【発明の詳細な説明】
オフガスの脱硫方法
発明の詳細な説明
本発明は水蒸気含量の高いオフガスの脱硫の方法に関する。さらに特定すれば
、本発明は硫黄回収プラントからのオフガスの全硫黄含量を低減する方法からな
る。
硫化水素(H2S)から元素状硫黄を製造する方法で、硫化水素を酸素または
空気のような酸素含有ガスで部分酸化し、硫化水素から生成した二酸化硫黄(S
O2)を、触媒の存在下で、残りの硫化水素と反応させる方法は、クラウス(CL
AUS)法プロセスとして知られている。このプロセスは、製油所や天然ガスか
ら回収された硫化水素の処理工程でしばしば採用されている。従来からのクラウ
ス法プラントは、バーナー燃焼室、いわゆるサーマルステージ(thermal
stage)と、それに続く数基(通常は2基か3基)の触媒を充填した反応
器で構成されている。このうしろの工程がいわゆる、触媒工程である。燃焼室で
は、供給されるH2Sに富んだガス流を一定量の空気を用いて温度約1200℃
で燃焼させる。空気の量は、H2Sの1/3が次式にしたがって燃焼してSO2に
なる量に設定する。
2H2S + 3O2 → 2H2O + 2SO2 …(1)
H2Sを部分燃焼した後で、未反応のH2S(すなわち、仕込量の約2/3)と
生成したSO2が、クラウス反応によって、そのかなりの部分がさらに反応する
。
4H2S + 2SO2 ←→ 4H2O + 3S2 …(2)
このようにして、サーマルステージで、H2Sの約60%が元素状硫黄に転化
される。燃焼室から出るガスは硫黄凝縮器で約160℃まで冷却して、生成した
硫黄を凝縮し、凝縮物はサイホンを経由して硫黄タンクに流れ込む。凝縮されな
かったガス中ではH2SとSO2のモル比は依然として2対1であるが、これを次
に約250℃まで加熱してから第一段の触媒反応器に通す。ここでは、再びの平衡が成立する。
第一段触媒反応器の出口ガスは次に硫黄凝縮器で再び冷却され、生成した液状
硫黄を回収してから、残りのガスを再加熱し、第二段触媒反応器に送られる。
触媒反応段の段数に依存するが、従来のクラウスプラントにおける硫黄回収率
は94〜97%である。したがって、かなりの量のH2SとSO2がまだ残ってい
る。
クラウス法での限界に影響する重大な現象のひとつとして、H2Sの硫黄への
転化が進むほど、プロセスガス中の水分含量が増加するということがある。
クラウス反応は、この水蒸気含量の増加と、同時にH2SおよびSO2の濃度の
減少のために熱力学的に限界ができ、その結果クラウス反応(2)の平衡が左に
移る。できるだけこの限界を避けるためには、プロセスガス中の水蒸気を凝縮す
ることが好ましい。しかし、水の露点は硫黄の凝固点よりは、はるかに低いので
、クラウス法での水蒸気の凝縮は、硫黄の固化による閉塞とか亜硫酸の生成によ
る腐蝕など、解決困難な問題をもたらす。
従来は、クラウス法のオフガスをアフターバーナーで燃焼させていた。しかし
、環境に関する要求がどんどん厳しくなっていく状況下では、この方法はもはや
許されない。
こういう理由から、クラウス法の改良と、クラウス法でのオフガスの除去プロ
して知られているもので、クラウス法では除去率が94〜97%であったものが
、
the answer to Claus plant limitations",publ.38th Canadian Chem.Eng.C
onference,October 25th,1988,Edmonton,Alberta,Canadaに記載されている
。
器における反応(2)は、H2Sを過剰にして運転され、最後のクラウス反応器
か
らの出口ガスでは、H2S含量が約1体積%で、SO2含量が約0.02体積%で
ある。続く反応段階では、特定の選択酸化触媒の存在下で、H2Sが次式にした
がって選択的に元素状硫黄に酸化される。
これらの触媒については、たとえば、欧州特許出願第0242920号および
第0409353号に記載されている。
すでに述べたように、環境に関する要求がどんどん厳しくなっているので、硫
黄回収プラントからのオフガスの一層の脱硫のために、クラウス法の改良のみな
らず、クラウス法でのテールガス処理プロセスの開発も進められるようになって
きている。
