JP2004023780A - 幅縦水晶振動子と水晶ユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】等価直列抵抗R1の小さい、周波数温度特性に優れた超小型の幅縦水晶振動子と水晶ユニットを提供することにある。
【解決手段】振動部と接続部と支持部からなる幅縦水晶振動子を電気変換効率の良い水晶板から形成し、且つ、複数個の水晶振動子を電気的に並列に接続する事により、広い温度範囲に亙って周波数変化が小さく、等価直列抵抗R1の小さい超小型の幅縦水晶振動子と水晶ユニットを提供することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】振動部と接続部と支持部からなる幅縦水晶振動子を電気変換効率の良い水晶板から形成し、且つ、複数個の水晶振動子を電気的に並列に接続する事により、広い温度範囲に亙って周波数変化が小さく、等価直列抵抗R1の小さい超小型の幅縦水晶振動子と水晶ユニットを提供することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高い電気機械変換効率を有し、主振動が単一の振動モードで振動する幅縦水晶振動子とそれを収納した水晶ユニットに関する。更に、本発明は幅縦水晶振動子のカット角、電極構成、及び形状に関する。特に、小型化、高精度、耐衝撃性、低廉化などの要求の強い携帯機器用、情報通信機器用、計測機器用、及び民生機器用の基準信号源として最適な新カット、新電極構成の幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術としては、水晶を用いた幅縦振動モードと長さ縦振動モードが結合したNS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子がよく知られている。図12にはこの従来例の平面図を示す。図12において水晶振動子200は振動部201、接続部203、206及び支持部204、207を具えて構成されている。支持部204、207はそれぞれマウント部205、208を包含している。更に、図12と図13に示されているように、振動部201の上下面には電極202と211が配置され、振動部の電極202は接続部203を介してマウント部205にまで延在している。これに対して、振動部の電極211も同様に接続部206を介してマウント部208にまで延在している。電極202と電極211は異極となるように構成され、2電極端子を構成している。そして、振動子はマウント部205、208でリード線や台座に接着剤などで固定される。今、両電極202、211間に交番電圧を印加すると、図13の実線と点線で示されるように、電界Etは厚みT方向に交互に働く。その結果、幅Wによって大略周波数が決まる幅縦振動モードと長さLによって大略周波数が決定される長さ縦振動モードが同時に励振され、逆相で両振動モードが結合したNS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子が得られる。また、上記水晶振動子は化学的エッチング法によって一体に形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子では、振動部の面積が大きい程(低周波数)等価直列抵抗R1が小さくなり、品質係数Q値が大きくなる。しかしながら2つの振動モードが結合した、NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子は、それらの周波数はそれぞれ幅Wと長さLに反比例し、且つ、周波数温度特性が幅Wと長さLの比、いわゆる辺比W/Lによって決定され、更に、周波数温度特性が良好となる辺比W/L≒0.95となるので、小型化(高周波数化)しようとすると、振動部の面積が小さくなる。そのため、電気機械変換効率が小さくなり、その結果、等価直列抵抗R1が大きくなり、品質係数Q値が小さくなるなどの課題が残された。このようなことから、超小型で、等価直列抵抗R1が小さく、品質係数Q値が高くなるような新カットで、電気機械変換効率が高くなる電極構成を具える水晶振動子とそれを収納した水晶ユニットが所望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットを提供することを目的とするものである。
【0005】
即ち、本発明の幅縦水晶振動子の第1の態様は、振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、前記振動部の幅寸法は長さ寸法より小さく、厚み寸法より大きい幅縦水晶振動子において、前記水晶振動子は電気軸x軸に垂直となるX板水晶をx軸を回転軸として角度θx=−20°〜+20°回転し、更に、機械軸y軸の回転後の新軸y′軸を回転軸として角度θy=−10°〜+10°回転した水晶板から形成されていて、さらに、x軸の回転後の新軸であるx′軸に垂直な面となる振動部の上下面には極性の異なる少なくとも一対の電極が対抗して配置され、且つ、前記水晶振動子の振動部と接続部と支持部とは粒子法により一体形成された形状を有し、さらに、前記幅寸法に共振周波数が反比例し、主振動が単一の振動モードで振動する横効果型の幅縦水晶振動子である。
【0006】
本発明の幅縦水晶振動子の第2の態様は、振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、前記振動部の幅寸法は長さ寸法より小さく、厚み寸法より大きい幅縦水晶振動子において、前記水晶振動子は電気軸x軸に垂直となるX板水晶を機械軸y軸を回転軸として角度θy=−10°〜+10°回転し、更に、電気軸x軸の回転後の新軸x′軸を回転軸として角度θx=−20°〜+20°回転した水晶板から形成されていて、さらに、x軸の回転後の新軸であるx′軸に垂直な面となる振動部の上下面には極性の異なる少なくとも一対の電極が対抗して配置され、且つ、前記水晶振動子の振動部と接続部と支持部とは粒子法により一体形成された形状を有し、さらに、前記幅寸法に共振周波数が反比例し、主振動が単一の振動モードで振動する横効果型の幅縦水晶振動子である。
【0007】
本発明の幅縦水晶振動子の第3の態様は、振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、幅寸法に共振周波数が反比例し、単一振動モードで振動する幅縦水晶振動子で、前記振動部の上面と下面に電極が配置され、前記振動子は圧電定数e12の絶対値が0.123〜0.18C/m2を有する水晶板から形成された幅縦水晶振動子である。
【0008】
本発明の水晶ユニットの第1の態様は、水晶振動子と、その水晶振動子を収納する表面実装型のケースと、蓋とを具えて構成される水晶ユニットにおいて、
前記ケース内には前記水晶振動子として、第1の態様又は第2の態様又は第3の態様に記載の幅縦水晶振動子を具えた水晶ユニットである。
【0009】
【作用】
このように、本発明は幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットで、しかも、高い電気機械変換効率を有する水晶板から振動子を形成し、且つ、電極を配置することにより、電気的諸特性と周波数温度特性に優れた超小型の幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットが得られる。
【0010】
【本発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づき具体的に述べる。
(第1実施例)
図1は本発明の水晶板1のカット角とその座標系との関係である。座標系は原点O、電気軸x、機械軸y、光軸zからなりO−xyzを構成している。まず、x軸に垂直な水晶板、いわゆる、X板水晶を考える。このとき、X板水晶の各寸法である幅W0、長さL0、及び厚みT0はそれぞれy軸、z軸、及びx軸方向に一致している。
【0011】
次に、このX板水晶をx軸の廻りに角度θx=−20°〜+20°回転し、更に、y軸の新軸y′軸の廻りに角度θy=−10°〜+10°回転される。このとき、x軸の新軸はx′軸に、z軸は2軸の廻りに回転されるので、新軸z″と成る。そして、本発明の幅縦水晶振動子は前記した回転水晶板から形成される。本実施例では、X板水晶を最初に、x軸の廻りに角度θx=−20°〜+20°回転し、次に、y′軸の廻りに角度θy=−10°〜+10°回転されているが、最初に、機械軸y軸の廻りに角度θy=−10°〜+10°回転し、次に、電気軸x軸の新軸x′軸の廻りに角度θx=−20°〜+20°回転してもよい。又、本実施例では、幅縦水晶振動子が形成される水晶板のカット角について述べたが、本発明の振動子のカット角はこれに限定されるものでなく、形成された幅縦水晶振動子が前記した角度を有する振動子であれば良く、本発明はそれらの振動子をも包含するものである。例えば、水晶板の面内回転をしないで、振動子形成に用いるマスク等で面内回転を行うものである。
【0012】
