JP2004078054A - プラスチック光学材料用単量体組成物、フォトクロミック光学材料及びレンズ - Google Patents
プラスチック光学材料用単量体組成物、フォトクロミック光学材料及びレンズ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】硬化物の光応答性が速い上に、低比重、耐熱性、耐衝撃性等の諸物性にも優れるフォトクロミック光学材料、さらに高屈折率のフォトクロミック光学材料を得るための単量体組成物、その硬化物であるフォトクロミック光学材料及びそのレンズを提供する。
【解決手段】分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトクロミック光学材料用単量体組成物、フォトクロミック光学材料及びレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光学材料の分野では軽量性、安全性、ファッション性等が益々重視されるようになり、従来の無機ガラスから合成樹脂へと材料が移行してきている。その代表的なものとして、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(以下、PADCと略記する。)、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記する。)、ポリカーボネート(以下、PCと略記する。)等がよく知られている。
【0003】
これら合成樹脂に対して、最近、太陽光や紫外線によって着色し暗所で退色するフォトクロミック性を持たせたフォトクロミックレンズが使用されるようになってきた。一般的にこのようなフォトクロミックレンズを製造する方法には、(1)光学用樹脂にフォトクロミック化合物を練り込んで成型する方法(例えば、特開昭61−161286号公報)、(2)フォトクロミック化合物を溶解又は分散させた溶液に光学用樹脂を含浸させて、フォトクロミック化合物を樹脂表面に分散あるいはコーティングする方法(例えば、米国特許第3216958号明細書、特開昭61−228402号公報)、および(3)フォトクロミック化合物をメチルメタクリレートに溶解した後、これを硬化させる方法(特開昭61−233079号公報、特開平1−259013号公報、特開平7−2938号公報)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フォトクロミック化合物を光学用樹脂に練り込む方法は樹脂を200℃以上の高温で溶融するためフォトクロミック化合物の劣化や分散について欠点があり、成型物での光応答性が低いことが問題であった。
フォトクロミック化合物を光学樹脂の表面に分散する方法やあるいはコーティングする方法は使用できる樹脂が限定されたり、レンズの製造工程が多くかかることやフォトクロミック化合物の含浸量の制御が難しいなどが問題であった。
【0005】
特開昭61−233079号公報はフォトクロミック化合物であるスピロオキサジン化合物をメチルメタクリレートに溶解させて硬化させる方法を開示している。この方法では、単量体の性質や硬化剤であるラジカル重合開始剤によりフォトクロミック化合物が劣化する問題、製造されたフォトクロミック光学材料の光応答性の低さや屈折率が1.49程度と低いなどの欠点もあった。このため、これらを改良する方法として特開平1−259013号公報、特開平7−2938号公報には重合性アリルカーボネートを使用する方法が開示されているが、この方法でもフォトクロミック化合物が劣化してしまう問題を克服できず、フォトクロミック光学材料の発色と退色の光応答速度が十分でないことが問題であった。
さらに、特開昭62−267316号公報に開示されるようにポリイソシアネートとポリチオールからなるチオウレタン樹脂では屈折率が高いものが得られるが、フォトクロミック化合物をチオウレタン樹脂組成物単量体に溶解し、これを硬化するとフォトクロミック化合物がイソシアネートと反応してしまうためフォトクロミック性を発現することができないことが問題であった。
【0006】
以上のように前述の方法により得られる各種フォトクロミック光学材料では十分なフォトクロミック化合物の性能が発揮されないことが多い。
本発明の目的は、前述の技術の欠点を改善して、硬化物の光応答性が速い上に、低比重、耐熱性、耐衝撃性等の諸物性にも優れるフォトクロミック光学材料、さらに高屈折率のフォトクロミック光学材料を得るための単量体組成物、その硬化物であるフォトクロミック光学材料及びそのレンズを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明を以下に示す。
(1)分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
(2)分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、チオウレタン樹脂単量体成分、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0008】
(3)単量体組成物が、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体70〜99.9重量%、及びビニル基を有するアミド化合物0.1〜30重量%からなる単量体組成物である前記(1)のプラスチック光学材料用単量体組成物。
(4)単量体組成物が、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体25〜79.5重量%、チオウレタン樹脂単量体成分20〜70重量%、及びビニル基を有するアミド化合物0.5〜5重量%からなる単量体組成物である前記(2)のプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0009】
(5)ビニル基を有するアミド化合物が、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド、1−ビニル−2−ピロリジノン、1−ビニルイミダゾール、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、3−メタクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドの1種又は2種以上である前記(1)〜(4)のいずれかのプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0010】
(6)分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体が、下記式(1)で示されるものを含んでなる前記(1)〜(5)のいずれかのプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、Phはフェニレン基を示し、j、nは同一又は異なる1〜30の整数を示し、k、p、mは0又は1を示す。)
【0013】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかの単量体組成物にラジカル重合開始剤を添加後、硬化させて得ることのできるフォトクロミック光学材料。
(8)前記(7)のフォトクロミック光学材料からなるフォトクロミックレンズ。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体とは、1分子中にメタクリル基又はアクリル基を1個以上有する化合物である。具体的には、1分子中にメタクリル基又はアクリル基を1個有する重合体単量体として、メチル(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート及び/又はメチルアクリレートを意味する。以下、同様に表記する。)、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロイルモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の単量体が挙げられる。
