JP2003070439A - イソフラボンアグリコンに富んだ納豆およびその製造法。 - Google Patents
イソフラボンアグリコンに富んだ納豆およびその製造法。Info
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Abstract
フラボンアグリコンに富んだ納豆およびその製造法を提
供する。 【解決手段】原料の大豆に由来するイソフラボン配糖体
を加水分解してなることを特徴とするイソフラボンアグ
リコンに富んだ納豆およびその製造方法。更に、前記加
水分解がジグリコシダーゼを納豆の製造工程に添加する
ことによる加水分解である前記納豆およびその製造方
法。
Description
造法に関し、詳細には、生体への吸収性に優れたイソフ
ラボンアグリコンに富んだ納豆およびその製造法に関す
る。
られる日本の伝統的な食品であり、該納豆の原料である
大豆は、近年、ガン、動脈硬化、心臓疾患、骨粗鬆症の
予防、更年期障害におけるホテリの軽減等に効果がある
といわれ、植物エステロゲンと称されるイソフラボンの
代表的な供給源でもある。原料の大豆中のイソフラボン
は、アグリコン(非糖質部分)であるイソフラボンと糖
が結合した配糖体(以下「イソフラボン配糖体」ともい
う。)とアグリコンであるイソフラボン(以下「イソフ
ラボンアグリコン」ともいう。)の状態で存在してい
る。また、このイソフラボン配糖体には糖部分の6位の
水酸基がサクシニル基、アセチル基もしくはマロニル基
で置換された配糖体(以下「修飾イソフラボン配糖体」と
もいう。)も含まれており、その存在比率は、加工度合
の少ない大豆素材では50%前後と言われている。
共にフラボノイドまたはカテキン成分を多量に含有する
天然成分、例えば、イチョウ葉エキスを添加して、カラ
シ等を添加しなくても食しやすい納豆を製造する方法の
発明がある(特開平11−313631号公報)。
ラボン配糖体、特に修飾イソフラボン配糖体の生体への
吸収性は、イソフラボンアグリコンに比して著しく悪い
ため、折角納豆を摂取しても納豆中に含まれる修飾イソ
フラボン配糖体のままでは、植物エステロゲンとしての
上記効果を十分発揮させることができない。また、上記
特開平11−313631号公報に記載の発明は、イチ
ョウ葉エキスに含まれるフラボノイド成分の苦み成分を
利用して納豆の食味を向上させることを目的とするもの
に過ぎず、原料大豆中に本来含まれるイソフラボンアグ
リコンの含有率を高め、ひいてはイソフラボンアグリコ
ンの有する前記の種々の生理活性を充分に発揮させるこ
とを意図するものではない。
ものであり、生体への吸収性に優れる大豆に由来するイ
ソフラボンアグリコンに富んだ納豆およびその製造方法
を提供することを課題とする。
解決すべく鋭意検討した結果、納豆の製造工程にジグリ
コシダーゼを添加することにより、大豆の形態を損なう
こと無く納豆中のイソフラボンアグリコン量を高めるこ
とができることを見出し、この知見に基づいて本発明を
完成するに至った。
するイソフラボン配糖体を加水分解してなることを特徴
とするイソフラボンアグリコンに富んだ納豆を要旨とす
る。ここで、イソフラボン配糖体には糖部分の6位の水
酸基がサクシニル基、アセチル基若しくはマロニル基で
置換された修飾イソフラボン配糖体も含まれる。
記載の発明において、加水分解がジグリコシダーゼを納
豆の製造工程に添加することによるものであることを要
旨とする。
記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加する工程
が、納豆の製造工程のうち、浸漬工程、納豆菌接種工程
および発酵工程の少なくとも1の工程であることを要旨
とする。
記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加する工程
が浸漬工程であることを要旨とする。
