JP3972980B2 - 希土類系ボンド磁石およびその製造方法 - Google Patents

希土類系ボンド磁石およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボンド磁石およびその製造方法に関し、特に、磁石成形体の表面にめっき被膜が形成された希土類系ボンド磁石およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、ボンド磁石は、各種モータ、アクチュエータ、スピーカ、メータ、フォーカスコンバージェンスリング等の電気機器に用いられている。ボンド磁石とは、磁石用合金粉末(磁石粉末)と結合剤(樹脂や低融点金属)を混合し、成形固化することによって製造された磁石である。
【0003】
従来、ボンド磁石用の磁石粉末として、Magnequench International社(以下、「MQI社」と略する。)から販売されているFe−R−B系磁石粉末、いわゆるMQ粉が広く用いられている。MQ粉は、一般に、Fe100-a-bab(Feは鉄、Bは硼素、Rは、Pr、Nd、Dy、およびTbからなる群から選択された少なくとも1種の希土類元素)の組成式で表され、この組成式中のaおよびbが、1原子%≦a≦6原子%、および10原子%≦b≦25原子%の関係を満足しており、Rの含有率bが高い希土類合金粉末である。
【0004】
MQ粉に代表される従来のボンド磁石用の合金粉末は、溶融した原料合金(すなわち「合金溶湯」)を急冷凝固させることによって作製される。この液体急冷法(メルトクエンチング(melt-quenching)法))として、単ロール法(典型的にはメルトスピニング(melt-spining)法)が用いられることが多い。単ロール法は、合金溶湯を回転する冷却ロールに接触させることによって冷却し凝固させる方法である。この方法による場合、急冷合金の形状は冷却ロールの表面周速度方向に沿って薄帯(リボン)状に伸びたものとなる。このようにして作製した急冷合金薄帯は、熱処理された後、例えば平均粒径が300μm以下(典型的には約150μm)になるように粉砕され、永久磁石用の希土類合金粉末となる。以下では、液体急冷法で作製された上述の希土類合金粉末を単に「従来の急冷磁石粉末」と称することとし、後述のナノコンポジット磁石粉末を含まないものとする。
【0005】
従来の急冷磁石粉末と樹脂(ここでは、ゴムまたはエラストマを含むものとする。)とを混合し、ボンド磁石用コンパウンド(以下、単に「コンパウンド」と呼ぶ。)が調製される。このコンパウンドには、潤滑剤やカップリング剤などの添加剤が混合されることもある。
【0006】
このコンパウンドを、例えば圧縮成形、押出し成形や射出成形によって所望形状に成形し、永久磁石の成形体(「永久磁石体」とも言う。)としてのボンド磁石が得られる。
【0007】
ボンド磁石には磁気特性の他に様々な特性が要求される。しかしボンド磁石成形体をそのまま使用した場合には、必要とされる特性を満たさない。
【0008】
例えば、結合剤として樹脂を用いた磁石成形体は、本質的に機械強度が弱く、特にモータ等に使用される圧縮成形されたリング型磁石などの薄肉状の成形体は、割れや欠けを生じ易い。従って、ボンド磁石成形体をそのまま用いると、モータ組み込み時に磁石成形体の破壊などの問題が発生する。
【0009】
また、ボンド磁石成形体をそのまま使用すると、ボンド磁石成形体の表面から脱落した磁石粒子が、組み込んだ部品内に飛散し、モータ動作に影響を与えるなど、種々の問題を引き起こす。特に、コンピューターなどに使用されるハードディスクドライブ装置(HDD)用の部品(スピンドルモータなど)にボンド磁石成形体をそのまま使用すると、磁石成形体の表面から脱落した磁石粒子が磁気的に記録された情報を破壊するなどの致命的な問題を招くことがある。
【0010】
また、磁石を接着することによって部品に組み込む場合に、成形体をそのまま用いると、ボンド磁石成形体の樹脂部分(結合剤部分)と磁石粉末部分との両方に対して十分な接着強度を得ることが難しく、使用可能な接着剤の種類が限られてしまうことがある。
【0011】
上述の問題の発生を防ぐために、特に、圧縮成形や押出し成形によって作製された結合剤の含有率が少ないボンド磁石は、磁石成形体の表面をめっき被膜で被覆することが提案されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、MQ粉に代表される従来の急冷磁石粉末は、優れた磁気特性を有しているものの、希土類元素の含有率が高いため、耐食性が低いという問題がある。
【0013】
また、めっき被膜の形成過程で、比較的多くの希土類元素がめっき液中に溶出し、めっき被膜の形成が阻害されたり、置換めっきが生じたり、一旦溶出した希土類元素が再びめっき被膜中に取り込まれたりして、形成されためっき被膜の密着性や耐食性が得られないことがある。また、このめっき液中に溶出した希土類元素がめっき液中に蓄積すると、良好な被膜が得られなくなるため、めっき液の更新が必要となったり、無電解めっきプロセスにおいてはめっき液の分解が起こったりする。
【0014】
また、希土類元素は酸化されやすいため、従来の急冷磁石粉末は希土類元素の酸化によって磁気特性が劣化しやすいという問題がある。
【0015】
さらに、従来の急冷磁石粉末は、急冷過程において比較的高い急冷速度を必要とするので、高いロール表面周速度(例えば15m/秒以上)で急冷された薄い急冷合金薄体(厚さ50μm以下、典型的には約20μm〜約40μm)を粉砕することによって作製される結果、粒子の形状が扁平であり、その粉末粒子のアスペクト比の大部分は0.3未満である。このように扁平な形状を有している磁石粉末は、コンパウンドの作製過程や成形過程で、粒子が破壊され、新たな表面が露出されるので、耐食性の低下や表面の酸化による磁気特性の低下が起こることもある。なお、本明細書において、アスペクト比は、粒子の(短軸方向サイズ/長軸方向サイズ)を指す。
【0016】
また、ボンド磁石の磁気特性を向上するために、磁石粉末の充填率を高くしようとしても、扁平な形状を有している磁石粉末の充填率を高くすることが困難である。
【0017】
さらに、扁平な形状を有している磁石粉末を用いると、圧縮成形における圧力解放時に成形体の密度が減少する、いわゆるスプリングバック現象が起こり、その結果、成形体に空隙が形成されやすい。磁石成形体の表面に空隙が形成されると、めっき被膜の形成を阻害したり、めっき被膜にピンホールが形成されやすい。また、空隙内にめっき液などが進入し残存すると、磁石粉末の腐食が起こる。従来の急冷磁石粉末は、希土類元素(R)を多く含むので、腐食生成物としてRの水酸化物などを生成する。特にこのRの水酸化物の生成は、磁石の磁気特性を低下させるだけでなく、生成時に大きな体積膨張を伴い、且つ、腐食反応が広い範囲に亘って容易に進行する。めっき被膜の下で腐食が起こると、腐食生成物によってめっき被膜のフクレという致命的な欠陥を生じてしまう。
【0018】
これらの観点から、MQ粉に代表される従来の扁平状の粉末を用いたボンド磁石にめっき被膜を形成し、十分な耐食性を有するボンド磁石を得るためには、より複雑な処理(例えば空隙を予め埋める(封孔処理))を要することになる。さらに、十分な耐食性を得るために、厚膜を形成すると、磁石の有効体積が減少したりモータ等の磁気回路における磁気的なギャップが広くなり、磁気エネルギーの利用効率の低下を招くことがある。
【0019】
一方、近年、ボンド磁石に用いられる磁石粉末として、比較的コストが安いという利点から、鉄基希土類合金(特にFe−R−B系)のナノコンポジット磁石(「交換スプリング磁石」と言われることもある。)粉末が用いられつつある。Fe−R−B系のナノコンポジット磁石は、例えばFe3BやFe236等の軟磁性相である鉄基硼化物の微結晶と硬磁性相であるR2Fe14B相の微結晶とが同一金属組織内において均一に分布し、両者が交換相互作用によって磁気的に結合した鉄基合金永久磁石である(例えば、本願出願人による特願平11−362103号および特願2000−371788号参照)。しかしながら、従来のFe−R−B系のナノコンポジット磁石粉末は、希土類元素の含有率が比較的低く、典型的には硬磁性相の体積比率が30%以下である。そのために磁気特性(例えば保磁力HcJ)が従来の急冷磁石粉末(MQ粉など)に比べ低いので、十分な磁気特性を有するボンド磁石が得られないという問題があり、例えばHDDのモータ等に適用することができなかった。
【0020】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は優れた磁気特性を有し、且つ、耐食性などの要求特性に優れた希土類系ボンド磁石およびその製造方法を提供するものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明による希土類系ボンド磁石は、希土類合金粉末と結合剤とを含む磁石成形体と、前記磁石成形体の表面に設けられためっき被膜とを有し、前記希土類合金粉末は、組成式(Fe1-mm100-x-y-zxyz(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された元素であってBを必ず含む少なくとも1種の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で現される組成を有し、且つ、軟磁性相と、R 2 Fe 14 B型化合物相を含む硬磁性相とを含む2種類以上の強磁性結晶相を含有し、前記硬磁性相の体積分率は60体積%以上であって、前記軟磁性相は前記硬磁性相の粒界に存在し、前記硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上200nm以下、前記軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上100nm以下の範囲内にあり、前記硬磁性相は前記軟磁性相よりも大きく、固有保磁力H cJ ≧600kA/mの硬磁気特性を有するTi含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を含むことを特徴とする。
【0022】
前記希土類合金粉末は、粒径が53μm以下の前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を10質量%以上含むことが好ましい。
【0023】
前記希土類合金粉末は、粒径が38μm以下の前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を8質量%以上含むことが好ましい。
【0024】
前記希土類合金粉末は、アスペクト比が0.3以上1.0以下の範囲内にある粉末粒子を70質量%含むことが好ましい。
【0025】
前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子は、60μm以上300μm以下の平均厚さの急冷合金を粉砕することによって得られたものであることが好ましい。
【0026】
前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子は、ストリップキャスト法を用いて作製された急冷合金を粉砕することによって得られたものであることが好ましい。
【0027】
前記磁石成形体は、圧縮成形法を用いて成形されたものであることが好ましい。
【0028】
前記めっき被膜の膜厚は5μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0029】
リング形状を有する希土類系ボンド磁石として好適に用いられる。
【0030】
本発明の希土類系ボンド磁石はモータに好適に用いられる。
【0031】
本発明による希土類系ボンド磁石の製造方法は、組成式(Fe1-mm100-x-y-zxyz(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された元素であってBを必ず含む少なくとも1種の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で現される組成を有し、且つ、軟磁性相と、R 2 Fe 14 B型化合物相を含む硬磁性相とを含む2種類以上の強磁性結晶相を含有し、前記硬磁性相の体積分率は60体積%以上であって、前記軟磁性相は前記硬磁性相の粒界に存在し、前記硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上200nm以下、前記軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上100nm以下の範囲内にあり、前記硬磁性相は前記軟磁性相よりも大きく、固有保磁力H cJ ≧600kA/mの硬磁気特性を有するTi含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を含む希土類合金粉末と、結合剤とを含む、ボンド磁石成形体を形成する工程と、前記ボンド磁石成形体の表面にめっき被膜を形成する工程とを包含することを特徴とする。
【0032】
【発明の実施の形態】
本発明によるボンド磁石は、希土類合金粉末と結合剤とを含む磁石成形体と、磁石成形体の表面に設けられためっき被膜とを有し、希土類合金粉末(以下、「磁粉」と略す。)が、Ti含有ナノコンポジット磁石粉末(以下、「Ti含有ナノコンポジット磁粉」と略す。)を含んでいる。
【0033】
本発明のボンド磁石が含むTi含有ナノコンポジット磁粉は、組成式(Fe1-mm100-x-y-zxyz(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された元素であってBをかならず含む少なくとも1種の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で表現される組成を有し、且つ、軟磁性相と、R 2 Fe 14 B型化合物相を含む硬磁性相とを含む2種類以上の強磁性結晶相を含有し、前記硬磁性相の体積分率は60体積%以上であって、前記軟磁性相は前記硬磁性相の粒界に存在し、前記硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上200nm以下、前記軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上100nm以下の範囲内にあり、前記硬磁性相は前記軟磁性相よりも大きく、固有保磁力H cJ ≧600kA/mの硬磁気特性を有している。Ti含有ナノコンポジット磁粉は、上記組成式における組成比率x、y、zが、それぞれ、10<x<17原子%、7≦y≦9.3原子%、0.5≦z≦6原子%を満足することが好ましく、8≦y≦9.0原子%を満足することがさらに好ましい。なお、15<x≦20原子%のときには、3.0<z<12原子%を満足することが好ましい。
【0034】
Ti含有ナノコンポジット磁粉は、上述のような組成および組織を有しているので、硬磁性相と軟磁性相とが磁気的な交換相互作用によって結合しており、希土類元素の含有率が比較的低いにも拘わらず、従来の急冷磁石粉末と同等またはそれ以上の優れた磁気特性を有し、さらにはFe3B相を主相とする従来のナノコンポジット磁石粉末よりも、優れた磁気特性を有する(特に保磁力HcJが高い)。具体的には、本発明のボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉は、最大エネルギー積(BH)max:70kJ/m3以上、保磁力HcJ:700kA/m以上、残留磁束密度Br:0.7T以上を実現でき、さらには、最大エネルギー積(BH)max:90kJ/m3以上、保磁力HcJ:800kA/m以上、残留磁束密度Br:0.8T以上を実現できる(例えば、下記の表3参照)。
【0035】
