JP2004103690A - コンデンサ用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】絶縁性、加工性に優れ、80〜120℃の環境で使用しても高い信頼性をもって使用できるコンデンサ用を提供する。
【解決手段】ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とする二軸配向フィルムであって、フィルムの長手方向を0°方向とし、フィルム平面上で方向を15°刻みに変えて定まる15°方向、30°方向、45°方向、60°方向、75°方向、90°方向、105°方向、120°方向、135°方向、150°方向および165°方向の各方向においてフィルムの屈折率が1.740以上であることを特徴とするコンデンサ用ポリエステルフィルム。
【選択図】    なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンデンサ用ポリエステルフィルムに関する。更に詳細には、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とし、絶縁性、加工性に優れ、80〜120℃の環境で使用しても高い信頼性をもって使用できるコンデンサ用ポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサに対しては、最近の電気・電子機器の小型化に伴い、小型化かつ大容量化が要求されている他、使用電圧帯の高電圧化に伴う絶縁特性向上が要求されている。このような要求に対して、フィルムコンデンサでは誘電体としてのフィルムの薄膜化(誘電体(フィルム)の単位体積当りの静電容量はフィルム厚みの2乗に反比例し、かつ誘電体の誘電率に比例する)やフィルムに存在するピンホールの低減等が検討されている。
【0003】
このようにフィルムコンデンサでは誘電体であるフィルムの薄膜化の必要性があるものの、フィルムの薄膜化に伴うコンデンサの加工工程での作業性(フィルムヘの電極としての金属蒸着、スリット、素子巻等)の悪化を回避するために、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム中に滑剤として特定の不活性微粒子を添加することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、フィルムの薄膜化とコンデンサの加工工程での優れた作業性の両立が実現できたものの、フィルム中に含まれる添加物(滑剤、触媒、不純物)等に起因した絶縁特性不良やコンデンサの完成に至るまでにフィルムが受ける様々な熱的ストレスや機械的ストレスを原因とする絶縁特性不良により、本来ポリエステルフィルムが有する優れた絶縁特性が低下するためコンデンサ用フィルムとしては、なお不十分である。また、最近ではコンデンサの生産性を向上させるためにコンデンサ素子巻回後の熱プレスの温度や圧力を高くする傾向があり、ますます誘電体としてのフィルムに要求される性能は厳しくなっている。たとえ誘電体のフィルムが薄膜化されたとしても、コンデンサに求められる耐圧特性は従来品同等以上であるため、実質的にはフィルムの単位厚みあたりの絶縁特性の向上が強く求められることになり、誘電体フィルムの絶縁特性の向上が急務となっている。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−294237号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上述の従来技術の問題点を解決し、絶縁特性、加工性に優れた80〜120℃の環境で使用しても高い信頼性をもって使用できるフィルムコンデンサの誘電体に好適なフィルムを提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は鋭意研究の結果、コンデンサの誘電体を構成するポリエステルをポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主たる成分とし、フィルム面内の特定の方向における屈折率を特定な範囲とすることにより本発明の目的を達成できることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明の課題は、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とする二軸配向フィルムであって、フィルムの長手方向を0°方向とし、フィルム平面上で方向を15°刻みに変えて定まる15°方向、30°方向、45°方向、60°方向、75°方向、90°方向、105°方向、120°方向、135°方向、150°方向および165°方向の各方向においてフィルムの屈折率が1.740以上であることを特徴とするコンデンサ用ポリエステルフィルムにより達成される。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
[ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムは、全繰返し単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのポリエステルを主たる構成成分とするものである。
【0011】
従来、コンデンサ用ポリエステルフィルムにはポリエチレンテレフタレートフィルムが使用され、今後も使われるものと予想される。ポリエチレンテレフタレートフィルムは、80℃以上の温度域で誘電正接が増加し誘電損失により自己発熱して熱暴走になる可能性があるので、コンデンサとしての使用温度の上限は80℃程度に抑えられている。ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートでは誘電正接の増加は120℃近辺からであるので、使用温度の上限は約120℃と考えられる。従って、高温下ではポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルムのコンデンサが使われる。また、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの誘電率は2.9であり、ポリエチレンテレフタレートの3.1に対してやや小さく、一見小型化に不利のようであるが、厚みを薄くする潜在力は高く、この点でもポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが有利である。本発明はこのような用途のコンデンサを主対象にするものであり、フィルム巻回型コンデンサおよびフィルム積層型コンデンサに好適に用いられ、また、表面実装型のフィルムコンデンサに好適に使用される。
