JP2004026516A - 金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】窒化アルミニウムと金属化層との接合強度が高く、金属化層内にクラックのない金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を提供すること。
【解決手段】窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートに導体高融点金属としてW粉末を含むペーストを塗布した後、全体を同時に焼結して金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造するに際して、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下となるようにする。該平面方向収縮率は、混合方法として、まず粉末と溶剤だけを混合し、次に樹脂結合剤や可塑剤を加えるという2段階混合を採用し、粉末と溶剤の混合時間を調節することによって調整することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートに導体高融点金属としてW粉末を含むペーストを塗布した後、全体を同時に焼結して金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造するに際して、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下となるようにする。該平面方向収縮率は、混合方法として、まず粉末と溶剤だけを混合し、次に樹脂結合剤や可塑剤を加えるという2段階混合を採用し、粉末と溶剤の混合時間を調節することによって調整することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体やIC用の基板、パッケージ材料として有用な、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウム焼結体は熱伝導率が高いため放熱性に優れると共に、電気絶縁性や機械的強度にも優れているため、発熱量の大きな半導体やICを搭載する基板、パッケージ材料として用いられることが多い。
【0003】
窒化アルミニウムを基板やパッケージとして用いる場合には、この窒化アルミニウムの表面及び/又は内部に金属化層を形成することが必要となる。
ところが、窒化アルミニウムは金属との濡れ性に劣るため、金属化が困難と考えられてきた。そこで、従来から、濡れ性を改善し、金属化した時の金属化層と窒化アルミニウム焼結体との接着強度を確保するために、様々な接着増強用成分が検討されてきた。
【0004】
このような接着増強用成分を配合してなる金属化層形成材料を用いることにより、窒化アルミニウム焼結体母材と金属化層との接合強度を高めている従来例を挙げると次の通りである。
【0005】
(特開平8−109084号公報)
Mo、W、Taから選ばれた1種以上の金属に、Al及び希土類元素から選ばれた1種以上、ならびにTi、Zr、Hfから選ばれた1種以上からなる接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0006】
(特開昭63−115393号公報)
W及び/又はMoの金属に、SiO2、Al2O3、CaOを主成分とし、これに必要に応じてMgO、BaO、B2O3のいずれか1種以上を混合した接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0007】
(特開昭63−195183号公報)
W及び/又はMoの金属に、CaO、BaO、SrO、Y2O3、CeO2、Gd2O3の1種以上と、Al2O3、AlNの一種以上とからなる接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0008】
(特開平6−116068号公報)
Mo、W、Taから選ばれた1種以上を含有する第1の金属化層に第2の金属化層を積層し、第2の金属化層には少なくともSiO2又はAl2O3を含有した接着増強用成分を含ませることにより接合強度を高めている。
【0009】
また、例えば特開昭61−291480号公報には、金属化層をW、Mo及びこれらの硼化物、炭化物から選ばれた1種または2種の100重量部と窒化アルミニウムまたは、窒化アルミニウム基材と同成分の材料の0.1〜50重量部とからなるように構成することにより、接合強度を高めることが記載されている。さらに、特開平4−83783号公報には、金属化層を平均粒径1.0乃至1.5μmのW粉末に窒化アルミニウム質焼結体と実質的に同一組成からなる無機物を3.0乃至10.0重量%含有した構成とすることにより、接合強度を高めることが記載されている。
【0010】
一方で、近年金属化層には低抵抗化が要求されることがあり、金属化層厚を厚くする必要が出てきた。通常金属化層厚は0.02mm程度であるが、場合によると0.1mm程度にすることもある。また、近年パッケージとして窒化アルミニウムを用いることが多くなったが、この場合、多層配線基板構造への要求が高く、層間の導通を確保するためにスルーホール(ビアホール)を金属化した導通部であるビアを形成する必要がある。従来ビア径は焼成前で0.2〜0.25mmであった。焼結後は一般的に0.15〜0.2mmとなる。ところが、ビアに対しても低抵抗化への要求が強く、近年0.3〜0.45mm、焼結後で0.25〜0.4mmというビア径が求められることが多い。
【0011】
ところが、従来取られていた方策によれば、金属化層と窒化アルミニウムとの接合強度は向上するものの、金属化層が厚くなったり、スルーホールに金属化層を充填しようとすると、金属の内部にクラックが生じることがあることが分かった。すなわち、通常の金属化の厚みである0.02mm程度では、接合強度は問題なく強く、金属化層内にクラック等の不具合は全く発生していないが、金属化層の厚みが0.lmm程度と厚くなると金属化層内にクラックが生じ、金属化層自体の強度が小さくなり、ひどい場合には金属化層が破壊するという問題が発生した。また、スルーホールに金属化層を充填しようとする場合にも、同様な問題が生じた。従来のスルーホール径のスルーホールの金属化では問題なかったものの、スルーホール径が焼結前で0.3mmと大きくなったときに問題が生じたことにより、金属化層が厚くなった場合と同じ原因と考えられた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、金属化層が厚くなり、ビア径が大きくなった場合でも、金属化層内にクラックが生じるのを防ぐと共に、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度が高い、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属化層を有する窒化アルミニウムの製造方法は次の構成を有する。
【0014】
(1)窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートに導体高融点金属を含むペーストを塗布した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(2)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が18%以上、23%以下であることを特徴とする上記(1)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(3)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が20%以上、23%以下であることを特徴とする上記(1)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【0015】
(4)窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に導体高融点金属を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(5)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が18%以上、23%以下であることを特徴とする上記(4)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(6)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が20%以上、23%以下であることを特徴とする上記(4)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を構成する窒化アルミニウム焼結体母材は、窒化アルミニウム粉末を主成分とし、これに焼結助剤として広く知られているイットリウム、希土類金属、アルカリ土類金属等の化合物の粉末を0.1〜10重量%程度添加してなる焼結用粉末を成形し、これを焼結することによって得られる。
【0017】
