。
3.建物(人が常駐しない建物を除く。)の敷地が、通勤及び移動のための交通の便のよい立地でない場合は要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
4.交通機関充実性の確認は、地図、建築現況図及び現地調査により実施する。
【0233】
B−2−2.業務利便性
B−2−2−1.業務支援施設充実性
・要求性能の説明
建物の敷地は、各種物品・サービスの調達等の業務支援が円滑に行える性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図84(a))
建物の敷地は、図84(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−2−1−1.交通機関充実性」の性能判定値及び判定基準は、図84(b)のテーブルに記載されており、上述した図84(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0234】
・みなし仕様の解説
1.建物(人が常駐しない建物を除く。)の敷地は、業務地区にふさわしい都市計画上の地域地区で且つ業務支援施設が充実した場所に立地していなければならない。
2.業務地区や情報ネットワークは、全国的には幾つかの地域中枢都市(東京・大阪・横浜・名古屋・仙台・広島・福岡・金沢・富山・京都・高松・札幌)に集中している。
3.代表的な業務支援施設としては、官公庁、商店街、郵便局及び金融機関が挙げられる。
4.建物(人が常駐しない建物を除く。)の敷地は、業務支援施設以外に顧客との適正な距離が確保された立地でなければならない。
5.建物(人が常駐しない建物を除く。)の敷地が、業務支援施設が充実した立地でない場合又は顧客との適正な距離が確保された立地でない場合は、要求性能を満足する別の敷地の選定と建物の移転を提案しなければならない。
6.業務支援施設充実性の確認は、地図及び現地調査により実施する。
【0235】
B−3.建物構造快適性
B−3−1.構造快適性
B−3−1−1.開放性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる開放性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図85(a))
建物は、図85(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−3−1−1.開放性」の性能判定値及び判定基準は、図85(b)のテーブルに記載されており、上述した図85(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜eの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0236】
・みなし仕様の解説
1.建物の執務空間は、自然採光、自然換気及び自然排煙が可能な有効面積や眺望が確保された外部開口部を有していなければならない。
2.外部開口部のうち、窓は上記の機能を有する代表的なものである。ただし、窓によっては型ガラスで目隠しした採光・換気用ジャロジーや採光のみを目的とした高窓のように、上記の機能を完備していないものや完備している必要のないものもある。
3.自然採光、自然換気及び自然排煙が可能な外部開口部の有効面積は各々執務室面積の1/7以上、1/20以上及び1/50以上の面積である。
4.外部窓の機能のうち特殊なものとしては以上の他に、建物内部の様子を外部に見せるショーウィンドゥ機能がある。ショーウィンドゥ機能の延長として、例えば、明かりのともった窓は家族団らんを感じさせる等、外部窓には建物内の生活を感じさせる象徴としての機能もある。
5.オフィスの窓に期待される効果として、「時間の情報の把握]、「避難のしやすさ]、「開放感」、「気分転換のしやすさ」等が挙げられる。
6.オフィスを人工照明だけでまかなうのでなく自然採光も活用することにより、省エネ効果のみならず「時間情報の把握]及び「気分転換」にも有効である。
7.機械換気だけでなく自然換気を行うことにより、冷暖房の中間期の省エネ効果のみならず、「開放感]、「気分転換のしやすさ」にも有効である。
8.機械排煙だけでなく自然排煙を行うことで、「避難のしやすさ」をより身近に感じることができる。
9.執務室の外部開口部有効面積及び眺望の確認は、設計図書、建築現況図及び現地調査により実施する。
【0237】
B−3.建物構造快適性
B−3−2.規模快適性
B−3−2−1.面積快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる面積を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図86(a))
建物は、図86(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−3−2−1.面積快適性」の性能判定値及び判定基準は、図86(b)のテーブルに記載されており、上述した図86(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0238】
・みなし仕様の解説
1.執務室面積とは、JFMA(日本ファシリティマネジメント推進協会)の面積分類で定める執務室の面積をいい、ワークステーション面積、グループステーション面積、業務支援ゾーン面積、情報管理ゾーン面積、生活支援ゾーン面積及び通路ゾーン面積とする。なお、6mという数値は、NOPA(ニューオフィス推進協議会)及びJFMAの推奨値である。
2.執務室の勤務形態としては、フリーアドレス等のいわゆるノンテリトリアルオフィス(固定席のないオフィス)の導入も想定している。このため、面積算定には同時最大出勤人員数を使用する。
3.執務室付属スペースとは、JFMAの面積分類で定めるオフイス面積対象室から執務室、役員専用室及び個室を差し引いたスペースをいい、執務室外にある業務支援スペース、情報管理スペース、生活支援スペース及び通路スペースをいう。
4.1人当りの執務室床面積及び執務室付属スペースの確認は、設計図書、建築現況図及び現地調査により実施する。
【0239】
B−3−2−2.高さ快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる高さを有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図87(a))
建物は、図87(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−3−2−2.高さ快適性」の性能判定値及び判定基準は、図87(b)のテーブルに記載されており、上述した図87(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0240】
・みなし仕様の解説
1.執務室等の天井高は快適性の重要な要素の一つである。
2.2.6m以上の天井高はNOPAの推奨値である。算定の根拠としては、人間の身長(背の高い人で1.8〜1.9m)、排煙垂れ壁の長さ(0.5m)及び扉の高さ(2〜2.1m)等を勘案して決定されたものであるが、事例も多く、感覚的にも経験上も好ましい数値とされている。その他に根拠として、次の点が指摘されている。
▲1▼ スプリンクラーヘッド下45cm (散水障害防止)やスプリンクラーを増設しない場合の天井下50cm の必要離隔距離。
▲2▼ OAフ口アの高さとの関係。
▲3▼ OA機器用の個別空調の天井内処理との関係。
▲4▼ 送風を循環スペースの確保。
▲5▼ OAシステムの二次側の配線スペースの確保。
3.執務室等の階高の最低寸法は、最低天井高2.6mに二重床高さ0.1m、スラブ厚さ0.2m、天井懐の0.8mを加えた合計の3.7mの値を加算して設定した。事例も多い。
4.天井懐寸法は、構造計画・設備計画と密接な関わりがある。主ダクトの位置、立上りの位置や空調機室の配置などによって大きく変ってくるが、ダクト・配管の横引きを梁貫通とすれば、梁高・スラブ厚・耐火被覆厚・梁下と天井仕上面との逃げ寸法で、天井ふところ寸法は決まってくる。
5.執務室等の天井高及び階高の確認は、設計図書、建築現況図及び現地調査により実施する。
【0241】
B−3.建物構造快適性
B−3−3.内装快適性
B−3−3−1.仕上げ快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる仕上げ性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図88(a))
建物は、図88(a)のテーブルを示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−3−3−1.仕上げ快適性」の性能判定値及び判定基準は、図88(b)のテーブルに記載されており、上述した図88(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0242】
・みなし仕様の解説
1.執務室等の快適性は、適切な内装材に依存する所が大きい。人が快適と感じる内装材は、本文に示す条件を満たすもので、人間の生理的条件にかなったものでなければならない。これらを満足する材料は、一般に天然素材を使用し且つ実績がある材料であることが多い。
2.執務室等の床仕上げ材は、滑りにくさの他に、疲労防止のため適度の弾力性を備えていなければならない。このような条件を満足し、且つ親しみ易い床材の代表としてタイルカーペット、コルクタイル及びリノリウムが挙げられる。
3.執務室等の壁仕上げ材天井仕上げ材は、執務室等で発生する騒音を適度に吸収でき、且つ親しみ易いものでなければならない。
4.壁仕上げ材の代表として、クロス貼り(又はビニルクロス貼り)及び木質系パネル(不燃性を確保するために下地に条件が付く場合が多い。)が挙げられる。
5.天井仕上げ材の代表として岩綿吸音板、クロス貼り(又はビニルクロス貼り)及び木質系パネル(不燃性を確保するために下地に条件が付く場合が多い。)が挙げられる。
6.クロスとビニルクロスとを比較すると、質感や吸音性の点ではクロスが優れているが、ビニルクロスも種類が増え、美観も向上しているため、清掃や貼り替えの容易さから選定されることが多い。ただし、ビニルクロスは古いタイプのものでは塩化ビニルからのダイオキシンの発生が問題とされるため、接着剤とともに選定に注意が必要である。
7.執務室等の床・壁・天井仕上げ材の確認は、設計図書、建築現況図及び現地調査により実施する。
【0243】
B−3−3−2.色彩快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる色彩性能を有していなければならない。・要求性能の仕様化(図89(a))
建物は、図89(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−3−3−2.色彩快適性」の性能判定値及び判定基準は、図89(b)のテーブルに記載されており、上述した図89(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0244】
・みなし仕様の解説
1.執務室等の色彩は人間に様々な心理的・生理的影響を及ぼし、快適性との関連が強い。色彩を決定する要素としては、色相・明度・彩度の3つがある。色彩計画の対象物は、内装材や家具・什器等であり、これらを統合的に計画し、執務空間としての快適性を確保しなければならない。
2.執務室等の色彩は、基調色とテーマカラーの組み合わせにより構成される。人間が快適と感じる執務室等の基調色は、色彩理論により、高明度且つ低彩度の色彩であることが知られており、色相としては黄色〜緑色系が一般的である。
3.執務室等のテーマカラーは、執務空間に統一感、アイデンティティ又はアクセントを与えることを目的として、基調色と好ましい対比を成すように選定される1〜2種類の色で、彩度は基調色より高いのが普通である。業務内容、コーポレートカラー、その執務環境に固有の性質又は特定のテーマ等を基にして決定される。
4.上記以外の色彩の要素として植物の緑がある。オフィスに緑があることにより、視覚器官への効用や自然と接していることの安心感が期待される他、条件によっては光合成による室内気候上の効果もあるといわれている。
5.執務室等内装の色彩の確認は、現地調査により実施する。
【0245】
B−4.室内環境快適性
B−4−1.照明快適性
B−4−1−1.照度・色温度快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる照度及び色温度を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図90(a))
建物は、図90(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−4−1−1.照度・色温度快適性」の性能判定値及び判定基準は、図90(b)のテーブルに記載されており、上述した図90(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0246】
・みなし仕様の解説
1.照度とは、単位面積あたりの入射光束をいい、単位はルクス(lx又はlux)である。
2.適正な照度は、執務室等の快適性を確保するために重要な要素であるばかりでなく、業務の効率性や人間の健康のためにも不可欠である。
3.適正な照度は、部屋の用途や作業内容により異なり、且つ年齢差や個人差がある。一般に、作業が細かい場合や高齢者が使用する場合には高い照度が必要とされるが、上限を超えた照度は視覚器官に悪い影響を及ぼすので注意が必要である。反対に、思考を集中する必要のあるスペースにおいては低い照度の照明が有効といわれているが、一般の執務スペースを兼ねる場合には使用してはならない。
4.色温度とは、光源の色を温度で表わしたもので、単位はK(ケルビン)である。一般に色温度は照度ほど重視されないが、暖かい色、冷たい色というように照明の色を左右し、室内の雰囲気や人間の快適性に大きな影響を及ぼす。
5.適正な色温度は、照度と同じく部屋の用途、作業内容により異なるが、年齢差や個人差はほとんどない。一般に、くつろいだ雰囲気が必要な食事・休憩・応接スペースにおいては低い色温度の照明が良い。一方、執務室においては色温度は高めの方が良いが、高すぎると部屋全体が冷たい感じになり好ましくない。蛍光灯照明では太陽光より色温度の低い「昼白色」と呼ばれるものが望ましい。
6.照明においては、照度及び色温度の他に、照明方式(直接照明、半直接照明、間接照明、半間接照明)や照明器具のデザインも重要であり、くつろいだ雰囲気が必要なスペースにおいては特に考慮する必要がある。
7.執務室等の照度及び色温度の確認は、現地計測により実施する。
【0247】
B−4−1−2.輝度快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる輝度を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図91(a))
建物は、図91(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−4−1−2.輝度快適性」の性能判定値及び判定基準は、図91(b)のテーブルに記載されており、上述した図91(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0248】
・みなし仕様の解説
1.輝度とは光源のまぶしさを示す量であり、広がりを持つ光源の単位面積当り光度で表わす。単位はカンデラ/mである。
2.輝度対比とは、視対象とその背景の輝度の相違の程度を表すものである。
対象物の輝度をLt、背景の輝度をLとすれば、対比Cは、L>Ltの場合、
C=(L−Lt)L、L<Ltの場合、C=(Lt−L)/Lt
で表される。
3.机上面が所定の照度基準を満たしていても、周囲の壁や天井が極端に暗い場合は輝度対比が過大となり、疲れやすくなる。VDTの前方に外部窓がある場合も輝度対比が過大となる。これらはいずれも回避しなければならない。
4.執務室等の輝度及び照明方式の確認は、現地計測及び現地調査により実施する。
【0249】
B−4−2.空気・音快適性
B−4−2−1.温湿度快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる温湿度を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図92(a))
建物は、図92(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−4−2−1.温湿度快適性」の性能判定値及び判定基準は、図92(b)のテーブルに記載されており、上述した図92(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0250】
・みなし仕様の解説
1.人体の熱的快適感に影響する要素は、空気温度・放射温度・気流・湿度の四つの環境物理的要素と、活動量・着衣量の二つの人間側の要素からなる。これらは温熱環境の六要素といわれる。
2.空気温度については「建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和45年法律第20号)」(通称「ビル管法」)に規定があるが、温度幅が大きく、快適性という点では十分とはいえない。このため、ASHRAE等の規定を加味して本文a項を設定した。
3.ビル管法には執務室等の室内の上部と下部との温度差の規定がないが、現実には数度に達することが少なくない。夏期の冷房においては下部が冷え、冬期の暖房においては上部が暑くなるという好ましくない状態になる可能性があるため、本文b項を許容値として設定した。
4.湿度については、空気温度と同じくビル管法に規定があるが、同法の温度上限値70%は実験に照らして快適性という点では高すぎるため、ASHRAE等の規定を加味して本文c項を設定した。
5.体感温度と湿度とは密接な関係があり、この関係を利用した有効温度や修正有効温度の理論がある。現在では、これらをさらに改良した標準有効温度(SET:Standard Effective Temperature )が提唱されている。また、人間の生理から見た体感温度には、体温に連動するものとしないもの(部屋に入った時の第一印象)の2種類があることが明らかにされている。
6.執務室等の温湿度の確認は、現地計測により実施する。
【0251】
B−4−2−2.気流快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる気流を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図93a)
建物は、図93(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−4−2−2.気流快適性」の性能判定値及び判定基準は、図93(b)のテーブルに記載されており、上述した図93(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0252】
・みなし仕様の解説
1.気流速度はビル管法では0.5m/s 以下と規定されているが、DIN1946では0.2〜0.3m/s 以下、ISO及びASHRAE55−81Rでは、冬期0.15m/s以下、夏期0.25m/s 以下を推奨しているため、本文a項では。0.3m/s以下とした。
2.前項の法規等では、気流は換気や空気の循環に伴い発生する止むを得ないものという否定的な評価がなされ、その速度は人間に不快に感じない程度にまで下げるべきことが規定されている。実際に、空調機から一定の速度で吹き出される気流は、経験的にも不快感や健康悪化の元凶とされている。
3.最近の研究の中には、気流は体感温度を下げる効果もあり、積極的に評価すべしというものもある。ただし、その場合の気流は、自然の微風のように速度が小さく且つゆっくりと変化することが条件とされており、気流の質にまで言及したものとなっている。
