JP2004075911A - 脱臭アブラナ科植物色素の製造方法 - Google Patents

脱臭アブラナ科植物色素の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アブラナ科植物に由来する悪臭もしくは異臭の原因成分が除去されて、臭いがないか若しくは有意に低減されてなる、脱臭アブラナ科植物色素の製造方法を提供する。
【解決手段】アブラナ科植物を原料とした色素の製造工程において、酸性プロテアーゼ処理を実施する。好ましくは、酸性プロテアーゼ処理と、加熱処理及び吸着処理のいずれか少なくとも1つの処理を実施する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無臭若しくは臭いが有意に低減された脱臭アブラナ科植物色素の製造方法に関する。更に本発明は、長期保存または光や熱の影響によって生じ得る経時的な臭いの発現が有意に抑制されてなる、無臭若しくは臭いが有意に低減された脱臭アブラナ科植物色素の製造方法に関する。また本発明は、上記製造方法によって得られるアブラナ科植物色素を含有する色素製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
アントシアニン系色素に代表される、赤ダイコンや赤キャベツ等のアブラナ科植物に由来する色素は、耐熱性及び耐光性に優れ、また色調及び発色がよいため、従来より主に飲料などの食品の着色に広く使用されている。しかしながら、これらのアブラナ科植物色素は、原料として用いるアブラナ科植物に起因して特有の野菜臭あるいは漬物臭といった臭いを有するという問題がある。また、従来のアブラナ科植物色素製剤は、加熱や長期保存によって香気が発現して徐々に臭いが強くなる、所謂「匂い戻り現象」が発生するという問題も指摘されている。こうした色素の臭いは、特に食品や化粧品等の製品の風味、味または香りに悪影響を及ぼす場合がある。
【0003】
このため、従来からこれらの臭いの原因となる夾雑物を除去して、臭いがないか若しくは臭いが感じられないほどに脱臭されてなるアブラナ科植物色素の開発が盛んに行われている。
【0004】
例えば、赤キャベツ色素抽出酸性液を陽イオン交換樹脂または吸着樹脂を用いて精製し、次いで限外濾過膜で処理する方法(特開昭59−223756号公報)、赤キャベツ色素抽出酸性液(水またはアルコール溶液)に対して陽イオン交換処理、限外濾過膜処理及びシリカゲル吸着処理を行う方法(特開昭61−36364号公報)、または赤キャベツ色素抽出酸性液(水またはアルコール溶液)に重合リン酸塩、チタン酸塩、あるいはタンニン及び/又はタンニン酸を添加し、該色素中の夾雑物を除去する方法(特開昭61−97361号、特開昭61−101560号、特開昭61−97362号公報)、赤キャベツ色素、赤ダイコン色素または赤カブ色素の抽出液を陰イオン交換樹脂処理する方法(特開平4−154871号、特開平7−157679号公報)、赤キャベツ色素、赤ダイコン色素または赤カブ色素の酸性抽出液を樹脂に吸着させて亜臨界/超臨界状態の二酸化炭素と接触処理する方法(特開平10−36701号公報)等が提案されている。しかしながら、このような処理によって製造されるアブラナ科植物色素を含む色素製剤は、未処理の色素製剤に比べて確かに臭いは低減されているものの、「匂い戻り」の問題を含めて、未だ満足できる色素製剤といえないのが実情である。
【0005】
上記方法を改善する方法として、特開2000−290525号公報には、赤キャベツ色素、赤ダイコン色素または赤カブ色素の酸性抽出液を、酵母類、カビ類、細菌の任意の微生物で処理する方法が開示されており、かかる方法によれば異味、異臭またはその原因物質等の夾雑物が除去できることが記載されている。しかしながら、かかる方法は、微生物や微生物の代謝産物が色素中に残存する可能性を否定できず、食品衛生上問題が残る。
【0006】
なお、色素の脱臭に酵素を使用することに関しては、カロチノイド色素の製造に際してリパーゼ処理を行う方法が知られている(特開昭58−173163号公報)。しかし、カロチノイド色素の悪臭の原因は、色素原料であるオレオレジンに含まれる不飽和脂肪酸の酸化であり、上記方法は、オレオレジンに含まれる不飽和脂肪酸をリパーゼ処理して、エステル置換反応によって飽和脂肪酸に置換しようとするものであって、カロチノイド色素特有の脱臭方法を開示するに留まる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は食品、医薬品、医薬部外品または香粧品などの各種製品の風味や香味に対して長期にわたって影響を与えることなく、これらの製品に安心して配合使用できる脱臭アブラナ科植物色素製剤を提供することを目的とするものである。
【0008】
具体的には、本発明は第1に、アブラナ科植物に由来する臭いを有しないか若しくは当該臭いが有意に低減されてなる脱臭アブラナ科植物色素の製造方法を提供することを目的とする。第2に本発明は、加熱や長期保存によっても所謂「匂い戻り現象」といった経時変化のない安定性に優れた脱臭アブラナ科植物色素の製造方法を提供することを目的とする。第3に本発明は、上記の製造方法によって取得される無臭若しくは微臭であって匂い戻り現象が有意に抑制された脱臭アブラナ科植物色素を含有する色素製剤を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、アブラナ科植物色素製剤に関する従来の問題点を解決すべく、日夜鋭意検討していたところ、本発明の製造方法によればアブラナ科植物に含まれる悪臭や異臭の原因となる成分を有意に除去することができ、無臭若しくは臭いが有意に低減されてなる脱臭アブラナ科植物色素が調製できることを見出した。さらにこのようにして得られた脱臭アブラナ科植物色素は、加熱や長期保存によっても「匂い戻り現象」を生じないことを見出した。そして、これらの知見から当該製造方法によって調製される脱臭アブラナ科植物色素を原料とすることによって、無臭若しくは臭いが有意に抑制され、しかも匂い戻りがなく経時的安定性に優れた脱臭アブラナ科植物色素製剤が調製できることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて、完成したものである。
