JP2004052194A - 複合繊維及びその製造方法 - Google Patents

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elongation
dtex
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ptt
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Tadashi Koyanagi
小柳  正
Akira Yamashita
山下  明
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Asahi Kasei Fibers Corp
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Abstract

【課題】PTT系複合繊維を、組織拘束力が比較的小さい裏地織物に用いた際に、熱処理により発生する楊柳調シワやヒケ、パッカリングなどの表面品位欠点を解消する。
【解決手段】2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏芯鞘芯型に貼り合わされた単糸群からなり、単糸を構成する少なくとも一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、下記(1)〜(5)の要件を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維。
(1)沸水処理前に顕在している捲縮の伸縮伸長率が、20%以下
(2)3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けて沸水処理した後に測定される、伸縮伸長率が2〜10%
(3)乾熱収縮応力値が0.05〜0.24cN/dtex
(4)破断伸度が30〜45%
(5)伸長―応力測定における10%伸長時の応力値が、糸長方向に沿って、最大と最小の差が0.30cN/dtex以下
【選択図】    なし

Description

【特許請求の範囲】
【請求項1】2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏芯鞘芯型に貼り合わされた単糸群からなり、単糸を構成する少なくとも一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、下記(1)〜(5)の要件を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維。
(1)沸水処理前に顕在している捲縮の伸縮伸長率が20%以下
(2)3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けて沸水処理した後に測定される伸縮伸長率が2〜10%
(3)乾熱収縮応力値が0.05〜0.24cN/dtex
(4)破断伸度が30〜45%
(5)伸長―応力測定における10%伸長時の応力値が、糸長方向に沿って、最大と最小の差が0.30cN/dtex以下
【請求項2】複合繊維の乾熱収縮応力値が、0.05〜0.15cN/dtexであることを特徴とする請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維。
【請求項3】単糸を構成する両方の成分が、ポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維。
【請求項4】2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏芯鞘芯型に貼り合わされた単糸群からなり、単糸を構成する少なくとも一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートである複合繊維を製造するに際し、以下の(A)〜(D)の要件を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維の製造方法。
(A)2つのポリエステル成分の固有粘度差が、0.05〜0.9で溶融
し、
(B)2つのポリエステル成分が合流した後の吐出孔径と孔長の比が2以
上で、吐出孔が鉛直方向に対し10〜40度の傾斜を有した紡糸孔
を用いて吐出し、冷却後、一旦巻き取ることなく延伸した後、
(C)第2ロールと第3ロール間で0.05〜0.25cN/dtexの
張力で熱処理し、
(D)巻取速度を4000m/分以下で巻き取る。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は裏地用織物用途に適したポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維及びその製造方法に関する。更に詳しくは、直接紡糸延伸法によって得られるポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維であって、裏地織物に使用した際に、楊柳調シワやヒケ、パッカリングなどの欠点を発生することなく、ソフトな風合いと優れたストレッチ特性及び表面品位を発現するポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維及びそれを工業的に安定に製造する製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、編織物のなかでもストレッチ性能を付与したストレッチ編織物が、その着用感から強く要望されている。
かかる要望を満足するために、例えば、ポリウレタン系の繊維を混繊することにより、ストレッチ性を付与した編織物が多数用いられている。
