JP4168643B2 - ボンド磁石用コンパウンドおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種モータやアクチュエータに好適に使用される永久磁石の製造方法に関し、特に複数の強磁性相を有する鉄基希土類合金磁石およびその製造方法に関している。
【0002】
【従来の技術】
近年、家電用機器、OA機器、および電装品等において、より一層の高性能化と小型軽量化が要求されている。そのため、これらの機器に使用される永久磁石については、磁気回路全体としての性能対重量比を最大にすることが求められており、例えば残留磁束密度Brが0.5T(テスラ)以上の永久磁石を用いることが要求されている。しかし、従来の比較的安価なハードフェライト磁石によっては、残留磁束密度Brを0.5T以上にすることはできない。
【0003】
現在、0.5T以上の高い残留磁束密度Brを有する永久磁石としては、粉末冶金法によって作製されるSm−Co系磁石が知られている。Sm−Co系磁石以外では、粉末冶金法によって作製されるNd−Fe−B系焼結磁石や、液体急冷法によって作製されるNd−Fe−B系急冷磁石が高い残留磁束密度Brを発揮することができる。前者のNd−Fe−B系焼結磁石は、例えば特開昭59−46008号公報に開示されており、後者のNd−Fe−B系急冷磁石は例えば特開昭60−9852号公報に開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、Sm−Co系磁石は、原料となるSmおよびCoのいずれもが高価であるため、磁石価格が高いという欠点を有している。
【0005】
Nd−Fe−B系磁石の場合は、安価なFeを主成分として(全体の60重量%〜70重量%程度)含むため、Sm−Co系磁石に比べて安価ではあるが、その製造工程に要する費用が高いという問題がある。製造工程費用が高い理由のひとつは、含有量が全体の10原子%〜15原子%程度を占めるNdの分離精製や還元反応に大規模な設備と多大な工程が必要になることである。また、粉末冶金法による場合は、どうしても製造工程数が多くなる。
【0006】
これに対し、液体急冷法によって製造されるNd−Fe−B系急冷磁石は、溶解工程→液体冷却工程→熱処理工程といった比較的簡単な工程で得られるため、粉末冶金法によるNd−Fe−B系磁石に比べて工程費用が安いという利点がある。しかし、液体急冷法による場合、バルク状の永久磁石を得るには、急冷合金から作製した磁石粉末を樹脂と混ぜ、ボンド磁石を形成する必要があるので、成形されたボンド磁石に占める磁石粉末の充填率(体積比率)は高々80%程度である。また、液体急冷法によって作製した急冷合金は、磁気的に等方性である。
【0007】
以上の理由から、液体急冷法を用いて製造したNd−Fe−B系急冷磁石は、粉末冶金法によって製造した異方性のNd−Fe−B系焼結磁石に比べてBrが低いという問題を有している。
【0008】
Nd−Fe−B系急冷磁石の特性を改善する手法としては、特開平1−7502号公報に記載されているように、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、およびWからなる群から選択された少なくとも一種の元素と、Ti、V、およびCrからなる群から選択された少なくとも一種の元素とを複合的に添加することが有効である。このような元素の添加によって、保磁力HcJと耐食性とが向上するが、残留磁束密度Brを改善する有効な方法は、ボンド磁石の密度を向上すること以外に知られていない。また、Nd−Fe−B系急冷磁石中に6原子%以上の希土類元素が含まれる場合、多くの先行技術によれば、溶湯の急冷速度を高めるため、ノズルを介して冷却ロールに溶湯を噴射するメルトスピニング法が使用されている。
【0009】
Nd−Fe−B系急冷磁石の場合、希土類元素の濃度が比較的に低い組成、すなわち、Nd3.8Fe77.219(原子%)の近傍組成を持ち、Fe3B型化合物を主相とする磁石材料が提案されている(R. Coehoorn等、J. de Phys, C8,1998, 669〜670頁)。この永久磁石材料は、液体急冷法によって作製したアモルファス合金に対して結晶化熱処理を施すことにより、軟磁性であるFe3B相および硬磁性であるNd2Fe14B相が混在する微細結晶集合体から形成された準安定構造を有しており、「ナノコンポジット磁石」と称されている。このようなナノコンポジット磁石については、1T以上の高い残留磁束密度Brを有することが報告されているが、その保磁力HcJは160kA/m〜240kA/mと比較的低い。そのため、この永久磁石材料の使用は、磁石の動作点が1以上になる用途に限られている。
【0010】
また、ナノコンポジット磁石の原料合金に種々の金属元素を添加し、磁気特性を向上させる試みがなされているが(特開平3-261104号公報、特許第2727505号公報、特許第2727506号公報、国際出願の国際公開公報WO003/03403、W.C.Chan, et.al. "THE EFFECTS OF REFRACTORY METALS ON THE MAGNETIC PROPERTIES OFα-Fe/R2Fe14B-TYPE NANOCOMPOSITES", IEEE, Trans. Magn. No. 5, INTERMAG. 99, Kyongiu, Korea pp.3265-3267, 1999)、必ずしも充分な「コスト当りの特性値」は得られていない。これは、ナノコンポジット磁石において実用に耐えられる大きさの保磁力が得られていないため、実使用において充分な磁気特性を発現できないためである。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、残留磁束密度Br≧0.8Tを維持しながら、実用に耐えられる高い保磁力(例えばHcJ≧600kA/m)を満足する優れた磁気特性を持つ鉄基合金磁石を安価に製造し得る永久磁石の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明による鉄基希土類磁石原料合金の製造方法は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n(B1-ppxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)および希土類金属からなる群から選択された1種以上の元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、およびPbからなる群から選択された1種以上の元素)で表現され、組成比率(原子比率)x、y、z、m、n、およびpが、それぞれ、10<x≦25原子%、7≦y<10原子%、0.5≦z≦12原子%、0≦m≦0.5、0≦n≦10原子%、および0≦p≦0.25を満足する鉄基希土類原料合金の溶湯を用意する工程と、前記合金の溶湯を、案内面が水平方向に対して1〜80°の角度を形成する案内手段上に供給し、前記冷却ロールとの接触領域に前記合金溶湯を移動させる工程と、前記合金溶湯を前記冷却ロールによって急冷し、R2Fe14B型化合物相を含む急冷合金を作製する冷却工程とを包含する。
【0013】
好ましい実施形態において、前記冷却工程は、前記案内手段により、前記合金溶湯の流れの幅を前記冷却ロールの軸線方向に沿って所定の大きさに調節する工程を包含する。
【0014】
好ましい実施形態において、前記急冷合金の作製は減圧雰囲気ガス中で行う。
【0015】
好ましい実施形態において、前記雰囲気ガスの圧力は、圧力0.13kPa以上100kPa以下に調節されている。
【0016】
好ましい実施形態では、前記冷却工程において、前記R2Fe14B型化合物相の存在比率を前記急冷合金の60体積%以上にする。
【0017】
好ましい実施形態では、前記冷却工程において、前記冷却ロール表面の回転周速度を5m/秒以上26m/秒以下の範囲に調節し、前記合金溶湯の単位幅あたりの供給速度を3kg/分/cm以下とする。
【0018】
好ましい実施形態では、少なくともR2Fe14B型化合物相、α−Fe相、および強磁性鉄基硼化物相を含む3種類以上の結晶相を含有する組織を形成し、前記R2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径を20nm以上200nm以下、前記α−Fe相および硼化物相の平均結晶粒径を1nm以上50nm以下とする工程を包含する。
【0019】
好ましい実施形態において、強磁性鉄基硼化物相がR2Fe14B型化合物相の粒界または亜粒界に存在している。
【0020】
好ましい実施形態では、前記急冷合金に対して結晶化熱処理を行なうことにより、前記組織を形成する。
【0021】
好ましい実施形態では、前記結晶化熱処理は前記急冷合金を550℃以上850℃以下の温度で30秒以上保持することを含む。
【0022】
好ましい実施形態において、前記結晶化熱処理の前に前記急冷合金を粉砕する工程を含む。
【0023】
好ましい実施形態において、前記鉄基硼化物は、Fe3Bおよび/またはFe236を含んでいる。
【0024】
好ましい実施形態において、前記元素MはNbを必ず含む。
【0025】
好ましい実施形態では、Nbを実質的に含まないことを除けば実質的に同一の組成を有する鉄基希土類磁石原料合金に比較して溶湯の液相線温度が10℃以上低い。
【0026】
好ましい実施形態において、Nbの含有量は、原子比率で全体の0.1%以上3%以下である。
【0027】
好ましい実施形態において、前記組成式中のCの組成比率pが0.01≦p≦0.25の関係を満足している。
【0028】
好ましい実施形態では、前記案内手段に供給される前の時点における前記合金溶湯の動粘度を5×10-6(m2/秒)以下とする。
【0029】
好ましい実施形態では、前記合金溶湯の凝固過程で最初に析出する化合物相の凝固温度が、前記組成比率pがゼロの場合に比べて、5℃以上低下していることを特徴とする。
【0030】
好ましい実施形態では、前記冷却工程において、前記合金溶湯の凝固過程で最初に析出する化合物相は硼化チタン系化合物である。
【0031】
好ましい実施形態において、前記冷却工程は、表面の中心線粗さRaが20μm以下の冷却ロールを10m/秒以上の表面周速度で回転させて行う。
【0032】
好ましい実施形態では、前記冷却工程において、前記冷却ロールによって急冷される前記合金溶湯の1つの流れあたりの溶湯急冷処理速度を0.7kg/分以上4kg/分未満の範囲内に調節する。
【0033】
好ましい実施形態では、前記冷却工程において、前記案内手段により、前記合金溶湯の1つの流れの幅を5mm以上20mm未満に調節する。
【0034】
好ましい実施形態では、前記合金溶湯の動粘度を5×10-62/秒以下に調節する。
【0035】
好ましい実施形態では、前記合金溶湯の動粘度が5×10-62/秒を超えないように前記案内手段の表面温度を300℃以上に保持する。
【0036】
好ましい実施形態では、急冷合金の厚さを50μm以上200μm以下にする。
【0037】
好ましい実施形態において、前記案内手段はAl23を80体積%以上含む材料から構成されている。
【0038】
好ましい実施形態において、前記冷却ロールは50W/m/K以上の熱伝導率を有する材料から形成されている基材を用いている。
【0039】
好ましい実施形態において、前記冷却ロールは炭素鋼、タングステン、鉄、銅、モリブデン、ベリリウム、または銅系の合金から形成された基材を有している。
【0040】
好ましい実施形態において、前記冷却ロールの基材の表面には、クロム、ニッケル、または、それらを組み合わせためっきが施されていることを特徴とする。
【0041】
本発明による鉄基永久磁石の製造方法は、上記の製造方法によって作製された急冷合金を用意する工程と、前記急冷合金に対する熱処理を行う工程とを包含する。
【0042】
本発明によるボンド磁石の製造方法は、上記いずれかの製造方法によって作製された合金の粉末の粉末を用意する工程と、前記粉末を用いてボンド磁石を作製する工程とを包含する。
【0043】
本発明による急冷合金は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-nxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素、Rは希土類金属元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素)で表現され、組成比率(原子比率)x、y、z、m、およびnが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.5≦z≦6原子%、0≦m≦0.5、および0≦n≦5原子%を満足する急冷合金であって、厚さが50μm以上200μm以下の範囲内にあり、厚さ方向と直交する2つの端面に結晶組織が形成されていることを特徴とする。
【0044】
好ましい実施形態において、前記結晶組織は、平均粒径が1nm以上50nm以下の強磁性硼化物相と、平均粒径20nm以上200nm以下のR2Fe14B型化合物相とを含んでいる。
【0045】
好ましい実施形態では、前記両端面における結晶組織に挟まれた領域に非晶質部分が存在する。
【0046】
好ましい実施形態において、厚さは80μm以上である。
【0047】
本発明による急冷合金は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-nxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素、Rは希土類金属元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、z、m、およびnが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.5≦z≦6原子%、0≦m≦0.5、および0≦n≦5原子%、を満足する急冷合金であって、厚さが60μm以上150μm以下の範囲内にあり、リコイル透磁率が1.1以上2以下である。
【0048】
本発明による磁粉は、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-nxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素、Rは希土類金属元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、z、m、およびnが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.5≦z≦6原子%、0≦m≦0.5、および0≦n≦5原子%を満足する磁粉であって、平均粒径が60μm以上110μm以下、短軸サイズに対する長軸サイズの比率が0.3以上1以下、保磁力HcJが600kA/m以上である。
【0049】
【発明の実施の形態】
本発明による永久磁石の製造方法は、ストリップキャスト法により、Fe、B、R(Yを含む1種以上の希土類金属元素)、およびTiを含有する鉄基合金溶湯を減圧雰囲気中で冷却し、それによって微細なR2Fe14B型化合物相を含む急冷合金を作製する。そして、その後に必要に応じて急冷合金に対する熱処理を行ない、急冷合金中に残存していた非晶質を結晶化させる。
【0050】
ストリップキャスト法は、冷却ロールの表面に合金溶湯を接触させ、合金溶湯を冷却することにより、急冷合金の薄帯を作製する方法である。本発明では、従来のストリップキャスト法に比べて高速で回転する冷却ロールによって合金溶湯の急冷・凝固を行う。ストリップキャスト法は、ノズルオリフィスを用いて合金溶湯を冷却ロールの表面に噴射するメルトスピニング法に比べて、冷却速度は低いが、幅が広くて比較的厚い急冷合金薄帯を作製できるため、量産性に優れている。
【0051】
本発明によれば、急冷合金中に軟磁性のα−Feをほとんど析出させず、微細なR2Fe14B型化合物相を有する結晶組織、あるいは、微細なR2Fe14B型化合物相を有する組織とアモルファス相が混在した組織が作製される。これにより、R2Fe14B型化合物相の粗大化を抑制し、熱処理後であっても、その平均粒径を20nm以上150nm以下とし、かつ、α−Fe相などの軟磁性相が微細に分散した高性能の複合型永久磁石を得ることができる。また、微細な軟磁性相は、R2Fe14B型化合物相の粒界または亜粒界に存在し、構成相の間で交換相互作用が強められる。
【0052】
従来、本発明が対象とするような組成に類似する組成(すなわち、本発明の組成からTiを除いた組成)を有する合金溶湯を冷却してR2Fe14B型化合物相を多く含む急冷合金を作製しようとすると、α−Feが多く析出した合金組織が得られる。このため、その後の結晶化熱処理でα−Feが粗大化してしまうという問題があった。α−Feなどの軟磁性相が粗大化すると、磁石特性が大きく劣化し、到底実用に耐える永久磁石は得られない。
【0053】
特に本発明で用いる原料合金組成のようにホウ素の含有量が比較的多く、希土類元素Rが比較的少ない(10原子%以下)場合、従来技術によれば、合金溶湯の冷却速度を充分に低下させてR2Fe14B型化合物相の体積比率が60%を超えるような急冷凝固合金を作製しようとすると、R2Fe14B型化合物相以外にα−Feまたはその前駆体が多く析出してしまい、その後の結晶化熱処理により、α−Fe相の粗大化が進行し、磁石特性が大きく劣化してしまった。
