JP2003096546A - 薄肉鋳物用低熱膨張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法 - Google Patents

薄肉鋳物用低熱膨張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法

Info

Publication number
JP2003096546A
JP2003096546A JP2001288924A JP2001288924A JP2003096546A JP 2003096546 A JP2003096546 A JP 2003096546A JP 2001288924 A JP2001288924 A JP 2001288924A JP 2001288924 A JP2001288924 A JP 2001288924A JP 2003096546 A JP2003096546 A JP 2003096546A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
casting
thermal expansion
alloy
thin
low thermal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001288924A
Other languages
English (en)
Inventor
Takanori Kagawa
恭徳 香川
Noriyuki Fujitsuna
宣之 藤綱
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2001288924A priority Critical patent/JP2003096546A/ja
Publication of JP2003096546A publication Critical patent/JP2003096546A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Molds, Cores, And Manufacturing Methods Thereof (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 熱膨張係数が小さくて寸法精度が高く、しか
も熱間割れ性に優れ品質に対する信頼性の高い薄肉鋳物
を与える低熱膨張鋳物用合金と、これを用いた鋳造法を
提供すること。 【解決手段】 質量%で、C:0.1%以下、Ni:3
0〜34%、Co:4〜6%を含む鉄基合金からなり、
Caおよび/またはMg:0.0005〜0.010%
を含み、低熱膨張性で寸法精度が高く、しかも耐熱間割
れ性に優れており、割れ欠陥のない薄肉鋳物を与える鋳
造用の低熱膨張合金を提供すると共に、該合金を用いて
割れ欠陥のない薄肉鋳物を製造する方法を開示する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄肉鋳物用低熱膨
張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法に関し、殊に、
熱膨張率が小さくて優れた耐熱間割れ性を有し、複雑形
状の薄肉鋳物の製造に好適な低熱膨張合金と、該合金を
用いて寸法精度が高く割れ欠陥のない薄肉鋳物を製造す
る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】低熱膨張性が要求される用途に用いられ
る代表的な鋳物用合金として、インバーやスーパーイン
バー合金が知られている。これらの鋳物用合金において
は、鋳造後の切削加工を考慮して鋳造時に素材中に球状
黒鉛を生成させ、これにより快削性を与えている。その
ためこの種の合金では、適量の球状黒鉛を生成させるこ
との必要上、合金中に多量のC(炭素)を含有させなけ
ればならない。ところがCを多量に含有させると、マト
リックス内の固溶C量が増大して熱膨張係数が高まり、
低熱膨張合金としての要求特性を満たし得なくなる。そ
こで、熱膨張係数を下げるための手段として高価なCo
を多量含有させている。
【0003】しかも、球状黒鉛を含む合金で1.0×1
