以下、添付図面に従って本発明に係る磁気記録媒体の製造方法に使用される磁性塗料の製造装置10の好ましい形態について詳説する。図1は、磁性塗料の製造装置10の全体構成図であり、図2は、このうち研磨材液の分散処理、濾過処理を行う超音波分散濾過系12の詳細図であり、図3は、超音波分散濾過系12に使用される超音波分散濾過装置40の詳細断面図である。
磁性塗料の製造装置10において、研磨材液の供給系と磁性液の供給系とは並行して設けられ、混合槽70で合流するように配管される。研磨材液の供給系は、液槽と液供給手段と超音波分散濾過系等より構成される。すなわち、研磨材液の供給系においては、液槽13と、液槽13内に先端が配されるスターラ14と、液槽13からの給液配管15と、給液ポンプ29と、2段直列の超音波分散濾過系12、12とより構成される。超音波分散濾過系12の詳細については、後述する。
一方、磁性液の供給系においては、液槽25と、液槽25内に先端が配されるスターラ26と、液槽25からの給液配管27と、給液ポンプ28と、フィルタ69とより構成される。
両供給系よりの液は、混合槽70で合流し、以下、一系統で処理される。すなわち、混合槽70でスターラ72により攪拌された混合液は、混合槽70からの給液配管74と、給液ポンプ76により添加槽82に送られる。添加槽82では、ステアリン酸等が添加される。添加槽82でスターラ84により攪拌された混合液は、添加槽82からの給液配管86と、給液ポンプ88によりフィルタ89を経て塗布装置90に送られる。
図2に示されるように、研磨材液の分散処理、濾過処理を行う超音波分散濾過系12は、液槽と液供給手段と超音波分散濾過装置等より構成される。すなわち、超音波分散濾過系12においては、液槽21と、液槽21からの給液配管23Aと、給液ポンプ24と、超音波分散濾過装置40と、給液ポンプ24と超音波分散濾過装置40との間の配管23B内の圧力を検出する圧力計22と、超音波分散濾過装置40から下流へ研磨材液を供給する給液配管23Cと、超音波分散濾過装置40からの戻り液を液槽21へと戻す戻り配管23Dとより構成される。給液配管23Cは、先端部において、下流へ研磨材液を供給する給液配管23Gと、液槽21へ研磨材液を戻すための戻り配管23F(破線で表示)に切り換え可能となっている。
超音波分散濾過系12において、図3に示されるように、クロスフロー式の超音波分散濾過装置40が採用されている。このクロスフロー式とは、濾過装置(フィルタ)において、デッドエンド式と対比して説明される方式である。すなわち、一般的に使用されるカートリッジフィルタ等は、液供給口と液排出口があるのみで、バイパスが設けられていないデッドエンド式である。これに対し、クロスフロー式とは、液供給口と液排出口と、更に戻り液配管が設けられ、濾過しきれない液が戻り液配管を経て再度液供給口に供給される方式のものである。
図3において、超音波分散濾過装置40の液槽42は円筒状の容器であり、下端部に液排出口32が接続されている。そして、左側面上部には配管30(液供給口)が接続されており、右側面上部には配管34(液バイパス口)が接続されている。また、液槽42内の下部にはフィルタ36が設けられており、このフィルタ36を通過した液のみが液排出口32より流出できるようになっており、それ以外の液は配管34(液バイパス口)より流出されるようになっている。
超音波分散濾過装置40の液槽42の上端部は、後述する振動子44のフランジ50により塞がれて密閉容器を形成する。この液槽42の内部には円柱状の振動子44が配置され、液槽42内部を通過する液体に超音波が印加できるようになっている。なお、フランジ50は振動子44と一体に形成されている。
振動子44の上端部にはコンバータ46が固着されており、コンバータ46にはパワーサプライ48より給電がなされる。したがって、超音波分散濾過装置40が起動されると、コンバータ46により超音波振動が励起され、振動子44により液槽42内に超音波が印加される。
このような構成の超音波分散濾過装置40が採用されることにより、液槽42内に流入した研磨材液は超音波印加により分散処理され、超音波印加部近傍のフィルタ36により濾過され、フィルタ36を通過した液のみが液排出口32より流出され下流へ送られる。
図3において、超音波印加により分散処理された一次粒子P1、P1…はフィルタ36を通過しており、凝集粒子PGや異物Cはフィルタ36を通過できず、配管34より再度循環される。
以上に記載したようなフロー型の超音波分散濾過装置40としては、たとえば、日本精機製作所製のフロー型超音波分散機、商品名:US−1200TCVPを改造して使用できる。この装置の仕様は、周波数が20kHz、MAX振幅が30μm、定格出力が1200W、超音波照射部の直径が50mm、等である。配管30、32、34の内径は14mmとした。
フィルタ36としては、たとえば、ステンレス鋼の繊維を焼結させて作製したもので、直径が80mm、厚さが1.5mm、公称濾過性能が1μmのものを使用できる。後述する分級の場合には、更に公称濾過性能が0.1μmのものを使用し、微粒の粒子を排除できる。
なお、本発明において、クロスフロー式の超音波分散濾過装置は必須の構成ではなく、超音波分散装置とデッドエンド式のフィルタ(一般的なカートリッジフィルタ等)との組み合わせであってもよい。すなわち、研磨材液を超音波印加により分散処理し、次いで濾過すれば粗大な凝集粒子等は除去できる。
ただし、デッドエンド式のフィルタでは、フィルタの目詰まりにより液流量が制限されたり、フィルタの交換頻度が高かったりするので、クロスフロー式の超音波分散濾過装置を採用するのが好ましい。特に、図3に示されるような、超音波照射部の近傍にフィルタが配されるクロスフロー式の超音波分散濾過装置は、凝集粒子が解砕されつつ濾過されるので好ましい。