【0015】
さらに、1分子中にメタクリル基又はアクリル基を2個有する重合性単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、2、2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)トリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)テトラエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)ポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシカルボニルオキシ]フェニル}プロパン;1分子中にメタクリル基又はアクリル基を3個以上有する重合性単量体として、各種ウレタン系ポリ(メタ)アクリレート、各種ウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
本発明において、硬化後のフォトクロミック光学材料においてより速い光応答性をもたせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等の光学材料に要求される諸特性を付与するためには、単量体組成物が式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。式(1)において、k、p、mは0又は1を示す。j、nは同一又は異なる整数で1〜10の整数を示し、より好ましくは3〜8である。10を超えると硬化時の樹脂の耐熱性、耐久性、硬度が著しく低下する傾向にある。
【0017】
式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートの具体的な例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)トリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)テトラエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)ポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシカルボニルオキシ]フェニル}プロパン等の芳香族環を有するジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
より光学材料の屈折率、耐熱性、硬度等の諸特性を向上させる目的には芳香族環を有するジ(メタ)アクリレートの使用が好ましい。
【0018】
本発明において、さらに、耐熱性、硬度を調整するために(メタ)アクリル基を3個以上有する単量体を用いることもできる。
これらのアクリル基又はメタクリル基を有する単量体は1種又は2種以上の混合物で使用することができる。
【0019】
アクリル基又はメタクリル基を有する単量体の単量体組成物中の割合は、通常は、70〜99.9重量%、好ましくは80〜99重量%の範囲で用いられる。70重量%未満では硬化後のフォトクロミック光学材料においてより速い光応答性をもたせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等の光学材料に要求される諸特性を付与することが難しくなる。
【0020】
さらに、この場合、より速い光応答性を持たせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等に優れたフォトクロミック光学材料を得るためには、式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートを単量体組成物中70〜99重量%含むことが好ましい。
【0021】
後述するチオウレタン樹脂単量体成分を含む場合は、アクリル基又はメタクリル基を有する単量体の単量体組成物中の割合は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲である。20重量%未満では、屈折率の向上が不十分であり、70重量%を超えると硬化後のフォトクロミック光学材料において要求される光応答性が得られない。
【0022】
さらに、この場合、より速い光応答性を持たせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等に優れたフォトクロミック光学材料を得るためには、式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートを単量体組成物中に40〜70重量%含むことが好ましい。
【0023】
本発明の単量体組成物は、フォトクロミック光学材料の屈折率を高めるために、チオウレタン樹脂単量体成分を含むことができる。チオウレタン樹脂単量体成分とは、チオウレタン樹脂の構成単量体であり、例えば、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、イソシアネートエチルメタクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物とエタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、3,3’−ジチオジプロピオン酸、エチレングリコールジチオグリコレート、2,2’−チオジエタンチオール、2,2’−オキシエタンチオール、ジメルカプトトリエチレンジスルフィド、1,2−ジチオグリセリン、1,3−ジチオグリセリン、1,4−ベンゼンジチオール、1,2−ビス(メルカプトメチレン)ベンゼン、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)等のポリチオールが、それぞれ組み合わされ使用される。チオウレタン樹脂単量体成分の単量体組成物中の割合は、通常は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲である。
【0024】
本発明は、ビニル基を有するアミド化合物を単量体組成物に含有することにより、ラジカル重合開始剤によるフォトクロミック化合物の劣化を防ぎ、フォトクロミック化合物とイソシアネートとの反応を防止し、さらに、硬化後のフォトクロミック光学材料により速い光応答性をもたせることができる。
【0025】
ビニル基を有するアミド化合物としては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド、1−ビニル−2−ピロリジノン、1−ビニルイミダゾール、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、3−メタクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0026】
なかでも、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドが好ましい。前述のアミド化合物は1種又は2種以上の混合物で使用することができる。前述のアミド化合物の単量体組成物中の割合は、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲である。0.1重量%未満では前述のアミド化合物による上記の効果が不十分となり、30重量%を超えると硬化が不良となる。
また、チオウレタン樹脂単量体成分を含む場合は、前述のアミド化合物は単量体組成物中1〜5重量%の含まれることが好ましい。
【0027】
