JP2004087454A - メタノール燃料電池の電極用合金触媒、該触媒の製造方法及びメタノール燃料電池 - Google Patents
メタノール燃料電池の電極用合金触媒、該触媒の製造方法及びメタノール燃料電池 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】一層高いメタノール酸化活性を有し、吸着種による被毒を受け難い、メタノール燃料電池を提供する。
【解決手段】一般式(1)、AxByCz(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有し、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する三元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極及び/又は酸素極に使用するか、又は一般式(2)、AxByCzDw(式中、A、B、C、x、y及びzは前記定義と同じであり、DはRuであり、5at%≦w≦30at%である)で示される組成を有し、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する四元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極に使用する。
【選択図】 無し
【解決手段】一般式(1)、AxByCz(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有し、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する三元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極及び/又は酸素極に使用するか、又は一般式(2)、AxByCzDw(式中、A、B、C、x、y及びzは前記定義と同じであり、DはRuであり、5at%≦w≦30at%である)で示される組成を有し、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する四元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極に使用する。
【選択図】 無し
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はメタノール電池用触媒及びその製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、CO被毒性を改善し、更にメタノール酸化活性を向上させた、メタノール燃料電池用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体燃料であるメタノールを直接使用するメタノール燃料電池は、燃料の取り扱い易さに加え、安価な燃料ということで家庭用や産業用の比較的小出力規模の電源として期待されている。
【0003】
メタノールー酸素燃料電池の理論出力電圧は、水素燃料のものとほぼ同じ1.2V(25℃)であり、原理的には同様の特性が期待できる。このため、メタノールの陽極酸化反応については数多くの研究がなされているが、充分な活性を有するメタノールの酸化触媒は未だ見いだされていないのが現状である。
【0004】
例えば、白金触媒の場合には、メタノール燃料電池のメタノール極における陽極酸化反応の過電圧は、かなり大きくなる。そのため、メタノール燃料電池の端子電圧は、空気または酸素極における酸素還元反応の過電圧とあいまって軽負荷状態でも既に低く、さらに出力電流の増加とともに低下し、その値は熱力学的データから期待できる値よのも大幅に小さくなる。
【0005】
また、従来は導電性のカーボン担体に白金単独の他に、白金−ルテニウム合金(例えば、特許文献1参照)あるいは白金−スズ合金(例えば、特許文献2参照)を担持してメタノール酸化活性の向上を図る試みがなされていた。しかし、このような白金系の触媒を大量に使用してもメタノールの酸化反応は遅く、大電流を取り出すことが不可能であり、そのため現在でも、メタノール酸化活性の優れた触媒の開発が強く望まれている。
【0006】
さらにまた、特許文献3にはNiPt、NiPd、NiRu、CoPt、CoPd、CoRu、MnPt、MnPd及びMnRuからなる群から選択される少なくとも1種類の合金触媒をアノード極に用いることが開示されている。これらの合金触媒はCO被毒特性を改善する材料であるが、メタノール燃料電池に使用されている強酸性の高分子固体電解質であるデュポン社製のナフィオン膜に対する耐酸性に乏しく実用には適していない。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−111440号公報
【特許文献2】
特開平2−114452号公報
【特許文献3】
特開平8−66632号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来のメタノール燃料電池用の電極触媒においては、白金を主体とする貴金属元素、又はこれらとの合金系の触媒を比較的比表面積の高い(数十〜数千m2/g)導電性のカーボン担体に高分散に担持させることにより、メタノール酸化を向上させようとする研究努力が長くなされてきている。しかし、白金はメタノール酸化に対する活性は比較的高いものの、メタノール酸化過程におけるCO型の吸着種が触媒表面を被毒し、活性低下を引き起こすことが知られている。従って、この白金表面の被毒を緩和するために、ホルマリン還元法や水素還元法で作製された白金−ルテニウム合金や白金−スズ合金または白金と他の貴金属元素との合金化により、メタノール酸化活性の向上が図られているが、必ずしも満足のいくものではなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、従来の電極触媒に比べて、更に一層高いメタノール酸化活性を有し、吸着種による被毒を受け難い、すなわち長期的に触媒の活性が持続し得る、メタノール燃料電池用触媒及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、メタノール燃料電池において、メタノール極及び/又は酸素極に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する合金触媒を使用することにより解決される。
【0011】
本発明者が鋭意検討を行った結果、メタノール燃料電池において、メタノール極及び酸素極のうちの何れか一方又は両方に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(1)、
AxByCz (1)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する三元系合金触媒を使用することにより、メタノール燃料電池に使用されている強酸性の高分子固体電解質であるデュポン社製のナフィオン膜に対する耐酸性が向上するばかりか、メタノール高酸化活性を有し、CO吸着種による被毒を受け難くなることを見出した。更に、L10規則相に相転移させる温度を低下させることができることも見出した。
【0012】
また、メタノール燃料電池において、メタノール極に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(2)、
AxByCzDw (2)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、DはRuであり、5at%≦w≦30at%であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する四元系合金触媒を使用することにより、メタノール燃料電池の出力を一層向上させることができることを見出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の合金触媒において、少なくとも部分的にL10規則相を取り得る基本的な合金成分は、FePt、FePd、CoPt又はNiPtからなる2元系成分である。CoPd及びNiPdからなる二元系成分は熱処理を行ってもL10規則相への相転移を起こさないので、本発明の合金触媒成分から除外される。
【0014】
これらの二元系合金触媒成分は、前記組成範囲において熱処理により、少なくとも部分的にL10規則相に相転移を起こす。L10規則相ではface centered tetragonal(γ1相)の結晶構造をとり、Fe、Co又はNiとPtまたはPdとが、c軸方向に層状に配列する。少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する合金が耐酸性と共にメタノール高酸化活性を有し、CO吸着種による被毒を受け難くなる原因は未だ明らかではないが、前述したFe、Co又はNiとPtまたはPdとの層状構造が合金触媒表面の電子状態を変化させている事が原因と推測される。言うまでもなく、完全かつ全体的にL10規則相の結晶構造を有する合金触媒も、本発明におけるメタノール燃料電池のメタノール極及び/又は酸素極として使用できる。
【0015】
通常のFePt、CoPt、FePd及びNiPt二元系合金ではL10規則相へ相転移させるための熱処理温度は一般的に、500〜600℃であるが、工業的にはより低温でL10規則相に転移させられる事が望まれる。本発明によれば、B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種類の元素を、2at%〜30at%添加することにより、L10規則相への転移温度を300℃〜500℃の範囲にまで低下させることができる。二元系合金の場合のL10規則相への転移温度よりも100℃以上低下させることが好ましい。L10相への相転移温度を100℃以上低下させることは工業的観点から重要である。添加元素が2at%未満ではL10規則相への相転移温度を十分に低下させることができず、30at%を越えるとその効果が飽和する。
【0016】
上記熱処理による合金微粒子のL10規則相への相転移は、X線回折法により確認できる。熱処理後、L10規則相に基づく(001),(110),(111),(200),(002),(201),(112),(220),(202),(221),(130),(311),(113),(222),(203),(312)面からの回折ピークが観測されれば、L10規則相への相転移が確認される。
【0017】