このように、Ti含有ナノコンポジット磁粉は従来の急冷磁石粉末と同等以上の磁気特性を有しているので、従来の急冷磁石粉末(例えばMQ粉)の代わりにTi含有ナノコンポジット磁粉を含むボンド磁石は、従来のコンパウンドと同等以上の磁気特性を発揮し得る。勿論、Ti含有ナノコンポジット磁粉のみを磁粉として含むコンパウンドとして良いし、従来の急冷磁石粉末および/または従来のナノコンポジット磁粉と混合して用いても良い。
【0036】
本発明のボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉の希土類元素の含有量が比較的少ないため、得られるボンド磁石成形体の耐食性が本質的に優れる。また、従来の急冷磁石粉末は腐食生成物として希土類元素の水酸化物を生成するのに対し、Ti含有ナノコンポジット磁粉の希土類含有量は比較的少ないので、腐食生成物として、希土類元素の水酸化物よりも、むしろFeの水酸化物またはFeの水和酸化物(いわゆる赤錆)を主に生成する。Feの水酸化物または水和酸化物は希土類元素の水酸化物よりも生成時の体積膨張が小さく、且つ、錆の進行が遅い。従って、本発明のボンド磁石においては、めっき液の残存など何らかの原因で、仮にめっき被膜の下で錆が発生しても、めっき被膜のフクレなどの問題の発生が抑制される。
【0037】
さらに、Ti含有ナノコンポジット磁粉は希土類元素の含有量が比較的少ないため、めっき液中への希土類元素の溶出量が少なく、その結果、めっき被膜の形成が阻害されたり密着性が低下するなどの問題の発生が抑制され、十分な耐食性を有するボンド磁石が得られる。さらに、ボンド磁石成形体から処理液中への希土類元素の溶出量が低減されるので、めっき液の劣化を抑制することができる。
【0038】
上述したように、本発明によるTi含有ナノコンポジット磁粉を含むボンド磁石は、従来のボンド磁石と同等以上の磁気特性を有するだけでなく、耐食性に優れる。これは、Ti含有ナノコンポジット磁粉自身の耐食性とともに、Ti含有ナノコンポジット磁粉を含むボンド磁石成形体が従来よりも高品位のめっき被膜によって保護されるためである。
【0039】
また、従来の急冷磁石粉末は比較的多量の希土類元素Rを含むため酸化されやすく、その結果、粒径が小さいほど粉末粒子表面の酸化による磁気特性の低下が顕著である。これに対し、Ti含有ナノコンポジット磁粉は、希土類元素Rの含有率が比較的低い上に、R2Fe14B相を取り囲むように小さな硼化物相が分散しており、さらにTiはR2Fe14B相にほとんど含まれず、硼化物相の中またはR2Fe14B相と硼化物相との界面に多く存在している。その結果、Ti含有ナノコンポジット磁粉は、従来の急冷磁石粉末に比べ耐酸化性に優れている。従って、Ti含有ナノコンポジット磁粉は比較的小さな粒子(例えば、粒径が53μm以下)でも酸化による磁気特性の低下がほとんどないので、ボンド磁石に含まれる磁粉のうち、粒径が53μm以下の粉末粒子成分としてTi含有ナノコンポジット磁粉を用いることが好ましい。
【0040】
また、磁粉の充填性を考慮すると、53μm以下の粉末粒子を10質量%以上含むことが好ましく、20質量%以上含むことがさらに好ましい。さらに、密度の高い成形体を得るためのコンパウンドには、粒径が38μm以下の粉末粒子を8質量%以上含む磁粉を用いることが好ましい。粒径が53μm以下の粉末粒子を20質量%以上含んでも、それがTi含有ナノコンポジット磁粉であれば、ボンド磁石用磁粉の磁気特性が低下することはなく、むしろ、粒径が53μm以下の従来の急冷磁石粉末を同量含むボンド磁石用磁粉に比べれば磁気特性が向上する。
【0041】
一般にボンド磁石用磁粉は、最大粒径が500μm以下(典型的には300μm以下)の粒子から構成されており、磁粉の充填性を向上させるためには、粒径が53μm以下、特に38μm以下の粒子をある程度含むことが好ましい。しかしながら、従来の急冷磁石粉末は上述したように粒径が小さな粒子の磁気特性が劣るので、磁気特性を向上させるためには充填性を犠牲にせざるを得ず、逆に、充填性を向上するためには磁気特性を犠牲にする必要があった。
【0042】
これに対し、Ti含有ナノコンポジット磁粉は、粒径が小さい粒子でも優れた磁気特性を有するので、小さな粒子(例えば粒径が53μm以下)を比較的多く含む磁粉を調製しても磁気特性が低下しない。例えば、充填性を改善するために特開昭63−155601号に開示されているような粒度分布の磁粉を調製しても磁気特性を犠牲にする必要がない。なお、粒度分布の調整は、上述のような方法で作製されたTi含有ナノコンポジット磁粉を必要に応じて分級することによって行われる。
【0043】
また、粒子径が53μm以下などの比較的小さな粒子は、単位体積当たりの粒子の表面積が大きくなる。従って、前述のメッキ被膜の形成過程での希土類元素の溶出の問題に関し、粒子の単位体積当たりの溶出量が多くなるという問題があった。これに対して、Ti含有ナノコンポジット磁粉は前述の通り、希土類元素の含有量が比較的少なく、粒径の小さな粒子でもめっき液中への希土類元素の溶出量が少ないため、この問題を抑制することができる。
【0044】
Ti含有ナノコンポジット磁粉を含む磁粉を用いると、従来の急冷磁石粉末と混合して用いた場合においても、成形性が改善されるだけでなく、得られるボンド磁石の磁気特性を改善する効果が得られる。これは、Ti含有ナノコンポジット磁粉と従来の急冷磁石粉末との磁気特性の違いだけでなく、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いることによって、ボンド磁石用コンパウンドの製造工程やボンド磁石の成形工程の温度を低下させることが可能となる結果、ボンド磁石中の従来の急冷磁石粉末の酸化による磁気特性の低下を抑制することも出来るためである。すなわち、本発明のボンド磁石は、Ti含有ナノコンポジット磁粉自身が耐酸化性に優れるだけでなく、ボンド磁石の製造においてTi含有ナノコンポジット磁粉と混合して用いられる耐酸化性に劣る従来の急冷磁石粉末の酸化を抑制することもできるので、磁気特性に優れる。
【0045】
また、上述のように粒径が比較的小さなTi含有ナノコンポジット磁粉を用いることによって充填性が改善されるので、その結果、ボンド磁石成形体の表面に空隙が形成されることが抑制される。その結果、成形体の表面にピンホールの少ないめっき被膜を形成することができ、めっき被膜の厚さを従来よりも小さくしても、十分な耐食性を得ることができる。
【0046】
すなわち、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いることによって、所望の耐食性を得るためのめっき被膜の形成に要する時間を従来よりも短縮できることにより、ボンド磁石の製造コストを下げることができるだけでなく、HDDなどのコンピューター部品や、種々のモータ用の磁石に要求される高い寸法精度や部品の小型化等への要求に応えることができる。さらに、本発明のボンド磁石をモータに使用する場合、めっき被膜の薄膜化により、ロータ/ステータ間の磁気的なギャップを小さくすることができるので、結果として優れたモータ特性を発揮させることができる。
【0047】
さらに、本発明のボンド磁石が含む希土類合金粉末全体の70質量%以上をアスペクト比が0.3以上1.0以下の粉末粒子とすることによって、充填性をさらに向上することができ、且つ、圧縮成形時のスプリングバックを抑制することができる。従って、さらに空隙の少ない成形体を得ることができる。その結果、めっき被膜形成時のピンホール発生や、空隙にめっき液が残ることによる腐食の問題をさらに低減することが可能となり、薄膜でより高い耐食性を持つ被膜形成が可能となるとともに、仮に、より完全な封孔が要求される場合でも、従来の圧縮成形ボンド磁石よりも簡便な方法を採用することができるため、低コストで所望の機能を有するボンド磁石を得ることが可能となる。
【0048】
また、アスペクト比が0.3以上1.0以下の粉末粒子は成形時にも割れにくく、磁石粉末への表面処理(カップリング剤や潤滑剤による被覆、または化成処理)の効果を最大限に生かすことが可能となる。その結果として、ボンド磁石成形体自身の耐食性を向上することができ、結果として、めっき被膜の薄膜化に伴う低コスト化、寸法精度の向上、モータ特性の向上を図ることができる。
【0049】
本発明によるボンド磁石が含むTi含有ナノコンポジット磁粉は、後に詳述するように、Tiの働きによって、従来の急冷磁石粉末よりも遅い冷却速度(102〜106℃/秒)で合金溶湯を冷却することによっても作製され得る。例えば、ロール表面周速度を15m/秒以下にしても磁気特性に優れた合金を得ることができる。従って、ストリップキャスト法を用いて従来よりも厚い急冷合金(薄帯)、例えば60μm以上の急冷合金を作製しても上記の金属組織を得ることができる。ストリップキャスト法は、量産性に優れるので、安定した磁気特性を有するTi含有ナノコンポジット磁粉が比較的安価に製造され得る。
【0050】
ストリップキャスト法を用いて、例えば、60μm以上300μm以下の厚さの急冷合金を形成し、磁粉の平均粒径が70μmとなるように、例えばピンディスクミルを用いて粉砕することによって、アスペクト比が0.3以上1.0以下の粒子からなる粉末を容易に得ることができる。また、Ti含有ナノコンポジットの急冷合金は、従来の急冷合金よりも微細な結晶粒によって構成されているため、ランダムな方位に沿って破断されやすく、等軸的な(アスペクト比が1に近い)粉末粒子が生成されやすい。従って、粉砕条件などを調整することによって、アスペクト比が0.4以上の粒子からなる粉末も容易に得ることもできる。
【0051】
従って、本発明のボンド磁石が含む希土類合金粉末の70質量%以上をアスペクト比が0.3以上の粉末粒子とする場合に、アスペクト比が0.3以上の粉末粒子としてTi含有ナノコンポジット磁粉を用いることができる。
【0052】
本発明のボンド磁石に含まれるTi含有ナノコンポジット磁粉は上述したように耐酸化性に優れているので、さらに以下のような効果を得ることができる。
【0053】
後に表1を参照しながら詳述するように、Ti含有ナノコンポジット磁粉は、ボンド磁石の成形が行われる温度(例えば300℃)においても酸化され難い。また、Ti含有ナノコンポジット磁粉を含むコンパウンドは、コンパウンドの調製工程において磁粉の酸化の影響を受け難く、Ti含有ナノコンポジット磁粉の優れた磁気特性を維持している。Ti含有ナノコンポジット磁粉と従来の急冷磁石粉末および/または従来のナノコンポジット磁粉を混合して用いる場合には、300℃以上350℃以下の加熱温度で大気中に1時間放置した後の酸素含有率が0.24質量%未満である磁粉を調製し、これを用いてボンド磁石を作製することが好ましい。
【0054】
また、Ti含有ナノコンポジット磁粉は、優れた耐酸化性を有するので、従来は使用することが困難であった、融点または軟化点が高い樹脂(例えば、ポリイミドや液晶ポリマなど、また、種々の樹脂の高分子量グレード品)や、従来よりも融点の高い金属を結合剤として用いることができる。例えば、軟化点が180℃以上、さらにはポリフェニレンサルファイド樹脂のように軟化点が250℃以上の熱可塑性樹脂を用いて射出成形法によって、磁気特性に優れかつ表面に空隙が少ないボンド磁石成形体を得ることができる。なお、本明細書における軟化点は、結晶性樹脂および非晶性樹脂のいずれの樹脂についても、ビカット軟化点試験(例えばJIS K6870)によって求めた温度を指す。また、熱硬化性樹脂を用いる場合にも、従来よりも高い硬化温度で硬化される樹脂を用いることができる。また、磁粉自体が耐食性に優れているため、熱硬化処理を大気中で行っても磁石特性の劣化は極めて小さい。従って、熱硬化処理を不活性雰囲気で行う必要がないので工程費用を削減できる。さらに、この様な耐熱樹脂を採用できることにより、HDDなどで問題となるアウトガスの発生を抑えるための加熱脱ガスをより高温で行えるため、HDDなどにより適したボンド磁石を得ることができる。
【0055】
このように従来よりも軟化点が高い樹脂や硬化温度が高い樹脂を用いることによって、ボンド磁石の特性(耐熱性や機械特性など)を改善することが出来る。耐熱酸化性の観点から、Ti含有ナノコンポジット磁粉と従来の急冷磁石粉末および/または従来のナノコンポジット磁粉を混合して用いる場合には、大気中に400℃で10分間放置した際の酸化による質量増加が0.26質量%未満のコンパウンドを用いてボンド磁石を作製することが好ましい。
【0056】
上述したTi含有ナノコンポジット磁粉が有する優れた磁気特性、耐食性、耐酸化性、および成形性や流動性、さらにめっき被膜形成時の希土類元素の溶出の問題を改善する効果の全てを十分に利用するためには、磁粉全体の70質量%以上をTi含有ナノコンポジット磁粉とすることが好ましく、Ti含有ナノコンポジット磁粉のみを用いてボンド磁石を作製することが最も好ましい。
【0057】
本発明によると、成形体の空隙率を減少させ、磁粉充填率が従来よりも高いボンド磁石を得ることができるので、従来よりもさらに磁気特性が優れたボンド磁石が提供される。樹脂として熱硬化性樹脂を用い、例えば圧縮成形法で成形すると、磁粉の充填率が80体積%以上のボンド磁石を容易に得ることができる。樹脂として熱可塑性樹脂を用いて、例えば射出成形法で成形する場合には、磁粉の充填率が60体積%以上のボンド磁石を容易に得ることができる。
【0058】
以下に、本発明による希土類系ボンド磁石およびその製造方法をさらに詳細に説明する。
【0059】
〔Ti含有ナノコンポジット磁粉〕
本発明による希土類系ボンド磁石の磁粉の少なくとも一部として含まれるTi含有ナノコンポジット磁粉は、Tiを含有するFe−R−B系合金の溶湯を冷却し、それによって凝固した急冷合金から形成されている。この急冷凝固合金は、結晶相を含むものであるが、必要に応じて加熱され、更に結晶化が進められる。
【0060】
本発明者は、特定範囲の組成を有する鉄基希土類合金へTiを添加することにより、合金溶湯の冷却過程で生じやすく、優れた磁気特性(特に高い保磁力や減磁曲線の優れた角型性)の発現を阻害する原因となるα−Fe相の析出・成長を抑制し、硬磁気特性を担うR2Fe14B型化合物相の結晶成長を優先的かつ均一に進行させることができることを見出した。
【0061】
Tiを添加しなかった場合、Nd2Fe14B相の析出・成長に先だってα−Fe相が析出し、成長しやすい。そのため、急冷合金に対する結晶化熱処理が完了した段階では、軟磁性のα−Fe相が粗大化してしまい、優れた磁気特性(特にHcJや角形性)が得られない。
【0062】
これに対し、Tiを添加した場合は、α−Fe相の析出・成長のキネティクス(kinetics)が遅くなり、析出・成長に時間を要するため、α−Fe相の析出・成長が完了する前にNd2Fe14B相の析出・成長が開始すると考えられる。このため、α−Fe相が粗大化する前にNd2Fe14B相が均一に分散した状態に大きく成長する。また、Tiは、Nd2Fe14B相中にはほとんど含まれず、鉄基硼化物の中、または、Nd2Fe14B相と鉄基硼化物相との界面に多く存在し、鉄基硼化物を安定化すると考えられる。
【0063】
すなわち、本発明のボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉は、Tiの働きによって鉄基硼化物やα−Fe相などの軟磁性相が微細化されるともに、Nd2Fe14B相が均一に分散し、しかもNd2Fe14B相の体積比率の高いナノコンポジット組織を得ることができる。その結果、Tiを添加しない場合に比べて保磁力および磁化(残留磁束密度)が増加し、減磁曲線の角形性が向上するため、得られるボンド磁石の優れた磁気特性に寄与している。
【0064】
以下、本発明のボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉をより詳細に説明する。
【0065】
本発明によるボンド磁石が少なくとも含むTi含有ナノコンポジット磁粉は、好適には、その組成式が(Fe1-mm100-x-y-zxyzで表現される。ここで、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはB(硼素)およびC(炭素)からなる群から選択された元素であってBを必ず含む少なくとも1種の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された少なくとも1種の金属元素であり、Tiを必ず含んでいる。
