JP2004002981A - 鉄系形状記憶合金管およびその製造方法 - Google Patents

鉄系形状記憶合金管およびその製造方法 Download PDF

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Kimio Nakamura
中村 公生
Yoshisada Michiura
道浦 吉貞
Masayoshi Kitagawa
喜多川 眞好
Kosaku Umemoto
梅本 幸作
Hiroshi Kubo
久保 紘
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Abstract

【課題】合金中に炭化物や窒化物などの析出物を形成させることなどにより、形状記憶特性および強度を向上させて、継手管として実用できる鉄系形状記憶合金管およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】Fe−Mn−Si系形状記憶合金からなる管であって、前記形状記憶合金が、少なくとも、VまたはTiのいずれか一方の炭化物または窒化物を含有するようにし、遠心鋳造により、前記合金管を形成するようにしたのである。V、Tiの炭化物や窒化物などの析出物の形成時に生じる局所歪みと合金母相の格子歪との間で、組織制御された相互作用により、回復歪エネルギーが大きくなって、鉄系形状記憶合金管の形状回復率を明瞭に向上させ、析出強化作用により強度をも顕著に向上させることが可能となった。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、鋼管などの接合に用いられる形状記憶特性を有する継手管の素材となる管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
形状記憶合金は、各種産業分野から医療分野に亘る広い範囲で応用されており、その応用例の一つに、継手管がある。この継手管は、周知のように、接続しようとする2本の管をその内径に嵌め込み、形状記憶特性を利用して継手管の内径を収縮させ、締結するもので、従来からTi−Ni合金やCu系合金が用いられている。一方、従来からのTi−Ni合金やCu系合金に加えて、最近では、Fe−Mn−Si系などの鉄系形状記憶合金が開発されている。この鉄系形状記憶合金は、とくにTi−Ni合金と比べて安価であり、例えば、航空機用等の特殊用途のみならず、一般用として使用しやすいなどの利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この鉄系形状記憶合金を、例えば、継手管に使用しようとすると、その強度や、形状回復率などの形状記憶特性が、実用的なレベルにまで到達していなく、実用化されていないのが現状である。
【0004】
そこで、この発明の課題は、合金中に炭化物や窒化物などの析出物を形成させることなどにより、形状記憶特性および強度を向上させて、継手管として実用できる鉄系形状記憶合金管およびその製造方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、この発明では以下の構成を採用したのである。
【0006】
即ち、鉄系形状記憶合金管を、主要成分として、Mn(マンガン)を15〜40%、Si(ケイ素)を3.5〜8%含有する鉄系形記憶合金に、さらに、少なくとも、V(バナジウム)またはTi(チタン)のいずれか一方の炭化物あるいは窒化物を含有するようにして形成したのである。このようにすれば、VやTiの炭化物や窒化物などの析出物が形成されたときに生じる局所歪みと鉄系形状記憶合金の母相の格子歪みとの間に生じる組織制御された相互作用によって、回復歪みエネルギーが大きくなって、形状回復率が向上し、かつ、析出強化作用により強度も増加する。
【0007】
上記の各合金元素の作用について記すと、Mnは、室温付近での加工による応力誘起変態によって、降伏点を超える応力の作用時に双晶変形をもたらす稠密六方構造のマルテンサイト(ε)の生成を可能とするが、Mn量が15%以下と少なくなると、この応力誘起変態によって、体心正方晶のマルテンサイト(α’)も導入され、この体心正方晶のマルテンサイト(α’)は逆変態しないために、形状記憶作用がなく、従って、形状記憶効果が低下する。また、Mn量が40%を越えると、母相のオ−ステナイト(γ)相の安定度が増して、オ−ステナイト(γ)→マルテンサイト(ε)の応力誘起変態よりも、オ−ステナイト(γ)のすべりが優先的に生じるようになり、強度が低下し、かつ形状記憶効果が損なわれる。
