JP2004084607A - エンジンの制御装置及び方法、ハイブリッド型の動力出力装置並びにハイブリッド車両 - Google Patents

エンジンの制御装置及び方法、ハイブリッド型の動力出力装置並びにハイブリッド車両 Download PDF

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Abstract

【課題】例えばハイブリッド車両において、ピストン速度特性をエンジンの機関運転状態に応じて変更可能とし、これにより例えばノック領域、非ノック領域など複数種類の機関運転状態に応じて、エンジン効率を向上させる。
【解決手段】ハイブリッド車両等に備えられ、ピストン及びこれに接続されたクランク軸を有するエンジンを制御する制御装置は、ピストンに対して駆動力を付与可能である、モータジェネレータ等の駆動力付与手段を備える。更に、クランク軸におけるクランク角度及びエンジンにおける機関運転状態に応じて、ピストンに対し、その運動方向の正方向及び負方向の少なくと一方向に、駆動力を付与するように駆動力付与手段を制御する、EFIECU等の制御手段を備える。
【選択図】  図7

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピストン及びクランク軸を有するエンジンを制御する制御装置及び方法、並びにこのような制御装置を備えたハイブリッド型の動力出力装置及びハイブリッド車両の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
伝統的なレシプロエンジンに代表されるこの種のエンジンでは、クランク軸にコンロッド(コネクションロッド)を介して接続されるピストンは、吸気、圧縮、膨張及び排気の全工程を通じて、クランク軸の回転速度に、単純なリンク機構で対応した往復移動速度(本願明細書では適宜、単に「ピストン速度」と呼ぶ)で一様に動く。即ち、クランク軸がシリンダボアの中心線上に存在しており、圧縮工程及び膨張工程間或いは吸気工程及び排気工程間で、瞬間的なエンジン回転数或いはピストン速度は同じである。
【0003】
これに対し、特開平11−236832号公報には、“逆オフセットクランク”なる構造が開示されている。この逆オフセットクランク構造によれば、クランク軸がシリンダボアの中心からその回転方向と逆の方向に所定量だけオフセットされており、圧縮工程に費やす時間が膨張工程に費やす時間に比べて相対的に短くなるように設定されたピストン速度特性が得られる。そして、このようなピストン速度特性と点火時期の遅角制御とを組み合わせることで、ノッキング防止を図りつつこれによるエンジン効率低下を抑制することができるとされている。また、特開平9−264155号公報、特開昭56−98531号公報等には、オフセットクランク或いは“順オフセットクランク”なる構造が開示されている。この順オフセット構造では、クランク軸がシリンダボアの中心からその回転方向と同じ方向に所定量だけオフセットされており、ピストン及びシリンダ間における摺動抵抗が低減可能とされている。
【0004】
以上のようにオフセットクランク構造によれば、クランク回転速度を基準としたピストン速度は、全工程を通じて一様でないように構成されている。即ち、ピストン速度は、圧縮工程で瞬間的に高まったり低まったりする。尚、本願明細書では、オフセットクランク構造を有しないエンジンを、適宜「通常エンジン」と呼ぶ。
【0005】
他方で、例えば特開平9−47094号公報、特開2000−324615号公報等に開示されているように、ハイブリッド車両に好適に搭載される所謂ハイブリッド型の動力出力装置が開発されている。この種のハイブリッド型の動力出力装置では、例えば、要求される動作状態に応じて適宜、モータジェネレータ装置をエンジンの駆動力で回転されるジェネレータ(発電機)として利用して或いはモータジェネレータ装置に含まれる専用のジェネレータを利用して、バッテリに充電する、また、モータジェネレータ装置をバッテリから電源供給を受けて回転するモータ(電動機)として利用して或いはモータジェネレータ装置に含まれる専用のモータを利用して、駆動軸を単独で或いはエンジンと共に回転させる。そして、この種の動作出力装置は、パラレルハイブリッド方式とシリアルハイブリッド方式とに大別される。前者では、駆動軸をエンジンの出力の一部により回転させると共にモータジェネレータ装置の駆動力により回転させる。後者では、エンジン出力はモータジェネレータ装置による充電に専ら用いられ、駆動軸をモータジェネレータ装置の駆動力により回転させる。
【0006】
尚、本願明細書では、このようにパラレル又はシリアルハイブリッド方式の動力出力装置を構成しており、モータジェネレータを一又は複数含む若しくは、ジェネレータ及びモータを一又は複数ずつ含む重電機全体を、それらの接続配線等を含めて「モータジェネレータ装置」と呼ぶことにする。更に、本願明細書では、いずれの形式のハイブリッド型の場合にも、エンジンの出力をモータジェネレータ装置の駆動力で補うことを「アシストする」といい、この際のモータジェネレータ装置の駆動力を「アシスト力」と呼ぶ。加えて、本願明細書では、エンジンの回転数とトルクとの相互関係を2次元座標上にプロットした回転数−トルク特性図上において、ノッキングを発生する領域を「ノック領域」と呼び、ノッキングしない領域を、「非ノック領域」と呼び、これら二つの領域間に存在する領域を「中間領域」と呼ぶ。更に、このような回転数―トルク特性図を適宜、単に「特性図」と呼ぶことにする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のオフセットクランク構造によれば、ピストン速度は、エンジン回転数とクランク角(或いはクランク位置)によって一義的に定められているものである。即ち、ピストン速度特性は、クランク軸のオフセットのさせ方(即ち、順又は逆の別)及びオフセットの量に応じて固定されている。このため、例えば、機関運転状態が特性図上でノック領域にあるのか又は非ノック領域にあるかなど、エンジンの機関運転状態に応じて、ピストン速度特性を変更することは不可能である。従って、複数種類の機関運転状態について、エンジン効率向上(例えば、熱効率或いは燃焼改善、特にノッキング防止による燃費向上を含めた全般的な燃費向上など)を図ることは技術的に困難である。
【0008】
より具体的には、例えばエンジンでは、要求エンジントルクが大きいと、ノッキングし易くなり、更に係るノッキングのし易さは、エンジン回転数が低い程大きくなる。これに対処すべく、前述した逆オフセットクランク構造を採用してピストン速度特性を設定すると、ノッキングを回避可能であるものの、圧縮工程でエンジン回転数が瞬間的に高い(即ち、ピストン速度が瞬間的に高い)が故にノッキングしない機関運転状態において、エンジン回転数の増加に伴う点火時期の遅れによって等容度の低下が顕著となる。即ち、通常エンジンと比較して、等容度が低くなり、エンジン効率が低下してしまうという第1の問題が生じる。逆に、これに対処すべく、順オフセットクランク構造を採用してピストン速度特性を設定すると、今度は、ノッキングしやすい機関運転状態において、圧縮工程でエンジン回転数が瞬間的に低い(即ち、ピストン速度が瞬間的に低い)が故に、返ってノッキングし易くなるという第2の問題が生じる。このように、ピストン速度特性が固定された従来のオフセットクランク構造によれば、第1及び第2の問題を同時に解決することは技術的或いは論理的に見て非常に困難である。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、ピストン速度特性をエンジンの機関運転状態に応じて変更可能であり、これにより複数種類の機関運転状態に応じてエンジン効率を向上させ得るエンジンの制御装置及び方法、並びにこのような制御装置を備えたハイブリッド型の動力出力装置及びハイブリッド車両を提供することを課題とする。
【0010】
【発明を解決するための手段】
本発明のエンジンの制御装置は上記課題を解決するために、ピストン及び該ピストンに接続されたクランク軸を有するエンジンを制御する制御装置であって、前記ピストンに対して駆動力を付与可能である駆動力付与手段と、前記クランク軸におけるクランク角度及び前記エンジンにおける機関運転状態に応じて、前記ピストンに対し、その運動方向の正方向及び負方向の少なくと一方向に、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御する制御手段とを備える。
【0011】
本発明のエンジンの制御装置によれば、エンジンは、例えばピストンにコンロッドを介して接続されたクランク軸を有する4サイクル型のレシプロエンジンである。制御装置は、例えばクランク軸を介してピストンに対して駆動力を付与可能であるモータ等を含んでなる電動式の駆動力付与手段を備える。更に、この駆動力付与手段を制御する例えばマイコン等を含んでなる制御手段を備える。そして、動作時には、制御手段による制御下で、駆動力付与手段は、ピストンに対し、クランク軸におけるクランク角度及びエンジンにおける機関運転状態に応じて、その運動方向の正方向及び負方向の少なくと一方向に駆動力を付与する。即ち、ピストン速度は、エンジン回転数とクランク角(或いはクランク位置)によって一義的に定められるものではなく、そのピストン速度特性は、機関運転状態に応じて可変とされる。例えば、機関運転状態が特性図上でノック領域にあるのか又は非ノック領域にあるかなど、エンジンの機関運転状態に応じて、ピストン速度特性を変更することが可能となる。従って、複数種類の機関運転状態について、エンジン効率向上を図ることが可能となる。
【0012】
以上のように本発明のエンジンの制御装置によれば、ピストン速度特性をエンジンの機関運転状態に応じて変更可能であり、これにより複数種類の機関運転状態に応じてエンジン効率を向上させ得る。
【0013】
尚、本発明に係るエンジンは、4サイクル型の他、2サイクル型等の他の燃焼型式であってもよい。また、駆動力付与手段は、クランク軸からコンロッドを介してピストンに駆動力を伝えるものに限られない。更に、クランク軸或いはコンロッドを介して駆動力を付与する構造の他、ピストンに対し直接的に又は他の機構を介して間接的に、駆動力を付与するように構成されてもよい。
【0014】
本発明のエンジンの制御装置の一態様では、前記エンジンでノッキングが発生するか否かを判定する判定手段を更に備えており、前記制御手段は、前記機関運転状態として前記判定手段による判定に基づく前記ノッキングの発生状態に応じて前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御する。
【0015】
この態様によれば、その動作時には、定期的に或いは不定期に、判定手段によって、エンジンでノッキングが発生するか否かを判定する。この判定は、例えば車速、アクセス踏み込み量、或いはエンジン回転数、エンジントルクなど各種の検出可能或いは算出可能な一又は複数のパラメータに基づいて、例えば予め設定され制御手段の内蔵メモリに格納されたマップ或いはテーブルを参照して行えばよい。そして、制御手段による制御下で、駆動力付与手段は、判定手段による判定に基づくノッキングの発生状態に応じて、駆動力をピストンに対して付与する。即ち、機関運転状態に応じて可変とされたピストン速度特性により、必要な場合にのみノッキング抑制を選択的に行うことも可能となる。
【0016】
この判定手段に係る態様では、前記判定手段は、前記エンジンの回転数及び負荷に応じて、前記ノッキングが発生するか否かを判定するように構成してもよい。
【0017】
このように構成すれば、例えば予め設定されたエンジンの回転数及び負荷(トルク)の特性図を作成して制御手段の内蔵メモリにマップ化或いはテーブル化して保持しておけば、これを参照することで各時点での機関運転状態がノック領域に入るか或いは非ノック領域に入るかを比較的簡単且つ迅速に判定できる。
【0018】
この判定手段に係る態様では、前記判定手段は、特定周波数帯域内の振動として前記エンジンのノッキングレベルを検出するノッキングレベルセンサの検出出力に応じて、前記ノッキングが発生するか否かを判定するように構成してもよい。
【0019】
このように構成すれば、リアルタイムで検出されるノッキングレベルセンサの検出出力に従って、直接的にノッキングが発生しているか否か或いはノッキングが発生しそうであるか否かを比較的簡単且つ迅速にして高信頼性で判定できる。
【0020】
この判定手段に係る態様では、前記判定手段は、前記エンジンの筒内圧センサの検出出力に応じて、前記ノッキングが発生するか否かを判定するように構成してもよい。
【0021】
このように構成すれば、リアルタイムで検出される筒内圧センサの検出出力に従って、例えばエンジン回転数に応じて規定される閾値圧力よりも筒内圧が高いなど、間接的にノッキングが発生しているか否か或いはノッキングが発生しそうであるか否かを比較的簡単且つ迅速にして高信頼性で判定できる。
【0022】
この判定手段に係る態様では、前記判定手段は、前記機関運転状態に影響を及ぼす外的要因を測定する外的センサの検出出力に応じて、前記ノッキングが発生するか否かの判定基準に変更を加えるように構成してもよい。
【0023】
このように構成すれば、例えば、特にノッキングの発生し易さに強い影響を及ぼすような大気圧、外気温などの外的要因を測定する外的センサの検出出力に応じて判定基準に変更を加えことで、より高い信頼性でノッキングが発生するか否かを判定できる。
【0024】
この判定手段に係る態様では、前記制御手段は、前記判定手段によりノッキングが発生すると判定された場合には、前記エンジンの膨張工程初期における前記ピストンの速度が上昇するように前記駆動力付与手段を制御するように構成してもよい。
【0025】
このように構成すれば、判定手段によりノッキングが発生すると判定された場合には、制御手段による制御下で、駆動力付与手段は、ノッキングが誘発され易い膨張行程初期におけるピストン速度を上昇させる。ここで一般に、ノック領域において膨張行程初期にノッキングが誘発され易い理由は、相対的にエンジン回転数が低いノック領域では、ピストンスピードが遅いと、燃焼終了間際の燃焼室容積が小さくなるので、筒内圧が上昇し過ぎるからと考察される。そこで本態様では、膨張工程初期に、ピストンスピードを上げることによって、ノッキングの発生を効率的に防止することが可能となる。
【0026】
この判定手段に係る態様では、前記制御手段は、前記判定手段によりノッキングが発生しないと判定された場合には、前記エンジンの圧縮上死点における前記ピストンの速度が下降するように前記駆動力付与手段を制御するように構成してもよい。
【0027】
このように構成すれば、判定手段によりノッキングが発生しないと判定された場合には、制御手段による制御下で、駆動力付与手段は、圧縮上死点におけるピストン速度を下降させる。ここで一般に、エンジンの燃焼室におけるP(圧力)−V(容積)線図上では、理想的には点火して燃焼する時間内の燃焼室容積は小さいままの方が、筒内圧のピーク値が上がるので効率は基本的に良くなる。しかしながら、実際には、燃焼している瞬間にも、ピストンは動くので、筒内圧は理想的なP−V線図ほどに上昇せず、エンジン効率は悪化する。そこで本態様では、圧縮上死点におけるピストンの速度を下降させることで、理想的なP−V線図に近付けることにより、エンジンの等容度を積極的に上げる。これにより、ノッキングの発生を回避しつつ、エンジン効率或いは燃費性能を向上させることが可能となる。
【0028】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記駆動力付与手段は、前記クランク軸に接続されており、前記クランク軸を介して前記ピストンに対して駆動力を付与する。
【0029】
この態様によれば、制御手段による制御下で、駆動力付与手段は、クランク軸を介して、更には例えばコンロッドを介して、ピストンに対して駆動力を付与する。このように、クランク軸に接続されてクランク軸に回転力或いはトルクとして、駆動力を付与する駆動力付与手段であれば、既存の機構技術により、比較的容易にして当該駆動力付与手段を構築可能である。例えば、ハイブリッド型の動力出力装置に設けられたモータジェネレータ装置を構成するモータジェネレータを兼用で、或いは、このようなモータジェネレータを専用に設けることで、当該駆動力付与手段を構築可能となる。
【0030】
この態様では、前記駆動力付与手段は、前記クランク軸に共振部材を介して接続されているように構成されてもよい。
【0031】
このように構成すれば、駆動力付与手段により比較的短時間に或いは瞬間的にピストンに付与すべき駆動力を得るために必要なエネルギを、共振部材の共振を利用して低減できる。即ち、駆動力を付与する瞬間に、共振部材の共振により当該駆動力が強められるように、共振部材の共振定数を設定すれば、効率的な駆動力付与が可能となる。
【0032】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記ピストンと前記クランク軸との接続構造が、逆オフセットクランク構造とされている。
【0033】
この態様によれば、ピストンとクランク軸との接続構造は、クランク軸がシリンダボアの中心からその回転方向と逆の方向に所定量だけオフセットされた逆オフセット構造とされている。よって動作時に、駆動力付与手段による駆動力の付与が行われていない基準状態において、逆オフセットクランク構造に従って、圧縮工程に費やす時間が膨張工程に費やす時間に比べて相対的に短くなるように設定されたピストン速度特性が得られる。従って、ノッキング防止を図ることが可能となる。特に、この態様を前述した膨張工程初期のピストン速度を上昇させる態様に組み合わせれば、ノッキング防止の効果を一層増大することも可能となる。
【0034】
尚、このような逆オフセットクランク構造の更なる詳細については、特開平11−236832号公報に詳しい。
【0035】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記ピストンと前記クランク軸との接続構造が、順オフセットクランク構造とされている。
【0036】
この態様によれば、ピストンとクランク軸との接続構造は、クランク軸がシリンダボアの中心からその回転方向と同じ方向に所定量だけオフセットされた順オフセット構造とされている。よって動作時に、駆動力付与手段による駆動力の付与が行われていない基準状態において、順オフセットクランク構造に従って、ピストン及びシリンダ間における摺動抵抗が低減される。特に、この態様を前述した圧縮上死点のピストン速度を下降させる態様に組み合わせれば、エンジン効率或いは燃費性能の一層の向上を図ることも可能となる。
【0037】
尚、このような順オフセットクランク構造の更なる詳細については、特開平9−264155号公報に更に詳しい。
【0038】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記エンジンは、複数気筒を有し、前記制御手段は、720℃A/n/α(但し、℃Aはクランク角度、nは気筒数、αは自然数)の周期で、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御する。
【0039】
この態様によれば、エンジン回転数が上昇することで駆動力付与手段において高周波駆動が必要となる場合にも、予め720℃A/n/αで規定されるクランク角度の周期で駆動力をフィードフォーワード的に付与することにより、比較的単純な制御により高周波駆動に対応できる。
【0040】
或いは本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記エンジンは、複数気筒を有し、前記制御手段による前記クランク角に応じた制御は、前記駆動力の時間的変化又はクランク角に対する変化が、所定周波数以上の周波数域では、前記エンジンの全気筒のうち一部の気筒のみを対象として行われる。
【0041】
この態様によれば、エンジン回転数が相対的に高いが故に、駆動力付与手段による高周波の駆動力付与が必要となる場合に、エンジンの全気筒のうち一部の気筒のみを制御対象として、このような駆動力の付与をフィードフォーワード的に行う。これにより、比較的容易に当該駆動力の付与を行うことが可能となる。このように全気筒のうち一部の気筒のみを制御対象としても、相応の効果は得られるので、実践上大変便利である。尚、周波数が許せば、全気筒を制御対象としてよいことは言うまでもない、