【0054】
以上のことから、従来、ナノコンポジット磁石の保磁力を増大させるには、メルトスピニング法を用いて合金溶湯の冷却速度を高め、急冷凝固合金の大部分がアモルファス相によって占められるような状態にした後、そのアモルファス相から結晶化熱処理により均一に微細化された組織を形成することが好ましいとの常識が存在していた。これは、微細な結晶相が分散した合金組織を持つナノコンポジット磁石を得るには、制御しやすい熱処理工程でアモルファス相から結晶化を行なうべきと考えられていたからである。
【0055】
このため、アモルファス生成能に優れたLaを原料合金に添加し、その原料合金の溶湯を急冷することによってアモルファス相を主相とする急冷凝固合金を作製した後、結晶化熱処理でNd2Fe14B相およびα−Fe相の両方を析出・成長させ、いずれの相も数十nm程度の微細なものとする技術が報告されている(W.C.Chan, et.al. "THE EFFECTS OF REFRACTORY METALS ON THE MAGNETIC PROPERTIES OF α−Fe/R2Fe14B-TYPE NANOCOMPOSITES", IEEE, Trans. Magn. No. 5, INTERMAG. 99, Kyongiu, Korea pp.3265-3267, 1999)。なお、この論文は、Tiなどの高融点金属元素の微量添加(2at%)が磁石特性を向上させることと、希土類元素であるNdの組成比率を9.5at%よりも11.0at%に増加させることがNd2Fe14B相およびα−Fe相の両方を微細化する上で好ましいことを教示している。上記高融点金属の添加は、硼化物(R2Fe233やFe3B)の生成を抑制し、Nd2Fe14B相およびα−Fe相の2相のみからなる磁石を作製するために行なわれている。
【0056】
上記のナノコンポジット磁石用の急冷合金は、ノズルを用いて合金溶湯を高速で回転する冷却ロールの表面に噴射するメルトスピニング法で作製される。メルトスピニング法による場合、極めて速い冷却速度が得られるため、非晶質の急冷合金を作製するのに適している。
【0057】
これに対し、本発明では、ストリップキャスト法を用いて、従来のメルトスピニング法における冷却速度よりも遅い速度で合金溶湯を冷却するが、添加元素Tiの働きにより、急冷凝固工程でγ−Fe(後でα−Fe相に変化する)の析出を抑え、更には、結晶化熱処理工程におけるα−Fe相などの軟磁性相の粗大化を抑制している。その結果、微細なR2Fe14B型化合物相が均一に分散した急冷合金を作製することができる。
【0058】
本発明によれば、希土類元素量が比較的少ない(10at%未満)原料合金を用いながら、磁化(残留磁束密度)および保磁力が高く、減磁曲線の角形性にも優れた永久磁石を量産レベルで製造することができる。
【0059】
本発明による保磁力の増加は、Nd2Fe14B相を冷却工程で優先的に析出・成長させ、それによってNd2Fe14B相の体積比率を増加させながら、しかし軟磁性相の粗大化を抑制したことによって実現する。磁化の増加は、Tiの働きにより、急冷凝固合金中に存在するホウ素リッチな非磁性アモルファス相から強磁性鉄基硼化物などの硼化物相を生成し、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモルファス相の体積比率を減少させたために得られたものと考えられる。
【0060】
以下、本発明の鉄基希土類合金磁石をより詳細に説明する。
【0061】
まず、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n(B1-ppxyTiznで表現される鉄基希土類原料合金の溶湯を用意する。ここで、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)および希土類金属からなる群から選択された1種以上の元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、およびPbからなる群から選択された1種以上の元素である。また、組成比率(原子比率)x、y、z、m、n、およびpは、それぞれ、以下の関係式を満足する。
【0062】
10<x≦25原子%
7≦y<10原子%
0.5≦z≦12原子%
0≦m≦0.5
0≦n≦10原子%および
0≦p≦0.25
【0063】
次に、ストリップキャスト法により、上記の合金溶湯を減圧雰囲気ガス中にて急冷し、微細な(例えば平均粒径が150nm以下の)R2Fe14B型化合物相を体積比率で60%以上含む急冷合金を作製する冷却工程を行なう。
【0064】
その後、必要に応じて、急冷合金に対する結晶化熱処理を行ない、R2Fe14B型化合物相および強磁性の鉄基硼化物相を含むナノコンポジット組織を形成する。軟磁性相としては、鉄基硼化物の他に、微細なα−Fe相を含んでいても良い。このような組織中、R2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は20nm以上200nm以下、硼化物相およびα−Fe相の平均結晶粒径は1nm以上50nm以下となるように合金溶湯の冷却条件および結晶化熱処理条件が調節される。
【0065】
本発明によれば、添加したTiの働きにより、合金溶湯の冷却工程でR2Fe14B型化合物相を多く優先的に生成することができる。
【0066】
最終的な磁石におけるR2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、鉄基硼化物相やα−Fe相の平均結晶粒径よりも大きい。硬磁性相であるR2Fe14B型化合物相の平均サイズが比較的大きく、α−Fe相などの軟磁性相の平均サイズが充分に小さいとき、各構成相が交換相互作用によって効果的に結合し、軟磁性相の磁化方向が硬磁性相によって拘束されるので、合金全体としては優れた減磁曲線の角形性を示すことが可能になる。
【0067】
本発明では、合金組成、合金の冷却速度、および熱処理温度などの製造条件を調節することにより、R2Fe14B型化合物相の飽和磁化と同等または、それよりも高い飽和磁化を有する鉄基硼化物やα−Feを生成することが可能になる。生成される鉄基硼化物は、例えば、Fe3B(飽和磁化1.5T)やFe236(飽和磁化1.6T)である。ここで、R2Fe14Bの飽和磁化は、RがNdの場合に約1.6Tであり、α−Feの飽和磁化は2.1Tである。
【0068】
本発明の製造方法による場合、上記のような強磁性の鉄基硼化物が生成されやすい理由は、R2Fe14B型化合物相が大半を占める凝固合金を作製すると、急冷合金中に存在するアモルファス相がどうしてもホウ素を過剰に含むこととなるため、この余分なホウ素が結晶化熱処理で他の元素と結合して析出・成長しやすくなるためであると考えられる。しかし、熱処理前のアモルファス相に含まれるホウ素と他の元素が結合して、磁化の低い化合物が生成されると、磁石全体として磁化が低下してしまう。なお、本明細書における「アモルファス相」とは、原子配列が完全に無秩序化した部分によってのみ構成される相だけではなく、結晶化の前駆体や微結晶(サイズ:数nm以下)、または原子クラスタを部分的に含んでいる相をも含むものとする。具体的には、X線回折や透過電子顕微鏡観察によって結晶構造を明確に同定できない相を広く「アモルファス相」と称することにする。そして、X線回折や透過電子顕微鏡観察によって結晶構造を明確に同定できる構造を「結晶相」と称することとする。
【0069】
本発明者の実験によれば、Tiを添加した場合だけ、V、Cr、Mn、Nb、Moなどの他の種類の金属を添加した場合と異なり、磁化の低下が生じず、むしろ磁化が向上することがわかった。また、Tiを添加した場合、前述の他の添加元素と比べ、減磁曲線の角形性が特に良好なものとなった。これらのことから、磁化の低い硼化物の生成を抑制する上でTiが特に重要な働きをしていると考えられる。特に、本発明で用いる原料合金の組成範囲のうち、ホウ素およびTiが比較的に少ない場合は、熱処理によって強磁性を有する鉄基硼化物相が析出しやすい。この場合、非磁性のアモルファス相中に含まれるホウ素が鉄基硼化物中に取り込まれる結果、結晶化熱処理後に残存する非磁性アモルファス相の体積比率が減少し、強磁性の結晶相が増加するため、残留磁束密度Brが向上する。
【0070】
また、Tiを添加した場合は、α−Feの粒成長が抑制され、優れた硬磁気特性が発揮される。そして、R2Fe14B相やα−Fe相以外の強磁性相を生成し、それによって、合金内に3種類以上の強磁性相を含む組織を形成することが可能になる。Tiに代えて、Nb、V、Crなどの金属元素を添加した場合は、α−Fe相が析出するような比較的高い温度領域でα−Fe相の粒成長が著しく進行し、α−Fe相の磁化方向が硬磁性相との交換結合によって有効に拘束されなくなる結果、減磁曲線の角形性が大きく低下する。
【0071】
なお、Tiに代えて、Nb、Mo、Wを添加した場合、α−Feが析出しない比較的低い温度領域で熱処理を行なえば、減磁曲線の角形性に優れた良好な硬磁気特性を得ることが可能である。しかし、このような温度で熱処理を行なった合金では、R2Fe14B型微細結晶相が非磁性のアモルファス相中に分散して存在していると推定され、ナノコンポジット磁石の構成は形成されていない。また、更に高い温度で熱処理を行なうと、アモルファス相中からα−Fe相が析出してしまう。このα−Fe相は、Tiを添加した場合と異なり、析出後、急激に成長し、粗大化する。このため、α−Fe相の磁化方向が硬磁性相との交換結合によって有効に拘束されなくなり、減磁曲線の角形性が大きく劣化してしまうことになる。
【0072】
一方、Tiに代えて、VやCrを添加した場合は、これらの添加金属がFeに固溶し、反強磁性的に結合するため、磁化が大きく低下してしまう。
【0073】
一方、Tiを添加した場合は、α−Fe相の析出・成長のキネティクス(kinetics)が遅くなり、析出・成長に時間を要するため、α−Fe相の析出・成長が完了する前にNd2Fe14B相の析出・成長が開始すると考えられる。このため、α−Fe相が粗大化する前にNd2Fe14B相が均一に分散した状態で大きく成長する。
【0074】
このようにTiを添加した場合のみ、α−Fe相の粗大化を適切に抑制し、強磁性の鉄基硼化物を形成することが可能になる。更に、Tiは、液体急冷時にFe初晶(後にα−Feに変態するγ−Fe)の晶出を遅らせ、過冷却液体の生成を容易にする元素としてホウ素や炭素とともに重要な働きをするため、合金溶湯を急冷する際の冷却速度を102℃/秒〜104℃/秒程度の比較的低い値にしても、粗大なα−Feを析出させることなく、R2Fe14B型結晶相を60体積%以上含む急冷合金(R2Fe14B型結晶相以外には鉄基硼化物を含むことがある)を作製することが可能になる。
【0075】
本発明では、ノズルオリフィスによる溶湯の流量制御を行なわずに溶湯をシュート(案内手段)から直接に冷却ロール上へ注ぐストリップキャスト法を用いる。このため、ノズルオリフィスを用いるメルトスピニング法による場合と比較して、生産性が高く、製造コストが低い。このようにR−Fe−B系希土類合金の溶湯をストリップキャスト法によっても達成可能な冷却速度範囲でアモルファス化するには、通常、B(ホウ素)を10原子%以上添加する必要がある。このようにBを多く添加した場合は、急冷合金に対して結晶化熱処理を行った後も、B濃度の高い非磁性のアモルファス相が金属組織中に残存し、均質な微細結晶組織が得られない。その結果、強磁性相の体積比率が低下し、磁化の低下を招来する。しかしながら、本発明のようにTiを添加すると、上述した現象が観察されるため、磁化の高い鉄基硼化物が生成され、予想外に磁化が向上する。
【0076】
[組成の限定理由]
BおよびCの合計の組成比率xが10原子%以下になると、急冷時の冷却速度が102℃/秒〜105℃/秒程度と比較的遅い場合、R2Fe14B型結晶相とアモルファス相とが混在する急冷合金を作製することが困難になり、その後に熱処理を施しても高い保磁力が得られない。また、組成比率xが10原子%以下になると、高い磁化を示す鉄基硼化物が生成されなくなる。鉄基硼化物中のホウ素はTiと結合して安定な化合物を作るため、鉄基硼化物が多いほど、耐候性が向上する。このため、xは10原子%を超えることが必要である。一方、組成比率xが25原子%を超えると、結晶化熱処理後も残存するアモルファス相の体積比率が増し、同時に、構成相中で最も高い飽和磁化を有するα−Feの存在比率が減少するため、残留磁束密度Brが低下してしまう。以上のことから、組成比率xは10原子%を超え、25原子%以下となるように設定することが好ましい。より好ましい組成比率xの範囲は10原子%を超え、17原子%以下である。
【0077】
BおよびCの全体に対するCの比率pは、原子比で、0以上0.25以下の範囲にあることが好ましい。C添加の効果を得るには、Cの比率pが0.01以上であることが好ましい。pが0.01よりも少なすぎると、C添加の効果がほとんど得られない。一方、pが0.25よりも大きくなりすぎると、α−Fe相の生成量が増大して、磁気特性が劣化するという問題が生じる。比率pの下限は、0.02であることが好ましく、pの上限は0.20以下であることが好ましい。比率pは0.08以上0.15以下であることが更に好ましい。
【0078】
Rは、希土類元素(Yを含む)の群から選択された1種以上の元素である。LaまたはCeが存在すると、R2Fe14B相のR(典型的にはNd)がLaやCeで置換され、保磁力および角形性が劣化するため、LaおよびCeを実質的に含まないことが好ましい。ただし、微量のLaやCe(0.5原子%以下)が不可避的に混入する不純物として存在する場合、磁気特性上、問題はない。従って、0.5原子%以下のLaやCeを含有する場合は、LaやCeを実質的に含まないといえる。
【0079】
Rは、より具体的には、PrまたはNdを必須元素として含むことが好ましく、その必須元素の一部をDyおよび/またはTbで置換してもよい。Rの組成比率yが全体の6原子%未満になると、保磁力の発現に必要なR2Fe14B型結晶構造を有する化合物相が充分に析出せず、高い保磁力HcJを得ることができなくなる。また、Rの組成比率yが10原子%以上になると、強磁性を有する鉄基硼化物の存在量が低下し、代わりにBリッチの非磁性層の存在量が増加するため、ナノコンポジット構造が形成されず、磁化が低下する。故に、希土類元素Rの組成比率yは6原子%以上10原子%未満の範囲、例えば、6原子%以上9.5原子%以下に調節することが好ましい。より好ましいRの範囲は7原子%以上9.3原子%以下であり、最も好ましいRの範囲は8.3原子%以上9.0原子%以下である。
【0080】
Tiの添加は、合金溶湯の急冷中に硬磁性相を軟磁性相よりも早くに析出・成長させるという効果を発揮するとともに、保磁力HcJおよび残留磁束密度Brの向上および減磁曲線の角形性の改善に寄与し、最大エネルギー積(BH)maxを向上させる。
【0081】
Tiの組成比率zが全体の0.5原子%未満になると、Ti添加の効果が充分に発現しない。一方、Tiの組成比率zが全体の12原子%を超えると、結晶化熱処理後も残存するアモルファス相の体積比率が増すため、残留磁束密度Brの低下を招来しやすい。以上のことから、Tiの組成比率zは0.5原子%以上12原子%以下の範囲とすることが好ましい。より好ましいzの範囲の下限は1.0原子%であり、より好ましいzの範囲の上限は6原子%である。更に好ましいzの範囲の上限は5原子%である。
【0082】
また、Cおよび/またはBから構成されるQの組成比率xが高いほど、Q(例えば硼素)を過剰に含むアモルファス相が形成されやすいので、Tiの組成比率zを高くすることが好ましい。TiはBに対する親和性が強く、硬磁性相の粒界に濃縮される。Bに対するTiの比率が高すぎると、Tiは粒界にではなく、R2Fe14B化合物中に入り込み、磁化を低下させる可能性がある。また、Bに対するTiの比率が低すぎると、被磁性のBリッチアモルファス相が多く生成されてしまう。実験によれば、0.05≦z/x≦0.4を満足させるように組成比率を調節することが好ましく、0.1≦z/x≦0.35を満足させることがより好ましい。更に好ましくは0.13≦z/x≦0.3である。
【0083】
種々の効果を得る為、金属元素Mを添加しても良い。Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された1種以上の元素である。
【0084】
Feは、上述の元素の含有残余を占めるが、Feの一部をCoおよびNiの1種または二種の遷移金属元素(T)で置換しても所望の硬磁気特性を得ることができる。Feに対するTの置換量が50%を超えると、0.7T以上の高い残留磁束密度Brが得られない。このため、置換量は0%以上50%以下の範囲に限定することが好ましい。なお、Feの一部をCoで置換することによって、減磁曲線の角形性が向上するとともに、R2Fe14B相のキュリー温度が上昇するため、耐熱性が向上する。CoによるFe置換量の好ましい範囲は0.5%以上40%以下である。
【0085】
次に、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0086】
(実施形態1)
