JP2004136270A - エチレンの三量化触媒および該触媒を用いたエチレンの三量化方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】エチレンから効率よく、かつ高選択的に1−ヘキセンを製造する。
【解決手段】水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物、または水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなる触媒、または前記触媒に更にハロゲン化された無機化合物、または16属元素を含む化合物を含む触媒の存在下でエチレンを三量化する。
【選択図】 なし
【解決手段】水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物、または水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなる触媒、または前記触媒に更にハロゲン化された無機化合物、または16属元素を含む化合物を含む触媒の存在下でエチレンを三量化する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレンの三量化触媒および該触媒を用いたエチレンの三量化方法に関する。さらに詳しくは、当該触媒を用いた線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の原料コモノマーとして有用な1−ヘキセンをエチレンから効率よくかつ高選択的に製造するエチレンの三量化を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレンを三量化して選択的に1−ヘキセンを得る方法において、クロム化合物を触媒として用いることは公知である(例えば特許文献1〜6参照)。特許文献1にはクロム化合物、ポリヒドロカルビルアルミニウムオキシドおよびドナー配位子からなる触媒系が開示されている。特許文献2には、クロム化合物、ピロール含有化合物、金属アルキル化合物およびハライドからなる触媒系が、また特許文献3には、クロム化合物、金属アルキル化合物および酸アミドまたはイミド化合物からなる触媒系が開示されている。また、特許文献4には、クロミウム塩の多座配位子であるホスフィン、アルシンおよび/またはスチビンとの配位錯体とアルミノキサンからなる触媒が開示されている。さらに、特許文献5には、特定の窒素配位子が配位したクロムの塩素錯体やアルキル錯体とアルミニウム化合物からなる触媒が、特許文献6には、環状ポリアミンまたはヒドロトリス(ピラゾリル)ボレートが配位した有機金属錯体とアルキルアルミニウム化合物からなる触媒が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−265237号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平6−239920号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平8−59732号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平6−298673号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平10−7712号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開平10−231317号公報(特許請求の範囲)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載の方法では、1−ヘキセンと同時にポリエチレンが多く副生する。特許文献2に記載の方法は、ポリエチレンの副生が少なく、この点ではかなり改善している。しかし、触媒の構成成分であるピロール含有化合物は、空気に対して極めて不安定な物質であるため着色して劣化しやすい。従って、取り扱いが難しいばかりか、反応終了後には着色成分を除去するための処理または新たな装置を必要とする等、工業的な触媒としては十分なものではなかった。また、特許文献3に記載の方法では、触媒の構成成分である酸アミドまたはイミド化合物の化合物群の中で活性を得るには、ある特定のイミド化合物(即ちマレイミド)を用いる必要がある。マレイミドは溶解性が低いため触媒調製が煩雑であり、入手が難しいばかりか高価であり、より経済性の優れた触媒が求められている。特許文献5に記載の方法は、触媒活性が低いためより高い活性の触媒が求められている。さらに、特許文献6に記載の方法は、ポリエチレンの生成が多いばかりか、オリゴマー中の1−ヘキセン選択性も低いため、ポリエチレンの副生が少なく、1−ヘキセンの選択性の高い触媒が求められている。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、取り扱いの容易な触媒を用いることにより、LLDPEの原料コモノマーとして有用な1−ヘキセンをエチレンから効率よく高選択的に製造する触媒及び方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、水および/または含水化合物、アルキル基含有化合物および特定の多座配位子が配位した3族〜10族の遷移金属を有する有機金属錯体は、安定で取り扱いが容易であり選択的なエチレンの三量化反応に好適であることから、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、水および/または含水化合物、アルキル基含有化合物および三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した3族〜10族の遷移金属を有する有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒、これらの触媒にさらにハロゲン化された無機化合物を含むエチレンの三量化触または16属元素を含む化合物を含むエチレンの三量化触媒、及びこれらの触媒の存在下でエチレンを三量化する三量化方法、並びにこれらの触媒をエチレンまたはエチレンと水素の雰囲気下で接触させた後、エチレンを三量化するエチレンの三量化方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0009】
本発明においては、エチレンの三量化触媒を構成する一成分として、下記一般式(1)
AMBn (1)
(式中、Aは三脚型構造を有する中性の多座配位子であり、Mは3族〜10族の遷移金属元素、Bは水素、ハロゲン、および直鎖もしくは分岐状のアルキル基からなる群より選ばれる1種以上を表し、nはMの価数と等しい整数を表す。)
で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体が用いられる。
【0010】
ここで、該有機金属錯体に配位させる三脚型構造を有する中性の多座配位子として用いられるものは特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)
【0011】
【化3】
(式中、j,k,mはそれぞれ独立して0〜6の整数である。D1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、L1はそれぞれ独立して周期表1族、14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を表す。また、G1は炭素またはケイ素、R1は水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表す。)
または下記一般式(3)
【0012】
【化4】
(式中、a,b,cはそれぞれ独立して0〜6の整数であり、uは0または1の整数である。D2はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、L2はそれぞれ独立して周期表1族、14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を表す。また、G2は窒素またはリン、R2は酸素またはイオウを表す。)
で示される三座配位子が好適なものとして挙げられる。
【0013】
上記一般式(2)および(3)において、D1およびD2としては特に限定されるものではないが、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられる。また、その置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基類、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基類等が挙げられる。
【0014】
一般式(2)および(3)において、L1およびL2で示される周期表1族、14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基は特に限定されるものではないが、例えば、水素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基類、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基類、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基類、フェニルチオ基、トリルチオ基等のアリールチオ基類、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基等のジアルキルアミノ基類、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基類、メチルフェニル基等のアルキルアリールアミノ基類、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基等のジアルキルホスフィノ基類、ジフェニルホスフィノ基、ジトリルホスフィノ基等のジアリールホスフィノ基類、メチルフェニルホスフィノ基等のアルキルアリールホスフィノ基類が挙げられる。
【0015】
また、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、オキサゾリル基、チアゾール基等の周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する複素環基類が挙げられる。これらの複素環基類の環上の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)におけるR1は特に限定されるものではないが、例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、シアノエチル基、アリル基、トリフルオロプロピル基等の炭素数1〜10のアルキル基類、またはフェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基等の炭素数6〜10のアリール基類が挙げられる。
【0017】
上記一般式(2)および(3)で示される三脚型構造を有する中性の三座配位子は特に限定されるものではないが、例えば、周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を持つ多座配位子としては、トリス(メトキシメチル)メタン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)プロパン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)ブタン、1,1,1−トリス(エトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(プロポキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(ブトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(フェノキシメチル)エタン等の含酸素三座配位子類、1,1,1−トリス(メチルチオメチル)エタン、1,1,1−トリス(ブチルチオメチル)エタン、1,1,1−トリス(フェニルチオメチル)エタン等の含イオウ三座配位子類、1,1,1−トリス(ジメチルアミノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジフェニルアミノメチル)エタン等の含窒素三座配位子類、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジメチルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジエチルホスフィノメチル)エタン等の含リン三座配位子類が挙げられる。