4.執務室等の気流の位置・方向・速度の確認は、現地計測により実施する。
【0253】
B−4−2−3.空気清浄度快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる空気清浄度を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図94(a))
建物は、図94(a)のテーブル各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−4−2−3.空気清浄度快適性」の性能判定値及び判定基準は、図94(b)のテーブルに記載されており、上述した図94(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜eの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0254】
・みなし仕様の解説
1.不十分な換気の中、室内において長時間作業をすると、空気中の塵埃や細菌などの有害浮遊物質が増加し、不快感を与え、健康上好ましくないことが起こる。
2.執務室等の二酸化炭素及び一酸化炭素の濃度が増加すると、不快感が高まり、さらに濃度が増すと人体に危険な状態となる。
3.タバコの煙に含まれる有害物質の質及び量は自動車の排気ガスに匹敵するといわれており、喫煙スペースの区画と吸塵設備が不可欠である。
4.執務室等の浮遊粉塵量、二酸化炭素及び一酸化炭素についてはビル管法に規定があるが、快適性の観点からこれらを上回る他の基準や推奨値がないため、安全・信頼性で採用したこれらの値を本項目でも採用した。
5.執務室等の空気清浄度(浮遊粉塵量、CO2 濃度及びCO濃度)の確認は、現地計測により実施する。
6.執務室等の喫煙スペースの状況の確認は、現地調査により実施する。
【0255】
B−4−2−4.音環境快適性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる音環境を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図95(a))
建物は、図95(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−4−2−4.音環境快適性」の性能判定値及び判定基準は、図95(b)のテーブルに記載されており、上述した図95(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0256】
・みなし仕様の解説
1.執務室等には、業務に支障を来たさない静寂さが必要である。
2.室内で発生する音には、直接音だけではなく壁・天井・床等からの反射音・残響音及び設備や配管から発生する音(躯体に伝達され、室内で新たな音源となる場合も含む。)もある。したがって、室内の騒音レベルを抑えるためには、騒音源自体の低騒音型機器の選定を行うと同時に、床、壁、ローパーティション、天井等の吸音性能の確保や躯体への伝達防止等が必要である。また、吸音性能の確保は全部材について実施することにより効果が高まるといわれている。
3.執務室等にとって外部騒音が問題となる場合があるが、本判定方法では外部騒音の評価は別の項目で論じており、本項目では建物が外部騒音に悩まされるような敷地にはないことを前提としている。実際、外部騒音の甚だしい敷地において執務室等を静寂に保とうとすれば、外部開口部を開放できない結果となるが、本判定方法では建物のそのような使われ方は認めていない。
4.騒音レベルを測定する単位として「ホン」と「デシベル」がある。「ホン」とは、JISに定める指示騒音計で測定して得られる指示値であり、身体に感ずる音の大きさのレベルを近似的に示すものである。「デシベル」とは、音の強さ又は音圧を相対的に比較する又は表す単位として用いられ、騒音レベルとも呼ばれるdB(A)と音圧レベルとも呼ばれるdB(C)とがある。室内の快適な騒音レベルの上限は45dB(A)といわれている。
5.執務室内の騒音レベル及び不快な雑音・残響の確認は、現地計測及び現地調査により実施する。
【0257】
B−5.情報利便性
B−5−1.情報化対応性
B−5−1−1.電源対応性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる電源対応性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図96(a))
建物は、図96(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−5−1−1.電源対応性」の性能判定値及び判定基準は、図96(b)のテーブルに記載されており、上述した図96(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0258】
・みなし仕様の解説
1.建物は、情報化の進展に対応できる電源容量、電源系統及び電源用コンセントを有していなければならない。
2.配線用遮断器分岐回路は情報機器等の配置密度に対応して確保されている必要があり、最近の事例を参考に20m当り1回路以上と設定した。
3.電源用コンセントは、安全性の観点から配線用遮断器分岐回路1回路当り10口以下が標準とされており、且つ変電設備容量を越えることのないように確保されている必要がある。
4.変電設備容量はインテリジェントビルの事例を参考に、40VA/m以上且つ80VA/m以下とした。上限については情報化対応性能と省エネ性能との兼ね合いから今後議論が必要である。
5.執務室の配線用遮断器分岐回路及び電源用コンセントの確認は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により実施する。
【0259】
B−5−1−2.情報端子対応性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる情報端子対応性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図97(a))
建物は、図97(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−5−1−2.情報端子対応性」の性能判定値及び判定基準は、図97(b)のテーブルに記載されており、上述した図97(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0260】
・みなし仕様の解説
1.建物は、情報化の進展に対応できる配置の情報コンセントを有していなければならない。執務室の情報コンセントの配置密度は、執務室面積及び最近の事例から4mに1ヶ所以上と設定した。
2.執務室付属室とはJFMAの面積分類で定めるオフイス面積対象室から執務室、役員専用室及び個室を差し引いたスペースをいい、執務室外にある業務支援スペース、情報管理スペース、生活支援スペース及び通路スペースをいう。
3.執務室付属室の情報コンセントの配置密度は、執務室との比較から10mに1ヶ所以上と設定した。
4.執務室及び執務室付属室の情報コンセントの確認は、設計図書、設備現況図、電力設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により実施する。
【0261】
B−5−1−3.情報配線対応性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる配線対応性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図98(a))
建物は、図98(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−5−1−3.情報配線対応性」の性能判定値及び判定基準は、図98(b)のテーブルに記載されており、上述した図98(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜eの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0262】
・みなし仕様の解説
1.執務室等の情報配線収容方式としては、二重床配線方式とアンダーカーペット配線方式とがメリットが多く、最も採用されている。両者のうちでは二重床配線方式が優れているが、コストがやや高いことと、天井高が低くなることのためにアンダーカーペット配線方式が採用されることがある。なお、二重床配線方式の場合も、床仕上げとしてはタイルカーペット(この場合は通常は配線収容には使用されない。)が採用されるのが一般的である。
2.情報配線用のケーブルシャフトの確保は、建物の情報化対応上極めて重要である。通常は1箇所に集約されるが、床面積の大きい建物や、特に高度なセキュリティを要する場合においては分割する方が望ましい場合がある。
3.執務室等の情報配線収容スペース及び情報配線用のケーブルシャフトは、将来の増設や更改に備えた予備スペースが必要である。特に後者は後からの確保が困難なため、当初に十分な余裕を見込んでおく必要があるが、建設年代の古い建物においては、今日の情報化を想定していないため、スペースの確保が困難な場合が多い。なお、情報配線用のケーブルシャフトには各階に配線点検口も必要である。
4.執務室等のケーブル保護・転倒防止措置・美観の確認は、設計図書及び現地調査により実施する。
5.執務室等のケーブルシャフト・配線点検口・予備配線スペースの確認は、設計図書、建築現況図及び現地調査により実施する。
【0263】
B−5−1−4.画像障害防止性
・要求性能の説明
建物は、快適な執務空間を確保できる画像障害防止性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図99(a))
建物は、図99(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−5−1−4.画像障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図99(b)のテーブルに記載されており、上述した図99(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0264】
・みなし仕様の解説
1.執務室等における電磁波は、画像障害の原因となる。電磁波発生のケースとしては、電力機器等が至近にある場合が多い。また、本来通信機械室であった部屋に画像端末を設置した場合においては、部屋を貫通するアルミ導体が画像障害の原因となる場合がある。
2.執務室等における電磁波による画像障害を防止するためには、まず執務室を発生源から離隔すること(建物使用方法の適正化を図ること)が最善である。3.止むを得ず建物使用方法の適正化を図れない場合で、離隔によっては画像障害を十分に防止できない場合は、種々の遮蔽対策が必要であるが、電磁波は人体にも悪影響を及ぼすため、常駐する必要のある部屋においては建物のこのような使用方法は避けるべきである。
4.執務室等の電磁波離隔措置状況の確認は、設計図書、建築現況図、設備現況図、電力設備現況図及び現地調査により実施する。
【0265】
B−6.運営利便性
B−6−1.執務利便性
B−6−1−1.配置利便性
・要求性能の説明
建物は、利便性の高い執務空間を確保できる配置性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図100(a))
建物は、図100(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−6−1−1.配置利便性」の性能判定値及び判定基準は、図100(b)のテーブルに記載されており、上述した図100(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0266】
・みなし仕様の解説
1.ここでいう配置とは、建物内における執務室の配置及び執務室内におけるパーティション・家具・什器の配置(オフィスレイアウト)をいう。FMでは、スペースの垂直方向(各階へ)の割当てをスタッキング、水平方向(各階フロア内)の割当てをブロッキングと呼ぶ。いずれも、組織の機能、必要規模及び相互の関連等に基づき決定する必要がある。
2.建物内における執務室の配置は、虫食い状態を避け、集約的に配置されていることが望ましい。
3.本項目ではNTTの事務所用建物又は送受信所用建物内に設置し、且つ集約的執務形態をとる執務室を想定している。ホームオフィス等の個人執務形態をとる執務室は、規模に加えて利用される建物自体の性格が異なる(一般には住宅系の建物)と考えられるため、ここでは対象外とした。
4.執務室のレイアウトは、コミュニケーション及びプライバシーに配慮する必要がある。両者は相反する関係にあるため、バランスが重要である。
5.執務室のレイアウトには様々なタイプがあり、業務種別や勤務形態に応じて最適なタイプを選定する必要がある。
6.執務室の規模及びレイアウトの状況は設計図書、建築現況図及び現地調査により確認する。
【0267】
B−6−1−2.動線利便性
・要求性能の説明
建物は、利便性の高い執務空間を確保できる動線性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図101(a))
建物は、図101(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−6−1−2.動線利便性」の性能判定値及び判定基準は、図101(b)のテーブルに記載されており、上述した図101(a)のテーブルのみなし仕様a〜eを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜eのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜eの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0268】
・みなし仕様の解説
1.ここでいう動線とは、エレベータ、水平・垂直の搬出入動線及び執務室等と共用部分とを連絡する廊下をいう。
2.エレベータは、建物の用途、延面積、階数、各階同時最大出勤人員数、業務種別及び勤務形態に対応して計画する必要があるが、途中で収容人数が増えた建物においては、輸送能力の不足や待ち時間の増大等を来たし、利便性が低下する。
3.エレベーター設備の計画は、「建物内の交通需要のピーク時における処理能力とその時の出発間隔」により決定される。すなわち、エレベーターサービスの量的及び質的評価からエレベータの規模が決定され、その建物全体の使いやすさとしての評価がなされる。一般に、事務所ビルにおけるエレベータ利用の需要ピーク時は、朝の出勤時、昼食の前後、夕方の退勤時の三つで、通常は前二者について検討する。需要ピーク時の5分間をとって、エレベーターの輸送能力及び出発間隔と台数の推奨値を検討する。なお、こうした検討と併せて、時間帯別の利用特性に応じたきめ細かい運転制御を行なうことも重要であり、最小のエレベータ台数によるサービスレベルの確保と省エネルギーとを可能にする。
4.エレベーター設備の計画に加え、一般に人の日常動線や資材の搬送動線の単純化・明確化及び双方の分離は業務の利便性に直結するものとして重要である。このためには、垂直動線・平面動線の輸送能力の確保と両者の最適な組み合わせの追求が必要である。
5.執務室等のエレベーター、建物搬出入動線及び共用部分連絡廊下の状況は、設計図書、建築現況図、設備現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0269】
B−6−2.清掃・保守利便性
B−6−2−1.清掃・保守作業性
・要求性能の説明
建物は、清掃・保守作業を無理なく確実に行なえる作業性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図102(a))
建物は、図102(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「B−6−2−1.清掃・保守作業性」の性能判定値及び判定基準は、図102(b)のテーブルに記載されており、上述した図102(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0270】
・みなし仕様の解説
1.清掃・保守作業性は建物居住者を直接益するものではないが、清掃・保守作業の利便に寄与し、容易で確実な作業を通じて建物性能の維持に貢献する。
2.建物が高い清掃・保守作業性を有するためには、それらの作業をなるべく特殊な機械、装置又は仕様を必要とせずに実施できる必要がある。それらの作業の例としては、次のものがある。
▲1▼ 高所の照明器具取替え
▲2▼ 高所の固定ガラスの清掃・取替え
▲3▼ 高所の天井点検
▲4▼ 屋上・外壁等、建物外部の清掃・点検
▲5▼ 各種水槽・油槽の清掃・点検
3.清掃・保守作業性は、一部の機械や洗浄剤等の開発を除けば建物の新築時にほとんどが決定されるため、設計段階における配慮が何よりも重要である。
4.集会室、店舗及び吹抜けを持つホールなど天井が高い場合の空調の吹き出し口、吸い込み口及び照明器具の清掃、メンテナンスには足場、移動足場又は高所作業車が必要となる。
5.空調吹出し口の周囲や吹出し気流が衝突する壁面等は空気中に含まれる炭素粒子などが付着し、黒く目立った汚れ方をするのが通常であり、清掃が必要である。
6.し尿浄化槽については、槽内及び付属装置機器類の清掃が毎年1回以上(全ばっ気方式では6ヶ月に1回以上)義務付けられている。
【0271】
5.3 階層C:社会性のみなし仕様及び性能判定基準
C−1.環境保全性
C−1−1.公害防止性
C−1−1−1.日照・通風障害防止性
・要求性能の説明
建物は、近隣への日照障害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図103(a))
建物は、図103(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−1−1−1.日照・通風障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図103(b)のテーブルに記載されており、上述した図103(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0272】
・みなし仕様の解説
1.建物は周辺環境に様々な物理的影響を及ぼす。それらが受忍限度(社会通念上妥当とされる限度)を超えると抗議・訴訟や損害賠償の請求等が発生する他、企業イメージの低下をもたらす。このため、建物はこれらの障害を未然に防止できるものでなければならない。
2.建物による障害には、日照障害、風害、電波障害、騒音障害、排気障害、排水障害の他、外構の維持保全の不備に起因する障害がある。本項目では日照・通風障害を対象とする。
3.騒音、振動、日照阻害等による生活妨害を理由とする損害賠償請求事件においては、加害行為の違法性を判断するにあたり、一般に次の事情が考慮される。
▲1▼ 被害者の侵害される利益の性質、程度
▲2▼ 加害行為の態様、程度
▲3▼ 地域性
▲4▼ 土地利用の前後関係(先住性)
▲5▼ 公法上の基準
▲6▼ 公共性
▲7▼ 当事者間の交渉の経過
4.日照障害の防止に関しては、建築基準法の日影規制があるが、同法の規定はいわゆる最低基準であり、これに適合していても紛争となる事例が多いため、注意が必要である。
5.日照障害の補償は、乾燥機等の現物提供の場合もあったが、現在は金銭が主となっている。補償対象は当初、人の居住している住居のみであったが、現在では、民間の建設工場の場合事務所などに対しても行われるようになってきている。一般に日影補償の内容といわれているものには次のようなものがあるが、実際にはこれらを一括して補償額としている。