上記の磁性塗料の製造装置10に使用される各種構成部材は、公知の各種部材が使用できる。ただし、磁気記録媒体の磁性塗料という液の性質より、コンタミネーションを生じず、腐食が生じない材質のものを採用することが好ましい。
超音波分散濾過系12を2段直列に配して、研磨材粒子の分級を行う場合には、たとえば、以下のように構成する。1段目の超音波分散濾過系12は、図2に示される構成のものを使用する。そして、フィルタ36には、粗大な凝集粒子等を除去するためのメッシュサイズのものを使用する。この場合、図2、図3に示されるように、フィルタ36を通過した液のみが液排出口32(図3参照)、給液配管23C(図2参照)を経て下流へ送られる。
これに対し、2段目の超音波分散濾過系12は、図4に示される構成のものを使用する。この超音波分散濾過系12は、図2に示される構成のものと略同様の構成となっているので、相違する箇所のみ説明する。給液配管23Cは戻り配管23Dに接続され、超音波分散濾過装置40からの戻り液を液槽21へと戻す。一方、図3の配管34(液バイパス口)は、給液配管23Eに接続され、超音波分散濾過装置40のフィルタ36を通過しなかった液を下流に供給する。
図4に示される構成の超音波分散濾過系12において、フィルタ36には、微細な粒子等を通過させるためのメッシュサイズのものを使用する。この場合、図3、図4に示されるように、フィルタ36を通過しなかった液のみが液バイパス口34(図3参照)、給液配管23E(図4参照)を経て下流へ送られる。そして、フィルタ36を通過した液は液排出口32(図3参照)、給液配管23C、戻り配管23D(図4参照)を経て再度循環される。
なお、図4に示される構成において、給液配管23Eは、先端部において、下流へ研磨材液を供給する給液配管23Hと、液槽21へ研磨材液を戻すための戻り配管23I(破線で表示)に切り換え可能となっている。
このように構成することにより、研磨材粒子の分級すべき上限サイズ以上の粒子、及び、下限サイズ以下の粒子が排除され、研磨材粒子の分級が有効になされる。
この際使用されるフィルタ36の仕様としては、上限サイズ以上の粒子を排除する側では、フィルタ36の濾過精度をX、研磨材の平均粒径(SEM観察による)をKとした場合、ヘッド磨耗低減の観点では、X≦10Kとするのが好ましく、X≦5Kとするのがより好ましく、X≦2Kとするのが最も好ましい。
一方、下限サイズ以下の粒子を排除する側では、フィルタ36の濾過精度をY、研磨材の平均粒径(SEM観察による)をKとした場合、ノイズ低減の観点では、Y≧0.1Kとするのが好ましく、Y≧0.2Kとするのがより好ましく、Y≧0.5Kとするのが最も好ましい。
本発明の製造方法において、液槽13に入れる前の研磨材液に、必要に応じて液濃度を低減させた後に、超音波分散処理を施すこともできる。この場合、研磨材液には、超音波分散処理に先だって、必要に応じて、サンドグラインダ機(サンドミル)による予備的分散処理を行っても良い。サンドミルによる分散処理にはガラスビーズを用いることが好ましく、ジルコニア(ZrO2 )ビーズを用いることがより好ましい。
予備的分散処理工程の後に、研磨材液を塗布溶媒により希釈して研磨材濃度を低下させることが好ましく、併せて研磨材の粒度測定を行うこともできる。粒度測定は種々の方法により行うことができ、いわゆるトリ・レーザシステム測定方法も使用できる。
以下、本発明が適用される磁気記録媒体の構成、及びこれに使用される各種素材について説明する。まず、本発明の磁性層に用いられる研磨材について説明し、次いで、磁気記録媒体の構成、そして、磁性粉末等の各種素材について説明する。
本発明の磁性層に用いられる研磨材としては、一般に使用される材料が使用できる。すなわち、αアルミナ、γアルミナ、溶融アルミナ、コランダム、人造コランダム、炭化珪素、酸化クロム(Cr2 O3 )、ダイアモンド、人造ダイアモンド、ザクロ石、エメリー(主成分:コランダムと磁鉄鉱)、αFe2 O3 等が例示できる。これらの研磨材は、モース硬度が6以上である。
市販されている例としては、住友化学工業(株)製の、AKP−10、AKP−12、AKP−15、AKP−20、AKP−30、AKP−50、AKP−1520、AKP−1500、HIT−50、HIT−60A、HIT−70、HIT−80、HIT−100、日本化学工業(株)製の、G5、G7、S−1、酸化クロムK、上村工業(株)製のUB40B、フジミインコーポレーテッド製のWA8000、WA10000、戸田工業(株)製のTF100、TF140、TF180などが挙げられる。
これらの研磨材では、平均粒径サイズが0.05〜3μmの大きさの粒子が効果が大きく、0. 05〜1. 0μmの大きさの粒子がより効果が大きく好ましい。
研磨材と併用する結合剤としては、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂等が代表的である。結合剤の研磨材に対する重量比は、0〜1/5の範囲が好ましく採用できる。
これら研磨材の合計量は磁性体100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部の範囲で添加される。1重量部より少ないと十分な耐久性が得られない傾向にあり、20重量部より多すぎると表面性、充填度が劣化する傾向にあるからである。
本発明は、非磁性の支持体上に、非磁性無機粉末と結合剤とを主体とする下層塗布層を設け、該下層塗布層の上に、強磁性粉末、研磨材及び結合剤を含有する磁性層を設けた磁気記録媒体の製造方法に好ましく使用することができる。
磁性層は単層であっても2層以上から構成してもよい。後者の場合、磁性層同士の位置関係は目的により隣接して設けても、間に磁性層以外の層を介在させて設けてもよい。磁性層としては、公知の層構成が採用できる。
なお、本発明において、磁性層厚さとは、複層の場合は最上層(最外層)の磁性層の厚さをいう。この場合に、磁性層の厚さは0. 02μm以上0. 3μm以下であることが好ましい。