さらに、上記一般式(2)および(3)で示される周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する複素環基を持つ多座配位子としては、トリフリルメタン、トリス(5−メチル−2−フリル)メタン、トリス(5−エチル−2−フリル)メタン、トリス(5−ブチル−2−フリル)メタン、1,1,1−トリフリルエタン、トリフリルアミン、トリフリルホスフィン、トリフリルホスフィンオキシド等の含酸素三座配位子類、トリス(チエニル)メタン等の含イオウ三座配位子類、更にトリ(1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジイソプロピル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジフェニル−1−ピラゾリル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)プロパン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)ブタン、トリス(2−ピリジル)メタン、トリス(6−メチル−2−ピリジル)メタン、トリス(2−ピリジル)アミン、トリス(2−ピリジル)ホスフィン、トリス(2−ピリジル)ホスフィンオキシド、トリス(2−ピリジル)ヒドロキシメタン、トリス(1−イミダゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジエチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,4,5−トリメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−n−ブチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−トリル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−アニシル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、1−メチル−トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−トリル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−アニシル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−プロピル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−t−ブチル−1−ピラゾリル)メタン等の含窒素三座配位子類が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)で示される有機金属錯体の具体的な例としては特に限定されるものではないが、例えば、該有機金属錯体のMが6族のクロムである場合を例示すると、トリス(メトキシメチル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(メトキシメチル)メタンクロム(ベンジル)ジクロライド(III)、1,1,1−トリス(メトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(エトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ブトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(フェノキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリフリルメタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(メチルチオメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジメチルアミノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリス(ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジエチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)−メチル−メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(3−トリル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(3−アニシル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(ヒドリド)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(ベンジル)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(エチル)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリベンジル(III)、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジイソプロピル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−イソプロピル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジフェニル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(2−ピリジル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(6−メチル−2−ピリジル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(2−ピリジル)アミンクロムトリクロライド(III)、トリス(1−イミダゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジメチルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジエチルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)等が挙げられる。また、該有機金属錯体のMがクロム以外の例として、特に限定されるものではないがMがスカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ等の場合があげられる。
【0019】
これらのうち触媒活性の面から、上記一般式(2)および(3)で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子としては、複素環基を持つ含窒素三座配位子類が好ましく用いられ、より好ましくはトリス(3−(4−トリル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンが用いられる。また、Bとしてはハロゲンが好ましく用いられる。また、さらに好ましい上記一般式(1)で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体としては、3−(4−トリル)−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンチタントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンスカンジウムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンモリブデントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンタングステントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン鉄トリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン鉄ジクロライド(II)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンモリブデントリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンタングステントリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンチタントリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンスカンジウムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン鉄ジクロライド(II)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン鉄トリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンニッケルジクロライド(Iトリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンパラジウムジクロライド(II)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンプラチナジクロライド(II)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンスカンジウムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンチタントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン鉄トリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン鉄ジクロライド(II)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンニッケルジクロライド(II)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンニッケルトリクロライド(III)、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)等が用いられる。
【0020】
本発明において、上記の三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体の合成法は、特に限定されるものではないが、多座配位子と遷移金属化合物とを例えば公知の錯体形成法[例えば、Inorg.Chem.,25,1080(1986)等]を用いて作用させることにより、容易に合成することができる。この場合、使用できる金属化合物としては特に限定されるものではないが、例えば、トリス(テトラヒドロフラン)塩化スカンジウム(III)、トリス(テトラヒドロフラン)塩化チタン(III)、トリス(テトラヒドロフラン)塩化モリブデン(III)、トリス(テトラヒドロフラン)塩化タングステン(III)、塩化クロム(III)、塩化クロム(II)、臭化クロム(III)、臭化クロム(II)、ヨウ化クロム(III)、ヨウ化クロム(II)、フッ化クロム(III)、フッ化クロム(II)、トリス(テトラヒドロフラン)クロムクロライド(III)、トリス(アセトニトリル)クロムクロライド(III)、トリス(1,4−ジオキサン)クロムクロライド(III)、トリス(ジエチルエーテル)クロムクロライド(III)、トリス(ピリジン)クロムクロライド(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化ニッケル(II)、塩化ニッケル(III)、塩化パラジウム(II)、塩化プラチナ(II)、塩化バナジウム(II)、塩化バナジウム(III)、塩化タンタル(V)、臭化タンタル(V)等が挙げられる。
【0021】
前記の多座配位子を有する有機金属錯体を調整する際の遷移金属の濃度は特に制限されない。また、ここで用いられる溶媒としては特に限定されるものではないが、有機溶媒が好ましく用いられる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。また、上記溶媒はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0022】
また、錯体形成反応は、−80℃から使用する反応溶媒の沸点までの任意の温度で行われ、好ましくは20〜200℃である。反応溶媒の沸点以上の温度で錯形成反応を行う場合には、加圧下で行うこともできる。反応時間は特に制限されず、通常1分〜500時間、好ましくは5分〜300時間である。なお、反応時のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、原料および溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0023】
さらに別途合成法として、上記の方法により合成した三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した遷移金属のハロゲン錯体を原料に、アルキル金属化合物や金属ヒドリド化合物を溶媒中で反応させて、本発明の三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体を合成してもよい。
【0024】
多座配位子が配位した該有機金属錯体は、通常固体として沈殿するので、ろ別により反応溶媒から分離できる。さらに、必要に応じて、上記溶媒を用いて洗浄を行い、次いで乾燥してエチレンの三量化触媒の構成成分の一つである有機金属錯体が合成される。なお、沈殿しない場合は、溶媒留去、貧溶媒の添加あるいは冷却処理等により沈殿させることができる。
【0025】
本発明においては、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した該有機金属錯体のうち、その多座配位子がfacialに配位した有機金属錯体を用いることが特に好ましい。ここで、多座配位子がfacialに配位した錯体とは、多座配位子により3つの配位座が占有された6配位八面体型錯体の異性体の一つである[化学選書 有機金属化学−基礎と応用−、143頁(裳華房)]。即ち、多座配位子により3つの配位座が占有された6配位八面体型錯体の場合、該多座配位子の3つの配位座が互いにシス位になるような配置で配位していることを意味する。
【0026】
本発明において使用されるアルキル基含有化合物は特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(4)
RpEYq (4)
(式中、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数であって、しかもp+qは1〜3である。Eは水素を除く周期表の1族〜3族の元素または周期表の11族〜13族の元素を表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基より選ばれる1種以上を表し、Yは水素、アルコキシド基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれる1種以上を表す。)で示される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0027】
