JP2004083785A - 水性顔料分散液及び水性顔料記録液 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体と、顔料と酸性物質と水性媒体とを含む水性顔料分散液、及び当該水性顔料分散液を質量換算で分散粒子の濃度1〜10%となる様に希釈した水性顔料記録液。
【選択図】なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は水性顔料分散液及び水性顔料記録液に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液に用いるカチオン性重合体を調製するに当たって、ビニルピリジンの様な塩基性複素環を有するモノエチレン性不飽和単量体が共単量体として使用出来ることは良く知られている。
【0003】
しかしながらカチオン性重合体の性質は、塩基性複素環を有するエチレン性不飽和単量体を共単量体としたか否かで一義的に定まるものではなく、塩基性複素環を有するモノエチレン性不飽和単量体以外の共単量体の種類や使用量をどの様に設計すれば、分散性や皮膜物性に優れた重合体となるかはあまり知られていない。塩基性複素環を有するエチレン性不飽和単量体とその他のエチレン性不飽和単量体とを共重合して水性顔料分散液を製造している例としては、例えば特表2000−508683公報、特表2001−521977公報が知られている。
【0004】
特表2000−508683公報には、ビニルピロリドン−ビニルピリジン二元共重合体、ビニルイミダゾール−ビニルピリジン二元共重合体の様な塩基性複素環構造を含むカチオン性重合体を用いたインク組成物が、特表2001−521977公報には、プロピルアクリレート−メチルメタアクリレート−ビニルピリジンヒドロクロリド三元共重合体の様な塩基性複素環構造を含むカチオン性重合体を用いたインク組成物が記載されている。これらはインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製時(調製直後)において、比較的着色濃度が高い記録画像が得られるという長所を有している。
【0005】
ところで、水性媒体中に顔料粒子が安定的に分散した水性顔料分散液を得る場合には、分散剤の分子構造として、顔料へ配向する吸着サイトは極力疎水性が高いことが要される一方、水性媒体へ配向するサイトは親水性が高いことが要される。しかしながら、前記した各公報に記載されている様な重合体は、いずれも顔料と水性媒体との親和性のバランスが悪く、これらを含む水性顔料分散液は経時的な顔料分散性が不充分であり、結果的に、経時的に高粘度となったり分散粒子径が増大するという共通した欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、カチオン性重合体を用いた分散安定性に優れるカチオン性の水性顔料分散液を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記実状に鑑みて鋭意検討したところ、カチオン性重合体を特定のポリマー物性を満たす様に構成することで、カチオン性を有する水性顔料分散液及び水性顔料記録液における前記課題を解決することが出来ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の水性顔料分散液は、芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体(A)と、顔料(B)と酸性物質 (C)と水性媒体(D)とを含む水性顔料分散液である。
【0009】
本発明の水性顔料分散液の調製に用いる顔料(B)は、有機顔料或いは無機顔料であり、公知慣用のものがいずれも挙げられる。共重合体(A)との相互作用がより強く水性媒体への分散性や貯蔵安定性をより高められる顔料(B)は、カーボンブラック又はフタロシアニン系顔料である。顔料(B)は、粉末状、顆粒状或いは塊状の乾燥顔料であっても良いし、ウエットケーキやスラリーであっても良い。
【0010】
本発明における共重合体(A)は、芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体とを主成分として重合せしめた共重合体を意味する。本発明ではアクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルとの両方を包含する用語として(メタ)アクリル酸エステルを用いる。また水性媒体(D)とは、水のみまたは水と水溶性有機溶剤との混合物で質量換算で60%以上の水を含んでいるものを言う。
【0011】