0‐6/℃以下といった低レベルの線膨張係数を確保す
るには、該合金を一旦600〜950℃程度の高温に加
熱することによって、マトリックス内に過飽和に固溶し
ているCを微細黒鉛として析出させ、しかも、マトリッ
クス中の固溶C濃度を低下させるために急冷しなければ
ならない。ところが、一般に部品部位によって大きな肉
厚差を有する薄肉鋳物を上記の如く高温に加熱してから
急冷することは、変形を助長して鋳物の寸法精度を低下
させる。
【0004】加えて、上記の如くCoを多量に添加する
と、マルテンサイト変態開始点(Ms点)が室温近傍に
まで上昇し、寒冷地での輸送時にマルテンサイト変態が
進行してインバー効果を発現し得なくなるので、使用可
能な環境温度が制限され汎用性を欠くものとなる。
【0005】この様に、球状黒鉛を生成させて快削性を
高める従来の鋳物用合金では、C添加量の増大による線
膨張係数の増大や寸法精度の低下が避けられず、快削性
と低膨張係数の2つの要求特性を同時に満たすことは容
易でない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは上記の様
な状況の下で、優れた被削性を有すると共に、熱膨張係
数が小さくて寸法精度の高い鋳物を与える快削性低熱膨
張鋳物用合金の開発を期して研究を進めており、先に、 C:0.1%(特記しない限り質量%を意味する、以
下同じ)以下、Ni:30〜34%、Co:4〜6%を
含む鉄基合金に適量のMnとSを含有せしめ、体積分率
で0.07〜0.2%のMnSを生成させると、優れた
被削性と低熱膨張性を兼ね備えた鋳物が得られること、 該鋳物合金中に他の元素としてSi:0.3〜1.0
%を含有させると鋳造時の湯流れ性が向上し、湯流れ不
良による鋳造欠陥をより効果的に抑えることができるの
で、複雑形状の大型鋳物製造用として好適なものになる
こと、 更に他の元素としてMg,Ca,Zrよりなる群から
選択される少なくとも1種の元素を適量含有させると、
鋳造時の熱間脆化が抑制され、特に薄肉大型鋳物を鋳造
する際の熱間割れがより効果的に抑えられること、を知
り、こうした知見を基に先に特許出願を済ませた。
【0007】本発明者らはその後も、前述したインバー
やスーパーインバー合金の如き低熱膨張性鋳物用合金の
改質を期して研究を進めており、今回は、特にこれらの
鋳物用合金を用いて薄肉鋳物を鋳造する際にしばしば経
験される熱間割れ防止に主眼を置いて研究を重ねてき
た。従って本発明の目的は、低炭素で且つNiとCoを
含む鋳物用の低熱膨張鉄基合金を対象とし、特に薄肉鋳
物を鋳造する際にも、肉厚交差部などで熱間割れ等を生
じることのない薄肉鋳物用低熱膨張合金を提供し、併せ
て、該合金を用いて割れ欠陥などのない薄肉鋳物を製造
する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る薄肉鋳物用低熱膨張合金とは、質
量%で、C:0.1%以下、Ni:30〜34%、C
o:4〜6%を含む鉄基合金からなり、Ca及び/又は
Mgを合計で0.0005〜0.010%含有するとこ
ろに要旨を有している。
【0009】本発明にかかる該薄肉鋳物用低熱膨張合金
においては、他の元素としてMn:0.5%以下および
S:0.02%以下を含有させると、適量のMnSの生
成によって、線膨張係数の増大や熱間脆性の劣化を生じ
ることなく被削性を更に高めることができ、また、更に
他の元素としてSi:0.3〜0.7%を含有させる
と、鋳造時の湯流れ性が向上し、湯流れ不良による鋳造
欠陥をより効果的に抑えることができるので、複雑形状
の薄肉鋳物用として一層好適なものとなる。
【0010】また本発明に係る薄肉鋳物の製法とは、上
記化学成分を満たす鋳物用合金を用いて薄肉鋳物を鋳造
する際に、鋳型内の肉厚交差部に冷金を配置して鋳造す
るところに要旨を有している。そしてこの製法を活用す
れば、肉厚交差部における冷却速度の遅延が抑制され
て、非交差部との間の冷却速度差に起因する内部歪みの
発生が防止され、割れの発生が一層確実に防止されると
共に鋳物の寸法精度を一段と高めることが可能となる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは前述した様な従来技
