JP2003268424A - 金属粒子およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法 - Google Patents

金属粒子およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法

Info

Publication number
JP2003268424A
JP2003268424A JP2002066007A JP2002066007A JP2003268424A JP 2003268424 A JP2003268424 A JP 2003268424A JP 2002066007 A JP2002066007 A JP 2002066007A JP 2002066007 A JP2002066007 A JP 2002066007A JP 2003268424 A JP2003268424 A JP 2003268424A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
metal particles
aqueous solution
predetermined
polymer
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002066007A
Other languages
English (en)
Inventor
Akane Miyazaki
あかね 宮崎
Yoshio Nakano
義夫 中野
Barinto Iwan
バリント イワン
Kenichi Akishika
研一 秋鹿
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Rikogaku Shinkokai
Original Assignee
Rikogaku Shinkokai
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Rikogaku Shinkokai filed Critical Rikogaku Shinkokai
Priority to JP2002066007A priority Critical patent/JP2003268424A/ja
Publication of JP2003268424A publication Critical patent/JP2003268424A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面に特徴的な結晶面を持つ金属粒子を高収
率で得ることができる金属粒子の製造方法を提供する。 【解決手段】 本発明の金属粒子の製造方法は、白金化
合物の水溶液に、感温性ポリマーを添加する第1の工程
と、第1の工程の終了後1分以内にアルカリ水溶液の添
加を開始して、所定のpH値に調整する第2の工程と、
第2の工程の終了後1分以内に不活性ガスの吹き込みを
開始し、所定時間吹き込む第3の工程と、第3の工程の
終了後1分以内に還元性ガスの吹き込みを開始し、所定
時間吹き込んだ後に、外気と遮断する第4の工程と、所
定温度で所定時間保持する第5の工程とを含む方法であ
る。ここで、上述の白金化合物はテトラクロロ白金(I
I)酸カリウムであり、上述の感温性ポリマーはN−イ
ソプロピルアクリルアミドポリマーであることが好まし
い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属粒子およびそ
の製造方法に関する。また、本発明は、触媒およびその
製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】金属の微粒子は触媒をはじめとする様々
な分野で広く用いられており、その機能性の向上は材料
開発において不可欠である。金属微粒子の機能性はその
形態によって支配され、これは「大きさ」と「形」とい
う二つの要素に分けることができる。「大きさ」に関し
ては、粒子径が小さくなると表面積が増大することか
ら、ナノスケール(10-9m)オーダーの微小な領域での粒
子径制御が近年盛んに行なわれている。しかしながら、
一方の「形」の制御についての報告例はほとんど皆無に
等しい。
【0003】金属微粒子の形の違いは、その結晶が表面
に持つ結晶面の違いを意味している。例えば,白金、ロ
ジウム、パラジウムといった金属は面心立方構造(fcc
構造)を持ち、これらの結晶は表面に(100) 及び(111)
といった二種類の異なった面を有する。ごく微小な結晶
はクラスターと呼ばれ、(100) 面と(111) 面とを均等に
有するが、こうしたクラスターが成長していく過程で(1
00) 面と(111) 面の割合が変化し、それに応じて異なっ
た形の結晶を生ずる。その極端な例は立方体と四面体で
あり、立方体の結晶が表面に(100) 面のみを選択的に有
するのに対し、正四面体の結晶は(111) 面のみを選択的
に有する。しかし、金属微粒子がこうした極端な形態を
有することは稀であり、一般に粒子径が大きくなるに従
い球形に近い多面体を形成する。その場合、安定な面は
(111)であり、(100)、(110)等の面が主な面の間を補
う形になっている。
【0004】(100) 面と(111) 面とはその原子配列にお
いて大きく異なっており、これらそれぞれの表面に対し
化学種の吸着・反応しやすさも大きく変化する事が知ら
れている。これまで、金属の単結晶を用いた表面化学分
野での実験によって、さまざまな反応の結晶面依存性が
報告されている。こうしたことから、金属微粒子の
「形」を制御することによって粒子表面の結晶面を制御
することが可能であり、これによって粒子の反応性を制
御することが可能になる。こうした微粒子の「形」の制
御は「大きさ」の制御と同様、もしくはそれ以上に重要
である。しかし、金属粒子の形態を決定する要因が明ら
かでないことから、金属微粒子の「形」の制御は「大き
さ」の制御に比べてはるかに困難であり、これに関する
報告は少ない。
【0005】金属微粒子の「大きさ」の制御がある程度
可能になってきた現在、「形」の制御は次世代金属微粒
子調製法に不可欠な技術である。「大きさ」と「形」と
いった二つの因子を含めたトータルな形態制御を行うこ
とによって、これまでに無い画期的な金属微粒子を得る
ことができる。こうした新しい金属微粒子を用いた触媒
は、従来のものに比べて優れた反応性、選択性等を有す
るものと期待される。
【0006】金属粒子は気相もしくは液相で調製される
が、主流になっているのは液相における調製法である。
液相法は、溶液中に溶けている金属イオンを何らかの還
