JP2004095958A - 深紫外線センサー - Google Patents
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Abstract
【課題】従来技術では素子単体で225nm以下の波長の紫外線にのみ感度を持つセンサーは大型のものか、ダイヤモンドに高電圧を印加して動作するものしかなかった。
【構成】リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpn接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサー。これは200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が100以上である。リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpin接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサー。これは200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が1000以上である。
【選択図】 図1
【構成】リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpn接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサー。これは200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が100以上である。リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpin接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサー。これは200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が1000以上である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡便な固体素子である半導体pn接合ダイオード又はpin接合ダイオードにより可視光や225nmより長波長の紫外線を感受せず、短波長紫外線のみを検知するセンサーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドの合成は高温高圧法や、気相法により可能であり、高温高圧法では粒子や基板材料として用いるバルク状の単結晶ダイヤモンドが、気相法では薄膜状のダイヤモンドが形成可能である(非特許文献1、2)。
【0003】
また、半導体ダイヤモンドの合成に関しては、高温高圧法ではホウ素ドープのp型層半導体ダイヤモンドが作製可能であり、気相法ではホウ素ドープのp型半導体ダイヤモンド薄膜(特許文献1)及びリンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜(非特許文献3、特許文献2)の作製が可能である。
【0004】
気相法においては、アンドープの絶縁性ダイヤモンド薄膜、ホウ素ドープのp型半導体ダイヤモンド薄膜及びリンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜の作製において、高い結晶完全性を得ることが可能で、低温及び高温においてカソードルミネッセンス及びフォトルミネッセンスにより励起子再結合発光が観測される薄膜の作製が可能となっている(非特許文献4)。
【0005】
リンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜の成長は{111}結晶面のみで可能であり、気相成長ダイヤモンドの一方の安定自形面である{100}結晶面では成長しないか又はリンのドーピングがきわめて低効率であり、電気伝導を示す薄膜はきわめて得られにくい(非特許文献5)。
【0006】
ホウ素ドープのp型半導体ダイヤモンド薄膜に対するオーミック電極形成はチタン(Ti)薄膜の真空蒸着により可能である。400℃程度の熱処理により良好なオーミック特性が見られる。通常、チタン薄膜形成後に保護膜として金蒸着膜を形成する(非特許文献6)。
【0007】
リンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜に対するオーミック電極形成はイオン照射により可能である。ガリウム(Ga)イオンビーム30keVを用い、ダイヤモンド表面が黒鉛状炭素的電子構造となる程度に欠陥を導入することで比較的良好なオーム性伝導が得られる。イオン種はGaに限られず、アルゴン(Ar)、炭素(C)、リン(P)などでも可能である(非特許文献7、特許文献3)。
【0008】
一方、ダイヤモンドのpn接合については、多結晶リンドープダイヤモンド薄膜と多結晶ホウ素ドープダイヤモンド薄膜の積層膜(特許文献4)、及び、単結晶窒素ドープダイヤモンドとその表面にエピタキシャルに形成されたホウ素ドープp型半導体ダイヤモンド薄膜(非特許文献8)、高品質アンドープダイヤモンド薄膜に不純物をイオン注入して得られるn型層と気相成長ホウ素ドープp型層からなるダイヤモンドpn接合(特許文献5)、イオウドープしたn型ダイヤモンド層をホウ素ドープp型ダイヤモンド層上に成長させて形成されるpn接合(特許文献6)、ホウ素ドープp型ダイヤモンド層上にリンドープn型ダイヤモンド層を成長させて形成されるpn接合(特許文献7)が報告されている。
【0009】
ダイヤモンドのpin接合に付いては、ホウ素ドープp型ダイヤモンド層上にアンドープダイヤモンド層(i層)及びリンドープn型ダイヤモンド層を成長させて形成されるpin接合(特許文献6、非特許文献8)が報告されている。
【0010】
ダイヤモンドを使用した紫外線センサーとしては、絶縁性のダイヤモンド薄膜の光励起電流を利用したものが報告されている(特許文献8)。これによると、気相成長により作製したアンドープダイヤモンド薄膜表面に1対以上の電極を形成し、そこに電圧を印加して225nm以下の短波長紫外線により励起された電子及びホールによる電流を電極で捕獲して紫外線センサーとなす。光電流の検出のために上記電極には大きな電圧が印加される。
【0011】
【特許文献1】
特開昭59−137396号公報
【特許文献2】
特開平10−81587号公報
【特許文献3】
特開2001−77048号公報
【特許文献4】
特開平05−326543号公報
【特許文献5】
特許第3138705号公報
【特許文献6】
特開2001−7385号公報
【特許文献7】
特開2002−231996号公報
【特許文献8】
特開平11−248531号公報
【0012】
【非特許文献1】
小泉 聡、犬塚直夫:新機能性薄膜(日本材料科学会編),p180 (1999) 裳華房
【非特許文献2】
S.Matsumoto,et al.,Jpn.J.Appl.Phys.,21 L183 (1982)
【非特許文献3】
S.Koizumi,et al.,Appl.Phys.Lett,71,1065 (1997)
【非特許文献4】
H.Sternschulte,et al.,Proc.Mat.Res.Soc.,423,693 (1996)
【非特許文献5】
S.Koizumi,et al., presented at Diamond 2000 international conference, 2−7September 2000, Porto.