▲1▼ 実費補償部分としての、
・暖房費用 … 器具の購入、修理、買い換え費用および燃料代
・照明費用 … 器具の購入、買い換え、電球のとり替え費用および電気料金
・乾燥費用 … 乾燥機の購入、修理、買い換え費用および電気料金
▲2▼ 日照を阻害されることによる精神的な不快感などに対する慰謝料的な部分
6.通風に関しては障害として取り上げられることはほとんどないが、健康への影響が大きく、自らの敷地に求める条件でもあるため、日照と併せて本項目の対象とした。
7.近隣への日影時間の状況は、設計図書(申請図書)及び現地調査により確認する。
8.日影時間及び通風に関する近隣の受忍限度超過の有無は、現地調査により確認する。
【0273】
C−1−1−2.風害防止性
・要求性能の説明
建物は、敷地内及び近隣への風害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図104(a))
建物は、図104(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−1−1−2.風害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図104(b)のテーブルに記載されており、上述した図104(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0274】
・みなし仕様の解説
1.建物は周辺環境に様々な物理的影響を及ぼす。それらが受忍限度(社会通念上妥当とされる限度)を超えると抗議・訴訟や損害賠償の請求等が発生する他、企業イメージの低下をもたらす。このため、建物はこれらの障害を未然に防止できるものでなければならない。
2.建物による障害には、日照障害、風害、電波障害、騒音障害、排気障害、排水障害の他、外構の維持保全の不備に起因する障害がある。本項目では風害を対象とする。
3.騒音、振動、日照阻害等による生活妨害を理由とする損害賠償請求事件においては、加害行為の違法性を判断するにあたり、一般に次の事情が考慮される。
▲1▼ 被害者の侵害される利益の性質、程度
▲2▼ 加害行為の態様、程度
▲3▼ 地域性
▲4▼ 土地利用の前後関係(先住性)
▲5▼ 公法上の基準
▲6▼ 公共性
▲7▼ 当事者間の交渉の経過
4.ビル風は基本的には次のような流れに分けることが出来る。
▲1▼ 剥離流:風は建物に当ると壁面に沿って流れ、隅角部まで来ると建物から剥がれて流れ去る。これを剥離流という。
▲2▼ 吹き降ろし:風は建物高さの60〜70%付近で上下・左右に分かれる。後者は建物側面を上方から下方に斜めに向かう速い流れとなる。これを吹き降ろしという。
▲3▼ 谷間風:隣接する高層建物との間や二棟以上の建物の間に速い風が生じる事がある。これはそれぞれの剥離流、吹き降ろしが重ね合う現象で、谷間風という。
▲4▼ ピロティ風:建物下層部にピロティのような開口部があると建物の風上と風下側が一つに (開口部風) 結ばれ、この部分に速い風が吹く。これをピロティ風(開口部風)という。
▲5▼ 街路風:市街地では風は家並みが規則正しく道路が広いほど街路に沿って吹き易くなり、剥離流や吹き降ろしも街路に沿って吹く。これを街路風という。
5.風害は、建物の配置・形状等の工夫によりある程度まで防止可能である。具体的には低層部を張り出すことによる建物足元の下降気流の遮断や、凹凸の多い外壁の採用による減衰等が効果的といわれている。
6.敷地内及び近隣への風害低減・緩和措置の状況は、設計図書(申請図書)及び現地調査により確認する。
7.敷地外の歩行等への支障及び近隣施設の破損危険性の有無は、現地調査により確認する。
【0275】
C−1−1−3.電波障害防止性
・要求性能の説明
建物は、一般市民のTV電波障害及び公共・産業用マイクロウェーブへの遮蔽及び反射による電波障害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図105(a))
建物は、図105(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−1−1−3.電波障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図105(b)のテーブルに記載されており、上述した図105(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0276】
・みなし仕様の解説
1.建物は周辺環境に様々な物理的影響を及ぼす。それらが受忍限度(社会通念上妥当とされる限度)を超えると抗議・訴訟や損害賠償の請求等が発生する他、企業イメージの低下をもたらす。このため、建物はこれらの障害を未然に防止できるものでなければならない。
2.建物による障害には、日照障害、風害、電波障害、騒音障害、排気障害、排水障害の他、外構の維持保全の不備に起因する障害がある。本項目では電波障害を対象とする。
3.騒音、振動、日照阻害等による生活妨害を理由とする損害賠償請求事件においては、加害行為の違法性を判断するにあたり、一般に次の事情が考慮される。
▲1▼ 被害者の侵害される利益の性質、程度
▲2▼ 加害行為の態様、程度
▲3▼ 地域性
▲4▼ 土地利用の前後関係(先住性)
▲5▼ 公法上の基準
▲6▼ 公共性
▲7▼ 当事者間の交渉の経過
4.「電波」とは三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波をいう。電波障害は、一般市民のTV電波障害と公共・産業用マイクロウェーブへの電波障害の2つに大別される。
5.一般市民のTV電波障害については、共同受信施設の設置による障害の回復又はCATVの加入等による補償により解決されている。
6.電波法第102条により、郵政大臣は、次の種類の無線通信(周波数890MHz以上)で、重要無線通信の確保を図る必要があると認めるときは、その電波伝搬路を「伝搬障害防止区域」として指定する。最高部が31mを超える高層建築物等を建築する場合は、その工事が伝搬障害防止区域内で行うものかどうか確認が必要であり、区域内にあるときは、フレネルゾーン(電波の伝搬に必要なゾーン)との平面・立面上の相対的な位置関係に問題のないことが計算により証明されなければならず、抵触する場合は建物配置を変更しなければならない。
▲1▼ 電気通信業務用
▲2▼ 放送業務用
▲3▼ 気象業務用
▲4▼ 電気事業用
▲5▼ 鉄道事業用
▲6▼ 人命と財産の保護、治安維持用
7.建物により受信アンテナへ直接到来する電波(希望波)の強度が低下して、周辺ビルからの弱い潜在反射波の強度が相対的に大きくなり、テレビ画面にゴーストが現れる障害を遮蔽障害といい、希望波が低下しなくても大きな壁面からの強い反射波が受信アンテナに入り、ゴーストが現れる障害を反射障害という。建物側の改善方法には次のものがある。
▲1▼ 向き、配置の変更
▲2▼ 壁面形状の変更
▲3▼ 壁面へ電波吸収パネルの取り付け
8.近隣への電波障害低減・回復措置の状況及びフレネルゾーンとの位置関係は、設計図書(申請図書)、現地調査及び事前協議書により確認する。
【0277】
C−1−1−4.騒音障害防止性
・要求性能の説明
建物は、近隣への騒音障害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図106(a))
建物は、図106(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−1−1−4.騒音障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図106(b)のテーブルに記載されており、上述した図106(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0278】
・みなし仕様の解説
1.建物は周辺環境に様々な物理的影響を及ぼす。それらが受忍限度(社会通念上妥当とされる限度)を超えると抗議・訴訟や損害賠償の請求等が発生する他、企業イメージの低下をもたらす。このため、建物はこれらの障害を未然に防止できるものでなければならない。
2.建物による障害には、日照障害、風害、電波障害、騒音障害、排気障害、排水障害の他、外構の維持保全の不備に起因する障害がある。本項目では騒音障害を対象とする。
3.騒音、振動、日照阻害等による生活妨害を理由とする損害賠償請求事件においては、加害行為の違法性を判断するにあたり、一般に次の事情が考慮される。
▲1▼ 被害者の侵害される利益の性質、程度
▲2▼ 加害行為の態様、程度
▲3▼ 地域性
▲4▼ 土地利用の前後関係(先住性)
▲5▼ 公法上の基準
▲6▼ 公共性
▲7▼ 当事者間の交渉の経過
4.騒音障害の原因としては、建物内の音源の騒音レベル(消音・吸音・遮音措置が十分でない場合を含む。)、近隣との離隔距離の不足及び音源の方向の不適切等が挙げられる。特に住宅地においては、日中は交通騒音等に隠れて気にならないレベルの騒音が夜間に問題となることが多い。(このような音を暗騒音という。)
5.住宅地における夜間の暗騒音の騒音レベルは45dB(A)以下とすることが規定されている。
6.近隣への騒音障害の低減・回復措置の状況は、設計図書及び現地調査により確認する。
【0279】
C−1−1−5.排気障害防止性
・要求性能の説明
建物は、近隣への排気障害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図107(a))
建物は、図107(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−1−1−5.排気障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図107(b)のテーブルに記載されており、上述した図107(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0280】
・みなし仕様の解説
1.建物は周辺環境に様々な物理的影響を及ぼす。それらが受忍限度(社会通念上妥当とされる限度)を超えると抗議・訴訟や損害賠償の請求等が発生する他、企業イメージの低下をもたらす。このため、建物はこれらの障害を未然に防止できるものでなければならない。
2.建物による障害には、日照障害、風害、電波障害、騒音障害、排気障害、排水障害の他、外構の維持保全の不備に起因する障害がある。本項目では排気障害を対象とする。
3.騒音、振動、日照阻害等による生活妨害を理由とする損害賠償請求事件においては、加害行為の違法性を判断するにあたり、一般に次の事情が考慮される。
▲1▼ 被害者の侵害される利益の性質、程度
▲2▼ 加害行為の態様、程度
▲3▼ 地域性
▲4▼ 土地利用の前後関係(先住性)
▲5▼ 公法上の基準
▲6▼ 公共性
▲7▼ 当事者間の交渉の経過
4.排気障害の原因としては、排気量、排気中の有害物質、排気口の方位・離隔距離等が挙げられる。特に住宅地においては、予備エンジンやボイラ等の排気に関して注意が必要である。
5.近隣への排気障害の低減・回復措置の状況は、設計図書及び現地調査により確認する。
【0281】
C−1−1−6.排水障害防止性
・要求性能の説明
建物は、近隣及び公共施設への排水障害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図108(a))
建物は、図108(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−1−1−6.排水障害防止性」の性能判定値及び判定基準は、図108(b)のテーブルに記載されており、上述した図108(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0282】
・みなし仕様の解説
1.建物は周辺環境に様々な物理的影響を及ぼす。それらが受忍限度(社会通念上妥当とされる限度)を超えると抗議・訴訟や損害賠償の請求等が発生する他、企業イメージの低下をもたらす。このため、建物はこれらの障害を未然に防止できるものでなければならない。
2.建物による障害には、日照障害、風害、電波障害、騒音障害、排気障害、排水障害の他、外構の維持保全の不備に起因する障害がある。本項目では排水障害を対象とする。
3.騒音、振動、日照阻害等による生活妨害を理由とする損害賠償請求事件においては、加害行為の違法性を判断するにあたり、一般に次の事情が考慮される。
▲1▼ 被害者の侵害される利益の性質、程度
▲2▼ 加害行為の態様、程度
▲3▼ 地域性
▲4▼ 土地利用の前後関係(先住性)
▲5▼ 公法上の基準
▲6▼ 公共性
▲7▼ 当事者間の交渉の経過
4.排水障害は、排水中の有害物質に起因するものと、隣地又は公道の路面への流出に関するものとに大別される。
5.排水中の有害物質については、水質汚濁防止法により規制されている。送受信所用建物及び事務所用建物については、排水中に有害物質を発生させることは稀であるが、場合により水質検査が必要となる。
6.隣地又は公道の路面への排水の流出は、近隣に被害を及ぼす。これは排水設備(排水管、排水槽、排水ポンプ等)の劣化や不具合が原因である。また、外構の舗床が何らかの理由により沈下した場合に、そこに埋設された排水管が破損し、排水が流出する場合があるので注意が必要である。
7.排水中の有害物質の調査は、環境計量士の有資格者に委託して実施する。
8.排水流出の有無は、現地調査により確認する。
【0283】
C−1−1−7.外構維持保全性
・要求性能の説明
建物は、外構維持保全の不備による近隣への実害を防止できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図109(a))
建物は、図109(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−1−1−7.外構維持保全性」の性能判定値及び判定基準は、図109(b)のテーブルに記載されており、上述した図109(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0284】
・みなし仕様の解説
1.建物は周辺環境に様々な物理的影響を及ぼす。それらが受忍限度(社会通念上妥当とされる限度)を超えると抗議・訴訟や損害賠償の請求等が発生する他、企業イメージの低下をもたらす。このため、建物はこれらの障害を未然に防止できるものでなければならない。
2.建物による障害には、日照障害、風害、電波障害、騒音障害、排気障害、排水障害の他、外構の維持保全の不備に起因する障害がある。本項目では外構の維持保全の不備に起因する障害を対象とする。
3.騒音、振動、日照阻害等による生活妨害を理由とする損害賠償請求事件においては、加害行為の違法性を判断するにあたり、一般に次の事情が考慮される。
▲1▼ 被害者の侵害される利益の性質、程度
▲2▼ 加害行為の態様、程度
▲3▼ 地域性
▲4▼ 土地利用の前後関係(先住性)
▲5▼ 公法上の基準
▲6▼ 公共性
▲7▼ 当事者間の交渉の経過
4.外構維持保全の不備による近隣への実害は、次のものに大別される。外構維持保全は土地・建物所有者として当然行なうべき義務であり、民法に規定する善管義務(善良な管理者による注意義務)に相当すると考えられる。
▲1▼ 植樹の剪定不足や雑草の繁茂による越境(落ち葉の飛散を含む)や火災の危険
▲2▼ 植樹 、水槽、池及び水溜まりでの害虫の発生
▲3▼ 塀、門扉又は建物外部開口部等の不備に起因する不審者の侵入(子供の侵入事故を含む)
5.外構維持保全の不備による近隣への実害は、企業イメージの低下にもつながる事態であり、継続的且つ適切な維持保全の実施が必要である。
6.街路樹の剪定には、冬季剪定、夏季剪定、中間剪定,随時剪定が考えられる。冬季剪定は、12〜3月にかなり思い切った剪定をしながら自然樹形に近づけようとするもので、毎年実施されるものと隔年実施でよいものとがある。夏季剪定は6〜8月に実施されるが、萠芽力の旺盛なもので交通障害のために行われるものが対象になる。中間剪定は台風による被害軽減のために行われるもので8〜9月に間引き剪定を主として行われる。
7.植樹、雑草、害虫、塀及び門扉等の状況は、設計図書、建築現況図、各種点検報告書及び現地調査により確認する。
【0285】
C−2.社会関係保全性
C−2−1.近隣調和性
C−2−1−1.美観性
・要求性能の説明
建物は、地域環境に調和し、地域全体のイメージの維持向上に貢献できる美観性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図110(a))
建物及び敷地は、図110(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−2−1−1.美観性」の性能判定値及び判定基準は、図110(b)のテーブルに記載されており、上述した図110(a)のテーブルのみなし仕様a〜fを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜fのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜fの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0286】
・みなし仕様の解説
1.建物は企業や個人の資産であると同時に、町並みや景観の一部であるという意味において社会的存在である。したがって、建物はこれらの町並みや景観の維持向上に対する義務や責任を自ずから負っている。
2.建物の美観性は、町並みや景観との関わりにおいて評価されるべき重要な指標である。
3.地方自治体が都市景観の維持向上を図ることを目的として、法令に基づき条例等を制定して地区指定を行ない、建物の規模・外観・材料・色彩等について規定している場合においては特に積極的に協力する必要がある。東京都や大阪府等の都道府県や市町村においても景観条例が制定されている。景観規制の有無・内容は、当該地方自治体に確認する。
4.建物、建物附属設備、看板及び広告物取付枠の外観、意匠、材質及び色彩等の状況は、設計図書、建築現況図、設備現況図及び現地調査により確認する。5.建物の美観性は、定量化や客観的評価が困難であるといわれているが、官能評価による指標化の試みがある。本項目ではその成果を参考に「品格性と庶民性」及び「重厚性と軽快性」という対立概念を導入し、建物ファサードの開口部の配置・形状や対称軸の有無等との関係から一定の評価を行うものである。
6.品格性、個性及び軽快性のバランスは、地域特性に基づき、次の▲1▼、▲2▼の2通りの組合せの各々において、いずれの側にウェイトを置くべきかを下に記載する分類において検討して評価指標とする。なお、▲1▼と▲2▼は独立に検討する。
▲1▼ 品格性と庶民性
「品格性が要求されている」と「庶民性が要求されている」との間を、「非常に(品格性が要求されている)」,「かなり(品格性が要求されている)」,「やや(品格性が要求されている)」,「ふつう」,「やや(庶民性が要求されている)」,「かなり(庶民性が要求されている)」,「非常に(庶民性が要求されている)」とに分割し、これらのいずれかにウェイトを置いて評価指標とする。
▲2▼ 重厚性と軽快性
「重厚性が要求されている」と「庶民性が要求されている」との間を、「非常に(重厚性が要求されている)」,「かなり(重厚性が要求されている)」,「やや(重厚性が要求されている)」,「ふつう」,「やや(軽快性が要求されている)」,「かなり(軽快性が要求されている)」,「非常に(軽快性が要求されている)」とに分割し、これらのいずれかにウェイトを置いて評価指標とする。
7.建物附属設備や構築物等で外部の目に触れるものについては、建物本体に準じた美観上の配慮が必要である。なお、本文中の「意匠、材質及び色彩において建物外観との調和が確保されて」とは、次の条件がすべて満足されている状態をいう。
▲1▼ 意匠においては、建物外観とデザインのモチーフが統一されている状態をいう。
