JP2003292312A - カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ膜、カーボンナノチューブ膜含有炭化珪素基板及びカーボンナノチューブ膜体並びにそれらの製造方法 - Google Patents
カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ膜、カーボンナノチューブ膜含有炭化珪素基板及びカーボンナノチューブ膜体並びにそれらの製造方法Info
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Abstract
成長したカーボンナノチューブ及びその製造方法、炭化
珪素のC面のみならず、Si面から多数のカーボンナノ
チューブが生成形成され、且つ所定の方向に高配向する
カーボンナノチューブ膜、カーボンナノチューブ膜含有
基板及びカーボンナノチューブ膜体並びにそれらを大量
に製造する方法を提供する。 【解決手段】 炭化珪素の表面を化学処理し、処理後の
炭化珪素を微量酸素の含有する雰囲気において該炭化珪
素が分解して該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる
温度に加熱することにより、該炭化珪素から珪素原子を
除去して、該炭化珪素の表面から内部へ生成成長させて
カーボンナノチューブを得る。
Description
ブ、カーボンナノチューブ膜、カーボンナノチューブ膜
含有基板及びカーボンナノチューブ膜体並びにそれらの
製造方法に関し、更に詳しくは、炭化珪素のC面のみな
らず、Si面から生成成長したカーボンナノチューブ及
びその製造方法、炭化珪素のC面のみならず、Si面か
ら多数のカーボンナノチューブが生成形成され、且つ所
定の方向に高配向するカーボンナノチューブ膜、カーボ
ンナノチューブ膜含有基板及びカーボンナノチューブ膜
体並びにそれらを大量に製造する方法に関する。本発明
のカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ膜、カ
ーボンナノチューブ膜含有基板及びカーボンナノチュー
ブ膜体は、電子放出素子、ガス分離膜、磁性材料、超伝
導材料、二次電池の電極材料等に利用される。
法としては大きく分けて2つに大別することができる。
1つは基板上にFe、Co及びNi等の触媒をコーティ
ングして、CVD(Chemical Vapor Deposition)法に
より垂直方向に伸びたカーボンナノチューブ配向膜を得
る方法であり、もう1つは炭化珪素単結晶を表面分解す
ることにより、基板に対して垂直に伸びたカーボンナノ
チューブ配向膜を得る方法である(特願平9−8751
8号公報)。
on Insulator)基板上に炭化珪素単結晶を堆積させた
後、基板を剥離し、炭化珪素単結晶を表面分解して、ナ
ノチューブの自立膜を得る方法も提案されている(特願
平10−282214号公報)。しかしながら、触媒を
用いたCVD法の場合、比較的大面積のカーボンナノチ
ューブを得ることは可能であるが、チューブが曲がりや
すく、また、触媒として用いた金属がナノチューブ内部
に残るため、配向膜の品質に問題があった。一方、炭化
珪素単結晶を表面分解してカーボンナノチューブ膜を得
る方法の場合、炭化珪素が結晶の一方にSi原子のみの
表面(以下、「Si面」という。)及び他方にC原子の
みの表面(以下、「C面」という。)が存在する性質を
有する極性材料であるため、カーボンナノチューブの生
成が炭化珪素のC面上に限られており、Si面上にはグ
ラファイトが生成するといった問題があった(M. Kusun
okiet al., Phil. Mag. Lett., 79 [4] (1999) 153-16
1)。
鑑みてなされたものであって、炭化珪素のC面のみなら
ず、Si面から生成成長したカーボンナノチューブ及び
その製造方法、炭化珪素のC面のみならず、Si面から
多数のカーボンナノチューブが生成形成され、且つ所定
の方向に高配向するカーボンナノチューブ膜、カーボン
ナノチューブ膜含有基板及びカーボンナノチューブ膜体
並びにそれらを大量に製造する方法を提供することを目