図2は本発明の第1実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。幅縦水晶振動子2は振動部3、接続部6、9とマウント部8、11をそれぞれ含む支持部7、10を具えて構成されている。更に、支持部7と支持部10にはそれぞれ穴7aと穴10aが設けられている。また、振動部3の上面と下面には電極4と電極5が対抗して配置され、それらの電極は異極となるように構成されている。即ち、一対の電極が配置されている。更に、電極4は一方の接続部9を介してマウント部11にまで延在して配置されている。また、電極5は他方の接続部6を介してマウント部8にまで延在して配置されている。本実施例では、振動部3に配置された電極4と電極5は互いに異なる方向に延在してマウント部まで配置されているが、同方向に延在するように配置しても振動子として同じ特性が得られる。本実施例の振動子はマウント部8、11が台座等に接着剤や半田によって固定される。
【0013】
更に、振動部3は幅W0、長さL0、及び厚みT0の寸法を有し、幅W0、長さL0、及び厚みT0はそれぞれy′軸、z″軸、及びx′軸方向と一致している。すなわち、x′軸に垂直な面となる振動部3の上面と下面に電極4と電極5が配置されている。又、電極4に対抗する電極5は異極となるように構成されている。更に、振動部3の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0は幅W0より小さくなるように設計される。即ち、幅縦振動モードと長さ縦振動モードとの結合を無視できるほどに小さく、且つ、振動部の電極面積を大きくして、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、幅W0と長さL0の比W0/L0は0.7より小さく、且つ、電界Exを大きくして、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、厚みT0と幅W0との比T0/W0は0.85より小さくすることが必要である。実際のこれらの寸法の決定は幅縦水晶振動子に要求される特性によって決まる。
【0014】
更に詳述するならば、幅縦水晶振動子の共振周波数は幅寸法W0に反比例し、他の寸法(長さ、厚み、接続部と支持部)には殆ど依存しない。それ故、幅W0 を小さくすることにより、小型で、高周波数化が図れる。また、前記した寸法の関係から単一振動モードで振動する幅縦水晶振動子が得られる。
【0015】
次に、本実施例の幅縦水晶振動子を駆動するのに必要な圧電定数e12の値について説明する。この圧電定数e12の値が大きいほど、電気機械変換効率は高くなることを示している。角度θx=−20°〜+20°、θy=−10°〜+10°のとき圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2を有する。この値は従来のNS−GTカット水晶振動子を駆動する圧電定数e21の絶対値0.1C/m2より著しく大きくなる。
【0016】
すなわち、本実施例の幅縦水晶振動子は高い電気機械変換効率を有するので、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い、しかも、超小型の幅縦水晶振動子を得ることができる。
【0017】
今、図2の電極4と電極5の間に交番電圧を印加すると、電界Exは図2の実線と点線の矢印で示したように厚み方向に交互に働く。その結果、振動部3は幅方向に伸縮する振動をすることになる。
【0018】
(第2実施例)
図3は本発明の第2実施例の幅縦水晶振動子12の上面図(a)と下面図(b)である。幅縦水晶振動子12は振動部13、接続部14、21、マウント部16とそれに接続される支持フレーム17,18、19を含む支持部15とマウント部23とそれに接続されるマウント部20を含む支持部22を具えて構成されている。更に、支持フレーム17の両端部は支持フレーム18,19の一端部に接続され、支持フレーム18、19の他端部はマウント部20に接続されている。支持部15には穴15aが、支持部22には穴22aが設けられている。
【0019】
また、振動部13の上面と下面には異極で対抗する電極24と電極26が配置されている。更に、電極24は一方の接続部21を介してマウント部20にまで延在して配置され、マウント部20に一方の電極端子となる電極25が形成される。又、電極26は他方の接続部14と支持フレーム17、19を介してマウント部20にまで延在して配置され、マウント部20に他方の電極端子となる電極27が形成される。すなわち、2電極端子を形成する。本実施例では、振動部の電極のみが対抗するように配置されている。しかし、他の部分での電極が対抗して配置されてもよく、等価直列抵抗R1に及ぼす影響は無視できる程に小さい。
【0020】
更に、振動部13は幅W0、長さL0と厚みT0(図示されていない)の寸法を有し、幅W0、長さL0と厚みT0はそれぞれy′軸、z″軸とx′軸方向と一致している。すなわち、x′軸に垂直な面となる振動部13の上面と下面には電極24と電極26が配置されている。又、電極24と電極26は異極となるように構成されている。更に振動部13の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0 は幅W0より小さくなるように設計される。具体的な関係については実施例1で述べた通りである。
【0021】
このように幅縦水晶振動子を形成することにより、振動子の強度をより強くすることができる。その結果、振動子の一端部を接着剤や半田により台座、あるいはリード線に固定できるので、量産での作業性に優れ、工数を削減することができる。すなわち、安価な幅縦水晶振動子を得ることができる。同時に、衝撃に対して強い幅縦水晶振動子が実現できる。更に、支持部に穴が設けられているので、幅縦モードを圧電的に容易に引き起こすことができる。それ故、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い超小型の幅縦水晶振動子が得られる。
【0022】
尚、本実施例では、互いに異極となる電極がマウント部20の上面に電極25を、下面に電極27を配置しているが、マウント部20の同一平面に異極となる電極を配置してもよく、同様に安価な振動子が得られる。この方法として、一方の電極を支持フレームの側面、あるいはマウント部の側面を介して同一平面の同極となる電極に接続される。更に、本実施例では振動部に平行に支持フレームが2本設けられているが、1本でも十分な機械的強度を有するので、一本でもよく、十分な特性が得られる。
【0023】
(第3実施例)
図4は本発明の第3実施例の幅縦水晶振動子28の上面図(a)と下面図(b)である。幅縦水晶振動子28は、振動部29、接続部30、35、及び支持フレーム31,32、33を含む支持部41と支持フレーム36とマウント部34を含む支持部42を具えて構成されている。更に、振動部29は一方の接続部30を介して支持フレーム31に接続され、支持フレームの両端部は支持フレーム32、33に接続されている。更に、振動部29は他方の接続部35を介して支持フレーム36に接続され、その両端部は支持フレーム32、33に接続されている。又、マウント部34には穴43が設けられている。この穴43を設けることにより、幅縦振動を抑圧することなく容易に引き起こすことができる。
【0024】
更に、振動部29の上面と下面には異極で対抗する電極37と電極39が配置されている。そして、電極37は一方の接続部35を介してマウント部34にまで延在して配置され、マウント部34に一方の電極端子となる電極38が形成されている。又、電極39は他方の接続部30と支持フレーム31、33を介してマウント部34にまで延在して配置され、マウント部34に他方の電極端子となる電極40が形成されている。すなわち、2電極端子を形成する。本実施例以外の電極配置法としては実施例2で述べた方法を本実施例でも含むものである。同時に、支持フレームについても同様に含むものである。
【0025】
更に、振動部29は幅W0、長さL0と厚みT0(図示されていない)の寸法を有し、これらの寸法とx′軸、y′軸とz″軸との関係は実施例1で述べた通りである。また振動部29の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0は幅W0より小さくなるように設計される。具体的な関係については実施例1で述べたのと同じである。更に、上記実施例の幅縦水晶振動子の振動部、接続部と支持部とは一体に形成されている。
【0026】
このように幅縦水晶振動子を形成することにより、すでに実施例2で述べたように、量産性に優れた安価な幅縦水晶振動子が得られる。同時に、衝撃に対して強い幅縦水晶振動子が実現できる。更に、マウント部に穴が設けられているので、幅縦モードの振動を抑圧することなく、圧電的に容易に引き起こすことができる。それ故、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い、しかも超小型の幅縦水晶振動子が得られる。
【0027】