まず、本発明の第1の実施形態を説明する。
【0087】
本実施形態では、図1に示すストリップキャスティング装置を用いて急冷凝固合金を製造する。酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で急冷合金の作製を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスや窒素を用いることができる。なお、窒素は希土類元素Rと比較的に反応しやすいため、ヘリウムまたはアルゴンなどの希ガスを用いることが好ましい。
【0088】
図1のストリップキャスティング装置は、内部を不活性ガス雰囲気での減圧状態にすることができる不図示のチャンバ内に配置される。このストリップキャスティング装置は、合金原料を溶解するための溶解炉1と、溶解炉1の底部出口2から供給される合金溶湯3を急冷・凝固させるための冷却ロール7と、溶解炉1から冷却ロール7に溶湯3を導く樋4およびシュート(案内手段)5と、凝固して冷却ロール7から薄帯状の合金8を剥離しやすくするスクレパーガス噴出器9とを備えている。
【0089】
溶解炉1は、合金原料を溶融することによって作製した溶湯3をシュート5に対して略一定の供給量で供給することができる。この供給量は、溶解炉1を傾ける動作を制御することなどによって、任意に調節することができる。なお、樋4は、必須ではなく、溶解炉1から出た合金溶湯3を直接シュート5に供給しても良い。
【0090】
冷却ロール7は、その外周面が銅などの熱伝導性の良好な材料から形成されており、例えば、直径30cm〜100cmで幅が15cm〜100cmの寸法を有する。冷却ロール7は、不図示の駆動装置によって所定の回転速度で回転することができる。この回転速度を制御することによって、冷却ロール7の周速度を任意に調節することができる。このストリップキャスティング装置による冷却速度は、冷却ロール7の回転速度などを選択することにより、約102℃/秒〜約105℃/秒の範囲で制御可能である。
【0091】
シュート5の溶湯を案内する面は、水平方向に対して角度(傾斜角度)αで傾斜し、シュート5の先端部と冷却ロールの表面との距離は数mm以下に保たれる。そして、シュート5は、その先端部と冷却ロール7の中心とを結ぶ線が水平方向に対して角度β(0°≦β≦90°)を形成するように配置される。シュート5の傾斜角度αは、1°≦α≦80°であることが好ましく、5°≦α≦60°の関係を満足することが更に好ましい。角度βは、10°≦β≦55°の関係を満足することが好ましい。
【0092】
シュート5上に供給された溶湯3は、シュート5の先端部から冷却ロール7の表面に対して供給され、冷却ロール7の表面に溶湯のパドル6を形成する。
【0093】
シュート5は、溶解炉1から所定の流量で連続的に供給される溶湯3を一時的に貯湯するようにして流速を遅延し、溶湯3の流れを整流することができる。シュート5に供給された溶湯3における溶湯表面部の流れを選択的に堰き止めることができる堰き止め板を設ければ、整流効果を更に向上させることができる。シュート5を用いることによって、冷却ロール7の胴長方向(軸線方向:紙面に垂直)において、一定幅にわたって略均一な厚さに広げた状態で、溶湯3を供給することができる。シュート5の溶湯案内面の傾斜角度αを調節することにより、溶湯供給速度を微調整できる。溶湯は、その自重により、シュート5の傾斜した案内面を流れ、水平方向(X軸方向)に平行な運動量成分をもつ。シュート5の傾斜角度αを大きくするほど、溶湯の流速は速くなり、運動量も大きくなる。
【0094】
シュート5は、上記の機能に加え、冷却ロール7に達する直前の溶湯3の温度を調整する機能をも有する。シュート5上における溶湯3の温度は、液相線温度よりも100℃以上高い温度であることが望ましい。溶湯3の温度が低すぎると、急冷後の合金特性に悪影響を及ぼすTiB2などの初晶が局所的に核発生し、これが凝固後に残存してしまうことがあるからである。また、溶湯温度が低すぎると、溶湯粘度が上昇し、スプラッシュが発生しやすくなる。シュート5上での溶湯温度は、溶解炉1からシュート5に注ぎ込む時点での溶湯温度やシュート5自体の熱容量などを調節することによって制御することができるが、必要に応じてシュート加熱装置(図1において不図示)を設けても良い。
【0095】
本実施形態におけるシュート5は、冷却ロール7の外周面に対向するように配置された端部において、冷却ロールの軸線方向に沿って所定の間隔だけ離して設けられた複数の排出部を有している。この排出部の幅(溶湯の1つの流れの幅)は、好適には0.5cm〜10.0cmに設定され、より好適には0.7cm〜4.0cmに設定される。本実施形態では、排出部における各溶湯流れの幅は1cmに設定されている。なお、溶湯の流れの幅は、上記排出部の位置から離れるにつれ、横方向に広がる傾向がある。シュート5に複数の排出部を設け、複数の溶湯流れを形成する場合は、隣接する溶湯流れが相互に接触しないようにすることが好ましい。
【0096】
シュート5上に供給された溶湯3は、冷却ロール7の軸線方向に沿って、各排出部の幅と略同一幅を有して冷却ロール7と接触する。その後、冷却ロール7に所定の出湯幅で接触した溶湯3は、冷却ロール7の回転に伴って(冷却ロール7に引き上げられるようにして)ロール周面上を移動し、この移動過程において冷却される。なお、溶湯漏れを防止するために、シュート5の先端部と冷却ロール7との間の距離は、3mm以下(特に0.4〜0.7mmの範囲)に設定されることが好ましい。
【0097】
隣接する排出部間の間隙は、好適には1cm〜10cmに設定される。このようにして冷却ロール7の外周面における溶湯接触部(溶湯冷却部)を複数の箇所に分離すれば、各排出部から排出された溶湯を効果的に冷却することができる。結果として、シュート5への溶湯供給量を増加させた場合にも所望の冷却速度を実現することができる。
【0098】
なお、シュート5の形態は、上記形態に限られず、単一の排出部を有するものであってもよいし、出湯幅がより大きく設定されていてもよい。
【0099】
回転する冷却ロール7の外周面上で凝固された合金溶湯3は、薄帯状の凝固合金8となって冷却ロール7から剥離する。本実施形態の場合、複数の排出部の各々から流れ出た溶湯が所定幅の帯となり、凝固する。剥離した凝固合金8は、不図示の回収装置において破砕され、回収される。
【0100】
このように、ストリップキャスト法は、メルトスピニング法のようにノズルを用いておらず、ノズル径による噴射スピードの制約やノズル部での凝固による溶湯詰まりなどの問題がないので、大量生産に適している。また、ノズル部の加熱設備や溶湯ヘッド圧を制御する為の圧力制御機構も必要でないため、初期設備投資やランニングコストを小さく抑えることができる。
【0101】
また、メルトスピニング法では、ノズル部分の再利用が不可能なため、加工コストの高いノズルを使い捨てにしなければならなかったが、ストリップキャスト法ではシュートを繰り返し使用することが可能であるのでランニングコストが安価である。
【0102】
更に、ストリップキャスト法によれば、メルトスピニング法に比べ、遅い速度で冷却ロールを回転させ、また、合金出湯量を多くできるため、急冷合金薄帯を厚くすることができる。
【0103】
しかしながら、ストリップキャスト法では合金溶湯を冷却ロールの表面に強く噴射しないため、冷却ロール7が10m/秒以上の比較的速い周速度で回転するような場合は、冷却ロール7の表面に溶湯のパドル6を安定して形成するのが難しいという問題がある。また、ノズルを用いない場合、合金溶湯がロール表面を押す圧力が小さいため、合金溶湯とロール表面との接触部において合金溶湯とロール表面との間に微小な隙間が生じやすい。このため、合金溶湯とロール表面との間の密着性は、ストリップキャスト法がメルトスピニング法に比べて劣る。密着性に関する問題およびその解決方法については、後述する。
【0104】
本実施形態では、溶湯供給速度(処理量)の上限値を、溶湯と冷却ロールとの間の単位接触幅あたりの供給速度で規定している。ストリップキャスト法による場合、溶湯は冷却ロールの軸線方向に沿って所定の接触幅を有するように冷却ロールと接触するため、溶湯の冷却条件が単位接触幅あたりの溶湯供給速度に大きく依存する。
【0105】
溶湯供給速度が速すぎると、冷却ロールによる溶湯の冷却速度が低下し、その結果、非晶質化が促進せずに結晶化組織を多く含む急冷合金が作製されてしまいナノコンポジット磁石に適した原料合金を得ることができなくなってしまう。このため、本発明では、単位接触幅(cm)あたりの供給速度(kg/分)を3kg/分/cm以下に設定している。
【0106】
また、前述のように、例えば接触幅約2cm×3本の接触形態で溶湯を冷却ロールに接触させる場合、供給速度を約0.5kg/分/cm以上に設定することによって、約3kg/分以上の処理量を実現することができる。
【0107】
このように、上記特定範囲の周速度で回転する冷却ロールに対して上記特定範囲の供給速度で溶湯を供給することによって、ストリップキャスト法を用いた場合にも所望の急冷合金を生産性高く作製することができる。ストリップキャスト法では、ジェットキャスト法のように製造コストを著しく増加させるノズルを使用しないので、ノズルにかかるコストが不必要となり、また、ノズルの閉塞事故によって生産が停止することもない。
【0108】
本実施形態においては、冷却ロールの周速度を5m/秒以上20m/秒未満に設定することができる。ロール周速度が5m/秒未満であると、冷却能力の不足により所望の急冷合金が得られず、また、20m/秒以上にすると、ロールによって溶湯を引き上げることが難しくなり、冷却合金が薄片状で飛散するため、回収にも困難をきたすおそれがある。最適な周速度は、冷却ロールの構造、材質、溶湯供給速度などによって異なり得るが、周速度が速いと、得られる薄帯状合金は極端に薄くなって嵩張るため、取り扱いにくくなる。また、周速度が速すぎると、薄帯状合金を粉砕して作製した磁粉の形状が扁平になるため、磁粉を成形する際、磁粉の流動性やキャビティ充填率が低下する。その結果、磁石の磁粉密度が低下し、磁石特性が劣化してしまう。一方、周速度が遅いと、十分な冷却速度を得ることが困難になる。これらのことから、冷却ロールの周速度は、好ましくは5m/秒以上20m/秒以下に設定され、より好ましくは6m/秒以上15m/秒以下に設定される。冷却ロールの周速度の更に好ましい範囲は、10m/秒以上13m/秒以下である。
【0109】
なお、単位接触幅あたりの供給速度が3kg/分/cmを超えると、所定の冷却速度が得られず、所望の急冷合金を作製することが困難になる。単位接触幅あたりの供給速度の適切な範囲は、ロール周速度、ロール構造などに応じて異なり得るが、2kg/分/cm以下であることが好ましく、1.5kg/分/cm以下であることが更に好ましい。
【0110】
また、装置全体としての溶湯供給速度(処理速度)は、3kg/分未満では生産性が悪く、安価な原料供給を実現できないため、3kg/分以上にしている。このためには、シュートや冷却ロールの形状などを適切に選択した場合において単位接触幅あたりの供給速度を、0.4kg/分/cm以上にすることが好ましい。
【0111】
例えば直径約35cmで幅約15cmのCu製ロールを用いた場合、ロール周速度が5m/秒〜10m/秒であれば、単位接触幅あたりの供給速度は、0.5kg/分/cm〜2kg/分/cm程度が好ましい。この場合、0.5kg/分〜6kg/分の供給速度で急冷工程を行うことができる。
【0112】
シュート5の形状や、溶湯排出部の幅と本数、溶湯供給速度などを適切に選択することによって、得られる薄帯状急冷合金の厚さ(平均値)及び幅が適正範囲内に調節できる。薄帯状急冷合金の幅は、15mm〜80mmの範囲であることが好ましい。また、薄帯状合金の厚さは、薄すぎると嵩密度が低くなるので回収困難となり、厚すぎると溶湯のロール接触面と自由面(溶湯表面)とで冷却速度が異なり、自由面の冷却速度が十分に得られないため好ましくない。このため、薄帯状合金の厚さが50μm以上250μm以下となるようにすることが好ましく、60μm以上200μm以下となるようにすることがより好ましい。急冷合金の厚さの更に好ましい範囲は、70μm以上90μm以下である。また、ボンド磁石の充填密度を考慮すると、急冷合金の厚さは80μmを超えることが好ましい。
【0113】
[熱処理]
本実施形態では、熱処理をアルゴン雰囲気中で実行する。好ましくは、昇温速度を5℃/秒〜20℃/秒として、550℃以上850℃以下の温度で30秒以上20分以下の時間保持した後、室温まで冷却する。この熱処理によって、残存アモルファス相中に準安定相の微細結晶が析出・成長し、ナノコンポジット組織構造が形成される。本発明によれば、熱処理の開始前の時点(as−cast)で既に微細なR2Fe14B結晶相(Nd2Fe14B型結晶相)が全体の60体積%以上存在しているため、α−Fe相や他の結晶相の粗大化が抑制され、Nd2Fe14B型結晶相以外の各構成相(軟磁性相)が均一に微細化される。熱処理後におけるR2Fe14B結晶相(Nd2Fe14B型結晶相)が合金中に占める体積比率は65〜85%である。
【0114】
なお、熱処理温度が550℃を下回ると、熱処理後もアモルファス相が多く残存し、急冷条件によっては、保磁力が充分なレベルに達しない場合がある。また、熱処理温度が850℃を超えると、各構成相の粒成長が著しく、残留磁束密度Brが低下し、減磁曲線の角形性が劣化する。このため、熱処理温度は550℃以上850℃以下が好ましいが、より好ましい熱処理温度の範囲は570℃以上820℃以下である。
【0115】
本発明では、急冷合金中に充分な量のNd2Fe14B型化合物相が均一かつ微細に析出している。このため、急冷合金に対して敢えて結晶化熱処理を行なわない場合でも、急冷凝固合金自体が充分な磁石特性を発揮し得る。そのため、結晶化熱処理は本発明に必須の工程ではないが、これを行なうことが磁石特性向上のためには好ましい。なお、従来に比較して低い温度の熱処理でも充分に磁石特性を向上させることが可能である。
【0116】
熱処理雰囲気は、合金の酸化を防止するため、50kPa以下のArガスやN2ガスなどの不活性ガスが好ましい。0.1kPa以下の真空中で熱処理を行っても良い。
【0117】
熱処理前の急冷合金中には、R2Fe14B化合物相およびアモルファス相以外に、Fe3B相、Fe236、R2Fe14B相、およびR2Fe233相等の準安定相が含まれていても良い。その場合、熱処理によってR2Fe233相は消失し、R2Fe14B相の飽和磁化と同等、または、それよりも高い飽和磁化を示す鉄基硼化物(例えばFe236)やα−Feを結晶成長させることができる。なお、本明細書における「Fe3B相」は、「Fe3.5B相」を含むものとする。
【0118】
本発明の場合、最終的にα−Feのような軟磁性相が存在していても、軟磁性相の平均結晶粒径が硬磁性相の平均結晶粒径よりも小さいため、軟磁性相と硬磁性相とが交換相互作用によって磁気的に結合するため、優れた磁気特性が発揮される。
【0119】
熱処理後におけるNd2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、単軸結晶粒径である300nm以下となる必要があり、20nm以上200nm以下であることが好ましく、20nm以上150nm以下であることが更に好ましい。これに対し、強磁性の鉄基硼化物相やα−Fe相の平均結晶粒径が50nmを超えると、各構成相間に働く交換相互作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣化するため、(BH)maxが低下してしまう。通常、これらの相は1nmよりも小さな直径をもつ析出物とはならず、数nmの大きさの析出物となる。以上のことから、硼化物相やα−Fe相などの軟磁性相の平均結晶粒径は1nm以上50nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることが更に好ましい。磁気特性上、Nd2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径が20nm以上100nm以下、軟磁性相の平均結晶粒径が1nm以上30nm以下であることが更に好ましい。また、交換スプリング磁石として優れて性能を発揮するには、Nd2Fe14B型化合物相の平均結晶粒径は、軟磁性相の平均結晶粒径よりも大きいことが好ましい。
【0120】
また、本実施形態によれば、図2に示すように、Nd2Fe14B型化合物相の粒界または亜粒界に微細な鉄基硼化物相((Fe,Ti)−B化合物)が存在した組織構造が得られる。このような組織は、構成相間の交換相互作用を最大化するのに適している。鉄基硼化物中にはTiが存在している。これは、TiのBに対する親和性が強く、Tiが鉄基硼化物中に濃縮されやすいためであると考えられる。鉄基硼化物内でTiとBが強く結合するため、Tiの添加は鉄基硼化物を安定化すると考えられる。
【0121】
なお、熱処理前に急冷合金の薄帯を粗く切断または粉砕しておいてもよい。熱処理後、得られた磁石を微粉砕し、磁石粉末(磁粉)を作製すれば、その磁粉から公知の工程によって種々のボンド磁石を製造することができる。ボンド磁石を作製する場合、鉄基希土類合金磁粉はエポキシ樹脂やナイロン樹脂と混合され、所望の形状に成形される。このとき、ナノコンポジット磁粉に他の種類の磁粉、例えばSm−Fe−N系磁粉やハードフェライト磁粉を混合してもよい。
