JP2009117287A - 直接形アルコール燃料電池電極用触媒及びその電極用触媒の製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】白金ナノ粒子を酸化スズナノ粒子に担持させた触媒からなる、直接形アルコール燃料電池電極用触媒を提供し、また、(1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、(3)空気中にて前記溶液をろ過し、真空乾燥する工程、から、白金ナノ粒子を酸化スズナノ粒子に担持させた触媒を製造する製法を提供する。
【選択図】図25
Description
(1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)空気中にて前記溶液をろ過し、真空乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子を酸化スズナノ粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法を提供する。
(1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)反応停止剤としてアセトンを滴下し、攪拌する工程、
(4)空気中にて前記溶液をろ過し、真空乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子を酸化スズナノ粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法を提供する。
(1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)空気中にて前記溶液をろ過する工程、
(4)前記溶液に高比表面積を有するカーボンブラック(ケッチェンブラックEC)を加えて、攪拌する工程、
(5)前記溶液をろ過し、減圧乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子と酸化スズナノ粒子を高比表面を有するカーボン粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法
(1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)反応停止剤としてアセトンを滴下し、攪拌する工程、
(4)空気中にて前記溶液をろ過する工程、
(5)前記溶液に高比表面積を有するカーボンブラック(ケッチェンブラックEC)を加えて、攪拌する工程、
(6)前記溶液をろ過し、減圧乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子と酸化スズナノ粒子を高比表面を有するカーボン粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法を提供する。
5.0gのtetraoctylammonium bromide[N(C8H17)4Br](9.15mmol)をTHFに溶かし、9.15mLの1.0MK(BEt3H)を含むTHF溶液(9.15mmol,THF溶液)11mLを徐々に加え、Ar雰囲気下、室温で1時間スターラーピースで撹拌して反応させた。還元剤[K(BEt3H)]の滴下で透明の溶液は白濁した。得られた溶液は、0℃で16h冷却した後、白色沈殿物(KBr)と溶液を吸引ろ過し、10mLのTHF溶液で洗浄した。得られた還元剤兼安定化剤であるtetraoctylammonium bromide hydridotriethylborate[N(C8H17)4[BEt3H]]は、0℃下で保存した。還元剤兼安定化剤の合成が反応式(1)の反応機構で完全に進行したと仮定すると、0.30MのN(C8H17)4[BEt3H]のTHF溶液が得られる。
本発明では、Bonnemann法を改良した方法で触媒を作製した。100mLのTHF溶液にPtとSnの原子比が3対1になるように0.177gの塩化白金(PtCl2,0.67mmol)と0.0425gの塩化すず(SnCl2,0.23mmol)を溶かした後、この溶液をナスフラスコに入れた。そこに、12mLの0.30MN(C8H17)4[BEt3H](3.60mmol)を含むTHF溶液をゆっくり加えた。この時に反応剤の滴下により溶液は、茶色から黒色に変化した。なお、完全に反応を進行させるために、還元剤兼安定化剤であるN(C8H17)4[BEt3H]を必要量の2倍加えた。反応は、30℃、Ar雰囲気で撹拌しながら行った。その後、反応停止剤として15mLのアセトンを滴下し、さらに30min撹拌を続けた。最後に、溶液をアスピレーターでろ過し、真空乾燥することによりPt/SnO2ナノ粒子を得た。Pt/SnO2コロイドの反応は以下のような機構で進行していると考えられる。