元剤を用いて還元する方法である。その際には、生成す
る金属粒子の分散を助け、会合を防ぐために保護剤(ポ
リマー等)を共存させるのが一般的である。よく用いら
れる例としては、ポリビニルピロリドン等のポリマー存
在下、金属塩のアルコール溶液を高温で還流させる方法
等が挙げられる。より小さく、分散性の良い金属粒子を
得ることを目的として、金属の出発物質、還元剤、保護
剤等を変化させた研究がこれまでに数多くなされてき
た。その結果、各種金属について粒径がそろった粒子を
得ることが可能になってきている。しかし、従来法で得
られる金属粒子の形はほとんどの場合が球形であり、形
態は特に制御されていない。ごくまれに、六角形の形を
した粒子(十四面体)が報告されているが、こうした場
合には粒径が大きくかつ不均一なのが一般的である。ま
た、大きさと形が制御され、特徴的な結晶面を持つ金属
粒子に関する研究もいくつか報告されているが、方法に
ついての開示が不十分である(参考文献1〜6)。大き
さと形が制御され、特徴的な結晶面を持つ金属粒子を高
収率で得る具体的な方法はこれまでに報告されていな
い。
【0007】一方、金属の微粒子を高分散で担体上に担
持させた固相担持触媒についてその調製法を見てみる
と、ほとんどの場合に含浸法が用いられているのが現状
である。これは、金属を含む液体の中に高比表面積の担
体粒子を分散させ、液相を蒸発させることによって金属
塩を担体表面に析出させた後、還元を行うという方法で
ある。この方法で得られる金属粒子は一般に多結晶で、
その粒径は金属塩の濃度に比例する。含浸法の一連の工
程は、担体の溶出等のきわめて複雑な現象を含んでお
り、形態制御され、表面に特異的な面を持った単結晶金
属粒子をこの方法で得ることは不可能である。また、形
態制御された金属粒子を液相中で調製し、それを担体上
に担持させる研究も報告されているが、方法についての
開示が不十分である(参考文献6)。形態制御された金
属粒子を液相中で調製し、それを担体上に担持させるこ
とによって、固相担時触媒を得る具体的な方法はこれま
でに報告されていない。
【0008】また、メタンをはじめとする炭化水素によ
る一酸化窒素の還元反応は、自動車から発生する有害物
質の処理技術として広く用いられている。この反応には
白金触媒が有効であることが知られているが、しばしば
副生物として環境に有害な一酸化炭素やアンモニアを生
ずることが問題となっている。こうした有害物の発生を
押さえ,生成物として無害な窒素、水、二酸化炭素を選
択的に生じる触媒の探索が行われてきた。
【0009】白金の金属表面でのNO分子の解離反応は表
面の種類によって活性が大きく異なり、(100) 面のみが
有効であることが知られている。従って、表面に(100)
面のみを選択的に有する白金微粒子の担持触媒を用いる
ことは、反応の活性、選択性を飛躍的に向上させるもの
と考えられる。しかし、このような表面制御された白金
の担持触媒を調製する具体的な方法はこれまでに報告さ
れていなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような
課題に鑑みてなされたものであり、表面に特徴的な結晶
面を持つ金属粒子を高収率で得ることができる金属粒子
の製造方法、並びにその方法により得られる金属粒子を
提供することを目的とする。
【0011】さらに、本発明は、表面に特徴的な結晶面
を持つ金属粒子を担持した、高選択性の触媒を得ること
ができる触媒の製造方法、並びにその方法により得られ
る触媒を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の金属粒子の製造
方法は、白金化合物の水溶液に、感温性ポリマーを添加
する第1の工程と、第1の工程の終了後1分以内にアル
カリ水溶液の添加を開始して、所定のpH値に調整する
第2の工程と、第2の工程の終了後1分以内に不活性ガ
スの吹き込みを開始し、所定時間吹き込む第3の工程
と、第3の工程の終了後1分以内に還元性ガスの吹き込
みを開始し、所定時間吹き込んだ後に、外気と遮断する
第4の工程と、所定温度で所定時間保持する第5の工程
とを含む方法である。
【0013】ここで、上述の白金化合物はテトラクロロ
白金(II)酸カリウムであり、上述の感温性ポリマー
はN−イソプロピルアクリルアミドポリマーであること
が好ましい。
【0014】また、上述のN−イソプロピルアクリルア
ミドポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミドモノ
マーとアゾビスイソブチロニトリル(モノマーに対する
モル比は0.001)とを、60℃で12時間反応させたものであ
ることが好ましい。また、上述の所定のpH値は7.5 で
あることが好ましい。
【0015】また、上述の還元性ガスは水素ガスである
ことが好ましい。また、上述の第5の工程における、所
定温度は35〜80℃の範囲内にあり、所定時間は2〜24時
間の範囲内にあることが好ましい。
【0016】また、上述の第1の工程では、白金化合物
の水溶液を調製して、0.5 〜6時間経過後に、感温性ポ
リマーを添加することが好ましい。また、上述の第2の
工程では、「所定のPH値に調整する」に代えて、「所
定量のアルカリ水溶液を10〜120 秒の間隔で滴下する」
とすることが好ましい。
【0017】また、上述の第3および4の工程では、第
5の工程と同じ所定温度に保持することが好ましい。ま
た、上述の第5の工程では、液体を介して、恒温槽の熱
媒体により加熱することが好ましい。
【0018】本発明の金属粒子は、(100)面を選択
的に持つ立方体粒子を68.4〜75.0%含有し、平均粒径が
11.2〜13.3nmの範囲内にある金属粒子であって、上述
の方法により製造される金属粒子である。
【0019】本発明の触媒の製造方法は、白金粒子を含
む水溶液に、担体を混合する第1の工程と、第1の工程
により得られたものをフリーズドライする第2の工程
と、第2の工程により得られたものを、所定温度で所定
時間焼成する第3の工程とを含む方法である。
【0020】ここで、白金粒子は上述の金属粒子である
ことが好ましい。また、上述の所定温度は400 〜600 ℃
の範囲内にあり、上述の所定時間は0.5〜8時間の範囲内
にあることが好ましい。また、上述の担体はγ−アルミ
ナであることが好ましい。
【0021】本発明の触媒は、一酸化窒素還元用の触媒
であって、上述の方法により製造されるものである。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。まず、金属粒子およびその製造方法にかか
る発明の実施の形態について説明する。