しかしながら、ポリウレタン系繊維は、ポリエステル系染料に染まり難く、そのために染色工程が煩雑になることや、長期間の使用時に脆化し、性能が低下するなどの問題がある。
こうした欠点を回避する目的で、ポリウレタン系繊維の代わりに、ポリエステル系繊維の捲縮糸の応用が検討されている。
近年、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、PTTと称す)の伸長回復性に着目して、PTT系捲縮糸が提案されている。
特に、2種類のポリマーをサイド−バイ−サイド型、または偏芯的に貼合わせて、熱処理後に捲縮を発現させる潜在捲縮繊維が多数提案されている。
【0003】
それについての先行技術として、特公昭43−19108号公報、特開2000−239927号公報、特開2000−256918号公報、特開2001−55634号公報、特開2001−131387号公報、ヨーロッパ特許(EP)1059372号明細書、米国特許第6306499号明細書、特開2001−40537号公報、特開2002−61031号公報、特開2002−54029号公報等が挙げられる。これらには、少なくとも一方の成分にPTTを用いるか、両方の成分に固有粘度の異なるPTTを用いたサイド−バイ−サイド型2成分系複合繊維、および偏芯鞘芯型複合繊維(以下、両者を含めて、PTT系複合繊維と呼称する)が提案されている。このPTT系複合繊維はソフトな風合いと、良好な捲縮発現特性を有することが特徴である。これらの先行技術には、伸縮性と伸長回復性を有し、この特性を活かして種々のストレッチ編織物、或いはかさ高性編織物への応用が可能であることが記載されている。
【0004】
特開2001−131387号公報や、特開2001−348734号公報、特開2002−61030号公報には、これらのPTT系複合繊維を製造するにあたり、紡糸―延伸を連続して行ういわゆる直接紡糸延伸法が提案されている。特に、特開2001−131387号公報には、熱収縮応力値を0.25cN/dtex以上とすることにより、3.5×10−3cN/dtexの荷重下でも10%以上の捲縮伸長率を有するPTT系複合繊維が開示されている。
この複合繊維は、強撚や組織拘束力の大きな織物に使用して、高い捲縮性を発現することが開示されている。
【0005】
しかし、無撚〜1000回/m以下の低撚り数での使用や、裏地などのように比較的に組織拘束力の小さい織物に、該公報に開示されるような熱収縮応力値の大きな捲縮糸を使用すると、織物に楊柳調のシワが生じ、商品価値が損なわれることが明らかになった。
我々の検討によれば、裏地織物に見られる楊柳調シワの発生原因は、経糸の拘束力と緯糸の収縮力とのアンバランスにあることが判明した。
即ち、裏地織物のように、経糸本数が約120本/2.54cm以下であり、カバーファクターが約2000以下であるような、経糸の拘束力が比較的弱い組織に、収縮力の高い緯糸を組み合わせると、経糸の並びが崩れ、楊柳調シワとなるものと推定される。
【0006】
更に、該公報に開示されるような高捲縮性の複合繊維は、熱処理前にも捲縮が顕在化している。このような顕在捲縮が製織時に伸長応力を受けることにより、捲縮が不規則に伸長し、織物製品の表面にヒケやパッカリングなどを生じ、織物品位を低下させることが明らかになった。
従って、裏地織物に使用して、楊柳調シワやヒケ,パッカリングなどの欠点の発生がなく、良好な表面品位と優れたストレッチ性を呈するPTT系複合繊維の出現が強く求められていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、組織拘束力が比較的小さい裏地織物などにおいて、熱処理により発生する楊柳調シワや表面品位欠点を解消することである。
本発明の目的は、良好な表面品位と適度なストレッチ性を有する裏地織物に最適なPTT系複合繊維および、それを直接紡糸延伸法で安価に製造する製造法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、PTT系複合繊維を直接紡糸延伸法により製造するにおいて、PTT系複合繊維の物性と熱収縮特性を特定することにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明の第1の発明は、2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏芯鞘芯型に貼り合わされた単糸群からなり、単糸を構成する少なくとも一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、下記(1)〜(5)の要件を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維である。
(1)沸水処理前に顕在している捲縮の伸縮伸長率が20%以下
(2)3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けて沸水処理した後に測定される伸縮伸長率が2〜10%
(3)乾熱収縮応力値が0.05〜0.24cN/dtex
(4)破断伸度が30〜45%
(5)伸長―応力測定における10%伸長時の応力値が、糸長方向に沿って、最大と最小の差が0.30cN/dtex以下
【0009】
本発明の第2の発明は、2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏芯鞘芯型に貼り合わされた単糸群からなり、単糸を構成する少なくとも一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートである複合繊維を製造するに際し、以下の(A)〜(D)の要件を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維の製造方法である。
