JP2002115117A - 低分子配向繊維およびその製造方法 - Google Patents

低分子配向繊維およびその製造方法

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JP2002115117A
JP2002115117A JP2000305331A JP2000305331A JP2002115117A JP 2002115117 A JP2002115117 A JP 2002115117A JP 2000305331 A JP2000305331 A JP 2000305331A JP 2000305331 A JP2000305331 A JP 2000305331A JP 2002115117 A JP2002115117 A JP 2002115117A
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Yutaka Ogoshi
豊 大越
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Shinshu University NUC
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 極細及び/又は高強度の繊維並びにその製造
方法を提供すべく、特にその中間工程である高倍率に延
伸された低分子配向繊維を、分子量低下を抑制しつつ均
一かつ高速に製造する方法を提供すること。 【解決手段】 合成繊維糸条を第1引き取りローラーか
ら供給し、第2引き取りローラーで巻き取る工程と、第
1引き取りローラーと第2引き取りローラーとの間にあ
る合成繊維糸条に赤外線光束を照射して流動延伸させる
ことにより低分子配向延伸繊維とする工程とを具備した
ことを特徴とする低分子配向繊維の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高強度繊維および
極細繊維の製造技術に係わり、特にはその前身となる高
倍率に延伸されつつも低分子配向であるところの繊維
を、高速で製造する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル、ナイロン等の一般的合成
繊維は、溶融状態で紡糸(繊維形状の付与)後、延伸に
よって分子配向・結晶化が行われる。高強度繊維を得る
ためには、一般的に繊維を構成する原料高分子の分子量
は大きいほどよい。しかるに原料高分子は溶融工程で高
温下にさらされるため、ある程度の分子量低下は避けが
たく、一般に紡糸後繊維を構成する原料高分子の分子量
は紡糸前繊維の原料高分子よりも低下する。かかる分子
量低下は紡糸温度を上げるほど顕著になるため、分子量
低下を防ぐためにはなるべく低温で溶融紡糸することが
好ましい。
【0003】一方、原料高分子の溶融粘度は一般に分子
量が大きいほど高い。溶融粘度が高いことは、溶融抵抗
による内部発熱を引きおこすのみならず、特にノズル部
でいわゆる“メルトフラクチャー”を起こして破断した
り、表面部がいわゆる“シャークスキン”状態になった
りする結果、高強度繊維が得られない。これを防ぐため
には溶融温度は高い方が好ましい。
【0004】このような相反する二つの要件を満たすた
めには、ノズルを太くし、押出圧力を低減することがた
いへんに効果的である。高分子について定量的には成立
しないが、ハーゲン・ポアズイユの法則に従えば、同じ
流量を得るために要する押出圧力は、ノズル直径の4乗
に反比例するからである。しかしながら、ノズル直径が
太く、溶融粘度も高いため、得られる未延伸繊維の直径
はたいへん太いものにならざるを得ない。
【0005】合成繊維の延伸工程における変形形態に
は、配向結晶化を伴うネック延伸と、分子鎖をあまり配
向させずに高倍率まで延伸可能な流動延伸がある。前者
では高分子配向で高結晶性の繊維が得られる。繊維が配
向・結晶化してしまうため延伸工程での総延伸倍率は最
大でも6〜8倍にしか達しない。このため、上記紡糸後
未延伸繊維から得られる延伸繊維も太くならざるを得
ず、用途がおのずから制限されてしまっていた。しか
も、一般に直径が太いほど繊維内部での構造ムラ・応力