【0023】我々は感温性ポリマーを用いた白金粒子の
調製を試みた。その結果、適切なポリマーを選択するこ
とによって、白金粒子について形態制御が可能なことが
明らかになった。特に、感温性ポリマーであるN- イソ
プロピルアクリルアミド(NIPA)ポリマーを用いる
ことによって(100) 面を選択的に持つ立方体白金粒子を
高収率で得ることに成功した。
【0024】白金粒子の製造方法について説明する。最
初に、白金化合物の水溶液を調整し、すぐに感温性ポリ
マーを添加する。ここで、白金化合物はテトラクロロ白
金(II)酸カリウムK2[PtCl4] (以下、「塩化白金酸
カリウム」という)である。この白金化合物の濃度は、
1×10-6〜1×10-2Mの範囲内にあることが好ましい。
白金化合物の濃度がこの範囲内にあると、生成する金属
粒子の密度が観察可能な範囲内であり、かつ重合しない
だけの低濃度であるという利点があるからである。
【0025】上述の感温性ポリマーはN−イソプロピル
アクリルアミド(NIPA)ポリマーである。このNI
PAポリマーは、N−イソプロピルアクリルアミド(N
IPA)モノマーとアゾビスイソブチロニトリル(モノ
マーに対するモル比は0.001)とを、60℃で12時間反応さ
せたものである。
【0026】このように、NIPAポリマーはアゾビス
イソブチロニトリルを重合開始剤としてNIPAモノマ
ーのラジカル重合によって調製される。
【0027】感温性ポリマーは溶液中で相転移を起こ
し、相転移温度より低い温度では親水性を、高い温度で
は疎水性を有する。相転移温度は光透過率の変化から測
定することができる。すなわち、相転移温度よりも低温
側ではポリマーは親水的で溶液に溶けているため、溶液
は透明であり100 %光を透過するが、相転移温度以上の
温度ではポリマー鎖の周りの水が脱水和するためにポリ
マーが疎水的になり、溶液は白濁して光を透過しなくな
る。こうしたポリマーの性質は、温度によってポリマー
のコンフォメーションを制御することを可能にする。
【0028】白金化合物の水溶液に添加した後の、NI
PAポリマーの濃度は、モノマー濃度に換算して1×10
-6〜1Mの範囲内にあることが好ましい。NIPAポリ
マーの濃度がこの範囲内にあると、ポリマーが十分な保
護能力を発揮でき、かつポリマー同士の極端な会合が見
られないという利点があるからである。
【0029】NIPAポリマーの濃度の影響を実験的に
より確認した。ここでは、白金イオン1個あたりのポリ
マーの量を変化させた実験を行った。つまり、白金イオ
ン1×10-4M に対して、ポリマーの量をモノマー濃度と
して1倍、10倍、100 倍と変化させた結果、ポリマーの
濃度が白金粒子の形態に与える影響は温度のそれに比べ
て小さいことがわかった。つまり、相転移温度よりも高
い温度範囲で調製を行なった場合にはいずれも高い割合
で立方体粒子を得ることができることが明らかになっ
た。しかしながら、ポリマーの濃度が0.1 倍まで低くな
ると、白金の粒子は会合する。
【0030】なお、NIPAポリマーであることが必要
であり、NIPAモノマーを用いた場合には立方体粒子
は得られないことが確認されている。
【0031】この工程では、白金化合物の水溶液を調整
して、0.5 〜6時間経過後に、感温性ポリマーを添加す
ることがより好ましい。作り立ての溶液中ではPtの周り
にCl - イオンが配位しているが、時間とともにCl- イオ
ンが外れ、H2O に配位子交換する。このことはUV-Visで
確認されている。白金の還元をスムーズに行うために
は、ある程度配位子交換が進んでいるほうが良い。十分
な配位子交換には0.5時間以上必要である。しかし、6
時間を越えて放置すると、Ptイオンのまわりの配位構
造が水酸化物のそれに近づき核形成の際に形態制御を妨
げる。
【0032】つぎに、上述の工程の終了後1分以内にア
ルカリ水溶液の添加を開始してpH7.5に調整する。ま
た、アルカリ水溶液の添加後は15〜30分放置することが
好ましい。
【0033】この実験系ではポリマーと白金の相互作用
として、Ptイオンとポリマー、Ptコロイド(金属)
とポリマーという二種が考えられる。これまでの実験結
果から、(1) ポリマーとイオンとのインターラクション
はなるべく避け、金属イオンがはだかの状態で還元され
ること、(2) そのあと還元された金属コロイド(初期ク
ラスター)表面に疎水性ポリマーが直ちに作用するこ
と、の二点が形態制御に対して特に有効であることが明
らかになっている。そのため、ポリマー添加後、続く操
作は時間をおかずにすばやく行うことが好ましい。その
ため、実験上の操作性も考慮して1分以内にアルカリ水
溶液の添加を開始することが好ましい。
【0034】また、アルカリ水溶液の添加後は、15分以
上放置する理由は、水溶液中でのアルカリの濃度を均一
にすることである。しかし、水酸化物の形成を抑制する
ために30分以下とすることが好ましい。
【0035】また、アルカリ水溶液を所定量添加するこ
とがより好ましい。すなわち、上述したようにpHを7.
5 に調整するよりも、所定濃度のアルカリ水溶液を所定
量添加することがより好ましい。ポリマーおよび配位子
交換しつつあるPtを含む水溶液のpHは不安定であ
り、pH7.5に調整するためのアルカリ量は再現性が乏
しく、往々にして大きく異なっている。したがって、p
Hをモニターするよりも所定量のアルカリを加えたほう
が、はるかに再現性良く形態制御を行うことができる。
【0036】この所定量の添加により、結果としてpH
は7.7 〜8.0 の範囲になる。なお、上述の所定量は0.00
2 〜0.02ml/水溶液1mlの範囲内にあることが好ま
しい。所定量がこの範囲内にあると、還元速度を高める
に十分なアルカリが得られ、かつ局所的な水酸化物の形
成は起こらないという利点があるからである。
【0037】また、この工程では、所定量のアルカリ水
溶液を10〜120 秒の間隔で滴下することがより好まし
い。
【0038】アルカリ水溶液の添加は一滴ずつ良く撹拌
して行う。一度に所定量のアルカリ水溶液を添加する
と、塩化白金酸カリウム水溶液のpHが局所的に上昇
し、微小なPtの水酸化物を形成する。この水酸化物は
金属コロイドの形態制御を大きく妨げるので、その形成
を極力抑える必要がある。そのためには、局所的なpH
の上昇を抑える必要があり、アルカリ添加をなるべくゆ
っくりと行うことが有効である。水溶液のpHが局所的
に上昇するのを抑制し、水酸化物の形成を抑制するには
10秒以上が必要である。しかし、120 秒を越えるとこの
効果は小さくなる。
【0039】つぎに、上述の工程の終了後1分以内に不
活性ガスの吹き込みを開始し、所定時間吹き込む。ここ
