JP2004088852A - 電動機およびそれを用いた圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】永久磁石の磁束を有効に利用するとともに、リラクタンスモータとしてのインダクタンスの差が磁気飽和により容易に低下してしまうことを防止する。
【解決手段】永久磁石11を有する永久磁石回転子部分1と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分2とを、軸方向に混在させ、しかも両者の間に非磁性層3を介在させる。
【選択図】 図2
【解決手段】永久磁石11を有する永久磁石回転子部分1と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分2とを、軸方向に混在させ、しかも両者の間に非磁性層3を介在させる。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は電動機およびそれを用いた圧縮機に関し、さらに詳細にいえば、永久磁石を有する永久磁石回転子部分と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分とを、軸方向に混在させてなる回転子を有する電動機およびそれを用いた圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
リラクタンストルクを利用するシンクロナスリラクタンス電動機は、インダクションモータに比べ、2次銅損が発生しないため、近年注目されている。しかしながら、力率が悪く、また、永久磁石を用いたインバータ駆動の同期電動機と比べると、トルクが低いため、必要とするトルクが大きい用途では、大型化してしまうという欠点があった。一方、永久磁石を用いたインバータ駆動の同期電動機では、永久磁石による鎖交磁束が大きいほどトルクが大きくなるが、電圧制限により、高速がまわせないという欠点があった。
【0003】
これらの課題を解決するために、例えば、特開2002−44920号公報では、半径方向に並ぶ多層スリットを有する回転子において、多層スリットの一部のスリットにのみ永久磁石を埋め込み、マグネットトルクとリラクタンストルクを利用するものが提案されている。上記公報によれば、永久磁石量を4分の1にしても、従来の永久磁石同期電動機と同等の効率、トルクが実現できる、とある。
【0004】
また、特開2001−339923号公報では、永久磁石を備えた第1の回転体部分を2つ設け、その間に磁気的突極性を備えた構造の第2の回転体部分を挿入し、回転軸の方向に連結した回転子を用いたモータであって、回転子の一部をリラクタンスモータとするものが提案されている。上記公報によれば、永久磁石量を減らすことができ、しかも、全体的なトルクを大きくし、高出力なモータとすることができる、とある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、永久磁石を用いないシンクロナスリラクタンス電動機のトルクは、
T=Pn(Ld−Lq)idiq
で表される。ただし、Pn:極対数、Ld、Lq:d、q軸インダクタンス、id、iq:d、q軸電流である。ここで第二項が負の成分であり、少なくとも第二項を打ち消す程度の鎖交磁束φaを付加することにより、発生トルクは、
T=Pn{Ldidiq+(φa―Lqiq)id}
となる。また、限られたインバータ電圧において、電圧制限円は次式のようになる。
Va=[{(Riq+ωLdid)2+(Rid−ωLqiq+ωφa)2}]1/2
ただし、R:巻線抵抗、ω:回転角速度である。すなわち、高速まで回転可能で、かつ、高効率とするには、(Ld−Lq)を大きくしつつ、φaは、大きすぎてもいけなく、最適な値とすべきである。
【0006】
特開2002−44920号公報においては、次のような欠点を有する。
【0007】
第一に、永久磁石の埋め込む位置によっては、永久磁石の外側にスリットがあるため、磁束がスリット間の狭い磁路を通らねばならず、磁気飽和が発生しやすい。また、磁束が、磁極表面のうち、スリットに限定された範囲にしか流れず、コギングトルクの増大等の課題があった。
【0008】
第二に、永久磁石の磁束により、永久磁石を埋め込んだスリットの前後の磁路が磁気飽和し、d軸インダクタンスが低下してしまう。
【0009】
第三に、多層スリット型シンクロナスリラクタンス電動機のスリットに永久磁石を埋め込むため、永久磁石の形状をスリットにあわせるか、スリットの形状を永久磁石にあわせるかしなければならず、永久磁石の形状に制限を受けるか、または、スリットの形状が最大の(Ld−Lq)を得るような設計が困難であるか、どちらかの弊害があった。
【0010】
特開2001−339923号公報においては、次のような欠点を有する。
【0011】
主としてマグネットトルクを利用するモータであるから、コギングトルクが大きくなる。または、コギングトルク対策が必要であり、効率低下がある。
【0012】
リラクタンス回転子に行くが、公報の図6のような形状では、パーミアンスの問題から、殆どが永久磁石回転子にかかると考えられる。また、図7、図8の場合にも、磁路が狭いため、消磁については、永久磁石回転子部分のみの場合とさほど変わらない。
【0013】
弱め磁束制御を行う場合、リラクタンス回転子部分のd軸(永久磁石回転子部分から見ればq軸)磁路が容易に磁気飽和してしまい、高速での一定出力運転は困難である。
【0014】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、永久磁石の磁束を有効に利用できるとともに、リラクタンスモータとしてのインダクタンスの差が磁気飽和により容易に低下してしまうことを防止することができる電動機およびそれを用いた圧縮機を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1の電動機は、略円筒形の回転子と、回転子の磁極に対し、わずかな空隙を持って対向する固定子とからなるものであって、
前記回転子は、永久磁石を有する永久磁石回転子部分と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分とを、軸方向に混在させ、リラクタンストルクと、それより小さいマグネットトルクとを利用して回転し、かつ、リラクタンス回転子部分の積厚を永久磁石回転子部分の積厚よりも大きく設定したものである。
【0016】
請求項2の電動機は、前記回転子として、リラクタンス回転子部分、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分の順に、3段の回転子部分からなるものを採用するものである。
【0017】
請求項3の電動機は、前記リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を、同一積厚単一であったと仮定したときの前記永久磁石回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Lq−Ld)より大きく設定したものである。
【0018】
請求項4の電動機は、前記リラクタンス回転子部分として、回転子鉄心内部に半径方向に複数のスリットを有するものを採用したものである。
【0019】
請求項5の電動機は、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心表面に永久磁石を設けた表面磁石型回転子を採用するものである。
【0020】
請求項6の電動機は、前記リラクタンス回転子部分の外径を、永久磁石回転子部分の外径より小さく設定したものである。
【0021】
請求項7の電動機は、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心内部に永久磁石を埋設した埋込磁石型回転子を採用するものである。
【0022】
請求項8の電動機は、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面には、少なくともスリットがあるものである。
【0023】