更に、前記一般式(1)で示される三元系合金にRuを5at%〜30at%添加することにより、端子電圧を向上させることができる。端子電圧が向上する理由は、RuがCOの酸化に対して活性であり、メタノールの酸化過電圧が低下するためと思われる。従って、Ruを添加した前記一般式(2)で示される四元系合金触媒はメタノール極のみに使用することが好ましい。Ruの添加量が5at%未満の場合、端子電圧の向上効果が不十分であり、一方、Ruの添加量が30at%超の場合、端子電圧の向上効果が飽和し、不経済となる。なお、言うまでもなく、前記一般式(2)で示される四元系合金触媒も、前記一般式(1)で示される三元系合金触媒と同様に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有し、かつ、L10規則相への相転移温度を低下させることができる。一般式(2)で示される四元系合金触媒をメタノール極に使用する場合、酸素極は前記一般式(1)で示される三元系合金触媒であることが好ましい。しかし、これ以外の合金触媒を酸素極として使用することもできる。例えば、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有するFePt、CoPt、FePd及びNiPt二元系合金触媒を酸素極として使用することができる。
【0018】
本発明の三元系又は四元系合金微粒子の粒子径は、高活性を得るために、1nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜10nmの範囲内が一層好ましく、1nm〜5nmの範囲内であることが特に好ましい。合金微粒子の粒子径が1nm未満では分散性が低下するなどの不都合が生じるので好ましくない。一方、合金微粒子の粒子径が50nm超の場合、メタノール燃料電池用電極触媒として高活性を得ることができない。
【0019】
また、固体高分子型燃料電池では、高電流密度での運転、高いガス拡散性が求められるため、電極層の厚さを薄くし、電極層内に触媒粒子を分散性よく存在させるとともに触媒量を確保することが必要である。また担体に触媒粒子を担持した担持触媒は、好ましい粒径の触媒粒子を分散性よく得るのに好適である。担持触媒では触媒量を確保するために、触媒は担体に対して10〜60重量%で担持されていることが好ましい。
【0020】
本発明の三元系又は四元系合金微粒子触媒は担体に担持させてメタノール電極及び/又は酸素極として使用することが好ましい。担体に触媒粒子を担持した担持触媒は、好ましい粒径の触媒粒子を分散性よく得るのに好適である。担持触媒では、触媒量を確保するために、三元系又は四元系合金微粒子触媒は担体に対して5重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましい。三元系又は四元系合金微粒子触媒の担持量が5重量%未満の場合、十分な触媒作用が発揮されない。一方、担持量が60重量%超の場合、触媒作用が飽和し不経済となるだけである。
【0021】
担持触媒に使用する担体としては、電極触媒の担体として集電体の機能を果たす導電性と、触媒使用条件下での耐食性とを有する炭素材料が好ましい。その中でも特に、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトなどが好適であり、担体の比表面積としては、60〜3000m2/gを有するものが好ましい。
【0022】
本発明の三元系又は四元系合金微粒子触媒を使用する、メタノール燃料電池のアノード用ガス拡散電極は、通常の既知の手法にしたがって製造することができる。すなわち、メタノール極は、上記触媒をポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性樹脂結着材で保持し、多孔質体のシート状のガス拡散電極とする。―方、カソードを構成する空気または酸素極は上記三元系触媒又はカーボン担持白金あるいは前記二元系合金などの触媒をポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性樹脂結着材で保持し、同様のガス拡散電極とすることができる。
【0023】
次に、本発明による合金触媒の製造方法について具体的に説明する。本発明による前記一般式(1)で示される合金触媒は、
(a)有機保護剤又は活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又はその錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又はその錯体及と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iii)B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の添加元素の塩又はその錯体とを溶解させ、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
【0024】
また、本発明による前記一般式(2)で示される合金触媒は、
(a)有機保護剤又は活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又はその錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又はその錯体及と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iii)B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の添加元素の塩又はその錯体と、
(iv)Ru添加元素の塩又はその錯体とを溶解させるステップと、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
【0025】
要するに、一般式(1)又は一般式(2)で示される合金微粒子は基本的に、アルコール還元法で合成する。アルコール系の溶媒に合金微粒子形成金属の供給源を溶解させ、アルコール系溶媒の沸点近傍の温度で還流する。アルコール(R−OH)が加熱還流中に金属イオンを還元し、自らは酸化されてアルデヒド(R−CHO)に変化する。本発明で使用されるアルコールとしては、沸点の高いアルコールが高温での還流が出来るため還元速度が高まり好ましい。使用に適したアルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n−アミルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、2−エトキシアルコール及び1,2−ヘキサデカンジオールが挙げられる。これらアルコールは1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。通常、アルコール単独では、その酸化還元電位の大きさから遷移金属の還元剤としては十分ではない。しかし、反応過程で触媒作用を有する貴金属(Pt又はPd)が存在するため、これらの貴金属と遷移金属イオンを共存させ、且つアルコールの沸点で加熱還流させることによりFe、Co又はNiなどの遷移金属も同時に還元析出し、遷移金属と貴金属から成る金属合金微粒子が生成すると考えられる。また、エチルアルコールの様な沸点の低いアルコールでも加圧下(オートクレープ法)で還流すれば使用する事が出来る。還流の際、合金微粒子の酸化を防止し且つ合成中に水や副生成物を除去するため反応系内に窒素やAr等の不活性ガスを流した不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0026】
本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示される合金触媒を少なくとも部分的にL10規則相に相転移させるため、合金微粒子を水素などの還元性雰囲気又は窒素、Ar、ヘリウム等の不活性雰囲気中、酸素濃度を5ppm以下に保って熱処理を行う。酸素濃度が5ppmより大きいと、熱処理中に金属合金微粒子が酸化する。従って、酸素濃度はゼロであることが最も好ましい。この熱処理は一般的に、300℃〜500℃の範囲内の温度で行うことが好ましい。熱処理温度が300℃未満では、金属合金微粒子のL10規則相への相転移が起こらないことがある。一方、熱処理温度が500℃超では、金属合金微粒子同士がシンタリングを起こし、微粒子の粒径が50nmよりも大きくなり過ぎることがあるので好ましくない。また、熱処理時間は、使用する熱処理温度に左右されるが、一般的に、30分間〜1時間の範囲内である。加熱時間が30分間未満では相転移が起こらない可能性がある。一方、加熱時間が1時間超では、相転移が飽和し、不経済となる可能性があるので好ましくない。
【0027】
本発明において、合金触媒を製造する際に使用される有機保護剤は、遷移金属と貴金属から成る合金微粒子の粒径を制御し、また微粒子を分散させる重要な作用を有している。有機保護剤分子中には酸素或いは窒素の孤立電子対が存在するため、有機保護剤は高分子多座配位子として反応系内で遷移金属イオンと白金イオンに弱く配位結合する。有機保護剤が配位結合した各イオンは還元剤であるアルコールと接触して金属に還元される。さらに、有機保護剤は還元された遷移金属と貴金属から成る合金微粒子表面全体にも弱く配位結合する。
【0028】
本発明による合金触媒の合成方法における有機保護剤としては、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、アミノペクチン及びメチルセルロース等が適している。この中でもN−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン又は環状アミド構造を持つビニル系ポリマー、特にポリビニルピロリドン、とりわけポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)が最も活性の高い触媒となるので好ましい。これらの水溶性有機保護剤は界面活性剤よりも金属コロイドを保護安定化する能力を有している。また、有機保護剤として炭素数6〜18のアルキルカルボン酸とアルキルアミンを等量ずつ使用しても良い。
【0029】
有機保護剤は、化学的量論的に導き出される量よりも過剰に使用することが好ましい。このような有機保護剤の使用量は一般的に、遷移金属及び貴金属に対して、1〜15倍の範囲内であることが好ましい。有機保護剤の使用量が1倍未満の場合、所期の保護効果が得られない。一方、有機保護剤の使用量が15倍超の場合、目的とする保護効果が飽和し、不経済となる。
【0030】
前記のようにアルコール還元法の場合、通常合成系内に微粒子の凝集を防止するため有機保護剤を添加する。しかし、これらの有機保護剤は合金微粒子に吸着し、触媒活性を低下させることがある。このため、合金微粒子から有機保護剤を除去する必要がある。
【0031】
アルコール還元法において有機保護剤を用いて合金微粒子を生成する場合、合金微粒子を生成した後、アルコールを減圧除去し、エタノールを加えて合金微粒子を濾液が無色透明になるまで十分に洗浄濾過し、その後、合金微粒子のエタノール溶液に表面積60〜3000m2/gの活性炭を添加して十分攪拌することにより有機保護剤を除去することができる。活性炭は吸着作用が強く、そのため、合金微粒子に弱く配位している有機保護剤を吸着し、裸の合金微粒子が活性炭上に担持される。この後、活性炭に担持させた合金微粒子触媒を水素或いは窒素またはアルゴン雰囲気中、300〜500℃で熱処理し、合金微粒子触媒をL10規則相に相転移させることができる。
【0032】
有機保護剤を使用するアルコール還元法の別法として、反応系内に有機保護剤を添加せず、替わりに活性炭を添加し、さらに貴金属イオン源及び遷移金属イオン源を添加して還流させることにより合金微粒子を生成することもできる。例えば、一般式(1)の合金微粒子は、
