JP2004091619A - 印刷・成形加工用ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】成形性、印刷性に優れた、ポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】フィルム両表面の中心線平均粗さRa0.1〜50nm、かつフィルム両表面の最大粗さRtが10〜1000nmであり、面配向係数が0〜0.05の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【解決手段】フィルム両表面の中心線平均粗さRa0.1〜50nm、かつフィルム両表面の最大粗さRtが10〜1000nmであり、面配向係数が0〜0.05の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷性、成形性に優れるポリエステルフィルムに関するものである。特に本発明のポリエステルフィルムを用いることにより深絞り性、被転写体の表面形状への追従性などの成形性に優れ、また印刷性に優れるため、印刷および成形して用いるインモールド転写箔、印刷後さらにエンボス加工、真空成形して用いる建材用化粧シートまた包装容器などに好適である。
【0002】
【従来の技術】
印刷および成形加工して用いる従来の転写箔用フィルムとして、特開平6−210799号公報などに二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることが提案されているが、形状の複雑な部材への転写に対しては、成形性の点で不十分であった。
【0003】
一方、特開2000−238070号公報には、成形応力が特定の範囲のポリエステルフィルムを転写箔に用いた例が示されている。ここには、成形性の改善のために転写箔に一般の二軸延伸PETに比べて成形応力の低いポリエステル特に、共重合ポリエステルを用いることが示されている。しかしながら印刷性に関しては特に考慮されおらず、印刷欠点が発生しやすいなど、印刷用フィルムとして改善が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記した従来の技術の問題点を解決し、成形性と印刷性を共に満足したフィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため本発明の印刷・成形加工用ポリエステルフィルムは主として次の構成を有する。すなわち、
フィルム両表面の中心線平均粗さRa0.1〜50nm、かつフィルム両表面の最大粗さRtが10〜1000nmであり、面配向係数が0〜0.05の範囲の印刷・成形加工用ポリエステルフィルムである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とで基本的に構成されるポリマーであることが好ましい。
【0007】
ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、マロン酸、1,1−ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、デカメチレンジカルボン酸などを用いることができる。
【0008】
また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール−A、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどのグリコール成分やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を用いることができる。本発明におけるポリエステルでは、グリコール成分の中で、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−プロパンジオールを成形性と生産性の点から好ましく用いることができる。
【0009】
中でも好ましく使用できるポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリヒドロキシベンゾエート(PHB)が挙げられる。なおこれらのポリエステルは、2種類以上を併用することができる。
【0010】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来から用いられている反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては、例えばアルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等を用いることができ、着色防止剤としては、例えばリン化合物等を用いることができる。好ましくは、通常、ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を用いることができる。
【0011】
ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を用いることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0012】
アンチモン化合物としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどを用いることができる。
【0013】
チタン化合物としては、特に限定されないが、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物、またチタンと珪素、ジルコニウム、アルミニウム元素から選ばれる元素との複合酸化物などが好ましく使用できる。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルAの固有粘度は、0.6〜1.3dl/g、さらには0.65〜1.2dl/g、特に0.7〜1.1dl/gの範囲にあることが好ましい。ポリエステルAの固有粘度がかかる好ましい範囲であると、成形性が良好で、一方、製膜性が良好で、フィルムの厚み斑も少ない。
【0015】
ポリエステルAの融点は、240℃以上、さらには245℃以上、特に250℃以上であることが好ましい。ポリエステルAの融点がかかる好ましい温度である場合には、印刷性や耐熱性の点に優れる。
【0016】
ここで本発明における融点とは、ポリマーに起因する結晶融解ピークであり、ポリマー(5mg)をDSCにおいて窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で測定したときのDSC曲線から求められる吸熱曲線の極小点、すなわち微分値が0となる点である。
【0017】
特にポリマーが複数の融解ピークを有する場合、融解熱量の最も大きい主融解ピークをそのポリマーの融点とする。
【0018】
本発明のポリエステルAは、DSC昇温測定におけるフィルムの結晶融解曲線が実質的に単一のピークを示すものであることが好ましい。ポリエステルAの結晶融解曲線のピークがこのように単一のピークを示すものである場合には、分子構造が均一となっているため、成形性が良好である。
【0019】
ここで、一つの吸熱曲線に部分的に重なる融解熱量が2J/g以上のショルダーピーク(ピークの極小点)についても独立した結晶融解曲線のピークとし、2つ(またはそれ以上)のピークが存在するものとする。
【0020】
さらに本発明のポリエステルAのカルボキシル末端基は30当量/ton以下、さらには25当量/ton以下、特に10当量/ton以下の範囲にあることが好ましい。かかる好ましい範囲であると優れた転写性を確保できる。
【0021】
本発明に用いるポリエステルAを構成するグリコール成分のうちエチレングリコール成分量Xが20〜100モル%、さらには50〜100モル%の範囲であることが耐熱性などの点から好ましい。