上記一般式(4)において、炭素数1〜10のアルキル基は特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基またはオクチル基等が挙げられる。アルコキシド基としては特に限定されるものではないが、例えば、メトキシド基、エトキシド基、ブトキシド基またはフェノキシド基等が挙げられる。アリール基としては特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(4)で示されるアルキル基含有化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、ジエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムシアニド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジシクロヘキシルフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムシアニド、テトラフェニルスズ、テトラメチルスズ等が挙げられる。これらのうち入手の容易さおよび活性の面から、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましく用いられ、中でも炭素数2以上のアルキル基を含むトリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムまたはトリ−n−オクチルアルミニウムが好ましい。これらのアルキル基含有化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。用いられるアルキル基含有化合物の使用量は、上記の有機金属錯体1モルに対して0.01〜10000当量であり、好ましくは0.5〜3000当量、より好ましくは1〜2000当量である。
【0029】
本発明で用いられる、含水化合物は、下式一般式(5)
ZiXh (5)
(式中、Zは周期表の1族〜15族に属する一種類の元素からなるカチオンを表し、Xは周期表の1族〜2族および/または周期表の11族〜17族に属する元素で構成されるアニオンを表す。iとhは1〜100までの整数を表し、hはカチオンであるZiの正電荷をアニオンであるXでイオン的に中性とするのに必要な自然数を表わす。)
で示される化合物であり、該含水化合物が結晶水および/または吸着水として実数で0より大きく100以下の個数の水分子を含む化合物である。また、一般式(5)で表される化合物の複数が複合結晶体、固溶体または混晶体の少なくとも1つの形態にある化合物であってもよい。ここで、複合結晶体とは、結晶となって複数のZiXhの組成で表される状態にある化合物を意味し、固溶体とは複数のZiXhが無定型(アモルファス)の状態にある化合物を意味し、さらに混晶体とは、結晶状態にある個々のZiXhが混ざり合った状態にある化合物を意味する。すなわち、本発明で用いられる一般式(5)のZiXhとして表される化合物が取りうる形態として、例えば、それらZiXhで表わされる複数の化合物が複合結晶体、固溶体、あるいは混晶体として同一試料中に存在する状態をも可能であることを意味している。
【0030】
一般式(5)のZiXhとして表される化合物が該含水化合物として用いられる化合物のうち好ましい例として、特に限定されるものではないが、例えば、Zがリチウム、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウムである場合、Li(HCO2)(H2O)、LiOH(H2O)、LiBO2(H2O)2、Li2SO4(H2O)、Na(CO2CH3)(H2O)3、Na2CO3(H2O)、Na2CrO4(H2O)4、Na3(OHCCO2(CH2CO2)2)(H2O)2、Na(CH3COCH=C(O)CH3)(H2O)、Na((C2H5)2NCS2)(H2O)3、Na(H2PO4)(H2O)、Na2PdCl6(H2O)4、Na2HAsO4(H2O)7、NaHSO4(H2O)、NaB(4−F−C6H4)4(H2O)2、Na4P2O7(H2O)10、Na4PO4(H2O)12、Na4BO3(H2O)4、Na4BO3(H2O)、Na2AuCl4(H2O)2、Na2AlCl4(H2O)、Na2B4O7(H2O)10、Na2SO4(H2O)10、Na2WO4(H2O)2、Na2MnO4(H2O)、Na2S4O6(H2O)2、Na2TeO3(H2O)2、Na2SeO3(H2O)5、Na2SnO3(H2O)3、Na2S(H2O)9、Na2S2O3(H2O)5、Na2SPO3(H2O)12、Na2Cr2O7(H2O)2、NaHSO4(H2O)、Na2HPO4(H2O)7、Na2(CO2CH2C(OH)(CO2H)CH2CO2)(H2O)1.5、Na2(CO2CH(OH)CH(OH)CO2)(H2O)2、Na2HAsO4(H2O)7、Na2MoO4(H2O)2、Na2(Fe(CN)5NO)(H2O)2、MgSO4(H2O)7、Mg(CO2CH3)2(H2O)2、MgBr2(H2O)6、MgCl2(H2O)6、MgHPO4(H2O)3、MgCrO4(H2O)5、Mg(NO3)2(H2O)6、MgClO4(H2O)6、K(CH3COCH=C(O)CH3)(H2O)0.5、K2CO3(H2O)0.5、K3(OHCCO2(CH2CO2)2)(H2O)、K4(Fe(CN)6)(H2O)3、KF(H2O)2、K2HAsO4(H2O)2、K2HPO4(H2O)3、K2OsO4(H2O)2、K2B10O16(H2O)8、K2SnO3(H2O)3、K2B4O7(H2O)4、K2(Pd(CN)4)(H2O)3、K2CS3(H2O)等の結晶水を有する含水化合物が例示される。また、Zが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ケイ素、およびアルミニウムの場合、特に限定されるものではないが、該一般式(5)で表される化合物に水分子が結晶水および/または吸着水として含まれる個数をt(ここで、tは実数で0より大きく100以下の個数)として例示すると、SiO4(H2O)t、Li2PdCl4(H2O)t、LiSCN(H2O)t、Na((C2H5)2NCS2)(H2O)t、Al2O3(H2O)t、Na2PtCl4(H2O)t、NaAuB4(H2O)t、Na3(Fe(CN)5NH3)(H2O)t、Na3IrCl6(H2O)t、Na3OsCl6(H2O)t、Na2((NH4)5(V10O28))(H2O)t、NaClO4(H2O)t、NaBO2(H2O)t、MgPO4(H2O)t、K4(Fe(CN)6)(H2O)t、K4((RuCl5)2)(H2O)t、K2(Ni(CN)4)(H2O)t、K2S2O3(H2O)t、および(SiO4)r(Al2O3)s(H2O)tさらにNa6((WO4)3(WO3)9)(H2O)t等が例示される。また、これら例示された含水化合物の他に好ましい例としては、上記の例示化合物でZがホウ素、鉄、カルシウム、ルテニウム、ニッケルまたは銅である場合等が挙げられる。また、これら含水化合物の他に本発明では、水を用いることができる。
【0031】
なお、本発明では、触媒調製時に水あるいは該含水化合物を単数あるいは複数用いることも可能であり、水あるいは該含水化合物の好適な使用量は、該有機金属錯体1モルに対して0.0000001〜50000当量であり、好ましくは0.000001〜10000当量、より好ましくは0.00001〜5000当量である。
【0032】
本発明で用いられる、ハロゲン化された無機化合物は特に限定されるものではないが、下記一般式(6)
QX’l (6)
(式中、Qは周期表1族〜2族の元素または周期表13族〜15族の元素を表し、X’はハロゲンを表す。X’の個数lはQの価数に等しい自然数を表す。)
で示される化合物好適な例として挙げられる。具体的には、特に限定されるものではないが、フッ化水素、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、二塩化マグネシウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三塩化タリウム、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、四ヨウ化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、四塩化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、四臭化ケイ素、四フッ化ケイ素、四塩化鉛、四フッ化鉛、三塩化アルミニウム、三塩化ホウ素、四塩化スズ、三塩化リン、五塩化リン、三フッ化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、三塩化アンチモン、五塩化砒素、五塩化アンチモン、五塩化ビスマス等が挙げられる。用いられるハロゲン化された無機化合物の好適な使用量は、有機金属錯体1モルに対して0.0000001〜1000当量であり、好ましくは0.000001〜500当量、より好ましくは0.00001〜100当量である。
【0033】
本発明で用いられる16属元素を含む化合物とは、下記一般式(7)
R’−Jr−R’ (7)
(式中、R’は互いに独立して炭素数1〜10の脂肪鎖あるいは芳香族基を有する炭化水素基であり、連結していてもよい。Jは16属元素であり、Jの個数rは1〜10の自然数を表す。)
で示される化合物が挙げられる。上記一般式(7)において、炭素数1〜10の脂肪鎖を有する炭化水素基は特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ブチレン基またはオクチル基等のアルキル基が挙げられる。また、炭素数1〜10の芳香族基を有する炭化水素基としてはフェニル基、フェニレン基、トリル基、キシリル基等が、特に制限されないが例示される。これらR’で表される基は独立また互いに連結し環状構造を取ることも可能である。Jは16属元素であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウムを表し、Jの個数lは1〜10の自然数であることから、一般式(7)で表される化合物には、エーテル、スルフィド、セレニド、テルリド、過酸化物、ジスルフィド、ジセレニド、ジテルリド、トリスルフィド、トリセレニド、トリテルリドが特に制限されないが含まれる。一般式(7)で表される化合物の具体的としては、特に制限されるものではないが、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメチルパーオキサイド、テトラヒドロフラン、2,4−ジフェニルフラン、ジオクチルエーテル、ジオクチルスルフィド、モノチオベンゼン、チオフェン、2,3−ジシクロヘキシルチオフェン、ジシクロヘキシルスルフィド、ジトリルセレニド、ジ(4―トリル)スルフィド、ジ(3―トリル)スルフィド、ジ(2―トリル)スルフィド、ジベンゾチオフェン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルジセレニド、ジフェニルジテルリド、フラン、テトラヒドロチオフェン等が挙げられる。なお、本発明では、一般式(7)で表される化合物を単数のみならず複数用いることも可能であり、好適な使用量は、該有機金属錯体1モルに対して0.0000001〜50000当量であり、好ましくは0.000001〜10000当量、より好ましくは0.00001〜5000当量である。
【0034】
三量化触媒を調製する際の該有機金属錯体の濃度は特に制限されないが、通常、溶媒1Lあたり0.0001マイクロモル〜100ミリモル、好ましくは0.001マイクロモル〜10ミリモルの濃度で使用される。0.001マイクロモルより小さい触媒濃度では十分な活性が得られず、逆に100ミリモルより大きい触媒濃度では触媒活性が増加せず経済的でない。また、ここで用いられる溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。また、反応生成物、即ち、1−ヘキセンを溶媒として用いることもできる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。ここで、エチレンの三量化反応時の有機金属錯体濃度をコントロールする目的で、必要に応じて濃縮や希釈しても差し支えない。
【0035】
また、触媒成分である水および/または含水化合物、該有機金属錯体、アルキル基含有化合物、ハロゲン化された無機化合物、16属元素を含む化合物を接触させる際の温度は−100〜250℃、好ましくは0〜200℃である。接触時間は特に制限されず、1分〜100時間、好ましくは10分〜48時間である。なお、接触時のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、原料および溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0036】
本発明の触媒の個々の成分を接触させる順は、特に制限されないが、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物をあらかじめ作用させた後、有機金属錯体と接触させることが、活性の点で好ましい。
【0037】
また、触媒成分として、水および/または含水化合物,アルキル基含有化合物に代えて、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分を用いることも、活性の点から好ましい。
【0038】
本発明のエチレンの三量化反応は、触媒成分とエチレンを接触させて行うが、個々の成分を接触させる順は特に制限されない。例えば、各触媒成分の接触時にエチレンを同時に接触させても良く、または触媒成分を接触させた後でエチレンを接触させても良い。具体的には、例えば▲1▼水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させて得られる成分あるいは含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、該有機金属錯体の接触と同時にエチレンを接触させて三量化反応を行う方法、▲2▼水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物と該有機金属錯体を前もって接触させた後、エチレンと接触させて三量化反応を行う方法、または▲3▼水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた成分あるいは含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、有機金属錯体を接触させた後、エチレンと接触させて三量化反応を行う方法等が挙げられる。
【0039】
また、本発明のエチレンの三量化方法は、三量化触媒をエチレンまたはエチレンと水素の雰囲気下で接触させた後、エチレンを三量化してもよい。例えば、エチレン雰囲気下あるいは水素とエチレンの共存下で、三量化触媒を調製した後に水素とエチレンの共存下で三量化反応を開始する方法、または三量化触媒をエチレン下で接触させて三量化反応を行う方法が採られる。該触媒を調製する際の反応容器中のエチレン分圧は0.00001〜10000kg/cm2であり、好ましくは0.1〜3000kg/cm2であり、特に好ましくは1〜2000kg/cm2の範囲であり、また水素分圧は、0.000001〜1000kg/cm2であり、好ましくは0.00001〜300kg/cm2であり、特に好ましくは0.00001〜50kg/cm2の範囲である。
