JP5363882B2 - 冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品 - Google Patents

冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品 Download PDF

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Description

本発明は、冷間加工性と冷間加工後の強度に優れた冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品に関する。
一般に、ボルト、ナット、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、バルブリフター、コモンレール等の機械構造用部品に用いられる冷間加工用鋼材は、冷間加工性に優れるように構成したものが知られている。例えば、優れた冷間加工性を得るためにセメンタイトフリー組織を活用する技術(特許文献1参照)、あるいは、固溶Cと結晶粒径を制御することによって、常温時効を抑制し、冷間鍛造後に時効硬化させる技術(特許文献2参照)が開示されている。
すなわち、特許文献1では、平均粒径が500nm以下で、セメンタイトフリーのフェライト組織を有する変形能に優れた高強度鋼線または棒鋼に関する技術が開示されている。この特許文献1では、C量を所定範囲に制限した鋼材に、300〜800℃の範囲内で温間加工を施した後、冷間加工を施すことによって平均結晶粒径を500nm以下のフェライト主相組織とし、強度と変形能を両立させている。
また、特許文献2では、常温時効の進行を抑制し、冷間鍛造後の時効処理によって部品強度を向上させることができる技術が開示されている。この特許文献2では、C量をできるだけ低減すると共に、20μm以上のフェライトを90面積%以上とする鋼材の構成としている。この鋼材では、フェライト粒径をできるだけ大きくし、固溶C、固容Nが常温で転位に固着する距離を稼ぐことによって、常温時効を抑制している。つまり、この鋼材では、フェライト粒径が大きいほど常温時効が発生しにくくなるように構成されている。
なお、機械構造部品に用いられる鋼材は、ボルト等の部品に製造されるときに冷間加工が行われている。ここで行われる冷間加工(冷間鍛造)とは、200℃以下の雰囲気における加工方法のことである。この冷間加工は、熱間加工と比較して生産性が高く、しかも寸法精度および鋼材の歩留まりが共に良好な利点があることが知られている。
特開2005−320630号公報 特開平10−306345号公報
しかし、従来の冷間加工用鋼材では、次のような問題点が存在していた。
特許文献1では、セメンタイトフリーとするため、C含有量がAe1点におけるフェライト相の炭素の固溶限以下とする必要がある。その理由として、固溶限以上のCが存在すると300〜800℃の温間加工時に固溶Cがセメンタイトとして析出し、加工性を劣化させるからである。つまり、特許文献1の鋼材では、過飽和の固溶Cを得ることができず、また、Nは有害不純物として扱うことになり、不可避的混入含有量制限をしなければならなかった。
また、特許文献2では、固溶C量によってひずみ時効を制御するものであり、十分な冷間加工性と加工後における十分な強度を有する鋼材を得ることは困難であった。
なお、上記の他にも、冷間加工後の部品の強度を高めるために鋼材組織中の固溶N量を増加させる手法や、金型寿命を向上させるために鋼材の変形抵抗を増加させるN以外の元素を極力低減する手法等もある。しかし、これらの手法は、組織中の固溶Nとひずみによる転位との相互作用によって生じる動的ひずみ時効を活用する方法であるため、動的ひずみ時効による変形抵抗の増加を避けることができない。従って、動的ひずみ時効を起こさずに、冷間加工後の部品強度及び金型寿命を向上させる方法が必要とされていた。
なお、高速冷間加工下では、通常の平均ひずみ速度域における加工よりも転位密度を高めることができるため、動的ひずみ時効は必要とされない。さらに、高速冷間加工下では、冷間加工中の断熱的な発熱を援用することができるため、静的ひずみ時効を通常の鋼材よりも促進させることができる。
本発明はこのような背景のもとになされたものであり、冷間加工性と冷間加工後の強度を兼ね備えた冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために請求項1に係る冷間加工用鋼材は、C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.050質量%、Mn:0.4〜1.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.050質量%、Al:0.005〜0.060質量%、N:0.009〜0.016質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する冷間加工用鋼材であって、固溶N量が、0.008〜0.015質量%であり、フェライト相の組織分率が、90%以上であり、鋼材表面から鋼材の厚みの1/4の深さまで1mmごとに測定したビッカース硬さ(測定荷重9.8N)の最大値と最小値の差が15Hv以下、であることを構成とする。
このような構成を備える冷間加工用鋼材は、固溶N量を一定範囲内に制限し、フェライト相の組織分率を90%以上とすることにより、固溶Nが転位に固着することによる動的ひずみ時効を抑制することができる。また、ビッカース硬さの差を所定値以内とすることにより、加工前の鋼材の強度分布を均一化することができ、高速冷間加工の効果を最大限発揮できる。
また、請求項2に係る冷間加工用鋼材は、前記組成がさらに、Cr:2.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有する構成とする。このように、Cr,Moのいずれかを所定量添加することにより、鋼材の変形抵抗を減少させることができる。
