JP2004123801A - 酸化チタン膜被覆粉体およびその製造方法 - Google Patents
酸化チタン膜被覆粉体およびその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】塩化チタン(IV)溶液に過剰の塩基性物質を添加し、過酸化物を加えて塩基性ペルオキソチタン溶液を生成させ、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体懸濁液中に滴下する工程を含む、基材粉体上に酸化チタン膜を被覆して酸化チタン膜被覆粉体を製造する方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化チタン膜被覆粉体およびその製造方法に関するものである。本酸化チタン膜被覆粉体は、表面に被覆された酸化チタン膜による光学的干渉作用により、青色や赤紫色に着色されたものであり、カラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等多種の目的に用いられる着色粉体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまでに発明者らは、金属アルコキシドを使用しての酸化チタン膜の被覆方法(特許文献1(特開平06−228604号公報)など)や、硫酸チタニル溶液を使用しての酸化チタン膜の被覆方法(特許文献2(特開2000−345072号公報)など)を開発してきた。さらに、これら酸化チタン膜被覆方法を利用し、黒色磁性粉体上にシリカ・酸化チタンによる干渉膜を被覆し、黒色の磁性粉体を着色する方法をも開発し、公開してきた(特許文献3(特開平10−330644号公報)など)。
【0003】
一方、酸化チタン膜を被覆する方法としては、上記チタン原料のほかに塩化チタン(IV)溶液を使用したものが知られており、これらについては特許文献4(特開2000−86292号公報)や特許文献5(特開平5−286738号公報)など、多数の文献や特許が公開されている。
さらには、特許文献6(特開平01−224220号公報)では、塩化チタン(IV)溶液からペルオキソチタン溶液を作成し、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体共存下で加熱することにより該基材粉体表面上に酸化チタン膜を被覆させる方法が公開されている。
また、特許文献7(特開平09−71418号公報)、特許文献8(特開平10−67516号公報)などでは、塩化チタン(IV)溶液などのチタン含有液体にアンモニア水などの塩基性物質を添加して水酸化チタンゲルを沈殿させ、沈殿物を濾過洗浄後に分散液とし、そこに過酸化水素水を添加することによりペルオキソチタン溶液を生成させ、該ペルオキソチタン溶液により粉体の表面処理を施す方法が公開されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平06−228604号公報
【特許文献2】
特開2000−345072号公報
【特許文献3】
特開平10−330644号公報
【特許文献4】
特開2000−86292号公報
【特許文献5】
特開平5−286738号公報
【特許文献6】
特開平01−224220号公報
【特許文献7】
特開平09−71418号公報
【特許文献8】
特開平10−67516号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したような、これまで知られていた酸化チタン膜の被覆方法にはいろいろな問題があることが解った。
まず、金属アルコキシドを酸化チタン膜被覆原料として使用した場合では、金属アルコキシドが不安定でありその加水分解反応が非常に早いため、反応系を恒温・恒湿度下で行わなければならないこと、さらに反応をアルコールなどの有機溶媒中で行わなければならず、反応装置が複雑になる。
【0006】
また、硫酸チタニル溶液を酸化チタン膜被覆原料として使用した場合の問題点としては、硫酸チタニルの反応が遅いために製膜操作に時間がかかること、1回の製膜操作で被覆できる酸化チタン膜厚に限界のあること、そのために酸化チタン膜を厚くする必要がある場合には酸化チタン膜被覆操作を複数回に分ける必要がある。
そして、塩化チタン(IV)溶液を使用しての酸化チタン膜の被覆方法では、硫酸チタニル溶液を使用する場合よりも反応時間を大幅に短縮でき、しかも1回の酸化チタン膜被覆操作にてかなり厚く酸化チタン膜を被覆させることができるようになった。しかしながら、上記硫酸チタニル溶液や塩化チタン(IV)溶液を使用する従来の酸化チタン膜被覆方法は、反応液のpHが7以下の酸性であるため、鉄粉など耐酸性が弱いものを基材粉体とした場合には、その基材粉体が溶解されるなどの影響があり、適用することが難しい。
【0007】
さらに、特許文献6(特開平01−224220号公報)で公開されている酸化チタン膜被覆粉体の製造方法は、生成したペルオキソチタン溶液を基材粉体共存下で95℃以上に加温し、それを8時間以上保持させることにより該基材粉体表面上に酸化チタン膜を被覆させる方法であり、粉体表面上に短時間で簡単に酸化チタン膜を被覆させる方法とは言えないものであった。
また、特許文献6(特開平01−224220号公報)、特許文献7(特開平09−71418号公報)などで公開されている酸化チタン膜被覆方法は、用途として粉体の表面処理が記載されているものの、被覆原料溶液であるペルオキソチタン溶液を得るためには、チタン含有液体に塩基性物質を添加した後の沈殿物を濾過洗浄し、その後に過酸化水素水を加えなければならないなど手間のかかること、一回の酸化チタン膜被覆操作により基材粉体上にどの程度の厚さの酸化チタン膜を被覆することができるのか、すなわち、本件が目的とする基材粉体上への酸化チタン膜を被覆する方法が紹介されていないので、光学的干渉作用を起こさせるような厚さの酸化チタン膜を被覆させうるかは難しい。
【0008】
また、出願人らは、塩化チタン(III)溶液を使用しての基材粉体上への酸化チタン膜被覆方法を開発した(特願2001−308682)。この方法において従来より極めて容易に酸化チタン膜被覆を製造できるようになった。しかしながら、この方法では、塩化チタン(III)溶液をペルオキソ化する過程のうちで塩化チタン(III)溶液に過酸化物を添加する段階で、発泡が頻繁に発生するため、ペルオキソチタン溶液を作製するのことがあまり容易ではなかった。そのため、より容易かつ迅速に高精度な酸化チタン被覆粉体を製造する方法が求められた。
【0009】
【課題を解決するための手段】
筆者らは鋭意努力した結果、塩化チタン(IV)溶液を使用し、ペルオキソチタン酸溶液を作製する工程等を経ることで上記問題点を解決でき、基材金属粉体を溶解させることなく該基材金属粉体上に酸化チタン膜を被覆させることができる方法を見出した。この方法により、短時間で、しかも低い温度で酸化チタン膜被覆を行うことが可能となった。