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記駆動力の時間的変化又はクランク角に対する変化が所定波形となるように前記駆動力付与手段を制御する。
【0042】
この態様によれば、例えば正弦波など、駆動力の波形を比較的単純で制御しやすい所定波形としておくことで、その振幅調整や位相調整によって比較的高精度で駆動力付与の制御が可能となる。しかも、エンジン回転数の平均値については、正弦波に応じて平均化され、当該駆動力の付与によっては殆ど変化させないで済む。
【0043】
尚、このような所定波形としては、正弦波の他にも、圧縮上死点などで必要なピストン速度変化を得る際に急峻であり且つその後に元のピストン速度に戻す際には緩やかであるような非正弦波でもよい。或いは、よりパルス波形に近いものでもよい。但し、いずれの波形においても、平均化により要求エンジン回転数とされる。
【0044】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記駆動力を付与した際における前記クランク軸の回転数が、前記機関運転状態に応じて設定された目標回転数に近付くように前記駆動力付与手段をフィードバック制御する。
【0045】
この態様によれば、制御手段は先ず、例えば要求されている機関運転状態がノック領域や非ノック領域にあるなど、機関運転状態に応じて目標回転数を設定し、更にこの目標回転数に近付くように駆動力付与手段をフィードバック制御する。即ち、通常はノッキングを回避やエンジン効率向上のための駆動力付与は複数或いは多数の燃焼サイクルに跨って行われるので、このようなフィードバック制御を行うことで、駆動力付与の制御タイミングが遅れる或いは合わないこと等を効果的に未然防止でき、最適状態に近い状態で当該駆動力付与を行える。
【0046】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、特定周波数帯域内の振動として前記エンジンのノッキングレベルを検出するノッキングレベルセンサの検出出力が小さくなるように、前記駆動力付与手段をフィードバック制御する。
【0047】
この態様によれば、公知のノッキングコントロールシステムに設けられるノッキングレベルセンサにより、特定周波数帯域内の振動としてエンジンのノッキングレベルが検出される。すると、制御手段は、この検出出力が小さくなるように、駆動力付与手段をフィードバック制御する。即ち、通常はノッキングを回避のための駆動力付与は複数或いは多数の燃焼サイクルに跨って行われるので、このようなフィードバック制御を行うことで、駆動力付与の制御タイミングが遅れる或いは合わないこと等を効果的に未然防止でき、ノッキング回避のために最適状態に近い状態で当該駆動力付与を行える。
【0048】
これらのフィードバック制御に係る態様では、前記制御手段は、前記駆動力の振幅及び位相についてフィードバック制御するように構成してもよい。
【0049】
このように構成すれば、振幅及び位相を組合せで或いは独立にフィードバック制御することで、例えばノッキング改善効果やエンジン効率改善効果がより大きくなるように、ピストンに対して駆動力付与を行うことが可能となる。
【0050】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記機関運転状態に影響を及ぼす外的要因に応じて、前記駆動力の振幅及び位相を調整するように前記駆動力付与手段を制御する。
【0051】
この態様によれば、例えば、大気圧、外気温等のエンジンの機関運転状態に影響を及ぼす外的要因に応じて、フィードフォーワード的に、駆動力の振幅及び位相を調整しておく。これにより、ピストンに対して、より的確な駆動力付与を行うことが可能となり、例えば上述したフィードバック制御を行なう場合にも、フィードバックループを的確或いは迅速に閉じることも可能となる。
【0052】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与による改善効果が所定基準に従って低い場合には、前記駆動力を付与することを停止するように前記駆動力付与手段を制御する。
【0053】
この態様によれば、改善効果として、ピストンに対する駆動力付与により、例えばピストン速度がどれだけ変化したか、点火時期が何度進角できたか、ノッキングがどれだけ改善されたか、筒内圧がどれだけ変化したか等を、ノッキングコントロールシステム、エンジン筒内圧センサ等により検出する。そして、例えばピストン速度が殆ど変化していない、ノッキングが殆ど改善されていないなど、このように検出された改善効果が所定基準に従って低い場合には、制御手段による制御下で、駆動力付与手段は、駆動力を付与することを停止する。何らかの内的要因や外的要因によって、当該エンジンの制御装置による改善効果が低い状況では、このように制御を停止することで、当該エンジンの制御装置により消費されるエネルギ或いは電力を節約できる。
【0054】
この場合更に、前記所定基準は、前記駆動力付与手段における消費電力に応じて可変であるように構成してもよい。
【0055】
このように構成すれば、例えば消費電力が大きければ、所定基準を厳しくすることで大きな改善効果が得られなければ制御を中止し、例えば消費電力が小さければ、所定基準を緩くすることで小さな改善効果でも得られている限り制御を続行するなど、消費電力を節約する或いは有効利用しつつ当該制御を適宜実行可能となる。
【0056】
上述した改善効果に係る態様では、前記制御手段は、前記改善効果と前記駆動力との関係を学習して、前記改善効果をより高める駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御するように構成してもよい。
【0057】
このように構成すれば、例えばマイコンからなる制御手段は、当該制御装置により制御が行われる都度に、改善効果と駆動力との関係を学習する。そして、改善効果をより高める駆動力を付与するように駆動力付与手段を制御するので、学習が進むに連れて、ノッキング防止やエンジン効率向上の効果を、実践的な意味で最大限に近いレベルまで得ることも可能となる。
【0058】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記駆動力付与手段における前記駆動力の付与のために消費される消費電力が前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与により得られる燃費向上よりも大きい場合には、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を禁止する。
【0059】
この態様によれば、例えば駆動力付与手段における駆動力付与のための消費電力が検出され、この駆動力の付与により得られる燃費向上が算出され、標準化され上で両者が比較される。そして、前者が後者よりも大きい場合には、制御手段によって、駆動力付与手段による駆動力の付与が禁止されるので、最終的には、エンジン及び制御装置を含めたシステム全体として、無駄な制御を行うことなく、燃費向上を図れる。
【0060】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記エンジンは、前記駆動力付与手段とは別に、前記エンジンにおけるノッキングを防止可能なノッキング防止手段を備えており、前記制御手段は、予め設定された条件が満たされる場合には、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を中止すると共に、前記ノッキングを防止するように前記ノッキング防止手段を制御する。
【0061】
この態様によれば、エンジンは、例えば、吸気・排気時期(吸気時期及び排気時期のうち少なくとも一方)が可変に構成された吸気及び/又は排気弁、点火時期が可変に構成された点火プラグ、吸気圧を可変に構成されたターボ過給器、燃焼室容積を可変とするように構成されたコンロッド、クランク軸等など、駆動力付与手段とは別に、筒内圧、圧縮比、燃焼温度等を調節することで、エンジンにおけるノッキングを防止可能な各種ノッキング防止手段を備える。動作時には、制御手段は、例えば駆動力付与手段としてのモータ或いはモータジェネレータに電源供給するバッテリの充電状態が一定レベル以下であるなど、予め設定された条件が満たされる場合には、クランク角或いは機関運転状態によらずに駆動力付与手段による駆動力の付与を中止する。そして、上述したノッキング防止手段によって少なくとも一時的にノッキング防止が行われる。よって、何らかの条件でノッキング回避のための駆動力の付与が突如として中止されても、これにより大きなノッキングが発生する事態を効果的に回避できる。
【0062】
このノッキング防止手段に係る態様では、前記ノッキング防止手段は、前記クランク角に対して点火時期が可変に構成された点火プラグと前記クランク角に対して吸気時期を可変に構成された吸気弁とのうち少なくとも一方を含み、前記制御手段は、前記駆動力の付与を中止させる際に、前記点火時期及び前記吸気時期のうち少なくとも一方を制御するように構成してもよい。
【0063】
このように構成すれば、駆動力の付与を中止させる際には、点火時期が可変に構成された点火プラグの点火時期を遅角させることで、迅速にノッキング回避を行える。或いは、駆動力の付与を中止させる際には、吸気時期が可変に構成された吸気弁の吸気時期を遅角させることで、エンジン燃費低下代を小さくしつつ、ノッキング回避を行える。
【0064】
更にこの場合、予想される前記駆動力の付与を中止する時間に応じて、前記点火時期及び前記吸気時期の制御方法を変更するように構成してもよい。
【0065】
点火時期を遅角させるのと吸気時期を遅角させるのとでは、応答性能、即ちノッキング回避を行うまでにかかる時間と、制御に伴うエネルギ損失の度合いとが相異なる。よって、駆動力の付与を中止させる際には、例えば制御手段において先ず中止する時間を予想しておき、この予想される中止する時間に応じて、点火時期のみの制御、吸気時期のみの制御、両者を同時に行う制御、両者を相前後して行う制御など、点火時期及び吸気時期の制御方法を適宜変更することで、ノッキング回避を迅速に行うと同時にエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0066】
或いはこの場合、前記駆動力の付与を中止するまでの時間に応じて、前記点火時期及び前記吸気時期の制御方法を変更するように構成してもよい。
【0067】
上述のように点火時期を遅角させるのと吸気時期を遅角させるのとでは、応答性能とエネルギ損失の度合いとが相異なるので、駆動力の付与を中止させる際には、例えば制御手段において先ず中止するまでの時間を特定する。そして、この中止するまでの時間に応じて、点火時期のみの制御、吸気時期のみの制御、両者を同時に行う制御、両者を相前後して行う制御など、点火時期及び吸気時期の制御方法を適宜変更することで、ノッキング回避を迅速に行うと同時にエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0068】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記エンジンは、前記駆動力付与手段とは別に、前記エンジンにおける効率を向上可能な効率向上手段を備えており、前記制御手段は、予め設定された条件が満たされる場合には、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を中止すると共に、前記効率を向上させるように前記効率向上手段を制御する。
【0069】
この態様によれば、エンジンは、例えば、吸気・排気時期が可変に構成された吸気及び/又は排気弁、点火時期が可変に構成された点火プラグ、吸気圧を可変に構成されたターボ過給器、燃焼室容積を可変とするように構成されたコンロッド、クランク軸等など、駆動力付与手段とは別に、筒内圧、圧縮比、燃焼温度等を調節することで、エンジンにおける効率を向上可能な各種効率向上手段を備える。動作時には、制御手段は、例えば駆動力付与手段としてのモータ或いはジェネレータモータに電源供給するバッテリの充電状態が一定レベル以下であるなど、予め設定された条件が満たされる場合には、クランク角或いは機関運転状態によらずに駆動力付与手段による駆動力の付与を中止する。そして、上述した効率向上手段によって少なくとも一時的にエンジンの効率向上が行われる。
【0070】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、予め設定された条件が満たされる場合には、前記クランク角度及び前記機関運転状態によらずに、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を行わない。
【0071】
この態様によれば、例えば、エンジンの回転数、スロットル開度、吸気・排気時期等により特定可能である過渡運転状態にある場合や、駆動力付与手段としてのモータ或いはジェネレータモータに電源供給するバッテリの充電状態が一定レベル以下である場合など、予め設定された条件が満たされる場合には、クランク角度及び機関運転状態によらずに、駆動力付与手段による駆動力の付与を行わない。これにより、例えば過渡運転状態等の特殊状況で、ピストンに対する駆動力付与によるノック改善制御や等容度改善制御が実行され且つこれが破錠して、例えば大きなノッキングが発生する事態を未然防止できる。
【0072】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記エンジンにおける失火判定を前記ピストンの動きに基づいて実行可能であり、該失火判定を実行している最中には前記駆動力の付与を禁止するように前記駆動力付与手段を制御する。
【0073】
この態様によれば、制御手段は、エンジンにおける失火判定を実行することで、特別に失火時用に用意された各種エンジン制御を実行できる。ここで特に、ピストンに対する駆動力付与によるノック改善制御や等容度改善制御の最中には、ピストンの動きに基づいて行われる失火判定の精度は、概ね低下せざるを得ない。よって、失火判定の最中には、このようなピストンに対する駆動力付与を禁止する。これにより、失火判定の判定精度の低下を回避でき、誤った失火判定により、失火時用の各種エンジン制御を不適切に実行する事態を未然防止できる。尚、本願明細書における失火判定が基づく「ピストンの動き」とは、例えばピストン速度、クランク角速度、エンジン回転数等を指す。
【0074】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記エンジンにおける失火判定を前記ピストンの動きに基づいて実行可能であり、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御している最中には前記失火判定を禁止する。
【0075】
この態様によれば、制御手段は、エンジンにおける失火判定を実行することで、特別に失火時用に用意された各種エンジン制御を実行できる。ここで特に、ピストンに対する駆動力付与によるノック改善制御や等容度改善制御の最中には、ピストンの動きに基づいて行われる失火判定の精度は、概ね低下せざるを得ない。よって、このようなピストンに対して駆動力付与している最中には、失火判定を禁止する。これにより、失火判定の判定精度の低下を回避でき、誤った失火判定により、失火時用の各種エンジン制御を不適切に実行する事態を未然防止できる。
【0076】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、前記制御手段は、前記エンジンにおける失火判定を前記ピストンの動きに基づいて実行可能であり、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御している最中には前記駆動力の付与に起因した回転変動影響分を補正して前記失火判定を実行する。
【0077】
この態様によれば、制御手段は、エンジンにおける失火判定を実行することで、特別に失火時用に用意された各種エンジン制御を実行できる。ここで特に、ピストンに対する駆動力付与によるノック改善制御や等容度改善制御の最中には、ピストンの動きに基づいて行われる失火判定の精度は、概ね低下せざるを得ない。よって、このようなピストンに対して駆動力付与している最中には、当該駆動力付与に起因した回転変動影響分を補正して、失火判定を実行する。他方で、このようなピストンに対して駆動力付与していない最中には、当該駆動力付与に起因した回転変動影響分を補正することなく通常通りに失火判定を実行する。これにより、失火判定の判定精度の低下を回避でき、誤った失火判定により、失火時用の各種エンジン制御を不適切に実行する事態を未然防止できる。しかも、失火判定が長期に亘って実行されない事態を回避できる。
【0078】
本発明のエンジンの制御装置の他の態様では、当該エンジンの制御装置は、ハイブリッド車両に搭載されており、前記駆動力付与手段は、前記エンジンの出力の少なくとも一部を用いて発電可能であるモータジェネレータ装置を含む。
【0079】
この態様によれば、ハイブリッド車両において、モータジェネレータ装置を含む駆動力付与手段によって、ピストンに対し駆動力を高信頼性のタイミングで付与することが可能となる。特に、駆動力の振幅や位相制御も比較的高精度で制御できる。そして特に、ハイブリッド車両等において、モータジェネレータ装置を駆動力付与手段として利用することで、本発明のエンジンの制御装置を比較的容易に構築できる。
【0080】
このモータジェネレータ装置に係る態様では、前記モータジェネレータ装置は、前記ピストンに対して前記駆動力を付与する第1モータジェネレータと、前記ハイブリッド車両の駆動軸に対して他の駆動力を付与する第2モータジェネレータとを含んでなるように構成してもよい。
【0081】
このように構成すれば、所謂パラレルハイブリッド方式のハイブリッド車両等において、クランク軸側に接続された第1モータジェネレータを駆動力付与手段として利用することで、本発明のエンジンの制御装置を比較的容易に構築できる。
【0082】
更にこの場合、前記第1モータジェネレータが前記ピストンに対して前記駆動力を付与している状態において、前記駆動軸を介しての駆動輪への伝達振動を、前記第2モータジェネレータによって相殺するように構成してもよい。
【0083】
このように構成すれば、第1モータジェネレータがピストンに対して駆動力を付与することで、仮に伝達振動が無視し得ない程度に発生しても、係る振動に起因する駆動軸を介しての駆動輪への伝達振動を、第2モータジェネレータによって相殺する。これにより、駆動力付与手段としての第1モータジェネレータの作動時に、騒音が発生する或いは乗り心地が悪くなるなどの事態を、効果的に回避できる。尚、この場合における第2モータジェネレータによる「相殺」とは、理想的には、ほぼ完全に相殺することであるが、実践上は、駆動軸を介しての駆動輪への伝達振動を多少なりとも低減できれば、相応の効果が得られる。
【0084】
上述のモータジェネレータ装置に係る態様では、前記モータジェネレータ装置は、前記エンジンによる前記クランク軸の回転力で発電可能な第1モータジェネレータと、前記ハイブリッド車両の駆動軸に対して他の駆動力を付与する第2モータジェネレータとを含んでなり、前記制御手段は、前記第1モータジェネレータにおける負荷を低下させることで結果的に、前記クランク軸に対して前記駆動力を付与するように構成してもよい。
【0085】
このように構成すれば、所謂シリアルハイブリッド方式のハイブリッド車両等において、クランク軸側に接続された第1モータジェネレータを駆動力付与手段として利用することで、本発明のエンジンの制御装置を比較的容易に構築できる。
【0086】
本発明における駆動力付与手段による「駆動力の付与」とは、積極的に駆動力をピストンに付与する(これによりピストン速度を上昇させる)意味の他、エンジンに負荷として要求している出力トルクを積極的に低下させることで結果的に駆動力をピストンに付与する(これによりピストン速度を上昇させる)意味を含む広い概念である。
【0087】
本発明のハイブリッド型の動力出力装置は上記課題を解決するために、上述した本発明のエンジンの制御装置(但し、その各種態様も含む)と、前記エンジンと、前記モータジェネレータ装置とを備える。
【0088】
本発明のハイブリッド型の動力出力装置によれば、上述した本発明のエンジンの制御装置を備えるので、ピストン速度特性をエンジンの機関運転状態に応じて変更可能であり、これにより複数種類の機関運転状態に応じてエンジン効率を向上させ得る。しかも、このようなピストン速度特性を、ハイブリッド型の動力出力装置に含まれるモータジェネレータ装置を用いて比較的容易に実行できる。
