JP2002143589A - 差動装置付ミシン - Google Patents

差動装置付ミシン

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JP2002143589A
JP2002143589A JP2000339518A JP2000339518A JP2002143589A JP 2002143589 A JP2002143589 A JP 2002143589A JP 2000339518 A JP2000339518 A JP 2000339518A JP 2000339518 A JP2000339518 A JP 2000339518A JP 2002143589 A JP2002143589 A JP 2002143589A
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敏文 中井
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Terukichi Kubota
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 主軸に対する釜軸等の回転位相を変えること
により、縫い目を綺麗に仕上げ、刺繍品質等を向上でき
るようにする。 【解決手段】 刺繍機1のヘッド部6にはそれぞれ複数
の糸掛け8、糸調子9、天秤10、針棒11およびミシ
ン針12を設ける。また、ヘッド部6側のミシン針12
と釜ホルダ24との間には二点鎖線で示す刺繍布13を
配置し、この刺繍布13を刺繍枠等と共に前,後、左,
右へと水平方向に枠移動しつつ、ミシン針12を運針し
て刺繍布13に刺繍柄を形成する。基台2上の釜ホルダ
24内には回転釜25を設け、主軸7の回転を回転伝達
機構14、差動装置40を介して回転釜25に伝える。
そして、回転釜25の回転位相を差動装置40により変
化させ、回転釜25と天秤10,針棒11との相対動作
特性を適正化する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば縫製作業ま
たは刺繍作業等を行うのに好適に用いられる差動装置付
ミシンに関し、特に、縫製品や刺繍柄等の品質を高め得
るようにした差動装置付ミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、縫製作業または刺繍作業等を行
うために用いられるミシンとしての刺繍機は、基台上に
設けられ主軸の回転によりミシン針を運針させるヘッド
部と、該ヘッド部の下側に位置して前記基台上に設けら
れ刺繍対象の布等を展張状態で保持する刺繍枠等の保持
枠と、前記基台上で該保持枠を枠移動させる枠移動機構
等とにより構成されている。
【0003】そして、この種の従来技術による刺繍機に
は、ミシンのヘッド部側に、前記主軸の回転に従って駆
動され刺繍糸となる上糸の繰出しと糸締めを行う天秤
と、前記主軸の回転に従って上,下に往復動され前記ミ
シン針を運針駆動する針棒とが設けられている。
【0004】また、前記基台側には、前記ミシン針の運
針に応じて上糸と下糸とに絡みを与えて所謂「縫い目」
を形成するための回転釜が設けられている。そして、こ
の回転釜は、前記主軸の回転に従って駆動され前記主軸
が1回転する間に2回転する釜軸と、該釜軸と一体に回
転する外釜と、該外釜内に相対回転可能に配置され下糸
用のボビンを収容する中釜とにより大略構成されている
(例えば、特開平11−226284号公報等)。
【0005】ここで、ミシンのヘッド部側に設けた天秤
は、図28に示す特性線St のように主軸の回転角θに
対して上,下に駆動され、針棒は主軸の回転角θに対し
特性線Sh に沿って駆動される。また、回転釜の釜軸
は、その剣先が特性線Sk に沿って上下動するように回
転され、この釜軸は主軸が1回転する間に2回転するも
のである。
【0006】そして、針棒が上死点に達する回転角θを
針上死点θ0 (例えば、θ0 =0°)とすると、針棒は
特性線Sh に沿って針下死点θc (例えば、θc =18
0°)で下死点となり、その後に角度θi (例えば、θ
i =360°)の位置で再び上死点に達するものであ
る。
【0007】また、針棒によって上,下に運針されるミ
シン針は、針棒と同様に特性線Shに沿って駆動され、
針突入点θb (例えば、θb =115°)で針先が針板
を通して下糸側に突入し、その後は針抜け点θe (例え
ば、θe =250°)で針先が針板から上方へと抜け出
すものである。
【0008】一方、天秤は特性線Stに沿って駆動さ
れ、例えば主軸の回転角θが60°程度の位置で天秤上
死点θaとなり、例えば回転角θが290°程度の位置
で天秤下死点θfに達するものである。
【0009】また、下糸側の釜軸は特性線Sk に沿って
剣先が上下動するように回転し、糸掛け点θd (例え
ば、θd =200°)に達すると、剣先が上糸を引っ掛
けて回転釜に取り込み、その後は回転釜により上糸が下
糸と絡み終わる糸抜け点θg (例えば、θg =315
°)に達し、釜抜け点θh (例えば、θh =358°)
で上糸が回転釜から完全に抜け出すことになる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従
来技術による刺繍機にあっては、ヘッド部側の天秤、針
棒および下糸側の釜軸をカム機構、クランク機構、歯車
機構等を用いて主軸とそれぞれ機械的に連結し、図28
に例示した特性をもって主軸の回転により駆動する構成
としているため、下記のような未解決な問題が生じてい
る。
【0011】即ち、刺繍機の縫い調子は、回転釜による
上糸の糸掛け点θd から釜抜け点θh までの動作特性に
より変えることが可能である。しかし、回転釜の釜軸を
図28に示す特性線Sk に沿って駆動している限り、釜
軸と針棒、天秤との相対動作特性を変えることができ
ず、刺繍品質を高めることが難しいという問題がある。
【0012】この場合、従来技術による刺繍機では、図
28に例示しているように糸抜け点θg 、釜抜け点θh
に達する前に、特性線St の如く天秤で糸を引き上げ始
めるために、例えば糸調子で100〜150g程度の糸
張力を持たせておかないと、上糸が余分に引き出されて
糸締まりのない刺繍になったり、布の裏面に糸の固まり
(蜘蛛の巣)ができてしまうことがある。
【0013】また、糸張力を強くして上糸を無理に引き
上げると、糸が締まり過ぎて硬くて光沢のない刺繍とな
ったり、糸切れが頻発して作業効率を落とすことにな
る。従って、天秤の引き上げタイミングを遅くゆっくり
としなければならず、縫い幅または振り幅が大きい刺繍
柄になると、ミシン針を高速に運針することができなく
なるという制約がある。
【0014】このように、天秤で上糸を引き上げるタイ
ミングを遅くし、上糸をゆっくり引き上げるようにすれ
ば、糸切れの発生が少なくなり、刺繍の縫い上がりも綺
麗になる。しかし、このためには主軸の回転速度を下げ
ることにより天秤の動きを遅くする必要があり、刺繍ス
ピードが犠牲となって、作業性が低下し、生産効率が悪
くなるという問題がある。
【0015】また、振り幅の大きい縫い目を形成するよ
うな場合には、刺繍枠の枠移動を早めて枠移動量を大き
くする必要があるため、釜軸が糸抜け点θg に達する前
に上糸が引っ張られることになり、上糸のたるみに余裕
がなくなって、糸切れが発生したり、縫い目が締まり過
ぎて刺繍の品質が低下するという問題がある。
【0016】一方、図28中に二点鎖線で示す特性線S
k ′のように、釜軸の回転位相を全体的に早める設定と
した場合には、糸抜け点θg ′を早めることができる
が、糸掛け点θd ′も早くなるため、例えば主軸の回転
スピードを速めた場合に回転釜の剣先で上糸を取りきれ
なくなることがあり、糸掛け自体が不可能となって目飛
び(空縫い)が発生し易いという問題がある。
【0017】本発明は上述した従来技術の問題に鑑みな
されたもので、本発明の目的は、主軸の回転1周期のな
かで釜軸等の回転位相を変えることにより、主軸、天
秤、釜軸等の相互の動作特性を変更して、縫い目を綺麗
に仕上げることができ、刺繍品質等を向上できるように
した差動装置付ミシンを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決する
ために、請求項1の発明は、ミシンの主軸と、該主軸の
回転に従って駆動され上糸の繰出しと糸締めを行う天秤
と、前記主軸の回転に従って往復動されミシン針を運針
させる針棒と、前記ミシン針の運針に応じて上糸と下糸
とに絡みを与えるため前記主軸の回転に従って駆動され
る下糸側の釜軸と、前記針棒、天秤および釜軸のうち少
なくとも釜軸を前記主軸とは異なる位相で回転させる差
動装置とを備え、該差動装置は、外殻となるケーシング
と、該ケーシングに回転可能に設けられ前記主軸によっ
て回転される入力軸と、前記ケーシングに回転可能に設
けられ少なくとも前記釜軸に回転出力を伝える出力軸
と、前記入力軸の回転を該出力軸に伝えるため前記入力
軸と出力軸との間に設けられ該出力軸の回転位相を前記
入力軸に対して変化させる位相差発生機構とにより構成
している。
【0019】このように構成することにより、主軸の回
転に従って差動装置の入力軸が回転されると、位相差発
生機構は出力軸の回転位相を入力軸に対して変化させ、
位相差をもった回転を出力軸から下糸側の釜軸へと伝え
ることができ、少なくとも釜軸の回転位相を主軸に対し
て変えることができる。
【0020】また、請求項2の発明によると、差動装置
は、釜軸の回転位相を針棒が下死点になる位置を起点と
して変えることにより、前記釜軸の回転に伴って回転釜
で上糸と下糸を絡め前記回転釜から上糸が釜抜けするタ
イミングを変化させる構成としている。
【0021】これにより、釜軸と針棒、天秤との相対動
作特性を変えることができ、回転釜の剣先が上糸を引っ
掛けて回転釜に取り込んだ後に、回転釜で上糸と下糸を
絡め、この上糸が回転釜から完全に抜け出す釜抜け点ま
でのタイミングを相対的に早めることができる。
【0022】また、請求項3の発明によると、位相差発
生機構は、入力軸と出力軸との間に設けられ互いに噛合
して回転力を伝える第1,第2のはすば歯車と、前記入
力軸の回転に従って該第1,第2のはすば歯車を軸方向
に相対移動させる差動カム手段とにより構成している。
【0023】このように構成することにより、差動カム
手段を入力軸の回転に従って作動させると、第1,第2
のはすば歯車が軸方向に相対移動して両者の噛合位置が
変わるため、これに応じて第2のはすば歯車を第1のは
すば歯車に対して回転位相を進めたり、遅らせたりする
ことができ、出力軸の回転位相を入力軸に対して簡単に
変えることができる。
【0024】また、請求項4の発明によると、位相差発
生機構は入力軸、出力軸に対し径方向に離間してケーシ
ングに設けられた中間軸を有し、第1,第2のはすば歯
車は前記入力軸、中間軸および出力軸のうち少なくとも
いずれか2つの軸間に設ける構成としている。
【0025】この場合には、入力軸と出力軸との間に中
間軸を介在させることにより、出力軸を入力軸と同方向
に回転させることができ、両者の回転位相を第1,第2
のはすば歯車の噛合位置に応じて変えることができる。
【0026】また、請求項5の発明によると、差動カム
手段は、入力軸に従って回転するカムホイールと、該カ
ムホイールと係合するようにケーシング側に設けられ該
カムホイールの回転に従って第1または第2のはすば歯
車を軸方向に変位させるカムフォロアとにより構成して
いる。
【0027】これにより、カムホイールに係合するカム
フォロアは、カムホイールの回転を軸方向の変位に変換
でき、このときに第1のはすば歯車または第2のはすば
歯車を軸方向に変位させることによって、両歯車の噛合
位置を変化させ回転位相を変えることができる。
【0028】一方、請求項6の発明によると、差動カム
手段は、第1のはすば歯車と一体に回転する第1のカム
ホイールと、第2のはすば歯車と一体に回転する第2の
カムホイールと、ケーシング側に設けられ前記第1,第
2のカムホイール間に位置する支点を中心にして回動可
能となった回動体と、該回動体にそれぞれ設けられ前記
第1,第2のカムホイールに係合する第1,第2のカム