【0010】
このような方法とはすなわち、
(1)塩化チタン(IV)溶液に過剰の塩基性物質を添加し、次いで過酸化物を加えて塩基性ペルオキソチタン溶液を生成させ、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体懸濁液中に滴下する工程を含む、基材粉体上に酸化チタン膜を被覆して酸化チタン膜被覆粉体を製造する方法。
(2) 上記基材粉体懸濁液がpH8以上pH10以下のアルカリ性緩衝液であることを特徴とする(1)記載の酸化チタン膜被覆粉体の製造方法。
(3) (1)記載の酸化チタン膜被覆反応が、反応温度15℃以上65℃以下で行われることを特徴とする(1)記載の酸化チタン膜被覆粉体の製造方法。
(4) (1)記載の酸化チタン膜被覆反応が、1時間以上6時間以内の反応時間で行われることを特徴とする(1)記載の酸化チタン膜被覆粉体の製造方法。
(5) 塩化チタン(IV)溶液に過剰の塩基性物質を添加し、次いで過酸化物を加えて塩基性ペルオキソチタン溶液を生成させ、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体懸濁液中に滴下する酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体、
(6) (2)記載の酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体、
(7) (3)記載の酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体、
(8) (4)記載の酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体、
である。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明は、
(A)塩化チタン(IV)溶液に過剰の塩基性物質を添加し、
(B)次いで過酸化物を加えて塩基性ペルオキソチタン溶液を生成させ、
(C)該ペルオキソチタン溶液を基材粉体懸濁液中に滴下する
工程を含む、基材粉体上に酸化チタン膜を被覆して酸化チタン膜被覆粉体を製造する方法に関する。
本発明によれば、チタン源である塩化チタン(IV)溶液に対して、塩基性物質、過酸化物を順次添加し、その反応液を基体粒子分散液に滴下するだけで容易に基体粒子上に酸化チタン膜を製膜することができる。本発明では、沈殿物を濾過洗浄したり、加熱、長時間の放置等の時間がかかり煩雑な工程を経ずして容易に酸化チタン膜を製膜しうる。
以下に、本発明の製造方法について詳しく説明する。
【0012】
(A)塩化チタン(IV)溶液に過剰の塩基性物質を添加する工程
本発明において、塩化チタン(IV)溶液は、市販のものを使うことができるが、好ましくはTiの濃度が9質量%以上20質量%以下である塩化チタン(IV)溶液を用いる。さらに好ましくは、Ti濃度が14質量%以上18質量%以下である塩化チタン(IV)溶液を用いる。このような塩化チタン(IV)溶液は、和光純薬社製試薬などの市販のものを使用できる。
【0013】
本発明において、塩化チタン(IV)溶液に添加する塩基性物質は、上記の塩化チタン(IV)溶液に添加することで水酸化チタンゲルの沈殿物を形成させるものであれば特に限定されないが、例えばアンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ金属水酸化物水溶液などのものがあげられる。好ましくは、アンモニア濃度が9〜35質量%のアンモニア水を用いる。このようなアンモニア水は、例えば関東化学社製試薬特級などの市販品を使用することができる。これらの塩基性物質は、混合して用いることもできる。
【0014】
塩化チタン(IV)溶液に添加する塩基性物質の量は、塩化チタン(IV)溶液に対して過剰量であり、水酸化チタンゲルの沈殿物を形成させることができれば特に制限されないが、添加後の溶液が好ましくはpH7.5以上、より好ましくはpH8以上pH11以下となる様に添加する。好ましくは、塩化チタン(IV)溶液中の酸化チタンに対して4倍モル数以上の塩基性物質を含む量、より好ましくは8倍モル数以上の塩基性物質を添加することが望ましい。塩基性物質をこのように過剰量加えることで、生成された水酸化チタンゲル溶液のpHを高くし、過酸化物を添加した後に得られるペルオキソチタン溶液のpHを高くし、ひいては低pHに弱い基体粒子に対しても製膜することができる。
【0015】
塩基性物質を添加する速度や温度は特に制限されないが、製造工程の簡便化の為に、加温や冷却を行わないことが好ましい。より好ましくは、反応液が5℃〜50℃、更に好ましくは10℃〜40℃の間で添加されることが好ましい。
【0016】
塩化チタン(IV)溶液に塩基性物質を添加した後に加える過酸化物は、水酸化チタンゲルの沈殿物が溶解してペルオキソ錯体とすることができるものであれば特に制限されないが、好ましくは過酸化水素濃度が25質量%〜40質量%の過酸化水素水を用いる。このような過酸化物は、例えば関東化学社製試薬特級などの市販の製品を使用することができる。
【0017】
(B)過酸化物を加えて塩基性ペルオキソチタン溶液を生成させる工程
過酸化物の添加量は、水酸化チタンゲルの沈殿物が溶解してペルオキソ錯体とすることができれば特に制限されないが、塩化チタン(IV)溶液中の酸化チタンに対して好ましくは3倍モル数〜15倍モル数、より好ましくは5倍モル数〜10倍モル数の過酸化物を添加することが望ましい。添加量が少ないと水酸化チタンゲルが十分に再溶解せず、水酸化チタンゲルの沈殿物となってしまう。また、添加する過酸化水素水の量が過剰に多すぎると、添加した過酸化物の過剰分が分解されて発生する泡により液が発泡してしまい、ペルオキソチタン水和物の沈殿物を生成する。
【0018】
過酸化物の添加方法は、添加する速度や温度は特に制限されないが、製造工程の簡便化の為に、加温や冷却を行わないことが好ましい。より好ましくは、反応液が5℃〜50℃、更に好ましくは10℃〜40℃の間で添加されることが好ましい。過酸化物を添加してペルオキソ錯体溶液とした後で、pHを調節するためにさらに塩基性物質を添加することもできる。pHを調節する溶媒に特に制限は無いが、アンモニア水などの塩基性溶媒を添加することが好ましい。ここで塩基性溶媒を添加する場合、以上のように調整して得られた過酸化物添加後のペルオキソチタン溶液のpHを9〜10、より好ましくはpH9.2〜pH9.5までに上げるに十分な量加えることが好ましい。
【0019】
(C)ペルオキソチタン溶液の基材粉体懸濁液中への滴下