【0012】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、全繰返し単位の80モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートのポリエステルであるが、全繰返し単位の90モル%以上、更に95モル%以上がエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位であることが好ましく、特にポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの実質的な単独重合体であることが好ましい。
【0013】
本発明におけるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは、共重合成分が20モル%以内のポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート共重合体であってもよい。ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが共重合体の場合、共重合成分として、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸を好ましい例として挙げることができる。
【0014】
この他、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート共重合体の共重合体成分としては、分子内に2つのエステル形成性官能基を有する化合物を用いることができる。このような化合物として例えば、蓚酸、アジピン酸、フタル酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸等の如きジカルボン酸;p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等の如きオキシカルボン酸;或いはジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、シクロヘキサンメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール等の如き2価アルコール類等を用いることができる。これらの化合物は1種のみでなく2種以上を同時に用いることができる。また、これらの共重合成分の中で、酸成分としてはイソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、p―オキシ安息香酸を、グリコール成分としてはジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールスルホンのエチレンオキサイド付加物を好ましい例として挙げることができる。
【0015】
また、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートは例えば安息香酸、メトキシポリアルキレングリコールなどの一官能性化合物によって末端の水酸基および/またはカルボキシル基の一部または全部を封鎖したものであってもよく、或いは例えば極少量のグリセリン、ペンタエリスリトール等の如き三官能以上のエステル形成性化合物で実質的に線状のポリマーが得られる範囲内で共重合したものであってもよい。
【0016】
本発明のポリエステルフィルムにおけるポリマーの構成成分は、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの単独重合体及び/又は共重合体を主成分とするが、他のポリエステルやポリエステル以外の有機高分子との混合体であってもよい。混合体の場合、ポリマーの成分中のエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単位が全繰り返し単位の80モル%以上であることが必要であるが、90モル%以上、特に95モル%以上であることが、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートフィルム本来の特性を極端に失うことがなく、絶縁特性、機械特性および熱寸法安定性を確保できるので好ましい。
【0017】
ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートに混合できるポリエステル或いはポリエステル以外の有機高分子としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレン4,4’−テトラメチレンジフェニルジカルボキシレート、ポリエチレン−2,7−ナフタレンジカルボキシレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリネオペンチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレート等のポリエステルを挙げることができ、これらの中でポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリトリメチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、ポリ(ビス(4−エチレンオキシフェニル)スルホン)−2,6−ナフタレンジカルボキシレートが好ましい。
【0018】
これらのポリエステルまたはポリエステル以外の有機高分子は、1種のみならず2種以上を、ポリエステルフィルムを構成するポリマー成分において、高分子の繰返し単位で10モル%相当、好ましくは5モル%相当まで、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートと混合した混合体となるように使用できる。
【0019】
本発明に用いるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート単独重合体、共重合体或いは混合体に用いるポリエステルは、一般に知られたポリエステル組成物の製造方法によって製造できる。例えば、ジカルボン酸とグリコールとの反応で直接低重合度ポリエステルを得、或いはジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応で低重合度ポリエステルを得、この低重合度ポリエステルを重合触媒の存在下で更に重合させてポリエステルを得る方法で製造することができる。
