JP2004010402A - 繊維含有石膏板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の繊維含有石膏板は予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、二水石膏33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる繊維含有石膏板であって、釘保持力が5N/mm以上で且つ見掛け密度が0.7〜1.2g/cm3の範囲内であることを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一般建築物及び耐火構造材料等に用いられる繊維含有石膏板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
石膏板は、曲げ強度、寸法安定性に優れた不燃性材料であり、内装材として防火、耐火構造材料などに広く利用されている。例えば、特開昭63−195181号公報には、半水石こう、凝結遅延剤および補強繊維を温水中に投入してスラリーとし、このスラリー中の固形分を抄造してなるシートを冷却養生することを特徴とする石こう板の製造方法が開示されている。
【0003】
また、特開昭64−24061号公報には、II型無水石こう40〜96重量%、短繊維2〜30重量%、保水性材料2〜30重量%および石こう硬化促進剤をII型無水石こうに対して0.1〜2.5重量%を主成分とするスラリーを抄造したのち、硬化させることを特徴とする無水石こう抄造板の製造方法が開示されている。上述のように、石膏板の構成原料としてはα、β−半水石膏のような半水石膏やII型無水石膏が使用されるのが一般的である。
【0004】
更に、特開昭62−176949号公報には、水熱合成された珪酸カルシウム水和物、せっこう、合成樹脂、補強繊維の混合物からなることを特徴とする珪酸カルシウム・せっこう複合体が開示されている。この公報に記載されている珪酸カルシウム・せっこう複合体は、酢酸樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン等の合成樹脂エマルジョンをバインダーとして使用するタイプのものである。該公報に記載されている珪酸カルシウム・せっこう複合体は、密度が0.4〜0.5g/cm3程度の低密度品であり、釘保持力は不十分である。
【0005】
また、石膏板は、焼き石膏と水等を主原料としたものを芯としてその表裏面を紙で覆って成形してなる石膏ボードと、焼き石膏等の水和性性と補強繊維等からなる主原料に水を加えて混練して得られた原料スラリーを紙で覆うことなく成形してなる繊維含有石膏板とに分けられており、そのうち、石膏ボードは、安価な防火、耐火構造材として内装下地や被覆材に用いられている。石膏ボードは、比較的軽量で、現場加工性に優れてはいるものの、石膏ボードの強度は7N/mm2前後と余り高くはなく、また、釘保持性等の釘特性に欠け、広義での施工性には難があると言わざるを得ない。また、石膏ボードは、その補強効果を担う表面紙及びそれに付着している接着剤が近年廃棄物分別処理の障害となっており、リサイクルの観点から改善の余地があると考えられる。
【0006】
また、繊維含有石膏板は、石膏ボードと比較して高価ではあるが、高強度を有し、曲面を含めた表面化粧材等に利用されている。しかし、汎用品の見掛け密度は比較的高く、釘関連の特性について、特に、釘打ちの際の釘圧入抵抗が高くなり好ましくない。
【0007】
従来では、上記のような石膏ボードや、オートクレーブを用いて高温高圧にて養生硬化せしめるケイ酸カルシウム系材料が比較的軽量であり、多く使用されているが、その殆どが釘保持力が低いか、あるいは釘圧入抵抗が高く、釘打ち性に欠けるなどといった欠点を有している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、石膏を主成分とし、配合する軽量化材として予め水熱合成して得られたケイ酸カルシウム水和物を混合し、さらに無機質充填材を混合することにより、釘保持力が5N/mm以上を有し、軽量で、かつ施工性に優れた繊維含有石膏板及びその製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、石膏を主成分とする材料において、その構成原料に予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成してなるケイ酸カルシウム水和物を混入し、その配合物に水を加えスラリーとしたものを所定の形状に成形することにより、軽量かつ優れた施工性を有する繊維含有石膏板を得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