(A)2つのポリエステル成分固有粘度差が、0.05〜0.9で溶融し、
(B)2つのポリエステル成分が合流した後の吐出孔径と孔長の比が2以上
で、吐出孔が鉛直方向に対し10〜40度の傾斜を有した紡糸孔を用
いて吐出し、冷却後、一旦巻き取ることなく延伸した後、
(C)第2ロールと第3ロール間で、0.10〜0.25cN/dtex
の張力で熱処理した後、
(D)巻取速度を4000m/分以下で巻き取る。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明においては、2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏芯鞘芯型に貼り合された単糸群からなる複合繊維で、単糸を構成する少なくとも一方の成分がPTTであり、他方の成分が他のポリエステルからなるPTT系複合繊維を対象とする。
即ち、PTTと他のポリエステルの組み合わせや、PTTどうしの組み合わせを対象とする。
本発明におけるPTT系複合繊維を構成する単糸の少なくとも一方は、PTTホモポリマー、または10モル%以下のその他のエステル繰り返し単位を含む共重合ポリトリメチレンテレフタレートである。
【0011】
共重合成分の代表例は、以下のようなものが挙げられる。
酸性分としては、イソフタル酸や5−ナトリウムスルホイソフタル酸に代表される芳香族ジカルボン酸、アジピン酸やイタコン酸に代表される脂肪族ジカルボン酸等々が挙げられる。グリコール成分としては、エチレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等々が挙げられる。また、ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸もその例である。これらの複数が共重合されていても良い。
PTT系複合繊維を構成する単糸の他のポリエステル成分としては、PTTの他、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと称す)、ポリブチレンテレフタレート(以下PBTと称す)、またはこれらに第3成分を共重合させたものが用いられる。
【0012】
本発明に使用するPTTポリマーの製造方法は公知のもので良い。溶融重合のみで所定の固有粘度に相当する重合度とする1段階法や、一定の固有粘度までは溶融重合で重合度を上げ、続いて固相重合で所定の固有粘度に相当する重合度まで上げる2段階法である。
後者の固相重合を組み合わせる2段階法であることが、環状ダイマーの含有率を減少させる目的から、好ましい。
1段階法で重合度を所定の固有粘度とする場合には、紡糸に供給する以前に抽出処理などにより環状ダイマーを減少させておくことが望ましい。
【0013】
本発明に使用するPTTポリマーは、トリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率が2.5重量%以下であることが好ましく、1.1重量%より少ないことが更に好ましく、特に好ましくは1.0重量%以下である。
本発明においては、単糸を構成する成分が2成分ともにPTTであることがより好ましい。成分の両方がPTTであると、優れたストレッチバック性が発現できる。
両方の成分がPTTである場合には、トリメチレンテレフタレート環状ダイマーの含有率が、いずれも1.1重量%以下のものを使用することが、複合繊維中の環状ダイマー含有率を低減させる目的から望ましい。
【0014】
本発明におけるPTT系複合繊維の平均固有粘度は、0.7〜1.2dl/gの範囲であることが好ましい。
平均固有粘度が0.7dl/g未満では、得られる複合繊維の強度が低く、布帛の機械的強度が低下し強度を要求されるスポーツ用途などへの使用が制約される。平均固有粘度が1.2dl/gを越えると、複合繊維の製造段階で糸切れが生じ、安定した製造が困難となる。好ましい平均固有粘度は、0.8〜1.2dl/gの範囲である。
また、そのときの両成分の固有粘度差が0.05〜0.9dl/gで、かつ、平均固有粘度が0.8〜1.2dl/gであることが更に好ましい。
【0015】
本発明において、2つのポリエステル成分の単糸断面における配合比率は、高粘度成分と低粘度成分の比率が40/60〜70/30であることが好ましい。高粘度成分の比率が40%未満になると、糸の強度が2cN/dtex未満となり、布帛の引き裂き強度が不十分となる。また、高粘度成分の比率が70%より大きいと捲縮性能が低下する。更に好ましい配合比率は、45/55〜65/35である。
本発明において、2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型に貼り合わされた単糸群からなる複合繊維では、単糸断面の接合界面の曲率r(μm)が10d0.5未満であることが好ましい。ここで、dは単糸デシテックスを示す。本発明では、この曲率rが4〜9d0.5であることが好ましい。
【0016】
本発明のPTT系複合繊維は、沸水処理前に顕在化している捲縮の伸縮伸長率(Vc)が20%以下であることが必要である。沸水処理前に顕在化している捲縮の伸縮伸長率が20%を越えると、整経や製織時の僅かな張力変化により、捲縮の伸長に斑が生じ、織物の表面品位が低下する。顕在している捲縮は、小さい程織物表面品位が良好となる。沸水処理前に顕在化している捲縮の伸縮伸長率は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
