JP2003064072A - 無水マレイン酸の製造方法 - Google Patents

無水マレイン酸の製造方法

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JP2003064072A
JP2003064072A JP2001254744A JP2001254744A JP2003064072A JP 2003064072 A JP2003064072 A JP 2003064072A JP 2001254744 A JP2001254744 A JP 2001254744A JP 2001254744 A JP2001254744 A JP 2001254744A JP 2003064072 A JP2003064072 A JP 2003064072A
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忠義 川嶋
Tetsuya Kajiwara
徹也 梶原
Yoshitake Ishii
良武 石井
Souichi Yamada
創一 山田
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 共沸脱水工程における閉塞物の発生を抑制し
た無水マレイン酸の製造方法を提供する。 【解決手段】 粗マレイン酸含有水溶液を共沸蒸留によ
って脱水する工程を含む無水マレイン酸の製造方法にお
いて、粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるp−ベンゾ
キノンとハイドロキノンの合計含有量を0.01〜20
0質量ppmの範囲にするキノン量調整工程を行なった
後に、該共沸蒸留によって脱水する工程を行なうもので
ある。本発明によれば、装置等の腐食を生じさせずに閉
塞物の発生を防ぎ、長期間の連続運転を可能とする無水
マレイン酸の製造方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粗マレイン酸含有
水溶液の共沸脱水工程を含む無水マレイン酸の製造方法
において、予めキノン類の含有量を低下させた後に共沸
脱水処理し、これによって閉塞物の発生を防止して連続
蒸留運転を可能とする、無水マレイン酸の製造方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】無水マレイン酸は、n−ブタンなどの炭
素数4以上の脂肪族炭化水素やベンゼン等を接触気相酸
化反応器で酸化し、得られる無水マレイン酸やマレイン
酸を含有するガスからマレイン酸を回収して精製する方
法によって製造される。また、ナフタリンやo−キシレ
ンの接触気相酸化反応によって無水フタル酸を製造する
際に排出される排ガスの洗浄水には相当量の無水マレイ
ン酸が含まれることから、該洗浄水を回収しこれを無水
マレイン酸として使用する方法によっても製造されてい
る。
【0003】一般に、無水マレイン酸を接触気相酸化反
応を経て製造する場合には、接触気相酸化反応によって
得た無水マレイン酸をそのまま精製する場合と、これを
一旦水溶液に捕集した後に粗マレイン酸含有水溶液を精
製し、マレイン酸を無水マレイン酸に再転化して製造す
る方法等がある。いずれの方法においても、水溶液捕集
を行なった場合には有水化したマレイン酸を無水化する
ため脱水処理する必要がある。また、副生するベンゾキ
ノン等の不純物や、さらには無水マレイン酸の精製工程
で副生するフマル酸などによって連続製造装置内の閉塞
などが生じる場合が多い。
【0004】特公昭41−3172号公報には、マレイ
ン酸含有水溶液の脱水工程を含む無水マレイン酸の製造
方法として、ベンゼンと空気との混合ガスを接触気相酸
化して無水マレイン酸を製造する方法であって、無水マ
レイン酸を含む反応ガスを水と接触して粗マレイン酸含
有水溶液を得て、溶融無水マレイン酸中に溶解して該混
合溶液を130〜160℃の無水マレイン酸−芳香族炭
化水素の混合溶液中に連続的に添加して液相でマレイン
酸を脱水する無水マレイン酸の連続製造法が記載されて
いる。無水マレイン酸を脱水するための芳香族炭化水素
としては、キシレン、サイメン、エチルベンゼン、ジエ
チルベンゼン、ジクロールベンゼンなどを使用し、連続
運転が可能である旨が記載されている。
【0005】また、特開昭50−50316号公報等
は、無水マレイン酸の連続製造方法における不純物によ
る経時的な装置内への堆積、該堆積に基づく閉塞や熱の
伝導性の低下などによる弊害を防止するための方法が開
示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記特
開昭50−50316号公報記載の方法では十分な閉塞
防止には至っておらず、特公昭41−3172号公報記
載の方法でも満足行くものではない。
【0007】一方、上記した方法とは異なり、閉塞物の
発生を化学的に抑制する方法として、ベンゼンやC4
分炭化水素を接触気相酸化反応して得た反応性ガスを水
に吸収して得た粗マレイン酸含有水溶液等から無水マレ
イン酸を製造するに際して、粗マレイン酸含有水溶液に
過酸化水素を添加して濃縮、脱水を行う無水マレイン酸
の製造方法が特公平3−76311号公報に開示されて
いる。該公報によれば、粗マレイン酸含有水溶液には各
種の不純物が含有され、これらの不純物は原料としてど
のような炭化水素を用いた場合にも中間生成物、副生成
物として混在するものであり、反応触媒の改質等を行っ