的とする。
を解決するため、従来から行われている、炭化珪素の表
面分解法によるカーボンナノチューブの生成が炭化珪素
のC面上に限られていたことについて鋭意検討を重ね
た。そして、この現象は原料である炭化珪素の表面、特
にSi面に酸化膜が生成し、炭化珪素の分解を阻害して
いるためであることを見出し、これを取り除くことによ
り、炭化珪素のSi面にもカーボンナノチューブを生成
させることができ、本発明を完成するに至った。
放置されると表面に酸化膜が生成される。この酸化膜
は、XPS(光電子分光法)による表面分析では、C面
では、Si−C以外にC−Si−Oなる結合状態を、ま
た、Si面では、Si−C以外にC−Si−O、更には
Si−O(SiO2)なる結合状態を有する。このSi
O2はガラス状であり、Si面における酸化膜、即ちS
iO2の存在は、SiO 2ガラスがCを多く含むSiO
Cガラスよりも高温で安定であるために炭化珪素の表面
分解法によるカーボンナノチューブの生成を妨害する。
そのため、清浄な炭化珪素表面を得る工程を見出した。
は、炭化珪素の表面を化学処理し、処理後の炭化珪素を
微量酸素の含有する雰囲気において該炭化珪素が分解し
て該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる温度に加熱
することにより、該炭化珪素から珪素原子を除去して、
該炭化珪素の表面から内部へカーボンナノチューブを生
成成長させることを特徴とする。
ンモニウム、フッ化カリウム及び水酸化カリウムから選
ばれる少なくとも1種を含み、ガラスの腐食に用いられ
る処理剤により行うものとすることができる。また、上
記加熱温度は、1200〜2000℃であるものとする
ことができる。本発明のカーボンナノチューブは、上記
方法により得られたものとすることができる。
法は、炭化珪素の表面を化学処理し、処理後の炭化珪素
を微量酸素の含有する雰囲気において該炭化珪素が分解
して該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる温度に加
熱することにより、該炭化珪素から珪素原子を除去し
て、該炭化珪素の表面から内部へ多数のカーボンナノチ
ューブを生成成長させることを特徴とする。
ンモニウム、フッ化カリウム及び水酸化カリウムから選
ばれる少なくとも1種を含み、ガラスの腐食に用いられ
る処理剤により行うものとすることができる。また、上
記加熱温度は、1200〜2000℃であるものとする
ことができる。上記炭化珪素がα−SiCである場合、
カーボンナノチューブが(0001)面に対して垂直に
配向しているものとすることができる。また、上記炭化
珪素がβ−SiCである場合、カーボンナノチューブが
(111)面に対して垂直に配向しているものとするこ
とができる。本発明のカーボンナノチューブ膜は、上記
方法により得られたものとすることができる。
珪素基板は、炭化珪素基板の表面を化学処理し、処理後
の炭化珪素基板を微量酸素の含有する雰囲気において炭
化珪素が分解して該炭化珪素基板の表面から珪素原子が
失われる温度に加熱することにより、該炭化珪素から珪
素原子を除去して、該炭化珪素基板の表面から内部へ生
成形成された多数のカーボンナノチューブからなるカー
ボンナノチューブ膜と、該カーボンナノチューブ膜の下
方に位置する炭化珪素基部と、を有すること特徴とす
る。
記カーボンナノチューブが(0001)面に対して垂直
に配向しているものとすることができる。また、上記炭
化珪素がβ−SiCである場合、上記カーボンナノチュ
ーブが(111)面に対して垂直に配向しているものと
することができる。
珪素基板の製造方法は、炭化珪素基板の表面を化学処理
し、処理後の炭化珪素基板を微量酸素の含有する雰囲気
において炭化珪素が分解して該炭化珪素基板の表面から
珪素原子が失われる温度に加熱することにより、該炭化
珪素から珪素原子を除去して、該炭化珪素基板の表面か
ら内部へ多数のカーボンナノチューブを生成形成させて
カーボンナノチューブ膜とし、該カーボンナノチューブ
膜の下方に位置する炭化珪素基部を備えたこと特徴とす
る。上記化学処理は、ガラスの腐食に用いられる処理剤