本発明のフォトクロミック化合物は、紫外線や可視光線により光透過性が変化し、光源を断つと光透過性が元に戻る特性を有する化合物である。フォトクロミック化合物としては、具体的には例えば二チオン酸水銀、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロ−インドリン化合物、フルギド化合物、フルギミド化合物、アダマンチリデン化合物、シクロファン化合物、クロメン化合物等の1種又は2種以上の混合系が挙げられる。フォトクロミック化合物の添加量は、単量体組成物100重量部に対して0.001〜10重量部で、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。0.001重量部未満では光学材料のフォトクロミック性が不十分となり、10重量%を超えると光学材料の硬化不良や光線透過率が著しく低下してしまう。
【0028】
本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物中には、他の単量体を含ませることができる。他の単量体としては、例えば、スチレン、ハロゲン核置換スチレン、メチル核置換スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等のビニル系単量体が挙げられる。これらの1種又は2種以上の単量体をフォトクロミック光学材料の屈折率、染色性を調整するために適宜選択し使用することもできる。
【0029】
本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物に、さらに紫外線吸収剤を添加すると、硬化後に光学材料にUVカット性能を付与し、材料の劣化や目への影響を少なくすることができる。紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸フェニル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物等が挙げられる。
【0030】
具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’ −メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリブチルフェニル)5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリアミルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ターシャリブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ −5’ −ターシャリオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾールが挙げられる。
これらの化合物の1種又は2種以上の混合系でもよい。
【0031】
紫外線吸収剤の添加量は、単量体組成物100重量部に対して、通常は、0.001〜5重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部である。この割合が0.001重量部未満では硬化したレンズにUVカット性能を付与する効果が十分に得られず、5重量部を超えると紫外線吸収剤自体の着色により光学材料を黄変する傾向にある。
【0032】
本発明のフォトクロミック光学材料は、単量体組成物にラジカル重合開始剤を添加し、次に加熱硬化法又は活性エネルギー線硬化法により硬化させて得ることができる。
【0033】
前述のラジカル重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルジカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
ラジカル重合開始剤の添加量は、単量体組成物100部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。0.01重量部未満では硬化が不十分であり、10重量部を超えると硬化物に歪みが入り易くなる。
【0035】
また、本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物中には、前述の各成分以外にも酸化防止剤、光安定剤、着色剤、離型剤、界面活性剤、抗菌剤等の添加剤を通常使用する範囲で用いることができる。
さらに、フォトクロミック化合物の劣化防止あるいは単量体組成物の安定化の目的で、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類を添加することもできる。
【0036】
本発明のフォトクロミックレンズは、例えば、フォトクロミック光学材料用単量体組成物中にフォトクロミック化合物、ラジカル重合開始剤を添加後、所望のレンズ形状の金属製、ガラス製、プラスチック製等の注型に注入し、硬化後脱型することによって得られる。得られるレンズは、透明で、溶媒に不溶の架橋樹脂である。
【0037】
硬化の条件としては、重合温度30〜100℃の範囲で、好ましくは該温度範囲で昇温を行い、重合時間が5〜72時間、好ましくは10〜36時間である。脱型後、窒素又は空気雰囲気下、80〜120℃の温度で1〜5時間アニーリング処理することが望ましい。
また他の方法としては、硬化物から直接所望のレンズ形状に切削加工して得ることもできる。
本発明のレンズは、通常、前述の方法により得たものをそのまま用いることができるが、必要に応じて表面硬度を向上させるためのハードコート処理、ファッション性を付与するための分散染料による着色処理を行うこともできる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を参考例および実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
実施例1〜9
表1に示される単量体、アミド化合物を配合し、単量体組成物(20g)を得た。次に、各種フォトクロミック化合物0.02g、t−ブチルペルオキシネオデカノエートを0.4gを添加した。
これを、直径7cmの2枚のガラス製円板と厚さ2mmのエチレン−プロピレンラバー製ガスケットからなる注型に注入した。その後、プログラム温度コントローラー付熱風恒温槽中で、30℃から100℃まで18時間かけて昇温し、次に100℃で2時間保持した後、40℃まで2時間かけて冷却した。硬化後、脱型した円盤状の樹脂板をさらに2時間、100℃でアニーリング処理を行った。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表1に示した。
【0040】
実施例10〜17
表2に示される単量体、アミド化合物を配合し、単量体組成物(20g)を得た。次に、各種フォトクロミック化合物(0.02g)、アミン化合物(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、0.001g)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート(0.4g)を添加し、他は実施例1〜9と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表2に示した。
【0041】
比較例1
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(20g)に、フォトクロミック化合物P2(0.02g)、ジイソプロピルペルオキシカーボネート(0.6g)を添加し、他は実施例1〜9と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0042】
比較例2
表1に示した実施例1において、アミド化合物を除いた以外は実施例1と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表3に示した。。
【0043】
比較例3
XDI(8.7g)、PETT(11.3g)からなる単量体組成物(20g)に、フォトクロミック化合物P2(0.02g)、ジブチルチンジラウレート(200ppm)を添加した。実施例1〜9と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0044】
比較例4
表1に示した実施例5において、アミド化合物を除いた以外は、実施例5と同様にして樹脂板を製造し、物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0045】