ても完全に防ぐことは困難としている。この原因は、例
えばフェノール類とアルデヒド類、キノン類とアルデヒ
ド類による樹脂化またはゲル化が進行したものであっ
て、これによって装置が閉塞するとしている。そして、
該粗マレイン酸含有水溶液に過酸化水素を添加して濃
縮、脱水を行うと、樹脂状・ゲル化物質の生成が防止で
きるとしている。しかしながら、アルデヒド類に含まれ
るホルムアルデヒドが過酸化水素によって酸化され蟻酸
が発生する。接触気相酸化反応では蟻酸もわずかながら
副生するが、これに加えてアルデヒドと過酸化水素との
反応によって多量の蟻酸が発生するため、濃縮・脱水装
置の少なくとも一部または全部を腐食に耐える高価な材
質の使用する必要が生じ、製造装置のコストアップとな
る。加えて、本発明者らが確認したところ過酸化水素は
無水マレイン酸の重合開始剤として作用し、共沸脱水蒸
留工程における操作温度領域において重合が起こり、閉
塞物となるマレイン酸や無水マレイン酸の重合体が発生
した。特に、内部構造が複雑で閉塞物の蓄積が起こりや
すい共沸脱水蒸留装置では、無水マレイン酸重合体らに
よる閉塞によって連続稼動ができず停止を余儀なくさせ
られることがわかった。
【0008】本発明は上記問題点に鑑み、装置等の腐食
原因物質の発生や、マレイン酸重合体による閉塞物の発
生を防ぎ、長期間の連続運転を可能とする無水マレイン
酸の製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、粗マレイ
ン酸含有水溶液を共沸脱水する際の塔内の不純物による
汚れや閉塞物について詳細に検討した結果、予めキノン
類を特定濃度以下に調整すると、共沸脱水工程において
アルデヒド類との縮合物の発生を効果的に抑制できるこ
と、アルデヒド類とキノン類との縮合物の発生に先立
ち、特定温度以下での留出操作や吸着剤によるキノン類
の除去処理を共沸脱水蒸留前に行なうことで、装置を腐
食させることなしに蒸留装置の閉塞を効果的に防止でき
ることを見出し、本発明を完成させた。以下に具体的に
説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明は、粗マレイン酸含有水溶
液を共沸蒸留によって脱水する工程を含む無水マレイン
酸の製造方法において、粗マレイン酸含有水溶液中に含
まれるp−ベンゾキノンとハイドロキノンの合計含有量
を0.01〜200質量ppmの範囲にするキノン量調
整工程を行なった後に、該共沸蒸留によって脱水する工
程を行なうものである、無水マレイン酸の製造方法であ
る。
【0011】粗マレイン酸含有水溶液の共沸脱水工程で
は、共沸脱水塔内でキノン類も留出除去されるのである
が、一般に塔底温度140〜200℃と高温で行われる
ため、アルデヒド類とキノン類との縮合物が発生する。
そこで、該水溶液中に含まれるキノン類の主成分である
p−ベンゾキノンとハイドロキノンの合計含有量を予め
0.01〜200質量ppm、より好ましくは0.01
〜150質量ppm、特には0.01〜100質量pp
mの範囲内に除去した後に共沸脱水することにより、該
縮合物の発生を効果的に防止することができるのであ
る。p−ベンゾキノンとハイドロキノンの合計含有量が
200質量ppmを超えるとアルデヒド類との縮合反応
が発生しやすくなるが、その一方、p−ベンゾキノンや
ハイドロキノンは少量存在しても縮合物が発生しないこ
とが判明し、例えば0.01質量ppm未満であれば縮
合物は発生しない。そこで、本発明は、p−ベンゾキノ
ンとハイドロキノンの合計含有量を上記範囲に制限する
ことで、簡便に閉塞物の発生を防止するものである。な
お、無水マレイン酸合成反応で副生されるキノン類は、
そのほとんどがp−ベンゾキノンとハイドロキノンであ
り、本発明では、キノン類除去の指標として、p−ベン
ゾキノンとハイドロキノンの合計含有量を使用すること
とした。またアルデヒド類のほとんどはホルムアルデヒ
ドである。なお上記のキノン類の含有量を特定の範囲に
調整することは具体的には上記範囲内になるようにキノ
ン類を除去する工程を含んでいる。
【0012】粗マレイン酸含有水溶液に含まれるキノン
類の濃度を減少させるには、キノン類の蒸留除去、吸着
現象を利用した吸着除去等があり、本発明では、いずれ
も好ましく使用できる。
【0013】さらに説明すると、粗マレイン酸含有水溶
液の共沸蒸留の操作温度範囲では粗マレイン酸含有水溶
液に不純物として含まれるp−ベンゾキノンやハイドロ
キノンなどのキノン類は、アルデヒド類と縮合反応を起
こしてしまい、共沸脱水蒸留塔内の汚れの原因となる。
これは、キノン類の共沸脱水蒸留塔からの留出速度より
もアルデヒド類との縮合反応の方が速度が速いからであ
り、樹脂状またはゲル状物質の発生原因となっている。
しかしながら、キノン類の留出速度と、キノン類とアル
デヒド類との縮合反応の速度、およびその際の温度との
関係を調べたところ、溶液の温度40〜130℃、より
好ましくは50〜120℃、特に好ましくは60〜11
0℃で粗マレイン酸含有水溶液を加熱処理すると、装置
内の圧力のいかんにかかわらず、両者の縮合速度よりも
キノン類の留出速度の方が早いことが判明した。すなわ
ち、この温度範囲で、前記の粗マレイン酸含有水溶液か
らキノン類を除去してその量を上記範囲に調整する処理
操作を行うと、キノン類の留出除去装置には樹脂状また
はゲル状物質の付着がほとんどなく、かつ次工程の共沸