成形方法としては、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末にポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂結合剤、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤を混合し、これを造粒した後、プレス等で成形を行っても良いし、混合後、ドクターブレード法でグリーンシートを作製しても良い。また、押し出し法等も適用することができる。
【0018】
ただし、多層構造とするためには、窒化アルミニウムと金属化層を焼結前に積層し、同時焼成する必要がある。この場合、プレス成形では困難であるためグリーンシートを用いることが多い。また、スルーホールやビアを形成する場合もグリーンシートを用いて、同時焼成を行うのが一般的である。以下では、主にグリーンシートを用いた同時焼成による作製方法について説明する。
【0019】
グリーンシートには必要に応じて、パンチ等を用いてスルーホールを形成する。このスルーホールには後述する組成のペーストが充填される。充填する方法としては、スクリーン印刷など周知の方法を適用することができる。更に、必要に応じて回路配線等を同様に後述する組成のペーストを塗布して形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗りなど周知の方法を適用することができる。
【0020】
本発明のビア、回路配線形成に用いるペーストは、導体粉末、樹脂結合剤及び溶剤からなる。また、必要に応じて窒化アルミニウムとの接着増強用の無機物を混合しても良い。
本発明では前記導体粉末としてW粉末を用いる。これは、本グリーンシートは窒化アルミニウムと導体形成用組成物とを同時に焼結する必要があるが、窒化アルミニウム粉末とW粉末とは焼結温度を近くすることができ、さらに熱膨張率も近いため、導体粉末としてW粉末を用いることが好ましいからである。
【0021】
従来、窒化アルミニウムは金属との濡れ性に劣るため、金属化が困難と考えられてきた。そこで、濡れ性を改善し、金属化した時の窒化アルミニウムとの接着強度を確保するために、接着増強用成分としてペーストに無機物を混合することが検討されてきた。
【0022】
しかしながら、窒化アルミニウムと金属との接合メカニズムから見直した結果、窒化アルミニウムと金属との接合は、接着増強用成分が介在することによる接合メカニズムと、窒化アルミニウム粒子とW粒子とが機械的に噛み合うインターロックによる接合メカニズムとがあることが分かった。さらに、窒化アルミニウムと金属との接合強度に対して、粒子同士のインターロックメカニズムの寄与度が大きいことが分かった。すなわち、印刷膜厚の増加、スルーホール径の増大に伴って生じる金属化層のクラックを無くすためには、接着増強用無機物の添加ではなく、むしろインターロックによる接合メカニズムを有効に機能させることが最も重要であることが分かった。
【0023】
前記インターロックによる接合メカニズムを有効に機能させるためには、グリーンシートやペーストの状態を厳密に制御しなければならないが、以下では、その詳細について、主にグリーンシートに設けたスルーホールにペーストを充填した後に同時焼成して金属化する方法を例にとって説明する。
【0024】
スルーホール内に様々なWペーストを充填する実験を繰り返した結果、インターロックによる接合メカニズムを有効に機能させるには、窒化アルミニウムを焼結する際に生じるグリーンシートの収縮率の値とスルーホールに充填されたWペースとの収縮率の値とを近づける必要があることが分かった。両者の収縮率の値が大きく異なると、例えばグリーンシートの収縮率がスルーホールに充填されたWペーストの収縮率より小さい場合、Wペーストの方が大きく収縮するために、Wペーストおよびその周辺部にクラックが生じることになる。一方、グリーンシートの収縮率の方が大きい場合、グリーンシートの方が大きく収縮するために、Wペースト部分が突っ張りグリーンシートにクラックが生じることとなる。
【0025】
この収縮率はグリーンシートの相対密度及びWペーストの充填率と大きく関係している。一般的に、グリーンシートの相対密度は次の計算式で表され、通常は70%前後の値である。
グリーンシートの相対密度(%)
=(グリーンシートの生密度/焼結後の密度)×100
【0026】
これに対して、スルーホールに充填されているWの相対密度に相当する充填率は30%〜50%程度である。基本的にはW粉末の充填率も70%に近づけた方が、両者の収縮率が近づくはずで、クラック等を避けることができると考えられる。しかしながら、実際には他の要因も考慮する必要がある。すなわち、ビアホールへ充填したW粉末は焼結の際に、平面方向、厚み方向とも均等に収縮するのに対して、グリーンシートはドクターブレード等でシートを作製する際の残留応力を有しているため、平面方向、厚み方向で収縮率が異なり、平面方向より厚み方向収縮率が大きくなる。さらには平面方向内でも収縮率が異なる。また、Wは窒化アルミニウムの焼結温度では完全に緻密には焼結しないため、焼結後の密度が純Wより低い。
【0027】
これらの因子を考慮して、スルーホール内のWペーストの充填率を増加させ、焼結時の収縮率を窒化アルミニウム母材に近づける必要があるが、一方で、スルーホール内のWペーストの充填率には上限値がある。Wペーストをスクリーン印刷で充填させる場合,充填率を増加させる方法として、ペーストの粘度を高くする方法、印刷によってペーストを注入する際に与える圧力(印圧)を高くする方法等が考えられる。ペースト粘度を高くする方法では、粘度を高くしすぎると、ペースト作製が困難になるため粘度には上限値がある。すなわち、ペースト作製時にW粉末と溶剤等とを混合する必要があり、三本ロール等を用いて混合を行うが、ペースト粘度が高くなりすぎると、ペーストが三本ロールを通ることができなくなる。
【0028】
また、印圧を高くする方法においても、印圧の高さに上限値がある。印圧は被印刷物であるグリーンシートにも付加されるが、この圧力(印圧)が高くなりすぎるとグリーンシートが変形してしまうためである。これらの方法において、粘度又は印圧をその上限値で適用したとしても、スルーホールに充填されるWの充填率は50%がほぼ限界値となり、窒化アルミニウム母材の収縮率よりスルーホールのWの収縮率の方が大きくなることは避けられない。
【0029】
このように、Wペースト、スルーホールへの充填方法だけでWの充填率を充分に高くし、収縮率を窒化アルミニウム母材へ近づけて、クラック等を防止することは不可能である。そのため、窒化アルミニウム母材の収縮率の方をスルーホールのWの収縮率に近づける必要がある。つまり窒化アルミニウムの焼結時の収縮率を大きくするため,グリーンシートの相対密度を低くしてスルーホール内のW充填率に近づける必要がある。
【0030】
グリーンシートの相対密度を低くする方法としては、次の方法が考えられる。
▲1▼ 原料粉末の嵩密度を低くする方法
▲2▼ グリーンシートは原料粉末、焼結助剤、樹脂結合剤、可塑剤からなるが、それらの混合比率を変化させる方法
▲3▼ ドクターブレードでグリーンシートを作製する前段階として、原料粉末、焼結助剤、樹脂結合剤、可塑剤と溶剤をボールミル等により混合するが、その混合時間を変化させる方法
【0031】
上記▲1▼の方法は、原料粉末を変更する必要があり、焼結条件を含めたプロセス条件が大幅に変更になる可能性が高く、望ましい方法ではない。上記▲2▼の方法も、樹脂結合剤や可塑剤の混合量を変化させる必要があり、▲1▼の方法ほどではないが、プロセス条件の変更を伴うため同じく望ましい方法ではない。一方、上記▲3▼の方法は、混合時間の最適化のみでグリーンシートの相対密度を変更できるため、最も望ましい方法である。
【0032】
上記▲3▼の方法で相対密度を変更できるのは、次の理由による。原料粉末は通常凝集粒を多量に含んでいるが、ボールミル等の混合を行うと凝集粒が分離していく。この分離度合いは、混合時間を長くする方が高い。一方、凝集粒が多量に存在する状態でグリーンシートを作製すると、凝集粒同士が粗いブリッジを組むため、相対密度が低いグリーンシートとなる。そのため、ボールミルの混合時間が長い方が、相対密度の高いグリーンシートを得ることができる。このような、凝集粒の分離効果は粉末と溶剤だけを混合した方が、樹脂結合剤や可塑剤をも混合するよりも高い。そのため、混合工程を、まず粉末と溶剤だけを混合し、次に樹脂結合剤や可塑剤を加えるという、2段階混合方式として、粉末と溶剤との混合時間を調節することが、グリーンシートの相対密度を変化させるには最も効率が良い。
【0033】
このようにして、様々な相対密度を持つグリーンシートを作製し、スルーホールの金属化層のクラックを調査した結果、クラックの無い金属化層を得るためには、窒化アルミニウムグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下でなければならないことが判明した。
平面方向収縮率は、次の式で示される。
平面方向収縮率(%)
=[焼結前の平面方向寸法−焼結後の平面方向寸法]/焼結前の平面方向寸法
×100
【0034】