磁性層を複層で構成する例としては、強磁性酸化鉄、強磁性コバルト変性酸化鉄、CrO2 粉末、六方晶系フェライト粉末及び各種強磁性金属粉末等から選択した強磁性粉末を結合剤中に分散した磁性層を組み合わせたものが挙げられる。なお、この場合、同種の強磁性粉末であっても元素組成、粉体サイズ等の異なる強磁性粉末を含む磁性層を組み合わせることもできる。
本発明においては、強磁性金属粉末又は六方晶系フェライト粉末を含む磁性層と支持体との間に非磁性層を設けた構成の磁気記録媒体が好ましい。
非磁性層に使用される非磁性粉末として、無機化合物からなるものには、種々のものが例示できる。たとえば、α化率90%以上のα−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、炭化ケイ素、酸化クロム、酸化セリウム、へマタイト(α一酸化鉄)、ゲーサイト(オキシ水酸化鉄)、コランダム、窒化珪素、チタンカーバイド、酸化チタン、二酸化珪素、窒化ホウ素、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどが単独又は組合せで使用される。へマタイト、及びゲーサイトについては、磁性酸化鉄及び酸化鉄還元法で作製する強磁性金属粉末の中間原料であるへマタイト、及びゲーサイト等も好ましい。
使用する結合剤との相互作用を大きくし分散性を改良するために、使用する非磁性粉末が表面処理されていてもよい。表面処理に用いる物質としては、Si、Al、Al及びSi等の元素を含む化合物が挙げられる。これら化合物で処理することにより、非磁性粉末の表面に少なくともシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナなどの層を形成してもよく、あるいは、非磁性粉未の表面をシランカップリング剤やチタンカップリング剤等のカップリング剤により処理してもよい。タップ密度は0. 3〜2g/ml、含水率は0. 1〜5重量%、pHは2〜11、BET法による比表面積(SBET)は5〜100m2 /gの範囲が好ましい。
本発明に使用される強磁性粉末としては、強磁性金属粉末、及び六方晶系フェライト粉末が好ましい。
強磁性金属粉末の飽和磁化は通常、60〜170A・m2 /kg(60〜170emu/g)であり、好ましくは80〜170A・m2 /kg(80〜170emu/g)である。還元直後に特開昭61−52327号公報、特開平7−94310号公報に記載の化合物や各種置換基をもつカップリング剤で処理した後、徐酸化することも強磁性金属粉未の飽和磁化を高めることができるので有効である。
強磁性金属粉末の抗磁力は、13. 5×1O 4 〜23. 8×1O 4 A/m(1700〜3000 Oe)であり、好ましくは14. 3×1O 4 〜22. 3×104 A/m(1800〜2800 Oe)である。
本発明の磁性層に使用する強磁性金属粉未としては、α−Feを主成分とする強磁性合金粉末が好ましい。これらの強磁性金属粉末には所定の原子以外にAl、Si、S、Sc、Ca、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、Bなどの原子を含んでもかまわない。
特に、Al、Si、Ca、Y、Ba、La、Nd、Co、Ni、Bの少なくとも1つをα−Fe以外に含むことが好ましく、Co、Y、Alの少なくとも一つを含むことが更に好ましい。Coの含有量はFeに対して、好ましくは0原子%以上40原子%以下、更に好ましくは10原子%以上40原子%以下、より好ましくは20原子%以上35原子%以下である。Yの含有量は、好ましくは1原子%以上15原子%以下、更に好ましくは3原子%以上10原子%以下、より好ましくは4原子%以上9原子%以下である。Alの含有量は、好ましくは2原子%以上20原子%以下、更に好ましくは3原子%以上20原子%以下、より好ましくは4原子%以上16原子%以下である。
該強磁性粉末に、CoがFeに対して、10〜40at%、Alが2〜20at%、Yが1〜15at%含まれることが好ましい。
これらの強磁性金属粉末には、後述する分散剤、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤などで分散前にあらかじめ処理を行ってもかまわない。具体的には、特公昭44−14090号、特公昭45−18372号、特公昭47−22062号、特公昭47−22513号、特公昭46−28466号、特公昭46−38755号、特公昭47−4286号、特公昭47−12422号、特公昭47−17284号、特公昭47−18509号、特公昭47−18573号、特公昭39−10307号、特公昭46−39639号、米国特許第3, 026, 215号、同3, 031, 341号、同3, 100, 194号、同3, 242, 005号、同3, 389, 014号などに記載されている。
強磁性金属粉末には少量の水酸化物、又は酸化物が含まれてもよい。強磁性金属粉末としては、公知の製造方法により得られたものを用いることができる。公知の製造方法には、下記の方法を挙げることができる。複合有機酸塩(主としてシュウ酸塩)を水素などの還元性気体で還元する方法、酸化鉄を水素などの還元性気体で還元してFeあるいはFe−Co粉体などを得る方法、金属カルボニル化合物を熱分解する方法、強磁性金属の水溶液に水素化ホウ素ナトリウム、次亜リン酸塩あるいはヒドラジンなどの還元剤を添加して還元する方法、金属を低圧の不活性気体中で蒸発させて粉末を得る方法などである。
このようにして得られた強磁性金属粉末は、公知の徐酸化処理、すなわち有機溶剤に浸漬したのち乾燥させる方法、有機溶剤に浸漬したのち酸素含有ガスを送り込んで表面に酸化膜を形成したのち乾燥させる方法、有機溶剤を用いず酸素ガスと不活性ガスの分圧を調整して表面に酸化皮膜を形成する方法のいずれを施したものでも用いることができる。