で、1分以内に不活性ガスを吹き込む理由は、上述した
アルカリ水溶液を1分以内に添加する理由と同じであ
る。また、所定時間は10〜60分である。この理由は、時
間がこの範囲内にあると、溶液中の溶存酸素を脱気する
ことができるという利点があるからである。
【0040】つぎに、上述の工程の終了後1分以内に還
元性ガスの吹き込みを開始し、所定時間吹き込んだ後
に、外気と遮断する。ここで、1分以内に還元性ガスを
吹き込む理由は、上述したアルカリ水溶液を1分以内に
添加する理由と同じである。また、所定時間は1〜10分
である。時間が1分未満で、溶液に溶け込む水素の量が
少ないと還元が十分に起こらない。一方、時間が10分よ
り長く、水素を大量に流しすぎると、還元反応が早く進
行しすぎるために、金属粒子が会合してしまう。この範
囲内にあれば、還元に十分な水素を供給し、かつ会合を
避けることができる。
【0041】ここで、還元性ガスは具体的には水素ガス
である。また、還元性ガスの吹き込み量は、標準状態で
1.0 〜5.0 ml/分/水溶液1mlの範囲内にあること
が好ましい。吹き込み量がこの範囲よりも大きすぎる場
合には撹拌が激しくなるためにクラスターの会合が起こ
り、また吹き込み量がこの範囲よりも小さすぎる場合に
は水素の拡散が不充分になるために粒径分布が劣化する
からである。
【0042】つぎに、上述の工程により得られたもの
を、所定温度で所定時間保持する。ここで、NIPAポ
リマーを用いた場合、所定温度は35〜80℃の範囲内にあ
り、所定時間は2〜24時間の範囲内にある。
【0043】水素ガス吹き込み後、溶液を12時間放置す
る恒温槽の温度が形態に与える影響を実験的に調べた。
透過型電子顕微鏡で観察された粒子を、四角(立方
体)、三角(正四面体)、六角形(十四面体)、丸およ
び不定形(どちらも多結晶と考えられる)、さらに小さ
すぎて形態の判別のつかないものの六種類に分類した結
果を温度ごとに調べた。立方体粒子(square)の割合
は、35〜80分の範囲では高い値を示していた。
【0044】恒温槽での放置時間と立方体粒子の得られ
る割合とを、NIPAポリマーを用いた場合について調
べた。恒温槽での放置時間は粒子の成長時間に相当す
る。放置時間が長くなるに従って、得られる白金粒子の
平均粒径が大きくなっていることがわかった。一方、立
方体粒子の割合も放置時間が長くなるに従って高くなっ
ている。このことは、粒子の形態は粒子の成長過程で決
定されることを示唆している。2時間以上では粒子があ
る程度成長し立方体粒子の割合は高い値を示している。
しかし、24時間を超えると粒子の会合を生じる。立方体
粒子の割合は12時間後に最高になる。
【0045】この工程では、還元性ガスの吹き込みが完
了してから、所定温度にしている。ここで、不活性ガス
を吹き込み始める時から、この所定温度と同じ温度にす
ることがより好ましい。上述したように、還元されて生
じたはだかのPtコロイド核は直ちに疎水性ポリマーで
保護される必要がある。ここまでの操作は全て室温で行
っており、水素ガス吹き込み後に所定温度に設定した恒
温槽に入れている。しかし、不活性ガス吹き込みの段階
で水溶液を所定温度に設定しておくことがより好まし
い。その理由としては、水素ガス吹き込み直後に金属白
金の核が生成するのに対し、水素ガス吹き込み後に溶液
温度を上げていたのではポリマーの相転移が間に合わな
いからである。従って、不活性ガス吹き込みを所定温度
で行うことによって、還元前にポリマーを疎水性にして
おくことがより好ましいのである。
【0046】この工程では、液体を介して、恒温槽の熱
媒体により加熱することがより好ましい。これにより、
恒温槽内では水溶液を静置させることができる。試料溶
液を含むバイアルビンが槽内の水の流通等によって振動
すると、形態制御に悪影響を及ぼすからであり、この振
動の影響を防止するためである。
【0047】また、上述の工程の終了後は、内容物を20
〜-4℃で冷却することがより好ましい。取り出した溶液
を直ちに冷却し、コロイドの成長を抑えるためである。
【0048】以上の方法により、(100)面を選択的
に持つ立方体粒子を68.4〜75.0%含有し、平均粒径が1
1.2〜13.3nmの範囲内にある白金粒子を得ることがで
きる。
【0049】これまでに無い、制御された形態の白金粒
子を得ることができた。高分解能電子顕微鏡による観察
の結果、得られた白金粒子は表面に特異的な結晶面を有
していることが明らかになった。
【0050】以上のことから、本実施の形態によれば、
白金化合物の水溶液に感温性ポリマーを添加し、アルカ
リ水溶液の添加して所定のpH値に調整し、不活性ガス
を所定時間吹き込み、還元性ガスを所定時間吹き込んだ
後に外気と遮断し、所定温度で所定時間保持することに
より、表面に特徴的な結晶面を持つ白金粒子を高収率で
得ることができる。
【0051】触媒調製をはじめとする幅広い分野での利
用が期待される。特に、表面構造に依存する触媒反応へ
の適応は非常に有望である。
【0052】つぎに、触媒およびその製造方法にかかる
発明の実施の形態について説明する。我々は上述の方法
で得られた、表面に特徴的な結晶面を選択的に有する立
方体白金微粒子の触媒反応への適応を試みた。
【0053】立方体白金粒子を応用して、全く新しい触
媒を開発した。立方体白金粒子はコロイド溶液として得
られるため、これにγ- アルミナを懸濁させ、その後フ
リーズドライを行なうことによって、粒子を担体表面に
固定した。所定温度で前処理を行なった後に電子顕微鏡
で金属粒子の形態観察を行なったところ、立方体の形状
が保たれていることが確認された。
【0054】触媒の製造方法について説明する。最初
に、白金粒子を含む水溶液に、担体を混合する。すなわ
ち、白金粒子のコロイド溶液(白金化合物を還元して、
冷蔵保存しておいたもの)を取りだし、良く撹拌する。
その上で、溶液に担体を入れて懸濁させる。ここで、白
金粒子のコロイド溶液は、なるべく新鮮なものを用い
る。
【0055】ここで、白金粒子は上述の方法により作製
した白金粒子であることが好ましい。また、担体はγ−
アルミナであることが好ましい。
【0056】つぎに、上述の工程により得られたものを
フリーズドライする。すなわち、上述の工程により得ら
れた懸濁液をフリーズドライ用の容器に入れる。液体窒
素を入れた容器にフリーズドライ用の容器を浸し、外側
から冷やすことで溶液を凍結させる。
【0057】一般に、フリーズドライの際にはサンプル
に液体窒素を注ぐことが行われるが、この場合、それを
行うと溶液が上部から凍結する。下部の溶液は密封され
た形になり、凍結によって膨張すると、容器の破損につ
ながる。したがって、溶液は外部から凍結させる必要が