(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
を溶解させ、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
また、同様に、一般式(2)の合金微粒子は、
(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iv)Ru添加元素の塩又はその錯体と、
を溶解させ、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
【0033】
この別法では、有機保護剤が存在しないため、還元された合金微粒子は有機保護剤と安定な状態を作ることなく活性炭に担持される。また、活性炭表面に合金微粒子が吸着するという反応過程の前に有機保護剤で合金微粒子を保護する反応経路が省略されるため全体的に反応ステップが減少する。有機保護剤が存在しないと微粒子が成長する問題があるが、本発明の場合、活性炭を反応系内に添加しているため、金属イオンが還元されたと同時に金属は活性炭表面と静電的相互作用により吸着するため、微粒子の大きさは50nm以下に保たれる。このように活性炭アルコール還元法により製造された、本発明によるメタノール燃料電池用の合金微粒子触媒はその表面を有機保護剤で覆われることがないため、その表面の触媒活性を十分に発揮できる。活性炭アルコール還元法により製造された、本発明によるメタノール燃料電池用の合金微粒子触媒は既に活性炭で担持されているので、この二元系合金微粒子触媒を更に別の導電性力ーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトなどの炭素材料に担持させる必要はないが、所望により、又は必要に応じて担持させることもできる。
【0034】
本発明のアルコール還元法において、有機保護剤の代わりに使用される活性炭は、木炭などの活性化によって作られる炭素質の物質であり、60m2/g〜3000m2/g程度の比表面積を有する。活性炭の使用量は一般的に、合金形成金属に対して、2〜20倍の範囲内であることが好ましい。活性炭の使用量が2倍未満の場合、所期の効果が得られない。一方、活性炭の使用量が20倍超の場合、目的とする効果が飽和し、不経済となる。
【0035】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるFeの塩又は錯体は、例えば、硝酸鉄、酢酸鉄、鉄アンミン錯体、鉄エチレンジアミン錯体、エチレンジアミン四酢酸鉄、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)、乳酸鉄(II)三水和物、シュウ酸鉄(II)二水和物及びクエン酸鉄(III)n水和物などである。これらの鉄化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。このような鉄化合物は金属合金微粒子の合成過程で有害な一酸化炭素を発生せず、また従来の鉄ペンタカルボニルに比べて安価である。
【0036】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるCoの塩又は錯体は、例えば、硝酸コバルト、酢酸コバルト、コバルトアンミン錯体、コバルトエチレンジアミン錯体、エチレンジアミン四酢酸コバルト、コバルト(II)アセチルアセトナート錯体及びコバルト(III)アセチルアセトナート錯体などである。これらのコバルト化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0037】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるNiの塩又は錯体は、例えば、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケル(II)アセチルアセトナート錯体などである。これらのニッケル化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0038】
Fe、Co及びNiの供給源として、前記のような塩類又は錯体類を用いることにより、合金触媒の合成中に人体に有害な一酸化炭素を発生させず、安全性が高く且つ低コストの合成系を構築出来る。
【0039】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるPtの塩又は錯体は、例えば、酢酸白金、硝酸白金、白金エチレンジアミン錯体、白金トリフェニルホスフィン錯体、白金アンミン錯体及びビス(アセチルアセトナト)白金(II)などである。これらの白金化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0040】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるPdの塩又は錯体は、例えば、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、パラジウムトリフェニルホスフィン錯体、パラジウムアンミン錯体、パラジウムエチレンジアミン錯体及びパラジウムアセチルアセトナート錯体などである。これらのパラジウム化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0041】
前記B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの添加元素の塩又は錯体は、これらの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、アンミン錯体、エチレンジアミン錯体、シアン錯体及びエチレンジアミン四酢酸錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0042】
前記Ru添加元素の塩又は錯体は、これらの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、アンミン錯体、エチレンジアミン錯体、アセチルアセトナト錯体及びエチレンジアミン四酢酸錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0043】
加熱還流処理における加熱温度及び還流時間は使用するアルコールの種類に応じて変化する。しかし、一般的に、加熱温度は190℃〜300℃の範囲内であり、還流時間は30分間〜3時間の範囲内である。反応の終点は溶液の色が黒色に変化することにより確認できる。出発物質の遷移金属及び貴金属イオンが全て還元されたことが確認されたら加熱還流処理を終了する。
【0044】
貴金属の塩又は錯体を溶解するのに適した溶媒としては、水及び水やアルコールと混和性の有機溶剤を挙げる事が出来る。これらの有機溶剤としては、エーテルジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、アセトンなどが挙げられる。
【0045】
Fe、Co又はNiの塩又は錯体を溶解するのに適した溶媒としては、水及び第一級アルコール第二級アルコールが好ましい。例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n−アミルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、2−エトキシアルコール及び1,2−ヘキサデカンジオールが挙げられる。Fe、Co及びNiの塩又は錯体を溶解するための溶媒としては、加熱還流処理に使用されるアルコールと同種のアルコールを使用することが好ましいが、異なる種類のアルコールも使用できる。
【0046】
本発明の合金触媒を少なくとも部分的にL10規則相に相転移させるための熱処理は合金触媒の生成時に行うこともできるし、担体に担持させた後から行うこともできる。担体に担持させた後から行う場合、担体上の合金微粒子触媒の粒径と分散状態に依存するが、合金微粒子を担体に担持させた後、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気下において300℃〜500℃の範囲内の温度で熱処理することができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の具体的な態様を実施例および比較例により説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸アンチモン0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtSb微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe40Pt45Sb15であった。またFe40Pt45Sb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0049】
実施例2
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸ビスマス0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtBi微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe39Pt46Bi15であった。またFe39Pt46Bi15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0050】
実施例3
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸錫0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtSn微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe40Pt45Sn15であった。またFe40Pt45Sn15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0051】
実施例4
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸鉛0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtPb微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe39Pt46Pb15であった。またFe39Pt46Pb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0052】
実施例5