ところで、前述のように収縮率はグリーンシートの相対密度と密接な関係にある。しかしながら、グリーンシートに含まれる樹脂結合剤、可塑剤の量が変化すると、同じグリーンシートの相対密度でも収縮率が異なる。そのため、前述の平面方向収縮率を得るためのグリーンシートの相対密度を一義的に規定することはできない。
【0035】
グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率は、16.5%より小さくなると、スルーホールのW充填率を50%に高めても、Wの収縮率を充分小さくすることができないため、窒化アルミニウム焼結後にスルーホールの金属層のクラックをなくすことができない。一方、グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が25%より大きいと、グリーンシートの収縮率が大きくなりすぎて、窒化アルミニウムの焼結中にスルーホール中のWが突っ張るようになるため、窒化アルミニウム母材にクラックが生じる。
【0036】
このクラックはスルーホールから放射状に生じる特徴があり、グリーンシートの収縮率が25%より大きい場合は、スルーホールへのWの充填率を20%程度に低下させることにより避けることができる。しかしながら、Wの充填率を20%程度に低下させると、スルーホール中にWを均一に充填することが困難になり、焼結中にW分布の不均一に伴うクラックが生じたり、焼結前の充填直後に既に気泡等の噛み込みに伴うクラックが生じたりするのを避けることができない。そのため、グリーンシートの収縮率が25%より大きいと、窒化アルミニウム、Wともにクラックがない焼結体を得ることができない。
【0037】
また、グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率は、18%以上、23%以下であるのが、さらに好ましい。前述のように平面方向収縮率が16.5%以上、18%未満であれば、スルーホールのW充填率を50%程度に高めることによって、スルーホールの金属層のクラックを無くすことができる。しかしながら、スルーホールのW充填率を50%に高めるためには、Wペーストの粘度を高くしたり、ペーストを充填する際の圧力を高めるなどの工夫が不可欠である。これらの処方は、生産性を阻害する方向にあるため、用いない方が望ましい。これらの処方を用いない場合、スルーホールのW充填率は、一般的に40%程度になる。さらに、これらの処方を施しても、ペーストの充填率が安定しない場合もあり、突発的に40%程度に充填率が低下する場合もある。このW充填率でも、スルーホールの金属層のクラックを防ぐためにはグリーンシートの平面方向収縮率を18%以上にする必要があるのである。
【0038】
一方、前述のようにクラックの無いスルーホールの金属層を得るためには、平面方向収縮率を25%以下にする必要がある。しかしながら、25%以下で23%より大きいときは、前述のように、スルーホールのW充填率を20%に近い値まで低くしないと、窒化アルミニウムにクラックが生じる。一方、このような低いW充填率の場合は、前述のようにW分布の不均一、気泡の噛み込み等が生じやすく、Wペースト、ペーストの充填条件を精密に制御しないと不具合が生じやすい。これに対して、グリーンシートの平面方向収縮率を23%以下にすると、スルーホールのW充填率を通常の充填率である40%程度まで上げることができるので、Wペースト、ペーストの充填条件の精密な制御を行わなくても、W分布の不均一、気泡の噛み込み等に基づくスルーホールの金属層のクラックを防止することができる。
【0039】
さらに好ましくは、グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率は20%以上、23%以下であることが望ましい。前述のようにスルーホールのW充填率が40%程度であれば、平面方向収縮率は18%以上で良いが、Wペーストの性状や充填条件が変化すると、W充填率40%で工程設計していても、突発的にW充填率が35%稈度まで低下することがある。このような際にもスルーホールの金属層のクラックを防ぐためには、グリーンシートの平面方向収縮率を20%以上とする必要があるのである。
【0040】
ところで、WペーストはW粉末と、エチルセルロース、ニトロセルロース等の樹脂結合剤、ブチルカルビトール、テルピネオール等の溶媒から構成される。必要に応じて無機物粉末を混合しても良い。通常樹脂結合剤は、W粉末や無機物粉末等の粉末を100重量部とした場合、1〜3重量部混合し、溶剤は3〜15重量部程度混合する。混合方法としては、まず粉末と溶剤だけをポットミルやボールミル、ライカイ機等を用いて混合し、その後、三本ロール等を用いて樹脂結合剤を混合するという方法を用いることができる。
【0041】
ここで用いるW粉末としては、窒化アルミニウムとWの焼結温度を近づけるために、W粉末の平均粒径を1μm以上、5μm以下にすることが好ましい。W粒径を数種類混合して用いることも多いが、その場合、1μm以上、5μm以下の平均粒径のWを50重量%以上用いることが好ましい。W粉末の平均粒径が1μmより小さくなると、Wの焼結開始温度が窒化アルミニウムの焼結温度に比べて低くなりすぎるため、Wや窒化アルミニウムとWの界面にクラックが生じやすくなる。一方、W粉末の平均粒径が5μmより大きくなると、Wの焼結性が著しく悪化し、窒化アルミニウムの焼結温度でWの焼結が充分に行われないため、好ましくない。
【0042】
このようにスルーホールにW粉末ペーストを充填した後、回路印刷を行い、必要に応じてグリーンシートを積層する。積層は、グリーンシートをモールド中にセットした後に、プレス機により50〜80℃程度に熱しながら、5〜10MPa程度の圧力を10〜20分程度かけて熱圧着することによって行う。シート間には必要に応じて溶剤や接着剤を塗布してもよい。
積層したシートは、任意の形に切断された後に焼結される。焼結に先立ち、窒化アルミニウムのグリーンシートの樹脂結合剤、可塑剤、及びペーストの媒体を除去するために、例えば300〜800℃というような温度で脱脂処理をしてもよい。
【0043】
焼結は非酸化性雰囲気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。焼結温度、焼結時間は、焼結後の窒化アルミニウム焼結体が熱伝導率等の特性が所望の値となるように設定される。一般的に焼結温度は1600〜2000℃であり、焼結時間は1〜5時間程度に設定される。
【0044】
前記のごとく、本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム基板は、金属化層が厚くなった場合でも、金属化層内にクラックが生じるのを防ぎ、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度も高めることができる。
【0045】
【実施例】
[実施例1]
97重量部の窒化アルミニウム粉末と3重量部のY2O3粉末とを混合し、これに樹脂結合剤としてポリビニルブチラールを、また、可塑剤としてジブチルフタレートを、それぞれ10重量部及び5重量部混合して、ドクターブレード法にて0.5mm厚のグリーンシートを成形した。
混合は、まず粉末類と溶剤であるトルエンとをボールミルにて混合し、その後、樹脂結合剤及び可塑剤を追加してボールミル混合する2段階混合を行った。この第一段階の粉末類と溶剤だけの混合時間を1時間から24時間と変化させ、ドクターブレード成形後のグリーンシートの相対密度を変化させた。このように作製したグリーンシートを金型を使用して100mm×100mmに打ち抜いた後、パンチャーにてφ0.3mmのスルーホールを形成した。
【0046】
一方で、W粉末を100重量部として、5重量部の樹脂結合剤であるエチルセルロースと、5重量部の溶媒であるブチルカルビトールに分散させてW粉末ペーストを作製した。ただし、W粉末としては平均粒径2μmのものを使用し、無機物粉末は混合しなかった。Wペーストの粘度をブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用して測定した結果、200000Pであった。
【0047】
次に、スクリーン印刷機によって前記スルーホールに前記W粉末ペーストを充填した。Wペーストを充填した1枚のグリーンシートについて、スルーホールにWペーストを充填する前後で重量を測定し、W粉末の充填率を測定した結果4 9%であった。また、このWペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際に、スキージと呼ばれる一種のへラでペーストを擦り付けて行くが、スキージの往復回数を8回にしないと、スルーホールにWペーストが完全には充填しなかった。
【0048】
さらに、同じペーストに5重量部のブチルカルビトールを混合して粘度を低下させ、スクリーン印刷機にて325メッシュ、乳剤厚20μmのスクリーンを用いて回路印刷を行った。
次に、印刷後のシートを2枚重ねて積層した。積層はモールドにシートを2枚重ねてセットし、プレス機にて50℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで行った。