【0040】
本発明におけるエチレンの三量化反応の温度は、−100〜250℃であるが、好ましくは0〜200℃である。反応圧力は、反応系がエチレン雰囲気であれば特に制限されないが、通常、絶対圧で0.01〜3000kg/cm2であり、好ましくは0.1〜300kg/cm2である。また、反応時間は、5秒〜6時間である。また、エチレンは、前記の圧力を保つように連続的に供給してもよいし、反応開始時に前記圧力で封入して反応させてもよい。原料ガスであるエチレンには、反応に不活性なガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が含まれていても何ら差し支えない。なお、エチレン三量化反応のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、エチレンは十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0041】
本反応は、回分式、半回分式、連続式のいずれでも実施できる。エチレンの三量化反応終了後、反応液に、例えば、水、アルコール、水酸化ナトリウム水溶液等の失活剤を添加して反応を停止させることができる。失活した廃クロム触媒は公知の脱灰処理方法、例えば、水またはアルカリ水溶液による抽出等で除去できる。生成した1−ヘキセンは、公知の抽出法や蒸留法により反応液より分離される。また、同様に生成するポリエチレンは、反応液出口で公知の遠心分離法や溶媒等を蒸留分離する際の残渣として分離することができる。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
IR測定:
IRは、島津製作所製の赤外分光光度計(FTIR−8100)を用いて、測定した。
【0044】
ガスクロマトグラフィーによる分析:
反応液中に含まれる炭素数4〜8の生成物の定量は、GLサイエンス製 TC−1のカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−14A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度280℃、検出器温度280℃に設定し、内部標準としてn−ヘプタンを用いた。分析は、このガスクロマトグラフに反応液を1.2μL注入した後、カラムの温度を40℃から250℃まで昇温することにより行った。
【0045】
また、炭素数10以上の生成物は、上記ガスクロマトグラフとは別途用意したGLサイエンス製 TC−1のカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−14A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度300℃、検出器温度300℃に設定し、内部標準としてn−ヘプタンを用いた。分析は、このガスクロマトグラフに反応液を1.4μL注入した後、カラムの温度を50℃から300℃まで昇温することにより行った。
【0046】
気体中に含まれる生成物は、クロムパック製 Al2O3/KClのカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−9A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度200℃、検出器温度200℃およびカラム温度120℃に設定し、絶対検量線法を用いた。分析は、このガスクロマトグラフに回収した気体を0.2mL注入することにより行った。
【0047】
参考例1
窒素下で内容積100mLのシュレンク管に、J.Organomet.Chem.,607巻,120ページ(2000年)に記載の方法を用いて合成した三脚型構造を有するトリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンを346mg、トリス(テトラヒドロフラン)クロムトリクロライド(III)を255mg、テトラヒドロフランを5mLとトルエンを20mLを加え、窒素雰囲気下で反応温度をゆっくりと室温から95℃に上げた後、95℃で18時間攪拌した。生成した結晶をろ別し、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)を得た(IR(KBr):1566cm−1)。以下、この錯体を錯体Aと称する。
【0048】
参考例2
窒素下で、内容積100mLのシュレンク管にトリn−オクチルアルミニウムのトルエン溶液(1.02mol/L)を2.82mLとトルエンを67.18mLを加え総液量を70mLとし、氷浴で0度に冷却する。次いで硫酸マグネシウムの7水塩を50mg加えた後16時間攪拌した。40℃で3時間加熱攪拌し、室温に冷却後、スラリーAを得た。スラリーAの不溶分をボールフィルターで濾別し、均一溶液Aを得た。
【0049】
比較例1
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に窒素下で、参考例1で合成した錯体A(8μmol、5.1mg)をトルエン(10mL)でスラリーとして入れ、混合撹拌した。撹拌速度を1000rpmに調製後、2.82mLのトリn−オクチルアルミニウム(1.02mol/L溶液)とトルエン(67.18mL)の混合液を窒素で導入して、45分後、室温から反応容器を80℃に加熱し、反応容器内の圧力を40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、エチレンの三量化反応を開始した。以後、80℃で前記圧力を維持するようにエチレンを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行った。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0050】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した反応結果を表1に示す。
【0051】
実施例1
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0052】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行った。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0053】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0054】
実施例2
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0055】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行った。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0056】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応の結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(60mL)と四塩化ゲルマニウムのトルエン溶液(10μmol/L溶液を10mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0058】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0059】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(60mL)と四塩化ゲルマニウム(20μmol/L溶液を10mL)の混合溶液を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0061】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0062】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応の結果を表1に示す。
【0063】
実施例5
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(60mL)とジベンゾチオフェンのトルエン溶液(144mmol/L溶液を10mL)との混合物を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0064】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0065】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0066】
実施例6
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(60mL)とジベンゾチオフェンのトルエン溶液(144mmol/L溶液を10mL)との混合溶液を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0067】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0068】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応の結果を表1に示す。
【0069】
実施例7
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0070】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で30kg/cm2となるようにエチレン(分圧:28kg/cm2)と水素(分圧:2kg/cm2)を吹き込み、30分攪拌後、80℃まで内温上昇させ、内圧を40kg/cm2に保ちながらエチレンを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0071】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0072】
実施例8
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0073】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で30kg/cm2となるようにエチレン(分圧:28kg/cm2)と水素(分圧:2kg/cm2)を吹き込み、30分攪拌後、80℃まで内温上昇させ、内圧を40kg/cm2に保ちながらエチレンを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0074】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0075】
実施例9
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0076】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で30kg/cm2となるようにエチレン(分圧:28kg/cm2)と水素(分圧:2kg/cm2)を吹き込み、30分攪拌後、80℃まで内温上昇させ、内圧を40kg/cm2に保ちながらエチレン(39kg/cm2)と水素(1kg/cm2)の混合ガスを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0077】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【発明の効果】
本発明によれば、水および/または含水化合物アルキル基含有化合物と三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒は、安定で取り扱いが容易であり、しかもこれを用いるとエチレンから効率よく、かつ高選択的に1−ヘキセンおよびエチレン重合体を製造することができる。さらに、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分を用いることも、活性の点から好ましく、
また、さらにハロゲン化された無機化合物、または16属元素を含む化合物を含むことにより活性が向上する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、エチレンの三量化触媒および該触媒を用いたエチレンの三量化方法に関する。さらに詳しくは、当該触媒を用いた線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の原料コモノマーとして有用な1−ヘキセンをエチレンから効率よくかつ高選択的に製造するエチレンの三量化を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エチレンを三量化して選択的に1−ヘキセンを得る方法において、クロム化合物を触媒として用いることは公知である(例えば特許文献1〜6参照)。特許文献1にはクロム化合物、ポリヒドロカルビルアルミニウムオキシドおよびドナー配位子からなる触媒系が開示されている。特許文献2には、クロム化合物、ピロール含有化合物、金属アルキル化合物およびハライドからなる触媒系が、また特許文献3には、クロム化合物、金属アルキル化合物および酸アミドまたはイミド化合物からなる触媒系が開示されている。また、特許文献4には、クロミウム塩の多座配位子であるホスフィン、アルシンおよび/またはスチビンとの配位錯体とアルミノキサンからなる触媒が開示されている。さらに、特許文献5には、特定の窒素配位子が配位したクロムの塩素錯体やアルキル錯体とアルミニウム化合物からなる触媒が、特許文献6には、環状ポリアミンまたはヒドロトリス(ピラゾリル)ボレートが配位した有機金属錯体とアルキルアルミニウム化合物からなる触媒が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開昭62−265237号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】
特開平6−239920号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】
特開平8−59732号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開平6−298673号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】
特開平10−7712号公報(特許請求の範囲)