【非特許文献6】
S.Yamanaka: Doctoral thesis, Faculty of Material Science, University ofTsukuba, Tsukuba, 1999
【非特許文献7】
T.Teraji,et al.,Appl.Phys.Lett,76,1303 (2000)
【非特許文献8】
A.Aleksov et al.,Proc.ADC/PCT’99, Edited by M.Yoshikawa, et al.,p.138,Tsukuba,(1999)
【非特許文献9】
S.Koizumi,et al.,Science 292 (5523) (2001) 1899−1901
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ダイヤモンドの電子デバイス応用は長年にわたり切望されてきたものである。しかしながら、n型半導体の合成ができなかったこと、成長や加工の技術が未熟だったことなどにより限られた応用しかできなかった。
従来技術では素子単体で225nm以下の波長の紫外線にのみ感度を持つセンサーは大型のものか、ダイヤモンドに高電圧を印加して動作するものしかなかった。
【0014】
本発明は、これまで実現されていなかったダイヤモンドのpn接合又はpin接合ダイオードを独自に開発したn型半導体合成技術を利用して作製し、小型で高感度の紫外線センサーを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らによるリンドープn型ダイヤモンド及びそれを用いたpn接合の形成の研究で得られた成果はダイヤモンドデバイス応用の研究を大きく進めた。
本発明は、我々が開発したn型半導体ダイヤモンド合成技術(前記特許文献2、非特許文献3参照)をもって作製したpn接合又はpin接合による紫外線発光素子(前記特許文献7参照)の合成技術を持って初めてなし得たものである。
【0016】
すなわち、本発明は、(1)リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpn接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサーである。
また、本発明は、(2)200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が100以上であることを特徴とする上記(1)の深紫外線センサーである。
また、本発明は、(3)リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpin接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサーである。
また、本発明は、200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が1000以上であることを特徴とする上記(3)の深紫外線センサーである。
【0017】
ダイヤモンドは室温で5.47eVの広いバンドギャップを持ち、気相成長法(CVD法)においてホウ素を添加して合成されたダイヤモンド薄膜はp型半導体に、リンを添加して合成されたダイヤモンド薄膜はn型半導体に電気伝導型の制御が可能である。ホウ素はダイヤモンド中において価電子帯頂上より0.37eVの禁止帯中にアクセプター準位を形成する。一方、リンはダイヤモンド中において伝導帯底より0.6eVの禁止帯中にドナー準位を形成する。p型層のホウ素濃度は1×1016cm−3以上5×1021cm−3以下の濃度で室温移動度が50cm2/V−sec以上で、n型層のリン濃度が1×1016cm−3以上1×1020cm−3以下の濃度で室温移動度が10cm2/V−sec以上を示す。
【0018】
pn接合はp型半導体とn型半導体が接合した構造であり、その接合界面にはp型半導体とn型半導体の電気的な性質の違いによる電界(電位差)が定常的に形成されている。これは拡散電位(Built−in potential又はDiffusion potential)と呼ばれる。
【0019】
ダイヤモンドのバンドギャップは5.5eV程度と大きく、pn接合の拡散電位は4.5〜5V程度と大きい。外部から照射された光は、そのエネルギーが5.5eVに満たないとき(225nm以上の波長をもつ紫外線及び、可視光、赤外光)はほとんどダイヤモンドを透過する。このときダイヤモンドの内部では電子や正孔など電気伝導を司るキャリアは生成されない。
【0020】
一方、バンドギャップ以上のエネルギーをもつ光(225nm以下の深紫外線)が照射された場合、ダイヤモンドはそれを吸収する。吸収の過程で電子及び正孔が電気伝導を司るキャリアとして励起される。励起されたキャリアは拡散し、pn接合の拡散電位による電界に捕獲され電極に達する。これがpn接合で光検出する基礎過程である。
【0021】
pin接合はより高感度に225nm以下の波長の深紫外線を検出する目的で、活性層としてi層をpn接合の中間に形成したものである。i層は不純物を含まず、結晶欠陥も少ない。従って、紫外線により発生したキャリアが不純物や欠陥で捕獲、消滅することが少なく、結果的に多数のキャリアが電極まで到達し、高感度が得られる。pn接合、pin接合いずれの場合も、通常、電極に到達したキャリアは電流として検知され、光強度として変換されセンサーの表示に現れる。