ある。後は、フリーズドライを行い、乾燥後、サンプル
を集める。
【0058】フリーズドライする利点は、ろ過をしない
ので、アルミナの凝集を避けることができることであ
る。
【0059】つぎに、上述の工程により得られたもの
を、所定温度で所定時間焼成する。ここで、所定温度は
400 〜600 ℃の範囲内にあり、所定時間は0.5 〜8 時間
の範囲内にある。この理由は、温度がこの範囲内にある
と、白金粒子の周りに残存しているポリマーを燃焼し、
除去することができるという利点があるからであり、ま
た、時間がこの範囲内にあると、ポリマーの除去を十分
に行い、かつ粒子の変形を防ぐことができるという利点
があるからである。
【0060】以上の方法により製造される触媒は、一酸
化窒素還元用の触媒に適用できる。
【0061】以上のことから、本実施の形態によれば、
白金粒子を含む水溶液に担体を混合し、得られたものを
フリーズドライし、所定温度で所定時間焼成することに
より、表面に特徴的な結晶面を持つ金属粒子を担持し
た、高選択性の触媒を得ることができる。
【0062】すなわち、立方体白金粒子をアルミナ上に
担持し、これをメタンによるNOの還元反応に用いること
によって、これまでにない高選択性の触媒を得ることが
できた。この触媒は、メタンによるNOの還元反応のみな
らず、広く白金を用いた触媒反応に利用することが可能
である。
【0063】なお、上述の例では担体としてγ−アルミ
ナを用いたが、担体はこれに限定されるわけではない。
このほか、本発明は、シリカ、マグネシア、セリア、チ
タニア、等の多種類の担体への金属粒子の担持方法とし
て応用することが可能である。
【0064】また、本発明は上述の実施の形態に限らず
本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採
り得ることはもちろんである。
【0065】
【実施例】つぎに、本発明にかかる第1の実施例につい
て具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に
限定されるものではないことはもちろんである。最初
に、白金粒子サンプルの作製方法について説明する。
【0066】実施例1 最初に、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPA)
ポリマーを合成した。NIPAポリマーはアゾビスイソ
ブチロニトリルを重合開始剤としてNIPAモノマーか
らラジカル重合によって調製した。具体的には、5.79g
(0.05モル)のNIPAモノマー(株式会社興人社製)
を50mlのエタノールに溶解させる。そこに、0.0751g
(5×10-5モル)のアゾビスイソブチロニトリルを加
え、60℃の恒温槽に12時間放置する。この間に、アゾビ
スイソブチロニトリルから発生したラジカルがNIPA
モノマーをアタックし、重合が行われる。なお、アゾビ
スイソブチロニトリルのモノマーに対するモル比は0.00
1 である。
【0067】得られたNIPAポリマーをモノマーから
単離するために、以下の操作を行う。まず、溶媒のエタ
ノールをエバポレーターで蒸発させ、乾固した固体をな
るべく少量のアセトンに溶解する。得られたアセトン溶
液を500ml のヘキサンに溶かす。このとき、残存モノマ
ーはヘキサンに溶解し、ポリマーは析出する。そこで、
析出した固体をろ別し乾燥させることによってNIPA
ポリマー(固体)が得られる。コロイド調製の際には、
モノマー濃度換算で0.1Mの水溶液を調製して用いた。
【0068】ポリマーの感温性については、0.1M程度の
水溶液を調製し、相転移温度の上下で500nmにおける光
透過率の変化によって確認した。コロイド調製溶液と同
じ条件で作製した溶液におけるNIPAポリマーの相転
移温度を測定した。NIPAポリマー水溶液の温度によ
る光透過率変化(500 nm)から、得られたNIPAポリマ
ーの相転移温度は309K(36℃)であることがわかった。
【0069】つぎに、1×10-4M の塩化白金酸カリウム
K2[PtCl4] 水溶液を調製する。つぎに、塩化白金酸カリ
ウム水溶液を調製後すぐに上述のNIPAポリマー水溶
液を0.5 ml添加してモノマー濃度に換算して1×10-3
M になるようにする。
【0070】つぎに、1分以内に、0.01N の水酸化ナト
リウム水溶液を添加し、pHを7.5に調整する。ここ
で、水酸化ナトリウム水溶液の添加は、水酸化ナトリウ
ム水溶液を一滴(約0.01ml)ずつ約2秒間隔で滴
下する。水酸化ナトリウム水溶液の滴下後は、20分間
放置する。
【0071】つぎに、1分以内に、アルゴンガスを標準
状態で2.5 ml/分/水溶液1mlの流量で、20分間
吹き込み、溶存酸素を追い出す。
【0072】つぎに、1分以内に、水素ガスの吹き込み
を開始し、5分間吹き込む。ここで、水素ガスの流量は
標準状態で2.1 ml/分/水溶液1mlとする。水素ガ
ス吹き込み後、水溶液を含んだバイアルビンを直ちに密
閉する。以上の操作はすべて室温で行なう。
【0073】つぎに、40℃の恒温槽に12時間溶液を放置
する。ここで、容器は、恒温槽の水槽に直接浸すととも
に恒温槽とは別のものに固定した。つぎに、12時間経過
後溶液を取り出す。取り出した溶液は直ちに-4℃に冷却
し、コロイドの成長を抑制した。
【0074】実施例2 NIPAポリマーを添加する前に、塩化白金酸水溶液を
0.5 時間放置した。これ以外の条件は実施例1と同様で
ある。
【0075】実施例3 NIPAポリマーを添加する前に、塩化白金酸水溶液を
調製後6時間放置した。これ以外の条件は実施例1と同
様である。
【0076】実施例4 塩化白金酸カリウムとNIPAポリマーの混合水溶液に
対し0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してp
Hを7.5に調整するのではなく、塩化白金酸カリウム
とNIPAポリマーの混合水溶液に対し0.01Nの水
酸化ナトリウム水溶液を0.1 ml添加する。このとき、
水酸化ナトリウム水溶液は一滴(約0.01ml)ずつ
約120 秒間隔で滴下する。また、滴下の開始はポリマー
添加後1分以内に行い、滴下終了後は放置せずにつぎの
工程に移る。これ以外の条件は実施例1と同様である。
【0077】実施例5 塩化白金酸カリウムとNIPAポリマーの混合水溶液に
対し0.01Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してp
Hを7.5に調整するのではなく、塩化白金酸カリウム
とNIPAポリマーの混合水溶液に対し0.01Nの水