【0022】
また、1,3−プロパンジオール成分量および1,4−ブタンジオール成分量の合計Yが、0.1〜80モル%の範囲であることが成形性の点から好ましく、特に好ましくは0.1〜50モル%の範囲である。
【0023】
このとき、ポリエステルAの融点Tm(℃)は240≦Tm≦300の範囲であり、エチレングリコール成分量X(モル%)と融点Tmとが、Tm≧250−1.5×(100−X)の関係を満たすことが好ましい。さらに好ましくはTm≧250−1.0×(100−X)であり、特に好ましくはTm≧255−1.0×(100−X)である。Tmがかかる好ましい範囲であると、耐溶剤性などの特性が良好で、印刷インクに含まれる溶剤によりフィルム表面の平滑性が悪化したり、印刷性低下の原因となることはなく、一方、成形性が低下することもない。
【0024】
融点を上述の範囲とする好ましい手段としては特に限定されないが、たとえば融点250℃以上のPET樹脂を用い、これにプロピレンテレフタレート単位または/およびブチレンテレフタレート単位を含有させる場合にはPPT樹脂および/またはPBT樹脂を混合して用いる方法が挙げられる。
【0025】
また、印刷美麗性を良好とする上では、ポリエステルAにはPEN系樹脂を混合し、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が0.5〜50モル%とすることが好ましい。
【0026】
また上述のようにポリエステルAとして2種類以上のポリエステルを混合して用いる場合には、ポリエステルA中に残存する触媒金属元素の濃度をM(ミリモル%)、ポリエステルA中に残存するリン元素の濃度をP(ミリモル%)としたとき、ポリエステルAがM/P≦1、さらには0.0001≦M/P<1、特に0.001≦M/P≦0.8を満足することが、熱安定性が増し、ブレンドポリマーのエステル交換を抑制でき、熱処理による融点の低下を抑えることが可能であり、この結果、耐熱性、耐溶剤性、印刷性、品質のバラツキを低減させる上で好ましい。なお、上記のMおよびPはポリエステルの繰り返し単位1ユニット(モル)あたりの濃度として表すものである。
【0027】
本発明におけるポリエステルに熱安定剤として添加されるリン化合物は特に限定されないが、リン酸、亜リン酸、リン酸エステルなどが好ましい。
【0028】
特に、製膜中のブリードアウトを抑制する点からは分子量300以上、特に好ましくは400以上のリン化合物が好ましく用いられる。分子量300以上のリン化合物としては、たとえばステアリルリン酸、トリフェニルホスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどが挙げられるが、特にステアリルリン酸がブリードアウト抑制の点からは好ましい。
【0029】
ポリエステルA中に添加するリン化合物の含有量(添加量)は、熱安定性、色調などの点からはリン化合物をリン元素量として20〜1000ミリモル%であることが好ましく、より好ましくは90〜900ミリモル%、特に好ましくは120〜800ミリモル%の範囲である。
【0030】
さらにリン化合物の添加方法としては、重合時に添加する方法、押出機にポリマーと共に供給して添加する方法のいずれでも構わない。一般に重合時に多量のリン化合物を添加すると重合反応を阻害することから、通常のM/P>1の範囲のポリエステルと共に押出機に供給して添加する方法が好ましい。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムの構成は、単層構成であってもかまわないし、積層構成としてもよい。特に高度な転写性と成形性を達成するためには、ポリエステルAからなるA層の片面または両面に、耐溶剤性に優れるポリエステルBからなるB層を積層することがより好ましい。
【0032】
このとき、転写性の点から好ましいポリエステルBとしては、エチレンナフタレートの繰り返し単位を3〜100モル%有するPEN系樹脂、特開昭58−167617号公報などに開示される1,3ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを共重合したポリエステル、ナイロンMXD6などの主鎖に芳香族環を有する脂肪族ポリアミドなどが挙げられる。なかでもPEN系樹脂は製膜安定性の点で好ましく用いることができる。
【0033】
本発明の目的を達成する上で、ポリエステルフィルムの表面粗さは、フィルム両表面共に中心線平均粗さRaが0.1〜100nmであり、かつ最大粗さRtは10〜1000nmの範囲であることが必要である。より好ましくはRaは1〜50nmであり、特に好ましくは5〜40nmである。また、Rtについてはより好ましくは20〜800nmであり、特に好ましくは30〜500nmの範囲である。ここで表面粗さのパラメータ(Ra、Rt)の定義は、奈良治郎著「表面粗さの評価法」(総合技術センタ、1983)に示されている。
【0034】
表面粗さを上述の範囲に制御する手法としては、特に限定されないが、たとえば溶融押出時のキャスティングドラムへの密着方法として静電印加法とくにエッジピニング法が好ましく、キャスティングドラムの表面形状としては鏡面仕上げの平滑な形状が好ましく、キャスティングドラムの温度としては30〜60℃程度に制御することが好ましくあげられ、そのほか鏡面エンボスなどにより平面性を制御することも有効な手法としてあげられる。
【0035】
本発明のポリエステルフィルムは、印刷性を良好とする上で表面比抵抗値が5×1013Ω/□以下であることが好ましい。下限は特にないが一般的に1×105Ω/□以上である。より好ましくは表面比抵抗値は1×1013Ω/□以下であり、特に好ましくは5×1012Ω/□以下である。表面比抵抗値がかかる好ましい範囲であると、静電気が発生しにくく、フィルムの取り扱いが容易になるばかりでなく、加工ラインのロール剥離等による放電が発生しにくく、埃の付着などにより印刷欠点の原因となることもない。
【0036】
表面比抵抗を上述の範囲とするには、各種耐電防止剤をポリエステルに添加、ポリエステルに共重合、またはコーティングすることにより達成可能であり、耐電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性の各種公知のものを用いることが可能である。中でも特に特に耐熱性などの点からはアニオン系帯電防止剤のアルキルスルホン酸Na、アルキルベンゼンスルホン酸Naを用いることが好ましい。
【0037】
また、これらの帯電防止剤を重合時に添加する際には、併せて酸化防止剤を添加することが、印刷特性の向上などの点から好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などの各種公知のものを用いることができ、さらにこれらの混合の化合物なども用いることが可能である。
【0038】
本発明において好ましいフィルムの厚さは10〜500μmの範囲であり、より好ましくは30〜300μm、特に好ましくは40〜200μmである。フィルムの厚さがかかる好ましい範囲であると、製膜安定性、平面性に優れ、さらには成形時にしわなどが入りにくい一方、取り扱い性、成形性も良好である。
【0039】
また、積層とする場合、ポリエステルBの積層厚みは任意に設定して構わないが、通常は製膜の安定性などの点から1〜50μm程度の範囲である。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムは、特に成形性の点から、面配向係数が0〜0.05の範囲であることが必要である。ここで、面配向係数とは、次式1で表されるfnのことであり、フィルムの配向度を表したものである。
【0041】
面配向係数fn=(Nx+Ny)/2−Nz
