JP2005118015A - 黒豆抽出物及びその調製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】黒豆の水溶性抽出物を提供する。特に、臭いや苦味、または加熱や経時的に発生する沈殿が抑制されることによって、食品や、経口的若しくは経鼻的に使用される医薬品や医薬部外品またはその配合成分として有効に利用できる黒豆抽出物、並びにその調製方法を提供する。
【解決手段】黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行って黒豆抽出物を調製する。
【選択図】なし

Description

本発明は、黒豆抽出物及びその調製方法に関する。より詳細には、実質的に無味無臭、または加熱や保存等において生じ得る不都合な沈殿の発生が抑制されてなる黒豆抽出物及びその調製方法に関する。
黒豆の煮汁が古くから声嗄れの抑制や鎮咳を目的として民間薬として使用されているように、黒豆には、喉や声に良いなどの効果があることが伝承的に知られている(例えば、非特許文献1等参照のこと)。このため、黒豆から抽出したエキスを、そのまま液体あるいはスプレードライ等の常法により粉末化し、それを食品素材として配合した食品が、声嗄れ抑制や鎮咳効果のある食品として提案されている。
その一方、黒豆から抽出したエキスは、原料の黒豆に起因して、特有の豆臭あるいはカラメル的な匂い、及びやや甘味のある苦味を有し、しかも黒褐色を呈しているため、特に経口的に用いられる食品に配合して使用する場合に、その風味、味または色調に悪影響を及ぼす場合がある。
最近、黒豆に限らず、各種豆類についてその生理活性機能が注目されており、有効成分の抽出、単離、精製、並びにその解明が行われている。豆類から有効成分を抽出する方法としては、例えば、原料大豆をアルカリ液に浸漬した後、煮熟破砕して弱酸性〜中性に調整し、次いで各種酵素を加えて大豆の細胞組織を分解し、さらに煮沸して酵素を失活させて反応液を分離ろ過する方法(例えば、特許文献1等参照のこと);大豆を24時間水に浸漬し、80℃で24時間煮た後、粉砕し、澱粉及び蛋白質分解酵素を加え、24時間55〜65℃に保温して醗酵後、布で濾過し、その濾液面に送風して濾液に空気を触れさせながら85℃以下で加熱濃縮する方法(例えば、特許文献2等参照のこと);水を吸収して膨潤した大豆を磨砕した後、水性溶媒中で加熱抽出処理して大豆エキスを製造する方法(例えば、特許文献3等参照のこと);黒大豆種皮を原料とし、水、水溶性有機溶媒又は含水水溶性有機溶媒の何れかによりpH1〜5で抽出・濃縮して、抗酸化作用を有するシアニジン−3−グルコシドを調製する方法(例えば、特許文献4等参照のこと);焙煎豆類の水抽出液をセルラーゼ処理して風味がよく濁りのない清澄液を得る方法(例えば、特許文献5等参照のこと)等が開示されている。
しかしながら、これらの方法は、豆類の原料に由来する臭い、味または色の除去を目的とするものではなく、食品等の製品に配合した場合の悪影響が十分解消されていないのが実情である。
臨床と研究, 75,No.12, 2625(1998). 特開平06−217726号公報 特開平06−276980号公報 特開平09−176033号公報 特開2002−128689号公報 特開昭61−293371号公報
本発明は、第1に黒豆に由来する特有の豆臭あるいはカラメル的な匂い、苦味、または色が低減されてなる黒豆抽出物及びその調製方法を提供することを目的とする。さらに本発明は、第2に加熱、保存、またはアルコールの配合によっても、沈殿の発生などの不都合が生じない黒豆抽出物及びその調製方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、前述するように声嗄れ抑制や鎮咳等、各種の生理機能を有する黒豆の水溶性抽出物について、その臭い、苦味または着色を低減する方法、並びに加熱、保存またはアルコールの配合などによって生じ得る沈殿の発生を抑制する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために日夜鋭意検討していたところ、黒豆の水抽出物に対して酵素処理と特定の分子量の分画処理を組み合わせて行うことによって、黒豆に由来する好ましくない香気成分が効果的に除去されて、無臭若しくは臭いが極めて低減された黒豆エキスが調製できること、そして当該黒豆エキスは、加熱や長期保存によっても臭いが発生せず、臭い戻りが有意に抑制されていることを見いだした。さらに本発明者らは、かかる処理によって得られる黒豆エキスは、黒豆に由来する好ましくない沈殿発生成分も除去されており、加熱処理、保存、並びにアルコールの配合によっても不都合な沈殿を生じないことを見いだした。そして、かかる知見から、本発明者らは、こうして得られる黒豆抽出物は、臭いや味が重要視され、しかも加熱処理、保存、及びアルコール配合といった処理を施す可能性の多い食品や経口若しくはそれに類似する経路で投与される医薬品や医薬部外品の原料として極めて有用であることを確信し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は下記項1〜5に掲げる、黒豆抽出物である。
項1. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことによって得られる黒豆抽出物。
項2. 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項1に記載する黒豆抽出物。
項3. 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である項1または2に記載する黒豆抽出物。
項4. 実質的に無味無臭であることを特徴とする項1乃至3のいずれかに記載する黒豆抽出物。
項5. 加熱、保存またはアルコール配合による沈殿発生が有意に抑制されてなることを特徴とする項1乃至4のいずれかに記載する黒豆抽出物。
当該黒豆抽出物に係る発明には、下記の態様のものも含まれる:
(1) 酵素処理が、多糖類分解活性または/および蛋白質分解活性を有する酵素による処理である項1乃至5のいずれかに記載する黒豆抽出物。