作製した70wt.% Pt/SnO2/CB触媒の表面には、安定化剤の役割をするN(C8H17)4Clが吸着している。これを除去するために、電気炉で空気中、種々の温度や時間で熱処理を行った。以降、100、200および300℃で熱処理した触媒は、それぞれPt/SnO2/CB−100、Pt/SnO2/CB−200およびPt/SnO2/CB−300と記す。
熱処理条件を決定するために、TG−DTA分析(リガク,ThermoPlusTG812)を行った。TG−DTA分析は、試料を電子天秤で10.00mgまたは5.00mg量り取り、厚さが均一になるようにAlパンに試料をつめ、Al製の蓋を取り付けた。5K/minまたは1K/minの昇温速度で室温〜500℃まで昇温させ、その時の重量変化(TG)および熱量変化(DTA)を測定した。測定はすべて空気雰囲気で行い、標準物質にはAl2O3を用いた。
X線回折装置(島津製作所XRD−6100)を用い、管電圧50kV、管電流30mAの測定条件で測定を行った。まず、20°〜100°を走査速度4°/minで、続いて、30°〜50°を走査速度0.2°/minで測定した。ICDDデータベースで指数付けを行った。
XPS測定装置(島津製作所ESCA−3200)を使用して、X線源としてMgKα線(1253.6eV)を用い、電圧8kV、電流30mAの測定条件でX線光電子分光分析を行った。なお、結合エネルギーの補正はAu 4f7/2 (84.0eV)により行った。
GCは3種類の異なる粒径のアルミナ(1.0μm、0.3μm、0.06μm)を用いて、それぞれを一定の時間(10min、5min、5min)で研磨して表面を鏡面にした。その後、エタノール中で超音波洗浄を5minで1回、超純水中で5minを2回行い、GCに吸着した有機物およびアルミナを除去した。Pt/SnO2/CBを99.5vol.%のエタノール溶液に入れて超音波処理を行い、高分散させた懸濁液を調製した。この懸濁液をGC上に20μL滴下し、室温、エタノール蒸気圧下で乾燥させた(Pt/SnO2=12.8μg/cm2、CB=5.5μg/cm2)。
続いて、GC上触媒を固定させるために0.05wt.% Nafion(ナフィオン:商標名)溶液を10μL滴下し(Nafion被膜厚=0.1μm)、エタノール蒸気圧下で乾燥させた。最後に、空気中、120℃で1h熱処理を行い、Pt/SnO2/CBをGC上に固定化させた。この電極を電気化学測定に用いた。
電気化学測定には、回転ディスク電極用セルを用いた。作用極にはPt/SnO2/CB、対極にPt板、参照極に可逆水素電極(RHE)を使用した。電解液には20minAr脱気した0.5M H2SO4水溶液または(1M CH3OH+0.5 MH2SO4)水溶液を用いた。サイクリックボルタモグラム(CV)は、0.05〜0.6V vs. RHEあるいは0.05〜1.0V vs. RHEの範囲を20mV/sで電位掃引して得た。全ての実験は30℃で行った。
アルコール酸化反応活性を調べるために、0.5M H2SO4水溶液で0.05〜0.6Vを20mV/sで20サイクル行った。続いてアルコール酸化を0.05〜0.6Vと0.05〜1.0Vの範囲をそれぞれ20mV/sで20サイクルずつ行った。最後に、再び0.5M H2SO4水溶液で0.05〜0.6Vと0.05〜1.0Vの範囲を20mV/sでそれぞれ20サイクルずつ行い、アルコール酸化試験前のCVとの差異を比較した。なお、Pt/Cはサイクルにより挙動が変化しなかったため、全ての図は20サイクル目を示す。
触媒のアルコール酸化に対する安定性試験は、電解液にAr脱気した(1M C2H5OH+0.5M H2SO4)水溶液を用いて0.2、0.4、0.6および0.8V vs. RHEで定電位電解を行った。
図1にN(C8H17)4BEt3Hの1H NMRスペクトルを示す。図2に示すようにN(C8H17)4BEt3Hでは、化学的に等価な水素は7種類存在するが、水素化物のHは測定範囲には含まれない。Nは電気陰性度がCに比べて大きいために、隣接するメチレン鎖のHは反しゃへい化(全磁場強度が減少)され、低磁場側(δが大きい)にシフトした。この影響はNからの距離とともに大幅に減少する。一方、Bは電気陰性度が小さいため、Bと結合しているエチル基のHは高磁場側(δが小さい)にシフトした。また、隣接する非等価なHに影響を受けたピークの***は見られなかった。これは、僅かに不純物(3.65ppm付近のピーク)が存在するためと考えられる。