本発明の磁性層の強磁性金属粉未を1BETで表せば40〜80m2 /gであり、好ましくは45〜70m2 /gである。40m2 /g未満ではノイズが高くなり、80m2 /gより大では表面性が得にくくなる傾向にあり、いずれも好ましくない場合がある。
本発明に使用される磁性層の強磁性金属粉末の結晶子サイズは、好ましくは80〜230Å、更に好ましくは80〜160Å、特に好ましくは80〜125Åである。強磁性金属粉末の平均長軸長は、好ましくは30〜190nm、更に好ましくは30〜100nmである。強磁性金属粉末の平均針状比は、好ましくは2. 0〜10. 0、更に好ましくは3. 0〜9. 0であり、針状比の変動係数は、好ましくは5〜30%、更に好ましくは5〜28%である。
磁性層中の強磁性粉末がFeを主成分とし、長軸長が30〜100nmで結晶子サイズが80〜160Åである磁気記録媒体が特に好ましい。
強磁性金属粉末の含水率は0. 01〜2重量%とするのが好ましい。後述する結合剤の種類によって含水率は最適化するのが好ましい。
強磁性金属粉末のタップ密度は,0. 2〜0. 8g/mlが好ましい。0. 8g/mlより大きいと,該粉末を徐酸化するときに均一に徐酸化されないので,該粉末を安全にハンドリングすることが困難であったり、得られたテープの磁化が経時で減少する場合がある。タップ密度が0. 2g/ml以下では分散が不十分になる場合がある。
強磁性金属粉末のpHは、用いる結合剤との組合せにより最適化することが好ましい。その範囲は通常、4〜12であるが、好ましくは6〜10である。強磁性金属粉末は必要に応じ、Al、Si、P又はこれらの酸化物などで表面処理が施されてもかまわない。その表面に存在する量は、処理後の強磁性金属粉末に対し0. 1〜20重量%であり、表面処理を施すと脂肪酸などの潤滑剤の吸着が10mg/m2 以下になり好ましい。
強磁性金属粉末には可溶性のNa、Ca、Fe、Ni、Srなどの無機イオンを含む場合がある。これら無機イオンは、本質的に無い方が好ましいが、200ppm以下であれば特に特性に影響を与えることは少ない。
また、本発明に用いられる強磁性金属粉末は空孔が少ない方が好ましく、その値は20容量%以下、更に好ましくは5容量%以下である。また形状については針状、米粒状、紡錘状のいずれでもかまわない。
強磁性金属粉未自体のSFD(switching-field distribution)は小さい方が好ましく、0 .8以下が好ましい。強磁性金属粉末のHcの分布を小さくすることが好ましい。なお、SFDが0. 8以下であると、電磁変換特性が良好で、出力が高く、また、磁化反転がシャープでピークシフトも少なくなり、高密度デジタル磁気記録に好適である。Hcの分布を小さくするためには、強磁性金属粉末においてはゲーサイトの粒度分布を良くする、焼結を防止するなどの方法がある。
その角形比が0. 82以上、SFDが0. 5以下である磁気記録媒体が特に好ましい。
六方晶系フェライト粉末としては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、鉛フェライト、カルシウムフェライトの各置換体、Co置換体等があるが、中でもバリウムフェライトが好ましい。具体的にはマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト、スピネルで粉体表面を被覆したマグネトプランバイト型フェライト、更に一部スピネル相を含有したマグネトプランバイト型のバリウムフェライト及びストロンチウムフェライト等が挙げられる。
その他所定の原子以外に、Al、Si、S、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Y、Mo、Rh、Pd、Ag、Sn、Sb、Te、Ba、Ta、W、Re、Au、Hg、Pb、Bi、La、Ce、Pr、Nd、P、Co、Mn、Zn、Ni、Sr、B、Ge、Nbなどの原子を含んでもかまわない。一般にはCo−Zn、Co−Ti、Co−Ti−Zr、Co−Ti−Zn、Ni−Ti−Zn、Nb−Zn−Co、Sb−Zn−Co、Nb−Zn等の元素を添加した物を使用することができる。原料・製法によっては特有の不純物を含有するものもある。
六方晶系フェライト粉末の平均板径は、好ましくは50nm以下、更に好ましくは40nm以下、特に好ましくは10〜35nmである。
特にトラック密度を上げるため磁気抵抗ヘッドで再生する場合、低ノイズにするため、平均板径は50nm以下が好ましい。板状比(板径/板厚)の算術平均である平均板状比は1〜15が好ましく、1〜8が更に好ましい。
平均板状比が小さいと、磁性層中の充填性は高くなり好ましいが、十分な配向性が得られない場合がある。15より大きいと粉体間のスタッキングによりノイズが大きくなる場合がある。この粉体サイズ範囲の1BETは通常、10〜200m2 /gを示す。SBET は概ね粉体の板径と板厚からの算術計算値と符合する。
粉体の板径・板厚の分布は通常狭い程好ましい。これらの数値化は困難であり、また分布は正規分布ではない場合が多いが、粉体サイズ(板径又は板厚)の変動係数は、10〜200%である。粉体サイズ分布をシャープにするには、粉体生成反応系をできるだけ均一にするとともに、生成した粉体に前述した非磁性粉未と同様の分布改良処理を施すことも行われている。たとえば酸溶液中で超微細粉体を選別的に溶解する方法等も知られている。
六方晶系フェライト粉末で測定される抗磁力(Hc)は4×103 〜4×104 A/m(500〜5000 Oe)程度まで調整できる。Hcは高い方が高密度記録に有利であるが、記録ヘッドの能力で制約される。Hcは粉体サイズ(板径・板厚)、含有元素の種類と量、元素の置換サイト、粉体生成反応条件等により制御できる。