により行うものとすることができる。
化珪素の表面を化学処理し、処理後の炭化珪素を微量酸
素の含有する雰囲気において炭化珪素が分解して該炭化
珪素の表面から珪素原子が失われる温度に加熱すること
により、該炭化珪素から珪素原子を完全に除去して形成
された多数のカーボンナノチューブからなることを特徴
とする。
の製造方法は、炭化珪素の表面を化学処理し、処理後の
炭化珪素を微量酸素の含有する雰囲気において炭化珪素
が分解して該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる温
度に加熱することにより、該炭化珪素から珪素原子を完
全に除去して、多数のカーボンナノチューブの集合体と
することを特徴とする。上記化学処理は、ガラスの腐食
に用いられる処理剤により行うものとすることができ
る。
法によると、炭化珪素の表面を化学処理することによ
り、炭化珪素のC面のみならず、Si面にもカーボンナ
ノチューブを生成成長させることができる。化学処理
は、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化カリウ
ム、水酸化カリウム等を含む処理液で行うことによっ
て、効率よく炭化珪素の表面に生成した酸化膜等を除去
することができる。更に、酸化膜を除去したSi面で
は、炭化珪素の表面分解のために加熱を長時間行っても
グラファイト層が生成することがない。従って、製造方
法が異なることによってカーボンナノチューブが生成し
ないあるいは生成しにくい炭化珪素原料は、上記化学処
理により、カーボンナノチューブの生成成長を可能にす
る。また、得られるカーボンナノチューブの収率のばら
つきを最小限にすることができる。酸化膜を除去したS
i面を表面分解して得られたカーボンナノチューブは、
長時間分解してもその根元にグラファイト層が存在しな
いので、カーボンナノチューブのみの特性を見ることが
でき、それを生かした製品へと応用される。また、本発
明のカーボンナノチューブ膜の製造方法及びカーボンナ
ノチューブ膜含有炭化珪素基板の製造方法によれば、カ
ーボンナノチューブが炭化珪素原料に対して垂直に配向
しているので、大面積のカーボンナノチューブを得る目
的には、従来では、炭化珪素のC面にしか生成させるこ
としかできなかったが、炭化珪素のC面及びSi面の両
方に生成形成させることができるため、非常に製造効率
がよい。更に、本発明のカーボンナノチューブ膜体によ
れば、カーボンナノチューブのみの集合体であるため、
その特性を生かし、ガス分離膜等に非常に有用である。
ーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ膜、カーボ
ンナノチューブ膜含有炭化珪素基板及びカーボンナノチ
ューブ膜体を得るために用いるSiCとしては特に限定
されない。結晶形はα−SiCでもβ−SiCでもいず
れでもよい。また、単結晶でも多結晶でもよい。ウィス
カー(ひげ状結晶)であってもよい。更に、多孔質であ
ってもよい。多孔質の場合、気孔率等も特に限定されな
い。また、気孔の形状も球状であっても不規則なもので
あってもよく、閉じた気孔でも外部と通じた気孔であっ
てもよい。更に、焼結体であってもよい。SiCの形状
も板状(円形、四角形、L形等)、線状(直線、曲線
等)、塊状(立方体、直方体、球形、略球形等)等特に
限定されない。
限定されない。通常は、炭化珪素を侵すおそれのない処
理液を用いて行われる。上記処理液は炭化珪素の表面の
酸化膜を腐食あるいは溶解させることができるものであ
れば特に限定されないが、酸又はアルカリの処理液が好
ましく、ガラスの腐食に適した処理液が特に好ましい。
例えば、腐食液としてフッ化水素酸水溶液、フッ化アン
モニウム水溶液、フッ化カリウム水溶液、水酸化カリウ
ム水溶液、(フッ化水素酸+硝酸)水溶液等が挙げられ
る。これらのうち、フッ化水素酸水溶液、フッ化アンモ
ニウム水溶液、フッ化カリウム水溶液、水酸化カリウム
水溶液及び(フッ化水素酸+硝酸)水溶液が好ましい。
但し、溶融酸化ナトリウム溶液、炭酸ナトリウム・硝酸
カリウム混合液等は炭化珪素にダメージを与えるため好