即ち、本発明の繊維含有石膏板は、予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、二水石膏33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる繊維含有石膏板であって、釘保持力が5N/mm以上で且つ見掛け密度が0.7〜1.2g/cm3の範囲内であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の繊維含有石膏板は、無機質充填材が、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材2〜10質量%、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径15〜50μmの範囲内を満足する充填材5〜30質量%、及び少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材2〜35質量%、ただし、微細充填材+充填材+粗粒充填材の合計量は10〜50質量%の範囲内である、より構成されることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の繊維含有石膏板の製造方法は、予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、水和性石膏を水和後の質量に換算して33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる配合物に水を加えてスラリーとし、該スラリーを脱水成形した後に養生硬化することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の繊維含有石膏板の製造方法は、予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、水和性石膏を水和後の質量に換算して33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる配合物に水を加えてスラリーとし、該スラリーを流し込み成形した後に養生硬化することを特徴とする。
【0014】
更に、本発明の繊維含有石膏板の製造方法は、無機質充填材が、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材2〜10質量%、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径15〜50μmの範囲内を満足する充填材5〜30質量%、及び少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材2〜35質量%、ただし、微細充填材+充填材+粗粒充填材の合計量は10〜50質量%の範囲内である、より構成されることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の繊維含有石膏板は、予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、二水石膏33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる繊維含有石膏板であって、釘保持力が5N/mm以上で且つ見掛け密度が0.7〜1.2g/cm2の範囲内であることを特徴とする。
【0016】
本発明の繊維含有石膏板において、予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物は、軽量化材として作用するものであり、その割合は、5〜40質量%、好ましくは7〜35質量%の範囲内である。なお、ケイ酸カルシウム水和物の割合が5質量%未満であると、所望の見掛け密度が得られないばかりか、釘保持力が向上しないため好ましくなく、また、該割合が40質量%を超えると、見掛け密度が低くなり過ぎたり、十分な強度が得られないばかりか、脱水成形の際に水抜けが悪化し、水割れ等の原因となるために好ましくない。
【0017】