【特許文献6】
特開平10−231317号公報(特許請求の範囲)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に記載の方法では、1−ヘキセンと同時にポリエチレンが多く副生する。特許文献2に記載の方法は、ポリエチレンの副生が少なく、この点ではかなり改善している。しかし、触媒の構成成分であるピロール含有化合物は、空気に対して極めて不安定な物質であるため着色して劣化しやすい。従って、取り扱いが難しいばかりか、反応終了後には着色成分を除去するための処理または新たな装置を必要とする等、工業的な触媒としては十分なものではなかった。また、特許文献3に記載の方法では、触媒の構成成分である酸アミドまたはイミド化合物の化合物群の中で活性を得るには、ある特定のイミド化合物(即ちマレイミド)を用いる必要がある。マレイミドは溶解性が低いため触媒調製が煩雑であり、入手が難しいばかりか高価であり、より経済性の優れた触媒が求められている。特許文献5に記載の方法は、触媒活性が低いためより高い活性の触媒が求められている。さらに、特許文献6に記載の方法は、ポリエチレンの生成が多いばかりか、オリゴマー中の1−ヘキセン選択性も低いため、ポリエチレンの副生が少なく、1−ヘキセンの選択性の高い触媒が求められている。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、取り扱いの容易な触媒を用いることにより、LLDPEの原料コモノマーとして有用な1−ヘキセンをエチレンから効率よく高選択的に製造する触媒及び方法を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、水および/または含水化合物、アルキル基含有化合物および特定の多座配位子が配位した3族〜10族の遷移金属を有する有機金属錯体は、安定で取り扱いが容易であり選択的なエチレンの三量化反応に好適であることから、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、水および/または含水化合物、アルキル基含有化合物および三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した3族〜10族の遷移金属を有する有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒、これらの触媒にさらにハロゲン化された無機化合物を含むエチレンの三量化触または16属元素を含む化合物を含むエチレンの三量化触媒、及びこれらの触媒の存在下でエチレンを三量化する三量化方法、並びにこれらの触媒をエチレンまたはエチレンと水素の雰囲気下で接触させた後、エチレンを三量化するエチレンの三量化方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明についてさらに詳しく説明する。
【0009】
本発明においては、エチレンの三量化触媒を構成する一成分として、下記一般式(1)
AMBn (1)
(式中、Aは三脚型構造を有する中性の多座配位子であり、Mは3族〜10族の遷移金属元素、Bは水素、ハロゲン、および直鎖もしくは分岐状のアルキル基からなる群より選ばれる1種以上を表し、nはMの価数と等しい整数を表す。)
で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体が用いられる。
【0010】
ここで、該有機金属錯体に配位させる三脚型構造を有する中性の多座配位子として用いられるものは特に限定されないが、例えば、下記一般式(2)
【0011】
【化3】
(式中、j,k,mはそれぞれ独立して0〜6の整数である。D1はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、L1はそれぞれ独立して周期表1族、14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を表す。また、G1は炭素またはケイ素、R1は水素、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数6〜10のアリール基を表す。)
または下記一般式(3)
【0012】
【化4】
(式中、a,b,cはそれぞれ独立して0〜6の整数であり、uは0または1の整数である。D2はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、L2はそれぞれ独立して周期表1族、14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を表す。また、G2は窒素またはリン、R2は酸素またはイオウを表す。)
で示される三座配位子が好適なものとして挙げられる。
【0013】
上記一般式(2)および(3)において、D1およびD2としては特に限定されるものではないが、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基等が挙げられる。また、その置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基類、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基類等が挙げられる。
【0014】
一般式(2)および(3)において、L1およびL2で示される周期表1族、14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基は特に限定されるものではないが、例えば、水素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基類、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基類、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基等のアルキルチオ基類、フェニルチオ基、トリルチオ基等のアリールチオ基類、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ビス(トリメチルシリル)アミノ基等のジアルキルアミノ基類、ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基類、メチルフェニル基等のアルキルアリールアミノ基類、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基等のジアルキルホスフィノ基類、ジフェニルホスフィノ基、ジトリルホスフィノ基等のジアリールホスフィノ基類、メチルフェニルホスフィノ基等のアルキルアリールホスフィノ基類が挙げられる。
【0015】
また、フリル基、ベンゾフリル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、インダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、オキサゾリル基、チアゾール基等の周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する複素環基類が挙げられる。これらの複素環基類の環上の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、フェニル基等が挙げられる。
【0016】
一般式(2)におけるR1は特に限定されるものではないが、例えば、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、シアノエチル基、アリル基、トリフルオロプロピル基等の炭素数1〜10のアルキル基類、またはフェニル基、p−メチルフェニル基、p−クロロフェニル基等の炭素数6〜10のアリール基類が挙げられる。
【0017】
上記一般式(2)および(3)で示される三脚型構造を有する中性の三座配位子は特に限定されるものではないが、例えば、周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する置換基を持つ多座配位子としては、トリス(メトキシメチル)メタン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)プロパン、1,1,1−トリス(メトキシメチル)ブタン、1,1,1−トリス(エトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(プロポキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(ブトキシメチル)エタン、1,1,1−トリス(フェノキシメチル)エタン等の含酸素三座配位子類、1,1,1−トリス(メチルチオメチル)エタン、1,1,1−トリス(ブチルチオメチル)エタン、1,1,1−トリス(フェニルチオメチル)エタン等の含イオウ三座配位子類、1,1,1−トリス(ジメチルアミノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジフェニルアミノメチル)エタン等の含窒素三座配位子類、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジメチルホスフィノメチル)エタン、1,1,1−トリス(ジエチルホスフィノメチル)エタン等の含リン三座配位子類が挙げられる。さらに、上記一般式(2)および(3)で示される周期表14族、15族、16族または17族元素を含有する複素環基を持つ多座配位子としては、トリフリルメタン、トリス(5−メチル−2−フリル)メタン、トリス(5−エチル−2−フリル)メタン、トリス(5−ブチル−2−フリル)メタン、1,1,1−トリフリルエタン、トリフリルアミン、トリフリルホスフィン、トリフリルホスフィンオキシド等の含酸素三座配位子類、トリス(チエニル)メタン等の含イオウ三座配位子類、更にトリ(1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジイソプロピル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジフェニル−1−ピラゾリル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)プロパン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)ブタン、トリス(2−ピリジル)メタン、トリス(6−メチル−2−ピリジル)メタン、トリス(2−ピリジル)アミン、トリス(2−ピリジル)ホスフィン、トリス(2−ピリジル)ホスフィンオキシド、トリス(2−ピリジル)ヒドロキシメタン、トリス(1−イミダゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジエチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,4,5−トリメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−n−ブチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−トリル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−アニシル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、1−メチル−トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、メチル−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−トリル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−アニシル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−プロピル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−t−ブチル−1−ピラゾリル)メタン等の含窒素三座配位子類が挙げられる。
【0018】
上記一般式(1)で示される有機金属錯体の具体的な例としては特に限定されるものではないが、例えば、該有機金属錯体のMが6族のクロムである場合を例示すると、トリス(メトキシメチル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(メトキシメチル)メタンクロム(ベンジル)ジクロライド(III)、1,1,1−トリス(メトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(エトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ブトキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(フェノキシメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリフリルメタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(メチルチオメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジメチルアミノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリス(ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジエチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)−メチル−メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(3−トリル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(3−アニシル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(ヒドリド)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(ベンジル)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロム(エチル)ジクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリベンジル(III)、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)エタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジイソプロピル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−イソプロピル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−エチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジフェニル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(2−ピリジル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(6−メチル−2−ピリジル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(2−ピリジル)アミンクロムトリクロライド(III)、トリス(1−イミダゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジメチルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジフェニルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)、1,1,1−トリス(ジエチルホスフィノメチル)エタンクロムトリクロライド(III)等が挙げられる。また、該有機金属錯体のMがクロム以外の例として、特に限定されるものではないがMがスカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム、プラチナ等の場合があげられる。
