JP2002013025A - ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

ポリエステル繊維の製造方法

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JP2002013025A
JP2002013025A JP2000194759A JP2000194759A JP2002013025A JP 2002013025 A JP2002013025 A JP 2002013025A JP 2000194759 A JP2000194759 A JP 2000194759A JP 2000194759 A JP2000194759 A JP 2000194759A JP 2002013025 A JP2002013025 A JP 2002013025A
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fiber
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Daisuke Kawakami
大輔 川上
Keisuke Honda
圭介 本田
Mototada Fukuhara
基忠 福原
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Toray Industries Inc
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Abstract

(57)【要約】 重縮合触媒として固体触媒を用い、固液不均一系にて重
合反応を行った後、固体触媒を実質的に除去したポリエ
ステル組成物を繊維状に成型することにより、実質的に
重縮合触媒を含有しないポリエステル繊維を得る。 【課題】口金汚れ、濾圧上昇、糸切れなどの問題が解消
されたポリエステル繊維の製造方法。 【解決手段】実質的に重縮合触媒を含有しないポリエス
テル組成物を繊維状に成型するポリエステル繊維の製造
方法。さらには、重縮合触媒として固体触媒を用い、固
液不均一系にて重合反応を行った後、固体触媒を実質的
に除去したポリエステル組成物を繊維状に成型するポリ
エステル繊維の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は製糸安定性に優れ、
工程安定化に貢献するポリエステル繊維の製造方法に関
する。詳しくは、触媒残査に起因する製糸時に糸切れが
なく、長時間の連続操業が可能となるポリエステル繊維
の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル繊維は、その優れた性質の
ゆえに、衣料用途、ゴム補強用途、建築資材用途、運輸
包装用途、フィルター用途をはじめ広く種々の分野で用
いられている。なかでもポリエチレンテレフタレ−ト繊
維は機械的強度、化学特性、寸法安定性などに優れ、好
適に使用されている。
【0003】一般にポリエステルは、ジカルボン酸また
はそのエステル形成性誘導体とジオールとのエステル化
反応あるいはエステル交換反応、及び重縮合反応により
製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタ
レート(以下、PETと略す)は、テレフタル酸または
そのエステル形成性誘導体とエチレングリコールから製
造される。一般にポリエステルは、重合反応速度が遅い
ため、これらポリエステルの高分子量ポリマーを製造す
る商業的なプロセスでは、製造を効率化するために重縮
合触媒を用い、特定の金属化合物が触媒として広く用い
られている。
【0004】重縮合触媒はポリエステルの重縮合反応を
促進するために用いられるが、同時に熱分解反応も促進
するのが一般的である。熱劣化したPETは分子鎖が切
れて短くなったり、炭化異物を生成する他、ジエチレン
グリコール成分を多量に生成・含有するため結晶性が低
下し、耐熱性が低下することが知られている。このよう
なポリマーを用いて溶融紡糸して得られた繊維は、強度
に代表される機械的特性が低く、捲縮加工や製織加工の
安定性が劣るほか、最終製品の品位も劣ったものとな
る。さらに、色調が黄色くなり、耐光性や耐薬品性が低
下するなど化学的性質も劣ったものとなる。これらのこ
とから、PETの重縮合触媒としては重合触媒能に優れ
るが、熱劣化を促進しない化合物を選択することが重要
であり、このことからアンチモン化合物やゲルマニウム
化合物が使用され、中でもその価格の安さからアンチモ
ン化合物が好適に使用される。しかしながら、なおこれ
らの触媒でも熱劣化の抑制が不十分であるため、リン化
合物に代表されるポリマーの耐熱性向上剤の添加を必要