たいていのクラウス法テールガス処理プロセスでは、水素化反応器あるいは還
元反応器とも呼ばれるものを使用していて、そこで、SO2、硫化カルボニル(
COS)、二硫化炭素(CS2)、硫黄蒸気、および同伴してくる硫黄液滴(硫
黄ミスト)を、水素(H2)や還元性ガス(たとえば、水素と一酸化炭素を含む
)を使用して、硫化水素に転化している。
ついで硫化水素は溶液に吸収させるか、気相で触媒を使って元素状硫黄に転化
させて除去する。
クラウス法テールガスを燃焼させた後に、煙突ガスからSO2を吸収するよう
なテールガス処理プロセスはわずかしかない。これらのプロセスについては、こ
れ以上触れない。水素化をしてから生成するH2Sを溶液で吸収するような、ク
ラウス法テールガス処理プロセスの中で最もよく知られているのは、SCOT、
BSR−Stretford、BSR−MDEA、Trencor−M、および
Sulftenの各プロセスである。これらのプロセスについては、B.G.Goar
:"Tail Gas Clean-Up Processes,a review"(the 33rd Annual Gas Condition
ing Conference,Norman,Oklahoma,March 7-9,1983およびHydrocarbon Proce
ssing,February 1986)に記載されている。
テールガスの脱硫で、最も有名で、今のところ最も有効だとされているプロセ
スは、SCOTプロセスで、これはMaddox"Gas and liquid sweetening"(1977)
に記載されている。SCOTプロセスでは、硫黄の回収率が99.8〜99.9
%に達する。
水素化の後で、生成するH2Sを気相で触媒を使って転化させるようなテール
ガス処理プロセスについては、ほんのいくつかのプロセスが建設され、知られて
いるだけであるが、それらには、MODOP、CLINSULF、BSR−Se
lectox、Sulfreen、SUPERCLAUS−99.5などである
。これらのプロセスについては、上記のB.G.Goarの発表、C&EN誌の
1987年5月11日号、Sulphur誌の1995年1月/2月号、および
ドイツ国特許出願第2648190号などに記載されている。
これらクラウス法テールガス処理プロセスのすべてで、水素化の後で、クラウ
ス反応(2)および選択的酸化反応(3)で生成した水は凝縮させている。水が
存在すると、次の、吸収液やH2Sの元素状硫黄への触媒転化などによるH2S除
去工程で悪影響がでるからである。上記のプロセスで使用される吸収液は、ジイ
ソプロパノールアミン(DIPA)やメチルジエタノールアミン(MDEA)な
どの2級または3級アルカノールアミン溶液または複合レドックス溶液などであ
る。水を除去しておかないと、吸収系全体が乱れてしまう。すなわち、あまりに
も高温になって、吸収が全然あるいは極めてわずかしか起きないか、吸収工程で
水が吸収液の中で凝縮して循環している吸収液が徐々に希釈され、吸収が起きな
くなってしまうのである。
触媒を用いた気相でのH2S転化では、水を除かないと、クラウス反応(2)
によるH2Sの熱力学的転化が著しく低下し、状況はクラウス法の最後の反応器
のそれと同程度となり、全硫黄回収率を99.5%以上にすることは不可能とな
る。
SUPERCLAUSプロセスで用いられているような選択的酸化触媒を使え
ばより高い効率が得られるが、SUPERCLAUS−99.5プロセスでも同
じだが、実際には99.5%以上の硫黄回収率を達成するのは不可能なことがわ
かった。
一般論として、水素化の後で気相中のH2Sを触媒を使用して元素状の硫黄に
転
化させようというクラウス法テールガス処理プロセスの欠点は、全硫黄の99.
90%以上を回収したいという最近の要求を満たし得ないことである、と言える
。
たとえば、SCOTプロセスのように、水素化に続いて水を凝集させ、それか
らH2Sを吸収液に吸収させようというクラウス法テールガス処理プロセスは、
99.90%以上の全硫黄回収率を達成できるが、設備コストやエネルギーコス
トが恐ろしく高くなるという大きな欠点がある。たとえばSUPERSCOTや
LS−SCOTのような最新式のSCOTプロセスでは、全硫黄回収率を99.