(2) アルコール存在下での加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなる、項1乃至4のいずれかに記載する発声向上剤。
さらに本発明は、下記項6及び7に掲げる、黒豆抽出物の調製方法である。
項6. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、実質的に無味無臭の黒豆抽出物の調製方法。
項7. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、加熱、保存またはアルコール配合による沈殿発生が有意に抑制されてなる黒豆抽出物の調製方法。
なお、当該黒豆抽出物の調製方法には、下記の態様が含まれる:
(3) 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項6または7に記載する黒豆抽出物の調製方法。
(4) 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である項6または7に記載する黒豆抽出物の調製方法。
(5) 酵素処理が、多糖類分解活性を有する酵素による処理である項6または7に記載する黒豆抽出物の調製方法。
(6) 黒豆抽出物が、アルコール存在下での加熱または保存による沈殿発生が有意に抑制されてなるものである、項6または7に記載する黒豆抽出物の調製方法。
また本発明は、項8に記載する、黒豆抽出物の臭い、苦味または着色の低減方法である
項8. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、黒豆抽出物の臭い、苦味または着色の低減方法。
なお、当該方法には、下記の態様が含まれる:
(7) 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項8に記載する黒豆抽出物の臭い、苦味または着色の低減方法。
(8) 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である、項8に記載する黒豆抽出物の臭い、苦味または着色の低減方法。
(9) 酵素処理が、多糖類分解活性を有する酵素による処理である、項8に記載する黒豆抽出物の臭い、苦味または着色の低減方法。
さらに本発明は、項9に記載する、黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法である:
項9. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法。
なお、当該方法には、下記の態様が含まれる:
(10) 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、項9に記載する黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法。
(11) 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である、項9に記載する黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法。
(12) 酵素処理が、多糖類分解活性を有する酵素による処理である、項9に記載する黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法。
(13) 加熱、保存、アルコール配合、またはアルコール存在下での加熱もしくは保存による沈殿発生を有意に抑制する方法である、項9に記載する黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法。
本発明の黒豆抽出物は、黒豆由来の好ましくない臭い、味または色が有意に低減されているため、これらの臭い等を気にせず食品等に適用できるなど、経口的若しくは経鼻的使用に好適に使用することができる。さらに、かかる本発明の黒豆抽出物は、加熱、長期保存、アルコール配合などによっても、不都合な沈殿の発生や臭いの発生が抑制されており、かかる処理を施す必要があるか、もしくはその可能性の高い食品、医薬品若しくは医薬部外品に広く好適に適用することができる。
(I)黒豆抽出物、及びその調製方法
本発明の黒豆抽出物は、黒豆の水溶性抽出物に対して、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を任意に組み合わせて行い、得られるものである。
本発明において用いられる黒豆とは、マメ科ダイズ属 Glycine max (L.) Merrill に属する短日性の一年生草木の黒い種子(子実)(黒大豆)である。黒豆には、例えば中生光黒、トカチクロ、いわいくろ、玉大黒、丹波黒、信濃黒及び雁喰などの品種があるが、黒豆であればどの品種の種子を使用しても良い。
黒豆の水溶性抽出物は、上記黒豆を水溶性溶媒を用いて抽出することによって調製することができる。かかる水溶性溶媒としては、特に制限されないが、水、低級アルコール、またはこれらの混合物を挙げることができる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソプロピルアルコール、ブタノール等の炭素数1〜4の低級アルコールを例示することができる。好ましくは水、または含水アルコール(特に、含水エタノール)であり、より好ましくは水である。なお、水溶性溶媒として含水アルコールを用いる場合、それに含まれるアルコール量は40容量%以下であることが好ましい。
なお、当該水溶性溶媒は酸性に調整されていてもよい。酸性への調整は、塩酸、硫酸若しくはリン酸等の無機酸、またはクエン酸やリンゴ酸等の有機酸を用いてpH2〜5.5程度の範囲となるように行うことができる。