図5は上記第1実施例から第3実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す線図である。前記した角度θxと角度θyの選択により任意の温度で一次温度係数αが零になり、2次曲線で表すことができる。例えば、曲線44で示されるように、頂点温度Tpを室温付近に設定することができる。又、曲線45は頂点温度Tpを0℃付近に設定した場合である。更に、頂点温度Tpは任意に設定でき、曲線46は頂点温度Tpを負側に設定した場合である。上記実施例の角度θxと角度θyを有する幅縦水晶振動子では、頂点温度Tpを約−200℃から約+60℃と極めて広い温度範囲に設定することができる。頂点温度Tpは用いられる機器等によって決定される。
【0028】
このように本発明の幅縦水晶振動子は頂点温度を極めて広い温度範囲で任意に設定でき、且つ、周波数温度特性が2次曲線で近似できるので、広い温度範囲に亘って周波数変化の小さい、優れた周波数温度特性を有する振動子であることが理解される。
【0029】
(第4実施例)
図6は本発明の第4実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。幅縦水晶振動子50は振動部51、接続部52、55、及びマウント部54、57をそれぞれ含む支持部53、56を具えて構成されている。更に、支持部53と支持部56にはそれぞれ穴53aと穴56aが設けられている。そして、振動部51の上面と下面にはそれぞれ複数個の電極が配置されている。又、上面、及び下面の幅方向に隣接する電極は異極となるように構成されている。且つ、上面と下面に配置された対抗電極は異極となるように構成されている。本実施例では電極58,59,60と電極61,62,63が配置されている。本実施例の電極配置では3次オーバートーンの幅縦水晶振動子が得られる。
【0030】
更に詳述するならば、電極58とそれに隣接する電極59は異極に、さらに、電極58とそれに対抗する電極63は異極となるように構成されている。電極58とそれとは異極となる電極63で一対の電極を構成している。全く同様に、電極59とそれに隣接する電極58、60は異極に、更に、電極59とそれに対抗する電極62は異極となるように構成されている。電極59とそれとは異極となる電極62で一対の電極を構成している。更に電極60とそれに隣接する電極59は異極に、さらに、電極60とそれに対抗する電極61は異極となるように構成されている。電極60とそれとは異極となる電極61で一対の電極を構成している。又、上面の電極58と電極60は接続電極58aを介して接続されている。更に、下面の電極61と電極63は接続電極61aを介して接続されている。
【0031】
更に、上面の同極となる電極58、60は一方の接続部52を介してマウント部54にまで延在して配置されている。又、電極59は他方の接続部55を介してマウント部57にまで延在して配置されている。更に、下面の電極62は一方の接続部52を介してマウント部54にまで延在して配置されている。又、下面の同極となる電極61、63は他方の接続部55を介してマウント部57にまで延在して配置されている。図6から明らかなように、一方の接続部と支持部の上下面には同極となる電極が振動部から延在して配置され、他方の接続部と支持部の上下面には同極となる電極が振動部から延在して配置されている。
【0032】
それ故、一方の電極58,60、62は同極に、他方の電極59,61、63は同極となるように配置され、それらは互いに異極となる2電極端子構造を形成している。本実施例では三対の電極を構成している。本発明の電極構成は前記実施例に限定されるものでなく、対称モードを使用する場合にはn対(n=5,7,9・・・)と奇数対の電極構成をも包含するものである。又、非対称モードを使用する場合にはm対(m=2,4,6・・・)と偶数対の電極構成をも包含するものである。
【0033】
次に、振動部の幅W0、長さL0、厚みT0と電極との関係について述べる。本実施例では、三対の電極を構成している。それ故、図5で説明した良好な周波数温度特性、及び電界Exを大きくし、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、厚みT0と幅W0との側係は3T0/W0が0.85より小さくする必要がある。又、幅縦振動モードと長さ縦振動モードとの結合を無視できるほどに小さく、且つ、電極面積を大きくし、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、幅W0と長さL0との関係はW0/3L0が0.7より小さくする事が必要である。
【0034】
本実施例では三対の電極構成の場合についで説明したが、n対(n=5,7,9、・・・)と奇数対の電極構成ではn次オーバートーンの幅縦水晶振動子が得られる。この場合、前記した優れた特性を有する水晶振動子を得るには、厚みT0と幅W0との関係はnT0/W0が0.85より小さく、且つ、幅W0と長さL0との関係はW0/nL0が0.7より小さくする必要がある。又、m対(m=2,4,6、・・・)と偶数対の電極では、厚みT0と幅W0との関係はmT0/W0が0.85より小さく、且つ、幅W0と長さL0との関係はW0/mL0が0.7より小さくすることが必要である。
【0035】
このように、本発明の幅縦水晶振動子は、特に、振動部の電極の配置の仕方を工夫することにより、等価直列抵抗R1の小さい、周波数温度特性に優れた超小型の高次オーバートーンの幅縦水晶振動子を実現することができる。又、幅縦水晶振動子の周波数はオーバートーン次数に比例するので、高周波数化が可能になる。
【0036】
なお、本実施例で詳細に述べた電極構成は図3と図4の振動子形状にも適用できるものである。
【0037】
(第5実施例)
図7は本発明の第5実施例の幅縦水晶振動子の上面図である。幅縦水晶振動子64は振動部65、接続部66、67、68、71、72、73及び、マウント部70、75をそれぞれ含む支持部69、74を具えて構成されている。支持部69には穴69aを、支持部74には穴74aを具えている。本実施例では、振動部65の長さ方向の両側にそれぞれ複数個の接続部66、67、68と接続部71、72、73が設けられている。更に、一方の接続部66、67、68は支持部69に接続され、他方の接続部71、72、73は支持部74に接続されている。前記振動子の振動部、接続部と支持部とは一体に形成されている。
【0038】
又、幅縦水晶振動子の振動部は幅W0、長さL0、厚みT0(図示されていない)を有し、前記振動子に配置される電極は図示されていないが、実施例1から実施例4で述べられた電極の配置、及び構成が本振動子にも適用される。本実施例では、振動部の両側にそれぞれ3個の接続部を設けているが、さらに多くの接続部を設けてもよく、実際には、オーバートーン次数の数と同じだけ設けることができるが、実際にはより少ない接続部を設けることが好ましい。
【0039】
このように、本発明の幅縦水晶振動子は接続部を振動部の両側にそれぞれ複数個設けているので、高い周波数の厚みの薄い振動子でも耐衝撃性に強い、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い幅縦水晶振動子が得られる。
【0040】
(第6実施例)
図8は本発明の第6実施例の幅縦水晶振動子の形状を示す上図面である。一方の幅縦水晶振動子76は、振動部92、接続部78、81、及びマウント部80、83を含む支持部79と支持部82を具えて構成されている。又、他方の幅縦水晶振動子77は、振動部93、接続部84、87、及びマウント部86、89を含む支持部85と支持部88を具えて構成されている。更に、この実施例の幅縦水晶振動子は、2つの幅縦水晶振動子76と幅縦水晶振動子77の互いの一方のマウント部80とマウント部86とがフレーム90を介して接続され、さらに、互いの他方のマウント部83とマウント部89とがフレーム91を介して接続され、角度θにて、一体に形成したものである。又、角度θは通常θ=0°〜30°から仕様に応じて決められるものである。
【0041】
即ち、2つの幅縦水晶振動子に角度θを持たせると、各水晶振動子には異なる周波数温度特性を持たせることができる。更に、これらの水晶振動子を電気的に並列に接続することにより、幅縦水晶振動子の周波数温度特性を改善することができる。同時に、等価直列抵抗R1も改善できる。例えば、2個の場合で同じ等価直列抵抗R1を有する時、合成されたR1は約半分になる。また、図9に、両幅縦水晶振動子144,145の電気的な接続図を示す。
【0042】
図10に図8で示されえた実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す。一方の水晶振動子が温度特性146を、他方の水晶振動子が温度特性147を有する場合、電気的に並列に接続されると両水晶振動子の周波数温度特性は曲線148のようになる。即ち、本実施例の幅縦水晶振動子は、曲線148に示すような周波数温度特性を有することとなり、これにより、温度変化に対して周波数変化の少ない安定した特性の水晶振動子とすることができる。この結果、本実施例の幅縦水晶振動子は、超小型で、しかも、周波数温度特性に優れた水晶振動子が実現できる。
【0043】