脱水蒸留においても装置への閉塞物の付着がほとんどな
く、このため安定して連続運転を行うことができる。上
記のキノン量調整工程において130℃を超えるとキノ
ン類の留出よりも縮合物の発生が速くなり、その一方、
40℃を下回るとキノン類の留出速度も遅く、生産性が
低下する場合がある。
【0014】このようなキノン類の留出除去装置として
は、薄膜蒸発器や段塔や充填塔を用いる多段式蒸発器等
が例示できる。これらキノン類の留出除去装置における
粗マレイン酸含有水溶液の滞留時間は5分以下、より好
ましくは3分以下、特には1分以下であることが好まし
い。上記温度範囲に加熱される時間が短いほど縮合物の
発生による閉塞が防げるからである。薄膜蒸発器や多段
式蒸発器等による留出の中でも、装置内での滞留時間を
短くできることから薄膜蒸発器を使用することが好まし
い。なお、薄膜蒸発器には回転式や流下式などがある
が、上記の滞留時間で処理できるものであればいずれの
方法でも用いることができる。
【0015】また、薄膜蒸発器によるキノン類の除去操
作では粗マレイン酸含有水溶液中の水分も同時に除去さ
れるが、水分およびキノン類除去後のマレイン酸濃度
は、90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、
特には80質量%以下であればよい。90質量%を越え
るとマレイン酸異性化反応が起こりやすくフマル酸の生
成量が多くなるため、次工程の共沸脱水蒸留装置内で閉
塞物が析出しやすくなる。上記キノン類を留出除去する
装置における好ましい温度および滞留時間は、フマル酸
の発生量を減少させる点からも好ましい条件となる。こ
の様に、本発明の製造方法にあっては、共沸蒸留によっ
て脱水する装置である共沸脱水塔とは別に、その前処理
工程としてキノン量を特定範囲に調整するための、キノ
ン類を留出などの操作により除去する処理装置が設置さ
れている工程を含むことが好ましい形態である。
【0016】キノン類を吸着処理によって除去してその
量を調整するには、活性炭、イオン交換樹脂、合成樹脂
製吸着剤、ゼオライトやアルミナなどによってキノン類
を吸着することができる。吸着剤による処理は、バッチ
式でも連続式でもよく、さらには流動床、固定床のいず
れの組み合わせでも使用できる。特に、吸着剤を連続式
固定床として使用すれば、メンテナンス性に優れるため
有利である。このような吸着剤としては、市販品を使用
することもでき、例えば、武田製薬製の商品名「粒状白
鷺C2C」や「WH2C」等の活性炭や、住友化学樹脂
製の商品名「Duolite XAD761」、三菱化学製の商品名
「SP850」や「SP207」等の合成樹脂製吸着
剤、三菱化学製の商品名「PA308」等の強塩基性陰
イオン交換樹脂等を使用することができる。また活性炭
としては、原料にヤシ殻を使用した種類のものがマレイ
ン酸水溶液中のキノン類、特にp−ベンゾキノンの吸着
に優れている。上記の活性炭はこの種類のものである。
他の合成樹脂、ゼオライトやアルミナもキノン類のうち
p−ベンゾキノンを十分に吸着する。粗マレイン酸含有
水溶液の液温が低い方が吸着効果に優れ、またマレイン
酸のフマル酸への異性化を防げるため、通常は、温度0
〜80℃、より好ましくは5〜70℃、特には10〜6
0℃で処理する。吸着時間や吸着剤の使用量は、含まれ
るキノン類の含有量に応じて適宜選択すればよい。
【0017】上記キノン類を除去してその量を調整する
方法は、共沸脱水工程で縮合反応による閉塞の発生を防
止できればよく、その除去方法は1種類であってもよい
し2種以上の方法を組み合わせたものであってもよい。
【0018】本発明では、キノン類の主成分であるベン
ゾキノンとハイドロキノンの合計濃度を特定範囲にした
後に共沸脱水処理を行なうが、該共沸脱水処理で使用す
る共沸溶媒としては、従来公知のものを使用することが
できる。このような共沸溶媒としては、o−キシレン、
サイメン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジクロ
ールベンゼン等の芳香族系化合物などを例示することが
できる。
【0019】更に、キノン類やアルデヒド類による縮合
物の発生を効果的に防止するために、親水性の有機溶媒
を共沸溶媒として使用することがより好ましい。キノン
類やアルデヒド類は水溶性であるため、水と親水性を有
する有機溶剤や共沸混合物を使用して共沸脱水を行なう
と、蒸留塔内における疎水性の共沸溶剤と水分との間で
生ずる油水分離状態を緩和でき、キノン類とアルデヒド
類との蒸留塔の水相内濃度が低下して両者による縮合反
応を抑制でき、同時にマレイン酸、フマル酸そしてマレ
イン酸や無水マレイン酸の重合体等の固体物の析出を抑
制できるからである。従って、キノン類の除去と相俟っ
て、相乗的に閉塞物の発生を防止することができる。
【0020】上記する親水性の有機溶媒としては、共沸
溶媒として使用できる目的物との反応性のないものであ
って、温度20℃の水に対する溶解度が0.1〜5質量
%、より好ましくは0.5〜4質量%、特に好ましくは
1〜3質量%の有機溶媒である。水に対する溶解度が
0.1質量%を下回ると、上記した油水分離状態を発生
しやすくなり、その一方5質量%を越えると、油水分離
状態の改善効果はあるが、共沸脱水蒸留で水とともに塔
頂に留出した有機溶媒を冷却後に水と分液して回収利用
する場合に、水相へのロス量が大きくなり、分液回収量
が減少するために不利となる。なお、溶解度は圧力によ