【0066】
組成比率を規定するx、y、z、およびmは、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5の関係を満足することが好ましい。
【0067】
Ti含有ナノコンポジット磁粉は、希土類元素の組成比率が全体の10原子%未満であるにもかかわらず、Tiの添加によって磁化(残留磁束密度)がTiを添加しない場合と同等のレベルを維持するか、または増加し、減磁曲線の角形性が向上するという予想外の効果が発揮される。
【0068】
Ti含有ナノコンポジット磁粉では、軟磁性相のサイズが微細であるため、各構成相が交換相互作用によって結合し、硬磁性のR2Fe14B型化合物相以外に鉄基硼化物やα−Feのような軟磁性相が存在していても、合金全体としては優れた減磁曲線の角形性を示すことが可能になる。
【0069】
Ti含有ナノコンポジット磁粉は、好適には、R2Fe14B型化合物相の飽和磁化と同等、または、それよりも高い飽和磁化を有する鉄基硼化物やα−Feを含有している。この鉄基硼化物は、例えば、Fe3B(飽和磁化1.5T)やFe236(飽和磁化1.6T)である。ここで、R2Fe14Bの飽和磁化はRがNdのとき約1.6Tであり、α−Feの飽和磁化は2.1Tである。
【0070】
通常、Bの組成比率xが10原子%を超え、しかも希土類元素Rの組成比率yが5原子%以上8原子%以下の範囲にある場合、R2Fe233が生成されるが、このような組成範囲にある原料合金を用いる場合であっても、本発明のようにTiを添加することにより、R2Fe233相の代わりに、R2Fe14B相、および、Fe236やFe3Bなどの軟磁性鉄基硼化物相を生成することができる。すなわち、Tiを添加することにより、R2Fe14B相の比率を増加できるとともに、生成した鉄基硼化物相が磁化向上に寄与する。
【0071】
本発明者の実験によると、Tiを添加した場合だけ、V、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類の金属を添加した場合と異なり、磁化の低下が生じず、むしろ磁化が向上することが初めてわかった。また、Tiを添加した場合には、前述の他の添加元素と比べ、減磁曲線の角形性が特に良好なものとなった。
【0072】
また、このようなTi添加効果は、Bが10原子%を超える場合に顕著に発揮される。以下、図1を参照しながら、この点を説明する。
【0073】
図1は、Tiが添加されていないNd−Fe−B磁石合金の最大磁気エネルギー積(BH)maxとB量との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバーは10原子%以上14原子%以下のNdを含有する試料のデータを示し、黒いバーは8原子%以上10原子%未満のNdを含有する試料のデータを示している。これに対し、図2は、Tiが添加されたNd−Fe−B磁石合金の最大磁気エネルギー積(BH)maxとBとの関係を示すグラフである。グラフ中、白いバーは10原子%以上14原子%以下のNdを含有する試料のデータを示し、黒いバーは8原子%以上10原子%未満のNdを含有する試料のデータを示している。
【0074】
図1からわかるように、Tiが添加されていない試料では、Ndの含有量にかかわらず、Bが10原子%を超えて多くなるにつれ、最大磁気エネルギー積(BH)maxが低下している。さらにこの低下の程度は、Ndの含有量が8〜10原子%の場合により大きくなる。このような傾向は従来から知られており、Nd2Fe14B相を主相とする磁石合金においては、Bの量を10原子%以下に設定することが好ましいと考えられてきた。例えば、米国特許4、836、868号は、Bは5〜9.5原子%の実施例を開示し、更に、Bの好ましい範囲として4原子%以上12原子%未満、より好ましい範囲として4原子%以上10原子%以下の範囲を教示している。
【0075】
これに対して、Tiが添加された試料では、図2からわかるように、Bが10原子%を超える或る範囲で最大磁気エネルギー積(BH)maxが向上している。この向上はNdの含有量が8〜10原子%の場合に特に顕著である。
【0076】
このように、Bが10原子%を超えると磁気特性が劣化するという従来の技術常識からは予期できない効果をTi添加によって得ることが可能になる。その結果、先述した本発明のボンド磁石の優れた特徴に寄与する磁粉が得られる。
【0077】
次に、本発明の希土類系ボンド磁石が少なくとも含むTi含有ナノコンポジット磁粉の製造方法を説明する。
【0078】
〔Ti含有ナノコンポジット磁粉用急冷合金〕
上記の組成式(Fe1-mm100-x-y-zxyz(x、y、z、およびmは、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で表される鉄基合金の溶湯を不活性雰囲気中で冷却し、それによってR2Fe14B型化合物相を例えば全体の60体積%以上含む急冷合金を作製する。急冷合金中のR2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は例えば80nm以下にすることができる。この急冷合金に対して、必要に応じて熱処理を行なえば、急冷合金中に残存していた非晶質を結晶化させることができる。
【0079】
メルトスピニング法やストリップキャスト法などの冷却ロールを用いる実施形態では、上記合金溶湯を圧力1.3kPa以上の雰囲気中で冷却する。それにより、合金溶湯は、冷却ロールとの接触によって急冷されるだけでなく、冷却ロールから離れた後も、雰囲気ガスによる二次冷却効果を受けて適切に冷却される。
【0080】
本発明者の実験によれば、急冷時の雰囲気ガスの圧力は、1.3kPa以上でしかも常圧(101.3kPa)以下に制御することが好ましく、10kPa以上90kPa以下の範囲にすることが更に好ましい。より好ましい範囲は20kPa以上60kPa以下である。
【0081】
上記雰囲気ガス圧力のもとで、ロール表面周速度の好ましい範囲は4m/秒以上50m/秒以下である。ロール表面周速度が4m/秒より遅くなると、急冷合金中に含まれるR2Fe14B型化合物相の結晶粒が粗大化してしまうことになる。その結果、熱処理によってR2Fe14B型化合物相は更に大きくなり、磁気特性が劣化する可能性がある。
【0082】
実験によると、ロール表面周速度の更に好ましい範囲は5m/秒以上30m/秒以下であり、更に好ましい範囲は5m/秒以上20m/秒以下である。
【0083】
なお、本発明によるボンド磁石が含むTi含有ナノコンポジット磁粉の組成は、急冷合金中に粗大なα−Feをほとんど析出させず、微細なR2Fe14B型化合物相を有する組織、あるいは、微細なR2Fe14B型化合物相を有する組織とアモルファス相が混在した組織が作製される。これにより、熱処理後に鉄基硼化物相などの軟磁性相が硬磁性相の間(粒界)に微細に分散した状態または薄く広がった状態で存在する高性能のナノコンポジット磁石を得ることができる。なお、本明細書における「アモルファス相」とは、原子配列が完全に無秩序化した部分によってのみ構成される相だけではなく、結晶化の前駆体や微結晶(サイズ:数nm以下)、または原子クラスタを部分的に含んでいる相をも含むものとする。具体的には、X線回折や透過電子顕微鏡観察によって結晶構造を明確に同定できない相を広く「アモルファス相」と称することにする。
【0084】
従来、本発明のボンド磁石が含むTi含有ナノコンポジット磁粉の組成に類似する組成(但しTiを含まない)を有する合金溶湯を冷却してR2Fe14B型化合物相を60体積%以上含むような急冷合金を作製しようとすると、α−Feが多く析出した合金組織が得られるため、その後の結晶化熱処理でα−Feが粗大化してしまうという問題があった。α−Feなどの軟磁性相が粗大化すると、磁気特性が大きく劣化し、到底実用に耐えるボンド磁石は得られない。
【0085】
特に本発明のボンド磁石が含むTi含有ナノコンポジット磁粉の組成のようにBの含有量が比較的多い場合、合金溶湯が持つ高いアモルファス生成能のため、合金溶湯の冷却速度を遅くしても、結晶相は生成されにくかった。そのため、合金溶湯の冷却速度を充分に低下させてR2Fe14B型化合物相の体積比率が60%を超えるような急冷凝固合金を作製しようとすると、従来技術ではR2Fe14B型化合物相以外にα−Feまたはその前駆体が多く析出してしまい、その後の結晶化熱処理により、α−Fe相の粗大化が進行し、磁気特性が大きく劣化してしまった。
【0086】
以上のことから、従来、ナノコンポジット磁石磁粉用原料合金の保磁力を増大させるには、合金溶湯の冷却速度を高め、急冷凝固合金の大部分がアモルファス相によって占められるような状態にした後、そのアモルファス相から結晶化熱処理により均一に微細化された組織を形成することが好ましいとの常識が存在していた。これは、微細な結晶相が分散した合金組織を持つナノコンポジットを得るには、制御しやすい熱処理工程でアモルファス相から結晶化を行なうべきと考えられていたからである。
【0087】
このため、アモルファス生成能に優れたLaを原料合金に添加し、その原料合金の溶湯を急冷することによってアモルファス相を主相とする急冷凝固合金を作製した後、結晶化熱処理でNd2Fe14B相およびα−Fe相の両方を析出・成長させ、いずれの相も数十nm程度の微細なものとする技術が報告されている(W.C.Chan、 et.al. ”THE EFFECTS OF REFRACTORY METALS ON THE MAGNETIC PROPERTIES OF α-Fe/R2Fe14B-TYPE NANOCOMPOSITES”、 IEEE、 Trans. Magn. No. 5、 INTERMAG. 99、 Kyongiu、 Korea pp.3265-3267、 1999)。なお、この論文は、Tiなどの高融点金属元素の微量添加(2原子%)が磁気特性を向上させることと、希土類元素であるNdの組成比率を9.5原子%よりも11.0原子%に増加させることがNd2Fe14B相およびα−Fe相の両方を微細化する上で好ましいことを教示している。上記高融点金属の添加は、硼化物(R2Fe233やFe3B)の生成を抑制し、Nd2Fe14B相およびα−Fe相の2相のみからなる磁石粉末用原料合金を作製するために行なわれている。
【0088】
これに対し、本発明のボンド磁石が含むTi含有ナノコンポジット磁粉では、添加Tiの働きにより、急冷凝固工程でα−Fe相の析出を抑えることができる。更には、結晶化熱処理工程において鉄基硼化物等の軟磁性相を生成させ、かつその粗大化を抑制することにより優れた磁気特性を有する磁粉を得ることができる。
【0089】
すなわち、希土類元素量が比較的少ない(例えば9原子%以下)原料合金を用いながら、磁化(残留磁束密度)および保磁力が高く、減磁曲線の角形性にも優れた磁石粉末を製造することができる。
【0090】
前述のように、Ti含有ナノコンポジット磁粉用原料合金の保磁力の増加は、Nd2Fe14B相を冷却工程で優先的に析出・成長させ、それによってNd2Fe14B相の体積比率を増加させながら、しかも軟磁性相の粗大化を抑制したことによって実現する。また、磁化の増加は、Tiの働きにより、急冷凝固合金中に存在するBリッチな非磁性アモルファス相から強磁性鉄基硼化物などの硼化物相を生成することで、結晶化熱処理後の強磁性相の体積比率を増加させたために得られたものと考えられる。
【0091】
上述のようにして得られた原料合金に対しては、必要に応じて、結晶化熱処理を行ない、R2Fe14B型化合物相、硼化物相、およびα−Fe相を含む3種類以上の結晶相を含有する組織を形成することが好ましい。この組織中、R2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は10nm以上200nm以下、硼化物相およびα−Fe相の平均結晶粒径は1nm以上100nm以下となるように熱処理温度および時間を調節する。R2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は通常30nm以上となるが、条件によっては50nm以上になる。硼化物相やα−Fe相などの軟磁性相の平均結晶粒径は30nm以下となることが多く、典型的には数nmの大きさにしかならない。
【0092】
Ti含有ナノコンポジット磁粉用原料合金における最終的なR2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径はα−Fe相の平均結晶粒径よりも大きい。図3は、この原料合金の金属組織を模式的に示している。図3からわかるように、相対的に大きなR2Fe14B型化合物相の間に微細な軟磁性相が分散して存在している。このようにR2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径が比較的大きくなっても、軟磁性相の結晶成長は抑制されており、平均結晶粒径が充分に小さいため、各構成相が交換相互作用によって磁気的に結合し、その結果、軟磁性相の磁化方向が硬磁性相によって拘束されるので、合金全体としては優れた減磁曲線の角形性を示すことが可能になる。
【0093】
上述の製造方法において硼化物が生成されやすい理由は、R2Fe14B型化合物相が大半を占める凝固合金を作製すると、急冷合金中に存在するアモルファス相がどうしてもBを過剰に含むこととなるため、このBが結晶化熱処理で他の元素と結合して析出・成長しやすくなるためであると考えられる。しかし、このBと他の元素の結合により、磁化の低い化合物が生成されると、合金全体として磁化が低下してしまう。
【0094】
本発明者の実験によれば、Tiを添加した場合だけ、V、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類の金属を添加した場合と異なり、磁化の低下が生じず、むしろ磁化が向上することがわかった。また、M(特にTi)を添加した場合には、前述の他の添加元素と比べ、減磁曲線の角形性が特に良好なものとなった。これらのことから、磁化の低い硼化物の生成を抑制する上でTiが特に重要な働きをしていると考えられる。特に、Ti含有ナノコンポジット磁粉の作製で用いる原料合金の組成範囲のうち、BおよびTiが比較的に少ない場合は、熱処理によって強磁性を有する鉄基硼化物相が析出しやすい。この場合、非磁性のアモルファス相中に含まれるBが鉄基硼化物中に取り込まれる結果、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモルファス相の体積比率が減少し、強磁性の結晶相が増加するため、残留磁束密度Brが向上すると考えられる。
【0095】
以下、図4を参照しながら、この点をより詳細に説明する。
【0096】
図4は、Tiを添加した場合、および、Tiに代えてNbなどを添加した場合における急冷凝固合金の結晶化過程における微細組織の変化を模式的に示す図である。Tiを添加した場合は、α−Feが析出する温度よりも高い温度領域においても各構成相の粒成長が抑制されており、優れた硬磁気特性が維持される。これに対し、Nb、V、Crなどの金属元素を添加した場合は、α−Feが析出するような比較的高い温度領域で各構成相の粒成長が著しく進行し、各構成相間に働くの交換相互作用が弱まってしまう結果、減磁曲線の角形性が大きく低下する。
【0097】
まず、Nb、Mo、Wを添加した場合を説明する。この場合、α−Feが析出しない比較的低い温度領域で熱処理を行なえば、減磁曲線の角形性に優れた良好な硬磁気特性を得ることが可能である。しかし、このような温度で熱処理を行なった合金では、R2Fe14B型微細結晶相が非磁性のアモルファス相中に分散して存在していると推定され、ナノコンポジットの構成は形成されていないため、高い磁化が期待できない。また、更に高い温度で熱処理を行なうと、アモルファス相中からα−Fe相が析出する。このα−Fe相は、Tiを添加した場合と異なり、析出後、急激に成長し、粗大化する。このため、各構成相間の交換結合が弱くなり、減磁曲線の角形性が大きく劣化してしまうことになる。