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸銀0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtAg微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe40Pt44Ag16であった。またFe40Pt44Ag16微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0053】
実施例6
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及びジメチルアミンボラン0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtB微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe45Pt45B10であった。またFe45Pt45B10微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0054】
比較例1
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3及び0.62ミリモルのPt(acac)2をそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePt微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe51Pt49であった。またFe51Pt49微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0055】
実施例1〜6及び比較例1で得られた各合金触媒微粒子を窒素雰囲気中で所定温度で30分間熱処理し、L10規則相へ相転移させた。各合金触媒微粒子のL10規則相への転移開始温度を窒素雰囲気中X線回折装置で調べた結果を下記の表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示された結果から明らかなように、実施例1〜6で得られた三元系合金ではL10規則相への転移温度が比較例1で得られた二元系合金に比べて100℃以上低下していることが分かる。
【0058】
実施例7
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸アンチモン0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Sb15であった。またFe43Pt42Sb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Sb15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0059】
実施例8
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸ビスマス0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Bi15であった。またFe43Pt42Bi15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Bi15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0060】
実施例9
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸錫0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Sn15であった。またFe43Pt42Sn15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Sn15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0061】
実施例10
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸鉛0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Pb15であった。またFe43Pt42Pb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Pb15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0062】
実施例11
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナナート錯体0.62ミリモル、硝酸銀0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Ag15であった。またFe43Pt42Ag15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Ag15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0063】
実施例12
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、Ni(II)アセチルアセトナート錯体2ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体2ミリモル、Ru(III)トリスアセチルアセトナート錯体0.4ミリモル、塩化ビスマス(III)0.1ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX322で調べた結果、Ni35Pt35Bi10Ru10であった。またNi35Pt35Bi10Ru10微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりNi35Pt35Bi10Ru10合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0064】
イオン交換膜として厚さ200μmのフレミオン膜(旭硝子社製)を使用し、白金量として0.8mg/cm2を含むガス拡散電極(E−TEK社製)を空気極とし、上記の実施例6〜12及び比較例1で製造した触媒粉末と粉末状ポリテトラフルオロエチレンからなるガス拡散電極をメタノール極とし、温度155℃、圧力10kgf/cm2で10秒間の条件でホットプレス法により、接合体を作製した。さらに、上記接合体をメタノール燃料電池測定セルに組み込んで、発電試験を実施した。端子電圧測定結果を下記の表2に示す。なお、表2において、端子電圧は出力電流密度50mA/cm2での端子電圧として示されている。
【0065】
【表2】
【0066】
表1及び表2に示された結果から明らかなように、三元系合金ではL10規則相への転移温度を低下させても、端子電圧そのものは二元系合金と大差が無く、第三元素の添加によるメタノール燃料電池の出力に対する悪影響は存在しない。むしろ、Ruの第四元素の添加によりメタノール燃料電池の高出力化を達成することができる。
【0067】
イオン交換膜として厚さ200μmのフレミオン膜(旭硝子社製)を使用し、L10規則相のFe43Pt42Sn15合金触媒(実施例9)を0.8mg/cm2含むガス拡散電極(E−TEK社製)を酸素極(空気極)とし、上記の実施例12で製造したL10規則相のNi35Pt35Bi10Ru10合金触媒粉末と粉末状ポリテトラフルオロエチレンからなるガス拡散電極をメタノール極とし、温度155℃、圧力10kgf/cm2で10秒間の条件でホットプレス法により、接合体を作製した。さらに、上記接合体をメタノール燃料電池測定セルに組み込んで、発電試験を実施した。出力電流密度50mA/cm2での端子電圧は0.80Vであった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、FePt、FePd、CoPt又はNiPtからなる二元系成分に、B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種類の元素を添加することにより、二元系成分のL10規則相への転移温度を100℃以上低下させることができ、得られた三元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極及び/又は酸素極として使用することにより、メタノール燃料電池に使用されている強酸性の高分子固体電解質であるデュポン社製のナフィオン膜に対する耐酸性が向上するばかりか、出力電圧の向上が可能になり、CO吸着種による被毒を受け難くなる。また、この三元系合金に更にRuを加えた四元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極として使用することによりメタノール燃料電池の出力を一層高めることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はメタノール電池用触媒及びその製造方法に関する。更に詳細には、本発明は、CO被毒性を改善し、更にメタノール酸化活性を向上させた、メタノール燃料電池用触媒に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体燃料であるメタノールを直接使用するメタノール燃料電池は、燃料の取り扱い易さに加え、安価な燃料ということで家庭用や産業用の比較的小出力規模の電源として期待されている。
【0003】
メタノールー酸素燃料電池の理論出力電圧は、水素燃料のものとほぼ同じ1.2V(25℃)であり、原理的には同様の特性が期待できる。このため、メタノールの陽極酸化反応については数多くの研究がなされているが、充分な活性を有するメタノールの酸化触媒は未だ見いだされていないのが現状である。
【0004】
例えば、白金触媒の場合には、メタノール燃料電池のメタノール極における陽極酸化反応の過電圧は、かなり大きくなる。そのため、メタノール燃料電池の端子電圧は、空気または酸素極における酸素還元反応の過電圧とあいまって軽負荷状態でも既に低く、さらに出力電流の増加とともに低下し、その値は熱力学的データから期待できる値よのも大幅に小さくなる。
【0005】
また、従来は導電性のカーボン担体に白金単独の他に、白金−ルテニウム合金(例えば、特許文献1参照)あるいは白金−スズ合金(例えば、特許文献2参照)を担持してメタノール酸化活性の向上を図る試みがなされていた。しかし、このような白金系の触媒を大量に使用してもメタノールの酸化反応は遅く、大電流を取り出すことが不可能であり、そのため現在でも、メタノール酸化活性の優れた触媒の開発が強く望まれている。
【0006】
さらにまた、特許文献3にはNiPt、NiPd、NiRu、CoPt、CoPd、CoRu、MnPt、MnPd及びMnRuからなる群から選択される少なくとも1種類の合金触媒をアノード極に用いることが開示されている。これらの合金触媒はCO被毒特性を改善する材料であるが、メタノール燃料電池に使用されている強酸性の高分子固体電解質であるデュポン社製のナフィオン膜に対する耐酸性に乏しく実用には適していない。
【0007】
【特許文献1】
特開平2−111440号公報
【特許文献2】