っても変動するが、本発明における溶解度は、常圧(1
013hPa)での値とする。
【0021】また更に、本発明で使用する親水性の有機
溶媒は、温度20℃(常圧)におけるマレイン酸の溶解
度が0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以
上、特には1.0質量%以上であることが好ましい。溶
解度が高いほど固形析出の防止の効果が大きいからであ
る。有機溶媒がマレイン酸に対する親和性を有する場合
には共沸脱水工程におけるマレイン酸やフマル酸の析出
を防止することができ、同時にフマル酸への異性化並び
に、マレイン酸や無水マレイン酸の重合体等の水溶性の
固体物の析出をも防止できるからである。
【0022】本発明で使用する親水性の有機溶媒は、更
に、圧力1013hPaにおける沸点が80〜190
℃、より好ましくは100〜170℃、特には110〜
160℃の範囲のものであることが好ましい。沸点が1
90℃より高いと無水マレイン酸の沸点と近くなり、有
機溶媒とともに留去する割合が高くなるため好ましくな
い。また、沸点が80℃より低いと蒸留塔内の脱水反応
温度が低下して脱水速度が低下し、有利に製造ができな
くなるからである。
【0023】このような親水性の有機溶媒としては、メ
チルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、3−ペ
ンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、2−へプ
タノン等のケトン類、酢酸アミル、酢酸アリル等のエス
テル類、メチルシクロヘキサノール、2−エチル−1−
ヘキサノール等のアルコール類がある。本発明では、特
にメチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、2
−ヘキサノン等のケトン類や酢酸アリルなどのエステル
類を使用することが好ましく、特にはケトン類がマレイ
ン酸の溶解度に優れる点で好ましい。上記条件を満足し
て無水マレイン酸の製造工程における閉塞物の発生防止
効果や溶解性に優れ、かつ目的物であるマレイン酸や無
水マレイン酸との反応性がないからである。上記したケ
トン類やエステル類などの有機溶剤は水との相溶性を有
し、共沸溶媒に対するマレイン酸、フマル酸そしてマレ
イン酸や無水マレイン酸重合体等の溶解度が増加し、析
出問題を解決することができる点で好ましい。上記条件
を満足し、無水マレイン酸の製造工程における閉塞物の
発生防止効果や溶解性に優れ、かつ目的物であるマレイ
ン酸や無水マレイン酸との反応性がないからである。ま
た上記有機溶媒の1種を単独で使用するほか、2種以上
を併用することができる。その有機溶媒の混合物の特性
として少なくとも温度20℃の水に対する溶解度が0.
1〜5質量%の有機溶媒であれば好適に使用できる。以
上の方法を用いることにより、内部構造が複雑であるた
め閉塞が起こった場合には、洗浄作業が煩雑で困難な共
沸脱水蒸留塔での、閉塞物の付着を防止し、長期間の装
置の稼動を可能にすることができる。
【0024】なお、従来公知のo−キシレン、サイメ
ン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ジクロールベ
ンゼン等を使用してもよい。このような共沸溶媒の使用
量は使用する有機溶媒や共沸混合物の組成比によっても
異なるが、少なくとも粗マレイン酸水溶液中に含まれる
水分および無水化によって発生する水分との理論上の共
沸組成に必要な有機溶媒量比であればよい。あまりに過
剰量であると熱消費量が多くなり経済的に不利となり好
ましくない。ただし、すみやかに共沸脱水塔内から水を
留出させるにはやや過剰量比で行うことが好ましい。ま
た、もちろん水に対する共沸溶媒の必要量比の少ない有
機溶媒を選択すると熱消費量が少なくなり工業的に有利
となる。
【0025】以下、本発明の無水マレイン酸の製造方法
の好ましい態様の一例を、図1を用いて説明する。な
お、図1において、1は反応ガス、10は無水マレイン
酸捕集器、11は粗製無水マレイン酸、20は水洗捕集
器、21はリサイクル捕集水、30は薄膜蒸発器などの
キノン類除去装置、40は共沸脱水塔、50は油水分離
槽、51は廃水、60は高沸点分離装置、61は残渣、
70は溶剤分離塔、71は共沸溶媒、80は精製塔、8
1は精製無水マレイン酸、90は溶媒回収塔である。
【0026】まず、図示しない接触気相酸化反応器に原
料ガスを供給する。供給原料ガスとしては、接触気相酸
化反応によって生成物としてマレイン酸を生ずるもので
あれば特に制限はなく、無水マレイン酸を製造するため
に使用されるベンゼンやブタン等の公知の炭化水素を供
給原料として用いることができる。本発明では、ベンゼ
ンを接触気相酸化反応の原料とすることが好ましい。原
料種の相違によって副生物も相違し、特にベンゼンを原
料とする場合には縮合物の原因物質であるキノン類やア
ルデヒド類の副生量が多いために効果的である。
【0027】反応器に使用する触媒についても、マレイ
ン酸または無水マレイン酸を生成するものであれば公知
の触媒を使用でき、バナジウムを主成分として含有する
酸化触媒を用いることができる。このような触媒として
は、特開平5−261292号公報、特開平5−262
754号公報、特開平5−262755号公報、特開平
6−145160号公報に記載される触媒が例示でき
る。
