JP2004123865A - 水性顔料インク - Google Patents
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Abstract
【解決手段】顔料、アニオン性分散剤、カチオン性水溶性高分子化合物および水性媒体からなることを特徴とする水性顔料インク。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性顔料インク、特に印字ヘッドからインク液滴を飛翔させて記録を行うインクジェット記録方式に適した水性顔料インクに関し、さらに詳しくは被記録体、なかでも普通紙に、彩度、濃度が良好で、印字品質の優れた画像を形成することができる水性顔料インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタの使用は、その高品質化により、個人用、事務用、業務用の記録用、カラー表示用、カラー写真用と用途が多岐にわたってきている。
顔料インクにおいて、顔料の鮮明性、色の冴え、色濃度などの向上を図るため、インク中の顔料粒子の微細化が進められてきた。また、プリンタ装置の改良による高速化、高画質化に対応するために吐出液滴の微小化が進展した。この改良はインクジェット用の加工紙、特に写真紙、ワイドフォーマット用紙などに対しては優れた高画質をもたらしたが、普通紙と呼ばれる非加工紙に印字した場合にはインク滴が用紙の紙繊維中に浸透し、その結果、印字の色の濃さ、すなわち発色性が低下してしまう問題が生じた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、インクジェット記録等に用いる水性顔料インクにおいて、普通紙に印刷を行った場合にも彩度、濃度が良好で、印字品質の優れた画像記録が可能な水性顔料インクを提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明によれば、顔料、アニオン性分散剤、カチオン性水溶性高分子化合物および水性媒体からなることを特徴とする水性顔料インクが提供される。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の水性顔料インクは、水溶性樹脂としてカチオン性水溶性高分子化合物を使用することが特徴である。
本発明を特徴づけるこのカチオン性水溶性高分子化合物は、アミノ基含有親水性高分子化合物とアルキル化剤またはヒドロキシアルキル化剤との反応生成物である。
【0006】
本発明で使用するアミノ基含有親水性高分子化合物としては、例えば、水に不溶のキトサン(有機酸塩または無機酸塩は水に可溶)、水溶性のポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ビニルアミン/アクリロニトリル共重合体、ポリアミジン、ポリアリルアミン、リゾチーム、コラーゲン、ゼラチン等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用される。
本発明で使用するカチオン性水溶性重合体は、上記の反応によってそのアミノ基が、例えば、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキレン鎖あるいはアルキレンオキシド鎖を有する置換基等に変換されたカチオン性の水溶性高分子化合物である。
【0007】
このカチオン性水溶性高分子化合物は、水性顔料インクの水性媒体に溶解し、そのヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキレン鎖あるいはアルキレンオキシド鎖等が置換基として結合しているアミノ基の部分は、顔料がマイナス電荷を有する場合には、顔料表面にイオン的に吸着し、また水性顔料インク中のアニオン性分散剤と相互に作用し合う。
【0008】
したがって、水媒体中に溶解したカチオン性水溶性性高分子化合物の分子鎖は、上記のように多くの箇所で顔料によって結節され、しかも該高分子化合物は高分子量であることから分子の絡み合いもあり、これらの部分が物理的な架橋点となり、水性顔料インク媒体中において網目構造を形成する。その結果、本発明の上記の如きカチオン性基を分子中に有する水溶性高分子化合物は、それが添加された水性顔料インクに構造粘性の性質を付与する構造粘性形成剤として機能する。
【0009】
水性顔料インクによって形成される印字物の彩度、濃度、擦過性が優れるためには、インクが被記録体上で定着する際に、着色成分である顔料が被記録体の表面部分で凝集することなく、被記録体の表面部分に固着することが望ましい。本発明者らが鋭意検討したところ、本発明のインク構成においてヒドロキシアルキルアミノ基などのカチオン性基を分子に有する水溶性高分子化合物を使用した場合、彩度、濃度の著しい改善が認められた。
【0010】
本発明で使用する上記の如きカチオン性水溶性高分子化合物は、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコールなどの単にアニオン性あるいはノニオン性親水性基のみからなる通常の高分子増粘剤を使用した場合には、上記のような効果は少ないか、あるいは発現しなかったことから、その理由は以下のように考えられる。このカチオン性水溶性高分子化合物は、それをインク媒体に溶解させた際には、前記したようにアミノ基の部分はマイナス荷電を有する顔料表面に吸着し、また分散剤のアニオン性基と塩を形成し、また分子の絡み合いもあり、これらが物理的架橋点として網状化したゆるやかな親水性ゾル構造体を形成する性質を有する。