【0010】
すなわち、本発明は下記項1〜7に掲げる脱臭アブラナ科植物色素の製造方法である:
項1. アブラナ科植物を原料とした色素の製造工程に、酸性プロテアーゼ処理工程を有することを特徴とする、脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
項2. 酸性プロテアーゼ処理工程と、加熱処理及び吸着処理のいずれか少なくとも1つの処理工程を有する項1に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。項3. 加熱処理、吸着処理、及び酸性プロテアーゼ処理の3つの処理工程を有する項1または2に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
項4. 上記項1乃至3のいずれかに記載の各処理工程を、アブラナ科植物色素抽出液に吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理をして得られる処理液に対して行うこと特徴とする、項1乃至3のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
項5. アブラナ科植物色素抽出液の処理液を、加熱処理、吸着処理及び酸性プロテアーゼ処理に供することを特徴とする、項4に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
項6. 加熱処理をpH1〜3の酸性条件下で行うことを特徴とする項2乃至5のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
項7. 吸着処理をpH1〜3の酸性条件下で行うことを特徴とする項2乃至6のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
【0011】
なお、これらの脱臭アブラナ科植物色素の製造方法は、いずれもアブラナ科植物色素の脱臭方法と言い換えることができる。
【0012】
さらに本発明は、下記に掲げる脱臭アブラナ科植物色素製剤である:
項8. 項1乃至7のいずれかに記載の製造方法によって得られる脱臭アブラナ科植物色素を含有する色素製剤。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明は、原料として用いるアブラナ科植物に由来する臭いを有しないか、若しくは当該臭いが有意に低減されてなる、無臭若しくは微臭のアブラナ科植物色素(脱臭アブラナ科植物色素)の製造方法である。なお、本発明の製造方法は、アブラナ科植物の色素抽出液に含まれる異臭もしくは悪臭の原因成分を除去若しくは低減するために有用なアブラナ科植物色素の精製方法、またはアブラナ科植物色素の脱臭方法と言い換えることができる。
【0014】
本発明において、アブラナ科植物色素とはアブラナ科(Family Brassicaceae)に属する植物を原料として得られる色素を広く意味するものである。好ましくはアブラナ科植物に由来するアントシアニン系色素であり、該アントシアニン系色素を含有する赤系色素及び赤紫色系色素も当該色素に包含される。
【0015】
ここでアブラナ科植物としては、特に限定はされないが、赤キャベツ(甘藍、Brassica oleracea L. var. capitata DC)、ブロッコリー(Brassica oleraceaL. var. itarica Plen.)、カリフラワー(Brassica oleracea L. var. otrytisgr.)、メキャベツ(Brassica oleracea L. var. gemmifera Zenher)、コールラビー(Brassica oleracea L. var. caulorapa DC)、ケール(Brassica oleracea L. var. acephala gr.)、葉ボタン(Brassica oleracea L. var. acephala DC)、赤カブ(Brassica rape )、クロガラシ(Brassica nigra )、及び高菜(Brassica juncea )等のアブラナ科アブラナ属に属する植物;赤ダイコン(Raphanus sativusL.)、二十日ダイコン(Raphanus sativus var. radicula)、西洋ダイコン(Raphanus sativus var. major)、クロダイコン(Raphanus sativus var. niger)などのアブラナ科ダイコン属に属する植物;などを例示することができる。好ましくは、赤ダイコン、二十日ダイコン、西洋ダイコン、クロダイコンなどのアブラナ科ダイコン属に属する植物であり、より好ましくは赤ダイコンである。
【0016】
本発明は、アブラナ科植物を原料とした色素の製造工程において、酸性プロテアーゼ処理を施すことにより実施することができる。具体的には、当該方法は、アブラナ科植物の色素抽出液またはその処理液に対して、酸性プロテアーゼ処理を行うことにより実施することができる。
【0017】