抽出方法としては、一般に用いられる方法を採用することができる。制限はされないが、例えば水溶性溶媒中に生または乾燥処理した黒豆(そのままの形状、若しくは粗末、細切物)を低温、加温または煮沸条件下で浸漬する方法;低温、加温または煮沸条件下で攪拌しながら抽出を行う方法;またはパーコレーション法等を挙げることができる。好ましくは、乾燥処理した黒豆(そのままの形状、若しくは粗末、細切物)を水に、高温若しくは煮沸条件下で浸漬し、必要に応じて攪拌しながら、抽出する方法である(熱水抽出法)。
得られた水溶性抽出物は、必要に応じて濾過、共沈または遠心分離によって固形物を除去した後、そのまま若しくは濃縮して、次の処理工程に供することができる。
本発明の酵素処理に用いられる酵素としては、糖質または/および蛋白質を分解する作用を有する酵素を挙げることができる。具体的には、例えば、前者の糖質分解酵素として、クライスターゼY(大和化成製)、スミチームS(新日本化学工業製)などのアミラーゼ、セルラーゼA(天野エンザイム製)、及びセルロシンAC40(エイチビィアイ製)などのセルラーゼ;スクラーゼS(三共製)、及びスミチームX(新日本化学工業製)などのヘミセルラーゼ等の糖質分解活性を有する酵素を使用することができる。また、後者の蛋白質分解酵素としては、ニューラーゼA(天野エンザイム製)、及びプロテアーゼYP-SS(ヤクルト薬品工業製)などの酸性プロテアーゼ;スミチーム FP(新日本化学工業製)、及びエンチロンNBS(洛東化成工業製)などの中性プロテアーゼ;ノボザイムFM(ノボザイムズ製)やビオプラーゼSP-4FG(ナガセケムテックス製)などのアルカリ性プロテアーゼ等の蛋白質分解活性を有する酵素を使用することができる。
かかる糖質分解活性を有する酵素、及び蛋白質分解活性を有する酵素は、それぞれ1種単独で使用してもよく、また両者を組み合わせて使用することもできる。また使用する酵素は単一酵素でも良いが、各種の酵素を組み合わせて使用することもできる。
好ましい酵素は糖質分解活性を有する酵素であり、特に上記セルラーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等の多糖を分解する活性を有する酵素が好適に使用できる。
酵素処理は、使用する各酵素に適した所定の条件で実施することができる。酵素処理を行う温度条件は、特に制限されないが、通常30〜80℃の範囲を用いることができる。好ましくは35〜60℃である。
分子量5000〜25000の分画処理としては、ゲル濾過方法、膜分離方法、または吸着処理方法などを挙げることができる。好ましくは膜分離方法である。ここで用いる膜分離方法は、黒豆の水溶性抽出物から、結果として分子量5000〜25000の画分が取得できる方法であれば特に制限されない。具体的には、設定分画分子量が、例えば約20,000〜30,000の範囲、好ましくは約22,000〜28,000の範囲、より好ましくは25,000前後にある膜を用いて高分子化合物を分離除去する処理方法と、設定分画分子量が、例えば約1,000〜8,000の範囲、好ましくは約3,000〜7,000の範囲、より好ましくは5,000前後にある膜を用いて低分子化合物を分離除去する処理方法とを組み合わせて行うことが好ましい。
前者の高分子化合物を分離除去する方法として、具体的には分画分子量が上記の範囲にあるNTU-3150膜, NTU-3250膜, NTU-3550膜, NTU-3800 UF膜(以上、日東電工製);Cefilt-UF(日本ガイシ製);AHP-2013膜, AHP-3013膜, AHP-1010膜(以上、旭化成製);等を利用した限外濾過(UF)膜処理を挙げることができる。また後者の低分子化合物を分離除去する方法として、具体的には分画分子量が上記の範囲にあるNTR-7250膜, NTR-7410膜, NTR-7430膜, NTR-7450膜(以上、日東電工製)、AIP-3013膜, ACP-3013膜, ACP-2013膜, AIP-2013膜, AIO-1010膜(以上、旭化成製)などの膜を利用した逆浸透膜(ナノフィルトレーション膜)処理、または限外濾過(UF)膜処理を挙げることができる。
かかる膜分離法に用いられる膜材料としては、天然、合成、半合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジアセテート若しくはトリアセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。なお、分画処理に使用される膜として、上記限外濾過膜、及び逆浸透膜の他、精密濾過(MF)膜等を用いることもできる。
これらの酵素処理と分子量分画処理は、前述する黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、連続的または非連続的に任意に組み合わせて行うことができる。その組み合わせの順番は特に制限されず、酵素処理に次いで分子量分画処理の順、分子量分画処理に次いで酵素処理の順のいずれでもよいが、好ましくは前者の方法である。
なお、本発明は、上記酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理に加えて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、さらに、酸処理、抽出処理、吸着処理、イオン交換処理または膜処理等の通常精製に使用される処理を行うことを制限するものではない。これらの処理は、一種または任意に2種以上組み合わせて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して行うことができる。
ここで酸処理は、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物をpH2〜5.5、好ましくはpH4〜4.5の酸性条件下に曝することによって実施することができる。酸処理は、具体的には黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に酸を添加配合することによって簡便に行うことができる。かかる酸としては、食品添加物として通常使用される酸であれば特に制限されず、かかる中から任意に選択使用することができる。例えばクエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸等の有機酸または硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸等を例示することができる。好ましくは食品添加物として通常使用される無機酸を用いた酸処理である。