1H NMRスペクトルの定量では、3.2ppmのピークを8Hとし、それを基準として各ピークの積分を求めている。N(C8H17)4部分では積分データが図1の左側から、それぞれ8H,8H,42H,13Hとなり、予想される値と概ね一致していた。BEt3H部分では図1の左側から、それぞれ9H,6Hとなり予想と一致していた。このことから、還元剤兼安定化剤であるN(C8H17)4BEt3Hが合成されていることを確認した。
図3にPt/SnO2/CのTG−DTA曲線を示す。ここで、図3(a)は温度に対する変化を、図3(b)は時間に対する変化を示している。130℃付近から1段階目の質量減少が起こり、続いて、300℃付近から2段階目のより大きな質量減少が起こった。この質量減少は、(1)Sn種、(2)ケッチェンブラック(3)[N(C8H17)4Cl]8、などによるものと考えられる。そこで、Sn種としてSn(metal)、SnO、SnO2、担体であるケッチェンブラックおよび還元剤兼安定化剤の原料であるN(C8H17)4Brを同じ条件下で熱分析した。
図4に(a)Sn(metal)、(b)SnO、(c)SnO2、(d)ケッチェンブラックのTG−DTA測定の結果を示す。Sn(metal)では、融点の226℃付近で質量変化を伴わない吸熱ピークが見られ、相転位が起こっていることが予想される。一方、SnOとSnO2ではTG、DTA共に変化は見られなかった。ケッチェンブラックでは、室温から70℃付近で脱水反応による質量減少と吸熱ピークのみが見られた。
図6にPt/CにおけるTG−DTA曲線を示す。Pt/CのTG−DTA曲線はPt/SnO2/Cと同様の挙動を示しており、質量減少の変化はSn種のみが関与した挙動ではなく、Pt、ケッチェンブラックあるいはN(C8H17)4Brが関与した反応であると考えられる。
図8にPt/SnO2触媒のTG−DTA曲線を示す。150℃付近から1段階目の質量減少を伴う発熱反応が起こったが、CBを担持した触媒で起こっていた300℃付近からの変化が見られなかった。このことから、300℃付近からの質量減少を伴う発熱反応はケッチェンブラックの燃焼と考えられる。CBのみではこの質量減少が起こらなかったことから、PtおよびPt/SnO2のナノ粒子がカーボンブラックの燃焼を促進したと予想される。
続いて、試料を室温に冷却し、[N(C8H17)4Cl]8を除去したPt/SnO2/CのTG−DTA曲線を図11に示す。250℃付近からケッチェンブラックの燃焼による質量減少が500℃に達するまで続き、500℃で2h保持しても変化は起こらなくなった。これは、触媒を担持したケッチェンブラックがすべて燃焼されたためである。100℃以下の脱水反応分を除く質量減少は約33wt.%となり、触媒を担持したケッチェンブラックのカーボン分の30wt.%と一致した。従って、作製したPt/SnO2/Cはケッチェンブラック上にPt/SnO2が70wt.%担持されており、仕込み量どおりの触媒が再現性よく得られた。
図12にPt/Cの熱処理時間を変えたときのXRDパターンを示す。ここで、熱処理温度は200℃とし、作製直後の熱処理していない触媒をPt/C−N、200℃で熱処理した触媒をPt/C−200と表記する。熱処理時間に関係なく、Ptの結晶面に対応するピークのみが見られた。また、Pt由来のピークは、熱処理時間が短いほど、よりブロードになっている。表1にScherrerの式をPt(111)面に適用して求めた結晶子サイズを示す。
図13に熱処理温度150℃でのPt/C(Pt/C−150)のXRDパターンを示す。熱処理温度200℃の時と同様にPtの結晶面に対応するピークのみが見られた。この場合にも、熱処理時間が短いほどピークはブロードであり、表2に示すようにScherrerの式から求めた結晶子サイズからも熱処理時間が短いほど結晶子サイズは小さくなった。
図17にPt/C−NおよびPt/C−200におけるPt 4fのXPSスペクトルを示す。熱処理に関係なくPtは金属状態として存在しており、ピーク位置のシフトおよびPt酸化物の存在は確認されなかった。Ptは金属状態、SnはSnO2として共存していることが分かった。この結果は、前述のXRDの結果と一致する。また、吸着している還元剤兼安定化剤に起因するN、Clのピークは熱処理の前後どちらでも見られなかった。
図18にSnO2/C−NのSn 3dのXPSスペクトルを示す。Snは金属状態で存在しているのではなく、Sn4+の状態と一致していることが確認された。この結果からBonnemann法を改良した方法で作製した触媒では、SnO2として存在していることが分かった。
図19にPt/SnO2/C−NのPt 4fおよびSn 3dのXPSスペクトルを示す。Pt 4fスペクトルからPt(metal)に由来するピークが見られた。また、Sn 3dスペクトルでは3d5/2および3d3/2のピーク位置から、SnO2の状態で存在することが分かった。還元剤兼安定化剤の成分として含まれるNとClは、ピークが見られなかった。