3に記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加する
工程が発酵工程であることを要旨とする。
記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加する工程
が浸漬工程及び発酵工程であることを要旨とする。
6のいずれかに記載の発明において、ジグリコシダーゼ
がペニシリウム・マルチカラー(Penicilliu
mmulticolor)由来であることを要旨とす
る。
6のいずれかに記載の発明において、ジグリコシダーゼ
がアスペルギルス・フミガタス(Aspergillu
sfumigatus)由来であることを要旨とする。
するイソフラボン配糖体を加水分解することを特徴とす
るイソフラボンアグリコンに富んだ納豆の製造方法を要
旨とする。
に記載の発明において、加水分解がジグリコシダーゼを
納豆の製造工程に添加することによるものであることを
要旨とする。
0に記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加する
工程が、納豆の製造工程のうち、浸漬工程、納豆菌接種
工程および発酵工程の少なくとも1の工程であることを
要旨とする。
1に記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加する
工程が浸漬工程であることを要旨とする。
項11に記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加
する工程が発酵工程であることを要旨とする。
1に記載の発明において、ジグリコシダーゼを添加する
工程が浸漬工程及び発酵工程であることを要旨とする。
0〜14のいずれかに記載の発明において、ジグリコシ
ダーゼがペニシリウム・マルチカラー(Penicil
lium multicolor)由来であることを要
旨とする。
0〜14のいずれかに記載の発明において、ジグリコシ
ダーゼがアスペルギルス・フミガタス(Aspergi
llus fumigatus)由来であることを要旨
とする。
に富んだ納豆は、原料の大豆に由来するイソフラボン配
糖体を加水分解して製造することができる。また、該イ
ソフラボン配糖体の加水分解は、納豆の製造工程にジグ
リコシダーゼを添加することにより行うことができる。
分野において通常行われるものであればよく、具体的に
は、まず大豆を洗浄し(水洗工程)、水中に浸漬して吸
水させた後(浸漬工程)、所定の蒸煮条件下、蒸し器中
で蒸煮して蒸煮大豆を得る(蒸煮工程)。蒸煮工程の常
圧下の蒸煮条件は、通常、圧力が約1.0kg/cm2
で温度が約100℃である。また、加圧下の蒸煮条件
は、通常、圧力が1.5〜2kg/cm2で温度が12
8〜133℃の範囲である。次に、このようにして得ら
れた蒸煮大豆に納豆菌を接種混合し(納豆菌接種工
程)、その後所定の容器に充填する。このようにして容
器に充填された蒸煮大豆を発酵室に搬入し、室温42℃
前後で22〜26時間発酵させ(発酵工程)、品温を下
げて納豆菌の生育を停止させ、その後、5℃付近で24
〜48時間熟成後(熟成工程)、包装して出荷される。
なお、原料の大豆の種類、大きさ、仕込量、蒸煮条件、
発酵条件(発酵温度、発酵時間、発酵室の大きさ、形状
等)、熟成条件、納豆収納容器の形状や材質等は適宜変
更することができ、上記に限定されるものではない。ま
た、納豆とは糸引納豆を意味するが、糸引納豆には引き
割り納豆、雪割納豆なども含まれる。
は、納豆の製造工程のうち、浸漬工程、納豆菌接種工程
および発酵工程の少なくとも1の工程にジグリコシダー
ゼを添加することにより行うことができ、好ましくは発
酵工程への添加であり、更に好ましくは浸漬工程への添
加であり、特に好ましくは浸漬工程と発酵工程の両工程
への添加である。
りもイソフラボンアグリコンの生成率が高く(後記の表