とするのが一般的である。
【0005】上記アンチモン化合物を含有するPET繊
維を製造する場合、以下に述べるような幾つかの問題点
が指摘されている。
【0006】アンチモン触媒を使用して得られたポリエ
ステルを溶融紡糸して繊維とするときに、アンチモン触
媒の残渣が口金孔周りに堆積することが知られている。
この堆積が進行するとフィラメントに欠点が生じる原因
となるため、適時除去する必要が生じる。アンチモン触
媒残渣の堆積が生じるのは、アンチモンがポリマー中で
アンチモングリコラートの形で存在しており、これが口
金近傍で変成を受け、一部が気化、散逸した後、アンチ
モンを主体とする成分が口金に残るためであると考えら
れている。このような口金は定期的な清掃が必要となる
が、清掃を行う場合には製品の巻き取りを中止する必要
が生じ、その間のポリマーは製品となることなく廃棄さ
れるため、環境面・コスト面で問題となっていた。ま
た、清掃作業は機械化することが困難で、高温下での手
作業となるため、作業員の安全確保や人件費の観点から
改善が望まれていた。
【0007】また、ポリマー中のアンチモン触媒残渣は
比較的大きな粒子状となりやすく、紡糸パック内のフィ
ルターに捕捉されて濾圧上昇を引き起こし、パック交換
を頻繁に行う必要が生じるなど連続作業を阻む原因とな
っている。
【0008】上記フィルターで捕捉することができなか
ったアンチモン触媒残渣は、ポリマーに混入して口金か
ら吐出される。紡糸・延伸・高次加工時には繊維に張力
がかかるが、触媒残渣はその張力が集中する因子となり
易く、糸切れや毛羽発生の原因となって製糸安定性や高
次加工通過性を阻んでいる。また、最終製品においても
同様に、張力に対する応力集中の因子となるため、繊維
の最も基本的な特性である強度を低下させるなど、好ま
しくない特性を有している。
【0009】上記のような背景からアンチモン含有量が
極めて少ないか、あるいは含有しないポリエステル繊維
が求められている。
【0010】上記のような課題に対して、アンチモン化
合物に代わる重縮合触媒の検討例が幾つかなされてい
る。
【0011】例えば特開平10−324741号公報に
は、アルミニウム化合物を重縮合触媒として使用してポ
リエステル組成物を製造する技術が開示されている。該
技術は、アンチモン化合物に代わってアルミニウム化合
物を触媒として使用するというものである。確かに該公
報に開示されている方法によってアンチモン化合物を使
用せずに高重合度のポリエステルを得ることが可能であ
るが、該化合物を重縮合触媒として用いたPETは紡糸
機内での熱劣化が大きいため、製糸安定性に劣る。さら
に溶融紡糸された繊維は機械強度が低く、色調は黄色み
が強いという問題点がある。
【0012】また、系に溶解して触媒活性能を発現する
アンチモン、ゲルマニウム、アルミニウムなどの化合物
と異なり、系に不溶解な不均一触媒を用いる技術とし
て、WO90/03408等を挙げることができる。こ
れらの技術は、重縮合触媒としての活性を有する結晶質
ナトリウムアルミノシリケートモレキュラーシーブ(ゼ
オライト)をスリップ添加剤及び触媒の両者として用い
ることにより、重縮合反応における反応性が高まり、反
応時間が短くなることが提案されている。しかしなが
ら、該化合物による反応性の改善は行われているもの
の、最終的に得られるポリマー中に該ゼオライト触媒が
系に不溶解のまま多量に残留することにより、色調の悪
化による透明度の損失等を招くほか、繊維の機械強度・
製糸安定性ともに低く、十分な改善がなされているとは
言い難い。
【0013】ポリエステル組成物の安定性を向上する手
段としては、触媒を残存させないポリエステル組成物の
製造技術がUSP−4、150、214号公報に開示さ
れている。該技術は、IVが0.1〜0.4の低重合体
PETを高温で揮発するエステル化触媒を用いて準備
し、これを固相重合して所望の重合度のPETを得るも
のである。しかしながら、このような低重合度PETを
溶融紡糸可能な重合度にするためには、長時間の固相重
合が必要となり、工業的な方法としては適当でない。ま
た、一般に固相重合中はペレットが固体状態で攪拌混合
されるため多くの粉末がペレットから脱落して発生する
が、上記技術で必要な長時間の固相重合では大量の粉末
が発生して、ペレットの搬送などそのハンドリングを著
しく阻害する。さらに、この粉末中ではエチレングリコ
ールの拡散速度がペレットより速くなるため、一般に粉
末の重合度はペレットの重合度より高くなる。したがっ
て上記技術で必要な長時間の固相重合を行うと、発生し
た粉末の重合度が著しく高くなる。このようなポリエス
テル組成物を用いて溶融紡糸を行うと、高結晶化物が紡
糸時に十分溶融せずに異物になるなど、工程安定化を大
