JP2004099665A - 透湿シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の透湿シートは、ポリオレフイン系樹脂100重量部に対して無機充填剤100〜300重量部を含むポリオレフイン系樹脂組成物からなり、少なくとも一軸延伸されている。全光線透過率は50%以上であり、透湿度は3600〜8400g/(m2・24h)であり、坪量は10〜50g/m2である。ポリオレフイン系樹脂は、メルトフローレート1〜5g/10minで、密度0.920〜0.935g/cm3である線状低密度ポリエチレン80〜99重量%およびメルトフローレート6〜15g/10minで、密度0.910〜0.930g/cm3である分岐状低密度ポリエチレン1〜20重量%を含む。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液不透過性であるが水蒸気透過性のある透湿シートに関し、更に詳しくは高い透明性と高い透湿性とを兼ね備えた透湿シートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
ポリオレフィン系樹脂からなる液不透過性で且つ水蒸気透過性の透湿シートが種々知られている。この種の透湿シートは、ポリオレフィン樹脂と無機充填剤とを主とした組成物からなるシートを一軸又は二軸方向に延伸することで、シートに連通孔が形成され、透湿性が発現される。この透湿シートは、多数の微多孔を有しているため白色を呈し、その透明性は低いものとなっている。これを例えば、使い捨ておむつの裏面シートとして使用した場合、おむつ着用者が尿をしても、尿が外側から見えにくく、おむつの取り替え時期が判りにくいことがあった。近年では、各社のおむつには、尿と接触すると色が変わるホットメルト粘着剤、色が流れるインク、模様が浮かび上がる印刷等の各種の尿インジケータ機能が取り付けられている。これらは、吸収体と裏面シートとの間に配されているため、そのインジケータは裏面シート、すなわち、透湿シート越しに見ることとなる。従って、その視認性の点からも、透明性が高く、透湿性も高い透湿シートが求められている。一般に、この透湿シートの透明性を高めようとすると透湿性が低下してしまい、逆に透湿性を高めようとすると透明性が低下してしまうことが知られている。つまり、透湿シートにおいて、透湿度を高めることと、透明性を高めることとは二律背反の関係にある。
【0003】
メルトフローレートが0.1〜20g/10minのポリエチレンと、メルトフローレートが0.01〜5g/10minの分岐状低密度ポリエチレンとの混合樹脂を含む透湿シートが知られている(特許文献1参照)。この透湿シートは、全光線透過率が50%以上で、透湿度が1300〜5000g/(m2・24h)であるとされている。しかし、特許文献1に記載の実施例においては、実際に製造された透湿シートの透湿度は前記範囲の中でも低い値である1800〜3300となっている。この範囲の透湿度の透湿シートを例えば使い捨ておむつの防漏シートとして用いると、その低透湿度に起因して、おむつ着用中に着装内の湿度が高くなり、着用者の肌がかぶれ易くなってしまう。
【0004】
【特許文献1】
特開平11−240971号公報
【0005】
従って、本発明は、高い透湿度を維持しつつ高い透明性を有する透湿シートを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のメルトフローレート及び特定の密度を有する線状低密度ポリエチレンと、特定のメルトフローレート及び特定の密度を有する分岐状低密度ポリエチレンとを、特定の配合比で含むポリオレフィン系樹脂を原料することで、前記目的を達成し得る透湿シートが得られることを知見した。
【0007】
本発明は前記知見に基づきなされたものであり、ポリオレフイン系樹脂100重量部に対して無機充填剤100〜300重量部を含むポリオレフイン系樹脂組成物からなり、少なくとも一軸延伸されており、全光線透過率が50%以上であり、透湿度が3600〜8400g/(m2・24h)であり、坪量が10〜50g/m2である透湿シートであって、前記ポリオレフイン系樹脂は、メルトフローレート1〜5g/10minで、密度0.920〜0.935g/cm3である線状低密度ポリエチレン80〜99重量%およびメルトフローレート6〜15g/10minで、密度0.910〜0.930g/cm3である分岐状低密度ポリエチレン1〜20重量%を含む透湿シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の透湿シートは、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物を原料とするものである。本発明においては、ポリオレフィン系樹脂として、特定の線状低密度ポリエチレン(以下、LLDPEともいう)と、特定の分岐状低密度ポリエチレン(以下、LDPEともいう)とを併用することが特徴の一つとなっている。かかるポリオレフィン系樹脂を用いて透湿シートを製造すると、意外にも該透湿シートは透湿性が高く、しかも透明性も高いことが本発明者らの検討によって判明した。