▲2▼ 材質においては、建物と同一の材料、関連性の強い材料又は適切な対比の確保された材料が使用されている状態をいう。
▲3▼ 色彩においては、建物と同一の色彩、関連性の強い色彩又は適切な対比の確保された色彩が使用されている状態をいう。
8.色彩の組合せについての美醜・快不快の評価を色彩調和と呼び、一定の傾向が見られる。色彩調和では、色相の差異に比較して明度と彩度の差異の効果が大きい。色彩計画では3属性の他に、形・面積・地柄・光沢などを総合した色彩の調和を考える必要がある。
【0287】
C−2−2.企業理念伝達性
C−2−2−1.CI統一性
・要求性能の説明
建物はCI(コーポレート・アイデンティティ)が統一的且つ適正に運用され、企業イメージの確立に貢献できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図111(a))
建物は、図111(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−2−2−1.CI統一性」の性能判定値及び判定基準は、図111(b)のテーブルに記載されており、上述した図111(a)のテーブルのみなし仕様a〜cを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜cのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜cの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0288】
・みなし仕様の解説
1.建物は企業や個人の資産であると同時に、町並みや景観の一部であるという意味において社会的存在である。したがって、建物はこれらの町並みや景観の維持向上に対する義務や責任を自ずから負っている。
2.CI(コーポレート・アイデンティティ:直訳すれば「企業の自己同一性」)は、企業理念や企業らしさをデザインが統一されたアイテム(品目)により確保し、外部に伝達するための手段である。建物では、社名板、組織名サイン及び案内サイン等がCIアイテムとなる。
3.建物のCI統一性は、美観性と並んで、町並みや景観との関わりにおいて評価されるべき重要な指標である。ただし、美観性が時には匿名性をも容認するのに対し、CI統一性は、周辺との調和を保ちつつも企業がその独自性を強調する点が異なっている。
4.建物のCI統一性は、企業がCIマニュアルを制定し、実行することにより確保される。
5.NTTのCIにおけるデザインシステムは<ベーシックデザインシステム>と<アプリケーションデザインシステム>から成り、これらの一連の関係をまとめたものをNTT CISデザインツリー(系統樹)と呼んでいる。
6.<ベーシックデザイン要素>を使って、具体的に各種アプリケーションアイテムをデザインしていくための各要素、及び各要素の組み合わせについての基本的な規定をベーシックデザイン使用規定と呼んでいる。
7.個別のデザインシステムを実際に製作できるような詳細な規定をアプリケーションデザイン個別展開規定と呼んでいる。
8.コーポレートシンボル、ロゴタイプ、社名板、組織名サイン及び案内サイン等の状況は、設計図書、建築現況図及び現地調査により確認する。
【0289】
C−2−3.公平性
C−2−3−1.利用者公平性
・要求性能の説明
建物は、高齢者や身体の不自由な人にとっても容易に利用できる性能を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図112(a))
不特定且つ多数の人の出入りする建物は、図112(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「C−2−3−1.利用者公平性」の性能判定値及び判定基準は、図112(b)のテーブルに記載されており、上述した図112(a)のテーブルのみなし仕様a〜iを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜iのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜iの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0290】
・みなし仕様の解説
1.建物は企業や個人の資産であると同時に、町並みや景観の一部であるという意味において社会的存在である。したがって、建物はこれらの町並みや景観の維持向上に対する義務や責任を自ずから負っている。
2.建物の利用者公平性は、高齢者や身体の不自由な人が頻繁に利用する建物及び敷地の部分に利用し易いように様々な配慮を行なうことにより確保される。具体的には、車椅子を使用する人の利用し易いトイレやエレベータ等の扉の広さ・開閉のしやすさ、車椅子用操作ボタンや身体の不自由な人のための手摺、目の見えない人のための音声案内サービスや点字表示等である。
3.「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」(平成6年法律第44号 ハートビル法とも呼ばれる。)では、「高齢者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者、身体障害者その他日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受ける者が円滑に利用できる建築物の建築の促進のための措置を講ずることにより建築物の質の向上を図り、もって公共の福祉の増進に資すること」を目的としている。同施行令により、適用対象建築物に公益上必要な建築物を含むため、本項目では同告示に定める基礎的基準に準拠している。
4.段差、出入口、廊下、トイレ及びエレベータ等の状況は、設計図書、建築現況図、設備現況図及び現地調査により確認する。
【0291】
5.4 階層D:資産性のみなし仕様及び性能判定基準
D−1.権利保全性
D−1−1.権利侵害回避性
D−1−1−1.無断占有回避性
・要求性能の説明
建物及び敷地は、第三者の無断占有による権利の発生及びそれに起因する資産価値の低下が回避されていなければならない。
・要求性能の仕様化(図113(a))
建物及び敷地は、図113(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「D−1−1−1.無断占有回避性」の性能判定値及び判定基準は、図113(b)のテーブルに記載されており、上述した図113(a)のテーブルのみなし仕様a〜dを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜dのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜dの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0292】
・みなし仕様の解説
1.建物は、経営資源として優良なものでなければならない。建物のこのような性質を資産性と呼ぶ。資産性は建物の企業経営への貢献度を評価するための重要な指標である。
2.権利侵害回避性は、他者の権利が企業の建物及び敷地に発生していないことを確認する形で建物及び敷地に関わる企業の権利を確保ための指標であり、建物及び敷地が優良な資産であるための必要条件である。
3.占有とは、民法上は自己のためにする意思をもって物を所持することをいう。本項目の無断占有とは、第三者が企業に無断で自己のためにする意思をもって企業の建物又は敷地を所持することをいう。無断占有は、企業の占有権の妨害又は奪取という状態(使用に制約を課したり、処分の妨げとなったりする状態)となるため、絶対に避けなければならない。
【0293】
D−1−1−2.無断使用回避性
・要求性能の説明
建物及び敷地は、第三者の無断使用による権利の発生及びそれに起因する資産価値の低下が回避されていなければならない。
・要求性能の仕様化(図114(a))
建物及び敷地は、図114(a)のテーブルに示す各仕様等を満足していなければならない。
この小項目「D−1−1−2.無断使用回避性」の性能判定値及び判定基準は、図114(b)のテーブルに記載されており、上述した図114(a)のテーブルのみなし仕様a〜gを全て満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様a〜gのうち満足されていない項目がある場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様a〜gの全てが満足されていない場合、性能判定値「3」と判定される。
【0294】
・みなし仕様の解説
1.建物は、経営資源として優良なものでなければならない。建物のこのような性質を資産性と呼ぶ。資産性は建物の企業経営への貢献度を評価するための重要な指標である。
2.権利侵害回避性は、他者の権利が企業の建物及び敷地に発生していないことを確認する形で建物及び敷地に関わる企業の権利を確保するための指標であり、建物及び敷地が優良な資産であるための必要条件である。
3.建物及び敷地の使用権としては、地上権や空中権が代表的である。
4.本項目の無断使用とは、第三者の使用権が企業に無断で企業の建物又は敷地に発生することをいう。無断使用は、企業の使用権の妨害又は奪取という状態(使用に制約を課したり、処分の妨げとなったりする状態)となるため、絶対に避けなければならない。
5.第三者の使用権が企業に無断でケースとしては、主として時効により第三者に地上権が発生する場合が想定される。これを防止するためには、常時建物及び敷地の権利関係や使用状態について監視を怠らず、時効の成立を防止することが必要である。
6.「使用」とはその物の有する機能、性質によって定まる用方、すなわち、本来の用方に従って消費し、又はそのまま使うことをいう。
【0295】
D−2.収益性
D−2−1.事業収益性
D−2−1−1.電気通信事業収益性
・要求性能の説明
建物は、電気通信事業用施設として要求される収益性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図115(a))
建物は、図115(a)のテーブルに示す各条件を満足していなければならない。
この小項目「D−2−1−1.電気通信事業収益性」の性能判定値及び判定基準は、図115(b)のテーブルに記載されており、上述した図115(a)のテーブルのみなし仕様においてaを満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様aを満足しないが「[想定年間電気通信事業収益]≧[想定年間機械室施設運営費]」である場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様aが満足されず、かつ「[想定年間電気通信事業収益]<[想定年間機械室施設運営費]」である場合、性能判定値「3」と判定される。
【0296】
・みなし仕様の解説
1.建物は、経営資源として優良なものでなければならない。建物のこのような性質を資産性と呼ぶ。資産性は建物の企業経営への貢献度を評価するための重要な指標である。
2.事業収益性は、建物が上げている収益を評価するための指標であり、建物が優良な資産であるための必要条件である。収益性の悪い建物は不良資産である。
3.電気通信事業収益性は、建物が上げている電気通信事業収益を評価するための指標であり、電気通信事業用としての建物の財務への貢献度を評価するものである。すなわち、電気通信事業収益が施設運営費をまかなっている場合は保有・賃貸を継続することが妥当であり、そうでない場合は売却が妥当と判断される。
4.電気通信事業収益性は賃貸事業収益性とともに保有収支の尺度である。保有収支は収益と施設運営費との差額であり、前者が後者を上回れば黒字、そうでない場合は赤字である。
5.収支には保有収支の他に売却収支がある。後者は売却収益と売却費用との差額をいい、プラスであれば売却収支は黒字となる。売却物件の中には売却収支も赤字となるものがあるが、保有継続による赤字幅の累積よりも売却の一時的損失の方がキャッシュフロー的に得策であらぬ影響を及ぼすため、実施の規模や時期等に関しては総合的な判断が必要である。
6.電気通信事業収益性の算定方法は、D−2−1−2.賃貸事業収益性に倣う。ただし、相場家賃の代りに電気通信用土地・建物料金額を使用する。共用面積は執務室と面積按分する。
7.機械室貸付には、電気通信事業法第38条の2及び同法第38条の3に基づく義務的コロケーション(NTTの電気通信設備との相互接続を条件とした他事業者の電気通信設備の収容をいう。)も含める。
【0297】
D−2−1−2.賃貸事業収益性
・要求性能の説明
建物は、事務室賃貸事業用施設として要求される収益性を有していなければならない。
・要求性能の仕様化(図116(a))
建物は、図116(a)のテーブルに示す各条件を満足していなければならない。
この小項目「D−2−1−2.賃貸事業収益性」の性能判定値及び判定基準は、図116(b)のテーブルに記載されており、上述した図116(a)のテーブルのみなし仕様においてaを満足している場合、性能判定値「1」と判定され、みなし仕様aを満足しないが「[想定年間事務室賃貸事業収益]≧[想定年間事務室施設運営費]」である場合、性能判定値「2」と判定され、みなし仕様aが満足されず、かつ「[想定年間事務室賃貸事業収益]<[想定年間事務室施設運営費]」である場合、性能判定値「3」と判定される。
【0298】
・みなし仕様の解説
1.建物は、経営資源として優良なものでなければならない。建物のこのような性質を資産性と呼ぶ。資産性は建物の企業経営への貢献度を評価するための重要な指標である。
2.事業収益性は、建物が上げている収益を評価するための指標であり、建物が優良な資産であるための必要条件である。収益性の悪い建物は不良資産である。
3.賃貸事業収益性は、建物が上げている執務室賃貸収益を評価するための指標であり、執務用としての建物の財務への貢献度を評価するものである。すなわち、賃貸事業収益が施設運営費をまかなっている場合は保有・賃貸を継続することが妥当であり、そうでない場合は売却が妥当と判断される。
4.賃貸事業収益性は電気通信事業収益性とともに保有収支の尺度である。保有収支は収益と施設運営費との差額であり、前者が後者を上回れば黒字、そうでない場合は赤字である。
5.収支には保有収支の他に売却収支がある。後者は売却収益と売却費用との差額をいい、プラスであれば売却収支は黒字となる。売却物件の中には売却収支も赤字となるものがあるが、保有継続による赤字幅の累積よりも売却の一時的損失の方がキャッシュフロー的に得策であるという考え方に基づき売却を実施する。ただし、売却が一時期に集中すれば事業に少なからぬ影響を及ぼすため、実施の規模や時期等に関しては総合的な判断が必要である。
【0299】
6.一致比較テーブルの説明
以下、図117の大項目の各機能項目毎の決定要素等に基づいた、階層,大項目,中項目各々の一対比較表のテーブルの作成の根拠の説明を行う。
これらの一覧比較表は、以下の根拠により作成され、予めデータベース4に登録されている。
すなわち、一対比較は主観により行うため、計算結果の一人歩きを防止するために実務上の裏付け及び決定過程(根拠)を順次説明する。
ここで、階層の一致比較表について説明し、次に、大項目,中項目の順番に説明する。
【0300】
6.1 階層の一対比較表の説明
A.安全・信頼性の一対比較表(図118参照)作成の根拠
1.危険度(想定)
・危険度は広域性(範囲の広さ)及び事業への影響度に応じて大きくなると考えられる。
・立地は地震・水害・火災・雷害発生の原因となる。
・地震は火災の原因となる場合がある。
・通信機械室内環境は事業への影響度が高いが、地震・火災・雷害にも起因し、相対的順位は下がる。
・生活は、個々には危険度が高いが、他の障害に比較すれば影響範囲は狭いと考えられる。
・以上の観点から、危険度は次の順と想定する。
立地(:1)>構造(地震,:2)>水害(:3)>火災(:4)>雷害(:5)>通信機械室内環境(:6)>生活(:7)
ここで、( )内において「:」の後ろに記載された番号が危険順位を示している(以降の一対比較表の説明においても、同様に、()内の「:」の後の数字は順位を示している)。
2.発生頻度(想定)
・本評価方法の対象建物では、発生頻度は次の順と想定する。
・生活は内訳が多様であり、発生頻度は最も高いと考えられる。
・立地については、災害の広域性・同時性を考慮すれば、構造(地震)、水害及び火災より位と考えられる。
・雷害は雷防護の国際規格に鑑み、構造(地震)の上位とする。
生活(:1)>立地(災害・緊急・公害、:2)>水害(:3)>雷害(:4)>構造(地震、:5)>火災(:6)>通信機械室内環境(:7)
( )内において「:」の後ろに記載された数値は、発生頻度の順位である。
3.危険度(想定)×発生頻度(想定)
危険度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の安全・信頼性の重要度の順位とする。
・結果として、安全・信頼性の一対比較表における各項目の重要度を次の順と想定する。
立地(:3)>水害(:6)>構造(地震、:7)>生活(:8)>雷害(:9)>火災(:10)>通信機械室内環境(:13)
ここで、( )内の「:」の後ろに記載された数値は、危険度の順位と発生頻度の順位とを加算したものである(以下の項目についても同様)。
図118の一対比較表において、通信機械室内環境は、送受信所用の建物にのみ適用し、他の建物の場合使用しない。
【0301】
B.快適・利便性の一対比較表(図119参照)作成の根拠
1.不便・不快度(想定)
・不便・不快度は広域性(範囲の広さ)及び影響の受忍期間(長く辛抱できない度合い)に応じて大きくなると考えられるため、次の順と想定する。
立地快適(:1)>立地利便(:2)>構造快適(:3)>環境快適(:4)>運営利便(:5)>情報利便(:6)
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。
・立地については事前に選定が行われている場合が多いため、順位は下と考えられる。
・建物については、次の通りとする。
・入居者の苦情のうち、空調に関するものが首位を占めるという過去からの一般的傾向に次い
で、情報化対応性の不備が今後顕在化するという予想を重視する。
・面積や内装に関する不満は一時期に比較すれば低下していると判断する。
・運営利便性の不備は、建物の用途変更(送受信所用建物→事務所用建物)により発生する場
合が多いが、発生頻度は建物の他の要素に比較すれば低いと考えられる。
環境快適(:1)>情報利便(:2)>構造快適(:3)>運営利便(:4)>立地利便(:5)>立地快適(:6)
3.不便・不快度(想定)×発生頻度(想定)
不便・不快度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の快適・利便性の重要度の順位とする。
・結果として、快適・利便性の一対比較表における各項目の重要度を次の順と想定する。
環境快適(:5)>構造快適(:6)>立地利便(:7)=立地快適(:7)>情報利便(:8)>運営利便(:9)
【0302】
C.社会性の一対比較表(図120参照)作成の根拠
1.障害度(想定)
・障害度は環境保全の不備による物理的影響の大きさに鑑み、次の順と想定する。
・社会関係保全では、美観性及び利用者公平性の不備による障害が影響度の点で主たるものと想定されるが、本評価方法の対象建物では、保全状況及び不特定多数の利用状況から、それらの影響は限定されると考えられる。
環境>社会関係
2.発生頻度(想定)
・本評価方法の対象建物では、発生頻度はいずれも高くはないと考えられるが、両者を比較すれば次の順と想定する。
・利用者公平性に関しては、不特定多数の利用が比較的少ないこと、それに関連して人的措置によりある程度対処可能と考えられること等を勘案する。
環境>社会関係
3.障害度(想定)×発生頻度(想定)
障害度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の社会性の重要度の順位とする。