図11は本発明の水晶ユニットの側面図である。水晶ユニット100は表面実装型のケース109と蓋101と幅縦水晶振動子102から構成されている。ケース109には固定部103,104が設けられていて、本実施例では、第1実施例の幅縦水晶振動子102が収納され、その振動子のマウント部が接着剤105,106等により固定部で固定されている。更に、ケース109の下面には電極107,108が設けられていて、振動子102の電極と接続されている。即ち、2電極端子構造を形成している。
【0044】
本実施例では、固定部を2個設け両端部で接着材等により固定しているが、固定部は1個でも良く、片側固定でも良い。即ち、本発明の水晶ユニットには、第1実施例から第6実施例のいずれかの幅縦水晶振動子が収納されている。図示されていないが、特に、複数個の幅縦水晶振動子を収納する時には、振動子間の干渉を防止するための仕切り部が振動子の間に設けられている。2個以上の振動子がケース内に収納される場合には、それらの振動子は一体形成されていても良く、又は、個々に形成されていても良い。更に、複数個の振動子は電気的には並列になるように、接続、構成されている。
【0045】
更に、上記実施例の幅縦水晶振動子は、振動部、接続部と支持部とを具えて構成されているように複雑な形状をしている。又、本発明の幅縦水晶振動子を化学的エッチング法によって加工した場合、その加工速度が極めて遅いのが実状である。それ故、本発明の幅縦水晶振動子の加工は、物理的、あるいは機械的な方法を用いて行われ、前記振動子は一体に形成される。即ち、質量を有する粒子を水晶板に物理的、あるいは機械的方法で衝突させ、それにより水晶板の原子、分子を飛散させて振動子の形状を加工するものである。ここではこの方法を粒子法と呼ぶことにする。この方法は化学的エッチング法による加工法とは異なる方法であると同時に、加工速度が極めて早いのが特長である。外形形状の加工時間が非常に短縮されるので安価な振動子を提供することができる。
【0046】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、例えば、上記第6実施例における幅縦圧電結晶振動子では、互いに特性が異なる二種類の水晶振動子を一体に結合して形成しているが、一体接合する幅縦水晶振動子の種類は三種類以上であっても良い。又、本発明の支持部の形状は第1実施例から第6実施例の形状に限定されるものでなく、本発明の支持部の形状は、接続部を介して振動部と接続されるいかなる形状をも包含するものである。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の振動子形状と電極及びカット角とを有する幅縦水晶振動子を提供することにより、次の如き著しい効果が得られる。
(1)幅縦水晶振動子を駆動する圧電定数が非常に大きいので、電気機械変換効率が良くなる。その結果、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高
い、しかも超小型の幅縦水晶振動子を得ることができる。
(2)振動部の対抗面に互いに異極となる電極が配置されることにより、電界が電極に対して垂直に働く。その結果、電気機械変換効率が良くなるので、 等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子が得られる。同時に、品質係数Q値が高くなる。
(3)振動部に複数対の電極が配置されているので、等価直列抵抗R1の小さい、高周波数の幅縦水晶振動子が実現できる。
(4)2個の幅縦水晶振動子を粒子法によって一体に形成でき、小型で周波数温度特性に優れた水晶振動子が実現できる。
(5)カット角の選択により頂点温度Tpを変えることができる。と同時に、主振動が単一の振動モードで振動するので、頂点温度を変えずに周波数調整をすることができる。即ち、製造工程が簡単になるので、安価な幅縦水晶振動子を得ることができる。
(6)幅縦水晶振動子を粒子法によって形成できるので、量産性に優れ、1枚のウエハ上に多数個の振動子を一度にバッチ処理にて形成できるので、安価な水晶振動子が実現できる。
(7)本発明の幅縦水晶振動子は振動部、接続部及び支持部を具えて構成されるので、固定部や台座等への支持による振動エネルギー損失が小さくなり、耐衝撃性に優れた水晶振動子が得られる。
(8)複数個の幅縦水晶振動子を一体に形成し、更に、電気的に並列に接続されるので、等価直列抵抗R1が小さくなる。例えば、2個の場合で同じ等価直列抵抗R1を有する時、本発明の振動子では約半分の等価直列抵抗R1 になる。それ故、一体結合する振動子の個数を増やすことができ、これにより、更に等価直列抵抗R1を小さくすることができる。
(9)複数個の幅縦水晶振動子を一体に形成し、更に、電気的に並列に接続されるので、何らかの理由でそれら振動子のうちの1個が破損しても、振動子としての機能を維持することができる。
(10)等価直列抵抗R1の小さい超小型の幅縦水晶振動子が搭載されるので、超小型の水晶ユニットが高品質で実現できる。
(11)複数個の幅縦水晶振動子が、別々の各ユニットのケースに収納されるのでなく、同じユニットのケースに収納されるので、安価な水晶ユニットが実現できる。と同時に、これらの振動子を電気的に並列に接続することに より、周波数温度特性に優れた水晶ユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の幅縦水晶振動子の形成に用いる水晶板のカット角とその座標系との関係である。
【図2】本発明の第1実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。
【図3】本発明の第2実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。
【図4】本発明の第3実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。
【図5】上記第1実施例から第3実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す線図である。
【図6】本発明の第4実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。
【図7】本発明の第5実施例の幅縦水晶振動子の上面図である。
【図8】本発明の第6実施例の幅縦水晶振動子の形状を示す上面図である。
【図9】図8の幅縦水晶振動子の電気的な接続図である。
【図10】図8で示された実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す。
【図11】本発明の水晶ユニットの側面図である。
【図12】NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子の上面図である。
【図13】NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子の側面図である。
【符号の説明】
x 水晶の電気軸
y 水晶の機械軸
z 水晶の光軸
x′x軸の新軸
z″z軸の新軸
1 水晶板
W0 振動部の幅
L0 振動部の長さ
T0 振動部の厚み
θx,θy,θ 角度
2,12,28,50,64,76,77,144,145 幅縦水晶振動子
3,13,29,51,65,92,93 振動部
6,9,14,21,30,35,52,55,66,67,68,71,72,73,78,81,84,87 接続部
8,11,16,20,23,34,54,57,70,75,80,83,86,89 マウント部
7,10,15,22,41,42,53,56,69,74,79,82,85,88 支持部
4,5,24,25,26,27,37,38,39,40,58,59,60,61,62,63 電極
58a,61a 接続電極
e12 圧電定数
R1 等価直列抵抗
Q 品質係数
Ex 電界
17,18,19,31,32,33,36 支持フレーム
90,91 フレーム
7a,10a,15a,22a,43,53a,56a,69a,74a 穴
44,45,46 曲線
Tp 頂点温度
146,147 幅縦水晶振動子の周波数温度特性
148 補正された周波数温度特性
【発明の属する技術分野】