【0122】
上述のボンド磁石を用いてモータやアクチュエータなどの各種の回転機を製造することができる。
【0123】
本発明の方法により得られた磁石磁末を射出成形ボンド磁石用に用いる場合、平均粒度が200μm以下になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒径は30μm以上150μm以下である。また、圧縮成形ボンド磁石用に用いる場合は、粒度が300μm以下になるように粉砕することが好ましく、より好ましい粉末の平均粒径は30μm以上250μm以下である。更に好ましい範囲は50μm以上200μm以下である。
【0124】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。
【0125】
Tiを必須元素として含む上記組成の合金の溶湯をストリップキャスト法で急冷・凝固する場合、TiとBとが結合した化合物(TiB2など)が溶湯中で形成されやすく、その結果、溶湯の液相線温度が従来の組成を有する鉄基希土類磁石原料合金の溶湯に比べて高くなる。溶湯の液相線温度が高くなると、その分、溶湯温度を高め(液相線温度より例えば100℃程度高温)に設定し、溶湯粘度を充分に低く維持しておかなければ、安定した出湯を実現できなくなる。
【0126】
しかし、合金溶湯を冷却ロールの表面で急冷・凝固させる場合に、出湯温度を高くすると、ロール表面温度が上昇するため、急冷合金の薄帯が冷却ロールから剥がれにくくなり、冷却ロールに巻きつきやすくなる。合金薄帯がロールに巻きつくと、巻きついた合金上に次々と溶湯が供給され、急冷合金中に生成される結晶相が粗大化するため、最終的な磁石特性が劣化してしまうことになる。
【0127】
この問題は、比較的少量の合金溶湯をノズルから噴射するメルトスピニング法では、ほとんど生じないものである。メルトスピニング法による場合は、冷却ロールの表面に接触する溶湯の量が少なく、また、強く噴射される溶湯とロール表面との間の密着性もよい。その結果、ロールが溶湯を冷却する能力が低下しにくく、溶湯の冷却が均一かつ充分に進行するからである。
【0128】
これに対して、ストリップキャスト法による場合は、ノズルを用いないため、大量の合金溶湯を均一かつ充分に冷却することが難しい。また、本発明で用いる合金組成では、溶湯の冷却速度や冷却の均一性が急冷合金の微細組織を大きく左右し、磁石特性を決定付けてしまう。このため、高性能ナノコンポジット磁石をストリップキャスト法で量産するには、冷却ロールへの合金薄帯の巻きつきを充分に防止する必要がある。
【0129】
本発明者は、上述した組成系の合金に対して適量のNbを添加することによって合金溶湯の液相線温度が10℃以上(例えば約40〜80℃)も低下することを見出した。合金溶湯の液相線温度が下がると、その分だけ溶湯温度を低下させたとしても、溶湯粘度はほとんど増加せず、安定した出湯を継続的に行なうことが可能になる。出湯温度が低くなると、冷却ロールの表面で充分な冷却を達成することができるため、ロールでの巻きつきを防止するとともに、急冷凝固合金組織を均一微細化することが可能になる。
【0130】
そこで、本実施形態では、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n(B1-ppxyTizNbnで表現される合金の溶湯をストリップキャスト法で急冷する。ここで、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、RはY(イットリウム)および希土類金属からなる群から選択された1種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、z、m、n、およびpが、それぞれ、以下の関係式を満足する。
【0131】
10<x≦25原子%
7≦y<10原子%
0.5≦z≦12原子%
0≦m≦0.5
0.1≦n≦5原子%、および
0≦p≦0.25
【0132】
なお、冷却ロールによる合金の巻きつきを防止するためには、Nbを添加するだけではなく、前述のように雰囲気ガス圧を適切な範囲に調節することが好ましい。
【0133】
本実施形態では、図3に示すストリップキャスティング装置を用いて急冷凝固合金を製造する。酸化しやすい希土類元素RやFeを含む原料合金の酸化を防ぐため、不活性ガス雰囲気中で合金製造工程を実行する。不活性ガスとしては、ヘリウムまたはアルゴン等の希ガスや窒素を用いることができる。
【0134】
図3のストリップキャスティング装置は、内部を不活性ガス雰囲気で減圧状態にすることができるチャンバ内に配置される。このストリップキャスティング装置は、図1の装置と同様に、合金原料を溶解するための溶解炉1と、溶解炉1から供給される合金溶湯3を急冷・凝固させるための冷却ロール7と、溶解炉1から冷却ロール7に溶湯3を導くシュート(タンディッシュ)5と、凝固して冷却ロール7から薄帯状の合金8を剥離しやすくするスクレパーガス噴出器9とを備えている。
【0135】
溶解炉1は、合金原料を溶融することによって作製した溶湯3をシュート5に対して略一定の供給量で供給することができる。この供給量は、溶解炉1を傾ける動作を制御することなどによって、任意に調節することができる。
【0136】
冷却ロール7は、その外周面が銅などの熱伝導性の良好な材料から形成されており、直径(2r)が30cm〜100cmで幅が15cm〜100cmの寸法を有する。冷却ロール7は、不図示の駆動装置によって所定の回転速度で回転することができる。この回転速度を制御することによって、冷却ロール7の周速度を任意に調節することができる。このストリップキャスティング装置による冷却速度は、冷却ロール7の回転速度などを選択することにより、約102℃/秒〜約2×104℃/秒の範囲で制御可能である。
【0137】
シュート5上に供給された溶湯3は、シュートの先端部から冷却ロール7の表面に対して圧力を加えられずに供給され、冷却ロール7の表面に溶湯のパドル6が形成される。
【0138】
シュート5は、セラミックス等で構成され、溶解炉1から所定の流量で連続的に供給される溶湯3を一時的に貯湯するようにして流速を遅延し、溶湯3の流れを整流することができる。シュート5に供給された溶湯3における溶湯表面部の流れを選択的に堰き止めることができる堰き止め板を設ければ、整流効果を更に向上させることができる。
【0139】
ストリップキャスト工程における種々の条件は、最初の実施形態について説明したことが適用される。また、急冷合金に対して行う後の工程は、第1の実施形態における工程と同様である。
【0140】
本実施形態によれば、TiとともにNbを鉄基希土類合金に添加することにより、合金溶湯の液相線温度を下げ、急冷合金を量産レベルで安定して製造することが可能となる。
【0141】
なお、Nbの組成比率は、0.1原子%以上5原子%以下であることが好ましく、0.5原子%以上3原子%以下であることが更に好ましい。
【0142】
(実施形態3)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。
【0143】
前述したように、本発明で用いる合金では、TiとBとが結合した化合物(TiB2など)が溶湯中で形成されやすく、その結果、溶湯の液相線温度が従来の組成を有する鉄基希土類磁石原料合金の溶湯に比べて高くなる。
【0144】
本発明者は、TiおよびBを含む鉄基合金に適量のC(炭素)を添加すれば、合金溶湯の液相線温度が5℃以上(例えば約10〜40℃)低下することを見出した。炭素の添加によって合金溶湯の液相線温度が下がると、その分、溶湯温度を低下させても、TiB2などの晶出が抑制されるため、溶湯粘度はほとんど増加せず、安定した溶湯流れの形成を継続的に行なうことが可能になる。溶湯温度が低くなると、冷却ロールの表面で充分な冷却を達成することができるため、ロールでの巻きつきを防止するとともに、急冷凝固合金組織を均一微細化することが可能になる。
【0145】
本実施形態では、組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-n(B1-ppxyTiznで表現される合金溶湯をストリップキャスト法で急冷することにより、鉄基希土類急冷凝固合金を作製する。ここで、TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素であり、RはY(イットリウム)および希土類金属からなる群から選択された1種以上の元素である。Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Hf、Ta、W、Pt、Au、およびPbからなる群から選択された1種以上の元素である。
【0146】
上記組成式中のx、y、z、m、n、およびpは、それぞれ、以下の関係式を満足する。
【0147】
10<x≦25原子%
7≦y<10原子%
0.5≦z≦12原子%
0≦m≦0.5
0≦n≦10原子%、および
0.01≦p≦0.25
【0148】
上記合金の溶湯を凝固させるため、本実施形態においても、図3に示すストリップキャスティング装置を使用する。なお、本実施形態では、酸素濃度が質量比率で1000ppm以下の原料を溶融し、溶融状態における合金の酸素濃度を質量比率で3000ppm以下に制御する。溶湯の酸素濃度は雰囲気中の酸素分圧や溶融から急冷凝固までの時間などによって変化するため、本実施形態では、これらの諸条件を調節することにより、酸素濃度が3000ppmを超えないようにしている。
【0149】
シュート5上に供給された溶湯3は、シュートの先端部から冷却ロール7の表面に対して圧力を加えられずに供給され、冷却ロール7の表面に溶湯のパドル6を形成する。本実施形態では、炭素を添加することにより、溶湯の液相線温度を低く維持しているため、溶湯の動粘度は、溶湯温度が1200℃以上の場合、5×10-62/秒以下に維持され、スムーズな湯流れが実現する。
【0150】
シュート5上における溶湯3の温度は、液相線温度よりも100℃以上高い温度であることが望ましい。溶湯3の温度が低すぎると、急冷後の合金特性に悪影響を及ぼす初晶が局所的に核発生し、これが凝固後に残存してしまうことがあるからである。
【0151】
ストリップキャスト工程における種々の条件は、最初の実施形態について説明したことが適用される。また、急冷合金に対して行う後の工程は、第1の実施形態における工程と同様である。
【0152】
なお、得られた急冷合金薄帯の「かさ密度」は0.5グラム(g)/cc以下であることが多いため、急冷後、適当な粉砕装置を用いて「かさ密度」が1g/cc以上になるように合金を粉砕し、回収することが好ましい。
【0153】
このストリップキャスト工程以降の工程は、第1の実施形態における工程と同様の工程を行えばよい。
【0154】
本実施形態によれば、TiとともにCを鉄基希土類合金に添加することにより、合金溶湯の液相線温度を下げ、急冷合金を量産レベルで安定して製造することが可能となる。
【0155】
(実施形態4)
従来のストリップキャスト法における冷却ロールの周速度は非常に遅く、1〜2m/秒程度である。本発明で用いる合金組成では、Ti添加により、比較的低速度でも良質な急冷合金組織を形成することができるが、磁石特性をできるだけ向上させるには、従来のストリップキャスト法における周速度よりも格段に速い周速度で溶湯の冷却を行うことが好ましい。
【0156】
しかし、ストリップキャスト法において、冷却ロールの回転速度を高めると、合金溶湯を充分に引き上げることが困難になる。ストリップキャスト法の場合、メルトスピニング法に比べて、回転するロール表面に対する溶湯の密着度が低くい。これは、ロール表面に形成される薄い空気層が溶湯とロール表面との間に侵入することが一因である。このため、冷却ロールを高速で回転させると、溶湯がロール表面上で滑り、溶湯を引き上げられなくなるからである。これに対して、メルトスピニング法による場合は、ノズルオリフィスを介して大きな運動量を持つ溶湯の細い噴流を冷却ロール表面にぶつけるため、空気層を割って溶湯をロール表面に密着させることができ、たとえ冷却ロールが高速回転している場合でも、所望の急冷凝固合金を形成することが可能である。
【0157】
このような事情から、従来は、冷却速度を高める必要がある場合、メルトスピニング法を用いて冷却ロールの周速度を高め(例えば20m/秒以上)に設定していた。逆に冷却速度が遅くて良い場合は、ストリップキャスト法を用いて冷却ロールの周速度を低く(例えば1〜2m/秒)設定していた。
【0158】
鉄基希土類合金磁石を液体急冷法によって作製する場合、冷却速度を充分に高めないかぎり、所望の微細組織構造を得ることができない。特に、Nd−Fe−B系化合物からなる硬磁性相とα−Feなどの軟磁性相とが交換相互作用によって磁気的に結合したナノコンポジット磁石を製造する場合、従来、メルトスピニング法によらなければ冷却速度が不充分になるため、所望の急冷組織が得られなかった。従って、このようなナノコンポジット磁石をストリップキャスト法で量産することは実現されていなかった。
【0159】
本発明者らは、従来のストリップキャスト法によれば実現困難であるとされていた冷却速度を達成するため、高速(周速度:10m/秒以上)で回転する冷却ロールを用いるストリップキャスト法の開発を検討してきた。本発明者らのストリップキャスト法では、合金溶湯を傾斜したシュート(案内手段)上に供給し、溶湯の自重を利用してシュート上で合金溶湯の横方向流れを形成する。このようにして比較的大きな運動量を溶湯に与えることにより、冷却ロール表面に溶湯をぶつけ、高速回転する冷却ロールの表面に溶湯を密着させることが可能になる。
【0160】
しかしながら、本発明者らの上記ストリップキャスト法によれば、CやNbを添加し、減圧雰囲気下で溶湯の急冷を行っても、急冷合金が冷却ロールへ巻きついてしまう場合があることがわかった。急冷合金が冷却ロールに巻きつくと、急冷工程は中断を余儀なくされ、急冷工程を継続することができなくなる。このことは、量産化実現にとって大きな支障となる。
【0161】
本実施形態では、高速で回転する冷却ロール上に溶湯のパドルを安定して形成し、しかも、急冷合金がロールに巻きつくことを防止するのに有益なシュートの構成および冷却ロールを詳細に説明する。
【0162】
本実施形態では、図3に示す装置を用いてストリップキャスト法を行う。前述したように、シュート5の溶湯案内面は、水平方向に対して傾斜し、冷却ロール7までの溶湯の流路を形成する。シュート5の案内面と水平方向との間の角度(傾斜角度)αは溶湯の供給量(レート)を微妙に制御するために重要なパラメータである。
【0163】
シュート5上に供給された溶湯3は、シュート5の先端部から冷却ロール7の表面に対して水平方向の運動量をもって供給され、冷却ロール7の表面に溶湯のパドル6を形成する。
【0164】
図4は、シュート5の上面を示す斜視図である。このシュート5は、一箇所で受けた溶湯を先端部に案内するガイドを有している。これらガイドの一部は、流路の両側だけではなく、中央部にも存在し、溶湯流れを2条に分けることができる。図4の例では、2条の溶湯流れの各々の幅が10mmに規定され、また、各条の溶湯は10mmの間隔で冷却ロール表面に供給される。このようなガイドを持つシュート5によれば、冷却ロール7の胴長方向(軸線方向:図3の紙面に垂直な方向)において、一定幅にわたって略均一な厚さに広げた状態で溶湯3を供給することができる。なお、このときの各リボンの幅(急冷合金の幅)は5〜20mmに設定される。リボン幅が5mmを下回ると量産性が低下し、20mmを超えると安定したキャスティングを行うことが難しくなるからである。
【0165】
ストリップキャスト装置に用いられる冷却ロール7の表面には、通常、微細な凹凸が存在する。冷却ロール7の表面粗度が大きくなると、ロール表面に存在する微細な凹部のために合金溶湯と冷却ロール7の表面との実効的な接触面積が減少してしまうことになる。
【0166】
図5は、周速度10m/秒で回転する冷却ロール7の表面に接触する溶湯の断面形状を模式的に示している。冷却ロール7の表面と溶湯の下面との間に雰囲気ガスが巻き込まれ、多数のエアーポケット50が形成される。冷却ロール7の表面粗度が大きいほど、ロール表面と溶湯との実効的な接触面積は低下する。その結果、冷却ロール7による溶湯からの抜熱量が低下し、合金溶湯3の冷却速度が実質的に減少してしまう。このようにして冷却ロール7による冷却能力が低下すると、冷却ロール7と接して凝固しつつある急冷合金8の温度が充分に低下しなくなる。
【0167】
急冷合金8は、凝固に際して収縮するが、この凝固収縮が不充分になる程、回転する冷却ロール7から剥離しにくく、冷却ロール7に巻きつきやすくなる。そして、リボン状の急冷合金8が冷却ロール7に巻きつくと、冷却工程を継続できなくなってしまう。特にストリップキャスト法による場合は、溶湯がロール表面に接触している部分のロール周方向サイズがメルトスピニング法と比べて長いため、急冷合金8が冷却ロール7に巻きつきやすいという問題がある。
【0168】
一方、メルトスピニング法によれば、図6に示すように、ノズルを介して比較的少量の合金溶湯を冷却ロール7の表面に噴射し、溶湯をロール表面に押し付けるため、冷却ロール7の表面粗度が大きい場合でも、ロール表面と溶湯との間の密着性は良く、冷却能力が高くなるため、合金溶湯を充分な速度で均一に冷却することが容易である。