術の下で、被削性の向上に球状黒鉛の析出を利用する従
来の快削性低熱膨張鋳物用合金に指摘される問題、殊
に、球状黒鉛を生成するためのC量の増大とそれに伴う
マトリックス中のC固溶量の増大による熱膨張係数の増
大や寸法精度の低下などを解消し、熱膨張係数が低くて
且つ被削性に優れた鋳物用合金の開発を期して鋭意研究
を進めてきた。
【0012】その結果、インバー合金やスーパーインバ
ー合金に代表されるNiやCoを含む従来の低熱膨張性
鋳造用合金における、上記熱膨張係数や寸法精度の阻害
要因となるC量を低減する一方、球状黒鉛に代わる被削
性改善成分として少量のMnとSを積極的に含有させて
適量のMnSを存在させれば、被削性と低熱膨張という
2つの要求特性を同時に満たす鋳物用合金が得られるこ
とを知り、こうした知見を基に前述した先願発明を完成
した。
【0013】他方、前述の如く低炭素で且つNiとCo
を含む鋳物用低熱膨張合金を用いて薄肉鋳物を鋳造する
際には、鋳物の薄肉部は溶湯量が少ないため冷却速度が
速くて急冷されるが、肉厚交差部では相対的に溶湯量が
多いため冷却速度は相対的に遅くなる。その結果、肉厚
交差部と非交差部との境界部では該冷却速度差に起因し
て熱歪が生じ易くなり、熱間割れが発生し易くなる。こ
うした傾向は、肉厚非交差部の肉厚が薄くなるほど顕著
に表われてくる。
【0014】こうした肉厚交差部と非交差部の境界部に
観察される熱間割れの傾向は、前述した低炭素量で且つ
NiとCoを含む低熱膨張鋳物用合金についても同様に
観察される。
【0015】そこで、上記低炭素量でNiとCoを含む
低熱膨張鋳物用合金を対象とし、薄肉鋳物を鋳造する際
に見られる特に熱間割れの改善に主眼を置いて研究を進
めてきた。その結果、低C量で且つ特定量のNiとCo
を含む低熱膨張性の鉄基合金中に少量のCa及び/又は
Mgを含有させてやれば、薄肉鋳物を鋳造する際に生じ
がちな熱間割れを可及的に阻止できることを知り、上記
本発明に想到したものである。
【0016】なお本発明において鋳造対象となる薄肉鋳
物の『薄肉』とは、最小肉厚部の厚さで10mm程度以
下、より代表的には8mm程度以下のものを意図してい
る。最小肉厚の下限値は用途や大きさ等によっても変わ
ってくるので特に制限されないが、実用鋳物として最低
限の強度特性を確保する上では5mm程度以上とするこ
とが望ましい。
【0017】以下、本発明において鋳物用合金の化学成
分などを規定した理由を具体的に説明していく。
【0018】C:0.1%以下 本発明では、C量を極力少なく抑えることによって固溶
炭素に起因する線膨張係数の増大を防止すると共に、基
本組成以上にCo量を増加することを回避し、更には、
固溶炭素の析出に要する高温加熱と急冷といった熱処理
を不要とするもので、こうした特徴を活かすにはC量を
0.1%以下に抑えなければならず、より好ましくは
0.05%以下、更に好ましくは0.02%以下とする
のがよい。ちなみに、C量が0.1%を超えると、マト
リックス中への固溶炭素量の増大による線膨張係数の増
大が軽視できなくなり、Co量を基本組成以上に増大し
なければならなくなって本発明の目的にそぐわなくな
る。
【0019】Ni:30〜34%およびCo:4〜6% Niは、インバーやスーパーインバーとして開発された
低熱膨張鋳物用合金の熱膨張係数αに最も影響を与える
元素であって、熱膨張係数αで1.0×10-6/℃以下
といったレベルの低熱膨張特性を確保するには、Ni含
量を30%以上、34%以下、より好ましくは31%以
上、33%以下に設定することが重要であり、この範囲
未満でも又この範囲を超えても、熱膨張率αは著しく増
大してくる。またCo含量は、上記Ni含量30〜34
%との組み合わせにおいて低熱膨張率を確保するため4
%以上、6%以下に設定しなければならず、4%未満も
しくは6%超では、適正Ni含量の範囲内においても満
足のいく低熱膨張率を確保できなくなる。Coのより好
ましい含有量は4.5%以上、5.5%以下である。
【0020】Ca及び/又はMg:合計で0.0005
〜0.010% MgおよびCaは、薄物鋳物を製造する際の熱間脆性を
高め鋳造時の高温割れを防止する上で欠くことのできな