フォロアとにより構成している。
【0029】これにより、第1のカムホイールに係合す
る第1のカムフォロアは、例えば入力軸と一体に第1の
カムホイールが回転すると、これを支点を中心とした回
動体の回動変位に変換することができ、このときに第2
のカムフォロアは回動体と一緒に回動変位するため、第
2のカムホイールを介して第2のはすば歯車を軸方向に
変位させつつ、第1,第2のはすば歯車の噛合位置を変
えることができ、これによって、両歯車の回転位相を変
化させることができる。
【0030】また、請求項7の発明によると、第1,第
2のカムフォロアは回動体に対して位置調整可能に取付
け、前記回動体は第1,第2のカムフォロアと支点との
間の間隔L1 ,L2 を可変に調整する構成としている。
【0031】この場合には、第1,第2のカムフォロア
と支点との間の間隔L1 ,L2 を可変に調整することに
より、入力軸と出力軸との位相差を間隔L1 ,L2 の比
率(L1 /L2 )に応じて変えることができる。
【0032】また、請求項8の発明によると、第1,第
2のカムホイールは互いに異なる形状のカム溝を有し、
第1,第2のカムフォロアは前記第1,第2のカムホイ
ールのカム溝に係合する構成としている。これにより、
第1,第2のカムホイールに設けたそれぞれのカム溝の
形状に応じて回転位相を変えることができる。
【0033】一方、請求項9の発明は、ケーシングに複
数の出力軸を設け、該各出力軸と入力軸との間にはそれ
ぞれ位相差発生機構を設ける構成としている。これによ
り、入力軸の回転をそれぞれの出力軸に位相差発生機構
を通じて伝達でき、各出力軸から互いに回転位相の異な
る出力を取出すことができる。
【0034】また、請求項10の発明によると、複数の
出力軸は天秤と釜軸とにそれぞれ異なる位相の回転出力
を伝える構成としている。これにより、それぞれの出力
軸から天秤と釜軸とに互いに異なる位相の回転出力を伝
えることができる。
【0035】さらに、請求項11の発明によると、主軸
を駆動する主軸モータと針棒の駆動部との間には、該針
棒の駆動部を前記主軸モータとは異なる回転位相で駆動
する他の差動装置を設ける構成としている。これによ
り、主軸モータの回転位相に対して針棒の位相を変える
ことができる上に、天秤と釜軸についても主軸モータに
対して異なる位相をもって回転させることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態による
差動装置付ミシンを、複数本(例えば、15本)のミシ
ン針を有する多色式刺繍機に適用した場合を例に挙げ、
添付図面に従って詳細に説明する。
【0037】ここで、図1ないし図10は本発明の第1
の実施の形態を示している。図中、1は刺繍機で、該刺
繍機1は、基台2と、該基台2上に立設された左,右の
側枠3,4と、該側枠3,4の上部側に固定して設けら
れたヘッド支持体5と、該ヘッド支持体5の前部側に設
けられ該ヘッド支持体5に対して左,右(図1中の矢示
a,b方向)に移動可能となったヘッド部6と、ミシン
の主軸7を回転駆動する主軸モータ(図示せず)等とに
より構成されている。
【0038】また、刺繍機1には、例えばヘッド支持体
5の後側に位置して合計15色の刺繍糸(上糸)を各上
糸ボビンと共に収容するチーズケース(いずれも図示せ
ず)等が設けられ、刺繍機1はこれらの刺繍糸を用いて
刺繍作業を行う多色式刺繍機を構成しているものであ
る。
【0039】また、刺繍機1のヘッド部6には、その上
端側に合計15個の糸掛け8,8,…が設けられると共
に、該各糸掛け8と後述の天秤10との間には合計15
個の糸調子9,9,…が設けられている。そして、前記
各チーズケースから引出された刺繍糸としての上糸は、
それぞれ糸掛け8を介して各糸調子9へと導かれ、この
糸調子9により上糸は天秤10側に向けて低摩擦給糸さ
れるものである。
【0040】そして、糸調子9は、例えば20〜50g
程度、好ましくは30〜40g程度の張力を上糸に与
え、後述のミシン針12等により上糸がこの張力を越え
て引っ張られるときに、天秤10側に向けて上糸が給糸
されるのを許す構成となっている。
【0041】10,10,…はヘッド部6の前面側に配
設された例えば合計15個の天秤を示し、該各天秤10
は、ヘッド部6内に設けられた天秤駆動部(図示せず)
により主軸7の回転に従って、図9中の特性線Stの如
く上,下に駆動されるものである。そして、天秤10は
下向きに駆動されるときに、ミシン針12との間で上糸
に僅かなたるみを与え、上糸をミシン針12側に給糸さ
せる。
【0042】また、天秤10は上向きに駆動されるとき
に、ミシン針12により後述の刺繍布13上に形成した
縫い目(いずれも図示せず)と糸調子9等との間で上糸
を引っ張り上げるようにして上糸に張力を与え、前記縫
い目の糸締めと上糸の繰り出しとを行うものである。
【0043】11,11,…はヘッド部6の下端側に設
けられた例えば15個の針棒で、該各針棒11の下端側
にはそれぞれミシン針12が着脱可能に装着されてい
る。そして、これらの針棒11およびミシン針12は、
ヘッド部6内に設けられた針駆動部(図示せず)により
主軸7の回転に従って図9中の特性線Shの如く上,下
に駆動されるものである。
【0044】ここで、ヘッド部6側のミシン針12と後
述の釜ホルダ24との間には、図1中に二点鎖線で示す
ように刺繍対象物となる刺繍布13が配置され、この刺
繍布13は刺繍枠等の保持枠(図示せず)を用いて展張
状態で保持されている。そして、刺繍布13は保持枠と
共に前,後、左,右へと水平方向に枠移動され、このと
きにミシン針12が運針されることにより、刺繍布13
には刺繍データに対応した刺繍柄が実現されるものであ
る。
【0045】14は刺繍機1の側枠3に設けられた回転
伝達機構を示し、該回転伝達機構14は、側枠3に回転
可能に設けられ、主軸7に継手15を介して連結された
駆動側の回転軸16と、該回転軸16に固定して設けら
れ、回転軸16と一体に回転する駆動側のプーリ17
と、該プーリ17の下方に位置して側枠3に回転軸18
と共に回転可能に設けられた従動側のプーリ19と、こ
れらのプーリ17,19間に巻装されたタイミングベル
ト20とにより構成されている。
【0046】そして、従動側の回転軸18は後述する差
動装置40の入力軸42に継手21を介して連結され、
この入力軸42は、主軸7の回転が回転伝達機構14を
用いて伝えられることにより、主軸7と同一の回転位相
で回転されるものである。
【0047】また、差動装置40は後述の出力軸44が
継手22を介して他の回転軸23に連結され、該回転軸
23は後述する回転釜25の釜軸29に対して傘歯車
(図示せず)等を介して回転力を伝達するものである。
そして、これらの傘歯車等によって釜軸29は、回転軸
23が1回転する間に2回転する構成となっている。
【0048】24はヘッド部6の下方に位置して基台2
上に設けられた釜ホルダ、25は該釜ホルダ24内に回
転可能に取付けられた回転釜で、該回転釜25は、図3
ないし図5に示すように後述の釜軸29が取付けられる
ボス部26Aを有した外釜26と、該外釜26内に相対
回転可能に配置され下糸用のボビン(図示せず)を収容
する中釜27と、該中釜27内で下糸用のボビンを保持
するボビンケース28とにより大略構成されている。
【0049】ここで、中釜27は中心側に支軸27Aを
有し、該支軸27Aには下糸用のボビンがボビンケース
28と共に回転可能に装着されるものである。また、中
釜27の外周側には針孔27Bが穿設され、該針孔27
Bには前記ミシン針12が上糸を伴って挿入される。
【0050】一方、外釜26には図5に示す如く剣先2
6Bが設けられている。そして、剣先26Bは外釜26
と共に矢示M方向に回転することにより、中釜27の針
孔27Bにミシン針12の針先で挿入された上糸を引っ
掛け(図9中の糸掛け点θd1)、この上糸を回転釜25
に取り込む。
【0051】これにより、上糸は所謂「縫い目」を形成
するため、外釜26の回転に伴って中釜27内の下糸と
絡み合うようになり(図9中の糸抜け点θg1)、その後
は図9中の釜抜け点θh1で上糸が回転釜25から完全に
抜け出すことになる。
【0052】29は回転釜25の一部を構成する釜軸
で、該釜軸29は図4に示す如く外釜26のボス部26
A内に嵌合され、ビス30等を用いて外釜26に着脱可
能に固定されている。そして、釜軸29は、前述の如く
図2に示す回転軸23が1回転する間に2回転し、外釜
26を図4、図5の矢示M方向に回転駆動する。
【0053】ここで、釜軸29は、例えば図9に示す針
下死点θc を起点として回転釜25の回転位相が変わる
ように、外釜26のボス部26Aに対して前記ビス30
等で位置決めされ、これによって外釜26は、剣先26
Bが図9、図10に示す特性線Sk1に沿って上下動する
ように回転駆動されるものである。
【0054】次に、本実施の形態で採用した差動装置4
0について、図2、図6ないし図8を参照して詳述す
る。この場合、差動装置40は図2に示す如く刺繍機1
の基台2上に設置され、回転軸18,23間の回転位相
を後述の如く変化させるものである。
【0055】41は当該差動装置40の外殻をなすケー
シングで、該ケーシング41は、図2、図6および図7
に示すように、刺繍機1の基台2上に固定される底板部
41Aと、該底板部41Aの上面から上向きに立設され
た前,後の側板部41B,41Cおよび左,右の側板部
41D,41Eとにより構成され、全体として有底の角
筒体として形成されている。
【0056】42はケーシング41に回転可能に設けら
れた入力軸で、該入力軸42は左側の側板部41Dに軸
受ケース43等を介して支持されると共に、後述の中間
軸受ケース46に対しても回転可能に取付けられてい
る。そして、入力軸42はケーシング41外に突出する
突出端側が、図2に示すように継手21を介して回転軸
18に連結され、前記主軸7によりほぼ一定の速度で図
6中の矢示A方向に等速回転されるものである。
【0057】44は入力軸42から軸方向に離間してケ
ーシング41に回転可能に設けられた出力軸を示し、該
出力軸44は右側の側板部41Eに軸受ケース45等を
介して支持されると共に、中間軸受ケース46に対して
も回転可能に取付けられている。
【0058】そして、出力軸44は中間軸受ケース46
を介して入力軸42とほぼ同軸となる位置に配設され、
ケーシング41外に突出する突出端側は図2に示すよう
に継手22を介して回転軸23に連結されるものであ
る。
【0059】46は入力軸42と出力軸44との間に位
置してケーシング41内に配置された中間軸受ケース
で、該中間軸受ケース46は図6、図7に示す如く段付
の円筒体として形成され、その外周側はケーシング41
の側板部41Bまたは41Cにブラケット(図示せず)
等を介して固定されている。そして、中間軸受ケース4
6は、軸方向両側に位置する入力軸42と出力軸44と
をそれぞれベアリングを介して相対回転可能に支持して
いるものである。
【0060】47は入力軸42と出力軸44との間に配
設された位相差発生機構を示し、該位相差発生機構47
は、後述の中間軸48、はすば歯車49,51およびカ
ム装置55等により構成されている。
【0061】48は入力軸42、出力軸44から径方向
に離間してケーシング41に設けられた中間軸で、該中
間軸48は左,右両端側が左,右の側板部41D,41
Eに固定され、後述のはすば歯車51、平歯車52およ
びカムホイール56を回転可能で、かつ軸方向に摺動変
位可能に支持するものである。
【0062】49はケーシング41内に位置して入力軸
42に設けられた第1のはすば歯車で、該はすば歯車4
9はストッパ筒49Aを有し、該ストッパ筒49Aによ
り入力軸42に対して一体に固定されている。そして、
第1のはすば歯車49は相手方となる第2のはすば歯車
51に噛合し、両者はそれぞれ同一の歯数、ピッチ円径
D、ねじれ角β等をもって形成されている。
【0063】50ははすば歯車49と中間軸受ケース4
6との間に位置して入力軸42の外周側に挿嵌された筒
体で、該筒体50ははすば歯車49の端面等に当接する
ことにより、ケーシング41内で入力軸42およびはす
ば歯車49等が軸方向に変位するのを規制しているもの
である。