アブラナ科植物の色素抽出液は、前述する各種アブラナ科植物の植物体を適当な溶媒で抽出することによって調製することができる。抽出に用いられる植物部位は、目的とする色素、特にアントシアニン系色素が含まれる部位であればよく、全草またはその一部(例えば根、茎、葉、果実(種子)、花弁、花蕾等)の別を特に問うものではない。なお、上記植物体にはアブラナ科植物のカルスも包含される。当該植物の全草又はその一部はそのまま(生)若しくはその破砕物(粗末、細切物等)として抽出操作に付してもよいし、また乾燥後、必要に応じて破砕物(粉体物等)として抽出操作に付してもよい。
【0018】
上記抽出に用いられる溶媒としては、特に制限されないが、好適にはアルコール、水またはこれらの混合液を用いることができる。なお、アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールを例示することができる。好ましくは水または含水アルコールである。なお、含水アルコールはアルコール含有量が40容量%以下のものが好ましい。
【0019】
また、抽出に使用する溶媒として酸性溶液、具体的にはpH1〜5、好ましくはpH1〜4、より好ましくはpH1〜3の範囲に調整された酸性溶液を使用することもできる。
【0020】
かかる酸性溶液は、抽出溶媒に塩酸、硫酸、硝酸若しくはリン酸等の無機酸、またはクエン酸、酢酸、ギ酸、リンゴ酸若しくは乳酸等の有機酸を配合することによって調製することができる。なお、抽出溶媒に配合する無機酸または有機酸の量は、上記pH範囲を有することを限度として、特に制限されないが、0.01〜10重量%の範囲で適宜調整されることが好ましい。
【0021】
抽出方法としては、一般に用いられる方法を任意に採用することができる。制限はされないが、例えば溶媒中にアブラナ科植物の全草若しくは部分(そのまま若しくは粗末、細切物)、又はそれらの乾燥物(乾燥細断物(粉末などの粉砕物)を含む)を冷浸、温浸等によって浸漬する方法、加温し攪拌しながら抽出を行い、濾過して抽出液を得る方法、またはパーコレーション法等を挙げることができる。
【0022】
好適な抽出方法は、酸性条件下での抽出である。かかる酸性条件下での抽出は、アブラナ科植物の全草若しくは部分(そのまま若しくは粗末、細切物)又はそれらの乾燥物(乾燥細断物(粉末などの粉砕物)を含む)を前述の酸性抽出溶媒を用いて上記各種の抽出処理を行うことによって実施できる。なお、この場合、100℃以下、好ましくは10〜40℃の条件下で、酸性抽出処理を行うこともできる。
【0023】
得られた抽出液は、必要に応じて濾過、共沈または遠心分離によって固液分離して固形物を除去した後、そのまま若しくは濃縮して、下記の処理工程に供される。尚、ここで固液分離は濾過助剤を用いて行ってもよいし、また遠心分離して回収された上清を濾過助剤を用いて再度濾過処理してもよい。なお、濾過助剤としては、珪藻土やセルロース、白土などの慣用の助剤を制限なく使用することができる。
【0024】
酸性プロテアーゼ処理は、具体的には酸性条件下、通常pH1〜5、好ましくはpH1〜4、より好ましくはpH2〜3の下で、上記アブラナ科植物色素抽出液またはその処理液にプロテアーゼを作用させることによって行うことができる。ここで使用されるプロテアーゼは、酸性条件下で作用するものであればよく、その由来は特に制限されない。かかる酸性プロテアーゼとして、Aspergillus nigerAspergillus saitoiRhizopus niveusRhizopus delemarPenicillium dupontiなどに由来する酸性プロテアーゼが商業的に入手できるため(食品総合研究所のホームページ参照)、簡便にはこれらを任意に使用することもできる。
【0025】
処理温度や処理時間は、使用するプロテアーゼの種類に応じて適宜選択することができる。処理温度としては通常35〜70℃、好ましくは40〜60℃、より好ましくは40〜50℃を挙げることができる。処理時間は制限されず、通常5分〜24時間の範囲から適宜選択調整することができる。
【0026】
上記酸性プロテアーゼ処理は、前述するアブラナ科植物色素抽出液に直接行ってもよいし、また上記アブラナ科植物色素抽出液に対して吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理よりなる群から選択される1種または2種以上の処理を順不同に1回もしくは2回以上行って得られた処理液に対して行うこともできる。
【0027】
ここで吸着処理は、常法に従って行うことができ、例えば活性炭、シリカゲルまたは多孔質セラミックなどによる吸着処理;スチレン系のデュオライトS874(商標Duolite、U.S.A.ローム・アンド・ハース社製、以下同じ)又はデュオライトS876;芳香族系のセパビーズSP70(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、セパビーズSP700、セパビーズSP825、セパビーズSP207;ダイヤイオンHP10(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21;あるいはアンバーライトXAD4(商標、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトXAD7HP、アンバーライトXAD2000などの合成吸着樹脂を用いた吸着処理を挙げることができる。
【0028】