飽和磁化(σs)は30A・m2 /kg〜80A・m2 /kg(30emu/g〜80emu/g)である。飽和磁化(σs)は、微粉体になるほど小さくなる傾向がある。飽和磁化(σs)を変えるためマグネトプランバイトフェライトにスピネルフェライトを複合すること、含有元素の種類と添加量の選択等が良く知られている。
また、W型六方晶系フェライトを用いることも可能である。六方晶系フェライト粉末を結合剤中に分散する前に、事前に分散溶媒、結合剤に合った表面処理剤によりその表面を処理することも行われている。表面処理剤としては無機化合物、有機化合物が使用される。主な化合物としては、Si、Al、P、等の酸化物又は水酸化物、各種シランカップリング剤、各種チタンカップリング剤等のカップリング剤が代表例である。これら化合物は、六方晶系フェライト粉末を分散する際に用いることもできる。その表面処理により粒子表面に存在させる量は、処理前の六方晶系フェライト粉末に対して0. 1〜10重量%である。
本発明における、磁性層の抗磁力(Hc)は、通常、143×103 A/m〜279×103 A/m(1800〜3500 Oe)、好ましくは143×103 A/m〜239×103 A/m(1800〜3000 Oe)である。磁性層の最大磁束密度(Bm)は通常、100mT〜700mT(1000〜7000ガウス(G))、好ましくは150mT〜600mT(1500〜6000G)である。Hc、Bmが下限値より小さいと短波長出力を十分に得ることができない場合がある。一方、それらが上限値より大きいと、記録に使用するヘッドが飽和してしまうので出力を確保することが難しくなる場合がある。
再生ヘッドにMRヘッドを使用する場合には、Bmが低い方が好ましい。また、再生ヘッドにMRヘッドを使用する場合、磁性層中の該強磁性粉末の抗磁力が143×103 A/m〜239×103 A/m(1800〜3000 Oe)、σsが40〜120A・m2 /kg(40〜120emu/g)である磁気記録媒体が特に好ましい。
再生ヘッドにインダクティブヘッドを使用する場合には、σsが120〜170A・m2 /kg(120〜170emu/g)である磁気記録媒体が特に好ましい。
本発明における、磁気記録媒体の磁性層及び非磁性層の結合剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂やこれらの混合物が使用できる。熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が−100〜150°C、数平均分子量が1, 000〜200, 000、好ましくは10, 000〜100, 000、重合度が約50〜1, 000程度のものが使用できる。
このような結合剤としては、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、ブタジエン、エチレン、ビニルプチラール、ビニルアセタール、ビニルエーテル、等を構成単位として含む重合体又は共重合体、ポリウレタン樹脂、各種ゴム系樹脂がある。以上の結合剤は、研磨材液の調製にも使用することができる。
また、熱硬化性樹脂又は反応型樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル系反応樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの混合物、ポリウレタンとポリイソシアネートの混合物等が挙げられる。
前記の結合剤により、より優れた強磁性粉末の分散効果と磁性層の耐久性を得るためには、必要に応じ、−COOM、−SO3 M、−OSO3 M、−P=O(OM)2 、−O−P=(OM)2 、(以上につきMは水素原子、又はアルカリ金属塩基)、−OH、−NR2 、−N+ R3 (Rは炭化水素基)、エポキシ基、SH、CN、などから選ばれる少なくとも一つ以上の極性基を共重合又は付加反応で導入したものを用いることが好ましい。このような極性基の量は10-1〜10-8モル/gであり、10-2〜10-6モル/gが好ましい。
本発明の磁気記録媒体に用いられる結合剤は、強磁性粉末に対し、5〜50重量%の範囲、好ましくは10〜30重量%の範囲で用いられる。塩化ビニル系樹脂を用いる場合は、結合剤総量に対して5〜100重量%、ポリウレタン樹脂を用いる場合は0〜100重量%、ポリイソシアネートは0〜50重量%の範囲でこれらを組み合わせて用いるのが好ましい。結合剤の一部に、環状構造とエーテル基とを含むポリウレタン樹脂を含むことが特に好ましい。
また、磁性層のTgが30°C以上、150°C以下であることが特に好ましい。また、磁性層の強磁性粉末の充填度は、使用した強磁性粉末の飽和磁化(σs)及びBm(最大磁束密度)から計算でき、(Bm/4πσs)となる。本発明において、その値は、好ましくは1. 7g/ml以上、更に好ましくは1. 9g/ml以上、最も好ましくは2. 1g/ml以上である。
本発明において、ポリウレタンを用いる場合は、ガラス転移温度は−50〜100°C、破断伸びは100〜2000%、破断応力は0. 5〜100×10-2MPa(0.05〜10kg/cm2 )、降伏点は0. 5〜100×10-2MPa(0.05〜10kg/cm2 )が好ましい。
本発明に用いるポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンー1, 5ージイソシアネート、o−トルイジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート類、また、これらのイソシアネート類とポリアルコールとの生成物、また、イソシアネート類の縮合によって生成したポリイソシアネート等を使用することができる。
本発明における、磁気記録媒体の磁性層及び/又は非磁性層中には、通常、潤滑剤、研磨材、分散剤、帯電防止剤、可塑剤、防黴剤等などを始めとする種々の機能を有する素材をその目的に応じて含有させ得る。
