JP2003328092A - ボンド磁石用希土類合金粉末およびボンド磁石用コンパウンドならびにそれを用いたボンド磁石 - Google Patents

ボンド磁石用希土類合金粉末およびボンド磁石用コンパウンドならびにそれを用いたボンド磁石

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 充填性および/または成形性に優れるととも
に磁気特性に優れたボンド磁石に用いられる希土類合金
粉末およびボンド磁石用コンパウンドならびにそれを用
いたボンド磁石を提供する。 【解決手段】 組成式(Fe1-mm100-x-y-zxy
z(TはCoおよびNiからなる群から選択された1
種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択され
た1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質的に含ま
ない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびH
fからなる群から選択された金属元素であって、組成比
率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原
子%、6<y<10原子%、0.1≦z≦12原子%、
および0≦m≦0.5)で表現される組成を有し、且
つ、2種類以上の強磁性結晶相を含有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ボンド磁石用希土
類合金粉末およびボンド磁石用コンパウンドならびにそ
れを用いたボンド磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、ボンド磁石は、各種モータ、アク
チュエータ、スピーカ、メータ、フォーカスコンバージ
ェンスリング等の電気機器に用いられている。ボンド磁
石とは、磁石用合金粉末(磁石粉末)と結合剤(樹脂や
低融点金属)を混合し、成形固化することによって製造
された磁石である。
【0003】従来、ボンド磁石用の磁石粉末として、Ma
gnequench International社(以下、「MQI社」と略
する。)から販売されているFe−R−B系磁石粉末、
いわゆるMQ粉が広く用いられている。MQ粉は、一般
に、Fe100-a-bab(Feは鉄、Bは硼素、Rは、
Pr、Nd、Dy、およびTbからなる群から選択され
た少なくとも1種の希土類元素)の組成式で表され、こ
の組成式中のaおよびbが、1原子%≦a≦6原子%、
および10原子%≦b≦25原子%の関係を満足してお
り、Rの含有率bが高い希土類合金粉末である。
【0004】MQ粉に代表される従来のボンド磁石用の
合金粉末は、溶融した原料合金(すなわち「合金溶
湯」)を急冷凝固させることによって作製される。この
液体急冷法(メルトクエンチング(melt-quenching)
法)として、メルトスピニング(melt-spining)法(典
型的には単ロール法)が用いられることが多い。単ロー
ル法は、合金溶湯を回転する冷却ロールに接触させるこ
とによって冷却し凝固させる方法である。この方法によ
る場合、急冷合金の形状は冷却ロールの表面周速度方向
に沿って薄帯(リボン)状に伸びたものとなる。このよ
うにして作製した急冷合金薄帯は、熱処理された後、例
えば平均粒径が300μm以下(典型的には約150μ
m)になるように粉砕され、永久磁石用の希土類合金粉
末となる。以下では、液体急冷法で作製された上述の希
土類合金粉末を単に「従来の急冷磁石粉末」と称するこ
ととし、後述のナノコンポジット磁石粉末を含まないも
のとする。
【0005】従来の急冷磁石粉末と樹脂(ここでは、ゴ
ムまたはエラストマを含むものとする。)とを混合し、
ボンド磁石用コンパウンド(以下、単に「コンパウン
ド」と呼ぶ。)が調製される。このコンパウンドには、
潤滑剤やカップリング剤などの添加剤が混合されること
もある。
【0006】このコンパウンドを、例えば圧縮成形、押
出し成形や射出成形によって所望形状に成形し、永久磁
石の成形体(「永久磁石体」とも言う。)としてのボン
ド磁石が得られる。また、圧縮成形や押出し成形によっ
て作製されるボンド磁石は、結合剤の含有率が少ないの
で、磁石粉末を腐食から保護するために、さらに表面処
理が施されることもある。
【0007】一方、近年、ボンド磁石に用いられる磁石
粉末として、比較的コストが安いという利点から、鉄基
希土類合金(特にFe−R−B系)のナノコンポジット
磁石(「交換スプリング磁石」と言われることもあ
る。)粉末が用いられつつある。Fe−R−B系のナノ
コンポジット磁石は、例えばFe3BやFe236等の軟
磁性相である鉄基硼化物の微結晶と硬磁性相であるR2
Fe14B相の微結晶とが同一金属組織内において均一に
分布し、両者が交換相互作用によって磁気的に結合した
鉄基合金永久磁石である(例えば、本願出願人による特
願平11−362103号および特願2000−371
788号参照)。
【0008】ナノコンポジット磁石は、軟磁性相を含み
ながらも、軟磁性相と硬磁性相との間の磁気的結合(交
換相互作用)によって優れた磁気特性を発揮する。ま
た、Nd等の希土類元素Rを含まない軟磁性相が存在す
る結果、全体として希土類元素Rの含有量が低く抑えら
れる(典型的には、Rの含有率が4.5原子%)。この
ことは、磁石の製造コストを低減し、磁石を安定に供給
するうえでも好都合である。また、酸素に対して活性な
Rの含有率が低いので、耐食性にも優れている。なお、
このナノコンポジット磁石も、液体急冷法によって作製
される。このナノコンポジット磁石を所定の方法によっ
て粉砕し、ナノコンポジット磁石粉末を得る。
【0009】ボンド磁石の磁気特性は、ボンド磁石に含
まれる磁石粉末の磁気特性とその充填率に依存する。そ
こで、ボンド磁石の磁気特性を向上するために、磁石粉
末の充填率を向上することが検討されている。
【0010】また、近年は電気機器が小型化し高性能化
するのに伴い、小型で高性能な磁石に対する需要は益々
増大している。例えば、スピンドルモータ用のリング磁
石としては外径が15mm〜20mm、内径が13mm
〜18mm、厚さが1mm〜2mm程度のもの、あるい
は、ステッピングモータ用のリング磁石としては、外径
が4mm〜10mm、内径が2mm〜8mm、厚さが
0.5mm〜1.5mm程度の製品に対する需要が増大
している。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者が検討した結果、上述の従来の急冷磁石粉末および従
来のナノコンポジット磁石粉末には、下記に示す問題が
あることが分かった。
【0012】MQ粉に代表される従来の急冷磁石粉末
は、典型的には、ロール表面周速度を15m/秒以上に
して、厚さ50μm以下(典型的には約20μm〜約4
0μm)の急冷合金薄帯を作製し、この急冷合金薄帯を
熱処理した後、平均粒径が300μm以下(典型的には
約150μm)になるように粉砕することによって製造
されている。このようにして製造された磁石粉末の粒子
の形状は扁平なものとなり、その粉末粒子のアスペクト
比は0.3未満である。なお、アスペクト比は短軸方向
サイズ/長軸方向サイズをあらわすものとする。
【0013】この磁石粉末は、優れた磁気特性を有して
いるものの、磁石粉末の充填率(ボンド磁石の密度/粉
末粒子の密度)は、種々の成形法の内で最も高い成形密
度が得られる圧縮成形法でも、通常、最高で約80%で
ある。
【0014】例えば、従来の急冷磁石粉末を使用し、圧
縮成形法で磁石粉末の充填率が80%を超えるボンド磁
石を成形すると、磁石粉末同士の隙間に入る樹脂の量が
少なくなるため空隙率が高くなり、さらには、磁粉が脱
粒することもある。その結果、使用環境下での酸化によ
って磁気特性が著しく劣化する。この磁気特性の劣化を
防止するために、後工程で、空隙を埋めたり(「封孔処
理」と呼ばれることがある。)、表面に十分な厚さの保
護膜を形成したり(表面処理)する必要が生じる。ま
た、表面処理で樹脂等の厚い保護膜を形成すると、磁石
表面の非磁性層の厚さが増すことを意味するので、磁気
回路における磁気的なギャップが広くなり、磁気エネル
ギーの利用効率を低下させることになる。さらに、コン
パウンドの作製過程や成形過程で、磁石粉末の粒子が破
壊され、新たな表面が露出することによる耐食性の低下
や表面の酸化による磁気特性の低下が起こることもあ
る。
【0015】従来の急冷磁石粉末を用いて充填率を改善
するために、例えば、特開昭63−155601号公報
に開示されているように、急冷磁石粉末の粒度分布を制
御する試みがなされているが、十分な充填率を実現する
には至っていない。
【0016】また、本発明者による検討の結果、従来の
急冷磁石粉末は、希土類元素の含有率が高いので酸化さ
れやすく、粒径の小さな粒子ほど酸化による磁気特性の
低下の程度が大きいので(例えば、MQP−B(最大粒
径300μm以下)の場合、53μm以下の粉末粒子の
残留磁束密度Br(0.79T)は、106μm超12
5μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(0.90
T)の90%未満となる。)、小さな粒子の分率が増え
るに従い、磁石粉末そのものの磁気特性が低下するとい
う問題があることが分かった。この酸化に起因する磁気
特性の低下を抑制するためには、ボンド磁石用の磁石粉
末に含まれる小さな粒子の分率を抑える必要があり、そ
の結果、充填率を向上するための粒度分布の調整にも制
限があった。
【0017】さらに、従来の急冷磁石粉末は、比較的粒
径の大きな粒子を多く含むので、近年需要が高まってい
る小型磁石を成形することが難しく、また、大きな粒子
が脱粒しやすいという問題がある。
【0018】従来の急冷磁石粉末の成形性(特に流動
性)を改善するために、特開平5−315174号公報
は、ガスアトマイズ法で作製された磁石粉末を用いる方
法を提案している。上記公報によると、ガスアトマイズ
法で作製された磁石粉末の粒子は粒状(球状)に近いの
で、この磁石粉末を従来の急冷磁石粉末に添加すること
によって、流動性を改善することができる。しかしなが
ら、ガスアトマイズ法は上述の液体急冷法に比べ冷却速
度が遅いので、従来の組成で充分な磁気特性を発現する
磁石粉末を製造することは困難であり、工業的に利用可
能な方法とは言い難い。
【0019】一方、従来のFe−R−B系のナノコンポ
ジット磁石粉末は、希土類元素の含有率が比較的低く、
典型的には硬磁性相の体積比率が30%以下である。そ
のために磁気特性(例えば保磁力HcJ)が従来の急冷磁
石粉末(MQ粉など)に比べ低いので、十分な磁気特性
を有するボンド磁石が得られないという問題があり、例
えばハードディスクドライブ装置(HDD)のモータに
適用することができなかった。
【0020】本発明はかかる諸点に鑑みてなされたもの
であり、その主な目的は、充填性および/または成形性
に優れるとともに磁気特性に優れたボンド磁石に用いら
れる希土類合金粉末およびボンド磁石用コンパウンドな
らびにそれを用いたボンド磁石を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明によるボンド磁石
用希土類合金粉末は、組成式(Fe1-mm100-x-y- z
xyz(TはCoおよびNiからなる群から選択さ
れた1種以上の元素、QはBまたはBおよびCからなる
群から選択された1種以上の元素、RはLaおよびCe
を実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、
Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素で
あって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組
成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦2
0原子%、6<y<10原子%、0.1≦z≦12原子