【0011】
インクジェット印刷は、ピエゾ素子やインクを沸騰させて発生させた泡により圧力波を発生させ、インク滴を飛翔させ、印字する方式であるが、この圧力波により瞬時に網状構造が破壊され、容易に微小液滴となって吐出飛翔する。被記録体上に着弾した後は再び網状化したゆるやかな親水性ゾル構造体を形成し、流動性が低下しインクの紙繊維中への浸透をおさえる効果を有し、被記録体上に色素が堆積することから十分な発色性(発色濃度)が得られる。一方、単にアニオン性、ノニオン性親水性基のみからなる通常の高分子増粘剤の場合には、分子の絡み合いによる弱い網状化構造しか形成できないためにゾル構造体の形成が不完全で、インクの紙繊維中への浸透が起こり、その分、被記録体上に色素が残らず、十分な発色性が得られないものと考えられる。
【0012】
本発明で使用するカチオン性水溶性高分子化合物は、前記のアミノ基含有親水性高分子化合物をアルキル化剤またはヒドロキシアルキル化剤と反応させることによって得ることができる。アルキル化剤およびヒドロキシアルキル化剤は、アミノ基と反応する官能基を有する化合物である。本発明では、ヒドロキシアルキル化剤は、アミノ基と反応して少なくとも水酸基が結合したアルキレン鎖を有する置換基を形成する物質をいう。
【0013】
本発明で使用するアルキル化剤としては、例えば、メチルハライド、エチルハライド、プロピルハライド、ブチルハライド等のアルキルハライド;ベンジルハライド;ジメチル硫酸やジエチル硫酸などのジアルキル硫酸などが挙げられる。上記化合物におけるハロゲンは塩素、臭素、ヨウ素などである。
【0014】
本発明で使用するヒドロキシアルキル化剤としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなどのアルキレンオキシド;グリシドール(2,3−エポキシ−1−プロパノール)などの水酸基含有エポキシド;ポリオキシエチレンモノグリシジルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノグリシジルエーテルなどのエチレンオキシド鎖含有グリシジル化合物(エチレンオキシド鎖は重合度が1〜10程度);エチレンハロヒドリン、プロピレンハロヒドリン、ブチレンハロヒドリン、2−ハロ−1,3−プロパンジオール、3−ハロ−1,2−プロパンジオール、2−ハロ−3−トリメチルアンモノプロパノール、1−ハロ−3−トリメチルアンモノプロパノール、2−ハロ−3−ポリオキシエチレン−プロパノール、1−ハロ−3−ポリオキシエチレン−プロパノールなどのハロヒドリン類(エチレンオキシド鎖は重合度が1〜10程度);グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。上記の化合物におけるハロゲンは、塩素、ヨウ素、臭素などである。
【0015】
アミノ基含有親水性高分子化合物とアルキル化剤又はヒドロキシアルキル化剤との反応は、常法に従えばよく、特に制限されない。反応後のアミノ基は、モノ、ジおよびトリ置換体のいずれであってもよい。
アミノ基含有親水性高分子化合物が水溶性の場合には、アミノ基当たり少なくとも0.5個の置換アミノ基が生成すればよいが、水不溶性のキトサンなどの場合には反応生成物が水溶性となるまで反応させることが必要である。キトサンは脱アセチル化度によって遊離のアミノ基の含有量が異なるので、使用するキトサンに応じて水溶性となる反応量を予め確認しておくことが必要である。キトサンは、例えば、特開昭59−8701号公報に記載されているような方法でグリシドールと適当な割合で反応させると、水溶性のグリセリル化キトサンが反応物として得られる。
【0016】
反応後の置換アミノ基における置換基としては、例えば、下記の如き置換基が例示される。
【0017】
本発明の水性顔料インクは、顔料、上記のカチオン性水溶性高分子化合物、アニオン性分散剤および水性媒体から構成される。
水性顔料インク中のカチオン性水溶性高分子化合物の含有量は、全インク組成物に対して0.05〜5重量%、好ましくは0. 1〜2重量%である。含有量がこれより少ない場合には効果が認められないし、これより多い場合にはインク粘度が上昇し、インクジェットインクとして吐出が困難になる。
カチオン性水溶性高分子化合物は、顔料を分散する工程でアニオン性分散剤とともに添加しても良いし、顔料分散液を希釈してインクを調製する際に希釈液に混合して添加することもできるが、操作性、経済性を考慮するとインク調製時に添加するのが望ましい。
【0018】