作製直後のPt/C−Nについて、図21に(a)SEM像および(b)EDXスペクトル、図22に元素マッピングをそれぞれ示す。触媒中にはPt以外にCとOが存在するのみで、KやCl、Brといった不純物は確認されなかった。作製直後のSnO2/C−Nについて、図23に(a)SEM像および(b)EDXスペクトル、図24に元素マッピングをそれぞれ示す。試料にはSn以外にはCとOが存在するのみで、この場合もKやCl、Brといった不純物は確認されなかった。元素マッピングの結果、PtやSnは均一に分散しており、SnとOの存在場所はほぼ一致している。
(Pt/Cのメタノール酸化反応(MOR))
図29に20サイクル後のPt/C−200のCV曲線を示す。水素脱着電気量から求めた実面積は0.18cm2であり、ラフネスファクター(Rf値)は0.92であった。図30にPt/SnO2/C−200のメタノール酸化反応を示す。なお、左図は0.05−0.60V、右図は0.6Vまで測定した後に0.05−1.0Vまでを20mVs-1で掃引した結果である。電流密度は実面積あたりで示している。メタノール酸化電流の立ち上がり電位は、約0.4Vであった。また、図30の左図のように1.0Vまで電位走査すると、Pt電極で一般的に見られるメタノール酸化の応答が得られた。
図31にメタノール酸化試験後に測定したCV曲線を示す。0.05−0.60Vでの水素脱着電気量から求めた実面積は0.28cm2であり、Rf値は1.44であった。また、0.05−1.0Vでの実面積は0.42cm2であり、Rf値は2.14であった。測定後には面積が増大していた。これは、Snが高電位で溶解したことを示唆している。
図32に20サイクル目のPt/C−200のCV曲線を示す。水素脱着電気量から求めた実面積は0.23cm2であり、Rf値は1.19であった。これは図32で求めた数値に非常に近いことから、再現性よく電極が作製されていると考えられる。図33にPt/SnO2/C−200のエタノール酸化反応を示す。エタノール酸化電流の立ち上がり電位は、約0.30Vであった。
図34にエタノール酸化試験後のCV曲線を示す。0.05−0.6Vでの水素脱着電気量から求めた実面積は0.23cm2であり、Rf値は1.2であった。また、0.05−1.0Vでの実面積は0.39cm2であり、Rf値は2.00であった。
図35にPt/SnO2/C−200のCV曲線を示す。0.05−0.40Vの電位範囲で通常のPtのCV曲線と類似した水素吸脱着波が見られた。この範囲で水素脱着電気量から求めた実面積は0.24cm2であり、Rf値は1.3であった。
図36にPt/SnO2/CとPt/CのMOR活性の比較を示す。なお、電流密度は実面積あたりの比活性で評価している。0.05−0.60VではPt/SnO2/CのMOR電流の立ち上がりは0.35Vであり、Pt/Cの0.50Vよりも低電位であった。また、Pt/SnO2/CはPt/Cよりも電流密度が大きく、高いMOR活性を持つことが分かった。しかし、1.0Vまで電位走査すると電流密度はPt/Cに比べ小さくなったこれは、Snが溶解したためと考えられる。MOR測定後にCV測定を行った。その結果を図37に示す。曲線から求めた実面積とラフネスファクターは、(a)実面積:0.30cm2、Rf:1.5、(b)実面積:0.40cm2、Rf:2.1であった。
図38にPt/SnO2/C−200のCV曲線を示す。0.05−0.40Vの電位範囲で通常のPtのCV曲線と類似した水素吸脱着波が明確に見られた。この電位範囲で水素脱着電気量から求めた実面積は0.21cm2であり、Rf値は1.1であった。図39に0.05−0.60Vの電位範囲におけるPt/SnO2/CとPt/CのEOR活性の比較を示す。なお、電流密度は実面積あたりで表示している。Pt/CでのEOR電流の立ち上がり電位の約0.35Vに対し、Pt/SnO2/Cでは約0.15Vと0.20V負電位側にシフトしていた。このことから、Pt/SnO2/CはPt/Cよりも高いEOR活性を有していることが明らかとなった。この高い活性は、これまでのXRD、XPS、SEM−EDXなどの分析結果から、PtおよびSnO2がナノ粒子で共存していることに起因すると考えられる。図40(a)に0.05−1.0Vの電位範囲におけるPt/SnO2/CとPt/CのEOR活性の比較を示す。0.60Vまでとは異なり、Pt/SnO2/CはPt/Cの立ち上がりの電位はほぼ同じ0.40Vであるが、電流密度が小さくなった。図40(b)のPt/SnO2/C−200の1サイクル目と20サイクル目の比較から、サイクル数が増加すると実面積あたりの電流密度にはほぼ変化がないが、EORの開始電位は正電位側にシフトしていることが分かる。これは、触媒からのSn成分の溶出が関与していることを示唆している。