ペルオキソチタン溶液を基材粉体懸濁液中に滴下していく際の滴下速度としては、ペルオキソチタン溶液の所定量を好ましくは20分から60分の間で終了させる速度、さらに好ましくは20分から40分程度で終了させる速度が好ましい。20分より短い滴下速度では、酸化チタンの析出が急激に起きてしまい、平滑な酸化チタン膜を被覆させることが難しくなる。60分より長い滴下速度では、被覆される酸化チタン膜の性状が20分から60分の滴下速度でされた場合とほとんど差がないために、被覆操作時間をいたずらに長くするのみである。
【0020】
ペルオキソチタン溶液が滴下される基材粉体懸濁液は、特に限定されないが、具体的には、Tris系、ホウ酸系、ホウ酸塩系、リン酸系、リン酸塩系、グリシン系、炭酸塩系等が挙げられる。懸濁液のpHとしてはpH8〜pH10であることが好ましく、より好ましくはpH9.0〜pH9.2である。これより低いpH条件では、滴下したペルオキソチタン溶液から酸化チタンの粒子が急激に析出してしまい、基材粉体上に酸化チタン膜を平滑に被覆することが難しくなる。滴下時において、反応系の反応温度としては15℃〜65℃の間が好ましく、20℃〜55℃の間とすることが更に好ましい。反応系の反応温度があまり低いと、ペルオキソチタン溶液の反応速度が遅くなり、目的とする厚さの酸化チタン膜を被覆させることが難しくなる。反応温度があまり高い条件では、ペルオキソチタン溶液の反応が早くなりすぎ、平滑な酸化チタン膜を被覆させることが難しくなるからである。
【0021】
本発明においてチタン膜で被覆する対象となる基材粉体としては、特に限定されないが、基体粒子としては、金属を含む無機物でも、有機物でもよく磁性体、誘電体、導電体および絶縁体等でもよい。基体が金属の場合、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム等、どのような金属でもよいが、その磁性を利用するものにおいては、鉄等磁性を帯びるものが好ましい。これらの金属は合金でも良く、前記の磁性を有するものであるときには、強磁性合金を使用することが好ましい。また、その粉体の基体が金属化合物の場合には、その代表的なものとして前記した金属の酸化物が挙げられるが、例えば、鉄、ニッケル、クロム、チタン、アルミニウム、ケイ素等の外、カルシウム、マグネシウム、バリウム等の酸化物、あるいはこれらの複合酸化物でも良い。さらに、金属酸化物以外の金属化合物としては、金属窒化物、金属炭化物、金属硫化物、金属フッ化物、金属炭酸塩、金属燐酸塩などを挙げることができる。
【0022】
さらに、基体粒子として、金属以外では、半金属、非金属の化合物、特に酸化物、炭化物、窒化物であり、シリカ、ガラスビーズ等を使用することができる。その他の無機物としてはシラスバルーン(中空ケイ酸粒子)などの無機中空粒子、微小炭素中空球(クレカスフェアー)、電融アルミナバブル、アエロジル、ホワイトカーボン、シリカ微小中空球、炭酸カルシウム微小中空球、炭酸カルシウム、パーライト、タルク、ベントナイト、合成雲母、白雲母など雲母類、カオリン等を用いることができる。
【0023】
有機物としては、樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子の具体例としては、セルロースパウダー、酢酸セルロースパウダー、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合または共重合により得られる球状または破砕の粒子などが挙げられる。特に好ましい樹脂粒子はアクリル酸またはメタアクリル酸エステルの重合により得られる球状のアクリル樹脂粒子である。
本発明の製膜方法は、従来技術と異なり酸に弱いものも用いることができるので、酸に弱い基体に対して本発明の製法を用いることが好ましい。酸に弱い基体としては、例えば金属粉末、特に鉄粉や鉄含有合金粉があげられる。
【0024】
また、本発明の基体粒子を酸化チタン被膜で被覆する製膜方法は、更に他の基体への製膜方法と組み合わせて、複数の被膜をもつ粒子をつくることができる。他の製膜方法と組み合わせて本発明の製膜方法を用いる場合、例えば他の製膜方法によって被覆した粉体の上に本発明の製膜方法を用いて酸化チタン膜を作る場合、他の製膜方法によって被覆した粉体を上述の基体粒子とみなして扱うことができる。同様に、本発明の方法で酸化チタン膜を被覆した粉体を基体粒子として、他の膜を被覆することもできる。
【0025】
基体の形状としては、球体、亜球状態、正多面体等の等方体、直方体、回転楕円体、菱面体、板状体、針状体(円柱、角柱)などの多面体、さらに粉砕物のような全く不定形な粉体も使用可能である。これらの基体は、粒径については特に限定するものでないが、0.01μm〜数mmの範囲のものが好ましい。
【0026】
(D)その他の工程
(C)の基材粉体懸濁液中への滴下後に、反応物を放置する熟成する工程をさらに設けることが好ましい。
熟成時の温度は、15℃〜65℃の間が好ましく、20℃〜55℃の間とすることが更に好ましい。
熟成時間は、30分〜6時間の間が好ましく、より好ましくは1時間〜3時間であることが望ましい。反応時間と熟成時間の合計があまり短い場合、滴下されたペルオキソチタン溶液の反応が不十分となり、目的とする厚さの酸化チタン膜が被覆されていないことがある。あまり長い場合、滴下されたペルオキソチタン溶液の反応が既に終了しているために、被覆操作時間をいたずらに長くするのみである。
【0027】
本発明の製膜方法において、基体粒子上に製膜する酸化チタン膜の厚さは、材料の量比を最適化することにより調節可能である。
【0028】
本発明の製膜方法を他の製膜方法とともに用いて複数の膜で被覆された粉体を作製する場合、光干渉に関与する膜の層の各層の厚さを調整することによって、特別の機能を与えることができる。例えば、基体粒子の表面に、屈折率の異なる交互被覆膜を、次の式(1)を満たすように、被膜を形成する物質の屈折率nと可視光の波長の4分の1の整数m倍に相当する厚さdを有する交互膜を適当な厚さと膜数設けると、特定の波長λの光(フレネルの干渉反射を利用したもの)が反射または吸収される。
【0029】
nd=mλ/4 (1)
【0030】
この作用を利用して、基体粒子の表面に目標とする可視光の波長に対し、式(1)を満たすような膜の厚みと屈折率を有する被膜を製膜し、さらにその上に屈折率の異なる膜を被覆することを1度あるいはそれ以上交互に繰り返すことにより可視光域に反射ピークを有する膜が形成される。このとき製膜する物質の順序は次のように決める。まず核となる基体の屈折率が高いときには第1層目が屈折率の低い膜、逆の関係の場合には第1層目が屈折率の高い膜とすることが好ましい。
【0031】
膜厚は、膜屈折率と膜厚の積である光学膜厚の変化を分光光度計などで反射波形として測定、制御するが、反射波形が最終的に必要な波形になるように各層の膜厚を設計する。例えば、多層膜を構成する各単位被膜の反射波形のピーク位置を特定の波長に精密に合わせると、染料や顔料を用いずとも青、緑、黄色などのの単色の着色粉体とすることができる。