比較例5
表2に示した実施例13において、アミド化合物を除いた以外は実施例13と同様にして樹脂板を製造し、物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0046】
比較例6−1〜6−5
比較例1〜5において、フォトクロミック化合物を添加しないで樹脂板を製造した。製造した樹脂板(2mm板)を、フォトクロミック化合物P2の20重量%メタノール溶液に80℃で1時間浸漬した。その後、樹脂板を水洗、乾燥させてから、実施例1〜9と同様の条件で物性試験を行った。結果を表3に示した。
【0047】
なお、表中の略号は次の通りである。
(単量体)
MA;メチルアクリレート、
MMA;メチルメタクリレート、
BA;n−ブチルアクリレート、
BMA;n−ブチルメタクリレート、
A4EG;メトキシテトラエチレングリコールモノアクリレート、
MA4EG;メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート、
A9EG;メトキシノナエチレングリコールモノアクリレート、
MA9EG;メトキシノナエチレングリコールモノメタクリレート、
DA−4EG;テトラエチレングリコールジアクリレート、
DM−4EG;テトラエチレングリコールジメタクリレート、
DA9EG;ノナエチレングリコールジアクリレート、
DM9EG;ノナエチレングリコールジメタクリレート、
BzMA;ベンジルメタクリレート、
BPE−2EA;2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、
BPE−2E;2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、
BPE−4EA;2,2−ビス[4−(2−アクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、
BPE−4E;2,2−ビス[4−(2−メタクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、
BPE−6EA;2,2−ビス[4−(2−アクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、
BPE−6E;2,2−ビス[4−(2−メタクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、
HE−BP;2,2−ビス[4−(2−メタクリロキシエトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパン、
ADC:ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、
【0048】
(チオウレタン樹脂単量体成分)
TMI;3−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネ−ト、
XDI;m−キシリレンジイソシアネート、
ETT;2,2’−チオジエタンチオール、
PETT;ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)。
【0049】
(アミド化合物)
IPAA;N−イソプロピルアクリルアミド、
DMAPAA;N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、
DMAPMA;N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、
【0050】
(フォトクロミック化合物)
P1(スピロピラン化合物);1’,3’−ジヒドロ−5’−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、
P2(スピロオキサジン化合物);1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−スピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]フェナントロ[9,10−b][1,4]]オキサジン、
P3(フルギド化合物);3−アダマンタン−2−イリデン−4−[1−(2,5−ジメチル−チオフェン−3−イル)−2−メチル−プロピリデン]−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン、
P4(クロメン化合物);4−[3−フェニル−3−(4−ピペリジン−1−イル−フェニル)−3H−ベンゾ[f]クロメン−6−イル]モルホリン。
【0051】
また、下記の各試験方法により樹脂板を性能評価した。
(1)光線透過率及びフォトクロミック性能
透過率光度計(日本電色工業(株)製)を用い、JIS K 7105に従い、樹脂板の光線透過率を測定した。さらに、試験板をUV照射(SOLAX XC−500ESS、セリック(株)製)した後、発色までの時間(R1)、その時の光線透過率(T1)および消光までの時間(R2)、その時の光線透過率(T2)によりフォトクロミック性能を評価した。
(2)屈折率及びアッベ数
アッベ屈折計(アタゴ社製)を用い25℃で、樹脂板から1cm×1.5cmの試験片を切り出して、これを測定した。
(3)比重
JIS K 7112に従い、25℃で水中置換法により比重(g/cm3)測定した。
【0052】
(4)耐衝撃性
重量16gのスチール製ボールを127cmの高さから樹脂板上に自然落下させて、破損のないものを○とし、破損のあるものを×とした。
(5)耐熱性
樹脂板から1cm×4cmの板を切り出し、東洋ボールドウィン社製レオバイブロンにより動的粘弾性を測定し、そのtanδの最大を示す温度をガラス転移温度(Tg)として耐熱性の指標とした。
【0053】
【表1】
【0054】
表中( )内は、単量体組成物中の重量%を示す。但し、フォトクロミック化合物の場合は、単量体組成物100重量部に対するフォトクロミック化合物の重量部を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表中( )内は、単量体組成物中の重量%を示す。但し、フォトクロミック化合物の場合は、単量体組成物100重量部に対するフォトクロミック化合物の重量部を示す。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例により得られた樹脂板(表1、2)は、光学材料、レンズに要求される基本特性を有しているのみならず、比較例の樹脂板(表3)と比較してフォトクロミック化合物の光応答速度、色安定性に優れた物性が得られることがわかる。
【0059】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物を用いると、硬化後のフォトクロミック光学材料に速い光応答性をもたせることができる。硬化により、低比重、耐熱性、耐衝撃性、さらに高屈折等の諸物性にも優れるフォトクロミック光学材料、そのレンズを得ることができる
【発明の属する技術分野】
本発明は、フォトクロミック光学材料用単量体組成物、フォトクロミック光学材料及びレンズに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光学材料の分野では軽量性、安全性、ファッション性等が益々重視されるようになり、従来の無機ガラスから合成樹脂へと材料が移行してきている。その代表的なものとして、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート(以下、PADCと略記する。)、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAと略記する。)、ポリカーボネート(以下、PCと略記する。)等がよく知られている。
【0003】