請求項9の電動機は、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面に位置するスリットは、少なくとも永久磁石脱落防止のため、永久磁石部の一部と対応する形状であるものである。
【0024】
請求項10の電動機は、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で45°だけ回転方向前進側にあるものである。
【0025】
請求項11の電動機は、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で0°以上45°未満の角度だけ回転方向前進側にあるものである。
【0026】
請求項12の電動機は、前記リラクタンス回転子部分と前記永久磁石回転子部分との間には、非磁性層が介在するものである。
【0027】
請求項13の圧縮機は、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電動機を備えたものである。
【0028】
【作用】
請求項1の電動機であれば、略円筒形の回転子と、回転子の磁極に対し、わずかな空隙を持って対向する固定子とからなるものであって、
前記回転子は、永久磁石を有する永久磁石回転子部分と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分とを、軸方向に混在させ、リラクタンストルクと、それより小さいマグネットトルクとを利用して回転し、かつ、リラクタンス回転子部分の積厚を永久磁石回転子部分の積厚よりも大きく設定したのであるから、高速運転が可能で、かつ、大トルク、高効率の電動機を提供でき、特に、永久磁石量を低減できる。また、リラクタンストルクを主として用い、永久磁石を補助的に用いることになり、コギングトルクを小さくすることができる。−idによる磁束は、あえて、割合の小さい永久磁石回転子部分に集中することはなく、消磁の可能性を低くすることができる。永久磁石による磁束が小さく、逆起電圧も無視できる程度であるから、強烈な弱め磁束制御をしなくても高速での一定出力運転を可能とすることができる。永久磁石回転子部分の働きは、電機子反作用による負トルクを解消し、リラクタンスモータの欠点である力率を改善することであり、主たるトルクを発生することではないから、永久磁石モータの欠点を殆ど伴うことなく、リラクタンスモータの欠点を解消することができる。
【0029】
請求項2の電動機であれば、前記回転子として、リラクタンス回転子部分、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分の順に、3段の回転子部分からなるものを採用するのであるから、軸方向に電磁力が発生せず、騒音を小さく、また軸受への負荷も小さくできるほか、請求項1と同様の作用を達成することができる。
【0030】
請求項3の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を、同一積厚単一であったと仮定したときの前記永久磁石回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Lq−Ld)より大きく設定したのであるから、永久磁石回転子部分の形状によらずリラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を最大となるようにする設計の自由度を増すことができ、また、永久磁石回転子部分が磁束を有効利用できるように設計することができるほか、請求項1または請求項2と同様の作用を達成することができる。
【0031】
請求項4の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分として、回転子鉄心内部に半径方向に複数のスリットを有するものを採用したのであるから、リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を大きくすることができるほか、請求項1から請求項3の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0032】
請求項5の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心表面に永久磁石を設けた表面磁石型回転子を採用するのであるから、リラクタンストルクは利用できないが、永久磁石回転子部分のギャップ磁束密度を正弦波に近づけることができ、振動を低減できるとともに、制御を容易にできるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0033】
請求項6の電動機であれば前記リラクタンス回転子部分の外径を、永久磁石回転子部分の外径より小さく設定したものであるから、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項5と同様の作用を達成することができる。
【0034】
請求項7の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心内部に永久磁石を埋設した埋込磁石型回転子を採用するのであるから、永久磁石回転子部分であっても、リラクタンストルクを利用することができるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0035】
請求項8の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面には、少なくともスリットがあるのであるから、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項7と同様の作用を達成することができる。
【0036】
請求項9の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面に位置するスリットは、少なくとも永久磁石脱落防止のため、永久磁石部の一部と対応する形状であるから、永久磁石の脱落防止手段を不要にできるほか、請求項8と同様の作用を達成することができる。
【0037】
請求項10の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で45°だけ回転方向前進側にあるのであるから、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項5と同様の作用を達成することができる。
【0038】
請求項11の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で0°以上45°未満の角度だけ回転方向前進側にあるので、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項7と同様の作用を達成することができる。
【0039】
請求項12の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分と前記永久磁石回転子部分との間に、非磁性層が介在するので、リラクタンス回転子と永久磁石回転子の形状を任意に選定でき、最適な設計が可能であり、かつ、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項1から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0040】
請求項13の圧縮機であれば、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電動機を備えているので、高温で運転された場合、磁石磁束に依存する部分が少ないことに起因して、効率の低下が小さく、空調、冷凍機器に適用される場合、急冷の必要性から、高速運転をする用途に適している。また、鉄損が少なくなるため、効率が高く、長時間運転するような圧縮機用途には最適である。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明の電動機およびそれを用いた圧縮機の実施の形態を詳細に説明する。
【0042】