【0008】
Siは、積層欠陥エネルギーを低下させ、磁気変態点(ネール点)を下げる作用を有し、これらは、上記マルテンサイト(ε)への変態を促進する効果がある。この効果は、Si量が3.5%以上で充分認められるが、Si量が8%を超えると、前記形状記憶合金の加工性や成形性が低下し、欠陥のない鉄系形状記憶合金の製造が難しくなる。
【0009】
前記形状記憶合金に、Cr(クロム)またはNi(ニッケル)を単独で10%以下、あるいはCrとNiを合わせて10%以下の範囲で含有させることが望ましい。
【0010】
Crも同様に、マルテンサイト(ε)への変態を容易にする効果があり、形状記憶効果を向上させ、かつ、耐食性および耐高温酸化性を向上させ、N(窒素)の溶解度を増加させる効果がある。しかし、10%を超えると、Siと低融点の金属間化合物を作るようになるため、合金の溶製ができなくなる。
【0011】
Niは、形状記憶特性を劣化させずに、形状回復応力を低減し、靱性や耐食性、耐高温酸化性を向上させる。しかし、Crの場合と同様に、10%を超えると、熱間加工性がわるくなり、欠陥のない鉄系形状記憶合金の製造が難しくなる。
【0012】
CrおよびNiは、含有量が多くなり過ぎると、上記のような弊害があり、また、互いに重複する作用もあるため、それらの含有量は、単独で、あるいは、合わせて10%以下とすることが望ましい。
【0013】
前記形状記憶合金に含有されるVが0.1〜5%の範囲にあるか、または、Tiが0.1〜2%の範囲にあり、かつ、C(炭素)を0.001〜2%、およびNを0.001〜0.5%含有することが望ましい。
【0014】
VおよびTiは、前記合金に含有されるCおよびNと結合して、微細でかつ分散した炭化物および窒化物を形成するため、上述のように、形状回復率を向上させ、強度を増加させる。また、溶製時に、CおよびNの溶解度を増加させる効果もある。さらに、Tiの場合には、単独で固溶強化により強度の向上に寄与する。
【0015】
このVおよびTiは、含有量が、0.1%未満では、いずれも上記の効果は得られず、Vの場合は、含有量が5%を超えると、Tiの場合は、含有量が2%を超えると、いずれも形状記憶特性および成形性が低下しはじめる。
【0016】
CおよびNが、それぞれ0.001%未満であると、上記の炭化物や窒化物の析出量が少なくなって、上記の効果が得られず、C量が2%、N量が0.5%を超えると、炭化物および窒化物の析出量が多くなって、前記合金の延性が低下し始める。
【0017】
前記形状記憶合金に、Nb(ニオブ)を0.1〜1%の範囲で含有させることもできる。
【0018】
Nbは、炭化物あるいは窒化物を形成し、VおよびTiの場合と同様に、形状回復率および強度(0.2%耐力)の向上に寄与し、単独でも固溶強化により、強度の向上に寄与する。とくに、Vが含有されている場合、Nb炭化物あるいはNb窒化物の周囲に硬化能の高いV炭化物が整合して析出するので、形状記憶特性が一層改善される。
【0019】
なお、上記のV、TiおよびNbはいずれも、CrよりもCとの親和力が強いため、粒界腐食および粒界破壊の原因となるCr炭化物(Cr236 )の析出を防止できる。
【0020】
前記の各鉄系形状記憶合金を溶製した後、遠心鋳造により管状体に成形し、形状記憶合金管を製造することができる。
【0021】
このように、上記の各鉄系形状記憶合金を、遠心鋳造によって管状体に成形すると、組織が緻密になり、鋳造欠陥を防止でき、また、従来の重力鋳造法などに比べて、管状体の長さ方向に偏肉が生じず、切削加工代を少なくでき、歩留が向上して資源ロスを低減できる。
【0022】
前記遠心鋳造が回転する横向きの金属モールドを用いた遠心鋳造であり、前記金属モールドの内面に、厚さ20〜1000μmの保護用コーティング層を形成し、前記形状記憶合金を金属モールドに注入後、凝固完了までの平均の冷却速度を1〜30℃/sの範囲に制御することが望ましい。
【0023】