【0009】
LLDPEとしては、メルトフローレート(以下、MFRともいう)が1〜5g/10min、好ましくは2〜5g/10min、更に好ましくは2.5〜4.5g/10minのものが用いられる。このMFRの範囲は、従来透湿シートの原料に用いられてきたポリオレフィン系樹脂のMFRよりも高いものである。このような高MFRのLLDPEを用いることによって、流動性が高まり、成形性が良好となる。また、得られる透湿シートの透湿性が高くなる。詳細にはMFRが1g/10min未満では、流動性が低く、シート成形が困難となってしまう。5g/10min超では、延伸開孔時に孔が開きやすくなり、防漏性に問題が出るような穴開きが多発してしまう。MFRはASTM D−1238−57T(E)に規定される方法に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件下に測定される。
【0010】
またLLDPEは、その密度が0.920〜0.935g/cm3、好ましくは0.920〜0.930g/cm3である。この範囲の密度を有するLLDPEを用いることで、透湿性が充分に高く、縦裂強度やCD破断強度等の強度が高く、柔軟性が高く、ホットメルト塗工に対する耐熱性が高く、外観上シートの延伸ムラも少ない透湿シートが得られる。詳細には密度が0.920g/cm3未満では、透湿性が低くなり、耐熱性も低い透湿シートとなってしまう。0.935g/cm3超では、柔軟性が低く、外観上シートの延伸ムラが多く、見栄えの悪い透湿シートとなってしまう。密度はJIS K 7112のD法(密度勾配管による測定法)に基づき測定される。
【0011】
LLDPEは、メタロセン触媒を用いて製造されたものであることが好ましい。これによって、成形性とシート物性、特に透湿性と強度と柔軟性とがバランスした透湿シートが得られる。この場合LLDPEは、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体であることが好ましい。
【0012】
LLDPEとしては市販のものを用いることもできる。そのようなLLDPEとしては例えば宇部興産(株)製のUMERIT 2540FやUMERIT 2525F、日本ポリオレフィン(株)製のハーモレックスNC479Aなどが挙げられる。
【0013】
本発明において用いられるポリオレフィン系樹脂のもう一方の成分であるLDPEとしては、MFRが6〜15g/10min、好ましくは7〜12g/10minのものが用いられる。このMFRの範囲は、従来透湿シートの原料に用いられてきたポリオレフィン系樹脂のMFRよりも高いものである。このような高MFRのLDPEを用いることによって、流動性が向上し、成形性が良好となる。また、シートの物性上も高い透湿性が得られる。詳細にはMFRが6g/10min未満では成形性が悪くなり、幅方向の厚みムラも多く、外観上見栄えの悪いシートとなり、更には透湿性も低いものとなってしまう。15g/10min超では延伸開孔時に孔が開きやすくなり、防漏性に問題が出るような穴開きが多発してしまう。
【0014】
またLDPEは、その密度が0.910〜0.930g/cm3、好ましくは0.910〜0.925g/cm3、更に好ましくは0.915〜0.925g/cm3である。この範囲の密度を有するLDPEを用いることで、透湿性が充分に高く、縦裂強度やCD破断強度等の強度が高く、柔軟性が高く、ホットメルト塗工に対する耐熱性が高く、外観上シートの延伸ムラも少ない透湿シートが得られることとなる。詳細には密度が0.910g/cm3未満では透湿性が低くなり、耐熱性も低い透湿シートとなってしまう。0.930g/cm3超では柔軟性が低く、外観上シートの延伸ムラが多く、見栄えの悪い透湿シートとなってしまう。
【0015】
LDPEとしては市販のものを用いることもできる。そのようなLDPEとしては例えば宇部興産(株)製のJ1019及び日本ポリオレフィン(株)製のJH606Nなどが挙げられる。
【0016】
本発明においては、LLDPEとLDPEとの配合比率も重要である。具体的には、ポリオレフィン系樹脂におけるLLDPEの配合量は80〜99重量%、好ましくは85〜99重量%、更に好ましくは85〜95重量%である。一方、ポリオレフィン系樹脂におけるLDPEの配合量は1〜20重量%、好ましくは1〜15重量%、更に好ましくは5〜15重量%である。各樹脂の配合量がこのような範囲内であることによって、シートの成形性が良好で、幅方向及び流れ方向の厚みムラが少なく、外観上見栄えの良好なシートが得られる。また、透湿性と強度、柔軟性のバランスが優れた透湿シートとなる。
【0017】
ポリオレフィン系樹脂と共に用いられる無機充填剤は、本発明の透湿シートを多孔質にして透湿性を付与するために用いられるものである。無機充填剤としては例えば、炭酸カルシウム、石膏、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、燐酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、カーボンブラック、アルミニウム粉、鉄粉などの粉粒体が挙げられる。これらは一種又は二種以上を併用できる。得られる透湿シートの強度確保や製造時のシート破れの防止の点から、これらの無機充填剤はその平均粒径が0.3〜8μmで最大粒径が20μm以下であることが好ましく、平均粒径が0.5〜5μmで最大粒径が15μm以下であることが更に好ましい。