本発明の水性顔料分散液は、前記共重合体(A)、顔料(B)、酸性物質 (C)及び水性媒体(D)を含有したものであれば良いが、共重合体(A)は酸性物質 (C)を含む水性媒体(D)中において溶解状態であるよりも分散状態であるほうが好ましい。水性顔料分散液の酸性物質 (C)を含む水性媒体(D)に分散している粒子(分散粒子)は、顔料(B)粒子及び前記共重合体(A)粒子であっても良いが、顔料(B)が前記重合体(A)で被覆された粒子である、マイクロカプセル型複合粒子であっても良い。そして水性顔料分散液には、前記分散粒子が、平均粒子径が50〜200nmとなる様に分散している。
【0012】
本発明で用いられる共重合体(A)は、化学構造上、分子内に芳香族ビニルの重合単位と(メタ)アクリル酸エステルの重合単位と塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体の重合単位とを含有した共重合体である。
【0013】
共重合体(A)を製造する際に用いることが出来る、芳香族ビニルとしては、例えばスチレンや、α―メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−クロロスチレン等のベンゼン環に置換基を有するスチレンが挙げられる。
【0014】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等を挙げることができる。
【0015】
塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体としては、例えば2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、4−ブテニルピリジン等が挙げられる。
【0016】
共重合体(A)は、質量換算でそれを製造する際の全単量体100部当たり塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体が20〜40部とすることが好ましい。前記共重合体(A)としては、アミン価70〜100のものが好ましい。アミン価とは、樹脂1g中に含まれる遊離アミノ基を中和するのに必要な塩酸のmg数を言う。
【0017】
共重合体(A)は、質量換算でそれを製造する際の仕込み全単量体100部当たり塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体20〜40部かつ芳香族ビニル15〜50部とし、残部を(メタ)アクリル酸エステル及び必要に応じて併用されるその他の共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体とすると、顔料(B)と酸性物質 (C)を含む水性媒体(D)との両方への親和性のバランスに優れ、分散性や分散安定性にも優れたものとなる点で性能上好ましい。
【0018】
中でも(メタ)アクリル酸エステルとして、アクリル酸ブチルとメタクリル酸ブチルの質量割合を調整すると、共重合体(A)のガラス転移温度を容易に調製することが出来る。
【0019】
芳香族ビニルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体に基づく共重合体中の芳香環と複素環とは、いずれも高屈折率成分である。従ってこれを含む水性顔料分散液がインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に用い、かつ表面が平滑で光沢に優れる被記録媒体へ記録を行った場合には、記録画像の光沢がより優れたものとなる。また芳香環の存在に基づいてより耐候性に優れる記録画像が得られる。さらに芳香環は繊維素との親和性に優れ、被記録媒体の種類によりそこへ記録を行った場合には、被記録媒体深部への浸透が抑制される結果、より濃度が高い記録画像を得ることが出来ることもある。
【0020】
共重合体(A)を得る際に用いることの出来るその他のエチレン性不飽和単量体としては、例えば、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、等の不飽和脂肪酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和脂肪酸アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エーテル類;エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−オクテン、ビニルシクロヘキサン、4−ビニルシクロヘキセン、等の不飽和炭化水素類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、3−クロロプロピレン、等の不飽和ハロゲン化炭化水素類等を挙げることができる。