1、2参照)、また浸漬工程と発酵工程の両工程への添
加については、意外にも浸漬工程または発酵工程への添
加に比して相乗的にイソフラボンアグリコンの生成率が
高められるためである(後記の表1〜3参照)。従っ
て、ジグリコシダーゼの添加工程および添加量を適宜選
択することにより、イソフラボンアグリコンに富んだ納
豆のイソフラボンアグリコンの含有量を調整することも
可能である。なお、水洗工程では添加したジグリコシダ
ーゼが洗い流され、蒸煮工程ではジグリコシダーゼが失
活するため、ジグリコシダーゼを添加する工程としては
好ましくない。
ソフラボン配糖体を所望の程度に加水分解するに必要な
量を適宜定めることができるが、通常は大豆100gあ
たり0.26〜52,000単位であり、好ましくは、
2.6〜26,000単位であり、特に好ましくは、2
6〜5,200単位である。
程、納豆菌接種工程、発酵工程での大豆の状態により、
溶液状、懸濁液状等の液状、粉末状、顆粒状等の固形上
等の態様を適宜選択することができる。通常は、ジグリ
コシダーゼの水溶液が用いられ、上記工程の少なくとも
1の工程において大豆に散布される。
糖鎖加水分解酵素に分類される酵素であって、配糖体を
構成している糖以外の化合物(以下「アグリコン」とい
う。)と単一あるいは複数の種類の糖類より構成された
直鎖および分岐糖鎖とが糖鎖の水酸基を介して結合した
いわゆる配糖体を基質とする事ができ、二糖単位で基質
を認識して切断しアグリコンを生成する酵素をいい、こ
のジグリコシダーゼは、また、既存のグルコシダーゼで
は難分解であるアセチル体、サクシニル体もしくはマロ
ニル体等の修飾配糖体を糖とアグリコンに分解する酵素
でもある。
ソフラボン配糖体を非常に効率よく加水分解し、かつ遊
離グルコースの影響をほとんど受けない。従って、大豆
に含有されるイソフラボン配糖体であるダイズイン、ゲ
ニスチン、グリシチン等、並びに修飾イソフラボン配糖
体であるこれらのアセチル体、サクシニル体、マロニル
体等の高効率な加水分解に適した酵素である。
は、例えば、ジグリコシダーゼ活性が確認されているア
スペルギルス(Aspergillus)属、ペニシリ
ウム(Penicillium)属、リゾプス(Rhi
zopus)属、リゾムコール(Rhizomuco
r)属、タラロマイセス(Talaromyces)
属、モルチエレラ(Mortierella)属、クリ
プトコッカス(Cryptococcus)属、ミクロ
バクテリウム(Microbacterium)属、コ
リネバクテリウム(Corynebacterium)
属、アクチノプラネス(Actinoplanes)属
等の様々な微生物が生産するジグリコシダーゼを使用す
ることができる。
グリコシダーゼ生産能が確認されているアスペルギルス
ニガー(Aspergillus niger)IF
O4407(入手先 財団法人 発酵研究所 大阪市淀
川区十三本町2−17−85)、アスペルギルス ニガ
ー(Aspergillus niger)IAM20
20、アスペルギルス フミガタス(Aspergil
lus fumigatus)IAM2046、ペニシ
リウム マルチカラー(Penicillium mu
lticolor)IAM7153(入手先 東京大学
分子細胞生物学研究所 東京都文京区弥生1−1−1)
が生産するジグリコシダーゼが挙げられる。
ペニシリウム マルチカラー(Penicillium
multicolor)IAM7153株が生産する
ジグリコシダーゼである。ペニシリウム マルチカラー
由来のβ−ガラクトシダーゼは食品添加物リストに掲載
されている安全性の認められている酵素であり、かかる
安全性の高い菌から生産されるジグリコシダーゼについ
ても高い安全性が推測されるためである。
シダーゼを製造するためには、当該微生物の培養に適合
した方法や条件を適宜設定できる。例えば、上述した各