ここで、本発明でいうケイ酸カルシウム水和物は、石灰質原料とケイ酸質原料とを水と混合し、高温高圧下での水熱合成にて生成させることができる。石灰質原料としては生石灰、消石灰等が挙げられ、ケイ酸質原料としては、珪石、珪藻土、シリカフューム等が挙げられ、特に珪石が好適である。該ケイ酸カルシウム水和物の合成において、石灰質原料とケイ酸質原料の配合比(CaO/SiO2のモル比)は通常0.5〜1.5、好ましくは0.5〜1.1の範囲内であり、これらを質量比で5〜20倍、好ましくは8〜16倍の水に分散混合し、水熱合成することにより得られたものである。なお、水熱合成条件は従来用いられている方法に準じるものであるが、原料スラリーを攪拌することのできる圧力容器内にて150〜230℃、好ましくは170〜210℃の範囲内で温度設定し、1〜20時間、好ましくは5〜15時間程度にわたり行うことができる。なお、ケイ酸カルシウム水和物としては、例えばトバモライト及びゾノトライト等が得られる。
【0018】
次に、本発明の繊維含有石膏板において、二水石膏の割合は、33〜80質量%、好ましくは40〜80質量%の範囲内である。ここで、二水石膏の割合が33質量%未満であると、バインダーとしての強度確保が満足できず、所定の強度及び釘保持力が得られないために好ましくなく、また、該割合が80質量%を超えると、繊維含有石膏板の硬さが過度になり、釘圧入抵抗が増加して釘打ち性が損なわれるために好ましくない。
【0019】
また、本発明の繊維含有石膏板において、補強繊維の割合は、2〜12質量%、好ましくは3〜10質量%の範囲内である。ここで、補強繊維の割合が2質量%未満であると、製品強度の低下や釘保持力が低下するために好ましくなく、また、該割合が12質量%を超えると、製品の表面精度が低下し、美麗で良好な製品表面が得られないために好ましくない。なお、補強繊維としては、例えば木質パルプ、各種麻類等の天然繊維、ガラス繊維、ロックウール、セラミックウール、炭素繊維等の無機繊維、人造パルプ、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、アクリル、レーヨン等の合成繊維が挙げられ、繊維含有石膏板の曲げ強度及び耐衝撃性能の観点から、木質パルプまたは木質パルプと合成繊維を併用することが好適である。
【0020】
更に、本発明の繊維含有石膏板において、無機質充填材の割合は、10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内である。ここで、無機質充填材の割合が10質量%未満であると、繊維含有石膏板の硬さが過度になり、釘圧入抵抗が増加して釘打ち性が損なわれるために好ましくなく、また、該割合が50質量%を超えると、繊維含有石膏板の強度確保が満足できず、所定の強度及び釘保持力が得られないために好ましくない。
【0021】
なお、本発明の繊維含有石膏板においては、無機質充填材は、粒度を選定することにより、繊維含有石膏板の適度な充填化を図り、繊維含有石膏板の曲げ強度を向上させることができ、また、繊維含有石膏板の持つ強度発現力を十分に引き出すことにより十分な釘保持力を得ることができる。
【0022】
即ち、本発明の繊維含有石膏板においては、無機質充填材を、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径15〜50μmの範囲内を満足する充填材%、及び少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材から構成することが好ましい。
【0023】
まず、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材の割合は、2〜10質量%、好ましくは2〜8質量%の範囲内である。微細充填材は、繊維含有石膏板の硬さに影響を与えるものであり、微細充填材の割合が2質量%未満であると、十分な強度を持つ製品が得られないために好ましくなく、また、該割合が10質量%を超えると繊維含有石膏板自体が硬くなり、釘を打ち込む際の抵抗、つまり釘圧入抵抗が高くなり、良好な施工性が得られなくなるために好ましくない。ここで、微細充填材としては例えば、微粉砕した珪石、石灰石、スラグ、フライアッシュ、珪藻土、アタパルジャイト、ベントナイト、セピオライト、カオリン、ゼオライト、粘土類、シリカフューム等を例示することができる。これらは必要に応じて1または2種以上を併用して使用できる。
【0024】
次に、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径が15〜50μmの範囲内を満足する充填材の割合は、5〜30質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲内である。この充填材は、微細充填材と粗粒充填材の補完的な役割を果たし、充填材の割合が5質量%未満であったり、30質量%を超えると、製品の強度が低下する原因となるために好ましくない。充填材としては、例えば珪石、珪藻土、石灰石、スラグ、フライアッシュ、タルク、セピオライト、粘土類、鉱物等の粉末を例示することができる。これらは必要に応じて1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