【0020】
エステル交換反応に用いるエステル交換触媒としては、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、マンガン、コバルトを含む化合物の一種または二種以上を挙げることができる。また、重合触媒としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンのようなアンチモン化合物、二酸化ゲルマニウムで代表されるようなゲルマニウム化合物、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラフェニルチタネートまたはこれらの部分加水分解物、蓚酸チタニルアンモニウム、蓚酸チタニルカリウム、チタントリスアセチルアセトネートのようなチタン化合物を挙げることができる。
【0021】
エステル交換反応を経由して重合を行う場合は、重合反応前にエステル交換触媒を失活させる目的でトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート、正リン酸等のリン化合物を添加することができ、リン元素としてのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート中の含有量は20ppm以上100ppm以下で用いることがポリエステルの熱安定性の点から好ましい。
【0022】
なお、ポリエステルは溶融重合後これをチップ化し、加熱減圧下または窒素などの不活性気流中において固相重合することもできる。
【0023】
本発明に用いるポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの固有粘度は0.50dl/g以上0.90dl/g以下であることが好ましい。さらに好ましくは0.52dl/g以上0.85dl/g以下、特に好ましくは0.53dl/g以上0.80dl/g以下である。固有粘度が0.50dl/g未満であると溶融押出し後のフィルムが脆くなり、フィルムの製膜時の破断が発生し易くなる。また、コンデンサの加工工程の搬送でフィルムの破断が発生し易くなるため好ましくない。また、フィルムの固有粘度が0.90dl/gを超えると、ポリマーの固有粘度をかなり高くする必要があり、通常の合成手法では重合に長時間を要し生産性が悪くなるため好ましくない。以上のようなことから、二軸配向フィルムの固有粘度は0.45dl/g以上0.80dl/g以下であることが好ましく、0.47dl/g以上0.75g/dl以下であることがさらに好ましく、0.50dl/g以上0.70g/dl以下であることが特に好ましい。なお、固有粘度はo−クロロフェノールを溶媒として用いて、35℃で測定した値(単位:dl/g)である。
【0024】
[屈折率]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向を0°方向とし、フィルム平面上で方向を15°刻みに変えて定まる15°方向、30°方向、45°方向、60°方向、75°方向、90°方向、105°方向、120°方向、135°方向、150°方向および165°方向の各方向においてフィルムの屈折率が1.740以上であることが必要である。この屈折率は、より好ましくは1.740以上1.774以下、特に好ましくは1.742以上1.770以下である。上記方向におけるフィルム面内の屈折率が1.740未満であるとフィルムの絶縁破壊電圧が低下しコンデンサの誘電体フィルムとしての絶縁性能が不足するため好ましくない。一方、上記方向におけるフィルム面内の屈折率が増大するとフィルムの絶縁特性は良化する傾向にあるが、上記方向の一方向において屈折率が1.774を超えると、添加剤の種類、粒径やフィルム厚み等の影響により、フィルムの絶縁性能が低下する場合がある。
【0025】
[密度]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムは密度が1.347g/cm3 以上1.361g/cm3 以下であることが好ましい。さらに好ましくは1.349g/cm3 以上1.360g/cm3 以下、特に好ましくは1.350g/cm3 以上1.359g/cm3 以下である。密度が1.347g/cm3 未満または1.361g/cm3 を超えるとフィルムの絶縁破壊電圧が低く、コンデンサの誘電体フィルムとしての絶縁性能が不足することがあるため好ましくない。また、密度が1.361g/cm3 を超えた場合には、結晶性が高くなり過ぎてフィルムの靭性が失われるためフィルム搬送時やスリット加工時の破断頻度が増加することがある。
【0026】
[熱収縮率]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムを200℃で10分間加熱処理したときの長手方向(0°方向:以下『MD』ということがある)の熱収縮率が2.5%以上4.2%以下および巾方向(90°方向:以下『TD』ということがある)の熱収縮率が3.0%以上4.6%以下であり、かつ巾方向の熱収縮率が長手方向の熱収縮率よりも大きいことが好ましい。
【0027】
フィルムの長手方向(MD)または巾方向(TD)の熱収縮率が上記範囲未満であると、フィルム上に金属を蒸着するときに、蒸着面とは反対面側が接している冷却ロールとの密着が悪く熱負けが生じるため好ましくない。一方、フィルムの長手方向(MD)または巾方向(TD)の熱収縮率が上記範囲を超えると、メタリコン(素子の両端面に電極金属を溶射)時のフィルムの変形による接触不良が発生するため好ましくない。
【0028】
さらに、長手方向(MD)の熱収縮率が巾方向(TD)の熱収縮率以上の値になった場合には、コンデンサを製造する各工程における熱履歴によってフィルムにシワが入る等の異常が発生するため好ましくない。
【0029】
なお、200℃で10分間加熱処理したときの長手方向(MD)の熱収縮率が2.7%以上4.0%以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは2.8%以上3.9%以下である。また、200℃で10分間加熱処理したときの巾方向(TD)の熱収縮率が3.2%以上4.5%以下であることがさらに好ましく、3.4%以上4.4%以下であることが特に好ましい。