%、および0≦m≦0.5)で表現される組成を有し、
且つ、硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上200n
m以下、軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上100n
m以下の範囲内にある、2種類以上の強磁性結晶相を含
有する粉末粒子を含み、粒度分布において、粒径が10
6μm超150μm以下の範囲内に第1ピークを有し、
粒径が106μm超の前記粉末粒子のアスペクト比は
0.3以上1.0以下の範囲内にあることを特徴とす
る。
【0022】前記粒度分布において、粒径が53μm以
下の範囲に第2のピークを有することが好ましい。
【0023】前記粉末粒子の平均粒径は53μm超12
5μm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0024】粒径が106μm超の前記粉末粒子の平均
厚さは50μm以上120μm以下の範囲内にあること
が好ましい。
【0025】前記粉末粒子のアスペクト比は0.4以上
であることがさらに好ましい。
【0026】前記粉末粒子は、ストリップキャスト法を
用いて作製されたものであることが好ましい。
【0027】前記粉末粒子は、ストリップキャスト法に
よって得られた平均厚さが50μm以上120μm以下
の範囲内の合金薄帯を粉砕することによって作製された
ものであることがさらに好ましい。
【0028】本発明のボンド磁石用コンパウンドは、上
記のいずれかのボンド磁石用希土類合金粉末と結合剤と
を含むことを特徴とする。
【0029】本発明のボンド磁石は、上記のボンド磁石
用コンパウンドを用いて形成されたことを特徴とする。
ボンド磁石は、圧縮成形法を用いて形成されることが好
ましい。
【0030】
【発明の実施の形態】本発明によるボンド磁石用希土類
合金粉末(以下、「磁粉」と略す。)は、粒度分布にお
いて、粒径が106μm超150μm以下の範囲内に第
1ピークを有し、粒径が106μm超の粉末粒子のアス
ペクト比が0.3以上1.0以下の範囲内にあるTi含
有ナノコンポジット磁粉を含んでいる。Ti含有ナノコ
ンポジット磁粉の詳細については、本願出願人による、
特許第3264664号公報や特願2001−3280
85号に記載されている。
【0031】Ti含有ナノコンポジット磁粉は、組成式
(Fe1-mm100-x-y-zxyz(TはCoおよびN
iからなる群から選択された1種以上の元素、QはBま
たはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元
素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の
希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群か
ら選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なく
とも1種の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、
それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子
%、0.1≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)
で表現される組成を有し、且つ、2種類以上の強磁性結
晶相を含有し、硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上
200nm以下、軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上
100nm以下の範囲内にある組織を有している。Ti
含有ナノコンポジット磁粉は、上記組成式における組成
比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x<17
原子%、7≦y≦9.3原子%、0.5≦z≦6原子%
を満足することが好ましく、8≦y≦9.0を満足する
ことが更に好ましい。
【0032】本発明によるTi含有ナノコンポジット磁
粉は、上述のような組成および組織を有しているので、
硬磁性相と軟磁性相とが交換相互作用によって磁気的に
結合しており、希土類元素の含有率が比較的低いにも拘
わらず、従来の急冷磁石粉末と同等またはそれ以上の優
れた磁気特性を有し、さらにはFe3B相を主相とする
従来のナノコンポジット磁石粉末よりも、優れた磁気特
性を有する(特に保磁力HcJが高い)。具体的には、本
発明によるTi含有ナノコンポジット磁粉は、最大エネ
ルギー積(BH)max:70kJ/m3以上、保磁力
cJ:700kA/m以上、残留磁束密度Br:0.7
T以上を実現でき、さらには、最大エネルギー積(B
H)max:90kJ/m3以上、保磁力HcJ:800
kA/m以上、残留磁束密度Br:0.8T以上を実現
できる。
【0033】このように、Ti含有ナノコンポジット磁
粉は従来の急冷磁石粉末と同等以上の磁気特性を有して
いるので、従来の急冷磁石粉末(例えばMQ粉)の代わ
りにボンド磁石用磁粉として用いることができる。勿
論、ボンド磁石用磁粉として、Ti含有ナノコンポジッ
ト磁粉のみを用いることが好ましいが、Ti含有ナノコ
ンポジット磁粉の特徴を損なわない程度に従来の急冷磁
石粉末などを混合してもよい。
【0034】さらに、Ti含有ナノコンポジット磁粉
は、その組成および組織を有するため、その磁気特性に
粒径依存性が小さいという特徴を有している。例えば、
53μm以下の粒子の残留磁束密度Brが106μm超
250μm以下の粒子の残留磁束密度Brと実質的に同
じ(95%以上)ものが得られる。Ti含有ナノコンポ
ジット磁粉は、希土類元素Rの含有率が比較的低い上
に、R2Fe14B相を取り囲むように小さな硼化物相が
分散しており、さらにTiは硼素との親和性が高いので
硼化物相は他の相よりも多くのTiを含有している。そ
の結果、Ti含有ナノコンポジット磁粉は、従来の急冷
磁石粉末に比べ耐酸化性に優れている。このように、従
来の急冷磁石粉末は比較的多量の希土類元素Rを含むの
で酸化されやすく、粒径が小さいほど粉末粒子表面の酸
化による磁気特性の低下が顕著であるのに対し、Ti含
有ナノコンポジット磁粉は酸化による磁気特性の劣化が
少なく、磁気特性の粒径依存性が小さい。従って、粒度
分布の調整が磁気特性によって制限されることがなく、
成形性を向上するための最適な粒度分布とすることがで
きる。
【0035】後に実施例を示して説明するように、種々
の粒度分布を有するTi含有ナノコンポジット磁粉を調
製し、その成形性および磁気特性を検討した結果、粒度
分布において、粒径が106μm超150μm以下の範
囲内に第1ピークを有し、粒径が106μm超の粉末粒
子のアスペクト比が0.3以上1.0以下の範囲内にあ
るTi含有ナノコンポジット磁粉の成形性が優れること
を見出した。
【0036】上述の粒度分布を有するTi含有ナノコン
ポジット磁粉は、前述の特開昭63−155601号に
開示されているような、150μm〜500μmの範囲
に第1ピークを有し、2μm〜40μmの範囲に第2ピ
ークを有するものよりも、成形性に優れる。さらに、上
記粒径が150μmを超える粒子の質量分率(ここで用
いる磁粉の比重(約7.45g/cm3)はほぼ等しい
ので質量分率は体積分率と等しい。)を比較的少なくで
きるので(例えば40質量%以下、好ましくは30質量
%以下)、小型の磁石の製造に好適に用いられる。ま
た、ボンド磁石から磁粉が脱粒することによって発生す
る不良も抑制することができる。
【0037】特に、小型磁石における脱粒などを抑制す
るために、Ti含有ナノコンポジット磁粉の最大粒径は
250μm以下であることが好ましく、215μm以下
であることがさらに好ましい。さらに、粉末粒子の平均
粒径は53μm超125μm以下の範囲内に調整するこ
とが好ましい。このような粒度分布を有するTi含有ナ
ノコンポジット磁粉は、上述した特に小型のリング磁石
の製造に好適に用いられる。
【0038】なお、本願明細書における粒径は、JIS
8801の標準ふるいによって分別することによって求
められたものとする。また、Ti含有ナノコンポジット
磁粉に含まれる粒子の最小粒径は特に限定されるもので
はないが、Ti含有ナノコンポジット磁粉の製造工程に
おいて、粒径が1μm以下の超微粉粒子は除去されやす
く、また、除去することが好ましい。
【0039】本発明によるTi含有ナノコンポジット磁
粉の粒度分布を、粒径が53μm以下の範囲に第2のピ
ークを有するように調整することによって、さらに成形
性を改善することができる。これは、第1ピークを構成
する比較的大きな粒子(粒径が106μm超の粒子を
「第1粒子」と呼ぶこともある。)によって形成される
間隙に、第2ピークを構成する比較的小さな粒子(粒径
が53μm以下の粒子を「第2粒子」と呼ぶこともあ
る。)が効率良く充填されるためと考えられる。
【0040】また、この粒度分布による成形性の改善効
果は、第1粒子のアスペクト比(短軸/長軸)が0.3
以上1.0以下であるときに顕著に得られる。すなわ
ち、第1粒子および第2粒子の大きさを制御しても、第
1粒子のアスペクト比(粒径が106μm超の粒子)が
0.3未満であると、第1粒子によって形成される間隙
が扁平な形状となり、第2粒子がその間隙に充填され難
くなるためと考えられる。勿論、第2粒子のアスペクト
比も0.3以上1.0以下であることが好ましい。な
お、第2粒子は第1粒子よりも粒径が小さいので、第2
粒子のアスペクト比を第1粒子のアスペクト比以上とす
ることは容易である。
【0041】本発明のTi含有ナノコンポジット磁粉
は、以下に説明するように、ストリップキャスト法を用
いて、アスペクト比が0.3以上、あるいは、0.4以
上の粒子を高い生産性で製造することができる。ストリ
ップキャスト法を用いたTi含有ナノコンポジット磁粉
の製造方法の詳細は、例えば、本願出願人による特願2
001−342692号に記載されている。
【0042】本発明によるボンド磁石用磁粉に用いられ
るTi含有ナノコンポジット磁粉は、後に詳述するよう
に、Tiの働きによって、従来の急冷磁石粉末よりも遅
い冷却速度(102〜106℃/秒)で合金溶湯を冷却す
ることによっても作製され得るので、ストリップキャス
ト法を用いて従来よりも厚い板厚を有する合金を作製し
ても上記の金属組織を得ることができる。本発明に用い
られるTi含有ナノコンポジットの急冷合金は、微細結
晶粒によって構成されているため、ランダムな方位に沿
って破断しやすく、アスペクト比が0.3以上の等軸的
な(アスペクト比が1に近い)粉末粒子が生成されやす
い。
【0043】例えば、ストリップキャスト法を用いて、
50μm以上120μm以下の厚さの合金(合金薄帯)
を形成し、磁粉の平均粒径が53μm超125μm以下
となるように、例えばピンディスクミルを用いて粉砕す
ることによって、アスペクト比が0.4以上1.0以下
の粒子からなる粉末を容易に得ることができる。当然の
ことながら、合金薄帯を粉砕して得られる合金薄帯の厚
さよりも粒径の大きな粒子の短軸の長さは、合金薄帯の
厚さによって決定されるので、厚い合金薄帯を粉砕する
方がアスペクト比の大きな粒子が得られる。従って、粒
径が106μmを超える粒子の平均厚さは短軸の長さに
相当し、50μm以上120μm以下の範囲内におさま
り、アスペクト比が0.4以上1.0以下の粒子が得ら
れる。
【0044】さらに、Ti含有ナノコンポジットの急冷
合金は上述したようにランダムに破壊されやすいので、
粒径の小さいものほどアスペクト比はさらに大きくなる
傾向にあり、粒径が合金薄帯の厚さ以下である粒子は、
より大きなアスペクト比を有する。上述のような方法で
作製されたTi含有ナノコンポジット磁粉は、分級する
ことによって上述の粒度分布に調整される。
【0045】上述のような方法で作製されたTi含有ナ
ノコンポジット磁粉は、アスペクト比が0.4以上1.