い元素であり、その効果は極少量、具体的にはCa,M
gの一方もしくは双方を総和で0.0005%以上含有
させることによって有効に発揮され、特に薄肉大型の鋳
物の製造に用いる場合は、総和で0.0010%以上含
有させることが望ましい。しかし含有量が多くなり過ぎ
ると、合金の線膨張係数が増大傾向を示し寸法精度を低
下させる原因になるので、総和で0.010%以下に抑
えねばならない。本発明においては、上記好適含有率を
満たす範囲でCaとMgを併用することが特に好まし
い。
【0021】本発明に係る薄肉鋳物用低熱膨張合金の必
須構成元素は上記の通りであり、残部成分は実質的にF
eと不可避不純物であるが、必要によっては、鋳物用合
金として更なる付加的特性を与えるため、下記の元素を
適量含有させることも有効である。
【0022】Mn:0.5%以下およびS:0.02%
以下 従来のインバーやスーパーインバーにおいて、Mnは偏
析を生じ易く、しかも熱膨張係数を増大させ、またSは
偏析して脆化を起こす有害元素として、何れもその含有
は嫌われており、極力少なく抑えることが望ましいとさ
れている。これに対し本発明では、MnとSを過剰量と
ならない範囲で適量を積極的に含有させ、マトリックス
中に生成するMnSを球状黒鉛に代わる被削性改善成分
として有効に活用することも有効である。こうしたMn
Sによる被削性改善効果を実用合金として有効に発揮さ
せるには、Mnを0.2%程度以上、Sを0.01%程
度以上含有させることが望ましい。しかし、Mn含量が
0.5%を超えると線膨張係数が増大傾向を示す様にな
り、またS含量が0.02%を超えると熱間で脆化し易
くなり、鋳造時に鋳物が高温割れを起こす原因になるの
で、それぞれ上記含量以下に抑えねばならない。
【0023】この際、鉄基合金中に含有させるMnは、
S含量に対し当量比で等量以上、即ち質量比で「(Mn
/54.94)>(S/32.06)」を満たす様に両元素の含有
量を制御するのがよい。即ち、Sの実質的に全てをMn
Sとして固定することにより固溶S量を極力少なく、好
ましくは実質的にゼロとすることが望ましい。ちなみ
に、SがMnと結合することなくマトリックス中に固溶
状態で存在すると、熱間での脆化が著しくなり、鋳造時
に熱間割れを起こす原因になるからである。尚、Sに対
しMnをかなり多めに含有させても固溶Sを完全にゼロ
にすることは困難であるので、熱間割れに実質的な悪影
響を及ぼさない限りごく微量の固溶Sの存在は許容され
る。
【0024】Si:0.3〜0.7% Siは、鋳造用合金として鋳造時の湯流れ性を高める上
で有効に作用する元素で、特に薄肉且つ複雑で大型の鋳
物製品を鋳造する際の湯流れ不良による鋳造欠陥をなく
すのに有益な元素であり、湯流れ性改善作用を有効に発
揮させるには、Si含量を0.3%以上、より好ましく
は0.4%以上含有させることが望ましい。しかし、S
i含量が多過ぎると、線膨張係数が増大して満足な寸法
精度が得られ難くなるので、多くとも0.7%以下、よ
り好ましくは0.6%以下に抑えるべきである。
【0025】本発明においては、上記元素以外にも必要
に応じて析出強化作用を有するAl,Nb,V,Ti,
Taなどを、鋳物に求められる要求特性に応じて適量含
有させることができる。
【0026】また該合金中に不可避的に含まれている元
素のうち、Pは微量でも鋳造時の湯流れ性向上に有効に
作用するが、多過ぎると熱間脆性を劣化させて鋳造時に
高温割れを起こす原因になるので、0.1%以下、より
好ましくは0.02%以下に抑えるべきである。またP
以外に混入し得る不可避不純物としてCr,Mo,Cu
などが挙げられるが、これらは何れも線膨張係数を高め
る原因になるので、何れもできるだけ少なく抑えること
が望ましい。
【0027】本発明に係る上記鋳造用合金を溶製するの
に格別特殊な技術は要求されず、常法に従って前記成分
組成を満たす様に配合原料を調整し、高周波溶解炉や電
気炉など任意の溶解炉を用いて加熱溶融すればよいが、
特に基金属となる鉄については、その中に含まれるCや
Mn、S等の量を正確に把握しておき、全溶製原料とし
てのC,Mn,Sの各含有量が前述した好適範囲に納ま
る様にコントロールすべきである。また、鉄原料中に不