【0030】
[熱収縮率の変化比率]
本発明のフィルムを150℃で30分間加熱処理したときの長手方向(MD)および巾方向(TD)の熱収縮率と200℃で10分間加熱処理したときの長手方向(MD)および巾方向(TD)の熱収縮率から下記式(1)によって算出される値(熱収縮率の変化比率)は33以上96以下であることが好ましく、さらに好ましくは37以上93以下であり、特に好ましくは40以上90以下である。
【0031】
【数2】
熱収縮率の変化比率(%)=(S200MD−S150MD)/(S200TD−S150TD)×100 ……(1)
ただし、上記式(1)中S200MD、S200TDは200℃で10分間加熱処理したときの長手方向および巾方向の熱収縮率、S150MD、S150TDは150℃で30分間加熱処理したときの長手方向および巾方向の熱収縮率を各々示す。
【0032】
この変化比率が33未満あるいは96を超えると、コンデンサ製造過程での熱履歴によりフィルムの平面性が悪化(たるみ、しわ)するため好ましくない。
【0033】
[添加物]
本発明のポリエステルフィルムには添加剤、例えば滑剤、安定剤、難燃剤等を含有させることができる。フィルムの製造時、加工時、使用時の走行性やハンドリング性を向上させる目的でフィルムに滑り性を付与するために無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子などの不活性微粒子を少割合含有させることが好ましい。
【0034】
無機粒子としては例えば、炭酸カルシウム、多孔質シリカ、球状シリカ、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム等を挙げることができる。本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムには上記の例示の中で炭酸カルシウム、板状珪酸アルミニウム、多孔質シリカ、球状シリカを含有することが特に好ましい。
【0035】
有機塩粒子としては例えば蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などが挙げられる。
【0036】
架橋高分子粒子としては例えば、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸もしくはメタクリル酸のビニル系モノマの単独または共重合体等が挙げられ、この他、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も用いられる。
【0037】
これら滑剤の粒子径は平均粒径が0.1μm以上5μm以下である。平均粒子径としてさらに好ましくは0.15μm以上4μm以下であり、0.2μm以上3.5μm以下が特に好ましい。0.1μm未満では滑り性改善効果が小さいため添加濃度を非常に高くする必要があり、フィルムの製造工程で破断が多くなるため好ましくない。また、5μmを超えるとフィルムの製造工程で破断が多くなるばかりでなく、粒子の脱落によるピンホールが増加するので好ましくない。
【0038】
不活性微粒子の全添加量は0.05重量%以上3重量%以下、より好ましくは0.08重量%以上2.5重量%以下であり、0.1量%以上2.0重量%以下が特に好ましい。0.05重量%未満では滑り性の改善が不十分であり、3重量%を超えるとフィルムの製造工程で破断が多くなるため好ましくない。
【0039】
フィルムに添加する不活性微粒子は上記に例示した中から選ばれた単一成分でもよく、二成分あるいは三成分以上を含む多成分でもよい。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムは、その用途に応じて結晶核剤、酸化防止剤、熱安定化剤、易滑剤、難燃剤、帯電防止剤、ポリシロキサン等を配合することができる。
【0041】
不活性微粒子やその他の添加剤の添加時期はポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを製膜するまでの段階であれば特に制限はなく、例えば重合段階で添加してもよく、また製膜の際に添加してもよい。均一分散の見地からは、エチレングリコール中に添加して重合時に高濃度添加し、マスターチップとし、無添加チップで希釈するのが好ましい。
【0042】
[炭酸カルシウム粒子]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルム中に特に好ましく添加される不活性微粒子である炭酸カルシウム粒子は、フィルムの滑り性、エア抜け性の点から平均粒径は0.2μm以上5μm以下であることが好ましく、0.3μm以上4μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上3μm以下であることが特に好ましい。また炭酸カルシウム粒子の添加量は0.03重量%以上2重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.05重量%以上1.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以上1重量%以下である。
【0043】
本発明に用いる炭酸カルシウムとしては、特に限定はされないが、天然に産出する石灰石、チョーク(白亜)、および石灰石から化学的方法によって生成される沈降炭酸カルシウム等のカルサイト結晶、石灰乳に高温で炭酸ガスを反応させて得られるアルゴナイト結晶、バテライト結晶およびこれらを組み合わせたものが例示される。石灰石を機械酌に粉砕して得られる重質炭酸カルシウム(カルサイト結晶)も用いることができる。
【0044】
[板状ケイ酸アルミニウム粒子]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルム中に特に好ましく添加される不活性微粒子である珪酸アルミニウム粒子は平均粒径が0.1μm以上2μm以下であることが好ましく、0.3μm以上1.7μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上1.5μm以下であることが特に好ましい。また、添加量はフィルムの滑り性、コンデンサの製造工程での取扱い性の点から0.03重量%以上1重量%以下であることが好ましく、0.06重量%以上0.8重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以上0.7重量%以下であることが特に好ましい。