・結果として、社会性の一対比較表における各項目の重要度を次の順と想定する。
環境>社会関係
【0303】
D.資産性の一対比較表(図121参照)作成の根拠
1.資産性低下度(想定)
・事業収益性は現用建物の資産性の最も重要な評価尺度であり、事業への影響も大きい。
・無断で発生する第三者の権利については、その消滅に要する費用が問題となるが、事業収益の影響度に比較すれば小さい。
・以上から、資産性低下度は次の順と想定する。
収益>権利保全
2.発生頻度(想定)
・無断で発生する第三者の権利の消滅に費用を要する場合は稀であると考えられるため、発生頻度は次の順と想定する。
収益>権利保全
3.資産性低下度(想定)×発生頻度(想定)
資産性低下度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の資産性の重要度の順位とする。
・結果として、資産性の一対比較表における各項目の重要度を次の順と想定する。
収益>権利保全
【0304】
6.2 大項目の一対比較表の説明
A.安全・信頼性/ A−1.立地安全・信頼性の一対比較表(図122参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・被害規模への影響度は次の順と想定する。
災害回避性不備>緊急対応性不備>公害回避性不備
2.発生頻度(想定)
・緊急時は災害時の他、保守時や物品搬出入時を包含する。
・通常の立地条件においては公害の発生は稀であると考えられる。
・以上から、発生頻度は次の順と想定する。
緊急対応性不備>災害回避性不備>公害回避性不備
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の立地安全・信頼性の重要度の順位とする。
・結果として、立地安全・信頼性の一対比較表における各項目の重要度を、被害規模の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。
災害回避性>緊急対応性>公害回避性
【0305】
A.安全・信頼性/A−2.構造安全・信頼性の一対比較表(図123参照)作成の根拠
大雪性の項目(中項目)は積雪地のみに適用し、耐寒性の項目(中項目)は寒冷地のみ適用。
1.被害規模(想定)
・最大規模の災害を比較すれば、地震による被害が最大と考えられる。
・雪、凍結及び暴風については、本評価方法の対象建物本体が影響を受ける場合は稀であり、附属設備又は構築物の被害が大きいと考えられる。
・暴風の被害は、構築物の損傷・変形・飛来が主であるが、雪及び凍結の被害に比較すれば小さいと考えられる。
・以上から、被害規模への影響度は次の順と想定する。
地震(:1)>雪(:2)≒凍結(:3)>暴風(:4)
2.発生頻度(想定)
・年間の雪・凍結の継続期間及び地震・暴風の発生回数等から発生頻度は次の順と想定する。
雪(:1)≒凍結(:1)>暴風(:3)>地震(:4)
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の構造安全・信頼性の重要度の順位とする。
・結果として、構造安全・信頼性の一対比較表における各項目の重要度を、被害規模の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。
耐震性>耐雪性≒耐凍結性>耐風性
【0306】
A.安全・信頼性/A−3.火災安全・信頼性の一対比較表(図124参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・消火機能が不備の場合は、仕上げや区画の温度が上昇し、延焼の防止や避難経路の使用が不可能になる場合がある。
・避難区画の性能は延焼防止性にも依存している。
・以上から、被害規模への影響度は次の順と想定する。
消火確実性不備>延焼防止性不備>避難確実性不備
2.発生頻度(想定)
・延焼や避難を伴わない初期消火が少なくないこと、及び延焼の発生と避難の実施とは関連性が高いことを考慮し、発生頻度は次の順と想定する。
消火>延焼≒避難
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の火災安全・信頼性の重要度の順位とする。
・結果として、火災安全・信頼性の一対比較表における各項目の重要度を、被害規模への影響度の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。
消火確実性>延焼防止性>避難確実性
【0307】
A.安全・信頼性/A−4.水害安全・信頼性の一対比較表(図125参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・氾濫水の被害が発生する場合は雨漏りの被害も大きくなることが多いと考えられるが、水の侵入の経路や水量の相違に基づき、被害規模への影響度は次の順と想定する。
水防性不備>雨漏り防止性不備
2.発生頻度(想定)
・雨漏りは必ずしも氾濫水に起因しないため、発生頻度は次の順と想定する。
雨漏り>水防
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の水害安全・信頼性の重要度の順位とする。
・結果として、水害安全・信頼性の一対比較表における各項目の重要度を、被害規模への影響度の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。
水防性>雨漏り防止性
【0308】
A.安全・信頼性/A−5.雷害安全・信頼性の一対比較表(図126参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・本評価方法の対象建物では外部雷による火災の危険性は低く、損傷も含め、一般に被害規模は小さいと考えられる。
・収容設備・機器の高密度化・電子化・ネットワーク化・省エネ化等に伴い、同一規模の雷撃に対する内部雷の被害が従来より広域に及ぶ場合がある。
・以上から、被害規模は次の順と想定する。
内部雷>外部雷
2.発生頻度(想定)
・内部雷は外部雷に起因して発生するが、その被害は軽微な外部雷でも発生する場合があるため、被害の発生頻度は次の順と想定する。
・高さ60m超の建物においては従来の避雷針のみでは外部雷から防護できないため、外部雷被害の発生頻度はやや高いが、その時は内部雷被害も発生する場合が多いと考えられる。
内部雷>外部雷
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・内部雷防護性は外部雷防護性に一部で依存しているが、性能を左右する独自の要素が大きいため、次の順と想定する。
内部雷防護性>外部雷防護性
【0309】
A.安全・信頼性/A−6.生活安全・信頼性の一対比較表(図127参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・被害規模への影響度は、発生範囲や持続性に基づき次の順と想定する。
・犯罪は前提とする犯罪の程度によりその被害規模が異なるが、本評価方法の対象建物における犯罪の発生は従来稀であるため、防犯性の影響度の順位は低く想定する。
人体無害性不備>傷害・損傷防止性不備>防犯性不備
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。
傷害・損傷>人体>防犯
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模への影響度の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。
人体無害性>傷害・損傷防止性>防犯性
【0310】
A.安全・信頼性/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性の一対比較表(図128参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・被害規模への影響度は、発生範囲や持続性に基づき次の順と想定する。
空気品質信頼性不備>電磁波障害防止性不備>騒音・振動防止性不備
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。
・電磁波については、EMCの重要度が高まりつつある現状にあっては、発生頻度が高まりつつあると考えられるため、騒音・振動より上位とする。
空気品質低下>電磁波>騒音・振動
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の通信機械室内環境安全・信頼性の重要度の順位とする。
・結果として、通信機械室内環境安全・信頼性の一対比較表における各項目の重要度を、次の順と想定する。
空気品質信頼性>電磁波障害防止性>騒音・振動防止性
【0311】
B.快適・利便性/B−2.立地利便性の一対比較表(図129参照)作成の根拠
1.不便度(想定)
・不便度への影響度は次の順と想定する。
交通利便性不備>業務利便性不備
2.発生頻度(想定)
・一般に、業務支援施設は交通利便性の高い地域に立地しているが、その逆は必ずしも成立しない。
・本評価方法の対象建物では、中長期的・巨視的には立地の適正化が進められて来ており、且つその際は交通の便を優先していると考えられる。
・以上から、発生頻度は次の順と想定する。
業務利便性不備>交通利便性不備
3.不便度(想定)×発生頻度(想定)
・発生頻度の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。
業務利便性>交通利便性
【0312】
B.快適・利便性/B−3.建物構造快適性の一対比較表(図130参照)作成の根拠
1.不快度(想定)
・不快度への影響度は次の順と想定する。
規模(狭い等)>内装(汚い等)>構造(窓が小さい等)
2.発生頻度(想定)
・本評価方法の対象建物では、業務集約による狭隘化や機械室の事務室化が発生する一方、収容替の際に事務室の内装工事が実施されることが多いため、内装が原因で不快を感じる場合は少ないと考えられる。
・以上から、発生頻度は次の順と想定する。
規模>構造>内装
3.不快度(想定)×発生頻度(想定)
不快度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の建築物構造快適性の重要度の順位とする。
・結果として、建築物構造快適性の一対比較表における各項目の重要度を、次の順と想定する。
規模快適性>構造快適性>内装快適性
【0313】
B.快適・利便性/B−4.室内環境快適性の一対比較表(図131参照)作成の根拠
1.不快度(想定)
・不快度への影響度は同等と想定する。
空気・音快適性の不備≒照明快適性の不備
2.発生頻度(想定)
・本評価方法の対象建物では、発生頻度は次の順と想定する。
空気・音>照明
3.不快度(想定)×発生頻度(想定)
不快度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、この加算結果を各項目の室内環境快適性の重要度の順位とする。
・結果として、室内環境快適性の一対比較表における各項目の重要度を、次の順と想定する。
空気・音快適性>照明快適性
【0314】
B.快適・利便性/B−6.運営利便性の一対比較表(図132参照)作成の根拠
1.不便度(想定)
・不便度への影響度は次の順と想定する。
・清掃・保守利便性は建物所有者・入居者の不便度に直接には影響しないが、安全・信頼性や快適性の低下の一因となる他、特殊な清掃・保守機械を要する場合は費用増による収益性低下も発生し、影響範囲は広い。
執務利便性不備>清掃・保守利便性不備
2.発生頻度(想定)
・清掃・保守利便性不備が顕在化しにくい点を考慮し、発生頻度は次の順と想定する。
清掃・保守利便性不備>執務利便性不備
3.不便度(想定)×発生頻度(想定)
不便度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、かつ発生頻度の重みが大きいと考えられるため、各項目の運営利便性の重要度の順位を、次の順と想定する。
清掃・保守利便性不備>執務利便性不備
【0315】
C.社会性/C−2.社会関係保全性の一対比較表(図133参照)作成の根拠
1.障害度(想定)
・近隣調和性の不備は、障害の広がりの点で他の機能の不備より影響が大きい。
・企業理念伝達性の不備は、障害として顕在化することは稀であると考えられる。
・以上から、障害度への影響度は次の順と想定する。
近隣調和性不備>公平性不備>企業理念伝達性不備
2.発生頻度(想定)
・本評価方法の対象建物では、外壁等改修状況、ハートビル対策の緊急度及びCI導入状況から、発生頻度は次の順と想定する。
公平性不備>近隣調和性不備>企業理念伝達性不備
3.障害度(想定)×発生頻度(想定)
障害度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、かつ障害度の重みが大きいと考えられるため、各項目の社会関係保全性の重要度の順位を、次の順と想定する。
近隣調和性>公平性>企業理念伝達性
【0316】
6.3 中項目の一対比較表の説明
A.安全・信頼性/A−1.立地安全・信頼性/A−1−1.災害回避性の一対比較表(図134参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・被害規模は影響範囲(広域/局所)との関連が強い。
・最大規模の被害を比較すれば、一番は地震で、次いで水害、爆発・延焼の順と考えられる。
・水害と爆発・延焼の被害を比較すれば、本評価方法の対象建物においては水害の方が規模が 大きい。爆発・延焼は原因となった施設の近傍に限定されるため、その被害規模は水害ほどには大きくならない。特に耐火建築では爆発・延焼の被害は皆無ではないが一般には軽微である。
地震>水害>爆発・延焼
2.発生頻度(統計)
・1年間の発生件数は次の通りである。(損害保険料率算定会の事故災害データベースの2000年の国内発生件数を採用した。 )
爆発・延焼(爆発24、延焼39)>水害(12)>地震(7)
3.被害規模(想定)×発生頻度(統計)
・被害規模と発生頻度とが相反するが、比較期間を100年程度とした場合は、被害規模の重みが大きいと考えられる。
地盤堅固性>水害回避性>爆発・延焼等回避性
【0317】
A.安全・信頼性/A−2.構造安全・信頼性/A−2−1.耐震性の一対比較表(図135参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・想定される最大規模の地震においては、上位の部位の被害規模が大きいと考えられる。
(同一規模の地震においては、この順位は逆になる。)
建物・鉄塔>建物附属設備>二次部材等
2.発生頻度(想定)
・上位の部位に被害が発生しない規模の地震でも、下位の部位に被害が発生する場合がある。
二次部材等>建物附属設備>建物・鉄塔
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模と発生頻度とが相反するが、比較期間を100年程度とした場合は、上位の部位の被害規模の重みが大きいと考えられる。
建物・鉄塔>建物附属設備>二次部材等
【0318】
A.安全・信頼性/A−2.構造安全・信頼性/A−2−2.耐風性の一対比較表(図136参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・建物・鉄塔が暴風により損傷するのは、風圧力が設計用風圧力(建築基準法施行令によれば風速30〜46m/sに対応した風圧力)を上回る場合である。その場合は構築物等の被害もかなりのものになると思われるが、建物・鉄塔が破損した場合の被害規模に比較すれば小さい。
(上記の風速以下の暴風においては、被害規模の順位は逆になる。)
・構築物等の被害は規模としては建物・鉄塔に比較すれば軽微であるが、飛来物により人命・施設に関わる二次災害が発生することが多い。
建物・鉄塔>構築物等
2.発生頻度(想定)
・建物・鉄塔に被害が発生しない場合でも、構築物等に被害が発生する頻度は高い。なお、理科年表によれば、国内80地点のうち1997年までの過去約50年間に風速(空気の流れの速さの10分間平均値)の最大値が30m/sを超えた地点は28地点、46m/sを超えた地点は3地点であった。
構築物等>建物・鉄塔
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・比較期間を100年程度とした場合は、建物・鉄塔の被害規模の重みが大きいと想定する。
建物・鉄塔>構築物等
【0319】
A.安全・信頼性/A−2.構造安全・信頼性/A−2−3.耐雪性の一対比較表(図137参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・建物・構築物が積雪により損傷するのは、積雪深が設計値を上回る場合である。
福井県の例では、設計用積雪深は1m〜2.5mの範囲であり、積雪量1cm毎に1mにつき20ニュートン以上(建築基準法施行令)より、設計用積雪荷重は約200〜500kg/mである。
・建物附属設備の積雪による被害の程度は建物・構築物より部分的であるが、機能不全により建物の広範囲に支障を及ぼす場合がある。落雪は、部分的であるが、発生すれば重大な事故に至る場合が多い。敷地内の滞雪の被害は、他の要素より軽微である。
損傷(建物・構築物)>損傷(建物附属設備)>落雪>滞雪
2.発生頻度(想定)
・損害保険料率算定会の事故災害データベースの2000年の大雪発生件数は2件である。
・理科年表によれば、国内80地点のうち、1997年までの過去約50年間に積雪深度が1m以上となった地点は23地点、2.5m以上となった地点は1地点であったが、雪降ろしを前提としない積雪荷重により設計されている建物では、積雪による損傷は極めて稀と考えられる。
・発生頻度は被害規模の逆の順になると考えられる。
滞雪>落雪>損傷(建物附属設備)>損傷(建物・構築物)
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模と発生頻度とが相反するが、比較期間を100年程度とした場合は、被害規模の重みが大きいと想定する。ただし、落雪は発生頻度の高さを重視し、損傷(建物附属設備)よりも上位とする。
損傷防止性(建物・構築物)>落雪事故防止性>損傷防止性(建物附属設備)>滞雪防止性
【0320】
A.安全・信頼性/A−2.構造安全・信頼性/A−2−4.耐寒性の一対比較表(図138参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・広域性の観点から、被害規模は次の順と想定する。浮上りは建物(母屋)に発生した場合の被害規模で比較した。凍結損傷に関しては、他の自然災害と異なり、建物附属設備の方が建物より全体への影響が大きいと考えられるため、被害規模を上位とする。結露は断熱性能の点で弱点となる箇所に集中することが多く、被害規模も一般に軽微なため、凍結転倒より下位とする。
浮上り(:1)>凍結損傷(建物附属設備、:2)>凍結損傷(建物、:3)>凍結転倒(:4)>結露(:5)
2.発生頻度(想定)
・凍結損傷(建物)及び凍結損傷(建物附属設備)の発生頻度は高く、且つこれらの間に決定的な差は付け難い。これに続き、凍結転倒、結露の順と考えられる。
・浮上りは簡易な附属舎で発生する場合があるが、本評価方法の対象建物(母屋)では極めて稀と考えられる。
凍結損傷(建物、:1)≒凍結損傷(建物附属設備、:1)>凍結転倒(:3)>結露(:4)>浮上り(:5)
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、また被害規模の重みを重視し、かつ浮上りの発生頻度の低さを強調し、各項目の耐寒性の重要度の順位を、次の順と想定する。
凍結損傷防止性(建物附属設備)>凍結損傷防止性(建物)>凍結転倒防止性>結露防止性>浮上り防止性
【0321】