また、請求項3に係る冷間加工用鋼材は、前記組成がさらに、Ti:0.02質量%以下、Nb:0.02質量%以下、V:0.02質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有する構成とする。このように、Ti,Nb,Vのいずれかを所定量添加することにより、N化合部を形成して結晶粒を整粒化し、冷間加工後の部品の強度ばらつきを抑制することができる。
また、請求項4に係る冷間加工用鋼材は、前記組成がさらに、B:0.005質量%以下を含有する構成とする。このように、Bを所定量添加することにより、Pがフェライト粒界に偏析することによる粒界強度の低下を抑制することができる。
また、請求項5に係る冷間加工用鋼材は、前記組成がさらに、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有する構成とする。このように、Cu,Ni,Coのいずれかを所定量添加することにより、鋼材の静的ひずみ時効を促進し、冷間加工後の部品の強度を向上させることができる。
また、請求項6に係る冷間加工用鋼材は、前記組成がさらに、Ca:0.01質量%以下、REM:0.01質量%以下、Mg:0.005質量%以下、Li:0.005質量%以下、Pb:0.5質量%以下、Bi:0.5質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有する構成とする。このように、Ca,REM,Mg,Li,Pb,Biのいずれか所定量を添加することにより、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼材の冷間加工性を向上させるとともに、被削性を向上させることができる。
また、請求項7に係る冷間加工用鋼材の製造方法は、請求項1から6のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼材の製造方法であって、前記組成の鋼材を、1050〜1250℃に加熱した後、熱間圧延または熱間鍛造する工程と、前記熱間圧延または熱間鍛造後の鋼材を、400〜700℃で60〜7200sec加熱保持する工程と、前記保持後の鋼材を、0.1℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却する工程と、を有する構成とする。
このような構成を備える冷間加工用鋼材の製造方法は、熱間圧延または熱間鍛造の際の温度を所定範囲内とすることにより、固溶Nを一定範囲内に制御することができる。また、所定温度で所定時間熱処理を行なうことにより、フェライト相の形状を変化させることなく、結晶粒内の転位を整理して鋼材の硬度を適切な範囲とすることができる。
また、請求項8に係る冷間加工用鋼材は、前記熱間圧延または熱間鍛造する工程の後に、鋼材を室温まで0.1℃/s以上の冷却速度で冷却する工程をさらに有する構成とする。この工程を有することにより、鋼材組織の結晶粒を整粒化することができる。
また、請求項9に係る機械構造用部品の製造方法は、請求項1から6のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼を用いた機械構造用部品の製造方法であって、前記組成の鋼材を、1050〜1250℃に加熱した後、熱間圧延または熱間鍛造する工程と、前記熱間圧延または熱間鍛造後の鋼材を、400〜700℃で60〜7200sec加熱保持する工程と、前記保持後の鋼材を、0.1℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却する工程と、前記冷却後の鋼材を、開始温度200℃未満、平均ひずみ速度50/s以上で冷間加工する工程と、を有する構成とする。
このような構成を備える機械構造用部品の製造方法は、熱間圧延または熱間鍛造の際の温度を所定範囲内とすることにより、固溶Nを一定範囲内に制御することができる。また、所定温度で所定時間熱処理を行なうことにより、フェライト相の形状を変化させることなく、結晶粒内の転位を整理して鋼材の硬度を適切な範囲とすることができる。さらに、平均ひずみ速度50/s以上で冷間加工することにより、断熱的な温度上昇が100℃以上となるため、冷間加工後に固溶Nが組織内を移動しやすくなり、冷間加工後の強度が向上する。
また、請求項10に係る機械構造用部品の製造方法は、前記熱間圧延または熱間鍛造する工程の後に、鋼材を室温まで0.1℃/s以上の冷却速度で冷却する工程をさらに有する構成とする。この工程を有することにより、鋼材組織の結晶粒を整粒化することができる。
また、請求項11に係る機械構造用部品は、請求項1から6のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼材を、開始温度200℃未満、平均ひずみ速度50/s以上で冷間加工して製造されたことを構成とする。
このような構成を備える機械構造用部品は、冷間加工中の鋼材を断熱的に変形させることで、冷間加工後に固溶Nが組織内を移動しやすくなり、より強度の高い機械構造用部品を製造することができる。
本発明に係る冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品によれば、鋼材の組織を実質的にフェライト単相として組織全体を均一な強度とし、熱間圧延または熱間鍛造後に結晶粒サイズが変化しない温度領域で熱処理を施すことによって、鋼材中の硬さを適正に調整して硬度ばらつきを低減することができる。また、冷間加工時の平均ひずみ速度を50/s以上とすることで、動的ひずみ時効を発生させずに、加工発熱によって静的ひずみ時効のみを発生させ、冷間加工後の強度を高めることができる。固溶Nは、変形抵抗を増大させる元素であるが、高速で加工することによって、動的ひずみ時効を鋼材全体で抑制することができる。従って、冷間加工性及び冷間加工後の強度に優れた冷間加工用鋼材及び機械構造用部品を提供することができる。
以下、本発明に係る冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品について詳細に説明する。
〔冷間加工用鋼材〕
以下、本発明に係る冷間加工用鋼材を実施するための形態について説明する。