形状記憶特性を良好にするためには、凝固組織を柱状晶組織にして、前記のVやTiなどの炭化物や窒化物を金属モールドに垂直な方向に分布させることが望ましく、このような柱状晶組織を実現するためには、金属モールドに注入後の冷却速度のコントロールが必要である。
【0024】
この冷却速度は、30℃/sを超えると、管状体の凝固組織にチル晶が増加し、形状記憶特性が低下する。また、1℃/s未満であると、等軸晶が増加して同様に、形状記憶特性が低下する。なお、金属モールドの回転速度が柱状晶の生成に及ぼす影響は小さい。また、柱状晶生成に関しては、注湯形式は、溶湯鋳込み用のトラフが、金属モ−ルドの長さに近く、トラフが金属モ−ルドに対して移動できる、または金属モ−ルドがトラフに対して移動できる長樋形式の方が、前記トラフが金属モ−ルドの長さに対して短く、トラフが固定された短樋形式よりも好ましい。
【0025】
前記コーティング層の厚さが20μm未満では、鉄系形状記憶合金の溶湯から金属モールドへの熱伝達量が多くなって、上記の好ましい冷却速度の範囲を超え、鋳造割れや湯境などの鋳造欠陥が発生しやすくなる。また、溶湯とモールド間で焼付きが生じやすくなり、金属モールドを保護する機能が失われる。一方、1000μmを超えると、管状体の表面にガス欠陥が発生し易くなり、また、コーティング層が厚くなるため、コーティング作業や鋳造後のモールドに残ったコーティング層の除去作業に時間を要する。
【0026】
前記遠心鋳造により成形した管状体に溶体化処理および時効処理を施すことが望ましい。
【0027】
この溶体化処理および時効処理の熱処理条件を適切に選択することにより、遠心鋳造により緻密に形成された組織中に、VやTiなどの炭化物や窒化物が微細に析出し、このような組織制御により、鉄系形状記憶合金管の形状回復率および強度が向上する。
【0028】
前記溶体化処理において、合金元素は形状記憶合金の母相中に充分固溶させ、しかも、組織の粗大化を防止するためには、管状体の加熱温度域を950℃から1200℃の範囲とし、加熱保持時間を0.5〜10時間の範囲とすることが望ましい。加熱温度が950℃を下回ると母相中への固溶が不十分となりやすく、1200℃を超えると結晶粒の粗大化をまねきやすいからである。また、保持時間が0.5時間を下回ると母相中への固溶および組織の均質化が不十分となりやすく、10時間を超えると結晶粒の粗大化をまねきやすいからである。
【0029】
前記時効処理において、VやTiなどの炭化物や窒化物が微細に析出し、しかも、それらの凝集を防止するためには、管状体の加熱温度域を600℃から900℃の範囲とし、加熱保持時間を0.08〜10時間の範囲とすることが望ましい。加熱温度が600℃を下回ると析出物の生成が遅く、900℃を超えると結晶粒の粗大化をまねきやすいからである。また、保持時間が0.08時間を下回ると材料の均熱が十分でなく、安定した組織が得られず、10時間を超えると結晶粒の粗大化をまねきやすく、経済的でないからである。また、熱処理において、組織の結晶粒成長を抑制することは、0.2%耐力など機械的性質の向上につながるので、二段時効を行ってもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の実施形態を添付の図1乃至図5に基づいて説明する。
【0031】
図1は、鉄系形状記憶合金の管状体cを製造する遠心鋳造機を示したものである。形状記憶合金としては、Fe−Mn−Si系で、C、Nに加えて少なくともVまたはTiを含有し、凝固時にVまたはTiのいずれか一方の炭化物または窒化物が析出する組成のものを用いる。
【0032】
この遠心鋳造機では、上記のような組成の鉄系形状記憶合金の溶湯aを、高周波溶解炉3から三角取鍋4に注入し、その取鍋4を円筒状の金属モールド1に対して所要位置までレール9上を移動させる。この後、取鍋4を矢印のごとく傾動し、鋳込み用トラフ5の供給口5aから溶湯aをトラフ5内に供給し、その先端の鋳込み口5bから、1400℃以上の鋳込み温度を確保して金属モールド1に注入する。
【0033】