酸処理温度は特に制限されず、通常5〜100℃の範囲から適宜選択使用することができる。例えば20〜100℃、40〜100℃、または40〜80℃の範囲を例示することができる。酸処理時間も特に制限されず、通常1分〜12時間の範囲から適宜選択することができる。一般に加温〜高温下での酸処理であればより短い処理時間で十分である。よって例えば40〜100℃での酸処理の場合は5〜60分の範囲から処理時間を採択することができる。なおこの時、酸処理中、処理液は撹拌してもしなくてもいずれでもよく、特に制限されない。
抽出処理も、特に制限はされず、定法に従って行うことができる。例えば、炭酸ガス、エチレン、プロパン等の液体を、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、臨界点以上の温度、圧力下の密閉系装置内で接触させる方法も使用することができる。
吸着処理もまた、常法に従って行うことができる。例えば活性炭、シリカゲルまたは多孔質セラミックなどによる吸着処理;スチレン系のデュオライトS-861(商標「Duolite」, U.S.A.ダイヤモンド・シャムロック社製、以下同じ)、デュオライトS-862、デュオライトS-863又はデュオライトS-866;芳香族系のセパビーズSP70(商標「セパビーズ」、三菱化学(株)製、以下同じ)、セパビーズSP700、セパビーズSP825;ダイアイオンHP10(商標「ダイアイオン」、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイアイオンHP20、ダイアイオンHP21、ダイアイオンHP40、及びダイアイオンHP50;あるいはアンバーライトXAD-4(商標「アンバーライト」、オルガノ製、以下同じ)、アンバーライトXAD-7、アンバーライトXAD-2000などの合成吸着樹脂を用いた吸着樹脂処理を挙げることができる。
かかる処理において、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物を樹脂担体に通過させて、夾雑物を樹脂に吸着させて除去し、有効成分を含有する通過液を得る。場合によっては、更に水および低濃度の含水アルコールを通液して有効成分を回収する。ここで、通液(溶出液)として含水アルコールを使用する場合、含水アルコールとして、通常1〜20容量%程度のエタノール含有水溶液を好適に例示することができる。
イオン交換処理も、特に制限されず慣用の樹脂を用いて常法に従って陽イオン交換処理または陰イオン交換処理を行うことができる。例えば陽イオン交換樹脂としては、制限されないがダイアイオンSK1B(商標「ダイアイオン」、三菱化学(株)製、以下同じ) 、ダイアイオンSK102、ダイアイオンSK116、ダイアイオンPK 208、ダイアイオンWK10、ダイアイオンWK20などが、また陰イオン交換樹脂としては、制限されないがダイアイオンSA10A(商標「ダイアイオン」、三菱化学(株)製、以下同じ)、ダイアイオンSA12A、ダイアイオンSA20A、ダイアイオンPA306、ダイアイオンWA10、ダイアイオンWA20などが例示される。
膜処理としては、例えばメンブレンフィルター(MF)膜や電気透析膜などの機能性高分子膜を用いた濾過処理を挙げることができる。またイオン選別膜による濃度勾配を利用した透析法、隔膜としてイオン交換膜を使用し電圧を印加する電気透析法なども用いることができる。かかる膜処理に用いられる膜材料としては、天然、合成、半合成の別を問わず、例えばセルロース、セルロース・ジアセテート若しくはトリアセテート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアクリロニトリルなどを挙げることができる。
斯くして得られる本発明の黒豆抽出物には、各種の生理機能成分〔例えば発声向上作用(発声障害抑制作用、発声障害改善作用)等〕が多く含まれているとともに、臭いの原因となる黒豆に由来する香気成分や苦味が有意に除去されている。また、上記方法によって得られる本発明の黒豆抽出物は着色成分が有意に除去されて色素濃度が低減されている。このため、本発明の黒豆抽出物は、臭いや味、並びに色調が重要視される食品や、その他、経口的若しくは経鼻的に用いられる医薬部外品または医薬品として、またはそれらの有効成分もしくは配合成分として好適に使用することができる。
更に、上記方法によって得られる黒豆抽出物は、後述する実験例で示すように、加熱、または保存によっても沈澱や臭い戻りといった不都合な現象の発生が有意に抑制されており、またアルコールを配合した場合やアルコール存在下で加熱や保存を行った場合でも沈殿の発生が有意に抑制されている。このため、加熱処理、保存、またはアルコール配合が予想される各種の製品、例えば食品や経口的もしくは経鼻的に投与または摂取される製品(例えば医薬部外品、医薬品)に好適に適用することができる。
なお、上記黒豆に由来する香気成分とは、マメ科ダイズ属 Glycine max (L.) Merrillに属する草木の黒色種子(黒豆)に含まれる香気成分であり、特に制限されないが、具体的には、酢酸、イソ吉草酸、マルトール、フェノール、4-ビニルグワヤコールおよび4-ビニルフェノールを挙げることができる。
斯くして得られる黒豆抽出物は、水、アルコール(例えば、エタノール)、その他の溶媒に溶解若しくは分散した溶液状態、若しくは公知の方法により調製・成形した固体状態(粉状、顆粒状、錠剤状、丸剤状など)の、経口的若しくは経鼻的に服用または摂取される各種の製剤(食品[例えば、サプリメント]、医薬品または医薬部外品)とすることができる。かかる製剤形態を有する食品としては、例えば各種形状のサプリメント、飴(のど飴など)、トローチ、及びドリンクなどを;また医薬品または医薬部外品としては、例えばマウスウォッシュ等の口腔用の各種製品、うがい薬,トローチ,ドリンク,噴射剤,吸引剤または吸入剤等の喉用の各種製品、及び点鼻剤等を挙げることができる。