特開平2−114452号公報
【特許文献3】
特開平8−66632号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、従来のメタノール燃料電池用の電極触媒においては、白金を主体とする貴金属元素、又はこれらとの合金系の触媒を比較的比表面積の高い(数十〜数千m2/g)導電性のカーボン担体に高分散に担持させることにより、メタノール酸化を向上させようとする研究努力が長くなされてきている。しかし、白金はメタノール酸化に対する活性は比較的高いものの、メタノール酸化過程におけるCO型の吸着種が触媒表面を被毒し、活性低下を引き起こすことが知られている。従って、この白金表面の被毒を緩和するために、ホルマリン還元法や水素還元法で作製された白金−ルテニウム合金や白金−スズ合金または白金と他の貴金属元素との合金化により、メタノール酸化活性の向上が図られているが、必ずしも満足のいくものではなかった。
【0009】
従って、本発明の目的は、従来の電極触媒に比べて、更に一層高いメタノール酸化活性を有し、吸着種による被毒を受け難い、すなわち長期的に触媒の活性が持続し得る、メタノール燃料電池用触媒及びその製造方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、メタノール燃料電池において、メタノール極及び/又は酸素極に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する合金触媒を使用することにより解決される。
【0011】
本発明者が鋭意検討を行った結果、メタノール燃料電池において、メタノール極及び酸素極のうちの何れか一方又は両方に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(1)、
AxByCz (1)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する三元系合金触媒を使用することにより、メタノール燃料電池に使用されている強酸性の高分子固体電解質であるデュポン社製のナフィオン膜に対する耐酸性が向上するばかりか、メタノール高酸化活性を有し、CO吸着種による被毒を受け難くなることを見出した。更に、L10規則相に相転移させる温度を低下させることができることも見出した。
【0012】
また、メタノール燃料電池において、メタノール極に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(2)、
AxByCzDw (2)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、DはRuであり、5at%≦w≦30at%であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する四元系合金触媒を使用することにより、メタノール燃料電池の出力を一層向上させることができることを見出した。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の合金触媒において、少なくとも部分的にL10規則相を取り得る基本的な合金成分は、FePt、FePd、CoPt又はNiPtからなる2元系成分である。CoPd及びNiPdからなる二元系成分は熱処理を行ってもL10規則相への相転移を起こさないので、本発明の合金触媒成分から除外される。
【0014】
これらの二元系合金触媒成分は、前記組成範囲において熱処理により、少なくとも部分的にL10規則相に相転移を起こす。L10規則相ではface centered tetragonal(γ1相)の結晶構造をとり、Fe、Co又はNiとPtまたはPdとが、c軸方向に層状に配列する。少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する合金が耐酸性と共にメタノール高酸化活性を有し、CO吸着種による被毒を受け難くなる原因は未だ明らかではないが、前述したFe、Co又はNiとPtまたはPdとの層状構造が合金触媒表面の電子状態を変化させている事が原因と推測される。言うまでもなく、完全かつ全体的にL10規則相の結晶構造を有する合金触媒も、本発明におけるメタノール燃料電池のメタノール極及び/又は酸素極として使用できる。
【0015】
通常のFePt、CoPt、FePd及びNiPt二元系合金ではL10規則相へ相転移させるための熱処理温度は一般的に、500〜600℃であるが、工業的にはより低温でL10規則相に転移させられる事が望まれる。本発明によれば、B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種類の元素を、2at%〜30at%添加することにより、L10規則相への転移温度を300℃〜500℃の範囲にまで低下させることができる。二元系合金の場合のL10規則相への転移温度よりも100℃以上低下させることが好ましい。L10相への相転移温度を100℃以上低下させることは工業的観点から重要である。添加元素が2at%未満ではL10規則相への相転移温度を十分に低下させることができず、30at%を越えるとその効果が飽和する。
【0016】
上記熱処理による合金微粒子のL10規則相への相転移は、X線回折法により確認できる。熱処理後、L10規則相に基づく(001),(110),(111),(200),(002),(201),(112),(220),(202),(221),(130),(311),(113),(222),(203),(312)面からの回折ピークが観測されれば、L10規則相への相転移が確認される。
【0017】
更に、前記一般式(1)で示される三元系合金にRuを5at%〜30at%添加することにより、端子電圧を向上させることができる。端子電圧が向上する理由は、RuがCOの酸化に対して活性であり、メタノールの酸化過電圧が低下するためと思われる。従って、Ruを添加した前記一般式(2)で示される四元系合金触媒はメタノール極のみに使用することが好ましい。Ruの添加量が5at%未満の場合、端子電圧の向上効果が不十分であり、一方、Ruの添加量が30at%超の場合、端子電圧の向上効果が飽和し、不経済となる。なお、言うまでもなく、前記一般式(2)で示される四元系合金触媒も、前記一般式(1)で示される三元系合金触媒と同様に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有し、かつ、L10規則相への相転移温度を低下させることができる。一般式(2)で示される四元系合金触媒をメタノール極に使用する場合、酸素極は前記一般式(1)で示される三元系合金触媒であることが好ましい。しかし、これ以外の合金触媒を酸素極として使用することもできる。例えば、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有するFePt、CoPt、FePd及びNiPt二元系合金触媒を酸素極として使用することができる。
【0018】
本発明の三元系又は四元系合金微粒子の粒子径は、高活性を得るために、1nm〜50nmの範囲内であることが好ましく、1nm〜10nmの範囲内が一層好ましく、1nm〜5nmの範囲内であることが特に好ましい。合金微粒子の粒子径が1nm未満では分散性が低下するなどの不都合が生じるので好ましくない。一方、合金微粒子の粒子径が50nm超の場合、メタノール燃料電池用電極触媒として高活性を得ることができない。
【0019】
また、固体高分子型燃料電池では、高電流密度での運転、高いガス拡散性が求められるため、電極層の厚さを薄くし、電極層内に触媒粒子を分散性よく存在させるとともに触媒量を確保することが必要である。また担体に触媒粒子を担持した担持触媒は、好ましい粒径の触媒粒子を分散性よく得るのに好適である。担持触媒では触媒量を確保するために、触媒は担体に対して10〜60重量%で担持されていることが好ましい。
【0020】
本発明の三元系又は四元系合金微粒子触媒は担体に担持させてメタノール電極及び/又は酸素極として使用することが好ましい。担体に触媒粒子を担持した担持触媒は、好ましい粒径の触媒粒子を分散性よく得るのに好適である。担持触媒では、触媒量を確保するために、三元系又は四元系合金微粒子触媒は担体に対して5重量%〜60重量%の範囲内であることが好ましい。三元系又は四元系合金微粒子触媒の担持量が5重量%未満の場合、十分な触媒作用が発揮されない。一方、担持量が60重量%超の場合、触媒作用が飽和し不経済となるだけである。
【0021】
担持触媒に使用する担体としては、電極触媒の担体として集電体の機能を果たす導電性と、触媒使用条件下での耐食性とを有する炭素材料が好ましい。その中でも特に、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトなどが好適であり、担体の比表面積としては、60〜3000m2/gを有するものが好ましい。
【0022】
本発明の三元系又は四元系合金微粒子触媒を使用する、メタノール燃料電池のアノード用ガス拡散電極は、通常の既知の手法にしたがって製造することができる。すなわち、メタノール極は、上記触媒をポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性樹脂結着材で保持し、多孔質体のシート状のガス拡散電極とする。―方、カソードを構成する空気または酸素極は上記三元系触媒又はカーボン担持白金あるいは前記二元系合金などの触媒をポリテトラフルオロエチレンなどの疎水性樹脂結着材で保持し、同様のガス拡散電極とすることができる。
【0023】
次に、本発明による合金触媒の製造方法について具体的に説明する。本発明による前記一般式(1)で示される合金触媒は、
(a)有機保護剤又は活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又はその錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又はその錯体及と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iii)B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の添加元素の塩又はその錯体とを溶解させ、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
【0024】
また、本発明による前記一般式(2)で示される合金触媒は、
(a)有機保護剤又は活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又はその錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又はその錯体及と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iii)B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の添加元素の塩又はその錯体と、