実施形態の説明の前に、d軸およびq軸の定義について触れておく。d軸とは、磁極中心の軸を言う。リラクタンス回転子のd軸とは、突極性を有する部分が極であるため、スリットの端部付近がd軸となり(例えば、図1のリラクタンス回転子部分を参照)、インダクタンスはLd>Lqとなる。一方、永久磁石回転子のd軸とは、永久磁石の極中心軸であり(例えば、図1の永久磁石回転子部分を参照)、埋込磁石型回転子の場合はインダクタンスはLq>Ldである。従って、この発明に示すような形態とした場合、リラクタンス回転子と永久磁石回転子のd軸およびq軸が異なることになる(例えば、図1を参照)。そこで、これらを融合したときのd軸およびq軸は、永久磁石回転子に倣って表現するものとするが、前記表現との混同を避けるために、d´軸、q´軸とする。この場合、インダクタンスはLq´>Ld´である。なお、リラクタンス回転子および永久磁石回転子の機器定数は、それぞれ、積厚全てがリラクタンス回転子、または、永久磁石回転子であった場合の機器定数である。
(実施形態1)
図1を用いて、実施形態1を説明する。
【0043】
回転子は,永久磁石11を有する永久磁石回転子部分1と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分2とを、軸方向に混在させてなる。その順序は、軸方向に、リラクタンス回転子部分2、永久磁石回転子部分1、リラクタンス回転子部分2の順となっており、上下のリラクタンス回転子部分2の形状および積厚は同一である。なお、13、23はボルト穴、14、24は回転子軸穴である。
【0044】
リラクタンス回転子部分2は、回転子鉄心内部に半径方向に複数のスリット21を有する。スリット21は、回転子の内側に凸の円弧形状であり、略同心円状に配置されている。スリット形状や層数は任意であるが、磁路の磁束密度を考慮した形状とする必要がある。
【0045】
一方、永久磁石回転子部分1は、リラクタンス回転子部分2の、最も内側にあるスリットの投影位置にあわせて永久磁石収納用スリット12を有し、前記永久磁石収納用スリット12に永久磁石11を埋設してなる。即ち永久磁石11の磁束が、リラクタンス回転子部分2を通して短絡することのないような位置に永久磁石11が埋設されている。永久磁石11の数は任意である。また、永久磁石収納用スリット12は半径方向に多層であっても良い。リラクタンス回転子部分2のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)は、永久磁石回転子部分1のd軸とq軸のリラクタンスの差(Lq−Ld)より大きく設計されている。つまり、リラクタンス回転子部分2は、d軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を大きくし、リラクタンストルクを大きくすることを念頭に設計されていて、永久磁石回転子部分1は、鎖交磁束を十分に大きくすることを念頭に設計されている。電動機全体としての鎖交磁束は、回転子全体に対する永久磁石回転子部分1の割合によって調整することができる。また、リラクタンス回転子部分2の、永久磁石11の軸方向投影面に位置するスリット21は、少なくとも永久磁石脱落防止のため、永久磁石部全体がスリットには対応しないようにすると、永久磁石11の位置が固定されて好適である。また、端板も不要となる。
【0046】
ここで、永久磁石回転子部分1のd軸はリラクタンス回転子部分2のq軸に一致し、全体としてはd´軸と一致している。
【0047】
図示しない固定子は、集中巻でも分布巻でも良いが、磁束の発生から考えると、固定子の電流により発生する磁束が等間隔となる分布巻のほうが,リラクタンストルクを有効に利用でき、好適である。また、電流位相β(ここで、βとは、q´軸からの進角とし、電気角で表現)は、リラクタンス回転子部分2のトルクが最大となる45°と、永久磁石回転子部分1のトルクが最大となる0°を越え、45°未満との間で、最適な値を採用すればよい。少なくとも、0°を超え、45°までの間で適当に選択すればよい。高速で、弱め磁束運転をする場合は、βが45°を超える場合があってもよい。
【0048】
この回転子の構成は、軸方向に関して上下対称であるため、軸方向に加振力が発生しない。しかしながら、ファンを駆動する場合のように一定方向に推進力が働く場合は、推進力とのバランスを考慮して、上下のリラクタンス回転子部分2の積厚を変えたり、リラクタンス回転子部分2、永久磁石回転子部分1の2段構成にしても良い。
【0049】
次に、減磁について考えてみる。回転子に、大きな減磁界が発生した場合、永久磁石回転子部分1より、リラクタンス回転子部分2のほうに磁束が逃げるため、全部が永久磁石回転子部分の場合に比べると、永久磁石11にかかる減磁界は小さくなる。
【0050】
この構成は、永久磁石11が少なく、かつ、永久磁石11の磁束が流れる磁路幅が十分に確保されているため、鉄損が少なくなり、特に高速運転に適している。また、磁石磁束に依存する割合が小さいため、高温での用途に適している。従って、空調、冷凍機器に用いられる圧縮機に適しているといえる。
【0051】
ここで、回転子全体に対する永久磁石回転子部分1の割合をc(0<c<1)とすると、
Ld´=Ld(永久磁石回転子部分)×c+Lq(リラクタンス回転子部分)×(1−c)
Lq´=Lq(永久磁石回転子部分)×c+Ld(リラクタンス回転子部分)×(1−c)
φa´=φa×c
となる。したがって、リラクタンストルクの有効利用からすれば、cは必要最小限を下回らない範囲で小さいほど良く、運転範囲と必要トルクを考慮して決定すればよい。
(実施形態2)
図2を用いて、実施形態2を説明する。
【0052】
リラクタンス回転子部分2および永久磁石回転子部分1の構成については、実施形態1と同様であるため,説明を省略する。
【0053】
永久磁石回転子部分1は、Lq−Ld>0であるため、リラクタンストルクを発生する。そのため、0<β<45°の範囲で最大トルクが発生する。最高効率となるのは、鉄損の関係から、最大トルクが発生するβより若干進めた位相で実現される場合が多い。ここでβの定義は、実施形態1で用いたものを使用する。すなわち、永久磁石回転子部分1のq軸(すなわちq´軸)からの進角を示す。そして、トルク最大となるβを、βmとする。
【0054】
一方、リラクタンス回転子部分2は、β=45°(ここでいうβとは、リラクタンス回転子部分2のd軸からの進角を示す。この定義は、今回だけである)でトルク最大となる。
【0055】
すなわち、リラクタンス回転子部分2と、永久磁石回転子部分1とは、最大トルクを発生する電流位相が異なる。そこで、リラクタンス回転子部分2も永久磁石回転子部分1も同時に最大トルクを発生するように配置させればよい。ここでは、最も良く用いる負荷点、または、最も大きいトルを必要とするような負荷点を考えればよい。
【0056】
図3は、永久磁石回転子の発生トルクを模式的に示したものである。マグネットトルクとリラクタンストルクの合計が発生トルクとなる。最大トルクを発生する電流位相は、0<β<45であり、この図の場合は、β=20〜30°で最大となっている。図4はリラクタンストルク回転子の発生トルクを模式的に示したものである。この場合、最大トルクを発生する電流位相は、β=45°(βの定義は、d軸からの進角とする)である。このまま、永久磁石回転子とリラクタンス回転子をある割合で足し合わせたとしても、お互いの最大トルク位相は異なるため、永久磁石回転子の最大トルクと、リラクタンス回転子の最大トルクの和にはならない。そこで、双方の最大トルク位相が一致するようにすれば、図5に示すように、永久磁石回転子の最大トルクと、リラクタンス回転子の最大トルクの和が、最大トルクとなる。
【0057】
そこで、永久磁石回転子部分1のq軸を、リラクタンス回転子部分2のd軸から、電気角で0°以上45°未満の角度だけ回転方向前進側に設けるとよい。具体的には、45−βmの角度だけ回転方向前進側に設けると総合トルクが最大となる。
【0058】