本発明における、磁気記録媒体の磁性層中には、前記非磁性粉末の他に帯電防止剤として導電性粒子を含有させることもできる。しかしながら、支持体と磁性層との間に非磁性層を設けた磁気記録媒体においては、上層の飽和磁束密度を最大限に増加させるためには、できるだけ上層への導電性粒子の添加は少なくし、上層以外の塗布層に添加するのが好ましい。
帯電防止剤としては、特に、カーボンブラックを添加することが、媒体全体の表面電気抵抗を下げる点で好ましい。本発明に使用できるカーボンブラックは、ゴム用ファーネス、ゴム用サーマル、カラー用ブラック、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。SBET は5〜500m2 /g、DBP吸油量は10〜1500ml/100g、平均粒子径は5〜30nm、pHは2〜10、含水率は0. 1〜10重量%、タップ密度は0.1〜1g/ml、が好ましい。
また、カーボンブラックを磁性塗料に添加する前に、あらかじめ結合剤で分散させてもかまわない。磁性層にカーボンブラックを使用する場合は、磁性体に対する量は0. 1〜30質量%で用いることが好ましい。非磁性層には無機質非磁性粉末(ただし、非磁性粉末にはカーボンブラックは含まれない)に対し3〜20質量%含有させることが好ましい。
一般的にカーボンブラックは帯電防止剤としてだけでなく、摩擦係数低減、遮光性付与、膜強度向上などの働きがあり、これらは用いるカーボンブラックにより異なる。したがって、本発明に使用されるこれらのカーボンブラックは、その種類、量、組合せを変え、粉体サイズ、吸油量、電導度、pHなどの先に示した諸特性をもとに目的に応じて使い分けることはもちろん可能である。使用できるカーボンブラックは、たとえば「カーボンブラック便覧」カーボンブラック協会編を参考にすることができる。
本発明は、また、上記磁性層を設けた面とは反対の面に非磁性のバック層を設けてなる磁気記録テープの製造方法にも好ましく使用できる。
本発明の好ましい実施態様を、更に引き続いて以下に列挙する。
磁気記録テープのバック層が、主としてカーボンブラックをバインダー中に分散した分散物を塗布して設けられ、長手方向縦弾性係数が5〜10GPa(500〜1, 000kg/mm2 )である磁気記録媒体が特に好ましい。
本発明における磁気記録媒体は、支持体上に2層以上の塗布層を形成させてなることが好ましい。その形成手段としては、逐次塗布方式(ウェット・オン・ドライ方式)及び同時塗布方式(ウェット・オン・ウェット方式)が挙げられる。 本発明における磁気記録媒体の支持体の厚さは、通常、1〜100μm、テープ状で使用する時は、3〜20μmが好ましく、フレキシブルディスクとして使用する場合は、40〜80μmが好ましく、支持体に設ける非磁性層は、通常0. 5〜10μmであり、0. 5〜3μmが好ましい。
また、前記磁性層及び前記非磁性層以外の他の層を、目的に応じて形成することができる。たとえば、支持体と下層の間に密着性向上のための下塗り層を設けてもかまわない。この厚さは通常、0. 01〜2μm、好ましくは0. 05〜0. 5μmである。また、支持体の磁性層側と反対側にバック層を設けてもかまわない。この厚さは通常、0. 1〜2μm、好ましくは0. 3〜1. 0μmである。これらの下塗り層、バック層には公知のものが使用できる。バック層の表面電気抵抗が1×106 Ω/□以下である磁気記録媒体が特に好ましい。
本発明で使用される支持体には特に制限はなく、通常使用されているものを用いることができる。支持体を形成する素材の例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等の各種合成樹脂のフイルム、及びアルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を挙げることができる。
本発明の目的を有効に達成するには、支持体の表面粗さは、中心面平均表面粗さ(Ra:カットオフ値0. 25mm)で0. 03μm以下が好ましく、0.02μm以下がより好ましく、0. 01μm以下が更に好ましい。
本発明に用いられる支持体のウェブ走行方向のF−5値は、50〜500×10-3GPa(5〜50kg/mm2 )が好ましく、ウェブ幅方向のF−5値は30〜300×10-3GPa(3〜30kg/mm2 )が好ましい。ウェブ長手方向のF−5値がウェブ幅方向のF−5値より高いのが一般的であるが、特に幅方向の強度を高くする必要があるときはその限りでない。
また、支持体のウェブ走行方向及び幅方向の100°C30分での熱収縮率は、3%以下が好ましく、1. 5%以下がより好ましく、80°C30分での熱収縮率は、1%以下が好ましく、0.5%以下がより好ましい。破断強度は、両方向とも0. 05〜1GPa(5〜100kg/mm2 )、弾性率は1〜20GPa(100〜2000kg/mm2 )が好ましい。
本発明における磁気記録媒体は、非磁性粉末又は強磁性粉末と結合剤、及び必要ならば他の添加剤とともに有機溶媒を用いて混練分散し、非磁性塗料及び磁性塗料を支持体上に塗布し、必要に応じて配向、乾燥して得られる。
本発明における磁気記録媒体は、ビデオ用途、オーディオ用途などのテープであっても、データ記録用途のフレキシブルディスクや磁気ディスクであってもよいが、ドロップ・アウトの発生による信号の欠落が致命的となるデジタル記録用途の媒体に対しては特に有効である。更に、下層を非磁性層とし、下層上の磁性層の厚さを0. 5μm以下とすることにより、電磁変換特性が高い、オーバーライト特性が優れた、高密度で大容量の磁気記録媒体を得ることができる。
以上、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法の実施形態の例について説明したが、本発明は上記実施形態の例に限定されるものではなく、各種の態様が採り得る。