95%まで上げられるが、さらに一層コスト高になる。
これらのプロセスにはさらに欠点があって、酸性の硫化水素含有凝縮物を排出
せねばならず、たとえばサワー・ウォーター・ストリッパー(Sour Water Stripp
er)を使って処理する必要があり、そこで溶解していた酸性ガスが蒸気とともに
分離される。これがまた、コストを上げる。
環境に関する要求は、クラウス法やクラウス法テールガス処理プロセスの開発
に影響を及ぼすだけでなく、これもまた煙道ガスプロセスであるが、発電所の煙
突ガス処理プロセスの開発にも影響してくる。「煙道ガス脱硫」(FGD)とし
て多くのプロセスが知られているが、それらでは、SO2を石灰乳を使ってセッ
コウ(Ca2SO4)にしている。セッコウが過剰に生産されるので、SO2を元
素状硫黄に転化できるようなプロセスが求められてきた。Gas Purification,fo
urth edition 1985,A.L.Kohl,F.C.Riesenfeld,pp.351-356に記載されてい
る、Wellman Lordプロセスがその例で、そこでは、SO2は最終的
に濃縮ガスとして取り出される。そのSO2の2/3を水素化工程でH2Sに転化
し、そのH2SとSO2ガスをクラウス法プロセスで元素状硫黄に転化することが
できる。このプロセスによる方法もコストが高い。この分野におけるもう一つの
進歩は、煙道ガスの生物的な脱硫である。
煙道ガスの生物学的脱硫は、Lucht誌、No.4(1994年12月)に
述べられている。そこに記されているBIO−FGDプロセスは、発電所の煙突
ガスからSO2を除去するもので、吸収装置を持ち、そこでSO2は次式にしたが
って、希釈水酸化ナトリウム溶液に溶解される。
SO2 + NaOH → NaHSO3 …(4)
この溶液は、続いて、2段の生物学的反応器で処理される。
最初の生物学的処理段階は、嫌気性反応器の中で、生成した重亜硫酸ナトリウ
ム(NaHSO3)を電子供与体を用いて硫化ナトリウム(NaHS)に転化す
る。
NaHSO3 + 3H2 → NaHS + 3H2O …(5)
好ましい電子供与体としては、たとえば、水素、エタノール、水素およびグル
コースがある。第2の生物学的処理段階は、好気性反応器の中で、硫化ナトリウ
ムを元素状硫黄に酸化して、分離する。
石炭あるいは燃料油を燃焼させた煙突ガスには、少量の水蒸気が含まれている
。水含量は通常2〜15体積%で、これは水の露点にして20〜55℃に相当す
る。
従来はアフターバーナーで燃焼させ、含有している硫黄分をすべてSO2にし
ていたクラウス法オフガスの脱硫に、このBIO−FGDプロセスを適用しよう
とすると、クラウス法オフガスの水蒸気含量が高いので、ガスを冷却しなければ
ならない。これは水酸化ナトリウム溶液中で水蒸気が凝縮するのを防ぐためであ
って、凝縮が起きると水酸化ナトリウム溶液の一部を常に系外へ取り出さねばな
らなくなる。
したがって、クラウス法オフガスは必ず冷却が必要で、それによりサワー凝縮
物が生成し、系外へ取り出さねばならない。
石炭あるいは石油燃焼発電所からのオフガスの脱硫では、この問題は起こらな
い。水の露点が吸収装置の操作温度よりも低いからである。したがって、この種
のオフガスの冷却は、水の凝縮が起こらないので、簡単である。
本発明の第一の目的は、水蒸気含量が20〜40体積%と高いオフガスを脱硫
する方法であって、この水分を凝縮する必要がなく、したがって排出が必要な酸
性の硫化水素含有凝縮物の生成が防止される、脱硫する方法を提供することであ
る。
本発明の第二の目的は、水素化により生成したH2Sを、そのガスの水の露点
よ
り高い温度で吸収液に吸収させ、その結果H2Sの吸収の間でも、水の凝縮が起
きないような方法を提供することである。
本発明の次なる目的は、上述したような欠点がなく、99.90%以上の全硫
黄回収率となるような方法を提供することである。
本発明は、水分含量が20〜40体積%もあるようなガスから、その水の露点
以上の温度で、アルカリ溶液でH2Sを吸収し、次いで生成した硫化物含有溶液
を好気性条件で生物学的に酸化するという方法が可能であるという驚くべき洞察
に基づいている。
したがって、本発明は、少なくとも20体積%の水蒸気を含むオフガスからH2