本発明のPTT系複合繊維は、3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けて沸水処理した後に測定される、伸縮伸長率(CE3.5)が2〜10%であることが必要である。伸縮伸長率(CE3.5)が10%を越えると、織物表面に楊柳調シワが発生し、商品価値を損なう。伸縮伸長率(CE3.5)が2%未満では、裏地織物のストレッチ率が小さくなる。好ましい伸縮伸長率(CE3.5)は、3〜8%である。
【0017】
本発明のPTT系複合繊維は、乾熱収縮応力値が0.05〜0.24cN/dtexであることが必要である。乾熱収縮応力値が0.24cN/dtexを越えると、パッケージに巻かれたPTT系複合繊維が、経時的に収縮して巻締りを生じ、解じょ張力の変動をきたし、織物にシボやパッカリングが発生し、品位が低下する。乾熱収縮応力値が0.05cN/dtex未満では、PTT系複合繊維の製造時に、安定した巻取が困難となる。好ましい乾熱収縮応力値は、0.05〜0.20cN/dtex、更に好ましくは0.05〜0.15cN/dtexである。
【0018】
本発明のPTT系複合繊維は、破断伸度が30〜45%であることが必要である。破断伸度が30%未満では、工業的に安定した紡糸が困難となる。破断伸度が45%を越えると、破断強度が約2cN/dtex以下となり、裏地織物の引き裂き強度が低下する。好ましい破断伸度は、35〜45%である。
本発明のPTT系複合繊維は、複合繊維の伸長―応力測定における10%伸長時の応力値が、糸長方向に沿って、最大と最小の差(以下、10%伸長応力値差と称す)が0.30cN/dtex以下であることが必要である。伸長―応力測定における10%伸長時の応力値は、繊維の配向度や結晶化度などの微細構造によって異なった値を示す。本発明では、この10%伸長時の応力値のバラツキが織物の染め品位と良く対応することを見出した。そして、糸長方向のバラツキが小さいほど、染めの均一性に優れている。10%伸長時応力の糸長方向での最大と最小の差が0.30cN/dtexを越えると、織物の染め品位が不良となる。最大と最小の差は、0.20cN/dtex以下が好ましい。なお、好ましくは0以上である。
【0019】
本発明のPTT系複合繊維の繊度や単糸繊度は、特に限定されないが、繊度は20〜300dtex、単糸繊度は0.5〜20dtexが使用される。
また、単糸断面形状は特に限定されるものではなく、丸,Y,W字状の異型断面や、中空断面形状などであってもよい。
本発明のPTT系複合繊維には、本発明の効果を妨げない範囲で酸化チタン等のつや消し剤や、熱安定剤、酸化防止剤、制電剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、種々の顔料等の添加剤を含有または共重合として含有させても良い。
【0020】
以下、本発明の第2の発明である製造方法について説明する。
本発明の製造方法においては、2つのポリエステル成分の固有粘度差が0.05〜0.9で溶融紡糸することが必要である。
固有粘度差が0.05より小さいと、織物とした場合に、十分なストレッチ性や回復性が得られない。また、固有粘度差が0.9dl/gを越えると、紡口設計や吐出条件を変更しても、吐出時の糸曲がりや孔汚染が十分に解消されず、PTT系複合繊維の繊度変動が大きくなり好ましくない。好ましい固有粘度差は、0.1〜0.60dl/gである。両方の成分がPTTである場合には、固有粘度差は0.1〜0.4であることが好ましい。
【0021】
本発明の製造方法には、図1に示す紡糸口金以外は公知の2軸押出機を有する複合紡糸用設備を用いて製造することができる。
図1は、本発明の製造に好適な紡糸口金の模式図を示す。
図1において、(イ)は分配板で、(ロ)は紡糸口金である。固有粘度の異なるA、Bのポリトリメチレンテレフタレートは、分配板(イ)から紡口(ロ)に供給される。紡口(ロ)で、両者が合流した後、鉛直方向に対してθ度の傾斜を有した吐出孔より吐出される。吐出孔の孔径はD、孔長はLで示される。本発明においては、この吐出孔径Dと孔長Lの比が2以上であることが好ましい。
【0022】
吐出孔径Dと孔長Lの比は、組成または固有粘度の異なる2種のポリエステルが合流した後に、両成分の接合状態が安定するにはこの比は2以上であることが好ましい。孔径と孔長の比が2未満では、接合が不安定となり孔から吐出する際にポリマーの溶融粘度差に起因する揺らぎが生じ、10%伸長応力値差を本発明の範囲に維持することが困難となる。
吐出孔径と孔長の比は、大きい程好ましいが、孔の製作が困難となることから2〜8であることが好ましい。より好ましくは2.5〜5である。
本発明に用いる紡糸口金の吐出孔は、鉛直方向に対し10〜40度の傾斜を有していることが必要である。
【0023】
本発明では、特定の角度に傾斜した孔を用いて紡糸することにより、10%伸長応力値差を本発明の範囲に維持することに成功した。ここで、吐出孔の鉛直方向に対する傾斜角とは、図1中でθ(度)を指す。鉛直方向に対して孔が傾斜していることは、組成または固有粘度の異なる2種のポリエステルを吐出する際に、溶融粘性差に起因する糸曲りを解消する重要な要件である。吐出孔が傾斜を有していない場合には、例えばPTTどうしの組み合わせで固有粘度差が拡大する程、吐出直後のフィラメントが固有粘度の高い方向へ曲がる、いわゆるベンディング現象が発生し、10%伸長応力値差を本発明の範囲に維持することが困難となるばかりか、安定した紡糸が困難となる。図1においては、固有粘度の高いPTTポリマーをA側に、固有粘度の低い他のポリエステルまたはPTTポリマーをB側に供給して吐出することが好ましい。
【0024】