0以下であるので、アスペクト比が0.3未満の従来の
急冷磁石粉末に比べて充填性に優れている。従って、ア
スペクト比が0.4以上1.0以下のTi含有ナノコン
ポジット磁粉を用いてコンパウンドを調製することによ
って、従来の急冷磁石粉末を用いた場合に比較して、磁
気特性を低下させることなく、充填性および成形性に優
れたコンパウンドを得ることができる。
【0046】アスペクト比が0.3以上の粒子、特に、
アスペクト比が0.4以上の粒子は、上述したように粒
度分布を調整することによる成形性の改善効果が顕著に
得られるとともに、成形時におけるスプリングバックを
抑制する効果も得られる。その結果、充填率の高い(空
隙率の低い)ボンド磁石を得ることができる。樹脂とし
て熱硬化性樹脂を用い、例えば圧縮成形法で成形する
と、磁粉の充填率が80%以上のボンド磁石を得ること
ができる。
【0047】本発明によるTi含有ナノコンポジット磁
粉を含む磁粉と種々の樹脂とを公知の方法で混合(およ
び/または混練)することによって、ボンド磁石用コン
パウンドを得ることができる。樹脂としては、公知の熱
硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。さら
に、本発明によるTi含有ナノコンポジット磁粉によっ
てコンパウンドの成形性が改善されるので、従来は用い
ることが難しかった高粘度の樹脂を用いることもでき
る。さらに、本発明によるTi含有ナノコンポジット磁
粉を用いると、酸化による磁気特性の低下が少ないの
で、融点または軟化点あるいは硬化温度が高く従来は使
用が困難であった樹脂(例えばポリイミドや耐熱グレー
ド品)を用いることができるので、ボンド磁石の特性
(耐熱性など)を改善することが出来る。
【0048】本発明によるTi含有ナノコンポジット磁
粉を用いると、上述したように、従来と同等もしくはそ
れ以上の充填率を確保しつつ、空隙率(ボイド率)の低
いボンド磁石を提供することができる。従って、多くの
空隙が存在する成形上がりのボンド磁石に表面処理を施
すことによって付随して起こる信頼性の低下などの種々
の不具合の発生を抑制・防止することが出来る。なお、
本明細書における表面処理は、空隙を埋める封孔処理、
表面への保護膜の形成あるいは表面の改質を含むものと
し、公知の表面処理方法を広く用いることができる。
【0049】上述したように、本発明によると、空隙率
が低いボンド磁石が得られるのに加え、磁粉自身の耐食
性が従来の急冷磁石粉末(例えばMQ粉)に比べて高
い。これは、磁粉中の希土類元素含有率が従来の急冷磁
石粉末よりも低く、且つ、上述のような組織を有してい
るためである。従って、従来の急冷磁石粉末を用いたボ
ンド磁石に比べ耐食性において非常に信頼性の高いボン
ド磁石が得られる。
【0050】また、本発明によると磁粉自体の耐食性が
高く、且つ、空隙率の低いボンド磁石が得られるので、
従来よりも簡易な表面処理によって、十分な耐食信頼性
を得ることも出来る。すなわち、耐食信頼性を犠牲にす
ることなく、表面処理工程を簡略化することによって、
生産効率の向上や、コストの低減を実現することが出来
る。勿論、空隙率の低いボンド磁石は、従来の空隙率が
比較的高いボンド磁石に比べ、機械的強度に優れるとい
う利点も得られる。
【0051】さらに、ボンド磁石の表面に形成する保護
膜の厚さを従来よりも薄くしても従来と同等以上の機械
的強度および/または耐食信頼性を得ることができる。
従って、磁石の表面に形成される樹脂被膜等の非磁性層
の厚さを従来よりも薄くし、磁気回路に形成される磁気
的なギャップによる磁気エネルギーの利用効率の低下を
抑制することができる。
【0052】以下に、本発明によるボンド磁石用磁粉お
よびそれを用いたコンパウンドならびにボンド磁石をさ
らに詳細に説明する。
【0053】〔Ti含有ナノコンポジット磁粉〕本発明
のTi含有ナノコンポジット磁粉は、Tiを含有するF
e−R−B系合金の溶湯を冷却し、それによって凝固し
た急冷合金から形成されている。この急冷凝固合金は、
結晶相を含むものであるが、必要に応じて加熱され、更
に結晶化が進められる。
【0054】本発明者は、特定範囲の組成を有する鉄基
希土類合金へTiを添加することにより、合金溶湯の冷
却過程で生じやすく優れた磁気特性(特に高い保磁力や
減磁曲線の優れた角形性)の発現を阻害する原因となる
α−Fe相の析出・成長を抑制し、硬磁気特性を担うR
2Fe14B型化合物相の結晶成長を優先的かつ均一に進
行させることができることを見出した。
【0055】Tiを添加しなかった場合、Nd2Fe14
B相の析出・成長に先だってα−Fe相が析出し、成長
しやすい。そのため、急冷合金に対する結晶熱処理が完
了した段階では、軟磁性のα−Fe相が粗大化してしま
い、減磁曲線の角形性が劣化するため、特に(BH)m
axが大きく低下する。
【0056】これに対し、Tiを添加した場合は、α−
Fe相の析出・成長のキネティクス(kinetics)が遅く
なり、析出・成長に時間を要するため、α−Fe相の析
出・成長が完了する前にNd2Fe14B相の析出・成長
が開始すると考えられる。このため、α−Fe相が粗大
化する前にNd2Fe14B相が均一に分散した状態に大
きく成長する。また、TiはBに対する親和性が強く、
鉄基硼化物の中に濃縮されやすいようである。鉄基硼化
物内でTiとBが強く結合することにより、Ti添加は
鉄基硼化物を安定化すると考えられる。
【0057】本発明によれば、Tiの働きによって鉄基
硼化物やα−Fe相などの軟磁性相が微細化されるとも
に、Nd2Fe14B相が均一に分散し、しかもNd2Fe
14B相の体積比率の高いナノコンポジット組織を得るこ
とができる。その結果、Tiを添加しない場合に比べて
保磁力および磁化(残留磁束密度)が増加し、減磁曲線
の角形性が向上する。
【0058】以下、本発明によるTi含有ナノコンポジ
ット磁粉をより詳細に説明する。
【0059】本発明によるTi含有ナノコンポジット磁
粉は、好適には、その組成式が(Fe1-mm
100-x-y-zxyzで表現される。ここで、TはCoお
よびNiからなる群から選択された1種以上の元素、Q
はB(硼素)またはBおよびC(炭素)からなる群から
選択された1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質
的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、
およびHfからなる群から選択された少なくとも1種の
金属元素であり、Tiを必ず含んでいる。
【0060】組成比率を規定するx、y、z、およびm
は、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原
子%、0.1≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5
の関係を満足することが好ましい。
【0061】Ti含有ナノコンポジット磁粉は、希土類
元素の組成比率が全体の10原子%未満であるにもかか
わらず、Tiの添加によって磁化(残留磁束密度)がT
iを添加しない場合と同等のレベルを維持するか、また
は増加し、減磁曲線の角形性が向上するという予想外の
効果が発揮される。
【0062】Ti含有ナノコンポジット磁粉では、軟磁
性相のサイズが微細であるため、各構成相が交換相互作
用によって結合し、硬磁性のR2Fe14B型化合物相以
外に鉄基硼化物やα−Feのような軟磁性相が存在して
いても、合金全体としては優れた減磁曲線の角形性を示
すことが可能になる。
【0063】Ti含有ナノコンポジット磁粉は、好適に
は、R2Fe14B型化合物相の飽和磁化と同等、また
は、それよりも高い飽和磁化を有する鉄基硼化物やα−
Feを含有している。この鉄基硼化物は、例えば、Fe
3B(飽和磁化1.5T)やFe236(飽和磁化1.6
T)である。ここで、R2Fe14Bの飽和磁化はRがN
dのとき約1.6Tであり、α−Feの飽和磁化は2.
1Tである。
【0064】通常、Bの組成比率xが10原子%を超
え、しかも希土類元素Rの組成比率yが5原子%以上8
原子%以下の範囲にある場合、R2Fe233が生成され
るが、このような組成範囲にある原料合金を用いる場合
であっても、本発明のようにTiを添加することによ
り、R2Fe233相の代わりに、R2Fe14B相、およ
び、Fe236相やFe3B相などの鉄基硼化物相を生成
することができる。すなわち、Tiを添加することによ
ってR2Fe14B相の比率を増加できるとともに、生成
された鉄基硼化物相が磁化向上に寄与する。
【0065】本発明者の実験によると、Tiを添加した
場合だけ、V、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類
の金属を添加した場合と異なり、磁化の低下が生じず、
むしろ磁化が向上することが初めてわかった。また、T
iを添加した場合には、前述の他の添加元素と比べ、減
磁曲線の角形性が特に良好なものとなった。
【0066】また、このようなTi添加効果は、Bが1
0原子%を超える場合に顕著に発揮される。以下、図1
を参照しながら、この点を説明する。
【0067】図1は、Tiが添加されていないNd−F
e−B磁石合金の最大磁気エネルギー積(BH)max
B量との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバー
は10原子%以上14原子%以下のNdを含有する試料
のデータを示し、黒いバーは8原子%以上10原子%未
満のNdを含有する試料のデータを示している。これに
対し、図2は、Tiが添加されたNd−Fe−B磁石合
金の最大磁気エネルギー積(BH)maxとBとの関係を
示すグラフである。グラフ中、白いバーは10原子%以
上14原子%以下のNdを含有する試料のデータを示
し、黒いバーは8原子%以上10原子%未満のNdを含
有する試料のデータを示している。
【0068】図1からわかるように、Tiが添加されて
いない試料では、Ndの含有量にかかわらず、Bが10
原子%を超えて多くなるにつれ、最大磁気エネルギー積
(BH)maxが低下している。さらに、この低下の程度
は、Ndの含有量が8〜10原子%の場合により大きく
なる。このような傾向は従来から知られており、Nd 2
Fe14B相を主相とする磁石合金においては、Bの量を
10原子%以下に設定することが好ましいと考えられて
きた。例えば、米国特許4,836,868号は、Bは
5〜9.5原子%の実施例を開示し、更に、Bの好まし
い範囲として4原子%以上12原子%未満、より好まし
い範囲として4原子%以上10原子%以下の範囲を教示
している。
【0069】これに対して、Tiが添加された試料で
は、図2からわかるように、Bが10原子%を超える或
る範囲で最大磁気エネルギー積(BH)maxが向上して
いる。この向上はNdの含有量が8〜10原子%の場合
に特に顕著である。
【0070】このように本発明によれば、Bが10原子
%を超えると磁気特性が劣化するという従来の技術常識
からは予期できない効果をTi添加によって得ることが
可能になる。
【0071】次に、本発明のボンド磁石用磁粉が少なく
とも含むTi含有ナノコンポジット磁粉の製造方法を説
明する。
【0072】上記の組成式(Fe1-mm100-x-y-zx
yz(x、y、z、およびmは、それぞれ、10<x
≦20原子%、6<y<10原子%、0.1≦z≦12
原子%、および0≦m≦0.5)で表される鉄基合金の
溶湯を不活性雰囲気中で冷却し、それによってR2Fe
14B型化合物相を例えば全体の60体積%以上含む急冷
合金を作製する。急冷合金中のR2Fe14B型化合物相
の平均結晶粒径は例えば80nm以下にすることができ
る。この急冷合金に対して、必要に応じて熱処理を行な
えば、急冷合金中に残存していた非晶質を結晶化させる
ことができる。
【0073】メルトスピニング法やストリップキャスト
法などの冷却ロールを用いる実施形態では、上記合金溶
湯を圧力1.3kPa以上の雰囲気中で冷却する。それ
により、合金溶湯は、冷却ロールとの接触によって急冷