これら合成樹脂に対して、最近、太陽光や紫外線によって着色し暗所で退色するフォトクロミック性を持たせたフォトクロミックレンズが使用されるようになってきた。一般的にこのようなフォトクロミックレンズを製造する方法には、(1)光学用樹脂にフォトクロミック化合物を練り込んで成型する方法(例えば、特開昭61−161286号公報)、(2)フォトクロミック化合物を溶解又は分散させた溶液に光学用樹脂を含浸させて、フォトクロミック化合物を樹脂表面に分散あるいはコーティングする方法(例えば、米国特許第3216958号明細書、特開昭61−228402号公報)、および(3)フォトクロミック化合物をメチルメタクリレートに溶解した後、これを硬化させる方法(特開昭61−233079号公報、特開平1−259013号公報、特開平7−2938号公報)が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
フォトクロミック化合物を光学用樹脂に練り込む方法は樹脂を200℃以上の高温で溶融するためフォトクロミック化合物の劣化や分散について欠点があり、成型物での光応答性が低いことが問題であった。
フォトクロミック化合物を光学樹脂の表面に分散する方法やあるいはコーティングする方法は使用できる樹脂が限定されたり、レンズの製造工程が多くかかることやフォトクロミック化合物の含浸量の制御が難しいなどが問題であった。
【0005】
特開昭61−233079号公報はフォトクロミック化合物であるスピロオキサジン化合物をメチルメタクリレートに溶解させて硬化させる方法を開示している。この方法では、単量体の性質や硬化剤であるラジカル重合開始剤によりフォトクロミック化合物が劣化する問題、製造されたフォトクロミック光学材料の光応答性の低さや屈折率が1.49程度と低いなどの欠点もあった。このため、これらを改良する方法として特開平1−259013号公報、特開平7−2938号公報には重合性アリルカーボネートを使用する方法が開示されているが、この方法でもフォトクロミック化合物が劣化してしまう問題を克服できず、フォトクロミック光学材料の発色と退色の光応答速度が十分でないことが問題であった。
さらに、特開昭62−267316号公報に開示されるようにポリイソシアネートとポリチオールからなるチオウレタン樹脂では屈折率が高いものが得られるが、フォトクロミック化合物をチオウレタン樹脂組成物単量体に溶解し、これを硬化するとフォトクロミック化合物がイソシアネートと反応してしまうためフォトクロミック性を発現することができないことが問題であった。
【0006】
以上のように前述の方法により得られる各種フォトクロミック光学材料では十分なフォトクロミック化合物の性能が発揮されないことが多い。
本発明の目的は、前述の技術の欠点を改善して、硬化物の光応答性が速い上に、低比重、耐熱性、耐衝撃性等の諸物性にも優れるフォトクロミック光学材料、さらに高屈折率のフォトクロミック光学材料を得るための単量体組成物、その硬化物であるフォトクロミック光学材料及びそのレンズを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明を以下に示す。
(1)分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
(2)分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、チオウレタン樹脂単量体成分、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0008】
(3)単量体組成物が、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体70〜99.9重量%、及びビニル基を有するアミド化合物0.1〜30重量%からなる単量体組成物である前記(1)のプラスチック光学材料用単量体組成物。
(4)単量体組成物が、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体25〜79.5重量%、チオウレタン樹脂単量体成分20〜70重量%、及びビニル基を有するアミド化合物0.5〜5重量%からなる単量体組成物である前記(2)のプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0009】
(5)ビニル基を有するアミド化合物が、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド、1−ビニル−2−ピロリジノン、1−ビニルイミダゾール、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、3−メタクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドの1種又は2種以上である前記(1)〜(4)のいずれかのプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0010】
(6)分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体が、下記式(1)で示されるものを含んでなる前記(1)〜(5)のいずれかのプラスチック光学材料用単量体組成物。
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、Phはフェニレン基を示し、j、nは同一又は異なる1〜30の整数を示し、k、p、mは0又は1を示す。)
【0013】
(7)前記(1)〜(6)のいずれかの単量体組成物にラジカル重合開始剤を添加後、硬化させて得ることのできるフォトクロミック光学材料。
(8)前記(7)のフォトクロミック光学材料からなるフォトクロミックレンズ。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体とは、1分子中にメタクリル基又はアクリル基を1個以上有する化合物である。具体的には、1分子中にメタクリル基又はアクリル基を1個有する重合体単量体として、メチル(メタ)アクリレート(メチルメタクリレート及び/又はメチルアクリレートを意味する。以下、同様に表記する。)、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロイルモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシノナエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート等の単量体が挙げられる。
【0015】
さらに、1分子中にメタクリル基又はアクリル基を2個有する重合性単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、2、2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)トリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)テトラエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)ポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシカルボニルオキシ]フェニル}プロパン;1分子中にメタクリル基又はアクリル基を3個以上有する重合性単量体として、各種ウレタン系ポリ(メタ)アクリレート、各種ウレタンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0016】
本発明において、硬化後のフォトクロミック光学材料においてより速い光応答性をもたせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等の光学材料に要求される諸特性を付与するためには、単量体組成物が式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。式(1)において、k、p、mは0又は1を示す。j、nは同一又は異なる整数で1〜10の整数を示し、より好ましくは3〜8である。10を超えると硬化時の樹脂の耐熱性、耐久性、硬度が著しく低下する傾向にある。