本発明は高い電気機械変換効率を有し、主振動が単一の振動モードで振動する幅縦水晶振動子とそれを収納した水晶ユニットに関する。更に、本発明は幅縦水晶振動子のカット角、電極構成、及び形状に関する。特に、小型化、高精度、耐衝撃性、低廉化などの要求の強い携帯機器用、情報通信機器用、計測機器用、及び民生機器用の基準信号源として最適な新カット、新電極構成の幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術としては、水晶を用いた幅縦振動モードと長さ縦振動モードが結合したNS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子がよく知られている。図12にはこの従来例の平面図を示す。図12において水晶振動子200は振動部201、接続部203、206及び支持部204、207を具えて構成されている。支持部204、207はそれぞれマウント部205、208を包含している。更に、図12と図13に示されているように、振動部201の上下面には電極202と211が配置され、振動部の電極202は接続部203を介してマウント部205にまで延在している。これに対して、振動部の電極211も同様に接続部206を介してマウント部208にまで延在している。電極202と電極211は異極となるように構成され、2電極端子を構成している。そして、振動子はマウント部205、208でリード線や台座に接着剤などで固定される。今、両電極202、211間に交番電圧を印加すると、図13の実線と点線で示されるように、電界Etは厚みT方向に交互に働く。その結果、幅Wによって大略周波数が決まる幅縦振動モードと長さLによって大略周波数が決定される長さ縦振動モードが同時に励振され、逆相で両振動モードが結合したNS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子が得られる。また、上記水晶振動子は化学的エッチング法によって一体に形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子では、振動部の面積が大きい程(低周波数)等価直列抵抗R1が小さくなり、品質係数Q値が大きくなる。しかしながら2つの振動モードが結合した、NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子は、それらの周波数はそれぞれ幅Wと長さLに反比例し、且つ、周波数温度特性が幅Wと長さLの比、いわゆる辺比W/Lによって決定され、更に、周波数温度特性が良好となる辺比W/L≒0.95となるので、小型化(高周波数化)しようとすると、振動部の面積が小さくなる。そのため、電気機械変換効率が小さくなり、その結果、等価直列抵抗R1が大きくなり、品質係数Q値が小さくなるなどの課題が残された。このようなことから、超小型で、等価直列抵抗R1が小さく、品質係数Q値が高くなるような新カットで、電気機械変換効率が高くなる電極構成を具える水晶振動子とそれを収納した水晶ユニットが所望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下の方法で従来の課題を有利に解決した幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットを提供することを目的とするものである。
【0005】
即ち、本発明の幅縦水晶振動子の第1の態様は、振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、前記振動部の幅寸法は長さ寸法より小さく、厚み寸法より大きい幅縦水晶振動子において、前記水晶振動子は電気軸x軸に垂直となるX板水晶をx軸を回転軸として角度θx=−20°〜+20°回転し、更に、機械軸y軸の回転後の新軸y′軸を回転軸として角度θy=−10°〜+10°回転した水晶板から形成されていて、さらに、x軸の回転後の新軸であるx′軸に垂直な面となる振動部の上下面には極性の異なる少なくとも一対の電極が対抗して配置され、且つ、前記水晶振動子の振動部と接続部と支持部とは粒子法により一体形成された形状を有し、さらに、前記幅寸法に共振周波数が反比例し、主振動が単一の振動モードで振動する横効果型の幅縦水晶振動子である。
【0006】
本発明の幅縦水晶振動子の第2の態様は、振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、前記振動部の幅寸法は長さ寸法より小さく、厚み寸法より大きい幅縦水晶振動子において、前記水晶振動子は電気軸x軸に垂直となるX板水晶を機械軸y軸を回転軸として角度θy=−10°〜+10°回転し、更に、電気軸x軸の回転後の新軸x′軸を回転軸として角度θx=−20°〜+20°回転した水晶板から形成されていて、さらに、x軸の回転後の新軸であるx′軸に垂直な面となる振動部の上下面には極性の異なる少なくとも一対の電極が対抗して配置され、且つ、前記水晶振動子の振動部と接続部と支持部とは粒子法により一体形成された形状を有し、さらに、前記幅寸法に共振周波数が反比例し、主振動が単一の振動モードで振動する横効果型の幅縦水晶振動子である。
【0007】
本発明の幅縦水晶振動子の第3の態様は、振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、幅寸法に共振周波数が反比例し、単一振動モードで振動する幅縦水晶振動子で、前記振動部の上面と下面に電極が配置され、前記振動子は圧電定数e12の絶対値が0.123〜0.18C/m2を有する水晶板から形成された幅縦水晶振動子である。
【0008】
本発明の水晶ユニットの第1の態様は、水晶振動子と、その水晶振動子を収納する表面実装型のケースと、蓋とを具えて構成される水晶ユニットにおいて、
前記ケース内には前記水晶振動子として、第1の態様又は第2の態様又は第3の態様に記載の幅縦水晶振動子を具えた水晶ユニットである。
【0009】
【作用】
このように、本発明は幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットで、しかも、高い電気機械変換効率を有する水晶板から振動子を形成し、且つ、電極を配置することにより、電気的諸特性と周波数温度特性に優れた超小型の幅縦水晶振動子とそれを具えた水晶ユニットが得られる。
【0010】
【本発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づき具体的に述べる。
(第1実施例)
図1は本発明の水晶板1のカット角とその座標系との関係である。座標系は原点O、電気軸x、機械軸y、光軸zからなりO−xyzを構成している。まず、x軸に垂直な水晶板、いわゆる、X板水晶を考える。このとき、X板水晶の各寸法である幅W0、長さL0、及び厚みT0はそれぞれy軸、z軸、及びx軸方向に一致している。
【0011】
次に、このX板水晶をx軸の廻りに角度θx=−20°〜+20°回転し、更に、y軸の新軸y′軸の廻りに角度θy=−10°〜+10°回転される。このとき、x軸の新軸はx′軸に、z軸は2軸の廻りに回転されるので、新軸z″と成る。そして、本発明の幅縦水晶振動子は前記した回転水晶板から形成される。本実施例では、X板水晶を最初に、x軸の廻りに角度θx=−20°〜+20°回転し、次に、y′軸の廻りに角度θy=−10°〜+10°回転されているが、最初に、機械軸y軸の廻りに角度θy=−10°〜+10°回転し、次に、電気軸x軸の新軸x′軸の廻りに角度θx=−20°〜+20°回転してもよい。又、本実施例では、幅縦水晶振動子が形成される水晶板のカット角について述べたが、本発明の振動子のカット角はこれに限定されるものでなく、形成された幅縦水晶振動子が前記した角度を有する振動子であれば良く、本発明はそれらの振動子をも包含するものである。例えば、水晶板の面内回転をしないで、振動子形成に用いるマスク等で面内回転を行うものである。
【0012】
図2は本発明の第1実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。幅縦水晶振動子2は振動部3、接続部6、9とマウント部8、11をそれぞれ含む支持部7、10を具えて構成されている。更に、支持部7と支持部10にはそれぞれ穴7aと穴10aが設けられている。また、振動部3の上面と下面には電極4と電極5が対抗して配置され、それらの電極は異極となるように構成されている。即ち、一対の電極が配置されている。更に、電極4は一方の接続部9を介してマウント部11にまで延在して配置されている。また、電極5は他方の接続部6を介してマウント部8にまで延在して配置されている。本実施例では、振動部3に配置された電極4と電極5は互いに異なる方向に延在してマウント部まで配置されているが、同方向に延在するように配置しても振動子として同じ特性が得られる。本実施例の振動子はマウント部8、11が台座等に接着剤や半田によって固定される。
【0013】
更に、振動部3は幅W0、長さL0、及び厚みT0の寸法を有し、幅W0、長さL0、及び厚みT0はそれぞれy′軸、z″軸、及びx′軸方向と一致している。すなわち、x′軸に垂直な面となる振動部3の上面と下面に電極4と電極5が配置されている。又、電極4に対抗する電極5は異極となるように構成されている。更に、振動部3の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0は幅W0より小さくなるように設計される。即ち、幅縦振動モードと長さ縦振動モードとの結合を無視できるほどに小さく、且つ、振動部の電極面積を大きくして、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、幅W0と長さL0の比W0/L0は0.7より小さく、且つ、電界Exを大きくして、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、厚みT0と幅W0との比T0/W0は0.85より小さくすることが必要である。実際のこれらの寸法の決定は幅縦水晶振動子に要求される特性によって決まる。
【0014】