【0045】
本発明における板状珪酸アルミニウムとはアルミノ珪酸塩のことをいうものであり、特に限定はされないが、天然に産出するカオリン鉱物からなるカオリンクレー等が例示される。さらにカオリンクレーは水洗等の精製処理を施されたものであっても良い。
【0046】
[球状シリカ粒子]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルム中に特に好ましく添加される不活性微粒子である球状シリカ粒子は粒径比(長径/短径)が1.0以上1.2以下であることが好ましく、さらに平均粒径が0.01μm以上3.0μm以下であり、かつフィルム厚み未満であることが好ましい。また、添加量は0.03重量%以上3重量%以下であることが好ましい。
【0047】
さらに、球状シリカ粒子のみの添加によってフィルムの滑り性を付与させる場合には、平均粒径の違う2種の球状シリカ粒子を同時に添加するとよい。すなわち、平均粒径がフィルム厚み未満でかつ0.5μm以上3.0μm以下の球状シリカ粒子(A)と平均粒径がフィルム厚み未満でかつ0.01μm以上1.5μm以下の球状シリカ粒子(B)からなり、かつ球状シリカ粒子(A)の平均粒径が球状シリカ粒子(B)の平均粒径よりも大きい粒子を同時に添加することが好ましい。そして、該粒子(A)の添加量が0.03重量%以上1.5重量%以下であり、かつ該粒子(B)の添加量が0.05重量%以上2重量%以下であることが好ましい。
【0048】
[多孔質シリカ粒子]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルム中に特に好ましく添加される不活性微粒子である多孔質シリカ粒子は、平均粒径が0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、0.7μm以上4μm以下であることがより好ましく、0.9μm以上3.5μm以下であることが特に好ましい。なお、多孔質シリカ微粒子の平均粒径はフィルム厚みより大きくてもかまわない。これは前記多孔質シリカ微粒子がポリエステルフィルムに対して高い親和性を持つためである。また、多孔質シリカ微粒子の添加量は0.05重量%以上2重量%以下(ポリマーに対して)であることが好ましく、0.08重量%以上1.5重量%以下であることがより好ましく、0.1重量%以上1重量%以下であることが特に好ましい。
【0049】
なお、上述の不活性微粒子の平均粒径は、島津制作所製CP−50型セントリフューグルパーティクルサイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Annalyzer)を用いて測定した値であり、得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50重量%に相当する粒径を読み取って平均粒径とした(「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年頁242〜247参照)。
【0050】
上述の特に好ましい不活性微粒子の例示(炭酸カルシウム粒子、板状ケイ酸アルミニウム粒子、球状シリカ粒子、多孔質シリカ粒子)をはじめとしたフィルム表面の突起を形成するための不活性微粒子をフィルム注に添加することにより、本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムは中心線平均粗さ(Ra)が30nm以上90nm以下であることが好ましく、より好ましくは35nm以上85nm以下、特に好ましくは40nm以上80nm以下である。
【0051】
なお、中心線平均粗さ(Ra)はJIS−B−0601で定義される値であり、非接触式三次元粗さ計(小坂研究所製ET−30HK)を用いて、波長780nmの半導体レーザー、ビーム径1.6μmの光触針で測定長(Lx)1mm、サンプリングピッチ2μm、カットオフ0.25mm、厚み方向拡大倍率1万倍、面方向拡大倍率200倍、走査線数100本(Ly=0.2mm)の条件にてフィルム表面の突起プロファイルを測定した値をもとに算出されるものである。
【0052】
[厚み]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムの厚みは0.3μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.4μm以上8.0μm以下、特に好ましくは0.5μm以上7.0μm以下である。フィルムの厚みが0.3μm未満ではフィルムが薄過ぎて絶縁特性が現在の要求レベルに達しないため、たとえ製膜が可能であってもコンデンサ用ポリエステルフィルムとして好ましくない。また、フィルムの厚みが10μmを超えると、コンデンサの小型大容量化に対する本発明の本来の目的から外れるため、本発明の対象とはならない。
【0053】
[厚みのバラツキ]
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムにおいて任意の場所での厚みのバラツキはフィルム厚みに対して25%以下であることが好ましく、より好ましくは20%以下、特に好ましくは15%以下である。フィルムの厚みに対する厚みのバラツキが25%を超えるとコンデンサの誘電体用薄膜として幾重にも積層して使用した場合、厚みのバラツキによりコンデンサとしての性能にバラツキを生じる原因となるため好ましくない。
【0054】
なお、フィルム厚みおよび厚みのバラツキは以下に示す方法で算出した。先ず、フィルムの任意の場所から縦10cm、横10cmの大きさに切り出したサンプルを全部で50枚採取する。次に各々のサンプルの幅(cm)、長さ(cm)、重量(g)、密度(g/cm3 )から厚みT(μm)を下記式(2)で算出し、50サンプルの平均厚みTavを下記式(3)により求めてフィルム厚みとした。さらに、上述の50サンプルの中の最大厚みTmaxと最小厚みTminの差を求め、平均厚みTavに対する割合を下記式(4)で算出して厚みのバラツキとした。
【0055】
【数3】
厚みT(μm)=(重量/(幅×長さ×密度))×10000 ……(2)
平均厚みTav(μm)=(T1+T2+…+T50)/50 ……(3)
厚みのバラツキ(%)=((最大厚みTmax−最小厚みTmin)/平均厚みTav)×100……(4)
【0056】