また、Nx、Ny、Nzはそれぞれ長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表し、アッベ屈折率計などを用いて測定することのできる値である。なお、フィルムが不透明などの理由で屈折率の測定が困難な場合は、赤外吸収スペクトルやX線などの配向度の測定手法により、屈折率による面配向係数に換算することが可能である。
【0042】
本発明のフィルムは印刷欠点抑制の点から、100μm以上の大きさの異物の数が7個/m2以下であることが好ましい。異物の数がかかる好ましい範囲であると、大きな印刷物を作製することも容易である。異物は押出機で溶融された後の樹脂をフィルターなどの濾過装置で十分取り除くことにより減少させることが可能である。
【0043】
本発明のポリエステルフィルム中には、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、ポリエステルに不活性なものであれば特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。かかる粒子の添加量は、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
【0044】
特にフィルムの易滑性を付与し取扱性を向上させる点からは、添加する粒子の平均粒子径は好ましくは0.001〜20μmであり、さらに好ましくは0.01〜10μmである。平均粒子径がかかる好ましい範囲であると、樹脂組成物、フィルムの欠陥が生じにくくなり、成形性が良好である一方、十分な易滑性が発現する。
【0045】
無機粒子の種類としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの各種硫酸塩、カオリン、タルクなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの各種酸化物、フッ化リチウムなどの各種塩を使用することができる。
【0046】
また有機粒子としては、シュウ酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などが使用される。
【0047】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
【0048】
重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを反応系内に添加し、さらにリン化合物を添加する公知の方法で生成される粒子も使用される。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて公知の添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
【0050】
本発明のフィルムには、ハードコート層、耐候層、難燃層、防汚層、抗菌層、離型層などをコーティングや共押出、熱ラミネート、ドライラミネートなどの手法により表面に積層することができる。
【0051】
本発明の印刷・成形用ポリエステルフィルムは立体形状への成形が可能であるため、形状の複雑な部品表面への転写箔用、また真空成型して合板表面などに用いる化粧シート、印刷を施した真空成型容器などとして好ましく用いることができる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、諸特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)中心線表面粗さRa、最大粗さRt
(株)小坂研究所製の高精度薄膜段差計ET−10を用いて測定した。条件:触針先端半径0.5μm、針圧5mg、測定長2mm、カットオフ0.08mm。なお、各パラメータの定義は、奈良治郎著「表面粗さの評価法」(総合技術センタ、1983)に示されている。
【0053】
なお、測定はフィルム両表面について行い、フィルム作製工程おけるドラム密着面(D面)の表面粗さ/非ドラム密着面(ND面)の表面粗さの順に結果を記載した。
(2)面配向係数
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向屈折率(Nx),幅方向屈折率(Ny),厚み方向屈折率(Nz)を測定し、次式から面配向係数(fn)を算出した。
【0054】
fn=(Nx+Ny)/2−Nz
(3)表面比抵抗
25℃、相対湿度65%の条件下において24時間放置後、その雰囲気下で、デジタル超高抵抗/微小電流計を用い、印加電圧100Vで測定を行った。単位はΩ/□である。
(3)異物の数
検反機にて10m2の面積の異物(100μm以上)の個数をカウントした。
(4)印刷欠点
1m2の印刷後のフィルムについて光りに透かして透ける点の個数をカウントした。
(5)印刷性
アクリル樹脂を主成分とするインク(溶剤:トルエン/酢酸エチル/メチルエチルケトン=1/2/2)をポリエステルフィルム表面に印刷し60℃で乾燥させた。印刷フィルムの状態を印刷欠点、濁り、しわなどの点から目視で判定した。
【0055】
○:非常にきれいであり、印刷欠点、しわ、濁りなど全くない。
【0056】
△:比較的印刷は良好であるが、7個/m2以下の印刷欠点または印刷後にかすかな濁りや、ごくわずかのしわなどの発生が見られる。
【0057】
×:印刷品質が悪く、7個/m2以上の印刷欠点、または印刷表示に影響のある濁り、しわの発生が見られる。
(6)成形性
カップ型真空成形機で温度を80〜120℃まで変更し、成形性を判断した。成形は、直径50mmのカップ型で絞り比1.0で行い、最も良好な温度条件で成形した際の状態を下記のように判定した。
【0058】
◎:コーナーもシャープに成形され、成形後の厚みも均一であった。
【0059】
○:コーナーにやや丸みがあるが、成形後の厚みは均一であった。
【0060】
△:コーナーにやや丸みがあり、成形後の厚みがやや不均一であった。
【0061】
×:成形後の厚みが不均一であり、しわ、破れが発生した。
【0062】
本実施例、比較例で用いたポリエステルについて、下記する。
・PET1(ポリエチレンテレフタレート)
エチレングリコールとテレフタル酸の縮重合により、融点255℃、固有粘度0.88dl/gのポリエチレンテレフタレートを得た。
・PBT(ポリブチレンテレフタレート)
1,4−ブタンジオールとテレフタル酸の縮重合により、固有粘度1.26dl/g、融点220℃のポリブチレンテレフタレートを得た。
・PEN(ポリエチレンナフタレート)
エチレングリコールと2,6−ナフタレンジカルボン酸の縮重合により、固有粘度0.68dl/g、融点272℃のポリエチレンナフタレートを得た。
・PET2(耐電防止剤およびシリカ粒子添加ポリエチレンテレフタレート)
エチレングリコールとテレフタル酸の重縮合の際に、耐電防止剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6重量%およびポリエチレングリコール(分子量4000)4重量%、酸化防止剤として、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.10重量%、さらに下記手法で得られた凝集シリカ粒子(粒子径2.5μm)6重量%を添加したポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65dl/g、融点264℃)を作製した。
・凝集シリカ粒子:4塩化珪素1当量に対し、酸素1当量、および、水素1当量を気化器において気化させ、酸水素炎中において1,000℃で加水分解を行い、酸化ケイ素粒子を得た。さらに、直径0.5mmのビーズを用いた湿式サンドミルにて粉砕し所望の平均粒子径を有する凝集シリカを得た。
(実施例1)