その後、窒素雰囲気中で600℃にて脱脂を行い、窒素雰囲気中で1800℃、3時間の条件で焼結を行った。
【0049】
焼結後、窒化アルミニウム上の回路配線の部分には10μmの厚みの金属化層が形成されており、ビア部分にはφ0.25mmのスルーホールに金属化層が形成されていた。この状態で、回路印刷部分及びビア部分におけるクラックの発生の有無を40倍の顕微鏡で確認した。
【0050】
この金属化層が形成された窒化アルミニウム基板の金属化層の上に、無電解めっき法にて厚み3〜5μmのNiめっき層を形成した。次に800℃のホーミングガス中でめっき層をアニールし、次にφ0.5mm、引っ張り強度500MPaのFe−Ni−Co合金ピンを銀ろうを用いてろう付けした。ろう付け温度は800℃、雰囲気は水素、窒素の混合ガス雰囲気であった。
【0051】
次に、窒化アルミニウム基板を固定し、Fe−Nl−Co合金ピンを引っ張って強度を測定し、破壊モードを観察した。さらに、回路印刷部分及びビア部分におけるクラックの発生の有無を確認するために、断面を研磨し、電子顕微鏡(1000倍)よって確認した。また、焼結後のWの粒径を電子顕微鏡にて確認した。
【0052】
これらの評価結果をグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率と共に表1に示す。グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲内のものでは回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲外のものではビアにクラックが認められた。
【0053】
引っ張り強度及び破壊モードについては、グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲内のものでは、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Nl−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲外のものでは、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
【0054】
【表1】
【0055】
[実施例2]
スルーホールに充填するWペーストの粘度を50000Pに変更して、実施例1と同様な実験を行った。粘度は実施例1と同様にブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。また、Wペーストを充填した1枚のグリーンシートについて、スルーホールにWペーストを充填する前後で重量を測定し、W粉末の充填率を測定したところ充填率は40%であった。また、このWペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際には、スキージの往復回数1回で、スルーホール内にWペーストが完全に充填された。
【0056】
これらの評価結果とグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率を表2に示す。グリーンシート平面方向収縮率が18%以上、23%以下では回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、18%より小さいものについては、ビアにクラックが認められた。さらに、グリーンシートの平面方向収縮率が23%より大きい試料12に関しては、窒化アルミニウム焼結体母材にもビアから放射状にクラックが生じていた。
【0057】
引っ張り強度及び破壊モードについては、グリーンシート平面方向収縮率が18%以上、23%以下のものでは、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Nl−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、平面方向収縮率が18%より小さいもの及び23%より大きいものでは、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
【0058】
【表2】
【0059】
[実施例3]
実施例2と同じ実験を、グリーンシートの枚数を増やして行った。グリーンシートはそれぞれの平面方向収縮率に対して100枚とした。これらについて実施例2と同じ評価を行い、その中で引っ張り強度が一番低かった結果を表3に示す。グリーンシート平面方向収縮率が20%以上、23%以下では回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、平面方向収縮率が20%より小さいものについては、実施例2でクラックが認められなかった18%のものにも、ビアにクラックが認められた。さらに、グリーンシートの平面方向収縮率が25%より大きい試料19に関しては、窒化アルミニウム焼結体母材にもビアから放射状にクラックが生じていた。
【0060】
引っ張り強度及び破壊モードについては、グリーンシート平面方向収縮率が20%以上、23%以下のものでは、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Nl−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、20%より小さい平面方向収縮率、23%より大きい平面方向収縮率では、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
なお、実施例2ではビアにクラックが認められなかったが、実施例3ではビアにクラックが認められた平面方向収縮率が18%である試料15のビア充填後のスルーホールへのW充填率を調査すると、40%より小さいことが確認された。
【0061】
【表3】
【0062】
[実施例4]
スルーホールに充填するWペーストの粘度を10000Pに変更して、実施例1と同様な実験を行った。粘度は実施例1と同様にブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。また、Wペーストを充填した1枚のグリーンシートについて、スルーホールにWペーストを充填する前後で重量を測定し、W粉末の充填率を測定した結果、充填率は30%であった。また、Wペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際には、スキージの往復回数を1回で行ったが、スルーホールにWペーストが完全に充填された。
【0063】
これらの評価結果とグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率とを表4に示す。グリーンシート平面方向収縮率が本発明範囲内の25%以下のものでは回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、グリーンシートの平面方向収縮率が25%より大きい試料22に関しては、窒化アルミニウム母材にもビアから放射状にクラックが生じていた。
【0064】
引っ張り強度及び破壊モードについては、25%以下のグリーンシート平面方向収縮率では、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Ni−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、平面方向収縮率が25%より大きいものでは、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
【0065】
【表4】
【0066】
[実施例5]
実施例4と同じ実験を、グリーンシートの枚数を増やして行った。グリーンシートはそれぞれの平面方向収縮率に対して100枚とした。また、Wペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際には、スキージの往復回数を1回で行ったが、数枚については、充填乾燥後にビア中央に陥没が認められた。陥没が認められた試料については、再度スルーホールにWペーストを充填した。これらについて実施例4と同じ評価を行い、その中で引っ張り強度が一番低かった結果を表5に示す。
【0067】
実施例4ではビアにクラックが認められなかったグリーンシートの平面方向収縮率が25%である試料に今回はクラックが認められた。また、実施例4に比べて、引っ張り強度が低下した試料を調査すると、一回目のスルーホールへのWペーストの充填では乾燥後陥没が認められていたことが分かった。スルーホールへの充填状態が実施例4に比べると悪化したため、ビアクラックが認められ、引っ張り強度も低下したものと考えられる。
【0068】