吸着処理は、バッチ式及びカラム式のいずれ方法でも行うことができる。吸着条件は、アブラナ科植物色素が上記吸着樹脂に吸着する条件であれば特に制限されないが、通常pH1〜4、好ましくはpH1〜3の酸性条件下で、アブラナ科植物色素を含有する水溶液画分(アブラナ科植物色素抽出液またはその処理液)を通液接触させることが望ましい。アブラナ科植物色素の脱離回収は、上記樹脂を水で洗浄後、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコールあるいはアセトンなどの親水性有機溶媒またはこれら親水性有機溶媒と水との混合液を溶出液として通液することによって行うことができる。好ましくはエタノールまたはエタノールと水との混合液である。後者の場合、40容量%以上のエタノール含有水溶液を用いることが好ましい。なお、かかる溶出液もまた、色素の安定化を図る目的で酸性、特にpH1〜4,好ましくはpH1〜3に調整したものを使用することが好ましい。上記吸着させるアブラナ科植物色素を含有する水溶液画分または溶出液の酸性調整には、塩酸、硫酸、硝酸若しくはリン酸等の無機酸、またはクエン酸、酢酸、ギ酸、リンゴ酸若しくは乳酸等の有機酸を使用することができる。無機酸では硫酸を、有機酸ではクエン酸を好適に使用することができる。
【0029】
イオン交換処理は、特に制限されず慣用のイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂または陰イオン交換樹脂)を用いて常法に従って行うことができる。例えば陽イオン交換樹脂としては、制限されないがダイヤイオンSK1B(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオンSK104、ダイヤイオンSK116、ダイヤイオンPK208、ダイヤイオンWK10;アンバーライトIR120B Na(商標、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトIRC50、アンバーライトIRC76;デュオライトC20(商標Duolite、U.S.A.ローム・アンド・ハース社製、以下同じ)、デュオライトC476などが、また陰イオン交換樹脂としては、制限されないがダイヤイオンSA10A(商標、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイヤイオンSA12A、ダイヤイオンSA20A、ダイヤイオンPA308、ダイヤイオンWA10、ダイヤイオンWA20; アンバーライトIRA400JCl(商標、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトIRA900J Cl、アンバーライトIRA67;デュオライトA113(商標Duolite、U.S.A.ローム・アンド・ハース社製、以下同じ)、デュオライトA375LFなどが例示される。
【0030】
好ましくは陽イオン交換樹脂を用いた陽イオン交換処理である。また、かかるイオン交換処理は、色素の安定性の観点から、その処理を妨げないことを限度として、吸着処理と同様に、酸性条件下(通常pH1〜4、好ましくはpH1〜3)で行うことができる。
【0031】
加熱処理は、アブラナ科植物色素を含有する溶液(アブラナ科植物色素抽出液またはその処理液)を40〜100℃の範囲で加熱することによって行うことができる。好ましくは60〜100℃、より好ましくは70〜90℃での加熱である。加熱処理時間は、特に制限されず、通常1〜600分の範囲から適宜選択することができる。一般に高温であればより短い処理時間で十分であり、低温であればより長い時間が必要になる。なお、当該加熱処理もまた、色素の安定性の観点から、酸性条件下(通常pH1〜4、好ましくはpH1〜3)で行うことが好ましい。
【0032】
膜分離法とは、膜による濾過方法を広く意味するものであり、例えばメンブレンフィルター(MF)膜、限外濾過(UF)膜、逆浸透膜(NF)および電気透析膜などの機能性高分子膜を用いた濾過処理を挙げることができる。また膜分離法としてはこれらの膜を利用した限外濾過法や逆浸透膜法などのほか、イオン選別膜による濃度勾配を利用した透析法、隔膜としてイオン交換膜を使用し電圧を印加する電気透析法などが知られている。工業的には逆浸透膜法による膜分離法が好ましい。かかる膜分離法に用いられる膜材料としては、天然、合成、半合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジアセテート若しくはトリアセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
【0033】
本発明で用いる膜分離法には、分画分子量が例えば10〜10の範囲にある膜を用いて高分子化合物を分離除去する処理方法と、分画分子量が約2,000〜4,000程度、好ましくは3,000程度の膜を用いて低分子化合物を分離除去する処理方法が含まれる。前者の方法として具体的にはNTU−3150膜、NTU−3250膜、NTU−3550膜、NTU−3800 UF膜(以上、日東電工(株)製);Cefilt−UF(日本ガイシ(株)製);AHP−2013膜、 AHP−3013膜、AHP−1010膜(以上、旭化成(株)製);等を利用した限外濾過(UF)膜処理を挙げることができ、また後者の方法として具体的にはNTR−7250膜、NTR−7410膜、NTR−7430膜、NTR−7450膜(以上、日東電工(株)製);AIP−3013膜、ACP−3013膜、ACP−2013膜、AIP−2013膜、AIO−1010膜(以上、旭化成(株)製)などの膜を利用した逆浸透膜(分画分子量3,000程度)処理を挙げることができる。
【0034】
これらの各種処理(吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理)は、1種単独で行っても、また2種以上を任意に組み合わせて行ってもよく、また同一処理を、同一もしくは異なる条件で、繰り返し実施してもよい。
【0035】