本発明に係る冷間加工用鋼材は、C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.050質量%、Mn:0.4〜1.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.050質量%、Al:0.005〜0.060質量%、N:0.009〜0.016質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する冷間加工用鋼材であって、固溶N量が、0.008〜0.015質量%であり、フェライト相の組織分率が、90%以上であり、鋼材表面から鋼材の厚みの1/4の深さまで1mmごとに測定したビッカース硬さ(測定荷重9.8N)の最大値と最小値の差が15Hv以下であることを特徴としている。
以下に、本発明に係る冷間加工用鋼材の組成の各成分の含有量の数値範囲及びその数値範囲の限定理由及びその他の条件について詳細について説明する。
<組成>
(C:0.005〜0.045質量%)
Cは、冷間加工用鋼材をフェライト単相とするために極力低減する必要がある。但し、C量が極端に少ないと溶製中の脱酸が困難になる。一方、組織中におけるC量が0.045質量%を超えなければ、微細セメンタイトがわずかに存在するものの、実質的にフェライト単相となる。
C量が0.045質量%を超えると、セメンタイトがパーライトを形成し、フェライトとパーライトとの複相組織となるため、フェライト相の分率が減少する。また、パーライトは硬質相であるため、組織中にパーライトが形成されると、鋼材の硬度が増加して冷間加工性が劣化し、冷間加工後の部品に割れが発生する。一方、Cが0.005質量%未満だと、脱酸が不十分となって溶製時にガス欠陥が発生しやすくなり、歩留まりが低下する。また、冷間加工後の部品に割れが発生する。C量は、好ましくは0.010質量%以上、より好ましくは0.015質量%以上である。また、好ましくは0.043質量%以下、より好ましくは0.040質量%以下である。
(Si:0.005〜0.050質量%)
Siは、溶製中の脱酸元素として有効な元素である。また、Siは、鋼材組織フェライト相を固溶強化させる。但し、Si量が0.05質量%を超えると、変形抵抗が増大して冷間加工性が劣化して割れが発生する。一方、Si量が0.005質量%未満だと、脱酸の効果が発揮されず、溶製時にガス欠陥が発生しやすくなり、冷間加工後の部品に割れが発生する。Si量は、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.010質量%以上である。また、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。
(Mn:0.4〜1.0質量%)
Mnは、溶製中の脱酸・脱硫元素として有効な元素である。また、Mnは、Sと結合することで鋼材の変形能を向上させることができる。但し、Mn量が1.0質量%を超えると、固溶強化によって変形抵抗が顕著に増大して冷間加工性が劣化して割れが発生する。一方、Mn量が0.4質量%未満だと、脱酸・脱硫の効果が十分に発揮できず、鋼材の変形能が低下する。また、冷間加工後の部品に割れが発生する。Mn量は、好ましくは0.42質量%以上、より好ましくは0.45質量%以上である。また、好ましくは0.98質量%以下、より好ましくは0.95質量%以下である。
(P:0.05質量%以下)
Pは、組織中に不純物として不可避的に含有される元素である。但し、P量が0.05質量%を超えると、フェライト相の粒界に偏析して冷間加工性を低下させるとともに、フェライト相を固溶強化させて鋼材の変形抵抗を増大させる。また、冷間加工後の部品に割れが発生する。なお、P量は、極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招くとともに、0質量%にすることは技術的に困難である。P量は、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。
(S:0.005〜0.050質量%)
Sは、組織中に不純物として不可避的に含有される元素である。Sは、Feと結合することでFeSとして粒界上に膜状に析出して、冷間加工性を劣化させる。そのため、Sは、全量をMnと結合させ、MnSを析出させる必要がある。但し、S量が0.050質量%を超えると、MnSの析出量が増えて冷間加工性が劣化するとともに、冷間加工後の部品に割れが発生する。一方、S量が0.005質量%未満だと、鋼材の被削性の低下や製鋼コストの増加といった不具合をまねく。S量は、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.010質量%以上である。また、好ましくは0.04質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下である。
(Al:0.005〜0.060質量%)
Alは、溶製中の脱酸元素として有効な元素である。また、熱間圧延または熱間鍛造後の熱処理時にAlをAlNとして析出させることで、結晶粒が整粒化しやすくなる。但し、Al量が0.060質量%を超えると、固溶Nと結合しやすくなって固溶N量が減少するため、冷間加工後の部品の強度が低下する。一方、Al量が0.005質量%未満だと、脱酸の効果が発揮されず、溶製時にガス欠陥が発生しやすくなり、歩留まりが低下する。また、冷間加工後の部品に割れが発生する。Al量は、好ましくは0.007質量%以上、より好ましくは0.010質量%以上である。また、好ましくは0.050質量%以下、より好ましくは0.045質量%以下である。
(N:0.009〜0.016質量%)
Nは、静的ひずみ時効によって高速冷間加工後の部品の強度を向上させるために重要な元素である。但し、N量が0.016質量%を超えると、高速冷間加工でも動的ひずみ時効を十分に抑制することができず、変形抵抗の増大や冷間加工性の劣化、鋼材の強度ばらつき、冷間加工後の部品の割れの原因となる。一方、N量が0.009質量%未満だと、鋼材の高速で冷間加工しても十分な部品強度の向上が得られない。従って、冷間加工後の部品に割れが発生する。N量は、好ましくは0.0095質量%以上、より好ましくは0.0100質量%以上である。また、好ましくは0.0140質量%以下、より好ましくは0.0135質量%以下である。
(固溶N量:0.008〜0.015質量%)