0.40Vおよび0.60VにおけるPt/SnO2/C−200とPt/C−200のエタノールの定電位電解の比較をそれぞれ図42と図43に示す。これまでと同様、電流密度は実面積あたりの比活性で評価している。触媒や電位によらず、初期の10minでEOR電流が大きく減少し、それ以降はゆるやかに減少する傾向を示した。また、0.40Vおよび0.60Vの両方において、Pt/SnO2/C−200はPt/C−200よりも高いEOR活性を示した。
表12に各電位でのEOR電流密度の比較を示す。すべての電位においてPt/SnO2/Cは、Pt/Cより優れていることが明らかである。これは、SnO2がナノ粒子で共存することで反応中間体の被毒種(CO、CH3CHO等)に対する耐性が大きくなったためであると考えられる。また、正電位側ほどEOR電流の低下が小さく、被毒の影響を受けにくいことが分かる(0.20Vは電流密度が小さいため除く)。また、過去の文献でPt合金(Pt−Mo)はエタノール定電位電解の様々な条件(0.4,0.5,0.6,0.7V)で、Ptに比べて数倍高活性であることが報告されている。
Claims (8)
- 白金ナノ粒子を酸化スズナノ粒子に担持させた触媒からなることを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒。
- 白金ナノ粒子と酸化スズナノ粒子とを高比表面を有するカーボン粒子に担持させた触媒からなることを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒。
- 前記カーボン粒子に担持される白金ナノ粒子と酸化スズナノ粒子の比率は、白金とスズの原子比が3対1となるようにしたことを特徴とする請求項2記載の直接形アルコール燃料電池電極用触媒。
- (1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)空気中にて前記溶液をろ過し、真空乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子を酸化スズナノ粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法。 - (1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)反応停止剤としてアセトンを滴下し、攪拌する工程、
(4)空気中にて前記溶液をろ過し、真空乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子を酸化スズナノ粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法。 - (1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)空気中にて前記溶液をろ過する工程、
(4)前記溶液に高比表面積を有するカーボンブラック(ケッチェンブラックEC)を加えて、攪拌する工程、
(5)前記溶液をろ過し、減圧乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子と酸化スズナノ粒子を高比表面を有するカーボン粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法。 - (1)常温、アルゴン(Ar)雰囲気で撹拌しながらテトラヒドロフラン(THF)溶液に白金(Pt)とスズ(Sn)の原子比が3対1になるように塩化白金(PtCl2)と塩化スズ(SnCl2)を溶かした溶液を作成する工程、
(2)前記溶液にN(C8H17)4[BEt3H]を含むTHF溶液を加える工程、
(3)反応停止剤としてアセトンを滴下し、攪拌する工程、
(4)空気中にて前記溶液をろ過する工程、
(5)前記溶液に高比表面積を有するカーボンブラック(ケッチェンブラックEC)を加えて、攪拌する工程、
(6)前記溶液をろ過し、減圧乾燥する工程、
から、白金ナノ粒子と酸化スズナノ粒子を高比表面を有するカーボン粒子に担持させた触媒を製造することを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法。 - 請求項6の(4)工程及び請求項7の(5)工程において、攪拌する手段としては、超音波処理手段を用いることを特徴とする直接形アルコール燃料電池電極用触媒の製法。
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