JP2004067444A - 低損失MnZnフェライトの製造方法および仮焼成粉末 - Google Patents

低損失MnZnフェライトの製造方法および仮焼成粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】副成分添加により結晶粒界を高抵抗化する方策によらずに酸素放出時期を制御することにより低損失化を図り、もって振動や繰返し熱衝撃が加わる過酷な使用条件下でも安定的に使用でき、しかも焼成条件の厳密な管理をも不要とする低損失MnZnフェライトの製造方法を提供する。
【解決手段】Feが50.0 mol%未満となるように配合した原料粉末の混合粉末を仮焼成し、この仮焼成時にMnの還元反応による酸素放出を十分に促進させて、後の本焼成時における酸素放出を低減する。そして、仮焼成後は、微粉砕して得られた仮焼成粉末にFe酸化物の粉末を加えて成分調整し、しかる後、造粒、成形および本焼成を順に行って、Fe酸化物をFe3 換算で52.5 〜57.0 mol%、Mn酸化物をMnO 換算で32.0 〜40.0 mol%、残部ZnO を含む本来的なMnZnフェライトを得る。
【選択図】  なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種電子部品に使用される低損失MnZnフェライトの製造方法に係り、さらに詳しくはスイッチング電源、DC−DCコンバータ等の電源トランスやチョークコイルなどのコアに用いて好適な低損失MnZnフェライトを製造する方法とこの方法の実施に用いる仮焼成粉末とに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、スイッチング電源におけるスイッチング周波数は、小型化、高性能化のために、より高周波化される傾向にあり、電源トランスに用いられるMnZnフェライトには、高周波において低損失であることが要求されている。ところで、フェライトの損失には、主にヒステリシス損失と渦電流損失とがあることが知られており、従来、例えば、渦電流損失の低減を図るため、副成分としてV 、ZrO2 、TaOなどを添加し、焼成条件を最適化することにより、これら添加物を結晶粒界付近に偏析させて、結晶粒界を高抵抗化することが既に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記したように副成分添加により結晶粒界を高抵抗化する方策によれば、100kHz程度までの高周波域での渦電流損失は低下するが、結晶粒内の抵抗値に変わりがないため、結晶粒内と結晶粒界との抵抗差が大きく、例えば、数百kHzかそれより大きい高周波の交流磁界を印加した場合に、フェライトが一種のキャパシタンスのような挙動を示し、渦電流損失が急激に大きくなって、もはや実用に耐えないものとなる。
また、結晶粒内と結晶粒界との組織的な差異により、外部から加わる応力や熱応力により内部歪が生じ易くなり、振動や繰返し熱衝撃に対する耐性が悪化して、最近、需要が増大しつつある自動車向けとして利用した場合に、信頼性に劣る、という問題もあった。
【0004】
ところで、MnZnフェライトの一般的な製造プロセスは、所定の組成となるように配合した原料粉末の混合物を仮焼成した後、微粉砕し、しかる後に造粒、成形および本焼成を順に行って最終生成物(焼成体)とする。このような製造プロセスにおいて、Feを50mol%以上含む従来の一般的な混合粉末を大気中で仮焼成すると、Mn酸化物はMnの形態となり、このMnは本焼成における昇温時、800〜1000℃の温度域で、下記(1)式および(2)式で表わされる二段階の還元反応により酸素を放出する。そして、この酸素放出に伴い、その後の焼成温度(1250〜1400℃)でMnOと他の酸化物(Fe、ZnO)との固溶体化が進み、緻密化も進んで所望の軟磁気特性と低損失とを有するMnZnフェライトが得られるようになる。
3Mn→2Mn+(1/2)O↑ …(1)
Mn→3MnO+(1/2)O↑  …(2)
この場合、上記した酸素放出は、本焼成時の雰囲気の酸素濃度(酸素分圧)が低いほど促進されるが、実際には、例えば窒素を流すことにより雰囲気の酸素濃度を下げても、前記放出酸素によりワーク(成形体)付近の酸素濃度があまり下がらないという現象が起き、特に連続炉にて大量処理(焼成)する場合には、温度や酸素濃度の変動要因も大きいため、ワーク付近の酸素濃度を下げることはきわめて困難となり、結果として、酸化物同士の固溶体化、緻密化が十分に進まず、上記したV、ZrO2 、TaOなどの副成分を添加しても、高初透磁率を有しかつ低損失を有するMnZnフェライトを安定的に得ることは困難である、いう問題があった。