次に、本発明の実施例を、比較例と対比して説明する。なお、以下の各例において、「部」の表示は「重量部」 を意味する。
以下の各例は、磁性層と非磁性支持体との間に非磁性粉末と結合剤を主体とした非磁性中間層を設けた層構成を採用した。
そして、本発明の実施例1〜実施例4では、図1に示される構成の磁性塗料の製造装置10で磁性液と研磨材液とをそれぞれ別個に分散処理し、次いで研磨材液を超音波分散濾過系12により分散・濾過し、しかる後に磁性液と研磨材液とを混合した例である。
これに対し、比較例1〜比較例3は、超音波分散濾過系12を使用せず、磁性液と研磨材液とを混合した例である。
(1)非磁性中間層の構成(各例で共通)
非磁性粉体 α−Fe2 O3 80部
平均長軸長 0.1μm
BET法による比表面積 48m2 /g
pH8、 Fe2 O3 含有量 90パーセント以上
DBP吸油量 27〜38ml/100g
表面処理剤Al2 O3
カーボンブラック 20部
平均一次粒子径 16μm
DBP吸油量 80ml/100g
pH 8.0
BET法による比表面積 250m2 /g
揮発分 1.5%
塩化ビニル共重合体 8部
日本ゼオン社製MR−110
ポリエステルポリウレタン樹脂 4部
ネオペンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI
=0.9/2.6/1
−SO3 Na基 1×10-4eq/g含有 Tg 65℃
フェニルホスホン酸 3部
ブチルステアレート 1部
ステアリン酸 1部
メチルエチルケトン 100部
シクロヘキサノン 50部
(2)磁性層の構成(各例で共通)
a)強磁性金属微粉末 100部
組成 Fe/Co=70/30
Hc 195×103 A/m(2450 Oe)
BET法による比表面積 43m2 /g
結晶子サイズ 160A、表面処理剤 Al2 O3 、
粒子サイズ(長軸径) 0. 125μm 偏平針状粒子、
長幅長(短軸長)/短幅長=0. 025/0. 01
σs:157A・m2 /kg(157emu/g)
ポリエステルポリウレタン樹脂 10部
ネオベンチルグリコール/カプロラクトンポリオール/MDI
=0.9/2.6/1
−SO3 Na基 1×10-4eq/g含有
カーボンブラック(粒子サイズ0. 10μm) 0.5部
ブチルステアレート 1.5部
ステアリン酸 0.5部
メチルエチルケトン 90部
シクロヘキサノン 30部
トルエン 60部
b )α−アルミナ(粒子サイズ0. 18μm) 4.5部
MR110 0.45部
シクロヘキサノン 9.2部
上記非磁性中間層の塗料は、ステアリン酸とブチルステアレートを除く各成分をオープンニーダで混練したのち、サンドミルを用いてジルコニアビーズで分散させた。得られた分散液にポリイソシアネートを3部加え、更にステアリン酸とブチルステアレートをメチルエチルケトンとシクロヘキサノンで溶解した液を添加攪拌して、固形分濃度28%、溶剤比率がメチルエチルケトン:シクロヘキサノン=4:6の非磁性塗布液を作製した。
磁性液は、上記磁性体、非磁性粒状粉末、カーボンブラックと塩化ビニル共重合体、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンをオープンニーダで混練したのち、サンドミルを用いてジルコニアビーズで分散させた。
実施例1の研磨材液は、アルミナ:塩化ビニル共重合体MR110:シクロヘキサノン=45:4.5:92の混合物として調製した後、クロスフロー式(循環型)の超音波分散濾過装置40(超音波ホモジナイザー、仕様:1200W、周波数20kHz、照射部面積50mmφ、照射部とホルダーとの間隔3mm、振幅30μm、公称濾過性能が1μmのステンレス鋼繊維焼結フィルタ(80mmφ、厚さ1.5mm)を使用)を用いて、図2の構成で超音波分散濾過処理を施した後、表1に記載の方法により、この研磨材液と磁性液とを混合した。
実施例2の研磨材液は、実施例1と同様に混合物として調製した後、クロスフロー式(循環型)の超音波分散濾過装置40(実施例1と同一仕様の超音波ホモジナイザー)を用いて、図2の構成で分散滞留時間が1分になるように超音波分散濾過処理を施した後、図2の給液配管23Gから図4の液槽21へ通液し、その後、図4の構成の超音波分散濾過系12によって、分散滞留時間が1分になるように超音波分散濾過処理を施した。その際、図4の構成のフィルタ36として、公称濾過性能が0.1μmのステンレス鋼繊維焼結フィルタ(80mmφ、厚さ1.5mm)を使用した。その後、給液配管23Hより処理液を取り出し、表1に記載の方法により、この研磨材液と磁性液とを混合した。
実施例3の研磨材液は、実施例1、2と同様に混合物として調製した後、径1mmのジルコニア(ZrO2 )ビーズとともに竪型サンドミル分散機に入れ、ビーズ体積/(研磨材液体積+ビーズ体積)が60%になるように調整し、360分間サンドミル分散処理を行い、処理後の液を取り出し、クロスフロー式(循環型)の超音波分散濾過装置40(実施例1、2と同一仕様の超音波ホモジナイザー)を用いて、図2の構成で超音波分散濾過処理を施した後、表1に記載の方法により、この研磨材液と磁性液とを混合した。
実施例4の研磨材液は、実施例1〜3と同一のアルミナを使用して、アルミナ:シクロヘキサノン=35:65の混合物(結合剤なし)として調製した後、日本精機製作所製の攪拌機付きバッチ型超音波分散装置(商品名:USDS−1、仕様:周波数20kHz、定格出力600W、超音波照射は36mmφの振動子2個による、デイゾルバー型攪拌羽根の回転数1000rpm、等)を使用して30分分散処理を施した後、クロスフロー式(循環型)の超音波分散濾過装置40(実施例1〜3と同一仕様の超音波ホモジナイザー)を用いて、図2の構成で超音波分散濾過処理を施し、その後、表1に記載の方法により、この研磨材液と磁性液とを混合した。