【0019】
これらのうち触媒活性の面から、上記一般式(2)および(3)で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子としては、複素環基を持つ含窒素三座配位子類が好ましく用いられ、より好ましくはトリス(3−(4−トリル)−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンが用いられる。また、Bとしてはハロゲンが好ましく用いられる。また、さらに好ましい上記一般式(1)で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体としては、3−(4−トリル)−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンチタントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンスカンジウムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンモリブデントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタンタングステントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン鉄トリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−1−ピラゾリル)メタン鉄ジクロライド(II)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンモリブデントリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンタングステントリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンチタントリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンスカンジウムトリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン鉄ジクロライド(II)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタン鉄トリクロライド(III)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンニッケルジクロライド(Iトリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンパラジウムジクロライド(II)、トリス(3,5−ジメチル−1−ピラゾリル)メタンプラチナジクロライド(II)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンスカンジウムトリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンチタントリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン鉄トリクロライド(III)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタン鉄ジクロライド(II)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンニッケルジクロライド(II)、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンニッケルトリクロライド(III)、トリス(3−(2−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、(3−(3−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)、トリス(3−(4−ピリジル)−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)等が用いられる。
【0020】
本発明において、上記の三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体の合成法は、特に限定されるものではないが、多座配位子と遷移金属化合物とを例えば公知の錯体形成法[例えば、Inorg.Chem.,25,1080(1986)等]を用いて作用させることにより、容易に合成することができる。この場合、使用できる金属化合物としては特に限定されるものではないが、例えば、トリス(テトラヒドロフラン)塩化スカンジウム(III)、トリス(テトラヒドロフラン)塩化チタン(III)、トリス(テトラヒドロフラン)塩化モリブデン(III)、トリス(テトラヒドロフラン)塩化タングステン(III)、塩化クロム(III)、塩化クロム(II)、臭化クロム(III)、臭化クロム(II)、ヨウ化クロム(III)、ヨウ化クロム(II)、フッ化クロム(III)、フッ化クロム(II)、トリス(テトラヒドロフラン)クロムクロライド(III)、トリス(アセトニトリル)クロムクロライド(III)、トリス(1,4−ジオキサン)クロムクロライド(III)、トリス(ジエチルエーテル)クロムクロライド(III)、トリス(ピリジン)クロムクロライド(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、塩化ニッケル(II)、塩化ニッケル(III)、塩化パラジウム(II)、塩化プラチナ(II)、塩化バナジウム(II)、塩化バナジウム(III)、塩化タンタル(V)、臭化タンタル(V)等が挙げられる。
【0021】
前記の多座配位子を有する有機金属錯体を調整する際の遷移金属の濃度は特に制限されない。また、ここで用いられる溶媒としては特に限定されるものではないが、有機溶媒が好ましく用いられる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類が挙げられる。また、上記溶媒はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0022】
また、錯体形成反応は、−80℃から使用する反応溶媒の沸点までの任意の温度で行われ、好ましくは20〜200℃である。反応溶媒の沸点以上の温度で錯形成反応を行う場合には、加圧下で行うこともできる。反応時間は特に制限されず、通常1分〜500時間、好ましくは5分〜300時間である。なお、反応時のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、原料および溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0023】
さらに別途合成法として、上記の方法により合成した三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した遷移金属のハロゲン錯体を原料に、アルキル金属化合物や金属ヒドリド化合物を溶媒中で反応させて、本発明の三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体を合成してもよい。
【0024】
多座配位子が配位した該有機金属錯体は、通常固体として沈殿するので、ろ別により反応溶媒から分離できる。さらに、必要に応じて、上記溶媒を用いて洗浄を行い、次いで乾燥してエチレンの三量化触媒の構成成分の一つである有機金属錯体が合成される。なお、沈殿しない場合は、溶媒留去、貧溶媒の添加あるいは冷却処理等により沈殿させることができる。
【0025】
本発明においては、三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した該有機金属錯体のうち、その多座配位子がfacialに配位した有機金属錯体を用いることが特に好ましい。ここで、多座配位子がfacialに配位した錯体とは、多座配位子により3つの配位座が占有された6配位八面体型錯体の異性体の一つである[化学選書 有機金属化学−基礎と応用−、143頁(裳華房)]。即ち、多座配位子により3つの配位座が占有された6配位八面体型錯体の場合、該多座配位子の3つの配位座が互いにシス位になるような配置で配位していることを意味する。
【0026】
本発明において使用されるアルキル基含有化合物は特に限定されるものではないが、例えば、下記一般式(4)
RpEYq (4)
(式中、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数であって、しかもp+qは1〜3である。Eは水素を除く周期表の1族〜3族の元素または周期表の11族〜13族の元素を表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基より選ばれる1種以上を表し、Yは水素、アルコキシド基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれる1種以上を表す。)で示される化合物が好適なものとして挙げられる。
【0027】
上記一般式(4)において、炭素数1〜10のアルキル基は特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基またはオクチル基等が挙げられる。アルコキシド基としては特に限定されるものではないが、例えば、メトキシド基、エトキシド基、ブトキシド基またはフェノキシド基等が挙げられる。アリール基としては特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基等が挙げられる。
【0028】
上記一般式(4)で示されるアルキル基含有化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、フェニルリチウム、ジエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムシアニド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジシクロヘキシルフェニルアルミニウム、ジエチルアルミニウムシアニド、テトラフェニルスズ、テトラメチルスズ等が挙げられる。これらのうち入手の容易さおよび活性の面から、トリアルキルアルミニウム化合物が好ましく用いられ、中でも炭素数2以上のアルキル基を含むトリアルキルアルミニウム、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウムまたはトリ−n−オクチルアルミニウムが好ましい。これらのアルキル基含有化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。用いられるアルキル基含有化合物の使用量は、上記の有機金属錯体1モルに対して0.01〜10000当量であり、好ましくは0.5〜3000当量、より好ましくは1〜2000当量である。
【0029】
本発明で用いられる、含水化合物は、下式一般式(5)
ZiXh (5)
(式中、Zは周期表の1族〜15族に属する一種類の元素からなるカチオンを表し、Xは周期表の1族〜2族および/または周期表の11族〜17族に属する元素で構成されるアニオンを表す。iとhは1〜100までの整数を表し、hはカチオンであるZiの正電荷をアニオンであるXでイオン的に中性とするのに必要な自然数を表わす。)
で示される化合物であり、該含水化合物が結晶水および/または吸着水として実数で0より大きく100以下の個数の水分子を含む化合物である。また、一般式(5)で表される化合物の複数が複合結晶体、固溶体または混晶体の少なくとも1つの形態にある化合物であってもよい。ここで、複合結晶体とは、結晶となって複数のZiXhの組成で表される状態にある化合物を意味し、固溶体とは複数のZiXhが無定型(アモルファス)の状態にある化合物を意味し、さらに混晶体とは、結晶状態にある個々のZiXhが混ざり合った状態にある化合物を意味する。すなわち、本発明で用いられる一般式(5)のZiXhとして表される化合物が取りうる形態として、例えば、それらZiXhで表わされる複数の化合物が複合結晶体、固溶体、あるいは混晶体として同一試料中に存在する状態をも可能であることを意味している。
【0030】