【0021】
水性顔料分散液を、インクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液の調製に用いる場合には、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を更に有する共重合体(A)とすることにより、前記水性顔料記録液中に通常湿潤剤として含まれる多価アルコールまたはそのエステルとの相乗効果により、水性顔料記録液とした際の分散安定性をより高めることが出来る。
【0022】
多価アルコールまたはそのエステルとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、これらのメチルエステル、同エチルエステルの様な多価アルコールのエスエル等が挙げられる。
【0023】
共重合体(A)は、ランダム重合による分岐のない直鎖の共重合体であることが、得られる水性顔料分散液がより低粘度となり、粘度や分散粒子の平均粒子径の経時変化を小さくすることが出来る点で好ましい。例えばブロック共重合体やグラフト共重合体の様な特殊な立体構造の共重合体は、その親水基部分により多くの水を抱き込む傾向があり、水性媒体中の共重合体の含有率が低い領域においても予想以上に高粘度となる。
【0024】
また共重合体(A)はガラス転移温度15〜90℃、重量平均分子量10,000〜50,000であることが好ましい。ガラス転移温度が前記した範囲であると、被記録媒体の表面がミクロな凹凸を有してしても、水性顔料分散液や水性顔料記録液による着色皮膜は平滑なものとなり定着性や耐擦過性がより良好になる。また重量平均分子量が前記した範囲であると、より低粘度の水性顔料分散液や水性顔料記録液が得られやすく、また吐出安定性により優れた水性顔料記録液とすることが出来る。
【0025】
かかる共重合体(A)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の従来より公知の種々の反応方法によって合成することができる。共重合体(A)は、有機溶剤または水性媒体中で通常重合開始剤を用いて、ブロック重合やグラフト重合が起こらない様に、前記単量体を重合させることで得ることが出来る。
【0026】
本発明の水性顔料分散液の製造方法は、例えば下記する様な1)〜4)の方法に基づき実施することが出来る。
1)前記共重合体(A)を含む水性エマルジョンに顔料(B)を機械的に強制分散する水性顔料分散液の製造方法。
2)顔料(B)と前記共重合体(A)と有機溶剤の混合物とを、酸性物質 (C)と水性媒体(D)とを用いて徐徐に油相から水相に転相させてから脱溶剤して、顔料(B)が前記共重合体(A)で被覆されたマイクロカプセル型複合粒子として分散させる水性顔料分散液の製造方法。
3)顔料(B)と前記共重合体(A)と酸性物質 (C)と有機溶剤と水性媒体(D)との均一混合物から脱溶剤して、前記均一混合物と塩基を加えて共重合体(A)を析出させその析出物を洗浄後、この析出物を均一混合物中に酸性物質 (C)と共に水性媒体(D)に分散させて、顔料(B)が前記共重合体(A)で被覆されたマイクロカプセル型複合粒子として分散させる水性顔料分散液の製造方法。
【0027】
本発明の水性顔料分散液の製造方法では、前記2)または3)の製造方法が最適である。
【0028】
この際の酸性物質 (C)としては、例えば、pKa=−8〜+3の無機酸や有機酸が使用出来る。この様な酸性物質 (C)としては、例えば塩酸、硫酸等の無機酸、クロロ酢酸、ニトロ酢酸等のカルボン酸が挙げられる。この酸性物質(C)は、共重合体(A)中の塩基性複素環をイオン化させ、水性顔料分散液の分散安定性を高めるものである。勿論、酸性物質 (C)は、水溶液として用いることも出来る。
【0029】
本発明では、前記いずれの製造方法をとるにせよ、顔料(B)、共重合体(A)、酸性物質 (C)および水からなる混合物を分散する工程を必須として含ませることが好ましい。この混合物には水溶性有機溶剤を含めるのが好ましい。より具体的には、少なくとも顔料(B)、共重合体(A)、酸性物質 (C)、水溶性有機溶剤および水からなる混合物を分散する工程(分散工程)を含ませることが好ましい。
【0030】
分散工程においては、水溶性有機溶剤を併用することができ、それにより分散工程における液粘度を低下させることができる場合がある。水溶性有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられ、とりわけ炭素原子数が3〜6のケトンおよび炭素原子数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。これらの水溶性有機溶剤は共重合体(A)の溶液として用いられても良く、別途独立に分散混合物中に加えられても良い。