きく悪化させる。また、異物となった高結晶化物は欠陥
となって繊維の強度や伸度を低下させ、最終製品の品位
もかえって低いものとなってしまう。したがって該公報
に述べられるような低重合度のポリエステル組成物から
固相重合によって重合度をあげたポリエステル組成物を
繊維原料として用いることは、繊維製造時の工程安定化
や製造効率、また製品の品位という面から好ましくな
い。また、該公報には、該ポリエステル組成物を繊維原
料として用いることについて記載されていない。
【0014】また、系に不溶な触媒を用いてエステル化
合物を合成する技術は、例えば特開平11−14002
6号公報に述べられており、該公報にはエステル化触媒
として固体触媒を用い、固液不均一系にて反応を行う技
術が開示されている。該公報には、カルボン酸及び/ま
たはその無水物とアルコールとを反応させてカルボン酸
エステルを製造する方法において、メソポーラス構造の
チタノシリケート触媒を用いることにより、エステル化
反応性の向上及び、触媒の回収・再使用の利点が提案さ
れている。しかしながら、上記技術はエステル化反応に
固体触媒を用いた技術であり、ポリエステル製造におけ
る重縮合反応性や繊維製造工程への寄与は述べられてい
ない。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記のように従来のポ
リエステル繊維の製造方法では繊維に含まれる金属化合
物に起因する製糸安定性の低下が避けられなかった。本
発明はかかる従来技術の欠点を改良し、重縮合触媒であ
る金属化合物を実質的に含有しないポリエステル組成物
を繊維状に成型することにより、工程安定化に寄与する
ポリエステル繊維の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、重縮合触媒の
金属元素換算での含有率が2ppm以下であるポリエス
テル組成物を、繊維状に成型することを特徴とするポリ
エステル繊維の製造方法によって達成される。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明のポリエステルはジカルボ
ン酸及びジオールから合成されるポリマーであって、特
に限定はない。
【0018】このようなポリエステルとして具体的に
は、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリテトラメ
チレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレ
ンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレン
ジカルボキシレ−ト、ポリエチレン−1,2−ビス(2
−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシ
レート、ポリプロピレンテレフタレートなどが挙げられ
る。本発明は、なかでも最も汎用的に用いられているポ
リエチレンテレフタレートまたは主としてポリエチレン
テレフタレートからなるポリエステル共重合体において
好適である。
【0019】また、これらのポリエステルには、共重合
成分としてアジピン酸、イソフタル酸、セバシン酸、フ
タル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸などのジカ
ルボン酸およびそのエステル形成性誘導体、ポリエチレ
ングリコール、ジエチレングリコール、ヘキサメチレン
グリコール、ネオペンチルグリコール、ポリプロピレン
グリコールなどのジオキシ化合物、p−(β−オキシエ
トキシ)安息香酸などのオキシカルボン酸およびそのエ
ステル形成性誘導体などを共重合してもよい。
【0020】また、本発明においては必要に応じて公知
の化合物、例えば各種のリン化合物等の着色防止剤や粒
子等を添加、含有しても良い。なお、本発明のポリエス
テル繊維は含有される触媒が極めて少ないため、熱劣化
を起こしにくく、着色防止剤や酸化防止剤を従来より減
らせるというメリットがある。
【0021】本発明におけるポリエステル繊維は、低重
合度ポリエステルから重縮合反応によって得られた高重
合度のポリエステル組成物を繊維状に成型することによ
って得られるが、該ポリエステル組成物として重合触媒
を金属元素換算で2ppm以下含有するものが用いられ
る。
【0022】上記低重合度ポリエステルは、常法のエス
テル化反応によって、ジカルボン酸とジオールを触媒を
添加することなく反応させて得ることが好ましい。この
際、ジカルボン酸のエステル誘導体とジオールから低重
合度ポリエステルを得る方法を使用しても構わないが、
一般にエステル交換触媒を使用しないと十分な反応速度
を得ることができないため、実質的に触媒をポリマーに