【0089】
本発明のハイブリッド型の動力出力装置の一態様では、前記モータジェネレータ装置は、複数のモータジェネレータを含み、該複数のモータジェネレータのうち少なくとも一つは、前記エンジンの出力の少なくとも一部を用いて発電して前記蓄電装置を充電し、前記複数のモータジェネレータのうち少なくとも一つは、前記蓄電装置により電源供給されて前記駆動力を出力する。
【0090】
この態様によれば、パラレルハイブリッド方式であってもシリアルハイブリッド方式であっても、本発明のハイブリッド型の動力出力装置は、ピストン速度特性をエンジンの機関運転状態に応じて変更可能であり、これにより複数種類の機関運転状態に応じてエンジン効率を向上させ得る。尚、本発明に係る蓄電装置としては、例えばバッテリ、大容量コンデンサ等がある。
【0091】
本発明のハイブリッド車両は上記課題を解決するために、上述した本発明のハイブリッド型の動力出力装置(但し、その各種態様を含む)と、該動力出力装置が搭載される車両本体と、該車両本体に取り付けられると共に前記駆動軸を介して出力される前記駆動力により駆動される駆動輪を含む車輪とを備える。
【0092】
本発明のハイブリッド車両によれば、上述した本発明のハイブリッド型の動力出力装置を備えるので、ピストン速度特性をエンジンの機関運転状態に応じて変更可能であり、これにより複数種類の機関運転状態に応じてエンジン効率を向上させ得る。更に乗り心地の向上、エンジンの長寿命化を図れる。
【0093】
本発明のエンジンの制御方法は上記課題を解決するために、ピストン及び該ピストンに接続されたクランク軸を有するエンジンを、前記ピストンに対して駆動力を付与可能である駆動力付与手段を備えた制御装置により制御するエンジンの制御方法であって、前記クランク軸におけるクランク角度及び前記エンジンにおける機関運転状態に応じて、前記ピストンに対し、その運動方向の正方向及び負方向の少なくと一方向に、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御する制御工程を備える。
【0094】
本発明のエンジンの制御方法によれば、上述した本発明のエンジンの制御装置の場合と同様に、ピストン速度特性をエンジンの機関運転状態に応じて変更可能であり、これにより複数種類の機関運転状態に応じてエンジン効率を向上させ得る。
【0095】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施の形態から明らかにされよう。
【0096】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の実施形態では、本発明に係るエンジンの制御装置を、ハイブリッド車両に適用したものであり、更に、本発明に係るエンジンの制御方法は、当該ハイブリッド車両において実行されるものである。
【0097】
(ハイブリッド車両の基本構成及び動作)
先ず、本実施形態のハイブリッド車両の構成について図1を用いて説明する。ここに図1は、本実施形態のハイブリッド車両における動力系統のブロック図である。
【0098】
図1において、本実施形態のハイブリッド車両の動力系統は、エンジン150、モータジェネレータ装置の一例を構成するモータジェネレータMG1及びMG2、これらのモータジェネレータMG1及びMG2を夫々駆動する駆動回路191及び192、これらの駆動回路191及び192を制御する制御ユニット190、並びにエンジン150を制御するEFIECU(Electrical Fuel Injection Engine Control Unit)170を備えて構成されている。
【0099】
本実施形態では特に、モータジェネレータMG1は、駆動力付与手段の一例として機能する。そして、ノッキングを防止しつつエンジン効率を向上させるべく、制御手段の一例としてのEFIECU170による制御下で、モータジェネレータMG1は、エンジン150のクランクシャフトにおけるクランク角度及びエンジン150における機関運転状態に応じて、エンジン150のピストンに対し、その運動方向の正方向及び負方向の少なくと一方向に、駆動力を付与するように構成されている。このような駆動力の付与動作に付いては後に詳述する。
【0100】
エンジン150は、クランクシャフト156を回転させる。エンジン150の運転は、EFIECU170により制御されている。EFIECU170は、内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータであり、CPUがROMに記録されたプログラムに従い、エンジン150の燃料噴射量や回転速度その他の制御を実行する。図示を省略したが、これらの制御を可能とするために、EFIECU170にはエンジン150の運転状態を示す種々のセンサが接続されている。
【0101】
モータジェネレータMG1及びMG2は、同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータ132及び142と、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータ133及び143とを備える。ステータ133及び143は、ケース119に固定されている。モータジェネレータMG1及びMG2のステータ133及び143に巻回された三相コイルは、夫々駆動回路191及び192を介してバッテリ194に接続されている。
【0102】
駆動回路191及び192は、各相ごとにスイッチング素子としてのトランジスタを2つ1組で備えたトランジスタインバータである。駆動回路191及び192は夫々、制御ユニット190に接続されている。制御ユニット190からの制御信号によって駆動回路191及び192のトランジスタがスイッチングされると、バッテリ194とモータジェネレータMG1及びMG2との間に電流が流れる。
【0103】
モータジェネレータMG1及びMG2は夫々、バッテリ194からの電力の供給を受けて回転駆動するモータ(電動機)として動作することもできる(以下適宜、この運転状態を“力行”と呼ぶ)。或いは、ロータ132及び142が外力により回転している場合には三相コイルの両端に起電力を生じさせるジェネレータ(発電機)として機能してバッテリ194を充電することもできる(以下適宜、この運転状態を“回生”と呼ぶ)。
【0104】
エンジン150とモータジェネレータMG1及びMG2とは夫々、プラネタリギヤ120を介して機械的に結合されている。プラネタリギヤ120は、遊星歯車とも呼ばれ、以下に示す夫々のギヤに結合された3つの回転軸を有している。プラネタリギヤ120を構成するギヤは、中心で回転するサンギヤ121、サンギヤの周辺を自転しながら公転するプラネタリピニオンギヤ123、及びその外周で回転するリングギヤ122である。プラネタリピニオンギヤ123はプラネタリキャリア124に軸支されている。本実施形態のハイブリッド車両では、エンジン150のクランクシャフト156はダンパ130を介してプラネタリキャリア軸127に結合されている。ダンパ130はクランクシャフト156に生じる捻り振動を吸収するために設けられている。モータジェネレータMG1のロータ132は、サンギヤ軸125に結合されている。モータジェネレータMG2のロータ142は、リングギヤ軸126に結合されている。リングギヤ122の回転は、チェーンベルト129を介して駆動軸112、更に車輪116R及び116Lに伝達される。
【0105】
次に以上の如く構成された本実施形態のハイブリッド車両の動力系統における動作について説明する。
【0106】
先ず、プラネタリギヤ120の動作について図2及び図3を参照して説明する。
【0107】
プラネタリギヤ120は、上述した3つの回転軸のうち、2つの回転軸の回転数及びトルク(以下適宜、両者をまとめて“回転状態”と呼ぶ)が決定されると残余の回転軸の回転状態が決まるという性質を有している。各回転軸の回転状態の関係は、機構学上周知の計算式によって求めることができるが、共線図と呼ばれる図により幾何学的に求めることもできる。
【0108】
図2に共線図の一例を示す。縦軸が各回転軸の回転数を示している。横軸は、各ギヤのギヤ比を距離的な関係で示している。サンギヤ軸125(図中のS)とリングギヤ軸126(図中のR)を両端にとり、位置Sと位置Rの間を1:ρに内分する位置Cをプラネタリキャリア軸127の位置とする。ρはリングギヤ122の歯数に対するサンギヤ121の歯数の比である。こうして定義された位置S、C及びRに、夫々のギヤの回転軸の回転数Ns、Nc及びNrをプロットする。プラネタリギヤ120は、このようにプロットされた3点が必ず一直線に並ぶという性質を有している。この直線を動作共線と呼ぶ。動作共線は2点が決まれば一義的に決まる。従って、動作共線を用いることにより、3つの回転軸のうち2つの回転軸の回転数から残余の回転軸の回転数を求めることができる。
【0109】
また、プラネタリギヤ120では、各回転軸のトルクを動作共線に働く力に置き換えて示したとき、動作共線が剛体として釣り合いが保たれるという性質を有している。具体例として、プラネタリキャリア軸127に作用するトルクをTeとする。このとき、図2に示す通り、トルクTeに相当する大きさの力を位置Cで動作共線に鉛直下から上に作用させる。作用させる方向はトルクTeの方向に応じて定まる。また、リングギヤ軸126から出力されるトルクTrを位置Rにおいて動作共線に、鉛直上から下に作用させる。図中のTes,Terは剛体に作用する力の分配法則に基づいてトルクTeを等価な2つの力に分配したものである。「Tes=ρ/(1+ρ)×Te」「Ter=1/(1+ρ)×Te」なる関係がある。以上の力が作用した状態で、動作共線図が剛体として釣り合いがとれているという条件を考慮すれば、サンギヤ軸125に作用すべきトルクTm1と、リングギヤ軸に作用すべきトルクTm2とを求めることができる。トルクTm1はトルクTesに等しくなり、トルクTm2はトルクTrとトルクTerとの差分に等しくなる。
【0110】
プラネタリキャリア軸127に結合されたエンジン150が回転をしているとき、動作共線に関する上述の条件を満足する条件下で、サンギヤ121およびリングギヤ122は様々な回転状態で回転することができる。サンギヤ121が回転しているときは、その回転動力を利用してモータジェネレータMG1により発電することが可能である。リングギヤ122が回転しているときは、エンジン150から出力された動力を駆動軸112に伝達することが可能である。図1に示した構成を有するハイブリッド車両では、エンジン150から出力された動力を駆動軸に機械的に伝達される動力と、電力として回生される動力に分配し、さらに回生された電力を用いてモータジェネレータMG2を力行して動力のアシストを行なうことによって所望の動力を出力しながら走行することができる。こうした動作状態は、ハイブリッド車両の通常走行時に取り得る状態である。なお、全開加速時等の高負荷時には、バッテリ194からもモータジェネレータMG2に電力が供給され、駆動軸112に伝達する動力を増大している。
【0111】
また、上述のハイブリッド車両では、モータジェネレータMG1またはMG2の動力を駆動軸112から出力することができるため、これらのモータにより出力される動力のみを用いて走行することもできる。従って、車両が走行中であっても、エンジン150は停止していたり、いわゆるアイドル運転していたりすることがある。この動作状態は、発進時或いは低速走行時に取り得る状態である。
【0112】
更に、本実施形態のハイブリッド車両では、エンジン150から出力された動力を2経路に分配するのではなく、駆動軸112側だけに伝達させることもできる。これは、高速定常走行時に取り得る動作状態であり、モータジェネレータMG2は高速走行による慣性によって連れ回された状態となり、モータジェネレータMG2によるアシストなしにエンジン150から出力された動力のみの走行となる。
【0113】
図3は、この高速定常走行時の共線図を示している。図2に示す共線図ではサンギヤ軸125の回転数Nsは正であったが、エンジン150の回転数Neとリングギヤ軸126の回転数Nrとによって、図3に示す共線図のように負となる。このときには、モータジェネレータMG1では、回転の方向とトルクの作用する方向とが同じになるから、モータジェネレータMG1は電動機として動作し、トルクTm1と回転数Nsとの積で表わされる電気エネルギを消費する(逆転力行の状態)。一方、モータジェネレータMG2では、回転の方向とトルクの作用する方向とが逆になるから、モータジェネレータMG2は発電機として動作し、トルクTm2と回転数Nrとの積で表わされる電気エネルギをリングギヤ軸126から回生することになる。
【0114】
このように、本実施形態のハイブリッド車両は、プラネタリギヤ120の作用に基づいて種々の運転状態で走行することができる。
【0115】
続いて、制御ユニット190による制御動作について再び図1を参照して説明する。
【0116】
図1において、本実施形態の動力出力装置の運転全体は、制御ユニット190により制御されている。制御ユニット190は、EFIECU170と同様、内部にCPU、ROM、RAM等を有するワンチップ・マイクロコンピュータである。制御ユニット190はEFIECU170と接続されており、両者は種々の情報を伝達し合うことが可能である。制御ユニット190は、エンジン150の制御に必要となるトルク指令値や回転数の指令値などの情報をEFIECU170に送信することにより、エンジン150の運転を間接的に制御可能に構成されている。制御ユニット190はこうして、動力出力装置全体の運転を制御しているのである。かかる制御を実現するために制御ユニット190には、種々のセンサ、例えば、駆動軸112の回転数を知るためのセンサ144などが設けられている。リングギヤ軸126と駆動軸112とは機械的に結合されているため、本実施形態では、駆動軸112の回転数を知るためのセンサ144をリングギヤ軸126に設け、モータジェネレータMG2の回転を制御するためのセンサと共通にしている。
【0117】
(ハイブリッド車両の動力系統における電気回路)
次に図4を参照して、本実施形態のハイブリッド車両の動力系統に備えられる電気回路について更に詳細に説明する。即ちここでは、図1に示した制御ユニット190、モータジェネレータMG1及びMG2、駆動回路191及び192、並びにバッテリ194の詳細について述べる。
【0118】
図4に示すように、バッテリ194に対して、インバータコンデンサ196と、モータジェネレータMG1に接続される駆動回路191と、モータジェネレータMG2に接続される駆動回路192とが夫々並列に接続されている。
【0119】
バッテリ194は、詳細には、電池モジュール部194aと、SMR(システムメインリレー)194bと、電圧検出回路194cと、電流センサ194d等を備える。SMR194bは、制御ユニット190からの指令により高電圧回路の電源の接続・遮断を行なうもので、電池モジュール部194aの+−両極に配置された2個のリレーR1及びR2から構成される。バッテリ194に2個のリレーR1及びR2を設けたのは、電源の接続時には、まずリレーR2をオンし、続いてリレーR1をオンし、電源の遮断時には、まずリレーR1をオフし、続いてリレーR2をオフすることにより、確実な作動を行なうことを可能とするためである。電圧検出回路194cは、電池モジュール部194aの総電圧値を検出する。電流センサ194dは、電池モジュール部194aからの出力電流値を検出する。電圧検出回路194c及び電流センサ194dの出力信号は、制御ユニット190に送信される。
【0120】
駆動回路191及び192は、バッテリの高電圧直流電流とモータジェネレータMG1及びMG2用の交流電流の変換を行なう電力変換装置であり、詳細には、6個のパワートランジスタで構成される3相ブリッジ回路191a及び192aを夫々備えており、この3相ブリッジ回路191a及び192aにより直流電流と3相交流電流との変換を行なっている。
【0121】
駆動回路191及び192には、電圧検出回路191b及び192bが夫々設けられている。電圧検出回路191b及び192bは、モータジェネレータMG1及びMG2の逆起電圧を夫々検出する。3相ブリッジ回路191a及び192aの各パワートランジスタの駆動は、制御ユニット190により制御されると共に、駆動回路191及び192から制御ユニット190に対し、電圧検出回路191b及び192bにて検出された電圧値や、3相ブリッジ回路191a及び192aとモータジェネレータMG1及びMG2との間に設けられた図示しない電流センサにて検出された電流値など電流制御に必要な情報を送信している。
【0122】
(直噴式ガソリンエンジン)
次に図5を参照して、本実施形態のハイブリッド車両に備えられる直噴式エンジンについて更に詳細に説明する。即ちここでは、図1に示すエンジン150の詳細に付いて述べる。
【0123】
図5に示すように、エンジン150は、燃料室内に燃料を直接噴射する、いわゆる直噴式ガソリンエンジンである。エンジン150は、EFIECU170により制御される。エンジン150は、シリンダブロック14を備えている。シリンダブロック14の内部には、シリンダ16が形成されている。なお、エンジン150は、複数のシリンダを備えているが、説明の便宜上、図5には複数のシリンダのうち1つのシリンダ16を示している。
【0124】
シリンダ16の内部にはピストン18が配設されている。ピストン18は、シリンダ16の内部を、図5における上下方向に摺動することができる。シリンダ16の内部において、ピストン18の上方には燃焼室20が形成されている。燃焼室20には、燃料噴射弁22の噴射口が露出している。エンジン150の運転中、燃料噴射弁22には燃料ポンプ24から燃料が圧送される。燃料噴射弁22及び燃料ポンプ24は、EFIECU170に接続されている。燃料ポンプ24は、EFIECU170から供給される制御信号に応じて燃料噴射弁22側へ燃料を圧送する。また、燃料噴射弁22は、EFIECU170から供給される制御信号に応じて燃焼室20内へ燃料を噴射する。
【0125】
ピストン18には、コンロッド(コネクションロッド)19を介して、クランクシャフト156が接続されている。クランクシャフト156は、複数のシリンダ16内に配設された複数のピストン18に、相互に異なるクランク角となるように接続されている。
【0126】
また、燃焼室20には、点火プラグ26の先端が露出している。点火プラグ26は、EFIECU170から点火信号を供給されることにより、燃焼室20内の燃料に点火する。燃焼室20には、排気弁28を介して排気管30が連通している。燃焼室20には、また、吸気弁32を介して吸気マニホールド34の各枝管が連通している。吸気マニホールド34は、その上流側においてサージタンク36に連通している。サージタンク36の更に上流側には吸気管38が連通している。
【0127】
吸気管38には、スロットル弁40が配設されている。スロットル弁40は、スロットルモータ42に連結されている。そして、スロットルモータ42は、EFIECU170に接続されている。スロットルモータ42は、EFIECU170から供給される制御信号に応じてスロットル弁40の開度を変化させる。スロットル弁40の近傍には、スロットル開度センサ44が配設されている。スロットル開度センサ44は、スロットル弁40の開度(以下適宜、スロットル開度SCと称す)に応じた電気信号をEFIECU170に向けて出力する。EFIECU170は、スロットル開度センサ44の出力信号に基づいてスロットル開度SCを検出する。
【0128】
EFIECU170には、また、イグニッションスイッチ76(以下、IGスイッチ76と称す)が接続されている。EFIECU170は、IGスイッチ76の出力信号に基づき、IGスイッチ76のオン/オフ状態を検出する。IGスイッチ76がオン状態からオフ状態とされると、燃料噴射弁22による燃料噴射、点火プラグ26による燃料の点火、及び、フューエルポンプ24による燃料の圧送が停止され、エンジン150の運転が停止される。
【0129】
アクセルペダル78の近傍には、アクセル開度センサ80が配設されている。アクセル開度センサ80は、アクセルペダル78の踏み込み量(以下適宜、アクセル開度ACと称す)に応じた電気信号をEFIECU170に向けて出力する。EFIECU170は、アクセル開度センサの出力信号に基づいてアクセル開度ACを検出する。