また、少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材の割合は、2〜25質量%、好ましくは8〜22質量%の範囲内である。粗粒充填材の割合が2質量%未満であると、ひび割れ等の欠陥が生じ易くなるために好ましくなく、また、該割合が25質量%を超えると繊維含有石膏板自体の強度が低下してしまうため好ましくない。粗粒充填材としては、例えば珪石、石灰石、スラグ、フライアッシュ、ワラストナイト、マイカ、鉱物粉末、無機質板スクラップ等の粉末を例示することができ、これらは必要に応じて1種または2種以上を併用して使用することができる。
【0026】
なお、上述の微細充填材、充填材、及び粗粒充填材の合計量は、10〜50質量%、好ましくは10〜35質量%の範囲内である。上記充填材の合計量が10質量%未満であると、充填材の配合効果が発現しないために好ましくなく、また、該合計量が50質量%を超えると、製品強度が低下し、釘保持力の低下を招くため好ましくない。
【0027】
上述のような割合を有する本発明の繊維含有石膏板は、釘保持力が5N/mm以上、好ましくは7N/mm以上である。ここで、釘保持力が5N/mm未満であると、実施行において十分な釘保持力とは言えず、比較的容易に釘が抜けてしまう危険性が極端に高まるために好ましくない。なお、本明細書に記載の「釘保持力」は下記のようにして求めたものである:
釘保持力は、繊維含有石膏板に打ち込んだ釘を引き抜く際に要した引っ張り荷重(単位:N)の最大値を繊維含有石膏板の厚さ(単位:mm)で除した値である。
【0028】
また、本発明の繊維含有石膏板の見掛け密度は、0.7〜1.2g/cm3、好ましくは0.8〜1.1g/cm3の範囲内にある。なお、見掛け密度が0.7g/cm3未満の場合には、繊維含有石膏板自体発現できる強度が限られ、低強度となってしまうために好ましくなく、また、見掛け密度が1.2g/cm3を超えると、釘圧入抵抗が増し、釘打ち性を失ってしまうために好ましくない。
【0029】
上記繊維含有石膏板は、予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、水和性石膏を水和後の質量に換算して33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる配合物に水を加えてスラリーとし、該スラリーを脱水成形するか、または流し込み成形し、養生することを特徴として製造することができる。なお、水和性石膏は水和して二水石膏に変化するが、その際の質量変化は分子量の比から算出することができる。水和性石膏のうち、α−半水石膏及びβ−半水石膏の分子量は145.15であり、II型無水石膏の分子量は136.14である。一方、二水石膏の分子量は172.17であるから、本発明による繊維含有石膏板に含まれる二水石膏の所定量を得るために必要な水和性石膏の量は前記分子量の比に基づいて算出することができる。
【0030】
ここで、本発明の製造方法に使用される水和性石膏は、α−半水石膏、β−半水石膏及びII型無水石膏である。水和性石膏の配合割合は、水和後の質量に換算して33〜80質量%、好ましくは40〜80質量%の範囲内である。ここで、水和性石膏の配合割合が水和後の質量に換算して33質量%未満であると、バインダーとしての強度確保が満足できず、所定の強度及び釘保持力が得られないために好ましくなく、また、該配合割合が水和後の質量に換算して80質量%を超えると、繊維含有石膏板の硬さが過度になり、釘圧入抵抗が増加して釘打ち性が損なわれるために好ましくない。なお、α、β−半水石膏を使用する場合は、少量の硬化遅延剤を使用することができ、該硬化遅延剤には例えばクエン酸、フタル酸、酒石酸等の使用が好適である。II型無水石膏を使用する場合は少量の硬化促進剤を使用することができ、該硬化促進剤には、例えば硫酸ナトリウム等のアルカリ金属硫酸塩が好適である。
【0031】
なお、硬化遅延剤及び該硬化促進剤の添加については、各種原料を混合した配合物に水を加えてスラリーとする際、加える水に当該分量の硬化遅延剤あるいは硬化促進剤を溶解せしめることで、均一な効果を得ることができる。
【0032】