可避的に含まれていることの多いSiやPについても同
様である。そしてこれら鉄源中に含まれている上記元素
量も踏まえて、これに適量のNiやCoおよびCa,M
gなどを添加すると共に、必要に応じてMnやSなどを
追加し、前述した組成範囲となる様に成分調整すればよ
い。
【0028】また、該鋳造合金を用いて鋳物を製造する
際の鋳造条件も特に限定されないが、好ましくは合金の
液相線温度+20℃以上の鋳込み温度で砂型を用いて鋳
造される。この際、本発明の鋳造用合金は前述の如く低
熱膨張性で寸法変化量が少なく熱間脆性の優れたもので
あるから、薄肉で複雑な形状構造を有する大型鋳物であ
っても、鋳造時の冷却凝固過程で熱間割れなどを起こす
ことがなく、また適量のSiを含有させたものは湯流れ
性も良好であるから、鋳込み不良による鋳造欠陥を起こ
すこともない。
【0029】なお本発明の鋳造用合金は、上記の様に薄
肉鋳物の製造に好ましく使用され、従来合金に比べると
熱間割れを可及的に防止できる。他方、鋳物における肉
厚交差部では肉厚非交差部に比べて溶湯量が多いため、
肉厚非交差部に比べて冷却速度が少なからず遅くなると
共に凝固収縮量は多くなり、肉厚交差部と肉厚非交差部
との境界部で凝固割れを起こす懸念がある。こうした傾
向は、肉厚非交差部の肉厚が薄くて冷却速度の速い薄肉
鋳物ほど顕著に現われる。
【0030】本発明の鋳造用合金では、前述した特性か
ら薄肉鋳物の鋳造に適用した場合でも、従来合金に比べ
ると熱間割れ(即ち凝固割れ)を可及的に抑制できる。
しかし、複雑形状の薄肉鋳物を鋳造する場合や鋳造条件
(鋳込み温度のバラツキなど)によっては、前記肉厚交
差部と肉厚非交差部の境界部に生じる凝固速度や凝固収
縮量の差に起因する微細な熱間割れを完全に防止できる
とは限らない。
【0031】そこで、上記肉厚交差部と肉厚非交差部の
境界部に生じ得る微細な熱間割れをも完全に防止すべく
更に研究を重ねたところ、鋳型の上記肉厚交差部に冷金
を外部金型として配置して該肉厚交差部の冷却速度を高
めてやれば、該肉厚交差部の冷却速度を肉厚非交差部の
冷却速度に近づけることができ、凝固割れをより確実に
阻止できることが確認された。
【0032】ここで用いられる冷金の種類は特に制限さ
れないが、コストや割れ防止効果などを総合的に考慮し
て最も実用的なのは炭素鋼である。その形状や寸法、配
置位置なども肉厚交差部の形状や厚さに応じて任意に決
めればよいが、代表的には、例えば図1A〜Cに示す如
くキャビティーの肉厚交差部1の一部に接して(好まし
くは肉厚交差部1を取り囲むように)適度の寸法の冷金
2を配置して冷却促進を図ればよい。
【0033】得られる鋳物は、常法に従って鋳型から脱
型した後、バリ取りや寸法調整のための切削加工や研磨
加工の後、タップやドリルを用いた研削や穿孔、フライ
ス加工などにより最終製品形状に加工されるが、この合
金、中でも適量のMnとSを含有せしめたものは被削性
が良好で切屑処理性にも優れたものであるから、それら
の加工を容易且つ精度良く行なうことができ、自動穿孔
加工装置などを用いて連続加工を行なった場合でも、被
加工部に切屑が溜まって連続加工を阻害したり加工精度
を損なうといった問題を生じることもなく、ロボットな
どを用いた全自動加工にも容易に適用できる。
【0034】本発明の鋳造用合金は上記の様な特性を有
しているので、例えば半導体製造装置用部品や精密機械
加工用部品などの如く、中空部を有する薄肉で複雑形状
の大型鋳物であっても、熱間割れ、特に肉厚交差部と肉
厚非交差部との境界部で微細な凝固割れなどの欠陥を生
じることなく、信頼性の高い薄肉鋳物を製造できる。
【0035】
【実施例】次に実験例を挙げて本発明をより具体的に説
明するが、本発明はもとより下記実験例によって制限を
受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲
で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それ
らはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0036】実験例 高周波溶解炉を用いて、Arガス雰囲気下で表1に示す