A.安全・信頼性/A−3.火災安全・信頼性/A−3−1.延焼防止性の一対比較表(図139参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・火災の原因は、もらい火と内部火災とに大別される。
・耐火・不燃建築では、近隣火災によるもらい火は、近接又は開き放しの外部開口部からのものが主であり、被害規模は比較的小さいが、広域火災によるもらい火の被害規模は、屋外配線類等の損傷も含まれるため、大規模なものになると考えられる。
・内部火災の被害規模は、発見・消火・避難の良否により大小様々であるが、本評価方法の対象建物では比較的小規模に留まると考えられる。
もらい火>内部火災
2.発生頻度(想定)
・平成9年度の火災の実態に関する東京消防庁の資料によれば、事務所の出火原因として最も多いものは電気関係(25.5%)>たばこ(23.5%)>放火(19.6%)の順であり、このことから内部火災の頻度の高さが窺われる。ただし、本評価方法の対象建物では内部火災の発生頻度は極めて低い。
(なお、劣化対策が不十分な場合の経年に伴う内部火災発生頻度の増大及び不審者の侵入による放火が可能性として考えられるが、現段階ではその点は考慮の対象外とした。)
もらい火>内部火災
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模及び発生頻度のいずれにおいても、もらい火の重要度が高いため次の順と想定する。
もらい火防止性>内部火災拡大防止性
【0322】
A.安全・信頼性/A−3.火災安全・信頼性/A−3−3.消火確実性の一対比較表(図140参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・防火区画や内装不燃化を除けば、早期発見・通報と初期消火とは火災の拡大防止のために最も重要である。
・両者はこの目的を達成するために連携していると考えられ、その限りでは火災通報と消火活動との順位の差は付け難い。ただし、初期消火ができなかった火災を含む全体に対しては、消火活動の影響が上位である。
消火活動>火災通報
2.発生頻度(想定)
・通常、火災通報には消火活動が伴うため誤作動、不作動を除けば両者の発生頻度は等しい。
・なお、平成9年度の火災の実態に関する東京消防庁の資料によれば次の通りである。
第一に事業用建物の火災発見動機の件数は、
火炎>自動火災報知設備>臭気>物音
の順であり、初期の状態だけに限ってもこの順は変らない。
第二に、消防機関への火災通報設備は、携帯電話等を含む加入電話が90%以上を占めている。
第三に、事業用建物では、夜間・休日等では建物内に人がおらず近隣者や通行人からの通報
が多いため、初期消火より通報に心掛ける場合が多い。
(ただし、勤務者は消火を優先する場合が多い。)
第四に、自動火災報知設備の設置された事業用建物では、火災の初期の段階でその効果を上げていることも指摘されている。
・本評価方法の対象建物のうち、人が常駐しない通信機器収容室等においては、火災早期検知システムの役割は大きいと考えられる。さらに、これらの建物では、火災発生を警備会社に通報する機能付きのセキュリティシステム(WAKENET)が設置されており、火災初期の通報はこれに依存する場合が多いと考えられる。
火災通報=消火活動
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・両者の重みの関係は、消火事例全体における早期発見・通報・初期消火の割合により異なるが、早期発見・通報に依存する非常駐建物が多い現状に鑑み、次の順と想定する。
消火活動確実性>火災通報確実性
【0323】
A.安全・信頼性/A−4.水害安全・信頼性/A−4−1.水防性の一対比較表(図141参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・水防確実性は、敷地・建物への氾濫水の侵入を防止できる機能であり、これに対して水害時排水確実性は、万が一侵入した氾濫水を迅速確実に排出できる機能である。
・前者の確保により被害規模を小さくすることが基本であり、後者の機能は善後策でその能力にも限度がある。
水防>水害時排水
2.発生頻度(想定)
・水防確実性は、200年に1回の確率で発生する規模の水害を想定している。
・水害時排水確実性は、水防区画を破るほどではないが屋根や外壁から排水系統以外の部位に侵入する大雨等の水もすべて確実に排出することを想定しており、頻度はより高いと考えられる。
水害時排水>水防
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・200年という比較期間においては、被害規模の重みが大きいと考えられ、以下の順を想定する。
水防確実性>水害時排水確実性
【0324】
A.安全・信頼性/A−4.水害安全・信頼性/A−4−2.雨漏り防止性の一対比較表(図142参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・建物防水確実性は、建物部位への漏水(雨水・溢水)の侵入を防止できる機能であり、日常排水確実性は、排水系統に導入された雨水及び敷地・建物内で発生した雑排水・汚水を迅速確実に排出できる機能である。
・被害規模は、漏水(雨水・溢水)の侵入が一般に部分的で小さいのに対し、日常排水は局所的なものであっても衛生機器が使用不能となる等の大きな影響がある。また、日常排水は配管系統に関わるため詰まり等の事故では影響が広範囲且つ大規模となる場合も考えられる。
・以上から、被害規模は次の順と想定する。
日常排水>建物防水
2.発生頻度(想定)
・建物防水及び日常排水の発生頻度に最も大きな影響を及ぼすものは部位の劣化である。対象部位は、建物防水では主として屋根・外壁であり、日常排水では排水配管である。
・修繕履歴の履歴事例によれば、トイレの漏水や排水の詰まりに関するものが件数で上位を占めており、屋根・外壁の漏水よりも頻繁に発生していることがうかがわれる。また、排水本管は改修されることが稀であり、経年とともに危険性が増大する。
・以上から、発生頻度は次の順と想定する。
日常排水>建物防水
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模及び発生頻度のいずれにおいても、日常排水確実性の重要度が高いため、次の順と想定する。
日常排水確実性>建物防水確実性
【0325】
A.安全・信頼性/A−5.雷害安全・信頼性/A−5−1.外部雷防護性の一対比較表(図143参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・雷撃遮蔽性は、雷撃を受雷部に誘導して各部位をその保護範囲内に置くことにより直撃を避ける機能であり、避雷用接地確実性は受雷部に誘導した雷撃電流を確実に大地に放流する機能である。
・雷撃遮蔽に失敗した場合は、屋根・外壁や屋上設置の附属設備、構築物等を破損する。外壁等の落下は二次的災害の原因にもなる他、附属設備の被害は建物機能不全の原因となる。
・一方、雷撃遮蔽に成功しても避雷用接地が確保されない場合、建物電位の上昇等の原因となる。
・両者の被害規模は場合によるが、避雷用接地は雷撃遮蔽を前提とすることから、次の順と想定する。
雷撃遮蔽>避雷用接地
2.発生頻度(想定)
・高さ60m超の建物では、従来の避雷針の保護角の考え方が適用できず、雷撃遮蔽に失敗する頻度が高いと考えられるため、発生頻度(失敗する頻度)は次の順と想定する。
雷撃遮蔽>避雷用接地
・高さ60m以下の建物では、両者の発生頻度(失敗する頻度)はほぼ等しいと想定する。
雷撃遮蔽≒避雷用接地
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・建物高さに関わらず、次の順と想定する。ただし、高さ60m超の建物では、雷撃遮蔽性の重みを大きくし、以下の順を想定する。
避雷用接地確実性>雷撃遮蔽性
【0326】
A.安全・信頼性/A−5.雷害安全・信頼性/A−5−2.内部雷防護性の一対比較表(図144参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・顧客への影響度から、被害規模は次の順と想定する。
電気通信設備>附属設備・機器
2.発生頻度(想定)
・附属設備・機器については社会一般においても試行錯誤の段階であるため、総合的対策の進捗状況に鑑み、発生頻度は次の順と想定する。
附属設備・機器>電気通信設備
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・事業目的に鑑み、電気通信設備防護性を上位とする。ただし、有人の送受信所用建物においては、事務用の附属設備・機器の防護も重要であるため、両者の重みはそれを考慮して設定している。
電気通信設備防護性>附属設備・機器防護性
【0327】
A.安全・信頼性/A−6.生活安全・信頼性/A−6−1.傷害・損傷防止性の一対比較表(図145参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・被害規模は次の順と想定する。
転落(:1)≒落下物(:1)>設備傷害(:3)≒危険物傷害(:3)>転倒(:5)
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。
転倒(:1)>転落(:2)≒設備傷害(:2)>落下物(:4)>危険物傷害(:5)
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、傷害・損傷防止性における各項目の重要度を概ね次の順と想定する。
転落防止性(:2)>落下物防止性(:5)=設備傷害防止性(:5)>転倒防止性(:6)>危険物傷害防止性(:8)
【0328】
A.安全・信頼性/A−6.生活安全・信頼性/A−6−2.人体無害性の一対比較表(図146参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・被害規模は次の順と想定する。なお、建材と空気品質とは関係性が強い。
廃棄物処理(:1)>給水給湯(:2)>建材(:3)≒空気品質(:3)>排水処理(:5)
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。なお、建材と空気品質とは関係性が強い。建材(:1)≒空気品質(:1)>廃棄物処理(:3)>廃水処理(:4)>給水給湯(:5)
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、人体無害性における各項目の重要度を概ね次の順と想定する。
建材無害性(:4)≒空気品質安全性(:4)≒廃棄物安全性(:4)>給水給湯安全性(:7)>廃水処理安全性(:9)
【0329】
A.安全・信頼性/A−6.生活安全・信頼性/A−6−3.防犯性の一対比較表(図147参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・セキュリティの確保は不審者侵入防止を第一義とし、通報は被害拡大防止のための善後策である。
・通報が迅速であっても、侵入による被害(破壊・盗難・放火等)は既に発生している。
・無人建物・無人時間帯における通報機能は重要であるが、その役割は被害の拡大防止に限られる。
不審者侵入>侵入通報
2.発生頻度(想定)
・誤報、不作動も皆無とは言えないが、発生頻度はほぼ等しい。
不審者侵入≒侵入通報
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模及び発生頻度ともに、不正者進入の重要度が高いため、次の通りの順と考えられる。
不審者侵入防止性>侵入通報確実性
【0330】
A.安全・信頼性/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性/A−7−1.空気品質信頼性の一対比較表(図148参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・ディジタル交換機は塵埃より温湿度の影響を受け易いため、被害規模は次の順と想定する。
温湿度>空気清浄度
2.発生頻度(想定)
・MACS空調機の故障の影響は空気清浄度の低下よりも温湿度の障害方が大きいため、発生頻度は次の順と想定する。
温湿度>空気清浄度
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模及び発生頻度ともに、温湿度の重要度が高いため、次の通りの順と想定する。
温湿度信頼性>空気清浄度信頼性
【0331】
A.安全・信頼性/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性/A−7−2.電磁波障害防止性の一対比較表(図149参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・通常の立地環境と建物仕様では、外部電磁波による障害は軽微なものに留まると考えられること、及びEMC(注)の重要度が高まりつつあることの2点から、内部電磁波障害の方が被害規模が大きいと想定する。
(注)EMCとはElectromagnetic Compatibility (電磁環境両立性)の略称であり、電気・電子機器が互いに悪影響を与えたり受けたりせずに動作できる機能をいう。EMは、妨害レベルと耐性レベルの2つに分けられ、この2つの関係を両立性レベルという。
▲1▼ 妨害レベル:エミッション(電気・電子機器から輻射又は伝導により伝搬する電磁波雑音をいう。妨害レベルは、電磁放射、電磁妨害又はEMIともいう。)のレベルを表わす。
▲2▼ 耐性レベル:イミュニティ(電気・電子機器が放射性電磁波雑音に耐えて正常動作を継続できることをいう。耐性レベルは、電磁耐性、電磁感受性又はEMSともいう。)のレベルを表わす。
内部電磁波障害>外部電磁波障害
2.発生頻度(想定)
・被害規模の場合と同様の事情により、内部電磁波障害の方が発生頻度が高いと想定する。
内部電磁波障害>外部電磁波障害
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・被害規模及び発生頻度ともに、内部電磁波障害の重要度が高いため、次の通りの順と想定する。次の順と想定する。
内部電磁波障害防止性>外部電磁波障害防止性
【0332】
A.安全・信頼性/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性/A−7−3.騒音・振動防止性の一対比較表(図150参照)作成の根拠
1.被害規模(想定)
・通常の立地環境や建物構造においては、被害規模は次の順と想定する。
振動障害(:1)>内部騒音障害(:2)>外部騒音障害(:3)
2.発生頻度(想定)
・通信機械室の騒音、振動は、MACS空調機(通信装置・情報処理装置用の分散式空調機)が発生源となる場合を除けば、主として工事により発生する。
・振動、内部騒音は建物工事や通信工事、外部騒音は他社の発注工事によるものが主であり、後者の発生頻度は前者より低い。また、振動は騒音を伴う場合が普通であるが、騒音のみの場合もある。
・以上から、発生頻度は次の順と想定する。
内部騒音障害(:1)>振動障害(:2)>外部騒音障害(:3)
3.被害規模(想定)×発生頻度(想定)
・内部騒音障害防止性と振動障害防止性とが等しい順位となるが、被害規模の重みが大きいと考えられるため、以下の順位と想定する。
振動障害防止性>内部騒音障害防止性>外部騒音障害防止性
【0333】
B.快適・利便性/B−1.立地快適性/B−1−1.環境障害回避性の一対比較表(図151参照)作成の根拠
1.不快度(想定)
・不快度は影響の受忍期間(長く辛抱できない度合い)に応じて大きくなると考えられるため次の順と想定する。
・日照・通風障害は住居系建物においては不快度が大きいが、本評価方法の対象建物においては低減している。
振動・悪臭障害(:1)>騒音障害(:2)>風害(:3)>日照・通風(:4)>電波障害(:5)
2.発生頻度(想定)
・建物の高さ・配置・形状にもよるが、発生頻度は概ね次の順と想定する。
電波障害(:1)>風害(:2)>日照・通風(:3)>騒音障害(:4)>振動・悪臭障害(:5)
3.不快度(想定)×発生頻度(想定)
・順位の加算結果が加算結果振動・悪臭障害及び騒音障害が同一順となるが、不快度の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。
振動・悪臭障害回避性>騒音障害回避性>風害回避性>日照・通風確保性>電波障害回避性
【0334】
B.快適・利便性/B−3.建物構造快適性/B−3−2.規模快適性の一対比較表(図152参照)作成の根拠
1.不快度(想定)
・受忍期間(長く辛抱できない度合い)の点で、面積は高さよりも規模快適性への影響度が高く、主要な要素と考えられる。
面積>高さ
2.発生頻度(想定)
・執務室環境は近年かなり改善されているが、現状では狭隘の方が天井高不足よりも発生頻度が高いと考えられる。
面積>高さ
3.不快度(想定)×発生頻度(想定)
・不快度及び発生頻度共に、面積の重要度が高いため次の順と想定する。
面積快適性>高さ快適性
【0335】
B.快適・利便性/B−3.建物構造快適性/B−3−3.内装快適性の一対比較表(図153参照)作成の根拠
1.不快度(想定)
・受忍期間(長く辛抱できない度合い)の点で、色彩は仕上げよりも内装快適性への影響度が高く、主要な要素と考えられる。
色彩>仕上げ
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は同等と想定する。
色彩≒仕上げ
3.不快度(想定)×発生頻度(想定)
・順位の加算結果において、色彩の重要度が高い結果となったため次の順と想定する。
色彩快適性>仕上げ快適性
【0336】
B.快適・利便性/B−4.室内環境快適性/B−4−1.照明快適性の一対比較表(図154参照)作成の根拠
1.不快度(想定)
・受忍期間(長く辛抱できない度合い)の点で、照度・色温度は輝度よりも照明快適性への影響度が高く、主要な要素と考えられる。
照度・色温度>輝度
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は輝度の方がやや高いと想定する。
輝度>照度・色温度
3.不快度(想定)×発生頻度(想定)
・加算結果において同一の順位となるが不快度の重みが高いため、次の順と想定する。
照度・色温度快適性>輝度快適性
【0337】
B.快適・利便性/B−4.室内環境快適性/B−4−2.空気・音快適性の一対比較表(図155参照)作成の根拠
1.不快度(想定)
・受忍期間(長く辛抱できない度合い)の点で、不快度は次の順と想定する。
なお、音環境については、本評価方法の対象室内で感知し得る騒音レベルは、比較的軽微なものと考えられる。
温湿度(:1)>音環境(:2)>気流(:3)>空気清浄度(:4)
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。
空気清浄度(:1)>気流(:2)>温湿度(:3)>音環境(:4)
3.不快度(想定)×発生頻度(想定)
・不快度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、各項目の耐寒性の重要度の順位を、次の順と想定する。
温湿度快適性(:4)>気流快適性(:5)=空気清浄度快適性(:5)>音環境快適性(:6)
【0338】
B.快適・利便性/B−5.情報利便性/B−5−1.情報化対応性の一対比較表(図156参照)作成の根拠
1.不便度(想定)
・影響規模や受忍期間(長く辛抱できない度合い)の点で、不便度は次の順と想定する。
電源(:1)>情報配線(:2)>情報端子(:3)>画像障害(:4)
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。
情報端子(:1)>情報配線(:2)(:3)>画像障害>電源(:4)
3.不便度(想定)×発生頻度(想定)
・不便度の重みが大きいと考えられるため、次の順と想定する。四者の重みの関係は修正が必要と考えられる。
電源対応性>情報配線対応性>情報端子対応性>画像障害防止性
【0339】