【0169】
以上説明したように、本発明で採用するタイプのストリップキャスト法による場合は、冷却ロール7を周速度10m/秒以上で高速回転させると、冷却ロール7の表面における中心線粗さRaが急冷合金8の冷却ロール7への巻きつきに重要な影響を与える。本発明者の実験によると、冷却ロール7の表面における中心線粗さRaが20μm以下であれば、充分な冷却効果が得られるため、急冷合金8が冷却ロール7に巻きついてしまうことを防止できることがわかった。
【0170】
以上のことから、本発明では、冷却ロール表面の中心線粗さRaを20μm以下に設定する。なお、量産レベルで安定した操業を継続するには、冷却ロール表面の中心線粗さRaは13μm以下に設定することが好ましく、7μm以下に設定することが更に好ましい。
【0171】
また、本発明で採用するストリップキャスト法では、図3および図4に示すように、合金溶湯3が傾斜したシュート5上をゆっくりと流れるため、高速回転する冷却ロール7の表面上に適切なパドル6を形成するには、合金溶湯3の動粘度の大きさが重要である。実験によると、合金溶湯3の動粘度が5×10-62/秒を超える場合、冷却ロール7上でパドル6が形成されず、溶湯3がスプラッシュとなり急冷されなくなってしまうことがわかった。このため、合金溶湯3の動粘度は5×10-62/秒以下に調節することが好ましく、1×10-72/秒以下に調節することが更に好ましい。
【0172】
上記シュート5の表面温度が低すぎると、冷却ロール7に流れ着く前に合金溶湯3の動粘度が高くなりすぎる場合がある。シュート5の表面温度が300℃以下の場合、シュート5上にて溶湯が冷却され、動粘度が5×10-62/秒を超えてしまうため、シュート5の表面温度は300℃以上に保持することが好ましい。シュート5の表面温度は450℃以上に保持することが好ましく、550℃以上に保持することが更に好ましい。
【0173】
シュート5の材質にはアルミナ、シリカ、ジルコニア、マグネシア、ムライトなどのセラミックス材料の他、ボロンナイトライド(BN)を用いることができる。鉄基希土類合金の溶湯との「ぬれ性」に優れ、また、希土類と反応しにくいアルミナ(Al23)を80体積%以上含む材料を用いることが好ましい。また、熱ショックによってシュート5が割れないようにするためには、緻密質より多孔質セラミックスが好ましい。ただし、溶湯が流れるシュートの表面は、できる限り滑らかにすることが好ましい。
【0174】
冷却ロール7によって安定して合金溶湯を急冷するためには、熱伝導率が50W/m/K以上の基材を用いて冷却ロールを作製することが好ましい。このような冷却ロール7の基材としては、銅および銅合金の他、鉄、炭素鋼、タングステン、モリブデン、ベリリウム、タンタルを用いることができる。溶湯を安定して冷却するためには、熱伝導が100W/m/K以上である銅および銅合金あるいはタングステン、モリブデン、ベリリウムを用いることが特に好ましい。
【0175】
冷却ロール7の基材の表面に厚さ1μm〜100μmのクロム、ニッケル、または、それらを組み合わせためっきでコートすることが好ましい。これにより、銅などの融点が低く、また硬度が低い冷却ロール基材の欠点を補うことができる。また、溶湯冷却中にロール表面に発生するロール基材の溶融および傷を抑制できる。その結果、ロール表面の中心線粗さRaを長期間20μm以下に保持できる。鍍金膜の厚さは、膜強度および熱伝導の観点から、1μm〜100μmの範囲内にあることが好ましい。鍍金膜の更に好ましい厚さは5μm〜70μmであり、最も好ましい厚さは10μm〜40μmである。
【0176】
なお、合金溶湯3の一条あたりの溶湯急冷処理速度が1kg/分未満の場合、冷却ロール上にパドル6が形成されず、安定した溶湯急冷状態が維持できない。一方、合金溶湯3の一条あたりの溶湯急冷処理速度が4kg/分以上になると、ロール表面で形成しうるパドル6の体積以上に溶湯3が供給されるため、余分な溶湯3はスプラッシュとなり急冷されない。従って、合金溶湯3の一条あたりの溶湯急冷処理速度は、0.7kg/分以上、4kg/分未満であることが好ましい。更に好ましい範囲は1kg/分以上3kg/分未満であり、最も好ましい範囲は1kg/分以上2kg/分未満である。量産性の観点からは、図4に示すようなガイドを用いて、冷却ロール上に供給する溶湯を複数条にすることが好ましい。複数条の溶湯を流す場合は、溶湯同士が接触しないような適切な間隔を設けることが望ましい。
【0177】
本実施形態では、冷却ロール7のロール表面速度を10m/秒以上26m/秒以下に設定する。ロール表面速度が10m/秒以上にすることで、α−Fe相が析出をより効果的に抑制することができる。ただし、ロール表面周速度が26m/秒を超えると、ロール上に生成されるべき溶湯のパドル6が安定せず、溶湯が跳ね飛ばされるような状態となる(スプラッシュが発生する)ため、所望の溶湯急冷状態を得ることができない。ロール表面速度のより好ましい上限は、23m/秒以下であり、更に好ましい上限は20m/秒以下である。
【0178】
パドル6の生成状態は、ロール表面速度以外だけではなく、冷却ロール7への溶湯供給速度にも影響される。安定したパドル6の生成状態を維持するには、冷却ロール7に供給する溶湯の1つの流れあたりの溶湯供給速度を上述した範囲内に調節することが好ましい。
【0179】
本実施形態では、急冷雰囲きの圧力を0.13kPa以上100kPa未満に調節する。急冷雰囲気の圧力が0.13kPa未満になると、冷却ロール表面に合金溶湯が張り付き、急冷合金をロールから剥離できなくなるおそれがある。一方、急冷雰囲気の圧力が100kPaを超えて大きくなると、冷却ロール表面と合金溶湯との間に雰囲気ガスが巻き込まれ、ガスポケットが生じやすくなる。ガスポケットが形成されると、均一な急冷状態が得られず、不均質な急冷組織となるため、過冷却状態を安定して得ることができなくなる。急冷雰囲気の好ましい圧力範囲は1.3kPa以上90kPa以下、より好ましい範囲は10kPa以上70kPa以下、更に好ましい範囲は10kPa以上60kPa以下である。最も好ましい範囲は30kPa以上50kPa以下である。
【0180】
以上のようにして合金溶湯を急冷する場合、冷却ロール表面に対する合金溶湯の密着性が向上し、高い冷却効果が均一に付与されるため、急冷合金が適切に形成され、冷却ロールに巻きつくというトラブルがほとんど生じなくなる。
【0181】
[急冷合金の組織構造]
図7は、Tiの添加の有無により、急冷合金の断面組織構造がどのように変化するかを模式的に示している。
【0182】
まず、図7からわかるように、ストリップキャスト法で作製した急冷合金(リボン)は、メルトスピニング法によって作製される急冷合金よりも厚くなるため、急冷合金の自由面(冷却ロールと接触しない面:上端面)近傍に結晶粒が形成される。また、ロール面(冷却ロールと接触する面:下端面)の近傍においても、結晶粒が形成される。これは、ロール面に不均一核が生成されやすく、不均一核の回りに結晶成長が進行しやすいためである。ストリップキャスト法にで作製した急冷合金では、各端面から膜中央部に近づくに従って結晶粒のサイズおよび結晶粒の体積密度は小さくなる。
【0183】
Tiを添加した場合、形成される結晶粒は全般に小さく、特に、α−Feは微細で数も少ない。そして、膜の中央部では非晶質部分が存在しやすく、ロール面側に形成される結晶質層は、自由面側に形成される結晶質層よりも薄い。更に、Tiを添加した場合は、鉄基硼化物(Fe−B)が析出している。これに対し、Tiを添加しなかった場合、結晶粒のサイズは大きく、特にα−Feが粗大である。自由面の冷却速度は、急冷合金が厚くなるほど、低下するため、急冷合金が厚くなるほど、粗大な結晶粒が自由面側に形成されやすくなる。このため、急冷合金を厚くするほど、最終的に得られる磁石特性が低下してしまう。しかし、Tiの添加は、結晶粒の粗大化を抑制する効果があるため、急冷合金を厚く形成しやすくなる。本実施形態の場合、急冷合金の厚さを50〜200μm程度の範囲に設定することが可能である。粉砕後のおける粉末粒子の形状や磁気特性の観点から、急冷合金の好ましい厚さは、60〜150μmであり、更に好ましい厚さは、70〜120μmである。このように本発明によれば、従来技術では困難であった厚さ80μm以上の急冷合金を作製して優れた磁気特性を持つナノコンポジット磁石を得ることができる。なお、図7においては、各結晶粒を模式的に実際よりも大きく記載している。現実の各結晶粒のサイズは図示できない程度に小さい。
【0184】
本実施形態にかかる高速ストリップキャスト法によれば、急冷合金の断面中央部分では非晶質が存在しても、自由面およびロール面(厚さ方向を横切る2つの端面)の側に結晶質部分が存在する。そして、Tiを添加した場合、α−Feの粗大化が抑制されるため、磁石特性が優れたものとなる。冷却ロールの周速度がストリップキャスト法としては従来よりも格段に速いため、結晶粒は粗大化せず、ナノコンポジット磁石に適した組織構造を持った急冷合金が得られる。また、急冷後の合金(リボン)は、その自由面およびロール面の両面近傍に結晶相が存在する組織構造を有しているため、熱処理前に急冷合金を粉砕する場合でも、急冷合金の粉砕が容易になり、粉砕効率が向上する。
【0185】
なお、本実施形態の製造方法によって最終的に得られるナノコンポジット磁石をモータに使用したとき、強い減磁界が磁石に作用しても充分なレベルの磁化を保持し続けるためには、600kA/m以上の高い固有保磁力HcJを有することが望まれる。このように高い保磁力を実現するには、急冷合金の金属組織中に含まれるR2Fe14B型化合物相の体積比率を60%以上にすることが必要になる。
【0186】
本実施形態における鉄基希土類合金の組成は、R2Fe14B相型化合物の化学量論組成に比べてR濃度が低く、B濃度が高い。このような組成においては、Tiの添加により、過剰に存在するBが鉄と結合し、鉄基硼化物を形成しやすくなる。Tiの添加によって得られる鉄基硼化物は、ナノメートルオーダーのサイズを持ち、強磁性である。Tiの添加は、粗大なFeの析出を抑制するだけでなく、上記の微細な強磁性鉄基硼化物を生成するため、この鉄基硼化物とR2Fe14B型化合物相とが交換相互作用によって強固に結合し、磁化の低下を招来することなく、R2Fe14Bと同一の化学量論組成を有する鉄基希土類合金磁石と同等レベルの硬磁気特性を発現することが可能になる。
【0187】
本実施形態における鉄基希土類合金磁石の場合、硬磁性であるR2Fe14B相に加え、飽和磁化の値がR2Fe14B相と同等レベル以上の軟磁性鉄基硼化物を同一組織内に含むため、磁石のリコイル透磁率μrが、同程度の保磁力HcJを有する合金では、鉄基硼化物を含まない鉄基希土類合金磁石に比べて高くなる。具体的には、本実施形態の鉄基希土類合金磁石におけるリコイル透磁率μrは、希土類Rの組成比率yが8.5原子%以上10原子%未満の範囲では1.1〜1.4の値を示し、組成比率yが7原子%以上8.5原子%以下の範囲では1.2〜2.0の値を示す。なお、組成比率yが8.5原子%以上10原子%未満の範囲において、本実施形態の磁石の残留磁束密度Brは0.7〜0.9T、保磁力HcJは600〜1200kA/mであり、組成比率yが7原子%以上8.5原子%以下の範囲において、残留磁束密度Brは0.75〜0.95T、保磁力HcJは500〜950kA/mである。なお、リコイル透磁率μrの測定は。JIS規格のC2501−1989に記載の方法で行った。リコイル透磁率μrは、ナノコンポジット構造が形成された合金、すなわち、硬磁性相および軟磁性相が結晶化して交換相互作用によって磁気的に結合した合金に固有のパラメータである。
【0188】
リコイル透磁率μrは、磁石をモータに用いる場合に磁石の性能を評価する上で重要な指標となる。以下、この点を説明する。すなわち、モータの回転速度を増加させると逆起電力が増大し、逆起電力の大きさが入力電圧に等しくなった時点でモータ回転数の上昇が停止する。モータの回転数を更に高めるために、電気的に磁石動作点(−B/H)が低パーミアンス側に下げることにより、逆起電力を低くする必要がある(弱め界磁制御)。このような制御により、モータ回転数の上限を更に上昇させる効果は、磁石のリコイル透磁率μrが高いほど顕著である。本発明による磁石は、上述のように高いリコイル透磁率μrを示すため、モータに対して好適に用いられる。
【0189】
なお、本発明では、冷却ロールの周速度がストリップキャスト法としては従来に比べて格段に速いが、メルトスピニング法で実現されている周速度(例えば20m/秒以上)に比べると遅いため、もしTiを添加しなければ、α−FeがR2Fe14B系化合物に優先して析出し、粗大化してしまう。
【0190】
以上説明した急冷方法によって得られた急冷合金は、粉砕された後、熱処理を受ける。
【0191】
熱処理後における合金中のR2Fe14B型化合物相のサイズ(平均粒径または平均長軸長さ)は、単軸結晶粒径である300nm以下となる必要があり、20nm以上200nm以下であることが好ましく、20nm以上100nm以下であることが更に好ましい。これに対し、鉄基硼化物相やα−Fe相の平均結晶粒径が50nmを超えると、各構成相間に働く交換相互作用が弱まり、減磁曲線の角形性が劣化するため、(BH)maxが低下してしまう。これらの平均結晶粒径が1nmを下回ると、高い保磁力を得られなくなる。以上のことから、硼化物相やα−Fe相などの軟磁性相の平均粒径は1nm以上50nm以下であることが好ましく、30nm以下であることが更に好ましい。
【0192】
本発明による製造方法で作製された合金から最終的に得られる粉末粒子のサイズ(粒径)は好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは50〜150μmである。更に好ましい粒径の範囲は、80〜110μmである。
【0193】
こうして得られた粉末粒子の長軸サイズに対する短軸サイズの平均比率(アスペクト比)は0.3〜1.0程度である。本実施形態で作製した急冷合金の厚さが粉末粒径に対して充分に厚いため、等軸形状に近い形状の粉末粒子が得られやすい。これに対し、通常のメルトスピニングによって作製した急冷合金の厚さは20〜40μm程度と薄いため、本実施形態と同じ粉砕条件では、アスペクト比の小さいフレーク状の粉末粒子が得られる。本実施形態で得られる粉末は、アスペクト比が1に近いため、充填性や流動性に優れ、ボンド磁石に最適である。
【0194】
このようにして得られた磁粉の保磁力HcJは600kA/m以上の値を示すことができる。
【0195】
[磁粉の耐酸化性および磁気特性の粒度分布依存性]
本発明による製造方法で合金から最終的に得られる磁粉(以下、ナノコンポジット磁粉と称する。)の耐酸化性および磁気特性の粒度分布依存性を従来の急冷磁石粉末と比較しながら説明する。
【0196】
ここでは、本発明によるナノコンポジット磁粉と、従来の急冷磁石粉末としてMQI社から市販されているMQP−BおよびMQP−O(何れも最大粒径が300μm以下)とを比較する。なお、本発明によるナノコンポジット磁粉の試料は、以下のようにして作製した。
【0197】
まず、後述する実施例1と同様の方法で作製した急冷合金(Nd:9原子%、B:11原子%、Ti:3原子%、Co:2原子%、残部Feの合金、平均厚さ:70μm、標準偏差σ:13μm)を850μm以下に粉砕した後、長さ約500mmの均熱帯を有するフープベルト炉を用い、Ar流気下、ベルト送り速度100mm/分にて680℃に保持した炉内へ粉末を20g/分の供給速度で投入することによって熱処理を施し、磁粉を得た。得られた磁粉をピンディスクミルを用いてアスペクト比が0.4以上1.0以下の粉末を体積基準で30%程度含む粒度分布になるよう粉砕したものをナノコンポジット磁粉の試料NCP−0とした。
【0198】
表1に、それぞれの磁粉を種々の温度(23℃、300℃および350℃)で大気中に1時間放置した後の酸素含有率と磁気特性を示す。磁気特性は振動式磁力計を用いて測定した。23℃で測定した結果とともに、大気中で300℃および350℃でそれぞれ1時間放置した後に測定した結果を合せて示している。
【0199】
表1に示したように、MQP−Bは、大気中に300℃で1時間放置すると酸素含有量が0.67質量%まで増加し、350℃で1時間放置すると、1.93質量%まで増加した。MQP−Oは、300℃で1時間放置すると酸素含有量が0.24質量%まで増加し、350℃で1時間放置すると、0.59質量%まで増加した。
【0200】
これに対し、ナノコンポジット磁粉NCP−0は、大気中に300℃で1時間放置しても酸素含有量は0.10質量%までしか増加せず、350℃で1時間放置した後の酸素含有率は、0.20質量%までであり、従来の急冷磁石粉末に比較して耐酸化性に優れていることがわかる。
【0201】
また、それぞれの磁粉の加熱質量増加率を熱天秤を用いて測定した結果を図15に示す。なお、加熱雰囲気は大気中で、昇温速度は10℃/分とした。図15から分かるように、ナノコンポジット磁粉NCP−0は、MQP−BやMQP−Oに比べて酸化による質量増加が少なく、耐酸化性に優れている。
【0202】