されるだけでなく、冷却ロールから離れた後も、雰囲気
ガスによる二次冷却効果を受けて適切に冷却される。
【0074】本発明者の実験によれば、急冷時に雰囲気
ガスの圧力は、1.3kPa以上でしかも常圧(10
1.3kPa)以下に制御することが好ましく、10k
Pa以上90kPa以下の範囲にすることが更に好まし
い。より好ましい範囲は20kPa以上60kPa以下
である。
【0075】上記雰囲気ガス圧力のもとで、ロール表面
周速度の好ましい範囲は4m/秒以上50m/秒以下で
ある。ロール表面周速度が4m/秒より遅くなると、急
冷合金中に含まれるR2Fe14B型化合物相の結晶粒が
粗大化してしまうことになる。その結果、熱処理によっ
てR2Fe14B型化合物相は更に大きくなり、磁気特性
が劣化する可能性がある。
【0076】実験によると、ロール表面周速度の更に好
ましい範囲は5m/秒以上30m/秒以下であり、更に
好ましい範囲は5m/秒以上20m/秒以下である。特
に、ロール表面周速度は13m/秒以上17m/秒以下
の範囲内にあることが最も好ましい。
【0077】なお、本発明では、急冷合金中に粗大なα
−Feをほとんど析出させず、微細なR2Fe14B型化
合物相を有する組織、あるいは、微細なR2Fe14B型
化合物相を有する組織とアモルファス相が混在した組織
が作製される。これにより、熱処理後に鉄基硼化物相な
どの軟磁性相が硬磁性相の間(粒界)に微細に分散した
状態または薄く広がった状態で存在する高性能のナノコ
ンポジット永久磁石を得ることができる。なお、本明細
書における「アモルファス相」とは、原子配列が完全に
無秩序化した部分によってのみ構成される相だけではな
く、結晶化の前駆体や微結晶(サイズ:数nm以下)、
または原子クラスタを部分的に含んでいる相をも含むも
のとする。具体的には、X線回折や透過電子顕微鏡観察
によって結晶構造を明確に同定できない相を広く「アモ
ルファス相」と称することにする。
【0078】従来、本発明が対象とするような組成に類
似する組成(但しTiを含まない)を有する合金溶湯を
冷却してR2Fe14B型化合物相を60体積%以上含む
ような急冷合金を作製しようとすると、α−Feが多く
析出した合金組織が得られるため、その後の結晶化熱処
理でα−Feが粗大化してしまうという問題があった。
α−Feなどの軟磁性相が粗大化すると、磁気特性が大
きく劣化し、到底実用に耐えるボンド磁石は得られな
い。
【0079】特に本発明で用いる原料合金組成のように
Bの含有量が比較的多い場合、Bが持つ高いアモルファ
ス生成能のため、合金溶湯の冷却速度を遅くしても、結
晶相は生成されにくかった。そのため、従来技術によれ
ば、合金溶湯の冷却速度を充分に低下させてR2Fe14
B型化合物相の体積比率が60%を超えるような急冷凝
固合金を作製しようとすると、従来技術ではR2Fe14
B型化合物相以外にα−Feまたはその前駆体が多く析
出してしまい、その後の結晶化熱処理により、α−Fe
相の粗大化が進行し、磁気特性が大きく劣化してしまっ
た。
【0080】以上のことから、従来、ナノコンポジット
磁石磁粉用原料合金の保磁力を増大させるには、合金溶
湯の冷却速度を高め、急冷凝固合金の大部分がアモルフ
ァス相によって占められるような状態にした後、そのア
モルファス相から結晶化熱処理により均一に微細化され
た組織を形成することが好ましいとの常識が存在してい
た。これは、微細な結晶相が分散した合金組織を持つナ
ノコンポジットを得るには、制御しやすい熱処理工程で
アモルファス相から結晶化を行なうべきと考えられてい
たからである。
【0081】このため、アモルファス生成能に優れたL
aを原料合金に添加し、その原料合金の溶湯を急冷する
ことによってアモルファス相を主相とする急冷凝固合金
を作製した後、結晶化熱処理でNd2Fe14B相および
α−Fe相の両方を析出・成長させ、いずれの相も数十
nm程度の微細なものとする技術が報告されている(W.
C.Chan, et.al. "THE EFFECTS OF REFRACTORY METALS O
N THE MAGNETIC PROPERTIES OF α-Fe/R2Fe14B-TYPE NA
NOCOMPOSITES", IEEE, Trans. Magn. No. 5, INTERMAG.
99, Kyongiu, Korea pp.3265-3267, 1999)。なお、こ
の論文は、Tiなどの高融点金属元素の微量添加(2原
子%)が磁気特性を向上させることと、希土類元素であ
るNdの組成比率を9.5原子%よりも11.0原子%
に増加させることがNd2Fe14B相およびα−Fe相
の両方を微細化する上で好ましいことを教示している。
上記高融点金属の添加は、硼化物(R2Fe233やFe
3B)の生成を抑制し、Nd2Fe14B相およびα−Fe
相の2相のみからなる磁石粉末用原料合金を作製するた
めに行なわれている。
【0082】これに対し、本発明では、添加Tiの働き
により、急冷凝固工程でα−Fe相の析出を抑え、更に
は、結晶化熱処理工程において鉄基硼化物や軟磁性相を
生成させ且つその粗大化を抑制することにより、優れた
磁気特性を有する磁粉を得ることができる。
【0083】本発明によれば、希土類元素量が比較的少
ない(例えば9原子%以下)原料合金を用いながら、磁
化(残留磁束密度)および保磁力が高く、減磁曲線の角
形性にも優れた磁石粉末を製造することができる。
【0084】前述のように、本発明によるTi含有ナノ
コンポジット磁粉用原料合金の保磁力の増加は、Nd2
Fe14B相を冷却工程で優先的に析出・成長させ、それ
によってNd2Fe14B相の体積比率を増加させなが
ら、しかも軟磁性相の粗大化を抑制したことによって実
現する。また、磁化の増加は、Tiの働きにより、急冷
凝固合金中に存在するBリッチな非磁性アモルファス相
から強磁性鉄基硼化物などの硼化物相を生成すること
で、結晶化熱処理後の強磁性相の体積比率を増加させた
ために得られたものと考えられる。
【0085】上述のようにして得られた原料合金に対し
ては、必要に応じて、結晶化熱処理を行ない、R2Fe
14B型化合物相、硼化物相、およびα−Fe相を含む3
種類以上の結晶相を含有する組織を形成することが好ま
しい。この組織中、R2Fe1 4B型化合物相の平均結晶
粒径は10nm以上200nm以下、硼化物相およびα
−Fe相の平均結晶粒径は1nm以上100nm以下と
なるように熱処理温度および時間を調節する。R2Fe
14B型化合物相の平均結晶粒径は通常30nm以上とな
るが、条件によっては50nm以上になる。硼化物相や
α−Fe相などの軟磁性相の平均結晶粒径は30nm以
下となることが多く、典型的には数nmの大きさにしか
ならない。
【0086】最終的な磁石粉末用原料合金におけるR2
Fe14B型化合物相の平均結晶粒径はα−Fe相の平均
結晶粒径よりも大きい。図3は、この原料合金の金属組
織を模式的に示している。図3からわかるように、相対
的に大きなR2Fe14B型化合物相の間に微細な軟磁性
相が分散して存在している。このようにR2Fe14B型
化合物相の平均結晶粒径が比較的大きくなっても、軟磁
性相の結晶成長は抑制されており平均結晶粒径が充分に
小さいため、各構成相が交換相互作用によって磁気的に
結合し、その結果、軟磁性相の磁化方向が硬磁性相によ
って拘束されるので、合金全体としては優れた減磁曲線
の角形性を示すことが可能になる。
【0087】上述の製造方法において硼化物が生成され
やすい理由は、R2Fe14B型化合物相が大半を占める
凝固合金を作製すると、急冷合金中に存在するアモルフ
ァス相がどうしてもBを過剰に含むこととなるため、こ
のBが結晶化熱処理で他の元素と結合して析出・成長し
やすくなるためであると考えられる。しかし、このBと
他の元素の結合により、磁化の低い化合物が生成される
と、合金全体として磁化が低下してしまう。
【0088】本発明者の実験によれば、Tiを添加した
場合だけ、V、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類
の金属を添加した場合と異なり、磁化の低下が生じず、
むしろ磁化が向上することがわかった。また、M(特に
Ti)を添加した場合には、前述の他の添加元素と比
べ、減磁曲線の角形性が特に良好なものとなった。これ
らのことから、磁化の低い硼化物の生成を抑制する上で
Tiが特に重要な働きをしていると考えられる。特に、
本発明で用いる原料合金の組成範囲のうち、BおよびT
iが比較的に少ない場合は、熱処理によって強磁性を有
する鉄基硼化物相が析出しやすい。この場合、非磁性の
アモルファス相中に含まれるBが鉄基硼化物中に取り込
まれる結果、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモルフ
ァス相の体積比率が減少し、強磁性の結晶相が増加する
ため、残留磁束密度Brが向上すると考えられる。
【0089】以下、図4を参照しながら、この点をより
詳細に説明する。
【0090】図4は、Tiを添加した場合、および、T
iに代えてNbなどを添加した場合における急冷凝固合
金の結晶化過程における微細組織の変化を模式的に示す
図である。Tiを添加した場合は、α−Feが析出する
温度よりも高い温度領域において各構成相の粒成長が抑
制されており、優れた硬磁気特性が維持される。これに
対し、Nb、V、Crなどの金属元素を添加した場合
は、α−Feが析出するような比較的高い温度領域で各
構成相の粒成長が著しく進行し、各構成相間に働くの交
換相互作用が弱まってしまう結果、減磁曲線の角形性が
大きく低下する。
【0091】まず、Nb、Mo、Wを添加した場合を説
明する。この場合、α−Feが析出しない比較的低い温
度領域で熱処理を行なえば、減磁曲線の角形性に優れた
良好な硬磁気特性を得ることが可能である。しかし、こ
のような温度で熱処理を行なった合金では、R2Fe14
B型微細結晶相が非磁性のアモルファス相中に分散して
存在していると推定され、ナノコンポジットの構成は形
成されていないため、高い磁化が期待できない。また、
更に高い温度で熱処理を行なうと、アモルファス相中か
らα−Fe相が析出する。このα−Fe相は、Tiを添
加した場合と異なり、析出後、急激に成長し、粗大化す
る。このため、各構成相間の交換結合が弱くなり、減磁
曲線の角形性が大きく劣化してしまうことになる。
【0092】一方、Tiを添加した場合は、熱処理によ
り、R2Fe14B型結晶相、鉄基硼化物相、α−Fe
相、およびアモルファス相を含むナノコンポジット構造
が得られ、各構成相が均一に微細化する。また、Tiを
添加した場合は、α−Fe相の成長が抑制される。
【0093】VやCrを添加した場合は、これらの添加
金属がFeに固溶し、Feと反強磁性的に結合するた
め、磁化が大きく低下してしまう。また、VやCrを添
加した場合、熱処理に伴う粒成長が充分に抑制されず、
減磁曲線の角形性が劣化する。
【0094】このようにTiを添加した場合のみ、α−
Fe相の粗大化を適切に抑制し、強磁性の鉄基硼化物を
形成することが可能になる。更に、Tiは、液体急冷時
にFe初晶(後にα−Feに変態するγ−Fe)の析出
を遅らせ、過冷却液体の生成を容易にする元素としてB
やCとともに重要な働きをするため、合金溶湯を急冷す
る際の冷却速度を102℃/秒〜105℃/秒程度の比較
的低い値にしても、α−Feを大きく析出させることな
く、R2Fe14B型結晶相とアモルファス相とが混在す
る急冷合金を作製することが可能になる。このことは、
種々の液体急冷法の中から、特に量産に適したストリッ
プキャスト法の採用を可能にするため、低コスト化にと
って極めて重要である。
【0095】合金溶湯を急冷して原料合金を得る方法と
して、ノズルやオリフィスによる溶湯の流量制御を行な
わずに溶湯をタンディッシュから直接に冷却ロール上に
注ぐストリップキャスト法は生産性が高く、製造コスト
の低い方法である。R−Fe−B系希土類合金の溶湯を
ストリップキャスト法によっても達成可能な冷却速度範
囲でアモルファス化するには、通常、Bを10原子%以
上添加する必要がある。従来の技術においてBを多く添