残存させないという本発明の主旨から、触媒を添加せず
に直接ジカルボン酸とジオールを反応させる方法をとる
ことが好ましい。
【0023】上記低重合度ポリエステルは重縮合反応に
よって高重合度化されるが、この際重縮合反応を促進す
るために、重縮合触媒を用いることが好ましい。ここで
いう重縮合反応とは、ジカルボン酸またはそのエステル
系生成誘導体とジオールのエステル化反応あるいはエス
テル交換反応によって得られた低重合度ポリエステルか
ら、脱エチレングリコールによって高分子量ポリエステ
ルを得る重縮合反応を指す。
【0024】また、本発明における重縮合触媒とは、ポ
リエステル溶融物に添加することでその重縮合速度を上
昇させるものをすべて含み、具体的な化合物としては、
三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモングリコ
ラートなどのアンチモン化合物、チタンイソプロピレー
ト、チタンエチレートまたはチタン−tert−ブチレ
ートなどのチタン化合物、酢酸ゲルマニウム、三酸化ゲ
ルマニウムなどのゲルマニウム化合物などが挙げられ、
これらに限定されるものではない。
【0025】しかしながら、本発明で使用される重縮合
触媒としてはポリエステル溶融物に不溶な触媒を用いる
ことが好ましい。ここでポリエステル溶融物に不溶な触
媒とは、触媒が重縮合反応を促進する能力を発揮する段
階で系に不溶解で、固体状態にあるものを指す。したが
って本発明の重縮合反応系は液体状態のポリエステル溶
融体と、固体状態の触媒が共存する不均一系となる。こ
のようなポリエステル溶融体に不溶解な状態で重縮合触
媒能力を有するものを用いれば、反応終了後に触媒を系
から除去することが可能であり、最終的に触媒の含有量
が少ないポリマーを得ることができる。一方、触媒その
ものがポリエステル溶融体に可溶である場合はもちろ
ん、ポリエステル溶融物に添加された後に反応を起こす
結果、ポリエステル溶融体に溶解して触媒能を発揮する
ものは、ポリエステル溶融体に可溶な触媒である。この
ような触媒を用いた場合には系が均一となるため触媒を
分離することが困難であり、最終的に得られるポリマー
の中には触媒が残存することとなる。例えば従来PET
の重縮合触媒として用いられる三酸化アンチモンは、ポ
リエステル溶融体に添加される段階では固体状態である
が、系の中でエチレングリコールと反応してグリコラー
トとなる結果溶解し、重縮合触媒としての能力を発揮す
ることになるが、このような触媒はポリエステル溶融体
に可溶な触媒であり、重縮合反応の終了後に系から分離
することが困難となる。
【0026】該ポリエステル溶融体に不溶な触媒の組成
や形状、添加量は適宜調整されれば良く、特に限定され
るものではない。しかしながら、その重合触媒能力や熱
に対する安定性から、チタンが表面に存在するメゾもし
くはミクロポーラスな物質が好ましい。該触媒として
は、例えばその基本構造にチタンが含有されるものが挙
げられ、Ti−HMS、Ti−MCM41、Ti−MS
U−1などに代表されるメゾポーラスな構造を持つチタ
ノシリケートまたはTS−1に代表されるミクロポーラ
スな構造を持つチタノシリケート化合物を挙げることが
できる(フジテクノシステム発行 多孔質体の性質とそ
の応用技術 1999)。チタノシリケートを用いる場
合は重縮合活性を高くするために、チタンのモル比が
0.1%以上であるものを使用することが好ましい。ま
た、チタン化合物を担持する場合には、例えばアルミノ
シリケートなどのゼオライトと、塩化チタノセンのジク
ロロメタン溶液を拡散させ、トリエチルアミンによるシ
ラノール基の活性化を行うことによって、ゼオライトの
内壁にチタン錯体を担持させることができる。使用する
担体はゼオライトが好ましいがこれらに限定されず、炭
素繊維、グラファイトなど任意のメゾもしくはミクロポ
ーラスな物質を利用することができ、その微細孔の大き
さは5nm以上の平均値を持つことが好ましい。
【0027】該ポリエステル溶融体に不溶な触媒の形態
は特に限定されないが、その生産性から、打錠成型され
たものが好ましい。打錠成型するに際しては、ポリマー
に悪影響をおよぼさない範囲でバインダーを使用するこ
とも差し支えない。また、固体触媒の大きさについても
特に限定はないが、小さすぎるとポリマーとの分離が困
難となり、一方大きすぎると、重縮合反応の活性部分と
なっている触媒表面積の低下を招くため、平均粒径は球
相当径として0.1〜10mmの範囲が好ましい。
【0028】該ポリエステル溶融体に不溶な触媒の添加
量は、十分な重縮合触媒能を得るために適宜調整される
が、例えばチタノシリケートであれば、含有されるチタ
ンの量が最終的に得られるポリエステルに対して、0.