【0022】
これまでのアンドープダイヤモンド薄膜を用いた紫外線センサーと異なる点は、外部から素子に大きな電圧を印加することを必要としない点である。また、原理的には電源を必要とせずに紫外線検知が可能な点である。さらに、pn接合は薄膜成長及び加工技術で微細構造とすることができるため、また、pn接合は上記のように電流検知型であるため小型化が容易であることが優れている。
【0023】
一般的な光センサー(フォトダイオード)も同様の構造設計概念に基づき作られているが、本発明ではこれを広いバンドギャップを持つダイヤモンドによって行い、5.5eV以上の高エネルギーの紫外線にのみ感度を持つセンサーを得ている点に新規性がある。
【0024】
本発明によれば、ダイヤモンドのpn接合において、バンドギャップに相当する225nm程度以下の紫外線が照射された時にのみ光起電力を生ずるため、受動的に高感度な紫外線検出が行われる点が優れている。また、pn接合の小型化は容易であり、利用分野の制約は極めて小さい。
【0025】
このようなセンサーは、宇宙空間に代表される極限環境下での紫外線検知、特定用途の紫外線機器付近での警報装置に用いる検知素子など保安目的用途、太陽観測など紫外線イメージセンサーとして利用される。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明者らの先の発明の「ダイヤモンド紫外光発光素子」(前記特許文献7参照)に用いた技術と同様にn型半導体合成技術をもとにプラズマを用いた化学気相成長(CVD)法により、ホウ素を含むp型半導体ダイヤモンド層とリンを含むn型半導体ダイヤモンド層からなるダイヤモンドのpn接合ダイオードおよびpin接合ダイオードを作製する。
【0027】
n型層、p型層のリン、ホウ素濃度を1×1016cm−3〜5×1021cm−3の範囲としリン濃度を1×1016cm−3〜1×1020cm−3の範囲とし、p型層の膜厚を100nm〜10ミクロンとし、n型層の膜厚を100nm〜2ミクロンとし、pn接合ダイヤモンド深紫外線センサーが得られる。さらにこのようなpn接合のp型、n型接合界面に紫外線吸収層である真性(アンドープ)ダイヤモンド層(i層)を100nm〜10ミクロンの膜厚で形成することで高感度のpin接合ダイヤモンド深紫外線センサーが得られる。
【0028】
そして、p型層が電気伝導性を持つダイヤモンド単結晶{111}表面に形成されていることを特徴とするダイヤモンド深紫外線センサーが提供されるが、電気伝導性を持つダイヤモンド単結晶を基板に用いることで比較的結晶完全性に優れたダイヤモンド薄膜が得られ、かつ、積層方向の電流を検出し動作するため、抵抗損失の少ない紫外線励起電流検出が可能であり、構造も簡単である。
【0029】
この場合、例えば、p型層に対するオーム性電極が電気伝導性を持つダイヤモンド基板の裏面(p型層が形成されていない面)に形成され、p型層に対して電気伝導性を持つダイヤモンド基板を通して電流検出がなされ、n型層表面にp型層及びダイヤモンド基板に接することなく形成されたオーム性電極を通して電流検出することで動作することを特徴とする請求項1に記載の本発明のpn接合深紫外線センサーが実現される。
【0030】
p型層が絶縁性のダイヤモンド単結晶{111}表面に形成されていることを特徴とする深紫外線センサーとすることもできる。
絶縁性ダイヤモンド基板を用いることで、より完全性の高いホウ素ドープ、リンドープ及びアンドープのダイヤモンド薄膜が形成可能となり、ダイオードとして整流比に優れたものとなる。また、結晶欠陥に伴う低エネルギーの紫外線、可視光に対する電流応答が低減され、深紫外線検出感度が高く観測されるようになる。
【0031】
この場合、例えば、p型層に対するオーム性電極がn型層に接することなく形成され、n型層表面にp型層に接することなく形成されたオーム性電極を通して電流検出することで動作することを特徴とするpn接合又はpin接合ダイヤモンド深紫外線センサーが実現できる。
【0032】
ホウ素ドープp型半導体ダイヤモンド薄膜とリンドープn型半導体薄膜でpn接合を形成した場合、拡散電位は4.5〜5ボルトである。これにより整流性を示すダイオードとして動作する。また、アンドープ層をp型、n型半導体層の間に挾んだpin構造においても拡散電位は4.5〜5ボルト程度で整流性を示すダイオードとして動作する。
【0033】
上記のpn接合及びpin接合ダイオードの室温における順方向動作時において、発光が観測され、得られる発光は自由励起子の再結合発光(235nm、5.27eV)となる。これは、室温における結晶完全性の高いアンドープ、ホウ素ドープ及びリンドープ層からのカソードルミネッセンス及びフォトルミネッセンス分光測定結果に一致する。また、結晶性が若干劣る場合、ホウ素ドープダイヤモンド薄膜及びリンドープダイヤモンド薄膜の特徴的な260nmから280nm(及び4.5eVから4.6eV)にピークを持つブロードな紫外発光バンドも観測される。
【0034】