【表5】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化アルミニウム焼結体表面に形成される主に導体高融点金属からなる金属化層を形成するペーストの導体高融点金属として窒化アルミニウムと熱膨張率の近いWを選択した場合において、窒化アルミニウムのグリーンシートが焼結時に示す平面方向の収縮率を16.5%以上、25%以下、好ましくは、18%以上、23%以下、さらに好ましくは、20%以上、23%以下にすることによって、金属化層が0.1mm程度に厚くなったり、ビア径が0.3mm以上と大きくなった場合でも、金属層を形成する際に、クラックを防ぎ、窒化アルミニウムとの密着強度を高くすることが出来る。このため、本発明の窒化アルミニウム焼結体をIC用の基板、パッケージ材料として好適に用いることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体やIC用の基板、パッケージ材料として有用な、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化アルミニウム焼結体は熱伝導率が高いため放熱性に優れると共に、電気絶縁性や機械的強度にも優れているため、発熱量の大きな半導体やICを搭載する基板、パッケージ材料として用いられることが多い。
【0003】
窒化アルミニウムを基板やパッケージとして用いる場合には、この窒化アルミニウムの表面及び/又は内部に金属化層を形成することが必要となる。
ところが、窒化アルミニウムは金属との濡れ性に劣るため、金属化が困難と考えられてきた。そこで、従来から、濡れ性を改善し、金属化した時の金属化層と窒化アルミニウム焼結体との接着強度を確保するために、様々な接着増強用成分が検討されてきた。
【0004】
このような接着増強用成分を配合してなる金属化層形成材料を用いることにより、窒化アルミニウム焼結体母材と金属化層との接合強度を高めている従来例を挙げると次の通りである。
【0005】
(特開平8−109084号公報)
Mo、W、Taから選ばれた1種以上の金属に、Al及び希土類元素から選ばれた1種以上、ならびにTi、Zr、Hfから選ばれた1種以上からなる接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0006】
(特開昭63−115393号公報)
W及び/又はMoの金属に、SiO2、Al2O3、CaOを主成分とし、これに必要に応じてMgO、BaO、B2O3のいずれか1種以上を混合した接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0007】
(特開昭63−195183号公報)
W及び/又はMoの金属に、CaO、BaO、SrO、Y2O3、CeO2、Gd2O3の1種以上と、Al2O3、AlNの一種以上とからなる接着増強用成分を添加したものを金属化層の形成材料とすることにより接合強度を高めている。
【0008】
(特開平6−116068号公報)
Mo、W、Taから選ばれた1種以上を含有する第1の金属化層に第2の金属化層を積層し、第2の金属化層には少なくともSiO2又はAl2O3を含有した接着増強用成分を含ませることにより接合強度を高めている。
【0009】
また、例えば特開昭61−291480号公報には、金属化層をW、Mo及びこれらの硼化物、炭化物から選ばれた1種または2種の100重量部と窒化アルミニウムまたは、窒化アルミニウム基材と同成分の材料の0.1〜50重量部とからなるように構成することにより、接合強度を高めることが記載されている。さらに、特開平4−83783号公報には、金属化層を平均粒径1.0乃至1.5μmのW粉末に窒化アルミニウム質焼結体と実質的に同一組成からなる無機物を3.0乃至10.0重量%含有した構成とすることにより、接合強度を高めることが記載されている。
【0010】
一方で、近年金属化層には低抵抗化が要求されることがあり、金属化層厚を厚くする必要が出てきた。通常金属化層厚は0.02mm程度であるが、場合によると0.1mm程度にすることもある。また、近年パッケージとして窒化アルミニウムを用いることが多くなったが、この場合、多層配線基板構造への要求が高く、層間の導通を確保するためにスルーホール(ビアホール)を金属化した導通部であるビアを形成する必要がある。従来ビア径は焼成前で0.2〜0.25mmであった。焼結後は一般的に0.15〜0.2mmとなる。ところが、ビアに対しても低抵抗化への要求が強く、近年0.3〜0.45mm、焼結後で0.25〜0.4mmというビア径が求められることが多い。
【0011】
ところが、従来取られていた方策によれば、金属化層と窒化アルミニウムとの接合強度は向上するものの、金属化層が厚くなったり、スルーホールに金属化層を充填しようとすると、金属の内部にクラックが生じることがあることが分かった。すなわち、通常の金属化の厚みである0.02mm程度では、接合強度は問題なく強く、金属化層内にクラック等の不具合は全く発生していないが、金属化層の厚みが0.lmm程度と厚くなると金属化層内にクラックが生じ、金属化層自体の強度が小さくなり、ひどい場合には金属化層が破壊するという問題が発生した。また、スルーホールに金属化層を充填しようとする場合にも、同様な問題が生じた。従来のスルーホール径のスルーホールの金属化では問題なかったものの、スルーホール径が焼結前で0.3mmと大きくなったときに問題が生じたことにより、金属化層が厚くなった場合と同じ原因と考えられた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、金属化層が厚くなり、ビア径が大きくなった場合でも、金属化層内にクラックが生じるのを防ぐと共に、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度が高い、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の金属化層を有する窒化アルミニウムの製造方法は次の構成を有する。
【0014】
(1)窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートに導体高融点金属を含むペーストを塗布した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(2)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が18%以上、23%以下であることを特徴とする上記(1)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(3)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が20%以上、23%以下であることを特徴とする上記(1)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【0015】
(4)窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に導体高融点金属を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(5)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が18%以上、23%以下であることを特徴とする上記(4)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
(6)前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が20%以上、23%以下であることを特徴とする上記(4)記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を構成する窒化アルミニウム焼結体母材は、窒化アルミニウム粉末を主成分とし、これに焼結助剤として広く知られているイットリウム、希土類金属、アルカリ土類金属等の化合物の粉末を0.1〜10重量%程度添加してなる焼結用粉末を成形し、これを焼結することによって得られる。
【0017】
成形方法としては、窒化アルミニウム粉末と焼結助剤粉末にポリビニルブチラール(PVB)等の樹脂結合剤、ジブチルフタレート(DBP)等の可塑剤を混合し、これを造粒した後、プレス等で成形を行っても良いし、混合後、ドクターブレード法でグリーンシートを作製しても良い。また、押し出し法等も適用することができる。
【0018】
ただし、多層構造とするためには、窒化アルミニウムと金属化層を焼結前に積層し、同時焼成する必要がある。この場合、プレス成形では困難であるためグリーンシートを用いることが多い。また、スルーホールやビアを形成する場合もグリーンシートを用いて、同時焼成を行うのが一般的である。以下では、主にグリーンシートを用いた同時焼成による作製方法について説明する。
【0019】
グリーンシートには必要に応じて、パンチ等を用いてスルーホールを形成する。このスルーホールには後述する組成のペーストが充填される。充填する方法としては、スクリーン印刷など周知の方法を適用することができる。更に、必要に応じて回路配線等を同様に後述する組成のペーストを塗布して形成する。塗布方法としては、スクリーン印刷、刷毛塗り、スピンローラー塗りなど周知の方法を適用することができる。
【0020】
本発明のビア、回路配線形成に用いるペーストは、導体粉末、樹脂結合剤及び溶剤からなる。また、必要に応じて窒化アルミニウムとの接着増強用の無機物を混合しても良い。