【0031】
本発明の水性顔料分散液の製造方法においては、不揮発分の質量換算で、顔料(B)/共重合体(A)=100/10〜100/100とするのが好ましい。最適には、質量換算で顔料(B)100部当たり、共重合体(A)の不揮発分20〜65部かつ水性媒体(C)835〜880部となる様に、上記した原料を用いて製造することが出来る。
【0032】
分散工程において用いることのできる分散装置として、既に公知の種々の方式による装置が使用でき、特に限定されるものではないが、例えば、スチール、ステンレス、ジルコニア、アルミナ、窒化ケイ素、ガラス等でできた直径0.1〜10mm程度の球状分散媒体の運動エネルギーを利用する方式、機械的攪拌による剪断力を利用する方式、高速で供給された被分散物流束の圧力変化、流路変化あるいは衝突に伴って発生する力を利用する方式、等の分散方式を採ることができる。
【0033】
共重合体(A)を安定に分散させるために、残存するカチオン性基の一部又は全部を中和する量の酸性物質 (C)を、水性顔料分散液に含ませることが好ましい。本発明の水性顔料分散液としては、分散到達レベル、分散所要時間および分散安定性の全ての面で、より優れた特性を発揮させるに当たっては、顔料(B)が共重合体(A)で被覆された粒子(即ち前記したマイクロカプセル型複合粒子)という形態で水性媒体中に分散していることが好ましい。
【0034】
このような状態を形成するため、前記共重合体(A)を含有する液媒体中に顔料(B)を分散させ、この分散工程の後工程として、溶解状態にある共重合体(A)で顔料(B)表面を被覆する工程を組み込むことが好ましい。
【0035】
溶解状態にある共重合体(A)を顔料(B)表面に被覆させる工程としては、溶解している共重合体(A)を、溶液のpHを調整することにより顔料(B)表面で析出させる工程(析出工程)を設けることが好ましい。この工程により、顔料(B)と共重合体(A)との相互作用を高めることができる。
【0036】
蒸留工程の例には、分散工程において有機溶剤を使用した場合に、これを除去する工程、所望の固形分濃度にするため余剰の水を除去する工程等がある。
【0037】
本発明の製造方法においては、顔料(B)と共重合体(A)と酸性物質 (C)とをとを混合し分散させた後、塩基を加えて共重合体(A)を析出させ、次いで酸性物質 (C)を加えて水に再分散する工程を含ませ、顔料(B)が共重合体(A)で被覆された粒子として水性媒体中に分散した水性顔料分散液を製造するのが最も好ましい。
【0038】
この結果、前記した様なマイクロカプセル型複合粒子が水性分散媒中に分散している形態を取らせることができ、水性顔料分散液として、分散到達レベルや分散安定性等の物性面や耐溶剤性等の使用適性の面で、より優れた特性を発揮させることができる。
【0039】
濾過工程の例には、前述した析出工程後の固形分をフィルタープレス、ヌッチェ式濾過装置、加圧濾過装置等により濾過する工程等がある。再分散工程の例には、析出工程、濾過工程によって得られた固形分に酸性物質 (C)および必要により水や添加物を加えて再び分散液とする工程がある。
【0040】
こうして得られた本発明の水性顔料分散液は、例えば、水性インク、水性塗料等の各種着色用途において、分散液の安定性や貯蔵安定性に優れ、着色濃度が高く、耐擦過性等に優れた着色物を得ることが出来る。
【0041】
本発明の水性顔料分散液は、質量換算による分散粒子含有率1〜10%となる様に調製し水性顔料記録液とすることが出来る。この際には、上記したより濃厚な水性顔料分散液に対して必要に応じて水や水溶性有機溶剤等を加えて必要な分散粒子含有率となる様に希釈したり、湿潤剤、防かび剤、pH調節剤等の水性インクの調製に必要な各種添加剤を併用することが出来る。また得られた水性顔料記録液は、必要に応じてミクロフィルターにより濾過をすることにより、インクジェット記録用に適したノズル目詰まり等の極めて少ない水性顔料記録液とすることが出来る。
【0042】
また、吐出方式に応じた組成に適宜調製することにより、ピエゾ方式でもサーマル方式でもいずれの方式にも対応できるインクジェット記録用水性インクの様な水性顔料記録液を得ることが出来る。
【0043】
本発明の水性顔料記録液は、公知慣用の被記録媒体への記録に使用することが出来る。この様な被記録媒体としては、例えば普通紙、樹脂コート紙、混抄紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。中でも本発明の水性顔料記録液は、普通紙への記録に用いると、印字の様な記録を行った際に記録画像の着色濃度がより高くなることがあり、より鮮明な記録を行うことが出来る場合もある。