このpn接合及びpin接合ダイオードはダイヤモンドのバンドギャップである5.5eV以上の光に対して電気的応答を示し紫外線センサーとして機能する。pn接合を用いた深紫外線センサーにおいては200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が100以上を示す。また、pin接合を用いた深紫外線センサーにおいては200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が1000以上を示す。
【0035】
【実施例】
(実施例1)
ダイヤモンド薄膜の合成は表1に示す条件で行った。
【0036】
【表1】
【0037】
ダイヤモンドpn接合及びpin接合を用いた深紫外線センサーの作製方法
1. ダイヤモンドpn接合の場合
図1に、実施例1の素子の構造を模式的に示す。基板1はホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンドで高い電気伝導度を持つ。p型層2は膜厚2ミクロンである。n型層3は膜厚1ミクロンである。n型層3はBドープ層2の表面のみに形成され、基板1に直接接しない。基板1の裏面にはオーミック電極4が形成され、pn接合のp型層2の側の電極として機能する。n型層3の表面にはオーミック電極5が形成される。
【0038】
基板上にプラズマを用いた化学気相成長法(CVD法)によりホウ素を含む単結晶ダイヤモンド{111}下地表面にホウ素(B)を添加したダイヤモンド層からなるp型層2を作製し、さらに、その表面にリン(P)を添加したダイヤモンド層からなるn型層3を形成した。それぞれの層に含まれるB及びPの濃度は2×1017cm−3及び5×1018cm−3であった。それぞれp型及びn型の電気伝導がホール効果により検証されており、室温におけるキャリア濃度はBドープp型層が1×1014cm−3、Pドープn型層が1×1012cm−3であった。正孔及び電子移動度はそれぞれ150cm2/V−sec及び50cm2/V−secであった。
【0039】
形成された素子は図2に示すような良好な整流性を示した。図3に、この素子から得られた光レスポンスのスペクトル(分光感度特性)を示す。ダイヤモンドのバンドギャップに対応する225nm以下の波長に強く反応し、200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)は100以上であり、深紫外線センサーとして機能することが分かる。
【0040】
(実施例2)
2. ダイヤモンドpin接合の場合
図4に、実施例2の素子の構造を模式的に示す。基板1はホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンドで高い電気伝導度を持つ。p型層2は膜厚2ミクロンである。n型層3は膜厚500nmである。i層6は膜厚100nmである。n型層3はBドープ層2表面のみに形成され基板1に直接接しない。基板1裏面にはオーミック電極4が形成され、pn接合のp型層2側電極として機能する。n型層3表面にはオーミック電極5が形成される。
【0041】
pn接合の場合と同様に、ホウ素(B)を添加したエピタキシャルダイヤモンド層(p型層)を作製し、その表面に不純物を添加しないアンドープ層(i層)を形成し、さらに、その表面にリン(P)を添加したダイヤモンド層(n型層)を形成した。p型層に含まれるB濃度は2×1017cm−3、n型層に含まれるP濃度は1×1019cm−3であった。それぞれp型及びn型の電気伝導がホール効果により検証されており、室温におけるキャリア濃度はBドープp型層が2×1014cm−3、Pドープn型層が5×1012cm−3であった。正孔及び電子移動度はそれぞれ100cm2/V−sec及び20cm2/V−secであった。
【0042】
形成された素子は図5に示すような整流性を示しpin接合ダイオードとしての機能が確認された。図6に、この素子から得られた光レスポンスのスペクトル(分光感度特性)を示す。ダイヤモンドのバンドギャップに対応する225nm以下の波長に強く反応し、200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)は1000以上であり、深紫外線センサーとして良好に機能することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイヤモンドpn接合紫外線センサーの概念図である。
【図2】ダイヤモンドpn接合素子の整流特性を示すグラフである。
【図3】ダイヤモンドpn接合紫外線センサーの分光感度特性を示すグラフである。
【図4】ダイヤモンドpin接合紫外線センサーの概念図である。
【図5】ダイヤモンドpin接合素子の整流特性を示すグラフである。
【図6】ダイヤモンドpin接合紫外線センサーの分光感度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1.基板
2.p型層
3.n型層
4.p型層オーミック電極
5.n型層オーミック電極
6.i層
【発明の属する技術分野】