加した場合は、急冷合金に対して結晶化熱処理を行った
後、非性磁性のアモルファス相の他、粗大なα−Feや
軟磁性相であるNd2Fe233相が析出するため、均質
な微細結晶組織が得られない。その結果、強磁性相の体
積比率が低下し、磁化の低下およびNd2Fe14B相の
存在比率の低下により、保磁力の大幅な低下を招来す
る。しかしながら、本発明のようにTiを添加すると、
上述したようにα−Fe相の粗大化が抑制されるなどの
現象が起こり、予想外に磁化が向上する。
【0096】なお、急冷合金がアモルファス相を多く含
む場合よりも、Nd2Fe14B相を多く含む状態にある
方が、最終的な磁気特性は高いものが得やすい。急冷合
金中に占めるNd2Fe14B相の体積比率は、全体の半
分以上、具体的には60体積%以上になることが好まし
い。この60体積%という値は、メスバウアースペクト
ル分光法で測定されたものである。
【0097】次に、ロール法の一種であるメルトスピニ
ング法を用いた実施形態をさらに具体的に説明する。
【0098】[液体急冷装置]本実施形態では、例え
ば、図5に示す急冷装置を用いて原料合金を製造する。
酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の酸化
を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行
する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等
の希ガスや窒素を用いることができる。なお、窒素は希
土類元素Rと比較的に反応しやすいため、ヘリウムまた
はアルゴンなどの希ガスを用いることが好ましい。
【0099】図5の装置は、真空または不活性ガス雰囲
気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金
の溶解室1および急冷室2を備えている。図5(a)は
全体構成図であり、図5(b)は、一部の拡大図であ
る。
【0100】図5(a)に示されるように、溶解室1
は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料2
0を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5
を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原
料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8と
を備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯
え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置
(不図示)を有している。
【0101】急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯2
1を急冷凝固するための回転冷却ロール7を備えてい
る。
【0102】この装置においては、溶解室1および急冷
室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御され
る。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、および
8bとガス排気口1a、2a、および8aとが装置の適
切な箇所に設けられている。特にガス排気口2aは、急
冷室2内の絶対圧を30kPa〜常圧(大気圧)の範囲
内に制御するため、ポンプに接続されている。
【0103】溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介
して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21
は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱
される。
【0104】貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と
急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21
を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出
湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0m
mである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出
湯ノズル5内を流れにくくなるが、本実施形態では急冷
室2を溶解室1よりも低い圧力状態に保持するため、溶
解室1と急冷室2との間に圧力差が形成され、溶湯21
の出湯がスムーズに実行される。
【0105】冷却ロール7は、熱伝導度の点からAl合
金、銅合金、炭素鋼、真鍮、W、Mo、青銅から形成さ
れ得る。ただし、機械的強度および経済性の観点から、
Cu、Fe、またはCuやFeを含む合金から形成する
ことが好ましい。CuやFe以外の材料で冷却ロールを
作製すると、急冷合金の冷却ロールに対する剥離性が悪
くなるため、急冷合金がロールに巻き付くおそれがあり
好ましくない。冷却ロール7の直径は例えば300〜5
00mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水
冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じ
て算出し、調節される。
【0106】図5に示す装置によれば、例えば合計10
kgの原料合金を10〜20分間で急冷凝固させること
ができる。こうして形成した急冷合金は、例えば、厚
さ:10〜300μm、幅:2mm〜3mmの合金薄帯
(合金リボン)22となる。
【0107】このとき、合金薄帯の厚さが50μm以上
300μm以下となるように調整し、次に、必要に応じ
て、熱処理によって急冷凝固合金を結晶化させた後、こ
の合金を粉砕することによって、粉末粒子全体のアスペ
クト比(短軸方向サイズ/長軸方向サイズ)が0.4以
上1.0以下の粉末を得ることができる。このように合
金薄帯の厚さを調整し、それを粉砕することによって、
例えば、粒径が215μm以下の粒子のほとんど(磁粉
全体の90質量%以上)について、アスペクト比を0.
4以上1.0以下とすることができる。粉砕方法につい
ては後述する。
【0108】[液体急冷法]まず、前述の組成式で表現
される原料合金の溶湯21を作製し、図5の溶解室1の
貯湯容器4に貯える。次に、この溶湯21は出湯ノズル
5から減圧Ar雰囲気中の水冷ロール7上に出湯され、
冷却ロール7との接触によって急冷され、凝固する。急
冷凝固方法としては、冷却速度を高精度に制御できる方
法を用いる必要がある。
【0109】本実施形態の場合、溶湯21の冷却凝固に
際して、冷却速度を1×102〜1×108℃/秒とする
ことが好ましく、1×104〜1×106℃/秒とするこ
とが更に好ましい。
【0110】合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷
却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面に合
金が接触してから離れるまでの時間に相当し、その間
に、合金の温度は低下し、過冷却液体状態になる。その
後、過冷却状態の合金は冷却ロール7から離れ、不活性
雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に
雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は更に低下す
る。本実施形態では、雰囲気ガスの圧力を30kPa〜
常圧の範囲内に設定しているため、雰囲気ガスによる抜
熱効果が強まり、合金中にNd2Fe14B型化合物を均
一微細に析出・成長させることができる。なお、適切な
量のTiなどの元素Mを原料合金中に添加していない場
合には、上述したような冷却過程を経た急冷合金中に
は、α−Feが優先的に析出・成長するため、最終的な
磁気特性が劣化してしまうことになる。
【0111】本実施形態では、ロール表面速度を10m
/秒以上30m/秒以下の範囲内に調節し、かつ、雰囲
気ガスによる二次冷却効果を高めるために雰囲気ガス圧
力を30kPa以上にすることによって、平均結晶粒径
80nm以下の微細なR2Fe14B型化合物相を60体
積%以上含む急冷合金を作製している。
【0112】なお、本発明によるTi含有ナノコンポジ
ット磁粉を作製するための液体急冷法としては、例示し
たノズルやオリフィスによって冷却ロールの表面に供給
する合金溶湯の流量を制御するメルトスピニング法に限
られず、ノズルやオリフィスを用いないストリップキャ
スト法を用いることが出来る。また、単ロール法以外
に、2つの冷却ロールを用いる双ロール法を用いてもよ
い。
【0113】上記急冷法の中でも、ストリップキャスト
法の冷却速度は比較的低く、102〜105℃/秒であ
る。本実施形態では、適切な量のTiを合金に添加する
ことにより、ストリップキャスト法による場合でもFe
初晶を含まない組織が大半を占める急冷合金を形成する
ことができる。ストリップキャスト法は、工程費用が他
の液体急冷法の半分程度以下であるため、メルトスピニ
ング法に比べて大量の急冷合金を作製する場合に有効で
あり、量産化に適した技術である。原料合金に対して元
素Mを添加しない場合や、元素Tiの代わりにCr、
V、Mn、Mo、Ta、および/またはWを添加した場
合には、ストリップキャスト法を用いて急冷合金を形成
しても、Fe初晶を多く含む金属組織が生成するため、
所望の金属組織を形成することができない。
【0114】また、メルトスピンニング法やストリップ
キャスト法においてロール表面周速度を調整することに
よって、合金の厚さを制御することができる。ロール表
面周速度を調整することによって、厚さが50μm以上
300μm以下の合金を形成すると、この合金は、上記
の微細な組織から構成されているため、粉砕工程によっ
て種々の方位に破断しやすい。その結果、等軸的な形状
の(アスペクト比が1に近い)粉末粒子が得られやす
い。すなわち、一定の方位に沿って平たく伸びた粉末粒
子が得られるのではなく、等軸的な形状、すなわち球形
に近い形状の粉末粒子が形成される。
【0115】これに対して、ロール表面周速度を速くし
て合金の厚さを50μmより薄くすると、従来の急冷磁
石のように、合金の金属組織がロール接触面に垂直な方
位に揃う傾向がある。そのため、その方位に沿って破断
しやすくなり、粉砕によって得られた粉末粒子は、合金
の表面に平行な方向に沿って平たく伸びた形状となりや
すく、アスペクト比が0.3未満の粉末粒子が生成され
やすい。
【0116】図6(a)は、本実施形態による磁石粉末
の製造方法の粉砕工程前における合金10と、粉砕工程
後の粉末粒子11を模式的に示している。一方、図6
(b)は、従来の急冷磁石粉末の製造方法の粉砕工程前
における合金薄帯12と、粉砕工程後の粉末粒子13を
模式的に示している。
【0117】図6(a)に示されるように、本実施形態
の場合は、粉砕前の合金10が結晶粒径の小さな等軸晶
によって構成されているため、ランダムな方位に沿って
破断しやすく、等軸的な粉末粒子11が生成されやす
い。これに対し、従来の急冷合金の場合は、図6(b)
に示されるように、合金薄帯12の表面に対してほぼ垂
直な方向に破断しやすいため、粒子13の形状は扁平な
ものとなる。
【0118】このように、Ti含有ナノコンポジットの
急冷合金はランダムな方位に沿って破断しやすいので、
ロール表面周速度を制御し、合金薄帯の厚さを調整する
ことによって、アスペクト比が0.3以上、好ましくは
0.4以上1.0以下の粉末を容易に得ることができ
る。
【0119】[熱処理]本実施形態では、熱処理をアル
ゴン雰囲気中で実行する。好ましくは、昇温速度を0.