種菌株の培養法としては液体培養法、固体培養法の何れ
も採用できるが、液体培養法が好適である。液体培養
は、例えば、以下のように行うことができる。
る微生物が生育可能な培地であれば、如何なるものでも
良い。例えば、グルコース、シュクロース、ゲンチビオ
ース、可溶性デンプン、グリセリン、デキストリン、糖
蜜、有機酸等の炭素源、更に硫酸アンモニウム、炭酸ア
ンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、
或いは、ペプトン、酵母エキス、コーンスティープリカ
ー、カゼイン加水分解物、ふすま、肉エキス等の窒素
源、更にカリウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、
リン酸塩、マンガン塩、鉄塩、亜鉛塩等の無機塩を添加
したものを用いることができる。
るために培地に各種の誘導物質を添加することができ
る。誘導物質としては例えば糖類が使用でき、好ましく
はゲントース(例えば、ゲントース#80、日本食品化
工(株))、ゲンチビオース、ゲンチオリゴ糖(例え
ば、ゲンチオリゴ等、和光純薬工業(株))、ガラクト
マンナン等が利用できる。これらの誘導物質の添加量は
目的とするジグリコシダーゼの生産能が増大される量で
あれば特に限定されないが、好ましくは0.01〜10
%が添加される。
約5〜6程度に調製し、培養温度は通常約10〜50
℃、好ましくは約25〜30℃程度で、1〜15日間、
好ましくは4〜7日間程度好気的条件下で培養する。培
養法としては例えば振盪培養法、ジャーファーメンター
による好気的深部培養法が利用できる。しかしながら、
上述した各種の培養条件などは当然のことながら、培養
する対象である微生物や細胞により適宜変更され、本発
明のジグリコシダーゼが生産される条件であれば、その
条件等は限定されない。得られた培養液からジグリコシ
ダーゼを単離精製するには、ジグリコシダーゼ活性を指
標として、遠心分離、UF濃縮、塩析、イオン交換樹脂
等の各種クロマトグラフィーを組み合わせ、常法により
処理して、精製したジグリコシダーゼを得ることができ
る(参考文献 蛋白質・酵素の基礎実験法、堀尾 武一
著、南江堂)。本発明のジグリコシダーゼは上述のジグ
リコシダーゼを生産する微生物を培養した培養液そのま
までも利用できる。もちろん本培養液は本発明の使用目
的に応じてその精製度合いを適宜変更することができ
る。
明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもので
はない。
(Penicillium multicolor)IA
M7153株を用いたジグリコシダーゼの培養) 2.0%の脱脂大豆、3.0%ブドウ糖、0.5%リン酸二水素カリ
ウム、0.4%硫酸アンモニウム、0.3%乾燥酵母を含む生育
培地(pH5.6)を121℃で20分間殺菌した。殺菌した培地
100 mLに対して生産菌を1エーゼ接種し、27℃、140 min
−1の振とう速度で前培養を行った。5日後、1.0%サンフ
ァイバーR、2.0%リン酸二水素カリウム、1.0%硫酸アン
モニウム、3.13%ミーストP1Gを含むpH4.9の本培地20 L
を30 L容のジャーファーメンターにて、150 min−1で攪
拌しながら121℃で20分間殺菌した。前培地を1.5%で接
種し、攪拌数250 min−1、通気量0.75 vvm (15 L/mi
n)、内圧0.5 Kg/cm2(48kPa)、27±1℃で8日間
培養した。
ファインフローAをそれぞれ全液量の2%質量を添加し、
珪藻土ろ過を行った。限外濾過膜 UF AIP-2020(MW6,00
0)で20倍濃縮を行うとともに、pH4.7の20 mM酢酸緩衝
液で置換した。上記限外濾過濃縮液に硫酸アンモニウム
を添加し、50%硫安塩析を行った。得られた沈殿を除去
し、上清に更に硫安を添加して80%硫安塩析を行った。