化学成分の鋳物用合金を溶製し、各合金溶湯を用いて、
全体構造が断面L字状で最小板厚8mm(図2参照)、
または全体構造がロ字状(図3参照)の薄肉鋳物の鋳造
実験を行なった。得られた各鋳物について、下記の方法
で割れ状況を観察した。結果を表2に示す。
【0037】[割れ率の算出]図4に略示する如く、得
られた鋳物における全肉厚交差部の長さの総和をH、肉
厚交差部に生じた全ての亀裂の長さの総和をCとして求
め、割れ率=(C/H)×100(%)として算出し
た。ここで肉厚交差部とは、肉厚がT字状、L字状およ
び十字状となっている全ての部分を意味する。
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】上記表2に示した符号1,2およびA〜G
で得た各鋳物について、下記の方法で線膨張率を測定し
たところ、符号1,2の鋳物の線膨張率は1.5〜1.
7×10-6/℃であったのに対し、符号A〜Gの鋳物の
線膨張率は0.7〜0.9×10-6/℃であった。
【0041】[線膨張率]鋳造した各鋳物を800℃に
昇温した後1.5時間保持してから水冷し、室温まで十
分に冷却した後、更に315℃に昇温して3時間保持
し、その後放冷する。この鋳物から、直径5mm×長さ
12mmの円柱の両端面に半径6mmの球面加工を施し
た試験片を切り出し、アルバック理工社製のレーザー熱
膨張計「LIX-1」を用いて、Heガス中で0〜10
0℃の間を2℃/分の速度で昇温することにより、試験
片12mmの長手方向に生じる伸び量を測定し、20℃
から100℃までの平均線膨張率を算出する。
【0042】また、上記表1,2に示した符号1,F,
Gの3種の鋳物について、下記の方法で被削性を調べた
ところ、図5〜7に示す結果が得られた。これらの図か
らも明らかな如く、Sを多量に含む対照鋳物(符号1:
図5)は優れた被削性を有している。これに対し、符号
Gの鋳物はS含量が極端に少ないため、図7に示す如く
被削性はかなり劣り、切り子の分断性がよくない。しか
し符号Fの鋳物は、少ないながらもやや大目のSが含ま
れているため、図6に示す如く許容レベルの切り子分断
性が得られており、被削性についても一応満足できる。
【0043】[被削性]厚さ8mmの平板状試験片の表
面から板の垂直方向に直径4mmのドリルを用いて98
0回転/min、刃先送り速度0.05mm/回転の条
件で連続10個の貫通孔を穿ち、その切り粉を採取す
る。そして、該切り粉に認められる毟れ具合と切り粉の
長さで被削性を評価する。毟れ具合が少なく切り粉の長
さの短いものほど被削性良好と判断する。
【0044】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、低
炭素でかつ適量のNiとCoを含む低熱膨張鋳物合金に
対し、微量のCaとMgを含有させることによって、薄
肉で複雑な形状・構造の鋳物を製造する際にも、割れ欠
陥がなくて信頼性が高くしかも寸法精度の高い鋳物製品
を与える低熱膨張鋳物用合金を提供すると共に、該合金
を使用し冷金を用いた鋳造法を採用することにより、得
られる薄物鋳物の品質及びその信頼性を一段と高め得る
ことになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】冷金の配置例を示す説明図である。
【図2】実験例で得た薄肉鋳物を示す説明図である。
【図3】実験例で得た他の薄肉鋳物を示す説明図であ
る。
【図4】肉厚交差部に生じる割れ率の算出法を示す説明
図である。
【図5】実験で得た符号1に係る鋳物の切削性試験で得
た切り子を示す写真である。
【図6】実験で得た符号Fに係る鋳物の切削性試験で得
た切り子を示す写真である。
【図7】実験で得た符号Gに係る鋳物の切削性試験で得
た切り子を示す写真である。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、C:0.1%以下、Ni:3
    0〜34%、Co:4〜6%を含む鉄基合金からなり、
    Ca及び/又はMgを合計で0.0005〜0.010
    %含有することを特徴とする薄肉鋳物用低熱膨張合金。
  2. 【請求項2】 鉄基合金が、他の元素としてMn:0.