本発明の製造方法において、好ましい方法は、上記酸性プロテア−ゼ処理工程を、加熱処理及び吸着処理のいずれか少なくとも1つの処理工程と組み合わせて行う方法である。より好ましくは酸性プロテア−ゼ処理工程を、加熱処理工程及び吸着処理工程と組み合わせて行う方法である。これらの処理工程の順序は特に制限されないが、加熱処理、吸着処理及び酸性プロテアーゼ処理の順序で行う方法が好適である。なお、かかる3つの処理は、連続して行ってもよいし、また各処理の途中で他の処理工程を行うこともできる。
【0036】
こうした一連の処理は、前述するアブラナ科植物色素抽出液に対して直接行ってもよいし、またアブラナ科植物色素抽出液の処理液に対して行うこともできる。なお、ここで処理液として、アブラナ科植物色素抽出液に対して任意の精製処理、具体的には前述した吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、または膜分離処理のいずれか少なくとも1つの処理を行って得られた処理液を好適に例示することができる。好ましくはアブラナ科植物色素抽出液に対して予め吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、または膜分離処理のいずれか少なくとも1つの処理を施した処理液に対して、更に加熱処理、吸着処理及び酸性プロテアーゼ処理を行う方法である。
【0037】
なお、本発明の製造方法は、全処理工程を通じて酸性条件下、具体的にはpH1〜5、好ましくはpH1〜4、より好ましくはpH2〜3の条件下で行われることが好ましい。また、加熱処理及び酸性プロテアーゼ処理を除いて、通常、室温の温度条件下で行うことができる。
【0038】
かくして得られる本発明の脱臭アブラナ科植物色素は、異臭あるいは悪臭の原因となる、アブラナ科植物由来成分が効果的に除去されてなるものであって、これによって無臭か若しくは食品やその他各種の製品に配合してもその風味に殆ど影響しない程度に臭いが低減されてなる脱臭アブラナ科植物色素を提供することができる。また、上記製造方法によって得られる本発明の脱臭アブラナ科植物色素は、加熱や長期保存によっても所謂「匂い戻り現象」といった経時変化を生じないものである。これは、理由に拘束はされないが、上記本発明の製造方法によって、異臭や悪臭を発現し得る成分の前駆体が分解されたかまたは除去されるためと考えられる。
【0039】
斯くして調製される本発明の脱臭アブラナ科植物色素は、水、エタノール、プロピレングリコールなどのアルコール、その他の溶媒に溶解若しくは分散(乳化)した溶液状態、若しくは乾燥状態(粉末状、顆粒状、錠剤状、丸剤状など)の色素製剤として調製することができる。好ましくは、溶液の形態である。
【0040】
従って、本発明は上記の製造方法によって調製される脱臭アブラナ科植物色素を含有する色素製剤を提供するものである。
【0041】
当該色素製剤は、上記本発明の方法により取得される脱臭アブラナ科植物色素だけからなるものであってもよいし、また上記アブラナ科植物色素に加えて、食品衛生上許容される担体や各種の添加剤が配合されていてもよい。
【0042】
かかる担体として具体的には、上記の溶媒の他、例えばデキストリン、乳糖、粉末水飴、アラビアガムを例示することができる。また添加剤として具体的には、色素・色素製剤に通常用いられる保存剤(酢酸ナトリウム、プロタミンなど)、安定剤(燐酸ナトリウム、メタ燐酸ナトリウムなど)、酸化防止剤(ルチン、アスコルビン酸など)またはpH調整剤(クエン酸、リンゴ酸など)などの食品添加物を挙げることができる。
【0043】
本発明の脱臭アブラナ科植物色素製剤が各種担体や添加剤などを含有する場合、該色素製剤中に含まれる上記脱臭アブラナ科植物色素の割合は、特に制限されないが、通常1〜90重量%、好ましくは10〜60重量%を例示することができる。
【0044】
本発明の色素製剤は、食品、医薬品、医薬部外品、香粧品及び飼料などの赤色系または赤紫色系の着色料として、特に天然に由来する着色料として有用である。
【0045】
本発明の色素製剤は、食品の着色に好適に使用することができる。対象とする食品としては、制限はされないが、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;乳飲料、乳酸菌飲料、清涼飲料(果汁入りを含む)、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、スポーツ飲料、粉末飲料等の飲料類;リキュールなどのアルコール飲料;コーヒー飲料、紅茶飲料等の茶飲料類;コンソメスープ、ポタージュスープ等のスープ類;カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、朝鮮漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;チーズ等の酪農製品類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。
【0046】
また医薬品においては、一例として各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬などの着色料として、医薬部外品においては、一例として歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤などの着色料として、香粧品においては、一例としてスキンローション、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品などの着色料として、飼料においては、一例としてキャットフードやドッグフードなどの各種ペットフード、観賞魚用若しくは養殖魚の餌などに使用することができる。また、石鹸やシャンプーなどの日用品の着色にも使用することができる。
【0047】