沈殿を回収し、pH4.7の20 mM酢酸緩衝液に溶解した。溶
解液を10-DGカラム(BioRad Co.)に通し、緩衝液を30
%飽和硫酸アンモニウムを含むpH4.7の20 mM酢酸緩衝液
に交換した。この溶液を疎水クロマトグラフィー(HiLo
ad 16/10 Phenyl SepharoseHigh Performance (Pharma
cia))にアプライし、ジグリコシダーゼ活性を示す画
分をβ-グルコシダーゼおよびβ-キシロシダーゼ活性の
画分と分離させた。室温にて、2 mL/minの流速で30%飽
和硫安を含む20 mM酢酸緩衝液で溶出を開始し、30-0%
の直線勾配によって溶出した。10-12.5%飽和硫安濃度
でジグリコシダーゼ活性を示す画分が溶出された。回収
したジグリコシダーゼ画分を濃縮し、遠心分離した上清
を10-DGカラムにかけて溶解液をpH7.1の25 mMトリス塩
酸緩衝液に交換した。この液を等電点クロマトグラフィ
ー(Mono-P HR5/20 (Pharmacia))にアプライし、pH
5.0のポリバッファー74で1 mL/min、室温で溶出を開始
した。目的のジグリコシダーゼ活性は、pH6.2からpH6.3
で溶出した。この画分のSDS電気泳動でシングルバンド
が得られたことから、ジグリコシダーゼが精製できたこ
とが示された。
リコシダーゼサンプル30μLをパラニトロフェニル(pN
P)プリメベロシドを2 mMに酢酸緩衝液(pH 5.5)に溶
解せしめたもの200μLと混合し、40℃、サイクルタイ
ム22.5 sec.で9.75分間反応させた後、炭酸ナトリウム2
50μLを加え412 nmの吸光度を測定する。サンプル由来
のブランクの測定は基質溶液の代わりに20 mM酢酸緩衝
液(pH 5.5)を用いて同様に測定する。この条件下で吸
光度を1上昇させる酵素量を1単位とする。上記pNP-プリ
メベロシドは、pNP-グルコシド(メルク社製)とキシロ
オリゴ糖(和光純薬社製)を酵素キシロシダーゼ(シグ
マ社製)を用いて反応させ、pNP-グルコシドにキシロー
スをβ-1,6結合で1残基転移させることにより合成し
た。
添加するイソフラボンアグリコンに富む納豆の製造法) 1.水洗工程 乾燥大豆(国産優良大豆、伊勢惣製。 以下同じ。)を
用い、それぞれの重量が150gとなるように3つのグ
ループとした。各グループの乾燥大豆を水を用いて充分
に洗浄した。
の水を添加し、グループ1にはジグリコシダーゼを添加
せずに、グループ2にはジグリコシダーゼ 0.075
g(190単位)、グループ3にはジグリコシダーゼ
0.75g(1,900単位)を添加して、それぞれ約
20℃で24時間浸漬した。
に、常圧下(約1.0kg/cm2)、4時間蒸煮し
た。
(23×29.5×5cm)に移し、大豆の重量を測定
したところ、各グループの蒸し大豆の重量はそれぞれ約
300gであった。45mLの滅菌水に0.1gの納豆
菌(バチルスナットー、高橋祐蔵研究所製)を懸濁して
納豆菌懸濁液を調製し、当該懸濁液各15mLを各グル
ープの蒸し大豆に添加し十分に混合した。
レイを発泡スチロール製の箱に入れ、45℃に設定した
恒温槽内(槽内温度42℃)で24時間発酵させた。
アグリコンの測定方法 上記の発酵させた納豆80gに80%(v/v)エタノー
ル300mLを添加し、ミキサー(VA−W35,日立
製作所株式会社製)を用いて破砕した。該破砕液を室温
で1時間攪拌した後、遠心分離(10000rpm、1
0分)して上清を回収し、該上清を適宜希釈して下記の
条件でHPLCに付しイソフラボン配糖体及びイソフラ
ボンアグリコンを分離、検出した。HPLC定量分析条件 カラム:TOSOH TSK gel ODS-80TMカラム(HPLC、Shimad
zu CLASS LC-10システム)。インジェクター:オートイ
ンジェクター(Shimadzu, SIL-10AXL)。溶離方法:溶