【0064】51は中間軸48の外周側にカムホイール
56と共に摺動可能に挿嵌された第2のはすば歯車で、
該第2のはすば歯車51は第1のはすば歯車49に噛合
し、第1のはすば歯車49とは逆向き(図6中の矢示B
方向)に回転する。そして、これらのはすば歯車49,
51は、歯面間の噛合位置が変わることにより、下記の
数1式のように最大位相角ψの範囲内で互いに異なる回
転位相をもって回転するものである。
【0065】
【数1】ψ=S×tanβ×360/(π×D) 但し、D:はすば歯車のピッチ円径 β:はすば歯車のねじれ角 S:カムホイールのオフセット量
【0066】52は中間軸48の外周側にはすば歯車5
1、カムホイール56と共に摺動可能に挿嵌された歯車
部材としての平歯車で、該平歯車52は後述の平歯車5
3に噛合し、これらの平歯車52,53は同一の回転位
相で互いに逆向きに回転するものである。
【0067】53はケーシング41内に位置して出力軸
44に設けられた歯車部材としての他の平歯車で、該平
歯車53は中間軸48側の平歯車52と同一の歯車形状
を有し、平歯車52に噛合している。また、平歯車53
はストッパ筒53Aを有し、該ストッパ筒53Aにより
出力軸44に対して一体に固定されている。そして、平
歯車53は出力軸44と一体に回転するものである。
【0068】54は中間軸受ケース46と平歯車53と
の間に位置して出力軸44の外周側に挿嵌された他の筒
体を示し、該筒体54は平歯車53の端面等に当接する
ことにより、ケーシング41内で出力軸44および平歯
車53が軸方向に変位するのを規制している。
【0069】55は位相差発生機構47の一部を構成す
る差動カム手段としてのカム装置を示し、該カム装置5
5は、後述のカムホイール56およびカムフォロア57
等により構成されている。
【0070】56は中間軸48の外周側にはすば歯車5
1、平歯車52と共に摺動可能に挿嵌されたカムホイー
ルで、該カムホイール56ははすば歯車51と平歯車5
2との間に配設され、その外周側には図6に示す如くオ
フセット量Sをもったサイン曲線に従って斜めに延びる
カム溝56Aが形成されている。
【0071】そして、カムホイール56は、カム溝56
Aが図7に示す如くカムフォロア57に係合することに
より、入力軸42の回転に従って図6中の矢示C,C′
方向に摺動変位するものである。
【0072】57は筒状のホルダ58を介してケーシン
グ41の後側の側板部41Cに設けられたカムフォロア
で、該カムフォロア57は回転可能なローラ等からな
り、カムホイール56のカム溝56Aに常時係合してい
る。そして、カムフォロア57は、カムホイール56の
回転をカム溝56Aの形状に応じて軸方向の摺動変位に
変換し、カムホイール56をはすば歯車51、平歯車5
2と一緒に図6中の矢示C,C′方向に摺動変位させる
ものである。
【0073】本実施の形態による差動装置40を備えた
刺繍機1は、上述の如き構成を有するもので、次に、そ
の作動について説明する。
【0074】まず、刺繍機1の主軸モータにより主軸7
を回転駆動すると、主軸7の回転はヘッド部6内の天秤
駆動部を介して天秤10に伝えられ、該天秤10は図9
に示す特性線St に沿って上下動するように駆動され
る。
【0075】そして、天秤10が下向きに駆動されると
き(図9中の天秤上死点θa から天秤下死点θf までの
間)に、ミシン針12との間で上糸には僅かなたるみが
与えられ、これにより上糸はミシン針12側に給糸され
る。
【0076】また、天秤10が上向きに駆動されるとき
(図9中の天秤下死点θf から次の天秤上死点θa まで
の間)には、ミシン針12により刺繍布13上に形成し
た縫い目と糸調子9等との間で上糸を引っ張り上げるよ
うに上糸に張力を付与され、前記縫い目の糸締めと上糸
の繰り出しとが天秤10により行われる。
【0077】このとき、ヘッド部6の下端側では針棒1
1が、ヘッド部6内の針駆動部により主軸7の回転に従
って、図9中の特性線Sh の如く上,下に往復動され、
刺繍対象の刺繍布13に対してミシン針12が運針され
る。
【0078】即ち、針棒11はミシン針12と共に主軸
7の回転角θに対して、針上死点θ0 (例えば、θ0 =
0°)の位置から針下死点θc (例えば、θc =180
°)の位置まで下向きに駆動され、その後は針下死点θ
c の位置から角度θi (例えば、θi =360°)の位
置まで上向きに駆動されて再び針上死点に達するもので
ある。
【0079】そして、針棒11によって上,下に運針さ
れるミシン針12は、針棒11と同様に特性線Sh に沿
って駆動され、針突入点θb (例えば、θb =115
°)で針先が刺繍布13を貫通して回転釜25(中釜2
7の針孔27B)内へと突入し、その後は針抜け点θe
(例えば、θe =250°)で針先が刺繍布13から上
方へと抜け出すものである。
【0080】そして、ミシン針12が刺繍布13よりも
上方に位置する間(図9中の針上死点θ0から針突入点
θbに達する間と、針抜け点θe から角度θi の次なる
針上死点に達するまでの間に亘る)に、刺繍布13は保
持枠と共に前,後、左,右へと水平方向に枠移動される
ことにより、刺繍布13にはミシン針12の運針動作に
応じて刺繍柄が作成される。
【0081】また、このときに主軸7の回転は回転伝達
機構14を通じて差動装置40へと伝えられ、差動装置
40の入力軸42と出力軸44との間には後述の如く位
相差を発生する。そして、この位相差をもった回転が回
転軸23を介して回転釜25の釜軸29へと伝えられる
ことにより、釜軸29の回転位相を主軸7に対して後述
の如く適宜に調整することができ、縫い目を綺麗に仕上
げることが可能となるものである。
【0082】そこで、差動装置40の作動について図6
ないし図8を参照して説明するに、まず、主軸7の回転
に従って入力軸42を図6中の矢示A方向に回転駆動す
ると、ケーシング41内ではすば歯車49が一体に回転
し、この回転は相手方となるはすば歯車51に逆向き
(矢示B方向)の回転となって伝えられる。
【0083】そして、このときにはカムホイール56が
はすば歯車51と一体回転するために、カム溝56Aに
係合するカムフォロア57によりカムホイール56の回
転は軸方向の変位に変換され、カムホイール56がはす
ば歯車51、平歯車52と一緒に図6中の矢示C,C′
方向に摺動変位する。
【0084】これにより、互いに噛合するはすば歯車4
9,51は、両歯車間の噛合位置がはすば歯車51の軸
方向変位に応じて変わり、例えばはすば歯車51が図6
中の矢示C方向に変位するときには、はすば歯車51が
はすば歯車49に対して回転位相を進ませるように相対
回転し、はすば歯車49,51間に進相方向の位相差が
発生する。
【0085】また、はすば歯車51がカムホイール56
と一緒に図6中の矢示C′方向に変位するときには、は
すば歯車51がはすば歯車49に対し回転位相を遅らせ
るように相対回転し、はすば歯車49,51間に遅相方
向の位相差が発生する。そして、この間は平歯車52と
平歯車53が互いに同一の回転位相で噛合し続けるた
め、出力軸44は入力軸42に対してはすば歯車49,
51間と同様の位相差をもって回転することになる。
【0086】この結果、入力軸42が図8中に実線で示
す特性線60に沿ってほぼ一定の速度(例えば、4t秒
間に360度)で回転するときに、出力軸44は図8中
に二点鎖線で示す特性線61に沿って曲線状のカーブを
描くように不等速で回転することになる。
【0087】そして、入力軸42と出力軸44とは、回
転位相が0度、180度、360度の位置ではほぼ一致
するものの、時間t秒の時点で入力軸42の回転位相が
90度となったときには、出力軸44の回転位相が最大
位相角ψにほぼ対応する角度分だけ進むことになる。ま
た、時間3t秒の時点で入力軸42の回転位相が270
度となったときには、出力軸44の回転位相が最大位相
角ψにほぼ対応する角度分だけ遅れることになる。
【0088】即ち、カムホイール56が図6に示す初期
位置から矢示C方向に変位している間(例えば、図8中
に示す回転位相0〜180度の範囲)では、入力軸42
と出力軸44との間に進相方向の位相差が発生し、カム
ホイール56が図6に示す位置から矢示C′方向に変位
している間(例えば、図8中に示す回転位相180〜3
60度の範囲)では、入力軸42と出力軸44との間に
遅相方向の位相差が発生するものである。
【0089】ここで、差動装置40の出力軸44は、図
2に示すように継手22を介して回転軸23に連結さ
れ、該回転軸23は回転釜25の釜軸29に対し傘歯車
等を介して回転力を伝達し、これによって釜軸29は回
転軸23が1回転する間に2回転するものである。
【0090】そして、図8に例示した入力軸42(主軸
7)の回転位相が270度となる位置、即ち、図6に示
すカムホイール56が矢示C′方向に最大変位している
時点で、図2に示す針棒11(ミシン針12)が下死点
位置(図9中の針下死点θc)に達するように、例えば
回転軸18と入力軸42との間を継手21により連結す
る。この場合、前述の条件を満たすように主軸7と回転
軸16との間を継手15により連結してもよい。
【0091】この結果、差動装置40の出力軸44は、
入力軸42に対して回転位相が進み位相となるように調
整される。そして、入力軸42は主軸7と同一の回転位
相をもって回転するので、入力軸42は図10中に実線
で示す針棒11の特性線Shに沿って回転し、出力軸4
4は図10中に二点鎖線で示す特性線Sh1に沿って回転
することになる。
【0092】また、図2に示す出力軸44と回転軸23
との間は、両者の回転位置を調整した状態で継手22に
より連結し、図4に示す釜軸29と外釜26のボス部2
6Aとの間も、両者の回転位置を適正に調整した状態で
ビス30等を用いて連結する。
【0093】これにより、釜軸29は、例えば図9に示
す針下死点θc を起点として回転釜25の回転位相が変
わるように、外釜26のボス部26Aに対して前記ビス
30等で位置決めされ、外釜26は、剣先26Bが図
9、図10中に実線で示す特性線Sk1に沿って上下動す
るように回転駆動される。
【0094】そして、差動装置40を用いることにより
実現される釜軸29の回転位相は、図9、図10に一点
鎖線で例示した従来技術の釜軸による特性線Sk に対
し、針下死点θc を起点として回転釜25の回転位相を
進めるように調整され、針下死点θc の位置では特性線
Sk1と特性線Sk との位相が一致するものの、その前,
後の回転位置では、釜軸29の回転位相が相対的に進み
位相となっている。
【0095】かくして、本実施の形態によれば、図9、
図10に示す特性線Sk1に沿って釜軸29を回転させる
ことにより、糸掛け点θd1(例えば、θd1=202°)
に達すると、外釜26の剣先26Bで上糸を引っ掛けて
回転釜25に取り込むことができ、その後は回転釜25
により上糸が下糸と絡み終わる糸抜け点θg1(例えば、
θg1=303°)に達し、釜抜け点θh1(例えば、θh1
=342°)で上糸を回転釜25から完全に釜抜けさせ
ることができる。
【0096】そして、本実施の形態による特性線Sk1
は、従来技術の特性線Sk と比較した場合に、糸抜け点
θg1を従来の糸抜け点θg に比較して図10に示す如く
位相差ψ1 (例えば、ψ1 =12°程度)分だけ進み位
相に設定でき、釜抜け点θh1についても従来の釜抜け点
θh に比較して位相差ψ2 (例えば、ψ2 =16°程
度)分だけ進み位相に設定することができる。
【0097】この結果、刺繍機1による刺繍布13の縫
い調子を、回転釜25による上糸の糸掛け点θd1から釜
抜け点θh1までの動作特性に応じて変えることができ、
釜軸29と天秤10,針棒11との相対動作特性を適正
化することによって、刺繍品質を向上できる。
【0098】また、図9、図10に示す特性線Sk1の如
く、糸抜け点θg1から釜抜け点θh1に亘るタイミングを
進み位相とすることにより、天秤10で上糸を引き上げ
るタイミングを相対的に遅くすることができ、上糸は相
対的にゆっくりと引き上げられるようになって、糸切れ
が発生する可能性を低減できると共に、糸締まり等を向
上でき、刺繍の縫い上がりを綺麗にすることができる。
【0099】そして、この場合には主軸7の回転速度を