鋼材中に固溶したN(固溶N)は、高速冷間加工時に発生する多くの転位を固着することで、静的ひずみ時効分の強化が付与され、加工硬化分以上に強度を増加させる効果を有する。但し、固溶N量が0.015質量%を超えると、冷間加工性が劣化する。一方、固溶N量が0.008質量%未満だと、冷間加工後の部品の強度を向上させることができない。固溶N量は、好ましくは0.0085質量%以上、より好ましくは0.0090質量%以上である。また、好ましくは0.0130質量%以下、より好ましくは0.0125質量%以下である。
(固溶Nの測定方法)
固溶Nの値は、例えば、JIS G 1228に準拠して、以下のような手順で鋼材中の全N量と全N化合物量を測定し、これらを差し引くことで算出することができる。
鋼材中の全N量は、不活性ガス融解法−熱伝導度法を用いる。供試鋼素材から試料を切り出して、るつぼに入れ、不活性ガス気流中で融解してNを抽出し、熱伝導度セルに搬送して熱伝導度の変化を測定する。鋼材中の全N化合物量は、アンモニア蒸留分離インドフェノール青吸光光度法により測定できる。この方法は以下の通りである。
まず、供試鋼材から切り出された約0.5gの試料を、10%AA系電解液(鋼材の表面に不動態皮膜を生成させない非水溶媒系の電解液であり、具体的には、10%アセチルアセトン、10%塩化テトラメチルアンモニウム、残部:メタノール)中での定電流電解により溶解する。この溶解した試料(と電解液)をメッシュサイズ0.1μmのポリカーボネート製フィルタでろ過し、不溶解残渣(窒素化合物)とろ液とに分離する。不溶解残渣を硫酸、硫酸カリウム、および純Cuチップ中で加熱、分解した後、前記ろ液に混合する。この混合された溶液を、水酸化ナトリウムでアルカリ化した後、水蒸気蒸留して、留出したアンモニウムを希硫酸に吸収させる。溶液にフェノール、次亜塩素酸ナトリウム、およびペンタシアノニトロシル鉄(III)酸ナトリウムを加えて青色錯体を生成させる。この青色錯体の吸光度を光度計を用いて測定して、この吸光度からN化合物中のNの量を求めるものである。
本発明に係る冷間加工用鋼材は、以下の任意成分を含むことが好ましい。
(Cr:2.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下のうち少なくとも1種(0%を含まない))
Cr,Moは、冷間加工性及び冷間加工後の強度を向上させるために有効な元素であり、所定量に限って選択的に添加することができる。Cr量は2.0質量%、Mo量は1.0質量%を超えると、変形抵抗が増大し、冷間加工性が劣化する。なお、Cr、Mo添加の効果を適切に得るためは、Crは0.10質量%以上、Moは0.04質量%以上添加することが好ましい。
Cr量は、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上である。また、好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下である。Mo量は、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.12質量%以上である。また、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下である。
(Ti:0.02質量%以下、Nb:0.02質量%以下、V:0.02質量%以下のうち少なくとも1種(0%を含まない))
Ti,Nb,Vは、Nと結合することでN化合物を形成して結晶粒を整粒化するため、冷間加工後の部品の強度ばらつきを抑制するために有効な元素である。但し、Ti,Nb,Vは、Nとの親和性が強いため、それぞれ0.02質量%を超えて添加すると、N化合物が過剰に形成されて固溶N量が低減してしまう。なお、Ti,Nb,V添加の効果を適切に得るためには、Ti,Nb,Vは、それぞれ0.001質量%以上添加することが好ましい。Ti,Nb,V量は、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上である。また、好ましくは0.015質量%以下、より好ましくは0.010質量%以下である。
(B:0.005質量%以下(0%を含まない))
Bは、フェライト粒界に集まる傾向があるため、Pがフェライト粒界に偏析することによる粒界強度の低下を抑制するために有効な元素である。但し、Bは、Nとの親和性が強いため、0.005質量%を超えて添加すると、BNが形成されて固溶N量が低減するとともに、フェライト粒界に過剰に偏析したBNによって粒界強度が低減する。B量は、好ましくは0.0004質量%以上、より好ましくは0.0006質量%以上である。また、好ましくは0.0035質量%以下、より好ましくは0.0020質量%以下である。
(Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、Co:1.0質量%以下のうち少なくとも1種(0%を含まない))
Cu,Ni,Coは、いずれも鋼材の静的ひずみ時効を促進し、冷間加工後の強度を向上させるために有効な元素である。但し、Cu,Ni,Co量は、1.0質量%を超えると効果が飽和して鋼材の割れが促進される。なお、Cu,Ni,Co添加の効果を適切に得るためには、Cu,Ni,Coは、それぞれ0.01質量%以上添加することが好ましい。Cu,Ni,Co量は、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上である。また、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
(Ca:0.01質量%以下、REM(希土類元素):0.01質量%以下、Mg:0.005質量%以下、Li:0.005質量%以下、Pb:0.5質量%以下、Bi:0.5質量%以下のうち少なくとも1種(0%を含まない))
Ca,REM,Mg,Liは、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼材の冷間加工性の向上及び被削性の向上に寄与する元素である。Ca,REMが0.01質量%、Mg,Liが0.005質量%を超えると、効果が飽和して添加量に見合う効果が期待できず、経済的ではない。なお、Ca,REM,Mg,Li添加の効果を適切に得るためには、Ca,REMは0.0005質量%以上、Mg,Liは0.0001質量%以上添加することが好ましい。