なお、Mnは、最終生成物であるMnZnフェライトのスピネル結晶構造において、Mn2+およびMn3+として存在するが、Mn3+はスピネル結晶構造を歪ませ、軟磁気特性を劣化させてしまうため、これを極力少なくする必要があり、このためにも、上記した(1)式および(2)式による酸素放出は重要である。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたもので、その課題とするところは、副成分添加により結晶粒界を高抵抗化する方策によらずに酸素放出の時期を制御することにより低損失化を図り、もって振動や繰返し熱衝撃が加わる過酷な使用条件下でも安定的に使用でき、しかも焼成条件の厳密な管理をも不要とする低損失MnZnフェライトの製造方法を提供し、併せてこの製造方法の実施に用いて好適な仮焼成粉末を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、Feが50.0 mol%未満となるように配合した原料粉末の混合物を仮焼成することで、この時点で十分に酸素を放出させることができ、これにより本焼成時における酸素放出を大幅に抑制することができることを見出した。本発明は、上記した知見に基づいてなされたもので、本発明に係る低損失MnZnフェライトの製造方法は、Feが50.0 mol%未満となるように配合した原料粉末の混合物を仮焼成した後、微粉砕して仮焼成粉末を得、次に、前記仮焼成粉末にFe酸化物の粉末を加えて成分調整し、しかる後、造粒、成形および本焼成を順に行って、Fe酸化物をFe3 換算で52.5 〜57.0 mol%、Mn酸化物をMnO 換算で32.0 〜40.0 mol%、残部ZnO を含む焼成体を得ることを特徴とする。本製造方法において、上記焼成体は、副成分としてSnOおよびTiOのうちの少なくとも一種を50〜2000 ppm含むようにしても、あるいは副成分としてNb3 およびMoOのうちの少なくとも一種を50〜1000 ppm含むようにしてもよいものである。
本発明に係るMnZnフェライト用仮焼成粉末は、上記MnZnフェライトの製造方法の実施過程で得られるもので、Feを50.0 mol%未満含むことを特徴とする。
本仮焼成粉末は、副成分としてSnO、TiO、NbおよびMoOのうちの少なくとも一種を含むようにしてもよいものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に係る低損失MnZnフェライトの製造方法は、Feが50.0 mol%未満となるように配合した原料粉末の混合物を仮焼成することを特徴とするが、この仮焼成により、前記(1)式および(2)式に示したMnの還元反応が進行し、仮焼成後のMn酸化物は、大部分がMnO(一部、Mnを含む)の形態となる。つまり、従来本焼成において放出されていた酸素の大部分がこの仮焼成の時点で放出されることになる。したがって、この仮焼成粉末にFe酸化物を加えて成分調整して、Fe酸化物をFe3 換算で52.5 〜57.0 mol%、Mn酸化物をMnO 換算で32.0 〜40.0 mol%、残部ZnO を含む本来的なMnZnフェライト組成にした後、造粒、成形および本焼成を行えば、本焼成の昇温時における酸素放出が著しく低減することから、本焼成の昇温時における雰囲気の酸素濃度をそれほど下げなくても、あるいは大気雰囲気としても、酸化物同士の固溶体化および緻密化が十分に進み、結晶組織も均一になる。
この結果、焼結密度が上がることにより高い飽和磁束密度が得られる。同じく焼結密度が上がり、ポアなど交流磁場中において反磁界を生じさせる要因が少なくなることや、結晶組織が均一になることなどから、良好な初透磁率が得られる。特に、MnZnフェライトの初透磁率は結晶磁気異方性と磁歪とに逆比例することが知られているが、本MnZnフェライトのようにFe酸化物をFe3 換算で52.5 〜57.0 mol%の範囲とした場合は、結晶磁気異方性と磁歪を小さく抑えることができて、高い初透磁率を確保することができる。また、MnZnフェライトの飽和磁束密度は、Fe酸化物とMn酸化物との含有量に依存するが、上記理由で決めたFe酸化物に対してMn酸化物をMnO の換算で32.0 〜40.0 mol%の範囲とすることで、高い飽和磁束密度が得られるようになる。
磁心損失は、主にヒステリシス損と渦電流損失とからなるが、本発明の方法により製造されるMnZnフェライトは、上記したように高い密度を有しかつ高い飽和磁束密度と初透磁率とを有していることから、ヒステリシス損失および渦電流損失が小さくなる。