ただし、実際の基体の場合、基体の粒径、形状、膜物質および基体粒子物質の相互の界面での位相ずれ及び屈折率の波長依存性によるピークシフトなどを考慮して設計する必要がある。例えば、基体粒子表面にある酸化物層のためのピークシフトや屈折率の波長依存性によるピークシフトも加味することが好ましい。
【0032】
また、金属や減衰係数の大きい核粒子あるいは膜を用いる場合についても、金属面減衰係数の大きい物質表面での反射光が楕円偏光する等、位相ずれが起こり、この干渉が核粒子と多層膜それぞれの粒子相互の位相に影響を及ぼすため、それを考慮する事が好ましい。
幾何学的な膜厚だけを合わせてもピーク位置がずれるため、特にシアン色系に着色する際に色が淡くなる。これを防ぐためには、すべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるように設計する。
【0033】
さらに、基体表面にある酸化物層のための位相ずれや、屈折率の波長依存性によるピークシフトがある。これらを補正するためには、分光光度計などで、反射ピークが最終目的膜数で目標波長になるよう最適の条件を見出すことが必要である。
【0034】
球状粉体などの曲面に形成された膜の干渉は平板と同様に起こり、基本的にはフレネルの干渉原理に従う。したがって、着色方法も特定の色系に設計することができる。ただし曲面の場合には、粉体に入射し反射された光が複雑に干渉を起こす。これらの干渉波形は膜数が少ない場合には平板とほぼ同じである。しかし、膜数が増えると多層膜内部での干渉がより複雑になる。多層膜の場合もフレネル干渉に基づいて、反射分光曲線をコンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計することができる。特に基体粒子表面への被膜形成の場合、基体粒子表面とすべての膜に対する位相ずれの影響を加味し、コンピュータシミュレーションであらかじめ膜厚の組合せが最適になるよう設計する。さらに、基体粒子表面にある酸化物層のためのピークシフトや屈折率の波長依存性によるピークシフトも加味する。実際のサンプル製造では設計した分光曲線を参考にし、実際の膜においてこれらを補正するために、分光光度計などで反射ピークが最終目的膜数で目標波長になるよう膜厚を変えながら最適の条件を見出さねばならない。
【0035】
また、金属や減衰係数の大きい核粒子あるいは膜を用いる場合についても、金属面減衰係数の大きい物質表面での反射光が楕円偏光する等、位相ずれが起こり、この干渉が核粒子と多層膜それぞれの粒子相互の位相に影響を及ぼすため、それぞれを最適化し、目標波形を得ることは非常に複雑であり、最適干渉反射波形を得るために、前記のように核粒子および多層膜各膜の物質の光学物性値を求め、それを基にコンピュータシミュレーションであらかじめ目標波形が得られる膜厚および膜の組合せを求めておかなければならない。
不定形状の粉末に着色する場合も多層膜による干渉が起こり、球状粉体の干渉多層膜の条件を参考にし基本的な膜設計を行う。上記の多層膜を構成する各単位被膜のピーク位置は各層の膜厚により調整することができ、膜厚は基体粒子の表面に金属酸化物等の固相成分を形成させる被覆形成条件中、原料組成、固相析出速度および基体量などを制御することにより、精度良く膜厚を制御でき、均一な厚さの被膜を形成することができ、所望の色系に着色することができる。
【0036】
以上のように、反射スペクトルのピーク、バレー波長が最終目的膜数で目標波長になるよう膜形成溶液などの製膜条件を変えながら最適の条件を見出すことにより、特定の色系の粉体を得ることができる。また、多層膜を構成する物質の組合せおよび各単位被膜の膜厚を制御することにより多層膜干渉による発色を調整することができる。これにより、染料や顔料を用いなくても粉体を所望の色系に鮮やかに着色することができる。
また、カラーシフトを最大にするためには鋭い反射ピーク波長およびピークの数を最適化することが必要であり、各層の膜厚制御の最適化を行う。特に反射ピークが可視域外から、見る角度を変えることにより、可視域内に現れる場合、あるいは逆に、見る角度を変えることにより、可視域の反射ピークが現れる場合、鋭い反射ピークであれば、わずかに見る角度が変わることにより、色も同時に変化させることができ、有効である。
【0037】
また、カラーシフトによる色変化は、前記式1または前記式1と下記式2の組合わせにおいて、入射角を変えた場合のピーク位置の計算値から予測することができる。
膜被覆粉体を製造するにあたり、予め、基体粒子の材質、基体粒子の粒径、被覆層の数、各被覆層の被覆順序、各被覆層の材質、所望の反射光波長を選定する必要がある。特に、基体粒子および各被覆層の材質を選定するということは、それらの屈折率を自ずと特定することとなる。基体粒子および各被覆層の屈折率の特定は、各層間のフレネル反射係数、振幅反射強度の算出に関与する。
【0038】
基体粒子の粒径を選定することにより、基体粒子および多層膜の曲率を特定する。曲率が特定されなければ、後述する膜厚監視用分光光度特性の補正が困難になる。
被覆層の数を選定することにより、後述するRflat値の特定に関与する。
基体粒子が平板体の場合の多層膜反射強度Rflatは、予め選定された基体粒子の材質(屈折率)、被覆層数、各被覆層の被覆順序、各被覆層の材質(屈折率)、所望の反射光波長を、下記漸化式2に当てはめて解くことにより求められる。
【0039】
【式1】
【0040】
(式中、Rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
j:1以上の整数(J−1=0は基盤を示す)、
i:虚数単位、
rj+1,j:下から第j番目の層とその直上の層との間の界面のフレネル反射係数、
Rj,j−1:下から第j−1番目の層とその直上の層との間の振幅反射強度、
2δj:下から第j番目の層における位相差、
λ:所望の反射光波長、
nj:下から第j番目の層の屈折率、
dj:下から第j番目の層の膜厚、
φj:下から第j番目の層への光の入射角。)
上記の様にして得られた多層膜反射強度Rflatを基体粒子の形状により補正する手法としては特に限定されないが、該Rflat値をさらに下記式3
【0041】
【式2】
【0042】
(式中、θ:最外層への入射角を示す)
に適用させ、R(λ)値が所望の波長で最大値または最小値になるように各被覆層の膜厚を求めることにより行う手法が好ましい。
Rflat値を上記式3に適用させるということは、多層膜被覆粉体への光入射角の角度分布を1個の被覆半球への光入射角度分布に近似することにより上記式2の解を補正することを意味する。
この各被覆膜の膜厚を求める場合には、コンピュータによるシミュレーションで行うことが効率的である。
【0043】
次いで、各被覆膜を、上記のようにして求められた膜厚になるように、基体粒子上に製膜する。
但し、先にも述べたが、多層膜被覆粉体における実際の製膜作業においては、設計値通りの膜厚になるまで実膜厚を直接監視しながら行うことは不可能であり、そのため、製膜作業中の膜厚の監視は、各被覆層を被覆した被覆物体の反射強度が最大値または最小値になる波長を分光光度計にて測定し、該膜厚に相対する最大または最小反射波長値に達した時点で製膜作業を終了させることが考えられる。