【0017】
式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートの具体的な例としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ノナエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)トリエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)テトラエトキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)ポリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロキシエトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス{4−[(2−(メタ)アクリロキシエトキシ)エトキシカルボニルオキシ]フェニル}プロパン等の芳香族環を有するジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
より光学材料の屈折率、耐熱性、硬度等の諸特性を向上させる目的には芳香族環を有するジ(メタ)アクリレートの使用が好ましい。
【0018】
本発明において、さらに、耐熱性、硬度を調整するために(メタ)アクリル基を3個以上有する単量体を用いることもできる。
これらのアクリル基又はメタクリル基を有する単量体は1種又は2種以上の混合物で使用することができる。
【0019】
アクリル基又はメタクリル基を有する単量体の単量体組成物中の割合は、通常は、70〜99.9重量%、好ましくは80〜99重量%の範囲で用いられる。70重量%未満では硬化後のフォトクロミック光学材料においてより速い光応答性をもたせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等の光学材料に要求される諸特性を付与することが難しくなる。
【0020】
さらに、この場合、より速い光応答性を持たせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等に優れたフォトクロミック光学材料を得るためには、式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートを単量体組成物中70〜99重量%含むことが好ましい。
【0021】
後述するチオウレタン樹脂単量体成分を含む場合は、アクリル基又はメタクリル基を有する単量体の単量体組成物中の割合は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲である。20重量%未満では、屈折率の向上が不十分であり、70重量%を超えると硬化後のフォトクロミック光学材料において要求される光応答性が得られない。
【0022】
さらに、この場合、より速い光応答性を持たせるとともに耐熱性、耐衝撃性、耐久性や硬度等に優れたフォトクロミック光学材料を得るためには、式(1)に示されるジ(メタ)アクリレートを単量体組成物中に40〜70重量%含むことが好ましい。
【0023】
本発明の単量体組成物は、フォトクロミック光学材料の屈折率を高めるために、チオウレタン樹脂単量体成分を含むことができる。チオウレタン樹脂単量体成分とは、チオウレタン樹脂の構成単量体であり、例えば、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、イソシアネートエチルメタクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート化合物とエタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、3,3’−ジチオジプロピオン酸、エチレングリコールジチオグリコレート、2,2’−チオジエタンチオール、2,2’−オキシエタンチオール、ジメルカプトトリエチレンジスルフィド、1,2−ジチオグリセリン、1,3−ジチオグリセリン、1,4−ベンゼンジチオール、1,2−ビス(メルカプトメチレン)ベンゼン、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトプロピオネート)等のポリチオールが、それぞれ組み合わされ使用される。チオウレタン樹脂単量体成分の単量体組成物中の割合は、通常は、20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%の範囲である。
【0024】
本発明は、ビニル基を有するアミド化合物を単量体組成物に含有することにより、ラジカル重合開始剤によるフォトクロミック化合物の劣化を防ぎ、フォトクロミック化合物とイソシアネートとの反応を防止し、さらに、硬化後のフォトクロミック光学材料により速い光応答性をもたせることができる。
【0025】
ビニル基を有するアミド化合物としては、具体的には、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド、1−ビニル−2−ピロリジノン、1−ビニルイミダゾール、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、3−メタクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0026】
なかでも、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドが好ましい。前述のアミド化合物は1種又は2種以上の混合物で使用することができる。前述のアミド化合物の単量体組成物中の割合は、通常0.1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%の範囲である。0.1重量%未満では前述のアミド化合物による上記の効果が不十分となり、30重量%を超えると硬化が不良となる。
また、チオウレタン樹脂単量体成分を含む場合は、前述のアミド化合物は単量体組成物中1〜5重量%の含まれることが好ましい。
【0027】
本発明のフォトクロミック化合物は、紫外線や可視光線により光透過性が変化し、光源を断つと光透過性が元に戻る特性を有する化合物である。フォトクロミック化合物としては、具体的には例えば二チオン酸水銀、スピロピラン化合物、スピロオキサジン化合物、スピロ−インドリン化合物、フルギド化合物、フルギミド化合物、アダマンチリデン化合物、シクロファン化合物、クロメン化合物等の1種又は2種以上の混合系が挙げられる。フォトクロミック化合物の添加量は、単量体組成物100重量部に対して0.001〜10重量部で、好ましくは0.01〜1重量部の範囲である。0.001重量部未満では光学材料のフォトクロミック性が不十分となり、10重量%を超えると光学材料の硬化不良や光線透過率が著しく低下してしまう。
【0028】
本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物中には、他の単量体を含ませることができる。他の単量体としては、例えば、スチレン、ハロゲン核置換スチレン、メチル核置換スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等のビニル系単量体が挙げられる。これらの1種又は2種以上の単量体をフォトクロミック光学材料の屈折率、染色性を調整するために適宜選択し使用することもできる。
【0029】
本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物に、さらに紫外線吸収剤を添加すると、硬化後に光学材料にUVカット性能を付与し、材料の劣化や目への影響を少なくすることができる。紫外線吸収剤としては、例えばサリチル酸フェニル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物等が挙げられる。