【0098】
一方、Tiを添加した場合は、熱処理により、R2Fe14B型結晶相、鉄基硼化物相、α−Fe相、およびアモルファス相を含むナノコンポジット構造が得られ、各構成相が均一に微細化する。また、Tiを添加した場合は、α−Fe相の成長が抑制される。
【0099】
VやCrを添加した場合は、これらの添加金属がFeに固溶し、Feと反強磁性的に結合するため、磁化が大きく低下してしまう。また、VやCrを添加した場合、熱処理に伴う粒成長が充分に抑制されず、減磁曲線の角形性が劣化する。
【0100】
このようにTiを添加した場合のみ、α−Fe相の粗大化を適切に抑制し、強磁性の鉄基硼化物を形成することが可能になる。更に、Tiは、液体急冷時にFe初晶(後にα−Feに変態するγ−Fe)の析出を遅らせ、過冷却液体の生成を容易にする元素としてBやCとともに重要な働きをするため、合金溶湯を急冷する際の冷却速度を102℃/秒〜105℃/秒程度の比較的低い値にしても、α−Feを大きく析出させることなく、R2Fe14B型結晶相とアモルファス相とが混在する急冷合金を作製することが可能になる。このことは、種々の液体急冷法の中から、特に量産に適したストリップキャスト法の採用を可能にするため、低コスト化にとって極めて重要である。
【0101】
合金溶湯を急冷して原料合金を得る方法として、ノズルやオリフィスによる溶湯の流量制御を行なわずに溶湯をタンディッシュから直接に冷却ロール上に注ぐストリップキャスト法は生産性が高く、製造コストの低い方法である。R−Fe−B系希土類合金の溶湯をストリップキャスト法によっても達成可能な冷却速度範囲でアモルファス化するには、通常、Bを10原子%以上添加する必要がある。従来の技術においてBを多く添加した場合は、急冷合金に対して結晶化熱処理を行った後、非磁性のアモルファス相の他、粗大なα−Fe相や軟磁性相であるNd2Fe233相が析出するため、均質な微細結晶組織が得られない。その結果、強磁性相の体積比率が低下し、磁化の低下およびNd2Fe14B相の存在比率の低下により、保磁力の大幅な低下を招来する。しかしながら、Tiを添加すると、上述したようにα−Fe相の粗大化が抑制されるなどの現象が起こり、予想外に磁化が向上する。
【0102】
なお、急冷合金がアモルファス相を多く含む場合よりも、Nd2Fe14B相を多く含む状態にある方が、最終的な磁気特性は高いものが得やすい。急冷合金中に占めるNd2Fe14B相の体積比率は、全体の半分以上、具体的には60体積%以上になることが好ましい。この60体積%という値は、メスバウアー分光法で測定されたものである。
【0103】
次に、本発明におけるTi含有ナノコンポジット磁粉用合金の製造についてロール法の一種であるメルトスピニング法、ストリップキャスト法を用いた実施形態をさらに具体的に説明する。
【0104】
<液体急冷装置>
本実施形態では、例えば、図5に示す急冷装置を用いて原料合金を製造する。酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスや窒素を用いることができる。なお、窒素は希土類元素Rと比較的に反応しやすいため、ヘリウムまたはアルゴンなどの希ガスを用いることが好ましい。
【0105】
図5の装置は、真空または不活性ガス雰囲気を保持し、その圧力を調整することが可能な原料合金の溶解室1および急冷室2を備えている。図5(a)は全体構成図であり、図5(b)は、一部の拡大図である。
【0106】
図5(a)に示されるように、溶解室1は、所望の磁石合金組成になるように配合された原料20を高温にて溶解する溶解炉3と、底部に出湯ノズル5を有する貯湯容器4と、大気の進入を抑制しつつ配合原料を溶解炉3内に供給するための配合原料供給装置8とを備えている。貯湯容器4は原料合金の溶湯21を貯え、その出湯温度を所定のレベルに維持できる加熱装置(不図示)を有している。
【0107】
急冷室2は、出湯ノズル5から出た溶湯21を急冷凝固するための回転冷却ロール7を備えている。
【0108】
この装置においては、溶解室1および急冷室2内の雰囲気およびその圧力が所定の範囲に制御される。そのために、雰囲気ガス供給口1b、2b、および8bとガス排気口1a、2a、および8aとが装置の適切な箇所に設けられている。特にガス排気口2aは、急冷室2内の絶対圧を30kPa〜常圧(大気圧)の範囲内に制御するため、ポンプに接続されている。
【0109】
溶解炉3は傾動可能であり、ロート6を介して溶湯21を貯湯容器4内に適宜注ぎ込む。溶湯21は貯湯容器4内において不図示の加熱装置によって加熱される。
【0110】
貯湯容器4の出湯ノズル5は、溶解室1と急冷室2との隔壁に配置され、貯湯容器4内の溶湯21を下方に位置する冷却ロール7の表面に流下させる。出湯ノズル5のオリフィス径は、例えば0.5〜2.0mmである。溶湯21の粘性が大きい場合、溶湯21は出湯ノズル5内を流れにくくなるが、本実施形態では急冷室2を溶解室1よりも低い圧力状態に保持するため、溶解室1と急冷室2との間に圧力差が形成され、溶湯21の出湯がスムーズに実行される。
【0111】
冷却ロール7は、熱伝導度の点からAl合金、銅合金、炭素鋼、真鍮、W、Mo、青銅から形成され得る。ただし、機械的強度および経済性の観点から、Cu、Fe、またはCuやFeを含む合金から形成することが好ましい。CuやFe以外の材料で冷却ロールを作製すると、急冷合金の冷却ロールに対する剥離性が悪くなるため、急冷合金がロールに巻き付くおそれがあり好ましくない。冷却ロール7の直径は例えば300〜500mmである。冷却ロール7内に設けた水冷装置の水冷能力は、単位時間あたりの凝固潜熱と出湯量とに応じて算出し、調節される。
【0112】
図5に示す装置によれば、例えば合計10kgの原料合金を10〜20分間で急冷凝固させることができる。こうして形成した急冷合金は、例えば、厚さ:10〜300μm、幅:2mm〜3mmの合金薄帯(合金リボン)22となる。
【0113】
このとき、合金薄帯の厚さが60μm以上300μm以下となるように調整し、次に、必要に応じて、熱処理によって急冷凝固合金を結晶化させた後、この合金を粉砕することによって、粉末粒子全体に対してアスペクト比(短軸方向サイズ/長軸方向サイズ)が0.3以上1.0以下の粒子を70質量%以上含み、さらに粒径が53μm以下の粒子を10質量%以上含む粉末を得ることができる。このように合金薄帯の厚さを調整し、それを粉砕することによって、例えば、粉末中のほとんどについて、アスペクト比を0.3以上1.0以下とすることが可能である。なお、本願明細書における粒径は、JIS8801の標準ふるいによって分別されたものとする。
【0114】
<液体急冷法>
まず、前述の組成式で表現される原料合金の溶湯21を作製し、図5の溶解室1の貯湯容器4に貯える。次に、この溶湯21は出湯ノズル5から減圧Ar雰囲気中の水冷ロール7上に出湯され、冷却ロール7との接触によって急冷され、凝固する。急冷凝固方法としては、冷却速度を高精度に制御できる方法を用いる必要がある。
【0115】
本実施形態の場合、溶湯21の冷却凝固に際して、冷却速度を1×102〜1×108℃/秒とすることが好ましく、1×104〜1×106℃/秒とすることが更に好ましい。
【0116】
合金の溶湯21が冷却ロール7によって冷却される時間は、回転する冷却ロール7の外周表面に合金が接触してから離れるまでの時間に相当し、その間に、合金の温度は低下し、過冷却液体状態になる。その後、過冷却状態の合金は冷却ロール7から離れ、不活性雰囲気中を飛行する。合金は薄帯状で飛行している間に雰囲気ガスに熱を奪われる結果、その温度は更に低下する。本実施形態では、雰囲気ガスの圧力を30kPa〜常圧の範囲内に設定しているため、雰囲気ガスによる抜熱効果が強まり、合金中にNd2Fe14B型化合物を均一微細に析出・成長させることができる。なお、適切な量のTiなどの元素Mを原料合金中に添加していない場合には、上述したような冷却過程を経た急冷合金中には、α−Feが優先的に析出・成長するため、最終的な磁気特性が劣化してしまうことになる。
【0117】
本実施形態では、ロール表面速度を10m/秒以上30m/秒以下の範囲内に調節し、かつ、雰囲気ガスによる二次冷却効果を高めるために雰囲気ガス圧力を30kPa以上にすることによって、平均結晶粒径80nm以下の微細なR2Fe14B型化合物相を60体積%以上含む急冷合金を作製している。
【0118】
なお、本発明のボンド磁石に用いるTi含有ナノコンポジット磁粉を作製するための液体急冷法としては、例示したノズルやオリフィスによって冷却ロールの表面に供給する合金溶湯の流量を制御するメルトスピニング法に限られず、ノズルやオリフィスを用いないストリップキャスト法等の種々の方法を用いることが出来る。また、単ロール法以外に、2つの冷却ロールを用いる双ロール法を用いてもよい。
【0119】
上記急冷法の中でも、ストリップキャスト法の冷却速度は比較的低く、102〜105℃/秒である。本実施形態では、適切な量のTiを合金に添加することにより、ストリップキャスト法による場合でもFe初晶を含まない組織が大半を占める急冷合金を形成することができる。ストリップキャスト法は、工程費用が他の液体急冷法の半分程度以下であるため、メルトスピニング法に比べて大量の急冷合金を作製する場合に有効であり、量産に適した技術である。原料合金に対して元素Mを添加しない場合や、元素Tiの代わりにCr、V、Mn、Mo、Ta、および/またはWを添加した場合には、ストリップキャスト法を用いて急冷合金を形成しても、Fe初晶を多く含む金属組織が生成するため、所望の金属組織を形成することができない。
【0120】
また、メルトスピニング法やストリップキャスト法においてロール表面周速度を調整することによって、合金の厚さを制御することができる。ロール表面周速度を調整することによって、厚さが60μm以上300μm以下の範囲の合金を形成すると、この合金は、上記の微細な組織から構成されているため、粉砕工程によって種々の方位に破断しやすい。その結果、等軸的な形状の(アスペクト比が1に近い)粉末粒子が得られやすい。すなわち、一定の方位に沿って平たく伸びた粉末粒子が得られるのではなく、等軸的な形状、すなわち球形に近い形状の粉末粒子が形成される。
【0121】
これに対して、ロール表面周速度を速くして合金の厚さを60μmより薄くすると、従来の急冷磁石のように、合金の金属組織がロール接触面に垂直な方位に揃う傾向がある。そのため、その方位に沿って破断しやすくなり、粉砕によって得られた粉末粒子は、合金の表面に平行な方向に沿って平たく伸びた形状となりやすく、アスペクト比が0.3未満の粉末粒子が生成されやすい。
【0122】
図6(a)は、本実施形態による磁石粉末の製造方法の粉砕工程前における合金10と、粉砕工程後の粉末粒子11を模式的に示している。一方、図6(b)は、従来の急冷磁石粉末の製造方法の粉砕工程前における合金薄帯12と、粉砕工程後の粉末粒子13を模式的に示している。
【0123】
図6(a)に示されるように、本実施形態の場合は、粉砕前の合金10が結晶粒径の小さな等軸晶によって構成されているため、ランダムな方位に沿って破断しやすく、等軸的な粉末粒子11が生成されやすい。これに対し、従来の急冷合金の場合は、図6(b)に示されるように、合金薄帯12の表面に対してほぼ垂直な方向に破断しやすいため、粒子13の形状は扁平なものとなる。
【0124】
このように、ロール表面周速度を2m/秒から20m/秒、好ましくは8m/秒から15m/秒の範囲に制御し、合金薄帯の厚さを60μmから300μmの範囲に調整することによって、アスペクト比が0.3以上、好ましくは0.4以上1.0以下の粉末を得ることができる。
【0125】
<熱処理>
本実施形態では、前記急冷合金の熱処理をアルゴン雰囲気中で実行する。好ましくは、昇温速度を0.08℃/秒〜20℃/秒として、550℃以上850℃以下の温度で30秒以上20分以下の時間保持した後、室温まで冷却する。この熱処理によって、アモルファス相中に準安定相の微細結晶が析出・成長し、ナノコンポジット組織構造が形成される。本実施形態によれば、熱処理の開始時点で既に微細なNd2Fe14B型結晶相が全体の60体積%以上存在しているため、α−Fe相や他の結晶相の粗大化が抑制され、Nd2Fe14B型結晶相以外の各構成相(軟磁性相)が均一に微細化される。
【0126】
なお、熱処理温度が550℃を下回ると、熱処理後もアモルファス相が多く残存し、急冷条件によっては、保磁力が充分なレベルに達しない場合がある。また、熱処理温度が850℃を超えると、各構成相の粒成長が著しく、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の角形性が劣化する。このため、熱処理温度は550℃以上850℃以下が好ましいが、より好ましい熱処理温度の範囲は570℃以上820℃以下である。
【0127】
本実施形態では、雰囲気ガスによる二次冷却効果のため、急冷合金中に充分な量のNd2Fe14B型化合物相が均一かつ微細に析出している。このため、急冷合金に対して敢えて結晶化熱処理を行なわない場合でも、急冷凝固合金自体が充分な磁気特性を発揮し得る。そのため、結晶化熱処理は必須の工程ではないが、これを行なうことが磁気特性向上のためには好ましい。なお、従来に比較して低い温度の熱処理でも充分に磁気特性を向上させることが可能である。
【0128】
熱処理雰囲気は、合金の酸化を防止するため、不活性ガス雰囲気が好ましい。0.1kPa以下の真空中で熱処理を行っても良い。
【0129】
なお、原料合金に炭素を添加すると、磁粉の耐酸化性がさらに向上する。充分な量のCを添加している場合は、急冷合金に対する熱処理を大気雰囲気下で行なっても良い。
【0130】
熱処理前の急冷合金中には、R2Fe14B型化合物相およびアモルファス相以外に、Fe3B相、Fe236、およびR2Fe233相等の準安定相が含まれていても良い。その場合、Ti添加の効果により、熱処理によって、R2Fe233相は消失し、R2Fe14B相の飽和磁化と同等、または、それよりも高い飽和磁化を示す鉄基硼化物(例えばFe236)やα−Feを結晶成長させることができる。
【0131】
本発明のボンド磁石に含まれるTi含有ナノコンポジット磁粉では、最終的にα−Feのような軟磁性相が存在していても、Tiの効果によってその粒成長が抑制されて、組織が微細化されている。その結果、軟磁性相と硬磁性相とが交換相互作用によって磁気的に結合するため、優れた磁気特性が発揮される。
【0132】
熱処理後におけるR2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、単磁区結晶粒径である300nm以下となる必要があり、10nm以上200nm以下、更には20nm以上150nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることが更に好ましい。これに対し、硼化物相やα−Fe相の平均結晶粒径が100nmを超えると、各構成相間に働く交換相互作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣化するため、(BH)maxが低下してしまう。これらの平均結晶粒径が1nmを下回ると、高い保磁力が得られなくなる。以上のことから、硼化物相やα−Fe相などの軟磁性相の平均結晶粒径は1nm以上100nm以下、好ましくは50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。
【0133】
なお、熱処理前に急冷合金の薄帯を粗く切断または粗粉砕しておいてもよい。熱処理後、得られた合金粗粉末(または薄帯)を粉砕し、磁粉を作製することによって、Ti含有ナノコンポジット磁粉を製造することができる。
【0134】
<粉砕工程の説明>
本発明の希土類系ボンド磁石には、最大粒径が500μm以下、特に300μm以下の希土類合金粉末が好適に用いられる。平均粒径は圧縮成形に用いる場合50μmから200μmの範囲にあることが好ましく、100μmから150μmの範囲にあることがより好ましい。