次に、表1の磁気特性についてみると、MQP−Bは、磁気特性の低下も著しく、例えば(BH)maxは、300℃で1時間放置すると23℃で1時間放置したものの約65%まで低下し、350℃で1時間放置すると約30%まで低下した。また、MQP−Oの(BH)maxは、350℃で1時間放置すると23℃で1時間放置したものの約80%未満にまで低下した。これに対し、ナノコンポジット磁粉NCP−0は、350℃で1時間放置しても、その(BH)maxは23℃で1時間放置したものの約90%までしか低下しなかった。
【0203】
このように、ナノコンポジット磁粉は耐酸化性に優れているので、ボンド磁石を作製する工程(例えば、コンパウンドの調製および/または熱硬化)において磁粉が酸化されにくい。従って、磁粉の酸化を抑制するために従来の急冷磁石粉末(特にMQP−B)で必要であった磁粉の防錆処理を簡素化または省略することができる。また、コンパウンドを成形することによって作製した成形体は、その強度を向上させるため樹脂を例えば加熱して硬化する必要がある。従来の急冷磁石粉末を用いる場合には、磁粉の酸化を抑制するために、真空またはArなどの不活性ガス雰囲気中で加熱硬化する必要があったが、ナノコンポジット磁粉を用いることによって、大気中で加熱硬化することが可能となる。すなわち、ナノコンポジット磁粉を用いることによって、ボンド磁石の製造工程を簡略化し、コストを削減することができる。さらに、従来の急冷磁石粉末は、耐酸化性が低かったので、例えば250℃〜300℃程度の温度で樹脂と混練する工程や成形する工程を必要とする射出成形用のボンド磁石には適用することが難しかったが、ナノコンポジット磁粉を用いることによって、射出成形によって作製されるボンド磁石を得ることができる。ナノコンポジット磁粉の優れた耐酸化性の利点を十分に得るためには、300℃以上350℃以下の温度で1時間大気中に放置した後の酸素含有率が0.24質量%以下となるように調製された磁粉を用いることが好ましく、上記の酸素含有率が0.2質量%以下となるように調製された磁粉を用いることが好ましい。例えば、各種回転機やアクチュエータ用のボンド磁石に求められる磁気特性を考慮すると、これらのボンド磁石に好適に用いられる磁粉の磁気特性としては、最終的な状態で、Br≧0.7T、(BH)max≧80kJ/m3、HcJ≧600kA/mを満足することが好ましい。上述の耐酸化性を有する磁粉を用いると、ボンド磁石の作製工程における酸化の影響を考慮しても上記の磁気特性を得ることができる。
【0204】
【表1】
Figure 0004168643
【0205】
本発明によるナノコンポジット磁粉は、その組成および組織の特徴のため、その磁気特性に粒径依存性が小さいという特徴を有している。ナノコンポジット磁粉は、希土類元素Rの含有率が比較的低く、Rがリッチな粒界相が存在しないのに加え、R2Fe14B相を取り囲むように小さな硼化物相が分散しており、さらにTiは硼素との親和性が高いので硼化物相は他の相よりも多くのTiを含有している。その結果、ナノコンポジット磁粉は、従来の急冷磁石粉末に比べ耐酸化性に優れており、優れた磁気特性を粉砕後に維持できる。
【0206】
従来の急冷磁石粉末は比較的多量の希土類元素Rを含むので酸化されやすく、粒径が小さいほど粉末粒子表面の酸化による磁気特性の低下が顕著となる。例えば、MQP−B(最大粒径300μm以下)では、表2に示すように、粒径が75μm以下、特に53μm以下の粉末粒子の磁気特性が低下している。残留磁束密度Brについてみると、最も高い値を示している125μm超150μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(0.90T)に対して、53μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(0.79T)は90%未満にまで低下している。また、(BH)maxについて見ると、53μm以下の粉末粒子の平均の(BH)max(38μm以下と38μm超53μm以下の値の単純平均)は85.5kJ/m3であり、150μm超212μm以下の粉末粒子の平均の(BH)max(150μm超180μm以下と180μm超212μm以下の値の単純平均)である114.6kJ/m3の75%未満にまで低下している。
【0207】
これに対し、ナノコンポジット磁粉は酸化による磁気特性の低下の割合が低く、磁気特性の粒径依存性が小さい。例えば、ナノコンポジット磁粉NCP−0(最大粒径300μm以下)では、表3に示すように、磁気特性はほとんど粒径に依存せず、優れた磁気特性を有している。例えば、残留磁束密度Brは、最も高い値を示している106μm超125μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(0.845T)に対して、53μm以下の粉末粒子の残留磁束密度Br(約0.829T)は98%以上の値を有している。また、(BH)maxについも、53μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxは104.6kJ/m3であり、150μm超212μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxである106.6kJ/m3の98%以上の値を有している。種々の組成のナノコンポジット磁粉について同様の評価を行った結果、ほとんどの組成についてナノコンポジット磁粉の53μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxは、150μm超212μm以下の粉末粒子の平均の(BH)maxの90%以上の値を有し、多くの組成について95%以上の値が得られることが分かった。なお、磁粉の粒度分布の評価は、JIS8801準拠の標準ふるいを用いて行った。
【0208】
【表2】
Figure 0004168643
【0209】
【表3】
Figure 0004168643
【0210】
このように、ナノコンポジット磁粉は従来の急冷磁石粉末と同等以上の磁気特性を有しているので、従来の急冷磁石粉末(例えばMQ粉)の代わりにボンド磁石用磁粉として用いることができる。勿論、ボンド磁石用磁粉をナノコンポジット磁粉のみで構成しても良いが、例えば、上述したMQ粉のうちの粒径が53μm以下の粉末粒子をナノコンポジット磁粉に置き換えてもよい。
【0211】
以下に、53μm以下および38μm以下の微粒子を混入することによって充填性が改善される効果を実験結果を例示しながら説明する。
【0212】
まず、表4に示すような種々の粒度分布を有するナノコンポジット磁粉の試料NCP−1からNCP−5を作製した。なお、NCP−1の磁粉は、0.5mmφのスクリーンを用いてパワーミルで粉砕することによって調製し、他のNCP−2〜NCP−5の磁粉は、上述したピンミル装置を用いて、それぞれ回転数を3000rpm、4000rpm、5000rpmおよび8000rpmとすることによって調製した。これらの磁粉試料NCP−1からNCP−5をタップデンサを用いてタップ密度を測定した結果を表5に示す。表5には、それぞれの磁粉試料中に含まれる粒径が53μm以下の粉末粒子の質量%および粒径が250μm超の粉末粒子の質量%を合せて示している。
【0213】
表5の結果からわかるように、粒径が53μm以下の粒子を10質量%以上(厳密には9.5質量%以上)含む試料NCP−3〜NCP−5は、タップ密度が4.3g/cm3以上と高く、磁粉の充填性が優れていることが分かる。磁粉のタップ密度で評価される磁粉の充填性は、ボンド磁石用のコンパウンドの粉末の充填性と相関しており、充填性の高い磁粉を用いて調製されたコンパウンドの粉末の充填性も高くなる。従って、粒径が53μm以下のナノコンポジット磁粉を10質量%含む磁粉を用いることによって、ボンド磁石用コンパウンドの粉末の充填性や流動性が改善され、高品質の成形体を得ることができる。
【0214】
【表4】
Figure 0004168643
【0215】
【表5】
Figure 0004168643
【0216】
さらに、成形密度を向上するためには、粒径が38μm以下の粉末粒子を含むことが好ましい。表6に示す粒度分布を有するナノコンポジット磁粉NCP−11からNCP−16を調製し、それぞれ2質量%のエポキシ樹脂と混合することによってコンパウンドを得た。それぞれのコンパウンドを用いて成形圧力980MPa(10t/cm2)で圧縮成形することによってボンド磁石成形体を得た。それぞれのボンド磁石成形体の密度を、それぞれのコンパウンドに用いた磁粉中の粒径が38μm以下の粉末粒子の含有率とともに図16に示す。
【0217】
【表6】
Figure 0004168643
【0218】
図16からわかるように、38μm以下の粉末粒子の含有率が低すぎても高すぎても成形体の密度は低下する。種々検討した結果、十分な成形体密度を得るためには、粒径が38μm以下の粉末粒子を約8質量%以上含む磁粉を用いることが好ましい。但し、粒径が38μm以下の粉末粒子の含有率が約16質量%を超える磁粉を用いると、成形性が低下し、高い密度の高品位の成形体が得られないことがある。
【0219】
〔コンパウンドおよび磁石体の製造方法の説明〕
上述のナノコンポジット磁粉を含むボンド磁石用磁粉は、樹脂等の結合剤と混合され、ボンド磁石用コンパウンドが製造される。
【0220】
射出成形用のコンパウンドは、公知の混練装置(例えばニーダや押出し機)を用いて磁粉と熱可塑性樹脂とを混練することによって製造される。また、圧縮成形用のコンパウンドは、溶剤で希釈した熱硬化性樹脂と磁粉とを混合し、溶剤を除去することによって製造される。得られた磁粉と樹脂との混合物は、必要に応じて、所定の粒度となるように解砕される。解砕の条件などを調整することによって、顆粒状としてもよい。また、粉砕によって得られた粉末材料を造粒してもよい。
【0221】
磁粉の耐食性を向上するために、磁粉の表面に予め化成処理等の公知の表面処理を施しても良い。さらに、磁粉の耐食性や樹脂との濡れ性、コンパウンドの成形性をさらに改善するために、シラン系、チタネート系、アルミネート系、ジルコネート系などの各種カップリング剤、コロイダルシリカなどセラミックス超微粒子、ステアリン酸亜鉛やステアリン酸カルシウムなどの潤滑剤を使用してもよく、熱安定剤、難燃剤、可塑剤などを使用してもよい。
【0222】
磁石用コンパウンドは種々の成形方法で種々の用途に用いられるので、用途に応じて、樹脂の種類および磁粉の配合比率が適宜決められる。樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂やメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリアミド(ナイロン66、ナイロン6、ナイロン12等)や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイドなどの熱可塑性樹脂や、ゴムやエラストマ、さらには、これらの変性体、共重合体、混合物などを用いることができる。
【0223】
さらに、本発明の磁粉によってコンパウンドの充填性および/または成形性が改善されるので、従来は用いることが難しかった高粘度の樹脂を用いることもできる。さらに、磁粉は酸化されにくいので、融点または軟化点が高く従来は使用できなかった樹脂(例えば、ポリイミドや液晶ポリマなど、また、種々の樹脂の高分子量グレード品)を用いることができるので、ボンド磁石の特性(耐熱性など)を改善することが出来る。また、熱硬化性樹脂を用いる場合においても、従来よりも高い温度で硬化する樹脂を用いることができる。
【0224】
成形方法としては、圧縮成形、圧延成形、カレンダー成形、押出し成形および射出成形を例示することができる。これらの成形方法のうち、圧縮成形、圧延成形および押出し成形では、比較的単純な形状の成形体しか成形できないが、成形時にあまり高い流動性が要求されないので、磁石粉末の充填率を高くできる。本発明による磁粉を用いることによって、従来よりも更に高い(例えば80%を超える)磁粉充填率を実現することができ、最大で90%程度まで充填することができる。但し、充填率を上げすぎると磁粉同士を十分に結合するための樹脂が不足し、ボンド磁石の機械的な強度の低下や、使用時に磁粉の脱落が生じる恐れがあるので、磁粉充填率は、85%以下が好ましい。また、圧縮成形においては本発明の磁粉を用いることによって、成形体の表面に形成される空隙(ボイド)の量を減少でき、表面に形成する樹脂被膜への悪影響を抑制できるという利点が得られる。これらの成形方法には、適宜、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、ゴム等が用いられる。
【0225】
本発明による磁粉を用いると流動性が向上するので、特に、射出成形用コンパウンドに好適に用いられる。従来の急冷磁石粉末を用いたコンパウンドでは成形が困難であった複雑な形状の成形体を得ることができる。また、従来よりも高い充填率(例えば65%を超える)で磁石粉末を配合できるので、磁石体の磁気特性を向上することができる。さらに、本発明による磁粉は、希土類元素の含有率が比較的少ないので、酸化され難い。従って、比較的軟化点の高い熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマを用いて、比較的高い温度で射出成形を行っても磁気特性が低下しない。
【0226】
[ボンド磁石の応用例]
本発明によるボンド磁石用コンパウンドは、上述したように、従来の急冷磁石粉末(例えばMQI社製の製品名MQP−B)を用いたコンパウンドに比べ、優れた充填性(成形性)を有するとともに、耐熱性に優れており、且つ、従来の急冷磁石粉末を用いたボンド磁石と同等以上の磁気特性を有するボンド磁石を形成することができるので、種々の用途に好適に用いられる。
【0227】
図17を参照しながら、ステッピングモータに応用した例を説明する。
【0228】
図17は、永久磁石回転子型を備えるステッピングモータ100の構成を模式的に示す分解斜視図である。ステッピングモータ100は、ロータ101と、ロータ101の周辺に設けられたステータ部102とを有している。ロータ101は、外径8mmの外周面を10極に均等に着磁したボンド磁石を備えている。ステータ部102は、外ヨーク102aおよび102bと、これらと互いに背中合わせに接合された2個の内ヨーク103と、これらの間に収容された励磁コイル104aおよび104bとを備えている。このステッピングモータ100は、1パルス電流に対応する励磁コイル104aおよび104bの起磁力により1ステップ角だけロータ101が変位する動作を行う、いわゆるPM型パルスモータである。
【0229】
ロータ101が備えるボンド磁石は、上述した本発明による充填性(成形性)に優れたコンパウンドを用いて形成されており、従来の急冷磁石粉末を用いたボンド磁石と同等以上の磁気特性を有するとともに、機械的特性に優れ、欠けなどが発生する恐れがなく、信頼性に優れている。また、耐熱性にも優れる。
【0230】
このような本発明によるコンパウンドを用いて形成されたボンド磁石を備えるステッピングモータは、小型・高性能で且つ信頼性に優れており、プリンターやディスクドライブ装置などのOA機器やカメラやビデオなどのAV機器などに好適に用いられる。
【0231】
ロータ101は、種々の方法で製造することができる。例えば、熱硬化性樹脂を用いたコンパウンドを圧縮成形することによって形成しても良いし、熱可塑性樹脂を用いたコンパウンドを射出成形または押出し成形することによって形成してもよい。以下、図18を参照しながら、ロータ101の製造方法を説明する。
【0232】
例えば、熱硬化性樹脂を結合剤とするコンパウンドを用いる場合、図18(a)〜(c)を参照しながら説明するような成形方法を採用することによって、図18(d)に示すボンド磁石一体成形型のロータ200を作製することができる。
【0233】
図18(d)に示したロータ200は、ロータ軸205と、そのまわりに設けられたヨーク208と、ボンド磁石210とを備えている。ボンド磁石210は、ヨーク208の表面212に接着されている。
【0234】
ロータ200は、図18(a)から(c)に示した工程で製造される。
【0235】
まず、図18(a)に示したように、まず、粉末状のコンパウンド201を収容したフィーダボックス203を金型204の上面で摺動させながらコンパウンド201をキャビティ202内に充填する。金型204には、ロータ軸205がその中央に圧入されたヨーク208がセットされており、ロータ軸205を覆うように補助部材207が設けられている。金型204とこれらの間にキャビティ202が形成されている。
【0236】
次に、例えば、図18(b)に示すように、上パンチ209を介して、コンパウンド201を圧縮成形することによって、ヨーク208とコンパウンド201の成形体とを物理的に結合させる。
【0237】
次に、図18(c)に示すように、ロータ成形体を金型204から取り出す。補助部材は207は、ロータ軸205およびヨーク208から簡単に取り外され、ロータ軸205、ヨーク208、ボンド磁石210は一体化されている。但し、この状態では、ボンド磁石210はコンパウンドの粉末成形体であり、コンパウンドに含まれている熱硬化性樹脂は未硬化である。
【0238】