本発明では前記導体粉末としてW粉末を用いる。これは、本グリーンシートは窒化アルミニウムと導体形成用組成物とを同時に焼結する必要があるが、窒化アルミニウム粉末とW粉末とは焼結温度を近くすることができ、さらに熱膨張率も近いため、導体粉末としてW粉末を用いることが好ましいからである。
【0021】
従来、窒化アルミニウムは金属との濡れ性に劣るため、金属化が困難と考えられてきた。そこで、濡れ性を改善し、金属化した時の窒化アルミニウムとの接着強度を確保するために、接着増強用成分としてペーストに無機物を混合することが検討されてきた。
【0022】
しかしながら、窒化アルミニウムと金属との接合メカニズムから見直した結果、窒化アルミニウムと金属との接合は、接着増強用成分が介在することによる接合メカニズムと、窒化アルミニウム粒子とW粒子とが機械的に噛み合うインターロックによる接合メカニズムとがあることが分かった。さらに、窒化アルミニウムと金属との接合強度に対して、粒子同士のインターロックメカニズムの寄与度が大きいことが分かった。すなわち、印刷膜厚の増加、スルーホール径の増大に伴って生じる金属化層のクラックを無くすためには、接着増強用無機物の添加ではなく、むしろインターロックによる接合メカニズムを有効に機能させることが最も重要であることが分かった。
【0023】
前記インターロックによる接合メカニズムを有効に機能させるためには、グリーンシートやペーストの状態を厳密に制御しなければならないが、以下では、その詳細について、主にグリーンシートに設けたスルーホールにペーストを充填した後に同時焼成して金属化する方法を例にとって説明する。
【0024】
スルーホール内に様々なWペーストを充填する実験を繰り返した結果、インターロックによる接合メカニズムを有効に機能させるには、窒化アルミニウムを焼結する際に生じるグリーンシートの収縮率の値とスルーホールに充填されたWペースとの収縮率の値とを近づける必要があることが分かった。両者の収縮率の値が大きく異なると、例えばグリーンシートの収縮率がスルーホールに充填されたWペーストの収縮率より小さい場合、Wペーストの方が大きく収縮するために、Wペーストおよびその周辺部にクラックが生じることになる。一方、グリーンシートの収縮率の方が大きい場合、グリーンシートの方が大きく収縮するために、Wペースト部分が突っ張りグリーンシートにクラックが生じることとなる。
【0025】
この収縮率はグリーンシートの相対密度及びWペーストの充填率と大きく関係している。一般的に、グリーンシートの相対密度は次の計算式で表され、通常は70%前後の値である。
グリーンシートの相対密度(%)
=(グリーンシートの生密度/焼結後の密度)×100
【0026】
これに対して、スルーホールに充填されているWの相対密度に相当する充填率は30%〜50%程度である。基本的にはW粉末の充填率も70%に近づけた方が、両者の収縮率が近づくはずで、クラック等を避けることができると考えられる。しかしながら、実際には他の要因も考慮する必要がある。すなわち、ビアホールへ充填したW粉末は焼結の際に、平面方向、厚み方向とも均等に収縮するのに対して、グリーンシートはドクターブレード等でシートを作製する際の残留応力を有しているため、平面方向、厚み方向で収縮率が異なり、平面方向より厚み方向収縮率が大きくなる。さらには平面方向内でも収縮率が異なる。また、Wは窒化アルミニウムの焼結温度では完全に緻密には焼結しないため、焼結後の密度が純Wより低い。
【0027】
これらの因子を考慮して、スルーホール内のWペーストの充填率を増加させ、焼結時の収縮率を窒化アルミニウム母材に近づける必要があるが、一方で、スルーホール内のWペーストの充填率には上限値がある。Wペーストをスクリーン印刷で充填させる場合,充填率を増加させる方法として、ペーストの粘度を高くする方法、印刷によってペーストを注入する際に与える圧力(印圧)を高くする方法等が考えられる。ペースト粘度を高くする方法では、粘度を高くしすぎると、ペースト作製が困難になるため粘度には上限値がある。すなわち、ペースト作製時にW粉末と溶剤等とを混合する必要があり、三本ロール等を用いて混合を行うが、ペースト粘度が高くなりすぎると、ペーストが三本ロールを通ることができなくなる。
【0028】
また、印圧を高くする方法においても、印圧の高さに上限値がある。印圧は被印刷物であるグリーンシートにも付加されるが、この圧力(印圧)が高くなりすぎるとグリーンシートが変形してしまうためである。これらの方法において、粘度又は印圧をその上限値で適用したとしても、スルーホールに充填されるWの充填率は50%がほぼ限界値となり、窒化アルミニウム母材の収縮率よりスルーホールのWの収縮率の方が大きくなることは避けられない。
【0029】
このように、Wペースト、スルーホールへの充填方法だけでWの充填率を充分に高くし、収縮率を窒化アルミニウム母材へ近づけて、クラック等を防止することは不可能である。そのため、窒化アルミニウム母材の収縮率の方をスルーホールのWの収縮率に近づける必要がある。つまり窒化アルミニウムの焼結時の収縮率を大きくするため,グリーンシートの相対密度を低くしてスルーホール内のW充填率に近づける必要がある。
【0030】
グリーンシートの相対密度を低くする方法としては、次の方法が考えられる。
▲1▼ 原料粉末の嵩密度を低くする方法
▲2▼ グリーンシートは原料粉末、焼結助剤、樹脂結合剤、可塑剤からなるが、それらの混合比率を変化させる方法
▲3▼ ドクターブレードでグリーンシートを作製する前段階として、原料粉末、焼結助剤、樹脂結合剤、可塑剤と溶剤をボールミル等により混合するが、その混合時間を変化させる方法
【0031】
上記▲1▼の方法は、原料粉末を変更する必要があり、焼結条件を含めたプロセス条件が大幅に変更になる可能性が高く、望ましい方法ではない。上記▲2▼の方法も、樹脂結合剤や可塑剤の混合量を変化させる必要があり、▲1▼の方法ほどではないが、プロセス条件の変更を伴うため同じく望ましい方法ではない。一方、上記▲3▼の方法は、混合時間の最適化のみでグリーンシートの相対密度を変更できるため、最も望ましい方法である。
【0032】
上記▲3▼の方法で相対密度を変更できるのは、次の理由による。原料粉末は通常凝集粒を多量に含んでいるが、ボールミル等の混合を行うと凝集粒が分離していく。この分離度合いは、混合時間を長くする方が高い。一方、凝集粒が多量に存在する状態でグリーンシートを作製すると、凝集粒同士が粗いブリッジを組むため、相対密度が低いグリーンシートとなる。そのため、ボールミルの混合時間が長い方が、相対密度の高いグリーンシートを得ることができる。このような、凝集粒の分離効果は粉末と溶剤だけを混合した方が、樹脂結合剤や可塑剤をも混合するよりも高い。そのため、混合工程を、まず粉末と溶剤だけを混合し、次に樹脂結合剤や可塑剤を加えるという、2段階混合方式として、粉末と溶剤との混合時間を調節することが、グリーンシートの相対密度を変化させるには最も効率が良い。
【0033】
このようにして、様々な相対密度を持つグリーンシートを作製し、スルーホールの金属化層のクラックを調査した結果、クラックの無い金属化層を得るためには、窒化アルミニウムグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下でなければならないことが判明した。
平面方向収縮率は、次の式で示される。
平面方向収縮率(%)
=[焼結前の平面方向寸法−焼結後の平面方向寸法]/焼結前の平面方向寸法
×100
【0034】
ところで、前述のように収縮率はグリーンシートの相対密度と密接な関係にある。しかしながら、グリーンシートに含まれる樹脂結合剤、可塑剤の量が変化すると、同じグリーンシートの相対密度でも収縮率が異なる。そのため、前述の平面方向収縮率を得るためのグリーンシートの相対密度を一義的に規定することはできない。
【0035】
グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率は、16.5%より小さくなると、スルーホールのW充填率を50%に高めても、Wの収縮率を充分小さくすることができないため、窒化アルミニウム焼結後にスルーホールの金属層のクラックをなくすことができない。一方、グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が25%より大きいと、グリーンシートの収縮率が大きくなりすぎて、窒化アルミニウムの焼結中にスルーホール中のWが突っ張るようになるため、窒化アルミニウム母材にクラックが生じる。
【0036】
このクラックはスルーホールから放射状に生じる特徴があり、グリーンシートの収縮率が25%より大きい場合は、スルーホールへのWの充填率を20%程度に低下させることにより避けることができる。しかしながら、Wの充填率を20%程度に低下させると、スルーホール中にWを均一に充填することが困難になり、焼結中にW分布の不均一に伴うクラックが生じたり、焼結前の充填直後に既に気泡等の噛み込みに伴うクラックが生じたりするのを避けることができない。そのため、グリーンシートの収縮率が25%より大きいと、窒化アルミニウム、Wともにクラックがない焼結体を得ることができない。
【0037】