【0130】
本実施形態では、吸気管38には、ターボ過給装置39が設けられており、例えば排気管30側に設けられたタービンに連動するタービンにより、吸気管38内に圧縮空気をターボ過給するように構成されている。また、ターボ過給装置39の回転軸は、モータジェネレータMG1及びMG2とは異なる専用のモータジェネレータによって駆動され、その回転数増大によってターボ過給による過給圧が高められるように構成されている。即ち、「ターボアシスト」が実行可能に構成されている。尚、係る専用のモータジェネレータは、排気管30側におけるエンジン150の排気エネルギーを発電により回生可能に構成されている。更に、ターボ過給装置39は、EFIECU170による制御を受けて、特定タイミングで筒内圧力を可変に高めるように構成してもよい。
【0131】
本実施形態では、排気管30には、三元触媒装置31が設けられており、これにより排気ガス浄化性能が高められている。尚、三元触媒装置31は、一定温度以上の高温でないと、その浄化性能が顕著に低下する。そこで、三元触媒装置31には、温度センサ31Tが取り付けられており、その触媒温度TCAが検出され、触媒温度情報としてEFIECU170に入力される。或いは、このような触媒温度TCAは、エンジン150におけるエンジン回転数等の他の検出情報に基づいて間接的に推定してもよい。このように検出又は推定された触媒温度TCAは、当該触媒温度TCAが一定温度以下に低下しないようにエンジン制御するのに用いられる。
【0132】
本実施形態では、エンジン150には、ノッキングに固有の周波数帯域の振動を検出するノッキングレベルセンサ90が設けられている。そして、EFIECU170は、このノッキングレベルセンサ90からのノキングレベルを示す検出信号に基づいて、公知のノッキングコントロールを行うように構成されている。即ち、本実施形態では、公知のノッキングコントロールシステム(KCS)が、ノッキングレベルセンサ90及びEFIECU170を含んで構築されている。特にこのノッキングレベルセンサ90からの検出出力は、後述のようにEFIECU170によるピストン速度制御に用いることが可能である。
【0133】
加えて本実施形態では、エンジン150の付近には、大気圧センサ91及び外気温センサ92が設けられており、更に燃焼室20には、筒内圧センサ93が設けられており、これらのセンサからの検出出力も、後述のようにEFIECU170によるピストン速度制御に用いることが可能である。
【0134】
(ピストン速度制御の第1実施形態)
以下の説明では、制御手段の一例としてのEFIECU190による制御下で、駆動力付与手段の一例としてのモータジェネレータMG1が、ピストン18に対して付与する駆動力の一例たるトルクを“制御トルク”と呼ぶ。更に、EFIECU190及びモータジェネレータMG1により、このような制御トルクを付与する制御を“ピストン速度制御”と呼ぶ。
【0135】
次に、エンジン150の機関運転状態に応じたピストン速度制御の第1実施形態について図1及び図5に加えて、図6から図10を参照して説明する。ここに、図6は、エンジン回転数Ne−エンジントルクTe特性図上で、ノック領域及び非ノック領域を図式的に示したものである。図7は、第1実施形態におけるピストン速度制御を示すフローチャートである。図8は、エンジンのP−V線図上で、ノッキングを回避する原理を図式的に示したものである。また図9は、ノッキングを抑制する際におけるモータジェネレータMG1によるピストン速度の制御タイミングを、燃焼サイクルダイアグラム上で図式的に示したものであり、図10は、エンジン効率を向上させる際におけるモータジェネレータMG1によるピストン速度の制御タイミングを、燃焼サイクルダイアグラム上で図式的に示したものである。
【0136】
先ず図6に例示したように、図5に示した如きレシプロ方式のエンジン150では、エンジン回転数Ne−エンジントルクTe特性図上において、概ね低回転数且つ高トルク側に「ノック領域」が存在し、概ね高回転数且低トルク側に「非ノック領域」が存在する。そして、これらの間には、エンジン回転数Ne及びエンジントルクTe以外の条件によって、ノッキングを発生する可能性がある「中間領域」が存在する。
【0137】
そこで第1実施形態では、図1に示したモータジェネレータMG1は、駆動力付与手段の一例として、図5に示したピストン18に対して、クランクシャフト156及びコンロッド19を介して制御トルクを付与可能に構成されている。EFIECU170は、制御手段の一例として、クランクシャフト156におけるクランク角度及びエンジン150における機関運転状態の一例たるエンジン回転数Ne及びエンジントルクTeに応じて選択的に、ピストン18に対し制御トルクを付与するように、モータジェネレータMG1を制御する。特に、EFIECU170は、制御手段を構成する判定手段の一例として、エンジン150でノッキングが発生するか否かを判定し、この判定結果に基づくノッキングの発生状態に応じて、ピストン18に対してその運動方向の正方向(即ち、ピストン速度を上げる方向)又は負方向(即ち、ピストン速度を下げる方向)に、制御トルクを付与するようにモータジェネレータMG1を制御するように構成されている。
【0138】
図7において先ず、初期状態として、ハイブリッド車両は動作中である。即ち、制御ユニット190及びEFIECU170による制御下で、現在の車速、アクセルの踏み込み量、充電容量SOC等に応じて、エンジン回転数Ne及びエンジントルクTe(エンジンパワー)が設定される。このように設定された運転ポイントを示す情報等が、制御ユニット190から、EFIECU170に対して送信され、EFIECU170によってエンジン150の制御が行われ、エンジン150においては、その燃料噴射量或いはスロットルの開度等の動作状態が制御される。これと並行して、モータジェネレータMG1及びMG2においては、図2及び図3に示した如き共線図或いは所謂比例積分制御(PI制御)によって、それらの回転数が制御される。より具体的には、モータジェネレータMG1及びMG2の制御は例えば、設定されたエンジン回転数Ne及びエンジントルクTeに応じて各モータの三相コイルに印加する電圧が設定され、現時点での印加電圧との偏差に応じて、駆動回路191及び192のトランジスタのスイッチングが行われる。
【0139】
以上のような初期状態において、ノッキングを防止しつつエンジン効率を高めるためのエンジン150のピストン18におけるピストン速度を可変制御するための“ピストン速度制御ロジック”が、例えば割り込み処理により定期的に或いは不定期に繰り返し開始される(ステップS10)。
【0140】
すると、エンジン150の機関運転状態が、図6に示した如き、「ノック領域」にあるのか、「非ノック領域」にあるのか又は「中間領域」にあるのかが、EFIECU170により判定される(ステップS11)。この判定は、エンジン150における現時点で要求されているエンジン回転数Ne及びエンジントルクTeに基づいて、例えば予め設定されEFIECU170の内蔵メモリに格納されている図6の如きNe−Pe特性図上で判定される。このようなエンジン回転数Ne及びエンジントルクTeは、エンジン回転数センサやエンジントルクセンサを用いて直接検出してEFIECU170に入力してもよいし、車速、アクセス踏み込み量等の他のパラメータからEFIECU170で算出或いは換算により求めてもよい。
【0141】
このような判定に加えて、ノッキングの発生し易さに強い影響を及ぼすような、例えば図5に示した大気圧センサ91、外気温センサ92等を用いて検出される大気圧力、外気温度等の外的要因としての各種パラメータや、点火プラグ26による点火時期が可変である場合のこのタイミング、排気弁28や吸気弁32における排気・吸気時期が可変である場合のこれらのタイミング等の内的要因としての各種パラメータなど、他の一又は複数のパラメータを、当該ノック領域にあるのか又は非ノック領域にあるか若しくは中間領域にあるかの判定に用いることも可能である。或いは、このような例えば図5に示した大気圧センサ91、外気温センサ92等を用いて検出される大気圧力、外気温度等の各種パラメータに応じて、現在の機関運転状態がノック領域に入るか又は非ノック領域に入るかの判定基準に対して、変更を加えることも可能である。これらにより、ノック領域にかかる判定精度を一層高められる。いずれの場合にも、予め実験的、経験的、理論的、シミュレーション等により、パラメータの組合せにより規定されるどのような機関運転状態が、当該エンジン150においてノッキングを発生させるか否かを特定し、これらのパラメータの組合せとしてのノッキング判定用の条件を、例えばEFIECU170の内蔵メモリ内にテーブル化或いはマップ化して格納しておくとよい。そして、動作時に、これらのパラメータをリアルタイムで検出或いは算出して、該予め格納されたテーブル或いはマップを参照すれば、ノッキングが発生するか否かの判定が比較的簡単に実行できる。
【0142】
若しくは、このようなマップやテーブルを参照するのに代えて又は加えて、図5に示したノッキングレベルセンサ90の検出出力に応じて、ノッキングが発生するか否かを判定するように構成してもよい。このように構成すれば、リアルタイムで検出されるノッキングレベルセンサ90の検出出力に従って、直接的にノッキングが発生しているか否か或いはノッキングが発生しそうであるか否かを判定できる。又は、図5に示した筒内圧センサ93の検出出力に応じて、ノッキングが発生するか否かを判定するように構成してもよい。このように構成すれば、リアルタイムで検出される筒内圧センサ93の検出出力に従って、例えばエンジン回転数に応じて規定される閾値圧力よりも筒内圧が高いなど、間接的にノッキングが発生しているか否か或いはノッキングが発生しそうであるか否かを判定できる。
【0143】
以上詳細に説明したような判定の結果、ノッキングが発生すると判定された場合には(ステップS11:「ノック領域」)、EFIECU170による制御下で、モータジェネレータMG1は、ノッキングが誘発され易い膨張行程初期におけるピストン速度を上昇させる。即ち、燃焼室20内における圧縮上死点付近でピストン18を加速する(ステップS12)。
【0144】
本願明細書では以下適宜、このようなピストン18を圧縮上死点付近で加速させる制御を“ノック改善制御”と呼ぶ。
【0145】
より具体的には、ノック改善制御を実行する場合、図8に示したP(燃焼室内圧力)−V(燃焼室容積)線図において、圧縮工程から膨張行程に移る圧縮上死点付近における理想的な特性線L1を、ピストン速度を上昇させて燃焼を相対的に遅くすることで、特性曲線L2のように丸める。尚、図8のP−V線図では、圧縮上死点でのみ燃焼が瞬間的に行われる理想的な特性線L1が示されている。実際のエンジンにおける燃焼では、ピストン18が動いており且つ燃焼に時間もかかるので、圧縮上死点以外でも燃焼が行われ、多かれ少なかれ特性線L2のように丸みを帯びることになる。
【0146】
図9に示すように例えば、エンジン150が4気筒である場合、EFIECU170は、各ピストン18について、圧縮から膨張に至る“☆”印で示した点火時期に対応する圧縮上死点付近で、ピストン速度を瞬間的に速めるように、モータジェネレータMG1を制御する。尚、図9の燃焼サイクルダイアグラムでは、“圧”は圧縮工程を示し、“膨張”は膨張工程を示し、“排”は排気工程を示し、“吸”は吸気工程を示す。そして、各クランク角度に対して、エンジン#1〜#4の夫々について、どのタイミングで点火されるかを“☆”印で示してある。即ち図9に示すように、第1実施形態では、ステップS11でノッキングが発生すると判定された場合には、4つのエンジン#1〜#4の全てについて、圧縮上死点付近で、ピストンが加速されるようにモータジェネレータMG1が制御される。例えば、エンジン回転数Neが、1200回転(rpm:回転/分)であれば、モータジェネレータMG1による加速で、圧縮上死点付近で瞬間的に1300回転(rpm)程度にする。この際、モータジェネレータMG1では、加速エネルギに応じた力行動作を行ってもよい。
【0147】
続いて、このようなピストン加速後の膨張工程で、エンジン回転数Neを元の例えば1200回転(rpm)或いはそれより多少低い回転数に戻す(ステップS13)。これにより、当該ピストン速度制御ロジックを開始する際における初期状態として現在要求されている回転数Neを、その平均値により実現するようにモータジェネレータMG1及びエンジン150を制御できることになる。
【0148】
このようにノック改善制御を実行する場合、ピストン速度を短時間のみ変更することにより、各燃焼室20内で、膨張工程初期における筒内圧力が低くなるので、ノッキングの発生を効果的に防止することが可能となる。
【0149】
その後、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。
【0150】
他方、ステップS11における判定の結果、ノッキングが発生しないと判定された場合には(ステップS11:「非ノック領域」)、EFIECU170は、エンジン150の圧縮上死点付近におけるピストン18の速度が下降するようにモータジェネレータMG1を制御する。即ち、図10に示すように、第1実施形態では、ステップS11でノッキングが発生しないと判定された場合には、4つのエンジン#1〜#4の全てについて、圧縮上死点付近で、ピストンが減速されるようにモータジェネレータMG1が制御される(ステップS14)。
【0151】
本願明細書では以下適宜、このようなピストン18を圧縮上死点付近で減速させる制御を“等容度改善制御”と呼ぶ。
【0152】
ここで一般に図8に示したP−V線図上では、理想的には点火して燃焼する時間内の燃焼室容積は極小に維持されたままの方が、燃焼室20内の圧力のピーク値が上がり、理想的な特性線L1に近付き、エンジン効率は良くなる。そこで、第1実施形態における等容度改善制御の場合、ノッキングが発生しない限りにおいて、圧縮上死点におけるピストン18の速度を下降させることで、実際の特性線L2を理想的な特性線L1に近付ける。即ち、エンジン150の等容度を積極的に上げることで、エンジン効率を高めるようにする。例えば、エンジン回転数Neが、1200回転(rpm)であれば、モータジェネレータMG1による減速で、圧縮上死点付近で瞬間的に1100回転程度にする。この際、モータジェネレータMG1では、減速エネルギに応じた回生動作を行ってもよい。
【0153】
続いて、このようなピストン減速後の膨張工程で、エンジン回転数Neを例えば元の1200回転(rpm)或いはそれより多少高い回転数に戻す(ステップS15)。これにより、当該ピストン速度制御ロジックを開始する際における初期状態として現在要求されている回転数Neを、その平均値により実現するようにモータジェネレータMG1及びエンジン150を制御できることになる。
【0154】
このように等容度改善制御を実行する場合、ピストン速度を短時間のみ変更することにより、各燃焼室20内で、膨張工程初期における筒内圧力が高くなるので、エンジン効率を高めることが可能となる。
【0155】
その後、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。
【0156】
他方、ステップS11における判定の結果、中間領域にあると判定された場合には(ステップS11:「中間領域」)、EFIECU170は、エンジン150の圧縮上死点付近におけるピストン18の速度制御、即ちノック改善制御又は等容度改善制御を行わずに、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックをそのまま終了する。例えば、エンジン回転数Neが、1200回転(rpm)であれば、モータジェネレータMG1による加速も減速も行わずに、圧縮上死点付近でも1200回転(rpm)程度にする。
【0157】
以上図6から図10を参照して説明したように第1実施形態によれば、ノック領域であるか非ノック領域であるかなど、エンジン150の機関運転状態に応じて、ノック改善制御を適宜行うか或いは等容度改善制御を適宜行うことで、ノッキングの発生を回避しつつ、エンジン効率或いは燃費性能を向上させることが可能となる。
【0158】
第1実施形態では特に、このようなピストン速度の変更を、図1に示した如きパラレルハイブリッド方式のハイブリッド車両におけるモータジェネレータMG1により行うので、専用の駆動力付与手段や制御手段を別途設ける場合と比較して、装置構造の複雑化を防ぐことができ、これにより機械的或いは電気的な損失を抑えることも可能である。しかも、クランクシャフト156及びコンロッド19を介してピストン18に接続されたモータジェネレータMG1を用いることにより、比較的容易にしてピストン18に対し制御トルクを所定のタイミングで且つ所定のアシスト量だけ正確に付与することも可能となる。
【0159】
更に、第1実施形態では、車軸にベルトを介して直結されている方のモータジェネレータMG2ではなく、車軸に直結されていない方のモータジェネレータMG1で、ピストン速度制御を行うため、ピストン速度制御に伴って車軸トルクの変動や或いは振動が発生し難いので、乗心地等の観点から一層有利である。但し、モータジェネレータMG2もエンジン150に接続されているので、上述したノック改善制御或いは等容度改善制御などのピストン速度制御を、モータジェネレータMG2側で実行することも可能である。更に、このようなピストン速度制御を、モータジェネレータMG1及びMG2の両者で同時に或いは分担して実行することも可能である。
【0160】
加えて、第1実施形態では、ノック領域や非ノック領域に対する制御動作とは異なる中間領域における制御動作を設定することで、確実にノッキングが発生する場合にノック改善制御を実行しつつ、著しくエンジン効率が悪い場合にのみ等容度改善制御を実行することも可能となる。これにより、当該ピストン速度が瞬時に変化する機会を減らすことができ、ピストン速度の安定化を図ることも可能となる。また、必要性の低いノック改善制御や等容度改善制御を行わないことで、これらのために必要な電力消費やピストン速度制御を行わない分だけ、システム全体としての燃費向上を図れる場合もある。
【0161】
(ピストン速度制御の第2実施形態)
次に本発明に係るピストン速度制御の第2実施形態について、図1及び図5に加えて、図11を参照して説明する。図11は、クランクシャフトの角速度ω[rad/sec]に対する共振部材としてのダンパのゲイン[dB]を示したゲイン特性図である。ここにいう「ゲイン」とは、図1において、モータジェネレータMG1からクランクシャフト156へのダンパ130によるトルク伝達に係るゲインである。
【0162】
第2実施形態は、第1実施形態におけるダンパ130(図1参照)が特別に構成されており、その他の構成及び動作については、第1実施形態の場合と同様である。
【0163】
即ち第2実施形態では、図1に示したようにモータジェネレータMG1と、クランクシャフト156との間に配置されたダンパ130は、モータジェネレータMG1によるクランクシャフト156及びコンロッド19(図5参照)を介してのピストン18のピストン速度制御に必要なエネルギ、即ちモータジェネレータMG1の制御トルクの振幅を小さくするように構成されている。
【0164】
より具体的には図11に示すように、ピストン速度を制御したい周波数領域(即ち、エンジン150における爆発間隔の周波数)に対応する、例えばエンジン回転数1100〜1200回転(rpm)程度に相当する角速度領域Wpsにおいて局所的に、モータジェネレータMG1からクランク軸156へ伝達されるトルク伝達に係るゲインを上げるように、ダンパ130の共振特性を設定する。これにより、ピストン速度制御に必要なエネルギ−を小さくする。更に好ましくは、例えばエンジン150において、フライホイールを軽量化したり無くすなど、そのイナ−シャを小さくする。或いは、このフライホイールにおける慣性とダンパ130における弾性乗数とを調整することで、図11に示したようなゲイン特性を得ることも可能である。
【0165】
第2実施形態によれば、より小さなモータジェネレータMG1における制御トルク振幅を用いて、共振部材としてのダンパ130を介してピストン速度を制御可能となり、上述したノック改善制御や等容度改善制御を実行できる。このため、モータジェネレータMG1における、ノック改善制御や等容度改善制御に必要なMGトルク定格を小さくすることが可能となる。
【0166】