本発明で用いられる顔料としては、従来水性インクに使用されてきた有機顔料、無機顔料、分散性染料などがいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、カーボンブラック顔料、キナクリドン系顔料、フタロシアニン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾ系顔料などが挙げられる。さらに詳細には、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッドなどの不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの溶性アゾ顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系、ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系、チオインジゴ系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなどの従来公知の顔料が使用できる。顔料は乾燥状態または湿潤状態のどちらの形態でも使用可能である。
【0019】
顔料の使用量は、全インク組成物に対して1〜10重量%、好ましくは3〜8重量%である。顔料の使用量をこの範囲内にすることにより、インクとしての彩度、発色濃度、擦過性を満足し、また、顔料インクの粘度および保存安定性を満足させることができる。
【0020】
本発明で使用するアニオン性分散剤としては、水性顔料インクに使用される従来公知のアルカリ可溶性樹脂がいずれも使用でき、特に限定されない。好ましいアルカリ可溶性樹脂は、顔料分散剤とバインダーの両方の作用を有し、分散液中、または記録液中に分散させた顔料粒子の分散安定性を保ち、かつ被記録体に付着した顔料粒子を固着させる作用を有する、アルカリを溶解させた水溶液に可溶なカルボキシル基含有の樹脂(高分子化合物)であれば特に限定されない。この樹脂の重量平均分子量は、顔料の分散安定性の点から、好ましくは50,000以下、さらに好ましくは、40,000以下である。このような樹脂としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル誘導体等から選ばれる少なくとも2つ以上の単量体からなるランダム共重合体、グラフト共重合体あるいはブロック共重合体等が挙げられる。
【0021】
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル誘導体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−メチルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)アクリレート、1,3−ジメチルブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、3−ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、
【0022】
ノニル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、2−エトキシブチルアクリレート、3−エトキシブチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートなど、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和2塩基酸の炭素数1〜18の脂肪族、脂環式、芳香族アルコールのジエステルおよびハーフエステルである。更に、任意に用いられるモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0023】
この樹脂を水性媒体に可溶化するために使用するアルカリは、特に限定されないが、例えばアンモニア、第一級、第二級もしくは第三級の有機アミン(塩基性含窒素複素環化合物を含む)、水酸化アルカリ金属からなる群から選ばれる化合物が好適には挙げられる。
本発明の分散剤の含有量は顔料に対して5〜100重量%が好ましく、さらに好ましくは8〜50重量%である。
【0024】
本発明で使用する好適な水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤との混合溶媒であり、水としては、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。なお、全インク組成物中の水の含有量は、通常10〜70重量%、好ましくは20〜50重量%の範囲である。また、水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、
【0025】
ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類:N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。本発明におけるインクは、上記の成分の他に必要に応じて所望の物性値をもつインクとするために上記以外の界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加することができる。さらにノズル乾燥防止剤として尿素、チオ尿素、エチレン尿素またはそれらの誘導体を含有することもできる。
【0026】