また、グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率は、18%以上、23%以下であるのが、さらに好ましい。前述のように平面方向収縮率が16.5%以上、18%未満であれば、スルーホールのW充填率を50%程度に高めることによって、スルーホールの金属層のクラックを無くすことができる。しかしながら、スルーホールのW充填率を50%に高めるためには、Wペーストの粘度を高くしたり、ペーストを充填する際の圧力を高めるなどの工夫が不可欠である。これらの処方は、生産性を阻害する方向にあるため、用いない方が望ましい。これらの処方を用いない場合、スルーホールのW充填率は、一般的に40%程度になる。さらに、これらの処方を施しても、ペーストの充填率が安定しない場合もあり、突発的に40%程度に充填率が低下する場合もある。このW充填率でも、スルーホールの金属層のクラックを防ぐためにはグリーンシートの平面方向収縮率を18%以上にする必要があるのである。
【0038】
一方、前述のようにクラックの無いスルーホールの金属層を得るためには、平面方向収縮率を25%以下にする必要がある。しかしながら、25%以下で23%より大きいときは、前述のように、スルーホールのW充填率を20%に近い値まで低くしないと、窒化アルミニウムにクラックが生じる。一方、このような低いW充填率の場合は、前述のようにW分布の不均一、気泡の噛み込み等が生じやすく、Wペースト、ペーストの充填条件を精密に制御しないと不具合が生じやすい。これに対して、グリーンシートの平面方向収縮率を23%以下にすると、スルーホールのW充填率を通常の充填率である40%程度まで上げることができるので、Wペースト、ペーストの充填条件の精密な制御を行わなくても、W分布の不均一、気泡の噛み込み等に基づくスルーホールの金属層のクラックを防止することができる。
【0039】
さらに好ましくは、グリーンシートの焼結時の平面方向収縮率は20%以上、23%以下であることが望ましい。前述のようにスルーホールのW充填率が40%程度であれば、平面方向収縮率は18%以上で良いが、Wペーストの性状や充填条件が変化すると、W充填率40%で工程設計していても、突発的にW充填率が35%稈度まで低下することがある。このような際にもスルーホールの金属層のクラックを防ぐためには、グリーンシートの平面方向収縮率を20%以上とする必要があるのである。
【0040】
ところで、WペーストはW粉末と、エチルセルロース、ニトロセルロース等の樹脂結合剤、ブチルカルビトール、テルピネオール等の溶媒から構成される。必要に応じて無機物粉末を混合しても良い。通常樹脂結合剤は、W粉末や無機物粉末等の粉末を100重量部とした場合、1〜3重量部混合し、溶剤は3〜15重量部程度混合する。混合方法としては、まず粉末と溶剤だけをポットミルやボールミル、ライカイ機等を用いて混合し、その後、三本ロール等を用いて樹脂結合剤を混合するという方法を用いることができる。
【0041】
ここで用いるW粉末としては、窒化アルミニウムとWの焼結温度を近づけるために、W粉末の平均粒径を1μm以上、5μm以下にすることが好ましい。W粒径を数種類混合して用いることも多いが、その場合、1μm以上、5μm以下の平均粒径のWを50重量%以上用いることが好ましい。W粉末の平均粒径が1μmより小さくなると、Wの焼結開始温度が窒化アルミニウムの焼結温度に比べて低くなりすぎるため、Wや窒化アルミニウムとWの界面にクラックが生じやすくなる。一方、W粉末の平均粒径が5μmより大きくなると、Wの焼結性が著しく悪化し、窒化アルミニウムの焼結温度でWの焼結が充分に行われないため、好ましくない。
【0042】
このようにスルーホールにW粉末ペーストを充填した後、回路印刷を行い、必要に応じてグリーンシートを積層する。積層は、グリーンシートをモールド中にセットした後に、プレス機により50〜80℃程度に熱しながら、5〜10MPa程度の圧力を10〜20分程度かけて熱圧着することによって行う。シート間には必要に応じて溶剤や接着剤を塗布してもよい。
積層したシートは、任意の形に切断された後に焼結される。焼結に先立ち、窒化アルミニウムのグリーンシートの樹脂結合剤、可塑剤、及びペーストの媒体を除去するために、例えば300〜800℃というような温度で脱脂処理をしてもよい。
【0043】
焼結は非酸化性雰囲気中で行うが、窒素雰囲気中で行うのが好ましい。焼結温度、焼結時間は、焼結後の窒化アルミニウム焼結体が熱伝導率等の特性が所望の値となるように設定される。一般的に焼結温度は1600〜2000℃であり、焼結時間は1〜5時間程度に設定される。
【0044】
前記のごとく、本発明の金属化層を有する窒化アルミニウム基板は、金属化層が厚くなった場合でも、金属化層内にクラックが生じるのを防ぎ、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度も高めることができる。
【0045】
【実施例】
[実施例1]
97重量部の窒化アルミニウム粉末と3重量部のY2O3粉末とを混合し、これに樹脂結合剤としてポリビニルブチラールを、また、可塑剤としてジブチルフタレートを、それぞれ10重量部及び5重量部混合して、ドクターブレード法にて0.5mm厚のグリーンシートを成形した。
混合は、まず粉末類と溶剤であるトルエンとをボールミルにて混合し、その後、樹脂結合剤及び可塑剤を追加してボールミル混合する2段階混合を行った。この第一段階の粉末類と溶剤だけの混合時間を1時間から24時間と変化させ、ドクターブレード成形後のグリーンシートの相対密度を変化させた。このように作製したグリーンシートを金型を使用して100mm×100mmに打ち抜いた後、パンチャーにてφ0.3mmのスルーホールを形成した。
【0046】
一方で、W粉末を100重量部として、5重量部の樹脂結合剤であるエチルセルロースと、5重量部の溶媒であるブチルカルビトールに分散させてW粉末ペーストを作製した。ただし、W粉末としては平均粒径2μmのものを使用し、無機物粉末は混合しなかった。Wペーストの粘度をブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用して測定した結果、200000Pであった。
【0047】
次に、スクリーン印刷機によって前記スルーホールに前記W粉末ペーストを充填した。Wペーストを充填した1枚のグリーンシートについて、スルーホールにWペーストを充填する前後で重量を測定し、W粉末の充填率を測定した結果4 9%であった。また、このWペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際に、スキージと呼ばれる一種のへラでペーストを擦り付けて行くが、スキージの往復回数を8回にしないと、スルーホールにWペーストが完全には充填しなかった。
【0048】
さらに、同じペーストに5重量部のブチルカルビトールを混合して粘度を低下させ、スクリーン印刷機にて325メッシュ、乳剤厚20μmのスクリーンを用いて回路印刷を行った。
次に、印刷後のシートを2枚重ねて積層した。積層はモールドにシートを2枚重ねてセットし、プレス機にて50℃に熱しつつ、10MPaの圧力で2分間熱圧着することで行った。
その後、窒素雰囲気中で600℃にて脱脂を行い、窒素雰囲気中で1800℃、3時間の条件で焼結を行った。
【0049】
焼結後、窒化アルミニウム上の回路配線の部分には10μmの厚みの金属化層が形成されており、ビア部分にはφ0.25mmのスルーホールに金属化層が形成されていた。この状態で、回路印刷部分及びビア部分におけるクラックの発生の有無を40倍の顕微鏡で確認した。
【0050】
この金属化層が形成された窒化アルミニウム基板の金属化層の上に、無電解めっき法にて厚み3〜5μmのNiめっき層を形成した。次に800℃のホーミングガス中でめっき層をアニールし、次にφ0.5mm、引っ張り強度500MPaのFe−Ni−Co合金ピンを銀ろうを用いてろう付けした。ろう付け温度は800℃、雰囲気は水素、窒素の混合ガス雰囲気であった。
【0051】
次に、窒化アルミニウム基板を固定し、Fe−Nl−Co合金ピンを引っ張って強度を測定し、破壊モードを観察した。さらに、回路印刷部分及びビア部分におけるクラックの発生の有無を確認するために、断面を研磨し、電子顕微鏡(1000倍)よって確認した。また、焼結後のWの粒径を電子顕微鏡にて確認した。
【0052】
これらの評価結果をグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率と共に表1に示す。グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲内のものでは回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲外のものではビアにクラックが認められた。
【0053】
引っ張り強度及び破壊モードについては、グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲内のものでは、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Nl−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、グリーンシート平面方向収縮率が本発明で規定する数値範囲外のものでは、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