本発明は、簡便な固体素子である半導体pn接合ダイオード又はpin接合ダイオードにより可視光や225nmより長波長の紫外線を感受せず、短波長紫外線のみを検知するセンサーに関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイヤモンドの合成は高温高圧法や、気相法により可能であり、高温高圧法では粒子や基板材料として用いるバルク状の単結晶ダイヤモンドが、気相法では薄膜状のダイヤモンドが形成可能である(非特許文献1、2)。
【0003】
また、半導体ダイヤモンドの合成に関しては、高温高圧法ではホウ素ドープのp型層半導体ダイヤモンドが作製可能であり、気相法ではホウ素ドープのp型半導体ダイヤモンド薄膜(特許文献1)及びリンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜(非特許文献3、特許文献2)の作製が可能である。
【0004】
気相法においては、アンドープの絶縁性ダイヤモンド薄膜、ホウ素ドープのp型半導体ダイヤモンド薄膜及びリンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜の作製において、高い結晶完全性を得ることが可能で、低温及び高温においてカソードルミネッセンス及びフォトルミネッセンスにより励起子再結合発光が観測される薄膜の作製が可能となっている(非特許文献4)。
【0005】
リンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜の成長は{111}結晶面のみで可能であり、気相成長ダイヤモンドの一方の安定自形面である{100}結晶面では成長しないか又はリンのドーピングがきわめて低効率であり、電気伝導を示す薄膜はきわめて得られにくい(非特許文献5)。
【0006】
ホウ素ドープのp型半導体ダイヤモンド薄膜に対するオーミック電極形成はチタン(Ti)薄膜の真空蒸着により可能である。400℃程度の熱処理により良好なオーミック特性が見られる。通常、チタン薄膜形成後に保護膜として金蒸着膜を形成する(非特許文献6)。
【0007】
リンドープのn型半導体ダイヤモンド薄膜に対するオーミック電極形成はイオン照射により可能である。ガリウム(Ga)イオンビーム30keVを用い、ダイヤモンド表面が黒鉛状炭素的電子構造となる程度に欠陥を導入することで比較的良好なオーム性伝導が得られる。イオン種はGaに限られず、アルゴン(Ar)、炭素(C)、リン(P)などでも可能である(非特許文献7、特許文献3)。
【0008】
一方、ダイヤモンドのpn接合については、多結晶リンドープダイヤモンド薄膜と多結晶ホウ素ドープダイヤモンド薄膜の積層膜(特許文献4)、及び、単結晶窒素ドープダイヤモンドとその表面にエピタキシャルに形成されたホウ素ドープp型半導体ダイヤモンド薄膜(非特許文献8)、高品質アンドープダイヤモンド薄膜に不純物をイオン注入して得られるn型層と気相成長ホウ素ドープp型層からなるダイヤモンドpn接合(特許文献5)、イオウドープしたn型ダイヤモンド層をホウ素ドープp型ダイヤモンド層上に成長させて形成されるpn接合(特許文献6)、ホウ素ドープp型ダイヤモンド層上にリンドープn型ダイヤモンド層を成長させて形成されるpn接合(特許文献7)が報告されている。
【0009】
ダイヤモンドのpin接合に付いては、ホウ素ドープp型ダイヤモンド層上にアンドープダイヤモンド層(i層)及びリンドープn型ダイヤモンド層を成長させて形成されるpin接合(特許文献6、非特許文献8)が報告されている。
【0010】
ダイヤモンドを使用した紫外線センサーとしては、絶縁性のダイヤモンド薄膜の光励起電流を利用したものが報告されている(特許文献8)。これによると、気相成長により作製したアンドープダイヤモンド薄膜表面に1対以上の電極を形成し、そこに電圧を印加して225nm以下の短波長紫外線により励起された電子及びホールによる電流を電極で捕獲して紫外線センサーとなす。光電流の検出のために上記電極には大きな電圧が印加される。
【0011】
【特許文献1】
特開昭59−137396号公報
【特許文献2】
特開平10−81587号公報
【特許文献3】
特開2001−77048号公報
【特許文献4】
特開平05−326543号公報
【特許文献5】
特許第3138705号公報
【特許文献6】
特開2001−7385号公報
【特許文献7】
特開2002−231996号公報
【特許文献8】
特開平11−248531号公報
【0012】
【非特許文献1】
小泉 聡、犬塚直夫:新機能性薄膜(日本材料科学会編),p180 (1999) 裳華房
【非特許文献2】
S.Matsumoto,et al.,Jpn.J.Appl.Phys.,21 L183 (1982)
【非特許文献3】
S.Koizumi,et al.,Appl.Phys.Lett,71,1065 (1997)
【非特許文献4】
H.Sternschulte,et al.,Proc.Mat.Res.Soc.,423,693 (1996)
【非特許文献5】
S.Koizumi,et al., presented at Diamond 2000 international conference, 2−7September 2000, Porto.