集中を起こしやすく、結果として高強度繊維が得られな
かった。これに対し、後者は繊維温度がより高い場合に
観測され、高倍率に延伸しつつも低分子配向の繊維が得
られるため、高強度繊維を製造するための中間工程とし
て好適である。しかるに、従来の延伸法では、高速かつ
連続的に安定した流動延伸状態を得ることは困難であっ
た。
【0006】すなわち、延伸工程にある糸条の加熱方法
として主に熱伝達を使用する延伸方法としては、ロール
延伸、ピン延伸のように金属等の表面に糸条を接触させ
て加熱するものと、加熱空気槽もしくは加熱液槽、スチ
ーム等の流体により加熱するものがある。このような従
来の延伸法を用いて前記紡糸後繊維を延伸した場合、均
一かつ急速に糸条を加熱することはできない。このた
め、特に延伸張力が極度に小さくなる流動延伸は著しく
不安定になり、高倍率に延伸しつつも均一かつ低分子配
向である繊維を高速に製造することはできなかった。
【0007】以上のことは、必ずしも高強度繊維の製造
時に留まらず、一般的な合成繊維製造時にもあてはま
る。すなわち、上記制限によって、ある原料高分子を使
用して製造される合成繊維の最小直径はおのずから制限
されてしまう。従って、従来の延伸工程によって極細繊
維を製造することは困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】溶融紡糸された未延伸
繊維から高倍率に延伸された極細繊維を得るためには流
動延伸の実現が不可欠であるところ、熱伝達によって糸
条を加熱する従来の加熱方法においては急速かつ均一な
加熱は不可能であったため、高速かつ安定的な高倍率の
流動延伸は困難であった。バッチ(不連続)延伸や、低
速の延伸工程であれば流動延伸は実現されているが、工
業化し得るほど高速度での均一な流動延伸は不可能であ
った。このため、分子量低下を抑制するために太いノズ
ルから低温で溶融紡糸された未延伸繊維から高倍率に延
伸された高強度繊維を得ることもまた不可能であった。
【0009】一方、延伸工程繊維にレーザー光を照射し
て延伸する技術が特公昭60−94619号公報、同6
1−75811号公報、DE3431747号公報等に
開示されているが、これらはいずれも直接高強度・高弾
性率の繊維を得ることを目的としており、該技術によっ
て得られる繊維は延伸後の時点で既に相当に高配向であ
る。該技術により得られる繊維の延伸倍率は最大でも
4.3倍程度であり、所望の極細繊維を得ることを目的
として、レーザー光照射を使用することにより安定な流
動延伸状態を得、これにより極細繊維の前身となる低分
子配向の延伸繊維を得ることについては記載も示唆もさ
れていない。
【0010】本発明は、極細及び/又は高強度の繊維並
びにその製造方法を提供すべく、特にその中間工程であ
る高倍率に延伸された低分子配向繊維を、分子量低下を
抑制しつつ均一かつ高速に製造する方法を提供すること
を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題
を解決すべく、高倍率に延伸された低分子配向繊維の製
造方法について鋭意検討した結果、繊維に赤外線光束を
照射して延伸することにより、高速かつ均一な流動延伸
状態の実現が可能となることを見出し、本発明を完成す
るに至った。
【0012】すなわち、上記課題は以下の構成からなる
本発明により達成された。
【0013】(1) 合成繊維糸条を第1引き取りロー
ラーから供給し、第2引き取りローラーで巻き取る工程
と、第1引き取りローラーと第2引き取りローラーとの
間にある合成繊維糸条に赤外線光束を照射して流動延伸
させることにより低分子配向延伸繊維とする工程とを具
備したことを特徴とする低分子配向繊維の製造方法。
【0014】(2) 糸条の供給速度が毎秒0.1m以
上100m以下であり、延伸倍率が4倍以上10000
倍以下であることを特徴とする(1)記載の低分子配向
繊維の製造方法。
【0015】(3) (1)または(2)記載の延伸工
程が複数回にわたって繰り返されることを特徴とする低
分子配向繊維の製造方法。
【0016】(4) 前記延伸工程が、紡糸口金より溶
融紡糸した糸条を冷却して固化する工程に引き続いてい
ることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項記載
の低分子配向繊維の製造方法。
【0017】(5) (1)〜(4)のいずれか1項記
載の製造方法により製造された低分子配向繊維。
【0018】(6) (1)〜(4)のいずれか1項記
載の製造方法により製造された、複屈折0.03以下の
ポリエステル繊維。
【0019】(7) (5)又は(6)に記載の繊維を
さらに加工することにより得られる極細繊維。
【0020】(8) (5)又は(6)に記載の繊維を
さらに加工することにより得られる高強度繊維。
【0021】流動延伸は一般的にたいへん不安定である
が、本発明の均一かつ急速な加熱延伸により、高速かつ
安定的な流動延伸が可能となったものであり、該低分子
配向技術を1段、もしくは多段で適用することにより、
分子配向を低く保ったままで繊維直径を小さくすること
ができるため、用途を大きく広げることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下に本発明について詳細に説明
する。
【0023】既述のごとく、本発明は延伸工程にある繊
維に赤外線光束を照射して高速かつ安定的な流動延伸を
可能とすることにより、高倍率に延伸されながら低分子
配向の繊維を得ることを最大の特徴とするものであり、
該技術を1段、もしくは多段で適用することにより、分
子配向を低く保ったままで繊維直径を小さくすることが
できる。従って、低温で溶融紡糸された未延伸繊維に本
発明を適用し高速かつ安定的に流動延伸させることは、
分子量低下が小さく、高強度及び/又は極細の合成繊維
を得るために極めて有効な工程であるといえる。
【0024】本発明における合成繊維の原材料に特に制
限はなく、いかなる種類の合成繊維でもよいが、従来の
延伸法では高速で安定的に高倍率まで流動延伸すること
が困難で、高倍率で延伸することにより配向結晶化しネ
ック延伸になってしまう高分子に本発明は特に有効であ
り、かかる観点からポリエステル繊維、ナイロン繊維を
好適に用いることができる。ポリエステル繊維は、エチ
レンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリエ
ステルのほか、ブチレンテレフタレートもしくはトリメ
チレンテレフタレートを主たる繰り返し単位とするポリ
エステルを溶融紡糸した繊維を使用することができる。
主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートであるポ
リエステルとは、テレフタル酸もしくはそのエステル形
成性誘導体を主たる酸成分とし、エチレングリコールを
主たるアルコール成分とするポリエステルであり、これ
に従来公知の酸性分もしくはアルコール成分を共重合し
たものであってもよい。
【0025】酸成分の具体例としては、イソフタル酸、
ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジ
フェニルスルフォンジカルボン酸、味ピン酸、セバシン
酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のジカルボ
ン酸類又はそのエステル形成性誘導体、5−ナトリウム
スルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフタル
酸、1,8−ジカルボキシナフタレン−3−スルフォン
酸ナトリウム等の金属スルフォネート基含有ジカルボン
酸類又はそのエステル形成性誘導体、或いはこれら化合
物のカリウム塩、リチウム塩等、およびp−オキシ安息
香酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカル
ボン酸類又はそのエステル形成性誘導体などである。ま
た、アルコール成分の具体例としては、プロピレングリ
コール、ブチレングリコール等の低級アルキレングリコ
ール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペン
チルグリコール、1、4−ビス(β−オキシエトキシ)
ベンゼン、ビスフェノールAのビスグリコールエーテル