離液A(アセトニトリル)と溶離液B (10%酢酸溶液)
をそれぞれ2%、98%含む溶液で開始し、5分後から溶離
液A 50%、溶離液B 50%で終了する直線濃度勾配を用い
た。全流速:0.8 mL/min。検出方法:UV検出器(Shimad
zu, SPD-10AV)を用い、260 nmにおける吸光度により検
出した。標準化合物:ナカライテスク社製の下記イソフ
ラボン化合物の精製品(ダイズイン、6"-O-アセチルダ
イズイン、ダイゼイン、グリシチン、グリシテイン、ゲ
ニスチン、6"-O-マロニルゲニスチン、、6"-O-アセチル
ゲニスチン、ゲニステイン)を用いた。サクシニルダイ
ズイン、サクシニルグリシチン、サクシニルゲニスチン
については、Biol.Pharm.Bull.22
(11)1194(1999)に記載の方法により製造
し、標準化合物として使用した。即ち、221.4gの
納豆を凍結乾燥、粉砕、2.5Lのクロロホルムで脱脂
し、次いで室温下2.5Lのメタノールで24時間抽出
して18.5gの抽出物を得た。該抽出物をDiaio
n HP−20 カラム(三菱化成(株)製)により、水
800mL、30%メタノール1600mL、次いで7
0%メタノール2500mLを用いて分画した。70%
メタノール画分(1.0g)をメタノールに溶解後、S
ephadex LH−20 カラム(4×79cm、メ
タノール)によるゲルろ過に付した。該溶出画分をTL
C(Kieselgel 60 Art.5721(メル
ク社製)、移動相:クロロホルム−メタノール−水(6
5:35:10)の下層、Vaughan 試薬で検
出)により5画分(第1画分(688mg)、第2画分
(40mg)、第3画分(36mg)、第4画分(25
mg)、第5画分(37mg)、Kd=0−0.70、
0.71−1.07、1.08−1.86、1.87−
2.19、2.20−2.80)に分画した。サクシニ
ルダイズイン(24mg)とサクシニルグリシチン
(1.5mg)を第2画分からHPLC(YMC−pa
ck A324、10×300mm;移動相:メタノー
ル−水−酢酸(45:54.9:0.1))により、サ
クシニルゲニスチン(18mg)を第3画分からHPL
C(YMC−pack A324、10×300mm;
移動相:アセトニトリル−水−酢酸(25:74.9:
0.1))により得た。含水メタノールからの再結晶に
より、サクシニルダイズイン、サクシニルゲニスチン、
サクシニルグリシチンをそれぞれ無色針状晶(20m
g)、無色板状晶(15mg)、無色針状晶(1mg)
として得た。
いても同様の方法で各種イソフラボン配糖体およびイソ
フラボンアグリコンについて測定を行った。
アグリコン量(μmol)は、ジグリコシダーゼ未添加
の納豆に対して、ジグリコシダーゼ0.075g添加の
納豆では15.9倍、ジグリコシダーゼ0.75g添加
の納豆では24.8倍に増加した。
生成量はジグリコシダーゼ添加量の増加と共に増加し、
該納豆中のイソフラボンの存在比率は、ジグリコシダー
ゼ未添加の納豆では総イソフラボン配糖体97.5%、
総イソフラボンアグリコン2.5%であるのに対して、
ジグリコシダーゼ0.075g添加の納豆では総イソフ
ラボン配糖体63.6%、総イソフラボンアグリコン3
6.4%であり、ジグリコシダーゼ0.75g添加の納
豆では総イソフラボン配糖体41.1%、総イソフラボ
ンアグリコン58.9%であった。
を0.075g〜0.75g添加することにより、該納
豆中のイソフラボンアグリコンの含有比率を36.4%
〜58.9%に調整することが可能である。
添加するイソフラボンアグリコンに富む納豆の製造法) 1.水洗工程 乾燥大豆500gを水を用いて充分に洗浄した。
0℃で24時間浸漬した。
に、常圧下(約1.0kg/cm2)、4時間蒸煮し
た。
×5cm)に移し、大豆の重量を測定したところ、蒸し
大豆の重量は1086.34gであった。50mLの滅