尚、図11において、局所的にゲイン特性を向上させた角速度領域Wpsよりも高い側にある高周波数領域ではゲインが単調に低下しているが、このような高周波数領域では、モータジェネレータMG1のトルクによるクランク角速度への影響は基本的に小さい。図11のグラフ上でゲインが単調に低下する角速度は例えば、制御したいエンジン回転数よりも高い1300回転(rpm)以上程度に相当する角速度である。
【0167】
(ピストン速度制御の第3実施形態)
次に図12及び図13を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第3実施形態について説明する。ここに、図12は、逆オフセットクランク構造を示すクランク、コンロッド及びピストンの機構図であり、図13は、図12に示した逆オフセットクランク構造におけるクランク角に対するピストン速度特性を示すグラフである。
【0168】
第3実施形態は、第1実施形態におけるエンジン150を構成する、ピストン18、コンロッド19及びクランクシャフト156(図5参照)の接続構造が、オフセットクランク構造をなすように構成されている。その他の構成及び動作については、第1実施形態の場合と同様である。
【0169】
即ち図12に示すように、第3実施形態のエンジン150sは、ピストン18s、コンロッド19a及びクランクシャフト156sとの接続構造が、逆オフセットクランク構造とされている。より具体的には、クランクシャフト156sがシリンダボアの中心Csからその回転方向と逆の方向(図12中左側)に所定オフセット量eだけオフセットされている。
【0170】
このため、図13に示すように、本実施形態では、コンロッド長lに対するオフセット量eの比率“e/l”が、例えば“1.23”程度となり、この比率“e/l”が“0”である(即ち、オフセット量e=0である)の場合と比較して、圧縮・排気工程の初期にピストン速度が高められている。
【0171】
従って、第3実施形態によれば、上述したノック改善制御を行う以前の基本状態において、図13に示した如きピストン速度特性によって、ノッキングの発生を抑制できる。このため、上述した実施形態におけるノック改善制御を、逆オフセットクランク構造を有するエンジンに組み合わせることで、一層のノッキング防止を図ることが可能となる。
【0172】
尚、本実施形態の変形形態として、ピストンとクランクシャフトとの接続構造が、順オフセットクランク構造とされてもよい。順オフセットクランク構造とは、図12の機構図において、クランクシャフト156sのオフセットする方向が逆である(図12では右側にオフセットする)構造をいう。このような順オフセットクランク構造を採用すれば、上述した等容度改善制御を行う以前の基本状態において、オフセットのない通常エンジンと比較して等容度改善を抑制できる。このため、上述した実施形態における等容度改善制御を、順オフセットクランク構造を有するエンジンに組み合わせることで、一層のエンジン効率の向上を図ることが可能となる。
【0173】
(ピストン速度制御の第4実施形態)
次に図14及び図15を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第4実施形態について説明する。ここに、図14は、シリアルハイブリッド方式の動力出力装置の一具体例における概略構成を示すブロック図であり、図15は、シリアルハイブリッド方式の動力出力装置の他の具体例における概略構成を示すブロック図である。
【0174】
第4実施形態のように、駆動軸に対してエンジンが直接に駆動力を伝達しないシリアルハイブリッド方式においても、上述した本実施形態と類似の、ノック改善制御及び等容度改善制御が可能であり、これにより同様或いは類似の技術的効果が得られる。
【0175】
即ち図14に示すように、第4実施形態では、エンジン150のトルクは、ベルト300を介してモータジェネレータMG1に伝達される。他方で、エンジン150のトルクは、トランスミッション(T/M)302を介してモータジェネレータMG2に伝達される。更に、モータジェネレータMG2のトルクがデファレンシャルギヤ(DFギヤ)303を介して車軸に伝達される。
【0176】
本実施形態では特に、エンジン150に対するノック改善制御或いは等容度改善制御などのピストン速度制御を、駆動軸に直結していない方のモータジェネレータMG1にて実行する。そして好ましくは、モータジェネレータMG1がエンジン150のピストンに対してノック改善制御用に或いは等容度改善用に制御トルクを付与している状態においては、エンジン150からトランスミッション302等を介して車軸側に伝わろうとする振動を、モータジェネレータMG2によって相殺するように構成されている。尚、このような振動の相殺は、実際の振動レベルをモニタリングして、これが所定閾値を越えた場合に実行することも可能である。
【0177】
このように構成すれば、モータジェネレータMG1がピストン速度制御のためにエンジン150に対して制御トルクを付与することで、仮に伝達振動が無視し得ない程度に発生しても、この振動に起因する車軸への伝達振動を、モータジェネレータMG2によって相殺できる。これによりノック改善制御時や等容度改善制御時に、騒音が発生する或いは乗り心地が悪くなるなどの事態を、効果的に回避できる。この場合におけるモータジェネレータMG2による相殺は、車軸への伝達振動を多少なりとも低減すればよい。
【0178】
或いは図15に示すように、第4実施形態の変形形態では、エンジン150のトルクは、トルクコンバータ(T/C)301を介してトランスミッション(T/M)302に伝達される。この変形形態の場合にも、モータジェネレータMG1がエンジン150のピストンに対してノック改善制御用に或いは等容度改善用に制御トルクを付与している状態においては、エンジン150からトルクコンバータ301等を介して車軸側に伝わろうとする振動を、モータジェネレータMG2によって相殺するように構成されている。
【0179】
加えて図15に示したトルクコンバータ301を備えた変形形態では、そのロックアップ中且つピストン速度制御により車軸に対してトルク変動が増幅される周波数領域では、ピストン速度制御を実行しないように構成するのが好ましい。このように構成すれば、トルクコンバータ302付きの動力出力装置において、特にロックアップ直後で振動が発生しやすい状況で、当該振動を効果的に低減できる。
【0180】
以上のように第4実施形態によれば、車軸に対してトルク変動を殆ど発生させることなく、上述したノック改善制御や等容度改善制御用のピストン速度制御を行うことができる。
【0181】
尚、第1或いは第4実施形態で示したパラレルハイブリッド方式やシリアルハイブリッド方式に限られること無く各種のパラレルハイブリッド方式やシリアルハイブリッド方式に対して本発明は適用可能である。例えば第1実施形態では、図1に示したようにモータジェネレータMG2がリングギヤ軸126に結合されているが、モータジェネレータMG2が、エンジン150のクランクシャフト156に直結したプラネタリキャリア軸127に結合された構成をとることもできる。或いは、図1では、エンジン150から出力された動力の一部を駆動軸112に伝達するための動力調整装置としてプラネタリギヤ120等を用いた機械分配型動力調整装置を用いていたのに対し、動力調整装置として、対ロータ電動機等を用いた電気分配型動力調整装置を用いることも可能である。例えば、プラネタリギヤ120およびモータジェネレータMG1に代えて、クラッチモータCMを備えて構成してもよい。
【0182】
(ピストン速度制御の第5実施形態)
次に本発明に係るピストン速度制御の第5実施形態について、図1及び図5に加えて、図16を参照して説明する。ここに図16は、クランク角度℃Aに対するモータジェネレータMG1がピストン18に付与する制御トルク(MGトルク)の振幅変化を示したトルク特性図である。
【0183】
第5実施形態は、エンジン150が4サイクルエンジンであり、一つのクランクシャフト156に対して複数気筒のピストン18が接続されている。そして、これら複数気筒のエンジン150の各ピストン18に対し夫々コンロッド19を介して且つ共通のクランクシャフト156を介して、図16の如き正弦波のトルクが付与されるように構成されている。その他の構成及び動作については、第1実施形態の場合と同様である。
【0184】
即ち第5実施形態では特に図16に示したように、モータジェネレータMG1によって、“720℃A/n/α(但し、℃Aはクランク角、nは気筒数、αは自然数)”のクランク角周期で且つ振幅T0で、クランクシャフト156に対してトルクをかける。言い換えれば、 “エンジン回転数rpm/60秒×1回転当りの爆発回数”[Hz]の周波数でトルクをかける。このように構成すれば、連動する複数気筒の夫々について、膨張工程初期のピストン速度を、精密に制御可能となる。
【0185】
第5実施形態では好ましくは、ノック改善制御或いは等容度改善制御を行う際に、膨張工程初期におけるピストン速度の増減を、図16に示した如き正弦波の位相θ0を調整すること若しくは位相θ0及び振幅T0を調整することによって行う。
【0186】
このようにフィードフォーワード的制御によって、正弦波状のトルク波形を用いつつその振幅T0の調整や位相θ0を調整することで、比較的高精度のピストン速度制御が可能となる。しかも、エンジン回転数Neの平均値については、正弦波として平均化されるので、当該正弦波トルクの付与によっては殆ど変化させないで済む。
【0187】
第5実施形態では、クランクシャフト156に介して付与されるトルクのクランク角に対する変化は、正弦波以外の所定波形としてもよい。例えば、膨張工程初期に必要なピストン速度変化を得る際に急峻であり且つその後に元のピストン速度に戻す際には緩やかであるような非正弦波でもよい。この場合にも、非正弦波の振幅変動によって、エンジン回転数Neの平均値については殆ど変化させないようにできる。
【0188】
第5実施形態の変形形態としては、図16に示したピストン速度制御により付与する制御トルクが相対的に高周波になる領域(即ち、エンジン高回転側)では、制御周期を落として一部の気筒の膨張行程時のみにピストン速度制御を実施するように構成してもよい。即ち、本変形形態では、“720℃A/n×α(但し、℃Aはクランク角、nは気筒数、αは自然数)”のクランク角周期で且つ振幅T0で、クランクシャフト156に対してトルクをかけるようにする。このように構成すれば、制御トルクが高周波になってピストン速度制御の性能が悪化する領域においても、何らのピストン速度制御を行なわない場合と比較すれば、ある程度のノック改善効果或いは燃費向上効果が得られる。しかも、このような一部の気筒のみに対する低周波制御であれば、比較的容易に実行できる。
【0189】
但し、例えば電流制御されるモータジェネレータMG1やEFIECU170が高性能であって、高い駆動周波数や高い制御周波数に対処可能であれば、上述した第5実施形態の如く全気筒を制御対象としてよいことは言うまでもない、
加えて、本変形形態のように一部の気筒を対象としてピストン速度制御を行う場合には、例えばノック改善制御が実施されている状態においてはノック改善効果が相対的に大きい気筒を当該制御の対象として、或いは、例えば等容度改善制御が実施されている状態においては等容度改善効果が相対的に大きい気筒を当該制御の対象として、このようなピストン速度制御を行えば、より効率的である。この際、いずれの気筒で効果が相対的に高いかはは、後述の各種実施形態の如く、EFIECU170等によって、ノック改善効果や等容度改善効果を直接或いは間接に評価することによって特定すればよい。
【0190】
尚、図16に示した如き、例えば40Hz程度である制御トルクの時間変動を利用して、モータジェネレータMG1における力行動作と回生動作とを、この変動の周期で交互に行うように構成してもよい。この場合、図16における変動の平均値を制御トルク=0の付近に設定するとよい。これにより、モータジェネレータMG1に関するエネルギ効率を向上させることが可能となる。
【0191】
(ピストン速度制御の第6実施形態)
次に本発明に係るピストン速度制御の第6実施形態について、図1及び図5に加えて、図17を参照して説明する。ここに図17は、クランク角度℃Aに対するクランク角速度の振幅変化を示したクランク角速度特性図である。
【0192】
第6実施形態は、第5実施形態の場合と同様に、エンジン150が4サイクルエンジンであり、一つのクランクシャフト156に対して複数気筒のピストン18が接続されている。そして、これら複数気筒のエンジン150の各ピストン18に対し夫々コンロッド19を介して且つ共通のクランクシャフト156を介して、図17の如き正弦波のトルクが付与されるように構成されている。
【0193】
より具体的には図17に“MG制御時目標波形(例)”として例示するように、本変形形態では、実際にノック改善制御或いは等容度改善制御を行う前に、ノック改善制御による効果或いは等容度改善制御による効果が得られるような、クランク角(℃A)に対する正弦波のクランク角速度(rpm)を計算する。即ち、クランク軸回転数(エンジン回転数Ne)の目標値を計算する。例えば、膨張行程初期のピストン速度を上げた場合のクランク軸回転数を計算する。そして、実際にノック改善制御或いは等容度改善制御を行う際に、このように計算されたクランク軸回転数を目標値として、図17に“実測Ne”として例示した実際のクランク軸回転数が、この目標値に近付くようにモータジェネレータMG1をフィードバック制御する。即ち図17において、クランク角速度の差分ΔNeをゼロに近付けるようにフィードバック制御を行う。すると、フィードバック制御により、実測Neが目標波形に近付くことになり、図17中“TDC(圧縮上死点)でのクランク角速度を加速!”として示したように、膨張工程初期において、ピストン速度が加速され、前述したノック改善制御を良好に行うことができる。尚、図17中、横軸に付された“=#1爆発”、“=#2爆発”、…は夫々、4気筒のうち#1気筒の爆発するクランク角、#2気筒の爆発するクランク角、…を示している。
【0194】
その他の構成及び動作については、第1実施形態の場合と同様である。
【0195】
第6実施形態のようにフィードバック制御を用いれば、上述の第5実施形態の場合とは異なり、制御が発散する恐れが少ない分有利である。特に、フィードフォーワード的な制御に比べると、当該ピストン18に対する制御トルクの付与するシステム全体における信号や命令等の電気的な伝達時間やトルク等の機械的な伝達時間による制御の遅れを自己修復でき、自動的に最適なタイミングで制御トルクを付与できるので大変有利である。
【0196】
尚、ピストン速度は、エンジン150におけるクランク軸回転数(即ち、エンジン回転数Ne)と相関があるので、ピストン速度を制御することは、クランク軸回転数を制御することに等しい。また、係るクランク軸回転数或いはエンジン回転数は、光学的、磁気的、機械的等により、30℃A毎に或いはそれ以上の細かさで検出可能である。
【0197】
加えて、本実施形態におけるフィードバック制御は、例えば、先に制御トルクの位相を振って上記差分ΔNeを極小にする位相を特定し、続いてこの位相を固定した条件で制御トルクの振幅を振って上記差分ΔNeを極小にする振幅を特定するように行ってもよい。或いは、先に振幅を振って上記差分ΔNeを極小にする振幅を特定し、続いてこの振幅を固定した条件で位相を振って上記差分ΔNeを極小にする位相を特定するように行ってもよい。更に、制御トルクの振幅のみをフィードバック制御したり、制御トルクの位相のみをフィードバック制御することも可能である。
【0198】
(ピストン速度制御の第7実施形態)
次に図1及び図5を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第7実施形態について説明する。
【0199】
第7実施形態は、図5に示したノッキングレベルセンサ90で検出されたノッキングレベルを小さくするようにフィードバック制御を行う構成を有する。その他の構成及び動作については、第1実施形態の場合と同様である。
【0200】
即ち第7実施形態では、先ず、公知のノッキングコントロールシステムとしても機能するノッキングレベルセンサ90及びEFIECU170によって、特定周波数帯域内の振動としてエンジンのノッキングレベル(ノックレベル)が検出される。ここで特に、当該実際に検出されるノッキングレベルが小さくなるように、EFIECU170によって、モータジェネレータMG1がピストン18に付与する制御トルクの振幅及び位相をフィードバック制御する。
【0201】
従って第7実施形態によれば、フィードバック制御の採用により、モータジェネレータMG1による制御トルク付与の制御タイミングが遅れる或いは合わないこと等を効果的に未然防止できる。
【0202】
加えて、本実施形態における制御トルクの振幅及び位相のフィードバック制御は、例えば、先に位相を振ってノッキングレベルを極小にする位相を特定し、続いてこの位相を固定した条件で振幅を振ってノッキングレベルを極小にする振幅を特定するように行ってもよい。或いは、先に振幅を振ってノッキングレベルを極小にする振幅を特定し、続いてこの振幅を固定した条件で位相を振ってノッキングレベルを極小にする位相を特定するように行ってもよい。更に、制御トルクの振幅のみをフィードバック制御したり、制御トルクの位相のみをフィードバック制御することも可能である。
【0203】
(ピストン速度制御の第8実施形態)
次に図1及び図5を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第8実施形態について説明する。
【0204】
第8実施形態は、エンジン150における機関運転状態に影響を及ぼす外的要因の一例として、大気圧及び外気温に応じて、ピストン18に付与される制御トルクの振幅及び位相を調整するように構成されている。その他の構成及び動作については上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0205】
即ち第8実施形態では、図5に示した大気圧センサ91及び外気温センサ92で検出された気圧データ及び温度データに応じて、モータジェネレータMG1がピストン18に付与する制御トルクの振幅及び位相を、フィードフォーワード的に調整しておく。従って、ピストン18に対して、より的確な制御トルクの付与を行うことが可能となり、例えば上述した各種実施形態に係るフィードバック制御を行なう場合に、フィードバックループを的確或いは迅速に閉じることが可能となり、フィードバックループが破錠する可能性を低減できる。
【0206】
加えて、EFIECU170によって、大気圧データ及び温度データに応じて、ピストン18に付与する制御トルクの振幅のみを調整してもよいし、位相のみを調整してもよい。更に、大気圧及び外気温に限らず、例えば湿気等のエンジン150における機関運転状態に影響を及ぼす可能性がある他の外的要因を同様に専用センサ等で検出して或いは算出して、これを制御トルクの調整に反映させてもよい。
【0207】
尚、大気圧センサ91に代えて、例えば定常運転におけるエンジン回転数、スロットル開度及び吸入される空気量の対応関係を示すマップを参照することで大気圧を学習によって特定するなど、他の複数種類の検出パラメータの特定関数として大気圧を特定或いは間接測定することも可能である。そして、このように特定或いは間接測定された大気圧データを用いて、上述した第8実施形態に係るピストン速度制御を実行することも可能である。
【0208】
(ピストン速度制御の第9実施形態)
次に図1及び図5を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第9実施形態について説明する。
【0209】
第9実施形態は、EFIECU170が、ピストン18に対する制御トルクの付与による改善効果が所定基準に従って低い場合には、当該制御トルクの付与を停止するように構成されている。その他の構成及び動作については上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0210】
即ち、第9実施形態では、EFIECU170は、図5に示したノッキングレベルセンサ90により検出されたノッキングレベルに基づいて、モータジェネレータMG1によるピストン18に対する制御トルクの付与によりノッキングレベルが低下したか否かという改善効果を評価する。或いは、EFIECU170は、図5に示した筒内圧センサ93により検出された筒内圧に基づいて、モータジェネレータMG1によるピストン18に対する制御トルクの付与により筒内圧が減少したか(ノック改善制御の場合)又は増加したか(等容度改善制御の場合)という改善効果を評価するように構成されている。言い換えれば、ピストン18に対する制御トルクの付与により、実際にピストン速度がどれだけ変化したか或いは点火時期が何度進角できたかが、ノッキングレベルの改善及び筒内圧の変化により間接的に検出され、その検出結果に基づく改善効果が判定されるように構成されている。