Sを除去する方法であって、オフガスの水の露点以上の温度で、オフガスを水
性アルカリ溶液で処理してH2Sを吸収させ、次いで、生成した硫化物含有溶液
を生物学的な硫化物酸化反応にかけることを含んでなる方法に関する。
驚くべきことに、アルカリ溶液、好ましくは水酸化ナトリウム溶液に溶解した
H2Sを、吸収をさせる場合の温度と、好ましくは同じ温度の、生物学的好気性
反応器中で、空気により元素状硫黄にまで酸化させることができることが判明し
た。
水分含量が20〜40体積%もあるガスは、水の露点が60〜80℃となり、
それは、実際には生物学的酸化が少なくとも65℃、より具体的には70〜90
℃で起きるであろうということを意味している。特に驚くべきことは、そのよう
な高い温度で効率よく適切な生物学的酸化を行うことができることである。
本発明の方法によれば、オフガス中の全硫黄含量を減少させるために、まず、
200℃以上にオフガスの温度を上げてから、水素および/または一酸化炭素含
有ガスと共に、無機酸化物系担体に担持した第VI族/第VIII族金属硫化物
触媒上に通し、SO2、硫黄蒸気、硫黄ミストといった硫黄化合物を、次式に従
って、水素または他の還元性ガス、たとえば水素と一酸化炭素を含有する還元性
ガスにより、硫化水素に転化させる。
SO2 + 3H2 → H2S + H2O …(7)
S + H2 → H2S …(8)
もしオフガス中に酸素が存在すると、上記の群からの触媒は次式に従って酸素
を水素化する性質も持っており、この反応に使用される。
O2 + 2H2 → 2H2O …(9)
好ましいことには、上記の群らの触媒はさらに、次式にしたがってCOSとC
S2を水素化する性質も持っていて、これらの反応に使用される。
COS + H2O → H2S + CO2 …(10)
CS2 + 2H2O → 2H2S + CO2 …(11)
本発明の方法によれば、水素化反応器出口からのオフガスは、そのガス中に存
在する水蒸気の露点の少し上まで冷却し、凝縮は起きないようにする。好ましく
は、露点の3〜5℃上まで冷却する。
オフガス、具体的にはクラウス回収プラントのオフガスは、水蒸気を20〜4
0体積%含んでいるので、その露点は60〜80℃の間である。
吸収装置の中で、次いでこのオフガスを、pHが8〜9の希釈アルカリ溶液と
、好ましくは水酸化ナトリウム溶液と直接に接触させると、ガス中に存在してい
るH2Sは次式にしたがって溶解する。
H2S + NaOH → NaHS + H2O …(12)
上記のオフガスのうち、吸収されない部分は、場合によっては燃焼させた後、
大気中に放出する。
再生アルカリ溶液にはH2Sは含まれていないので、オフガス中のH2Sは完全
に吸収され、これにより、99.9%以上の全硫黄回収率が達成される。本発明
による方法では、この溶液は生物学的好気性反応器に同じ温度、好ましくは吸収
させたのと同じ温度、で供給されるので、加熱あるいは冷却をする必要はない。
好気性反応器に必要量の空気を導入すると、溶解しているH2Sが空気中の酸素
で部分酸化され、次式にしたがって元素状硫黄となる。
次いで、好ましくはまた同じ温度で、硫黄分離器で硫黄を水酸化ナトリウム溶
液から分離し、溶液は吸収装置に再還流される。H2Sを吸収させた水酸化ナト
リウム溶液を生物学的好気性反応器に供給する前に冷却することも可能である。
し
かし、硫黄を分離した後で、吸収装置に戻すまえに溶液を再加熱する。
ここで、本発明の方法をブロック図の形であらわした二つの図をもとに、本発
明を説明する。
図1に、一般的なプロセス図を示した。硫黄回収プラント(図示されていない
)からのオフガスは配管1を通して入り、水素または他の還元性ガスを配管2か
ら加え、加熱器3で水素化に好適な温度に調整してから、配管4を通して水素化
反応器5に入れる。
水素化反応器5で、ガス中に存在する二酸化硫黄、硫黄蒸気、および有機硫黄
化合物はH2と反応してH2Sに転化される。ガス中に酸素があると、H2Oにな
る。もし、COSやCS2があれば、共存している水蒸気と反応して、H2SとC
O2
になる。
水素化反応器5から出たガスは、配管6を通って冷却器7に入って吸収工程に
適した温度に調節され、次いで配管8を経由してバイオプラントの吸収装置9に