酸化ナトリウム水溶液を1ml添加する。このとき、水
酸化ナトリウム水溶液は一滴(約0.01ml)ずつ約
10秒間隔で滴下する。また、滴下の開始はポリマー添加
後1分以内に行い、滴下終了後は放置せずにつぎの工程
に移る。これ以外の条件は実施例1と同様である。 実施例6 アルゴンガス吹き込み前に、容器を恒温槽に入れ40℃
に保ち。この温度でアルゴンガスの吹き込み、水素ガス
の吹き込みを行う。これ以外の条件は実施例1と同様で
ある。 実施例7 水素ガスの吹き込みが終了し容器を密閉した後、容器を
直接恒温槽の水槽に浸すのではなく、恒温槽の水槽に大
きめの容器を浸すとともにこの大きめの容器を恒温槽と
は別のものに固定し、この大きめの容器に水を張る。こ
の大きめな容器の水に上述の密閉容器を浸すとともにこ
の密閉容器を恒温槽とは別のものに固定した。これ以外
の条件は実施例1と同様である。
【0078】以上の実施例1〜7のサンプルについて、
それぞれ立方体粒子の割合と平均粒径を測定した。
【0079】ここで、立方体粒子の割合の測定方法は、
透過型電子顕微鏡による観察に基づいて行った。約10万
倍の倍率で100 個以上の粒子を無作為に選択して写真撮
影を行った。写真を見ながら一つ一つの粒子について形
態を四角いものとそうでないものに分類し、観察した全
粒子に占める四角い粒子の割合を求めた。
【0080】また、平均粒径の測定方法は、透過型電子
顕微鏡による観察に基づいて行った。約10万倍の倍率で
100 個以上の粒子を無作為に選択して写真撮影を行っ
た。写真を見ながら一つ一つの粒子について粒子径を求
め、その平均値を算出した。
【0081】実施例1〜7についての、立方体粒子の割
合(%)と平均粒径(nm)の測定結果は表1に示すと
おりである。
【0082】
【表1】
【0083】実施例1について、12時間後に得られた溶
液の透過型電子顕微鏡写真を撮った。100個以上の粒子
について観察を行なったところ、68.4%の粒子が立方体
の形態を有していることがわかった。また、これらの粒
子の粒径分布を測定した。平均粒径は11.8nmであった。
粒子の大きさと形が共に制御された白金粒子が生成して
いることがわかった。さらに、観察された立方体粒子に
ついて高分解能電子顕微鏡による観察を行なったとこ
ろ、立方体粒子表面での原子配列が観察され、その間隔
から表面に出ている面は白金の(100) 面であることが確
認された。
【0084】表1からわかるように、実施例2及び3で
は、塩化白金酸カリウム水溶液を所定時間放置すること
によって、立方体粒子の割合が実施例1に比較して増加
している。実施例4及び5においては、アルカリ水溶液
を所定時間間隔で一滴づつ添加することによって、また
アルカリ添加量を所定量にすることによって、立方体粒
子の割合は実施例1に比較して増加した。実施例6にお
いて、不活性ガス通気時に温度制御をすることによって
も、立方体粒子の割合は実施例1に比較して増加してい
る。実施例7においては、立方体粒子の割合が実施例1
に比較して増加しており、さらに平均粒子径が減少して
いる。これは、系の振動を抑えたために、不定形の会合
粒子が減少したことを反映している。
【0085】つぎに、本発明にかかる第2の実施例につ
いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例
に限定されるものではないことはもちろんである。最初
に、触媒サンプルの作製方法について説明する。
【0086】実施例9 上述した方法で得られた立方体白金粒子の担体への担持
を行なった。最初に、白金粒子のコロイドと担体を混合
した。担体としては、最も一般的なγ- アルミナを選択
した。
【0087】具体的には、Ptのコロイド溶液50ml(Ptを
還元して、冷蔵保存しておいたもの)を取りだし、良く
攪拌する。その上で、溶液にアルミナ0.1g(γ−アルミ
ナ、表面積100m2/g 、アエロシル社製)を入れて懸濁さ
せて2時間放置した。ここで、白金粒子は、実施例1で
得られた白金粒子を用いた。
【0088】その後、この懸濁液を真空乾燥し、白金粒
子をアルミナ上に固定した。すなわち、懸濁液をフリー
ズドライ用の容器(100ml) に入れる。液体窒素を入れた
容器にフリーズドライ用の容器を浸し、外側から冷やす
ことで溶液を凍結させる。真空ポンプに凍結されたサン
プルの容器を接続することによって、容器内を真空に保
ち、氷からの水分の昇華を促す。本サンプルは、とくに
水分を多く含むものであるため、サンプルと真空ポンプ
の間にはモレキュラーシーブ及び液体窒素トラップを設
置し、ここで水分を補足するようにした。乾燥後、サン
プルを集めた。その結果、1wt%のPt(100)/γ- アルミナ
が得られた。
【0089】触媒反応に用いるための前処理として、得
られた粉末試料を空気中で徐々に加熱し、最終的に500
℃で1時間焼成した。この操作は白金粒子の周りに残っ
ているNIPAポリマーを分解・除去することを目的と
している。
【0090】上述の方法により作製された触媒の観察を
行った。500 ℃での前処理後に得られたPt(100)/γ- ア
ルミナを電子顕微鏡により観察した。担持・焼成後も白
金の粒子は立方体の形態を保っており、粒子の大きさも
変化していなかった。このことは、この方法が形態制御
した白金粒子のアルミナへの担持方法として適切である
ことを示している。
【0091】得られたPt(100)/γ- アルミナ触媒をメタ
ンによる一酸化窒素の還元反応に用いた。この反応は自
動車排ガス中に含まれる有害な一酸化窒素を天然ガスで
あるメタンで還元し、無害な窒素、水、及び二酸化炭素
に変換するというものである。しかし、従来はこの反応
の際に、副生物として有害な一酸化炭素、アンモニアが
生じることが問題となっていた。
【0092】反応実験は大気圧下、流通系反応装置を用
いて行った。0.05g のPt(100)/γ-アルミナ触媒を内径5
mm の石英製反応管に入れ、50cm3/min で混合ガスを流
した。混合ガスの組成はNO1 %、メタン0.6 %であり、
アルゴンを希釈剤として用いた。
【0093】この反応でのNO及びメタンの転化率、及び
窒素、一酸化二窒素への選択性の温度による変化を図1
に示す。400 ℃において一酸化窒素は完全に分解されて
いることがわかる。また、分解生成物の組成は400 ℃よ
りも高温においては温度が上がるにつれて一酸化二窒素
が減少し、その一方で350℃よりも高温においては窒素
の割合が増加していることがわかる。
【0094】Pt(100)/γ- アルミナ触媒の特徴を明らか
にするために、従来法(含浸法)で調製された1wt %Pt
/ γ- アルミナ触媒について報告されている文献値(R.