等を挙げることができる。
【0026】さらに、ポリエステルが実質的に線状であ
る範囲で、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカ
ルボン酸、及びペンタエリスリトール、トリメチロール
プロパン、グリセリン等のポリオール、或いはモノハイ
ドリックポリアルキレンオキシド、フェニル酢酸等の重
合停止剤が含まれていてもよい。また、ナイロン繊維と
しては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610を
主たる繰り返し単位とする高分子を溶融紡糸した繊維を
使用することができる。これらに従来公知の酸成分もし
くはアミン成分を共重合したものであってもよい。
【0027】図1は、本発明の低分子配向繊維を製造す
る工程の一形態を示す。第1引き取りローラー2から一
定の供給速度vで糸条1を供給し、レーザーを含む赤外
線照射手段4を用いて赤外線光束を糸条1に照射するこ
とにより糸条1を加熱して軟化させ、供給速度vよりも
早い速度Vで第2引き取りローラー3に糸条1を巻き取
ることで延伸する。図3は、本発明の延伸工程における
赤外線照射手段の一例を示す。同図ではレンズ7により
赤外線を焦点8に集光しているが、集光手段には反射鏡
又は光ファイバー等の導波路を用いてもよい。繊維自体
の直径および繊維のぶれ範囲9を考慮し、糸条1の位置
は焦点8から離してある。また、糸条1の位置は焦点8
の後方だが、前方であってもかまわない。遮光板10は
糸条に吸収されなかった赤外線を吸収するために設けて
あり、空冷もしくは水冷されている。材料としては煉瓦
等の耐熱素材、もしくは表面を粗面化し、耐熱塗料を塗
布した金属等が適している。
【0028】本発明の流動延伸工程は、紡糸口金より溶
融紡糸した糸条を一旦冷却して固化する工程に引き続い
ていてもよい。図2は、本発明の低分子配向繊維の製造
工程の他の形態を示す。合成繊維の原材料である溶融高
分子を溶融紡糸ノズル5から押出し、一旦ガラス転移温
度以下まで冷却して固化させた糸条1の引き取り速度
を、回転するゴデッドローラー(第1引き取りローラ
ー)2で決定し、速度vで引き取り送り出し、赤外線照
射手段4で糸条1を軟化させ、供給速度vよりも速い速
度Vで第2引き取りローラー3に糸条1を巻き取り延伸
することもできる。
【0029】本発明において糸条の供給速度は毎秒0.
1m以上100m以下であることが好適であり、延伸倍
率は4倍以上10000倍以下であることが好適であ
る。本発明によって初めて、糸条供給速度0.1m以上
で延伸倍率4倍以上の安定的な流動延伸が可能になっ
た。
【0030】なお、本発明において糸条は、単一の繊維
に限らず複数繊維の束でもよい。
【0031】本発明者等は、加熱手段として赤外線照射
を用いた延伸工程について詳細な検討を重ねた結果、延
伸条件によっては、同じ供給速度・巻き取り速度の組合
せでも、高配向繊維が得られる延伸形態(ネック延伸)
をとる場合と低配向繊維が得られる延伸形態(流動延
伸)をとる場合とがあることを確認し、両者はカタスト
ロフィックに切り替わるものであることを見出した。
【0032】図4は糸条の供給速度と延伸倍率による延
伸形態の変化、および安定的な高倍率の流動延伸形態に
するための速度経路の例を示したものである。糸条を急
速に加速して巻き取った場合、延伸倍率4倍以上では基
本的にネック延伸になるが、下記に例示するA経路又は
B経路をとることにより、延伸倍率4倍以上でも安定し
た流動延伸状態を得ることができる。なお、本明細書に
おいて延伸倍率は、巻き取り速度/供給速度により定義
される。
【0033】A:流動延伸が安定的に得やすい低倍率か
ら、ネック延伸にならず、また溶断しないように延伸点
温度を適当に維持しながら、高倍率域まで徐々に延伸倍
率を上げていく、B:ネック延伸状態から一旦延伸倍率
を低下させることによって張力を下げて流動延伸状態に
移行させ、再び延伸倍率を上げていく。
【0034】本発明において、糸条の好ましくは走行方
向0.1〜100mmの区間にわたり赤外線光束を照射し
て糸条4を急速に加熱し、繊維温度を好ましくは20〜
300K上昇させて軟化させ、延伸する。繊維温度の上