一方、本発明において顔料を水媒体に分散させる方法は、一般に使用される分散機、例えばボールミル、サンドミル等の縦型ビーズミル、ダイノミル等の横型ビーズミル、ロールミル、超音波ミル等の従来公知の分散機による分散処理をする方法が代表的であるが、特に限定されない。
本発明において、望ましい顔料の分散粒子径は、光学濃度、彩度というインクの発色性と印字品質あるいはインク中の顔料の沈降を考慮すると、平均粒子径で150nm以下である。所望の粒度分布を有する顔料の分散体を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくする、粉砕メディアの充填率を大きくする、また処理時間を長くする、吐出速度を遅くする、粉砕後フィルターや遠心分離機等で分級する等の手法が用いられる。または、それらの手法の組み合わせが挙げられる。さらには、使用する顔料の一次粒子径を従来公知の方法、例えばソルトミリング法により事前に細かく調整した顔料を使用する手法を用いることができる。
【0027】
本発明の水性顔料インクは、色濃度、彩度などの発色性に優れ、印字品質に優れ、特に印字ヘッドからインク液滴を飛翔させて記録を行うインクジェット記録方式に適した水性顔料インクである。また、水性グラビヤインク、水性フレキソインクなどの印刷インク、紙用の着色剤、織布用の捺染剤などの水性着色剤としても好適である。
【0028】
【実施例】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚、文中の部および%は特に断りのない限り重量基準である。
【0029】
実施例1
(a)顔料分散液の調製
顔料分散剤溶液として、スチレン・メタクリル酸・メタクリル酸アルキルエステル共重合樹脂(酸価97、重量平均分子量:約32,000)100部をブチルセロソルブ50部、ブチルカルビトール50部、水酸化ナトリウム7部、水143部と混合し、80℃、5時間で加熱溶解し、水性樹脂溶液を調製した。
ジメチルキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 122)を使用して赤色顔料分散液を調製した。
【0030】
下記の材料を配合し、ディゾルバーで2時間攪拌して、顔料の塊がなくなったことを確認後、横型媒体分散機「ダイノミル1.4リットルECM型」(シンマルエンタープライゼス社製、ジルコニア製ビーズ径0.65mm)を使用し、周速14m/sで分散処理を行った。3時間分散したところで分散を終了した。得られたミルベース600部に対してイオン交換水540部を加え、良く攪拌して均一にする。この分散液を遠心分離処理(12,000回転、20分間)を行い顔料濃度15%の顔料分散液を得た。この顔料分散液中の顔料の平均粒子径を粒度測定機(コールター社製 Model N−4)で測定したところ、平均粒子径は130nmであった。
【0031】
(b)インクジェットプリンター用インクの調製
得られた顔料分散液40部に対し、トリエチレングリコールモノブチルエーテル5部、グリセリン5部、サーフィノール465(エア・プロダクツ社製)0.5部、水41部、メタノール0.5部、10%グリセリル化キトサン(脱アセチル化度80%、グリセリル置換度1.1)水溶液8部の混合液60部を加え、十分攪拌した後ポアサイズ5ミクロンのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクジェットプリンター用マゼンタ色インクを得た。
【0032】
比較例1
実施例1のインクの調製に準じて、グリセリル化キトサンを含まないマゼンタインクを調製した。
【0033】
比較例2
実施例1のインクの調製に準じて、グリセリル化キトサンの代わりにポリアクリル酸ソーダを使用してマゼンタインクを調製した。
【0034】
実施例2
(a)顔料分散液の調整
黄色不溶性アゾ顔料(C.I.Pigment Yellow 74)を使用して黄色顔料分散液を調製した。
実施例1(a)と同様にして、下記表の材料を配合し、ディゾルバーで攪拌し、ダイノミルECM型で4時間分散処理を行った。得られたミルベース600部に対してイオン交換水620部を加え、良く攪拌して均一にする。この分散液を遠心分離処理し、顔料濃度15%の黄色顔料分散液を得た。この顔料分散液中の顔料の平均粒径を前記の粒度測定機で測定したところ、平均粒子径は110nmであった。
【0035】
【0036】
(b)インクジェットプリンター用インクの調製
実施例1(b)と同様にして、上記で得られた黄色顔料分散液40部に対し、トリエチレングリコールブチルエーテル5部、グリセリン10部、サーフィノール465(エア・プロダクツ社製)0.5部、水36部、メタノール0.5部、10%グリセリル化キトサン(脱アセチル化度95%、グリセリル置換度1.8)水溶液8部の混合液60部を加え、十分攪拌した後ポアサイズ5ミクロンのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクジェットプリンター用イエローインクを得た。
【0037】
比較例3
実施例3で調製したインクにおいてグリセリル化キトサンを含まないイエローインクを調製した。
【0038】
比較例4
実施例3で調製したインクにおいてグリセリル化キトサンの代わりにポリビニルアルコールを使用してイエローインクを調製した。
【0039】
実施例3
(a)顔料分散液の調整