本発明の製造方法において、予め石灰質原料とシリカ質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物の配合割合は、5〜40質量%、好ましくは7〜35質量%の範囲内である。なお、ケイ酸カルシウム水和物の配合割合が5質量%未満であると、所望の見掛け密度が得られないばかりか、釘保持力が向上しないため好ましくなく、また、該配合割合が40質量%を超えると、見掛け密度が低くなり過ぎたり、十分な強度が得られないばかりか、脱水成形の際水抜けが悪化し、水割れ等の原因となるために好ましくない。なお、ケイ酸カルシウム水和物の配合における形態は、スラリー、湿潤粉体及び乾燥粉体のいかなる形でも良いが、ほとんどの場合、水熱合成後の合成水と混合されたスラリーの形で配合するのが効率が良い。
【0033】
また、本発明の製造方法において、補強繊維の配合割合は、2〜12質量%、好ましくは3〜10質量%の範囲内である。ここで、補強繊維の配合割合が2質量%未満であると、製品強度の低下や釘保持力が低下するために好ましくなく、また、該配合割合が12質量%を超えると、製品の表面精度が低下し、美麗で良好な製品表面が得られないために好ましくない。
【0034】
更に、本発明の製造方法において、無機質充填材の配合割合は、10〜50質量%、好ましくは10〜40質量%の範囲内である。ここで、無機質充填材の配合割合が10質量%未満であると、繊維含有石膏板における骨材効果、柔軟性が失われるといった充填材の配合効果が失われるために好ましくなく、また、該配合割合が50質量%を超えると、成形時の水割れ、ヒビ発生の原因となり、また、繊維含有石膏板として十分な強度が発現できなくなるばかりか、釘打ちの際キレツ等の発生の原因となるために好ましくない。
【0035】
なお、本発明の製造方法においては、無機質充填材は、粒度を選定することにより、繊維含有石膏板の適度な充填化を図り、繊維含有石膏板の曲げ強度を向上させることができ、また、繊維含有石膏板の持つ強度発現力を十分に引き出すことにより十分な釘保持力を得ることができる。
【0036】
即ち、本発明の繊維含有石膏板の製造方法においては、無機質充填材を、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径15〜50μmの範囲内を満足する充填材%、及び少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材から構成することが好ましい。
【0037】
まず、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材の配合割合は、2〜10質量%、好ましくは2〜8質量%の範囲内である。微細充填材は、繊維含有石膏板の硬さに影響を与えるものであり、微細充填材の配合割合が2質量%未満であると、十分な強度を持つ製品が得られないために好ましくなく、また、該配合割合が10質量%を超えると繊維含有石膏板自体が硬くなり、釘を打ち込む際の抵抗、つまり釘圧入抵抗が高くなり、良好な施工性が得られなくなるために好ましくない。
【0038】
次に、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径が15〜50μmの範囲内を満足する充填材の配合割合は、5〜30質量%、好ましくは10〜30質量%の範囲内である。この充填材は、微細充填材と粗粒充填材の補完的な役割を果たし、充填材の配合割合が5質量%未満であったり、30質量%を超えると、製品の強度が低下する原因となるために好ましくない。
【0039】
また、少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材の配合割合は、2〜25質量%、好ましくは8〜22質量%の範囲内である。粗粒充填材の配合割合が2質量%未満であると、ひび割れ等の欠陥が生じ易くなるために好ましくなく、また、該配合割合が25質量%を超えると繊維含有石膏板自体の強度が低下してしまうため好ましくない。
【0040】
なお、上述の微細充填材、充填材、及び粗粒充填材の合計量は、10〜50質量%、好ましくは10〜35質量%の範囲内である。上記充填材の合計量が10質量%未満であると、充填材の配合効果が発現しないために好ましくなく、また、該合計量が50質量%を超えると、製品強度が低下し、釘保持力の低下を招くため好ましくない。
【0041】
本発明の繊維含有石膏板の製造方法は、大別して脱水を伴わない成形方法である流し込み成形と、脱水成形とに区別され、上述のような配合割合の原料を有するスラリーを、例えば前者の流し込み成形法、後者としては、例えば丸網式抄造法、長網式抄造法、フローオン式のような抄造法、及びモールドプレス法のような加圧脱水成形法等のような慣用の成形方法にて成形し、その後養生するものである。なお、成形後或いは成形中に必要に応じて加圧することで所望の見掛け密度に調整することもできる。