【0135】
磁粉のアスペクト比は、希土類系ボンド磁石を得るためのコンパウンドの流動性に影響する。本発明のボンド磁石に含まれるTi含有ナノコンポジット磁粉は、磁粉全体の2質量%以上の粒子のアスペクト比が、0.3以上1.0以下であることが好ましい。もちろん、アスペクト比が0.3未満のTi含有ナノコンポジット磁粉と混合して用いてもよい。さらに流動性に優れたコンパウンドを得るためには、磁粉全体の70質量%以上がアスペクト比0.3以上1.0以下とすることが好ましく、アスペクト比が0.3以上1.0以下のTi含有ナノコンポジット磁粉を70質量%以上含む磁粉を用いてコンパウンドを調製することがさらに好ましい。もちろん、MQ粉など粉末粒子のアスペクト比が0.3未満の粉末粒子と混合して用いることもできる。
【0136】
上述のようなアスペクト比を有するTi含有ナノコンポジット磁粉は、例えば図7に示すようなピンディスクミル装置などを用いて、厚さが60μm以上300μm以下の合金薄帯を粉砕することによって作製することができる。図7は、本実施形態に使用するピンミル装置の一例を示す断面図である。このピンミル装置40はピンディスクミルであり、片面に複数のピン41が配列されたディスク(円盤)42aおよび42bを2枚対向させ、互いのピン41が衝突しないように配置されている。少なくとも一方の円盤42aおよび/または42bが高速で回転する。図7の例では、円盤42aが軸43の周りを回転する。回転する側の円盤42aの正面図を図8に示す。図8の円盤42a上では、ピン41が複数の同心円を描くように配列されている。固定されている円盤42bでも、ピン41は同心円を描くように配列されている。
【0137】
ピンディスクミルによって粉砕されるべき被粉砕物は、投入口44から2枚の円盤が対向している隙間の空間内に送り込まれ、回転する円盤42a上のピン41および停止している円盤42b上のピン41に衝突し、その衝撃によって粉砕されることになる。粉砕によって生成された粉末は矢印Aの方向に飛ばされ、最終的には1箇所に集められる。
【0138】
本実施形態のピンミル装置40において、ピン41を支持する円盤42aおよび42bはステンレス鋼などから形成されているが、ピン41は炭素鋼、セラミックスおよびタングステンカーバイド(WC)焼結体等の超硬合金材料から形成されている。超硬合金材料としては、WC焼結体以外にも、TiC、MoC、NbC、TaC、Cr32等を好適に用いることができる。これらの超硬合金は、IVa、Va、およびVIa族に属する金属の炭化物粉末をFe、Co、Ni、Mo、Cu、Pb、もしくはSnまたはこれらの合金を用いて結合した焼結体である。
【0139】
例えば、上記ピンミル装置を用いて平均粒径が100μm以下となるような条件で粉砕を実行すれば、粒子のアスペクト比が0.3以上1.0以下の粉末を得ることができる。また、例えば粒径が53μm以下、あるいは38μm以下の粉末粒子は、これらを分級することによって得られる。
【0140】
原料合金を細かく粉砕するほど、アスペクト比は1.0に近づく傾向にある。アスペクト比が1.0に近いものほど充填性を改善する効果が高く、アスペクト比が0.4以上1.0以下であることが好ましく、0.5以上1.0以下であることがさらに好ましく、0.6以上1.0以下であることが最も好ましい。
【0141】
本実施形態で好適に用いられるピンミル装置は、ディスク上にピンが配列されたピンディスクミルに限定されず、例えば、円筒上にピンが配列された装置であってもよい。ピンミル装置を用いると、正規分布に近い粒度分布を有する粉末を得ることができ、平均粒径の調整が容易で、且つ、量産性に優れるという利点がある。
【0142】
[組成の限定理由]
本発明のボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉は、組成式(Fe1-mm100-x-y-zxyzで表される(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された元素であってBをかならず含む少なくとも1種の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で表される組成を有する。
【0143】
Qは、その全量がB(硼素)から構成されるか、または、BおよびC(炭素)の組み合わせから構成される。Qの総量に対するCの原子比率割合は0.25以下であることが好ましい。
【0144】
Qの組成比率xが10原子%以下になると、急冷時の冷却速度が102℃/秒〜105℃/秒程度と比較的低い場合、R2Fe14B型結晶相とアモルファス相とが混在する急冷合金を作製することが困難になり、その後に熱処理を施しても700kA/m未満のHcJしか得られない。そのため、メルトスピニング法やストリップキャスト法でロール表面周速度を比較的遅くしてアスペクト比が0.3〜1.0でかつ優れた磁気特性を有する磁粉を作製することが困難になる。さらに、液体急冷法の中でも工程費用が比較的安いストリップキャスト法を採用できなくなり、磁粉の製造コストが上昇してしまうことになる。一方、Qの組成比率xが20原子%を超えると、結晶化熱処理後も残存するアモルファス相の体積比率が増し、同時に、構成相中で最も高い飽和磁化を有するα−Feの存在比率が減少するため、残留磁束密度Brが低下してしまう。以上のことから、Qの組成比率xは10原子%を超え、20原子%以下となるように設定することが好ましい。より好ましい組成比率xの範囲は10原子%以上17原子%以下である。さらに、鉄基硼化物相を効率よく析出させBrを向上させることが可能なことから、xの範囲を10原子%以上14原子%以下にすることがさらに好ましい。なお、15<x≦20原子%のときには、3.0<z<12原子%を満足することが好ましい。
【0145】
Rは、希土類元素(Yを含む)の群から選択された1種以上の元素である。LaまたはCeが存在すると、保磁力および角形性が劣化するため、LaおよびCeを実質的に含まないことが好ましい。ただし、微量のLaやCe(0.5原子%以下)が不可避的に混入する不純物として存在する場合は、磁気特性上、問題ない。したがって、0.5原子%以下のLaやCeを含有する場合は、LaやCeを実質的に含まないといえる。
【0146】
Rは、より具体的には、PrまたはNdを必須元素として含むことが好ましく、その必須元素の一部をDyおよび/またはTbで置換してもよい。Rの組成比率yが全体の6原子%未満になると、保磁力の発現に必要なR2Fe14B型結晶構造を有する化合物相が充分に析出せず、700kA/m以上の保磁力HcJを得ることができなくなる。また、Rの組成比率yが10原子%以上になると、強磁性を有する鉄基硼化物やα−Feの存在量が低下する。と同時に、磁粉の耐食性や耐酸化性が低下するだけでなく、めっき被膜形成時の希土類元素の溶出が問題となり、本発明による効果が得られにくくなる。故に、希土類元素Rの組成比率yは6原子%以上10原子%未満の範囲、例えば、6原子%以上9.5原子%以下に調節することが好ましい。より好ましいRの範囲は7原子%以上9.3原子%以下であり、さらに好ましいRの範囲は8原子%以上9.0原子%以下である。
【0147】
添加金属元素Mは、Tiを必須としており、更にZrおよび/またはHfを含んでいても良い。Tiは、前述した効果を得るためには必須の元素であり、保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの向上および減磁曲線の角形性の改善に寄与し、最大エネルギー積(BH)maxを向上させる。
【0148】
金属元素Mの組成比率zが全体の0.5原子%未満になると、Ti添加の効果が充分に発現しない。一方、金属元素Mの組成比率zが全体の12原子%を超えると、結晶化熱処理後も残存するアモルファス相の体積比率が増すため、残留磁束密度Brの低下を招来しやすい。以上のことから、金属元素Mの組成比率zは0.5原子%以上12原子%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましいzの範囲の下限は1.0原子%であり、より好ましいzの範囲の上限は8.0原子%である。更に好ましいzの範囲の上限は6.0原子%である。
【0149】
また、Qの組成比率xが高いほど、Q(例えばB)を含むアモルファス相が形成されやすいので、金属元素Mの組成比率zを高くすることが好ましい。これにより磁化の高い軟磁性鉄基硼化物を析出させたり、生成した鉄基硼化物の粒成長が抑制できる。具体的には、z/x≧0.1を満足させるように組成比率を調節することが好ましく、z/x≧0.15を満足させることがより好ましい。
【0150】
なお、Tiは特に好ましい働きをするため、金属元素MはTiを必ず含む。この場合、金属元素M全体に対するTiの割合(原子比率)は、70%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0151】
Feは、上述の元素の含有残余を占めるが、Feの一部をCoおよびNiの一種または二種の遷移金属元素(T)で置換しても所望の硬磁気特性を得ることができる。Feに対するTの置換量が50%(すなわち、mが0.5)を超えると、0.7T以上の高い残留磁束密度Brが得られない。このため、置換量は0%以上50%以下(すなわち、0≦m≦0.5)の範囲に限定することが好ましい。なお、Feの一部をCoで置換することによって、減磁曲線の角形性が向上するとともに、R2Fe14B相のキュリー温度が上昇するため、耐熱性が向上する。CoによるFe置換量の好ましい範囲は0.5%以上40%以下である。また、Al、Si、Cu、Ga、Ag、Pt、Au、Pb、V、Cr、Mn、Nb、Mo、Wを少量含んでいても磁気特性を劣化させるものではないが、2原子%以下の含有量とすることが好ましい。
【0152】
[磁粉の耐酸化性]
本発明の希土類系ボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉の耐酸化性を従来の急冷磁石粉末と比較しながら説明する。
【0153】
ここでは、Ti含有ナノコンポジット磁粉と、従来の急冷磁石粉末としてMQI社から市販されているMQP−BおよびMQP−O(何れも最大粒径が300μm以下)とを比較する。なお、Ti含有ナノコンポジット磁粉の試料は、以下のようにして作製した。
【0154】
まず、後述する実施例1と同様の方法で作製した急冷合金(Nd:9原子%、B:11原子%、Ti:3原子%、Co:2原子%、残部Feの合金、平均厚さ:70μm、標準偏差σ:13μm)を850μm以下に粉砕した後、長さ約500mmの均熱帯を有するフープベルト炉を用い、Ar流気下、ベルト送り速度100mm/分にて680℃に保持した炉内へ粉末を20g/分の供給速度で投入することによって熱処理を施し、磁粉を得た。得られた磁粉を上述したピンディスクミルを用いてアスペクト比が0.4以上1.0以下の粉末を体積基準で30%程度含む粒度分布になるよう粉砕したものをTi含有ナノコンポジット磁粉の試料NCP−0とした。
【0155】
表1に、それぞれの磁粉を種々の温度(23℃、300℃および350℃)で大気中に1時間放置した後の酸素含有率と磁気特性を示す。磁気特性は振動式磁力計を用いて測定した。23℃で測定した結果とともに、大気中で300℃および350℃でそれぞれ1時間放置した後に測定した結果を合せて示している。
【0156】
表1に示したように、MQP−Bは、大気中に300℃で1時間放置すると酸素含有量が0.67質量%まで増加し、350℃で1時間放置すると、1.93質量%まで増加した。MQP−Oは、300℃で1時間放置すると酸素含有量が0.24質量%まで増加し、350℃で1時間放置すると、0.59質量%まで増加した。
【0157】
これに対し、Ti含有ナノコンポジット磁粉NCP−0は、大気中に300℃で1時間放置しても酸素含有量は0.10質量%までしか増加せず、350℃で1時間放置した後の酸素含有率は、0.20質量%までであり、従来の急冷磁石粉末に比較して耐酸化性に優れていることが分かる。
【0158】
また、それぞれの磁粉の加熱質量増加率を熱天秤を用いて測定した結果を図9に示す。なお、加熱雰囲気は大気中で、昇温速度は10℃/分とした。図9から分かるように、Ti含有ナノコンポジット磁粉NCP−0は、MQP−BやMQP−Oに比べて酸化による質量増加が少なく、耐酸化性に優れている。
【0159】
次に、表1の磁気特性についてみると、MQP−Bは、磁気特性の低下も著しく、例えば(BH)maxは、300℃で1時間放置すると23℃で1時間放置したものの約65%まで低下し、350℃で1時間放置すると約30%まで低下した。また、MQP−Oの(BH)maxは、350℃で1時間放置すると23℃で1時間放置したものの約80%未満にまで低下した。これに対し、Ti含有ナノコンポジット磁粉NCP−0は、350℃で1時間放置しても、その(BH)maxは23℃で1時間放置したものの約90%までしか低下しなかった。
【0160】
このように、Ti含有ナノコンポジット磁粉は耐酸化性に優れているので、ボンド磁石を作製する工程(例えば、コンパウンドの調製および/または熱硬化)において磁粉が酸化されにくい。従って、磁粉の酸化を抑制するために従来の急冷磁石粉末(特にMQP−B)で必要であった磁粉の防錆処理を簡素化または省略することができる。また、従来の急冷磁石粉末を用いる場合には、磁粉の酸化を抑制するために、真空またはArなどの不活性ガス雰囲気中で加熱硬化する必要があったが、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いることによって、大気中で加熱硬化することが可能となる。すなわち、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いることによって、ボンド磁石の製造工程を簡略化し、コストを削減することができる。さらに、従来の急冷磁石粉末は、耐酸化性が低かったので、例えば250℃〜300℃程度の温度で樹脂と混練する工程や成形する工程を必要とする射出成形用のボンド磁石には適用することが難しかったが、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いることによって、射出成形によって作製されるボンド磁石を得ることができる。Ti含有ナノコンポジット磁粉と従来の急冷磁石粉末および/または従来のナノコンポジット磁粉を混合して用いる場合には、Ti含有ナノコンポジット磁粉の優れた耐酸化性の利点を十分に得るために、300℃以上350℃以下の温度で1時間大気中に放置した後の酸素含有率が0.24質量%未満となるように混合比率等を調整した磁粉を用いることが好ましく、上記の酸素含有率が0.2質量%以下となるように調製された磁粉を用いることがより好ましい。例えば、各種回転機やアクチュエータ用のボンド磁石に求められる磁気特性を考慮すると、これらのボンド磁石用コンパウンドに好適に用いられる磁粉の磁気特性としては、最終的な状態で、Br≧0.7T、(BH)max≧80kJ/m3、HcJ≧600kA/mを満足することが好ましい。上述の耐酸化性を有する磁粉を用いると、コンパウンドおよびボンド磁石の作製工程における酸化の影響を考慮しても上記の磁気特性を得ることができる。
【0161】
【表1】
Figure 0003972980
【0162】
本発明のボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉は、その組成および組織の特徴のため、その磁気特性に粒径依存性が小さいという特徴を有している。Ti含有ナノコンポジット磁粉は、希土類元素Rの含有率が比較的低く、Rがリッチな粒界相が存在しないのに加え、R2Fe14B相を取り囲むように小さな硼化物相が分散しており、さらにTiは硼素との親和性が高いので硼化物相は他の相よりも多くのTiを含有している。その結果、Ti含有ナノコンポジット磁粉は、従来の急冷磁石粉末に比べ耐酸化性に優れている。
【0163】