【0211】
更に、EFIECU170は、例えばピストン速度の変化や点火時期の進角変化が予め設定された所定閾値との比較によって殆ど変化していないと評価或いは判定される場合や、ノッキングレベルの低下が所定閾値との比較によって、殆ど変化していないと評価或いは判定される場合には、モータジェネレータMG1におけるピストン18に対する制御トルク付与を停止するように構成されている。
【0212】
従って第9実施形態によれば、何らかの内的要因や外的要因によって或いは装置故障や調整不良によって、制御トルク付与による改善効果が低い状況では、当該制御トルク付与自体を停止することで、モータジェネレータMG1により消費される電力を節約でき、更に不適切な制御トルク付与に伴って発生しえる各種エネルギ損失や振動を低減できる場合もある。
【0213】
更に第9実施形態では、このような改善効果を評価するためのピストン速度の変化や点火時期の進角変化と比較する所定閾値、或いはノッキングレベルと比較する所定閾値は、モータジェネレータMG1における消費電力に応じて可変であるように構成してもよい。例えばモータジェネレータMG1における制御トルク付与のための消費電力が大きければ、所定基準を厳しくすることで大きな改善効果が得られなければ制御を中止する。即ち、小さな改善効果を得るために、却って大きな消費電力が必要になるような場合には無駄であるとして、当該制御トルクの付与を停止する。これにより、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御を長時間に亘って持続可能となる。他方、例えば消費電力が小さければ、所定基準を緩くすることで小さな改善効果でも得られている限り制御を続行する。即ち、小さな改善効果であっても、小さな消費電力により得られれば有効であるとして、当該制御トルクの付与を続行する。
【0214】
尚、ピストン速度の変化や点火時期の進角変化の所定閾値との比較や、ノッキングレベルの所定閾値との比較を実行するのに代えて、単純にモータジェネレータMG1における消費電力が、固定又は可変に設定された所定閾値を超えた場合に、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御を停止するように構成することも可能である。これにより、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御を長時間に亘って持続可能となる。
【0215】
加えて、上述したノッキングレベルの低下と筒内圧の変化との組合せにより改善効果を評価してもよい。また、モータジェネレータMG1による制御トルク付与のために消費される消費電力を検出し、これと上述の如く評価されるノック改善効果や等容度改善効果による燃費向上メリットとを標準化した後に比較して、最終的に、当該ハイブリッド型の動力出力装置の全体としての、ピストン速度制御による燃費向上のメリットが無いと判定される場合には、このようなピストン速度制御を禁止するように構成してもよい。
【0216】
以上のように第9実施形態によれば、消費電力を節約する或いは有効利用しつつ当該制御トルクの付与によるピストン速度制御を実行可能となり、システム全体のエネルギ効率を一層高めることが可能となる。
【0217】
(ピストン速度制御の第10実施形態)
次に図1及び図5に加えて、図18から図20を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第10実施形態について説明する。ここに図18は、クランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線上で失火判定を行う様子を示すグラフである。図19は、ピストン速度制御が理想的に行われている場合における通常時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とピストン速度制御時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とを重ねて示すグラフであり、図20は、ピストン速度制御が理想的に行われていない場合における通常時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とピストン速度制御時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とを重ねて示すグラフである。
【0218】
第10実施形態は、EFIECU170が、予め設定された条件が満たされる場合には、クランク角度及びエンジン150における機関運転状態によらずに、ピストン18に対する制御トルクの付与を行わないようにモータジェネレータMG1を制御する構成を有する。その他の構成及び動作については上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0219】
例えば予め設定された条件の一例として、EFIECU170がピストン18の動きに基づく失火判定を実行している最中には、EFIECU170は、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御を実施させない。
【0220】
ここに「失火」とは、エンジン150において点火時期で点火せずに、燃料ガスをそのまま排気する機関運転状態を指す。一般には、点火時期で上昇する筈のクランク軸の瞬間的な回転数が、実際には下降することで検出可能である。特に「失火」は排気ガス浄化性能を顕著に低下させる場合もあるので、失火判定を行い、失火を防ぐように機関運転状態を制御することは重要である。
【0221】
図18に示すように、平常燃焼時には、燃焼室内の爆発により、エンジン150のピストン18から概ね正弦波状に変化する平常特性曲線C11が得られるはずである。ここで、失火時には、燃焼室内の爆発が起こらないため、30℃A所要時間は、図18のグラフ上で、この平常特性曲線C11から外れた線分C12を描くようになる。この変化をリアルタイムで検出することが、即ち失火判定となる。具体的には、図18中に、“失火”で示した時点以降における30℃A所要時間の、平常特性曲線C11からの差分を、180℃A毎にモニタリングしておき、これが所定閾値を超えた場合には、失火しているものとの判定がなされる。
【0222】
他方、図19に示すように、ピストン速度制御を行っていない通常時であって非失火時における平常特性曲線C13は、やはり正弦波状である。これに対して、本実施形態のピストン速度制御を行って制御トルクをピストン18に対して付与した場合には、その30℃A所要時間は、例えば、平常特性曲線C13よりも振幅が小さく(図19では、位相は等しい)平常特性曲線C14を描くようになる。従って、本実施形態におけるピストン速度制御が理想的に行われている限りにおいて、クランク角の全域に亘って制御トルクによるクランク角速度変化分が上乗せされるだけであるので、図18で示した如き失火判定は同様に問題なく実行可能である。
【0223】
しかしながら、実際には、各種の外的要因や内的要因或いは故障や調整・整備不良や、ノック改善制御や等容度改善制御に不向きな周波数帯域等の諸条件、フィードバック制御の破錠に応じて、ピストン18に対して制御トルクを付与するピストン速度制御の性能が悪化する場合が存在する。
【0224】
図20に示すように、このような場合には、燃焼サイクル毎に、制御トルクによるクランク角速度変化分が異なる場合が考えられる。即ち、平常特性曲線C13に対して、本実施形態のピストン速度制御を行なった場合に、360℃A以降の制御トルク振幅が、それ以前よりも顕著に大きくなるような平常特性曲線C15を描くようになる場合がある。
【0225】
このような場合に、図18を参照して説明したのと同様に失火判定を行うと、誤まった判定結果が出やすい。
【0226】
そこで、本実施形態では、EFIECU170が定期的に実行される失火判定の動作中には、ピストン速度制御を行なわないように、モータジェネレータMG1を際御する。これにより、誤った失火判定が行われ、更にこれに伴ってエンジン150における失火時の専用処理が誤まって行われる事態を未然防止できる。
【0227】
因みに、失火判定により失火していることが判定された場合には、EFIECU170は、特別に失火時用に用意された各種制御を実行する。このような失火対処用の制御自体については公知であるので、ここでの詳細は省略する。
【0228】
逆に、EFIECU170は、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御を実行している最中には、ピストン18の動きに基づく失火判定を実行しないように構成してもよい。これにより、ピストン速度制御の影響によって誤った失火判定が行われる事態を未然防止できる。このようにピストン速度制御中に失火判定を実行しない制御と失火判定中にピストン速度制御を実行しない制御とのいずれを採用するかについては、失火判定が相対的に重要である場合は後者を採用し、失火判定が相対的に重要でない場合には前者を採用すればよい。
【0229】
加えて、失火判定中にピストン速度制御の開始条件が成立した場合には、失火判定を中断し、ピストン速度制御を優先的に実行するように構成してもよい。或いは逆に、ピストン速度制御中に失火判定の開始条件が成立した場合には、ピストン速度制御を中断し、失火判定を行うように構成してもよい。これらの構成によっても、ピストン速度制御の影響により誤った失火判定が行われる事態を未然防止できる。
【0230】
また第10実施形態では、例えば予め設定された条件の他の例として、エンジン150が過渡運転状態にある場合には、EFIECU170は、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御を実施させないように構成してもよい。ここにエンジン150が過渡運転状態にある場合とは、例えばギヤチェンジ時など定常運転ではない場合であり、エンジン150の回転数、スロットル開度、吸気・排気時期等の諸条件によって特定可能である。
【0231】
これにより、例えば過渡運転状態等の特殊状況で、ピストン18に対する制御トルク付与によるノック改善制御や等容度改善制御が実行され且つこれが破錠して、例えば大きなノッキングが発生する事態を未然防止できる。
【0232】
尚、過渡運転状態においてこのような大きなノッキングの発生を防止する観点からは、ピストン速度制御中には、モータジェネレータMG1及びMG2の少なくとも一方で負荷分担を行って、エンジン150の機関運転状態を準定常運転状態に保つ或いは定常運転状態に多少なりとも近付けるようにしてもよい。
【0233】
更に第10実施形態では、例えば予め設定された条件の他の例として、モータジェネレータモータMG1に電源供給するバッテリ194の充電状態が一定レベル以下である場合には、EFIECU170は、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御を実施させないように構成してもよい。
【0234】
これにより、例えばバッテリ194における蓄電量不足の状況で、ピストン18に対する制御トルク付与によるノック改善制御や等容度改善制御が不完全に実行され且つこれが破錠して、例えば大きなノッキングが発生する事態を未然防止できる。
【0235】
更にまた第10実施形態では、例えば予め設定された条件の他の例として、ピストン速度の制御状態を示すクランクシャフト19の回転数変動を参照しつつ、仮にノック改善制御を実行すると予め設定される許容可能な等容度を下回る場合には、EFIECU170は、モータジェネレータMG1によるノック改善制御を実施させないように構成してもよい。これにより、ノック改善制御が破錠した場合に、等容度が顕著に低下する事態を未然防止できる。或いは、例えば予め設定された条件の他の例として、ピストン速度の制御状態を示すクランクシャフト19の回転数変動を参照しつつ、仮に等容度改善制御を実行すると予め設定されるノック領域となる回転数に近付き過ぎる場合には、EFIECU170は、モータジェネレータMG1による等容度改善を実施させないように構成してもよい。これにより、等容度改善制御が破錠した場合に、大きなノッキングが生じる事態を未然防止できる。
【0236】
(ピストン速度制御の第11実施形態)
次に図1、図5及び図18から図20に加えて、図21を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第11実施形態について説明する。ここに図21は、モータジェネレータMG1のトルクがクランク角速度へ伝達される際の伝達関数を図式的に示したブロック図である。
【0237】
第11実施形態は、EFIECU170が、エンジン150における失火判定或いは失火検出を、クランク回転数に基づいて実行可能であり、ピストン速度制御の最中に失火判定或いは失火検出を行なう場合には、制御トルクの付与に起因した回転変動影響分を補正して当該失火判定を実行するように構成されている。その他の構成及び動作については上述した第1実施形態の場合と同様である。また、失火判定自体については、図18から図20を参照して説明した第10実施形態の場合と同様である。
【0238】
EFIECU170により実行されるクランク回転数に基づいて行われる失火判定の精度は、ノック改善制御や等容度改善制御の最中に既に図20に平常特性曲線C15として例示したように、クランク回転数をそのまま用いたのでは低下する場合がある。そこで、本実施形態では、ピストン速度制御中には、制御トルク付与に起因した回転変動影響分を補正した上で、失火判定を実行する。
【0239】
具体的には図21に示すように、本実施形態では予め、モータジェネレータMG1による制御トルクがクランク角速度へ伝達される際の伝達特性を示す伝達関数G(S)を用意する。この関数は、エンジン150、特にそのシリンダ16、ピストン18及びコンロッド19、並びにクランクシャフト156、モータジェネレータMG1、プラネタリギヤ120等の設計仕様により個別具体的に特定可能である。この伝達関数G(S)は、モータジェネレータMG1を流れる電流から実測可能であるモータジェネレータMG1によって出力されるMGトルクを入力として、このMGトルクによるクランク角速度変化量を算出する伝達関数である。
【0240】
その後、ハイブリッド車両の動作時には、モータジェネレータMG1から出力されるMGトルクが、モータジェネレータMG1を流れる電流から実測される。そして、このMGトルクを入力として、図21の伝達関数G(S)により、これに対応するクランク角速度変化量が算出される。続いて、前述のように光学的、磁気的、機械的手法等で実測される、例えば図20で平常特性曲線C15として例示したようなクランク角速度から、伝達関数G(S)で算出したクランク角速度変化量が、各クランク角度について引き算される。この際、理論上は、クランク角速度における高周波数成分については、図20に示した平常特性曲線C13の波形(正弦波)で示されるエンジントルクの変動による成分と、制御トルクによる成分とが加算されて、平常特性曲線C15として例示したようなクランク角速度が構成されている。従って、このような引き算によって、制御トルクの付与に起因した回転変動影響分が除かれた、補正後のクランク角速度が得られる。
【0241】
続いて、係る補正後のクランク角速度に基づいて、図18に示したような失火判定が実行される。この際、ピストン速度制御を行うか行わないかに拘わらず、失火判定に使用するクランク加速度情報は、常に、図20に示した平常特性曲線C13の波形(正弦波)に成形した後に、当該失火判定が実行される。
【0242】
以上説明したように第11実施形態において、図21に示した伝達関数G(S)は既知であり且つMGトルクの実測値は電流から計算可能であるので、制御トルクの付与に応じたクランク角速度変化量を計算できる。そこで、図18を参照して説明した失火判定は、このような制御トルクに応じたクランク角速度変化量を差引いた補正後のクランク角速度に基づいて実行される。これにより、ピストン速度制御による失火判定精度の低下を抑制できる。しかも、失火判定を禁止しないで済むので、失火判定が長期に亘って実行されない事態を回避できる。
【0243】
他方で、このようなピストン18に対して制御トルクを付与していない最中には、当該制御トルク付与に起因した回転変動影響分を補正することなく通常通りに失火判定を実行する。これにより、失火判定の判定精度の低下を回避できる。
【0244】
(ピストン速度制御の第12実施形態)
次に図1及び図5を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第12実施形態について説明する。
【0245】
第12実施形態は、EFIECU170が、ピストン18に対する制御トルクの付与による改善効果と制御トルクとの関係を学習して、改善効果をより高める制御トルクを付与するようにモータジェネレータMG1を制御するように構成されている。ここに改善効果とは、前述した第9実施形態の場合と同様に、例えば図5に示したノッキングレベルセンサ90により検出されたノッキングレベルに基づいて、モータジェネレータMG1によるピストン18に対する制御トルクの付与によりノッキングレベルが低下したか否かを指す。或いは、図5に示した筒内圧センサ93により検出された筒内圧に基づいて、モータジェネレータMG1によるピストン18に対する制御トルクの付与により筒内圧が減少したか(ノック改善制御の場合)又は増加したか(等容度改善制御の場合)を指す。言い換えれば、ピストン18に対する制御トルクの付与により、実際にピストン速度がどれだけ変化したか或いは点火時期が何度進角できたかを指す。その他の構成及び動作については上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0246】
即ち第12実施形態では、EFIECU170は、このような改善効果と制御トルクとの関係を学習して、改善効果をより高める振幅や位相を有する制御トルクを付与するようにモータジェネレータMG1を制御する。
【0247】
従って第12実施形態によれば、EFIECU170は、ピストン速度制御が行われる都度に、改善効果と駆動力との関係を学習するので、学習が進むに連れて、ノッキング防止やエンジン効率向上の効果を、実践的な意味で最大限に近いレベルまで向上させられる。
【0248】
尚、本実施形態においては、このような点火時期に係る学習は、クランクシャフト156における回転数変動を見て、モータジェネレータMG1によるピストン速度制御が良好な状態(即ち、ピストン速度の変動が所定範囲内にある時)において実施するのが好ましい。これにより、本実施形態におけるエンジン効率向上代を最大限に引き出すことが可能となる。
【0249】
加えて本実施形態では、例えばノッキングコントロールシステムを利用して、ノック改善制御の状態を検出し、点火時期を進角できる量を調整してもよい。より具体的には、クランク角速度等を参照して、ノック改善制御によるピストン速度状態が完全でない(例えば、若干位相がずれている等の)時に、ノック改善制御による改善効果に応じて、理想的な進角量+αに、実際に制御可能な範囲内で且つなくべく近くなる“+α×c%”(但し、0<c<1)の進角量を用いて、当該ノック改善制御を行ってもよい。
【0250】
これにより、実際のモータジェネレータMG1のノック改善制御の状況に応じてピストン速度制御を行うことができ、実現可能な範囲内で最大限度のエンジン効率の向上を図れる。
【0251】
或いは本実施形態において、制御トルクの振幅が、モータジェネレータMG1におけるトルク定格によって制限される場合には、例えば、±40Nmしか出せないモータジェネレータMG1に対して−20Nm中心で±30Nm振幅の制御トルクが必要な場合には、当該定格上の制限内で最良な進角量に調整してもよい。
【0252】
これにより、実際のモータジェネレータMG1の定格に応じて可能な限りの進角量となるようにピストン速度制御を行うことができ、実現可能な範囲内で最大限度のエンジン効率の向上を図れる。
【0253】
(ピストン速度制御の第13実施形態)