このとき、永久磁石回転子部分1の、永久磁石11の上に、必ずしもリラクタンス回転子部分2のスリット21がくるとは限らない。つまり、永久磁石11の磁束が短絡する恐れがある。そこで、リラクタンス回転子部分2と永久磁石回転子部分1との間には、非磁性層3を介在させると良い。具体的には、非磁性ステンレス、真鍮、樹脂等からなる非磁性層3が例示できる。
【0059】
運転には、q´軸から進めた位相で通電すると良く、通常、最大トルク制御、または、最大効率制御が行われる。また、高速運転時には、弱め磁束制御を行う。
(実施形態3)
図6を用いて、実施形態3を説明する。
【0060】
リラクタンス回転子部分2の構成については、実施形態1と同様であるため,説明を省略する。
【0061】
永久磁石回転子部分1は、回転子鉄心の表面に永久磁石11を設けた表面磁石型回転子である。永久磁石11は、瓦型として、複数個(通常極ごと)に分割されているが、リング状の永久磁石でも良い。永久磁石11の磁束の短絡防止のためには、永久磁石回転子部分1の外径よりリラクタンス回転子部分2の外形を若干小さくしても良い。この場合には、エアギャップが大きくなり、トルクが減少するという弊害があるが、図7のように、固定子4の内径に段差を設け、リラクタンス回転子部分2に対向する部分の固定子は内径を小さくすることにより、上記の弊害を低減することができる。なお、5は回転子軸である。
【0062】
このとき、永久磁石回転子部分1は、Lq−Ld=0であるため、β=0°で最大トルクが発生する。
【0063】
一方、リラクタンス回転子部分2は、β=45°(ここでいうβとは、リラクタンス回転子のd軸からの進角を示す。この定義は、今回だけである)でトルク最大となる。
【0064】
すなわち、リラクタンス回転子部分2と、永久磁石回転子部分1とは、最大トルクを発生する電流位相が異なる。そこで、リラクタンス回転子部分2も永久磁石回転子部分1も同時に最大トルクを発生するように配置させればよい。ここでは、最も良く用いる負荷点、または、最も大きいトルクを必要とするような負荷点を考えればよい。
【0065】
そこで、永久磁石回転子部分1のq軸を、リラクタンス回転子部分2のd軸から、電気角で45°だけ回転方向前進側に設けるとよい。
【0066】
図8は、永久磁石回転子部分1のトルクとリラクタンス回転子部分2のトルクとその和を示している。この構成により、双方の最大トルク位相がβ=0と一致するため、総合トルクも最大となる。
【0067】
【発明の効果】
請求項1の発明は、高速運転が可能で、かつ、大トルク、高効率の電動機を提供でき、特に、永久磁石量を低減でき、また、リラクタンストルクを主として用い、永久磁石を補助的に用いることにより、コギングトルクを小さくすることができ、−idによる磁束は、あえて、割合の小さい永久磁石回転子部分に集中することはなく、消磁の可能性を低くすることができ、永久磁石による磁束が小さく、逆起電圧も無視できる程度であるから、強烈な弱め磁束制御をしなくても高速での一定出力運転を可能とすることができ、永久磁石回転子部分の働きは、電機子反作用による負トルクを解消し、リラクタンスモータの欠点である力率を改善することであり、主たるトルクを発生することではないから、永久磁石モータの欠点を殆ど伴うことなく、リラクタンスモータの欠点を解消することができるという特有の効果を奏する。
【0068】
請求項2の発明は、軸方向に電磁力が発生しないため、騒音を小さくし、また軸受への負荷も少なくすることができるほか、請求項1と同様の効果を奏する。
【0069】
請求項3の発明は、永久磁石回転子部分の形状によらずリラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を最大とすることができる、設計の自由度を増すことができ、また、永久磁石回転子を、磁束を有効利用できるように設計できるほか、請求項1または請求項2と同様の効果を奏する。
【0070】
請求項4の発明は、リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を大きくすることができるほか、請求項1から請求項3の何れかと同様の効果を奏する。
【0071】
請求項5の発明は、リラクタンストルクは利用できないが、永久磁石回転子部分のギャップ磁束密度を正弦波に近づけることができるので、振動を低減できるとともに、制御を容易にすることができるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の効果を奏する。
【0072】
請求項6の発明は、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項5と同様の効果を奏する。
【0073】
請求項7の発明は、永久磁石回転子部分であっても、リラクタンストルクを利用することができるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の効果を奏する。
【0074】
請求項8の発明は、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項7と同様の効果を奏する。
【0075】
請求項9の発明は、永久磁石の脱落防止手段を不要にできるほか、請求項8と同様の効果を奏する。
【0076】
請求項10の発明は、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項5と同様の効果を奏する。
【0077】
請求項11の発明は、永久磁石回転子、リラクタンス回転子とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項7と同様の効果を奏する。
【0078】
請求項12の発明は、リラクタンス回転子部分と永久磁石回転子部分との形状を任意に選定でき、最適な設計が可能であり、かつ、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項1から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0079】
請求項13の発明は、高温で運転された場合、磁石磁束に依存する部分が少ないことに起因して、効率の低下が小さく、空調、冷凍機器に適用される場合、急冷の必要性から、高速運転をする用途に適しており、また、鉄損が少なくなるため、効率が高く、長時間運転するような圧縮機用途には最適であるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の電動機の一実施形態の回転子の構成要素である永久磁石回転子部分およびリラクタンス回転子部分をそれぞれ示す平面図である。
【図2】この発明の電動機の他の実施形態の回転子を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】永久磁石回転子の発生トルクを模式的に示す図である。
【図4】リラクタンス回転子の発生トルクを模式的に示す図である。
【図5】最大トルク位相を一致させた場合における発生トルクを模式的に示す図である。
【図6】この発明の電動機のさらに他の実施形態の回転子を概略的に示す分解斜視図である。
【図7】図6の回転子を採用した電動機の構成を概略的に示す中央縦断面図である。
【図8】最大トルク位相を一致させた場合における発生トルクを模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 永久磁石回転子部分
2 リラクタンス回転子部分
3 非磁性層
11 永久磁石
21 スリット
【発明の属する技術分野】
この発明は電動機およびそれを用いた圧縮機に関し、さらに詳細にいえば、永久磁石を有する永久磁石回転子部分と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分とを、軸方向に混在させてなる回転子を有する電動機およびそれを用いた圧縮機に関する。
【0002】
【従来の技術】
リラクタンストルクを利用するシンクロナスリラクタンス電動機は、インダクションモータに比べ、2次銅損が発生しないため、近年注目されている。しかしながら、力率が悪く、また、永久磁石を用いたインバータ駆動の同期電動機と比べると、トルクが低いため、必要とするトルクが大きい用途では、大型化してしまうという欠点があった。一方、永久磁石を用いたインバータ駆動の同期電動機では、永久磁石による鎖交磁束が大きいほどトルクが大きくなるが、電圧制限により、高速がまわせないという欠点があった。