【0018】
前述した各種無機充填剤のうち、炭酸カルシウムや硫酸バリウムを用いることが好ましく、特に炭酸カルシウムを用いることが好ましい。炭酸カルシウムを用いる場合、その比表面積が16000〜24000cm2/g、特に18000〜22000cm2/gであるものを用いることが、透湿性が高く耐水性も高いシート、即ち、緻密な孔が多数開いていて液がにじみにくく、且つ十分な強度のシートが得られること点から好ましい。
【0019】
無機充填剤はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して100〜300重量部、好ましくは100〜200重量部、更に好ましくは120〜200重量部用いられる。無機充填剤の量が100重量部未満であると得られるシートの透湿性が不十分となってしまい、300重量部超であるとシートの耐水性が低下し、液がにじみやすくなり、更には、強度が低下し、また、成形性も悪くなってしまう。
【0020】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂組成物においては、前述したポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤に加えて、しなやかな風合い、鳴りの減少、滑り性を与え、延伸性を向上させるために、第三成分を添加することができる。前記第三成分としては、通常ゴムやプラスチックに混合される可塑剤や滑剤を使用することができ、例えば、脂肪酸と脂肪族アルコールからなるモノエステル、芳香族カルボン酸と脂肪族アルコールとからなるモノエステル又はポリエステル、脂肪族ポリカルボン酸とポリアルコールとからなるポリエステル、モノカルボン酸及び/又はポリカルボン酸とモノアルコール及び/又はポリアルコールとからなるポリエステル、アルコール及び/又はカルボン酸の一部を残したエステル又はポリエステル、脂肪族アミド、芳香族アミド、脂肪酸の金属石鹸、芳香族カルボン酸の金属石鹸、ブタジエンオリゴマー、ブテンオリゴマー、イソブチレンオリゴマー、イソプレンオリゴマー、石油樹脂、クマロン樹脂、ケトン樹脂、塩素化パラフィン、ヒマシ油、シリコーン油、流動パラフィン、ポリエチレンワックス等が挙げられる。その中でも特に、第三成分として特定のポリエステルを配合することが好ましい。このポリエステルは、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステルである。このポリエステルを配合することで、得られる透湿シートはしなやかな風合いで、鳴りが少なく、滑り性が良好となる。また、延伸性が良好となるため、均一にムラなく白化し、外観上見栄えの良いものとなる。このポリエステルを構成する各成分の組み合わせは、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤との親和性のバランスから、ポリエステル一定重量中のエステル基数及び炭化水素鎖の分岐度を考慮して選択される。
【0021】
前記ポリエステルにおける一塩基酸としては、炭素数14〜22の長鎖炭化水素のモノカルボン酸等が用いられる。多塩基酸としてはジカルボン酸、トリカルボン酸、テトラカルボン酸等が用いられる。一価アルコールとしては炭素数12〜22の長鎖炭化水素のモノアルコール等が用いられる。多価アルコールとしてはジオール類、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、シュークローズ等が用いられる。一塩基酸の炭素数が12以下、又は一価アルコールの炭素数が10以下の場合、ポリオレフィン系樹脂及び無機充填剤への親和性のバランスがずれ、フィルム成形時にポリエステルが部分的に集中して延伸時にむらが生じたり、タテ裂け強度が低下することがある。
【0022】
前記ポリエステルは、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られるポリエステルであり、末端がカルボン酸の場合、その大部分がステアリルアルコール、オレイルアルコール、ゲルベアルコール等の長鎖炭化水素のモノアルコールでエステル化されていることが好ましい。末端がアルコールの場合、その大部分がステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等の長鎖炭化水素のモノカルボン酸でエステル化された末端封鎖ポリエステルであることが好ましい。しかし、これらの場合でも全ての末端が封鎖されている必要はない。エステル構成成分として分岐の酸又はアルコールを含んだエステルは更に好ましい。
【0023】