【0028】接触気相酸化反応は文字通り酸化反応であ
るから、原料ガスと共に分子状酸素含有ガスを供給す
る。このような分子状酸素含有ガスとしては、通常空気
が使用されるが、不活性ガスで希釈された空気、酸素を
加えて富化された空気等を使用することもできる。
【0029】反応条件は従来公知の方法を採用できる
が、使用する酸化触媒の種類や供給原料濃度、分子状酸
素含有ガス濃度等によって適宜変更してもよい。例え
ば、バナジウム−リン系触媒を用いて、温度を300〜
600℃で反応させる。接触気相酸化反応器から排出さ
れる反応ガスには、無水マレイン酸と共に副生する反応
成分や原料ガス自体に含有されていた不純物がそのまま
の形状で含まれ更に該不純物や原料化合物の酸化物であ
る低沸点物質や高沸点物質、さらに非凝縮性ガスが含ま
れている。なお、本発明において低沸点物質とは、標準
状態においてマレイン酸よりも沸点が低い物質をいい、
蟻酸、酢酸、アクリル酸、ホルムアルデヒド、アセトア
ルデヒド、p−ベンゾキノン、ハイドロキノン、水等が
例示できる。また、高沸点物質とは、標準状態において
マレイン酸よりも沸点が高い物質をいい、無水フタル酸
やフマル酸などが例示できる。更に、非凝縮性ガスと
は、標準状態で気体の物質をいい、具体的には、窒素、
酸素、空気、プロピレン、プロパン、一酸化炭素、二酸
化炭素等が例示できる。なお、上記の標準状態は、常圧
1013hPa(1気圧)、温度0℃の状態のことであ
る。
【0030】ベンゼンの接触気相酸化反応によって得ら
れる反応ガスの組成は、一般に、無水マレイン酸(以
下、反応ガスの組成における「無水マレイン酸」には、
無水マレイン酸に換算したマレイン酸を含むものとす
る。)2〜5質量%、水蒸気を除く低沸点物質として、
酢酸、アルデヒド等が0.01〜0.1質量%、キノン
類が0.005〜0.05質量%、高沸点物質として無
水フタル酸等が0.005〜0.03質量%、残りは非
凝縮性ガスと水蒸気である。
【0031】次に、反応器から排出された反応ガスを無
水マレイン酸捕集器(10)に供給する。無水マレイン
酸捕集器(10)では、無水マレイン酸の融点以上、か
つ沸点以下、より好ましくは55〜120℃、特に好ま
しくは60〜100℃で冷却し、無水マレイン酸(1
1)の一部を液体で捕集する。共沸脱水塔内で発生する
閉塞物の一種であるフマル酸を溶解するためである。な
お、無水マレイン酸の蒸気圧残分があるためこの冷却後
の反応ガス(1)にも無水マレイン酸が多量に存在す
る。このため、このような無水マレイン酸の冷却による
捕集工程を行った後には、該工程の排出ガスを水洗捕集
器(20)に供給し、多量に存在する無水マレイン酸を
水溶液中に捕集し粗マレイン酸含有水溶液として回収す
る。
【0032】水洗捕集器(20)の捕集条件は、従来公
知の方法を採用できる。捕集液としては水を使用するこ
とができるが、マレイン酸の濃縮、脱水工程で発生した
水または水溶液の一部を捕集液の一部として使用するこ
ともできる。塔頂温度は、無水マレイン酸の捕集率を向
上させるためには低温であることが好ましく、水洗捕集
器(20)に付属させた冷却器(図示せず)を使用して
捕集塔塔頂温度を10〜90℃、より好ましくは20〜
60℃とする。10℃を下回ると、マレイン酸の溶解度
が下がり結晶が析出し、水洗捕集器(20)の圧力損失
の増加や液の分散性の悪化による捕集塔(20)の段効
率の低下を招く。その上、過量の冷却エネルギーが必要
となるからである。一方、90℃を越えると無水マレイ
ン酸の捕集率が低下するからである。
【0033】該反応ガスは、水洗捕集器(20)では、
塔底液のマレイン酸濃度が10〜80質量%、より好ま
しくは20〜60質量%になるように捕集液(21)を
捕集塔の上部から塔内に導入して無水マレイン酸含有ガ
スと向流接触させて無水マレイン酸を捕集する。マレイ
ン酸濃度が80質量%を上回るとマレイン酸の析出防止
のために捕集温度を90℃以上に上げる必要があり、捕
集率が低下し、その一方10質量%を下回ると粗マレイ
ン酸含有水溶液の濃縮・脱水工程で留出させる水が多く
なり、不経済である。
【0034】なお、図1と相違して、無水マレイン酸捕
集器(10)による液体状態での無水マレイン酸の捕集
を行わずに、該反応ガスの全てを水洗捕集器(20)に
供給して、粗マレイン酸含有水溶液として捕集してもよ
い。
【0035】本発明では、次いで水洗捕集器(20)か
ら得た粗マレイン酸含有水溶液を薄膜蒸発器や吸着剤に
よる処理槽などのキノン類除去装置(30)に導入しキ
ノン類の量を特定範囲に調整する。この際、該粗マレイ
ン酸含有水溶液は、ベンゼンを接触気相酸化して得た反
応生成ガスを水捕集したものであることが閉塞防止効果
に優れる点で効果的であり好ましい。なお、キノン除去
装置(30)である薄膜蒸発器における留出条件として
は、粗マレイン酸含有水溶液の供給速度や含まれるキノ
ン類の濃度によって異なるが、温度40〜130℃、圧
力700〜200hPa、滞留時間5分以下で処理する
ことが好ましい。特に、滞留時間が長くなると、該装置
内で縮合物が発生する場合がある。
【0036】次いで、薄膜蒸発器などのキノン類除去装
置(30)の缶出液(p−ベンゾキノンとハイドロキノ
ンの合計含有量を0.01〜200質量ppmに処理し
た粗マレイン酸含有水溶液)を共沸脱水塔(40)に供
給する。
【0037】このような共沸脱水塔(40)としては、
無堰棚段塔、有堰棚段塔、充填塔、濡れ壁塔、スプレー