昇が20K未満では延伸点位置が安定しにくく、一方3
00Kを超えると熱分解が進行するため好ましくない。
また、本発明においては、好ましくは結晶化度の低い未
延伸繊維に関してはガラス転移温度以上、結晶化度の高
い繊維に関しては結晶の融解温度以上に、赤外線照射に
より瞬間的かつ均一に加熱された糸条を流動延伸するこ
とにより、低分子配向繊維を高速に生産することができ
る。
【0035】赤外線光束の光源として好ましくは、合成
繊維の糸条が吸収し軟化に資する赤外線波長0.7〜1
00μmを発するもの、具体的には高温の発熱体を利用
した連続スペクトル光源、アーク放電を利用したキセノ
ンランプを含むアーク光源、レーザー発振を利用したコ
ヒーレント光源を用いることができる。レーザーは、光
線の平行性が高いために集光や平行光束の形成が容易で
あること、および大きな出力が得られることから本発明
において適している。レーザーには、気体、固体、半導
体、色素、エキシマー、自由電子を放出源としたものが
使用可能であるが、気体の二酸化炭素を放出源とする発
振波長9〜12μmのもの、Nd3+を微量加えたイット
リウムアルミニウムガーネット(3Y・5Al
)を放出源とする発振波長0.9〜1.2μmのも
のが特に優れている。このうち、二酸化炭素レーザー
は、ポリエステル、ナイロン、ポリエーテルケトン等の
合成繊維材料が強い吸収を示す波長帯であるため、これ
らの材料からなる合成繊維の延伸において特に有効であ
る。発振方式は連続発振が好ましいが、十分に高周波数
であればパルス発振でも差し支えない。例えば糸条の走
行速度が毎秒50mで、照射領域の走行方向への長さが
10mmの場合、100kHz以上の周波数で断続発振
すれば実用上連続発振とみなすことができる。
【0036】糸条が吸収する赤外線のエネルギー量は、
赤外線の波長、および糸条の直径、糸速度、密度、熱容
量、赤外線吸収率に依存する。赤外線照射による温度上
昇を△Tとすると、糸条の走行が定常状態になっている
と仮定できるとき、一般に△T=Q/WCの関係があ
る。ここでQは照射により糸条が単位時間に吸収するエ
ネルギー量、Wは糸条の質量流量、Cは糸条の比熱であ
る。糸条に照射される単位時間あたりの赤外線エネルギ
ーをiとすると、Q=Ki、ただしKは糸条による赤外
線エネルギーの吸収率である。典型的条件として、K=
0.3、糸直径0.1mm、糸速度5m/s、比熱1.
17kJ/kg・K、密度1.32Mg/mを仮定す
ると、△T=5iになる。すなわち、糸条に1W(ワッ
ト)の赤外線が照射されたとき、糸条の温度は5ケルビ
ンだけ上昇する。従って、例えばこの条件で10mmの
区間内で糸条を、赤外線光束の照射のみによって50ケ
ルビンだけ急加熱するためには、平均強度10MW/m
の赤外線高速を糸条に照射する必要がある。ここで、
本明細書における赤外線の照射領域とは、糸条に照射さ
れる赤外線光束の強度が、糸条中で最大になる位置での
強度と比較して1/e 以上である範囲をいう。ただ
し、eは自然対数の低である。
【0037】本発明の製造方法によって得られる低分子
配向合成繊維の複屈折は、ポリエステル繊維について
0.03以下である。また、本発明の低分子配向合成繊
維をさらに加工して、極細繊維もしくは高強度繊維を得
ることができる。ここでいう加工とは、従来既知の方法
で行われる延伸・熱処理等の加工を意味する。赤外線光
束を照射して糸条を加熱し、ネック延伸する加工方法を
採用してもよい。
【0038】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。但し本発明は
これら実施例に限定されるものではない。 (実施例1〜3及び比較例1〜3)延伸実験はいずれも
図1の装置を使用し、比較例1に示した直径133μm
の未延伸ポリエチレンテレフタレート繊維について行っ
た。後掲の表1に示す実施例1〜3は図4に示したA経
路又はB経路によって安定な高倍率流動延伸状態を実現
後、供給速度は一定として巻き取り速度を増加させるこ
とにより作成した試料である。また、比較例2及び3
は、表1に示した延伸条件でネック延伸することにより
得られた試料である。いずれもレーザー光強度は22.