ましくない。上記処理液は、炭化珪素の形状や目的等に
応じて処理条件(処理方法、処理液の濃度、温度、処理
時間等)を選択すればよい。処理方法としては浸漬法、
吹きつけ法等があるが、浸漬法が好ましい。浸漬法によ
る化学処理は、上記処理液の1種のみを用いて行っても
よいし、複数種類の処理液を混合せずに別々の工程で用
いて行ってもよい。尚、炭化珪素を化学処理した後は、
超純水等で洗浄し、加熱工程へ進めることが好ましい。
する場合、その濃度は、好ましくは0.5〜49%、よ
り好ましくは0.5〜20%、更に好ましくは5〜10
%である。濃度が小さすぎると酸化膜の除去に長時間を
要する傾向があり、大きすぎると酸化膜の除去を制御し
にくい傾向がある。また、処理時間は、好ましくは5〜
60分、より好ましくは5〜30分、更に好ましくは1
0〜20分である。処理時間が短すぎると酸化膜が表面
に残留する傾向がある。尚、処理温度は、通常、10〜
30℃である。
ッ化カリウム水溶液を用いて化学処理する場合、各濃度
は、好ましくは0.5〜40%、より好ましくは0.5
〜20%、更に好ましくは5〜10%である。濃度が小
さすぎると酸化膜の除去に長時間を要する傾向があり、
大きすぎると酸化膜の除去を制御しにくい傾向がある。
また、各処理時間は、好ましくは5〜60分、より好ま
しくは5〜30分、更に好ましくは10〜20分であ
る。処理時間が短すぎると酸化膜が表面に残留する傾向
がある。尚、処理温度は、通常、10〜30℃である。
る場合、その濃度は、好ましくは0.5〜30%、より
好ましくは0.5〜20%、更に好ましくは5〜15%
である。濃度が小さすぎると酸化膜の除去に長時間を要
する傾向があり、大きすぎると酸化膜の除去を制御しに
くい傾向がある。また、処理時間は、好ましくは60〜
420分、より好ましくは120〜360分、更に好ま
しくは180〜300分である。処理時間が短すぎると
酸化膜が表面に残留する傾向がある。尚、処理温度は、
通常、30〜80℃である。
例えば、(1)フッ化水素酸水溶液を用いた後、水酸化
カリウム水溶液を用いる方法、(2)フッ化アンモニウ
ム水溶液を用いた後、水酸化カリウム水溶液を用いる方
法等がある。上記化学処理によって、炭化珪素の表面に
存在する酸化膜は2Å以下とわずかな厚さとなるに留ま
る。
は、上記化学処理後の炭化珪素を、微量酸素を含有する
雰囲気において加熱すると、Siが酸化されてSiOと
して蒸発し、残ったCが筒状のチューブ構造をとって配
列することで製造される。上記「微量酸素を含有する雰
囲気」とは、微量の酸素を含有する環境(条件)であれ
ば、特に限定されず、減圧状態であっても、常圧であっ
ても、あるいは加圧状態であってもよいし、また、酸素
以外の主たる気体の存在下であってもよい。好ましく
は、真空中あるいは不活性ガス雰囲気である。
素を加熱する場合、炭化珪素の分解により珪素原子を除
去可能な限りにおいて、真空度及び加熱温度は特に限定
されない。好ましい真空度は、10−4〜10−10T
orrであり、より好ましくは10−5〜10−9To
rrである。真空度が高すぎると、生成されるカーボン
ナノチューブ同士が食い合うことにより、一部のチュー
ブが他を吸収して大きく成長する場合があり、カーボン
ナノチューブのサイズを制御することが困難になる。ま
た、好ましい加熱温度は、1200〜2000℃であ
り、より好ましくは1400〜1800℃である。加熱
温度が高すぎると、炭化珪素から珪素原子が失われる速
度が大きくなり、カーボンナノチューブの配向が乱れや
すくなるとともにチューブ径が大きくなる傾向がある。
また、カーボン自身もCOとなり蒸発し、カーボンナノ
チューブ膜厚も薄くなり、更に消失してしまい、乱れた
グラファイト層が形成されるので好ましくない。尚、上
記加熱温度に達するまでの昇温速度は特に限定されない
が、通常、平均速度は5〜30℃/分、好ましくは5〜
20℃/分である。多段階で加熱してもよい。また、上
記加熱温度における保持時間も特に限定されず、通常3
0〜360分、好ましくは30〜240分である。保持
時間が長すぎると炭化珪素のC面上ではカーボンナノチ
ューブにグラファイトが混入する傾向にある。上記加熱