しかしながら基材が粉体の場合においては、その粒子形状および粒子径に依存する各被覆層の曲率によって、最大または最小反射波長測定値と膜厚との関係に狂いが生じ、分光光度計にて測定される最大または最小反射波長が所望の値になるように製膜すると、最終的に得られる多層膜被覆粉体が、所望の波長で所望の反射強度とならないという問題が生じる。
【0044】
そのため、基体粒子の形状および粒子径に依存する各被覆層の曲率による補正が必要になる。
この補正手法としては、特に限定されないが、選定した基体粒子上に選定した各被覆層を段階的に数種類に膜厚を変えて被覆して粒径補正用膜被覆粉体とし、該粒径補正用膜被覆粉体の各被覆層の実膜厚値(dM)を測定し、また、該膜被覆粉体のそれぞれを分光光度計にて測定しそれぞれの粒径補正用膜被覆粉体の各被覆層の光学膜厚(nd)を求め、各粒径補正用膜被覆粉体の各被覆層の実膜厚値と屈折率(n)との積(ndM)に対する各被覆層の光学膜厚(nd)の比(nd/ndM)を求め、多層膜反射強度を求める上記漸化式2の2δjに上記比(nd/ndM)値を乗じて各被覆層を有する粉体の分光光度特性を補正し、該補正分光光度特性になるように各被覆層を製膜することにより行わうことが好ましい。
【0045】
なお、上記粒径補正用膜被覆粉体の各被覆層の実膜厚値(dM)を測定するさいの手法としては、特に限定されないが、該粒径補正用膜被覆粉体のそれぞれを切断しその切断面から測定することにより行うことが好ましい。また、前記粒径補正用膜被覆粉体を切断する際には、集束イオンビーム(FIB)加工により行うことが、その切断面が明瞭になり、各被覆層の実膜厚値(dM)を測定に好適である。
【0046】
本発明の方法で得られる酸化チタン膜被覆粉体は、表面に被覆された酸化チタン膜による光学的干渉作用により、青色や赤紫色を呈するものであり、カラーインキ、プラスチック、紙用カラーフィラー、カラートナー、インクジェットプリンター用カラーインク等多種の目的に用いることができる。
【0047】
本発明の方法で得られる酸化チタン膜被覆粉体を含有する塗料組成物を調製する場合のうち、(1)各特定色系インキあるいは塗料様組成物(流体)および(2)各特定色系トナー、各特定色系乾式インキ様組成物(粉体)について詳しく説明する。
【0048】
(1)本発明において特定の色系インキあるいは塗料様組成物(流体)の媒質(ビヒクル)としては、カラー印刷用、カラー磁気印刷用、カラー磁気塗料用に用いられる、従来公知のワニスを用いることができ、例えば液状ポリマー、有機溶媒に溶解したポリマーやモノマーなどを粉体の種類やインキの適用方法、用途に応じて適宜に選択して使用することができる。
上記液状ポリマーとしては、ポリペンタジエン、ポリブタジエン等のジエン類、ポリエチレングリコール類、ポリアミド類、ポリプロピレン類、ワックス類あるいはこれらの共重合体編成体等を挙げることができる。
【0049】
有機溶媒に溶解するポリマーとしては、オレフィン系ポリマー類、オリゴエステルアクリレート等のアクリル系樹脂類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイソシアネート類、アミノ樹脂類、キシレン樹脂類、ケトン樹脂類、ジエン系樹脂類、ロジン変性フェノール樹脂、ジエン系ゴム類、クロロプレン樹脂類、ワックス類あるいはこれらの変性体や共重合体などを挙げることができる。
有機溶媒に溶解するモノマーとしては、スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレンなどを挙げることができる。
有機溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ケロシン、ベンジン炭化水素類、エステル類、エーテル類あるいはこれらの変性体や共重合体などを挙げることができる。
【0050】
(2)特定色系トナー、特定色系乾式インキ、特定色系乾式塗料様組成物(粉体)は、上記特定色系多層膜被覆粉体を、樹脂とあるいは必要に応じて調色材とを、スクリュー型押出機、ロールミル、ニーダなどで直接混練し、ハンマミル、カッターミルで粗粉砕したあと、ジェットミルなどで微粉砕し、エルボージェットなどで必要な粒度に分級することにより粉体状シアン色色材組成物を得ることができる。また、乳化重合法や懸濁重合法などの重合法を用いて、特定色系多層膜被覆粉体を粉体状特定色系塗料組成物とすることもできる。
さらに、特定色系多層膜被覆粉体と樹脂、調色剤などの添加剤および溶剤をコロイドミルや3本ロールで液状化しインキ塗料などの液状特定色系塗料組成物とすることもできる。
【0051】
明度を上げるための調色材としては、白色顔料(展色材)である、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化珪素、酸化アンチモン、酸化鉛等あるいはこれらの複合酸化物類、また炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩、あるいは硫酸バリウム、硫酸カルシウムのような硫酸塩類、硫酸亜鉛のような硫化物あるいは前記酸化物や炭酸塩および硫酸塩を焼結した複合酸化物、複合含水酸化物類が挙げられる。
【0052】
彩度、色相を調整するため、特にフルカラー用混色で色再現用に使用する場合の調色材としては、青色顔料である(有機染料・顔料)アルカリブルーレーキ、ピーコックレーキ、ピーコックレーキブルー等のレーキ染料およびレーキ顔料、オイルブルー等、オイル染料顔料、アルコールブルー等のアルコール染料、フタロシアニン、銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料等、(無機顔料)ウルトラマリン等の酸化物硫化物複合顔料、鉄青、ミロリーブルー等の銅系群青紺青顔料類、コバルトブルー、セルリアンブルー等の酸化コバルト系複合酸化物類青色顔料、青色系有機染料および顔料および青色無機顔料アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ等のレーキ染料、レーキ系顔料無金属フタロシアニン、銅フタロシアニン等のフタロシアニン系染顔料 および緑色顔料であるクロームグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、含水クロム(ビリジアン)等のクロム系酸化物および含水酸化物、エメラルドグリーン等の銅系酸化物、コバルトグリーン等のコバルト系酸化物等の無機顔料あるいは、ピグメントグリーン、ナフトールグリーンなどのニトロソ顔料、グリーンゴールド等のアゾ系顔料、フタロシアニングリーン、ポリクロム銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、マラカイトグリーンレーキ、アシッドグリーンレーキなどのレーキ系、オイルグリーン等、オイル染料顔料アルコールブルー等のアルコール染料顔料等有機染顔料が挙げられる。しかし本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0053】