【0042】
即ち、本発明の製造方法においては、水和性石膏、ケイ酸カルシウム水和物、補強繊維、及び無機質充填材を加えた配合物に、更に、硬化促進剤、硬化遅延剤を必要に応じて加え、それを水と混合してスラリーとし、該スラリーを成形し、養生硬化することにより繊維含有石膏板を得ることができるものである。
【0043】
なお、ケイ酸カルシウム水和物の量が規定範囲内の上限に近い場合は、粉体原料全体の水比を調整する際、ケイ酸カルシウム水和物スラリーの余剰水量を、必要に応じて減じる必要がある。該ケイ酸カルシウム水和物の状態によっては該ケイ酸カルシウム水和物スラリーの粘性が高まり、最終的水比の調整が困難になる場合があるため、流し込み成形法を用いて製造する場合は該ケイ酸カルシウム水和物の配合割合が15質量%以下にするのが好適である。
【0044】
なお、本発明の製造方法において、成形体の養生は、自然養生、湿潤養生及び冷却養生が実施できる。原料となる水和性石膏に半水石膏を使用した場合は、石膏成分のより完全に近い水和が終了する時間内は、乾燥を防ぐため湿潤状態雰囲気を確保しての養生が不可欠となる。ただし、無処置にて湿度が十分に保たれた状態が維持される空間を得られる場合はこの限りではない。なお、原料となる水和性石膏にII型無水石膏を使用した場合は、上記自然養生あるいは湿潤養生でも問題ないが、水和反応をより促進させるため冷却養生を行うことが好ましい。
【0045】
上述のようにして軽量かつ高い釘保持力を有する繊維含有石膏板を得ることができる。特に、従来の石膏ボードと違い、表面紙や接着剤及び有機合成成分等を使用していないため、廃材としての処理も比較的容易となるため、廃棄物処理、リサイクルの観念からも有意義であると考えられる。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
実施例
表1に示す割合で、β−半水石膏、II型無水石膏、炭酸カルシウム、微粉珪石、珪石、ワラストナイト、ケイ酸カルシウム水和物及び補強繊維(木質パルプ、ポリビニルアルコール)を水と混合し、原料スラリーとした。ただし、β−半水石膏の硬化遅延剤としては少量の酒石酸を添加した。また、II型無水石膏を使用した場合の硬化促進剤は少量の硫酸ナトリウムを使用した。
【0047】
なお、トバモライト系ケイ酸カルシウム水和物は、石灰質原料として生石灰を35質量%と、ケイ酸質原料として粉末珪石を65質量%(CaO/SiO2モル比=0.5)使用し、これに質量比で10倍の水を加えてスラリーを調製し、得られたスラリーをオートクレーブ中180℃で5時間水熱反応させることにより得られたものである。また、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム水和物は、石灰質原料として生石灰を52質量%と、ケイ酸質原料として粉末珪石を48質量%(CaO/SiO2モル比=1.0)使用し、これに質量比で15倍の水を加えてスラリーを調製し、得られたスラリーをオートクレーブ中200℃で5時間水熱反応させることにより得られたものである。
【0048】
また、使用した充填材は下記の通りである:
微粉末珪石:ブレーン値9000cm2/gの微粉珪砂
石灰石粉末:奥多摩工業社製、ブレーン値3500cm2/g
珪石:秩父鉱業社製、ブレーン値4000cm2/gの粉末珪石
ワラストナイト:インド産ケモリットA−60、ブレーン値2000cm2/g
【0049】
これを流し込み成形機にて型枠成形したグリーンシート(本発明品7)、或いはフローオン抄造機にて脱水原料フイィルムとして抄き上げ、グリーンシートを作製した。その後該グリーンシートを必要に応じてプレスにて脱水加圧し、生板を得た。
得られたグリーンシートまたは生板を一定期間養生することによって本発明品及び比較品の繊維含有石膏板を得た。
【0050】
なお、β−半水石膏を使用した場合の硬化遅延剤の添加量は、原料石膏の乾燥質量に対し0.1質量%の割合で添加した。その後作製したグリーンシートを湿潤状態で約24時間〜48時間養生し、所望の硬化体を得た。
また、II型無水石膏を使用した場合の硬化促進剤の添加量は、原料石膏の乾燥質量に対し0.2質量%の割合で添加し、その後作製したグリーンシートを約10℃の湿潤状態で7日間養生した。
得られた繊維含有石膏板について、見掛け密度、曲げ強度及び釘特性の評価を行った。得られた結果を表1に併記する。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