ポリエステルAを表1の配合で混合した。さらに別途ステアリルリン酸0.1重量%を添加しベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は280℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いて静電印加し、表面温度50℃に調整した鏡面キャスティングドラムに密着させ溶融状態から冷却固化し厚み120μmの無延伸フィルム(本発明のポリエステルフィルム)を得た。得られたフィルムの特性は表1に示した通りであり、印刷性、成形性共に良好なものであった。
【0063】
【表1】
表中の略号は以下の通りである。
【0064】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
EG量:全ジオール成分中のエチレングリコール成分の割合(モル%)
PG量:全ジオール成分中の1,3−プロパンジオール成分の割合(モル%)
BG量:全ジオール成分中の1,4−ブタンジオール成分の割合(モル%)
NDC量:全ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合(モル%)
(実施例2)
ポリエステルAの配合を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様の手法により本発明のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に併せて示した通りであり、特に成形性において優れた特性を示した。
(実施例3)
ポリエステルAの配合を表1の通りに変更し、鏡面キャスティングドラムへの密着の方法を針状エッジピニング装置を用いた端部静電印加方式から、ワイヤーを用いた全面静電印加方式に変更した以外は同様の手法により本発明のポリエステルフィルムを得た。
【0065】
得られたフィルムの特性は、表1に併せて示した通りであり、印刷性に若干劣るものの合格レベルであり、成形性においては優れた特性を示した。
(実施例4)
ポリエステルAの配合を表2の通りに変更し、キャスティングドラムの温度を20℃とした以外は実施例3と同様の手法にて本発明のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示したとおりであり、印刷乾燥後に若干のしわが見られたものの、合格レベルであり、成形性においては特に優れた特性を示した。
【0066】
【表2】
表中の略号は以下の通りである。
【0067】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
EG量:全ジオール成分中のエチレングリコール成分の割合(モル%)
PG量:全ジオール成分中の1,3−プロパンジオール成分の割合(モル%)
BG量:全ジオール成分中の1,4−ブタンジオール成分の割合(モル%)
NDC量:全ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合(モル%)
(実施例5)
ポリエステルAの配合を表2の通りに変更した以外は実施例1と同様の手法にて本発明のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に併せて示したとおりであり、成形性に若干劣るものの合格レベルであり、非常に優れた印刷性を示した。
(実施例6)
ポリエステルA、ポリエステルBを表2の配合でそれぞれ混合した。ポリエステルAには別途ステアリルリン酸0.1重量%を添加しベント式二軸押出機A(L/D=36)に供給した。またポリエステルBはベント式二軸押出機B(L/D=30)に供給し、それぞれ供給された樹脂は285℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、それぞれ濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、合流部(ピノール)でB/A/B(積層比:1/10/1)で合流させスリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部には針状エッジピニング装置を用いて静電印加し、表面温度45℃に調整した鏡面キャスティングドラムに密着させ溶融状態から冷却固化し厚み120μmの無延伸フィルム(本発明のポリエステルフィルム)を得た。得られたフィルムの特性は表2に併せて示した通りであり、印刷性、成形性共に良好なものであり、特に印刷性に優れた。
(実施例7)
ポリエステルAの配合を表3に示す通りとし、リーフディスクフィルターの濾過精度を80μmとした。また、キャスティングドラムについて梨地表面のものを用いた。それ以外は実施例1と同様の手法を用いて本発明のポリエステルフィルムを得た。
【0068】
得られたフィルムの特性は表3に併せて示した通りであり、異物の数が増加し、印刷性について若干劣るものの合格レベルであり、成形性については優れた特性を示した。
【0069】
【表3】
表中の略号は以下の通りである。
【0070】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
EG量:全ジオール成分中のエチレングリコール成分の割合(モル%)
PG量:全ジオール成分中の1,3−プロパンジオール成分の割合(モル%)
BG量:全ジオール成分中の1,4−ブタンジオール成分の割合(モル%)
NDC量:全ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合(モル%)
(比較例1)
ポリエステルAの配合を表3に示す通りとし、梨地表面のキャスティングドラムを用いて、キャスティングドラムへの密着方式をワイヤーを用いた全面静電印加方式に変更した以外は実施例1と同様の手法により、無延伸フィルムを得た。
【0071】
得られたポリエステルフィルムを印刷評価したところ、表3に併せて示した通りであり、無数(100個/m2以上)に印刷抜けが発生し、実用に耐えられないものであった。
(比較例2)
ポリエステルAの配合を表3に示す通りとし、実施例1と同様にして得られた無延伸フィルムを温度95℃にて長手方向に3.4倍ロール延伸し、延伸温度115℃で幅方向に3.05倍テンター延伸した後、200℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚みを120μmに調整した二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。得られたフィルムの面配向係数は0.16であった。
【0072】
得られたポリエステルフィルムは表3に併せて示した通りであり、成形性の非常に劣るものであり、実用に耐えられないものであった。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、成形性、印刷性に優れた、ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0074】
本発明で得られる印刷・成形加工用ポリエステルフィルムは印刷の転写加工を行うための転写箔や建材用化粧シートとして用いるのに好適なものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷性、成形性に優れるポリエステルフィルムに関するものである。特に本発明のポリエステルフィルムを用いることにより深絞り性、被転写体の表面形状への追従性などの成形性に優れ、また印刷性に優れるため、印刷および成形して用いるインモールド転写箔、印刷後さらにエンボス加工、真空成形して用いる建材用化粧シートまた包装容器などに好適である。
【0002】
【従来の技術】
印刷および成形加工して用いる従来の転写箔用フィルムとして、特開平6−210799号公報などに二軸延伸ポリエステルフィルムを用いることが提案されているが、形状の複雑な部材への転写に対しては、成形性の点で不十分であった。