が終了した後、室温まで降温されるが、その速度も特に
限定されない。多段階で降温してもよい。
気において炭化珪素を加熱する場合の不活性ガスとして
は、He及びAr等が挙げられるが、Arが好ましい。
含有される酸素の量は、好ましくは3%以下、より好ま
しくは1%以下である。尚、通常、下限は0.0000
01%である。酸素の量が多すぎると、カーボンナノチ
ューブがエッチングされることがある。不活性ガス雰囲
気において炭化珪素を加熱する場合、炭化珪素の分解に
より珪素原子を除去可能な限りにおいて、雰囲気の圧力
及び加熱温度は特に限定されない。好ましい加熱温度
は、1200〜2000℃であり、より好ましくは14
00〜1800℃である。加熱温度が高すぎると、炭化
珪素から珪素原子が失われる速度が大きくなり、カーボ
ンナノチューブの配向が乱れやすくなるとともにチュー
ブ径が大きくなる傾向がある。また、カーボン自身もC
Oとなり蒸発し、カーボンナノチューブ膜厚も薄くな
り、更に消失してしまい、乱れたグラファイト層が形成
されるので好ましくない。尚、上記加熱温度に達するま
での昇温速度は特に限定されないが、通常、平均速度は
5〜30℃/分、好ましくは5〜20℃/分である。多
段階で加熱してもよい。また、上記加熱温度における保
持時間も特に限定されず、通常30〜360分、好まし
くは30〜240分である。保持時間が長すぎると炭化
珪素のC面上ではカーボンナノチューブにグラファイト
が混入する傾向にある。上記加熱が終了した後、室温ま
で降温されるが、その速度も特に限定されない。多段階
で降温してもよい。
限定されず、電気炉、レーザービーム照射、直接通電加
熱、赤外線照射加熱、マイクロ波加熱及び高周波加熱等
の手段によることができる。
ンナノチューブ膜含有炭化珪素基板及びカーボンナノチ
ューブ膜体は、上記と同様の炭化珪素及び製造方法によ
って得ることができる。前記のように、原料である炭化
珪素は、一方がSi面であり、他方がC面であるため、
本発明のカーボンナノチューブ膜及びカーボンナノチュ
ーブ膜含有炭化珪素基板は、炭化珪素の全表面にカーボ
ンナノチューブが形成されたものとすることができる。
また、Si面とC面の両方から生成形成されたカーボン
ナノチューブは、同じ条件で製造すると、長さが異なる
ことがある(Si面におけるカーボンナノチューブが短
くなる傾向にある。)が、チューブ径はほぼ同じであ
り、物性もほぼ同じである。
合、カーボンナノチューブは(0001)面に対して垂
直に配向する傾向にある。また、炭化珪素がβ−SiC
である場合、カーボンナノチューブは(111)面に対
して垂直に配向する傾向にある。従って、原料である炭
化珪素の結晶系が予め明らかな場合は、カーボンナノチ
ューブの生成形成する方向を予想することができるた
め、目的に応じた炭化珪素の形状とする等によって、製
品へのスピードアップも図れる。
炭化珪素基板は、原料である炭化珪素を完全に分解する
ことなく、その一部を基部とするものである。また、本
発明のカーボンナノチューブ膜体は、原料である炭化珪
素を完全に分解させて、Si面及びC面の両方からカー
ボンナノチューブを生成させ、多数のカーボンナノチュ
ーブの集合体とするものである。
る。 実施例1 出発材料として六方晶炭化珪素を用い、(000 ̄1)
Si面にカーボンナノチューブを生成させるために以下
の処理を行った。まず、炭化珪素の表面の酸化膜を除去
するため、10%フッ化水素酸水溶液に室温下、30分
間浸した後、超純水にて水洗した。そして、真空中(1
×10−4Torr)、室温から1700℃まで加熱
し、保持時間4時間として炭化珪素を表面分解させた。
その後、室温に戻して、カーボンナノチューブを得た。
以上の工程の説明図を図1に示す。
の炭化珪素の表面をXPSにて測定した。Si面におけ
るSi2pスペクトルを図2及び図3に示す。また、C
面におけるSi2pスペクトルを図4及び図5に示す。
図2では、得られたスペクトルに対して、Siの結合種
類を推測した分離ピークを併せて表示した。100.4
eVに見られる主組成のSi−Cピークと、101.4
eVあたりに見られるC−Si−Oピークと、102.