Burch and A. Ramli, Appl. Catal. B, 15, 49 (199
8))との比較を行った。報告されている1wt % Pt/γ-
アルミナ触媒の白金粒子は、多結晶粒子であると考えら
れる。実験条件は、我々が用いたものと同じである。
【0095】図2に形態制御した白金粒子および多結晶
白金粒子について400℃における実験結果の比較を示
す。両者とも、一酸化窒素の転化率は100 %になってい
るが、生成物が全く異なっていることがわかる。特に注
目すべき点としては、多結晶の白金粒子触媒を用いた場
合には生成物としてアンモニアおよび一酸化炭素といっ
た有害な成分を生じているのに対し、立方体白金粒子を
用いた場合にはこれら有害成分を生じない点である。ま
た、全体として生成物の傾向が大きく異なっていること
は、一酸化窒素のメタンによる還元反応が白金微粒子の
表面構造に強く依存していることを示しており、白金粒
子の形態制御の有効性を裏付けているといえる。
【0096】図3に形態制御した白金粒子および多結晶
白金粒子について500 ℃における実験結果の比較を示
す。両者とも、400 ℃の場合と同様に一酸化窒素の転化
率は100%になっているが、生成物が全く異なっている
ことがわかる。また、多結晶の白金粒子触媒を用いた場
合には生成物としてアンモニアおよび一酸化炭素といっ
た有害な成分が生じているのに対し、立方体白金粒子を
用いた場合にはこれら有害成分は生じていない。また、
400 ℃の場合と比べると、窒素の選択性が高くなってい
ることがわかる。 (参考文献) (1)宮崎あかね、竹下健二、秋鹿研一、中野義夫、液
相中での還元反応による白金コロイド粒子の生成と形
状、1998、化学工学会第31会秋季大会要旨集、108 (2)宮崎あかね、中野義夫、感温性ポリマーを用いた
白金ナノ粒子の形態制御、1999、化学工学会第64年会要
旨集、302 (3)宮崎あかね、中野義夫、液相中で形成される白金
ナノ粒子表面とポリマーとの相互作用、1999、化学工学
会第32回秋季大会要旨集、520 (4)宮崎あかね、中野義夫、高分子場を利用した白金
族ナノ粒子の形態制御、1999、化学工学会第32回秋季大
会要旨集、445 (5)Akane Miyazaki, and Yoshio Nakano, Morpholog
y of platinum nanoparticles protected by poly(N-is
opropylacrylamide),2000, Langmuir, 16, 7109-7111 (6)宮崎あかね、酒井綾子、中野義夫、形態制御した
金属ナノ粒子による触媒調製、2001、化学工学会第66年
会要旨集、108
【0097】
【発明の効果】本発明は、以下に記載されるような効果
を奏する。白金化合物の水溶液に感温性ポリマーを添加
し、アルカリ水溶液を添加して所定のpH値に調整し、
不活性ガスを所定時間吹き込み、還元性ガスを所定時間
吹き込んだ後に外気と遮断し、所定温度で所定時間保持
することにより、表面に特徴的な結晶面を持つ金属粒子
を高収率で得ることができる。
【0098】白金粒子を含む水溶液に担体を混合し、得
られたものをフリーズドライし、所定温度で所定時間焼
成することにより、表面に特徴的な結晶面を持つ金属粒
子を担持した、高選択性の触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】立方体Pt/γ−アルミナ上で、一酸化窒素を
メタンにより還元した結果を示す図である。
【図2】400℃における、立方体及び多結晶Pt/γ
−アルミナでの反応生成物の比較を示す図である。
【図3】500℃における、立方体及び多結晶Pt/γ
−アルミナでの反応生成物の比較を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B22F 1/00 B01D 53/36 102A (72)発明者 イワン バリント 神奈川県横浜市緑区長津田町4259 東京工 業大学内 (72)発明者 秋鹿 研一 神奈川県横浜市緑区長津田町4259 東京工 業大学内 Fターム(参考) 4D048 AA06 AB02 BA03X BA30X BA41X BB01 4G069 AA03 AA08 BA01A BA01B BA32C BB02A BB02B BC75A BC75B CA02 CA03 CA08 CA13 EB18Y FA01 FA03 FB08 FB29 FB44 FB57 FC03 FC04 FC07 FC09 4G075 AA27 AA62 AA63 BA06 BD13 CA57 CA62 CA63 4K017 AA02 BA02 CA08 DA09 EJ01 FB01 FB03 FB06 4K018 AA02 BA01 BB05 BC09 CA45 DA21 JA40 KA70

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 白金化合物の水溶液に、感温性ポリマー
    を添加する第1の工程と、 第1の工程の終了後1分以内にアルカリ水溶液の添加を
    開始して、所定のpH値に調整する第2の工程と、 第2の工程の終了後1分以内に不活性ガスの吹き込みを
    開始し、所定時間吹き込む第3の工程と、 第3の工程の終了後1分以内に還元性ガスの吹き込みを
    開始し、所定時間吹き込んだ後に、外気と遮断する第4
    の工程と、 所定温度で所定時間保持する第5の工程とを含む金属粒
    子の製造方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の金属粒子の製造方法にお
    いて、 白金化合物はテトラクロロ白金(II)酸カリウムであ
    り、感温性ポリマーはN−イソプロピルアクリルアミド
    ポリマーである。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の金属粒子の製造方法にお
    いて、 N−イソプロピルアクリルアミドポリマーは、 N−イソプロピルアクリルアミドモノマーとアゾビスイ
    ソブチロニトリル(モノマーに対するモル比は0.001)と
    を、60℃で12時間反応させたものである。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の金属粒子の製造方法にお
    いて、 所定のpH値は7.5 である。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の金属粒子の製造方法にお
    いて、 還元性ガスは水素ガスである。
  6. 【請求項6】 請求項5記載の金属粒子の製造方法にお
    いて、 第5の工程における、 所定温度は35〜80℃の範囲内にあり、 所定時間は2〜24時間の範囲内にある。
  7. 【請求項7】 請求項1に記載された金属粒子の製造方
    法において、 第1の工程では、白金化合物の水溶液を調整して、0.5
    〜6時間経過後に、感温性ポリマーを添加する。
  8. 【請求項8】 請求項1に記載された金属粒子の製造方
    法において、 第2の工程では、「所定のPH値に調整する」に代え
    て、「所定量のアルカリ水溶液を10〜120 秒の間隔で滴
    下する」とする。
  9. 【請求項9】 請求項1に記載された金属粒子の製造方
    法において、 第3および4の工程では、第5の工程と同じ所定温度に
    保持する。
  10. 【請求項10】 請求項1に記載された金属粒子の製造
    方法において、 第5の工程では、液体を介して、恒温槽の熱媒体により
    加熱する。
  11. 【請求項11】 (100)面を選択的に持つ立方体粒
    子を68.4〜75.0%含有し、 平均粒径が11.2〜13.3nmの範囲内にある金属粒子であ
    って、請求項1〜10から選ばれるいずれか1つの請求
    項に記載された方法により製造される金属粒子。
  12. 【請求項12】 白金粒子を含む水溶液に、担体を混合
    する第1の工程と、 第1の工程により得られたものをフリーズドライする第
    2の工程と、 第2の工程により得られたものを、所定温度で所定時間
    焼成する第3の工程とを含む触媒の製造方法。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の触媒の製造方法にお
    いて、 白金粒子は請求項11記載の金属粒子である。
  14. 【請求項14】 請求項13記載の触媒の製造方法にお
    いて、 所定温度は400 〜600 ℃の範囲内にあり、所定時間は0.