下げることなく、天秤10で上糸を引き上げるタイミン
グ相対的に遅くできるので、刺繍スピードを速く保った
ままの状態で刺繍作業を実行でき、作業性を向上できる
と共に、生産効率を良好に高めることができる。
【0100】また、振り幅の大きい縫い目を形成するよ
うな場合に、前記刺繍布13の保持枠による枠移動を早
めて枠移動量を大きくしても、釜軸29が糸抜け点θg1
に達する前に上糸が引っ張られるような可能性を低減で
き、上糸のたるみに余裕を与えることが可能となり、糸
切れが発生したり、縫い目が締まり過ぎて刺繍の品質が
低下する等の問題も解消することができる。
【0101】従って、本実施の形態によれば、刺繍機1
の主軸7と釜軸29との間に差動装置40を組込むこと
により、主軸7に対する釜軸29の回転位相を変えるこ
とができ、刺繍布13の縫い目を綺麗に仕上げることが
できると共に、刺繍品質等を効果的に向上できる。
【0102】また、本実施の形態によると、刺繍機1に
差動装置40を設けることにより、糸抜け、釜抜けのタ
イミングを早め、天秤10で上糸を無理なく引き上げる
ことができるために、糸調子9による糸張力を、例えば
30〜40g(従来技術では100〜150g)程度ま
で下げることができ、上糸が余分に引き出されるのを防
止できると共に、縫い幅または振り幅が大きい刺繍柄で
あっても、ミシン針12を高速で運針することができ
る。
【0103】そして、回転釜25の回転位相を早めて相
対的に天秤10のタイミングを遅くすることにより、糸
張力を小さくして糸道の途中で発生する上糸の摩擦抵抗
を低減できるので、上糸を傷めないで運針を行うことが
でき、適度な糸締まりで、糸切れもなく、光沢のある高
品質の刺繍や縫製を高速で実現することができる。
【0104】また、厚い布や皮革等の縫製、または刺繍
を行う場合には、通常太い糸を用いるために、糸張力も
大きくなるが、本実施の形態では、差動装置40を設け
ることにより、糸張力を従来よりも小さくして、回転釜
25等の損耗を抑えることができ、かつ高速な運針を実
現できる。
【0105】また、本実施の形態によると、差動装置4
0のケーシング41内には入力軸42と出力軸44との
間に位相差発生機構47を設け、該位相差発生機構47
を、入力軸42、出力軸44から径方向に離間してケー
シング41に設けられた中間軸48と、入力軸42と中
間軸48との間に設けられ互いに噛合したはすば歯車4
9,51と、中間軸48と出力軸44との間に設けられ
互いに噛合した平歯車52,53と、ケーシング41側
のカムフォロア57にカム溝56Aが係合することによ
り、はすば歯車51および平歯車52を中間軸48の軸
方向に摺動変位させるカムホイール56とにより構成し
ている。
【0106】このため、主軸7により回転伝達機構14
等を介して入力軸42を図6中の矢示A方向に回転駆動
したときに、はすば歯車49の回転をはすば歯車51に
逆向き(矢示B方向)の回転として伝え、カムホイール
56をはすば歯車51と一体に回転させることにより、
カムフォロア57を用いてカムホイール56の回転を軸
方向の変位に変換でき、カムホイール56をはすば歯車
51、平歯車52と一緒に図6中の矢示C,C′方向に
摺動変位できる。
【0107】この結果、はすば歯車49,51間の噛合
位置をはすば歯車51の軸方向変位に応じて変えること
ができ、例えばはすば歯車51が図6中の矢示C方向に
変位するときには、はすば歯車51をはすば歯車49に
対して回転位相を進ませるように相対回転でき、これに
よって、はすば歯車49,51間に進相方向の位相差を
発生させることができる。
【0108】また、はすば歯車51がカムホイール56
と一緒に図6中の矢示C′方向に変位するときには、は
すば歯車51をはすば歯車49に対して回転位相を遅ら
せるように相対回転でき、はすば歯車49,51間に遅
相方向の位相差を発生することができる。そして、この
間は平歯車52と平歯車53が互いに同一の回転位相で
噛合し続けるため、出力軸44を入力軸42に対しては
すば歯車49,51間と同様の位相差をもって回転させ
ることができる。
【0109】このように、本実施の形態による差動装置
40は、出力軸44の回転位相を入力軸42に対して変
化させ、等速回転する入力軸42の回転を出力軸44側
の不等速な回転に変換して出力することができる。そし
て、はすば歯車49,51等からなる位相差発生機構4
7を用いることにより、当該差動装置40の構造を簡素
化でき、小型、軽量化を図ることができる。
【0110】また、入力軸42と出力軸44との間に
は、中間軸48を介在させることにより、出力軸44を
入力軸42と同方向に回転させることができ、両者の回
転位相を第1,第2のはすば歯車49,51の噛合位置
に応じて円滑に変えることができる。そして、出力軸4
4の回転位相を安定して変化させ、その差動特性、信頼
性を確実に向上できると共に、異音等の発生も小さく抑
えることができる。
【0111】次に、図11および図12は本発明の第2
の実施の形態を示し、本実施の形態では前記第1の実施
の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明
を省略するものとする。しかし、本実施の形態の特徴
は、中間軸48と出力軸44との間に一対の歯車部材と
して第3のはすば歯車71と第4のはすば歯車72とを
設ける構成としたことにある。
【0112】ここで、第3,第4のはすば歯車71,7
2は、第1の実施の形態で述べた平歯車52,53に替
えて用いられいる。そして、これらのはすば歯車71,
72は、第1,第2のはすば歯車49,51と同様に構
成され、互いに同一の歯数、ピッチ円径D、ねじれ角β
等をもって形成されている。
【0113】そして、これらのはすば歯車71,72も
はすば歯車49,51と同様に、カムホイール56の軸
方向変位に従って歯面間の噛合位置が変わることによ
り、前記数1式のように最大位相角ψの範囲内で互いに
異なる回転位相をもって回転するものである。
【0114】また、はすば歯車72はストッパ筒72A
を有し、該ストッパ筒72Aにより出力軸44に対して
一体に固定されている。そして、はすば歯車72と中間
軸受ケース46との間に位置して出力軸44の外周側に
は筒体73が挿嵌され、該筒体73ははすば歯車72の
端面等に当接することにより、ケーシング41内で出力
軸44およびはすば歯車72が軸方向に変位するのを規
制している。
【0115】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果
を得ることができるが、特に本実施の形態では、位相差
発生機構47として第1,第2のはすば歯車49,51
と第3,第4のはすば歯車71,72とを用いる構成と
しているので、図12に示す特性線74のように入力軸
42と出力軸44との位相差をほぼ2倍に拡大すること
ができる。
【0116】即ち、カムホイール56が図11に示す初
期位置から矢示C方向に変位している間(例えば、図1
2中に示す回転位相0〜180度の範囲)では、はすば
歯車71,72がはすば歯車49,51と同様に、カム
ホイール56の軸方向変位に従って歯面間の噛合位置が
変わることによって、はすば歯車49,51間には進相
方向の位相差を発生でき、さらにはすば歯車71,72
間にも進相方向の位相差を発生することができる。
【0117】また、カムホイール56が図11に示す初
期位置から矢示C′方向に変位している間(例えば、図
12中に示す回転位相180〜360度の範囲)では、
はすば歯車71,72(はすば歯車49,51)間の噛
合位置が、カムホイール56の軸方向変位に従って歯面
間の噛合位置が変わることにより、はすば歯車49,5
1間には遅相方向の位相差を発生でき、さらにはすば歯
車71,72間にも遅相方向の位相差を発生することが
できる。
【0118】この結果、入力軸42が図12中に実線で
示す特性線60に沿ってほぼ一定の速度(例えば、4t
秒間に360度)で回転するときに、出力軸44は図1
2中に二点鎖線で示す特性線74に沿って曲線状のカー
ブを描くように不等速で回転するものである。
【0119】そして、入力軸42と出力軸44とは、回
転位相が0度、180度、360度の位置で位相がほぼ
一致するものの、時間t秒の時点で入力軸42の回転位
相が90度となったときには、出力軸44の回転位相を
最大位相角ψの2倍にほぼ対応する角度(2ψ)分だけ
進ませることができる。
【0120】また、時間3t秒の時点で入力軸42の回
転位相が270度となったときには、出力軸44の回転
位相を最大位相角ψの2倍にほぼ対応する角度(2ψ)
分だけ遅らせることができる。
【0121】従って、本実施の形態にあっては、第1の
実施の形態に比較して釜軸29の回転位相をより大きく
変えることができ、図10に例示した位相差ψ1 ,ψ2
等をより大きく変更することによって、刺繍品質を向上
することができる。
【0122】なお、前記第2の実施の形態では、第3,
第4のはすば歯車71,72を、第1,第2のはすば歯
車49,51と同一のねじれ角βをもって形成するもの
として述べたが、これに替えて、第1,第2のはすば歯
車49,51と第3,第4のはすば歯車71,72のね
じれ角を、例えば前記ねじれ角βの半分の角度(β/
2)に設定すれば、前記第1の実施の形態によるものと
同じ位相差を得ることができる。
【0123】また、第1,第2のはすば歯車49,51
または第3,第4のはすば歯車71,72のねじれ角
を、前記ねじれ角βの半分の角度(β/2)に設定すれ
ば、前記第1の実施の形態によるものと比較して1.5
倍の位相差を発生させることができる。
【0124】次に、図13ないし図23は本発明の第3
の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、差動装置
の差動カム手段を、第1,第2のはすば歯車と一体に回
転する第1,第2のカムホイールと、第1,第2のカム
フォロアが設けられ該第1,第2のカムホイール間に位
置する支点を中心にして回動する回動体等とにより構成
としたことにある。
【0125】なお、本実施の形態では前記第1の実施の
形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を
省略するものとする。
【0126】図中、80は本実施の形態で採用した差動
装置、81は当該差動装置80の外殻をなすケーシング
で、該ケーシング81は、第1の実施の形態で述べたケ
ーシング41とほぼ同様に有底の角筒体として形成さ
れ、底板部81A、前,後の側板部81B,81Cおよ
び左,右の側板部81D,81E等を有している。
【0127】82はケーシング81に回転可能に設けら
れた入力軸で、該入力軸82は左,右の側板部81D,
81Eに軸受ケース83,83等を介して支持され、そ
の左,右の端部82A,82Bはケーシング81外に突
出している。
【0128】そして、入力軸82はケーシング81外に
突出する一方の端部82A側が図2に例示した回転軸1
8に継手21等を介して連結され、主軸7によりほぼ一
定の速度で図13中の矢示A方向に等速回転されるもの
である。また、入力軸82の他方の端部82B側には後
述のカムホイール96が固定して設けられている。
【0129】84は入力軸82の外周側に設けられたス
トッパ筒で、該ストッパ筒84はケーシング81内に位
置して入力軸82に固定され、図13に示す右側の軸受
ケース83内に設けた軸受の内輪に当接している。そし
て、ストッパ筒84は、入力軸82がケーシング81内
で軸方向に変位するのを後述のストッパ筒91Aと共に
規制しているものである。
【0130】85は入力軸82から径方向に離間してケ
ーシング81に回転可能に設けられた出力軸を示し、該
出力軸85は左,右両端側が左,右の側板部81D,8
1Eに軸受ケース86,86等を介して支持されてい
る。
【0131】そして、出力軸85はケーシング81外に
突出する突出端側が図2に例示した回転軸23に継手2
2等を介して連結され、入力軸82と同方向(矢示A方
向)に回転駆動されるものである。
【0132】87は出力軸85の外周側に設けられたス
トッパ筒で、該ストッパ筒87はケーシング81内に位
置して出力軸85に固定され、図13に示す左側の軸受