さらに、微妙な色調制御においては青色、黄色、赤紫色などの顔料や染料を用いて調色することが必要な場合は、これらの顔料を添加することにより最適の特定色とすることが好ましい。
この粉体状特定色系塗料組成物の場合、(a)上記粉砕法で製造する場合の樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ポリウレタン、酢酸ビニル樹脂、ケイ素樹脂、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル、スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレン及びこれらの誘導体の重合体または共重合体などが挙げられる。
(b)重合法の場合、エステル、ウレタン、酢酸ビニル、有機ケイ素、アクリル酸、メタアクリル酸、スチレン、エチレン、ブタジエン、プロピレン等のうち1種あるいは複数の混合物から重合を開始させ、重合体あるいはこれらの共重合体などが形成される。
【0054】
本発明の膜被覆粉体を含有する塗料組成物は上記のように、(1)各特定色系インキあるいは塗料様組成物(流体)および(2)各特定色系トナー、各特定色系乾式インキ様組成物(粉体)の形をとることができる。
また、流体状の場合には、特定色系インキ、塗料等であり、前記調色材、乾燥の遅い樹脂には固化促進剤、粘度を上げるために増粘剤、粘性を下げるための流動化剤、粒子同志の分散のために分散剤などの成分を含ませることができる。
一方、粉体の場合には、(a)粉砕法で粉体を製造する場合には、前記調色材、乾燥の遅い樹脂には固化促進剤、混練の際の粘性を下げるためには流動化剤、粒子同志の分散のためには分散剤、紙等への定着のための電荷調整剤、ワックスなどの成分を含ませることができる。
(b)重合法を用いる場合には、前記調色材、重合開始剤、重合促進剤、粘度を上げるためには増粘剤、粒子同志の分散のためには分散剤、紙等への定着のための電荷調整剤、ワックスなどの成分を含ませることができる。
本発明の多層膜被覆粉体は、単一の粉体ないしは分光特性の異なる複数の粉体の組み合せにより、湿式および乾式カラー印刷や湿式および乾式カラー磁気印刷に適用できるほか、3原色の粉体を用いて、可視光、非可視光(紫外域およびシアン外域)、蛍光発色および磁気、さらに電気(電場の変化)の6種の組合せの識別機能を持ち、印刷物の偽造防止用カラー磁性インキなどセキュリティ機能を必要とする他の用途に適用することができる。
【0055】
前記本発明の被覆粉体を各特定色系インキあるいは塗料様組成物または各特定色系トナー、各特定色系乾式インキ様組成物、各特定色系乾式塗料組成物として、基材に印刷、溶融転写または被塗装体に塗布する場合、塗料組成物中の各特定色系多層膜被覆粉体と樹脂の含有量の関係は、体積比で1:0.5〜1:15である。媒質の含有量が少な過ぎると塗布した膜が被塗装体に固着しない。また、多過ぎると顔料の色が薄くなりすぎ良いインキまたは塗料といえない。 また、各色系インキあるいは塗料組成物中の各色系色材および樹脂を合わせた量と溶剤の量との関係は、体積比で1:0.5〜1:10であり、溶剤の量が少な過ぎると塗料の粘度が高く、均一に塗布できない。また、溶剤の量が多過ぎると塗膜の乾燥に時間を要し塗布作業の能率が極端に低下する。
【0056】
また、基材に印刷、溶融転写または被塗装体に塗料を塗布した際の塗膜の色の濃度は、被塗装体の単位面積当たりに載った顔料の量によって決まる。塗料が乾燥した後の被塗装体上の本発明の膜被覆粉体の量は、均一に塗布した場合の面積密度で1平方メートルあたり0.1〜300gであり、好ましくは0.1〜100gであれば良好な塗装色が得られる。面積密度が前記の値より小さければ被塗装体の地の色が現れ、前記の値より大きくても塗装色の色濃度は変わらないので不経済である。すなわち、ある厚さ以上に顔料を被塗装体上に載せても、塗膜の下側の顔料にまでは光りが届かない。かかる厚さ以上に塗膜を厚くすることは、塗料の隠蔽力を越えた厚さであるので塗装の効果がなく不経済である。ただし、塗膜の磨耗を考慮し、塗膜の厚さが摩り減るため厚塗りする場合はこの限りではない。また特定の意匠等を部分的に形成する場合にもこの限りではない。
【0057】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0058】
実施例1:マグネタイト粉末粒子の青色化、水系2層被覆
[第1層シリカ膜被覆操作]
(1)緩衝液の調整
イオン交換水300ミリリットルに塩化カリウム(関東化学社製試薬特級)の29.82g(0.4モル量)とホウ酸(関東化学社製試薬特級)の24.23g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアップしてA溶液とした。
イオン交換水300ミリリットルに水酸化ナトリウム(関東化学社製試薬特級)の16.0g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアツプしてB溶液とした。
上記A溶液の250ミリリットルとB溶液の115ミリリットルを混合し、緩衝液Cとした。この緩衝液CのpHは9.1であった。
(2)ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス溶液)の調整
ケイ酸ナトリウム溶液(関東化学社製試薬)の100.0gをイオン交換水で全量が1000.0gになるように希釈して、10重量%ケイ酸ナトリウム水溶液を調整した。
【0059】
(3)シリカ膜被覆
基材粉体として10グラムのマグネタイト粉末(平均粒径0.7μm)を、予め用意しておいた上記緩衝液Cの540ミリリットルに投入し、よく分散させた、この懸濁液の入った容器(1000ミリリットルガラスビーカー)を、600W、28kHzの超音波洗浄槽((株)井内盛栄堂US−6型)水槽に浸け、550rpmにて攪拌する。攪拌開始と同時に、超音波を照射する。
次に、10重量%ケイ酸ナトリウム水溶液の所定量90グラムを、1.34ミリリットル/分の滴下速度で、先の攪拌している懸濁液中に滴下する。滴下終了後、さらに1時間攪拌を続け、原料マグネタイト表面にシリカ膜被覆を行う。
所定時間経過後、シリカ膜被覆された粉体を含むスラリーを十分なイオン交換水にてデカンテーションを繰り返し、洗浄した。洗浄操作後、シリカ膜被覆された粉体を含むスラリーを110℃にて8時間乾燥させ、シリカ膜被覆されたマグネタイト粉D1を得た。このシリカ膜被覆されたマグネタイト粉D1の分光特性を分光光度計(日本分光社製Ubest550)にて測定した結果、茶色を呈し、CIE(1976)L*a*b*表色系ではL*=34.9、a*=0.4、b*=−1.4であった。