この混合後に、攪拌し、更にステアリン酸とブチルステアレートをメチルエチルケトンとシクロヘキサノンで溶解した液を添加攪拌して磁性塗布液を作製した。磁性液及び非磁性液は1μmの平均孔径を有するフィルタを用いて濾過し、塗布液をそれぞれ調製した。
なお、送液速度は後述する支持体の搬送速度及び塗布厚さ、塗布幅より逆算できる。一実施態様である実施例として示す図1では、超音波分散濾過系12は2連であるが、送液速度や装置の能力によっては、上述のように1連としても良く、また、3連以上のカスケード構造であっても良い。
非磁性層塗布液の乾燥厚さが1. 5μmになるように支持体上に塗りつけ、更にその直後にこの非磁性塗布液上に磁性層の乾燥厚さが0.2μmになるように、厚さ5. 2μmでAFMの粗さスペクトルで波長4.3μmの粗さ成分強度が0. 03nm2 のポリエチレンナフタレート支持体上に同時重層塗布を行い、両層がまだ湿潤状態にあるうちに300mT(3000G)の磁力をもつコバルト磁石と15mT(1500G)の磁力をもつソレノイドにより配向させ乾燥後、金属ロールのみから構成される7段のカレンダーで温度85°C、線圧力3500N/cm(350kg/cm)、速度50m/分で処理を行い、6. 35mmの幅にスリット処理し、民生用DVCビデオテープを製造した。
以下、実施例1〜実施例4及び比較例1〜比較例3の評価方法について説明する。
(1)C/N測定
出力はドラムテスターを用いて測定した。使用したヘッドは記録・再生用にBs 1. 2T、ギャップ長が0. 22μmのMIGヘッドである。
記録再生時のヘッド/媒体相対速度は10. 5m/secで21MHzの単一周波信号を記録して、キャリア信号出力とキャリア信号から1MHz離れた箇所の再生スペクトル比をシバソク社製のスペクトルアナライザーで観測した。
(2)厚さ測定
サンプルテープを長手方向に約0. 1μmの厚さにダイヤモンドカッターで切り出し、透過型電子顕微鏡で倍率100, 000倍で観測・撮影して磁性層表面、磁性層/非磁性層界面に線を引き、Zeiss社製の画像処理装置IBAS2で測定した。測定長が21cmの場合85〜300回計測し平均値dと標準偏差σとを算出した。
(3)走行耐久性
室内環境(室温:23°C、相対湿度:70%)で、松下電器産業(株)製のカムコーダーDJ−1を使用し、未走行の60分長バージンテープを100回連続的に繰り返し走行させて、走行後のテープダメージ(テープ摺動面ダメージ)を以下の判断基準で評価した。
200倍写真でダメージが確認できた場合 ×
200倍写真でほとんどダメージが確認できなかった場合 ○
200倍写真で全くダメージが確認できなかった場合 ◎
(4) Magμ値
室内環境で、部材としてSUS420Jの4mmφを使用し、荷重10g、速度14mm/s、ラップ180度で磁性層面タッチでテープを1〜100パスまで摺動させ、摺動抵抗値を計測して、オイラーの式から磁性層面との摩擦係数を算出した。
(5)繰り返しHw
室内環境(室温:23°C、相対湿度:70%)で、松下電器産業(株)製のカムコーダーDJ−1を使用し、未走行の60分長バージンテープを100回連続的に繰り返し走行させて、走行前後のヘッド突出量変化をユニオン社製のハイソメット光学顕微鏡で計測し、ヘッド磨耗量を算出した。
以下の表1に、製造条件、評価結果等を纏めて示す。
表1において、「研磨材液の戻し分散」とは、塗布前に研磨材の再凝集を壊すために行う再分散処理を指す。「研磨材液濾過」の項目における「HPF」とは、ハイパスフィルタの略称であり、研磨材粒子の分級すべき上限サイズ以上の粒子を排除するためのものである。一方、「LPF」とは、ローパスフィルタの略称であり、研磨材粒子の分級すべき下限サイズ以下の粒子を排除するためのものである。
比較例1は、強磁性粉末と結合材剤とを主体とする磁性液をオープンニーダで混練した後、研磨材を添加し、サンドミルを用いてジルコニアビーズで同時分散させたケースであり、これを比較のタイプとした。
比較例1の媒体は、研磨材の粉砕が進み、磁性層表面の研磨材粒子のサイズが小さく、かつ、粒子数が増えた。その結果、走行耐久性が低下し、C/Nも低下した。また、ヘッド磨耗量も大きかった。
比較例2は、研磨材液をサンドミルを用いてジルコニアビーズで、滞留時間が360分になるように分散処理させ、塗布液作製の当日にこの研磨材液を超音波分散処理させ、濾過することなく磁性液と攪拌混合させて磁性塗料を作製したケースである。研磨材の粉砕が比較例1より進み、電磁変換特性(C/N)測定や、ヘッド磨耗測定が磁性層の削れのためできない程に耐久性が低下した。
比較例3は、比較例2に対して、研磨材液の分散をサンドミルから超音波に変更し、分散後に濾過することなく、磁性液と攪拌混合させて磁性塗料を作製したケースである。C/Nに優れ、走行耐久性も問題なかったが、ヘッド磨耗量が大きかった。
実施例1、2は、比較例3に対して、研磨材液を濾過して磁性塗料を作製したケースである。比較例3に比べてヘッド磨耗量が小さく、C/Nに優れ、走行耐久性に優れた媒体が作製できた。
実施例2は、実施例1に対して、研磨材液の濾過において微粒分をカットしたケースである。この実施例2は、実施例1に比べてC/Nが向上していた。
実施例3は、比較例2と同様に、研磨材液の分散処理を実施した後、濾過を行い、磁性液と攪拌混合させて磁性塗料を作製したケースである。比較例に比べてC/Nが向上しており、ヘッド磨耗量が小さかった。
実施例4は、結合剤を含まない研磨材液の分散を、バッチ型超音波分散装置とクロスフロー式の超音波分散濾過装置とで行ったケースである。比較例に比べてC/Nが向上しており、ヘッド磨耗量が小さかった。
10…磁性塗料の製造装置、12…超音波分散濾過系、36…フィルタ、40…超音波分散濾過装置、42…液槽、44…振動子、46…コンバータ、C…異物、P1…一次粒子、PG…凝集粒子