ケース86内に設けた軸受の内輪に当接している。そし
て、ストッパ筒87は、出力軸85がケーシング81内
で軸方向に変位するのを後述のストッパ筒94Aと共に
規制しているものである。
【0133】88は入力軸82と出力軸85との間に配
設された位相差発生機構を示し、該位相差発生機構88
は、後述の中間軸89、はすば歯車91,92、平歯車
93,94およびカム装置95等により構成されている
ものである。
【0134】89は入力軸82、出力軸85から径方向
に離間してケーシング81に設けられた中間軸で、該中
間軸89は左,右の側板部81D,81Eに筒状のブッ
シュ90等を介して摺動可能に支持され、その左,右の
端部89A,89Bはケーシング81外に突出してい
る。
【0135】そして、中間軸89には後述のはすば歯車
92および平歯車93が固定して設けられ、中間軸89
は、はすば歯車92および平歯車93と一体に矢示B方
向に回転すると共に、軸方向(矢示K1 ,K2 方向)に
摺動変位するものである。また、ケーシング81外に突
出する中間軸89の端部89B側には後述のカムホイー
ル97が固定して設けられている。
【0136】91はケーシング81内に位置して入力軸
82に設けられた第1のはすば歯車で、該はすば歯車9
1はストッパ筒91Aを有し、該ストッパ筒91Aによ
り入力軸82に対して一体に固定されている。そして、
第1のはすば歯車91は相手方となる第2のはすば歯車
92に噛合し、両者は第1の実施の形態で述べたはすば
歯車49,51と同一の歯数、ピッチ円径およびねじれ
角等をもって形成されている。
【0137】92は中間軸89の外周側に固定して設け
られた第2のはすば歯車で、該第2のはすば歯車92は
第1のはすば歯車91に噛合し、第1のはすば歯車91
とは逆向き(図13中の矢示B方向)に回転する。そし
て、これらのはすば歯車91,92は、後述のカム装置
95で歯面間の噛合位置が変えられることにより、前記
数1式とほぼ同様の最大位相角ψの範囲内で互いに異な
る回転位相をもって回転するものである。
【0138】93ははすば歯車92から軸方向に離間し
て中間軸89の外周側に固定された歯車部材としての平
歯車で、該平歯車93は後述の平歯車94に噛合し、こ
れらの平歯車93,94は同一の回転位相で互いに逆向
きに回転するものである。
【0139】94はケーシング81内に位置して出力軸
85に設けられた歯車部材としての他の平歯車で、該平
歯車94は中間軸89側の平歯車93とほぼ同一の歯車
形状を有し、平歯車93に噛合している。また、平歯車
94はストッパ筒94Aを有し、該ストッパ筒94Aに
より出力軸85に対して一体に固定されている。そし
て、平歯車94は出力軸85と一体に回転するものであ
る。
【0140】95は位相差発生機構88の一部を構成す
る差動カム手段としてのカム装置を示し、該カム装置9
5は、後述のカムホイール96,97、支持ブロック9
8、フォロアサポート104およびカムフォロア10
9,110等により構成されている。
【0141】96は入力軸82の端部82B側に固定し
て設けられた第1のカムホイールで、該カムホイール9
6ははすば歯車91と一体に回転するように入力軸82
の端部82Bに固着され、その外周側には図13示す如
くオフセット量Sのサイン曲線に従って斜めに延びるカ
ム溝96Aが形成されている。この場合、カム溝96A
のオフセット量Sは、例えばS=10mm程度に設定す
るのがよい。
【0142】そして、カムホイール96はカム溝96A
が図16に示す如くカムフォロア109に係合すること
により、入力軸82の回転に従ってフォロアサポート1
04を矢示J1 ,J2 方向に回動するものである。
【0143】97は中間軸89の端部89B側に固定し
て設けられた第2のカムホイールで、該カムホイール9
7ははすば歯車92と平歯車93と一体に回転するよう
に中間軸89の端部89Bに固着され、その外周側には
中間軸89の周方向に延びるカム溝としての環状溝97
Aが形成されている。
【0144】そして、カムホイール97の環状溝97A
には、図16に示す如く後述のカムフォロア110が係
合することにより、カムホイール97は中間軸89と一
体に軸方向(図13中の矢示K1 ,K2 方向)に変位す
るものである。
【0145】98はカムホイール96,97の後側に配
設された支持ブロックで、該支持ブロック98は、図1
4ないし図17に示す如くケーシング81の底板部81
A上に台座99等を介して設けられ、後述の支軸102
を介してフォロアサポート104等を回動可能に支持す
るものである。また、支持ブロック98には、図15に
示すように上,下方向に延びる長穴状の取付穴98Aが
形成されている。
【0146】100は支持ブロック98の取付穴98A
内に固定ねじ101を用いて取付けられたスライド板
で、該スライド板100は取付穴98A内に上,下(矢
示H1,H2 方向)にスライド可能に配設され、支軸1
02と一緒に固定ねじ101を用いて支持ブロック98
に対し固定されるものである。
【0147】ここで、スライド板100を取付穴98A
内で矢示H1 方向に上昇させた場合には、後述のカムフ
ォロア109,110に対する支軸102の相対位置が
変わり、図16に示す支軸102とカムフォロア110
との間隔L1 が相対的に小さくなり、支軸102とカム
フォロア109との間隔L2 は相対的に大きくなる(L
2 >L1 )ように調整される。
【0148】また、スライド板100を取付穴98A内
で矢示H2 方向に下降させた場合には、図16に示す支
軸102とカムフォロア110との間隔L1 が相対的に
大きくなり、支軸102とカムフォロア109との間隔
L2 は相対的に小さくなる(L2 <L1 )ように調整さ
れるものである。
【0149】102はスライド板100に圧入等の手段
を用いて固定された支軸で、該支軸102は図16に示
す如くカムホイール96,97のほぼ中間となる位置に
配設され、後述するフォロアサポート104の回動支点
を構成するものである。そして、支軸102は先端側に
大径の頭部102Aを有し、支軸102の長さ方向途中
部位にはナット103が螺着される。
【0150】そして、該ナット103は頭部102Aと
の間でフォロアサポート104を挟持するように支軸1
02に取付けられ、これにより支軸102はフォロアサ
ポート104を支持ブロック98(スライド板100)
に対して回動可能に支持するものである。
【0151】104はカムホイール96の回転をカムホ
イール97の軸方向変位に変換する回動体としてのフォ
ロアサポートで、該フォロアサポート104は、後述の
カムフォロア板105、一対の保持板106,106お
よび締結ボルト108等により構成されている。
【0152】105はカムフォロア109,110が取
付けられたカムフォロア板で、該カムフォロア板105
には、図19、図20に示すように上,下に離間して筒
状の取付部105A,105Bが設けられ、該取付部1
05A,105Bにはカムフォロア109,110がそ
れぞれ取付けられている。
【0153】また、カムフォロア板105には、取付部
105A,105B間に位置して上,下方向に延びる長
穴105Cが形成され、該長穴105C内には後述のス
ペーサ107等が上,下方向に相対移動可能に挿通され
る。
【0154】さらに、カムフォロア板105には、取付
部105A,105Bの左,右両側に離間して他の長穴
105D,105D,…が合計4個形成され、これらの
長穴105D内には後述の締結ボルト108が上,下方
向に相対移動可能に挿入されるものである。
【0155】106,106はカムフォロア板105を
前,後から挟持するように保持する一対の保持板で、該
各保持板106は、図21、図22に示すように略四角
形の平板からなり、その中心側には支軸102がベアリ
ング等を用いて回転可能に取付けられている。
【0156】また、保持板106,106間には支軸1
02の外周側に位置して筒状のスペーサ107が配設さ
れ、該スペーサ107により保持板106,106間に
は、カムフォロア板105の板厚Tに対応する隙間が形
成されている。
【0157】また、保持板106には支軸102の上,
下に離間して略U字状をなす切欠き106A,106B
が形成され、該切欠き106A,106B内には、カム
フォロア板105の取付部105A,105Bが上,下
に相対移動可能に挿入される。
【0158】さらに、保持板106には切欠き106
A,106Bの左,右両側に離間してねじ穴106C,
106C,…が合計4個形成され、これらのねじ穴10
6Cにはそれぞれ締結ボルト108が螺合されるもので
ある。
【0159】108,108,…はカムフォロア板10
5を保持板106,106間に固定する締結ボルトで、
該各締結ボルト108は、図17に示すようにカムフォ
ロア板105を保持板106,106間に配置した状態
で、保持板106のねじ穴106Cにそれぞれ螺着され
ることにより、カムフォロア板105を保持板106,
106間に挟持した状態に保持するものである。
【0160】また、各締結ボルト108を緩めた状態で
は、カムフォロア板105が保持板106,106間
で、図19に示す長穴105C,105Dに沿って相対
移動可能となる。そして、この状態でスライド板100
を支持ブロック98の取付穴98A内で上,下に移動さ
せることにより、支軸102とカムフォロア109,1
10との相対位置(図16に示す間隔L1 ,L2 )を可
変に調整できるものである。
【0161】109はカムフォロア板105の取付部1
05Aにナット109A等を介して設けられた第1のカ
ムフォロアで、該カムフォロア109は回転可能なロー
ラ等からなり、カムホイール96のカム溝96Aに常時
係合している。そして、カムフォロア109は、カムホ
イール96の回転をカム溝96Aの形状に応じてフォロ
アサポート104の矢示J1 ,J2 方向における回動変
位に変換するものである。
【0162】110はカムフォロア板105の取付部1
05Bにナット110A等を介して設けられた第2のカ
ムフォロアで、該カムフォロア110も回転可能なロー
ラ等からなり、カムホイール97の環状溝97Aに常時
係合している。そして、カムフォロア110は、図13
に示す矢示J1 ,J2 方向におけるフォロアサポート1
04の回動変位を中間軸89の軸方向変位(図13中の
矢示K1 ,K2 方向)に変換するものである。
【0163】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果
を得ることができ、例えばカムホイール96のカム溝9
6Aを、例えばS=10mm程度のオフセット量Sとし
た場合に、図23に示す特性線111のように、出力軸
85の回転位相を入力軸82(特性線60)に対して変
化させることができる。
【0164】即ち、本実施の形態にあっては、入力軸8
2によりカムホイール96を矢示A方向に回転すると、
図13に示す初期位置からフォロアサポート104が支
軸102を中心として矢示J1 方向に回動される。そし
て、フォロアサポート104が矢示J1 方向に回動する
ときには、カムホイール97がカムフォロア110を介
して図13中の矢示K1 方向に押動される。
【0165】これにより、中間軸89は、はすば歯車9
2、平歯車93と一緒に図13中の矢示K1 方向に摺動
変位し、はすば歯車91,92間の噛合位置が変わるた
め、はすば歯車92をはすば歯車91に対して回転位相
を遅らせるように相対回転でき、中間軸89が図13に
示す初期位置から矢示K1 方向に変位している間(例え
ば、図23中に示す回転位相0〜180度の範囲)で
は、入力軸82と出力軸85との間に遅相方向の位相差
を発生できる。
【0166】そして、この場合には、フォロアサポート
104が矢示J1 方向に回動するときに、カムホイール
97をカムフォロア110を介して図13中の矢示K1
方向に押動する構成であるため、例えばカム溝96Aの
オフセット量Sを、S=10mmとした場合、入力軸8
2の回転位相が例えば90度となったときに、出力軸8
5の回転位相を最大位相角ψにほぼ対応する角度分だけ
遅くすることができる。
【0167】また、入力軸82の回転位相が180度を
越えると、フォロアサポート104は矢示J2 方向に回