B.快適・利便性/B−6.運営利便性/B−6−1.業務利便性の一対比較表(図157参照)作成の根拠
1.不便度(想定)
・受忍期間(長く辛抱できない度合い)の点で、不便度は次の順と想定する。
配置>動線
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は次の順と想定する。
配置>動線
3.不便度(想定)×発生頻度(想定)
・不便度及び発生頻度ともに、配置の重要度が高いため、次の順と想定する。
配置利便性>動線利便性
【0340】
C.社会性/C−1.環境保全性/C−1−1.公害防止性の一対比較表(図158参照)作成の根拠
1.障害度(想定)
・障害度は住居系の建物が存在する場合を想定し、次の順とする。
・本評価方法の対象建物から発生し得る騒音障害、排気障害及び排水障害は、比較的軽微なものと考えられる。
日照・通風障害(:1)>風害(:2)>電波障害(:3)>騒音障害(:4)≒排気障害(:4)≒排水障害(:4)>外構(:7)
2.発生頻度(想定)
・発生頻度は建物の高さ・配置・形状により多少異なると考えられるが、次の順と想定する。
電波障害(:1)>日照・通風障害(:2)>風害(:3)>外構(:4)>騒音障害(:5)≒排気障害(:5)>排水障害(:7)
1 2 3 4 5 5 7
3.障害度(想定)×発生頻度(想定)
・障害度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、各項目の公害防止性の重要度の順位を、次の順と想定する。
日照・通風障害防止性>電波障害防止性>風害防止性>騒音障害防止性=排気障害防止性>排水障害防止性=外構維持保全性
【0341】
D.資産性/D−1権利保全性/D−1−1.権利侵害回避性の一対比較表(図159参照)作成の根拠
1.資産性低下度(想定)
・無断占有は第三者の権利が確定している可能性が無断使用に比較して高く、その消滅にはより多くの費用が発生すると考えられるため、資産性低下度は次の順と想定する。
無断占有>無断使用
2.発生頻度(想定)
・発生頻度はともに低いと考えられるが、両者を比較すれば同等と想定する。
無断占有≒無断使用
3.資産性低下度(想定)×発生頻度(想定)
・資産性低下度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、各項目の権利侵害回避性の重要度の順位を、次の順と想定する。
無断占有回避性>無断使用回避性
【0342】
D.資産性/D−2.収益性/D−2−1.事業収益性の一対比較表(図160参照)作成の根拠
1.資産性低下度(想定)
・資産性低下度は、各収益面積の比率に基づき次の順と想定する。
電気通信事業>賃貸事業
2.発生頻度(想定)
・発生頻度はほぼ同等と想定する。
電気通信事業≒賃貸事業
3.資産性低下度(想定)×発生頻度(想定)
・資産性低下度と発生頻度との重要度を示す順位を、同一項目毎に加算することにより、各項目の事業収益性の重要度の順位を、次の順と想定する。
電気通信事業収益性>賃貸事業収益性
【0343】
7.λ一欄テーブル
以下、図161〜図166のテーブルにおいて、データベース4に予め登録されているλ、すなわち各機能項目毎の決定要素等に基づいた、階層,大項目,中項目各々のλの数値と、このλの数値作成の根拠の説明を行う。
すなわち、λの決定要素としては、階層,大項目,中項目各々における機能項目の一体性及び独立性の度合いが考慮される。
たとえば、図161に示されるように、階層A(安全・信頼性)においては日常使用時と災害時との関係を考慮し、階層B(快適・利便性)・C(社会性)においては直接の受益者が異なる場合を考慮し、階層D(資産性)においては収益対象スペースの相互関係を考慮する。
また、図162のテーブルが機能項目としての階層A,B,C,D各々のλを示し、図163の各テーブルが階層Aに含まれる機能項目としての大項目各々のλを示し、図164のテーブルが階層B及びCに含まれる大項目各々のλを示している。
さらに、図165のテーブルが階層Aの大項目に含まれる中項目のλを示し、図166のテーブルが階層B,C,D各々の大項目に含まれる中項目λを示している。
【0344】
【発明の効果】
上述してきたように、本発明の建物性能総合評価システムによれば、寄与率演算部及びλ−ファジィ積分演算部において、建物の機能評価項目(要求性能)に対する評価を、性能評価を数値化した性能評価値を用いることにより数値的に行い、この数値的な評価結果によって、最適化分類部3が評価対象の建物の最適化の方向付け(最適化分類)を実現し、容易に最適化施策の検討に移行することができる。
また、本発明の建物性能総合評価システムによれば、上述したように、階層,大項目,中項目各々のレベルにおいて、個々に性能評価を行うため、利用者が知りたい建物の性能要求を、各々独立して確認することができ、各機能項目のレベル毎にきめ細かい評価を行うことができる。
【0345】
また、本発明の建物性能総合評価システムによれば、FMサイクルの分析を通じて、独自に構築した機能項目の構成に基づき、これら各機能項目毎に、評価結果が数値化された性能判定値により上位項目の性能判定値を求め、かつ、正確に評価可能な評価項目を選定し、この選定された評価項目を数値的に評価し、すなわち、λ−ファジィ積分演算部が各機能項目毎にλ−ファジィ積分によって性能判定値を演算することにより、機能項目の相乗結果及び相殺効果を考慮して、正確に各機能項目に対する要求性能の検証を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】性能評価区分により分類された階層毎に、建物の性能を定量化した性能判定値を示したテーブル。
【図2】性能判定値を1以上であり、かつ3以下の実数値に拡張して、整数の判定値に対応させたテーブル。
【図3】性能判定対象である建物機能の階層構成を示す概念図。
【図4】各階層毎に、建物の段階毎(機能種別)における評価されるべき機能を分類したテーブル。
【図5】図4で想定した機能を、各々相互独立的にツリー構造とした概念図。
【図6】図4で想定した機能を、各々相互独立的にツリー構造とした概念図。
【図7】図5及び図6のツリー構造を4階層(A,B,C,D)に整理し、各階層毎に大項目,中項目及び小項目に整理・細分化したツリー構造の概念図。
【図8】図5及び図6のツリー構造を4階層(A,B,C,D)に整理し、各階層毎に大項目,中項目及び小項目に整理・細分化したツリー構造の概念図。
【図9】図5及び図6のツリー構造を4階層(A,B,C,D)に整理し、各階層毎に大項目,中項目及び小項目に整理・細分化したツリー構造の概念図。
【図10】図5及び図6のツリー構造を4階層(A,B,C,D)に整理し、各階層毎に大項目,中項目及び小項目に整理・細分化したツリー構造の概念図。
【図11】図5及び図6のツリー構造を4階層(A,B,C,D)に整理し、各階層毎に大項目,中項目及び小項目に整理・細分化したツリー構造の概念図。
【図12】図5及び図6のツリー構造を4階層(A,B,C,D)に整理し、各階層毎に大項目,中項目及び小項目に整理・細分化したツリー構造の概念図。
【図13】図7〜12の機能項目の分類記号の付与方法を説明する概念図。
【図14】図13の付与方法に基づいて、機能項目を一覧可能に整理したテーブル。
【図15】図13の付与方法に基づいて、機能項目を一覧可能に整理したテーブル。
【図16】図13の付与方法に基づいて、機能項目を一覧可能に整理したテーブル。
【図17】図13の付与方法に基づいて、機能項目を一覧可能に整理したテーブル。
【図18】本発明の一実施形態による無線電話機の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の一実施形態に用いる一対比較表の評価尺度を示すテーブル。
【図20】機能項目数が4つの場合の一対比較表の一例を示すテーブル。
【図21】ファジィ積分の計算例に用いる、5つの建物の寄与率を示すテーブル。
【図22】λ−ファジィ測度を演算するための、4つの機能項目の部分集合の組み合わせを示すテーブル。
【図23】λ−ファジイ積分により算定された性能判定値と、加重平均により算出された性能判定値との比較を示すテーブル。
【図24】総合判定値に基づき、最適分類を行うグラフを示す概念図である。
【図25】FMサイクルの循環の一例を示す概念図である。
【図26】階層A−大項目1−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図27】階層A−大項目1−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図28】階層A−大項目1−中項目1−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図29】階層A−大項目1−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図30】階層A−大項目1−中項目3−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図31】各ビル種別における耐震性能の定義が示されたテーブルである。
【図32】階層A−大項目2−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図33】階層A−大項目2−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図34】階層A−大項目2−中項目1−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図35】階層A−大項目2−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図36】階層A−大項目2−中項目2−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図37】階層A−大項目2−中項目3−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図38】階層A−大項目2−中項目3−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図39】階層A−大項目2−中項目3−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図40】階層A−大項目2−中項目3−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図41】階層A−大項目2−中項目4−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図42】階層A−大項目2−中項目4−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図43】階層A−大項目2−中項目4−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図44】階層A−大項目2−中項目4−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図45】階層A−大項目2−中項目4−小項目5のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図46】階層A−大項目3−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図47】階層A−大項目3−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図48】階層A−大項目3−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図49】階層A−大項目3−中項目3−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図50】階層A−大項目3−中項目3−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図51】階層A−大項目4−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図52】階層A−大項目4−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図53】階層A−大項目4−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図54】階層A−大項目4−中項目2−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図55】階層A−大項目5−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図56】階層A−大項目5−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図57】階層A−大項目5−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図58】階層A−大項目5−中項目2−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図59】階層A−大項目6−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図60】階層A−大項目6−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図61】階層A−大項目6−中項目1−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図62】階層A−大項目6−中項目1−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図63】階層A−大項目6−中項目1−小項目5のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図64】階層A−大項目6−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図65】階層A−大項目6−中項目2−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図66】階層A−大項目6−中項目2−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図67】階層A−大項目6−中項目2−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図68】階層A−大項目6−中項目2−小項目5のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図69】階層A−大項目6−中項目3−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図70】階層A−大項目6−中項目3−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図71】階層A−大項目7−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図72】階層A−大項目7−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図73】階層A−大項目7−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図74】階層A−大項目7−中項目2−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図75】階層A−大項目7−中項目3−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図76】階層A−大項目7−中項目3−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図77】階層A−大項目7−中項目3−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図78】階層B−大項目1−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図79】階層B−大項目1−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図80】階層B−大項目1−中項目1−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図81】階層B−大項目1−中項目1−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図82】階層B−大項目1−中項目1−小項目5のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図83】階層B−大項目2−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図84】階層B−大項目2−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図85】階層B−大項目3−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図86】階層B−大項目3−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図87】階層B−大項目3−中項目2−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図88】階層B−大項目3−中項目3−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図89】階層B−大項目3−中項目3−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図90】階層B−大項目4−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図91】階層B−大項目4−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図92】階層B−大項目4−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図93】階層B−大項目4−中項目2−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図94】階層B−大項目4−中項目2−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図95】階層B−大項目4−中項目2−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図96】階層B−大項目5−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図97】階層B−大項目5−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図98】階層B−大項目5−中項目1−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図99】階層B−大項目5−中項目1−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図100】階層B−大項目6−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図101】階層B−大項目6−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図102】階層B−大項目6−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図103】階層C−大項目1−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図104】階層C−大項目1−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図105】階層C−大項目1−中項目1−小項目3のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図106】階層C−大項目1−中項目1−小項目4のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図107】階層C−大項目1−中項目1−小項目5のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図108】階層C−大項目1−中項目1−小項目6のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図109】階層C−大項目1−中項目1−小項目7のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図110】階層C−大項目2−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図111】階層C−大項目2−中項目2−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図112】階層C−大項目2−中項目3−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図113】階層D−大項目1−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図114】階層D−大項目1−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図115】階層D−大項目2−中項目1−小項目1のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図116】階層D−大項目2−中項目1−小項目2のみなし仕様とその性能判定値を示すテーブル。