入る。吸収装置の中で、H2Sはガス流から希釈水酸化ナトリウム中に洗い出さ
れ、これは配管10を通って好気性生物学的反応器11に入って、そこでH2S
は、配管12から供給される空気中の酸素により、元素状硫黄に転化される。配
管13を経由して水酸化ナトリウム溶液が硫黄分離器14に入り、生成した硫黄
はそこから配管15を通して排出される。溶液は配管16から吸収装置へ再循環
される。吸収装置から出るガスは、ここではごく少量のH2Sしか含んでいない
が、配管17を通ってアフターバーナー18に入り、それから煙突19を通して
放出される。
図2にも、本発明によるプラントの図面を示すが、ここでは、クラウスプラン
トから出るH2S/SO2の比率が高いオフガスを、中間の水素化をせずに、直接
吸収している。
3段のクラウスプラント100からのオフガスを配管101を経由して吸収装
置102に導入する。クラウスプラント100は、H2S/SO2のモル比が少な
くとも100になるような条件で運転されている。
吸収装置102の中で、希釈水酸化ナトリウム溶液がH2Sをガスから洗い出
しから、配管103を通って好気性生物学的反応器104に入り、そこでH2S
は、
配管105から供給される空気中の酸素と反応して、元素状硫黄に転化する。配
管106,ポンプ107および配管108を通って、水酸化ナトリウム溶液の一
部が硫黄分離器109に入り、生成した硫黄はそこから配管110を経由して排
出される。溶液は配管111と112を通って吸収装置に再循環されるが、一部
は配管113から排出される。吸収装置から出るガスは、ここではごく少量のH2
Sしか含んでいないが、配管114を通ってアフターバーナー(図には示され
ていない)に入り、それから煙突(これも示されていない)を通して放出される
。
実施例
実施例1
ガス精製プラントからくるサワーガスの量は9700Nm3/hで、次の組成
を持ち、温度45℃、絶対圧力1.6barであった。
60.0体積% H2S
3.0体積% NH3
30.0体積% CO2
5.0体積% H2O
2.0体積% CH4
このサワーガスを2基のクラウス反応器を有するクラウスプラントにフィード
した。硫黄回収プラントで生成した硫黄は、サーマルステージと触媒反応器段を
通してから、凝縮させ、系から排出した。硫黄の量は7768kg/hであった
。クラウスプラントにおける硫黄回収率は、サワーガスを基準として、93.3
%であった。
クラウスプラントから出てくるオフガスの量は29749Nm3/hで、次の
組成をもち、温度164℃、絶対圧力1.14barであった。
0.47体積% H2S
0.24体積% SO2
0.03体積% COS
0.04体積% CS2
0.01体積% S6
0.04体積% S8
1.38体積% CO
1.53体積% H2
11.37体積% CO2
55.96体積% N2
0.66体積% Ar
28.27体積% H2O
このオフガスを、還元性ガスとしての水素103Nm3/hとともに、280
℃に加熱して水素化反応器に導入して水素化し、存在している二酸化硫黄(SO2
)と硫黄蒸気(S6、S8)はすべてH2Sに転化し、さらに硫化カルボニル(C
OS)と硫化炭素(CS2)も加水分解してH2Sに変えた。水素化反応器には、
第6族/第8族金属の硫化物触媒、この場合はコバルト−モリブデン触媒が充填
してある。
水素化反応器から出てくるオフガスの量は31574Nm3/hで、次の組成
を持ち、温度は317℃、絶対圧力は1.10barであった。
1.24体積% H2S
28ppm COS
2ppm CS2
2.02体積% H2
12.64体積% CO2
56.62体積% N2
0.67体積% Ar
26.80体積% H2O
次いでオフガスの温度を72℃まで冷却したが、この温度はオフガス中に存在
する水蒸気の露点より3℃高い。
それから、冷却したオフガスをバイオプラントで72℃で処理したが、オフガ
スからの水の凝縮はなかった。バイオプラントの吸収装置の中で、H2Sを希釈
水酸化ナトリウム溶液でオフガスから洗い出し、次いで、吸収したH2Sを含む
溶液
を好気性生物学的反応器に通して、そこでH2Sを元素状硫黄に転化した。
バイオプラントでは、熱の供給や除去はせず、H2Sの吸収と元素状硫黄への