なお、かかる製剤には、上記黒豆抽出物に加えて、その製品形態に応じて、食品衛生上または薬学的に許容される担体や添加剤が配合されていてもよい。かかる担体及び添加剤として具体的には、例えばデキストリン、乳糖、粉末水飴の他、これらの製品に通常用いられる保存剤、安定剤、香料、甘味料または酸化防止剤などの食品添加物または薬学的に許容される添加物を挙げることができる。
前述するように、上記方法で調製される本発明の黒豆抽出物は、臭い、苦味または色が有意に低減されており、また加熱処理、保存またはアルコール配合によっても、臭い戻りや沈殿等の不都合の発生が抑制されてなるものである。ゆえに、本発明の黒豆抽出物は、こうした観点からも、かかる処理が行われることの多い食品や、経口もしくは経鼻的に投与される医薬部外品や医薬品の成分(原料)として好適に用いることができる。
かかる食品としては、(1)乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、茶飲料などの飲料;(2)カスタードプリン、ミルクプリン、スフレプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;(3)アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、シャーベット、氷菓等の冷菓類;(4)チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);(5)マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;(6)ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等の飴類;(7)ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;(以上、(2)〜(7)を総合して菓子という);赤ワイン等の果実酒、リキュール、チュウハイ、炭酸アルコール飲料等のアルコール類を挙げることができる。好ましくは、上記清涼飲料水などの飲料、及び菓子である。なかでも菓子としては、(4)ガム類、(5)チョコレート類、(6)飴類及び(7)焼き菓子類を好適に例示することができる。
これらの食品に配合する黒豆抽出物の割合としては、清涼飲料等の飲料として調製する場合、黒豆抽出物の乾燥物重量に換算して0.001〜20重量%、好ましくは0.1〜5重量%;ガムとして調製する場合、黒豆の有効画分の乾燥物重量に換算して0.1〜10重量%;クッキー等の焼き菓子として調製する場合、黒豆抽出物の乾燥物重量に換算して0.1〜50重量%、好ましくは0.5〜5重量%;キャンディ等の飴類として調製する場合、黒豆抽出物の乾燥物重量に換算して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%を例示することができる。
また医薬部外品及び医薬品としては、前述するマウスウォッシュ等の口腔用の各種製品、うがい薬,トローチ,ドリンク,噴射剤,吸引剤または吸入剤等の喉用の各種製品、及び点鼻剤を挙げることができる。これらの製品に配合する黒豆抽出物の割合としては、黒豆の有効画分の乾燥物重量に換算して0.001〜80重量%、好ましくは0.1〜50重量%を例示することができる。
(II)黒豆水溶性抽出物の臭い、苦味または着色の低減方法
本発明は、また黒豆水溶性抽出物について、黒豆特有の臭い(豆臭)、苦味または着色を低減する方法を提供する。
当該方法は、黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことによって実施することができる。ここで対象とする黒豆の水溶性抽出物の調製方法、酵素処理、並びに分子量5000〜25000の分画処理としては、上記(I)に記載する方法を、いずれも同様に用いることができる。本発明の好適な方法としては、黒豆の熱水抽出物を、糖質または/および蛋白質分解酵素処理、好ましくは多糖類分解活性を有する酵素(例えばセルラーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等)で処理し、次いで連続もしくは非連続して、膜などを用いて分子量5000〜25000の分画処理を行う方法を挙げることができる。
なお、上記酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理に加えて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、さらに、酸処理、抽出処理、吸着処理、イオン交換処理または膜処理等の通常精製に使用される処理を行うこともできる。これらの処理としても、前述(I)に記載する方法を挙げることができ、また、一種または任意に2種以上組み合わせて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して行うことができる。
斯くして得られる黒豆の水溶性抽出物は、臭いの原因となる黒豆に由来する香気成分や苦味が有意に除去されている。また、上記方法によって得られる本発明の黒豆抽出物は着色成分が有意に除去されて色素濃度が低減されている。更に、本発明の方法によって得られる黒豆抽出物は、後述する実験例で示すように、加熱、または保存によっても臭い戻りの発生が有意に抑制されている。このため、上記本発明の方法は、臭いや味、並びに色調が重要視される食品や、その他、経口的若しくは経鼻的に用いられる医薬部外品または医薬品、またはそれらの有効成分もしくは配合成分として黒豆抽出物を用いる場合に有効に利用することができる。
なお、上記黒豆に由来する香気成分とは、マメ科ダイズ属 Glycine max (L.) Merrillに属する草木の黒色種子(黒豆)に含まれる香気成分であり、特に制限されないが、具体的には、酢酸、イソ吉草酸、マルトール、フェノール、4-ビニルグワヤコールおよび4-ビニルフェノールを挙げることができる。