塔などの公知の塔を用いることができる。かかる共沸脱
水塔(40)は、無堰棚段塔、有堰棚段塔、または充填
塔であれば、閉塞物発生の抑制効果に優れる点で好まし
い。その一方、理論段数が3段以上、より好ましくは4
〜20段、特には5〜15段の蒸留塔を用いることが好
ましい。3段未満ではマレイン酸と共沸溶媒との接触時
間が不足し、脱水率の低下をまねく。また、無水マレイ
ン酸の塔頂への留出が多くなり、無水マレイン酸のロス
が増大することになる。このような弊害が生じない程度
に必要十分な段数であればよく、あまり段数が多いと設
備費が高くなり、不経済である。
【0038】使用する共沸溶媒としては少なくとも温度
20℃の水に対する溶解度が0.1〜5質量%の有機溶
媒を共沸溶媒として使用することが好ましい。このよう
な有機溶媒としては、上記した各種の有機溶媒があり、
特にメチルイソブチルケトン(MIBKと略記する。)
を使用することが好ましい。また、共沸脱水条件は使用
する共沸溶媒によって異なるため、例えば、共沸溶媒と
してMIBKを使用する場合には、該共沸脱水塔(4
0)には、粗マレイン酸含有水溶液1質量部に対して3
〜5質量部のMIBKを供給する。一般には、塔頂圧力
(絶対圧)100〜2000hPa、より好ましくは3
00〜1500hPaとする。100hPaを下回ると
真空装置が大型化するばかりでなく、塔内温度が低くな
り、マレイン酸やフマル酸が結晶化して蒸留できない場
合がある。その一方2000hPaを越えると塔底温度
が高くなりリボイラーの大型化の他に重合物が発生し易
くなるばかりでなく、高耐圧装置にする必要が生じ不経
済である。また、塔頂温度は50〜150℃,より好ま
しくは60〜130℃である。50℃を下回るとコンデ
ンサンーが大型となり、その一方150℃を越えると塔
内でマレイン酸の重合が発生しやすくなるばかりでなく
無水マレイン酸の塔頂への留出が多くなり、無水マレイ
ン酸のロスが増大することになる。なお、共沸脱水に用
いる共沸溶剤としては、無水マレイン酸の製造工程で回
収した共沸溶媒(71)を再使用するものであってもよ
い。また、図1に示すように共沸溶剤は、共沸脱水塔
(40)に直接供給する場合に限られず、供給原料に混
在させて共沸脱水塔(40)内に供給してもよい。
【0039】塔底温度は130〜200℃、より好まし
くは150〜195℃である。130℃を下回るとマレ
イン酸の脱水反応が遅くなり、マレイン酸の脱水不充分
となり、無水マレイン酸の収率低下につながる。一方、
200℃を超えると無水マレイン酸の沸点に近くなり留
出が起こり好ましくなく、また分解及び重合が発生しや
すくなるからである。このような共沸脱水条件とするた
めに、共沸溶剤の種類や添加量、粗マレイン酸含有水溶
液中の水濃度、原料供給段の変更、塔頂に付属させるコ
ンデンサーの還流比、塔段数、温度、圧力、その他の条
件を調整すればよい。
【0040】本発明では、共沸脱水の際に共沸脱水塔
(40)の塔頂部に油水分離槽(50)を付属させ、塔
頂留出液の共沸溶剤を還流させ、その回収水の一部を無
水マレイン酸の捕集液として使用することが出来る。ま
た共沸溶媒に水に対して溶解性を有する有機溶媒を使用
した場合には、塔頂留出後の水相側には有機溶媒が含ま
れている。より経済的なプロセスとするためには、この
有機溶媒を共沸脱水蒸留塔へ回収して使用することが有
利な方法であり、塔頂留出液の水相は溶媒回収塔(9
0)に供給する。
【0041】共沸脱水塔(40)の塔底液は高沸点分離
装置(60)に供給して高沸点物質を分離した後に後工
程の精製を行う方法が装置の閉塞を防止することができ
るため有利な方法である。例えば、接触気相酸化反応に
よって副生された無水フタル酸、フマル酸や高沸点の重
合物や縮合物等が残渣(61)として排出される。
【0042】ここで高沸点分離装置(60)としては、
連続式でもバッチ式でもよく従来公知の棚段塔、充填
塔、濡れ壁塔、スプレー塔などの公知の塔に加え、バッ
チ式の回転式滞留槽型蒸発器や薄膜蒸発器を用いること
ができる。かかる高沸点分離装置(60)としては、薄
膜蒸発器が好ましい。なお、図1に示すように、無水マ
レイン酸(11)を共沸脱水塔(40)の塔底液と共に
高沸点分離装置(60)に供給して精製をおこなっても
よい。
【0043】次いで、高沸点分離装置から排出されるガ
ス成分にはマレイン酸のほかに、共沸溶剤が残存する場
合には、次いで溶剤分離塔(70)に供給して共沸溶剤
を分離する。また、共沸脱水蒸留で共沸溶剤をボトムに
残存しないかごく微量となるような運転条件とした場合
には、この工程を省略することもできる。
【0044】なお、高沸点分離装置(60)による高沸
点物質の除去工程と溶剤分離塔(70)による共沸溶剤
の除去工程とはいずれを先に行ってもよい。
【0045】従来は、共沸脱水塔(40)の塔内および
塔底にゲル状物質が付着する。具体的には、共沸脱水塔
の塔内の内壁や棚段、あるいは、棚段部材の孔等に付着
する。しかもこの付着物は水洗によっても容易に除去で
きず、このため無水マレイン酸の製造工程において、共
沸脱水塔やその周辺設備では定期的な洗浄やアルカリ洗
浄が必要であった。しかしながら、本発明では共沸脱水
工程の前にキノン類の除去工程を行うことで不純物によ
って発生するゲル状の縮合物の付着などによる閉塞物の
発生を抑制することができ、プラントの長期稼動を達成
できる。
【0046】本発明では、このように共沸溶剤を除去