(iv)Ru添加元素の塩又はその錯体とを溶解させるステップと、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
【0025】
要するに、一般式(1)又は一般式(2)で示される合金微粒子は基本的に、アルコール還元法で合成する。アルコール系の溶媒に合金微粒子形成金属の供給源を溶解させ、アルコール系溶媒の沸点近傍の温度で還流する。アルコール(R−OH)が加熱還流中に金属イオンを還元し、自らは酸化されてアルデヒド(R−CHO)に変化する。本発明で使用されるアルコールとしては、沸点の高いアルコールが高温での還流が出来るため還元速度が高まり好ましい。使用に適したアルコールとしては、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n−アミルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、2−エトキシアルコール及び1,2−ヘキサデカンジオールが挙げられる。これらアルコールは1種類又は2種類以上を適宜選択して使用することができる。通常、アルコール単独では、その酸化還元電位の大きさから遷移金属の還元剤としては十分ではない。しかし、反応過程で触媒作用を有する貴金属(Pt又はPd)が存在するため、これらの貴金属と遷移金属イオンを共存させ、且つアルコールの沸点で加熱還流させることによりFe、Co又はNiなどの遷移金属も同時に還元析出し、遷移金属と貴金属から成る金属合金微粒子が生成すると考えられる。また、エチルアルコールの様な沸点の低いアルコールでも加圧下(オートクレープ法)で還流すれば使用する事が出来る。還流の際、合金微粒子の酸化を防止し且つ合成中に水や副生成物を除去するため反応系内に窒素やAr等の不活性ガスを流した不活性雰囲気中で行うことが好ましい。
【0026】
本発明の一般式(1)又は一般式(2)で示される合金触媒を少なくとも部分的にL10規則相に相転移させるため、合金微粒子を水素などの還元性雰囲気又は窒素、Ar、ヘリウム等の不活性雰囲気中、酸素濃度を5ppm以下に保って熱処理を行う。酸素濃度が5ppmより大きいと、熱処理中に金属合金微粒子が酸化する。従って、酸素濃度はゼロであることが最も好ましい。この熱処理は一般的に、300℃〜500℃の範囲内の温度で行うことが好ましい。熱処理温度が300℃未満では、金属合金微粒子のL10規則相への相転移が起こらないことがある。一方、熱処理温度が500℃超では、金属合金微粒子同士がシンタリングを起こし、微粒子の粒径が50nmよりも大きくなり過ぎることがあるので好ましくない。また、熱処理時間は、使用する熱処理温度に左右されるが、一般的に、30分間〜1時間の範囲内である。加熱時間が30分間未満では相転移が起こらない可能性がある。一方、加熱時間が1時間超では、相転移が飽和し、不経済となる可能性があるので好ましくない。
【0027】
本発明において、合金触媒を製造する際に使用される有機保護剤は、遷移金属と貴金属から成る合金微粒子の粒径を制御し、また微粒子を分散させる重要な作用を有している。有機保護剤分子中には酸素或いは窒素の孤立電子対が存在するため、有機保護剤は高分子多座配位子として反応系内で遷移金属イオンと白金イオンに弱く配位結合する。有機保護剤が配位結合した各イオンは還元剤であるアルコールと接触して金属に還元される。さらに、有機保護剤は還元された遷移金属と貴金属から成る合金微粒子表面全体にも弱く配位結合する。
【0028】
本発明による合金触媒の合成方法における有機保護剤としては、N−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、アミノペクチン及びメチルセルロース等が適している。この中でもN−(3−アミノプロピル)ジエタノールアミン又は環状アミド構造を持つビニル系ポリマー、特にポリビニルピロリドン、とりわけポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)が最も活性の高い触媒となるので好ましい。これらの水溶性有機保護剤は界面活性剤よりも金属コロイドを保護安定化する能力を有している。また、有機保護剤として炭素数6〜18のアルキルカルボン酸とアルキルアミンを等量ずつ使用しても良い。
【0029】
有機保護剤は、化学的量論的に導き出される量よりも過剰に使用することが好ましい。このような有機保護剤の使用量は一般的に、遷移金属及び貴金属に対して、1〜15倍の範囲内であることが好ましい。有機保護剤の使用量が1倍未満の場合、所期の保護効果が得られない。一方、有機保護剤の使用量が15倍超の場合、目的とする保護効果が飽和し、不経済となる。
【0030】
前記のようにアルコール還元法の場合、通常合成系内に微粒子の凝集を防止するため有機保護剤を添加する。しかし、これらの有機保護剤は合金微粒子に吸着し、触媒活性を低下させることがある。このため、合金微粒子から有機保護剤を除去する必要がある。
【0031】
アルコール還元法において有機保護剤を用いて合金微粒子を生成する場合、合金微粒子を生成した後、アルコールを減圧除去し、エタノールを加えて合金微粒子を濾液が無色透明になるまで十分に洗浄濾過し、その後、合金微粒子のエタノール溶液に表面積60〜3000m2/gの活性炭を添加して十分攪拌することにより有機保護剤を除去することができる。活性炭は吸着作用が強く、そのため、合金微粒子に弱く配位している有機保護剤を吸着し、裸の合金微粒子が活性炭上に担持される。この後、活性炭に担持させた合金微粒子触媒を水素或いは窒素またはアルゴン雰囲気中、300〜500℃で熱処理し、合金微粒子触媒をL10規則相に相転移させることができる。
【0032】
有機保護剤を使用するアルコール還元法の別法として、反応系内に有機保護剤を添加せず、替わりに活性炭を添加し、さらに貴金属イオン源及び遷移金属イオン源を添加して還流させることにより合金微粒子を生成することもできる。例えば、一般式(1)の合金微粒子は、
(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
を溶解させ、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
また、同様に、一般式(2)の合金微粒子は、
(a)活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又は錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又は錯体と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iv)Ru添加元素の塩又はその錯体と、
を溶解させ、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うことにより生成することができる。
【0033】
この別法では、有機保護剤が存在しないため、還元された合金微粒子は有機保護剤と安定な状態を作ることなく活性炭に担持される。また、活性炭表面に合金微粒子が吸着するという反応過程の前に有機保護剤で合金微粒子を保護する反応経路が省略されるため全体的に反応ステップが減少する。有機保護剤が存在しないと微粒子が成長する問題があるが、本発明の場合、活性炭を反応系内に添加しているため、金属イオンが還元されたと同時に金属は活性炭表面と静電的相互作用により吸着するため、微粒子の大きさは50nm以下に保たれる。このように活性炭アルコール還元法により製造された、本発明によるメタノール燃料電池用の合金微粒子触媒はその表面を有機保護剤で覆われることがないため、その表面の触媒活性を十分に発揮できる。活性炭アルコール還元法により製造された、本発明によるメタノール燃料電池用の合金微粒子触媒は既に活性炭で担持されているので、この二元系合金微粒子触媒を更に別の導電性力ーボンブラック、アセチレンブラック、グラファイトなどの炭素材料に担持させる必要はないが、所望により、又は必要に応じて担持させることもできる。
【0034】
本発明のアルコール還元法において、有機保護剤の代わりに使用される活性炭は、木炭などの活性化によって作られる炭素質の物質であり、60m2/g〜3000m2/g程度の比表面積を有する。活性炭の使用量は一般的に、合金形成金属に対して、2〜20倍の範囲内であることが好ましい。活性炭の使用量が2倍未満の場合、所期の効果が得られない。一方、活性炭の使用量が20倍超の場合、目的とする効果が飽和し、不経済となる。
【0035】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるFeの塩又は錯体は、例えば、硝酸鉄、酢酸鉄、鉄アンミン錯体、鉄エチレンジアミン錯体、エチレンジアミン四酢酸鉄、トリス(アセチルアセトナト)鉄(III)、乳酸鉄(II)三水和物、シュウ酸鉄(II)二水和物及びクエン酸鉄(III)n水和物などである。これらの鉄化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。このような鉄化合物は金属合金微粒子の合成過程で有害な一酸化炭素を発生せず、また従来の鉄ペンタカルボニルに比べて安価である。
【0036】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるCoの塩又は錯体は、例えば、硝酸コバルト、酢酸コバルト、コバルトアンミン錯体、コバルトエチレンジアミン錯体、エチレンジアミン四酢酸コバルト、コバルト(II)アセチルアセトナート錯体及びコバルト(III)アセチルアセトナート錯体などである。これらのコバルト化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0037】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるNiの塩又は錯体は、例えば、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、ニッケル(II)アセチルアセトナート錯体などである。これらのニッケル化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0038】
Fe、Co及びNiの供給源として、前記のような塩類又は錯体類を用いることにより、合金触媒の合成中に人体に有害な一酸化炭素を発生させず、安全性が高く且つ低コストの合成系を構築出来る。
【0039】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるPtの塩又は錯体は、例えば、酢酸白金、硝酸白金、白金エチレンジアミン錯体、白金トリフェニルホスフィン錯体、白金アンミン錯体及びビス(アセチルアセトナト)白金(II)などである。これらの白金化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0040】
本発明の合金触媒を製造する際に使用されるPdの塩又は錯体は、例えば、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、パラジウムトリフェニルホスフィン錯体、パラジウムアンミン錯体、パラジウムエチレンジアミン錯体及びパラジウムアセチルアセトナート錯体などである。これらのパラジウム化合物は単独で使用することもできるし又は2種類以上を併用することもできる。