5W、照射直径は4mmである。
【0039】
【表1】
【0040】実施例1〜3は、ネック延伸状態で得られ
た比較例2、3と比べて著しく複屈折が小さいことから
低分子配向であることがわかる。また、実施例1〜3
は、比較例2、3と比べて平均屈折率が小さいことか
ら、結晶化度も小さいことが推定される。かかる結果よ
り、実施例1〜3において得られた繊維は、比較例2及
び3において得られた繊維よりも柔らかく、よく伸びる
繊維である。また、約500%の伸度を持つ比較例1の
未延伸繊維が実施例1〜3に示す結果より6倍程度まで
安定して流動延伸できることから、これら実施例で得ら
れた繊維は、少なくともさらに3倍程度延伸することが
可能である。この場合、総延伸倍率は16〜22倍に達
し、1段のネック延伸で得られる倍率(6倍程度)を大
きく上回ることが確かめられた。
【0041】(実施例4)図4に示したB経路と同等の
操作をした場合の延伸応力変化を測定した。延伸応力の
測定方法としては、東レエンジニアリング社製TTM−
201型張力測定装置により糸条の張力を測定し、供給
繊維の断面積で割ることによって算出した。結果を図5
に示す。
【0042】糸条の供給速度は10m/minで一定と
し、巻き取り速度を変化させることにより、前記測定方
法に基づき延伸応力の変化を測定した。延伸倍率を一旦
4.5倍から4.2倍まで下げることで張力が1桁以上
低下し、ネック延伸から流動延伸に移行していることが
明瞭にわかる。この状態で延伸倍率を上げていくと、延
伸倍率8.1倍までは流動延伸状態が保持され、この点
で急激にネック延伸に移行した後、破断した。
【0043】
【発明の効果】本発明により、原料高分子の分子量低下
を抑制しつつ高倍率に延伸された低分子配向繊維を得る
ことができたため、該低分子配向繊維を用いて高強度繊
維もしくは極細繊維を高速かつ安価に製造することが可
能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の低分子配向繊維の製造工程の一形態
を示す概略図。
【図2】 本発明の低分子配向繊維の製造工程の異なる
形態を示す概略図。
【図3】 本発明の低分子配向繊維の製造工程のさらに
異なる形態を示す概略図。
【図4】 糸条の供給速度と延伸倍率による延伸形態変
化、および高倍率流動延伸形態にするための速度経路の
例を示す図。
【図5】 延伸工程において図4中のB経路と同等の操
作をした場合の延伸応力変化を示すグラフ。
【符号の説明】
1…糸条、2…第1引取りローラー、3…第2引き取り
ローラー、4…赤外線照射手段、5…溶融紡糸ノズル、
6…赤外線源、7…レンズ、8…焦点、9…糸条のぶれ
範囲、10…遮光板

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合成繊維糸条を第1引き取りローラーか
    ら供給し、第2引き取りローラーで巻き取る工程と、第
    1引き取りローラーと第2引き取りローラーとの間にあ
    る合成繊維糸条に赤外線光束を照射して流動延伸させる
    ことにより低分子配向延伸繊維とする工程とを具備した
    ことを特徴とする低分子配向繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】 糸条の供給速度が毎秒0.1m以上10
    0m以下であり、延伸倍率が4倍以上10000倍以下
    であることを特徴とする請求項1記載の低分子配向繊維
    の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の延伸工程が複数
    回にわたって繰り返されることを特徴とする低分子配向
    繊維の製造方法.
  4. 【請求項4】 前記延伸工程が、紡糸口金より溶融紡糸
    した糸条を冷却して固化する工程に引き続いていること
    を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の低分子
    配向繊維の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項記載の製造
    方法により製造された低分子配向繊維。
  6. 【請求項6】 請求項1〜4のいずれか1項記載の製造
    方法により製造された、複屈折0.03以下のポリエス
    テル繊維。
  7. 【請求項7】 請求項5又は6に記載の繊維をさらに加
    工することにより得られる極細繊維。
  8. 【請求項8】 請求項5又は6に記載の繊維をさらに加
    工することにより得られる高強度繊維。
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