【0060】
[第2層酸化チタン膜被覆操作]
(1)ペルオキソチタン溶液の調整
塩化チタン(IV)溶液(和光純薬社製試薬)2.2ミリリットル(TiO2量0.88グラム(0.011モル))を、イオン交換水にて10倍に希釈した。
次に、この塩化チタン(IV)水溶液にアンモニア水(関東化学社製試薬特級)5.34グラムを添加し、水酸化チタンスラリー液を作る。
次に、この水酸化チタンスラリー液に過酸化水素水(関東化学社製試薬特級)10.0グラムをゆっくりと添加し、十分に攪拌して水酸化チタンを溶解させ、黄色透明のペルオキソチタン溶液を得る。この黄色透明のペルオキソチタン溶液のpHは9.0程度であった。
最後に、pH調整としてアンモニア水(関東化学社製試薬特級)0.50グラムを添加してpHを9.3程度のアルカリ性とした。ペルオキソチタン溶液E1を得る。
【0061】
(2)酸化チタン膜被覆
上記シリカ膜被覆されたマグネタイト粉D16.0グラムを第1層シリカ膜被覆操作で用いたのと同じ緩衝液Cの560グラムに懸濁させた。この懸濁液の入った容器(1000ミリリットルセパラブルフラスコ)を、50℃に保温した恒温水槽に浸け、700rpmにて攪拌する。
懸濁液の液温が50℃になったところで、上記ペルオキソチタン溶液E1の所定量39グラム(38ミリリットル)を1.8ミリリットル/分の滴下速度で滴下する。滴下終了後、さらに120分攪拌を続け、原料であるシリカ膜被覆されたマグネタイト粉D1上に酸化チタン膜被覆を行う。所定時間経過後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを十分なイオン交換水にてデカンテーションを繰り返し、洗浄した。洗浄操作終了後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを120℃にて2時間乾燥させ、酸化チタン膜被覆されたマグネタイト粉F1を得た。得られた酸化チタン膜被覆されたマグネタイト粉F1を分光光度計(日本分光社製Ubest550)にて分光特性を測定した結果を表1及び図1に示すが、350nm付近に反射ピーク(λ/4ピーク)を持ち、CIE(1976)L*a*b*表色系ではL*=35.9、a*=−0.4、b*=−5.9の青色を呈した。
【0062】
実施例2:マグネタイト粉末粒子の赤紫色化、水系2層被覆
[第1層シリカ膜被覆操作]
実施例1と同じ操作によりシリカ膜被覆されたマグネタイト粉D1を得た。
【0063】
[第2層酸化チタン膜被覆操作]
(1)ペルオキソチタン溶液の調整
塩化チタン(IV)溶液(和光純薬社製試薬)4.4ミリリットル(TiO2量1.76グラム(0.022モル))を、イオン交換水にて10倍に希釈した。
次に、この塩化チタン(lV)水溶液にアンモニア水(関東化学社製試薬特級)10.69グラムを添加し、水酸化チタンスラリー液を作る。
次に、この水酸化チタンスラリー液に過酸化水素水(関東化学社製試薬特級)20.0グラムをゆっくりと添加し、十分に攪拌して水酸化チタンを溶解させ、黄色透明のペルオキソチタン溶液を得る。この黄色透明のペルオキソチタン溶液のpHは9.0程度であった。
最後に、pH調整としてアンモニア水(関東化学社製試薬特級)1.00グラムを添加してpHを9.3程度のアルカリ性とした。ペルオキソチタン溶液E2を得る。
【0064】
(2)酸化チタン膜被覆
上記シリカ膜被覆されたマグネタイト粉D16.0グラムを第1層シリカ膜被覆操作で用いたのと同じ緩衝液Cの560グラムに懸濁させた。この懸濁液の入った容器(1000ミリリットルセパラブルフラスコ)を、50℃に保温した恒温水槽に浸け、700rpmにて攪拌する。
懸濁液の液温が50℃になったところで、上記ペルオキソチタン溶液E2の所定量78g(76ミリリットル)を2.0ミリリットル/分の滴下速度で滴下する。滴下終了後、さらに120分攪拌を続け、原料であるシリカ膜被覆されたマグネタイト粉D1上に酸化チタン膜被覆を行う。所定時間経過後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを十分なイオン交換水にてデカンテーションを繰り返し、洗浄した。洗浄操作終了後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを120℃にて2時間乾燥させ、酸化チタン膜被覆されたマグネタイト粉F2を得た。得られた酸化チタン膜被覆されたマグネタイト粉F2を分光光度計(日本分光社製Ubest550)にて分光特性を測定した結果を表1及び図1の分光反射率曲線に示すが、350nm付近(3λ/4ピーク)と630nm付近(λ/4ピーク)に二つの反射ピークを持ち、CIE(1976)L*a*b*表色系ではL*=37.1、a*=1.2、b*=−0.8の赤紫色を呈した。
【0065】
実施例3:パーマロイ粉末粒子への酸化チタン膜被覆
[酸化チタン膜被覆操作]
(1)ペルオキソチタン溶液の調整
実施例1と同じ操作によりペルオキソチタン溶液E1を得る。
(2)緩衝液の調整
イオン交換水300ミリリットルに塩化カリウム(関東化学社製試薬特級)の29.82g(0.4モル量)とホウ酸(関東化学社製試薬特級)の24.23g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアップしてA溶液とした。
イオン交換水300ミリリットルに水酸化ナトリウム(関東化学社製試薬特級)の16.0g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアップしてB溶液とした。
上記A溶液の250ミリリットルとB溶液の115ミリリットルを混合し、緩衝液Cとした。この緩衝液CのpHは9.1であった。
【0066】
(3)酸化チタン膜被覆
基材粉体として29グラムのパーマロイ粉末(平均粒径16.7μm)を、予め用意しておいた上記緩衝液Cの280ミリリットルに投入し、よく分散させた。この懸濁液の入った容器を23℃に保温した恒温水槽に浸け、700rpmにて攪拌した。
次に、上記ペルオキソチタン溶液E1の所定量39グラム(38ミリリットル)を1.8ミリリットル/分の滴下速度で滴下する。滴下終了後、さらに120分攪拌を続け、原料パーマロイ粉上に酸化チタン膜被覆を行う。所定時間経過後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを十分なイオン交換水にてデカンテーションを繰り返し、洗浄した。洗浄操作終了後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを120℃にて2時間乾燥させ、酸化チタン膜被覆されたパーマロイ粉G1を得た。得られた酸化チタン膜被覆されたパーマロイ粉G1を分光光度計(日本分光社製Ubest550)にて分光特性を測定した結果を表1及び図2の分光反射率曲線に示すが、330nm付近に反射ピーク(2λ/4ピーク)を持ち、CIE(1976)L*a*b*表色系ではL*= 45.2、a*=5.4、b*=−3.7の紫色を呈した。