更に詳述するならば、幅縦水晶振動子の共振周波数は幅寸法W0に反比例し、他の寸法(長さ、厚み、接続部と支持部)には殆ど依存しない。それ故、幅W0 を小さくすることにより、小型で、高周波数化が図れる。また、前記した寸法の関係から単一振動モードで振動する幅縦水晶振動子が得られる。
【0015】
次に、本実施例の幅縦水晶振動子を駆動するのに必要な圧電定数e12の値について説明する。この圧電定数e12の値が大きいほど、電気機械変換効率は高くなることを示している。角度θx=−20°〜+20°、θy=−10°〜+10°のとき圧電定数e12の絶対値は0.123〜0.18C/m2を有する。この値は従来のNS−GTカット水晶振動子を駆動する圧電定数e21の絶対値0.1C/m2より著しく大きくなる。
【0016】
すなわち、本実施例の幅縦水晶振動子は高い電気機械変換効率を有するので、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い、しかも、超小型の幅縦水晶振動子を得ることができる。
【0017】
今、図2の電極4と電極5の間に交番電圧を印加すると、電界Exは図2の実線と点線の矢印で示したように厚み方向に交互に働く。その結果、振動部3は幅方向に伸縮する振動をすることになる。
【0018】
(第2実施例)
図3は本発明の第2実施例の幅縦水晶振動子12の上面図(a)と下面図(b)である。幅縦水晶振動子12は振動部13、接続部14、21、マウント部16とそれに接続される支持フレーム17,18、19を含む支持部15とマウント部23とそれに接続されるマウント部20を含む支持部22を具えて構成されている。更に、支持フレーム17の両端部は支持フレーム18,19の一端部に接続され、支持フレーム18、19の他端部はマウント部20に接続されている。支持部15には穴15aが、支持部22には穴22aが設けられている。
【0019】
また、振動部13の上面と下面には異極で対抗する電極24と電極26が配置されている。更に、電極24は一方の接続部21を介してマウント部20にまで延在して配置され、マウント部20に一方の電極端子となる電極25が形成される。又、電極26は他方の接続部14と支持フレーム17、19を介してマウント部20にまで延在して配置され、マウント部20に他方の電極端子となる電極27が形成される。すなわち、2電極端子を形成する。本実施例では、振動部の電極のみが対抗するように配置されている。しかし、他の部分での電極が対抗して配置されてもよく、等価直列抵抗R1に及ぼす影響は無視できる程に小さい。
【0020】
更に、振動部13は幅W0、長さL0と厚みT0(図示されていない)の寸法を有し、幅W0、長さL0と厚みT0はそれぞれy′軸、z″軸とx′軸方向と一致している。すなわち、x′軸に垂直な面となる振動部13の上面と下面には電極24と電極26が配置されている。又、電極24と電極26は異極となるように構成されている。更に振動部13の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0 は幅W0より小さくなるように設計される。具体的な関係については実施例1で述べた通りである。
【0021】
このように幅縦水晶振動子を形成することにより、振動子の強度をより強くすることができる。その結果、振動子の一端部を接着剤や半田により台座、あるいはリード線に固定できるので、量産での作業性に優れ、工数を削減することができる。すなわち、安価な幅縦水晶振動子を得ることができる。同時に、衝撃に対して強い幅縦水晶振動子が実現できる。更に、支持部に穴が設けられているので、幅縦モードを圧電的に容易に引き起こすことができる。それ故、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い超小型の幅縦水晶振動子が得られる。
【0022】
尚、本実施例では、互いに異極となる電極がマウント部20の上面に電極25を、下面に電極27を配置しているが、マウント部20の同一平面に異極となる電極を配置してもよく、同様に安価な振動子が得られる。この方法として、一方の電極を支持フレームの側面、あるいはマウント部の側面を介して同一平面の同極となる電極に接続される。更に、本実施例では振動部に平行に支持フレームが2本設けられているが、1本でも十分な機械的強度を有するので、一本でもよく、十分な特性が得られる。
【0023】
(第3実施例)
図4は本発明の第3実施例の幅縦水晶振動子28の上面図(a)と下面図(b)である。幅縦水晶振動子28は、振動部29、接続部30、35、及び支持フレーム31,32、33を含む支持部41と支持フレーム36とマウント部34を含む支持部42を具えて構成されている。更に、振動部29は一方の接続部30を介して支持フレーム31に接続され、支持フレームの両端部は支持フレーム32、33に接続されている。更に、振動部29は他方の接続部35を介して支持フレーム36に接続され、その両端部は支持フレーム32、33に接続されている。又、マウント部34には穴43が設けられている。この穴43を設けることにより、幅縦振動を抑圧することなく容易に引き起こすことができる。
【0024】
更に、振動部29の上面と下面には異極で対抗する電極37と電極39が配置されている。そして、電極37は一方の接続部35を介してマウント部34にまで延在して配置され、マウント部34に一方の電極端子となる電極38が形成されている。又、電極39は他方の接続部30と支持フレーム31、33を介してマウント部34にまで延在して配置され、マウント部34に他方の電極端子となる電極40が形成されている。すなわち、2電極端子を形成する。本実施例以外の電極配置法としては実施例2で述べた方法を本実施例でも含むものである。同時に、支持フレームについても同様に含むものである。
【0025】
更に、振動部29は幅W0、長さL0と厚みT0(図示されていない)の寸法を有し、これらの寸法とx′軸、y′軸とz″軸との関係は実施例1で述べた通りである。また振動部29の長さL0は幅W0より大きく、厚みT0は幅W0より小さくなるように設計される。具体的な関係については実施例1で述べたのと同じである。更に、上記実施例の幅縦水晶振動子の振動部、接続部と支持部とは一体に形成されている。
【0026】
このように幅縦水晶振動子を形成することにより、すでに実施例2で述べたように、量産性に優れた安価な幅縦水晶振動子が得られる。同時に、衝撃に対して強い幅縦水晶振動子が実現できる。更に、マウント部に穴が設けられているので、幅縦モードの振動を抑圧することなく、圧電的に容易に引き起こすことができる。それ故、等価直列抵抗R1の小さい、Q値の高い、しかも超小型の幅縦水晶振動子が得られる。
【0027】
図5は上記第1実施例から第3実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す線図である。前記した角度θxと角度θyの選択により任意の温度で一次温度係数αが零になり、2次曲線で表すことができる。例えば、曲線44で示されるように、頂点温度Tpを室温付近に設定することができる。又、曲線45は頂点温度Tpを0℃付近に設定した場合である。更に、頂点温度Tpは任意に設定でき、曲線46は頂点温度Tpを負側に設定した場合である。上記実施例の角度θxと角度θyを有する幅縦水晶振動子では、頂点温度Tpを約−200℃から約+60℃と極めて広い温度範囲に設定することができる。頂点温度Tpは用いられる機器等によって決定される。
【0028】
このように本発明の幅縦水晶振動子は頂点温度を極めて広い温度範囲で任意に設定でき、且つ、周波数温度特性が2次曲線で近似できるので、広い温度範囲に亘って周波数変化の小さい、優れた周波数温度特性を有する振動子であることが理解される。
【0029】
(第4実施例)
図6は本発明の第4実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。幅縦水晶振動子50は振動部51、接続部52、55、及びマウント部54、57をそれぞれ含む支持部53、56を具えて構成されている。更に、支持部53と支持部56にはそれぞれ穴53aと穴56aが設けられている。そして、振動部51の上面と下面にはそれぞれ複数個の電極が配置されている。又、上面、及び下面の幅方向に隣接する電極は異極となるように構成されている。且つ、上面と下面に配置された対抗電極は異極となるように構成されている。本実施例では電極58,59,60と電極61,62,63が配置されている。本実施例の電極配置では3次オーバートーンの幅縦水晶振動子が得られる。
【0030】
更に詳述するならば、電極58とそれに隣接する電極59は異極に、さらに、電極58とそれに対抗する電極63は異極となるように構成されている。電極58とそれとは異極となる電極63で一対の電極を構成している。全く同様に、電極59とそれに隣接する電極58、60は異極に、更に、電極59とそれに対抗する電極62は異極となるように構成されている。電極59とそれとは異極となる電極62で一対の電極を構成している。更に電極60とそれに隣接する電極59は異極に、さらに、電極60とそれに対抗する電極61は異極となるように構成されている。電極60とそれとは異極となる電極61で一対の電極を構成している。又、上面の電極58と電極60は接続電極58aを介して接続されている。更に、下面の電極61と電極63は接続電極61aを介して接続されている。