(III)黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法
本発明は、また黒豆水溶性抽出物について、沈殿の発生を抑制する方法を提供する。
当該方法は、黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことによって実施することができる。ここで対象とする黒豆の水溶性抽出物の調製方法、酵素処理、並びに分子量5000〜25000の分画処理としては、上記(I)に記載する方法を、いずれも同様に用いることができる。本発明の好適な方法としては、黒豆の熱水抽出物を、糖質または/および蛋白質分解酵素処理、好ましくは多糖類分解活性を有する酵素(例えばセルラーゼ、アミラーゼ、ヘミセルラーゼ等)で処理し、次いで連続もしくは非連続して、膜などを用いて分子量5000〜25000の分画処理を行う方法を挙げることができる。
なお、上記酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理に加えて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して、さらに、酸処理、抽出処理、吸着処理、イオン交換処理または膜処理等の通常精製に使用される処理を行うこともできる。これらの処理としても、前述(I)に記載する方法を挙げることができ、また、一種または任意に2種以上組み合わせて、黒豆の水溶性抽出物またはその処理物に対して行うことができる。
斯くして得られる黒豆の水溶性抽出物は、加熱、保存またはアルコール配合によって生じる沈澱の発生成分が除去されており、このため加熱処理、長期保存またはアルコール配合もしくはアルコール存在下で加熱や保存を行った場合でも沈殿の発生が有意に抑制されている。ゆえに、上記本発明の方法は、黒豆抽出物を、加熱処理、保存またはアルコール配合が予想される各種の製品(例えば食品や経口的もしくは経鼻的に投与または摂取される製品(例えば医薬部外品、医薬品))の有効成分もしくは配合成分として用いる場合に、有効に利用することができる。
以下に、本発明の構成ならびに効果をより明確にするために、実施例、比較例及び実験例を記載する。但し本発明は、これらの実施例等に何ら影響されるものではない。
比較例1
水70Lにマメ科植物(黒豆)の種子10 kgを投入し、室温下に一夜放置し、つづいて煮沸を2時間行って抽出した。抽出混合物を固液分離して、得られた抽出液に、濾過助剤及び珪藻土を配合して吸引濾過し、濾液を約55L(pH 5.8)を得た。次いでこの濾液を減圧濃縮して、固形分濃度が70重量%のエキス2.1 kg を得た。このエキスのうち90 gに、水70 gとエチルアルコール40 gを加えて、黒豆エキス製剤(比較品1)200 gを調製した。この黒豆エキス製剤(比較品1)を嗅ぐと、豆類特有の強い豆臭あるいは穀物臭及び苦味を有していた。
比較例2
比較例1で使用した黒豆の種子に代えて、黄大豆の種子を用いる以外は、比較例1と同様に操作して黄大豆エキス製剤(比較品2)を調製した。この黄大豆エキス製剤(比較品2)は、豆臭及び苦味を有していた。
実施例1
マメ科植物(黒豆)の種子10 kgについて、比較例1と同一の方法で得られた熱水抽出濾液55L(pH 5.8)に、酵素・セルラーゼ(セルロシン AC40(エイチビィアイ製)、力価 4,000units/g)を10g添加し、40〜55℃でゆっくり攪拌して処理を行い酵素処理液を得た。次いで得られた酵素処理液を、限外濾過膜(NTU−3250−C4K膜:日東電工製、分画分子量20,000)を用いて3.5 kg/cm2, 20℃で処理した。この限外濾過膜処理の透過液を、続いて逆浸透膜処理(NTR-7250膜:日東電工製、分画分子量 約3,000程度)に供し、膜濃縮処理液1 Lを得た。次いでこの膜濃縮処理液を、減圧下で濃縮して、濃縮エキス 80 g(固形分60%)を得た。この濃縮エキス80 gに、水80 gとエチルアルコール40 gを加えて黒豆エキス製剤(発明品)200 gを調製した。この黒豆エキス製剤(発明品)は全く臭いがせず、無味で色素濃度も低減されていた。
実験例1 香気成分分析
比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)および実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)に含まれる香気成分量を、ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)を用いて比較した。
<測定方法>
具体的には、それぞれの黒豆エキス製剤10 gを、内部標準物質(IS:ブチルヒドロキシトルエン[BHT] 0.4mgおよびジエチルフタレート[DEP]1.0mg) を含むジエチルエーテル200 mlで抽出し、次いで得られたジエチルエーテル抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、濃縮し、得られた濃縮液を下記の条件のガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)に供して、香気成分量を測定した。結果を図1に示す。
<GC-MS測定条件>
GC/MS: Hewlett-Packard 5973 Mass Selective Detector,
カラム: J&W製 DB-WAX(0.25mm x 60m)、
温度条件:注入口250℃、インターフェース230℃、カラム温度50℃(2分)−
220℃、昇温3℃/分、
スプリット比: 70:1、
イオン化電圧: 70eV。