【0003】
これらの課題を解決するために、例えば、特開2002−44920号公報では、半径方向に並ぶ多層スリットを有する回転子において、多層スリットの一部のスリットにのみ永久磁石を埋め込み、マグネットトルクとリラクタンストルクを利用するものが提案されている。上記公報によれば、永久磁石量を4分の1にしても、従来の永久磁石同期電動機と同等の効率、トルクが実現できる、とある。
【0004】
また、特開2001−339923号公報では、永久磁石を備えた第1の回転体部分を2つ設け、その間に磁気的突極性を備えた構造の第2の回転体部分を挿入し、回転軸の方向に連結した回転子を用いたモータであって、回転子の一部をリラクタンスモータとするものが提案されている。上記公報によれば、永久磁石量を減らすことができ、しかも、全体的なトルクを大きくし、高出力なモータとすることができる、とある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
通常、永久磁石を用いないシンクロナスリラクタンス電動機のトルクは、
T=Pn(Ld−Lq)idiq
で表される。ただし、Pn:極対数、Ld、Lq:d、q軸インダクタンス、id、iq:d、q軸電流である。ここで第二項が負の成分であり、少なくとも第二項を打ち消す程度の鎖交磁束φaを付加することにより、発生トルクは、
T=Pn{Ldidiq+(φa―Lqiq)id}
となる。また、限られたインバータ電圧において、電圧制限円は次式のようになる。
Va=[{(Riq+ωLdid)2+(Rid−ωLqiq+ωφa)2}]1/2
ただし、R:巻線抵抗、ω:回転角速度である。すなわち、高速まで回転可能で、かつ、高効率とするには、(Ld−Lq)を大きくしつつ、φaは、大きすぎてもいけなく、最適な値とすべきである。
【0006】
特開2002−44920号公報においては、次のような欠点を有する。
【0007】
第一に、永久磁石の埋め込む位置によっては、永久磁石の外側にスリットがあるため、磁束がスリット間の狭い磁路を通らねばならず、磁気飽和が発生しやすい。また、磁束が、磁極表面のうち、スリットに限定された範囲にしか流れず、コギングトルクの増大等の課題があった。
【0008】
第二に、永久磁石の磁束により、永久磁石を埋め込んだスリットの前後の磁路が磁気飽和し、d軸インダクタンスが低下してしまう。
【0009】
第三に、多層スリット型シンクロナスリラクタンス電動機のスリットに永久磁石を埋め込むため、永久磁石の形状をスリットにあわせるか、スリットの形状を永久磁石にあわせるかしなければならず、永久磁石の形状に制限を受けるか、または、スリットの形状が最大の(Ld−Lq)を得るような設計が困難であるか、どちらかの弊害があった。
【0010】
特開2001−339923号公報においては、次のような欠点を有する。
【0011】
主としてマグネットトルクを利用するモータであるから、コギングトルクが大きくなる。または、コギングトルク対策が必要であり、効率低下がある。
【0012】
リラクタンス回転子に行くが、公報の図6のような形状では、パーミアンスの問題から、殆どが永久磁石回転子にかかると考えられる。また、図7、図8の場合にも、磁路が狭いため、消磁については、永久磁石回転子部分のみの場合とさほど変わらない。
【0013】
弱め磁束制御を行う場合、リラクタンス回転子部分のd軸(永久磁石回転子部分から見ればq軸)磁路が容易に磁気飽和してしまい、高速での一定出力運転は困難である。
【0014】
【発明の目的】
この発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、永久磁石の磁束を有効に利用できるとともに、リラクタンスモータとしてのインダクタンスの差が磁気飽和により容易に低下してしまうことを防止することができる電動機およびそれを用いた圧縮機を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
請求項1の電動機は、略円筒形の回転子と、回転子の磁極に対し、わずかな空隙を持って対向する固定子とからなるものであって、
前記回転子は、永久磁石を有する永久磁石回転子部分と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分とを、軸方向に混在させ、リラクタンストルクと、それより小さいマグネットトルクとを利用して回転し、かつ、リラクタンス回転子部分の積厚を永久磁石回転子部分の積厚よりも大きく設定したものである。
【0016】
請求項2の電動機は、前記回転子として、リラクタンス回転子部分、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分の順に、3段の回転子部分からなるものを採用するものである。
【0017】
請求項3の電動機は、前記リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を、同一積厚単一であったと仮定したときの前記永久磁石回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Lq−Ld)より大きく設定したものである。
【0018】
請求項4の電動機は、前記リラクタンス回転子部分として、回転子鉄心内部に半径方向に複数のスリットを有するものを採用したものである。
【0019】
請求項5の電動機は、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心表面に永久磁石を設けた表面磁石型回転子を採用するものである。
【0020】
請求項6の電動機は、前記リラクタンス回転子部分の外径を、永久磁石回転子部分の外径より小さく設定したものである。
【0021】
請求項7の電動機は、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心内部に永久磁石を埋設した埋込磁石型回転子を採用するものである。
【0022】
請求項8の電動機は、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面には、少なくともスリットがあるものである。
【0023】
請求項9の電動機は、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面に位置するスリットは、少なくとも永久磁石脱落防止のため、永久磁石部の一部と対応する形状であるものである。
【0024】
請求項10の電動機は、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で45°だけ回転方向前進側にあるものである。
【0025】
請求項11の電動機は、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で0°以上45°未満の角度だけ回転方向前進側にあるものである。
【0026】
請求項12の電動機は、前記リラクタンス回転子部分と前記永久磁石回転子部分との間には、非磁性層が介在するものである。
【0027】
請求項13の圧縮機は、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電動機を備えたものである。
【0028】
【作用】
請求項1の電動機であれば、略円筒形の回転子と、回転子の磁極に対し、わずかな空隙を持って対向する固定子とからなるものであって、