Ca,REM量は、好ましくは0.0010質量%以上、より好ましくは0.0015質量%以上である。また、好ましくは0.008質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下である。Mg,Li量は、好ましくは0.0003質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上である。また、好ましくは0.003質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下である。
Pb,Biは、被削性の向上に寄与する元素である。但し、Pb,Bi量が0.5質量%を超えると、圧延疵等の製造上の問題が生じる。なお、Pb,Bi添加の効果を適切に得るためには、Pb,Biは、それぞれ0.01質量%以上添加することが好ましい。Pb,Bi量は、好ましくは0.03質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上である。また、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下である。
<フェライト相の組織分率(面積率)>
本発明に係る冷間加工用鋼材は、冷間加工性を付与するために軟質のフェライト相を主組織とする。このようにフェライト単相とすることで、冷間加工用鋼材を冷間加工して機械構造用部品を製造する際に、組織全体が同時にかつ均一に変形、硬化する。従って、全体として変形抵抗の上昇が抑えられ、冷間加工性が劣化しない。また、必ずしも完全なフェライト単相組織でなくてもよく、フェライト相の全組織に対する面積率(組織分率)が90%以上であればよい。これは、一部粒界にセメンタイトが析出していても、それが球状化していれば冷間加工性を劣化させないためである。
但し、フェライト相の組織分率が90%未満になると、フェライトとセメンタイトとの界面が割れの起点になり易くなり、冷間加工性が劣化する。また、フェライト相の組織分率は、好ましくは93%以上であり、より好ましくは95%以上である。
(フェライト相の組織分率の測定方法)
フェライト相の組織分率を測定する方法としては、光学顕微鏡での観察が一例として挙げられる。また、組織を観察する位置としては、鋼材表面から鋼材の厚みの1/4の深さの位置が好ましく、その近傍の複数視野(例えば5視野)を観察して、得られた組織分率の平均で判定することができる。具体的には、冷間加工用鋼材を、前記観察位置を切断面に含むように切り出して、切断面を鏡面に研磨した後、ナイタール液(3%硝酸エタノール溶液)で腐食させ、腐食面を光学顕微鏡にて100倍程度で観察し、白く見える領域がフェライト相である。組織分率を求めるには、例えば、光学顕微鏡写真上からランダムに複数点(例えば100点)を選び、各点の組織を判別して、フェライト相の点数の全点数に対する百分率を算出すればよい。あるいは、光学顕微鏡写真を市販の画像解析ソフトで処理して白い領域の面積率を求めてもよい。
<ビッカース硬さの差>
高速冷間加工の効果を最大限発揮させるためには、加工前の鋼材の強度分布を均一化する必要がある。鋼材を高速で冷間加工すると、変形が局部的に発生する可能性がある。つまり、鋼材内に硬度の強弱があると、マクロ的には均一に変形しているように見えても、ミクロ的には不均一に変形しており、結果として、部品強度のばらつきが大きくなる。従って、鋼材表面から鋼材の厚みの1/4の深さまで1mmごとに測定したビッカース硬さ(測定荷重9.8N)の最大値と最小値の差が15Hv以下とする。当該ビッカース硬さの差は、後記する冷間加工用鋼材の製造方法において、の熱処理工程の温度及び保持時間を調整することで制御することができる。なお、当該ビッカース硬さの差は、好ましくは12Hvであり、より好ましくは10Hv以下である。
(ビッカース硬さの測定方法)
ビッカース硬さの測定方法としては、冷間加工用鋼材の表面から鋼材の厚みの1/4の深さまで1mmごとにビッカース硬さ測定を行い、最大硬さと最小硬さの差を算出する。なお、測定条件は、マイクロビッカース硬さ試験機で、荷重を1000g(9.8N)とする。そして、この測定を3ライン分行い、その差の平均値を算出する。
〔冷間加工用鋼材の製造方法〕
次に冷間加工用鋼材の製造方法について詳細に説明する。本発明に係る冷間加工用鋼材の製造方法は、前記組成の鋼材を、周知の方法で溶製したものを1050〜1250℃に加熱した後、熱間圧延または熱間鍛造する工程と、400〜700℃で60〜7200sec加熱保持する工程と、0.1℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却する工程と、を行なう。
以下、冷間加工用鋼材の製造方法における各要素について説明する。
<1050〜1250℃で熱間圧延または熱間鍛造>
本発明に係る鋼材では、熱間圧延または熱間鍛造でAlNを分解、あるいは溶解させて必要とされる固溶N量を確保する必要がある。加熱温度が1050℃未満だと、AlNが十分に分解されず、必要とされる固溶N量を確保しにくくなり、冷間加工後の強度が不足する。一方、AlNの分解は、温度が高いほど進行しやすいが、1250℃を超えると、AlNの分解に対する効果が飽和するだけでなく、ビレットの端部が変形してしまい、熱間圧延が困難となる。本工程での加熱温度は、好ましくは1075℃以上、より好ましくは1100℃以上であり、また1225℃以下が好ましく、1200℃以下がより好ましい。
<400〜700℃で60〜7200sec加熱保持>
結晶粒内の転位を整理するために必要な熱処理であり、熱間圧延または熱間鍛造された鋼材を400〜700℃で60〜7200sec加熱保持することにより、フェライト相の形状を変化させることなく、結晶粒内の転位を整理して冷間加工性を向上させることができる。すなわち、本工程の熱処理を施すことにより、鋼材表面から鋼材の厚みの1/4の深さまで1mmごとに測定したビッカース硬さ(測定荷重9.8N)の最大値と最小値の差を15Hv以下に制御することができる。詳細は、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較した実施例において後記する。一方、本工程の熱処理を行なわないと、鋼材の硬度が増加して冷間加工性が劣化するとともに、冷間加工後の部品に割れが発生する。なお、本工程は、前工程で熱間圧延または熱間鍛造された鋼材を本工程の加熱温度である400〜700℃まで冷却した後に行なわれる。