08℃/秒〜20℃/秒として、550℃以上850℃
以下の温度で30秒以上20分以下の時間保持した後、
室温まで冷却する。この熱処理によって、アモルファス
相中に準安定相の微細結晶が析出・成長し、ナノコンポ
ジット組織構造が形成される。本実施形態によれば、熱
処理の開始時点で既に微細なNd 2Fe14B型結晶相が
全体の60体積%以上存在しているため、α−Fe相や
他の結晶相の粗大化が抑制され、Nd2Fe14B型結晶
相以外の各構成相(軟磁性相)が均一に微細化される。
【0120】なお、熱処理温度が550℃を下回ると、
熱処理後もアモルファス相が多く残存し、急冷条件によ
っては、保磁力が充分なレベルに達しない場合がある。
また、熱処理温度が850℃を超えると、各構成相の粒
成長が著しく、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の
角形性が劣化する。このため、熱処理温度は550℃以
上850℃以下が好ましいが、より好ましい熱処理温度
の範囲は570℃以上820℃以下である。
【0121】本実施形態では、雰囲気ガスによる二次冷
却効果のため、急冷合金中に充分な量のNd2Fe14
型化合物相が均一かつ微細に析出している。このため、
急冷合金に対して敢えて結晶化熱処理を行なわない場合
でも、急冷凝固合金自体が充分な磁気特性を発揮し得
る。そのため、結晶化熱処理は必須の工程ではないが、
これを行なうことが磁気特性向上のためには好ましい。
なお、従来に比較して低い温度の熱処理でも充分に磁気
特性を向上させることが可能である。
【0122】熱処理雰囲気は、合金の酸化を防止するた
め、不活性ガス雰囲気が好ましい。0.1kPa以下の
真空中で熱処理を行っても良い。
【0123】熱処理前の急冷合金中には、R2Fe14
型化合物相およびアモルファス相以外に、Fe3B相、
Fe236、およびR2Fe233相等の準安定相が含ま
れていても良い。その場合、本発明におけるTi添加の
効果により、熱処理で、R2Fe233相は消失し、R2
Fe14B相の飽和磁化と同等、または、それよりも高い
飽和磁化を示す鉄基硼化物(例えばFe236)やα−
Feを結晶成長させることができる。
【0124】本発明の場合、最終的にα−Feのような
軟磁性相が存在していても、Tiの効果によってその粒
成長が抑制されて、組織が微細化されている。その結
果、軟磁性相と硬磁性相とが交換相互作用によって磁気
的に結合するため、優れた磁気特性が発揮される。
【0125】熱処理後におけるR2Fe14B型化合物相
の平均結晶粒径は、単磁区結晶粒径である300nm以
下となる必要があり、10nm以上200nm以下、更
には20nm以上150nm以下であることが好まし
く、20nm以上100nm以下であることが更に好ま
しい。これに対し、硼化物相やα−Fe相の平均結晶粒
径が100nmを超えると、各構成相間に働く交換相互
作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣化するため、(B
H)maxが低下してしまう。これらの平均結晶粒径が1
nmを下回ると、高い保磁力が得られなくなる。以上の
ことから、硼化物相やα−Fe相などの軟磁性相の平均
結晶粒径は1nm以上100nm以下、好ましくは50
nm以下であることが好ましく、30nm以下であるこ
とが更に好ましい。
【0126】なお、熱処理前に急冷合金の薄帯を粗く切
断または粗粉砕しておいてもよい。熱処理後、得られた
合金粗粉末(または薄帯)を粉砕し、磁粉を作製するこ
とによって、ボンド磁石用磁粉を製造することができ
る。
【0127】[粉砕工程の説明]ボンド磁石用Ti含有
ナノコンポジット磁粉には、最大粒径が300μm以下
のものが用いられる。特に小型磁石における脱粒などを
抑制するために、Ti含有ナノコンポジット磁粉の最大
粒径は250μm以下であることが好ましく、215μ
m以下であることがさらに好ましい。圧縮成形に用いる
場合、平均粒径は50μmから200μmの範囲にある
ことが好ましく、53μm超125μm以下の範囲内に
あることがさらに好ましい。
【0128】また、上述したように、本発明のTi含有
ナノコンポジット磁粉のうち少なくとも粒径が106μ
mを超える粒子のアスペクト比は、0.3以上1.0以
下であり、好ましくは0.4以上である。
【0129】上述したように合金薄帯の厚さと粉砕条件
(平均粒径)とを適宜設定することによって、Ti含有
ナノコンポジット磁粉のアスペクト比および平均粒径を
上記の所望の範囲内におさめることができる。アスペク
ト比が0.3以上1.0以下で平均粒径が50μm以上
200μm以下のTi含有ナノコンポジット磁粉は、厚
さが50μm以上300μm以下の合金薄帯を粉砕する
ことによって得られる。
【0130】特に、小型磁石の成形に好適に用いられ
る、アスペクト比が0.4以上1.0以下で平均粒径が
53μm以上125μm以下のTi含有ナノコンポジッ
ト磁粉は、例えば図7に示すようなピンディスクミル装
置などを用いて、厚さが50μm以上120μm以下の
合金薄帯を粉砕することによって作製できる。
【0131】図7は、本実施形態に使用するピンミル装
置の一例を示す断面図である。このピンミル装置40は
ピンディスクミルであり、片面に複数のピン11が配列
されたディスク(円盤)42aおよび42bを2枚対向
させ、互いのピン41が衝突しないように配置されてい
る。少なくとも一方の円盤42aおよび/または42b
が高速で回転する。図7の例では、円盤42aが軸43
の周りを回転する。回転する側の円盤42aの正面図を
図8に示す。図8の円盤42a上では、ピン41が複数
の同心円を描くように配列されている。固定されている
円盤42bでも、ピン41は同心円を描くように配列さ
れている。
【0132】ピンディスクミルによって粉砕されるべき
被粉砕物は、投入口44から2枚の円盤が対向している
隙間の空間内に送り込まれ、回転する円盤42a上のピ
ン41および停止している円盤42b上のピン41に衝
突し、その衝撃によって粉砕されることになる。粉砕に
よって生成された粉末は矢印Aの方向に飛ばされ、最終
的には1箇所に集められる。
【0133】本実施形態のピンミル装置40において、
ピン41を支持する円盤42aおよび42bはステンレ
ス鋼などから形成されているが、ピン41は炭素鋼、セ
ラミックスおよびタングステンカーバイド(WC)焼結
体等の超硬合金材料から形成されている。超硬合金材料
としては、WC焼結体以外にも、TiC、MoC、Nb
C、TaC、Cr32等を好適に用いることができる。
これらの超硬合金は、IVa、Va、およびVIa族に
属する金属の炭化物粉末をFe、Co、Ni、Mo、C
u、Pb、もしくはSnまたはこれらの合金を用いて結
合した焼結体である。
【0134】本実施形態で好適に用いられるピンミル装
置は、ディスク上にピンが配列されたピンディスクミル
に限定されず、例えば、円筒上にピンが配列された装置
であってもよい。ピンミル装置を用いると、正規分布に
近い粒度分布を有する粉末を得ることができ、平均粒径
の調整が容易で、且つ、量産性に優れるという利点があ
る。
【0135】このようにして作製されたTi含有ナノコ
ンポジット磁粉を必要に応じて分級・混合することによ
って、上述した粒度分布を有するTi含有ナノコンポジ
ット磁粉が得られる。
【0136】[組成の限定理由]本発明によるTi含有
ナノコンポジット磁粉は、組成式(Fe1-mm100-x-
y-zxyzで表される(TはCoおよびNiからなる
群から選択された1種以上の元素、QはBまたはBおよ
びCからなる群から選択された1種以上の元素、RはL
aおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元
素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択さ
れた金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種
の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、それぞ
れ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.
1≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で表され
る組成を有する。
【0137】Qは、その全量がB(硼素)から構成され
るか、または、BおよびC(炭素)の組み合わせから構
成される。Qの総量に対するCの原子比率割合は0.2
5以下であることが好ましい。
【0138】Qの組成比率xが10原子%以下になる
と、急冷時の冷却速度が102℃/秒〜105℃/秒程度
と比較的低い場合、R2Fe14B型結晶相とアモルファ
ス相とが混在する急冷合金を作製することが困難にな
り、その後に熱処理を施しても600kA/m未満のH
cJしか得られない。そのため、メルトスピニング法やス
トリップキャスト法でロール周速度を比較的遅くしてア
スペクト比が0.4〜1.0でかつ優れた磁気特性を有
する磁粉を作製することが困難になる。さらに、液体急
冷法の中でも工程費用が比較的安いストリップキャスト
法やアトマイズ法を採用できなくなり、磁粉の価格が上
昇してしまうことになる。一方、Qの組成比率xが20
原子%を超えると、結晶化熱処理後も残存するアモルフ
ァス相の体積比率が増し、同時に、構成相中で最も高い
飽和磁化を有するα−Feの存在比率が減少するため、
残留磁束密度Brが低下してしまう。以上のことから、
Qの組成比率xは10原子%を超え、20原子%以下と
なるように設定することが好ましい。より好ましい組成
比率xの範囲は10原子%以上17原子%以下である。
さらに、鉄基硼化物相を効率よく析出させBrを向上さ
せることが可能なことから、xの範囲を10原子%以上
14原子%以下にすることがさらに好ましい。
【0139】Rは、希土類元素(Yを含む)の群から選
択された1種以上の元素である。LaまたはCeが存在
すると、保磁力および角形性が劣化するため、Laおよ
びCeを実質的に含まないことが好ましい。ただし、微
量のLaやCe(0.5原子%以下)が不可避的に混入
する不純物として存在する場合は、磁気特性上、問題な
い。したがって、0.5原子%以下のLaやCeを含有
する場合は、LaやCeを実質的に含まないといえる。
【0140】Rは、より具体的には、PrまたはNdを
必須元素として含むことが好ましく、その必須元素の一
部をDyおよび/またはTbで置換してもよい。Rの組
成比率yが全体の6原子%未満になると、保磁力の発現
に必要なR2Fe14B型結晶構造を有する化合物相が充
分に析出せず、600kA/m以上の保磁力HcJを得る
ことができなくなる。また、Rの組成比率yが10原子
%以上になると、強磁性を有する鉄基硼化物やα−Fe
の存在量が低下する。と同時に、磁粉の耐食性や耐酸化
性が低下し、本発明のボンド磁石の効果が得られにくく
なる。故に、希土類元素Rの組成比率yは6原子%以上
10原子%未満の範囲、例えば、6原子%以上9.5原
子%以下に調節することが好ましい。より好ましいRの
範囲は7原子%以上9.3原子%以下であり、さらに好
ましいRの範囲は8原子%以上9.0原子%以下であ
る。
【0141】添加金属元素Mは、Tiを必須としてお
り、更にZrおよび/またはHfを含んでいても良い。
Tiは、前述した効果を得るためには必須の元素であ
り、保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの向上および減
磁曲線の角形性の改善に寄与し、最大エネルギー積(B
H)maxを向上させる。
【0142】金属元素Mの組成比率zが全体の0.5原
子%未満になると、Ti添加の効果が充分に発現しな
い。一方、金属元素Mの組成比率zが全体の12原子%
を超えると、結晶化熱処理後も残存するアモルファス相
の体積比率が増すため、残留磁束密度Brの低下を招来
しやすい。以上のことから、金属元素Mの組成比率zは
0.5原子%以上12原子%以下の範囲とすることが好
ましい。より好ましいzの範囲の下限は1.0原子%で
あり、より好ましいzの範囲の上限は8.0原子%であ
る。更に好ましいzの範囲の上限は6.0原子%であ
る。
【0143】また、Qの組成比率xが高いほど、Q(例
えばB)を含むアモルファス相が形成されやすいので、
金属元素Mの組成比率zを高くすることが好ましい。こ
れにより磁化の高い軟磁性鉄基硼化物を析出させたり、