[製造条件]
本発明のポリエステルフィルムは、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とする二軸延伸フィルムである。この二軸延伸フィルムは通常の方法、例えば、該ポリマーを融点以上で溶融させ、溶融ポリマー中の粗大粒子を減少させる目的でフィルターを通過させた後にダイスリットから60℃近辺に調温されたキャスティングドラム上に押出して密着冷却固化させ、未延伸フィルムを得る。この未延伸フィルムを縦および横方向に二軸延伸した後、熱固定し、必要に応じて縦方向および/または横方向に弛緩処理することで製造することができる。フィルムの延伸は公知のロール式縦延伸機、赤外線加熱縦延伸機、テンタークリッブ式横延伸機、これらの延伸を複数段階にわけて行う多段式延伸機、チューブラ延伸機、オーブン式縦延伸機、同時二軸延伸機などを用いて行うことができるが特に限定されるものではない。本発明においては、フィルムの縦方向の150℃における熱歪み率を小さい値に制御する必要があり、同時二軸延伸が好ましい。
【0057】
次に詳しく本発明のポリエステルフィルムの製造方法について述べるが必ずしもこれに限定されるものではない。
【0058】
先ず、同時二軸延伸法による製造につき説明する。同時二軸延伸機の縦方向の延伸機構には従来の方式であるスクリューの溝にクリップを乗せてクリップ間隔を拡げていくスクリュー方式、パンタグラフを用いてクリップ間隔を拡げていくパンタグラフ方式がある。これ等には、製膜速度が遅いこと、延伸倍率等の条件変更が容易でない等の問題があったが既にこのような設備を所有する場合、本発明に用いることができる。一方、近年、リニアモーター方式の同時二軸テンターが開発され、その製膜速度の高さ等から注目を集めている。リニアモーター方式の同時二軸延伸では、これらの問題を一挙に解決できる。従って新規に同時二軸延伸機を導入する場合にはこの方式の設備を使用するのが好ましい。また、同時二軸延伸では、逐次二軸延伸のように縦延伸ローラーを使用しないため、フィルム表面の傷が少なくなるという長所がある。その他、同時二軸延伸では逐次二軸延伸に比べてフィルム厚みのバラツキが改善される。また、熱固定領域で縦弛緩できる構造のものがあり、コンデンサ用ポリエステルフィルムの重要特性のひとつであるフィルムの配向の制御が比較的容易である。これらの特徴が本発明のコンデンサ用フィルムへの要求特性と合致するので、本発明においては同時二軸延伸を採用することが好ましい。
【0059】
本発明でいう同時二軸延伸とは、フィルムの縦方向、横方向に同時に配向を与えるための延伸であり、同時二軸延伸機を用い、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、縦方向および横方向に延伸する操作をいう。尚、ここで、フィルムの縦方向とはフィルムの長手方向であり、横方向とはフィルムの幅方向である。もちろん、縦方向と横方向の延伸が時間的に同時に延伸されている部分があればよいのであって、従って、横方向または縦方向に単独に先に延伸した後に、縦方向と横方向とを同時に延伸する方法や、さらに同時二軸延伸後に横方向または縦方向に単独に更に延伸する方法なども本発明の範囲に含まれる。
【0060】
本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムを製造するには、所定の不活性微粒子を含有させた後、例えばポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート樹脂を160℃以上190℃以下の温度で4時間から7時間程度乾燥した後に、通常の押出温度、すなわち270℃以上330℃以下の温度で溶融し、平均目開きが10μm以上40μm以下のフィルター(望ましくは焼結金属型、網状構造型、さらに好ましくは線径15μm以下のステンレス鋼細線よりなる不織布型)でろ過をした後にダイスリットから押出されたフィルム状溶融物を表面温度が30℃以上70℃以下の回転冷却ドラムの表面で急冷して未延伸フィルムを得る。未延伸フィルムの端部と中央部の厚みの比率(端部の厚み/中央部の厚み)は、望ましくは、1以上10以下であり、好ましくは1以上5未満、さらに好ましくは1以上3未満である。前記厚みの比率が1未満であるか、10を越えるとフィルム破れまたはクリップ外れが多発するので好ましくない。
【0061】
次いで、この未延伸フィルムを、同時二軸延伸機に該フィルムの両端部をクリップで把持して導き、予熱ゾーンで80℃以上160℃以下に加熱した後、一段階もしくは二段階以上の多段階で115℃以上170℃以下の温度で面積倍率10倍以上40倍以下(縦倍2倍以上6倍以下)の同時二軸延伸を施す。また必要に応じて、その後さらに、150℃以上250℃以下の温度で、一段階もしくは二段階以上の多段階で面積倍率2〜5倍に同時二軸延伸しても良い。続いて、190℃以上255℃以下の温度範囲で熱固定を施し、必要であれば熱固定を施しながら、または熱固定からの冷却過程で、好ましくは100℃以上245℃以下の温度範囲で縦方向および/または横方向に、好ましくは各方向に対して0.5%以上10%以下の範囲で弛緩処理を行う。本発明のポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレートの場合、予熱温度は130℃程度、延伸温度は145℃程度、熱固定温度は235℃程度が特に好ましい。
【0062】
尚、本発明では、フィルムの表面特性を付与するため、例えば易接着性、易滑性、離型性、制電性を付与するために、同時二軸延伸の前または後の工程で、ポリエステルフィルムの表面に塗剤をコーテングすることも好ましく行うことができる。
【0063】
本発明のフィルムは通常の逐次二軸延伸でも製造できる。前述したように公知の方法で得られたポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの未延伸フィルムを予熱ゾーンで80℃以上150℃以下に加熱した後、120℃以上180℃以下、より好ましくは125℃以上170℃以下、特に好ましくは130℃以上160℃以下で縦方向にロール式縦延伸機で3.0倍以上5.0倍以下、より好ましくは3.3倍以上4.6倍以下で延伸する。赤外線加熱式縦延伸機を用いてもよいが、特に薄いフィルムを延伸する場合にはフィルム全体を均一に加熱するのに有利であるためロール式縦延伸機の方が好ましい。縦延伸で無理なく延伸するためには延伸を複数回に分けて多段延伸することが好ましい。縦延伸後、再度予熱ゾーンで80℃以上150℃以下に加熱した後、さらにステンター内で120℃以上180℃以下、より好ましくは125℃以上170℃以下、特に好ましくは130℃以上160℃以下で横方向に3.0倍以上4.5倍以下、より好ましくは3.5倍以上4.3倍以下で延伸し、195℃以上250℃以下、より好ましくは200℃以上245℃以下で0.3〜50秒間熱処理を行い、その後、縦方向および/または横方向に弛緩率0.5〜15%の範囲で熱弛緩処理を行うことで所望のポリエステルフィルムを得ることができる。なお、横方向の延伸を複数段階に分割する多段延伸を用いてもよい。