【0054】
【表1】
【0055】
[実施例2]
スルーホールに充填するWペーストの粘度を50000Pに変更して、実施例1と同様な実験を行った。粘度は実施例1と同様にブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。また、Wペーストを充填した1枚のグリーンシートについて、スルーホールにWペーストを充填する前後で重量を測定し、W粉末の充填率を測定したところ充填率は40%であった。また、このWペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際には、スキージの往復回数1回で、スルーホール内にWペーストが完全に充填された。
【0056】
これらの評価結果とグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率を表2に示す。グリーンシート平面方向収縮率が18%以上、23%以下では回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、18%より小さいものについては、ビアにクラックが認められた。さらに、グリーンシートの平面方向収縮率が23%より大きい試料12に関しては、窒化アルミニウム焼結体母材にもビアから放射状にクラックが生じていた。
【0057】
引っ張り強度及び破壊モードについては、グリーンシート平面方向収縮率が18%以上、23%以下のものでは、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Nl−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、平面方向収縮率が18%より小さいもの及び23%より大きいものでは、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
【0058】
【表2】
【0059】
[実施例3]
実施例2と同じ実験を、グリーンシートの枚数を増やして行った。グリーンシートはそれぞれの平面方向収縮率に対して100枚とした。これらについて実施例2と同じ評価を行い、その中で引っ張り強度が一番低かった結果を表3に示す。グリーンシート平面方向収縮率が20%以上、23%以下では回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、平面方向収縮率が20%より小さいものについては、実施例2でクラックが認められなかった18%のものにも、ビアにクラックが認められた。さらに、グリーンシートの平面方向収縮率が25%より大きい試料19に関しては、窒化アルミニウム焼結体母材にもビアから放射状にクラックが生じていた。
【0060】
引っ張り強度及び破壊モードについては、グリーンシート平面方向収縮率が20%以上、23%以下のものでは、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Nl−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、20%より小さい平面方向収縮率、23%より大きい平面方向収縮率では、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
なお、実施例2ではビアにクラックが認められなかったが、実施例3ではビアにクラックが認められた平面方向収縮率が18%である試料15のビア充填後のスルーホールへのW充填率を調査すると、40%より小さいことが確認された。
【0061】
【表3】
【0062】
[実施例4]
スルーホールに充填するWペーストの粘度を10000Pに変更して、実施例1と同様な実験を行った。粘度は実施例1と同様にブルックフィールド社製の5×HBDV−I+を使用した。また、Wペーストを充填した1枚のグリーンシートについて、スルーホールにWペーストを充填する前後で重量を測定し、W粉末の充填率を測定した結果、充填率は30%であった。また、Wペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際には、スキージの往復回数を1回で行ったが、スルーホールにWペーストが完全に充填された。
【0063】
これらの評価結果とグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率とを表4に示す。グリーンシート平面方向収縮率が本発明範囲内の25%以下のものでは回路印刷面、ビア部分ともにクラックは生じていなかった。一方、グリーンシートの平面方向収縮率が25%より大きい試料22に関しては、窒化アルミニウム母材にもビアから放射状にクラックが生じていた。
【0064】
引っ張り強度及び破壊モードについては、25%以下のグリーンシート平面方向収縮率では、引っ張り強さ20MPaで金属化層とFe−Ni−Co線とのろう付け部分が破断した。これより、窒化アルミニウムと金属化層との接合強度は20MPa以上であることが分かる。一方、平面方向収縮率が25%より大きいものでは、接合強度が20MPaより低く、強度の低い試料は、ビアの真上の金属化層内で破壊していた。
【0065】
【表4】
【0066】
[実施例5]
実施例4と同じ実験を、グリーンシートの枚数を増やして行った。グリーンシートはそれぞれの平面方向収縮率に対して100枚とした。また、Wペーストをスクリーン印刷機によって、スルーホールに充填する際には、スキージの往復回数を1回で行ったが、数枚については、充填乾燥後にビア中央に陥没が認められた。陥没が認められた試料については、再度スルーホールにWペーストを充填した。これらについて実施例4と同じ評価を行い、その中で引っ張り強度が一番低かった結果を表5に示す。
【0067】
実施例4ではビアにクラックが認められなかったグリーンシートの平面方向収縮率が25%である試料に今回はクラックが認められた。また、実施例4に比べて、引っ張り強度が低下した試料を調査すると、一回目のスルーホールへのWペーストの充填では乾燥後陥没が認められていたことが分かった。スルーホールへの充填状態が実施例4に比べると悪化したため、ビアクラックが認められ、引っ張り強度も低下したものと考えられる。
【0068】
【表5】
【発明の効果】
本発明によれば、窒化アルミニウム焼結体表面に形成される主に導体高融点金属からなる金属化層を形成するペーストの導体高融点金属として窒化アルミニウムと熱膨張率の近いWを選択した場合において、窒化アルミニウムのグリーンシートが焼結時に示す平面方向の収縮率を16.5%以上、25%以下、好ましくは、18%以上、23%以下、さらに好ましくは、20%以上、23%以下にすることによって、金属化層が0.1mm程度に厚くなったり、ビア径が0.3mm以上と大きくなった場合でも、金属層を形成する際に、クラックを防ぎ、窒化アルミニウムとの密着強度を高くすることが出来る。このため、本発明の窒化アルミニウム焼結体をIC用の基板、パッケージ材料として好適に用いることができる。
Claims (6)
- 窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートに導体高融点金属を含むペーストを塗布した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が18%以上、23%以下であることを特徴とする請求項1記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が20%以上、23%以下であることを特徴とする請求項1記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 窒化アルミニウムを主成分とするセラミックスグリーンシートにスルーホールを穿孔し、該スルーホール内部に導体高融点金属を含むペーストを充填した後、全体を同時に焼結することにより、金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体を製造する方法において、前記ペーストに含まれる導体高融点金属がWであり、前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が16.5%以上、25%以下であることを特徴とする金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が18%以上、23%以下であることを特徴とする請求項4記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
- 前記セラミックグリーンシートの焼結時の平面方向収縮率が20%以上、23%以下であることを特徴とする請求項4記載の金属化層を有する窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
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