好ましい具体的なポリエステルの例は、ジエチレングリコールとダイマー酸とのポリエステルの両末端のカルボン酸又はアルコールをステアリルアルコール又はステアリン酸で部分的に又は全部を封鎖したポリエステル、1,3−ブタンジオールとアジピン酸とのポリエステルの両末端をヒドロキシステアリン酸で封鎖したポリエステル、トリメチロールプロパン−アジピン酸−ステアリン酸からなるヘキサエステル、ペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸からなるオクタエステル、ジペンタエリスリトール−アジピン酸−ステアリン酸からなるドデカエステル、前記ポリエステルの構成成分であるアジピン酸の代わりにダイマー酸又は水添ダイマー酸を用いたポリエステル、及びステアリン酸の代わりにイソステアリン酸を用いたポリエステル等である。
【0024】
前記ポリエステルは、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1〜30重量部、特に5〜20重量部配合されることが、しなやかな風合い、鳴りの減少、滑り性、延伸性の向上の点から好ましい。
【0025】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂組成物中での分散性を良くすることを目的として、ステアリン酸を配合することもできる。ステアリン酸は、無機充填剤100重量部に対して0.5〜3重量部、特に0.8〜2重量部配合されることが好ましい。
【0026】
本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂組成物には、前述した各成分に加えて、本発明の効果を妨げない範囲で可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などを配合してもよい。
【0027】
本発明の透湿シートは、前述したポリオレフィン系樹脂組成物を原料とし、これを溶融成膜したのち少なくとも一軸延伸して得られる。本発明の透湿シートは、前述したポリオレフィン系樹脂組成物を原料としていることから、その全光線透過率が50%以上という高い値となる。このような高い全光線透過率を示すにもかかわらず、本発明の透湿シートはその透湿度が3600〜8400g/(m2・24h)という高い値となり、好ましくは4000〜8400g/(m2・24h)、更に好ましくは5000〜8400g/(m2・24h)となる。このように本発明の透湿シートは、従来同時に達成し得なかった高全光線透過率及び高透湿度を有するものである。本発明において全光線透過率は、JIS K 7105に準じ、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズ・透過・反射率計HR−100を用いて測定される。透湿度はJIS Z 0208に準じ、温度30℃±0.5℃、湿度90±2%RHの環境下で測定される。
【0028】
本発明の透湿シートはその坪量が10〜50g/m2である。後述するように、その一面に不織布などの繊維シートと貼り合わせた複合シートの形態においては、透湿シートの坪量は、好ましくは10〜35g/m2であり、更に好ましくは15〜30g/m2である。坪量が10g/m2未満ではシートの強度が低下し、搬送性が問題となったり、また、穴あきによる耐水性の低下が問題となってしまう。50g/m2超では柔軟性が低下したり、透湿性が低下したシートとなってしまう。
【0029】
本発明の透湿シートは、例えば衛生材料、医療用材料、衣料用材料などとして用いられる。また、本発明の透湿シートは、その一面に不織布などの繊維シートと貼り合わせた複合シートの形態で前記の材料として用いることもできる。特に、本発明の透湿シートは、前述の通り高透湿度を有しているので、これをそのまま、或いは繊維シートと貼り合わせた複合シートとして、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品の構成材料として用いると、着装内の湿度上昇を防止することができ、着用者の肌にかぶれが発生することを効果的に防止することができる。これらの吸収性物品は一般に液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シートおよび両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備えており、本発明の透湿シート又はこれを繊維シートと貼り合わせてなる複合シートは、前記裏面シートとして用いられる。
【0030】
本発明の透湿シートは例えば次の方法によって好適に製造される。前記ポリオレフィン系樹脂組成物を構成する各成分を、ヘンシェルミキサやスーパーミキサを用いて予備混合した後、一軸又は二軸押出機で混練してペレット化する。次に、得られたペレットを用い成形機によって成膜しフィルムを得る。成形機としてはTダイ型及びインフレーション型のものを用いることができる。特に、Tダイ型の成形機を用いると、高全光線透過率及び高透湿度の透湿シートを容易に成膜できることが本発明者らの検討によって判明した。得られたフィルムを一軸又は二軸延伸して、樹脂と無機充填剤との界面剥離を生じさせ多孔質化する。延伸にはロール法やテンター法が用いられる。このようにして本発明の透湿シートが得られる。望ましい全光線透過率及び透湿度を得るためには、延伸条件として、一軸方向に少なくとも1.2倍、特に1.5〜4倍、とりわけ1.5〜3.5倍延伸することが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下の例中、特に断らない限り「部」は「重量部」を意味する。