図1のB(下図)に、実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)のトータルイオンクロマトグラムを、A(上図)に、比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)のトータルイオンクロマトグラムをそれぞれ示す。図1からわかるように、比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)には数多くの揮発性成分が含まれている(総量約320ppm)のに対し、実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)には内部標準物質(IS)以外の成分は極微量(5ppm以下)しか含まれていなかった。この結果は、比較品1の黒豆エキス製剤が豆類特有の強い豆臭あるいは穀物臭を有していたのに対して、発明品1の黒豆エキス製品は無臭であったという、上記比較例1と実施例1で得られた結果と一致するものであった。
なお、図1のA中、1)のピークはマルトール、2)のピークは4-ビニルフェノール、ISのピークは内部標準物質であるブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびジエチルフタレート(DEP)をそれぞれ示す。
実験例2 香味評価および安定性テスト
前述するように、上記実験例1及び実施例1から、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)(調製直後)は無臭であることが確認された。そこで次に、本発明の黒豆エキス製剤(発明品)について、長期保存処理(38℃)及び加熱処理を行い、香味(臭いと苦味)に対する影響を調べた。
具体的には、実施例1で調製した黒豆エキス製剤(本発明品)及び比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)(各製剤について、調製直後のものと38℃で30日間保存したもの)を用いて、下記処方の飲料タイプの溶液(本発明溶液、比較溶液)を調製した。なお、当該溶液は、下記成分を混合した後、瓶に充填し、90℃ 1気圧の条件で5分間、加熱殺菌処理を施した。得られた各溶液を、良く訓練されたフレーバーリスト10名にそれぞれ飲んでもらって、後述する基準に従って香味(臭いと苦味)を評価してもらった。
<溶液処方> pH3.5
黒豆エキス製剤 1g
0.2重量% クエン酸水溶液 残部
全量 100mL。
結果を表1に示す。なお、表中の数字はフレーバーリストの人数である。
<評価基準>
臭いと苦味がかなり強い :+++
臭いと苦味がある :++
臭いと味がかすかにある :+
臭いと味が殆ど気にならない :±
臭いと味が全くない :−。
表1に示す結果から分かるように、発明品(調製直後、38℃30日保存後)を用いて調製した飲料タイプ溶液(本発明溶液)は、比較品1(調製直後、38℃30日保存後)を用いて調製した飲料タイプ溶液(比較溶液)に比べて、臭いと苦味が著しく少なく、ほぼ無臭無味の溶液であった。また、比較溶液については、黒豆エキス製剤(比較品1)として38℃30日保存後の製剤を用いることによって、調製直後の製剤を用いた場合に比して、香味の発現が強くなったのに対して、本発明溶液については、使用する黒豆エキス製剤(本発明品)の保存の有無に関わらず、無臭状態を維持していた。
これらのことから、実施例1の方法で製造された本発明の黒豆エキス製剤(本発明品)には、それ自体に臭気を発揮する香気成分や苦味成分が全く若しくはほとんど含まれていないだけでなく、保存や加熱処理によって臭気や苦味を発生する原因となる、香味成分または苦味の前駆体となる夾雑物も含まれていないことが示された。
実験例3
比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)と実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) にかけた。
具体的には、各黒豆エキス製剤(比較品1、発明品)を0.2%(W/V)になるように水に溶解したサンプル105μlに、2-メルカプトエタノール10μl、0.5M Tris-HCl(pH6.8) 25μl、10重量% SDS 40μl及び70重量%グリセリン20μlを混合して、3分間煮沸加熱して調製した試料を、供試サンプルとして用いた。これをLaemmli 法(Nature, 227, 680 (1970))に準拠した条件下で電気泳動し、得られた電気泳動ゲルを常法に従ってCBB染色した。
具体的な電気泳動(SDS-PAGE)条件は下記の通りである:
・分析試料:10〜0.1μl/レーン
・Buffer :0.025M Tris-0.192M glycine (pH8.3)、0.1% SDS。
結果を電気泳動像として図2に示す。図中、レーン左から、(1)比較品1(左から10, 5, 1, 0.1μl)、(2)分子量マーカー(上から、97kDa,66.2kDa,45kDa,31kDa,21.5kDa,14.4kDa)、(3)本発明品(左から10, 5, 1, 0.1μl)の泳動結果を示す。電気泳動の結果から、実施例1で製造した黒豆エキス製剤(発明品)について約5〜25kDa分子量範囲にバンドが確認された。
実験例4 色素濃度
比較例1および実施例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1、発明品)をそれぞれ水で希釈して、固形分換算濃度 4mg/100mlの水溶液とした。これをそれぞれ分光光度計(日本分光社製)により吸収波形を測定し、図3のチャートを得た。図3から分かるように、実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)の吸収曲線(例えば、500nmの吸光度:0.0984)は、比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)の吸収曲線(例えば、500nmの吸光度:0.4621)に比して、極めて低く、色素成分が除去されていることがわかる。
実験例5 経時的沈殿の有無
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)について、経時的沈殿の有無を確認した。具体的には、黒豆エキス製剤(発明品、および比較品1)を用いて実験例3と同様の処方及び方法で調製した飲料タイプの溶液(本発明溶液、比較溶液)(500mL×10)を500mLペットボトルに各10本ずつ充填して、明所で5℃で6ヶ月間保存した。沈殿の発生状況を目視によって観察した結果を表2に示す。