一般式(5)のZiXhとして表される化合物が該含水化合物として用いられる化合物のうち好ましい例として、特に限定されるものではないが、例えば、Zがリチウム、ナトリウム、カリウム、またはマグネシウムである場合、Li(HCO2)(H2O)、LiOH(H2O)、LiBO2(H2O)2、Li2SO4(H2O)、Na(CO2CH3)(H2O)3、Na2CO3(H2O)、Na2CrO4(H2O)4、Na3(OHCCO2(CH2CO2)2)(H2O)2、Na(CH3COCH=C(O)CH3)(H2O)、Na((C2H5)2NCS2)(H2O)3、Na(H2PO4)(H2O)、Na2PdCl6(H2O)4、Na2HAsO4(H2O)7、NaHSO4(H2O)、NaB(4−F−C6H4)4(H2O)2、Na4P2O7(H2O)10、Na4PO4(H2O)12、Na4BO3(H2O)4、Na4BO3(H2O)、Na2AuCl4(H2O)2、Na2AlCl4(H2O)、Na2B4O7(H2O)10、Na2SO4(H2O)10、Na2WO4(H2O)2、Na2MnO4(H2O)、Na2S4O6(H2O)2、Na2TeO3(H2O)2、Na2SeO3(H2O)5、Na2SnO3(H2O)3、Na2S(H2O)9、Na2S2O3(H2O)5、Na2SPO3(H2O)12、Na2Cr2O7(H2O)2、NaHSO4(H2O)、Na2HPO4(H2O)7、Na2(CO2CH2C(OH)(CO2H)CH2CO2)(H2O)1.5、Na2(CO2CH(OH)CH(OH)CO2)(H2O)2、Na2HAsO4(H2O)7、Na2MoO4(H2O)2、Na2(Fe(CN)5NO)(H2O)2、MgSO4(H2O)7、Mg(CO2CH3)2(H2O)2、MgBr2(H2O)6、MgCl2(H2O)6、MgHPO4(H2O)3、MgCrO4(H2O)5、Mg(NO3)2(H2O)6、MgClO4(H2O)6、K(CH3COCH=C(O)CH3)(H2O)0.5、K2CO3(H2O)0.5、K3(OHCCO2(CH2CO2)2)(H2O)、K4(Fe(CN)6)(H2O)3、KF(H2O)2、K2HAsO4(H2O)2、K2HPO4(H2O)3、K2OsO4(H2O)2、K2B10O16(H2O)8、K2SnO3(H2O)3、K2B4O7(H2O)4、K2(Pd(CN)4)(H2O)3、K2CS3(H2O)等の結晶水を有する含水化合物が例示される。また、Zが、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、ケイ素、およびアルミニウムの場合、特に限定されるものではないが、該一般式(5)で表される化合物に水分子が結晶水および/または吸着水として含まれる個数をt(ここで、tは実数で0より大きく100以下の個数)として例示すると、SiO4(H2O)t、Li2PdCl4(H2O)t、LiSCN(H2O)t、Na((C2H5)2NCS2)(H2O)t、Al2O3(H2O)t、Na2PtCl4(H2O)t、NaAuB4(H2O)t、Na3(Fe(CN)5NH3)(H2O)t、Na3IrCl6(H2O)t、Na3OsCl6(H2O)t、Na2((NH4)5(V10O28))(H2O)t、NaClO4(H2O)t、NaBO2(H2O)t、MgPO4(H2O)t、K4(Fe(CN)6)(H2O)t、K4((RuCl5)2)(H2O)t、K2(Ni(CN)4)(H2O)t、K2S2O3(H2O)t、および(SiO4)r(Al2O3)s(H2O)tさらにNa6((WO4)3(WO3)9)(H2O)t等が例示される。また、これら例示された含水化合物の他に好ましい例としては、上記の例示化合物でZがホウ素、鉄、カルシウム、ルテニウム、ニッケルまたは銅である場合等が挙げられる。また、これら含水化合物の他に本発明では、水を用いることができる。
【0031】
なお、本発明では、触媒調製時に水あるいは該含水化合物を単数あるいは複数用いることも可能であり、水あるいは該含水化合物の好適な使用量は、該有機金属錯体1モルに対して0.0000001〜50000当量であり、好ましくは0.000001〜10000当量、より好ましくは0.00001〜5000当量である。
【0032】
本発明で用いられる、ハロゲン化された無機化合物は特に限定されるものではないが、下記一般式(6)
QX’l (6)
(式中、Qは周期表1族〜2族の元素または周期表13族〜15族の元素を表し、X’はハロゲンを表す。X’の個数lはQの価数に等しい自然数を表す。)
で示される化合物好適な例として挙げられる。具体的には、特に限定されるものではないが、フッ化水素、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化カリウム、二塩化マグネシウム、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三塩化タリウム、三塩化インジウム、三塩化ガリウム、四ヨウ化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、四塩化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、四臭化ケイ素、四フッ化ケイ素、四塩化鉛、四フッ化鉛、三塩化アルミニウム、三塩化ホウ素、四塩化スズ、三塩化リン、五塩化リン、三フッ化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、三塩化アンチモン、五塩化砒素、五塩化アンチモン、五塩化ビスマス等が挙げられる。用いられるハロゲン化された無機化合物の好適な使用量は、有機金属錯体1モルに対して0.0000001〜1000当量であり、好ましくは0.000001〜500当量、より好ましくは0.00001〜100当量である。
【0033】
本発明で用いられる16属元素を含む化合物とは、下記一般式(7)
R’−Jr−R’ (7)
(式中、R’は互いに独立して炭素数1〜10の脂肪鎖あるいは芳香族基を有する炭化水素基であり、連結していてもよい。Jは16属元素であり、Jの個数rは1〜10の自然数を表す。)
で示される化合物が挙げられる。上記一般式(7)において、炭素数1〜10の脂肪鎖を有する炭化水素基は特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、ブチレン基またはオクチル基等のアルキル基が挙げられる。また、炭素数1〜10の芳香族基を有する炭化水素基としてはフェニル基、フェニレン基、トリル基、キシリル基等が、特に制限されないが例示される。これらR’で表される基は独立また互いに連結し環状構造を取ることも可能である。Jは16属元素であり、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウムを表し、Jの個数lは1〜10の自然数であることから、一般式(7)で表される化合物には、エーテル、スルフィド、セレニド、テルリド、過酸化物、ジスルフィド、ジセレニド、ジテルリド、トリスルフィド、トリセレニド、トリテルリドが特に制限されないが含まれる。一般式(7)で表される化合物の具体的としては、特に制限されるものではないが、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメチルパーオキサイド、テトラヒドロフラン、2,4−ジフェニルフラン、ジオクチルエーテル、ジオクチルスルフィド、モノチオベンゼン、チオフェン、2,3−ジシクロヘキシルチオフェン、ジシクロヘキシルスルフィド、ジトリルセレニド、ジ(4―トリル)スルフィド、ジ(3―トリル)スルフィド、ジ(2―トリル)スルフィド、ジベンゾチオフェン、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジフェニルジスルフィド、ジフェニルジセレニド、ジフェニルジテルリド、フラン、テトラヒドロチオフェン等が挙げられる。なお、本発明では、一般式(7)で表される化合物を単数のみならず複数用いることも可能であり、好適な使用量は、該有機金属錯体1モルに対して0.0000001〜50000当量であり、好ましくは0.000001〜10000当量、より好ましくは0.00001〜5000当量である。
【0034】
三量化触媒を調製する際の該有機金属錯体の濃度は特に制限されないが、通常、溶媒1Lあたり0.0001マイクロモル〜100ミリモル、好ましくは0.001マイクロモル〜10ミリモルの濃度で使用される。0.001マイクロモルより小さい触媒濃度では十分な活性が得られず、逆に100ミリモルより大きい触媒濃度では触媒活性が増加せず経済的でない。また、ここで用いられる溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類が挙げられる。また、反応生成物、即ち、1−ヘキセンを溶媒として用いることもできる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。ここで、エチレンの三量化反応時の有機金属錯体濃度をコントロールする目的で、必要に応じて濃縮や希釈しても差し支えない。
【0035】
また、触媒成分である水および/または含水化合物、該有機金属錯体、アルキル基含有化合物、ハロゲン化された無機化合物、16属元素を含む化合物を接触させる際の温度は−100〜250℃、好ましくは0〜200℃である。接触時間は特に制限されず、1分〜100時間、好ましくは10分〜48時間である。なお、接触時のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、原料および溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0036】
本発明の触媒の個々の成分を接触させる順は、特に制限されないが、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物をあらかじめ作用させた後、有機金属錯体と接触させることが、活性の点で好ましい。
【0037】
また、触媒成分として、水および/または含水化合物,アルキル基含有化合物に代えて、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分を用いることも、活性の点から好ましい。
【0038】
本発明のエチレンの三量化反応は、触媒成分とエチレンを接触させて行うが、個々の成分を接触させる順は特に制限されない。例えば、各触媒成分の接触時にエチレンを同時に接触させても良く、または触媒成分を接触させた後でエチレンを接触させても良い。具体的には、例えば▲1▼水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させて得られる成分あるいは含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、該有機金属錯体の接触と同時にエチレンを接触させて三量化反応を行う方法、▲2▼水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物と該有機金属錯体を前もって接触させた後、エチレンと接触させて三量化反応を行う方法、または▲3▼水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた成分あるいは含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、有機金属錯体を接触させた後、エチレンと接触させて三量化反応を行う方法等が挙げられる。
【0039】
また、本発明のエチレンの三量化方法は、三量化触媒をエチレンまたはエチレンと水素の雰囲気下で接触させた後、エチレンを三量化してもよい。例えば、エチレン雰囲気下あるいは水素とエチレンの共存下で、三量化触媒を調製した後に水素とエチレンの共存下で三量化反応を開始する方法、または三量化触媒をエチレン下で接触させて三量化反応を行う方法が採られる。該触媒を調製する際の反応容器中のエチレン分圧は0.00001〜10000kg/cm2であり、好ましくは0.1〜3000kg/cm2であり、特に好ましくは1〜2000kg/cm2の範囲であり、また水素分圧は、0.000001〜1000kg/cm2であり、好ましくは0.00001〜300kg/cm2であり、特に好ましくは0.00001〜50kg/cm2の範囲である。
【0040】
本発明におけるエチレンの三量化反応の温度は、−100〜250℃であるが、好ましくは0〜200℃である。反応圧力は、反応系がエチレン雰囲気であれば特に制限されないが、通常、絶対圧で0.01〜3000kg/cm2であり、好ましくは0.1〜300kg/cm2である。また、反応時間は、5秒〜6時間である。また、エチレンは、前記の圧力を保つように連続的に供給してもよいし、反応開始時に前記圧力で封入して反応させてもよい。原料ガスであるエチレンには、反応に不活性なガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が含まれていても何ら差し支えない。なお、エチレン三量化反応のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、エチレンは十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0041】
本反応は、回分式、半回分式、連続式のいずれでも実施できる。エチレンの三量化反応終了後、反応液に、例えば、水、アルコール、水酸化ナトリウム水溶液等の失活剤を添加して反応を停止させることができる。失活した廃クロム触媒は公知の脱灰処理方法、例えば、水またはアルカリ水溶液による抽出等で除去できる。生成した1−ヘキセンは、公知の抽出法や蒸留法により反応液より分離される。また、同様に生成するポリエチレンは、反応液出口で公知の遠心分離法や溶媒等を蒸留分離する際の残渣として分離することができる。
【0042】
【実施例】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
IR測定:
IRは、島津製作所製の赤外分光光度計(FTIR−8100)を用いて、測定した。
【0044】
ガスクロマトグラフィーによる分析:
反応液中に含まれる炭素数4〜8の生成物の定量は、GLサイエンス製 TC−1のカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−14A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度280℃、検出器温度280℃に設定し、内部標準としてn−ヘプタンを用いた。分析は、このガスクロマトグラフに反応液を1.2μL注入した後、カラムの温度を40℃から250℃まで昇温することにより行った。
【0045】
また、炭素数10以上の生成物は、上記ガスクロマトグラフとは別途用意したGLサイエンス製 TC−1のカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−14A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度300℃、検出器温度300℃に設定し、内部標準としてn−ヘプタンを用いた。分析は、このガスクロマトグラフに反応液を1.4μL注入した後、カラムの温度を50℃から300℃まで昇温することにより行った。