次に、ボンド磁石210を硬化するため、およびヨーク208とボンド磁石210との界面212における接合を強化するために、コンパウンドを所定の温度で硬化させる。硬化温度および硬化時間は用いる樹脂に応じて適宜設定される。
【0239】
本発明によるコンパウンドは、耐熱性に優れる磁粉を含んでいるので、従来よりも高い硬化温度で好適に硬化されるコンパウンドであり得る。従って、従来よりも、耐熱性、機械特性および接着強度に優れたボンド磁石210を形成することができる。さらに、本発明によるコンパウンドは、磁粉自体が耐食性に優れているため、熱硬化処理を大気中で行っても磁石特性の劣化は極めて小さい。従って、熱硬化処理を不活性雰囲気で行う必要がないので工程費用を削減できる。
【0240】
上述した成形方法によると、リング状のボンド磁石210を成形しながら、同時に、ヨーク208およびロータ軸205とボンド磁石210とを一体に成形できるので、ロ−タ200を高い生産性で製造することができる。
【0241】
なお、金型204から成形体を取り出してから硬化する例を説明したが、金型204に加熱機構を設けて、金型204内で硬化してもよく、加圧した状態で硬化してもよい。さらに、圧縮成形に限られず、射出成形によってボンド磁石一体成形型ロータを形成することもできる。
【0242】
また、本発明によるコンパウンドは、従来の急冷磁石粉末を用いたコンパウンドに比べて高い充填性(成形性および/または流動性)を有するので、小さな間隙(例えば、約2mm幅)に確実に充填することができる。従って、本発明によるコンパウンドは、IPM(Interior Permanent Magnet)型モータに用いられる磁石埋設型ロータ300(図19参照)の製造に好適に用いられる。
【0243】
図19に示した磁石埋設型ロータ300は、鉄心(例えば直径80mm、厚さ50mm)301と、鉄心301の中心に形成された回転軸スロット302と、鉄心301の周辺部に形成された複数のアーク状磁石スロット304とを備えている。ここでは、8個のアーク状磁石スロット304が設けられており、それぞれのスロット304は、第1スロット(例えば幅3.5mm)304aと第2スロット(例えば幅1.8mm)304bとを有する2層構造となっている。これらのスロット304aおよび304b内に本発明によるコンパウンドを充填し、ボンド磁石を形成する。ロータ300の複数の磁石スロット304に対向するようにS極とN極とが交互に配置されたステータ(不図示)と組み合わせることによってIPM型モータが得られる。
【0244】
ボンド磁石の成形は、種々の方法で実行することができる。例えば、熱硬化性樹脂を含むコンパウンドを用いる場合、スロット内圧縮成形法(例えば特開昭63−98108号公報参照)を採用することができる。また、熱可塑性樹脂を含むコンパウンドを用いる場合には、押出成形法や射出成形法を採用することができる。何れの成形方法を採用する場合においても、本発明によるコンパウンドは充填性に優れるので、スロット304aおよび304b内に確実に充填でき、且つ、機械特性や耐熱性が優れるとともに、従来と同等以上の磁気特性を有するボンド磁石を形成することができる。従って、従来よりも高性能で高信頼性の小型IPM型モータを作製することが可能になる。
【0245】
本発明によるコンパウンドは、図20(a)に示す角度センサ(ロータリーエンコーダ)400が有するボンド磁石の形成に好適に用いられる。
【0246】
図20(a)に示したロータリエンコーダ411は、回転軸413と、回転軸413に連結された回転ドラム416と、回転ドラム416の外周面に接合された複数のボンド磁石415とを有するロータ414と、ロータ414の外周面に離間して配置された検出器417とを備えている。検出器417は、ロータ414からの磁束の変化を検出できるものであれば、特に限定されず、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、磁気インピーダンス効果素子を用いることができる。また、回転軸413はモータ412に連結されている。検出器17は、図示しない計測部に接続されている。
【0247】
本発明によるコンパウンドを用いて形成されたボンド磁石415は、例えば、図20(b)に示したような円柱状のものであり、回転ドラム416の外周面に沿ってN極とS極とが交互に配置されている。ボンド磁石415と回転ドラム416との接合は、例えば接着剤等によって行われている。回転ドラム416は、例えば、金属材料を用いて形成され、磁性材料でなくてもよい。
【0248】
このロータリエンコーダ400は、以下のように動作する。モータ412の回転軸413が回転すると、その回転に応じてロータ414が回転する。このとき、ロータ414の外周面に配置されたボンド磁石415が検出器417に形成する磁束の向きが、ロータ414の回転に従って変化する。検出器417はこの磁束の向きの変化に相当する出力信号(電圧の変化量または電流の変化量等)を生成し、計測部(不図示)に出力する。このようにして、モータ412の回転量(角度)が計測される。
【0249】
本発明によるコンパウンドは充填性(成形性、流動性)に優れ、従来と同等以上の磁気特性を有し、且つ、従来よりも機械特性や耐熱性に優れるボンド磁石を形成することができるので、小型で高性能で信頼性の高い角度センサを作製することが可能になる。
【0250】
さらに、本発明によるコンパウンドは、図21(a)および(b)を参照しながら説明する磁気ロール用のボンド磁石の形成に好適に用いられる。
【0251】
図21(a)は、電子写真用のプロセスカートリッジ501の構造を模式的に示す断面図である。カートリッジ501は、矢印A方向に回転駆動される感光ドラム510と、感光ドラム510を帯電するための帯電ローラ502と、現像装置511と、クリーニング装置512とを一体に有している。
【0252】
現像装置511は、トナー513を収容する現像容器509を備え、現像容器509の開口部には感光ドラム510に対向するように現像スリーブ506が回転可能に配設されている。また、現像装置511は弾性ブレード514を備えており、弾性ブレード514は現像スリーブ506に当接し、現像スリーブ506により担持搬送されるトナー513の層厚を規制する。
【0253】
図21(b)は、プロセスカートリッジ501が有する現像装置511の構成を模式的に示す断面図である。
【0254】
現像スリーブ506は非磁性材料で形成されており、軸受を介して現像容器509に回転可能に支持されている。現像スリーブ(例えば直径10mm)506内には磁気ロール(例えば直径8.5mm)507が配設されている。磁気ロール507の軸部507aには切欠き507a−1が形成されており、切欠き507a−1が現像容器509に係合することによって磁気ロール507が固定されている。磁気ロール507は、感光ドラム510と対向する位置に現像極S1を有し、その他の位置にはS2極、N1極およびN2極を有している。
【0255】
磁石508は、現像スリーブ506を包囲するように配置されており、現像スリーブ506との間隙gに磁気カーテンを形成し、この磁気カーテンによって間隙内にトナーを保持することによって、トナー漏れが防止される。
【0256】
磁気ロール507は本発明によるコンパウンドを用いて形成されているので、従来の磁石と同等以上の磁気特性を有し、且つ、機械特性や耐熱性にも優れる。従って、磁気ロール507や現像スリーブ506を従来よりも更に小型化するこが可能であるとともに、性能を向上することができる。本発明によるコンパウンドを用いて形成された磁気ロールは、複写機やレーザビームプリンタ内の現像装置や現像カートリッジにも適用できる。
【0257】
【実施例】
(実施例1)
下記の表7に示す組成を有し、総量が600グラム(g)となるように純度99.5%以上のB、Fe、Ti、Nd、およびNbを秤量し、アルミナ製坩堝に投入した。その後、これらの合金原料を高周波加熱によって圧力70kPaのアルゴン(Ar)雰囲気中で溶解し、合金溶湯を作製した。溶湯温度が1500℃に到達した後、水冷した銅製鋳型上に鋳込み、平板状の合金を作製した。
【0258】
得られた合金を粉砕した後、25ミリグラム(mg)の粉砕片を溶解し、Ar気流中で示差熱量計(DTA)を用い、冷却速度20℃/分で合金溶湯の凝固過程を解析した。測定結果を表7に示す。
【0259】
【表7】
Figure 0004168643
【0260】
ここで、試料No.1〜5は、Tiに加えてNbを添加した試料であり、試料No.6〜7はNbを添加しなかった試料である。
【0261】
表7の最右欄には、各試料No.1〜7の合金溶湯について、合金溶湯の凝固過程を特徴付ける温度を記載している。「1st」と表記されている温度は、合金溶湯を冷却する過程で最初の凝固が生じた温度(「液相線温度」)を示している。「2nd」と表記されている温度は、合金溶湯を冷却する過程で液相線温度より低い温度で次の凝固が生じた温度(「凝固点」)を示している。これらの温度は、具体的には、示差熱熱量計(DTA)によって発熱ピークが観測された温度である。
【0262】
図8は、試料No.2(Nb添加)および試料No.6(Nb無添加)のDTAを示すグラフである。図8から明らかなように、試料No.2の場合、試料No.6に比較して、冷却過程で生じる最初の発熱ピークの温度、すなわち液相線温度(「1st」)が60℃以上も低下している。
【0263】
この最初の発熱ピークは、TiB2などのチタンとホウ素の化合物相が析出することに起因している可能性がある。本実施例では、Tiおよびホウ素を従来よりも高濃度に添加しているため、チタンとホウ素の化合物(高融点)が形成されやすく、その析出温度は高いと推定される。Tiを添加しない従来の組成系(Fe3B/Nd2Fe14B系)では、合金溶湯の液相線温度は1200℃程度以下であった。本発明では、TiとともにNbが添加されることにより、このような化合物の析出温度が下がり、合金溶湯の液相線温度が低下したものと考えられる。
【0264】
試料No.6(比較例)の合金を用いる場合は、1350℃程度の高い出湯温度でストリップキャスティングを実行する必要があるが、試料No.2(実施例)の合金を用いる場合は、出湯温度を例えば約1250℃程度に設定することが可能である。このように出湯温度が低減されると、溶湯の冷却過程で早くに析出するR2Fe14B型化合物やTiB2の粗大化が抑制され、磁石特性が向上する。
【0265】
(実施例2)
下記の表2に示す組成を有し、総量が600gとなるように純度99.5%以上のB、Fe、Ti、Nd、およびCを秤量し、アルミナ製坩堝に投入した。その後、これらの合金原料を高周波加熱によって圧力70kPaのアルゴン(Ar)雰囲気中で溶解し、合金溶湯を作製した。溶湯温度が1500℃に到達した後、水冷した銅製鋳型上に鋳込み、平板状の合金を作製した。
【0266】
得られた合金を粉砕した後、25ミリグラム(mg)の粉砕片を溶解し、Ar気流中で示差熱熱量計(DTA)を用い、冷却速度20℃/分で合金溶湯の凝固過程を解析した。測定結果を表8に示す。
【0267】
【表8】
Figure 0004168643
【0268】
ここで、試料No.8〜13は、TiとともにCを添加した試料であり、試料No.14〜15はCを添加しなかった試料である。
【0269】
表8の最右欄には、各試料No.8〜15の合金溶湯について、合金溶湯の凝固過程を特徴付ける温度を記載している。「1st」と表記されている温度は、合金溶湯を冷却する過程で最初の凝固が生じた温度(「液相線温度」)を示している。「2nd」と表記されている温度は、合金溶湯を冷却する過程で液相線温度より低い温度で次の凝固が生じた温度(「凝固点」)を示している。これらの温度は、具体的には、示差熱熱量計(DTA)によって発熱ピークが観測された温度である。
【0270】
図9は、試料No.8(C添加)および試料No.14(C無添加)のDTAを示すグラフである。図9から明らかなように、試料No.8の場合、試料No.14に比較して、冷却過程で生じる最初の発熱ピークの温度、すなわち液相線温度(「1st」)が40℃程度も低下している。
【0271】
この最初の発熱ピークは、TiB2などのチタンとホウ素の化合物相が析出することに起因している可能性がある。本実施例では、Tiおよびホウ素を従来よりも高濃度に添加しているため、チタンとホウ素の化合物(高融点)が形成されやすく、その析出温度は高いと推定される。Tiを添加しない従来の組成系(Fe3B/Nd2Fe14B系)では、合金溶湯の液相線温度は1200℃程度以下であった。本発明の実施例では、TiとともにCが添加されていたことにより、このような化合物の析出温度が下がり、合金溶湯の液相線温度が低下したものと考えられる。
【0272】
試料No.14の合金を用いる場合は、1350℃程度の高い出湯温度でストリップキャスティングなどを実行する必要があるが、試料No.8(実施例)の合金を用いる場合は、出湯温度を例えば約1300℃程度に設定することが可能である。このように出湯温度が低減されると、溶湯の冷却過程で早くに析出するR2Fe14B型化合物やTiB2の粗大化が抑制され、磁石特性が向上する。
【0273】
次に、表8に示す組成を有し、総量が15gとなるように純度99.5%以上のB、Fe、Ti、Nd、およびCを秤量し、底部に直径0.8mmのオリフィスを有する石英坩堝に投入した。その後、これらの合金原料を高周波加熱によって圧力1.33〜47.92kPaのAr雰囲気中で溶解し、合金溶湯を作製した。溶湯温度が1350℃に到達した後、湯面をArガスで加圧し、オリフィスから溶湯を0.7mm下方に位置する冷却ロールの外周面へ滴下した。冷却ロールは純銅製であり、外周面速度が15m/秒となるように回転させていた。このような冷却ロールとの接触により、合金溶湯は急冷され、凝固した。こうして、幅2〜3mm、厚さ20〜50μmの連続した急冷凝固合金の薄帯が得られた。図10は、試料No.8および試料No.14のXRDのパターンを示すグラフである。図10から明らかなように、試料No.8の場合、非晶質が大部分を占めているのに対して、試料No.14では、結晶組織の割合が多い。
【0274】
この急冷凝固合金薄帯をAr雰囲気中において600〜800℃の熱処理温度範囲で6〜8分間保持し、その後、室温まで冷却した。この後、VSMを用いて急冷合金薄帯(長さ3〜5mm)の磁気特性を評価した。測定結果を表9に示す。
【0275】
【表9】
Figure 0004168643
【0276】
次に、表8の試料No.13と同一の組成を有する原料合金を用意し、図3に示すようなストリップキャスト装置を用いて、急冷合金を作製した。具体的には、総量が10kgとなるように純度99.5%以上のB、Fe、Ti、Nd、およびCを秤量し、溶解槽に投入した。その後、これらの合金原料を高周波加熱によって圧力30kPaのAr雰囲気中で溶解し、合金溶湯を作製した。溶湯温度が1350℃に到達した後、溶湯をシュートに流した。溶湯はシュート上をスムーズに流れ、冷却ロールにより冷却された。冷却ロールの表面周速度は12m/秒とした。
【0277】
こうして得られた急冷合金(平均厚さ:80μm程度)をAr雰囲気中において740℃の熱処理温度範囲で6〜8分間保持し、その後、室温まで冷却した。その後、VSMを用いて急冷合金の磁気特性を評価した。
【0278】
測定結果は、残留磁束密度Brが0.79T、保磁力HcJが1090kA/m、最大磁気エネルギ積(BH)maxが102kJ/m3であった。この磁気特性を表9に示す試料No.8の磁気特性と比較すると、ほぼ同等の特性が得られたことがわかる。
【0279】
次に、Cが(B+C)の合計に占める割合(原子比率p)が0.25以下の試料と、pが0.25を超える試料について、XRD及び減磁曲線を測定した。
【0280】
図11は、Nd9Fe7312.61.4Ti4(実施例:p=0.1)及びNd9Fe7377Ti4(比較例:p=0.5)の熱処理前におけるXRDパターンを示している。これらの試料は、組成は異なるが、いずれも前述した実施例と同様にして作製された。なお、図12は、Nd9Fe7312.61.4Ti4(実施例)及びNd9Fe7377Ti4(比較例)の減磁曲線を示している。
【0281】
Cの比率pが0.25を超えて0.5に達する場合、図11に示されるように、Ti−Cの回折ピークが顕著に観察される。このようにCが多過ぎると、急冷合金中にTi−C相が多く析出するため、熱処理後の構成相比率が所望範囲からずれ、図12に示すように減磁曲線の角形性が悪くなる。Cが(B+C)の合計に占める割合(原子比率p)が0.25以下であれば、このような問題は生じなかった。
【0282】
(実施例3)
本実施例では、図3に示すストリップキャスト装置を用いた。
【0283】
まず、原子比率でNd9Fe7312.61.4Ti3Nb1の組成を有するように、純度99.5%以上のB、C、Fe、Nb、Ti、およびNdの金属を用いて総量が5kgとなるように秤量した。これらの金属をアルミナ製坩堝内に投入し、圧力35kPaのアルゴン雰囲気中で高周波加熱により溶解した。溶解温度は1350℃とした。
【0284】
溶解後、坩堝を傾転し、溶湯を多孔質セラミックス製のシュート上に供給し、冷却ロールの表面へ導いた。シュートの表面温度はヒータによって600℃に保持した。また、シュート上において溶湯がロールへ向かってスムーズに流れるように、シュートを水平方向に対して20°(=角度α)だけ傾けた。また、溶湯は、ロールの直上部から坩堝の位置へ40°(=角度β)だけ傾斜した位置に注がれるようにシュートを配置した。なお、本実施例におけるシュートは、図4に示すように、坩堝から受けた溶湯の流れを2条に分けてロールへ供給するための溶湯ガイドを有している。