【0003】
一方、特開2000−238070号公報には、成形応力が特定の範囲のポリエステルフィルムを転写箔に用いた例が示されている。ここには、成形性の改善のために転写箔に一般の二軸延伸PETに比べて成形応力の低いポリエステル特に、共重合ポリエステルを用いることが示されている。しかしながら印刷性に関しては特に考慮されおらず、印刷欠点が発生しやすいなど、印刷用フィルムとして改善が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記した従来の技術の問題点を解決し、成形性と印刷性を共に満足したフィルムを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決するため本発明の印刷・成形加工用ポリエステルフィルムは主として次の構成を有する。すなわち、
フィルム両表面の中心線平均粗さRa0.1〜50nm、かつフィルム両表面の最大粗さRtが10〜1000nmであり、面配向係数が0〜0.05の範囲の印刷・成形加工用ポリエステルフィルムである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるポリエステルは、ジカルボン酸成分とグリコール成分とで基本的に構成されるポリマーであることが好ましい。
【0007】
ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−1,5−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸、マロン酸、1,1−ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸、デカメチレンジカルボン酸などを用いることができる。
【0008】
また、グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオールなどの脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族グリコール、ビスフェノール−A、ビスフェノールSなどの芳香族グリコールなどのグリコール成分やポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール−プロピレングリコール共重合体等を用いることができる。本発明におけるポリエステルでは、グリコール成分の中で、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、1,3−プロパンジオールを成形性と生産性の点から好ましく用いることができる。
【0009】
中でも好ましく使用できるポリエステルとして、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート(PHT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリヒドロキシベンゾエート(PHB)が挙げられる。なおこれらのポリエステルは、2種類以上を併用することができる。
【0010】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来から用いられている反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては、例えばアルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等を用いることができ、着色防止剤としては、例えばリン化合物等を用いることができる。好ましくは、通常、ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を用いることができる。
【0011】
ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を用いることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。
【0012】
アンチモン化合物としては、特に限定されないが、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどを用いることができる。
【0013】
チタン化合物としては、特に限定されないが、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物、またチタンと珪素、ジルコニウム、アルミニウム元素から選ばれる元素との複合酸化物などが好ましく使用できる。
【0014】
本発明のポリエステルフィルムを構成するポリエステルAの固有粘度は、0.6〜1.3dl/g、さらには0.65〜1.2dl/g、特に0.7〜1.1dl/gの範囲にあることが好ましい。ポリエステルAの固有粘度がかかる好ましい範囲であると、成形性が良好で、一方、製膜性が良好で、フィルムの厚み斑も少ない。
【0015】
ポリエステルAの融点は、240℃以上、さらには245℃以上、特に250℃以上であることが好ましい。ポリエステルAの融点がかかる好ましい温度である場合には、印刷性や耐熱性の点に優れる。
【0016】
ここで本発明における融点とは、ポリマーに起因する結晶融解ピークであり、ポリマー(5mg)をDSCにおいて窒素雰囲気下、20℃/分の昇温速度で測定したときのDSC曲線から求められる吸熱曲線の極小点、すなわち微分値が0となる点である。
【0017】
特にポリマーが複数の融解ピークを有する場合、融解熱量の最も大きい主融解ピークをそのポリマーの融点とする。
【0018】
本発明のポリエステルAは、DSC昇温測定におけるフィルムの結晶融解曲線が実質的に単一のピークを示すものであることが好ましい。ポリエステルAの結晶融解曲線のピークがこのように単一のピークを示すものである場合には、分子構造が均一となっているため、成形性が良好である。
【0019】
ここで、一つの吸熱曲線に部分的に重なる融解熱量が2J/g以上のショルダーピーク(ピークの極小点)についても独立した結晶融解曲線のピークとし、2つ(またはそれ以上)のピークが存在するものとする。
【0020】
さらに本発明のポリエステルAのカルボキシル末端基は30当量/ton以下、さらには25当量/ton以下、特に10当量/ton以下の範囲にあることが好ましい。かかる好ましい範囲であると優れた転写性を確保できる。
【0021】
本発明に用いるポリエステルAを構成するグリコール成分のうちエチレングリコール成分量Xが20〜100モル%、さらには50〜100モル%の範囲であることが耐熱性などの点から好ましい。
【0022】
また、1,3−プロパンジオール成分量および1,4−ブタンジオール成分量の合計Yが、0.1〜80モル%の範囲であることが成形性の点から好ましく、特に好ましくは0.1〜50モル%の範囲である。
【0023】
このとき、ポリエステルAの融点Tm(℃)は240≦Tm≦300の範囲であり、エチレングリコール成分量X(モル%)と融点Tmとが、Tm≧250−1.5×(100−X)の関係を満たすことが好ましい。さらに好ましくはTm≧250−1.0×(100−X)であり、特に好ましくはTm≧255−1.0×(100−X)である。Tmがかかる好ましい範囲であると、耐溶剤性などの特性が良好で、印刷インクに含まれる溶剤によりフィルム表面の平滑性が悪化したり、印刷性低下の原因となることはなく、一方、成形性が低下することもない。
【0024】
融点を上述の範囲とする好ましい手段としては特に限定されないが、たとえば融点250℃以上のPET樹脂を用い、これにプロピレンテレフタレート単位または/およびブチレンテレフタレート単位を含有させる場合にはPPT樹脂および/またはPBT樹脂を混合して用いる方法が挙げられる。