なお、繊維含有石膏板の見掛け密度は、該繊維含有石膏板を40℃±2℃に調整した恒温乾燥機中にて恒量になるまで乾燥した後、乾燥後の材料体積をノギス等により求め、乾燥質量(g)/材料体積(cm3)なる式にて算出したものである。また、曲げ強度は、上記方法にて得られた乾燥品を用い、JISA5430に準拠して測定したものである。また、釘圧入抵抗値は、釘を繊維含有石膏板に垂直に圧入した際の最大荷重をその材料の厚さで除した値、であり、その値が高くなれば、釘を打ち込む際の抵抗が大きく、釘の曲がりや材料の破壊を招く原因となることを意味する。なお、釘圧入抵抗値及び釘保持力は、N45鉄丸釘を使用して測定したものである。
【0054】
本発明品1〜8においては、十分な曲げ強度を有し、軽量かつ良好な釘特性を有する材料が得られている。
比較品1〜3では、無機質充填材の比率が発明の範囲と違うため、製造中のグリーンシートにヒビや水割れが若干発生したため、強度が低下しただけでなく、釘保持力も低下した。
比較品4、6については、グリーンシートのヒビ、水割れが著しく、良好な成形体が得られなかった。
比較品5、8については、石膏成分が過多であり、高密度の材料となったため、釘圧入値が高くなった。
比較品7については、無機質充填材が50質量%を超えているため、曲げ強度及び釘保持力が低下した。
比較例9、10については、充填材の比率が違い、プレスによる加圧力が適正でないため、見掛け密度が増加し、またヒビ割れも若干発生したため強度も低く、所望の釘保持力が得られなかった。
比較品11、12については、従来の石膏ボード及び繊維強化石膏板であり、低釘保持力あるは高密度のための高釘圧入抵抗を示すものである。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、軽量で、且つ良好な釘特性を有する繊維含有石膏板を提供することができる。
Claims (5)
- 予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、二水石膏33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる繊維含有石膏板であって、釘保持力が5N/mm以上で且つ見掛け密度が0.7〜1.2g/cm3の範囲内であることを特徴とする繊維含有石膏板。
- 無機質充填材が、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材2〜10質量%、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径15〜50μmの範囲内を満足する充填材5〜30質量%、及び少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材2〜35質量%、ただし、微細充填材+充填材+粗粒充填材の合計量は10〜50質量%の範囲内である、より構成される、請求項1記載の繊維含有石膏板。
- 予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、水和性石膏を水和後の質量に換算して33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる配合物に水を加えてスラリーとし、該スラリーを脱水成形した後に養生硬化することを特徴とする繊維含有石膏板の製造方法。
- 予め石灰質原料とケイ酸質原料を水熱合成することにより得られたケイ酸カルシウム水和物5〜40質量%、水和性石膏を水和後の質量に換算して33〜80質量%、補強繊維2〜12質量%、及び無機質充填材10〜50質量%を含有してなる配合物に水を加えてスラリーとし、該スラリーを流し込み成形した後に養生硬化することを特徴とする繊維含有石膏板の製造方法。
- 無機質充填材が、少なくとも粉末度が8000cm2/gを超えるかまたは平均粒子径が15μm未満を満足する微細充填材2〜10質量%、少なくとも粉末度が8000〜3000cm2/gの範囲内または平均粒子径15〜50μmの範囲内を満足する充填材5〜30質量%、及び少なくとも粉末度が3000cm2/g未満または平均粒子径が50μmを超えるかを満足する粗粒充填材2〜35質量%、ただし、微細充填材+充填材+粗粒充填材の合計量は10〜50質量%の範囲内である、より構成される、請求項3または4記載の繊維含有石膏板の製造方法。
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