【0032】
〔実施例1〜6及び比較例1〜3〕
(1)ポリオレフィン系樹脂組成物の調製
以下の表1に示す材料を表2に示す組成で配合し、100リットルのヘンシェルミキサで予備混合し、次いで二軸押出機で溶融混練してペレット化した樹脂組成物を得た。二軸押出機は池貝製のPCM−45−33.5であり、スクリュー径は45mmであった。設定温度は160℃とし、スクリュー回転数は150rpm、押出量は25kg/hとした。
(2)透湿シートの成形
径50mmの単軸押出機(L/D=28)と、幅500mmのTダイス(ダイリップクリアランス1.5mm)とからなるTダイフィルム成形装置を用い、前記で得られたポリオレフィン系樹脂組成物を成形し、厚み35μm、幅400mmのフィルムを得た。Tダイスの設定温度は200℃とし、成形速度は10m/minとした。得られたフィルムを、ロール一軸延伸機を用いて縦方向に延伸し、透湿シートを得た。延伸倍率は表2に示す通りとした。予熱温度は80℃とし、延伸温度は50℃、アニール温度は80℃とした。またアニールでの戻し率は13%とした。但し、比較例2及び3については、フィルムの成形を以下の装置及び条件を用いて行った。
径50mmの単軸押出機(L/D=28)と、径100mmのサーキュラーダイス(ダイリップクリアランス1.0mm)とからなるインフレーションフィルム成形装置を用い、前記で得られたポリオレフィン系樹脂組成物を成形し、厚み35μm、折り幅390mmのフィルムを得た。サーキュラーダイスの設定温度は160℃とし、ブロー比は2.5、成形速度は8m/minとした。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
〔性能評価〕
実施例及び比較例で得られた透湿シートについて、前述の方法で透湿度及び全光線透過率を測定した。更に、以下の方法で坪量、引裂強度及び破断強度を測定した。これらの結果を以下の表3に示す。
【0036】
〔坪量〕
透湿シートを10cm×10cmの大きさに切り取りその重量を測定し、1m2の面積に換算した。
【0037】
〔引裂強度〕
JIS K 7128−2エルメンドルフ引裂法に準じて機械方向(MD)の引裂強度を測定した。
【0038】
〔破断強度〕
JIS K 7127に準じて、機械方向(MD)及び幅方向(CD)の破断強度を測定した。
【0039】
【表3】
【0040】
表3に示す結果から明らかなように、実施例の透湿シート(本発明品)は、十分な引裂強度及び破断強度を保ちつつ、透湿度が4460g/(m2・24h)以上と極めて高く、しかも全光線透過率も51%以上と極めて高くなっていることが判る。これに対して比較例の透湿シートでは、透湿度を高くしようとすると全光線透過率が低くなり、逆に全光線透過率を高くしようとすると透湿度が低くなってしまうことが判る。
【0041】
【発明の効果】
以上、詳述した通り、本発明の透湿シートは、高い透湿度を維持しつつ高い透明性を有する。従って、本発明の透湿シートは、特に吸収性物品の裏面シートとして好適に使用される。
Claims (6)
- ポリオレフイン系樹脂100重量部に対して無機充填剤100〜300重量部を含むポリオレフイン系樹脂組成物からなり、少なくとも一軸延伸されており、全光線透過率が50%以上であり、透湿度が3600〜8400g/(m2・24h)であり、坪量が10〜50g/m2である透湿シートであって、前記ポリオレフイン系樹脂は、メルトフローレート1〜5g/10minで、密度0.920〜0.935g/cm3である線状低密度ポリエチレン80〜99重量%およびメルトフローレート6〜15g/10minで、密度0.910〜0.930g/cm3である分岐状低密度ポリエチレン1〜20重量%を含む透湿シート。
- 前記線状低密度ポリエチレンがメタロセン触媒を用いて製造されたものである請求項1記載の透湿シート。
- 前記ポリオレフイン系樹脂組成物が、前記ポリオレフイン系樹脂100重量部に対して、多塩基酸と、多価アルコールと、炭素数14〜22の一塩基酸及び/又は炭素数12〜22の一価アルコールとのポリエステル1〜30重量部を更に含む請求項1又は2記載の透湿シート。
- 前記無機充填剤が、比表面積16000〜24000cm2/gである炭酸カルシウムからなる請求項1〜3の何れかに記載の透湿シート。
- 請求項1記載の透湿シートの一面に繊維シートを貼り合わせてなる複合シート。
- 液透過性の表面シート、液不透過性の裏面シートおよび両シート間に介在配置された液保持性の吸収体を備えた吸収性物品において、前記裏面シートとして請求項1記載の透湿シート又は請求項5記載の複合シートを用いた吸収性物品。
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