菌水に0.1gの納豆菌(バチルス ナットー、高橋祐
蔵研究所製)を懸濁して納豆菌懸濁液を調製し、当該懸
濁液を当該蒸し大豆に添加し十分に混合した。
00gとなるようにステンレス容器(23×29.5×
5cm)に入れ、3つのグループとした。グループ1に
はジグリコシダーゼを添加せず滅菌水10mLを添加
し、グループ2にはジグリコシダーゼ 0.075g
(190単位)を滅菌水10mLに溶解した液を、グル
ープ3にはジグリコシダーゼ 0.75g(1,900
単位)を滅菌水10mLに溶解した液を添加し、スパー
テルで十分混合した後、プラスチックトレイに移した。
当該プラスチックトレイを発泡スチロール製の箱に入
れ、45℃に設定した恒温槽内(槽内温度42℃)で2
4時間発酵させた。
アグリコン量(μmol)は、ジグリコシダーゼ未添加
の納豆に対して、ジグリコシダーゼ0.075g添加の
納豆では5.5倍、ジグリコシダーゼ0.75g添加の
納豆では13.8倍に増加した。
生成量はジグリコシダーゼ添加量の増加と共に緩やかに
増加し、該納豆中のイソフラボンの存在比率は、ジグリ
コシダーゼ未添加の納豆では総イソフラボン配糖体9
7.6%、総イソフラボンアグリコン2.4%であるの
に対して、ジグリコシダーゼ0.075g添加の納豆で
は総イソフラボン配糖体87.3%、総イソフラボンア
グリコン12.7%であり、ジグリコシダーゼ0.75
g添加の納豆では総イソフラボン配糖体65.6%、総
イソフラボンアグリコン34.4%であった。
を0.075g〜0.75g添加することにより、該納
豆中のイソフラボンアグリコンの含有比率を12.7%
〜34.4%に調整することが可能である。
コシダーゼを添加するイソフラボンアグリコンに富む納
豆の製造法) 1.水洗工程 乾燥大豆を用い、それぞれの重量が150gとなるよう
に3つのグループとした。各グループの乾燥大豆を水を
用いて充分に洗浄した。
の水を添加し、グループ1にはジグリコシダーゼを添加
せずに、グループ2にはジグリコシダーゼ0.075g
(190単位)、グループ3にはジグリコシダーゼ
0.75g(1,900単位)を添加して、それぞれ約
20℃で24時間浸漬した。
に、常圧下(約1.0kg/cm2)、4時間蒸煮し
た。
(23×29.5×5cm)に移し、大豆の重量を測定
したところ、各グループの蒸し大豆の重量はそれぞれ約
300gであった。45mLの滅菌水に0.1gの納豆
菌(バチルスナットー、高橋祐蔵研究所製)を懸濁して
納豆菌懸濁液を調製し、当該懸濁液各15mLを各グル
ープの蒸し大豆に添加し十分に混合した。
リコシダーゼを添加せず滅菌水10mLを添加し、グル
ープ2にはジグリコシダーゼ 0.075g(190単
位)を滅菌水10mLに溶解した液を、グループ3には
ジグリコシダーゼ 0.75g(1,900単位)を滅
菌水10mLに溶解した液を添加し、スパーテルで十分
混合した後、プラスチックトレイに移した。当該プラス
チックトレイを発泡スチロール製の箱に入れ、45℃に
設定した恒温槽内(槽内温度42℃)で24時間発酵さ
せた。
アグリコン量(μmol)は、ジグリコシダーゼ未添加
の納豆に対して、ジグリコシダーゼ0.075g添加の
納豆では42.4倍、ジグリコシダーゼ0.75g添加
の納豆では44.2倍に増加した。
生成量はジグリコシダーゼ添加量の増加と共に著しく増
加し、該納豆中のイソフラボンの存在比率は、ジグリコ
シダーゼ未添加の納豆では総イソフラボン配糖体97.
5%、総イソフラボンアグリコン2.5%であるのに対
して、ジグリコシダーゼ0.075g添加の納豆では総
イソフラボン配糖体3.0%、総イソフラボンアグリコ
ン97.0%であり、ジグリコシダーゼ0.75g添加
の納豆では総イソフラボン配糖体0.8%、総イソフラ
ボンアグリコン99.2%であった。従って、浸漬工程
及び発酵工程にジグリコシダーゼを0.075g〜0.