前記トラフ5は、その長さが金属モールド1の長さに近い長樋形式のもので、移動台車7に固定され、金属モールド1に対して移動可能であり、鋳込み部、即ち溶湯aの鋳込まれる箇所が金属モールド1内を順次移動することから、鋳込み量は、金属モールド1の長手に順次移動する前記鋳込み部のみでよいため、トラフ5の先端部5aからの溶湯aの注入流量を少なくできる。このため、図2に示す、トラフ5’が金属モールド1の長さに対して短く、金属モールド1に対して固定されている短樋形式の場合よりも、成形される管状体内面のドロス欠陥の発生が少なくでき、欠陥除去のための機械加工代が少なくなるなどの利点がある。
【0034】
前記金属モールド1の内周面には、表1に組成を示したジルコニア系のコーティング剤bが、ポンプ6からホース6aを介して鋳込み用トラフ5の下面に取り付けられたノズル8に送り込まれ、台車7を前後動させるとともに、モールド1を回転させ、このノズル8からモールド1内面にコーティング剤bがスプレー塗布され、20〜1000μm、好ましくは、50〜800μmの範囲の厚さのコーティング層が形成されている。このとき、スプレー前に金属モールド1は150〜250℃の範囲に予熱されている。
【0035】
【表1】
Figure 2004002981
【0036】
前記金属モールド1は、その外周面から図示を省略した冷却手段によって抜熱して、注入された溶湯aの冷却速度の調節が可能となっており、通常、50〜150Gの回転速度で回転し、トラフ5の鋳込み口5bから、溶湯aを金属モールド1内に注入するにつれて、台車7を矢印のごとく、レール9に沿って後退させて、トラフ5と金属モールド1とを相対的に、好ましくは、速度50〜150mm/sの範囲で移動させ、金属モールド1の全長にわたる管状体cが成形される。ここで、前記Gは、遠心力の加速度を重力加速度で割った値で、遠心力が重力の何倍になるかを表した重力倍数であり、金属モールド1の内径をD(cm)、回転速度をN(rpm)とすれば、G=D×N2 /179000となり、金属モールド1の回転速度と対応付けることができる。そして、なお、注入された溶湯aの、凝固終了までの平均の冷却速度が1〜30℃/s、好ましくは、3〜20℃/sの冷却速度となるように、前記冷却手段によって、金属モールド1の抜熱速度が調節される。冷却速度をこの範囲に収めることにより、より優れた形状記憶特性が得られる。
【0037】
このようにして得られた管状体c、即ち鉄系形状記憶合金管に、マルテンサイトへの変態開始温度以下の−150〜100℃の温度範囲で、加工率が1〜20%の範囲で、1回目の拡径処理が施され、逆変態温度以上の200〜600℃の温度範囲に加熱した後、マルテンサイトへの変態開始温度以下の−150〜100℃の温度範囲に冷却する。そして、この温度域で上記と同様の2回目の拡径処理を施して応力誘起マルテンサイトを生成させることで、形状回復率を向上させることができる。
【0038】
【実施例】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0039】
成分元素として、C、Nに加えて少なくともVまたはTiを含有する8種類のFe−Mn−Si系形状記憶合金を高周波溶解炉で溶解し、図1に示した長樋形式の遠心鋳造機を用いて、下記の条件で各合金を素材とする管状体cを鋳造した。表2に、各管状体cの素材合金の成分組成、合金中に生成する析出物および後述する試験により得られた特性を併せて示す。
(鋳造条件)
鋳込み温度:1400℃以上
呼び径:250mm(外径:252mm)
管肉厚:11mm
コーティング厚:380〜450μm
冷却速度:18〜20℃/sec
【0040】
【表2】
Figure 2004002981
【0041】
前記各管状体cを鋳造した後、溶体化処理および時効処理を施すことにより、表2に示した炭化物や窒化物が析出する。ここで、各管状体cの溶体化処理は、1150℃で1時間保持した後、空冷を行うものとした。また、時効処理の保持温度および保持時間は、生成析出物がVNのもの(実施例1,7)では700℃×10分間、TiNまたはTiCのもの(実施例3,4)では800℃×30分間、その他(実施例2,5,6,8)では700℃×30分間とした。
【0042】
上記の熱処理による組織の変化および析出物の生成過程について、実施例1の素材合金を代表例として調査を行った。図3(a)、(b)および(c)は、それぞれ、鋳造後(鋳造状態のまま)、溶体化処理後および時効処理後の顕微鏡組織を示す。溶体化処理により十分固溶され、また時効処理による結晶粒の粗大化は認められない。