動するようになり、このときにはカムホイール97がカ
ムフォロア110を介して図13中の矢示K2 方向に押
動される。そして、この場合には、はすば歯車92をは
すば歯車91に対して回転位相を進ませるように相対回
転できる。
【0168】そして、中間軸89が図13に示す初期位
置から矢示K2 方向に変位している間(例えば、図23
中に示す回転位相180〜360度の範囲)では、入力
軸82と出力軸85との間に進相方向の位相差を発生で
き、入力軸82の回転位相が例えば270度となったと
きに、出力軸85の回転位相を最大位相角ψにほぼ対応
する角度分だけ進めることができる。
【0169】このように、フォロアサポート104は、
カムホイール96のカム溝96Aの形状に沿って矢示J
1 ,J2 方向に回動し、はすば歯車92を中間軸89と
共に軸方向変位させることによって、入力軸82と出力
軸85との回転位相に位相差を発生でき、前記実施の形
態とは異なる位相特性を実現することができる。
【0170】一方、図17に示す締結ボルト108を緩
めた状態で、カムフォロア板105を保持板106,1
06間で図18、図19に示す長穴105C,105D
に沿って相対移動させると共に、スライド板100を支
持ブロック98の取付穴98A内で上,下に移動させた
ときには、支軸102とカムフォロア109,110と
の相対位置(図16に示す間隔L1 ,L2 )を可変に調
整できる。
【0171】そして、スライド板100を取付穴98A
内で矢示H1 方向に上昇させ、支軸102とカムフォロ
ア110との間隔L1 を小さくし、支軸102とカムフ
ォロア109との間隔L2 を大きく(L2 >L1 )した
場合には、入力軸82と出力軸85との位相差を比率
(L1 /L2 )分だけ小さくするように変更することが
できる。
【0172】また、スライド板100を取付穴98A内
で矢示H2 方向に下降させ、支軸102とカムフォロア
110との間隔L1 を大きくし、支軸102とカムフォ
ロア109との間隔L2 を小さく(L2 <L1 )した場
合には、入力軸82と出力軸85との位相差を比率(L
1 /L2 )分だけ大きくするように変更することができ
る。
【0173】そして、前述した間隔L1 ,L2 の合計長
さ(L1 +L2 )、カム溝96Aの傾き(オフセット量
S)、カムホイール96のピッチ円径等を適宜に変える
ことにより、任意の位相特性を得ることができる。
【0174】なお、カム溝96Aのオフセット量Sを、
S=10mmよりも大きく、例えばS=20mm程度と
した場合には、前述した90度(270度)の位置より
も60度(300度)に近い位置で入力軸82と出力軸
85の位相差を最大とすることができる。
【0175】この場合、カムフォロア109の外周がカ
ムホイール96のカム溝96A周壁に当たる角度は、カ
ム溝96Aの勾配(リフト)に従って徐々に変わるた
め、前記実施の形態で述べたように、入力軸82と出力
軸85の位相差が90度、270度では最大とはなら
ず、例えば約60度、300度の位置で最大の位相差に
することができる。
【0176】次に、図24ないし図26は本発明の第4
の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、1本の入
力軸と2本の出力軸との間にそれぞれ中間軸を設け、入
力軸の回転をそれぞれ一対の歯車部材を介して各中間軸
に伝えると共に、該各中間軸の回転をそれぞれ第1,第
2のはすば歯車を介して各出力軸へと伝える構成とした
ことにある。
【0177】なお、本実施の形態では前記第1の実施の
形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を
省略するものとする。
【0178】図中、120は本実施の形態で採用した差
動装置、121は当該差動装置120の外殻をなすケー
シングで、該ケーシング121は、第1の実施の形態で
述べたケーシング41とほぼ同様に有底の角筒体として
形成され、底板部121A、前,後の側板部121B,
121Cおよび左,右の側板部121D,121E等を
有している。
【0179】122はケーシング121に回転可能に設
けられた入力軸で、該入力軸122は左,右両端側が
左,右の側板部121D,121Eに軸受ケース12
3,123等を介して支持されている。そして、入力軸
122はケーシング121外に突出する突出端側が、例
えば主軸7に回転伝達機構(図示せず)等を介して連結
され、主軸7によりほぼ一定の速度で図24中の矢示A
方向に等速回転されるものである。
【0180】124は入力軸122の外周側に設けられ
たストッパ筒で、該ストッパ筒124はケーシング12
1内に位置して入力軸122に固定され、図24に示す
左側の軸受ケース123内に設けた軸受の内輪に当接し
ている。そして、ストッパ筒124は、入力軸122が
ケーシング121内で軸方向に変位するのを後述のスト
ッパ筒134Aと共に規制しているものである。
【0181】125,126は入力軸122からそれぞ
れ径方向に離間してケーシング121に回転可能に設け
られた出力軸を示し、該出力軸125,126は左,右
両端側が左,右の側板部121D,121Eにそれぞれ
軸受ケース127,127,…等を介して支持されてい
る。
【0182】そして、出力軸125,126はケーシン
グ121外に突出する突出端側が外部の駆動対象物、例
えば天秤10の駆動軸(図示せず),図2に例示した回
転軸23(釜軸29に連結される軸)にそれぞれ別々に
連結され、入力軸122と同方向(矢示A方向)に回転
駆動されるものである。
【0183】128,128は出力軸125,126の
外周側に設けられたストッパ筒で、該各ストッパ筒12
8はケーシング121内に位置して出力軸125,12
6に固定され、図24に示す右側の軸受ケース127内
に設けた軸受の内輪に当接している。そして、各ストッ
パ筒128は、出力軸125,126がケーシング12
1内で軸方向に変位するのを後述のストッパ筒139
A,140Aと共に規制しているものである。
【0184】129,130は入力軸122と出力軸1
25,126との間に配設された位相差発生機構を示
し、該位相差発生機構129,130は、後述の中間軸
131,132、平歯車134,135,136、はす
ば歯車137,138,139,140およびカム装置
141,142等により構成されている。
【0185】131,132は入力軸122と出力軸1
25,126との間に径方向に離間してケーシング12
1に設けられた中間軸で、該中間軸131,132は
左,右両端側が左,右の側板部121D,121Eにキ
ャップ133等を介して取付けられている。
【0186】そして、中間軸131,132は、ケーシ
ング121内で後述の平歯車135,136、はすば歯
車137,138およびカムホイール143,144を
回転可能で、かつ軸方向に摺動変位可能に支持するもの
である。
【0187】134はケーシング121内に位置して入
力軸122に設けられた歯車部材としての平歯車で、該
平歯車134は後述の平歯車135,136に噛合し、
平歯車134と平歯車135,136とは同一の回転位
相で互いに逆向きに回転するものである。また、平歯車
134はストッパ筒134Aを有し、該ストッパ筒13
4Aにより入力軸122に対して一体に固定されてい
る。
【0188】135,136はケーシング121内に位
置して中間軸131,132に設けられた歯車部材とし
ての他の平歯車で、該平歯車135,136は入力軸1
22側の平歯車134とほぼ同一の歯車形状を有し、そ
れぞれが平歯車134に噛合している。そして、平歯車
135,136はそれぞれ中間軸131,132と一体
に回転するものである。
【0189】137,138は中間軸131,132の
外周側にカムホイール143,144と共に摺動可能に
挿嵌された第1のはすば歯車で、該第1のはすば歯車1
37,138は後述する第2のはすば歯車139,14
0に噛合し、第2のはすば歯車139,140とは逆向
き(図24中の矢示B方向)に回転する。
【0190】139,140はケーシング121内に位
置して出力軸125,126に設けられた第2のはすば
歯車で、該はすば歯車139,140はストッパ筒13
9A,140Aを有し、該ストッパ筒139A,140
Aにより出力軸125,126に対して一体に固定され
ている。
【0191】そして、第2のはすば歯車139,140
は相手方となる第1のはすば歯車137,138に噛合
し、これらのはすば歯車137,139(138,14
0)は歯面間の噛合位置が変わることにより、前記数1
式のように最大位相角ψの範囲内で互いに異なる回転位
相をもって回転するものである。
【0192】ここで、はすば歯車137,139(13
8,140)は、第1の実施の形態で述べたはすば歯車
49,51とほぼ同様に互いに同一の歯数、ピッチ円径
等をもって形成されている。
【0193】しかし、はすば歯車137,139とはす
ば歯車138,140とは、例えば異なるねじれ角を有
することにより、後述の如くはすば歯車139とはすば
歯車140の回転位相を異ならしめることが可能とな
る。
【0194】141,142は位相差発生機構129,
130の一部を構成する差動カム手段としてのカム装置
で、該カム装置141,142は、後述のカムホイール
143,144およびカムフォロア145,146等に
より構成されている。
【0195】143,144は中間軸131,132の
外周側に平歯車135,136、はすば歯車137,1
38と共に摺動可能に挿嵌されたカムホイールで、該カ
ムホイール143,144は平歯車135,136とは
すば歯車137,138との間に配設され、その外周側
には図25に例示する如くオフセット量Sをもって斜め
に延びるカム溝143A,144Aが形成されている。
【0196】しかし、該カムホイール143,144
は、カム溝143A,144Aの形状が互いに異なるこ
とにより、後述の如く出力軸125,126(はすば歯
車139,140)の回転位相を互いに異ならしめるこ
とが可能となる。
【0197】そして、カムホイール143,144は、
それぞれのカム溝143A,144Aがカムフォロア1
45,146に係合することにより、入力軸122の回
転に従ってそれぞれ矢示C,C′方向に摺動変位するも
のである。
【0198】145,146は筒状のホルダ147等を
介してケーシング121の後側の側板部121Cに設け
られたカムフォロアで、該カムフォロア145,146
は回転可能なローラ等からなり、カムホイール143,
144のカム溝143A,144Aに常時係合してい
る。
【0199】そして、カムフォロア145,146は、
カムホイール143,144の回転をカム溝143A,
144Aの形状に応じて軸方向の摺動変位に変換し、カ
ムホイール143,144を平歯車135,136、は
すば歯車137,138と一緒に図24中の矢示C,
C′方向に摺動変位させるものである。
【0200】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果
を得ることができる。特に本実施の形態では、入力軸1
22の回転を、中間軸131,132、平歯車134,
135,136、はすば歯車137,138,139,
140およびカム装置141,142等からなる位相差
発生機構129,130により出力軸125,126へ
とそれぞれ伝達する構成としている。
【0201】このため、例えばはすば歯車137,13
9とはすば歯車138,140とのねじれ角を異ならし
めることにより、出力軸125,126を入力軸122
に対し互いに異なる位相差をもって回転でき、出力軸1
25,126から互いに異なる回転位相の出力を取出す
ことができる。
【0202】そして、出力軸125は天秤10の駆動軸
に連結されることにより、図26中に実線で示す特性線
St1に沿って天秤10を上,下に駆動でき、従来技術に
よる天秤の特性線St に対して、例えば糸抜け点θg1か
ら釜抜け点θh1に亘る範囲で位相を進めることができ
る。
【0203】この場合、天秤10の駆動軸は、例えば糸
掛け点θd1の近傍位置(例えば、主軸7の回転角θが2
00度程度となる位置)が起点となるように出力軸12