し、および高沸点物質を除去した無水マレイン酸を更に
精製塔(80)に供給して精製し、無水マレイン酸(8
1)を製品としてもよい。
【0047】
【実施例】以下、本発明の実施例により具体的に説明す
る。
【0048】(実施例1)熱経時テストによる不純物組
成と生成析出物量を確認した。まず、精製マレイン酸4
2質量%水溶液にホルムアルデヒド、p−ベンゾキノ
ン、ハイドロキノンを表1に示したように種々濃度を変
化させた溶液1,2,3を作製した。各溶液をガラス製
500mlフラスコに200ml入れ、100℃で2時
間オイルバス中で加熱攪拌した。冷却後、1μmメンブ
ランフィルターで吸引ろ過した。析出固形分の付着した
メンブランフィルターを50℃で一晩で乾燥させ、その
乾燥固形分の質量から仕込んだマレイン酸水溶液に対す
る熱経時後析出物の生成量(質量ppm)を算出した。
結果を表1に示す。
【0049】表1から明らかなように、ホルムアルデヒ
ドの量が同じであっても、p−ベンゾキノンまたはハイ
ドロキノンのキノン含有量の減少に伴ってマレイン酸縮
合物である固形の析出物量が少なくなった。
【0050】
【表1】
【0051】(実施例2)図1に示す工程に従って無水
マレイン酸を製造した。まず、ベンゼンの接触気相酸化
反応により排出された無水マレイン酸を含む反応ガス
を、無水マレイン酸捕集器(10)の出口ガス温度を6
0℃にコントロールして粗製無水マレイン酸(11)を
捕集した。その後、この無水マレイン酸捕集器(10)
の出口ガスを水洗捕集器(20)に導入した。ついで、
水洗捕集器(20)で該ガスを水で洗浄しついで、粗マ
レイン酸含有水溶液を得た。該溶液のマレイン酸濃度は
42質量%であり、水分68質量%、ホルムアルデヒド
3754質量ppm、p−ベンゾキノン186質量pp
m、ハイドロキノン67質量ppmであった。
【0052】次いで、該粗マレイン酸含有水溶液を、回
転式薄膜蒸発器(回転羽根はテフロン(登録商標)製、
容器はガラス製)に供給し、内圧560hPa、オイル
ジャケット温度130℃、内部液温約100℃装置内滞
留時間を約1分間でキノン除去処理を行なった。留出率
41.4質量%とすることで、ボトム液として得られた
マレイン酸水溶液濃度は72.8質量%となった。この
液を再び純水で希釈してマレイン酸濃度42質量%とし
た。この希釈液を分析すると、この濃縮操作によって、
ホルムアルデヒド259質量ppm、p−ベンゾキノン
1質量ppm、ハイドロキノン47質量ppmにそれぞ
れ減少したことがわかった。
【0053】このキノン類の減少した試料を用いて、実
施例1と同様に加熱処理し、析出物の生成量を算出し
た。結果を表2に示す。
【0054】(実施例3)実施例2で得た粗マレイン酸
含有水溶液を使用し、キノン類を減少させる処理とし
て、粉末活性炭(武田製薬製、商品名「粒状白鷺C2
C」)をキノンの吸着剤として用いた。まず、200m
lガラス製フラスコに粗マレイン酸含有水溶液80gを
入れ、常圧下、水浴で加熱し60℃、400rpmで撹
拌した。ここに、上記吸着剤濃度3質量%となるように
添加し、室温で30分撹拌した。このキノン類の減少し
た試料を用いて、実施例1と同様に加熱処理し、析出物
の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0055】表2から明らかなように、吸着処理によっ
てもキノン類を減少することができ、最終的にマレイン
酸縮合物である熱経時後テストでの析出物量が減少し
た。
【0056】(実施例4)実施例2で得た粗マレイン酸
含有水溶液を使用し、キノン類を減少させる処理とし
て、合成樹脂吸着剤(住友化学樹脂製、商品名「Duolit
e XAD761」)をキノンの吸着剤として用いた。まず、2
00mlガラス製フラスコに粗マレイン酸含有水溶液8
0gを入れ、常圧下、水浴で加熱し60℃、400rp
mで撹拌した。ここに、上記吸着剤濃度33質量%とな
るように添加し、室温で60分撹拌した。このキノン類
の減少した試料を用いて、実施例1と同様に加熱処理
し、析出物の生成量を算出した。結果を表2に示す。
【0057】表2から明らかなように、吸着処理によっ
てもキノン類を減少することができ、最終的にマレイン
酸縮合物である熱経時後テストでの析出物量が減少し
た。
【0058】(比較例1)実施例2と同様にして粗マレ
イン酸含有水溶液を得たが、回転式薄膜蒸発器によるキ
ノン減少処理を行なわなかった。その後、実施例1と同
様に加熱処理し、析出物の生成量を算出した。結果を表
2に示す。
【0059】実施例2と比較例1とを比較すると、ベン
ゾキノンとハイドロキノンの合計濃度を50質量ppm
以下に減少させるとマレイン酸縮合物である熱経時後テ
ストでの析出物量が約1/3に減少した。
【0060】
【表2】
【0061】(実施例5)実施例2で得た粗製マレイン
酸水溶液42質量%を、回転式薄膜蒸発器による処理の
後該缶出液のマレイン酸濃度を42質量%に純水で希釈
調製した処理液を用いて、図1に示す工程に従って共沸
脱水溶剤としてo−キシレンを塔頂から供給して共沸脱
水蒸留を行なった。
【0062】共沸脱水塔(40)として、縮合部32φ
有堰5段、回収部50φ有堰10段の蒸留塔を使用し
た。塔底から数えて第10段目から粗マレイン酸含有水
溶液を供給した。共沸溶媒は、粗マレイン酸含有水溶液
に含まれる水分と無水化によって発生する水分に対し
2.5質量倍を塔頂から供給し、常圧、塔底温度170