【0008】
本発明において、成分調整のために仮焼成粉末に加えるFe酸化物としては、Feを用いてもよいが、これよりも酸化度の低いFeまたはFeO を用いるのが望ましい。FeまたはFeO を用いた場合は、これらFe酸化物がMn酸化物からの放出酸素を吸収してFeに酸化されるので、焼成時における雰囲気の酸素濃度の制御は容易となる。
【0009】
本発明の方法で得られる最終生成物としてのMnZnフェライトは、副成分としてSnOおよびTiOのうちの少なくとも一種を50〜2000 ppm含むようにしてもよいものである。これらSnOおよびTiOを添加する目的は、Sn4+またはTi4+によりFe3+を還元してFe2+を生成させること並びにMn3+を還元してMn2+を生成させることにある。本発明者等は、これらの還元反応が、Fe3 50 mol%未満の組成にて仮焼成した場合に起こることを見い出して本発明をなしたもので、前記副成分としてのSnOまたはTiOは、仮焼成時の酸素放出をより促進させる効果がある。これに対し、Fe3 が50 mol%以上の組成にて仮焼成した場合は、酸素放出はほとんど起こらず、副成分添加の効果はあまり期待できない。ただし、これら副成分の含有量は、50 ppmでは前記効果がほとんど期待できず、逆に2000 ppmを超えると、密度や飽和磁束密度などの低下を招くので、前記範囲50〜2000 ppmとするのが望ましい。なお、これらSnO、TiO2 は、MnZnフェライトを高抵抗化させることも知られており、前記酸素放出と高抵抗化の相乗効果により渦電流損失をより一層小さくすることができる。
【0010】
また、本発明の方法で得られる最終生成物としてのMnZnフェライトは、副成分としてNbおよびMoO のうちの少なくとも一種を50〜1000 ppm含むようにしてもよいものである。Nb5 、MoOを添加する目的は、焼成時の昇温中および焼成中、Nbイオン、Moイオンともに粒界を活発に移動(拡散)することによって、酸素イオンの移動(拡散)を活性化させることにある。本発明者等は、この現象が、Fe3 が50 mol%未満の組成にて仮焼成した場合に起こることを見い出したもので、これによって、上記したSnO やTiO 添加の場合と同様、仮焼成時における酸素放出が促進される。これに対し、Fe3 が50 mol%以上の組成にて仮焼成した場合は、これら。Nb5 、MoOを添加しても酸素放出はほとんど起こらず、副成分添加の効果はあまり期待できない。ただし、これら副成分の含有量は、50 ppmでは前記効果がほとんど期待できず、逆に1000 ppmを超えると、焼成密度の低下による損失の増大が起こるので、前記範囲50〜1000 ppmとするのが望ましい。なお、これらNb5 、MoOは、上記したSnOやTiOと同様、MnZnフェライトを高抵抗化させることも知られており、前記酸素放出と高抵抗化の相乗効果により渦電流損失をより一層小さくすることができる。
【0011】
低損失MnZnフェライトの製造に際しては、予め主成分としてのFe 、MnO 、ZnO の各原料粉末を所定の比率となるように配合し、必要に応じて、副成分としてのSnO、TiO、Nb、MoO等の各原料粉末を必要量加えて、これらの混合粉末を空気中、800〜1000℃で仮焼し、その後、微粉砕して仮焼成粉末を得る。次に、Fe、Fe、FeO等のFe酸化物を加えて目標組成となるように成分調整を行い、その後は、通常のフェライト製造プロセスに従って造粒、成形を行い、最終的に焼成炉中で、窒素ガス等の不活性ガスを流すことにより酸素濃度を制御した雰囲気にて、1250〜1400℃で焼成を行う。
【0012】
本製造方法において、Feとしての酸化鉄原料には、主に天然の硫化鉄を精製して得られるものと製鉄所において鋼板の酸洗い工程で発生するもの(鉄錆)とがあるが、いずれの酸化鉄原料とも、Ca、Si、Cl、S、P等を不純物として含んでいる。これら不純物のうち、Cl、S、Pの大半はフェライト製造プロセス中の仮焼成工程および本焼成工程にておよそ800℃以上に加熱されることで飛散するが、Ca、Siはそのまま不純物として残る。しかし、CaOは800ppm以下、SiOは50ppm以下であれば、磁気特性や機械的強度に対する悪影響は少ないので、本発明の最終生成物は、前記した範囲内でCaO およびSiOを含有してもかまわない。