ここで、加熱温度が400℃未満だと、結晶粒内の転位が十分に整理できず、鋼材内のビッカース硬さが不均一となり、冷間加工性が劣化するとともに、冷間加工後の部品に割れが発生する。一方、加熱温度が700℃を超えると、AlNが生成され始めるため、固溶N量が低下してしまい、冷間加工後の強度が低下する。
また、保持時間が60sec未満だと、結晶粒内の転位が十分に整理できず、鋼材内のビッカース硬さが不均一となり、冷間加工性が劣化するとともに、冷間加工後の部品に割れが発生する。一方、保持時間が7200secを超えると、効果が飽和してしまう。
本工程の加熱温度は、好ましくは400〜675℃であり、より好ましくは400〜650℃である。また、保持時間は、好ましくは120sec以上、より好ましくは300sec以上であり、また6600sec以下が好ましく、6000sec以下がより好ましい。
<0.1℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却>
熱間加工または熱間鍛造後の冷却が緩やかであると、鋼材中にAlNが析出するため、冷却速度0.1℃/s以上で冷却する。冷却速度は、好ましくは0.3℃/s以上であり、より好ましくは0.5℃/s以上である。但し、冷却速度は、設備能力や熱間加工材の形状に応じて適宜変更することができる。
なお、本発明に係る冷間加工用鋼材の製造方法では、上記熱間圧延または熱間鍛造後に、室温まで冷却して次工程の熱処理を行なうことが好ましい。この工程を有することにより、鋼材組織の結晶粒を整粒化することができる。また、その際の冷却速度は、再びAlNが析出しないようにする必要があるため、1℃/s以上とすることが好ましい。
〔機械構造用部品の製造方法〕
次に機械構造用部品の製造方法について詳細に説明する。
本発明では、変形抵抗(冷間加工性)に大きな影響を及ぼす動的ひずみ時効が、温度、固溶元素量、平均ひずみ速度に支配されることに着目し、ひずみ速度を増加させれば、固溶Nが鋼中に含有されていても、動的ひずみ時効を抑制することができることを知見した。また、冷間加工後の部品強度に大きな影響を及ぼす静的ひずみ時効が、温度、固溶元素量、可動転位密度に支配されることに着目し、これらのいずれかあるいは全てを増加させれば、静的ひずみ時効を促進させることができることを知見した。
また、鋼材を高速冷間加工すると、固溶元素の拡散速度と転位の移動速度のバランスが変化するため、動的ひずみ時効が生じにくくなる。さらに加工速度が高速であればあるほど、変形が断熱的に生じるようになるため、加工後も部品が高温に保たれる。また、組織形態によっては、転位が一斉に増殖するため、可動転位密度が増加しやすいという特徴もある。そこで、鋼材を高速変形させ、金型寿命と部品強度の両立に適した鋼材の組織形態を探索し、以下の点を知見した。
(1)高速変形の場合、組織間に硬度差があっても均一に変形するが、組織を均一にしておいた方が、より部品強度が向上しやすい。また、変形抵抗(冷間加工性)の低減にも有効である。
(2)ひずみ速度を50/s以上とすると、断熱的な温度上昇が100℃以上となり、部品加工後に固溶Nが移動しやすくなるため、部品強度が向上しやすい。
(3)固溶N量による動的ひずみ時効を十分に抑制するためには、本発明に係る鋼材の場合、50/s以上の平均ひずみ速度域が最も有効であり、十分に変形抵抗を低減させることができる。
本発明に係る機械構造用部品の製造方法は、前記組成の鋼材を、1050〜1250℃に加熱した後、熱間圧延または熱間鍛造する工程と、前記熱間圧延または熱間鍛造後の鋼材を、400〜700℃で60〜7200sec加熱保持する工程と、前記保持後の鋼材を、0.1℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却する工程と、前記冷却後の鋼材を、開始温度200℃未満、平均ひずみ速度50/s以上で冷間加工する工程と、を行なう。
以下、機械構造用部品の製造方法における各要素について説明する。但し、既に述べた要素である、1050〜1250℃で熱間圧延または熱間鍛造する工程、400〜700℃で60〜7200sec加熱保持する工程、0.1℃/s以上で冷却する工程については、説明を省略する。
<開始温度200℃未満、平均ひずみ速度50/s以上で冷間加工>
鋼材を当該開始温度及び平均ひずみ速度で冷間加工することにより、断熱的な温度上昇が100℃以上となり、部品加工後に固溶Nが移動しやすくなるため、部品強度が向上しやすくなる。一方、開始温度が200℃を超える場合や、平均ひずみ速度が50/s未満の場合は、動的ひずみ時効が発生して変形抵抗の増大や変形能の劣化を招くことになる。
〔機械構造用部品〕
次に前記した方法で製造された機械構造用部品について説明する。本発明に係る機械構造用部品は、平均ひずみ速度0.001/sで冷間加工した場合における測定荷重9.8Nでのビッカース硬さ(Hv)をH1と、平均ひずみ速度100/sで冷間加工した場合における測定荷重9.8Nでのビッカース硬さ(Hv)をH2としたとき、20≦H2−H1を満足することを特徴としている。このような特徴を有する機械構造用部品は、平均ひずみ速度を上げることで、冷間加工後に固溶Nが組織内を移動しやすくなり、より強度の高い機械構造用部品を製造することができる。なお、機械構造用部品としては、例えば、ボルト・ナット、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、バルブリフター、コモンレール等が挙げられる。
次に、本発明の要件を満たす実施例と本発明の要件を満たさない比較例とを比較して具体的に説明する。本実施例で用いる鋼材及び冷間加工後の部品は以下の2種類の方法により作製した。
<鋼材作製方法1>
(1)溶解・鋳造
鋼150kgを真空誘導炉で溶解し、上面φ245mm×下面φ210mm×長さ480mmの鋳塊を鋳造した。