【0031】
更に、上面の同極となる電極58、60は一方の接続部52を介してマウント部54にまで延在して配置されている。又、電極59は他方の接続部55を介してマウント部57にまで延在して配置されている。更に、下面の電極62は一方の接続部52を介してマウント部54にまで延在して配置されている。又、下面の同極となる電極61、63は他方の接続部55を介してマウント部57にまで延在して配置されている。図6から明らかなように、一方の接続部と支持部の上下面には同極となる電極が振動部から延在して配置され、他方の接続部と支持部の上下面には同極となる電極が振動部から延在して配置されている。
【0032】
それ故、一方の電極58,60、62は同極に、他方の電極59,61、63は同極となるように配置され、それらは互いに異極となる2電極端子構造を形成している。本実施例では三対の電極を構成している。本発明の電極構成は前記実施例に限定されるものでなく、対称モードを使用する場合にはn対(n=5,7,9・・・)と奇数対の電極構成をも包含するものである。又、非対称モードを使用する場合にはm対(m=2,4,6・・・)と偶数対の電極構成をも包含するものである。
【0033】
次に、振動部の幅W0、長さL0、厚みT0と電極との関係について述べる。本実施例では、三対の電極を構成している。それ故、図5で説明した良好な周波数温度特性、及び電界Exを大きくし、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、厚みT0と幅W0との側係は3T0/W0が0.85より小さくする必要がある。又、幅縦振動モードと長さ縦振動モードとの結合を無視できるほどに小さく、且つ、電極面積を大きくし、等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子を得るためには、幅W0と長さL0との関係はW0/3L0が0.7より小さくする事が必要である。
【0034】
本実施例では三対の電極構成の場合についで説明したが、n対(n=5,7,9、・・・)と奇数対の電極構成ではn次オーバートーンの幅縦水晶振動子が得られる。この場合、前記した優れた特性を有する水晶振動子を得るには、厚みT0と幅W0との関係はnT0/W0が0.85より小さく、且つ、幅W0と長さL0との関係はW0/nL0が0.7より小さくする必要がある。又、m対(m=2,4,6、・・・)と偶数対の電極では、厚みT0と幅W0との関係はmT0/W0が0.85より小さく、且つ、幅W0と長さL0との関係はW0/mL0が0.7より小さくすることが必要である。
【0035】
このように、本発明の幅縦水晶振動子は、特に、振動部の電極の配置の仕方を工夫することにより、等価直列抵抗R1の小さい、周波数温度特性に優れた超小型の高次オーバートーンの幅縦水晶振動子を実現することができる。又、幅縦水晶振動子の周波数はオーバートーン次数に比例するので、高周波数化が可能になる。
【0036】
なお、本実施例で詳細に述べた電極構成は図3と図4の振動子形状にも適用できるものである。
【0037】
(第5実施例)
図7は本発明の第5実施例の幅縦水晶振動子の上面図である。幅縦水晶振動子64は振動部65、接続部66、67、68、71、72、73及び、マウント部70、75をそれぞれ含む支持部69、74を具えて構成されている。支持部69には穴69aを、支持部74には穴74aを具えている。本実施例では、振動部65の長さ方向の両側にそれぞれ複数個の接続部66、67、68と接続部71、72、73が設けられている。更に、一方の接続部66、67、68は支持部69に接続され、他方の接続部71、72、73は支持部74に接続されている。前記振動子の振動部、接続部と支持部とは一体に形成されている。
【0038】
又、幅縦水晶振動子の振動部は幅W0、長さL0、厚みT0(図示されていない)を有し、前記振動子に配置される電極は図示されていないが、実施例1から実施例4で述べられた電極の配置、及び構成が本振動子にも適用される。本実施例では、振動部の両側にそれぞれ3個の接続部を設けているが、さらに多くの接続部を設けてもよく、実際には、オーバートーン次数の数と同じだけ設けることができるが、実際にはより少ない接続部を設けることが好ましい。
【0039】
このように、本発明の幅縦水晶振動子は接続部を振動部の両側にそれぞれ複数個設けているので、高い周波数の厚みの薄い振動子でも耐衝撃性に強い、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高い幅縦水晶振動子が得られる。
【0040】
(第6実施例)
図8は本発明の第6実施例の幅縦水晶振動子の形状を示す上図面である。一方の幅縦水晶振動子76は、振動部92、接続部78、81、及びマウント部80、83を含む支持部79と支持部82を具えて構成されている。又、他方の幅縦水晶振動子77は、振動部93、接続部84、87、及びマウント部86、89を含む支持部85と支持部88を具えて構成されている。更に、この実施例の幅縦水晶振動子は、2つの幅縦水晶振動子76と幅縦水晶振動子77の互いの一方のマウント部80とマウント部86とがフレーム90を介して接続され、さらに、互いの他方のマウント部83とマウント部89とがフレーム91を介して接続され、角度θにて、一体に形成したものである。又、角度θは通常θ=0°〜30°から仕様に応じて決められるものである。
【0041】
即ち、2つの幅縦水晶振動子に角度θを持たせると、各水晶振動子には異なる周波数温度特性を持たせることができる。更に、これらの水晶振動子を電気的に並列に接続することにより、幅縦水晶振動子の周波数温度特性を改善することができる。同時に、等価直列抵抗R1も改善できる。例えば、2個の場合で同じ等価直列抵抗R1を有する時、合成されたR1は約半分になる。また、図9に、両幅縦水晶振動子144,145の電気的な接続図を示す。
【0042】
図10に図8で示されえた実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す。一方の水晶振動子が温度特性146を、他方の水晶振動子が温度特性147を有する場合、電気的に並列に接続されると両水晶振動子の周波数温度特性は曲線148のようになる。即ち、本実施例の幅縦水晶振動子は、曲線148に示すような周波数温度特性を有することとなり、これにより、温度変化に対して周波数変化の少ない安定した特性の水晶振動子とすることができる。この結果、本実施例の幅縦水晶振動子は、超小型で、しかも、周波数温度特性に優れた水晶振動子が実現できる。
【0043】
図11は本発明の水晶ユニットの側面図である。水晶ユニット100は表面実装型のケース109と蓋101と幅縦水晶振動子102から構成されている。ケース109には固定部103,104が設けられていて、本実施例では、第1実施例の幅縦水晶振動子102が収納され、その振動子のマウント部が接着剤105,106等により固定部で固定されている。更に、ケース109の下面には電極107,108が設けられていて、振動子102の電極と接続されている。即ち、2電極端子構造を形成している。
【0044】
本実施例では、固定部を2個設け両端部で接着材等により固定しているが、固定部は1個でも良く、片側固定でも良い。即ち、本発明の水晶ユニットには、第1実施例から第6実施例のいずれかの幅縦水晶振動子が収納されている。図示されていないが、特に、複数個の幅縦水晶振動子を収納する時には、振動子間の干渉を防止するための仕切り部が振動子の間に設けられている。2個以上の振動子がケース内に収納される場合には、それらの振動子は一体形成されていても良く、又は、個々に形成されていても良い。更に、複数個の振動子は電気的には並列になるように、接続、構成されている。
【0045】
更に、上記実施例の幅縦水晶振動子は、振動部、接続部と支持部とを具えて構成されているように複雑な形状をしている。又、本発明の幅縦水晶振動子を化学的エッチング法によって加工した場合、その加工速度が極めて遅いのが実状である。それ故、本発明の幅縦水晶振動子の加工は、物理的、あるいは機械的な方法を用いて行われ、前記振動子は一体に形成される。即ち、質量を有する粒子を水晶板に物理的、あるいは機械的方法で衝突させ、それにより水晶板の原子、分子を飛散させて振動子の形状を加工するものである。ここではこの方法を粒子法と呼ぶことにする。この方法は化学的エッチング法による加工法とは異なる方法であると同時に、加工速度が極めて早いのが特長である。外形形状の加工時間が非常に短縮されるので安価な振動子を提供することができる。