生成した鉄基硼化物の粒成長が抑制できる。具体的に
は、z/x≧0.1を満足させるように組成比率を調節
することが好ましく、z/x≧0.15を満足させるこ
とがより好ましい。
【0144】なお、Tiは特に好ましい働きをするた
め、金属元素MはTiを必ず含む。この場合、金属元素
M全体に対するTiの割合(原子比率)は、70%以上
であることが好ましく、90%以上であることが更に好
ましい。
【0145】Feは、上述の元素の含有残余を占める
が、Feの一部をCoおよびNiの一種または二種の遷
移金属元素(T)で置換しても所望の硬磁気特性を得る
ことができる。Feに対するTの置換量が50%(すな
わちmが0.5)を超えると、0.7T以上の高い残留
磁束密度Brが得られない。このため、置換量は0%以
上50%以下(すなわち0≦m≦0.5)の範囲に限定
することが好ましい。なお、Feの一部をCoで置換す
ることによって、減磁曲線の角形性が向上するととも
に、R2Fe14B相のキュリー温度が上昇するため、耐
熱性が向上する。CoによるFe置換量の好ましい範囲
は0.5%以上40%以下である。また、Al、Si、
Cu、Ga、Ag、Pt、Au、Pb、V、Cr、M
n、Nb、Mo、Wを少量含んでいても磁気特性を劣化
させるものではないが、2原子%以下の含有量とするこ
とが好ましい。
【0146】〔コンパウンドおよび磁石体の製造方法の
説明〕上述のようにして得られたTi含有ナノコンポジ
ット磁粉は、樹脂等の結合剤と混合され、ボンド磁石用
コンパウンドが製造される。
【0147】圧縮成形用のコンパウンドは、例えば、溶
剤で希釈した熱硬化性樹脂と磁粉とを混合し、溶剤を除
去することによって製造される。得られた磁粉と樹脂と
の混合物は、必要に応じて、所定の粒度となるように解
砕される。解砕の条件などを調整することによって、顆
粒状としてもよい。また、粉砕に得られた粉末材料を造
粒してもよい。
【0148】Ti含有ナノコンポジット磁粉の耐食性を
向上するために、磁粉の表面に予め化成処理等の公知の
表面処理を施しても良い。さらに、磁粉の耐食性や樹脂
との濡れ性、コンパウンドの成形性をさらに改善するた
めに、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジル
コネート系などの各種カップリング剤、コロイダルシリ
カなどセラミックス超微粒子、ステアリン酸亜鉛やステ
アリン酸カルシウムなどの潤滑剤を使用してもよく、熱
安定剤、難燃剤、可塑剤などを使用してもよい。
【0149】磁石用コンパウンドは用途に応じて、樹脂
の種類および磁粉の配合比率が適宜決められる。樹脂と
しては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂やメラミ
ン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド(ナイロン6
6、ナイロン6、ナイロン12等)や、ポリエチレン、
ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリ
フェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂や、ゴムや
エラストマ、さらには、これらの変性体、共重合体、混
合物などを用いることができる。
【0150】本発明によるTi含有ナノコンポジット磁
粉を用いることによって、従来よりも更に高い(例えば
80%を超える)磁粉充填率を実現することができ、最
大で90%程度まで充填することができる。但し、充填
率を上げすぎると磁粉同士を十分に結合するための樹脂
が不足し、ボンド磁石の機械的な強度の低下や、使用時
の磁粉の脱落が生じる恐れがあるので、磁粉充填率は、
85%以下が好ましい。また、圧縮成形においては本発
明によるTi含有ナノコンポジット磁粉を用いることに
よって、成形体の表面に形成される空隙(ボイド)の量
を減少でき、表面に形成する樹脂被膜への悪影響を抑制
できるという利点が得られる。これらの成形方法には、
適宜、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム等が用いられ
る。
【0151】〔ボンド磁石の表面処理〕成形上がりのボ
ンド磁石に表面処理を施すことによって、ボンド磁石の
耐食性および耐熱性を改善できる。本発明によるコンパ
ウンドは従来のコンパウンドよりも成形性が優れている
ので、従来と同等もしくはそれ以上の充填率を確保しつ
つ、空隙率(ボイド率)の低いのボンド磁石が得られ
る。従って、多くの空隙が存在する成形上がりのボンド
磁石に表面処理を施すことによって付随して起こる腐食
の問題の発生を抑制・防止することができる。また、ボ
ンド磁石の耐食性が高いので、表面処理を簡略化するこ
とによって低コスト化が図れる。
【0152】また、成形上がりのボンド磁石が十分な耐
食性を有している場合においても、例えば、モータなど
に使用される圧縮成形されたリング磁石など、組み立て
工程におけるボンド磁石の機械的な破壊を防止したり、
ボンド磁石の表面から脱落した磁粉が飛散することによ
るモータの動作への悪影響を防止することが必要な場合
がある。このような場合には、ボンド磁石の機械強度の
向上や磁粉の脱落防止のために種々の表面処理を施すこ
とが好ましい。
【0153】このような場合においても、保護膜を薄く
できるので、保護膜を含むボンド磁石全体の寸法精度を
向上したり、磁石の有効体積を増加することよって、部
品を小型化することができるという利点も得られる。ま
た、モータに組み込んだ場合には、ロータとステータ間
の磁気的なギャップを小さくできるのでモータ特性を向
上することが可能になる。
【0154】表面処理方法としては、公知の方法を広く
用いることができる。表面処理によって形成される保護
膜は、無機材料(金属、セラミック、無機高分子など)
でも有機材料(低分子、高分子など)や無機・有機複合
材料を用いることもできる。これらの保護膜は、用いる
材料に応じて、種々の方法で形成することがきでる。
【0155】例えば、金属膜は、めっき法(電解めっき
および無電解めっき法など)や種々の薄膜堆積技術(真
空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、イオ
ンビーム法など)さらに、SnやZnなどの低融点の溶
融金属に浸漬し冷却する方法などを採用することができ
る。
【0156】セラミックス材料の膜は、金属膜と同様に
薄膜堆積技術を用いて形成しても良いし、ゾルゲル法を
利用する場合の処理液やアルカリ珪酸塩水溶液などを使
用し、ディッピング法やスプレー法などを用いて形成し
ても良い。また、電気泳動電着法などを採用しても良
い。
【0157】樹脂膜は、有機高分子材料を用いて、電着
塗装、スプレー塗装、静電塗装、ディップ塗装、ロール
コート法などの種々の方法を用いて形成できる。また、
同様の方法で、無機高分子材料(例えばシリコーン樹
脂)の膜を形成することもできる。
【0158】また、カップリング剤(シラン系、チタネ
ート系、アルミネート系、ジルコネート系など)やベン
ゾトリアゾールなどの低分子量有機材料を用いて保護膜
を形成することもできる。これらの低分子有機材料は、
溶液としてボンド磁石に種々の方法で付与することがで
きる。
【0159】また、種々の方法で微粒子を被着(堆積)
することによって保護膜を形成することもできる。微粒
子としては、Al、Zn、Ni、Cu、Fe,Co,S
n,Pb,Au,Agなどの金属微粒子、SiO2、A
23、ZrO2、MgO、TiO2、ムライト、チタン
酸塩、けい酸塩などの金属酸化物および複合金属酸化物
(ガラスを含む)、TiN、AlN,BN、TiC、T
iCN、TiB2などのセラミック微粒子、ポリテトラ
フルオロエチレン、アクリル樹脂などの樹脂微粒子、カ
ーボンブラックやMoS2などが挙げられる。
【0160】なお、これらの微粒子をボンド磁石の表面
に固定するために、必要に応じてバインダを用いてもよ
い。バインダの材料としては、クロム酸やモリブデン
酸、リン酸およびこれらの塩などの無機材料、カップリ
ング剤などの低分子量有機化合物、有機樹脂などの高分
子化合物などを用いることができる。
【0161】ボンド磁石の表面に微粒子を固定する方法
としては、予め微粒子とバインダを混合したものをスプ
レー法やディッピング法などの塗布法を用いてもよい
し、ボンド磁石の表面に予め形成したバインダ層に微粒
子を機械的な力を利用して付着させても良い。また、必
要に応じて、加熱処理を施し、微粒子をさらに強固にボ
ンド磁石表面に固着させても良い。
【0162】保護膜は成形上がりのボンド磁石に新たな
膜として形成するだけでなく、ボンド磁石の表面を改質
することによって形成してもよい。ボンド磁石表面にお
ける磁粉との反応を利用してもよい。例えば、リン酸処
理、リン酸亜鉛処理、リン酸マンガン処理、リン酸カル
シウム処理、リン酸クロメート処理、クロム酸処理、ジ
ルコニウム酸処理、タングステン酸処理、モリブデン酸
処理などの種々の化成処理を挙げることができる。
【0163】ここで本発明によるTi含有ナノコンポジ
ット磁粉中の希土類元素(典型的にはNd)の含有率が
低いので、鉄鋼の分野で一般に用いられている化成処理
を用いても、十分な耐食性を得ることができる。
【0164】さらには、ボンド磁石の表面を種々の方法
で酸化することによって適当な厚さの酸化膜を形成して
もよい。
【0165】また、上述したように、本発明のボンド磁
石は本質的に空隙を少なくできるため、耐食性に優れ、
且つ、各種表面処理に適しているが、過酷な環境で使用
される場合などには、磁石の信頼性をさらに向上するた
めに、種々の封孔処理を行っても良い。
【0166】また、上述した表面処理は適宜組み合わせ
てもよく、例えば、異なる材料を用いて積層膜を形成し
てもよい。
【0167】なお、保護膜の厚さは、採用する表面処理
方法およびボンド磁石の用途に応じて適宜設定される
が、上述のモータにおける磁気的なギャップを減少させ
ることによるエネルギー効率の向上効果を得るために
は、保護膜の厚さは25μm以下であることが好まし
く、より好ましくは20μm以下、更に好ましくは10
μm以下である。
【0168】以下、本発明の実施例1および2と、比較
例1〜4を説明する。
【0169】実施例1および実施例2ならびに比較例1
〜3は、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用い、比較例
4は従来の急冷合金粉末であるMQI社製のMQP−B
を最大粒径が250μm以下となるように粉砕して用い
る。
【0170】実施例1および実施例2、比較例1〜3に
用いたTi含有ナノコンポジット磁粉は、以下のように
して作製した。
【0171】まず、Nd:9原子%、B:11原子%、
Ti:3原子%、Co:2原子%、残部Feの合金組成
になるよう配合した原料5kgを坩堝内に投入した後、
50kPaに保持したAr雰囲気中にて高周波誘導加熱
により合金溶湯を得た。
【0172】坩堝を傾転することによって、この合金溶
湯をシュートを介して、ロール表面周速度15m/秒に
て回転する純銅製の冷却ロール(直径250mm)上に
直接供給し、合金溶湯を急冷する。なお、その際の溶湯
の供給速度は坩堝の傾転角を調整することにより、3k
g/分に調整した。
【0173】得られた急冷合金について、鱗片(合金薄
帯)100個の厚さをマイクロメータで測定した結果、
急冷合金の平均厚さは70μmで、その標準偏差σは1
3μmであった。得られた急冷合金を850μm以下に
粉砕した後、長さ約500mmの均熱帯を有するフープ
ベルト炉を用い、Ar流気下、ベルト送り速度100m
m/分にて680℃に保持した炉内へ粉末を20g/分
の供給速度で投入することによって熱処理を施し、磁粉
を得た。
【0174】得られた磁粉がTi含有ナノコンポジット
磁粉であることは、粉末X線回折法を用いて確認した。
図9に得られたX線回折パターンを示す。図9から分か
るように、Nd2Fe14B相とFe236およびα−Fe
が確認された。
【0175】次いで、得られた磁粉を図7および図8を
参照しながら上述したように、ピンディスクミルを用い
て、アスペクト比が0.4以上1.0以下のTi含有ナ
ノコンポジット磁粉を作製した。なお、アスペクト比は
SEM観察によって求めた。なお、比較例4の磁粉(少
なくとも粒径が106μm超の粒子)のアスペクト比は
0.3未満であった。
【0176】得られたTi含有ナノコンポジット磁粉を