前記回転子は、永久磁石を有する永久磁石回転子部分と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分とを、軸方向に混在させ、リラクタンストルクと、それより小さいマグネットトルクとを利用して回転し、かつ、リラクタンス回転子部分の積厚を永久磁石回転子部分の積厚よりも大きく設定したのであるから、高速運転が可能で、かつ、大トルク、高効率の電動機を提供でき、特に、永久磁石量を低減できる。また、リラクタンストルクを主として用い、永久磁石を補助的に用いることになり、コギングトルクを小さくすることができる。−idによる磁束は、あえて、割合の小さい永久磁石回転子部分に集中することはなく、消磁の可能性を低くすることができる。永久磁石による磁束が小さく、逆起電圧も無視できる程度であるから、強烈な弱め磁束制御をしなくても高速での一定出力運転を可能とすることができる。永久磁石回転子部分の働きは、電機子反作用による負トルクを解消し、リラクタンスモータの欠点である力率を改善することであり、主たるトルクを発生することではないから、永久磁石モータの欠点を殆ど伴うことなく、リラクタンスモータの欠点を解消することができる。
【0029】
請求項2の電動機であれば、前記回転子として、リラクタンス回転子部分、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分の順に、3段の回転子部分からなるものを採用するのであるから、軸方向に電磁力が発生せず、騒音を小さく、また軸受への負荷も小さくできるほか、請求項1と同様の作用を達成することができる。
【0030】
請求項3の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を、同一積厚単一であったと仮定したときの前記永久磁石回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Lq−Ld)より大きく設定したのであるから、永久磁石回転子部分の形状によらずリラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を最大となるようにする設計の自由度を増すことができ、また、永久磁石回転子部分が磁束を有効利用できるように設計することができるほか、請求項1または請求項2と同様の作用を達成することができる。
【0031】
請求項4の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分として、回転子鉄心内部に半径方向に複数のスリットを有するものを採用したのであるから、リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を大きくすることができるほか、請求項1から請求項3の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0032】
請求項5の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心表面に永久磁石を設けた表面磁石型回転子を採用するのであるから、リラクタンストルクは利用できないが、永久磁石回転子部分のギャップ磁束密度を正弦波に近づけることができ、振動を低減できるとともに、制御を容易にできるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0033】
請求項6の電動機であれば前記リラクタンス回転子部分の外径を、永久磁石回転子部分の外径より小さく設定したものであるから、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項5と同様の作用を達成することができる。
【0034】
請求項7の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分として、回転子鉄心内部に永久磁石を埋設した埋込磁石型回転子を採用するのであるから、永久磁石回転子部分であっても、リラクタンストルクを利用することができるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0035】
請求項8の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面には、少なくともスリットがあるのであるから、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項7と同様の作用を達成することができる。
【0036】
請求項9の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分の、永久磁石の軸方向投影面に位置するスリットは、少なくとも永久磁石脱落防止のため、永久磁石部の一部と対応する形状であるから、永久磁石の脱落防止手段を不要にできるほか、請求項8と同様の作用を達成することができる。
【0037】
請求項10の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で45°だけ回転方向前進側にあるのであるから、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項5と同様の作用を達成することができる。
【0038】
請求項11の電動機であれば、前記永久磁石回転子部分のq軸が、前記リラクタンス回転子部分のd軸から電気角で0°以上45°未満の角度だけ回転方向前進側にあるので、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項7と同様の作用を達成することができる。
【0039】
請求項12の電動機であれば、前記リラクタンス回転子部分と前記永久磁石回転子部分との間に、非磁性層が介在するので、リラクタンス回転子と永久磁石回転子の形状を任意に選定でき、最適な設計が可能であり、かつ、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項1から請求項11の何れかと同様の作用を達成することができる。
【0040】
請求項13の圧縮機であれば、請求項1から請求項12のいずれかに記載の電動機を備えているので、高温で運転された場合、磁石磁束に依存する部分が少ないことに起因して、効率の低下が小さく、空調、冷凍機器に適用される場合、急冷の必要性から、高速運転をする用途に適している。また、鉄損が少なくなるため、効率が高く、長時間運転するような圧縮機用途には最適である。
【0041】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、この発明の電動機およびそれを用いた圧縮機の実施の形態を詳細に説明する。
【0042】
実施形態の説明の前に、d軸およびq軸の定義について触れておく。d軸とは、磁極中心の軸を言う。リラクタンス回転子のd軸とは、突極性を有する部分が極であるため、スリットの端部付近がd軸となり(例えば、図1のリラクタンス回転子部分を参照)、インダクタンスはLd>Lqとなる。一方、永久磁石回転子のd軸とは、永久磁石の極中心軸であり(例えば、図1の永久磁石回転子部分を参照)、埋込磁石型回転子の場合はインダクタンスはLq>Ldである。従って、この発明に示すような形態とした場合、リラクタンス回転子と永久磁石回転子のd軸およびq軸が異なることになる(例えば、図1を参照)。そこで、これらを融合したときのd軸およびq軸は、永久磁石回転子に倣って表現するものとするが、前記表現との混同を避けるために、d´軸、q´軸とする。この場合、インダクタンスはLq´>Ld´である。なお、リラクタンス回転子および永久磁石回転子の機器定数は、それぞれ、積厚全てがリラクタンス回転子、または、永久磁石回転子であった場合の機器定数である。
(実施形態1)
図1を用いて、実施形態1を説明する。
【0043】
回転子は,永久磁石11を有する永久磁石回転子部分1と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分2とを、軸方向に混在させてなる。その順序は、軸方向に、リラクタンス回転子部分2、永久磁石回転子部分1、リラクタンス回転子部分2の順となっており、上下のリラクタンス回転子部分2の形状および積厚は同一である。なお、13、23はボルト穴、14、24は回転子軸穴である。
【0044】
リラクタンス回転子部分2は、回転子鉄心内部に半径方向に複数のスリット21を有する。スリット21は、回転子の内側に凸の円弧形状であり、略同心円状に配置されている。スリット形状や層数は任意であるが、磁路の磁束密度を考慮した形状とする必要がある。