次に図1及び図5を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第13実施形態について説明する。
【0254】
第13実施形態は、エンジン150は、駆動力付与手段としてのモータジェネレータMG1とは別に、エンジン150におけるノッキングを防止可能な、例えば吸気・排気時期(吸気時期及び排気時期のうち少なくとも一方:以下同様)が可変に構成された吸気弁32及び/又は排気弁28、点火時期が可変に構成された点火プラグ26、並びに吸気圧を可変に構成されたターボ過給器39(図5参照)、更に、特開2000−64866号公報、特開平6−241058号公報等に開示された燃焼室容積を可変とするように構成されたコンロッド等など、各種のノッキング防止手段を備えている。そして、ピストン速度制御の最中に、EFIECU170は、上述した第10実施形態の場合と同様に予め設定された条件が満たされる場合には、モータジェネレータMG1による制御トルクの付与を中止する。ここで第13実施形態では特に、このように制御トルクの付与を中止すると共に、筒内圧、圧縮比、燃焼温度等を調節することでノッキングを防止するように、上述した各種のノッキング防止手段を制御する。その他の構成及び動作については上述した第1実施形態の場合と同様である。
【0255】
具体的には例えば、ノック改善制御が中止された場合、点火プラグにおける点火時期を遅角させることで、ノッキングの回避が行われる。このようなノッキング回避は瞬時に実行可能であり、モータジェネレータMG1による制御過渡状態において、ノッキングを抑制できる。
【0256】
また例えば、ノック改善制御が中止された場合、吸気及び/又は排気弁における吸気・排気時期を遅角させて空気量を減らすことにより、ノッキングの回避が行われる。これにより、上述した点火時期を遅角させる場合と比較して、エンジン燃費低下代を小さくしつつ、ノッキングを抑制できる。
【0257】
この際特に、先ずノック改善制御を中止する時間が相対的に長いか又は短いかを、リアルタイムで機関運転状態、バッテリの充電量等に基づいて判断し、続いて、この判断結果に応じて、これらの点火時期の遅角制御を行うか、吸気・排気時期の遅角制御を行うかを場合分けするのが好ましい。
【0258】
例えば、ノック改善制御を中止する時間が相対的に短いと判断される場合は、点火時期の遅角制御のみで一時的にノッキングを回避すると効率的である。他方で、ノック改善制御を中止する時間が相対的に長いと判断される場合は、先ず、点火時期の遅角制御及び吸気・排気時期の遅角制御の両者を行って迅速なノッキング回避を行うと共に(この際、より好ましくは、点火時期は確実にノッキングが発生しない程度に遅角させておき)、吸気・排気時期の遅角制御が完了した後に、即ち吸気する空気量を減らした後に、点火時期についての遅角は元の戻すとよい(例えば、遅角を0又は既定値に戻すとよい)。このようにすれば、エンジン燃費低下代を最小限にしつつ、確実なノック回避が可能となる。
【0259】
尚、ノッキング改善制御の中止後における点火時期の遅角制御及び吸気・排気時期の遅角制御によって、エンジンパワーが低下する場合があるが、このようなエンジンパワーの低下分は、エンジン回転数を上げることにより補償すればよい。即ち、ピストン速度制御を行うか否かによらずに、エンジン150としては、同一のパワーを出力させることが可能となる。これにより、エンジン150に係る動作性能に支障は来たさない。
【0260】
以上説明したように本実施形態によれば、何らかの条件でノック改善制御が突如として中止されても、これにより大きなノッキングが発生する事態を効果的に回避できる。
【0261】
尚、本実施形態では、エンジン150は、このようなノッキング防止手段に代えて又は加えて若しくはノッキング防止手段と兼用で、例えば吸気・排気時期が可変に構成された吸気弁32及び/又は排気弁28、点火時期が可変に構成された点火プラグ26、吸気圧を可変に構成されたターボ過給器39(図5参照)、燃焼室容積を可変とするように構成されたコンロッド等など、各種のエンジン効率を向上可能な効率向上手段を備えている。そして、ピストン速度制御の最中に、EFIECU170は、予め設定された条件が満たされる場合には、モータジェネレータMG1による制御トルクの付与を中止する。ここで特に、このように制御トルクの付与を中止すると共に、筒内圧、圧縮比、燃焼温度等を調節することでエンジン効率を向上させるように、このような効率向上手段を制御するように構成してもよい。具体的には例えば、等容度改善制御が中止された場合、点火プラグにおける点火時期を変更することや、吸気及び/又は排気弁における吸気・排気時期を進角させて空気量を増減することにより、等容度改善が行われる。これにより、モータジェネレータMG1による等容度改善制御が中止された状況でも、他の効率向上手段によりエンジン効率向上を図れる。この場合にも、点火時期や吸気・排気時期の変更によってエンジンパワーは低下する場合があるが、その低下分は、エンジン回転数を上げることにより補償すればよい。
【0262】
(ピストン速度制御の第14実施形態)
次に図22を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第14実施形態について説明する。ここに図22は、第14実施形態におけるピストン速度制御を示すフローチャートである。
【0263】
第14実施形態は、上述した各種実施形態に係るピストン速度制御を適宜組み合わせて用いることで全体効率を向上可能な一連のピストン速度制御ロジックに係るものである。
【0264】
図22において先ず、初期状態として、ハイブリッド車両は動作中であり、EFIECU170及びモータジェネレータMG1を用いたエンジン150のピストン18に対するピストン速度制御を行うための“ピストン速度制御ロジック”が、例えば割り込み処理により定期的に或いは不定期に繰り返し開始される(ステップS20)。
【0265】
すると、EFIECU170によって、例えば前述の第1及び第9〜第11実施形態中で説明したピストン速度制御を実施すべきか否かの判定の如き、各種の機関運転状態等に応じた当該ピストン速度制御を実施すべきか否かの判定が行われる(ステップS21)。より具体的には、例えば第1実施形態の場合と同様に、EFIECU170によって、「ノック領域」にあるのか又は「非ノック領域」にあるのかが判定される。この判定に加えて、第9実施形態の場合と同様に、ピストン18に対する制御トルクの付与による改善効果が所定基準に従って低いか否かが判定され、第10実施形態の場合と同様に、予め設定された条件が満たされるか否かが判定され、或いは、第11実施形態の場合と同様に失火判定が行われるか否かが判定される。
【0266】
ステップS21における判定の結果、ピストン速度制御を実施すべきと判定された場合(ステップS21:“実施”)、続いて当該ピストン速度制御の実施開始直後であるか否かが判定される(ステップS22)。そして、実施開始直後であれば(ステップS22:Yes)、モータジェネレータMG1における制御トルク付与が無い状態から有る状態になるように移行制御が行われる(ステップS23)。
【0267】
続いて、例えば前述の第5〜第8実施形態中で説明した制御トルクの調整の如き、モータジェネレータMG1における制御トルク(MGトルク)の調整が実施される(ステップS24)。より具体的には、第5実施形態の場合と同様に、複数気筒のエンジン150の各ピストン18に対し正弦波の制御トルクをフィードフォーワード的に付与したり、第6実施形態の場合と同様に、複数気筒のエンジン150の各ピストン18に対し正弦波の制御トルクをフィードバック的に付与したり、第7実施形態の場合と同様に、ノッキングレベルが小さくなるように制御トルクの振幅及び位相をフィードバック制御したり、第8実施形態の場合と同様に、大気圧及び外気温に応じて、制御トルクの振幅及び位相をフィードフォーワード的に調整する。
【0268】
その後、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。
【0269】
他方、ステップS22における判定の結果、実施開始直後でなければ(ステップS22:No)、例えば前述の第12実施形態の場合と同様に、点火時期を通常よりも+αだけ進角させ(ステップS25)、その後ステップS24に進む。そして、ステップS24におけるトルク調整を行った後に当該ピストン速度制御ロジックを終了する。
【0270】
他方、ステップS21における判定の結果、ピストン速度制御を実施すべきと判定されない場合、即ち中止又は停止若しくは禁止すべきと判定された場合(ステップS21:“中止”)、続いて当該ピストン速度制御の実施停止直後であるか否かが判定される(ステップS26)。ここで、実施停止直後であれば(ステップS26:Yes)、モータジェネレータMG1における制御トルク付与が有る状態から無い状態になるように移行制御が行われた後に(ステップS27)、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。
【0271】
他方、ステップS26における判定の結果、実施停止直後でなければ(ステップS26:No)、例えば前述の第12実施形態の場合と同様に、点火時期を通常制御に設定した後(ステップS28)、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。
【0272】
以上のように第14実施形態によれば、エンジン150における各種の機関運転状態等に応じて、ノック改善制御を適宜行うか或いは等容度改善制御を適宜行うことで、ノッキングの発生を回避しつつ、エンジン効率或いは燃費性能を向上させることが可能となる。
【0273】
(ピストン速度制御の第15実施形態)
次に図23を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第15実施形態について説明する。ここに図23は、第15実施形態におけるピストン速度制御を示すフローチャートである。尚、図23において、図22に示した第14実施形態と同様のステップには同様のステップ番号を付し、それらの説明は適宜省略する。
【0274】
第15実施形態は、上述した各種実施形態に係るピストン速度制御を適宜組み合わせて用いることで全体効率を向上可能な一連のピストン速度制御ロジックに係るものである。
【0275】
図23において先ず、初期状態として、ハイブリッド車両は動作中であり、EFIECU170及びモータジェネレータMG1を用いたエンジン150のピストン18に対するピストン速度制御を行うための“ピストン速度制御ロジック”が、例えば割り込み処理により定期的に或いは不定期に繰り返し開始される(ステップS30)。
【0276】
続いて図22に示した第14実施形態の場合と同様にステップ21からS23における処理が実行される。
【0277】
ここでステップS23の実行後、エンジン150において定常運転或いは準定常運転が実施される(ステップS33)。より具体的には、例えば前述の第10実施形態中で説明したのと同様に、ピストン速度制御中には、エンジン150が過渡運転状態にある場合、モータジェネレータMG1及びMG2の少なくとも一方で負荷分担を行って、エンジン150の機関運転状態を準定常運転状態に保つ或いは定常運転状態に多少なりとも近付ける制御が、EFIECU170によって行われる。これにより、過渡運転状態でピストン速度制御の破錠により、大きなノッキングが発生する事態を効率的に回避できる。
【0278】
続いて図22に示した第14実施形態の場合と同様にステップ24における処理が実行され、その後、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。
【0279】
他方、ステップS22における判定の結果、実施開始直後でなければ(ステップS22:No)、モータジェネレータMG1によるピストン18に対する制御トルクの付与を継続しつつ、例えば前述の第12実施形態の場合と同様に、点火時期を通常よりも+αだけ進角させ(ステップS35)、その後ステップS24に進む。そして、ステップS24におけるトルク調整を行った後に当該ピストン速度制御ロジックを終了する。
【0280】
他方、ステップS21における判定の結果、ピストン速度制御を実施すべきと判定されない場合、即ち中止又は停止若しくは禁止すべきと判定された場合(ステップS21:“中止”)、図22に示した第14実施形態の場合と同様にステップ26及びS27における処理が実行され、その後、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。但し、ステップS26における判定の結果、実施停止直後でなければ(ステップS26:No)、モータジェネレータMG1によるピストン18に対する制御トルクの付与を停止しつつ、例えば前述の第12実施形態の場合と同様に、点火時期を通常制御に設定した後(ステップS38)、当該割り込み処理によるピストン速度制御ロジックを終了する。
【0281】
以上のように第15実施形態によれば、エンジン150における各種の機関運転状態等に応じて、ノック改善制御を適宜行うか或いは等容度改善制御を適宜行うことで、ノッキングの発生を回避しつつ、エンジン効率或いは燃費性能を向上させることが可能となる。
【0282】
(ピストン速度制御の第16実施形態)
次に図24を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第16実施形態について説明する。ここに図24は、第16実施形態におけるピストン速度制御を示すフローチャートである。
【0283】
第16実施形態は、ピストン速度制御のうち、上述した第12実施形態の如く改善効果と制御トルクとの関係を学習することで改善効果を高めるための点火進角可能代学習ロジックに係るものである。
【0284】
図24において先ず、初期状態として、ハイブリッド車両は動作中であり、EFIECU170による“点火進角可能代学習ロジック”が、例えば割り込み処理により定期的に或いは不定期に繰り返し開始される(ステップS40)。
【0285】
すると、エンジン150が、例えばギヤチェンジ等の過渡運転状態ではない定常運転状態にあるか否かが判定される(ステップS41)。ここで、定常運転状態でなければ(ステップS41:No)、学習を行うのに不適切であるとして、そのまま当該割り込み処理による点火進角可能代学習ロジックを終了する。
【0286】
他方で、ステップS41における判定の結果、定常運転状態であれば(ステップS41:Yes)、学習を行うのに適しているとして、ピストン速度制御を行わない状態での最大点火進角量θ1を算出する(ステップS42)。この算出は、ノッキングレベルセンサ90や筒内圧センサ93(図5参照)で、ノッキングしない領域を検出して行われる。
【0287】
続いて、ピストン速度制御を行っている状態での最大点火進角量θ2を算出する(ステップS43)。この算出は、ノッキングレベルセンサ90や筒内圧センサ93(図5参照)で、ノッキングしない領域を検出して行われる。
【0288】
続いて、ステップS42及びS43で求めた最大点火進角量θ2及び最大点火進角量θ1の差“θ2−θ1”の点火時期を、点火進角可能分(α°)として、学習する(ステップS44)。これにより、例えばEFIECU170の内蔵メモリ内に構築された学習テーブルが更新される。その後、当該割り込み処理による点火進角可能代学習ロジックを終了する。
【0289】
以上のように第16実施形態によれば、EFIECU170は、ピストン速度制御が行われる都度に適宜、点火進角可能分を学習するので、学習が進むに連れて、ノッキング防止やエンジン効率向上の効果を、実践的な意味で最大限に近いレベルまで向上させられる。
【0290】
(ピストン速度制御の第17実施形態)
次に図25を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第17実施形態について説明する。ここに図25は、第17実施形態におけるピストン速度制御を示すフローチャートである。
【0291】
第17実施形態は、ピストン速度制御のうち、上述した第12実施形態中に示した如く、ピストン速度制御を開始する過渡時に点火時期を制御するための“ピストン速度制御開始時の点火時期制御ロジック”に係るものである。
【0292】
図25において先ず、初期状態として、ハイブリッド車両は動作中であり、EFIECU170による“ピストン速度制御開始時の点火時期制御ロジック”が、例えば割り込み処理により定期的に或いは不定期に繰り返し開始される(ステップS50)。
【0293】
すると、ピストン速度制御を実施中であるか否かが判定される(ステップS51)。ここで、実施中でなければ(ステップS51:No)、そのまま当該割り込み処理による点火時期制御ロジックを終了する。
【0294】
他方で、ステップS51における判定の結果、ピストン速度制御の実施中であれば(ステップS51:Yes)、先ず点火進角可能分を、例えば上述した第12実施形態或いは第16実施形態で説明した学習機能によって得られた学習値として、若しくは予め設定されたマップ又はテーブル上の値として、参照する。そして、この点火進角可能分から、現在ピストン速度制御されているクランク角より補正した値分だけ点火進角を実施する(ステップS52)。続いて、ノッキングレベルセンサ90又は筒内圧センサ93によってノッキングしない値に点火時期を補正した後(ステップS53)、当該割り込み処理による点火時期制御ロジックを終了する。
【0295】
以上のように第17実施形態によれば、EFIECU170は、ピストン速度制御を開始する過渡時に、点火時期制御ロジックを行うことで、ノッキングが発生する事態を効果的に回避できる。
【0296】
(ピストン速度制御の第18実施形態)
次に図26を参照して、本発明に係るピストン速度制御の第18実施形態について説明する。ここに図26は、第18実施形態におけるピストン速度制御を示すフローチャートである。
【0297】
第18実施形態は、ピストン速度制御のうち、上述した第13実施形態中に示した如く、ピストン速度制御を中止する過渡時に点火時期及び吸気時期を制御するための“ピストン速度制御中止時の制御ロジック”に係るものである。
【0298】
図26において先ず、初期状態として、ハイブリッド車両は動作中であり、EFIECU170による“ピストン速度制御中止時の制御ロジック”が、例えば割り込み処理により定期的に或いは不定期に繰り返し開始される(ステップS60)。
【0299】
すると、例えばバッテリ充電量低下などの中止の原因から予想されるピストン速度制御が中止される時間が、所定閾値と比較して長時間であるか否かが判定される(ステップS61)。ここで長時間でなければ(ステップS61:No)、点火プラグ26(図5参照)における点火時期を一時的に遅角させることで、迅速にノッキングを回避して(ステップS62)、当該割り込み処理による制御ロジックを終了する。
【0300】
他方、ステップS61における判定の結果、ピストン速度制御が中止される時間が、所定閾値と比較して長時間であれば(ステップS61:Yes)、続いて、中止の原因等に応じて、今回実行しようとしているピストン速度制御の中止を即時に行うべきか又は否かが判定される(ステップS63)。ここで、即時に中止すべきであれば(ステップS63:Yes)、点火プラグ26における点火時期を一時的に遅角させることで、迅速にノッキングを回避する。これと共に吸気弁32(図5参照)における吸気時期を遅角させることにより、ノッキングを回避する。これらと殆ど同時に、ピストン速度制御は即時に中止される。尚、点火時期については、遅角されたままではエンジン効率が無視し得ない程低下する場合もあるので、好ましくは、その遅角により迅速なるノッキング回避が行われた後には、通常の点火時期に戻される。他方、吸気時期についてはエンジン効率を余り低下させないのでそのまま維持される。これにより、迅速にノッキングを回避した後に、更に長時間に亘ってノッキングを回避できる。その後、当該割り込み処理による制御ロジックを終了する。
【0301】
他方、ピストン速度制御を即時に中止しないのであれば(ステップS63:No)、吸気弁32における吸気時期を遅角させることにより、ノッキングを回避する(ステップS65)。但し、吸気時期の遅角によるノッキング回避には、ある程度の時間がかかるので、これによるノッキング回避が完了してから、ピストン速度制御を終了させる。その後、当該割り込み処理による制御ロジックを終了する。
【0302】
以上のように第18実施形態によれば、EFIECU170は、ピストン速度制御を中止する過渡時に、専用の制御ロジックを行うことで、ノッキングが発生する事態を効果的に回避できる。