    5%以下およびS:0.02%以下を含むものである請
    求項1に記載の薄肉鋳物用低熱膨張合金。
  3. 【請求項3】 鉄基合金が、更に他の元素としてSi:
    0.3〜0.7%を含むものである請求項1または2に
    記載の薄肉鋳物用低熱膨張合金。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の化学成
    分を満たす低熱膨張合金を用いて薄肉鋳物を鋳造するに
    際し、鋳型内の肉厚交差部に冷金を配置して鋳造するこ
    とを特徴とする薄肉鋳物の製法。
JP2001288924A 2001-09-21 2001-09-21 薄肉鋳物用低熱膨張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法 Withdrawn JP2003096546A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001288924A JP2003096546A (ja) 2001-09-21 2001-09-21 薄肉鋳物用低熱膨張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001288924A JP2003096546A (ja) 2001-09-21 2001-09-21 薄肉鋳物用低熱膨張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003096546A true JP2003096546A (ja) 2003-04-03

Family

ID=19111496

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001288924A Withdrawn JP2003096546A (ja) 2001-09-21 2001-09-21 薄肉鋳物用低熱膨張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003096546A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018145474A (ja) * 2017-03-03 2018-09-20 新報国製鉄株式会社 低熱膨張合金

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018145474A (ja) * 2017-03-03 2018-09-20 新報国製鉄株式会社 低熱膨張合金

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3143175B1 (en) Hypereutectic white iron alloys comprising vanadium, chromium, and nitrogen and articles made therefrom
JP7311633B2 (ja) 粉末用ニッケル基合金および粉末の製造方法
CN102884212A (zh) 表面硬化钢及其制造方法
JP7255559B2 (ja) ステンレス鋼粉末、ステンレス鋼部材およびステンレス鋼部材の製造方法
JP6631860B2 (ja) マルテンサイト系ステンレス鋼部材の製造方法、ならびに、マルテンサイト系ステンレス鋼部品およびその製造方法
TW200302872A (en) Low-carbon free cutting steel
US9994946B2 (en) High strength, homogeneous copper-nickel-tin alloy and production process
JP6628902B2 (ja) 低熱膨張合金
JP2019052349A (ja) ニッケル基合金
JP2007063589A (ja) 棒鋼・線材
JPH05507125A (ja) 破壊靭性を向上させた深硬化鋼
EP3483295B1 (en) Repair-welding material for die
JP5273952B2 (ja) 熱間鍛造金型及びその製造方法
JP6683075B2 (ja) 浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法
JP4253100B2 (ja) 被削性に優れた低熱膨張合金およびその製造方法
JP2005187935A (ja) 仕上面粗さに優れた低炭素複合快削鋼材およびその製造方法
JP2000336454A (ja) 高温延性に優れたビスマス(Bi)−硫黄(S)系快削鋼、及びその製造方法
JP6683074B2 (ja) 浸炭用鋼、浸炭鋼部品及び浸炭鋼部品の製造方法
JP3581028B2 (ja) 熱間工具鋼及びその熱間工具鋼からなる高温用部材
KR102077297B1 (ko) 저열팽창 주조 합금 및 그 제조 방법
JP2003096546A (ja) 薄肉鋳物用低熱膨張合金及びこれを用いた薄肉鋳物の製法
JP2004176175A (ja) 被削性に優れる鋼及びその製造方法
JP3749922B2 (ja) 高強度高減衰能Fe−Cr−Mn−Co合金及びその製造方法
JP2004277818A (ja) プラスチック成形用の快削性金型用鋼
JP5363882B2 (ja) 冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20040806

A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20081202