【0045】
一方、永久磁石回転子部分1は、リラクタンス回転子部分2の、最も内側にあるスリットの投影位置にあわせて永久磁石収納用スリット12を有し、前記永久磁石収納用スリット12に永久磁石11を埋設してなる。即ち永久磁石11の磁束が、リラクタンス回転子部分2を通して短絡することのないような位置に永久磁石11が埋設されている。永久磁石11の数は任意である。また、永久磁石収納用スリット12は半径方向に多層であっても良い。リラクタンス回転子部分2のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)は、永久磁石回転子部分1のd軸とq軸のリラクタンスの差(Lq−Ld)より大きく設計されている。つまり、リラクタンス回転子部分2は、d軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を大きくし、リラクタンストルクを大きくすることを念頭に設計されていて、永久磁石回転子部分1は、鎖交磁束を十分に大きくすることを念頭に設計されている。電動機全体としての鎖交磁束は、回転子全体に対する永久磁石回転子部分1の割合によって調整することができる。また、リラクタンス回転子部分2の、永久磁石11の軸方向投影面に位置するスリット21は、少なくとも永久磁石脱落防止のため、永久磁石部全体がスリットには対応しないようにすると、永久磁石11の位置が固定されて好適である。また、端板も不要となる。
【0046】
ここで、永久磁石回転子部分1のd軸はリラクタンス回転子部分2のq軸に一致し、全体としてはd´軸と一致している。
【0047】
図示しない固定子は、集中巻でも分布巻でも良いが、磁束の発生から考えると、固定子の電流により発生する磁束が等間隔となる分布巻のほうが,リラクタンストルクを有効に利用でき、好適である。また、電流位相β(ここで、βとは、q´軸からの進角とし、電気角で表現)は、リラクタンス回転子部分2のトルクが最大となる45°と、永久磁石回転子部分1のトルクが最大となる0°を越え、45°未満との間で、最適な値を採用すればよい。少なくとも、0°を超え、45°までの間で適当に選択すればよい。高速で、弱め磁束運転をする場合は、βが45°を超える場合があってもよい。
【0048】
この回転子の構成は、軸方向に関して上下対称であるため、軸方向に加振力が発生しない。しかしながら、ファンを駆動する場合のように一定方向に推進力が働く場合は、推進力とのバランスを考慮して、上下のリラクタンス回転子部分2の積厚を変えたり、リラクタンス回転子部分2、永久磁石回転子部分1の2段構成にしても良い。
【0049】
次に、減磁について考えてみる。回転子に、大きな減磁界が発生した場合、永久磁石回転子部分1より、リラクタンス回転子部分2のほうに磁束が逃げるため、全部が永久磁石回転子部分の場合に比べると、永久磁石11にかかる減磁界は小さくなる。
【0050】
この構成は、永久磁石11が少なく、かつ、永久磁石11の磁束が流れる磁路幅が十分に確保されているため、鉄損が少なくなり、特に高速運転に適している。また、磁石磁束に依存する割合が小さいため、高温での用途に適している。従って、空調、冷凍機器に用いられる圧縮機に適しているといえる。
【0051】
ここで、回転子全体に対する永久磁石回転子部分1の割合をc(0<c<1)とすると、
Ld´=Ld(永久磁石回転子部分)×c+Lq(リラクタンス回転子部分)×(1−c)
Lq´=Lq(永久磁石回転子部分)×c+Ld(リラクタンス回転子部分)×(1−c)
φa´=φa×c
となる。したがって、リラクタンストルクの有効利用からすれば、cは必要最小限を下回らない範囲で小さいほど良く、運転範囲と必要トルクを考慮して決定すればよい。
(実施形態2)
図2を用いて、実施形態2を説明する。
【0052】
リラクタンス回転子部分2および永久磁石回転子部分1の構成については、実施形態1と同様であるため,説明を省略する。
【0053】
永久磁石回転子部分1は、Lq−Ld>0であるため、リラクタンストルクを発生する。そのため、0<β<45°の範囲で最大トルクが発生する。最高効率となるのは、鉄損の関係から、最大トルクが発生するβより若干進めた位相で実現される場合が多い。ここでβの定義は、実施形態1で用いたものを使用する。すなわち、永久磁石回転子部分1のq軸(すなわちq´軸)からの進角を示す。そして、トルク最大となるβを、βmとする。
【0054】
一方、リラクタンス回転子部分2は、β=45°(ここでいうβとは、リラクタンス回転子部分2のd軸からの進角を示す。この定義は、今回だけである)でトルク最大となる。
【0055】
すなわち、リラクタンス回転子部分2と、永久磁石回転子部分1とは、最大トルクを発生する電流位相が異なる。そこで、リラクタンス回転子部分2も永久磁石回転子部分1も同時に最大トルクを発生するように配置させればよい。ここでは、最も良く用いる負荷点、または、最も大きいトルを必要とするような負荷点を考えればよい。
【0056】
図3は、永久磁石回転子の発生トルクを模式的に示したものである。マグネットトルクとリラクタンストルクの合計が発生トルクとなる。最大トルクを発生する電流位相は、0<β<45であり、この図の場合は、β=20〜30°で最大となっている。図4はリラクタンストルク回転子の発生トルクを模式的に示したものである。この場合、最大トルクを発生する電流位相は、β=45°(βの定義は、d軸からの進角とする)である。このまま、永久磁石回転子とリラクタンス回転子をある割合で足し合わせたとしても、お互いの最大トルク位相は異なるため、永久磁石回転子の最大トルクと、リラクタンス回転子の最大トルクの和にはならない。そこで、双方の最大トルク位相が一致するようにすれば、図5に示すように、永久磁石回転子の最大トルクと、リラクタンス回転子の最大トルクの和が、最大トルクとなる。
【0057】
そこで、永久磁石回転子部分1のq軸を、リラクタンス回転子部分2のd軸から、電気角で0°以上45°未満の角度だけ回転方向前進側に設けるとよい。具体的には、45−βmの角度だけ回転方向前進側に設けると総合トルクが最大となる。
【0058】
このとき、永久磁石回転子部分1の、永久磁石11の上に、必ずしもリラクタンス回転子部分2のスリット21がくるとは限らない。つまり、永久磁石11の磁束が短絡する恐れがある。そこで、リラクタンス回転子部分2と永久磁石回転子部分1との間には、非磁性層3を介在させると良い。具体的には、非磁性ステンレス、真鍮、樹脂等からなる非磁性層3が例示できる。
【0059】
運転には、q´軸から進めた位相で通電すると良く、通常、最大トルク制御、または、最大効率制御が行われる。また、高速運転時には、弱め磁束制御を行う。
(実施形態3)
図6を用いて、実施形態3を説明する。
【0060】
リラクタンス回転子部分2の構成については、実施形態1と同様であるため,説明を省略する。
【0061】
永久磁石回転子部分1は、回転子鉄心の表面に永久磁石11を設けた表面磁石型回転子である。永久磁石11は、瓦型として、複数個(通常極ごと)に分割されているが、リング状の永久磁石でも良い。永久磁石11の磁束の短絡防止のためには、永久磁石回転子部分1の外径よりリラクタンス回転子部分2の外形を若干小さくしても良い。この場合には、エアギャップが大きくなり、トルクが減少するという弊害があるが、図7のように、固定子4の内径に段差を設け、リラクタンス回転子部分2に対向する部分の固定子は内径を小さくすることにより、上記の弊害を低減することができる。なお、5は回転子軸である。
【0062】
このとき、永久磁石回転子部分1は、Lq−Ld=0であるため、β=0°で最大トルクが発生する。
【0063】
一方、リラクタンス回転子部分2は、β=45°(ここでいうβとは、リラクタンス回転子のd軸からの進角を示す。この定義は、今回だけである)でトルク最大となる。
【0064】
すなわち、リラクタンス回転子部分2と、永久磁石回転子部分1とは、最大トルクを発生する電流位相が異なる。そこで、リラクタンス回転子部分2も永久磁石回転子部分1も同時に最大トルクを発生するように配置させればよい。ここでは、最も良く用いる負荷点、または、最も大きいトルクを必要とするような負荷点を考えればよい。