75g添加することにより、該納豆中のイソフラボンア
グリコンの含有比率を97.0%〜99.2%に調整す
ることが可能である。
ジグリコシダーゼをそれぞれ0.075gを添加した場
合(ジグリコシダーゼの総添加量0.15g)の納豆中
のイソフラボンアグリコンの生成量は8.48μmol
であるが、これは、納豆中のイソフラボンアグリコンの
生成量が、浸漬工程にジグリコシダーゼ0.75gを添
加する実施例1の場合には4.96μmol、発酵工程
にジグリコシダーゼ0.75gを添加する実施例2の場
合には2.76μmolであることからは予想を遥かに
超えた結果であり、ジグリコシダーゼの浸漬工程と発酵
工程の両工程への添加による相乗効果が示唆される。
フラボン配糖体であるダイズイン、グリシチン及びゲニ
スチン、修飾イソフラボン配糖体であるサクシニルダイ
ズイン、アセチルダイズイン、サクシニルグリシチン、
マロニルゲニスチン、サクシニルゲニスチン、アセチル
ゲニスチンは、ジグリコシダーゼの添加により、イソフ
ラボンアグリコンに加水分解され、対応するイソフラボ
ンアグリコンであるダイゼイン、グリシテイン、ゲニス
テインが生成した。また、ジグリコシダーゼを添加する
工程、添加するジグリコシダーゼ量を調節することによ
り、所望の含有比率のイソフラボンアグリコンに富んだ
納豆を製造することが可能である。
含まれるイソフラボン配糖体を該大豆から取出すこと無
く加水分解することにより、イソフラボンアグリコンに
富んだ納豆を製造でき且つジグリコシダーゼの添加量、
添加工程を適宜選択することにより、イソフラボンアグ
リコンの含有率を調節することができるので、大豆の形
態を維持しつつ該大豆中のイソフラボンアグリコンを所
望の含有率に増大させることができるという利点があ
る。また係る利点はイソフラボン配糖体を含有する他の
豆類にも広く適用できるため、イソフラボンアグリコン
の含有比率を増しつつ、豆類の形態を維持させることが
必要な用途にも適用可能である。また、本発明の納豆
は、生体への吸収性に優れるイソフラボンアグリコンの
含有率が高いので、該納豆を食することで該イソフラボ
ンアグリコンによるガン、動脈硬化、心臓疾患、骨粗鬆
症、更年期障害のホテリの軽減等の生理活性が期待され
る。
Claims (16)
- 【請求項1】 原料の大豆に由来するイソフラボン配糖
体を加水分解してなることを特徴とするイソフラボンア
グリコンに富んだ納豆。 - 【請求項2】 加水分解がジグリコシダーゼを納豆の製
造工程に添加することによるものである請求項1記載の
納豆。 - 【請求項3】 ジグリコシダーゼを添加する工程が、納
豆の製造工程のうち、浸漬工程、納豆菌接種工程および
発酵工程の少なくとも1の工程である請求項2記載の納
豆。 - 【請求項4】 ジグリコシダーゼを添加する工程が浸漬
工程である請求項3に記載の納豆。 - 【請求項5】 ジグリコシダーゼを添加する工程が発酵
工程である請求項3に記載の納豆。 - 【請求項6】 ジグリコシダーゼを添加する工程が浸漬
工程及び発酵工程である請求項3に記載の納豆。 - 【請求項7】 ジグリコシダーゼがペニシリウム・マル
チカラー(Penicillium multicol
or)由来である請求項2〜6いずれか記載の納豆。 - 【請求項8】 ジグリコシダーゼがアスペルギルス・フ
ミガタス(Aspergillus fumigatu
s)由来である請求項2〜6いずれか記載の納豆 - 【請求項9】 原料の大豆に由来するイソフラボン配糖
体を加水分解することを特徴とするイソフラボンアグリ
コンに富んだ納豆の製造方法。 - 【請求項10】 加水分解がジグリコシダーゼを納豆の
製造工程に添加することによるものである請求項9記載
の納豆の製造方法。 - 【請求項11】 ジグリコシダーゼを添加する工程
が、納豆の製造工程のうち、浸漬工程、納豆菌接種工程
および発酵工程の少なくとも1の工程である請求項10
記載の納豆の製造方法。 - 【請求項12】 ジグリコシダーゼを添加する工程が浸
漬工程である請求項11に記載の納豆の製造方法。 - 【請求項13】 ジグリコシダーゼを添加する工程が発
酵工程である請求項11に記載の納豆の製造方法。 - 【請求項14】 ジグリコシダーゼを添加する工程が浸
漬工程及び発酵工程である請求項11に記載の納豆の製
造方法。 - 【請求項15】 ジグリコシダーゼがペニシリウム・マ
ルチカラー(Penicillium multico
lor)由来である請求項10〜14いずれか記載の納
豆の製造方法。 - 【請求項16】 ジグリコシダーゼがアスペルギルス・
フミガタス(Aspergillus fumigat
us)由来である請求項10〜14いずれか記載の納豆
の製造方法。
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