従来の急冷磁石粉末は比較的多量の希土類元素Rを含むので酸化されやすく、粒径が小さいほど粉末粒子表面の酸化による磁気特性の低下が顕著となる。例えば、MQP−B(最大粒径300μm以下)では、表2に示すように、粒径が75μm以下、特に53μm以下の粉末粒子の磁気特性が低下している。残留磁束密度Brについてみると、最も高い値を示している125μm超150μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(0.90T)に対して、53μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(0.79T)は90%未満にまで低下している。また、(BH)maxについて見ると、53μm以下の粉末粒子の平均の(BH)max(38μm以下と38μm超53μm以下の値の単純平均)は85.5kJ/m3であり、150μm超212μm以下の粉末粒子の平均の(BH)max(150μm超180μm以下と180μm超212μm以下の値の単純平均)である114.6kJ/m3の75%未満にまで低下している。
【0164】
これに対し、Ti含有ナノコンポジット磁粉は酸化による磁気特性の低下の割合が低く、磁気特性の粒径依存性が小さい。例えば、ナノコンポジット磁粉NCP−0(最大粒径300μm以下)では、表3に示すように、磁気特性はほとんど粒径に依存せず、優れた磁気特性を有している。例えば、残留磁束密度Brは、最も高い値を示している106μm超125μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(0.845T)に対して、53μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(約0.829T)は98%以上の値を有している。また、(BH)maxについても、53μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxは104.6kJ/m3であり、150μm超212μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxである106.6kJ/m3の98%以上の値を有している。種々の組成のTi含有ナノコンポジット磁粉について同様の評価を行った結果、ほとんどの組成についてナノコンポジット磁粉の53μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxは、150μm超212μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxの90%以上の値を有し、多くの組成について95%以上の値が得られることがわかった。なお、磁粉の粒度分布の評価は、JIS8801準拠の標準ふるいを用いて行った。
【0165】
【表2】
Figure 0003972980
【0166】
【表3】
Figure 0003972980
【0167】
このように、Ti含有ナノコンポジット磁粉は従来の急冷磁石粉末と同等以上の磁気特性を有しているので、従来の急冷磁石粉末(例えばMQ粉)の代わりに希土類系ボンド磁石用コンパウンドの磁粉として用いることができる。さらに、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いると、上述したような種々の優れた特性を有するコンパウンドを得ることができる。勿論、ボンド磁石用磁粉をTi含有ナノコンポジット磁粉のみで構成しても良いが、例えば、上述したMQ粉のうちの粒径が53μm以下の粉末粒子をTi含有ナノコンポジット磁粉に置き換えることによっても大きな効果を得ることができる。
【0168】
以下に、53μm以下および38μm以下の微粒子を混入することによって充填性が改善される効果を実験結果を例示しながら説明する。
【0169】
まず、表4に示すような種々の粒度分布を有するナノコンポジット磁粉の試料NCP−1からNCP−5を作製した。なお、NCP−1の磁粉は、0.5mmφのスクリーンを用いてパワーミルで粉砕することによって調製し、他のNCP−2〜NCP−5の磁粉は、上述したピンミル装置を用いて、それぞれ回転数を3000rpm、4000rpm、5000rpmおよび8000rpmとすることによって調製した。これらの磁粉試料NCP−1からNCP−5をタップデンサを用いてタップ密度を測定した結果を表5に示す。表5には、それぞれの磁粉試料中に含まれる粒径が53μm以下の粉末粒子の質量%および粒径が250μm超の粉末粒子の質量%を合せて示している。
【0170】
表5の結果からわかるように、粒径が53μm以下の粒子を10質量%以上(厳密には9.5質量%以上)含む試料NCP−3〜NCP−5は、タップ密度が4.3g/cm3以上と高く、磁粉の充填性が優れていることが分かる。磁粉のタップ密度で評価される磁粉の充填性は、ボンド磁石用のコンパウンドの粉末の充填性と相関しており、充填性の高い磁粉を用いて調製されたコンパウンドの粉末の充填性も高くなる。従って、粒径が53μm以下のナノコンポジット磁粉を10質量%含む磁粉を用いることによって、ボンド磁石用コンパウンドの粉末の充填性や流動性が改善され、高品質の成形体を得ることができる。
【0171】
【表4】
Figure 0003972980
【0172】
【表5】
Figure 0003972980
【0173】
さらに、成形密度を向上するためには、粒径が38μm以下の粉末粒子を含むことが好ましい。表6に示す粒度分布を有するTi含有ナノコンポジット磁粉NCP−11からNCP−16を調製し、それぞれ2質量%のエポキシ樹脂と混合することによってコンパウンドを得た。それぞれのコンパウンドを用いて成形圧力980MPa(10t/cm2)で圧縮成形することによってボンド磁石成形体を得た。それぞれのボンド磁石成形体の密度を、それぞれのコンパウンドに用いた磁粉中の粒径が38μm以下の粉末粒子の含有率とともに図10に示す。
【0174】
【表6】
Figure 0003972980
【0175】
図10からわかるように、38μm以下の粉末粒子の含有率が低すぎても高すぎても成形体の密度は低下する。種々検討した結果、十分な成形体密度を得るためには、粒径が38μm以下の粉末粒子を約8質量%以上含む磁粉を用いることが好ましい。但し、粒径が38μm以下の粉末粒子の含有率が約16質量%を超える磁粉を用いると、成形性が低下し、高い密度を有する高品位の成形体が得られないことがある。
【0176】
なお、圧縮成形用のコンパウンドについて、磁粉の粒径と成形性の関係を説明したが、射出成形や押出し成形などの他の成形用のコンパウンドについても同様のことが言える。
【0177】
〔コンパウンドおよび磁石体の製造方法の説明〕
上述のTi含有ナノコンポジット磁粉を含むボンド磁石用磁粉は、樹脂等の結合剤と混合され、ボンド磁石用コンパウンドが製造される。
【0178】
射出成形用のコンパウンドは、公知の混練装置(例えばニーダや押出し機)を用いて磁粉と熱可塑性樹脂とを混練することによって製造される。また、圧縮成形用のコンパウンドは、溶剤で希釈した熱硬化性樹脂と磁粉とを混合し、溶剤を除去することによって製造される。得られた磁粉と樹脂との混合物は、必要に応じて、所定の粒度となるように解砕される。解砕の条件などを調整することによって、顆粒状としてもよい。また、粉砕によって得られた粉末材料を造粒してもよい。
【0179】
磁粉の耐食性を向上するために、磁粉の表面に予め化成処理等の公知の表面処理を施しても良い。さらに、磁粉の耐食性や樹脂との濡れ性、コンパウンドの成形性をさらに改善するために、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコネート系などの各種カップリング剤を使用することが好ましい。また、コロイダルシリカなどセラミックス超微粒子、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムなどの潤滑剤を使用してもよく、熱安定剤、難燃剤、可塑剤などを使用してもよい。
【0180】
磁石用コンパウンドは種々の成形方法で種々の用途に用いられるので、用途に応じて、樹脂の種類および磁粉の配合比率が適宜決められる。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂やメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド(ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12等)や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂や、ゴムやエラストマ、さらには、これらの変性体、共重合体、混合物などを用いることができる。特に、これまで工業的規模での利用が難しかった180℃以上の軟化点を有するナイロン6やポリフェニレンサルファイドなどの高融点樹脂を用いたコンパウンドを比較的容易に作製できる。
【0181】
さらに、Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いることによって、成形性や流動性を改善することができるので、従来は用いることが難しかった高粘度の樹脂を用いることもできる。さらに、磁粉は酸化されにくいので、融点または軟化点が高く従来は使用できなかった樹脂(例えば、ポリイミドや液晶ポリマなど、また、種々の樹脂の高分子量グレード品)を用いることができるので、ボンド磁石の特性(耐熱性など)を改善することが出来る。また、熱硬化性樹脂を用いる場合においても、従来よりも高い温度で硬化する樹脂を用いることができる。
【0182】
成形方法としては、圧縮成形、圧延成形、カレンダー成形、押出し成形および射出成形を例示することができる。これらの成形方法のうち、圧縮成形、圧延成形および押出し成形では、比較的単純な形状の成形体しか成形できないが、成形時にあまり高い流動性が要求されないので、磁石粉末の充填率を高くできる。粒度分布および/またはアスペクト比を調整した磁石粉末を用いることによって、従来よりも更に高い(例えば80体積%を超える)充填率を実現することができ、最大で90体積%程度まで充填することができる。但し、充填率が高すぎると磁粉同士を十分に結合するための樹脂が不足し、ボンド磁石の機械的な強度の低下や、めっき処理時に磁粉が脱落し、めっき液が劣化したり、脱落した磁粉が被膜に付着して被膜の清浄性を損ねる等の問題が生じる恐れがあるので、磁粉充填率は、85体積%以下が好ましい。また、圧縮成形においては上述したTi含有ナノコンポジット磁粉を含む磁粉を用いることによって、成形体表面に形成される空隙(ボイド)の量を減少でき、表面に形成するめっき被膜への悪影響や空隙に残存しためっき液による磁石の腐食を抑制できるという利点が得られる。また、得られたボンド磁石成形体は公知の方法で研磨等の加工を行ってもよい。
【0183】
〔ボンド磁石のめっき被膜〕
本発明のボンド磁石の磁石成形体の表面に形成されるめっき被膜としては、電解めっき(電気めっき)被膜や無電解めっき被膜などの湿式めっき被膜を採用することができる。
【0184】
電解めっき被膜としては、Ni、Cu、Cr、Zn、Sn、Pb、Au、Ag、Pt、Pd、Cd、およびそれらを含む合金などの金属被膜があげられるが、ボンド磁石に要求される性能、コストなどの観点からNi、Cu、Cr、Zn、Snおよびそれらを含む合金が望ましい。この中でも、特に、NiまたはCuを含むものが好ましい。
【0185】
本発明のボンド磁石は磁石成形体の耐食性が優れているため、被膜の膜厚は従来のボンド磁石の被膜より薄くても同等の耐食性が得られる。HDD用磁石やモータ用磁石などでは、近年高い寸法精度や磁石の小型化の要請があり、またコストダウンの観点から、めっき被膜の膜厚は1μm〜50μm、好ましくは5μm〜30μmが望ましい。また、本発明のボンド磁石をモータに使用する際には、ロータとステータのギャップに面する部分の膜厚を25μm以下にすることで、モータ特性を向上させることが可能となる。
【0186】
また、めっき被膜中には摺動性の向上など、種々の目的を満たすためにテフロンなどの有機物粒子や、酸化チタンなどの無機物粒子を分散させてもよい。
【0187】
形成する被膜は単層でもよいし、多層でもよい。また、無電解めっき被膜と積層してもよい。
【0188】
本発明によるボンド磁石の製造方法における電解めっき被膜を形成するためのめっき条件は個々のめっき浴によって適宜設定されるが、めっき液のpHが低いと、上述の希土類元素の溶出に伴う被膜密着性や処理液への悪影響が高くなるとともに、同じく希土類元素の溶出に伴い、めっき被膜中にピンホールが発生する恐れがある。本発明のボンド磁石の成形体はめっき液中に流出する希土類の溶出が比較的少ないため、比較的低いpHのめっき浴を適用させることが可能であるが、めっき液のpHは3〜13、望ましくは5〜12が望ましい。
【0189】
めっき液のpHが3より低いと前述した希土類元素の溶出による悪影響を及ぼすおそれがあり、またpHが13を超えると、磁石成形体の表面に水酸化物が析出することにより被膜形成が阻害されたり、めっき液によってボンド磁石成形体の樹脂の劣化を招くおそれがあるからである。
【0190】
また、めっき被膜形成時の浴温は、用いるめっき浴や治具によって適宜設定されるが、通常は5℃〜95℃である。
【0191】
また、めっき液中に塩素イオンが過剰に存在すると、磁石粉末が容易に腐食するため、めっき液中の塩素イオン濃度は30g/L以下に抑えることが望ましく、20g/L以下に抑えることがより望ましい。
【0192】
また、Cuめっきなど、貴な金属のめっき浴においてはめっき液中の金属成分と磁石成形体中の希土類元素やFeとの置換反応を極力抑制するために、めっき液中の金属成分は錯形成化合物やキレート化合物などの形態で存在させることが望ましい。
【0193】
採用するめっき装置としては、種々の態様のバレルやラックなどをボンド磁石の形状に応じて適宜選択すればよいが、ラック治具を採用した場合、ボンド磁石と電極部の接点がめっき中に移動可能な装置を用いることが望ましい(例えば、特願2000−297044号参照)。
【0194】
めっき被膜を形成する時の電流密度は、用いるめっき浴や治具によって適宜設定されるが、析出効率(被膜析出反応に使った電気量/投入電気量)が85%以上になるように電流密度を設定することによって、生産効率に優れるだけではなく、被膜の欠陥の原因となる水素ガスの発生を抑制することが可能となる。また必要に応じてパルスめっき法などを採用してもよい。
【0195】
電解めっきでは角部への電流密度の集中によりドッグボーンが発生し、結果として部品へ組み込みを困難にする場合がある。これを防止するため、必要に応じてバレル研磨などで磁石の角部を除去することが望ましい。
【0196】
さらに、上述したようにTi含有ナノコンポジット磁粉を含む磁石粉末を利用することで、空隙(空孔部または孔)の少ない磁石成形体を形成することができるが、めっき液残りなどのトラブルを完全に防止するためには種々の封孔処理を施すことが望ましい。
【0197】
封孔処理方法としては例えば以下のようなものがあげられる。
【0198】
樹脂含浸:ボンド磁石成形体をガラス等の無機物や樹脂(微粒子などを含有しても良い)などに浸漬し減圧含浸処理することにより、ボンド磁石の空隙をガラスや樹脂で封孔する(例えば、特開平7−201620号公報参照)。
【0199】
無機質微粒子生成物質による封孔:ボンド磁石成形体と、無機質微粒子生成物質に運動エネルギーを供給することにより、無機質微粒子生成物質より生成する無機質微粒子をボンド磁石成形体の空隙に圧入固着させる。無機質微粒子生成物質として不定形金属片を使用すれば同時に後述の導電処理も可能で、また中でもSn、Znなどのビッカース硬度が80未満の軟質金属の不定形金属片が好適に使用される(例えば、特開2001−11504号公報参照)
微粒子(カーボンブラック、金属微粒子など)の埋め込みによる封孔(乾式処理、湿式処理):