【0046】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものではなく、例えば、上記第6実施例における幅縦圧電結晶振動子では、互いに特性が異なる二種類の水晶振動子を一体に結合して形成しているが、一体接合する幅縦水晶振動子の種類は三種類以上であっても良い。又、本発明の支持部の形状は第1実施例から第6実施例の形状に限定されるものでなく、本発明の支持部の形状は、接続部を介して振動部と接続されるいかなる形状をも包含するものである。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の振動子形状と電極及びカット角とを有する幅縦水晶振動子を提供することにより、次の如き著しい効果が得られる。
(1)幅縦水晶振動子を駆動する圧電定数が非常に大きいので、電気機械変換効率が良くなる。その結果、等価直列抵抗R1の小さい、品質係数Q値の高
い、しかも超小型の幅縦水晶振動子を得ることができる。
(2)振動部の対抗面に互いに異極となる電極が配置されることにより、電界が電極に対して垂直に働く。その結果、電気機械変換効率が良くなるので、 等価直列抵抗R1の小さい幅縦水晶振動子が得られる。同時に、品質係数Q値が高くなる。
(3)振動部に複数対の電極が配置されているので、等価直列抵抗R1の小さい、高周波数の幅縦水晶振動子が実現できる。
(4)2個の幅縦水晶振動子を粒子法によって一体に形成でき、小型で周波数温度特性に優れた水晶振動子が実現できる。
(5)カット角の選択により頂点温度Tpを変えることができる。と同時に、主振動が単一の振動モードで振動するので、頂点温度を変えずに周波数調整をすることができる。即ち、製造工程が簡単になるので、安価な幅縦水晶振動子を得ることができる。
(6)幅縦水晶振動子を粒子法によって形成できるので、量産性に優れ、1枚のウエハ上に多数個の振動子を一度にバッチ処理にて形成できるので、安価な水晶振動子が実現できる。
(7)本発明の幅縦水晶振動子は振動部、接続部及び支持部を具えて構成されるので、固定部や台座等への支持による振動エネルギー損失が小さくなり、耐衝撃性に優れた水晶振動子が得られる。
(8)複数個の幅縦水晶振動子を一体に形成し、更に、電気的に並列に接続されるので、等価直列抵抗R1が小さくなる。例えば、2個の場合で同じ等価直列抵抗R1を有する時、本発明の振動子では約半分の等価直列抵抗R1 になる。それ故、一体結合する振動子の個数を増やすことができ、これにより、更に等価直列抵抗R1を小さくすることができる。
(9)複数個の幅縦水晶振動子を一体に形成し、更に、電気的に並列に接続されるので、何らかの理由でそれら振動子のうちの1個が破損しても、振動子としての機能を維持することができる。
(10)等価直列抵抗R1の小さい超小型の幅縦水晶振動子が搭載されるので、超小型の水晶ユニットが高品質で実現できる。
(11)複数個の幅縦水晶振動子が、別々の各ユニットのケースに収納されるのでなく、同じユニットのケースに収納されるので、安価な水晶ユニットが実現できる。と同時に、これらの振動子を電気的に並列に接続することに より、周波数温度特性に優れた水晶ユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の幅縦水晶振動子の形成に用いる水晶板のカット角とその座標系との関係である。
【図2】本発明の第1実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と側面図(b)である。
【図3】本発明の第2実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。
【図4】本発明の第3実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。
【図5】上記第1実施例から第3実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す線図である。
【図6】本発明の第4実施例の幅縦水晶振動子の上面図(a)と下面図(b)である。
【図7】本発明の第5実施例の幅縦水晶振動子の上面図である。
【図8】本発明の第6実施例の幅縦水晶振動子の形状を示す上面図である。
【図9】図8の幅縦水晶振動子の電気的な接続図である。
【図10】図8で示された実施例の幅縦水晶振動子の周波数温度特性の一例を示す。
【図11】本発明の水晶ユニットの側面図である。
【図12】NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子の上面図である。
【図13】NS−GTカット幅・長さ縦結合水晶振動子の側面図である。
【符号の説明】
x 水晶の電気軸
y 水晶の機械軸
z 水晶の光軸
x′x軸の新軸
z″z軸の新軸
1 水晶板
W0 振動部の幅
L0 振動部の長さ
T0 振動部の厚み
θx,θy,θ 角度
2,12,28,50,64,76,77,144,145 幅縦水晶振動子
3,13,29,51,65,92,93 振動部
6,9,14,21,30,35,52,55,66,67,68,71,72,73,78,81,84,87 接続部
8,11,16,20,23,34,54,57,70,75,80,83,86,89 マウント部
7,10,15,22,41,42,53,56,69,74,79,82,85,88 支持部
4,5,24,25,26,27,37,38,39,40,58,59,60,61,62,63 電極
58a,61a 接続電極
e12 圧電定数
R1 等価直列抵抗
Q 品質係数
Ex 電界
17,18,19,31,32,33,36 支持フレーム
90,91 フレーム
7a,10a,15a,22a,43,53a,56a,69a,74a 穴
44,45,46 曲線
Tp 頂点温度
146,147 幅縦水晶振動子の周波数温度特性
148 補正された周波数温度特性
Claims (4)
- 振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、前記振動部の幅寸法は長さ寸法より小さく、厚み寸法より大きい幅縦水晶振動子において、
前記水晶振動子は電気軸x軸に垂直となるX板水晶をx軸を回転軸として角度θx=−20°〜+20°回転し、更に、機械軸y軸の回転後の新軸y′軸を回転軸として角度θy=−10°〜+10°回転した水晶板から形成されていて、さらに、x軸の回転後の新軸であるx′軸に垂直な面となる振動部の上下面には極性の異なる少なくとも一対の電極が対抗して配置され、且つ、前記水晶振動子の振動部と接続部と支持部とは粒子法により一体形成された形状を有し、さらに、前記幅寸法に共振周波数が反比例し、主振動が単一の振動モードで振動する横効果型の水晶振動子である事を特徴とする幅縦水晶振動子。 - 振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、前記振動部の幅寸法は長さ寸法より小さく、厚み寸法より大きい幅縦水晶振動子において、
前記水晶振動子は電気軸x軸に垂直となるX板水晶を機械軸y軸を回転軸として角度θy=−10°〜+10°回転し、更に、電気軸x軸の回転後の新軸x′軸を回転軸として角度θx=−20°〜+20°回転した水晶板から形成されていて、さらに、x軸の回転後の新軸であるx′軸に垂直な面となる振動部の上下面には極性の異なる少なくとも一対の電極が対抗して配置され、且つ、前記水晶振動子の振動部と接続部と支持部とは粒子法により一体形成された形状を有し、さらに、前記幅寸法に共振周波数が反比例し、主振動が単一の振動モードで振動する横効果型の水晶振動子である事を特徴とする幅縦水晶振動子。 - 振動部と接続部と支持部とを具えて構成され、幅寸法に共振周波数が反比例し、単一振動モードで振動する幅縦水晶振動子で、前記振動部の上面と下面に電極が配置され、前記振動子は圧電定数e12の絶対値が0.123〜0.18C/m2を有する水晶板から形成された事を特徴とする幅縦水晶振動子。
- 水晶振動子と、その水晶振動子を収納する表面実装型のケースと、蓋とを具えて構成される水晶ユニットにおいて、
前記ケース内には前記水晶振動子として、請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の幅縦水晶振動子を具えた事を特徴とする水晶ユニット。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006279870A (ja) * | 2005-03-30 | 2006-10-12 | Kyocera Kinseki Corp | ラーメモード水晶振動子 |
-
2002
- 2002-06-18 JP JP2002213142A patent/JP2004023780A/ja active Pending
Cited By (2)
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JP2006279870A (ja) * | 2005-03-30 | 2006-10-12 | Kyocera Kinseki Corp | ラーメモード水晶振動子 |
JP4724447B2 (ja) * | 2005-03-30 | 2011-07-13 | 京セラキンセキ株式会社 | ラーメモード水晶振動子 |
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