【0065】
そこで、永久磁石回転子部分1のq軸を、リラクタンス回転子部分2のd軸から、電気角で45°だけ回転方向前進側に設けるとよい。
【0066】
図8は、永久磁石回転子部分1のトルクとリラクタンス回転子部分2のトルクとその和を示している。この構成により、双方の最大トルク位相がβ=0と一致するため、総合トルクも最大となる。
【0067】
【発明の効果】
請求項1の発明は、高速運転が可能で、かつ、大トルク、高効率の電動機を提供でき、特に、永久磁石量を低減でき、また、リラクタンストルクを主として用い、永久磁石を補助的に用いることにより、コギングトルクを小さくすることができ、−idによる磁束は、あえて、割合の小さい永久磁石回転子部分に集中することはなく、消磁の可能性を低くすることができ、永久磁石による磁束が小さく、逆起電圧も無視できる程度であるから、強烈な弱め磁束制御をしなくても高速での一定出力運転を可能とすることができ、永久磁石回転子部分の働きは、電機子反作用による負トルクを解消し、リラクタンスモータの欠点である力率を改善することであり、主たるトルクを発生することではないから、永久磁石モータの欠点を殆ど伴うことなく、リラクタンスモータの欠点を解消することができるという特有の効果を奏する。
【0068】
請求項2の発明は、軸方向に電磁力が発生しないため、騒音を小さくし、また軸受への負荷も少なくすることができるほか、請求項1と同様の効果を奏する。
【0069】
請求項3の発明は、永久磁石回転子部分の形状によらずリラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を最大とすることができる、設計の自由度を増すことができ、また、永久磁石回転子を、磁束を有効利用できるように設計できるほか、請求項1または請求項2と同様の効果を奏する。
【0070】
請求項4の発明は、リラクタンス回転子部分のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)を大きくすることができるほか、請求項1から請求項3の何れかと同様の効果を奏する。
【0071】
請求項5の発明は、リラクタンストルクは利用できないが、永久磁石回転子部分のギャップ磁束密度を正弦波に近づけることができるので、振動を低減できるとともに、制御を容易にすることができるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の効果を奏する。
【0072】
請求項6の発明は、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項5と同様の効果を奏する。
【0073】
請求項7の発明は、永久磁石回転子部分であっても、リラクタンストルクを利用することができるほか、請求項1から請求項4の何れかと同様の効果を奏する。
【0074】
請求項8の発明は、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項7と同様の効果を奏する。
【0075】
請求項9の発明は、永久磁石の脱落防止手段を不要にできるほか、請求項8と同様の効果を奏する。
【0076】
請求項10の発明は、永久磁石回転子部分、リラクタンス回転子部分とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項5と同様の効果を奏する。
【0077】
請求項11の発明は、永久磁石回転子、リラクタンス回転子とも、同時に最大トルクが発生するような電流位相で運転できるほか、請求項7と同様の効果を奏する。
【0078】
請求項12の発明は、リラクタンス回転子部分と永久磁石回転子部分との形状を任意に選定でき、最適な設計が可能であり、かつ、永久磁石の磁束がリラクタンス回転子部分を介して短絡することを防止できるほか、請求項1から請求項11の何れかと同様の効果を奏する。
【0079】
請求項13の発明は、高温で運転された場合、磁石磁束に依存する部分が少ないことに起因して、効率の低下が小さく、空調、冷凍機器に適用される場合、急冷の必要性から、高速運転をする用途に適しており、また、鉄損が少なくなるため、効率が高く、長時間運転するような圧縮機用途には最適であるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の電動機の一実施形態の回転子の構成要素である永久磁石回転子部分およびリラクタンス回転子部分をそれぞれ示す平面図である。
【図2】この発明の電動機の他の実施形態の回転子を概略的に示す分解斜視図である。
【図3】永久磁石回転子の発生トルクを模式的に示す図である。
【図4】リラクタンス回転子の発生トルクを模式的に示す図である。
【図5】最大トルク位相を一致させた場合における発生トルクを模式的に示す図である。
【図6】この発明の電動機のさらに他の実施形態の回転子を概略的に示す分解斜視図である。
【図7】図6の回転子を採用した電動機の構成を概略的に示す中央縦断面図である。
【図8】最大トルク位相を一致させた場合における発生トルクを模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 永久磁石回転子部分
2 リラクタンス回転子部分
3 非磁性層
11 永久磁石
21 スリット
Claims (13)
- 略円筒形の回転子と、回転子の磁極に対し、わずかな空隙を持って対向する固定子とからなる電動機において、
前記回転子は、永久磁石(11)を有する永久磁石回転子部分(1)と、永久磁石を有せずd軸とq軸のリラクタンスの差によってリラクタンストルクを発生するリラクタンス回転子部分(2)とを、軸方向に混在させ、リラクタンストルクと、それより小さいマグネットトルクとを利用して回転し、かつ、リラクタンス回転子部分(2)の積厚を永久磁石回転子部分(1)の積厚よりも大きく設定したものであることを特徴とする電動機。 - 前記回転子は、リラクタンス回転子部分(2)、永久磁石回転子部分(1)、リラクタンス回転子部分(2)の順に、3段の回転子部分からなるものである請求項1記載の電動機。
- 前記リラクタンス回転子部分(2)のd軸とq軸のリラクタンスの差(Ld−Lq)は、同一積厚単一であったと仮定したときの前記永久磁石回転子部分(1)のd軸とq軸のリラクタンスの差(Lq−Ld)より大きい、請求項1または請求項2記載の電動機。
- 前記リラクタンス回転子部分(2)は、回転子鉄心内部に半径方向に複数のスリット(21)を有する請求項1から請求項3のいずれかに記載の電動機。
- 前記永久磁石回転子部分(1)は、回転子鉄心表面に永久磁石(11)を設けた表面磁石型回転子である請求項1から請求項4のいずれかに記載の電動機。
- 前記リラクタンス回転子部分(2)の外径は、永久磁石回転子部分(1)の外径より小さい請求項5記載の電動機。
- 前記永久磁石回転子部分(1)は、回転子鉄心内部に永久磁石(11)を埋設した埋込磁石型回転子である請求項1から請求項4のいずれかに記載の電動機。
- 前記リラクタンス回転子部分(2)の、永久磁石(11)の軸方向投影面には、少なくともスリット(21)がある請求項7記載の電動機。
- 前記リラクタンス回転子部分(2)の、永久磁石(11)の軸方向投影面に位置するスリット(21)は、少なくとも永久磁石脱落防止のため、永久磁石(11)の一部と対応する形状である請求項8記載の電動機。
- 前記永久磁石回転子部分(1)のq軸は、前記リラクタンス回転子部分(2)のd軸から電気角で45°だけ回転方向前進側にある請求項5記載の電動機。
- 前記永久磁石回転子部分(1)のq軸は、前記リラクタンス回転子部分(2)のd軸から電気角で0°以上45°未満の角度だけ回転方向前進側にある請求項7記載の電動機。
- 前記リラクタンス回転子部分(2)と前記永久磁石回転子部分(1)との間には、非磁性層(3)が介在する請求項1から請求項11のいずれかに記載の電動機。
- 請求項1から請求項12のいずれかに記載の電動機を備えた圧縮機。
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