【0064】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルムコンデンサの誘電体として用いられるが、従来のポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)フィルムコンデンサに比べて、誘電体フィルムのガラス転移温度が高いために、より使用環境温度が高い場所で使用されるフィルムコンデンサに好ましく適用される。特に電気・電子機器の小型化により従来よりも熱源に接近した整流回路、自動車の電装部品としてエンジン周辺や車内に設置される電装部品の回路等では使用環境温度が高温になるため好ましく用いられる。また、ハイブリッドカーや電気自動車、電子交換機等の変圧回路、電流変換回路等などの高電圧下での耐電圧特性や高周波下での容量安定化が要求されるコンデンサ用のフィルムとして好ましく適用される。
【0065】
【実施例】
以下実施例により本発明を更に説明するが、本発明はその要旨を変えない限り、以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、本発明における種々の物性値及び特性の測定方法、定義は以下の通りである。
【0066】
(1)ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートの成分量(主成分モル比、共重合成分モル比)の算出
フィルムサンプルを測定溶媒(CDCl:CFCOOD=1:1)に溶解後H−NMR測定を行い、得られた各シグナルの積分比をもって算出する。
【0067】
(2)フィルムの屈折率
Metricon社製 プリズムカプラ Model 2010を用いて、波長473nm、633nm、830nmでのフィルム面内の長手方向(0°方向)、15°方向、30°方向、45°方向、60°方向、75°方向、90°方向、105°方向、120°方向、135°方向、150°方向および165°方向の各方向の屈折率を測定する。次に得られた各方向の、波長473nm、633nm、830nmでの測定値をコーシーの分散式である下記式(5)に当てはめる。
【0068】
【数4】
=a+[b/(λ]+[c/(λ] ……(5)
ここで式(5)中のλは測定波長。nは波長λで測定された屈折率である。波長473nm、633nm、830nmでの屈折率測定結果を式(5)に代入し、連立方程式を解くことによって定数のa,b,cを求める。そして得られたa,b,cの値を用いて、波長589nm(Na−D線の波長)での屈折率を計算によって求め、フィルムの屈折率とする。得られた各方向の屈折率のうち、値が最大のものと最小のものをそれぞれ屈折率最大値、屈折率最小値とした。
【0069】
(3)密度
硝酸カルシウム水溶液を用いた密度勾配管で、25℃での浮沈法により測定する。
【0070】
(4)熱収縮率
試料フィルムの長手方向(MD)または巾方向(TD)に沿って所定の間隔で標線を入れ、所定の温度(150℃または200℃)に設定されたオーブン中で張力フリーの状態で所定の時間(30分間または10分間)フィルムを保持し、熱処理(各150℃×30分間、200℃×10分間)前後での寸法変化を熱収縮率として下記式(6)により算出する。
【0071】
【数5】
熱収縮率(%)={(熱処理前の長さ−熱処理後の長さ)/熱処理前の長さ}×100 ……(6)
【0072】
(5)フィルムの平面性(加工適正)
二軸延伸フィルムを500mm巾でスリットし、巻取り長1000mのロールサンプルを作成する。得られたロールサンプルを温度80℃に設定したオーブン中で4時間熱処理した後、フィルムを水平かつ平行に1mの間隔をおいて並んだ2本の搬送ロール間に渡し、一定の張力(4kg/m巾)を掛けて張った状態にする。フィルムを横から観察し、たるみによって最も垂れ下がった距離を測定してたるみ量とし、また、シワの状態を観察して下記の基準で評価した。なお、下記評価の○および△を合格とした。
○:フィルムにシワは見られず、フィルムのたるみ量は5mm未満であり、フィルムの平面性は極めて良好。
△:フィルムにシワが見られず、フィルムのたるみ量が5mm以上15mm未満であり、フィルムの平面性は良好。
×:フィルムにシワが見られる、またはフィルムのたるみ量が15mm以上であり、フィルムの平面性は不良。
【0073】
(6)絶縁破壊電圧(BDV)
JIS C 2318に示す方法に従って測定し、n=200の最小値を絶縁破壊電圧(BDV)とした。
【0074】
本発明において、絶縁破壊電圧は220V/μm以上であることが好ましく240V/μm以上であることが特に好ましい。
【0075】
[実施例1]
2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部、エチレングリコール60部をエステル交換触媒として酢酸マンガン四水塩0.03部を使用し、滑剤として平均粒径1.1μmの炭酸カルシウム粒子0.45重量%および平均粒径0.8μmのカオリンクレー粒子(板状ケイ酸アルミニウム粒子)を0.30重量%含有するように添加して、常法に従ってエステル交換反応をさせた後、トリメチルホスフェート0.023部を添加し実質的にエステル交換反応を終了させた。
【0076】
ついで、三酸化アンチモン0.024部を添加し、引き続き高温、高真空化で常法にて重合反応を行い、固有粘度0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN Tg=121℃)を得た。
【0077】
このPENポリマーを170℃で5時間乾燥させた後、押出し機に供給し、溶融温度290℃で溶融し、線径14μmのステンレス鋼細線からなる平均目開き30μの不織布型フィルターでろ過し、ダイスリットより押出し後、表面温度を50℃に設定したキャスティングドラム上で冷却固化させて未延伸フィルムを作成した。