【0025】
また、印刷美麗性を良好とする上では、ポリエステルAにはPEN系樹脂を混合し、2,6−ナフタレンジカルボン酸成分が0.5〜50モル%とすることが好ましい。
【0026】
また上述のようにポリエステルAとして2種類以上のポリエステルを混合して用いる場合には、ポリエステルA中に残存する触媒金属元素の濃度をM(ミリモル%)、ポリエステルA中に残存するリン元素の濃度をP(ミリモル%)としたとき、ポリエステルAがM/P≦1、さらには0.0001≦M/P<1、特に0.001≦M/P≦0.8を満足することが、熱安定性が増し、ブレンドポリマーのエステル交換を抑制でき、熱処理による融点の低下を抑えることが可能であり、この結果、耐熱性、耐溶剤性、印刷性、品質のバラツキを低減させる上で好ましい。なお、上記のMおよびPはポリエステルの繰り返し単位1ユニット(モル)あたりの濃度として表すものである。
【0027】
本発明におけるポリエステルに熱安定剤として添加されるリン化合物は特に限定されないが、リン酸、亜リン酸、リン酸エステルなどが好ましい。
【0028】
特に、製膜中のブリードアウトを抑制する点からは分子量300以上、特に好ましくは400以上のリン化合物が好ましく用いられる。分子量300以上のリン化合物としては、たとえばステアリルリン酸、トリフェニルホスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェートなどが挙げられるが、特にステアリルリン酸がブリードアウト抑制の点からは好ましい。
【0029】
ポリエステルA中に添加するリン化合物の含有量(添加量)は、熱安定性、色調などの点からはリン化合物をリン元素量として20〜1000ミリモル%であることが好ましく、より好ましくは90〜900ミリモル%、特に好ましくは120〜800ミリモル%の範囲である。
【0030】
さらにリン化合物の添加方法としては、重合時に添加する方法、押出機にポリマーと共に供給して添加する方法のいずれでも構わない。一般に重合時に多量のリン化合物を添加すると重合反応を阻害することから、通常のM/P>1の範囲のポリエステルと共に押出機に供給して添加する方法が好ましい。
【0031】
本発明のポリエステルフィルムの構成は、単層構成であってもかまわないし、積層構成としてもよい。特に高度な転写性と成形性を達成するためには、ポリエステルAからなるA層の片面または両面に、耐溶剤性に優れるポリエステルBからなるB層を積層することがより好ましい。
【0032】
このとき、転写性の点から好ましいポリエステルBとしては、エチレンナフタレートの繰り返し単位を3〜100モル%有するPEN系樹脂、特開昭58−167617号公報などに開示される1,3ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンを共重合したポリエステル、ナイロンMXD6などの主鎖に芳香族環を有する脂肪族ポリアミドなどが挙げられる。なかでもPEN系樹脂は製膜安定性の点で好ましく用いることができる。
【0033】
本発明の目的を達成する上で、ポリエステルフィルムの表面粗さは、フィルム両表面共に中心線平均粗さRaが0.1〜100nmであり、かつ最大粗さRtは10〜1000nmの範囲であることが必要である。より好ましくはRaは1〜50nmであり、特に好ましくは5〜40nmである。また、Rtについてはより好ましくは20〜800nmであり、特に好ましくは30〜500nmの範囲である。ここで表面粗さのパラメータ(Ra、Rt)の定義は、奈良治郎著「表面粗さの評価法」(総合技術センタ、1983)に示されている。
【0034】
表面粗さを上述の範囲に制御する手法としては、特に限定されないが、たとえば溶融押出時のキャスティングドラムへの密着方法として静電印加法とくにエッジピニング法が好ましく、キャスティングドラムの表面形状としては鏡面仕上げの平滑な形状が好ましく、キャスティングドラムの温度としては30〜60℃程度に制御することが好ましくあげられ、そのほか鏡面エンボスなどにより平面性を制御することも有効な手法としてあげられる。
【0035】
本発明のポリエステルフィルムは、印刷性を良好とする上で表面比抵抗値が5×1013Ω/□以下であることが好ましい。下限は特にないが一般的に1×105Ω/□以上である。より好ましくは表面比抵抗値は1×1013Ω/□以下であり、特に好ましくは5×1012Ω/□以下である。表面比抵抗値がかかる好ましい範囲であると、静電気が発生しにくく、フィルムの取り扱いが容易になるばかりでなく、加工ラインのロール剥離等による放電が発生しにくく、埃の付着などにより印刷欠点の原因となることもない。
【0036】
表面比抵抗を上述の範囲とするには、各種耐電防止剤をポリエステルに添加、ポリエステルに共重合、またはコーティングすることにより達成可能であり、耐電防止剤としては、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性の各種公知のものを用いることが可能である。中でも特に特に耐熱性などの点からはアニオン系帯電防止剤のアルキルスルホン酸Na、アルキルベンゼンスルホン酸Naを用いることが好ましい。
【0037】
また、これらの帯電防止剤を重合時に添加する際には、併せて酸化防止剤を添加することが、印刷特性の向上などの点から好ましい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などの各種公知のものを用いることができ、さらにこれらの混合の化合物なども用いることが可能である。
【0038】
本発明において好ましいフィルムの厚さは10〜500μmの範囲であり、より好ましくは30〜300μm、特に好ましくは40〜200μmである。フィルムの厚さがかかる好ましい範囲であると、製膜安定性、平面性に優れ、さらには成形時にしわなどが入りにくい一方、取り扱い性、成形性も良好である。
【0039】
また、積層とする場合、ポリエステルBの積層厚みは任意に設定して構わないが、通常は製膜の安定性などの点から1〜50μm程度の範囲である。
【0040】
本発明のポリエステルフィルムは、特に成形性の点から、面配向係数が0〜0.05の範囲であることが必要である。ここで、面配向係数とは、次式1で表されるfnのことであり、フィルムの配向度を表したものである。
【0041】
面配向係数fn=(Nx+Ny)/2−Nz
また、Nx、Ny、Nzはそれぞれ長手方向の屈折率、幅方向の屈折率、厚み方向の屈折率を表し、アッベ屈折率計などを用いて測定することのできる値である。なお、フィルムが不透明などの理由で屈折率の測定が困難な場合は、赤外吸収スペクトルやX線などの配向度の測定手法により、屈折率による面配向係数に換算することが可能である。
【0042】
本発明のフィルムは印刷欠点抑制の点から、100μm以上の大きさの異物の数が7個/m2以下であることが好ましい。異物の数がかかる好ましい範囲であると、大きな印刷物を作製することも容易である。異物は押出機で溶融された後の樹脂をフィルターなどの濾過装置で十分取り除くことにより減少させることが可能である。
【0043】
本発明のポリエステルフィルム中には、目的や用途に応じて各種の粒子を添加することができる。添加する粒子は、ポリエステルに不活性なものであれば特に限定されないが、無機粒子、有機粒子、架橋高分子粒子、重合系内で生成させる内部粒子などを挙げることができる。これらの粒子を2種以上添加しても構わない。かかる粒子の添加量は、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3重量%である。
【0044】