【非特許文献6】
S.Yamanaka: Doctoral thesis, Faculty of Material Science, University ofTsukuba, Tsukuba, 1999
【非特許文献7】
T.Teraji,et al.,Appl.Phys.Lett,76,1303 (2000)
【非特許文献8】
A.Aleksov et al.,Proc.ADC/PCT’99, Edited by M.Yoshikawa, et al.,p.138,Tsukuba,(1999)
【非特許文献9】
S.Koizumi,et al.,Science 292 (5523) (2001) 1899−1901
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
ダイヤモンドの電子デバイス応用は長年にわたり切望されてきたものである。しかしながら、n型半導体の合成ができなかったこと、成長や加工の技術が未熟だったことなどにより限られた応用しかできなかった。
従来技術では素子単体で225nm以下の波長の紫外線にのみ感度を持つセンサーは大型のものか、ダイヤモンドに高電圧を印加して動作するものしかなかった。
【0014】
本発明は、これまで実現されていなかったダイヤモンドのpn接合又はpin接合ダイオードを独自に開発したn型半導体合成技術を利用して作製し、小型で高感度の紫外線センサーを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らによるリンドープn型ダイヤモンド及びそれを用いたpn接合の形成の研究で得られた成果はダイヤモンドデバイス応用の研究を大きく進めた。
本発明は、我々が開発したn型半導体ダイヤモンド合成技術(前記特許文献2、非特許文献3参照)をもって作製したpn接合又はpin接合による紫外線発光素子(前記特許文献7参照)の合成技術を持って初めてなし得たものである。
【0016】
すなわち、本発明は、(1)リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpn接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサーである。
また、本発明は、(2)200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が100以上であることを特徴とする上記(1)の深紫外線センサーである。
また、本発明は、(3)リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpin接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサーである。
また、本発明は、200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が1000以上であることを特徴とする上記(3)の深紫外線センサーである。
【0017】
ダイヤモンドは室温で5.47eVの広いバンドギャップを持ち、気相成長法(CVD法)においてホウ素を添加して合成されたダイヤモンド薄膜はp型半導体に、リンを添加して合成されたダイヤモンド薄膜はn型半導体に電気伝導型の制御が可能である。ホウ素はダイヤモンド中において価電子帯頂上より0.37eVの禁止帯中にアクセプター準位を形成する。一方、リンはダイヤモンド中において伝導帯底より0.6eVの禁止帯中にドナー準位を形成する。p型層のホウ素濃度は1×1016cm−3以上5×1021cm−3以下の濃度で室温移動度が50cm2/V−sec以上で、n型層のリン濃度が1×1016cm−3以上1×1020cm−3以下の濃度で室温移動度が10cm2/V−sec以上を示す。
【0018】
pn接合はp型半導体とn型半導体が接合した構造であり、その接合界面にはp型半導体とn型半導体の電気的な性質の違いによる電界(電位差)が定常的に形成されている。これは拡散電位(Built−in potential又はDiffusion potential)と呼ばれる。
【0019】
ダイヤモンドのバンドギャップは5.5eV程度と大きく、pn接合の拡散電位は4.5〜5V程度と大きい。外部から照射された光は、そのエネルギーが5.5eVに満たないとき(225nm以上の波長をもつ紫外線及び、可視光、赤外光)はほとんどダイヤモンドを透過する。このときダイヤモンドの内部では電子や正孔など電気伝導を司るキャリアは生成されない。
【0020】
一方、バンドギャップ以上のエネルギーをもつ光(225nm以下の深紫外線)が照射された場合、ダイヤモンドはそれを吸収する。吸収の過程で電子及び正孔が電気伝導を司るキャリアとして励起される。励起されたキャリアは拡散し、pn接合の拡散電位による電界に捕獲され電極に達する。これがpn接合で光検出する基礎過程である。
【0021】
pin接合はより高感度に225nm以下の波長の深紫外線を検出する目的で、活性層としてi層をpn接合の中間に形成したものである。i層は不純物を含まず、結晶欠陥も少ない。従って、紫外線により発生したキャリアが不純物や欠陥で捕獲、消滅することが少なく、結果的に多数のキャリアが電極まで到達し、高感度が得られる。pn接合、pin接合いずれの場合も、通常、電極に到達したキャリアは電流として検知され、光強度として変換されセンサーの表示に現れる。
【0022】