(2)熱間鍛造
この鋳塊を、1150〜1250℃でビレット(155mm角)に熱間鍛造した。なお試験片No.3は、1000℃で熱間鍛造した。
(3)切断・溶接
ビレットの端部を切断してダミービレット(155mm角×9〜10m長さ)に溶接した。
(4)熱間圧延
溶接後のビレットをφ80の丸棒に熱間圧延した。
(5)熱処理
φ80の丸棒を、400〜700℃で60〜7200sec加熱し、0.5℃/s以上で室温まで冷却した。なお、試験片No.11は、熱間鍛造及び熱間圧延後の冷却を行なわなかった。また、試験片No.23は、熱処理を行なわなかった。また、試験片No.24は、加熱温度を300℃とし、試験片No.29は800℃とした。また、試験片No.30は、保持時間を10secとした。
(6)切断・加工
φ6×9mmlの圧縮試験片を厚みの1/4の深さの位置から切り出し、評価に用いた。なお、この方法で作製した鋼材は、表1の「その他」の欄に「熱間圧延」と示した。
<鋼材作製方法2>
(1)、(2)は、前記した鋼材作製方法1と同様であるため説明を省略する。
(3)熱間鍛造
ビレットをφ80の丸棒に1050〜1250℃で熱間鍛造した。
(4)熱処理
φ80の丸棒を、400〜700℃で60〜7200sec加熱し、0.5℃/s以上で室温まで冷却した。
(5)切断・加工
φ6×9mmlの圧縮試験片を厚みの1/4の深さの位置から切り出し、評価に用いた。なお、この方法で作製した鋼材は、表1の「その他」の欄に「熱間鍛造」と示した。
表1に、鋼材の組成及び鋼材製造条件を示す。なお、表1において、本発明の範囲を満たさないものは、下線を引いて示した。
Figure 0005363882
表1の条件で製造された鋼材の特性(冷間加工性)について評価を行なった。また、各鋼材を冷間加工して作製した機械構造用部品(以下、部品)の特性(冷間加工した部品の強度)についても評価を行なった。部品の作製方法は以下の通りである。
<部品作製方法>
熱間加工再現試験装置(富士電波工機株式会社製サーメックマスターX)を使用し、20℃、平均ひずみ速度0.001/sおよび100/s、圧縮率80%の冷間鍛造条件で各鋼材を圧縮加工し、変形抵抗、割れの有無を評価した。圧縮加工して得られた部品を縦断面で切断し、樹脂に埋め込んで、エメリー紙、ダイヤモンドバフで表面を鏡面研磨した。
表2に、表1の条件で製造された鋼材及び部品の特性を測定した結果を示す。なお、表2において、本発明の範囲を満たさないものは、下線を引いて示した。
Figure 0005363882
鋼材の特性について、以下の項目を測定した。
(固溶N量)
各試験片について、前記した方法で固溶N量を測定し、固溶N量が0.008〜0.015質量%の範囲内のものを良好、当該範囲外のものを不良とした。
(フェライト面積率)
各試験片について、前記した方法でフェライト面積率を測定し、フェライト面積率が90%以上のものを良好、90%未満のものを不良とした。
(鋼材のビッカース硬さの差)
各試験片について、前記した方法でビッカース硬さの最大値と最小値の差分の平均値を測定し、当該平均値が15Hv以下のものを良好、15Hvを超えたものを不良とした。なお、表2の項目では、「鋼材の特性」欄の下に、単に「ビッカース硬さ」と記載する。
また、鋼材を冷間加工して作製した部品について、以下の項目を測定した。
(部品のビッカース硬さの差)
各試験片(部品)について、厚みの1/4の深さの位置でビッカース硬さ(測定荷重9.8N)を測定した。測定にはマイクロビッカース硬さ試験機を用い、5点の平均値を部品のビッカース硬さとした。また、同一鋼材の平均ひずみ速度による平均硬さを算出し、平均ひずみ速度0.001/sの硬さ(H1)と、平均ひずみ速度100/sのビッカース硬さ(H1)との差を算出し、20≦H2−H1を満たすか否かについても確認した。そして、ビッカース硬さの差が20Hv以上のもので上記式を満たすものを良好、20Hv未満で上記式を満たさないものを不良とした。なお、表2の項目では、「部品の特性」欄の下に、単に「ビッカース硬さ」と記載する。
(割れの有無)
各試験片について、割れの有無を測定した。そして、冷間加工後の部品に割れが生じなかったものを良好「○」、割れが生じたものを不良「×」とした。
(総合評価)
上記項目について、全て良好であったものを総合評価「○」とし、一つでも不良があったものを総合評価「×」とした。
表2に示すように、鋼材組成と鋼材製造条件が本発明の必要条件を満たす試験片No.1,2,4〜22,25〜28,31〜34,36〜57(実施例)は、鋼材及び部品品の特性が本発明が規定する範囲内であり、冷間加工性と部品の強度が優れていることがわかる。一方、鋼材組織と鋼材製造条件のいずれかが本発明の必要条件を満たさない試験片No.3,23,24,29,30,35,58〜69(比較例)は、鋼材及び部品の特性のいずれかが本発明が規定する範囲外であり、冷間加工性と部品の強度が劣っていることがわかる。以下、比較例について、具体的に説明する。
試験片No.3は、熱間圧延での加熱温度を1050℃未満としたため、固溶N量が0.008質量%未満であった。また、部品のビッカース硬さも20Hv未満であった。
試験片No.23は、鋼材の製造工程で熱処理を行なわなかったため、鋼材のビッカース硬さが15Hvを超え、部品に割れが発生した。
試験片No.24は、熱処理での加熱温度を400℃未満としため、鋼材のビッカース硬さが15Hvを超え、部品に割れが発生した。
試験片No.29は、熱処理での加熱温度を700℃超えとしたため、固溶N量が0.008質量%未満であった。また、部品のビッカース硬さも20Hv未満であった。
試験片No.30は、熱処理での保持時間を60sec未満としたため、鋼材のビッカース硬さが15Hvを超え、部品に割れが発生した。
試験片No.35は、熱処理での冷却速度を0.1℃/s未満としたため、固溶N量が0.008質量%未満であった。また、部品のビッカース硬さも20Hv未満であった。
試験片No.58は、鋼材に含まれるC量が下限値未満であるため、部品に割れが発生した。試験片No.59は、鋼材に含まれるC量が上限値を超えているため、フェライト面積率が90%以下、鋼材のビッカース硬さが15Hv以上であった。また、部品に割れが発生した。