特にフィルムの易滑性を付与し取扱性を向上させる点からは、添加する粒子の平均粒子径は好ましくは0.001〜20μmであり、さらに好ましくは0.01〜10μmである。平均粒子径がかかる好ましい範囲であると、樹脂組成物、フィルムの欠陥が生じにくくなり、成形性が良好である一方、十分な易滑性が発現する。
【0045】
無機粒子の種類としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムなどの各種炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの各種硫酸塩、カオリン、タルクなどの各種複合酸化物、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウムなどの各種リン酸塩、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの各種酸化物、フッ化リチウムなどの各種塩を使用することができる。
【0046】
また有機粒子としては、シュウ酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩などが使用される。
【0047】
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機微粒子も好ましく使用される。
【0048】
重合系内で生成させる内部粒子としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などを反応系内に添加し、さらにリン化合物を添加する公知の方法で生成される粒子も使用される。
【0049】
本発明のポリエステルフィルムには、必要に応じて公知の添加剤、例えば、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、粘着性付与剤、脂肪酸エステル、ワックス等の有機滑剤またはポリシロキサン等の消泡剤、顔料または染料等の着色剤を適量配合することができる。
【0050】
本発明のフィルムには、ハードコート層、耐候層、難燃層、防汚層、抗菌層、離型層などをコーティングや共押出、熱ラミネート、ドライラミネートなどの手法により表面に積層することができる。
【0051】
本発明の印刷・成形用ポリエステルフィルムは立体形状への成形が可能であるため、形状の複雑な部品表面への転写箔用、また真空成型して合板表面などに用いる化粧シート、印刷を施した真空成型容器などとして好ましく用いることができる。
【0052】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、諸特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)中心線表面粗さRa、最大粗さRt
(株)小坂研究所製の高精度薄膜段差計ET−10を用いて測定した。条件:触針先端半径0.5μm、針圧5mg、測定長2mm、カットオフ0.08mm。なお、各パラメータの定義は、奈良治郎著「表面粗さの評価法」(総合技術センタ、1983)に示されている。
【0053】
なお、測定はフィルム両表面について行い、フィルム作製工程おけるドラム密着面(D面)の表面粗さ/非ドラム密着面(ND面)の表面粗さの順に結果を記載した。
(2)面配向係数
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向屈折率(Nx),幅方向屈折率(Ny),厚み方向屈折率(Nz)を測定し、次式から面配向係数(fn)を算出した。
【0054】
fn=(Nx+Ny)/2−Nz
(3)表面比抵抗
25℃、相対湿度65%の条件下において24時間放置後、その雰囲気下で、デジタル超高抵抗/微小電流計を用い、印加電圧100Vで測定を行った。単位はΩ/□である。
(3)異物の数
検反機にて10m2の面積の異物(100μm以上)の個数をカウントした。
(4)印刷欠点
1m2の印刷後のフィルムについて光りに透かして透ける点の個数をカウントした。
(5)印刷性
アクリル樹脂を主成分とするインク(溶剤:トルエン/酢酸エチル/メチルエチルケトン=1/2/2)をポリエステルフィルム表面に印刷し60℃で乾燥させた。印刷フィルムの状態を印刷欠点、濁り、しわなどの点から目視で判定した。
【0055】
○:非常にきれいであり、印刷欠点、しわ、濁りなど全くない。
【0056】
△:比較的印刷は良好であるが、7個/m2以下の印刷欠点または印刷後にかすかな濁りや、ごくわずかのしわなどの発生が見られる。
【0057】
×:印刷品質が悪く、7個/m2以上の印刷欠点、または印刷表示に影響のある濁り、しわの発生が見られる。
(6)成形性
カップ型真空成形機で温度を80〜120℃まで変更し、成形性を判断した。成形は、直径50mmのカップ型で絞り比1.0で行い、最も良好な温度条件で成形した際の状態を下記のように判定した。
【0058】
◎:コーナーもシャープに成形され、成形後の厚みも均一であった。
【0059】
○:コーナーにやや丸みがあるが、成形後の厚みは均一であった。
【0060】
△:コーナーにやや丸みがあり、成形後の厚みがやや不均一であった。
【0061】
×:成形後の厚みが不均一であり、しわ、破れが発生した。
【0062】
本実施例、比較例で用いたポリエステルについて、下記する。
・PET1(ポリエチレンテレフタレート)
エチレングリコールとテレフタル酸の縮重合により、融点255℃、固有粘度0.88dl/gのポリエチレンテレフタレートを得た。
・PBT(ポリブチレンテレフタレート)
1,4−ブタンジオールとテレフタル酸の縮重合により、固有粘度1.26dl/g、融点220℃のポリブチレンテレフタレートを得た。
・PEN(ポリエチレンナフタレート)
エチレングリコールと2,6−ナフタレンジカルボン酸の縮重合により、固有粘度0.68dl/g、融点272℃のポリエチレンナフタレートを得た。
・PET2(耐電防止剤およびシリカ粒子添加ポリエチレンテレフタレート)
エチレングリコールとテレフタル酸の重縮合の際に、耐電防止剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム6重量%およびポリエチレングリコール(分子量4000)4重量%、酸化防止剤として、イルガノックス1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)0.10重量%、さらに下記手法で得られた凝集シリカ粒子(粒子径2.5μm)6重量%を添加したポリエチレンテレフタレート樹脂(固有粘度0.65dl/g、融点264℃)を作製した。
・凝集シリカ粒子:4塩化珪素1当量に対し、酸素1当量、および、水素1当量を気化器において気化させ、酸水素炎中において1,000℃で加水分解を行い、酸化ケイ素粒子を得た。さらに、直径0.5mmのビーズを用いた湿式サンドミルにて粉砕し所望の平均粒子径を有する凝集シリカを得た。
(実施例1)
ポリエステルAを表1の配合で混合した。さらに別途ステアリルリン酸0.1重量%を添加しベント式二軸押出機(L/D=36)に供給した。供給された樹脂は280℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、スリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部に針状エッジピニング装置を用いて静電印加し、表面温度50℃に調整した鏡面キャスティングドラムに密着させ溶融状態から冷却固化し厚み120μmの無延伸フィルム(本発明のポリエステルフィルム)を得た。得られたフィルムの特性は表1に示した通りであり、印刷性、成形性共に良好なものであった。
【0063】
【表1】
表中の略号は以下の通りである。
【0064】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