【0067】
実施例4:パーマロイ粉末粒子への酸化チタン膜被覆
[酸化チタン膜被覆操作]
(1)ペルオキソチタン溶液の調整
塩化チタン(IV)溶液(和光純薬社製試薬)2.93ミリリットル(TiO2量1.17グラム(0.015モル))を、イオン交換水にて10倍に希釈した。
次に、この塩化チタン(IV)水溶液にアンモニア水(関東化学社製試薬特級)7.12グラムを添加し、水酸化チタンスラリー液を作る。
次に、この水酸化チタンスラリー液に過酸化水素水(関東化学社製試薬特級)20.0グラムをゆっくりと添加し、十分に攪拌して水酸化チタンを溶解させ、黄色透明のペルオキソチタン溶液を得る。この黄色透明のペルオキソチタン溶液のpHは9.0程度であった。
最後に、pH調整としてアンモニア水(関東化学社製試薬特級)1.00グラムを添加してpHを9.3程度のアルカリ性とした、ペルオキソチタン溶液E3を得る。
【0068】
(2)緩衝液の調整
イオン交換水300ミリリットルに塩化カリウム(関東化学社製試薬特級)の29.82g(0.4モル量)とホウ酸(関東化学社製試薬特級)の24.23g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアップしてA溶液とした。
イオン交換水300ミリリットルに水酸化ナトリウム(関東化学社製試薬特級)の16.0g(0.4モル量)を溶解し、イオン交換水で1000ミリリットルにメスアップしてB溶液とした。
上記A溶液の250ミリリットルとB溶液の115ミリリットルを混合し、緩衝液Cとした。この緩衝液CのpHは9.1であった。
【0069】
(3)酸化チタン膜被覆
基材粉体として29グラムのパーマロイ粉末(平均粒径16.7μm)を、予め用意しておいた上記緩衝液Cの280ミリリットルに投入し、よく分散させた。この懸濁液の入った容器を23℃に保温した恒温水槽に浸け、700rpmにて攪拌した。
次に、上記ペルオキソチタン溶液E3の所定量59グラム(58ミリリットル)を2.0ミリリットル/分の滴下速度で滴下する。滴下終了後、さらに120分攪拌を続け、原料パーマロイ粉上に酸化チタン膜被覆を行う。所定時間経過後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを十分なイオン交換水にてデカンテーションを繰り返し、洗浄した。洗浄操作終了後、酸化チタン膜被覆された粉体を含むスラリーを120℃にて2時間乾燥させ、酸化チタン膜被覆されたパーマロイ粉G2を得た。得られた酸化チタン膜被覆されたパーマロイ粉G2を分光光度計(日本分光社製Ubest550)にて分光特性を測定した。結果を表1及び図2の分光反射率曲線に示すが、400nm付近に反射ピーク(2λ/4ピーク)を持ち、CIE(1976)L*a*b*表色系ではL*=52.5、a*=−1.7、b*=−11.0の青色を呈した。
【0070】
比較例1
[酸化チタン膜被覆]
(1)ペルオキソチタン溶液の調整
塩化チタン(IV)溶液(和光純薬社製試薬)2.2ミリリットル(TiO2量0.88グラム(0.011モル))を、イオン交換水にて10倍に希釈した。
次に、過酸化水素水(関東化学社製試薬特級)10.0グラムをゆっくりと添加し、橙赤色の過チタン酸溶液E4を得た。この溶液のpHは1.3程度であった。
【0071】
(2)酸化チタン膜被覆
実施例3の滴下液を橙赤色の過チタン酸溶液E4とした以外は同じ操作を行った。結果は、滴下液の全量を滴下した後の反応液のpHは2.2付近にまで低下し、酸化チタンの微粒子が形成され、反応液が薄黄色に濁っていた。また、反応液中のパーマロイ粉を十分なイオン交換水にてデカンテーションを繰り返し、洗浄した。洗浄操作終了後、パーマロイ粉を含むスラリーを120℃にて2時間乾燥させた後、結果を観察した。この方法では酸化チタン膜は全く被覆されていなかった。
【0072】
【表1】
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、基材金属粉体に対して塩化チタン(IV)溶液を使用して酸化チタン膜を被覆させる際に、反応液のpHを7以上のアルカリ牲とすることができ、より多くの基材金属粉体を溶解させることなく使用できるようになった。また、製膜反応を短時間に、効率よく、しかも低い温度で行うことが可能となった。
【0074】
さらに、一回の酸化チタン膜の被覆操作で、光学的干渉作用を生じさせるに十分な厚さの酸化チタン膜を、その膜厚を容易に調節して被覆させることができ、酸化チタン膜を破覆させた基材粉体に高い光学的干渉作用を生じさせることが可能となった。そのため、青色や赤紫色の着色磁性粉体を製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1と実施例2で得られた酸化チタン膜被覆シリカコートマグネタイト粉の分光反射率曲線を示す図である。
【図2】実施例3と実施例4で得られた酸化チタン膜被覆パーマロイ粉の分光反射率曲線を示す図である。
Claims (8)
- 塩化チタン(IV)溶液に過剰の塩基性物質を添加し、次いで過酸化物を加えて塩基性ペルオキソチタン溶液を生成させ、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体懸濁液中に滴下する工程を含む、基材粉体上に酸化チタン膜を被覆して酸化チタン膜被覆粉体を製造する方法。
- 上記基材粉体懸濁液がpH8以上pH10以下のアルカリ性緩衝液であることを特徴とする請求項1記載の酸化チタン膜被覆粉体の製造方法。
- 請求項1記載の酸化チタン膜被覆反応が、反応温度が15℃以上65℃以下にて行われることを特徴とする請求項1記載の酸化チタン膜被覆粉体の製造方法。
- 請求項1記載の酸化チタン膜被覆反応が、1時間以上6時間以内の反応時間で行われることを特徴とする請求項1記載の酸化チタン膜被覆粉体の製造方法。
- 塩化チタン(IV)溶液に過剰の塩基性物質を添加し、次いで過酸化物を加えて塩基性ペルオキソチタン溶液を生成させ、該ペルオキソチタン溶液を基材粉体懸濁液中に滴下する、酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体。
- 請求項2記載の酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体。
- 請求項3記載の酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体。
- 請求項4記載の酸化チタン膜被覆方法により酸化チタン膜被覆された粉体。
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