またこれらの製品に配合できる本発明のアブラナ科植物色素製剤の割合は、製品の種類や目的によって異なり、一概に規定できないが、製品100重量%中、通常0.01〜10重量%の範囲から適宜選択調整することができる。
【0048】
なお本発明には、下記の態様が包含される:
(1)アブラナ科植物を原料とした色素の製造工程に、酸性プロテアーゼ処理工程を有することを特徴とする、脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
(2)酸性プロテアーゼ処理をアブラナ科植物色素抽出液またはその処理液に対して行う、(1)に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
(3)酸性プロテアーゼ処理を、アブラナ科植物色素抽出液に吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理をして得られる処理液に対して行う、(1)または(2)に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
(4)酸性プロテアーゼ処理を、加熱処理及び吸着処理のいずれか少なくとも1つの処理と組み合わせて行う、(1)乃至(3)のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
(5)酸性プロテアーゼ処理を加熱処理及び吸着処理後に行う、(4)に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
(6)加熱処理、吸着処理及び酸性プロテアーゼ処理の一連の処理を、アブラナ科植物色素抽出液またはそれに吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理をして得られる処理液に対して行う脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
(7)酸性プロテアーゼ処理をpH1〜4の条件下で行う(1)乃至(6)のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
(8)全処理工程をpH1〜5の酸性条件下で行う(1)乃至(7)のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
【0049】
(9)  (1)乃至(8)のいずれかに記載の製造方法によって得られる脱臭アブラナ科植物色素を含有する色素製剤。
(10)脱臭アブラナ科植物色素および食品衛生上若しくは薬学的に許容される担体または添加剤を含有する(9)に記載の色素製剤。
(11)食品、医薬品、医薬部外品、香粧品または飼料の着色料である(9)または(10)に記載の色素製剤。
【0050】
(12)アブラナ科植物を原料とした色素の製造工程において、アブラナ科植物色素抽出液またはその処理液を酸性プロテアーゼ処理することを特徴とする、アブラナ科植物色素の脱臭方法。
(13)アブラナ科植物色素抽出液の処理液が、アブラナ科植物色素抽出液に吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理をして得られる処理液である(12)に記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
(14)酸性プロテアーゼ処理を、加熱処理及び吸着処理のいずれか少なくとも1つの処理と組み合わせて行う、(12)または(13)に記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
(15)酸性プロテアーゼ処理を加熱処理及び吸着処理後に行う、(12)乃至(14)のいずれかに記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
(16)加熱処理、吸着処理及び酸性プロテアーゼ処理の一連の処理を、アブラナ科植物色素抽出液またはそれに吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理をして得られる処理液に対して行う(12)乃至(15)のいずれかに記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
(17)酸性プロテアーゼ処理をpH1〜4の条件下で行う(12)乃至(16)のいずれかに記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
(18)全処理工程をpH1〜5の酸性条件下で行う(12)乃至(17)のいずれかに記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
(19)加熱処理をpH1〜3の酸性条件下で行うことを特徴とする(12)乃至(18)のいずれかに記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
(20)吸着処理をpH1〜3の酸性条件下で行うことを特徴とする(12)乃至(18)のいずれかに記載のアブラナ科植物色素の脱臭方法。
【0051】
【実施例】
以下、本発明の内容を以下の実施例及び実験例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
実施例1 脱臭赤ダイコン色素、及びその色素製剤の調製