EG量:全ジオール成分中のエチレングリコール成分の割合(モル%)
PG量:全ジオール成分中の1,3−プロパンジオール成分の割合(モル%)
BG量:全ジオール成分中の1,4−ブタンジオール成分の割合(モル%)
NDC量:全ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合(モル%)
(実施例2)
ポリエステルAの配合を表1の通りに変更した以外は実施例1と同様の手法により本発明のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表1に併せて示した通りであり、特に成形性において優れた特性を示した。
(実施例3)
ポリエステルAの配合を表1の通りに変更し、鏡面キャスティングドラムへの密着の方法を針状エッジピニング装置を用いた端部静電印加方式から、ワイヤーを用いた全面静電印加方式に変更した以外は同様の手法により本発明のポリエステルフィルムを得た。
【0065】
得られたフィルムの特性は、表1に併せて示した通りであり、印刷性に若干劣るものの合格レベルであり、成形性においては優れた特性を示した。
(実施例4)
ポリエステルAの配合を表2の通りに変更し、キャスティングドラムの温度を20℃とした以外は実施例3と同様の手法にて本発明のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に示したとおりであり、印刷乾燥後に若干のしわが見られたものの、合格レベルであり、成形性においては特に優れた特性を示した。
【0066】
【表2】
表中の略号は以下の通りである。
【0067】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
EG量:全ジオール成分中のエチレングリコール成分の割合(モル%)
PG量:全ジオール成分中の1,3−プロパンジオール成分の割合(モル%)
BG量:全ジオール成分中の1,4−ブタンジオール成分の割合(モル%)
NDC量:全ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合(モル%)
(実施例5)
ポリエステルAの配合を表2の通りに変更した以外は実施例1と同様の手法にて本発明のポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性は表2に併せて示したとおりであり、成形性に若干劣るものの合格レベルであり、非常に優れた印刷性を示した。
(実施例6)
ポリエステルA、ポリエステルBを表2の配合でそれぞれ混合した。ポリエステルAには別途ステアリルリン酸0.1重量%を添加しベント式二軸押出機A(L/D=36)に供給した。またポリエステルBはベント式二軸押出機B(L/D=30)に供給し、それぞれ供給された樹脂は285℃で溶融させた後に真空ベント部2ヶ所を通過させた。次いで、それぞれ濾過精度30μmのリーフディスクフィルターを通過させた後、合流部(ピノール)でB/A/B(積層比:1/10/1)で合流させスリット状のダイからシート状に押出した。押出されたシートの両端部には針状エッジピニング装置を用いて静電印加し、表面温度45℃に調整した鏡面キャスティングドラムに密着させ溶融状態から冷却固化し厚み120μmの無延伸フィルム(本発明のポリエステルフィルム)を得た。得られたフィルムの特性は表2に併せて示した通りであり、印刷性、成形性共に良好なものであり、特に印刷性に優れた。
(実施例7)
ポリエステルAの配合を表3に示す通りとし、リーフディスクフィルターの濾過精度を80μmとした。また、キャスティングドラムについて梨地表面のものを用いた。それ以外は実施例1と同様の手法を用いて本発明のポリエステルフィルムを得た。
【0068】
得られたフィルムの特性は表3に併せて示した通りであり、異物の数が増加し、印刷性について若干劣るものの合格レベルであり、成形性については優れた特性を示した。
【0069】
【表3】
表中の略号は以下の通りである。
【0070】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PBT:ポリブチレンテレフタレート
PEN:ポリエチレンナフタレート
EG量:全ジオール成分中のエチレングリコール成分の割合(モル%)
PG量:全ジオール成分中の1,3−プロパンジオール成分の割合(モル%)
BG量:全ジオール成分中の1,4−ブタンジオール成分の割合(モル%)
NDC量:全ジカルボン酸成分中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分の割合(モル%)
(比較例1)
ポリエステルAの配合を表3に示す通りとし、梨地表面のキャスティングドラムを用いて、キャスティングドラムへの密着方式をワイヤーを用いた全面静電印加方式に変更した以外は実施例1と同様の手法により、無延伸フィルムを得た。
【0071】
得られたポリエステルフィルムを印刷評価したところ、表3に併せて示した通りであり、無数(100個/m2以上)に印刷抜けが発生し、実用に耐えられないものであった。
(比較例2)
ポリエステルAの配合を表3に示す通りとし、実施例1と同様にして得られた無延伸フィルムを温度95℃にて長手方向に3.4倍ロール延伸し、延伸温度115℃で幅方向に3.05倍テンター延伸した後、200℃にて弛緩5%、5秒間熱処理し、厚みを120μmに調整した二軸延伸ポリエステルフィルムを作製した。得られたフィルムの面配向係数は0.16であった。
【0072】
得られたポリエステルフィルムは表3に併せて示した通りであり、成形性の非常に劣るものであり、実用に耐えられないものであった。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、成形性、印刷性に優れた、ポリエステルフィルムを得ることができる。
【0074】
本発明で得られる印刷・成形加工用ポリエステルフィルムは印刷の転写加工を行うための転写箔や建材用化粧シートとして用いるのに好適なものである。
Claims (7)
- フィルム両表面の中心線平均粗さRa0.1〜50nm、かつ最大粗さRtが10〜1000nmであり、面配向係数が0〜0.05であることを特徴とする印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
- 表面比抵抗値が5×1013Ω/□以下であることを特徴とする請求項1に記載の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
- フィルムを構成するポリエステルA中のエチレングリコール成分量Xが20〜100モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルAの中の1,3−プロパンジオール成分量および1,4−ブタンジオールの成分量の合計が0.1〜80モル%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
- ポリエステルA中の2,6−ナフタレンジカルボン酸成分量が0.5〜50モル%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
- 2,6−ナフタレンジカルボン酸成分を3〜100モル%有するポリエステルBからなる層を少なくとも片面に積層したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
- 100μm以上の異物の数が7個/m2以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の印刷・成形加工用ポリエステルフィルム。
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