また、鉄鋼材料において鉄と格子定数の近いMn、Cr、Ni、V等は、製鉄所の精錬工程を経た後において、鉄鋼中に含まれており、したがって酸化鉄原料経由でMnZnフェライト中に混入してくる。しかし、これらMn、Cr、Ni、V等は微量であれば、磁気特性や機械的強度に対する悪影響はほとんどないので、本発明の最終生成物は、これら金属を微量含有してもかまわない。
【0013】
【実施例】
Feが49.5 mol%、Mn酸化物がMnO 換算で38.4 mol%、ZnO が12.1 mol%となるように各原料粉末を配合し、必要によりさらにSnO、TiO、Nb、MoOを所定量添加し、ボールミルにてよく混合した後、この混合物を、空気中にて900℃で2時間仮焼成し、さらにボールミルにて20時間微粉砕して仮焼成粉末を得た。
次に、この仮焼成粉末にFe酸化物(Fe 、Fe 、FeO)を加えて、Fe酸化物がFe換算で54.0 mol%、Mn酸化物がMnO 換算で35.0 mol%、ZnO が11.0 mol%となるように成分調整し、ボールミルにて1時間混合した後、仮焼成粉末にポリビニルアルコールを加えて造粒し、80 MPa の圧力で外径25.0mm、内径15.0mm,高さ(厚さ)5.0 mmのトロイダル状コア(成形体)を成形した。その後、この成形体を焼成炉に入れ、窒素を流すことにより酸素濃度を下げた雰囲気中にて、1350℃で3時間本焼成を行い、表1に示すような試料(焼成体)1〜10を得た。ただし、焼成に際しては、昇温時、焼成時、冷却時ともに窒素雰囲気とする条件と焼成時および冷却時は窒素雰囲気として、昇温時に大気とする条件との2通りのうち、何れかの条件を選択した。なお、表1中には、前者の条件を窒素中、後者の条件を大気中としてそれぞれ記している。
また、これとは別に、Fe酸化物がFe 換算で54.0 mol%、Mn酸化物がMnO 換算で35.0 mol%、ZnO が11.0 mol%となるように各原料粉末を配合し、ボールミルにてよく混合した後、この混合物を、空気中にて900℃で2時間仮焼成し、さらにボールミルにて20時間微粉砕して仮焼成粉末を得た。その後は、上記したと同様の条件で造粒、成形および本焼成を行い、表1に示すような試料(焼成体)11、12を得た。なお、焼成時には、上記した2通りの条件(窒素中、大気中)のうちの何れかを選択した。
【0014】
そして、上記のようにして得た各試料1〜12について、蛍光エックス線にて定量分析を行って成分を確認し、焼成体密度dsを測定した。
また、各試料1〜12について磁気特性の試験を行い、100kHzにおける初透磁率μi、1194A/mにおける飽和磁束密度Bs、100kHz−200mT並びに200kHz−200mTにおける磁心損失Pcvを測定した。
さらに、各試料1〜12について、三点曲げ試験を行って曲げ強度TAを測定するとともに、各試料1〜12を、100℃と0℃との間で数回、急激に温度変化させて熱衝撃を加え、その後に前記同様の三点曲げ試験を行って曲げ強度(熱履歴強度)TBを測定した。
これらの結果を表1および表2に一括して示す。
【0015】
【表1】
Figure 2004067444
【0016】
【表2】
Figure 2004067444
【0017】
表1および表2に示す結果より、Feの配合量が50 mol%未満(49.5 mol%)である混合粉末を用いて仮焼成を行った場合は、試料1および試料2に見られるように、十分に密度dsが上がり、しかも高い初透磁率μiと飽和磁束密度Bsとが得られており、これに応じて磁心損失Pcvも、100kHzで450kW/m以下、200kHzで1450 kW/m以下の低い値となっている。また、曲げ強度TAおよび熱履歴強度TBについては、両者の間でそれほどの差がなく、熱衝撃に対する耐性も十分であることが明らかである。さらに、試料1と試料2との比較より、焼成時に大気中で昇温した試料1でも、密度ds、初透磁率μiおよび飽和磁束密度Bsを始め、磁心損失Pcv、曲げ強度TA、熱履歴強度TBがともに、窒素中で焼成を行った試料2とほとんど差がない値が得られており、焼成時に厳密に雰囲気管理を行わなくても、所望の品質が確保されることが明らかである。
一方、Fe 、FeOを成分調整に用いた試料3、4とFeを成分調整に用いた試料1との比較より、熱衝撃を加えた熱履歴強度TBの、曲げ強度TAに対する低下程度は、試料3、4の方が試料1より小さくなっている。
さらに、副成分としてのSnO、TiO、Nb、MoOを適量添加した試料5、6、8、9と副成分を含まない上記試料1、2との比較より、副成分の適量添加により磁心損失Pcvが、100kHz で390kW/m以下、200kHzで1390 kW/m以下と、より一層低下しており、低損失材としてきわめて有用であることが明らかとなった。
【0018】