【0078】
この未延伸フィルムを、同時二軸延伸機に導入し、125℃で予熱した後、145℃で縦方向に3.5倍、横方向に3.8倍にクリップで把持しながら同時に延伸した。その後、第1、2、3熱固定ゾーンにおいてそれぞれ200℃、230℃、235℃で2秒間ずつ熱固定しながら、第3熱固定ゾーンで縦および横方向に各々0.7%の弛緩を与え、厚みが2.5μmの二軸配向フィルムを得た。二軸配向フィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例2]
縦方向に3.2倍、横方向に3.6倍で延伸した以外は実施例1と同様に製膜を行った。得られた二軸配向フィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例3]
縦方向に3.3倍、横方向に4.1倍で延伸した以外は実施例1と同様に製膜を行った。得られた二軸配向フィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0081】
[実施例4]
第1、2、3熱固定ゾーン温度をそれぞれ195℃、220℃、230℃にした以外は実施例1と同様に製膜を行った。得られた二軸配向フィルムの物性および評価結果を表1に示す。
【0082】
[実施例5]
滑剤として添加する不活性粒子を平均粒径1.3μmの球状シリカ粒子0.25重量%および平均粒径0.2μmの球状シリカ粒子を0.25重量%含有するように添加して、固有粘度0.62dl/gのポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN Tg=121℃)を得た以外は、実施例1と同様に未延伸フィルムを作成し、同様に製膜を行った。得られた二軸配向フィルムの物性および結果を表1に示す。
【0083】
[比較例1]
縦方向に2.9倍、横方向に3.6倍で延伸した以外は実施例1と同様に製膜を行った。得られた二軸配向フィルムの物性および評価結果を表1に示す。このフィルムは屈折率が低く、フィルムの絶縁破壊電圧が低い。
【0084】
[比較例2]
縦方向に3.8倍、横方向に3.5倍で延伸し、かつ第3熱固定ゾーン温度を245℃にして、縦および横方向に各々3.2%の弛緩を与えた以外は実施例1と同様に製膜を行った。得られた二軸配向フィルムの物性および評価結果を表1に示す。このフィルムは屈折率が小さく、かつフィルムの密度が高く、フィルムの絶縁破壊電圧が低い。
【0085】
[比較例3]
縦方向に3.4倍、横方向に3.9倍で延伸し、かつ第1、2、3熱固定ゾーン温度をそれぞれ180℃、200℃、170℃にした以外は実施例1と同様に製膜した。得られた二軸配向フィルムの評価結果を表1に示す。このフィルムは屈折率が小さく、かつフィルムの密度が低いためにフィルムの絶縁破壊電圧が低い。
【0086】
【表1】
Figure 2004103690
【0087】
表1に示した結果から明らかなように、本発明のコンデンサ用ポリエステルフィルムは、絶縁破壊電圧が高く、フィルムの熱収縮挙動が良好であり、かつ、フィルムの平面性と厚みのバラツキも良好であり、コンデンサ用フィルムとして優れたものであった。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、絶縁性、加工性に優れ、80〜120℃の環境で使用しても高い信頼性をもって使用できるコンデンサ用ポリエステルフィルムを得ることができる。

Claims (8)

  1. ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートを主成分とする二軸配向フィルムであって、フィルムの長手方向を0°方向とし、フィルム平面上で方向を15°刻みに変えて定まる15°方向、30°方向、45°方向、60°方向、75°方向、90°方向、105°方向、120°方向、135°方向、150°方向および165°方向の各方向においてフィルムの屈折率が1.740以上であることを特徴とするコンデンサ用ポリエステルフィルム。
  2. フィルムの密度が1.347g/cm3 以上1.361g/cm3 以下である請求項1に記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
  3. フィルムを200℃で10分間加熱処理したときのフィルムの長手方向(0°方向)の熱収縮率が2.5%以上4.2%以下であり、フィルムの巾方向(90°方向)の熱収縮率が3.0%以上4.6%以下であり、かつ巾方向の熱収縮率が長手方向の熱収縮率よりも大きい請求項1または2に記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
  4. フィルムを150℃で30分間加熱処理したときのフィルムの長手方向(0°方向:MD)および巾方向(90°方向:TD)の熱収縮率と、200℃で10分間加熱処理したときのフィルムの長手方向(0°方向:MD)および巾方向(90°方向:TD)の熱収縮率から下記式(1)によって算出される値(熱収縮率の変化比率)が33以上96以下である請求項1〜3のいずれかに記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
    Figure 2004103690
    (ただし、式(1)中S200MD、S200TDは200℃で10分間加熱処理したときの長手方向および巾方向の熱収縮率、S150MD、S150TDは150℃で30分間加熱処理したときの長手方向および巾方向の熱収縮率を各々示す。)
  5. フィルムが同時二軸延伸法によって製造される請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
  6. フィルムがフィルム巻回型コンデンサの誘電体として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
  7. フィルムがフィルム積層型コンデンサの誘電体として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
  8. フィルムが表面実装型フィルムコンデンサの誘電体として用いられる請求項1〜4のいずれかに記載のコンデンサ用ポリエステルフィルム。
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