【0043】
図4は、実施例1の合金中における析出物の生成状態、分布などを透過電子顕微鏡で観察した結果を示す。図4(a)および(b)は、それぞれ、溶体化処理後および時効処理後の状態を示し、図4(c)は時効処理を1時間に延長した場合の処理後の状態を示す。図4(a)より、溶体化処理後、析出物などは合金中に完全に固溶され、均質化していることが分かる。ただし、微量の析出物は粒界に生成しており、これにより結晶粒径の粗大化を抑制する効果がある。そして、図4(b)からは、時効処理後に、ナノメートルオーダーのVN析出物が母相中に均一に分散、生成し、その形状は球状に近いということが見て取れる。また、10分という短い時効処理時間で強度が増大するのは、析出物生成に伴う析出強化によるものであり、形状回復歪が増大するのは、内部整合歪によるものであることが分かる。さらに、図4(b)と図4(c)とを比べると、時効処理の保持時間を1時間に延長しても、析出物の分布などは10分間保持した場合と大きな変化がないことも分かる。
【0044】
前記熱処理を行った後、以下に示す試験を行って各実施例の形状回復率を測定し、形状記憶特性を評価した。試験は、溶体化処理および時効処理を行った各管状体cから、全長が55mm、平行部の直径が4mm、長さが23mm、標点距離(L0 )が20mm、つかみ部がM10のねじ加工をした引張試験片を切り出し、以下の、▲1▼引張歪みの付与、▲2▼加熱処理、▲3▼形状回復率の測定の処理工程を2回繰り返して、各実施例の形状回復率をそれぞれ算出した。
【0045】
▲1▼引張り歪みの付与
各試験片について定められた予歪み量(4〜10%)を引張試験機で付与した後、試験片に付した、前記予歪付与後の標点距離(L1 )をデジタルノギスにて測定した。引張速度は、試験機のクロスヘッド速度=1.0mm/min(歪み速度=8.3×10−4)とし、試験は恒温室(27℃)で行ない、強度(0.2%耐力)も併せて測定した。
【0046】
▲2▼加熱処理
各試験片に上記予歪みを付与した後、熱処理炉を用いて、Ar雰囲気中で600℃×30min(2回目は、350℃×30min)の加熱処理を行い、処理後は空冷とした。
【0047】
▲3▼形状回復率測定
各試験片を、上記加熱処理後空冷し、標点距離(L2 )を再度測定し、加熱前の標点間距離との差から、収縮量(ΔL=L1 −L2 )を算出した。この収縮量(ΔL)の算出値から一次(1回目)および二次(2回目)の形状回復率(ΔL/L)×100%をそれぞれ算出した。
【0048】
表2から、いずれの実施例についても、形状回復率は、予歪付与→加熱処理を繰り返すトレーニング処理により向上し、二次の形状回復率が従来レベルの3.0%を明らかに上回っていることが分かる。また、強度(0.2%耐力)についても、300MPaを超えて従来レベルの250MPaよりも顕著に上回っている。これらの結果から、各実施例の管状体cが継手用途として十分に実用できる形状記憶特性および強度特性を有するものであることが確認された。
【0049】
また、各実施例の管状体cは、いずれも良好な外観が得られ、断面組織の柱状晶率も80%以上であった。図5は、一例として、実施例1の管状体cの断面組織を示す。肉厚のほぼ全体に柱状晶組織が得られ、外面および内面には等軸晶およびノロ・ドロスを含む層がほとんど存在していないことが観察される。従って、切削加工代の削減や、加工時および拡径時の割れの防止が図れ、低コスト化と資源ロスの削減とを同時に実現できる。
【0050】
次に、表2の実施例1を基準として、成分組成が同じで、呼び径、肉厚等の鋳造条件を変化させた管状体cを4種類(実施例9〜12)製造した。表3に各実施例の鋳造条件および得られた管状体cの特性を示す。
【0051】
【表3】
Figure 2004002981
【0052】
表3から、呼び径が250mm(外径252mm)または150mm(外径152mm)の場合、肉厚6mmから19mmの範囲にわたって、肉厚の長さ方向の均一性に優れた管状体cが得られることがわかる。また、各実施例の管状体cのいずれも、外観は良好で、コーティング剤bの厚さおよび冷却速度を前述の好ましい範囲内で設定することにより、その断面組織の柱状晶率が80%以上となり、形状回復率も従来レベルの3%程度から大きく向上している。なお、この形状回復率は、前述の形状回復率の測定方法と同じ方法により算出した二次の値である。