これに対し、一般のMnZnフェライト製造プロセスと同様に、Feを50 mol%以上(54.0 mol%)含む混合粉末を用いて仮焼成を行った場合は、試料11および試料12に見られるように、密度dsがそれほど上がらず、初透磁率μiおよび飽和磁束密度Bsともに低い値となっており、これに応じて磁心損失Pcvは、100kHz で580kW/m以上、200kHzで2480 kW/m以上の高いレベルにある。また、曲げ強度TAおよび熱履歴強度TBについては、熱履歴強度TBの方が曲げ強度TAに対して大幅に低下しており、熱衝撃に対する耐性に著しく劣ることが明らかである。さらに、試料11と試料12との比較より、焼成時に大気中で昇温した試料11の方が窒素中で焼成を行った試料12よりも、密度dsを始め、初透磁率μi、曲げ強度TA、熱履歴強度TB等がかなり低い値となる一方で、磁心損失Pcvが高くなっており、窒素雰囲気中での焼成が絶対的に必要であることが明らかである。
また、副成分としてのTiO、MoOが適量を超えて加えられた場合は、試料7、10に見られるように、密度ds、初透磁率μiおよび飽和磁束密度Bsを始め、磁心損失Pcv、曲げ強度TA、熱履歴強度TB等の各特性値が、Fe を50 mol%以上含む混合粉末を用いて仮焼成を行った試料11、12のレベルまで低下しており、副成分を添加する場合は、その適量添加に十分に配慮する必要があることが分った。
【0019】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明に係る低損失MnZnフェライトの製造方法によれば、Feを50 mol%未満に抑えた混合粉末を用いて仮焼成するようにしたので、仮焼成時に酸素放出が進んで本焼成時における酸素放出が大幅に低減し、本焼成時の雰囲気管理を厳密にしなくても、緻密化および固溶体化が十分に進み、軟磁気特性が十分で、しかも低い損失を有するMnZnフェライトを安定的に得ることができるようになる。また、副成分添加により結晶粒界を高抵抗化する方策と違って、結晶組織的な均一性が確保されるので、得られたMnZnフェライトは、振動や繰返し熱衝撃に対する耐性も十分優れたものとなり、自動車向けとしても好適となる。さらに、本焼成時の雰囲気管理を厳密にする必要がない分、製造は容易となり、連続炉による大量処理も可能になって、製造コストの低減を達成できる。

Claims (5)

  1. Fe3 が50.0 mol%未満となるように配合した原料粉末の混合物を仮焼成した後、微粉砕して仮焼成粉末を得、次に、前記仮焼成粉末にFe酸化物の粉末を加えて成分調整し、しかる後、造粒、成形および本焼成を順に行って、Fe酸化物をFe3 換算で52.5 〜57.0 mol%、Mn酸化物をMnO 換算で32.0 〜40.0 mol%、残部ZnO を含む焼成体を得ることを特徴とする低損失MnZnフェライトの製造方法。
  2. Fe3 が50.0 mol%未満となるように配合した原料粉末の混合物を仮焼成した後、微粉砕して仮焼成粉末を得、次に、前記仮焼成粉末にFe酸化物の粉末を加えて成分調整し、しかる後、造粒、成形および本焼成を順に行って、主成分としてFe酸化物をFe3 換算で52.5 〜57.0 mol%、Mn酸化物をMnO 換算で32.0 〜40.0 mol%、残部ZnO を含み、かつ副成分としてSnO およびTiO のうちの少なくとも一種を50〜2000 ppm含む焼成体を得ることを特徴とする低損失MnZnフェライトの製造方法。
  3. Fe3 が50.0 mol%未満となるように配合した原料粉末の混合物を仮焼成した後、微粉砕して仮焼成粉末を得、次に、前記仮焼成粉末にFe酸化物の粉末を加えて成分調整し、しかる後、造粒、成形および本焼成を順に行って、主成分としてFe酸化物をFe3 換算で52.5 〜57.0 mol%、Mn酸化物をMnO 換算で32.0 〜40.0 mol%、残部ZnO を含み、かつ副成分としてNb3 およびMoO のうちの少なくとも一種を50〜1000 ppm含む焼成体を得ることを特徴とする低損失MnZnフェライトの製造方法。
  4. Fe3 を50.0 mol%未満含むことを特徴とするMnZnフェライト用仮焼成粉末。
  5. 副成分としてSnO 、TiO 、MoO およびNb3 のうちの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項4に記載のMnZnフェライト用仮焼成粉末。
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