5に連結され、糸抜け点θg1から釜抜け点θh1に亘る範
囲で位相を、例えば10度程度進めるように設定されて
いる。
【0204】また、他方の出力軸126は、前記第1の
実施の形態とほぼ同様に釜軸29側の回転軸23等に連
結され、図26中に実線で示す特性線Sk1に沿って外釜
26の剣先26Bを上下動させるように外釜26を回転
駆動できる。
【0205】この結果、回転釜25による上糸の糸掛け
点θd1から釜抜け点θh1までの動作特性を変えることが
できる共に、この間に天秤10が上糸を引き上げるスピ
ードも速めるように調整でき、釜軸29と天秤10,針
棒11との相対動作特性を適正化することによって、刺
繍品質を向上できる。
【0206】また、図26に示す特性線Sk1の如く、回
転釜25の糸抜け点θg1から釜抜け点θh1に亘るタイミ
ングを進み位相に設定すると共に、特性線St1の如く天
秤10で上糸を引き上げるタイミングも早くし引き上げ
速度を速くできるので、刺繍布13の保持枠等を枠移動
させるときのスピードを上げることが可能となり、刺繍
スピードを速くして作業性を向上することができる。
【0207】また、振り幅の大きい縫い目を形成するよ
うな場合に、保持枠等の枠移動量を大きくしても、上糸
のたるみに余裕を与えることが可能となり、糸切れの発
生を防止できると共に、縫い目の締まりを適正化して刺
繍の品質を高め、刺繍の縫い上がりを綺麗にすることが
できる。
【0208】また、このような作用効果は、カムホイー
ル143,144のカム溝143A,144Aの形状を
互いに異ならしめてもよく、カムホイール143,14
4の回転位置の起点を互いに異ならしめてもよく、この
場合でも、出力軸125,126から互いに異なる回転
位相の出力を取出すことができる。
【0209】さらに、差動装置120を用いて、回転釜
25(釜軸29)の回転位相を変えるだけでなく、天秤
10の位相も変える構成としているので、主軸7に対す
る天秤10、釜軸29の位相を相互に変え、そのタイミ
ングを最適に調整でき、例えば回転釜25の位相を早め
て相対的に天秤10のタイミングを遅くすることができ
る。
【0210】これにより、糸張力を小さくして糸道の途
中で発生する上糸の摩擦抵抗を低減できるので、上糸を
傷めないで運針を行うことができ、適度な糸締まりで、
糸切れもなく、光沢のある高品質の刺繍や縫製を高速で
実現することができる。
【0211】また、厚い布や皮革等の縫製、または刺繍
を行う場合には、通常太い糸を用いるために、糸張力も
大きくなるが、本実施の形態では、差動装置120を設
けることにより、糸張力を従来よりも小さくして、回転
釜25等の損耗を抑えることができ、かつ高速な運針を
実現できる。
【0212】次に、図27は本発明の第5の実施の形態
を示し、本実施の形態では前記第1の実施の形態と同一
の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するも
のとする。しかし、本実施の形態の特徴は、主軸モータ
151と針駆動部152との間に差動装置153を設
け、該差動装置153により針駆動部152を主軸モー
タ151とは異なる回転位相で駆動する構成としたこと
にある。
【0213】ここで、主軸モータ151は第1の実施の
形態で述べた主軸7と同様の主軸(図示せず)を駆動
し、この主軸の回転を針駆動部152(針棒の駆動部)
に伝えることにより、該針駆動部152で針棒11をミ
シン針12と共に上,下に往復動させるものである。
【0214】また、差動装置153の出力側には他の差
動装置154が設けられ、該差動装置154は前記第4
の実施の形態で述べた差動装置120と同様に、1本の
入力軸に対して2本の出力軸(いずれも図示せず)を備
える構成となっている。そして、差動装置154は入力
軸が差動装置153の出力側に連結され、2本の出力軸
は、第4の実施の形態と同様に天秤10の駆動部と釜軸
29の駆動部とに連結されている。
【0215】かくして、このように構成される本実施の
形態でも、差動装置154を用いることにより釜軸29
と天秤10との相対動作特性を適正化でき、前記第4の
実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0216】また、本実施の形態では、主軸モータ15
1と針駆動部152との間に設けた差動装置153によ
り、針駆動部152を主軸モータ151とは異なる回転
位相で駆動する構成としているため、図9に例示した針
突入点?bから針抜け点?eまでの間隔を、針のストローク
を変えることなく短くし、ミシン針12が刺繍布13よ
りも上方に位置する時間を長くするように、針棒11の
動作特性を変えることができる。
【0217】この結果、ミシン針12が刺繍布13から
上方に針抜けしている間に、刺繍布13を保持枠と共に
前,後、左,右へと枠移動する時間を長くとることがで
き、例えば振り幅の大きい刺繍柄等であっても、枠移動
のタイミングを十分に確保して刺繍品質を向上すること
ができる。
【0218】そして、振り幅の大きい縫い目を形成する
ような場合に、保持枠等の枠移動量を大きくしても、上
糸のたるみに余裕を与えることが可能となるので、糸切
れの発生を防止できると共に、縫い目の締まりを適正化
して刺繍の品質を高め、刺繍の縫い上がりを綺麗にする
ことができる。
【0219】なお、前記第5の実施の形態では、差動装
置153と差動装置154とを別体の装置とした場合を
例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば
図27中に二点鎖線で示す単一の差動装置161内に、
差動装置153と差動装置154とを組込む構成とする
ことも可能であり、この場合には、差動装置161を1
入力−3出力の差動装置として構成すればよいものであ
る。
【0220】また、前記第1の実施の形態では、中間軸
受ケース46を用いて入力軸42と出力軸44とを同軸
に配設した場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれ
に限らず、例えば2個の中間軸受ケース等を用いて入力
軸42と出力軸44とを互いに異なる軸線上に配設して
もよい。この点は他の実施の形態についても同様であ
る。
【0221】また、前記第3の実施の形態では、図13
に例示したようにカム装置95をケーシング81の側板
部81Eに対して外側となる位置に設ける構成としてい
る。このようなカム装置95は、例えばカムホイール9
6,97を入力軸82,中間軸89に対して着脱可能に
取付ける構成とすることにより、カム装置95全体を交
換可能な構成とすることができる。
【0222】また、カムホイール96(97)のカム溝
96A(カム溝としての環状溝97A)の形状を変更し
たり、はすば歯車91,92のねじれ角βを変えたりす
ることにより、入力軸と出力軸との回転位相を増,減す
ることができる。この点は他の実施の形態についても同
様である。
【0223】また、前記各実施の形態で述べた各はすば
歯車、平歯車およびカム装置は、その組合わせを適宜に
変更することができ、それぞれの組合わせに応じて種々
の差動装置を実現できる。特に、ケーシング外にカム装
置を設けることにより、カム装置をユニットとして交換
することが可能となり、任意の位相差をもった差動装置
を実現することができるものである。
【0224】一方、前記第4の実施の形態でも述べたよ
うに、入力軸に対して2本以上の出力軸を設ける構成と
してもよく、これらの2本以上の出力軸を、入力軸に対
してそれぞれ異なる回転位相で回転駆動する構成として
もよいものである。また、当該差動装置を複数組シリア
ルに連結することにより、系列的に位相を変えて協動特
性を得ることができる。
【0225】また、前記第3の実施の形態にあっては、
前述した間隔L1 ,L2 の合計長さ(L1 +L2 )、カ
ム溝96Aの傾き(オフセット量S)、カムホイール9
6のピッチ円径等を適宜に変えることにより、任意の位
相特性を得ることができる。
【0226】さらに、前記各実施の形態では、差動装置
付ミシンを刺繍機1に適用した場合を例に挙げて説明し
たが、本発明はこれに限らず、例えば工業用ミシン、家
庭用ミシン等にも広く適用できるものである。
【0227】
【発明の効果】以上詳述した如く、請求項1に記載の発
明は、針棒、天秤および釜軸のうち少なくとも釜軸を主
軸とは異なる位相で回転させる差動装置を、ケーシン
グ、入力軸、出力軸および位相差発生機構により構成し
ているため、主軸の回転に従って差動装置の入力軸を回
転する間に、位相差発生機構により出力軸の回転位相を
入力軸に対して変化させ、位相差をもった回転を出力軸
から下糸側の釜軸へと伝えることができ、釜軸の回転位
相を主軸に対して変えることができる。従って、主軸に
対して釜軸の回転位相を変えることにより、縫い目を綺
麗に仕上げることができ、刺繍品質等を向上できる。
【0228】また、差動装置により糸抜け、釜抜けのタ
イミングを早め、天秤で上糸を無理なく引き上げること
ができるために、糸調子による糸張力を従来技術よりも
下げることができ、上糸が余分に引き出されるのを防止
できると共に、縫い幅または振り幅が大きい柄であって
も、ミシン針を高速で運針することができる。そして、
糸張力を小さくして糸道の途中で発生する上糸の摩擦抵
抗を低減できるので、上糸を傷めないで運針を行うこと
ができ、適度な糸締まりで、糸切れもなく、光沢のある
高品質の刺繍や縫製を高速で実現することができる。
【0229】また、請求項2に記載の発明によると、差
動装置は、釜軸の回転位相を針棒が下死点になる位置を
起点として変えることにより、前記釜軸の回転に伴って
回転釜で上糸と下糸を絡め前記回転釜から上糸が釜抜け
するタイミングを変化させる構成としているため、釜軸
と針棒、天秤との相対動作特性を変えることができ、回
転釜の剣先が上糸を引っ掛けて回転釜に取り込んだ後
に、回転釜で上糸と下糸を絡め、この上糸が回転釜から
完全に抜け出す釜抜け点までのタイミングを相対的に早
めることができる。従って、釜軸と天秤,針棒との相対
動作特性を適正化することができ、糸切れが発生する可
能性を低減できると共に、糸締まり等を向上でき、刺繍
の縫い上がりを綺麗にすることができる。
【0230】また、請求項3に記載の発明は、位相差発
生機構を、第1,第2のはすば歯車と、入力軸の回転に
従って第1,第2のはすば歯車を軸方向に相対移動させ
る差動カム手段とにより構成しているので、差動カム手
段を入力軸の回転に従って作動させ、第2のはすば歯車
を第1のはすば歯車に対して回転位相を進めたり、遅ら
せたりすることができ、出力軸の回転位相を入力軸に対
して簡単に変えることができる。また、位相差発生機構
にはすば歯車を用いて構造を簡素化でき、装置全体の小
型、軽量化を図ることができる。
【0231】また、請求項4に記載の発明は、入力軸と
出力軸との間に中間軸を介在させることにより、出力軸
を入力軸と同方向に回転させることができ、両者の回転
位相を第1,第2のはすば歯車の噛合位置に応じて変え
ることができる。
【0232】また、請求項5に記載の発明は、入力軸に
従って回転するカムホイールと、該カムホイールと係合
するようにケーシング側に設けられ該カムホイールの回
転に従って第1または第2のはすば歯車を軸方向に変位
させるカムフォロアとを備える構成しているため、カム
ホイールに係合するカムフォロアにより、カムホイール
の回転を軸方向の変位に変換でき、このときに第1のは
すば歯車または第2のはすば歯車を軸方向に変位させる
ことによって、両歯車の噛合位置を変化させ回転位相を
円滑に変えることができる。
【0233】また、請求項6に記載の発明は、差動カム
手段を、第1のはすば歯車と一体に回転する第1のカム
ホイールと、第2のはすば歯車と一体に回転する第2の
カムホイールと、ケーシング側に設けられ前記第1,第
2のカムホイール間に位置する支点を中心にして回動可
能となった回動体と、該回動体にそれぞれ設けられ前記
第1,第2のカムホイールに係合する第1,第2のカム
フォロアとにより構成しているため、第1のカムフォロ
アにより第1のカムホイールの回転を、支点を中心とし
た回動体の回動変位に変換することができ、このときに
第2のカムフォロアを回動体と一緒に回動変位させ、第