【0030】
具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’ −メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリブチルフェニル)5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−ターシャリブチル−5’−メチルフェニル)5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリアミルフェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジターシャリブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−ターシャリブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ −5’ −ターシャリオクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾールが挙げられる。
これらの化合物の1種又は2種以上の混合系でもよい。
【0031】
紫外線吸収剤の添加量は、単量体組成物100重量部に対して、通常は、0.001〜5重量部であり、好ましくは0.01〜1重量部である。この割合が0.001重量部未満では硬化したレンズにUVカット性能を付与する効果が十分に得られず、5重量部を超えると紫外線吸収剤自体の着色により光学材料を黄変する傾向にある。
【0032】
本発明のフォトクロミック光学材料は、単量体組成物にラジカル重合開始剤を添加し、次に加熱硬化法又は活性エネルギー線硬化法により硬化させて得ることができる。
【0033】
前述のラジカル重合開始剤として、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジイソプロピルジカーボネート、t−ブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、t−ブチルペルオキシジイソブチレート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
ラジカル重合開始剤の添加量は、単量体組成物100部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の範囲である。0.01重量部未満では硬化が不十分であり、10重量部を超えると硬化物に歪みが入り易くなる。
【0035】
また、本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物中には、前述の各成分以外にも酸化防止剤、光安定剤、着色剤、離型剤、界面活性剤、抗菌剤等の添加剤を通常使用する範囲で用いることができる。
さらに、フォトクロミック化合物の劣化防止あるいは単量体組成物の安定化の目的で、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類を添加することもできる。
【0036】
本発明のフォトクロミックレンズは、例えば、フォトクロミック光学材料用単量体組成物中にフォトクロミック化合物、ラジカル重合開始剤を添加後、所望のレンズ形状の金属製、ガラス製、プラスチック製等の注型に注入し、硬化後脱型することによって得られる。得られるレンズは、透明で、溶媒に不溶の架橋樹脂である。
【0037】
硬化の条件としては、重合温度30〜100℃の範囲で、好ましくは該温度範囲で昇温を行い、重合時間が5〜72時間、好ましくは10〜36時間である。脱型後、窒素又は空気雰囲気下、80〜120℃の温度で1〜5時間アニーリング処理することが望ましい。
また他の方法としては、硬化物から直接所望のレンズ形状に切削加工して得ることもできる。
本発明のレンズは、通常、前述の方法により得たものをそのまま用いることができるが、必要に応じて表面硬度を向上させるためのハードコート処理、ファッション性を付与するための分散染料による着色処理を行うこともできる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を参考例および実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
実施例1〜9
表1に示される単量体、アミド化合物を配合し、単量体組成物(20g)を得た。次に、各種フォトクロミック化合物0.02g、t−ブチルペルオキシネオデカノエートを0.4gを添加した。
これを、直径7cmの2枚のガラス製円板と厚さ2mmのエチレン−プロピレンラバー製ガスケットからなる注型に注入した。その後、プログラム温度コントローラー付熱風恒温槽中で、30℃から100℃まで18時間かけて昇温し、次に100℃で2時間保持した後、40℃まで2時間かけて冷却した。硬化後、脱型した円盤状の樹脂板をさらに2時間、100℃でアニーリング処理を行った。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表1に示した。
【0040】
実施例10〜17
表2に示される単量体、アミド化合物を配合し、単量体組成物(20g)を得た。次に、各種フォトクロミック化合物(0.02g)、アミン化合物(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、0.001g)、t−ブチルペルオキシネオデカノエート(0.4g)を添加し、他は実施例1〜9と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表2に示した。
【0041】
比較例1
ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(20g)に、フォトクロミック化合物P2(0.02g)、ジイソプロピルペルオキシカーボネート(0.6g)を添加し、他は実施例1〜9と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0042】
比較例2
表1に示した実施例1において、アミド化合物を除いた以外は実施例1と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表3に示した。。
【0043】
比較例3
XDI(8.7g)、PETT(11.3g)からなる単量体組成物(20g)に、フォトクロミック化合物P2(0.02g)、ジブチルチンジラウレート(200ppm)を添加した。実施例1〜9と同様の条件で樹脂板を製造した。次に、製造した樹脂板の物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0044】
比較例4
表1に示した実施例5において、アミド化合物を除いた以外は、実施例5と同様にして樹脂板を製造し、物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0045】
比較例5
表2に示した実施例13において、アミド化合物を除いた以外は実施例13と同様にして樹脂板を製造し、物性評価を行った。結果を表3に示した。
【0046】
比較例6−1〜6−5
比較例1〜5において、フォトクロミック化合物を添加しないで樹脂板を製造した。製造した樹脂板(2mm板)を、フォトクロミック化合物P2の20重量%メタノール溶液に80℃で1時間浸漬した。その後、樹脂板を水洗、乾燥させてから、実施例1〜9と同様の条件で物性試験を行った。結果を表3に示した。
【0047】
なお、表中の略号は次の通りである。
(単量体)
MA;メチルアクリレート、
MMA;メチルメタクリレート、
BA;n−ブチルアクリレート、
BMA;n−ブチルメタクリレート、
A4EG;メトキシテトラエチレングリコールモノアクリレート、
MA4EG;メトキシテトラエチレングリコールモノメタクリレート、
A9EG;メトキシノナエチレングリコールモノアクリレート、