標準ふるいで分級し、それぞれ、表1に示す粒度分布に
調整した。この実施例および比較例に用いた磁粉の粒度
分布を示すヒストグラムを図10(a)〜(f)に示
す。各磁粉の平均粒径は、実施例1:106μm超12
5μm以下、実施例2:106μm超125μm以下、
比較例1:75μm超106μm以下、比較例2:53
μm超75μm以下、比較例3:75μm超106μm
以下、比較例4:125μm超150μm以下である。
【0177】
【表1】
【0178】実施例1、2および比較例1〜4の磁粉
に、エポキシ樹脂を2質量%加え、混合・混練した後、
潤滑剤としてステアリン酸カルシウムを0.1質量%加
え、ボンド磁石用コンパウンドを得た。980MPa
(10ton/cm2)の圧力にて圧縮成形し、10m
mφ×7mmの形状を有する成形体を得た。この成形体
を大気中で150℃で1時間硬化し、ボンド磁石を得
た。得られた実施例および比較例のそれぞれのボンド磁
石の密度(成形体密度:成形体の質量/成形体の体積)
および磁気特性をそれぞれの磁粉のかさ比重とともに表
2に示す。
【0179】
【表2】
【0180】表2を参照しながら、まず、実施例1およ
び2と比較例4(従来の急冷合金粉末)とを比較する。
比較例4の磁粉は、実施例1および2の磁粉よりもかさ
比重が低い。また、ボンド磁石の密度の比較から明らか
なように、比較例4のボンド磁石の密度は、実施例1お
よび2のボンド磁石の密度よりも低い。磁粉の密度は同
じなので、このことは、比較例4のボンド磁石はより多
くの空隙を含んでいることを示している。このことは、
比較例4の磁粉のうち粒径が106μm超の粒子のアス
ペクト比が0.3未満であること、すなわち、粒径が1
06μm超の粒子の厚さ(短軸の長さに相当)が30μ
m未満であることが主な原因であると考えられる。
【0181】実施例1のボンド磁石と比較例4のボンド
磁石の断面の光学顕微鏡写真をそれぞれ図11および図
12に示す。
【0182】図11からわかるように、実施例1のTi
含有ナノコンポジット磁粉は、平均厚さが50μm以上
120μm以下(ここでは70μm)の合金薄帯を粉砕
することによって作製されたものであり、粒径が106
μm超の粉末粒子のアスペクト比が0.4以上、すなわ
ち、粒径が106μmを超える粉末粒子の短軸の長さが
50μm以上である。従って、上述したように、比較的
大きな粒子(第1粒子)間の間隙に比較的小さな粒子
(第2粒子)が効率良く充填されている。これに対し、
図12からわかるように、比較例1の磁粉はアスペクト
比が0.3未満の粒子から構成されているので、第1粒
子によって形成される間隙が扁平あるいは第1粒子同士
が密に並ぶ結果、第2粒子が第1粒子間に均一に分散で
きていない。このように、粒径が106μm超の粉末粒
子のアスペクト比が0.3以上、好ましくは0.4以上
のTi含有ナノコンポジット磁粉を用いることによっ
て、成形性を向上できる。
【0183】なお、実施例1および2のボンド磁石と、
比較例4のボンド磁石の磁気特性を比較すると、保磁力
cJこそ比較例4の方が優れているが、残留磁束密度B
rおよび最大エネルギー積(BH)maxともに実施例のボ
ンド磁石が優れている。さらに、比較例4のボンド磁石
では、大きな磁粉の脱粒が見られた。また、比較例のボ
ンド磁石の信頼性が劣るのは上述の通りである。
【0184】次に、実施例1および2と、比較例1〜3
とを比較する。
【0185】表2からわかるように、実施例1および2
の磁粉のかさ比重およびボンド磁石の密度(成形体密
度)は、ともに、比較例1から3よりも高い。これは、
実施例1および2の磁粉が、粒径が106μm超150
μm以下の範囲内にピークを有するためである(図10
参照)。なお、比較例4の磁粉は、実施例と同様に10
6μm超150μm以下の範囲内にピークを有するが、
粒径が106μmを超える粉末粒子のアスペクト比が
0.3未満(厚さが30μm未満)であるため、粒度分
布を調整しても、十分な成形性(充填性)を得ることは
できない。
【0186】比較例1および比較例2の磁粉は、ピーク
を有する粒径が106μm以下であるため、実施例1お
よび2の磁粉に比べ成形性がやや劣る。一方、比較例3
の磁粉は、第1ピークを示す粒径が150μmを超えて
いるので、磁粉の脱粒が起こり易いという問題がある。
【0187】実施例1と実施例2とを比較すると、実施
例2の方が成形性が優れている。これは、上述したよう
に106μm超150μm以下の範囲内に第1ピークを
有するとともに、53μm以下の範囲に第2ピークを有
するためと考えられる。すなわち、第1ピークを構成す
る第1粒子によって形成される間隙に、第2ピークを構
成する第2粒子が効率良く充填されるためと考えられ
る。
【0188】また、第2粒子が効率良く充填される間隙
を第1粒子が形成するためには、粒径が53μm超10
6μm以下の粒子が少ないことが好ましいと考えられ
る。すなわち、間隙を形成する第1粒子と、その間隙に
充填される第2粒子との大きさには相関があるので、第
1粒子と第2粒子との存在比率が連続でない、すなわ
ち、第1粒子と第2粒子との中間の粒度を有する粒子は
少ないことが好ましいと考えられる。また、磁粉は、第
1粒子を第2粒子よりも体積基準で多く含むことが好ま
しく、106μm超150μm以下の粒子が53μm以
下の粒子の3倍以上であることが好ましい。但し、10
6μm超150μm以下の粒子が53μm以下の粒子の
5倍を超えると、第1粒子の間隙に充填される第2粒子
が不足する結果、充填効率が低下するので好ましくな
い。
【0189】
【発明の効果】本発明によると、成形性に優れるととも
に磁気特性に優れたボンド磁石に用いられる希土類合金
粉末およびボンド磁石用コンパウンドならびにそれを用
いたボンド磁石が提供される。
【0190】本発明によるボンド磁石用希土類合金粉末
は、比較的希土類元素含有率が低いにも拘わらず優れた
磁気特性を有するTi含有ナノコンポジット磁粉を用い
ており、且つ、成形性に優れた粒度分布を有するので、
高性能のボンド磁石を安価に提供することが出来る。特
に、例えば外径が4mm〜20mm、内径が2mm〜1
8mm、厚さが0.5mm〜2mm程度の小型のリング
磁石などに好適に用いられ、高性能で信頼性の高い小型
ボンド磁石を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Tiが添加されていないNd−Fe−Bナノコ
ンポジット磁石の最大磁気エネルギー積(BH)max
硼素濃度との関係を示すグラフである。グラフ中、白い
バーは10〜14原子%のNdを含有する試料のデータ
を示し、黒いバーは8〜10原子%のNdを含有する試
料のデータを示している。
【図2】Tiが添加されたNd−Fe−Bナノコンポジ
ット磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと硼素濃
度との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバーは
10〜14原子%のNdを含有する試料のデータを示
し、黒いバーは8〜10原子%のNdを含有する試料の
データを示している。
【図3】本発明による磁石におけるR2Fe14B型化合
物相と(Fe、Ti)−B相を示す模式図である。
【図4】Tiを添加した場合、および、Tiに代えてN
bなどを添加した場合における急冷凝固合金の結晶化過
程における微細組織の変化を模式的に示す図である。
【図5】(a)は、本発明による鉄基希土類合金磁石の
ための急冷合金を製造する方法に用いる装置の全体構成
例を示す断面図であり、(b)は急冷凝固が行われる部
分の拡大図である。
【図6】(a)は、本発明に関して粉砕前の合金および
粉砕後の粉末粒子を模式的に示す斜視図であり、(b)
は、従来技術に関して粉砕前の合金および粉砕後の粉末
粒子を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態で用いられるピンミル装置の
構成を示す図である。
【図8】図7に示したピンミル装置のピン配列を示す図
である。
【図9】実施例および比較例に用いたTi含有ナノコン
ポジット磁粉のX線回折パターンを示す図である。
【図10】実施例および比較例に用いた磁粉の粒度分布
を示すヒストグラムである。
【図11】実施例1のボンド磁石の断面の光学顕微鏡写
真である。
【図12】比較例4のボンド磁石の断面の光学顕微鏡写
真である。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口 1a、2a、8a、および9a ガス排気口 1 溶解室 2 急冷室 3 溶解炉 4 貯湯容器 5 出湯ノズル 6 ロート 7 回転冷却ロール 21 溶湯 22 合金
フロントページの続き Fターム(参考) 4K017 AA04 BA06 BB06 BB09 BB12 BB13 CA03 CA07 DA04 EA03 EC02 4K018 BA18 BB01 BB04 BB06 BC08 BD01 KA46 5E040 AA04 AA19 BB04 BB05 CA01 HB17 NN01 NN06

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式(Fe1-mm100-x-y-zxy
    z(TはCoおよびNiからなる群から選択された1
    種以上の元素、QはBまたはBおよびCからなる群から
    選択された1種以上の元素、RはLaおよびCeを実質
    的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、
    およびHfからなる群から選択された金属元素であっ
    て、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組成比
    率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原
    子%、6<y<10原子%、0.1≦z≦12原子%、
    および0≦m≦0.5)で表現される組成を有し、且
    つ、硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上200nm
    以下、軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上100nm
    以下の範囲内にある、2種類以上の強磁性結晶相を含有
    する組織を有する粉末粒子を含み、 粒度分布において、粒径が106μm超150μm以下
    の範囲内に第1ピークを有し、粒径が106μm超の前
    記粉末粒子のアスペクト比は0.3以上1.0以下の範
    囲内にある、ボンド磁石用希土類合金粉末。
  2. 【請求項2】 前記粒度分布において、粒径が53μm
    以下の範囲に第2のピークを有する、請求項1に記載の
    ボンド磁石用希土類合金粉末。
  3. 【請求項3】 前記粉末粒子の平均粒径は53μm超1
    25μm以下の範囲内にある、請求項1または2に記載
    のボンド磁石用希土類合金粉末。
  4. 【請求項4】 粒径が106μm超の前記粉末粒子の平
    均厚さは50μm以上120μm以下の範囲内にある、
    請求項1から3のいずれかに記載のボンド磁石用希土類
    合金粉末。
  5. 【請求項5】 前記粉末粒子のアスペクト比は0.4以
    上である請求項1から4のいずれかに記載のボンド磁石
    用希土類合金粉末。
  6. 【請求項6】 前記粉末粒子は、ストリップキャスト法
    を用いて作製されたものである、請求項1から5のいず
    れかに記載のボンド磁石用希土類合金粉末。
  7. 【請求項7】 前記粉末粒子は、ストリップキャスト法
    によって得られた平均厚さが50μm以上120μm以
    下の範囲内の合金薄帯を粉砕することによって作製され
    たものである、請求項6に記載のボンド磁石用希土類合
    金粉末。
  8. 【請求項8】 請求項1から7のいずれかに記載のボン
    ド磁石用希土類合金粉末と結合剤とを含むボンド磁石用
    コンパウンド。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載のボンド磁石用コンパウ
    ンドを用いて形成されたボンド磁石。
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