フタロシアニンブルー顔料(C.I.Pigment Blue 15:3)を使用して青色顔料分散液を調製した。
実施例1(a)と同様にして、下記表の材料を配合し、ディゾルバーで攪拌し、ダイノミルECM型で2時間分散処理を行った。得られたミルベース600部に対してイオン交換水530部を加え、良く攪拌して均一にする。この分散液を遠心分離処理し、顔料濃度15%の黄色顔料分散液を得た。この顔料分散液中の顔料の平均粒径前記の粒度測定機で測定したところ、平均粒子径は135nmであった。
【0040】
(b)インクジェットプリンター用インクの調製
実施例1(b)と同様にして、上記で得られた青色顔料分散液40部に対し、イソプロピルアルコール5部、グリセリン15部、サーフィノール465(エア・プロダクツ社製)1.0部、水33部、10%グリセリル化キトサン水溶液6部の混合液60部を加え、十分攪拌した後ポアサイズ5ミクロンのメンブレンフィルターで濾過を行い、インクジェットプリンター用シアンインクを得た。
【0041】
比較例5
実施例3で調製したインクにおいてグリセリル化キトサンを含まないシアンインクを調製した。
【0042】
実施例4
ポリアリルアミン(日東紡績社製PAA−10−C、10%水溶液)100gをオートクレーブに採り、50℃で撹拌下、エチレンオキシド15gを滴下して反応させ、ヒドロキシエチル化ポリアリルアミン水溶液を得た。
実施例1(b)の10%グリセリル化キトサン水溶液に代えて上記のヒドロキシエチル化ポリアリルアミン水溶液6部を添加してインクジェットプリンター用マゼンタ色インクを得た。
【0043】
実施例5
ポリエチレンイミン(日本触媒社製、30%水溶液)50gおよび純水50gをオートクレーブに採り、50℃で撹拌下、塩化メチル20gを滴下し、1N水酸化ナトリウムでpHを7〜8に保ちつつ反応させた。反応後、透析により脱塩し、メチル化ポリエチレンイミン水溶液を得た。
実施例1(b)の10%グリセリル化キトサン水溶液に代えて上記のメチル化ポリエチレンイミン水溶液5部を添加してインクジェットプリンター用マゼンタ色インクを得た。
【0044】
実施例6
ゼラチン10gと純水90gをオートクレーブに採り、80℃で撹拌下にゼラチンを溶解させた。60℃に冷却し、エチレンオキシド5gとプロピレンオキシド5gとを滴下して反応させ、ヒドロキシエチル・ヒドロキシプロピル化ゼラチン水溶液を得た。
実施例1(b)の10%グリセリル化キトサン水溶液に代えて上記のヒドロキシエチル・ヒドロキシプロピル化ゼラチン水溶液6部を添加してインクジェットプリンター用マゼンタ色インクを得た。
【0045】
〔インクジェットプリンター用インク評価〕
上記の各実施例および比較例で得られたインクジェットプリンター用顔料インクの分散顔料の平均粒子径を表1に示す。さらに各実施例および比較例で得られたインクをインクカートリッジに充填し、インクジェットプリンター(NEC社製 PICTY400)により普通紙(ゼロックス4024)にベタ印刷を行った。1日、室内に放置後、普通紙の光学濃度(マクベス社製マクベスRD−914)を測定した。色彩色差計(ミノルタ社製CR−321)により測色し、a* 、b* 値より彩度c* を計算した。また、縦、横の直線を印刷し、ヨレの度合いを目視により観察し、印字品質を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
【0047】
表1から明らかなように、実施例1では光学濃度、彩度が高く、また印字品質も優れている。本発明の特徴をなすグリセリルアミノ基などを有する親水性高分子化合物が含まれていない比較例1のインク、グリセリルアミノ基などを有さない親水性高分子化合物を使用した比較例2のインクでは濃度、彩度とも十分ではない。イエロー、シアンインクにおいても同様の効果が明らかで、本発明のインクは普通紙上で彩度、濃度が良好で、印字品質が優れていることがわかる。
【0048】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、普通紙上で印字の彩度、濃度が良好で、印字品質に優れた画像記録が可能な水性顔料インクが提供される。
Claims (5)
- 顔料、アニオン性分散剤、カチオン性水溶性高分子化合物および水性媒体からなることを特徴とする水性顔料インク。
- カチオン性水溶性高分子化合物が、アミノ基含有親水性高分子化合物とアルキル化剤又はヒドロキシアルキル化剤との反応生成物である請求項1に記載の水性顔料インク。
- アミノ基含有親水性高分子化合物が、キトサン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ビニルアミン/アクリロニトリル共重合体、ポリアミジン、ポリアリルアミン、リゾチーム、コラーゲン及びゼラチンからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2に記載の水性顔料インク。
- アニオン性分散剤が、カルボキシル基を有する親水性高分子化合物である請求項1に記載の水性顔料インク。
- インクジェット用である請求項1に記載の水性顔料インク。
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