硫酸によりpH2.8に調整した酸性水20Lに赤ダイコン(アブラナ科植物)の生根茎の破砕物10kgを浸漬し、室温下に一晩放置して、色素を抽出した。得られた抽出液に濾過助剤(珪藻土)を配合して吸引濾過し、濾液約25Lを赤ダイコン色素抽出液として回収した。この抽出液を合成吸着樹脂アンバーライトXAD7HP(樹脂量3L、SV=1.5、オルガノ(株)製)に供して色素成分を吸着させ、次いで水約5Lでよく洗浄した後、0.3重量%のクエン酸を含む約60容量%のエタノール水溶液5Lを溶離液として、樹脂から赤ダイコン色素を脱離溶出させて、該溶出液を赤ダイコン色素抽出液の吸着処理液として取得した(処理(1))。次いでこの吸着処理液を、陽イオン交換樹脂IRC−76(樹脂量0.5L、SV=1.5、オルガノ(株)製)に供して夾雑物を吸着させ、溶出した色素含有液をイオン交換処理液として取得した(処理(2))。このイオン交換処理液を減圧濃縮してエタノールを除去し、水で色価E10% 1cm=10となるように希釈し、硫酸でpH2に調整した。
【0053】
次いでこれを80℃で4時間加熱処理し(加熱処理(3))、得られた加熱処理液を合成吸着樹脂アンバーライトXAD4(樹脂量1L、SV=2、オルガノ(株)製)に供して臭い成分を吸着させ、赤ダイコン色素を通液回収した(吸着処理(4))。次いで得られた吸着処理液を水酸化ナトリウムを用いてpH3になるように調整した後、0.02重量%の割合で酸性プロテアーゼ(ニューラーゼ F3G、14,000u/g、天野エンザイム(株)製)を添加して、45℃で8時間反応させた(酵素処理(5))。反応後、酵素処理液を逆浸透膜(NTR−7250、分画分子量3,000、日東電工(株)製)に供して、酵素処理液から夾雑物を除去するとともに濃縮して、脱臭赤ダイコン色素液を取得した(膜処理(6))。
【0054】
得られた色素液に、エタノール、クエン酸及びデキストリンをそれぞれ最終濃度が20容量%、2容量%及び10容量%となるように配合して、これを60℃で20分間加熱殺菌処理して、色価10% 1cm=80の脱臭赤ダイコン色素製剤(発明製剤1)420gを調製した。
【0055】
実施例2 脱臭赤ダイコン色素、及びその色素製剤の調製
上記実施例1の方法において、加熱処理(3)を行わない以外は赤ダイコン抽出液を実施例1と同様に処理(処理(1)、処理(2)、吸着処理(4)、酵素処理(5)及び膜処理(6))して赤ダイコン色素液を取得した。具体的には、実施例1の方法に従って、イオン交換処理液を減圧濃縮し、水で希釈しpH調整した溶液(色価E10% 1cm=10、pH2)を、そのまま吸着処理(4)、酵素処理(5)及び膜処理(6)に供して脱臭赤ダイコン色素液を取得した。また、この色素液を原料として実施例1と同様にして、脱臭赤ダイコン色素製剤(発明製剤2)を調製した。
【0056】
実施例3 脱臭赤ダイコン色素、及びその色素製剤の調製
上記実施例1の方法において、吸着処理(4)を行わない以外は赤ダイコン抽出液を実施例1と同様に処理(処理(1)、処理(2)、加熱処理(3)、酵素処理(5)及び膜処理(6))して赤ダイコン色素液を取得した。具体的には、実施例1の方法に従って、イオン交換処理(2)後、加熱処理(3)を行い、得られた加熱処理液のpHを3に調整した後、これを引き続いて酵素処理(5)及び膜処理(6)に供して脱臭赤ダイコン色素液を取得した。また、この色素液を原料として実施例1と同様にして、脱臭赤ダイコン色素製剤(発明製剤3)を調製した。
【0057】
実施例4 脱臭赤ダイコン色素、及びその色素製剤の調製
上記実施例1の方法において、加熱処理(3)及び吸着処理(4)を行わない以外は赤ダイコン抽出液を実施例1と同様に処理(処理(1)、処理(2)、酵素処理(5)及び膜処理(6))して赤ダイコン色素液を取得した。具体的には、実施例1の方法に従って、イオン交換処理液を減圧濃縮し、水で希釈しpHを3に調整した溶液(色価E10% 1cm=10)を、そのまま酵素処理(5)及び膜処理(6)に供して脱臭赤ダイコン色素液を取得した。また、この色素液を原料として実施例1と同様にして、脱臭赤ダイコン色素製剤(発明製剤4)を調製した。
【0058】
比較例1
上記実施例1の方法において、酵素処理(5)を行わない以外は赤ダイコン抽出液を実施例1と同様に処理(処理(1)、処理(2)、加熱処理(3)、吸着処理(4)及び膜処理(6))して赤ダイコン色素液を取得した。具体的には、実施例1の方法に従って、吸着処理(4)により取得した吸着処理液を膜処理(6)し、赤ダイコン色素液を取得した。そしてこの色素液を原料として実施例1と同様にして、赤ダイコン色素製剤(比較製剤1)を調製した。
【0059】
比較例2
上記実施例2の方法において、酵素処理(5)を行わない以外は赤ダイコン抽出液を実施例2と同様に処理(処理(1)、処理(2)、吸着処理(4)及び膜処理(6))して赤ダイコン色素液を取得した。具体的には、実施例2の方法に従って、吸着処理(4)により取得した吸着処理液を膜処理(6)し、赤ダイコン色素液を取得した。そしてこの色素液を原料として実施例2と同様にして赤ダイコン色素製剤(比較製剤2)を調製した。
【0060】
比較例3
上記実施例3の方法において、酵素処理(5)を行わない以外は赤ダイコン抽出液を実施例3と同様に処理(処理(1)、処理(2)、加熱処理(3)及び膜処理(6))して赤ダイコン色素液を取得した。具体的には、実施例3の方法に従って、加熱処理(3)により取得した加熱処理液を膜処理(6)し、赤ダイコン色素液を取得した。そしてこの色素液を原料として実施例3と同様にして赤ダイコン色素製剤(比較製剤3)を調製した。
【0061】
比較例4
上記実施例4の方法において、酵素処理(5)を行わない以外は赤ダイコン抽出液を実施例4と同様に処理(処理(1)、処理(2)、及び膜処理(6))して赤ダイコン色素液を取得した。具体的には、実施例4の方法に従って、処理(2)により取得したイオン交換処理液を膜処理(6)し、赤ダイコン色素液を取得した。そしてこの色素液を原料として実施例4と同様にして赤ダイコン色素製剤(比較製剤4)を調製した。
【0062】
実験例1  官能試験