・乾式処理:ボンド磁石成形体と微粒子に運動エネルギーを供給することにより、微粒子をボンド磁石成形体の空隙に圧入固着させる(例えば、特開平11−3811号公報)。
【0200】
・湿式処理:ボンド磁石成形体に対し、微粒子を分散させた溶液や樹脂を減圧含浸し、その後溶液を飛ばす、または樹脂を硬化させることにより、ボンド磁石成形体の空隙を微粒子や、微粒子分散樹脂などにて封孔する。
【0201】
また、ボンド磁石成形体表面の樹脂部では、電解めっき反応が起こらないため、より密着性にすぐれた被膜を形成するためには、電解めっきの前に種々の導電化処理を行うことが望ましい。
【0202】
導電化処理の方法としては、例えば無電解めっき、置換めっきのほかに、下記に示す導電微粒子(カーボンブラック、金属微粒子など)の埋め込み(乾式処理、湿式処理)がある。
【0203】
・乾式処理→ボンド磁石成形体と金属微粒子生成物質や金属微粒子に運動エネルギー(例えば振動及び/または攪拌、圧縮空気を利用した圧入等)を乾式的に与え、金属微粒子をボンド磁石成形体表面と接触させることによりボンド磁石成形体表面に金属微粒子の被膜を形成する(例えば特開2001−6909号公報、特開平11−3811号公報参照)。
【0204】
・湿式処理→ボンド磁石成形体表面に対し、微粒子を分散させた溶液または樹脂、カップリング剤などを塗布または減圧含浸し、その後溶液を飛ばすことにより、ボンド磁石成形体に導電微粒子(もしくは導電微粒子を分散した樹脂など)の被膜を形成する。この方法は、同時に封孔処理もできるという利点がある。
【0205】
また、いわゆるBP(バレルペインティング)法を採用していも良い。この方法では、ボンド磁石成形体、被膜形成の少なくとも初期段階において部分的に未硬化である樹脂または無機粘着物質、導電性微粒子に運動エネルギーを与えることによりボンド磁石成形体表面に導電微粒子の被膜を形成する(特開平5−302176号公報参照)。この方法も、同時に封孔処理もできるという利点がある。
【0206】
次に、個々の電解めっき被膜の特徴を説明する。
【0207】
Niめっき被膜を形成した磁石は、耐食性、強度に特に優れているため、モータ用などのリング型磁石に最適である。また、光沢剤を含めためっき条件の最適化により表面清浄度に極めて優れた磁石を得ることができるため、HDD用部品などに好適に用いられる。さらに、めっき浴組成を適正化することで、ストライクめっきが可能となり、ボンド磁石との密着性に極めて優れた被膜を形成することができる。
【0208】
Niめっき被膜は例えば以下のようにして形成される。
【0209】
めっき浴としては、ワット浴、ステアリン酸浴、全硫酸浴などの公知の浴を使用することができる。また、必要に応じて、スルホンアミド、サッカリン、ブチンジオールなどの光沢剤を使用することができる。特にHDD用の部品に用いる場合には表面清浄性を向上させるために光沢剤を用いることが望ましい。
【0210】
被膜は単層でもよいが、多層めっきとすることで、各々のNiめっき層の腐食電位を制御し、被膜中のS含有量の制御などでより卑な電位に制御された上層の腐食を優先的に進行させ、磁石素地の腐食の到達を遅らせることにより、より高い耐食性を得ることができる。また、Crめっきなどの高耐食めっきの下地としても有用である。
【0211】
また、最上層被膜のS量を制御することにより、CuイオンやClイオンなどの腐食イオン含有溶液中の磁石の表面電位を制御することができ、水中などの高腐食環境でも使用可能な磁石が得られる。また、放置時の表面の酸化を抑制でき、結果として接着信頼性や部品を組み込む際にはんだを使用した場合のリフロー時のはんだ濡れ性などを安定させることができる。
【0212】
Cuめっき被膜を形成した磁石は、耐食性、強度に特に優れているため、モータ用などのリング型磁石に最適である。Cuめっき被膜は熱伝導性に優れるため、特に、組み込み時にはんだ付けなどが行われる部品に用いる磁石に好適に用いられる。
【0213】
Cuめっき被膜はめっき付き周り性に優れているので、凹凸のある磁石(付き周り性)に適している。特に薄肉リング状磁石や薄肉状磁石においては、ドッグボーンが生じにくく、得られる磁石は部品への組み込みが容易にできるため、各種めっきの下地めっきとしても好適である。このことは、ドッグボーンを生じさせないために実施される角部の面取量を小さくすることができ、面取に伴う磁気特性の低下を抑制することを可能とする。
【0214】
さらにCuめっき被膜は、つき回りに優れるだけでなく、緻密な被膜形成が可能であり、上述の通り空隙が少ない(小さい)ボンド磁石成形体に適用すれば、別途封孔工程を設けなくとも、Cuめっきを行うだけでも孔をふさぐことが可能であり、1層目にCuめっき被膜を形成することで上述のめっき液残りの問題の少ない磁石が得られる。
【0215】
従来の希土類系ボンド磁石成形体に直接Cuめっきをしようとすると、Cuは電位が貴であることから電解めっき被膜が形成される前にめっき液中のCuイオンと、磁石中のNdの置換反応により粗雑な置換めっき被膜ができやすく、その制御が難しいが、本発明のボンド磁石成形体は上述の通り、卑な電位の希土類含有量が比較的少ないため、めっき浴によっては直接Cuめっきも比較的容易に行うことができる。
【0216】
Cuめっき被膜は例えば以下のようにして形成される。
【0217】
めっき浴としては、シアン化浴、ピロリン酸浴、EDTA浴、ほうふっ化浴などの公知の浴を使用することができるが、磁石中の希土類元素のめっき液への溶出防止という観点から、シアン化浴、ピロリン酸浴、EDTA浴などのアルカリ性めっき浴が望ましい。また、必要に応じて亜セレン酸、ロダンカリなどの光沢剤を使用することができる。
【0218】
Znめっき被膜を形成した磁石は耐食性に優れており、生産コストが低い。
【0219】
Znめっき被膜は例えば以下のようにして形成される。
【0220】
めっき浴としては、ジンケート浴、ピロリン酸浴、硫酸浴、ほうふっ化浴、シアン化浴などの公知の浴を使用することができる。電気Znめっき被膜は白錆を発生しやすいことから、上層に後述のクロメート処理やリン酸亜鉛処理などの後処理を行うことが望ましい。
【0221】
Crめっき被膜を形成することにより、耐塩水性など極めて優れた耐食性を有する磁石を得ることができる。得られた磁石は耐食性、強度に優れているため、モータ用などの薄肉リング型磁石に好適に用いられる。また、被膜硬度が硬く、部品にボンド磁石を組み込み作業によって破損され難く、取り扱いが容易になる。
【0222】
Crめっき被膜は例えば以下のようにして形成される。
【0223】
めっき浴としては、サージェント浴、フッ化物含有浴、黒色めっき浴などの公知の浴を使用することができるが、めっきプロセスの環境への影響を考慮して3価のCrイオンを主体とするめっき浴を採用することが望ましい。
【0224】
Crめっきは被膜の応力が高いため、Crめっき層の膜厚は5μm以下が望ましい。また、電析効率が悪く、電析時に多量の水素を発生し、磁石粉末が水素を吸蔵する可能性があるため、Crめっきの下地層としてNiめっき層などを形成することが望ましい。
【0225】
Snめっき被膜を形成することにより、耐油性など極めて優れた耐食性を有する磁石を得ることができる。被膜は摺動性に優れ、部品への組み込み作業が容易になる。
【0226】
Snめっき被膜は例えば以下のようにして形成される。
【0227】
めっき浴としては、硫酸浴、ほうふっか浴、ヒドロキソ錯塩浴などの公知の浴を使用することができるが、めっき生産性を優先する場合には2価のSnイオンを主体とする酸性浴を採用することが望ましい。一方、より緻密な被膜を得るためには4価のSnイオンを主体とするアルカリ性浴を採用することが望ましい。
【0228】
めっき被膜表面を平滑化するために、種々の光沢剤をめっき浴に投入してめっきしたり、得られためっき被膜を融点以上に加熱して再溶融するなどの手法を採用することができる。
【0229】
Snめっき被膜は柔らかく、Snめっき被膜単層では磁石を部品に組み込む際に被膜が削れることにより、磁石の耐食性などに影響を与える可能性があるため、Snめっきの下地層としてNiめっき層などの硬いめっき層を形成することが望ましい。
【0230】
一方、無電解めっき被膜としては、Cu、Ni、Co、Au、Ag、Pd、Sn、Znおよびそれらの合金などの金属無電解めっき(自己触媒めっき、置換めっき)被膜があげられるが、ボンド磁石に要求される性能、コストなどの観点からCu、Niおよびそれらの合金(例えばNi−P合金やNi−B合金)が望ましい。
【0231】
無電解めっきは、置換析出反応などの化学反応を駆動力として成膜しているため、被膜の均一成膜性に極めて優れ、寸法精度に優れた磁石を得ることができる。このため、本発明の無電解めっき被膜を採用することで、電解めっきで生じる、被処理物への電流密度分布に起因する種々の問題、例えば円筒形状の磁石の内周部へのつき回り性向上や端部(エッジ部)への過剰な厚膜化(ドックボーン)などの問題を回避することが可能となる。
【0232】
優れた耐食性を得るためには膜厚は1μm以上が望ましい、また、処理コストの観点から膜厚の上限は20μmが望ましく、電解めっきとの併用により無電解めっき層の膜厚を10μm以下にすることがより望ましい。さらに、電解めっきの下地めっき層として使用する場合の無電解めっき層の膜厚は1〜5μmが望ましい。
【0233】
また、めっき被膜中には摺動性の向上など、種々の目的を満たすためにPTFE(テフロン)などの有機物粒子や、酸化チタンなどの無機物粒子を分散させてもよい。
【0234】
形成する被膜は単層でもよいし、多層でもよい。また電解めっき被膜と積層してもよい。
【0235】
本発明におけるボンド磁石成形体の表面に無電解めっき被膜を形成するためのめっき浴としては還元剤を使用する自己触媒めっき浴(化学めっき浴)、磁石粉末中のNdやFeとの置換反応による置換めっき浴(浸漬めっき浴)を採用することができる。
【0236】
めっき被膜を形成するためのめっき条件は個々のめっき浴によって適宜設定されるが、めっき液のpHが低いと、上述の希土類元素の溶出に伴う被膜密着性や処理液への悪影響が高くなるとともに、同じく希土類元素の溶出に伴い、めっき被膜中にピンホールが発生する恐れがある。本発明におけるボンド磁石形成体はめっき液中に流出する希土類の溶出が比較的少ないため、比較的低いpHのめっき浴を適用させることが可能であるが、めっき液のpHは3〜13、望ましくは5〜12が望ましい。
【0237】
めっき液のpHが3より低いと前述する希土類元素の溶出による悪影響を及ぼすおそれがあり、またpHが13を超えると、磁石表面に水酸化物が析出することにより被膜形成が阻害されたり、ならびにボンド磁石成形体の樹脂の劣化を招くおそれがあるからである。
【0238】
また、めっき液中に塩素イオンが過剰に存在すると、磁石粉末が容易に腐食するため、めっき液中の塩素イオン濃度は30g/L以下に抑えることが望ましく、20g/L以下に抑えることがより望ましい。
【0239】
また、Cuめっきなど、貴な金属の自己触媒めっき浴においてはめっき液中の金属成分と磁石中の希土類元素やFeとの置換反応を極力抑制するため、めっき液中の金属成分は錯形成化合物やキレート化合物などの形態で存在させることが望ましい。
【0240】
めっき時の浴温はそれぞれのめっき浴に応じて適宜設定すればよいが、通常は20℃〜95℃である。
【0241】
採用するめっき装置としては、種々の態様のバレルやラックなどをボンド磁石の形状に応じて適宜選択すればよいが、ラック治具を採用した場合、ボンド磁石と治具の接点がめっき中に移動可能な装置を用いることが望ましい。
【0242】
さらに、上述したようにTi含有ナノコンポジット磁粉を含む磁石粉末を利用することで、空隙の少ない磁石成形体を形成することができるが、めっき液残りなどの問題を完全に防止するためには先述した種々の封孔処理を施すことが望ましい。
【0243】
自己触媒めっき浴の成分としては、金属成分、還元剤、錯化剤やpH緩衝剤などを用いる。
【0244】
自己触媒めっき浴においては処理中に磁粉の脱落が生じた場合、脱落した磁粉上でも自己触媒反応が起こり、結果として浴寿命を低減させるため、フィルターなどを用いて脱落した磁粉を適宜除去することが望ましい。
【0245】
自己触媒めっき浴においては処理中に水素が発生するが発生した水素が気泡として磁石表面に吸着するとピンホールの原因となったり、さらには磁石粉末が水素を吸蔵して特性が劣化するおそれがある。これらの問題を抑制するために、めっき処理する際の治具を揺動したり、めっき浴を攪拌したりして、発生した水素を磁石表面から速やかに除去することが望ましい。
【0246】
自己触媒めっきにおいて、ボンド磁石上に形成される無電解めっき被膜はボンド磁石表面の樹脂部分を覆うように成長させることができるので、Pd触媒付与などの前処理無しに磁石表面全面に形成可能であるが、優れた密着性を付与する場合にはセンシタイジング→アクチベーション法やキャタリスト→アクセレータ法などの公知の方法で、触媒となるPd触媒を付与したり、電解めっき前の導電化処理と同様の方法で、金属微粉を樹脂表面に埋め込んだりすることがより望ましい。このような無電解めっき前の前処理は、ボンド磁石成形体の表面に樹脂層が形成されることがある、射出成形や押し出し成形などによる磁石成形体にめっき被膜を形成するときには必須の条件となる。
【0247】
また、特に射出成形や押し出し成形による磁石成形体においては、めっき被膜と磁石成形体との密着性を向上させるために、化学エッチングやショットブラストなどにより、表面を粗化しても良い。
【0248】
本発明によるボンド磁石成形体には、めっき液の成分を適正化することによって、置換めっき被膜を形成することが可能である。
【0249】
置換めっき浴においては、置換析出させる金属成分とともに、置換反応により溶出したNdやFeの加水分解による沈殿生成を抑制するために酒石酸やEDTAなどの錯化剤を含有することが望ましい。
【0250】
次に、個々の無電解めっき被膜の特徴を説明する。
【0251】
Cuめっき被膜を形成した磁石は、耐食性、強度に特に優れているため、モータ用などのリング型磁石に最適である。Cuめっき被膜は熱伝導性に優れるため、特に、組み込み時にはんだ付けなどが行われる部品に用いる磁石に好適に用いられる。
【0252】
Cuめっきはつきまわり性に優れ、本発明のボンド磁石は上述の通り空隙が少ない(小さい)ので、後述のような封孔工程を別途設けなくとも、Cuめっきを行うだけでも孔をふさぐことが可能であり、1層目にCuめっき被膜を形成することで上述のめっき液残りの問題の少ない磁石が得られる。
【0253】
Cuめっき被膜は例えば以下のようにして形成される。
【0254】
めっき浴としてはロッシェル塩浴、EDTA浴など、公知の浴が適用できる。硫酸銅、エチレンジアミン4酢酸、亜硫酸ナトリウムを主成分とする中性Cu置換めっき浴は被膜形成中に水素発生が無いことから上述の封孔効果が高く好適に使用される。
【0255】
Niめっき被膜を形成した磁石は、耐食性、強度に特に優れているため、モータ用などのリング型磁石に最適である。特にめっき条件を適正化することで非晶質の被膜が得られ、極めて優れた耐食性を有する被膜を得ることができる。めっき条件の最適化により表面清浄度に極めて優れた磁石を得ることができるため、HDD用部品などに好適に用いられる。
【0256】
Niめっき被膜は例えば以下のようにして形成される。
【0257】
自己触媒型のNiめっきとしては、次亜リン酸塩などを還元剤として用いたNi−Pめっき、水素化ほう素ナトリウムやジメチルアミンボランを還元剤として用いたNi−Bめっきを採用することができる。
【0258】
Ni−Pめっきにおいて、被膜中のPの含有量を7〜15wt%をにすることにより耐食性や耐摩耗性に優れた被膜を得ることができる。
【0259】
本発明のめっき被膜を有するボンド磁石は、種々の形状、成形方法の磁石成形体に適用できるが、本質的に孔が多い圧縮成形のボンド磁石において高い効果を発揮する。
【0260】