例えば、PTTポリマー同士で、固有粘度差が約0.1以上においては、ベンディングを解消し安定した紡糸を実現するには、吐出孔が鉛直方向に対して少なくとも10度以上傾斜していることが好ましい。極限粘度差を拡大する場合には、傾斜角度は更に大きくすることが好ましい。しかし、傾斜角度が40度を越えると、吐出部が楕円形となり安定した紡糸が困難となる。また、孔の製作そのものにも困難を伴う。好ましい傾斜角度は15〜35度、更に好ましくは20〜30度である。
本発明では、この傾斜角度は吐出孔の孔径と孔長の比が2以上の組み合わせの場合により有効に効果を発揮する。孔径と孔長の比が2未満では、傾斜角度をいかに調整しても吐出の安定効果を得ることは難しくなる。
【0025】
本発明の製造方法では、上記吐出孔を有する紡糸口金を用いて、2種のポリエステルが合流した後の吐出条件を平均固有粘度[η](dl/g)と吐出線速度V(m/分)の積が3〜20(dl/g)・(m/分)として紡糸することが必要である。
この吐出条件は、孔の周辺に長時間の紡糸により付着する「めやに」による孔汚染を解消し、10%伸長応力値差を本発明の範囲とするための必要条件である。この積が3(dl/g)・(m/分)未満では、孔汚染は減少するが吐出速度と巻取速度の比が過大となり10%伸長応力値差が0.30cN/dtexを越えるものとなる。20(dl/g)・(m/分)を越えると、孔の汚染速度が著しく増加し連続した生産が困難となる。好ましい範囲は5〜15(dl/g)・(m/分)である。
【0026】
本発明の製造方法においては、紡糸、冷却した後、未延伸糸を一旦巻き取ることなく引き続いて延伸後、第2ロールと第3ロール間で0.05〜0.25cN/dtexの張力で熱処理することが必要である。
熱処理張力が0.25cN/dtexを越えると、熱収縮応力値が0.24cN/dtexを越え、織物に楊柳調シワが発生する。熱処理張力が0.05cN/dtex未満では、伸縮伸長率が2%未満となり、ストレッチ性が不足する。好ましい熱処理張力は0.10〜0.20cN/dtexである。
【0027】
本発明の製造方法においては、巻取速度を4000m/分以下で巻取ることが必要である。
巻取速度が4000m/分を越えると、巻取後のパッケージが経時的に収縮し、パッケージの端部に起因する周期的斑が発生し、織物の品位が低下する。好ましい巻取速度は2500〜3800m/分である。
本発明の製造方法においては、紡糸速度を1500〜3000m/分で紡糸し、延伸後、熱処理することが好ましい。紡糸速度が1500m/分未満では、織物の染め品位が低下することがある。紡糸速度が3000m/分を越えると、延伸後のPTT系複合繊維の破断強度が約2cN/dtex以下となり、強度を要求される分野への展開が制約されることがある。好ましい紡糸速度は1600〜2500m/分である。
【0028】
本発明の製造方法に用いる複合紡糸設備の模式図を図2に示す。
まず、一方の成分を乾燥機1で20ppm以下の水分率までに乾燥されたPTTペレットを250〜280℃の温度に設定された押出機2に供給し溶融する。他方の成分も同様にして、乾燥機3および押出機4により溶融する。
溶融PTTは、その後ベンド5及び6を経て250〜285℃に設定されたスピンヘッド7に送液され、ギヤポンプで別々に計量される。その後、スピンパック8に装着された複数の孔を有する紡糸口金9で2種類の成分が合流し、サイド−バイ−サイド貼り合わせた後、マルチフィラメント10として紡糸チャンバー内に押し出される。
【0029】
押出機及びスピンヘッドの温度は、PTTペレットの極限粘度や形状によって上記範囲から最適なものを選ぶ。
紡糸チャンバー内に押し出されたPTTマルチフィラメント10は、長さ50〜300mmの非送風領域11を経た後、冷却風12によって室温まで冷却固化され、仕上げ剤を付与した後、所定の速度で回転する第1ゴデットロール14によって引き取られ、一旦巻取ることなく、次いで第2ゴデットロール(本図では、加熱ゴデットロール)15との間で連続的に延伸した後、第3ゴデットロール16で緊張され熱処理された後、巻取機によって所定の繊度の複合繊維パッケージ17として巻き取られる。
【0030】
固化したマルチフィラメント10には、引取ゴデットロール14に接する前に、仕上げ剤付与装置13によって仕上げ剤が付与される。付与する仕上げ剤は、水系エマルジョンタイプが使用される。仕上げ剤の水系エマルジョンの濃度は、10重量%以上好ましくは15〜30重量%が採用される。
ゴデットロールの数は、2対以上が用いられる。例えば図2において、引取ゴデットロールの前に1対のプレテンションロールを設けても良い。
2対のゴデットロール間では、ゴデットロールの周速度を異ならせることにより1.2〜3倍の延伸が行われる。
【0031】
延伸に際しては、第1ゴデットロールの温度を50〜90℃、好ましくは55〜70℃が採用される。延伸後の糸は第2ゴデットロールで必要な熱処理を施される。熱処理の温度は80〜160℃、好ましくは100〜140℃が採用される。
第2ゴデットロールと第3ゴデットロール間は、緊張状態で熱処理される。第3ゴデットロールは加熱ゴデットロールであっても、非加熱であってもよい。
PTT系複合繊維の乾熱収縮応力値を0.05〜0.24cN/dtexとして、PTT系複合繊維の走行安定性を維持するには、第3ゴデットロールは非加熱ゴデットロールであることが好ましい。
【0032】
本発明において、延伸張力を0.3〜0.5cN/dtexとすることが好ましい。延伸張力は、引取ゴデットロール14と延伸ゴデットロール15(図2では加熱ゴデットロールと同じ)間の張力である。
延伸張力が0.3cN/dtex未満では、PTT系複合繊維の強度が約2cN/dtex未満となり機械的強度が不足する。延伸張力が0.5cN/dtexを越えると、破断伸度が30%未満となり安定した紡糸が困難となる。好ましい延伸張力は、0.3〜0.4cN/dtexである。延伸張力は、引取ゴデットロールと延伸ゴデットロールの周速度比、即ち延伸比と、引取ゴデットロールの温度を選定することにより決定することができる。