【図117】一対比較表を作成する機能項目(大項目)毎の決定要素とこの決定要素に対するコメントとを示したテーブル。
【図118】階層A(安全・信頼性)に属する大項目の一対比較表を示すテーブル。
【図119】階層B(快適・利便性)に属する大項目の一対比較表を示すテーブル。
【図120】階層C(社会性)に属する大項目の一対比較表を示すテーブル。
【図121】階層D(資産性)に属する大項目の一対比較表を示すテーブル。
【図122】階層A(安全・信頼性)/A−1.立地安全・信頼性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図123】階層A(安全・信頼性)/A−2.構造安全・信頼性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図124】階層A(安全・信頼性)/A−3.火災安全・信頼性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図125】階層A(安全・信頼性)/A−4.水害安全・信頼性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図126】階層A(安全・信頼性)/A−5.雷害安全・信頼性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図127】階層A(安全・信頼性)/A−6.生活安全・信頼性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図128】階層A(安全・信頼性)/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図129】階層B(快適・利便性)/B−2.立地利便性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図130】階層B(快適・利便性)/B−3.建物構造快適性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図131】階層B(快適・利便性)/B−4.室内環境快適性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図132】階層B(快適・利便性)/B−6.運営利便性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図133】階層C(社会性)/C−2.社会関係保全性に含まれる中項目の一対比較表を示すテーブル。
【図134】階層A(安全・信頼性)/A−1.立地安全・信頼性/A−1−1.災害回避性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図135】階層A(安全・信頼性)/A−2.構造安全・信頼性/A−2−1.耐震性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図136】階層A(安全・信頼性)/A−2.構造安全・信頼性/A−2−2.耐風性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図137】階層A(安全・信頼性)/A−2.構造安全・信頼性/A−2−3.耐雪性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図138】階層A(安全・信頼性)/A−2.構造安全・信頼性/A−2−4.耐寒性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図139】階層A(安全・信頼性)/A−3.火災安全・信頼性/A−3−1.延焼防止性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図140】階層A(安全・信頼性)/A−3.火災安全・信頼性/A−3−3.消化確実性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図141】階層A(安全・信頼性)/A−4.水害安全・信頼性/A−4−1.水防性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図142】階層A(安全・信頼性)/A−4.水害安全・信頼性/A−4−2.雨漏り防止性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図143】階層A(安全・信頼性)/A−5.雷害安全・信頼性/A−5−1.外部雷防護性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図144】階層A(安全・信頼性)/A−5.雷害安全・信頼性/A−5−2.内部雷防護性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図145】階層A(安全・信頼性)/A−6.生活安全・信頼性/A−6−1.障害・損害防止性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図146】階層A(安全・信頼性)/A−6.生活安全・信頼性/A−6−2.人体無害性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図147】階層A(安全・信頼性)/A−6.生活安全・信頼性/A−6−3.防犯性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図148】階層A(安全・信頼性)/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性/A−7−1.空気品質信頼性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図149】階層A(安全・信頼性)/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性/A−7−2.電磁波障害防止性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図150】階層A(安全・信頼性)/A−7.通信機械室内環境安全・信頼性/A−7−3.騒音・振動防止性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図151】階層B(快適・利便性)/B−1.立地快適性/B−1−1.環境障害回避性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図152】階層B(快適・利便性)/B−3.建物構造快適性/B−3−2.規模快適性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図153】階層B(快適・利便性)/B−3.建物構造快適性/B−3−3.内装快適性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図154】階層B(快適・利便性)/B−4.室内環境快適性/B−4−1.照明快適性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図155】階層B(快適・利便性)/B−4.室内環境快適性/B−4−2.空気・音快適性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図156】階層B(快適・利便性)/B−5.情報利便性/B−5−1.情報化対応性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図157】階層B(快適・利便性)/B−6.運営利便適性/B−6−1.業務利便性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図158】階層C(社会性)/C−1.環境保全性/C−1−1.公害防止性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図159】階層D(資産性)/D−1.権利保全性/D−1−1.権利侵害回避性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図160】階層D(資産性)/D−2.収益性/D−2−1.事業収益性に含まれる小項目の一対比較表を示すテーブル。
【図161】階層毎のλの決定要素と、決定要素に対するコメントを示したテーブル。
【図162】階層A,B,C,Dのλと、各階層のλを決定した根拠が示されたテーブル。
【図163】階層Aに属する大項目のλと、これらの各大項目のλを決定した根拠が示されたテーブル。
【図164】階層B,Cに属する大項目のλと、これらの各大項目のλを決定した根拠が示されたテーブル。
【図165】階層Aに属する中項目のλと、これらの各中項目のλを決定した根拠が示されたテーブル。
【図166】階層B,C,Dに属する中項目のλと、これらの各中項目のλを決定した根拠が示されたテーブル。
【図167】図18の建物性能総合評価システムの動作例を示すフローチャート。
【図168】第2の実施形態において評価に用いる機能評価項目を示す簡易項目表。
【図169】第2の実施形態において評価に用いる機能評価項目を示す簡易項目表。
【図170】小項目の判定評価値(野帳データ)を入力する表示画面の一例を示す概念図。
【図171】最適化分類部3が表示画面に表示する判定結果の画面の一例を示す概念図。
【図172】建材に含まれる主な化学物質とそれを原因とする症状との関係を示すテーブル。
【図173】建物の性能評価手法の一般化を説明する、性能評価プロセスを示すフロー図。
【図174】帰納的手法による建物機能の一般的表現の想定を行う、階層毎の機能要素を表したテーブル。
【図175】帰納的手法による建物機能の一般的表現の想定を行う、階層毎の機能要素を表したテーブル。
【図176】一般化のための代表的な建物用途と、その建物の評価に関わる人々との対応を示すテーブル。
【図177】各階層毎の建物機能の機能要素を、集合住宅(マンション)へ個別展開させたテーブル。
【図178】各階層毎の建物機能の機能要素を、集合住宅(マンション)へ個別展開させたテーブル。
【図179】各階層毎の建物機能の機能要素を、集合住宅(マンション)へ個別展開させたテーブル。
【図180】各階層毎の建物機能の機能要素を、宿泊・集会施設(ホテル)へ個別展開させたテーブル。
【図181】各階層毎の建物機能の機能要素を、宿泊・集会施設(ホテル)へ個別展開させたテーブル。
【図182】各階層毎の建物機能の機能要素を、宿泊・集会施設(ホテル)へ個別展開させたテーブル。
【図183】各階層毎の建物機能の機能要素を、医療施設(病院)へ個別展開させたテーブル。
【図184】各階層毎の建物機能の機能要素を、医療施設(病院)へ個別展開させたテーブル。
【図185】各階層毎の建物機能の機能要素を、医療施設(病院)へ個別展開させたテーブル。
【図186】各階層毎の建物機能の機能要素を、教育施設(小・中・高等学校)へ個別展開させたテーブル。
【図187】各階層毎の建物機能の機能要素を、教育施設(小・中・高等学校)へ個別展開させたテーブル。
【図188】各階層毎の建物機能の機能要素を、教育施設(小・中・高等学校)へ個別展開させたテーブル。
【図189】各階層毎の建物機能の機能要素を、文化施設−1(美術館)へ個別展開させたテーブル。
【図190】各階層毎の建物機能の機能要素を、文化施設−1(美術館)へ個別展開させたテーブル。
【図191】各階層毎の建物機能の機能要素を、文化施設−1(美術館)へ個別展開させたテーブル。
【図192】各階層毎の建物機能の機能要素を、文化施設−2(劇場)へ個別展開させたテーブル。
【図193】各階層毎の建物機能の機能要素を、文化施設−2(劇場)へ個別展開させたテーブル。
【図194】各階層毎の建物機能の機能要素を、文化施設−2(劇場)へ個別展開させたテーブル。
【図195】各階層毎の建物機能の機能要素を、スポーツ施設(競技場)へ個別展開させたテーブル。
【図196】各階層毎の建物機能の機能要素を、スポーツ施設(競技場)へ個別展開させたテーブル。
【図197】各階層毎の建物機能の機能要素を、スポーツ施設(競技場)へ個別展開させたテーブル。
【図198】各階層毎の建物機能の機能要素を、小売施設(百貨店)へ個別展開させたテーブル。
【図199】各階層毎の建物機能の機能要素を、小売施設(百貨店)へ個別展開させたテーブル。
【図200】各階層毎の建物機能の機能要素を、小売施設(百貨店)へ個別展開させたテーブル。
【図201】各階層毎の建物機能の機能要素を、産業用施設(工場)へ個別展開させたテーブル。
【図202】各階層毎の建物機能の機能要素を、産業用施設(工場)へ個別展開させたテーブル。
【図203】各階層毎の建物機能の機能要素を、産業用施設(工場)へ個別展開させたテーブル。
【符号の説明】
1 寄与率演算部
2 λ−ファジィ積分演算部
3 最適化分類部
4 データベース

Claims (8)

  1. 建物の性能を評価する機能を、機能の性格により区分して階層を作成し、この階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、この機能項目の性能評価を行い、各階層毎及び各段階毎の性能の判定を行う建物性能総合評価システムであり、
    前記機能項目毎の性能評価を定量化した性能判定値と、各段階の機能項目に対して設定された一対比較表とを記憶したデータベースと、
    この一対比較表に基づき、各段階における機能項目毎の寄与率を求める寄与率演算部と、
    前記寄与率及び性能判定値に基づき、前記各段階毎の性能判定値から、この上位段階の性能判定値を順次λ−ファジィ積分演算するλ−ファジィ積分演算部と
    を有することを特徴とする建物性能総合評価システム。
  2. 前記段階毎のλ−ファジィ測度を求めるためのλが、前記データベースに各段階毎に登録されており、
    前記λ−ファジィ積分演算部が前記λと前記寄与率とを用いて、所定の演算式により、各段階毎のλ−ファジィ測度を算出し、このλ−ファジィ測度とその段階に含まれる機能項目の性能判定値とにより、各段階の性能判定値を演算することを特徴とする請求項1記載の建物性能総合評価システム。
  3. 前記λ−ファジィ積分演算部が、前記複数の段階において、上位段階に含まれる複数の下位段階を機能項目とし、この下位段階の性能判定値から、この上位段階の性能判定値を、順次演算することにより、各階層毎の総合性能判定値を求めること特徴とする請求項2記載の建物性能総合評価システム。
  4. 前記各階層の総合性能判定値を用いて、評価対象の建物の最適な施策を判定する最適化分類部を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の建物性能総合評価システム。
  5. 建物の性能を評価する機能を、機能の性格により区分して階層を作成し、この階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、この機能項目の性能評価を行い、各階層毎及び各段階毎の性能の判定を行う建物性能総合評価方法であり、
    前記機能項目毎の性能評価を定量化した性能判定値と、各段階の機能項目に対して設定された一対比較表とをデータベースに記憶する記憶過程と、
    この一対比較表に基づき、各段階における機能項目毎の寄与率を求める寄与率演算過程と、
    前記寄与率及び性能判定値に基づき、前記各段階毎の総合性能判定値を、λ−ファジィ積分演算するλ−ファジィ積分演算過程と
    を有することを特徴とする建物性能総合評価方法。
  6. 前記段階毎のλ−ファジィ測度を求めるためのλが、前記データベースに各段階毎に登録する登録過程を有し、
    前記λ−ファジィ積分演算において、前記λと前記寄与率とを用いて、所定の演算式により、各段階毎のλ−ファジィ測度を算出し、このλ−ファジィ測度とその段階に含まれる機能項目の性能判定値とにより、各階層毎の総合性能判定値及び各段階毎の性能判定値が演算されることを特徴とする請求項5記載の建物性能総合評価方法。
  7. 前記λ−ファジィ積分演算過程において、前記複数の段階において、上位段階に含まれる複数の下位段階を機能項目とし、この下位段階の性能判定値から、この上位段階の性能判定値が、順次演算されることにより、各階層毎の総合性能判定値が演算されることを特徴とする請求項6記載の建物性能総合評価方法。
  8. 建物の性能を評価する機能を、機能の性格により区分して階層を作成し、この階層毎に機能を複数の評価段階に構造化して機能項目を構成し、この機能項目の評価を行い、各段階毎の性能の判定を行う、コンピュータにより実行可能な建物性能総合評価プログラムであり、
    前記機能項目毎の性能評価を定量化した性能判定値と、各段階の機能項目に対して設定された一対比較表とをデータベースに記憶する記憶処理と、
    この一対比較表に基づき、各段階における機能項目毎の寄与率を求める寄与率演算処理と、
    前記寄与率及び性能判定値に基づき、前記各段階毎の性能判定値を、λ−ファジィ積分演算するλ−ファジィ積分演算処理と
    を有することを特徴とするコンピュータにより実行可能な建物性能総合評価プログラム。
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