9eVあたりに見られるSi−O(SiO2)ピークと
が確認された。フッ化水素酸水溶液による化学処理の後
の炭化珪素の表面を示す図3では、上記のC−Si−O
ピーク及びSi−O(SiO2)ピークはSi−Cピー
クのベースラインに近いほどであり、酸化膜がほとんど
除去されたことが分かる。尚、各図において、表面電荷
の若干の違いから発生するチャージアップは無視するも
のとする。以下も同じである。また、図4では、図2と
同様にSi−Cピークと、C−Si−Oピークとが確認
された。図2と比較するとSi−O(SiO2)ピーク
が存在せず、C−Si−Oピークが高エネルギー側にシ
フトしていることが分かる。フッ化水素酸水溶液による
化学処理の後の炭化珪素の表面を示す図5では、上記の
C−Si−OピークはSi−Cピークのベースラインに
近いほどであり、酸化膜がほとんど除去されたことが分
かる。従って、Si面及びC面いずれもわずかな酸化膜
を化学処理により除去し、より清浄な表面を有する炭化
珪素を熱分解させることができた。
ーブを透過型電子顕微鏡で観察したところ、図6に示す
ような基板に対して垂直に配向した膜を形成しているこ
とが分かった。カーボンナノチューブの長さは約350
nmであった。尚、C面において得られるカーボンナノ
チューブも基板に対して垂直に配向しており、その長さ
は約530nmであった。
を用いた。これを80℃の1N−水酸化カリウム水溶液
に入れ、6時間保持した。その後、超純水にて水洗し、
粉末を真空中で乾燥させた。酸化膜を除去した粉末はア
セトン中で超音波分散させた後、アルゴンガスを用いた
スプレーガンにより、アモルファスカーボン上にコーテ
ィングした。次いで、粉末をコーティングしたアモルフ
ァスカーボン板を真空加熱炉にいれ、真空中(1×10
−4Torr)、室温から1700℃まで加熱し、保持
時間4時間の条件で炭化珪素を表面分解させた。その
後、室温に戻して、カーボンナノチューブを得た。アモ
ルファス基板上の粉末の表面を透過型電子顕微鏡で観察
したところ、カーボンナノチューブが生成していた。カ
ーボンナノチューブの長さは約300nmであった。
mのSOI(111)基板を用いた。まず、以下に示す
熱CVD法によりこの基板の表面に炭化珪素単結晶を堆
積させた。基板をエタノール、続いてアセトンにて超音
波洗浄を行って脱脂した後、反応管の中に入れて、水素
雰囲気、1150℃で20分間加熱した。基板温度が安
定した後、原料ガスを導入し、成膜を開始した。Cの原
料ガスとしてCH3Clを、Siの原料ガスとしてSi
H4を使用した。原料ガスは水素で10%に希釈・充填
したボンベから供給され、反応室へ入る前にキャリアガ
スの水素と混合した。各ガス流量はH2が340scc
m、SiH2Cl2が14sccm、CH3Clが9.