【0041】
前記B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの添加元素の塩又は錯体は、これらの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、アンミン錯体、エチレンジアミン錯体、シアン錯体及びエチレンジアミン四酢酸錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0042】
前記Ru添加元素の塩又は錯体は、これらの硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、アンミン錯体、エチレンジアミン錯体、アセチルアセトナト錯体及びエチレンジアミン四酢酸錯体からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物である。
【0043】
加熱還流処理における加熱温度及び還流時間は使用するアルコールの種類に応じて変化する。しかし、一般的に、加熱温度は190℃〜300℃の範囲内であり、還流時間は30分間〜3時間の範囲内である。反応の終点は溶液の色が黒色に変化することにより確認できる。出発物質の遷移金属及び貴金属イオンが全て還元されたことが確認されたら加熱還流処理を終了する。
【0044】
貴金属の塩又は錯体を溶解するのに適した溶媒としては、水及び水やアルコールと混和性の有機溶剤を挙げる事が出来る。これらの有機溶剤としては、エーテルジオキサン、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、アセトンなどが挙げられる。
【0045】
Fe、Co又はNiの塩又は錯体を溶解するのに適した溶媒としては、水及び第一級アルコール第二級アルコールが好ましい。例えば、エチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、イソアミルアルコール、n−アミルアルコール、sec−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、アリルアルコール、n−プロピルアルコール、2−エトキシアルコール及び1,2−ヘキサデカンジオールが挙げられる。Fe、Co及びNiの塩又は錯体を溶解するための溶媒としては、加熱還流処理に使用されるアルコールと同種のアルコールを使用することが好ましいが、異なる種類のアルコールも使用できる。
【0046】
本発明の合金触媒を少なくとも部分的にL10規則相に相転移させるための熱処理は合金触媒の生成時に行うこともできるし、担体に担持させた後から行うこともできる。担体に担持させた後から行う場合、担体上の合金微粒子触媒の粒径と分散状態に依存するが、合金微粒子を担体に担持させた後、ヘリウム、窒素などの不活性ガス雰囲気下において300℃〜500℃の範囲内の温度で熱処理することができる。
【0047】
【実施例】
以下、本発明の具体的な態様を実施例および比較例により説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0048】
実施例1
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸アンチモン0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtSb微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe40Pt45Sb15であった。またFe40Pt45Sb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0049】
実施例2
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸ビスマス0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtBi微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe39Pt46Bi15であった。またFe39Pt46Bi15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0050】
実施例3
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸錫0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtSn微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe40Pt45Sn15であった。またFe40Pt45Sn15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0051】
実施例4
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸鉛0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtPb微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe39Pt46Pb15であった。またFe39Pt46Pb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0052】
実施例5
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及び硝酸銀0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtAg微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe40Pt44Ag16であった。またFe40Pt44Ag16微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0053】
実施例6
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3、0.62ミリモルのPt(acac)2及びジメチルアミンボラン0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePtB微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe45Pt45B10であった。またFe45Pt45B10微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0054】
比較例1
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、0.62ミリモルのFe(acac)3及び0.62ミリモルのPt(acac)2をそれぞれ100mlのエチレングリコール中に溶解させ前液に加えた。その後、窒素気流中、200℃で3時間溶液を還流させた。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出したFePt微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe51Pt49であった。またFe51Pt49微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。
【0055】
実施例1〜6及び比較例1で得られた各合金触媒微粒子を窒素雰囲気中で所定温度で30分間熱処理し、L10規則相へ相転移させた。各合金触媒微粒子のL10規則相への転移開始温度を窒素雰囲気中X線回折装置で調べた結果を下記の表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示された結果から明らかなように、実施例1〜6で得られた三元系合金ではL10規則相への転移温度が比較例1で得られた二元系合金に比べて100℃以上低下していることが分かる。
【0058】
実施例7
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸アンチモン0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Sb15であった。またFe43Pt42Sb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Sb15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0059】
実施例8
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸ビスマス0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Bi15であった。またFe43Pt42Bi15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Bi15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0060】
実施例9
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸錫0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Sn15であった。またFe43Pt42Sn15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Sn15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0061】
実施例10
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、硝酸鉛0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Pb15であった。またFe43Pt42Pb15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Pb15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0062】
実施例11
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、鉄(III)アセチルアセトナート錯体0.62ミリモル、白金(II)アセチルアセトナナート錯体0.62ミリモル、硝酸銀0.10ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX3222で調べた結果、Fe43Pt42Ag15であった。またFe43Pt42Ag15微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に、得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりFe43Pt42Ag15合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0063】