【0303】
(その他の変形形態)
本発明を適用するハイブリッド車両の構成としては、図1に示した構成の他、種々の構成が可能である。
【0304】
上述の実施形態では、モータジェネレータ装置が同期電動機からなるモータジェネレータを複数備えてなるが、その少なくとも一部に代えて又は加えて、誘導電動機、バーニアモータ、直流電動機、超伝導モータ、ステップモータ等を用いることも可能である。
【0305】
上述の実施形態では、エンジン150としてガソリンにより運転される直噴型のガソリンエンジンを用いていたが、その他に、伝統的なポート噴射型のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、タービンエンジン、ジェットエンジン等の各種の内燃あるいは外燃機関を用いることができる。
【0306】
加えて、本発明のハイブリッド型の動力出力装置は、ハイブリッド車両用のみならず、その他の各種移動体や重電機器に対して適用可能である。
【0307】
更にまた、制御手段としてのEFIECU170は、エンジン150によるクランクシャフト156の回転力で発電可能なモータジェネレータMG1における負荷を低下させることで結果的に、クランクシャフト156に対して駆動力を付与するように構成してもよい。即ち、上述の各種実施形態において、エンジン150に要求している負荷をモータジェネレータMG1によって積極的に低下させることで結果的に駆動力をピストン18に付与し、これによりピストン速度を上昇させるように構成してもよい。
【0308】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴なうエンジンの制御装置及び方法、並びにそのような制御装置を備えたハイブリッド型の動力出力装置及びハイブリッド車両もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0309】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、ピストン速度特性を、エンジンの機関運転状態に応じて変更可能であり、これにより例えばノック領域、非ノック領域など複数種類の機関運転状態に応じてエンジン効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のハイブリッド車両における動力系統のブロック図である。
【図2】本実施形態に係るハイブリッド車両の基本的動作を説明するための共線図である。
【図3】本実施形態に係るハイブリッド車両が高速定常走行している場合の共線図である。
【図4】本実施形態に係るハイブリッド車両のバッテリ及びモータ駆動回路の構成を示す。
【図5】本実施形態に係るエンジンの構造の概略構成図である。
【図6】ピストン速度制御の第1実施形態に係るノック領域及び非ノック領域を図式的に示したエンジン回転数−エンジントルク特性図である。
【図7】第1実施形態におけるピストン速度制御を示すフローチャートである。
【図8】第1実施形態に係るノッキングを回避する原理を図式的に示したエンジンのP−V線図である。
【図9】第1実施形態に係るノッキングを抑制する際の、モータジェネレータによるピストン速度の制御タイミングを図式的に示した燃焼サイクルダイアグラムである。
【図10】第1実施形態に係るエンジン効率を向上させる際の、モータジェネレータによるピストン速度の制御タイミングを図式的に示した燃焼サイクルダイアグラムである。
【図11】ピストン速度制御の第2実施形態に係る、クランクシャフトの角速度ωに対する共振部材としてのダンパのゲインを示したゲイン特性図である。
【図12】ピストン速度制御の第3実施形態に係る、逆オフセットクランク構造を示す機構図である。
【図13】図12に示した逆オフセットクランク構造におけるクランク角に対するピストン速度特性を示す特性図である。
【図14】ピストン速度制御の第4実施形態に係るハイブリッド方式の動力出力装置の一具体例における概略構成を示すブロック図である。
【図15】第4実施形態に係るハイブリッド方式の動力出力装置の他の具体例における概略構成を示すブロック図である。
【図16】ピストン速度制御の第5実施形態に係る、クランク角度℃Aに対するモータジェネレータMG1がピストン18に付与する制御トルクの振幅変化を示したトルク特性図である。
【図17】ピストン速度制御の第6実施形態に係る、クランク角度℃Aに対するクランク角速度の振幅変化を示したクランク角速度特性図である。
【図18】ピストン速度制御の第10実施形態に係る、クランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線上で失火判定を行う様子を示すグラフである。
【図19】第10実施形態に係る、ピストン速度制御が理想的に行われている場合における通常時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とピストン速度制御時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とを重ねて示すグラフである。
【図20】第10実施形態に係る、ピストン速度制御が理想的に行われていない場合における通常時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とピストン速度制御時のクランク角に対する30℃A所要時間を示す特性曲線とを重ねて示すグラフである。
【図21】ピストン速度制御の第11実施形態に係る、モータジェネレータのトルクがクランク角速度へ伝達される際の伝達関数を図式的に示したブロック図である。
【図22】ピストン速度制御の第14実施形態に係る、ピストン速度制御を示すフローチャートである。
【図23】ピストン速度制御の第15実施形態に係る、ピストン速度制御を示すフローチャートである。
【図24】ピストン速度制御の第16実施形態に係る、ピストン速度制御を示すフローチャートである。
【図25】ピストン速度制御の第17実施形態に係る、ピストン速度制御を示すフローチャートである。
【図26】ピストン速度制御の第18実施形態に係る、ピストン速度制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
18ピストン
19 コンロッド
22 燃料噴射弁
24 燃料ポンプ
31 三元触媒装置
38 吸気管
39 ターボ過給装置
40 スロットル弁
44 スロットル開度センサ
76 イグニッションスイッチ
78 アクセルペダル
80 アクセル開度センサ
90 ノッキングレベルセンサ
91 大気圧センサ
92 外気温センサ
93 筒内圧センサ
120 プラネタリギア
150 エンジン
156 クランクシャフト
170 EFIECU
190 制御ユニット(ECU)
194 バッテリ

Claims (40)

  1. ピストン及び該ピストンに接続されたクランク軸を有するエンジンを制御する制御装置であって、
    前記ピストンに対して駆動力を付与可能である駆動力付与手段と、
    前記クランク軸におけるクランク角度及び前記エンジンにおける機関運転状態に応じて、前記ピストンに対し、その運動方向の正方向及び負方向の少なくと一方向に、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御する制御手段と
    を備えたことを特徴とするエンジンの制御装置。
  2. 前記エンジンでノッキングが発生するか否かを判定する判定手段を更に備えており、
    前記制御手段は、前記機関運転状態として前記判定手段による判定に基づく前記ノッキングの発生状態に応じて前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの制御装置。
  3. 前記判定手段は、前記エンジンの回転数及び負荷に応じて、前記ノッキングが発生するか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの制御装置。
  4. 前記判定手段は、特定周波数帯域内の振動として前記エンジンのノッキングレベルを検出するノッキングレベルセンサの検出出力に応じて、前記ノッキングが発生するか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの制御装置。
  5. 前記判定手段は、前記エンジンの筒内圧センサの検出出力に応じて、前記ノッキングが発生するか否かを判定することを特徴とする請求項2に記載のエンジンの制御装置。
  6. 前記判定手段は、前記機関運転状態に影響を及ぼす外的要因を測定する外的センサの検出出力に応じて、前記ノッキングが発生するか否かの判定基準に変更を加えることを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  7. 前記制御手段は、前記判定手段によりノッキングが発生すると判定された場合には、前記エンジンの膨張工程初期における前記ピストンの速度が上昇するように前記駆動力付与手段を制御することを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  8. 前記制御手段は、前記判定手段によりノッキングが発生しないと判定された場合には、前記エンジンの圧縮上死点における前記ピストンの速度が下降するように前記駆動力付与手段を制御することを特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  9. 前記駆動力付与手段は、前記クランク軸に接続されており、前記クランク軸を介して前記ピストンに対して駆動力を付与することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  10. 前記駆動力付与手段は、前記クランク軸に共振部材を介して接続されていることを特徴とする請求項9に記載のエンジンの制御装置。
  11. 前記ピストンと前記クランク軸との接続構造が、逆オフセットクランク構造とされていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  12. 前記ピストンと前記クランク軸との接続構造が、順オフセットクランク構造とされていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  13. 前記エンジンは、複数気筒を有し、
    前記制御手段は、720℃A/n/α(但し、℃Aはクランク角度、nは気筒数、αは自然数)の周期で、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  14. 前記エンジンは、複数気筒を有し、
    前記制御手段による前記クランク角に応じた制御は、前記駆動力の時間的変化又はクランク角に対する変化が、所定周波数以上となる周波数域では、前記エンジンの全気筒のうち一部の気筒のみを対象として行われることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  15. 前記制御手段は、前記駆動力の時間的変化又はクランク角に対する変化が所定波形となるように前記駆動力付与手段を制御することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  16. 前記制御手段は、前記駆動力を付与した際における前記クランク軸の回転数が前記機関運転状態に応じて設定された目標回転数に近付くように前記駆動力付与手段をフィードバック制御することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  17. 前記制御手段は、特定周波数帯域内の振動として前記エンジンのノッキングレベルを検出するノッキングレベルセンサの検出出力が小さくなるように、前記駆動力付与手段をフィードバック制御することを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  18. 前記制御手段は、前記駆動力の振幅及び位相についてフィードバック制御することを特徴とする請求項16又は17に記載のエンジンの制御装置。
  19. 前記制御手段は、前記機関運転状態に影響を及ぼす外的要因に応じて、前記駆動力の振幅及び位相を調整するように前記駆動力付与手段を制御することを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  20. 前記制御手段は、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与による改善効果が所定基準に従って低い場合には、前記駆動力を付与することを停止するように前記駆動力付与手段を制御することを特徴とする請求項1から19のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  21. 前記所定基準は、前記駆動力付与手段における消費電力に応じて可変であることを特徴とする請求項20に記載のエンジンの制御装置。
  22. 前記制御手段は、前記改善効果と前記駆動力との関係を学習して、前記改善効果をより高める駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御する請求項20又は21に記載のエンジンの制御装置。
  23. 前記制御手段は、前記駆動力付与手段における前記駆動力の付与のために消費される消費電力が前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与により得られる燃費向上よりも大きい場合には、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を禁止することを特徴とする請求項1から22のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  24. 前記エンジンは、前記駆動力付与手段とは別に、前記エンジンにおけるノッキングを防止可能なノッキング防止手段を備えており、
    前記制御手段は、予め設定された条件が満たされる場合には、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を中止すると共に、前記ノッキングを防止するように前記ノッキング防止手段を制御することを特徴とする請求項1から23のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  25. 前記ノッキング防止手段は、前記クランク角に対して点火時期が可変に構成された点火プラグと前記クランク角に対して吸気時期を可変に構成された吸気弁とのうち少なくとも一方を含み、
    前記制御手段は、前記駆動力の付与を中止させる際に、前記点火時期及び前記吸気時期のうち少なくとも一方を制御することを特徴とする請求項24に記載のエンジンの制御装置。
  26. 予想される前記駆動力の付与を中止する時間に応じて、前記点火時期及び前記吸気時期の制御方法を変更することを特徴とする請求項25に記載のエンジンの制御装置。
  27. 前記駆動力の付与を中止するまでの時間に応じて、前記点火時期及び前記吸気時期の制御方法を変更することを特徴とする請求項25又は26に記載のエンジンの制御装置。
  28. 前記エンジンは、前記駆動力付与手段とは別に、前記エンジンにおける効率を向上可能な効率向上手段を備えており、
    前記制御手段は、予め設定された条件が満たされる場合には、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を中止すると共に、前記効率を向上させるように前記効率向上手段を制御することを特徴とする請求項1から27のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  29. 前記制御手段は、予め設定された条件が満たされる場合には、前記クランク角度及び前記機関運転状態によらずに、前記駆動力付与手段による前記駆動力の付与を行わないことを特徴とする請求項1から28のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  30. 前記制御手段は、前記エンジンにおける失火判定を前記ピストンの動きに基づいて実行可能であり、該失火判定を実行している最中には前記駆動力の付与を禁止するように前記駆動力付与手段を制御すること特徴とする請求項1から29のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  31. 前記制御手段は、前記エンジンにおける失火判定を前記ピストンの動きに基づいて実行可能であり、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御している最中には前記失火判定を禁止すること特徴とする請求項1から29のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  32. 前記制御手段は、前記エンジンにおける失火判定を前記ピストンの動きに基づいて実行可能であり、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御している最中には前記駆動力の付与に起因した回転変動影響分を補正して前記失火判定を実行すること特徴とする請求項1から29のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  33. 当該エンジンの制御装置は、ハイブリッド車両に搭載されており、
    前記駆動力付与手段は、前記エンジンの出力の少なくとも一部を用いて発電可能であるモータジェネレータ装置を含むことを特徴とする請求項1から30のいずれか一項に記載のエンジンの制御装置。
  34. 前記モータジェネレータ装置は、前記ピストンに対して前記駆動力を付与する第1モータジェネレータと、前記ハイブリッド車両の駆動軸に対して他の駆動力を付与する第2モータジェネレータとを含んでなることを特徴とする請求項33に記載のエンジンの制御装置。
  35. 前記第1モータジェネレータが前記ピストンに対して前記駆動力を付与している状態において、前記駆動軸を介しての駆動輪への伝達振動を、前記第2モータジェネレータによって相殺することを特徴とする請求項34に記載のエンジンの制御装置。
  36. 前記モータジェネレータ装置は、前記エンジンによる前記クランク軸の回転力で発電可能な第1モータジェネレータと、前記ハイブリッド車両の駆動軸に対して他の駆動力を付与する第2モータジェネレータとを含んでなり、
    前記制御手段は、前記第1モータジェネレータにおける負荷を低下させることで結果的に、前記クランク軸に対して前記駆動力を付与することを特徴とする請求項33に記載のエンジンの制御装置。
  37. 請求項33から36のいずれか一項に記載の制御装置と、
    前記エンジンと、
    前記モータジェネレータ装置と
    を備えたことを特徴とするハイブリッド型の動力出力装置。
  38. 前記モータジェネレータ装置は、複数のモータジェネレータを含み、
    該複数のモータジェネレータのうち少なくとも一つは、前記エンジンの出力の少なくとも一部を用いて発電して前記蓄電装置を充電し、
    前記複数のモータジェネレータのうち少なくとも一つは、前記蓄電装置により電源供給されて前記駆動力を出力することを特徴とする請求項37に記載のハイブリッド型の動力出力装置。
  39. 請求項37又は38に記載の動力出力装置と、
    該動力出力装置が搭載される車両本体と、
    該車両本体に取り付けられると共に前記駆動軸を介して出力される前記駆動力により駆動される駆動輪を含む車輪と
    を備えたことを特徴とするハイブリッド車両。
  40. ピストン及び該ピストンに接続されたクランク軸を有するエンジンを、前記ピストンに対して駆動力を付与可能である駆動力付与手段を備えた制御装置により制御するエンジンの制御方法であって、
    前記クランク軸におけるクランク角度及び前記エンジンにおける機関運転状態に応じて、前記ピストンに対し、その運動方向の正方向及び負方向の少なくと一方向に、前記駆動力を付与するように前記駆動力付与手段を制御する制御工程を備えたことを特徴とするエンジンの制御方法。
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