表2に示す結果から、本発明の黒豆エキス製剤(発明品1)で調製した溶液(発明溶液)は、長期保存によっても沈殿を生じることなく、経時的に安定であった。このことから、実施例1の方法で製造された本発明の黒豆エキス製剤(本発明品)は、加熱や長期保存によっても沈殿を生じず、物性的にも安定であることが示された。
実験例6
実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)について、アルコール飲料へ配合した場合の経時的沈殿の有無を、実験例5と同様の方法で確認した。具体的には、まず、黒豆エキス製剤(発明品、および比較品1)を用いて、下記の処方に従って溶液(100g×10)を調製し、これを100mL容量のガラス瓶10本に充填して65℃で10分間加熱殺菌し、アルコール飲料を調製した(発明飲料、比較飲料)。これを、明所で5℃、6ヶ月間保存して沈殿の発生状況を目視によって観察した。結果を表3に示す。
<アルコール飲料処方> アルコール濃度:7%
黒豆エキス製剤(発明品、比較品1) 1g
焼酎(アルコール濃度35%) 20g
水 34g
炭酸水 45g
全量 100g。
表3に示す結果から、本発明の黒豆エキス製剤(発明品1)で調製したアルコール飲料(発明飲料)は、長期保存によっても沈殿を生じることなく、経時的に安定であった。このことから、実施例1の方法で製造された本発明の黒豆エキス製剤(本発明品)は、アルコールの配合並びにアルコール存在下での加熱や長期保存によっても沈殿を生じず、安定な製剤であることが示された。
以上の実験例の結果から、酵素処理及び分子量分画処理を施すことによって、長期保存、加熱処理、アルコール配合、アルコール存在下での加熱及び保存においても、沈殿または臭いの発生が有意に抑制されてなる黒豆エキス製剤が調製できることがわかった。
黒豆の煮汁が古くから声嗄れの抑制や鎮咳を目的として民間薬として使用されているように、従来より、黒豆、特に黒豆の水溶性抽出物には、多くの生理機能成分が含まれていることが知られている。しかしながら、黒豆の抽出物には、黒豆特有の苦味や臭いがあり、使用できる範囲が限られているという実情があった。それに対して、本発明の黒豆抽出物は、黒豆の水溶性抽出物に対して酵素処理及び分子量5000〜25000画分の分画処理を施すことによって、香気成分、苦味及び色が有意に低減されているため、豆特有の臭い、味及び色が及ぼす影響を心配することなく、食品、医薬部外品や医薬品等の経口若しくは経鼻的に使用される製品の配合成分として、広く使用することができる。また、当該本発明の抽出物は、加熱や長期保存、並びにアルコールの存在によって沈殿物が発生することが極めて少ないため、滅菌加熱処理や保存が不可欠な飲料やアルコールを配合した各種食品を始めとする各種の製品の配合成分として、広く使用することが可能である。
実験例1の結果を示す図である。詳細には、実施例1で調製した黒豆エキス製剤(発明品)(図A)、及び比較例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1)(図B)をガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)に供して得られた、各製剤のトータルイオンクロマトグラムである。図中、(1)のピークはマルトール、(2)のピークは4-ビニルフェノール、ISのピークは内部標準物質であるブチルヒドロキシトルエン(BHT)およびジエチルフタレート(DEP)をそれぞれ示す。 実験例3の結果を示す図である。詳細には、比較例1で得られた黒豆エキス製剤(比較品1)と実施例1で得られた黒豆エキス製剤(発明品)を、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動 (SDS-PAGE) にかけた電気泳動像を示す。図中、レーン左から、(1)比較品1(左から10, 5, 1, 0.1μl)、(2)分子量マーカー(上から、97kDa,66.2kDa,45kDa,31kDa,21.5kDa,14.4kDa)、(3)本発明品(左から10, 5, 1, 0.1μl)の泳動結果を示す。 実験例4の結果を示す図である。詳細には、比較例1および実施例1で調製した黒豆エキス製剤(比較品1、発明品)の水溶液の吸収波形を示すチャートである。

Claims (9)

  1. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことによって得られる黒豆抽出物。
  2. 黒豆の水溶性抽出物が黒豆の熱水抽出物である、請求項1に記載する黒豆抽出物。
  3. 酵素処理が、糖質または/および蛋白質分解酵素処理である請求項1または2に記載する黒豆抽出物。
  4. 実質的に無味無臭であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載する黒豆抽出物。
  5. 加熱、保存またはアルコール配合による沈殿発生が有意に抑制されてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載する黒豆抽出物。
  6. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、実質的に無味無臭の黒豆抽出物の調製方法。
  7. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、加熱、保存またはアルコール配合による沈殿発生が有意に抑制されてなる黒豆抽出物の調製方法。
  8. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、黒豆抽出物の臭い、苦味または着色の低減方法。
  9. 黒豆の水溶性抽出物について、酵素処理及び分子量5000〜25000の分画処理を行うことを特徴とする、黒豆抽出物の沈殿発生抑制方法。


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