上記の実施例1〜4及び比較例1〜4においてそれぞれ得られた赤ダイコン色素製剤(発明製剤1〜4、比較製剤1〜4)について、製造直後及び5℃における保存後1週目、3週目、1.5ヶ月目、および3ヶ月目の臭気の有無について、専門家10名に評価をしてもらった。各実施例1〜4および比較例1〜4で行った処理を簡単に纏めた結果を表1に示すとともに、その総合結果を表2に示す。
【0063】
【表1】
Figure 2004075911
【0064】
【表2】
Figure 2004075911
【0065】
この結果から、色素の製造工程において酸性プロテアーゼ処理をすることによって赤ダイコン色素特有の臭いが脱臭できるとともに、経時的な匂い戻りも有意に抑制された赤ダイコン色素が調製できることがわかる。また、この効果は酸性プロテアーゼ処理によって顕著に得られたが、酸性プロテアーゼ処理と加熱処理または吸着処理を組み合わせることによって、特に酸性プロテアーゼ処理と加熱処理および吸着処理を組み合わせることによって、より高い脱臭および匂い戻り抑制効果を得ることができた。
【0066】
実験例2
実施例1において酵素処理(5)に使用する酵素として下記の酵素または蛋白質を用いて、下記の条件で酵素処理を行い、それ以外は実施例1と同じ処理を行って赤ダイコン色素製剤を調製した。また、対照例として、比較例1の方法に従って酵素処理(5)を行わないで赤ダイコン色素製剤(対照色素製剤)を調製した。
【0067】
◆使用酵素または蛋白質と処理条件:
(1)酸性プロテアーゼ:ニューラーゼ F3G(天野エンザイム(株)、由来:Rhizopus niveus
<処理条件> 0.01重量%(7,000u/g)、pH3、45℃、8時間
(2)リパーゼ:リパーゼAアマノ6(天野エンザイム(株)、由来:Aspergillus niger
<処理条件> 0.05重量%(60,000u/g)、pH4、45℃、8時間
(3)アミラーゼ:ビオザイム M(天野エンザイム(株)、由来:麦芽)
<処理条件> 0.05重量%(4,000u/g)、pH4.5、50℃、8時間
(4)チオグルコシダーゼ(ミオシナーゼ)(SIGMA、由来:Sinapis alba
<処理条件> 0.01重量%(324u/g)、pH3、25℃、8時間
(5)ウシ血清アルブミン(30%BSA溶液)(SIGMA)
<処理条件> 0.156重量%、pH3、45℃、8時間。
【0068】
これを上記実験例1と同様にして、製造直後及び5℃での保存後1週目、3週目、1.5ヶ月目および3ヶ月目の臭気の有無について、専門家10名に評価をしてもらった。その総合結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
Figure 2004075911
【0070】
この結果から、赤ダイコン色素の脱臭効果は、酸性プロテアーゼ以外の酵素や蛋白質による処理では得ることができないことが確認できた。すなわち、赤ダイコン色素の脱臭効果は、酸性プロテアーゼ処理によって得られる特有の効果である。
【0071】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、原料として用いるアブラナ科植物に由来する悪臭もしくは異臭の原因成分が除去されて、臭いがないか若しくは有意に低減されてなる、脱臭アブラナ科植物色素を提供することができる。さらに本発明の製造方法によれば、加熱や長期保存によっても匂い戻り現象などの経時的変化が有意に抑制された脱臭アブラナ科植物色素を提供することができる。このため、本発明の製造方法によって取得できる色素は、飲料やその他の食品、医薬品、医薬部外品、香粧品などの、特に匂いが商品の価値に影響するような製品の着色に有効に使用することができる。

Claims (8)

  1. アブラナ科植物を原料とした色素の製造工程に、酸性プロテアーゼ処理工程を有することを特徴とする、脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
  2. 酸性プロテアーゼ処理工程と、加熱処理及び吸着処理のいずれか少なくとも1つの処理工程を有する請求項1に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
  3. 加熱処理、吸着処理、及び酸性プロテアーゼ処理の3つの処理工程を有する請求項1または2に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
  4. 上記請求項1乃至3のいずれかに記載の各処理工程を、アブラナ科植物色素抽出液に吸着処理、イオン交換処理、加熱処理、及び膜分離処理よりなる群から選択される少なくとも1種の処理をして得られる処理液に対して行うこと特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
  5. アブラナ科植物色素抽出液の処理液を、加熱処理、吸着処理及び酸性プロテアーゼ処理に供することを特徴とする、請求項4に記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
  6. 加熱処理をpH1〜3の酸性条件下で行うことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
  7. 吸着処理をpH1〜3の酸性条件下で行うことを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の脱臭アブラナ科植物色素の製造方法。
  8. 請求項1乃至7のいずれかに記載の製造方法によって得られる脱臭アブラナ科植物色素を含有する色素製剤。
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