【0033】
本発明の製造方法においては、パッケージからのPTT系複合繊維の解じょ性を良好とする目的で、パッケージの巻取開始から終了までの間に、各巻径によって巻取綾角度を3度〜10度の範囲で異ならせて巻取ることが好ましい。綾角度は、巻取速度とトラバースの速度の調整により設定することができる。巻取綾角度が3度未満では、巻崩れが生じて正常な巻取が困難である。巻取綾角度が10度を越えると、延伸糸の乾熱収縮応力や巻取時の冷却をいかにしても耳高となり、本発明の目的が十分に達成されない。好ましい綾角度は、4度〜9度の範囲である。
【0034】
本発明では、綾角度を内層よりも中間層の綾角度を大きくすることが好ましい。ここで、パッケージの内層は、ボビンからの巻厚みが約10mm以内の積層部をいう。綾角度を巻径によって異ならせる最も好ましく例は、巻取開始すなわちパッケージの内層において、綾角度を低くし、巻径の増加とともに綾角度を徐々に高くし、パッケージの中層において最も高くする。その後、外層に至っては再び綾角度を低くすることである。このように、巻径により綾角度を変化して巻取ることにより、パッケージのバルジと耳高の双方を十分に小さくすることが可能となった。
【0035】
織物の組織としては、平織組織、綾織組織、朱子織組織をはじめ、それらから誘導された各種の変化組織を適用することができる。織物には、経糸のみ、緯糸のみまたは、経緯の両方のいずれにも本発明のPTT系複合繊維を使用することができる。これらの織物は、ストレッチ率が少なくとも10%、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上である。ストレッチ率が10%以上であれば、スポーツ衣料などで使用した場合に、局部的かつ瞬間的な運動変位に対して瞬間的に追随することから、本発明の目的が有効に発現される。織物の回復率は、80〜100%であることが好ましい。より好ましくは85〜100%である。また、織物を伸長する際の伸長応力が小さいことも本発明の特徴である。例えば、10%伸長時の応力が150cN/cm以下であれば、着用時の着圧感が小さく好ましい。より好ましくは、50〜100cN/cmである。本発明のPTT系複合繊維を用いた織物は、裏地用途に適性がある。例えば、婦人服や紳士服の裏地として用いると、屈曲時の圧迫感がなく、優れた衣服着用感が得られる。また、衣服に伸長応力がかかっても、縫い目などの滑落がなく優れた耐久性が得られる。
【0036】
本発明のPTT系複合繊維を織物に用いる際は、無撚のままでもよく、または収束性を高める目的で、交絡もしくは撚りを付与しても良い。撚りを付与する場合には、仮撚方向と同方向もしくは異方向に撚りを付与することが採用される。この場合、撚係数を5000以下にすることが好ましい。
撚係数は次式で表される。
撚係数K=撚数T(回/m)×(仮撚加工糸の繊度;dtex)1/2
【0037】
本発明のPTT系複合繊維は、単独で使用しても良く、または、他の繊維と複合して使用しても本発明の効果を発揮できる。複合は、長繊維のままでも、あるいは短繊維として使用してもよい。複合する他の繊維としては、例えば他のポリエステル繊維やナイロン、アクリル、キュプラ、レーヨン、アセテート、ポリウレタン弾性繊維などの化合繊や、綿、麻、絹、ウールなどの天然繊維が選ばれるが、これらに限られるものではない。また、複合は長繊維でも短繊維であっても良い。
【0038】
また、複合繊維と他の繊維とを混繊複合した織物とするには、混繊複合糸としては、他の繊維をインターレース混繊、インターレース混繊後延伸仮撚、どちらか一方のみ仮撚しその後インターレース混繊、両方別々に仮撚後インターレース混繊、どちらか一方をタスラン加工後インターレース混繊、インターレース混繊後タスラン加工、タスラン混繊、等の種々の混繊方法によって製造することができる。かかる方法によって得た混繊複合糸には、交絡が10個/m以上、好ましくは15〜50個/m付与することが好ましい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に実施例をもって本発明を更に詳細に説明するが、言うまでもなく本発明は実施例により限定されるものではない。
なお、実施例において行った物性の測定方法及び測定条件を説明する。
(1)固有粘度
固有粘度[η]は、次式の定義に基づいて求められる値である。
[η]=lim(ηrー1)/C
C→0
定義式中のηrは純度98%以上のo−クロロフェノール溶媒で溶解したPTTポリマーの稀釈溶液の35℃での粘度を、同一温度で測定した上記溶媒の粘度で除した値であり、相対粘度と定義されているものである。Cはg/100mlで現されるポリマー濃度である。
【0040】
(2)顕在捲縮の伸縮伸長率Vc
糸を周長1.125mの検尺機で10回かせ取りし、JIS−L−1013に定められた恒温恒湿室に無負荷のまま一昼夜静置した。
次いで、かせに以下に示す荷重を掛けてかせ長を測定し、以下の式から顕在の伸縮伸長率Vcを測定する。
伸縮伸長率%=(L2−L1)/L1×100
L1=1×10−3cN/dtex荷重付加時のかせ長
L2=0.18cN/dtex荷重付加時のかせ長
【0041】
(3)負荷時の伸縮伸長率(CE3.5
糸を周長1.125mの検尺機で10回かせ取りし、3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けた状態で、沸騰水中で30分間熱処理する。次いで、同荷重を掛けたまま乾熱180℃で15分間乾熱処理する。処理後、無負荷にして、JIS−L−1013に定められた恒温恒湿室に一昼夜静置した。次いで、かせに以下に示す荷重を掛けてかせ長を測定し、以下の式から伸縮伸長率を測定する。