MA9EG;メトキシノナエチレングリコールモノメタクリレート、
DA−4EG;テトラエチレングリコールジアクリレート、
DM−4EG;テトラエチレングリコールジメタクリレート、
DA9EG;ノナエチレングリコールジアクリレート、
DM9EG;ノナエチレングリコールジメタクリレート、
BzMA;ベンジルメタクリレート、
BPE−2EA;2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、
BPE−2E;2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、
BPE−4EA;2,2−ビス[4−(2−アクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、
BPE−4E;2,2−ビス[4−(2−メタクリロキシエトキシ)エトキシフェニル]プロパン、
BPE−6EA;2,2−ビス[4−(2−アクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、
BPE−6E;2,2−ビス[4−(2−メタクリロキシエトキシ)ジエトキシフェニル]プロパン、
HE−BP;2,2−ビス[4−(2−メタクリロキシエトキシカルボニルオキシ)フェニル]プロパン、
ADC:ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、
【0048】
(チオウレタン樹脂単量体成分)
TMI;3−イソプロペニル−α、α−ジメチルベンジルイソシアネ−ト、
XDI;m−キシリレンジイソシアネート、
ETT;2,2’−チオジエタンチオール、
PETT;ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)。
【0049】
(アミド化合物)
IPAA;N−イソプロピルアクリルアミド、
DMAPAA;N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、
DMAPMA;N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、
【0050】
(フォトクロミック化合物)
P1(スピロピラン化合物);1’,3’−ジヒドロ−5’−メトキシ−1’,3’,3’−トリメチル−6−ニトロスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−(2H)−インドール]、
P2(スピロオキサジン化合物);1,3−ジヒドロ−1,3,3−トリメチル−スピロ[2H−インドール−2,3’−[3H]フェナントロ[9,10−b][1,4]]オキサジン、
P3(フルギド化合物);3−アダマンタン−2−イリデン−4−[1−(2,5−ジメチル−チオフェン−3−イル)−2−メチル−プロピリデン]−ジヒドロ−フラン−2,5−ジオン、
P4(クロメン化合物);4−[3−フェニル−3−(4−ピペリジン−1−イル−フェニル)−3H−ベンゾ[f]クロメン−6−イル]モルホリン。
【0051】
また、下記の各試験方法により樹脂板を性能評価した。
(1)光線透過率及びフォトクロミック性能
透過率光度計(日本電色工業(株)製)を用い、JIS K 7105に従い、樹脂板の光線透過率を測定した。さらに、試験板をUV照射(SOLAX XC−500ESS、セリック(株)製)した後、発色までの時間(R1)、その時の光線透過率(T1)および消光までの時間(R2)、その時の光線透過率(T2)によりフォトクロミック性能を評価した。
(2)屈折率及びアッベ数
アッベ屈折計(アタゴ社製)を用い25℃で、樹脂板から1cm×1.5cmの試験片を切り出して、これを測定した。
(3)比重
JIS K 7112に従い、25℃で水中置換法により比重(g/cm3)測定した。
【0052】
(4)耐衝撃性
重量16gのスチール製ボールを127cmの高さから樹脂板上に自然落下させて、破損のないものを○とし、破損のあるものを×とした。
(5)耐熱性
樹脂板から1cm×4cmの板を切り出し、東洋ボールドウィン社製レオバイブロンにより動的粘弾性を測定し、そのtanδの最大を示す温度をガラス転移温度(Tg)として耐熱性の指標とした。
【0053】
【表1】
【0054】
表中( )内は、単量体組成物中の重量%を示す。但し、フォトクロミック化合物の場合は、単量体組成物100重量部に対するフォトクロミック化合物の重量部を示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表中( )内は、単量体組成物中の重量%を示す。但し、フォトクロミック化合物の場合は、単量体組成物100重量部に対するフォトクロミック化合物の重量部を示す。
【0057】
【表3】
【0058】
実施例により得られた樹脂板(表1、2)は、光学材料、レンズに要求される基本特性を有しているのみならず、比較例の樹脂板(表3)と比較してフォトクロミック化合物の光応答速度、色安定性に優れた物性が得られることがわかる。
【0059】
【発明の効果】
本発明のフォトクロミック光学材料用単量体組成物を用いると、硬化後のフォトクロミック光学材料に速い光応答性をもたせることができる。硬化により、低比重、耐熱性、耐衝撃性、さらに高屈折等の諸物性にも優れるフォトクロミック光学材料、そのレンズを得ることができる
Claims (8)
- 分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
- 分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体、チオウレタン樹脂単量体成分、及びビニル基を有するアミド化合物からなる単量体組成物とフォトクロミック化合物とを含有するプラスチック光学材料用単量体組成物であって、単量体組成物100重量部に対してフォトクロミック化合物0.001〜10重量部を含有するプラスチック光学材料用単量体組成物。
- 単量体組成物が、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体70〜99.9重量%、及びビニル基を有するアミド化合物0.1〜30重量%からなる単量体組成物である請求項1に記載のプラスチック光学材料用単量体組成物。
- 単量体組成物が、分子内にメタクリル基又はアクリル基を有する重合性単量体25〜79.5重量%、チオウレタン樹脂単量体成分20〜70重量%、及びビニル基を有するアミド化合物0.5〜5重量%からなる単量体組成物である請求項2記載のプラスチック光学材料用単量体組成物。
- ビニル基を有するアミド化合物が、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニルフタルイミド、1−ビニル−2−ピロリジノン、1−ビニルイミダゾール、N−イソプロピルアクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、3−メタクリルアミド−N,N−ジメチルプロピルアミン、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミドの1種又は2種以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプラスチック光学材料用単量体組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の単量体組成物にラジカル重合開始剤を添加後、硬化させて得ることのできるフォトクロミック光学材料。
- 請求項7に記載のフォトクロミック光学材料からなるフォトクロミックレンズ。
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-
2002
- 2002-08-22 JP JP2002241373A patent/JP2004078054A/ja active Pending
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