2のカムホイールを介して第2のはすば歯車を軸方向に
変位させつつ、第1,第2のはすば歯車の噛合位置を変
えることができ、これによって、両歯車の回転位相を安
定して変化させることができる。
【0234】また、請求項7に記載の発明によると、第
1,第2のカムフォロアは回動体に対して位置調整可能
に取付け、前記回動体は第1,第2のカムフォロアと支
点との間の間隔L1 ,L2 を可変に調整する構成として
いるため、第1,第2のカムフォロアと支点との間の間
隔L1 ,L2 を可変に調整することにより、入力軸と出
力軸との位相差を間隔L1 ,L2 の比率(L1 /L2 )
に応じて変えることができ、回転位相の変更を容易に行
うことができる。
【0235】また、請求項8に記載の発明によると、第
1,第2のカムホイールは互いに異なる形状のカム溝を
有し、第1,第2のカムフォロアは前記第1,第2のカ
ムホイールのカム溝に係合する構成としているため、第
1,第2のカムホイールのカム形状に応じて入力軸と出
力軸の回転位相を適宜に変えることができる。
【0236】また、請求項9に記載の発明は、ケーシン
グに複数の出力軸を設け、該各出力軸と入力軸との間に
はそれぞれ位相差発生機構を設ける構成としているた
め、入力軸の回転をそれぞれの出力軸に位相差発生機構
を通じて伝達でき、単一の入力軸に対して複数の出力軸
から互いに回転位相の異なる出力を個別に取出すことが
できる。
【0237】また、請求項10に記載の発明によると、
複数の出力軸は天秤と釜軸とにそれぞれ異なる位相の回
転出力を伝える構成としているので、それぞれの出力軸
から天秤と釜軸とに互いに異なる位相の回転出力を伝え
ることができ、釜軸と天秤との相対動作特性を適正化
し、糸切れの発生を防止できると共に、縫い目の締まり
を良好にして刺繍品、縫製品等を綺麗に仕上げることが
できる。
【0238】さらに、請求項11に記載の発明は、主軸
を駆動する主軸モータと針棒の駆動部との間に、該針棒
の駆動部を前記主軸モータとは異なる回転位相で駆動す
る他の差動装置を設ける構成としているため、ミシン針
が針板(刺繍布等)よりも上方に位置する時間を長くす
るように針棒の動作特性を変えることができ、刺繍布等
を保持枠と共に前,後、左,右へと枠移動する時間を長
くとることができる。そして、振り幅の大きい縫い目を
形成するような場合に、保持枠等の枠移動量を大きくし
ても、上糸のたるみに余裕を与えることが可能となるの
で、糸切れの発生を防止できると共に、縫い目の締まり
を適正化して刺繍等の品質を高め、縫い上がりを綺麗に
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態による差動装置付ミ
シンを示す正面図である。
【図2】図1中の差動装置、釜ホルダおよび回転釜等を
拡大して示す正面図である。
【図3】図2中の回転釜を単体として示す外観図であ
る。
【図4】ボビンケースを取外した状態で図3中の矢示IV
−IV方向からみた回転釜の縦断面図である。
【図5】図4に示す回転釜の平面図である。
【図6】図1中の差動装置を拡大して示す縦断面図であ
る。
【図7】図6中の矢示VII−VII方向からみた差動装置の
断面図である。
【図8】図6中の入力軸と出力軸の回転位相を示す特性
線図である。
【図9】主軸の回転角に対する天秤、針棒および釜軸の
動作特性を示す特性線図である。
【図10】図9中の針棒と釜軸の動作特性を拡大して示
す特性線図である。
【図11】第2の実施の形態による差動装置を示す縦断
面図である。
【図12】図11中の入力軸と出力軸の回転位相を示す
特性線図である。
【図13】第3の実施の形態による差動装置を示す縦断
面図である。
【図14】図13中のカム装置等を示す差動装置の右側
面図である。
【図15】カム装置の支持ブロック、スライド板および
フォロアサポート等を図14中の矢示XV−XV方向からみ
た断面図である。
【図16】カム装置を図13中の矢示 XVI−XVI 方向か
ら拡大して示す断面図である。
【図17】カム装置を図13中の矢示XVII−XVII方向か
ら拡大して示す断面図である。
【図18】カム装置のフォロアサポートを図16中のXV
III−XVIII方向から拡大して示す断面図である。
【図19】図18中のカムフォロア板を第1,第2のカ
ムフォロアと共に示す正面図である。
【図20】カムフォロア板と第1,第2のカムフォロア
を図19中の矢示XX−XX方向から示す断面図である。
【図21】図18中の保持板を支軸と共に示す正面図で
ある。
【図22】保持板と支軸を図21中の矢示XXII−XXII方
向から示す断面図である。
【図23】図13中の入力軸と出力軸の回転位相を示す
特性線図である。
【図24】第4の実施の形態による差動装置を示す縦断
面図である。
【図25】図24に示す差動装置の平面図である。
【図26】主軸の回転角に対する天秤および釜軸の動作
特性を示す特性線図である。
【図27】第5の実施の形態による差動装置付ミシンの
構成図である。
【図28】従来技術による天秤、針棒および釜軸の動作
特性を示す特性線図である。
【符号の説明】
1 刺繍機(ミシン) 2 基台 6 ヘッド部 7 主軸 8 糸掛け 9 糸調子 10 天秤 11 針棒 12 ミシン針 13 刺繍布 24 釜ホルダ 25 回転釜 26 外釜 26B 剣先 27 中釜 29 釜軸 40,80,120,153,154 差動装置 41,81,121 ケーシング 42,82,122 入力軸 44,85,125,126 出力軸 47,88,129,130 位相差発生機構 48,89,131,132 中間軸 49,91,137,138 第1のはすば歯車 51,92,139,140 第2のはすば歯車 52,53,93,94,134,135,136 平
歯車(歯車部材) 55,95,141,142 カム装置(差動カム手
段) 56,143,144 カムホイール 56A,96A,143A,144A カム溝 57,145,146 カムフォロア 71 第3のはすば歯車 72 第4のはすば歯車 96 第1のカムホイール 97 第2のカムホイール 102 支軸(支点) 104 フォロアサポート(回動体) 109 第1のカムフォロア 110 第2のカムフォロア 151 主軸モータ 152 針駆動部(針棒の駆動部)
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成12年11月10日(2000.11.
10)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0216
【補正方法】変更
【補正内容】
【0216】また、本実施の形態では、主軸モータ15
1と針駆動部152との間に設けた差動装置153によ
り、針駆動部152を主軸モータ151とは異なる回転
位相で駆動する構成としているため、図9に例示した針
突入点θb から針抜け点θeまでの間隔を、針のストロ
ークを変えることなく短くし、ミシン針12が刺繍布1
3よりも上方に位置する時間を長くするように、針棒1
1の動作特性を変えることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉本 正 大阪府大阪市中央区谷町8丁目2番3号 ユニテックエンジニアリング株式会社内 (72)発明者 久保田 照吉 東京都大田区多摩川2丁目15番12号 日本 電波株式会社内 Fターム(参考) 3B150 AA15 AA21 CB03 CB04 CD03 CD04 CE01 CE24 CE25 DG03 DG11 JA19 JA26 JA32 JA33 JA37 QA04 QA06

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ミシンの主軸と、該主軸の回転に従って
    駆動され上糸の繰出しと糸締めを行う天秤と、前記主軸
    の回転に従って往復動されミシン針を運針させる針棒
    と、前記ミシン針の運針に応じて上糸と下糸とに絡みを
    与えるため前記主軸の回転に従って駆動される下糸側の
    釜軸と、前記針棒、天秤および釜軸のうち少なくとも釜
    軸を前記主軸とは異なる位相で回転させる差動装置とを
    備え、 該差動装置は、外殻となるケーシングと、該ケーシング
    に回転可能に設けられ前記主軸によって回転される入力
    軸と、前記ケーシングに回転可能に設けられ少なくとも
    前記釜軸に回転出力を伝える出力軸と、前記入力軸の回
    転を該出力軸に伝えるため前記入力軸と出力軸との間に
    設けられ該出力軸の回転位相を前記入力軸に対して変化
    させる位相差発生機構とにより構成してなる差動装置付
    ミシン。
  2. 【請求項2】 前記差動装置は、前記釜軸の回転位相を
    前記針棒が下死点になる位置を起点として変えることに
    より、前記釜軸の回転に伴って回転釜で上糸と下糸を絡
    め前記回転釜から上糸が釜抜けするタイミングを変化さ
    せる構成としてなる請求項1に記載の差動装置付ミシ
    ン。
  3. 【請求項3】 前記位相差発生機構は、前記入力軸と出
    力軸との間に設けられ互いに噛合して回転力を伝える第
    1,第2のはすば歯車と、前記入力軸の回転に従って該
    第1,第2のはすば歯車を軸方向に相対移動させる差動
    カム手段とにより構成してなる請求項1または2に記載
    の差動装置付ミシン。
  4. 【請求項4】 前記位相差発生機構は前記入力軸、出力
    軸に対し径方向に離間して前記ケーシングに設けられた
    中間軸を有し、前記第1,第2のはすば歯車は前記入力
    軸、中間軸および出力軸のうち少なくともいずれか2つ
    の軸間に設ける構成としてなる請求項3に記載の差動装
    置付ミシン。
  5. 【請求項5】 前記差動カム手段は、前記入力軸に従っ
    て回転するカムホイールと、該カムホイールと係合する
    ように前記ケーシング側に設けられ該カムホイールの回
    転に従って前記第1または第2のはすば歯車を軸方向に
    変位させるカムフォロアとにより構成してなる請求項3
    または4に記載の差動装置付ミシン。
  6. 【請求項6】 前記差動カム手段は、前記第1のはすば
    歯車と一体に回転する第1のカムホイールと、前記第2
    のはすば歯車と一体に回転する第2のカムホイールと、
    前記ケーシング側に設けられ前記第1,第2のカムホイ
    ール間に位置する支点を中心にして回動可能となった回
    動体と、該回動体にそれぞれ設けられ前記第1,第2の
    カムホイールに係合する第1,第2のカムフォロアとに
    より構成してなる請求項3または4に記載の差動装置付
    ミシン。
  7. 【請求項7】 前記第1,第2のカムフォロアは前記回
    動体に対して位置調整可能に取付け、前記回動体は第
    1,第2のカムフォロアと前記支点との間の間隔L1 ,
    L2 を可変に調整する構成としてなる請求項6に記載の
    差動装置付ミシン。
  8. 【請求項8】 前記第1,第2のカムホイールは互いに
    異なる形状のカム溝を有し、前記第1,第2のカムフォ
    ロアは前記第1,第2のカムホイールのカム溝に係合す
    る構成としてなる請求項6または7に記載の差動装置付
    ミシン。
  9. 【請求項9】 前記ケーシングには複数の出力軸を設
    け、該各出力軸と入力軸との間にはそれぞれ前記位相差
    発生機構を設ける構成としてなる請求項1,2,3,
    4,5,6,7または8に記載の差動装置付ミシン。
  10. 【請求項10】 前記複数の出力軸は前記天秤と釜軸と
    にそれぞれ異なる位相の回転出力を伝える構成としてな
    る請求項9に記載の差動装置付ミシン。
  11. 【請求項11】 前記主軸を駆動する主軸モータと前記
    針棒の駆動部との間には、該針棒の駆動部を前記主軸モ
    ータとは異なる回転位相で駆動する他の差動装置を設け
    る構成としてなる請求項1,2,3,4,5,6,7,
    8,9または10に記載の差動装置付ミシン。
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