【0046】
気体中に含まれる生成物は、クロムパック製 Al2O3/KClのカラムを装着した島津製作所製 ガスクロマトグラフ(GC−9A)を用いて分析した。分析条件は、窒素キャリアを用い、インジェクション温度200℃、検出器温度200℃およびカラム温度120℃に設定し、絶対検量線法を用いた。分析は、このガスクロマトグラフに回収した気体を0.2mL注入することにより行った。
【0047】
参考例1
窒素下で内容積100mLのシュレンク管に、J.Organomet.Chem.,607巻,120ページ(2000年)に記載の方法を用いて合成した三脚型構造を有するトリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンを346mg、トリス(テトラヒドロフラン)クロムトリクロライド(III)を255mg、テトラヒドロフランを5mLとトルエンを20mLを加え、窒素雰囲気下で反応温度をゆっくりと室温から95℃に上げた後、95℃で18時間攪拌した。生成した結晶をろ別し、トリス(3−フェニル−5−メチル−1−ピラゾリル)メタンクロムトリクロライド(III)を得た(IR(KBr):1566cm−1)。以下、この錯体を錯体Aと称する。
【0048】
参考例2
窒素下で、内容積100mLのシュレンク管にトリn−オクチルアルミニウムのトルエン溶液(1.02mol/L)を2.82mLとトルエンを67.18mLを加え総液量を70mLとし、氷浴で0度に冷却する。次いで硫酸マグネシウムの7水塩を50mg加えた後16時間攪拌した。40℃で3時間加熱攪拌し、室温に冷却後、スラリーAを得た。スラリーAの不溶分をボールフィルターで濾別し、均一溶液Aを得た。
【0049】
比較例1
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に窒素下で、参考例1で合成した錯体A(8μmol、5.1mg)をトルエン(10mL)でスラリーとして入れ、混合撹拌した。撹拌速度を1000rpmに調製後、2.82mLのトリn−オクチルアルミニウム(1.02mol/L溶液)とトルエン(67.18mL)の混合液を窒素で導入して、45分後、室温から反応容器を80℃に加熱し、反応容器内の圧力を40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、エチレンの三量化反応を開始した。以後、80℃で前記圧力を維持するようにエチレンを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行った。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0050】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した反応結果を表1に示す。
【0051】
実施例1
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0052】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行った。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0053】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0054】
実施例2
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0055】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行った。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0056】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応の結果を表1に示す。
【0057】
実施例3
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(60mL)と四塩化ゲルマニウムのトルエン溶液(10μmol/L溶液を10mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0058】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0059】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0060】
実施例4
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(60mL)と四塩化ゲルマニウム(20μmol/L溶液を10mL)の混合溶液を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0061】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0062】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応の結果を表1に示す。
【0063】
実施例5
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(60mL)とジベンゾチオフェンのトルエン溶液(144mmol/L溶液を10mL)との混合物を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0064】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0065】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0066】
実施例6
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(60mL)とジベンゾチオフェンのトルエン溶液(144mmol/L溶液を10mL)との混合溶液を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0067】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込み、80℃まで内温上昇させ、エチレンとの反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0068】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応の結果を表1に示す。
【0069】
実施例7
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例2で調製したスラリーA(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0070】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で30kg/cm2となるようにエチレン(分圧:28kg/cm2)と水素(分圧:2kg/cm2)を吹き込み、30分攪拌後、80℃まで内温上昇させ、内圧を40kg/cm2に保ちながらエチレンを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0071】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0072】
実施例8
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0073】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で30kg/cm2となるようにエチレン(分圧:28kg/cm2)と水素(分圧:2kg/cm2)を吹き込み、30分攪拌後、80℃まで内温上昇させ、内圧を40kg/cm2に保ちながらエチレンを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0074】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0075】
実施例9
温度計および攪拌装置を備えた内容積300mLのステンレス(SUS−316)製の耐圧反応容器に、窒素下で、錯体A(8μmol、5.1mg)と乾燥したトルエン(10mL)をスラリーで導入し、参考例3で調製した均一溶液A(70mL)を加え、室温下で45分間、1000rpmで混合撹拌した。
【0076】
撹拌速度を1000rpmとしたまま、反応容器に、反応容器内の圧力をゲージ圧で30kg/cm2となるようにエチレン(分圧:28kg/cm2)と水素(分圧:2kg/cm2)を吹き込み、30分攪拌後、80℃まで内温上昇させ、内圧を40kg/cm2に保ちながらエチレン(39kg/cm2)と水素(1kg/cm2)の混合ガスを導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。その後、反応容器中に水を窒素で圧入することにより触媒を失活させて反応を停止した。
【0077】
反応容器を室温まで冷却し、次いで脱圧した。反応液および回収した気体中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【発明の効果】
本発明によれば、水および/または含水化合物アルキル基含有化合物と三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒は、安定で取り扱いが容易であり、しかもこれを用いるとエチレンから効率よく、かつ高選択的に1−ヘキセンおよびエチレン重合体を製造することができる。さらに、水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分を用いることも、活性の点から好ましく、
また、さらにハロゲン化された無機化合物、または16属元素を含む化合物を含むことにより活性が向上する。
Claims (13)
- 水および/または含水化合物、アルキル基含有化合物および下記一般式(1)
AMBn (1)
(式中、Aは三脚型構造を有する中性の多座配位子であり、Mは周期表の3族〜10族の遷移金属元素、Bは水素、ハロゲン、および直鎖もしくは分岐状のアルキル基からなる群より選ばれる1種以上を表し、nはMの価数と等しい整数を表す。)
で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒。 - 水および/または含水化合物とアルキル基含有化合物を作用させた後に固形物を取り除いて得られる成分と、下記一般式(1)
AMBn (1)
(式中、Aは三脚型構造を有する中性の多座配位子であり、Mは周期表の3族〜10族の遷移金属元素、Bは水素、ハロゲン、および直鎖もしくは分岐状のアルキル基からなる群より選ばれる1種以上を表し、nはMの価数と等しい整数を表す。)
で示される三脚型構造を有する中性の多座配位子が配位した有機金属錯体からなるエチレンの三量化触媒。 - 三脚型構造を有する中性の多座配位子が、下記一般式(2)
または下記一般式(3)
で示される三座配位子であることを特徴とする請求項1または2に記載のエチレンの三量化触媒。 - 三脚型構造を有する中性の多座配位子がfacialに配位した3族〜10族の遷移金属元素を有する有機金属錯体を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のエチレンの三量化触媒。
- アルキル基含有化合物が、下記一般式(4)
RpEYq (4)
(式中、pは1〜3の整数、qは0〜2の整数であって、しかもp+qは1〜3である。Eは水素を除く周期表の1族〜3族の元素または周期表の11族〜13族の元素を表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基より選ばれる1種以上を表し、Yは水素、アルコキシド基、アリール基およびシアノ基からなる群より選ばれる1種以上を表す。)
で示される化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のエチレンの三量化触媒。 - 含水化合物が、下式一般式(5)
ZiXh (5)
(式中、Zは周期表の1族〜15族の一種類の元素からなるカチオンを表し、Xは周期表の1族〜2族および/または周期表の11族〜17族の元素で構成されるアニオンを表す。iとhは1〜100までの整数を表し、hはカチオンであるZiの正電荷をアニオンであるXでイオン的に中性とするのに必要な自然数を表わす。)
で示される化合物であり、該含水化合物が結晶水および/または吸着水として実数で0より大きく100以下の個数の水分子を含む化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のエチレンの三量化触媒。 - 含水化合物が一般式(5)で表される化合物の複数が複合結晶体、固溶体または混晶体の少なくとも1つの形態にある化合物であることを特徴とする請求項6に記載のエチレンの三量化触媒。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の触媒に、さらにハロゲン化された無機化合物を含むエチレンの三量化触媒。
- ハロゲン化された無機化合物が、下記一般式(6)
QX’l (6)
(式中、Qは周期表1族〜2族の元素または周期表13族〜15族の元素を表し、X’はハロゲンを表す。X’の個数lはQの価数に等しい自然数を表す。)
で示される化合物であることを特徴とする請求項8に記載のエチレンの三量化触媒。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の触媒に、さらに16属元素を含む化合物を含むエチレンの三量化触媒。
- 16属元素を含む化合物が、下記一般式(7)
R’−Jr−R’ (7)
(式中、R’は互いに独立して炭素数1〜10の脂肪鎖あるいは芳香族基を有する炭化水素基であり、連結していてもよい。Jは16属元素であり、Jの個数rは1〜10の自然数を表す。)
で示される化合物であることを特徴とする請求項10に記載のエチレンの三量化触媒。 - 請求項1〜11のいずれかに記載の触媒の存在下で、エチレンを三量化することを特徴とするエチレンの三量化方法。
- 請求項1〜11のいずれかに記載の触媒をエチレンまたはエチレンと水素の雰囲気下で接触させた後、エチレンを三量化することを特徴とするエチレンの三量化方法。
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