また、めっき被膜により優れた機械的強度を示すので薄肉磁石、リング形状磁石、特に肉厚1mm以下の希土類ボンド磁石に特に好適に採用される。また、Niめっき被膜を再表面に有する希土類ボンド磁石は、優れた表面清浄性をもち、磁石粉末の脱落を阻止できるため、HDDなどの磁気記録部品に特に好適に採用される。
【0261】
以下、本発明の実施例を示す。
【0262】
(実施例1)めっき液浸漬試験
<Ti含有ナノコンポジット磁石粉末の作製>
Nd:8.9原子%、B:12.6原子%、Ti:3.0原子%、C:1.4原子%、Nb:1.0原子%、残部Feの合金組成になるように配合した原料5kgを坩堝内に投入した後、50kPaに保持したAr雰囲気中にて高周波誘導加熱により合金溶湯を得た。
【0263】
ストリップキャスト法を用いて得られた合金溶湯から急冷合金を作製した。具体的には、坩堝を傾転することによって、合金溶湯をシュートを介して、ロール表面周速度14m/秒にて回転する純銅製の冷却ロール(直径250mm)上に直接供給し、合金溶湯を急冷した。なお、ロールに溶湯を供給する際には、シュート上で溶湯を2条に分流し、その際の溶湯の供給速度は坩堝の傾転角を調整することにより、1条あたり1.3kg/分に調整した。
【0264】
得られた急冷合金について、鋳片100個の厚みをマイクロメータで測定した結果、急冷合金の平均厚さは85μmでその標準偏差σは13μmであった。得られた急冷合金を850μm以下に粉砕した後、長さ約500mmの均熱帯を有するフープベルト炉を用い、Ar流気下、ベルト送り速度100mm/分にて780℃に保持した炉内へ粉末を20g/分の供給速度で投入することによって熱処理を施し、磁粉を得た。
【0265】
得られた磁粉の結晶構造を粉末X線回折法を用いて解析した結果、本磁粉がNe2Fe14B相とFe236相およびα−Fe相から構成されるTi含有ナノコンポジット磁粉であることを確認した。
【0266】
次いで、得られた磁粉を図7および図8を参照しながら上述したように、ピンディスクミルを用いて粉砕し、表7のような粒度分布を持つ磁粉を得た。なお、粒度分布は、粉末50gをJIS8801の標準ふるいを用いて分級し、それぞれの粒度の粉末質量から求めた。
【0267】
【表7】
Figure 0003972980
【0268】
得られた磁粉粒子100個について、そのアスペクト比を走査型電子顕微鏡によって求めた結果、全てアスペクト比が0.3以上1.0以下の粒子であった。
【0269】
<コンパウンドの作製>
前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末(真密度7.5g/cm3)、および従来の急冷磁粉として、市販のMQP−B粉(MQI社製、真密度7.6g/cm3)を用いて、コンパウンドを作製した。具体的には、それぞれの磁粉と、得られるコンパウンドに対して2質量%のエポキシ樹脂(真密度1.2g/cm3、メチルエチルケトンで希釈)を混合した後、Ar雰囲気中で、メチルエチルケトンを蒸発させながら混練し、希土類系ボンド磁石用コンパウンドを得た。
【0270】
<ボンド磁石の作製>
得られたコンパウンドを用いて、径10mm×高さ7mmの圧縮成形ボンド磁石を、得られる磁石の密度がいずれも5.9g/cm3となるように成形圧力を調整して作製した後、Arガス雰囲気中、150℃で1時間加熱処理を行うことにより作製した。得られたボンド磁石成形体について、アルミナ研磨石を用いて振動バレル研磨を行った。
【0271】
<評価>
(1)置換めっきの評価
硫酸ニッケル・6水和物 240g/L、塩化ニッケル・6水和物 45g/L、硼酸 30g/Lを純水に溶解し、炭酸ニッケルでpH=4.2にした浴温50℃のめっき液にボンド磁石を30秒間浸漬した。Ti含有ナノコンポジット磁粉を用いた磁石成形体はほとんど変化がなかったのに対し、MQP−Bを用いたボンド磁石成形体は置換めっきによる若干の変色が見られた。また、本めっき液に1時間浸漬した後磁石成形体について、置換めっきで析出したニッケル量をニッケル(Ni)の蛍光X線強度から求めた。結果を表8に示す。なお、蛍光X線強度測定は蛍光X線膜厚計(SFT−7100、セイコーインスツルメント社製)で行った。具体的にはX線源のターゲットとしてタングステンを用い、加速電圧45kVの下で、径15mmのコリメータを使用し、15秒間照射した際の蛍光X線強度(1時間浸漬後のサンプルの測定値(n=3の平均)から浸漬なしのサンプルの測定値(n=3の平均)を引いた値)を求めた。
(2) 浸漬による溶出の評価
実験Aと同条件のめっき液50mLにTi含有ナノコンポジット磁粉、ならびにMQP−Bを用いたボンド磁石成形体をそれぞれ3個投入し、1時間放置した後、ボンド磁石を取り出し、評価用のめっき液サンプルとした。
【0272】
前記めっき液サンプル中のNd濃度をICP発光分光分析を用いて、評価した結果を表8に合せて示す。
【0273】
【表8】
Figure 0003972980
【0274】
本試験の結果から、本発明に用いるTi含有ナノコンポジット磁粉を用いた成形体は、従来の急冷磁石粉末を用いた成形体よりもめっき液浸漬時の置換めっきが生じにくいことから、密着性に優れるめっき被膜を容易に形成することができる。さらに、従来の急冷磁石粉末よりもNdの溶出が抑制されるため、めっき液の寿命をより長くすることが可能となる。
【0275】
(実施例2)めっき試験
まず、実施例1と同様の方法で、Ti含有ナノコンポジット磁粉、MQP−Bそれぞれに対して作製したコンパウンドを980MPaの圧力にて圧縮成形し、外径22mm×内径20mm×高さ3mmの形状を有する成形体を得た。この成形体を大気中で150℃で1時間硬化し、ボンド磁石成形体を得た。
【0276】
次に、それぞれのボンド磁石成形体に特開2001−006909号公報に記載されているの方法を用いてボンド磁石表面にCu微粉の被着層を形成した。以下に具体的な形成方法を示す。
【0277】
ボンド磁石成形体10個と直径1mm、長さ1mmの単円柱状Cu微粉生成物質(ワイヤーをカットしたもの)10kgを容積3.5Lの振動バレル装置の処理室に投入し、振動数70Hz、振動振幅3mmの条件にて乾式的に処理を3時間行った。
【0278】
その後、得られたボンド磁石10個を洗浄した後、ひっかけめっき法によって、ニッケルめっき被膜を形成し、実施例(Ti含有ナノコンポジット磁粉使用)および比較例(MQP−B使用)のボンド磁石を得た。なお、めっき浴としては、硫酸ニッケル・6水和物 240g/L、塩化ニッケル・6水和物 45g/L、硼酸 30g/Lを純水に溶解し、炭酸ニッケルでpH=4.2に調整しためっき液を浴温50℃、電流密度1.5A/dm2で、120分間電解めっきを行った。
【0279】
得られためっき被膜の膜厚を蛍光X線膜厚計(SFT−7100、セイコーインスツルメント製)で測定(n=3の平均)した結果、実施例のボンド磁石のめっき被膜は、内径側17.7μm、外径側19.8μmであった。また、同様の方法で比較例のボンド磁石のめっき被膜の膜厚を測定した結果、内径側18.1μm、外径側20.6μmであった。
【0280】
実施例および比較例のボンド磁石を80℃相対湿度90%に放置する試験を行った結果、実施例のボンド磁石は10個全てのサンプルにおいて、100時間後も変化がなかったのに対し、比較例のボンド磁石は100時間後に10個中3個のめっき被膜にフクレが生じた。
【0281】
試験後の比較例のボンド磁石のフクレ部分の磁石断面を電子線プローブマイクアナライザ(EPMA)で分析した。その結果、フクレ部分の下から、Nd、Ni、SならびにClが検出された。また、フクレ部分の下側で磁粉の腐食が観察された。
【0282】
以上のことから、比較例のボンド磁石は、ボンド磁石成形体の空隙部にめっき液が進入し、めっき被膜形成後も被膜下に残存することにより磁石が腐食をし、かつ被膜の密着性が十分でないことから、腐食生成物により被膜のフクレが容易に生じたことが原因であることがわかった。
【0283】
一方実施例のボンド磁石について、80℃相対湿度90%の放置時間を300時間まで延長したが、外観異常は認められず、密着性も優れていた。この結果から、本実施例のボンド磁石は、Tiナノコンポジット磁粉を用いることによりめっき液に浸漬した際の置換めっきを抑制し、密着性に優れた被膜を形成できたことに加え、成形体の空隙を減少させた結果、めっき処理時のめっき液の進入、残存が抑制され、優れた耐食性を発揮できることがわかった。
【0284】
【発明の効果】
本発明によると、優れた磁気特性を有し、且つ、耐食性などの要求特性に優れた希土類系ボンド磁石およびその製造方法が提供される。
【0285】
本発明のボンド磁石は、従来よりも薄いめっき被膜を形成しても、従来と同等以上の耐食性、表面清浄性、機械強度、寸法精度、接着剤との接着性を得ることができる。さらに、ボンド磁石のコストを低減することも出来る。さらに、めっき被膜を薄くすることによって、磁気回路における磁気ギャップを小さく出来るので、磁気エネルギーの利用効率を向上することができる。
【0286】
また、本発明のボンド磁石の製造方法によると、上記の効果に加えて、めっき液の寿命を長くできるなどの効果が得られ、ボンド磁石の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】Tiが添加されていないNd−Fe−Bナノコンポジット磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと硼素濃度との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバーは10〜14原子%のNdを含有する試料のデータを示し、黒いバーは8〜10原子%のNdを含有する試料のデータを示している。
【図2】Tiが添加されたNd−Fe−Bナノコンポジット磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと硼素濃度との関係を示すグラフである。グラフ中、白いバーは10〜14原子%のNdを含有する試料のデータを示し、黒いバーは8〜10原子%のNdを含有する試料のデータを示している。
【図3】本発明による磁石におけるR2Fe14B型化合物相と(Fe、Ti)−B相を示す模式図である。
【図4】Tiを添加した場合、および、Tiに代えてNbなどを添加した場合における急冷凝固合金の結晶化過程における微細組織の変化を模式的に示す図である。
【図5】(a)は、本発明による鉄基希土類合金磁石のための急冷合金を製造する方法に用いる装置の全体構成例を示す断面図であり、(b)は急冷凝固が行われる部分の拡大図である。
【図6】(a)は、本発明に関して粉砕前の合金および粉砕後の粉末粒子を模式的に示す斜視図であり、(b)は、従来技術に関して粉砕前の合金および粉砕後の粉末粒子を模式的に示す斜視図である。
【図7】本発明の実施形態で用いられるピンミル装置の構成を示す図である。
【図8】図7に示したピンミル装置のピン配列を示す図である。
【図9】本発明のボンド磁石に用いられるTi含有ナノコンポジット磁粉および従来の急冷磁石粉末の加熱質量増加率を示すグラフである。
【図10】粒度分布の異なるTi含有ナノコンポジット磁粉を用いて形成されたボンド磁石成形体の密度を示すグラフである。
【符号の説明】
1b、2b、8b、および9b 雰囲気ガス供給口
1a、2a、8a、および9a ガス排気口
1 溶解室
2 急冷室
3 溶解炉
4 貯湯容器
5 出湯ノズル
6 ロート
7 回転冷却ロール
21 溶湯
22 合金

Claims (11)

  1. 希土類合金粉末と結合剤とを含む磁石成形体と、前記磁石成形体の表面に設けられためっき被膜とを有し、前記希土類合金粉末は、組成式(Fe1-mm100-x-y-zxyz(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された元素であってBを必ず含む少なくとも1種の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で現される組成を有し、且つ、軟磁性相と、R2Fe14B型化合物相を含む硬磁性相とを含む2種類以上の強磁性結晶相を含有し、前記硬磁性相の体積分率は60体積%以上であって、前記軟磁性相は前記硬磁性相の粒界に存在し、前記硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上200nm以下、前記軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上100nm以下の範囲内にあり、前記硬磁性相は前記軟磁性相よりも大きく、固有保磁力HcJ≧600kA/mの硬磁気特性を有するTi含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を含む、希土類系ボンド磁石。
  2. 前記希土類合金粉末は、粒径が53μm以下の前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を10質量%以上含む、請求項1に記載の希土類系ボンド磁石。
  3. 前記希土類合金粉末は、粒径が38μm以下の前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を8質量%以上含む、請求項1または2に記載の希土類系ボンド磁石。
  4. 前記希土類合金粉末は、アスペクト比が0.3以上1.0以下の範囲内にある粉末粒子を70質量%含む、請求項1から3のいずれかに記載の希土類系ボンド磁石。
  5. 前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子は、60μm以上300μm以下の平均厚さの急冷合金を粉砕することによって得られたものである請求項1から4のいずれかに記載の希土類系ボンド磁石。
  6. 前記Ti含有ナノコンポジット磁石粉末粒子は、ストリップキャスト法を用いて作製された急冷合金を粉砕することによって得られたものである請求項1から5のいずれかに記載の希土類系ボンド磁石。
  7. 前記磁石成形体は、圧縮成形法を用いて成形されたものである、請求項1から6のいずれかに記載の希土類系ボンド磁石。
  8. 前記めっき被膜の膜厚は5μm以上30μm以下である請求項1から7のいずれかに記載の希土類系ボンド磁石。
  9. リング形状を有する請求項1から8のいずれかに記載の希土類系ボンド磁石。
  10. 請求項1から9のいずれかに記載の希土類系ボンド磁石を備えるモータ。
  11. 組成式(Fe1-mm100-x-y-zxyz(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された元素であってBを必ず含む少なくとも1種の元素、RはLaおよびCeを実質的に含まない1種以上の希土類元素、MはTi、Zr、およびHfからなる群から選択された金属元素であって、Tiを必ず含む少なくとも1種の金属元素、組成比率x、y、zおよびmが、それぞれ、10<x≦20原子%、6<y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、および0≦m≦0.5)で現される組成を有し、且つ、軟磁性相と、R2Fe14B型化合物相を含む硬磁性相とを含む2種類以上の強磁性結晶相を含有し、前記硬磁性相の体積分率は60体積%以上であって、前記軟磁性相は前記硬磁性相の粒界に存在し、前記硬磁性相の平均結晶粒径が10nm以上200nm以下、前記軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上100nm以下の範囲内にあり、前記硬磁性相は前記軟磁性相よりも大きく、固有保磁力HcJ≧600kA/mの硬磁気特性を有するTi含有ナノコンポジット磁石粉末粒子を含む希土類合金粉末と、結合剤とを含む、ボンド磁石成形体を形成する工程と、
    前記ボンド磁石成形体の表面にめっき被膜を形成する工程と、
    を包含する、希土類系ボンド磁石の製造方法。
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