転換を同一の温度、72℃で実施した。
好気性反応器に、H2Sから硫黄への選択的酸化をするために、945Nm3/
hの量の空気を供給した。吸収装置から出たガスの量は31189Nm3/hで
、次の組成を持ち、温度は72℃、絶対圧力は1.05barであった。
250ppm H2S
28ppm COS
2ppm CS2
2.04体積% H2
12.80体積% CO2
57.32体積% N2
0.68体積% Ar
27.13体積% H2O
アフターバーナーを通してから、このガスを煙突に入れた。バイオプラントで
生成した硫黄の量は551kg/hであった。硫黄回収プラントとバイオプラン
トで得られた硫黄の合計は8319kg/hで、これは、出発原料のサワーガス
を基準にして、99.87%の全脱硫率となった。
実施例2
ガス精製プラントからくるサワーガスの量は6481Nm3/hで、次の組成
を持ち、温度45℃、絶対圧力1.6barであった。
90.0体積% H2S
3.0体積% NH3
5.0体積% H2O
2.0体積% CH4
このサワーガスを、2基のクラウス反応器と1基の選択的酸化反応器からなる
サーマルステージと触媒反応器段を通してから、凝縮させ、系から排出した。硫
黄の量は8227kg/hであった。クラウスプラントにおける硫黄回収率は、
サワーガスを基準として、98.5%であった。
クラウスプラントから出てくるオフガスの量は21279Nm3/hで、次の
組成をもち、温度129℃、絶対圧力1.14barであった。
0.03体積% H2S
0.20体積% SO2
20ppm COS
30ppm CS2
10ppm S6
0.01体積% S8
0.15体積% CO
1.72体積% H2
1.14体積% CO2
62.45体積% N2
0.74体積% Ar
33.05体積% H2O
0.50体積% O2
このオフガスを、還元性ガスとしての水素133Nm3/hとともに、280
℃に加熱して水素化反応器に導入して水素化し、存在している二酸化硫黄(SO2
)と硫黄蒸気(S6、S8)はすべてH2SとH2Oに転化し、さらに硫化カルボ
ニル(COS)と硫化炭素(CS2)も加水分解してH2Sに変えた。水素化反応
器には、第6族/第8族金属の硫化物触媒、この場合はコバルト−モリブデン触
媒が充填してある。
水素化反応器から出てくるオフガスの量は22863Nm3/hで、次の組成
を持ち、温度は367℃、絶対圧力は1.10barであった。
0.37体積% H2S
2ppm COS
0.82体積% H2
1.90体積% CO2
62.89体積% N2
0.75体積% Ar
33.27体積% H2O
次いでオフガスの温度を76℃まで冷却したが、この温度はオフガス中に存在
する水蒸気の露点より3℃高い。
それから、冷却したオフガスをバイオプラントで76℃で処理したが、オフガ
スからの水の凝縮はなかった。バイオプラントの吸収装置の中で、H2Sを希釈
水酸化ナトリウム溶液でオフガスから洗い出し、次いで、吸収したH2Sを含む
溶液を好気性生物学的反応器に通して、そこでH2Sを元素状硫黄に転化した。
バイオプラントでは、熱の供給や除去はせず、H2Sの吸収と元素状硫黄への
転換を同一の温度、76℃で実施した。好気性反応器に、H2Sから硫黄への部
分酸化をするために、205Nm3/hの量の空気を供給した。吸収装置から出
たガスの量は22780Nm3/hで、次の組成を持ち、温度は76℃、絶対圧
力は1.05barであった。
75ppm H2S
2ppm COS
0.82体積% H2
1.91体積% CO2
63.12体積% N2
0.75体積% Ar
33.39体積% H2O
アフターバーナーを通してから、このガスを煙突に入れた。バイオプラントで
生成した硫黄の量は119kg/hであった。硫黄回収プラントとバイオプラン
トで得られた硫黄の合計は8346kg/hで、これは、出発原料のサワーガス
を基準にして、99.97%の全脱硫率となった。
実施例3
ガス精製プラントからくるサワーガスの量は3500Nm3/hで、次の組成
を
持ち、温度40℃、絶対圧力1.7barであった。
88.0体積% H2S
6.1体積% CO2
1.5体積% CH4
4.4体積% H2O
このサワーガスを3基のクラウス反応器を有するクラウスプラントに供給した