試験片No.60は、鋼材に含まれるSi量が下限値未満であるため、部品に割れが発生した。試験片No.61は、鋼材に含まれるSi量が上限値を超えているため、部品に割れが発生した。
試験片No.62は、鋼材に含まれるMn量が下限値未満であるため、部品に割れが発生した。試験片No.63は、鋼材に含まれるMn量が上限値を超えているため、部品に割れが発生した。
試験片No.64は、鋼材に含まれるP量が上限値を超えているため、部品に割れが発生した。試験片No.65は、鋼材に含まれるS量が上限値を超えているため、部品に割れが発生した。
試験片No.66は、鋼材に含まれるAl量が下限値未満であるため、部品に割れが発生した。試験片No.67は、鋼材に含まれるAl量が上限値を超えているため、固溶N量が下限値未満であり、部品のビッカース硬さが20Hv未満であった。
試験片No.68は、鋼材に含まれるN量と固溶N量が下限値未満であるため、部品のビッカース硬さが20Hv未満であり、部品に割れが発生した。試験片No.69は、鋼材に含まれるN量が上限値を超えているため、鋼材のビッカース硬さが上限値を超えており、部品に割れが発生した。
本発明に係る冷間加工用鋼材、冷間加工用鋼材の製造方法、機械構造用部品の製造方法及び機械構造用部品は、鋼材の組織を実質的にフェライト単相として組織全体を均一な強度とし、熱間圧延または熱間鍛造後に結晶粒サイズが変化しない温度領域で熱処理を施すことによって、鋼材中の硬さを適正に調整して硬度ばらつきを低減している。また、冷間加工時の平均ひずみ速度50/s以上とすることで、動的ひずみ時効を発生させずに、加工発熱によって静的ひずみ時効のみを発生させ、組織中に動的ひずみ時効の要因となる固溶Nが多く存在していたとしても、動的ひずみ時効を鋼材全体で抑制することができる。従って、冷間加工性及び冷間加工後の部品の強度に優れた冷間加工用鋼材及び機械構造用部品を提供することができる。

Claims (11)

  1. C:0.005〜0.045質量%、Si:0.005〜0.050質量%、Mn:0.4〜1.0質量%、P:0.05質量%以下、S:0.005〜0.050質量%、Al:0.005〜0.060質量%、N:0.009〜0.016質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する冷間加工用鋼材であって、
    固溶N量が、0.008〜0.015質量%であり、
    フェライト相の組織分率が、90%以上であり、
    鋼材表面から鋼材の厚みの1/4の深さまで1mmごとに測定したビッカース硬さ(測定荷重9.8N)の最大値と最小値の差が15Hv以下、
    であることを特徴とする冷間加工用鋼材。
  2. 前記組成がさらに、Cr:2.0質量%以下、Mo:1.0質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の冷間加工用鋼材。
  3. 前記組成がさらに、Ti:0.02質量%以下、Nb:0.02質量%以下、V:0.02質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の冷間加工用鋼材。
  4. 前記組成がさらに、B:0.005質量%以下を含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼材。
  5. 前記組成がさらに、Cu:1.0質量%以下、Ni:1.0質量%以下、Co:1.0質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼材。
  6. 前記組成がさらに、Ca:0.01質量%以下、REM:0.01質量%以下、Mg:0.005質量%以下、Li:0.005質量%以下、Pb:0.5質量%以下、Bi:0.5質量%以下、のうち少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼材。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼材の製造方法であって、
    前記組成の鋼材を、1050〜1250℃に加熱した後、熱間圧延または熱間鍛造する工程と、
    前記熱間圧延または熱間鍛造後の鋼材を、400〜700℃で60〜7200sec加熱保持する工程と、
    前記保持後の鋼材を、0.1℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却する工程と、
    を有することを特徴とする冷間加工用鋼材の製造方法。
  8. 前記熱間圧延または熱間鍛造する工程の後に、鋼材を室温まで0.1℃/s以上の冷却速度で冷却する工程をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の冷間加工用鋼材の製造方法。
  9. 請求項1から6のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼を用いた機械構造用部品の製造方法であって、
    前記組成の鋼材を、1050〜1250℃に加熱した後、熱間圧延または熱間鍛造する工程と、
    前記熱間圧延または熱間鍛造後の鋼材を、400〜700℃で60〜7200sec加熱保持する工程と、
    前記保持後の鋼材を、0.1℃/s以上の冷却速度で室温まで冷却する工程と、
    前記冷却後の鋼材を、開始温度200℃未満、平均ひずみ速度50/s以上で冷間加工する工程と、
    を有することを特徴とする機械構造用部品の製造方法。
  10. 前記熱間圧延または熱間鍛造する工程の後に、鋼材を室温まで0.1℃/s以上の冷却速度で冷却する工程をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の機械構造用部品の製造方法。
  11. 請求項1から6のいずれか1項に記載の冷間加工用鋼材を、開始温度200℃未満、平均ひずみ速度50/s以上で冷間加工して製造されたことを特徴とする機械構造用部品。
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