4sccmであった。膜を約1μm堆積させた後、基板
を取り出した。その後、基板を10%フッ化アンモニウ
ム水溶液に浸し、炭化珪素膜を基板から分離した後、8
0℃の1N−水酸化カリウム水溶液に3時間浸し、炭化
珪素に付着しているシリコンを溶解させると同時に表面
の酸化膜を除去した。そして、真空中(1×10−4T
orr)、室温から1700℃まで加熱し、保持時間4
時間の条件で炭化珪素を表面分解させ、カーボンナノチ
ューブを得た。
ーブを透過型電子顕微鏡で観察したところ、図7に示す
ような基板に対して垂直に配向した膜を形成しているこ
とが分かった。カーボンナノチューブの長さは約350
nmであった。尚、C面において得られるカーボンナノ
チューブも基板に対して垂直に配向しており、その長さ
は約550nmであった。
ことにより、C面だけでなく、Si面にもカーボンナノ
チューブ膜を容易に生成形成することができることが分
かる。また、粉末を原料とした実施例2では、表面積が
大きいという粉末の性質にもかかわらず、化学処理によ
る表面の酸化膜の除去によって、グラファイトの生成を
抑制して、カーボンナノチューブの収率を向上すること
ができた。実施例3は、化学処理として、酸とアルカリ
の両方を順に行った例であり、上記と同様にSi面にも
カーボンナノチューブ膜を容易に生成形成することがで
きることが分かる。
示す模式的説明図である。
面のXPSによるSi2pスペクトルである。
面のXPSによるSi2pスペクトルである。
のXPSによるSi2pスペクトルである。
のXPSによるSi2pスペクトルである。
顕微鏡写真である。
顕微鏡写真である。
iO2ガラス、4a及び4b;カーボンナノチューブ
膜。
Claims (19)
- 【請求項1】 炭化珪素の表面を化学処理し、処理後の
炭化珪素を微量酸素の含有する雰囲気において該炭化珪
素が分解して該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる
温度に加熱することにより、該炭化珪素から珪素原子を
除去して、該炭化珪素の表面から内部へカーボンナノチ
ューブを生成成長させることを特徴とするカーボンナノ
チューブの製造方法。 - 【請求項2】 上記化学処理は、ガラスの腐食に用いら
れる処理剤により行う請求項1に記載のカーボンナノチ
ューブの製造方法。 - 【請求項3】 上記処理剤は、フッ化水素酸、フッ化ア
ンモニウム、フッ化カリウム及び水酸化カリウムから選
ばれる少なくとも1種を含有する請求項2に記載のカー
ボンナノチューブの製造方法。 - 【請求項4】 上記加熱温度は、1200〜2000℃
である請求項1乃至3のいずれかに記載のカーボンナノ
チューブの製造方法。 - 【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載の方法
により得られたことを特徴とするカーボンナノチュー
ブ。 - 【請求項6】 炭化珪素の表面を化学処理し、処理後の
炭化珪素を微量酸素の含有する雰囲気において該炭化珪
素が分解して該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる
温度に加熱することにより、該炭化珪素から珪素原子を
除去して、該炭化珪素の表面から内部へ多数のカーボン
ナノチューブを生成成長させることを特徴とするカーボ
ンナノチューブ膜の製造方法。 - 【請求項7】 上記化学処理は、ガラスの腐食に用いら
れる処理剤により行う請求項6に記載のカーボンナノチ
ューブ膜の製造方法。 - 【請求項8】 上記処理剤は、フッ化水素酸、フッ化ア
ンモニウム、フッ化カリウム及び水酸化カリウムから選
ばれる少なくとも1種を含有する請求項7に記載のカー
ボンナノチューブ膜の製造方法。 - 【請求項9】 上記炭化珪素がα−SiCである場合、
カーボンナノチューブが(0001)面に対して垂直に
配向している請求項6乃至8のいずれかに記載のカーボ
ンナノチューブ膜の製造方法。 - 【請求項10】 上記炭化珪素がβ−SiCである場
合、カーボンナノチューブが(111)面に対して垂直