【0044】
【実施例】
以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも質量基準である。
【0045】
<合成例1>(共重合体の合成)
攪拌装置、滴下装置、温度センサー、および上部に窒素導入装置を有する環流装置を取り付けた反応容器を有する自動重合反応装置(重合試験機DSL−2AS型、轟産業(株)製)の反応容器に、メチルエチルケトン550部を加え、攪拌しながら反応容器内を窒素置換した。反応容器内を窒素雰囲気に保ちながら80℃に昇温させた後、滴下装置よりメタクリル酸n−ブチル150部、アクリル酸n−ブチル31部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、4−ビニルピリジン144部、スチレン100部、および「パーブチルO」(有効成分:ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製)50部の混合液を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに同温度で6時間ランダム重合反応を継続させて、ガラス転移温度(Tg)61℃、アミン価100、重量平均分子量20,000の共重合体溶液(A−1)を得た。この共重合体は、ランダム重合体であって分岐のない直鎖構造を有したものであった。反応終了後、不揮発分を50%に調製した。
【0046】
<合成例2>(共重合体の合成)
共単量体として、メタクリル酸n−ブチル203部、アクリル酸n−ブチル22部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、4−ビニルピリジン100部、スチレン100部を用いる以外は合成例1と同様にした。ガラス転移温度(Tg)53℃、アミン価70、重量平均分子量22,000の共重合体溶液(A−2)を得た。この共重合体は、ランダム重合体であって分岐のない直鎖構造を有したものであった。反応終了後、不揮発分を50%に調製した。
【0047】
<合成例3>(共重合体の合成)
共単量体として、メタクリル酸n−ブチル229部、アクリル酸n−ブチル95部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル75部、4−ビニルピリジン101部を用いる以外は合成例1と同様に合成した。ガラス転移温度(Tg)23℃、アミン価70、重量平均分子量21,000の共重合体溶液(A−3)を得た。この共重合体は、ランダム重合体であって分岐のない直鎖構造を有したものであった。反応終了後、不揮発分を50%に調製した。
【0048】
<調製例1> (共重合体水溶液の調製)
前記溶液(A−1)8.0部を、20%塩酸2.0部で中和し、イオン交換水を加えて不揮発分20%の共重合体水溶液(A−1’)を得た。
【0049】
<調製例2> (共重合体水溶液の調製)
前記溶液(A−2)8.0部を、20%塩酸1.4部で中和し、イオン交換水を加えて不揮発分20%の共重合体水溶液(A−2’)を得た。
【0050】
<調製例3> (共重合体水溶液の調製)
前記溶液(A−3)8.0部を、20%塩酸1.4部で中和し、イオン交換水を加えて不揮発分20%の共重合体水溶液(A−3’)を得た。
【0051】
<実施例1> (マイクロカプセル型粒子を含有する水性顔料分散液)
前記共重合体水溶液(A−1’)を20部、カーボンブラック#960(三菱化学(株)製)8.0部、水52部とジルコニアビーズ200部を投入し、ペイントシェーカーで2時間分散した。これにより得られた水性顔料分散液から、濾過によりジルコニアビーズを除去した後、蒸留工程にて含有するメチルエチルケトンを除去した。次の析出工程において、この水性顔料分散液に5%水酸化カリウム水溶液をpH9となるように加えて、前記(A−1’)に含まれる共重合体を顔料表面上に析出させて、これを濾過してウエットケーキとした。次の再中和工程で、カチオン性基アミン価相当量の5%水酸化カリウム水溶液と、顔料分を10%とするのに必要な量の水を添加して、分散攪拌機(TKホモディスパー20型、特殊機化工業(株)製)にて再分散し、顔料が芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体で被覆された粒子となって水性媒体中に分散した水性顔料分散液(B−1)を調製した。分散粒子の平均粒子径は、下記水性顔料記録液における測定値とほぼ同様であった。