これまでのアンドープダイヤモンド薄膜を用いた紫外線センサーと異なる点は、外部から素子に大きな電圧を印加することを必要としない点である。また、原理的には電源を必要とせずに紫外線検知が可能な点である。さらに、pn接合は薄膜成長及び加工技術で微細構造とすることができるため、また、pn接合は上記のように電流検知型であるため小型化が容易であることが優れている。
【0023】
一般的な光センサー(フォトダイオード)も同様の構造設計概念に基づき作られているが、本発明ではこれを広いバンドギャップを持つダイヤモンドによって行い、5.5eV以上の高エネルギーの紫外線にのみ感度を持つセンサーを得ている点に新規性がある。
【0024】
本発明によれば、ダイヤモンドのpn接合において、バンドギャップに相当する225nm程度以下の紫外線が照射された時にのみ光起電力を生ずるため、受動的に高感度な紫外線検出が行われる点が優れている。また、pn接合の小型化は容易であり、利用分野の制約は極めて小さい。
【0025】
このようなセンサーは、宇宙空間に代表される極限環境下での紫外線検知、特定用途の紫外線機器付近での警報装置に用いる検知素子など保安目的用途、太陽観測など紫外線イメージセンサーとして利用される。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明者らの先の発明の「ダイヤモンド紫外光発光素子」(前記特許文献7参照)に用いた技術と同様にn型半導体合成技術をもとにプラズマを用いた化学気相成長(CVD)法により、ホウ素を含むp型半導体ダイヤモンド層とリンを含むn型半導体ダイヤモンド層からなるダイヤモンドのpn接合ダイオードおよびpin接合ダイオードを作製する。
【0027】
n型層、p型層のリン、ホウ素濃度を1×1016cm−3〜5×1021cm−3の範囲としリン濃度を1×1016cm−3〜1×1020cm−3の範囲とし、p型層の膜厚を100nm〜10ミクロンとし、n型層の膜厚を100nm〜2ミクロンとし、pn接合ダイヤモンド深紫外線センサーが得られる。さらにこのようなpn接合のp型、n型接合界面に紫外線吸収層である真性(アンドープ)ダイヤモンド層(i層)を100nm〜10ミクロンの膜厚で形成することで高感度のpin接合ダイヤモンド深紫外線センサーが得られる。
【0028】
そして、p型層が電気伝導性を持つダイヤモンド単結晶{111}表面に形成されていることを特徴とするダイヤモンド深紫外線センサーが提供されるが、電気伝導性を持つダイヤモンド単結晶を基板に用いることで比較的結晶完全性に優れたダイヤモンド薄膜が得られ、かつ、積層方向の電流を検出し動作するため、抵抗損失の少ない紫外線励起電流検出が可能であり、構造も簡単である。
【0029】
この場合、例えば、p型層に対するオーム性電極が電気伝導性を持つダイヤモンド基板の裏面(p型層が形成されていない面)に形成され、p型層に対して電気伝導性を持つダイヤモンド基板を通して電流検出がなされ、n型層表面にp型層及びダイヤモンド基板に接することなく形成されたオーム性電極を通して電流検出することで動作することを特徴とする請求項1に記載の本発明のpn接合深紫外線センサーが実現される。
【0030】
p型層が絶縁性のダイヤモンド単結晶{111}表面に形成されていることを特徴とする深紫外線センサーとすることもできる。
絶縁性ダイヤモンド基板を用いることで、より完全性の高いホウ素ドープ、リンドープ及びアンドープのダイヤモンド薄膜が形成可能となり、ダイオードとして整流比に優れたものとなる。また、結晶欠陥に伴う低エネルギーの紫外線、可視光に対する電流応答が低減され、深紫外線検出感度が高く観測されるようになる。
【0031】
この場合、例えば、p型層に対するオーム性電極がn型層に接することなく形成され、n型層表面にp型層に接することなく形成されたオーム性電極を通して電流検出することで動作することを特徴とするpn接合又はpin接合ダイヤモンド深紫外線センサーが実現できる。
【0032】
ホウ素ドープp型半導体ダイヤモンド薄膜とリンドープn型半導体薄膜でpn接合を形成した場合、拡散電位は4.5〜5ボルトである。これにより整流性を示すダイオードとして動作する。また、アンドープ層をp型、n型半導体層の間に挾んだpin構造においても拡散電位は4.5〜5ボルト程度で整流性を示すダイオードとして動作する。
【0033】
上記のpn接合及びpin接合ダイオードの室温における順方向動作時において、発光が観測され、得られる発光は自由励起子の再結合発光(235nm、5.27eV)となる。これは、室温における結晶完全性の高いアンドープ、ホウ素ドープ及びリンドープ層からのカソードルミネッセンス及びフォトルミネッセンス分光測定結果に一致する。また、結晶性が若干劣る場合、ホウ素ドープダイヤモンド薄膜及びリンドープダイヤモンド薄膜の特徴的な260nmから280nm(及び4.5eVから4.6eV)にピークを持つブロードな紫外発光バンドも観測される。
【0034】
このpn接合及びpin接合ダイオードはダイヤモンドのバンドギャップである5.5eV以上の光に対して電気的応答を示し紫外線センサーとして機能する。pn接合を用いた深紫外線センサーにおいては200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が100以上を示す。また、pin接合を用いた深紫外線センサーにおいては200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が1000以上を示す。