に配向している請求項6乃至8のいずれかに記載のカー
ボンナノチューブ膜の製造方法。 - 【請求項11】 請求項6乃至10のいずれかに記載の
方法により得られたことを特徴とするカーボンナノチュ
ーブ膜。 - 【請求項12】 炭化珪素基板の表面を化学処理し、処
理後の炭化珪素基板を微量酸素の含有する雰囲気におい
て炭化珪素が分解して該炭化珪素基板の表面から珪素原
子が失われる温度に加熱することにより、該炭化珪素か
ら珪素原子を除去して、該炭化珪素基板の表面から内部
へ生成形成された多数のカーボンナノチューブからなる
カーボンナノチューブ膜と、該カーボンナノチューブ膜
の下方に位置する炭化珪素基部と、を有すること特徴と
するカーボンナノチューブ膜含有炭化珪素基板。 - 【請求項13】 上記炭化珪素がα−SiCである場
合、上記カーボンナノチューブが(0001)面に対し
て垂直に配向している請求項12に記載のカーボンナノ
チューブ膜含有炭化珪素基板。 - 【請求項14】 上記炭化珪素がβ−SiCである場
合、上記カーボンナノチューブが(111)面に対して
垂直に配向している請求項12に記載のカーボンナノチ
ューブ膜含有炭化珪素基板。 - 【請求項15】 炭化珪素基板の表面を化学処理し、処
理後の炭化珪素基板を微量酸素の含有する雰囲気におい
て炭化珪素が分解して該炭化珪素基板の表面から珪素原
子が失われる温度に加熱することにより、該炭化珪素か
ら珪素原子を除去して、該炭化珪素基板の表面から内部
へ多数のカーボンナノチューブを生成形成させてカーボ
ンナノチューブ膜とし、該カーボンナノチューブ膜の下
方に位置する炭化珪素基部を備えたこと特徴とするカー
ボンナノチューブ膜含有炭化珪素基板の製造方法。 - 【請求項16】 上記化学処理は、ガラスの腐食に用い
られる処理剤により行う請求項15に記載のカーボンナ
ノチューブ膜含有炭化珪素基板の製造方法。 - 【請求項17】 炭化珪素の表面を化学処理し、処理後
の炭化珪素を微量酸素の含有する雰囲気において炭化珪
素が分解して該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる
温度に加熱することにより、該炭化珪素から珪素原子を
完全に除去して形成された多数のカーボンナノチューブ
からなることを特徴とするカーボンナノチューブ膜体。 - 【請求項18】 炭化珪素の表面を化学処理し、処理後
の炭化珪素を微量酸素の含有する雰囲気において炭化珪
素が分解して該炭化珪素の表面から珪素原子が失われる
温度に加熱することにより、該炭化珪素から珪素原子を
完全に除去して、多数のカーボンナノチューブの集合体
とすることを特徴とするカーボンナノチューブ膜体の製
造方法。 - 【請求項19】 上記化学処理は、ガラスの腐食に用い
られる処理剤により行う請求項18に記載のカーボンナ
ノチューブ膜体の製造方法。
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JP2005350285A (ja) * | 2004-06-08 | 2005-12-22 | Masasuke Takada | カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤおよびカーボンナノオニオンの製造方法 |
KR100752471B1 (ko) | 2003-11-20 | 2007-08-27 | 엘에스전선 주식회사 | 카본 나노튜브를 이용한 감광성 고분자 액정 배향제조성물, 이를 이용한 액정 배향막, 그 제조방법 및 상기액정 배향막을 포함하는 액정 소자 |
CN103003195A (zh) * | 2010-03-01 | 2013-03-27 | 国立大学法人东京大学 | 制备碳纳米管的方法、用于制备碳纳米管的单晶基底和碳纳米管 |
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2002
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