【0052】
<実施例2> (マイクロカプセル型粒子を含有する水性顔料分散液)
前記共重合体水溶液(A−2’)を20部用いる以外は、実施例1と同様にして、水性顔料分散液(B−2)を調製した。
【0053】
<比較例1> (マイクロカプセル型粒子を含有する水性顔料分散液)
前記共重合体水溶液(A−3’)を20部用いる以外は、実施例1と同様にして、水性顔料分散液(B−3)を調製した。
【0054】
<調製例4>
実施例1〜2、比較例1で得られた記録液用水性顔料分散液(B−1〜B−3)を用い、特開平7−228808号公報記載の実施例1を参考にして、質量換算で顔料の含有率6%のインクジェット記録用水性顔料記録液(以下、記録液と称す)を調製した。記録液組成を以下に示す。
【0055】
水性顔料分散液 30部
トリエチレンク゛リコールモノフ゛チルエーテル 5部
シ゛エチレンク゛リコール 7.5部
サーフィノール465(エアフ゜ロタ゛クツ社製) 0.4部
水 7.1部
【0056】
このようにして調製した各記録液について、分散性および分散安定性はそれぞれ、調製直後および70℃の恒温槽中で3日間貯蔵後の分散粒子の平均粒子径で評価した。この平均粒子径はレーザードップラー式粒度分析計マイクロトラック(UPA150型、リーズ&ノースロップ社製)で測定したメディアン径とした。粘度はR型粘度計(R−500型、東機産業(株)製)を用い、貯蔵後の記録液について20℃で測定した。
【0057】
また、調製直後の記録液を用い、ピエゾ方式のインクジェットプリンタ(STYLUS C80セイコーエプソン(株)製)で普通紙(ハンマーミル社CopyPlus紙)にベタ印字したものを、GRETAGマクベス反射濃度計D196を用いてOD値を測定し、印字濃度(記録画像の着色濃度)で評価した。
【0058】
これらの結果を表1にまとめて示した。
【0059】
【表1】
表 1
【0060】
【表2】
表 2
【0061】
表2より、(芳香族ビニルの重合単位を含まない)(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体を含む比較例1の水性顔料記録液では、調製時(調製直後)における着色濃度が高き記録画像が得られるものの、経時的に高粘度となったり分散粒子径が増大するのに対し、芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体を含む実施例1および2の水性顔料記録液では、調製時(調製直後)における着色濃度が高き記録画像が得られるばかりでなく、経時的に高粘度となったり分散粒子径が増大することもないことがわかる。調製時より遙かに高温での長時間保存(貯蔵)後であっても、粘度値と分散粒子径が同等であることは驚くべきことである。
この実施例1および2で調製された水性顔料分散液は、記録液用として適した水性顔料分散液であることが明らかである。
【0062】
【発明の効果】
本発明の水性顔料分散液は、芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体を含むので、従来の水性顔料分散液である(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体を含む場合に対比して、水性顔料記録液を調製した際に、経時的な粘度変化や分散粒子径変化を小さくすることが出来るという格別顕著な効果を奏する。
Claims (6)
- 芳香族ビニルと(メタ)アクリル酸エステルと塩基性複素環構造を有するモノエチレン性不飽和単量体との共重合体と、顔料と酸性物質 と水性媒体とを含む水性顔料分散液。
- 前記顔料が、カーボンブラック又はフタロシアニン系顔料である請求項1記載の水性顔料分散液。
- 前記共重合体が、ランダム重合による分岐のない直鎖の共重合体である請求項1または2記載の水性顔料分散液。
- 前記顔料と前記共重合体とが、顔料が前記共重合体で被覆された粒子として含有されている請求項1、2または3のいずれかに記載の水性顔料分散液。
- 請求項1、2、3または4のいずれかに記載の水性顔料分散液を質量換算で分散粒子の濃度1〜10%となる様に希釈した水性顔料記録液。
- 前記共重合体が、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルの重合単位を更に含む共重合体である請求項1記載の水性顔料分散液と、湿潤剤として多価アルコールまたはそのエステルとを用いて質量換算で分散粒子の濃度1〜10%となる様に希釈した水性顔料記録液。
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