【0053】
この結果から、遠心鋳造法により、5mm程度の薄肉管から20mm程度の厚肉管にいたるまで、長さ方向にほぼ均一な肉厚を有する鉄系形状記憶合金管を容易に製造できることが確認できた。
【0054】
【発明の効果】
以上のように、この発明による鉄系形状記憶合金管では、V、TiあるいはNbの炭化物、窒化物などの析出物が形成されたとき生じる局所歪みと合金母相の格子歪みとの間に生じる組織制御された相互作用により、回復歪エネルギーが大きくなり、形状回復率が従来レベルを明らかに上回り、また、析出強化作用による強度(0.2%耐力)の顕著な向上がもたらされた。
【0055】
また、この鉄系形状記憶合金管は、肉厚のほぼ全体に柱状晶組織が得られ、外面および内面に等軸晶およびノロ・ドロスを含む層がほとんど存在しないものとなるため、切削加工代の削減や、加工時および拡径時の割れの防止が図れ、低コスト化と資源ロスの削減とを同時に図ることができる。
【0056】
さらに、その遠心鋳造を用いた製造方法によれば、薄肉管から厚肉管にいたるまで、長さ方向にほぼ均一な肉厚を有する管を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例に係る遠心鋳造機(長樋形式)の概略図
【図2】同上の遠心鋳造機(短樋形式)の概略図
【図3】図1の遠心鋳造機で鋳造した管状体の一例の熱処理による微細組織の変化を示す写真
【図4】同上の透過電子顕微鏡写真
【図5】同上の断面組織写真
【符号の説明】
1 金属モールド
2 回転ローラ
3 高周波溶解炉
4 三角取鍋
5、5’鋳込み用トラフ
5a 供給口
5b 鋳込み口
6 コーティング用ポンプ
7 移動台車
8 コーティングノズル
9 レール
a 溶湯
b コーティング剤
c 管状体

Claims (8)

  1. 主要成分として、重量パーセントで(以下すべて重量パーセントで表す)、Mnを15〜40%、Siを3.5〜8%を含有する鉄系形状記憶合金からなる管であって、前記形状記憶合金が、さらに、少なくとも、VまたはTiのいずれか一方の炭化物または窒化物を含有することを特徴とする鉄系形状記憶合金管。
  2. 前記形状記憶合金が、CrまたはNiを単独で10%以下、あるいはCrとNiを合わせて10%以下の範囲で含むことを特徴とする請求項1に記載の鉄系形状記憶合金管。
  3. 前記形状記憶合金に含有されるVが0.1〜5%の範囲にあるか、または、Tiが0.1〜2%の範囲にあり、かつ、Cを0.001〜2%、Nを0.001〜0.5%含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鉄系形状記憶合金管。
  4. 前記形状記憶合金が、Nbを0.1〜1%の範囲で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の鉄系形状記憶合金管。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載した鉄系形状記憶合金を溶製し、遠心鋳造により管状体に成形する鉄系形状記憶合金管の製造方法。
  6. 前記遠心鋳造が回転する横向きの金属モールドを用いた遠心鋳造であり、前記金属モールドの内面に、厚さ20〜1000μmの保護用コーティング層を形成し、前記形状記憶合金を金属モールドに注入後、凝固完了までの平均の冷却速度が1〜30℃/sの範囲にある請求項5に記載の鉄系形状記憶合金管の製造方法。
  7. 前記遠心鋳造により成形した管状体に溶体化処理および時効処理を施す請求項5または6に記載の鉄系形状記憶合金管の製造方法。
  8. 前記溶体化処理において、前記管状体を950℃から1200℃の温度域に0.5〜10時間保持した後、水冷または空冷し、その後の前記時効処理において、前記管状体を600℃から900℃の温度域で、0.08〜100時間保持する請求項7に記載の鉄系形状記憶合金管の製造方法。
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