【0035】
【実施例】
(実施例1)
ダイヤモンド薄膜の合成は表1に示す条件で行った。
【0036】
【表1】
【0037】
ダイヤモンドpn接合及びpin接合を用いた深紫外線センサーの作製方法
1. ダイヤモンドpn接合の場合
図1に、実施例1の素子の構造を模式的に示す。基板1はホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンドで高い電気伝導度を持つ。p型層2は膜厚2ミクロンである。n型層3は膜厚1ミクロンである。n型層3はBドープ層2の表面のみに形成され、基板1に直接接しない。基板1の裏面にはオーミック電極4が形成され、pn接合のp型層2の側の電極として機能する。n型層3の表面にはオーミック電極5が形成される。
【0038】
基板上にプラズマを用いた化学気相成長法(CVD法)によりホウ素を含む単結晶ダイヤモンド{111}下地表面にホウ素(B)を添加したダイヤモンド層からなるp型層2を作製し、さらに、その表面にリン(P)を添加したダイヤモンド層からなるn型層3を形成した。それぞれの層に含まれるB及びPの濃度は2×1017cm−3及び5×1018cm−3であった。それぞれp型及びn型の電気伝導がホール効果により検証されており、室温におけるキャリア濃度はBドープp型層が1×1014cm−3、Pドープn型層が1×1012cm−3であった。正孔及び電子移動度はそれぞれ150cm2/V−sec及び50cm2/V−secであった。
【0039】
形成された素子は図2に示すような良好な整流性を示した。図3に、この素子から得られた光レスポンスのスペクトル(分光感度特性)を示す。ダイヤモンドのバンドギャップに対応する225nm以下の波長に強く反応し、200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)は100以上であり、深紫外線センサーとして機能することが分かる。
【0040】
(実施例2)
2. ダイヤモンドpin接合の場合
図4に、実施例2の素子の構造を模式的に示す。基板1はホウ素ドープした高圧合成ダイヤモンドで高い電気伝導度を持つ。p型層2は膜厚2ミクロンである。n型層3は膜厚500nmである。i層6は膜厚100nmである。n型層3はBドープ層2表面のみに形成され基板1に直接接しない。基板1裏面にはオーミック電極4が形成され、pn接合のp型層2側電極として機能する。n型層3表面にはオーミック電極5が形成される。
【0041】
pn接合の場合と同様に、ホウ素(B)を添加したエピタキシャルダイヤモンド層(p型層)を作製し、その表面に不純物を添加しないアンドープ層(i層)を形成し、さらに、その表面にリン(P)を添加したダイヤモンド層(n型層)を形成した。p型層に含まれるB濃度は2×1017cm−3、n型層に含まれるP濃度は1×1019cm−3であった。それぞれp型及びn型の電気伝導がホール効果により検証されており、室温におけるキャリア濃度はBドープp型層が2×1014cm−3、Pドープn型層が5×1012cm−3であった。正孔及び電子移動度はそれぞれ100cm2/V−sec及び20cm2/V−secであった。
【0042】
形成された素子は図5に示すような整流性を示しpin接合ダイオードとしての機能が確認された。図6に、この素子から得られた光レスポンスのスペクトル(分光感度特性)を示す。ダイヤモンドのバンドギャップに対応する225nm以下の波長に強く反応し、200nmにおける検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)は1000以上であり、深紫外線センサーとして良好に機能することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ダイヤモンドpn接合紫外線センサーの概念図である。
【図2】ダイヤモンドpn接合素子の整流特性を示すグラフである。
【図3】ダイヤモンドpn接合紫外線センサーの分光感度特性を示すグラフである。
【図4】ダイヤモンドpin接合紫外線センサーの概念図である。
【図5】ダイヤモンドpin接合素子の整流特性を示すグラフである。
【図6】ダイヤモンドpin接合紫外線センサーの分光感度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1.基板
2.p型層
3.n型層
4.p型層オーミック電極
5.n型層オーミック電極
6.i層
Claims (4)
- リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpn接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサー。
- 200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が100以上であることを特徴とする請求項1記載の深紫外線センサー。
- リンをドープしたn型ダイヤモンドをn型層に用いたpin接合による225nm以下の波長の紫外線を検知する深紫外線センサー。
- 200nmの波長における検出感度(I200)と250nmにおける検出感度(I250)の比(I200/I250)が1000以上であることを特徴とする請求項2記載の深紫外線センサー。
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