【0285】
冷却ロールは14m/秒の表面周速度で回転させた。坩堝の傾転角を調整することにより、シュート上を流れる溶湯の供給速度を、溶湯の1つの流れあたり1.5kg/分になるよう調整した。本実施例では、表面の中心線粗さRaが5μmの純銅製ロールを用いた。ロール温度の上昇はロール内部の水冷によって防止した。
【0286】
得られた急冷合金の組織をCuKαの特性X線により調べたところ、Nd2Fe14Bの回折ピークとともに、Fe236およびα−Feが混在している急冷合金組織であることを確認した。
【0287】
図13は、得られた急冷合金の粉末XRDを示し、図14は振動型磁力計を用いて測定した急冷合金の減磁曲線を示す。図13および図14において、「as−cast」と記載している曲線が急冷合金に関するものである。
【0288】
次に、急冷合金をパワーミルによって粉砕した。その後、アルゴンガスで流気し、炉内温度を740℃に保持したフープベルト式連続熱処理炉内に急冷合金粉末を供給して熱処理を施した。このとき給粉速度は30g/分に保持した。
【0289】
熱処理後における粉末XRDおよび減磁曲線も、それぞれ、図13および図14に示している。図13および図14において、熱処理後のデータは「as−annealed」と記載された曲線で示されている。熱処理後の磁気特性を以下の表10に示す。
【0290】
【表10】
Figure 0004168643
【0291】
図14および表10からわかるように、本実施例における鉄基永久磁石は良好な磁気特性を発揮した。
【0292】
次に、熱処理後の微細金属組織を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観測した。その結果、熱処理後の組織内には、平均粒径40nm程度の結晶粒と、その粒界に10nm程度の微細結晶粒とが存在していることがわかった。また、HRTEM(高解像透過電子顕微鏡)による金属組織解析の結果、平均粒径40nm程度の結晶粒はNd2Fe14Bであり、その粒界にはFe236またはFe3Bの鉄基硼化物が存在していることを確認した。
【0293】
(実施例4)
本実施例でも、図3に示すストリップキャスト装置を用いた。
【0294】
まず、原子比率でNd9Fe7312.61.4Ti3Nb1の組成を有するように、純度99.5%以上のB、C、Fe、Nb、Ti、およびNdの金属を用いて総量が5kgとなるように秤量した。これらの金属をアルミナ製坩堝内に投入し、圧力35kPaのアルゴン雰囲気中で高周波加熱により溶解した。溶解温度は1350℃とした。
【0295】
溶解後、坩堝を傾転し、溶湯を多孔質セラミックス製のシュート上に供給し、冷却ロールの表面へ導いた。シュートの表面温度はヒータによって600℃に保持した。また、シュート上において溶湯がロールへ向かってスムーズに流れるように、シュートを水平方向に対して20°(=角度α)だけ傾けた。また、溶湯は、ロールの直上部から坩堝の位置へ40°(=角度β)だけ傾斜した位置に注がれるようにシュートを配置した。本実施例でも、図4に示すシュートを用いた。
【0296】
本実施例では、表11に示す表面周速度で冷却ロールを回転させた。また、坩堝の傾転角を調整することにより、シュート上を流れる溶湯の供給速度(1つの流れあたり)を表11に示すように調整した。溶湯の1つの流れの幅は10mmとして、ロール周速度および溶湯供給速度が急冷に与える影響を調べた。
【0297】
なお、本実施例でも、実施例3と同様に、表面の中心線粗さRaが5μmの純銅製ロールを用いた。ロール温度の上昇はロール内部の水冷によって防止した。
【0298】
【表11】
Figure 0004168643
【0299】
表11において、「○」は、安定して急冷合金を作製できた場合を示している。これに対し、「×」はスプラッシュが発生し、所望の組織を有する急冷合金を安定して得ることができなかった場合を示している。「△」は、安定した急冷合金の作製がしばしば観察されたものの、断続的にスプラッシュが発生した場合を示している。
【0300】
表11から、ロール表面周速度が10m/秒以上18m/秒以下の場合、1つの溶湯流れあたりの溶湯供給速度が1.0kg/分以上2.0kg/分以下で安定した急冷が実現していることがわかる。ロール表面周速度が速くなるほど、急冷合金薄帯は薄くなり、また、スプラッシュも発生しやすくなる。
【0301】
溶湯の1つの流れあたりの溶湯供給速度は、急冷合金薄帯の厚さにはさほど影響しないが、急冷合金薄帯の幅を変化させる。溶湯供給速度が大きいほど、急冷合金薄帯の幅が広くなる。
【0302】
急冷合金薄帯の厚さは、ロール表面周速度に依存して変化する。すなわち、ロール表面周速度が速いほど、急冷合金薄帯は薄くなる。例えば、ロール表面周速度が10m/秒のとき、急冷合金薄帯の平均厚さは100μm程度であり、ロール表面周速度が22m/秒のとき、急冷合金薄帯の平均厚さは45〜80μm程度である。
【0303】
前述したように、急冷合金薄帯の厚さが厚いほど(例えば80μmを超える厚さを持つ場合)、急冷合金を粉砕することによって、等軸形状に近い形状の粉末粒子が得られやすい。アスペクト比が1に近い粒子が多く含まれる粉末を用いてボンド磁石を作製すれば、磁石特性に優れたボンド磁石を得ることができる。
【0304】
なお、ロールの表面周速度14m/秒、溶湯の1つの流れあたりの溶湯供給量1.3kg/分の条件で作製された急冷合金の組織をCuKαの特性X線により調べた。その結果、Nd2Fe14Bの回折ピークとともに、Fe236およびα−Feが混在している急冷合金組織であることを確認した。
【0305】
【発明の効果】
本発明によれば、ストリップキャスト法を用い、Tiを原料合金に添加した希土類合金溶湯の急冷を行なうことにより、磁石に必要な希土類元素の量を低減しながら保磁力および磁化が充分に高い優れた磁気特性を発揮する鉄基希土類磁石用原料合金を量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で好適に使用されるストリップキャスト装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明により製造されるナノコンポジット磁石の組織を示す図である。
【図3】本発明で好適に使用されるストリップキャスト装置の他の構成例を示す図である。
【図4】ストリップキャスト装置で用いられる合金溶湯のシュート(案内手段)を示す斜視図である。
【図5】ストリップキャスト法に用いる冷却ロールの表面における中心線粗さRaが合金溶湯の急冷に与える影響を示す図である。
【図6】メルトスピニング法に用いる冷却ロールの表面における中心線粗さRaが合金溶湯の急冷に与える影響を示す図である。
【図7】ストリップキャスト法で形成された急冷合金の組織構造を示す断面図であり、(a)はTiを添加したR−T−B系合金の断面を示し、(b)はTiを添加しない従来のR−T−B系合金の断面を示している。
【図8】試料No.2および試料No.6のDTAを示すグラフである。
【図9】試料No.8および試料No.14のDTAを示すグラフである。
【図10】結晶化熱処理前(as−cast)の試料No.8および試料No.14の粉末X線回折データを示すグラフである。
【図11】Nd9Fe7312.61.4Ti4(実施例:p=0.1)及びNd9Fe7377Ti4(比較例:p=0.5)の熱処理前におけるXRDパターンを示している。
【図12】Nd9Fe7312.61.4Ti4(実施例)及びNd9Fe7377Ti4(比較例)の減磁曲線を示している。
【図13】本発明の実施例に関する粉末XRDのグラフである。「as−cast」と記載している曲線が急冷合金に関するものであり、「as−annealed」と記載している曲線が熱処理後における合金に関するものである。
【図14】振動型磁力計を用いて測定した本発明の実施例に関する減磁曲線のグラフである。「as−cast」と記載している曲線が急冷合金に関するものであり、「as−annealed」と記載している曲線が熱処理後における合金に関するものである。
【図15】本発明によるナノコンポジット磁粉および従来の急冷磁石粉末の加熱質量増加率を示すグラフである。
【図16】粒度分布の異なるナノコンポジット磁粉を用いて形成されたボンド磁石成形体の密度を示すグラフである。
【図17】本発明による実施形態の永久磁石回転子型を備えるステッピングモータ100の構成を模式的に示す分解斜視図である。
【図18】(a)〜(d)は、本発明による実施形態のボンド磁石一体成形型のロータ200およびその成形工程を示す図である。
【図19】本発明による実施形態の磁石埋設型ロータ300の構造を示す模式図である。
【図20】(a)および(b)は、本発明による実施形態のロータリーエンコーダ411の構造を模式的に示す図である。
【図21】(a)および(b)は、本発明による実施形態の磁気ロール507を備える電子写真用のプロセスカートリッジ501の構造を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
1 溶解炉
2 溶解炉の底部出口
3 合金溶湯
4 樋
5 シュート(溶湯の案内手段)
6 合金溶湯のパドル
7 冷却ロール
8 急冷合金

Claims (12)

  1. 組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-nxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素であって必ずBを含み、Rは希土類金属元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Zn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素)で表現され、組成比率(原子比率)x、y、z、m、およびnが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.5≦z≦6原子%、0≦m≦0.5、および0≦n≦5原子%を満足する急冷合金であって、厚さが50μm以上200μm以下、幅が5mm以上20mm以下の範囲内にあり、厚さ方向と直交する2つの端面に結晶組織が形成され、前記結晶組織は、平均粒径が1nm以上50nm以下の強磁性鉄基硼化物相と、平均粒径20nm以上200nm以下のR2Fe14B型化合物相とを含み、前記強磁性鉄基硼化物相は、前記R2Fe14B型化合物相の粒界または亜粒界に存在し、かつ、前記R2Fe14B型化合物相の存在比率が60体積%以上である急冷合金を粉砕することによって得られたナノコンポジット磁石粉末と、
    結合剤とを含む、ボンド磁石用コンパウンド。
  2. 前記結合剤は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である、請求項1に記載のボンド磁石用コンパウンド。
  3. 前記ナノコンポジット磁石粉末は、粒径が53μm以下の粉末粒子を10質量%以上含む、請求項1または2に記載のボンド磁石用コンパウンド。
  4. 組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-nxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素であって必ずBを含み、Rは希土類金属元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、z、m、およびnが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.5≦z≦6原子%、0≦m≦0.5、および0≦n≦5原子%、を満足するナノコンポジット磁石粉末であって、粉末粒子の粒径が10μm以上300μm以下の範囲内にあり、かつ、長軸サイズに対する短軸サイズの比率が0.3以上1以下であり、磁石粉末中の結晶組織は、平均粒径が1nm以上50nm以下の強磁性鉄基硼化物相と、平均粒径20nm以上200nm以下のR2Fe14B型化合物相とを含み、前記強磁性鉄基硼化物相は、前記R2Fe14B型化合物相の粒界または亜粒界に存在し、かつ、前記R2Fe14B型化合物相の存在比率が60体積%以上であるナノコンポジット磁石粉末と、
    結合剤とを含む、ボンド磁石用コンパウンド。
  5. 前記結合剤は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である、請求項4に記載のボンド磁石用コンパウンド。
  6. 前記ナノコンポジット磁石粉末は、粒径が53μm以下の粉末粒子を10質量%以上含む、請求項4または5に記載のボンド磁石用コンパウンド。
  7. ナノコンポジット磁石粉末と結合剤とを含むボンド磁石用コンパウンドの製造方法であって、
    組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-nxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素であって必ずBを含み、Rは希土類金属元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Zn、Cu、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素)で表現され、組成比率(原子比率)x、y、z、m、およびnが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.5≦z≦6原子%、0≦m≦0.5、および0≦n≦5原子%、を満足する急冷合金であって、厚さが50μm以上200μm以下、幅が5mm以上20mm以下の範囲内にあり、厚さ方向と直交する2つの端面に結晶組織が形成され、前記結晶組織は、平均粒径が1nm以上50nm以下の強磁性鉄基硼化物相と、平均粒径20nm以上200nm以下のR2Fe1 4B型化合物相とを含み、前記強磁性鉄基硼化物相は、前記R2Fe14B型化合物相の粒界または亜粒界に存在し、かつ、前記R2Fe14B型化合物相の存在比率が60体積%以上である急冷合金を用意する工程と、
    前記急冷合金を粉砕することによってナノコンポジット磁石粉末を作製する工程と、
    前記ナノコンポジット磁石粉末と結合剤とを混合する工程と
    を包含する、ボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  8. 前記結合剤は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である、請求項7に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  9. 前記ナノコンポジット磁石粉末は、粒径が53μm以下の粉末粒子を10質量%以上含む、請求項7または8に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  10. 組成式が(Fe1-mm100-x-y-z-nxyTizn(TはCoおよびNiからなる群から選択された1種以上の元素、QはBおよびCからなる群から選択された1種以上の元素であって必ずBを含み、Rは希土類金属元素、Mは、Al、Si、V、Cr、Mn、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Pt、Pb、AuおよびAgからなる群から選択された一種以上の元素)で表現され、組成比率x、y、z、m、およびnが、それぞれ、10<x≦20原子%、6≦y<10原子%、0.5≦z≦6原子%、0≦m≦0.5、および0≦n≦5原子%、を満足するナノコンポジット磁石粉末であって、粉末粒子の粒径が10μm以上300μm以下の範囲内にあり、かつ、長軸サイズに対する短軸サイズの比率が0.3以上1以下であり、磁石粉末中の結晶組織は、平均粒径が1nm以上50nm以下の強磁性鉄基硼化物相と、平均粒径20nm以上200nm以下のR2Fe14B型化合物相とを含み、前記強磁性鉄基硼化物相は、前記R2Fe14B型化合物相の粒界または亜粒界に存在し、かつ、前記R2Fe14B型化合物相の存在比率が60体積%以上であるナノコンポジット磁石粉末を用意する工程と、
    前記ナノコンポジット磁石粉末と結合剤とを混合する工程と
    を包含する、ボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  11. 前記結合剤は熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂である、請求項10に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
  12. 前記ナノコンポジット磁石粉末は、粒径が53μm以下の粉末粒子を10質量%以上含む、請求項10または11に記載のボンド磁石用コンパウンドの製造方法。
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