    5 〜8時間の範囲内にある。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の触媒の製造方法にお
    いて、 担体はγ−アルミナである。
  16. 【請求項16】 一酸化窒素還元用の触媒であって、 請求項12に記載された方法により製造される触媒。
JP2002066007A 2002-03-11 2002-03-11 金属粒子およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法 Pending JP2003268424A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002066007A JP2003268424A (ja) 2002-03-11 2002-03-11 金属粒子およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002066007A JP2003268424A (ja) 2002-03-11 2002-03-11 金属粒子およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003268424A true JP2003268424A (ja) 2003-09-25

Family

ID=29198035

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002066007A Pending JP2003268424A (ja) 2002-03-11 2002-03-11 金属粒子およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003268424A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007239054A (ja) * 2006-03-09 2007-09-20 Osaka Univ 四面体パラジウム微粒子、および金属微粒子の製造方法
JP2010031354A (ja) * 2008-06-26 2010-02-12 Aisin Seiki Co Ltd 白金ナノ粒子の製造方法
JP2010089031A (ja) * 2008-10-09 2010-04-22 Jgc Catalysts & Chemicals Ltd 金属粒子担持触媒およびその製造方法
JP2010089032A (ja) * 2008-10-09 2010-04-22 Jgc Catalysts & Chemicals Ltd 金属粒子担持触媒およびその製造方法
JP2010214246A (ja) * 2009-03-13 2010-09-30 Aisin Seiki Co Ltd 白金ナノ粒子の担持方法
US8618019B2 (en) 2008-06-26 2013-12-31 Aisin Seiki Kabushiki Kaisha Method for producing platinum nanoparticles
CN109225345A (zh) * 2018-10-30 2019-01-18 南开大学 一种用于选择性加氢反应的温敏型催化剂的制备方法

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007239054A (ja) * 2006-03-09 2007-09-20 Osaka Univ 四面体パラジウム微粒子、および金属微粒子の製造方法
WO2007105656A1 (ja) * 2006-03-09 2007-09-20 N.E. Chemcat Corporation 四面体パラジウム微粒子、および金属微粒子の製造方法
JP2010031354A (ja) * 2008-06-26 2010-02-12 Aisin Seiki Co Ltd 白金ナノ粒子の製造方法
US8618019B2 (en) 2008-06-26 2013-12-31 Aisin Seiki Kabushiki Kaisha Method for producing platinum nanoparticles
JP2010089031A (ja) * 2008-10-09 2010-04-22 Jgc Catalysts & Chemicals Ltd 金属粒子担持触媒およびその製造方法
JP2010089032A (ja) * 2008-10-09 2010-04-22 Jgc Catalysts & Chemicals Ltd 金属粒子担持触媒およびその製造方法
JP2010214246A (ja) * 2009-03-13 2010-09-30 Aisin Seiki Co Ltd 白金ナノ粒子の担持方法
CN109225345A (zh) * 2018-10-30 2019-01-18 南开大学 一种用于选择性加氢反应的温敏型催化剂的制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4315839A (en) Spheroidal alumina particulates having bifold porosity and process for their preparation
US9694346B2 (en) Functional gas-assisted impregnation method for producing noble metal alloy catalysts with defined morphology
JP5442199B2 (ja) 細粒化粒子の生成方法
US6090858A (en) Shape control method for nanoparticles for making better and new catalysts
RU2311956C2 (ru) Способ получения смешанных оксидов на цирконий-цериевой основе
JPH0948602A (ja) 複合金属酸化物粉末の製法
JPH0813685B2 (ja) 触媒に使用するアルミナを基材とした組成物、その製造方法、触媒及び触媒の製造方法
JPH01168762A (ja) 単量体又は重合体中のコロイド金属
EP1843843A1 (en) Fluid/slurry bed cobalt-alumina catalyst made by compounding and spray drying
JP2008504199A5 (ja)
Marceau et al. Impregnation and drying
JP2003268424A (ja) 金属粒子およびその製造方法、並びに触媒およびその製造方法
Krajczewski et al. Formation and selected catalytic properties of ruthenium, rhodium, osmium and iridium nanoparticles
Zawadzki Pd and ZnAl2O4 nanoparticles prepared by microwave-solvothermal method as catalyst precursors
JP2013027869A (ja) 金属粒子担持触媒の製造方法
KR20070045186A (ko) 시클로올레핀 제조용 촉매 및 제조 방법
JP5093647B2 (ja) メソ孔及びマイクロ孔を有する金属酸化物多孔体の製造方法、メソ孔及びマイクロ孔を有する金属酸化物多孔体及びそれを用いたガス浄化材料
JP3136339B2 (ja) 酸化チタン光触媒及びその製造方法
KR20130003912A (ko) 지지체에 담지된 촉매의 제조방법
CN115636421B (zh) 一种双金属掺杂mcm-41温敏介孔分子筛及其制备方法和应用
CN112844378A (zh) 调控纳米金属粒子与凝胶型氧化物载体间相互作用的方法
CN111847404A (zh) 一种介晶氧化物和介晶氮化物的制备方法、氨分解催化剂及制备方法
CN116023676B (zh) 一种稀土基金属有机骨架材料的制备方法及其形貌调控方法
JP6441454B2 (ja) 金ヒドロキソ陰イオン錯体溶液
RU2764647C2 (ru) Способ получения оксида алюминия

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050225

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20051007

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20061026

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070116

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20070605