。
このクラウスプラントへの空気供給量を調節して、サーマルステージおよびク
ラウス反応器における反応(2)が過剰H2Sのもとで進み、第3反応器段を出
るガス中のH2S対SO2の比が100対1より大きくなり、したがってSO2含
量は0.009体積%より小さくなるようにした。
硫黄回収プラントで生成した硫黄は、サーマルステージと触媒反応器段を通し
てから、凝縮させ、系から排出した。硫黄の量は4239kg/hであった。ク
ラウスプラントにおける硫黄回収率は、サワーガスを基準として、96.4%で
あった。クラウスプラントから出てくるオフガスの量は10001Nm3/hで
、次の組成をもち、温度130℃、絶対圧力1.15barであった。
0.93 体積% H2S
0.009体積% SO2
0.04 体積% COS
0.04 体積% CS2
0.001体積% S6
0.01 体積% S8
0.36 体積% CO
1.83 体積% H2
2.79 体積% CO2
59.68 体積% N2
0.60 体積% Ar
33.71 体積% H2O
次いでオフガスの温度を78℃まで冷却したが、この温度はオフガス中に存在
する水蒸気の露点より3℃高い。それから、冷却したオフガスをバイオプラント
で73℃で処理したが、オフガスからの水の凝縮はなかった。バイオプラントの
吸収装置の中で、H2Sを希釈水酸化ナトリウム溶液でオフガスから洗い出し、
次いで、吸収したH2Sを含む溶液を好気性生物学的反応器に通して、そこでH2
Sを元素状硫黄に転化した。バイオプラントでは、熱の供給や除去はせず、H2
Sの吸収と元素状硫黄への転換を同一の温度、73℃で実施した。
好気性反応器に、H2Sから硫黄への選択的酸化をするために、320Nm3/
hの量の空気を供給した。吸収装置から出たガスの量は9901Nm3/hで、
次の組成を持ち、温度は73℃、絶対圧力は1.05barであった。
190ppm H2S
7ppm COS
9ppm CS2
1.85体積% H2
0.36体積% CO
2.82体積% CO2
60.28体積% N2
0.61体積% Ar
34.06体積% H2O
アフターバーナーを通してから、このガスを煙突に入れた。バイオプラントで
生成した硫黄の量は156kg/hであった。硫黄回収プラントとバイオプラン
トで得られた硫黄の合計は4395kg/hで、これは、出発原料のサワーガス
を基準にして、99.93%の全脱硫率となった。
少量のSO2がアルカリ溶液の中で硫酸塩に転化する。硫酸塩の蓄積を避ける
ために、少量のアルカリ溶液(85kg/h)を系外に抜き出し、同じ量を補充
した。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年8月9日(1999.8.9)
【補正内容】
請求の範囲
1.20〜40体積%の水蒸気を含むオフガスからH2Sを除去する方法であ
って、オフガスの水の露点以上の温度で、オフガスを水性アルカリ溶液で処理し
てH2Sを吸収し、次いで、生成した硫化物含有溶液を生物学的な硫化物酸化反
応にかけることを含んでなることを特徴とする、H2Sを除去する方法。
2.吸収と酸化を実質的に同じ温度で実施することを特徴とする請求項1に記
載の方法。
3.処理するオフガスが硫酸回収プラントからのものであることを特徴とする
請求項1または2記載の方法。
4.吸収に先立って、オフガスを水素化することを特徴とする請求項3に記載
の方法。
5.オフガスのH2S/SO2のモル比が少なくとも100で、好ましくはクラ
ウスプラントからのものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載
の方法。
6.硫化物が好気性の生物学的酸化において元素状硫黄に転化されることを特
徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
7.生物学的酸化の後で、硫黄を液から分離することを特徴とする請求項1〜
6のいずれかに記載の方法。
8.硫黄を分離した後、液を吸収液として再循環させることを特徴とする請求
項7に記載の方法。
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