負荷時の伸縮伸長率(CE3.5)%=(L2−L1)/L1×100
但し、 L1=1×10−3cN/dtex荷重付加時のかせ長
L2=0.18cN/dtex荷重付加時のかせ長
【0042】
(4)破断強度、破断伸度、10%伸長時応力値差
破断強度、破断伸度はJIS−L−1013に基づいて測定した。
10%伸長時応力差は糸長方向に伸長―応力測定を100回測定し、10%伸長時の応力(cN)を測定した。測定値の最大値と最小値を読み取り、この差を繊度(dtex)で徐して、10%伸長応力値差(cN/dtex)とした。
【0043】
(5)乾熱収縮応力値
熱応力測定装置(カネボウエンジニアリング社製、商品名KE−2)を用いて測定した。
繊維を約20cm長の長さに切り取り、これの両端を結んで輪をつくり測定器に装填する。初荷重0.05cN/dtex、昇温速度100℃/分の条件で測定し、熱応力の温度変化をチャートに書かせる。熱収縮応力は、高温域で山型の曲線を描く。このピーク値の読み取り値(cN)から、下記式で求められる値を乾熱収縮応力値とした。
乾熱収縮応力値(cN/dtex)=
(ピーク値の読み取り値cN)/(dtex×2)−初荷重(cN/dtex)
【0044】
(6)紡糸安定性
1錘当たり8エンドの紡口を装着した溶融紡糸―連続延伸機を用いて、各実施例ごとに2日間の溶融紡糸―連続延伸を行った。この期間中の糸切れの発生回数と、得られた複合繊維パッケージに存在する毛羽の発生頻度(毛羽発生パッケージの数の比率)から、以下のように判定した。
◎ ; 糸切れ0回、毛羽発生パッケージ比率    5%以下
○ ; 糸切れ2回以内、毛羽発生パッケージ比率 10%未満
× ; 糸切れ3回以上、毛羽発生パッケージ比率 10%以上
【0045】
(7)織物の調整
織物の作成は以下のように行った。
経糸に56dtex/24fのPTT単一の繊維(旭化成 「ソロ」)の無撚糊付け糸を用い、緯糸に本発明の各実施例および比較例の56dtex/24f複合繊維を用いて平織物を作成した。
経密度   110本/2.54cm
緯密度    98本/2.54cm
織機     津田駒工業社製 ウオータージェットルームZW−303
製織速度 450回転/分
得られた生機を、オープンソーパーにて95℃で連続精練後、120℃でシリンダー乾燥した後、液流染色機にて120℃で染色を行った。 次いで、175℃で仕上、幅だし熱セットの一連の処理を行った。
【0046】
(8)布帛評価
得られた織物を、熟練した検査技術者が検査し、緯の染め品位を以下のように判定した。
◎ ;楊柳調シワやヒケ、斑などの欠点なく、極めて良好
○ ;楊柳調シワやヒケ、斑などの欠点なく、良好
× ;楊柳調シワやヒケ、斑のいずれかの欠点があり、不良
【0047】
(9)織物のストレッチ率と回復率
得られた織物を用い以下の方法でストレッチ率と回復率を評価した。
島津製作所(株)製の引張試験機を用いて、つかみ幅2cm、つかみ間隔10cm、引張速度10cm/分で、試料を緯方向に伸長させたときの2.94N/cmの応力下での伸び(%)をストレッチ率とした。その後、再び同じ速度でつかみ間隔10cmまで収縮させた後、再度応力−歪み曲線を描き、応力が発現するまでの伸度を残留伸度(A)とする。回復率は以下の式によって求めた。
回復率=〔(10−A)/10〕×100%
【0048】
(10)総合評価
◎ ;紡糸安定性、織物品位共に極めて良好
○ ;紡糸安定性、織物品位共に良好
× ;紡糸安定性、織物品位のいずれかが不良
【0049】
【実施例1〜4、比較例1】
本実施例では、2つの成分の極限粘度差の効果について説明する。
一方の成分として、表1に示すように酸化チタンを0.4重量%含む高極限粘度のPTTと、他方の成分として酸化チタンを0.4重量%含む低極限粘度のPTTペレットを図2に示すような紡糸機及び3対のゴデットロールを有する巻取機を用いて、56dtex/24フィラメントPTT複合繊維パッケージを製造した。
【0050】
本実施例における紡糸条件は、以下のごとくである。
Figure 2004052194
【0051】
Figure 2004052194
【0052】
【表1】
Figure 2004052194
表1からも明らかなように、2つの成分間の極限粘度差が本発明の範囲であれば、織物は良好なストレッチ性とストレッチ回復性を示す。
【0053】
【実施例5〜7、比較例2〜3】
本実施例では、PTT系複合繊維の破断伸度及び顕在している捲縮の伸縮伸長率V及び、負荷時伸縮伸長率CE3.5効果について、説明する。
実施例2に示す固有粘度の組み合わせで、1ゴデットロールと2ゴデットロール間の速度比、即ち延伸倍率を表2に示すように異ならせて複合繊維を得た。
得られた複合繊維及び織物の物性を、表2に示す。
【0054】
【表2】
Figure 2004052194
表2から明らかなように、複合繊維の破断伸度及び顕在している捲縮の伸縮伸長率及び、負荷時伸縮伸長率が本発明の範囲であれば、良好な紡糸安定性及び織物品位を示す。
比較例3に示すように、破断伸度が本発明外であれば、紡糸時に糸切れが生じ、工業的な生産が困難であった。
【0055】
【実施例8〜10、比較例4〜5】
本実施例においては、乾熱収縮応力及び破断伸度の効果について説明する。
実施例2と同様に直接紡糸延伸を行うにおいて、第2ゴデットロールと第3ゴデットロール間の熱処理張力を表3に示すように異ならせた。
得られた複合繊維及び織物の物性を、表3に示す。
【0056】
【表3】
Figure 2004052194
表3から明らかなように、複合繊維の乾熱収縮応力及び破断伸度が本発明の範囲であれば、良好な紡糸性と織物品位を有していた。