実施例12
比表面積250m2/gの導電性カーボンブラック担体(Cabot社製、バルカンXC−72)519mgを100mlのエチレングリコール中に分散させた。この後、Ni(II)アセチルアセトナート錯体2ミリモル、白金(II)アセチルアセトナート錯体2ミリモル、Ru(III)トリスアセチルアセトナート錯体0.4ミリモル、塩化ビスマス(III)0.1ミリモルをそれぞれ100mlのエチレングリコールに溶解させ、エチレングリコール溶液に加えた。窒素雰囲気下、この溶液を200℃で3時間攪拌しながら還流した。その後、エチレングリコールを減圧除去し、エタノール100mlを加えて析出した微粒子を洗浄濾過した。濾液の色が無色透明になるまで洗浄濾過を繰り返した。その後、エタノールを減圧除去し、黒色粉末を得た。得られた黒色粉末中の組成を日本電子社の蛍光X線分析装置JSX322で調べた結果、Ni35Pt35Bi10Ru10であった。またNi35Pt35Bi10Ru10微粒子の粒径を日立製作所製透過型電子顕微鏡HF−2200型で観察した結果、粒径は2〜5nmであった。次に得られた黒色粉末を窒素雰囲気中400℃で30分間熱処理を行った。熱処理後、理学社製X線回折装置RINT1500によりNi35Pt35Bi10Ru10合金微粒子触媒はL10規則相に相転移している事が確認された。
【0064】
イオン交換膜として厚さ200μmのフレミオン膜(旭硝子社製)を使用し、白金量として0.8mg/cm2を含むガス拡散電極(E−TEK社製)を空気極とし、上記の実施例6〜12及び比較例1で製造した触媒粉末と粉末状ポリテトラフルオロエチレンからなるガス拡散電極をメタノール極とし、温度155℃、圧力10kgf/cm2で10秒間の条件でホットプレス法により、接合体を作製した。さらに、上記接合体をメタノール燃料電池測定セルに組み込んで、発電試験を実施した。端子電圧測定結果を下記の表2に示す。なお、表2において、端子電圧は出力電流密度50mA/cm2での端子電圧として示されている。
【0065】
【表2】
【0066】
表1及び表2に示された結果から明らかなように、三元系合金ではL10規則相への転移温度を低下させても、端子電圧そのものは二元系合金と大差が無く、第三元素の添加によるメタノール燃料電池の出力に対する悪影響は存在しない。むしろ、Ruの第四元素の添加によりメタノール燃料電池の高出力化を達成することができる。
【0067】
イオン交換膜として厚さ200μmのフレミオン膜(旭硝子社製)を使用し、L10規則相のFe43Pt42Sn15合金触媒(実施例9)を0.8mg/cm2含むガス拡散電極(E−TEK社製)を酸素極(空気極)とし、上記の実施例12で製造したL10規則相のNi35Pt35Bi10Ru10合金触媒粉末と粉末状ポリテトラフルオロエチレンからなるガス拡散電極をメタノール極とし、温度155℃、圧力10kgf/cm2で10秒間の条件でホットプレス法により、接合体を作製した。さらに、上記接合体をメタノール燃料電池測定セルに組み込んで、発電試験を実施した。出力電流密度50mA/cm2での端子電圧は0.80Vであった。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、FePt、FePd、CoPt又はNiPtからなる二元系成分に、B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種類の元素を添加することにより、二元系成分のL10規則相への転移温度を100℃以上低下させることができ、得られた三元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極及び/又は酸素極として使用することにより、メタノール燃料電池に使用されている強酸性の高分子固体電解質であるデュポン社製のナフィオン膜に対する耐酸性が向上するばかりか、出力電圧の向上が可能になり、CO吸着種による被毒を受け難くなる。また、この三元系合金に更にRuを加えた四元系合金触媒をメタノール燃料電池のメタノール極として使用することによりメタノール燃料電池の出力を一層高めることができる。
Claims (14)
- メタノール燃料電池のメタノール極及び酸素極から成る群から選択される少なくとも一方の電極に使用される合金触媒であって、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(1)、
AxByCz (1)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する三元系合金触媒であることを特徴とするメタノール燃料電池の電極用合金触媒。 - 前記合金触媒は1nm〜50nmの範囲内の粒径を有することを特徴とする請求項1に記載のメタノール燃料電池の電極用合金触媒。
- メタノール燃料電池の、メタノール極及び酸素極から成る群から選択される少なくとも一方の電極に使用するための一般式(1)、
AxByCz (1)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する合金触媒を製造する方法であって、
(a)有機保護剤又は活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又はその錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又はその錯体及と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iii)B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの添加元素の塩又はその錯体とを溶解させるステップと、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うステップとからなることを特徴とする合金触媒の製造方法。 - (c)生成された一般式(1)で示される合金触媒を、水素などの還元雰囲気又はヘリウム、アルゴン又は窒素などの不活性雰囲気中で300℃〜500℃の範囲内の温度で熱処理することにより、前記合金触媒を少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造に相転移させるステップを更に有することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
- 前記合金触媒は1nm〜50nmの範囲内の粒径を有することを特徴とする請求項3又は4に記載の製造方法。
- メタノール燃料電池のメタノール極に使用される合金触媒であって、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(2)、
AxByCzDw (2)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、DはRuであり、5at%≦w≦30at%であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する四元系合金触媒であることを特徴とするメタノール燃料電池の電極用合金触媒。 - 前記合金触媒は1nm〜50nmの範囲内の粒径を有することを特徴とする請求項6に記載のメタノール燃料電池の電極用合金触媒。
- メタノール燃料電池のメタノール極に使用するための一般式(2)、
AxByCzDw (2)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、DはRuであり、5at%≦w≦30at%であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する合金触媒を製造する方法であって、
(a)有機保護剤又は活性炭の存在下、アルコール単独或いは水とアルコール或いはアルコールとアルコールに混和する有機溶剤中に、
(i)Fe、Co及びNiからなる群から選択される少なくとも一種の遷移金属の塩又はその錯体と、
(ii)Pt及びPdからなる群から選択される少なくとも一種の貴金属の塩又はその錯体及と(但し、Co−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、
(iii)B、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一種の添加元素の塩又はその錯体と、
(iv)Ru添加元素の塩又はその錯体とを溶解させるステップと、
(b)不活性雰囲気中で、アルコールによる加熱還流を行うステップとからなることを特徴とする合金触媒の製造方法。 - (c)生成された一般式(1)で示される合金触媒を、水素などの還元雰囲気又はヘリウム、アルゴン又は窒素などの不活性雰囲気中で300℃〜500℃の範囲内の温度で熱処理することにより、前記合金触媒を少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造に相転移させるステップを更に有することを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
- 前記合金触媒は1nm〜50nmの範囲内の粒径を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の製造方法。
- メタノール燃料電池において、メタノール極及び酸素極から成る群から選択される少なくとも一方の電極に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(1)、
AxByCz (1)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する三元系合金触媒を使用することを特徴とするメタノール燃料電池。 - 前記合金触媒は1nm〜50nmの範囲内の粒径を有することを特徴とする請求項11に記載のメタノール燃料電池。
- メタノール燃料電池において、メタノール極に、少なくとも部分的にL10規則相の結晶構造を有する下記の一般式(2)、
AxByCzDw (2)
(式中、AはFe、Co又はNiであり、BはPt又はPdであり(但しCo−Pd及びNi−Pdの組合せを除く)、CはB、Bi、Sb、Sn、Ag及びPbからなる群から選択される少なくとも一つの元素であり、DはRuであり、5at%≦w≦30at%であり、2at%≦z≦30at%であり、2/3≦x/y≦3/2である)で示される組成を有する四元系合金触媒を使用することを特徴とするメタノール燃料電池。 - 前記合金触媒は1nm〜50nmの範囲内の粒径を有することを特徴とする請求項13に記載のメタノール燃料電池。
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