℃で8時間共沸脱水蒸留を行なった。
【0063】この結果、共沸脱水塔の第10〜13段目
に黒色汚れがわずかに存在した程度であり、縮合物の析
出量を減少させることができた。処理工程および結果を
表3に示す。
【0064】(実施例6)実施例3で使用した吸着剤と
同じものを3質量%添加しこのキノン除去処理による該
処理液を用いて、実施例4と同じ条件で共沸脱水蒸留を
行なった。処理工程および結果を表3に示す。
【0065】(実施例7)実施例2で得た回転式薄膜蒸
発器による処理の後、該缶出液のマレイン酸濃度を42
質量%に純水で希釈調製した処理液を用いて、図1に示
す工程に従って共沸脱水溶剤としてメチルイソブチルケ
トンを塔頂から供給して共沸脱水蒸留を行なった。
【0066】共沸脱水塔(40)として、縮合部32φ
有堰5段、回収部50φ有堰10段の蒸留塔を使用し
た。共沸溶媒を粗マレイン酸含有水溶液に含まれる水分
と無水化によって発生する水分に対し、3.5質量倍を
塔頂から供給した以外は、実施例4と同じ条件で共沸脱
水蒸留を行なった。結果を表3に示す。使用する共沸溶
媒が親水性およびマレイン酸に対して親和性を有する場
合には、実施例4で残存していた共沸脱水蒸留塔内の少
量の黒色汚れも除去できる。
【0067】(比較例2)実施例2で得た粗製マレイン
酸水溶液42質量%を用い、回転式薄膜蒸発器による処
理およびマレイン酸濃度の42質量%への希釈処理を行
なわないこと以外は実施例5と同様にして共沸脱水蒸留
を行なった。この結果、比較例2では蒸留塔の6〜14
段目に縮合物の析出が多量に生成して黒色に汚れ、詰ま
りが発生した。処理工程および結果を表3に示す。
【0068】実施例5、6と比較例2との比較から、表
3に示すように、共沸脱水蒸留を行なう前にキノン類の
除去処理を行なうと共沸脱水塔における析出物の発生を
効果的に防止することができた。
【0069】
【表3】
【0070】
【発明の効果】無水マレイン酸合成反応で生成するキノ
ン類の主成分であるp−ベンゾキノンとハイドロキノン
の合計含有量を一定量以下に低減させる調整工程を行う
ことで精製工程中でのアルデヒド類との縮合物の生成反
応を抑えることができる。このため従来問題であった精
製装置の閉塞を著しく少なくでき、連続稼動時間をより
長くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明における無水マレイン酸の製
造方法の好ましい製造方法の工程図である。
【符号の説明】
1…反応ガス、 10…無水マレイン酸捕集器、 11…粗製無水マレイン酸、 20…水洗捕集器、 21…捕集液、 30…薄膜蒸発器などのキノン類除去装置、 40…共沸脱水塔、 50…油水分離槽、 51…廃水、 60…高沸点分離装置、 61…残渣、 70…溶剤分離塔、 71…共沸溶媒、 80…精製塔、 81…無水マレイン酸、 90…溶媒回収塔。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石井 良武 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の 1 株式会社日本触媒内 (72)発明者 山田 創一 兵庫県姫路市網干区興浜字西沖992番地の 1 株式会社日本触媒内 Fターム(参考) 4C037 KA01

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粗マレイン酸含有水溶液を共沸蒸留によ
    って脱水する工程を含む無水マレイン酸の製造方法にお
    いて、 粗マレイン酸含有水溶液中に含まれるp−ベンゾキノン
    とハイドロキノンの合計含有量を0.01〜200質量
    ppmの範囲にするキノン量調整工程を行なった後に、
    該共沸蒸留によって脱水する工程を行なうものである、
    無水マレイン酸の製造方法。
  2. 【請求項2】 該キノン量調整工程が、温度40〜13
    0℃で該粗マレイン酸含有水溶液を蒸留するものであ
    る、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 該キノン量調整工程が、吸着剤を用いて
    p−ベンゾキノンとハイドロキノンを吸着する工程を含
    むものである、請求項1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 粗マレイン酸含有水溶液が、ベンゼンを
    接触気相酸化して得た反応生成ガスを水捕集したもので
    ある請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018524297A (ja) * 2015-06-12 2018-08-30 テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ 化学化合物を製造する方法および装置、化学化合物ならびにその使用

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2018524297A (ja) * 2015-06-12 2018-08-30 テクノロギアン トゥトキムスケスクス ヴェーテーテー オイ 化学化合物を製造する方法および装置、化学化合物ならびにその使用

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