【0057】
【実施例11〜13、比較例6】
本実施例では、紡糸速度及び巻取速度の好ましい態様について説明する。
実施例2に示す固有粘度の組み合わせにおいて、第1ゴデットロールの速度、即ち紡糸速度及び巻取速度を表4に示すように異ならせて、複合繊維を得た。
得られた複合繊維の物性を、表4に示す。
【0058】
【表4】
Figure 2004052194
表4から明らかなように、紡糸速度が1500m/分以上であれば、加工糸の染め品位が良好であった。
【0059】
【実施例14〜16、比較例7】
本実施例では、複合繊維の製造に用いるポリマー種類の効果について、説明する。
2つのポリマーの組み合わせを表5に示す以外は、実施例2に示す紡糸,延伸条件で複合繊維を得た。
得られた、複合繊維及び織物の物性を表5に示す。
【0060】
【表5】
Figure 2004052194
表5から明らかなように、少なくとも一方にPTTを用いた複合繊維は、良好な織物品位とストレッチ性とストレッチ回復性を有していた。
比較例7は、PTTを含まないために、ストレッチ性に欠けていた。
【0061】
【実施例17〜20、比較例8〜10】
本実施例では、紡糸に用いる紡口の孔の効果について説明する。
実施例2と同様に直接紡糸延伸を行うにあたり、吐出孔径及び傾斜角度を、表6に異ならせた紡口を用いて紡糸を行った。
紡糸性及び得られた織物の品位を、表6に示す。
【0062】
【表6】
Figure 2004052194
表6より明らかなように、本発明の製造方法に示す紡口を用いた場合には、良好な紡糸性と、織物品位が得られた。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、良好な表面品位と適度なストレッチ性を有する裏地織物に最適なPTT系複合繊維および、それを直接紡糸延伸法で安価に製造する製造法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合繊維を紡糸する際に使用する吐出孔の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の複合繊維を製造する紡糸―延伸設備の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
1:ポリマーチップ乾燥機
2:押出機
3:ポリマーチップ乾燥機
4:押出機
5:ベンド
6:ベンド
7:スピンヘッド
8:スピンパック
9:紡糸口金
10:マルチフィラメント
11:非送風領域
12:冷却風
13:仕上げ剤付与装置
14:第1ゴデットロール
15:第2ゴデットロール
16:第3ゴデットロール
17:複合繊維パッケージ

Claims (4)

  1. 2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏心鞘芯型に貼り合わされた単糸群からなり、単糸を構成する少なくとも一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートであり、下記(1)〜(5)の要件を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維。
    (1)沸水処理前に顕在している捲縮の伸縮伸長率が20%以下
    (2)3.5×10−3cN/dtexの荷重を掛けて沸水処理した後に測定される伸縮伸長率が2〜10%
    (3)乾熱収縮応力値が0.05〜0.24cN/dtex
    (4)破断伸度が30〜45%
    (5)伸長―応力測定における10%伸長時の応力値が、糸長方向に沿って、最大と最小の差が0.30cN/dtex以下
  2. 複合繊維の乾熱収縮応力値が、0.05〜0.15cN/dtexであることを特徴とする請求項1に記載のポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維。
  3. 単糸を構成する両方の成分が、ポリトリメチレンテレフタレートであることを特徴とする請求項1または2に記載のポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維。
  4. 2つのポリエステル成分がサイド−バイ−サイド型、または偏心鞘芯型に貼り合わされた単糸群からなり、単糸を構成する少なくとも一方の成分がポリトリメチレンテレフタレートである複合繊維を製造するに際し、以下の(A)〜(D)の要件を満足することを特徴とするポリトリメチレンテレフタレート系複合繊維の製造方法。
    (A)2つのポリエステル成分の固有粘度差が、0.05〜0.9で溶融し、
    (B)2つのポリエステル成分が合流した後の吐出孔径と孔長の比が2以上で、吐出孔が鉛直方向に対し10〜40度の傾斜を有した紡糸孔
    を用いて吐出し、冷却後、一旦巻き取ることなく延伸した後、
    (C)第2ロールと第3ロール間で0.05〜0.25cN/dtexの張力で熱処理し、
    (D)巻取速度を4000m/分以下で巻き取る。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2007046475A1 (ja) * 2005-10-20 2007-04-26 Solotex Corporation 高捲縮性複合繊維チーズ状パッケージ及びその製造方法
JP2007154343A (ja) * 2005-12-02 2007-06-21 Toray Ind Inc ポリエステル芯鞘複合型部分配向繊維およびその製造方法

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