001重量%以上となるように添加することが好まし
い。0.001重量%未満であると、十分な触媒活性を
得ることが難しくなる。また同様に、例えばミクロまた
はメゾポーラスな物質にチタン化合物を担持させる場合
でも、表面におけるチタンの比が担体骨格の構成元素に
対して0.001重量%以上となるよう調整されること
が好ましい。
【0029】本発明のポリエステル組成物は、ポリエス
テル溶融体に不溶な重縮合触媒を用いて十分に高重合度
化させた後、該触媒をポリマーから取り除くことによっ
て得ることが好ましい。重縮合触媒としてポリエステル
に可溶なものを使用すると、反応終了後にポリエステル
から触媒を取り除くことが困難となる。また、無触媒下
で重縮合を行う場合には、十分な重合度のポリマーを得
るために長時間の反応を行う必要があり、熱によってポ
リマーが劣化を起こして製品の品位を低下させるほか、
生産効率が悪くなるため好ましくない。
【0030】ポリエステル溶融体から重縮合触媒を取り
除く方法は特に限定されないが、例えばバッチ重合の場
合は、反応器からポリマーを吐出する部分に触媒を取り
除くフィルターを設置すればよい。また、連続重合装置
の場合であっても、装置を構成する反応器のポリマー出
口に触媒の流出を防ぐフィルターを設けるなどすればよ
い。また、必要であれば流路や反応機内を複数の小部屋
に区切り、部屋の出口部にフィルターを設置しても良
い。触媒が存在する容器内は、攪拌して反応の均一性を
高めることが好ましい。この際、重縮合触媒としてポリ
エステル溶融体に可溶な触媒を用いると触媒の分離が困
難となり、触媒残存量の少ないポリエステル組成物を得
ることが困難となる。一方、ポリエステル溶融物に不溶
な触媒を用いれば容易にポリマーから触媒を分離するこ
とが可能となる。
【0031】本発明のポリエステル組成物は、重縮合触
媒の金属元素換算での含有率が2ppm以下である。重
縮合触媒が金属元素換算での含有率が2ppmを越える
場合には、触媒によって紡糸機内部でポリエステルの熱
劣化が生じ、それが紡糸や延伸時の糸切れの原因とな
る。また、口金面には触媒残渣に起因する汚れが付着し
易くなり、定期的洗浄を行う必要性が生じるため、連続
操業に支障をきたす。本発明のポリエステル組成物を得
るための方法には特に限定はないが、上記したように、
低重合度ポリエステルから重縮合反応によって高重合度
のポリエステル組成物を得る際に、重合触媒としてポリ
エステル溶融体に不溶な触媒を用いて重縮合反応を行
い、反応終了後に該触媒を除去することが好ましい。
【0032】上記重縮合反応の結果得られるポリエステ
ル組成物の重合度は紡糸可能な領域であればよく、例え
ばPETであれば固有粘度0.5以上0.9以下であ
る。高強度の繊維などを製造する場合には、必要に応じ
て該ポリエステル組成物を固相重合しても良い。
【0033】本発明の方法で得られたポリエステル組成
物は、一旦吐出・冷却してチップ化するかまたはチップ
化することなく溶融紡糸機に導入され、常法により計
量、濾過された後、口金より吐出される。吐出されたポ
リマーは、用途に応じて不織布やステープルファイバ
ー、フィラメントなどに成型される。フィラメントの場
合には、吐出されたポリマーは冷却・固化され、給油さ
れて用途に応じた紡糸速度で引き取られ、巻き取られる
か、または巻き取られることなく直接紡糸延伸される。
この際、必要であれば加熱筒によって遅延冷却が行われ
たり、口金から引き取りローラーの間で延伸されたり、
交絡を掛けられるなどすることがある。巻き取られた糸
はそのまま製品とすることもできるし、延伸や捲縮加工
など、用途に応じた加工を受け、織・編物、ロープ、コ
ード、網など、各種衣料用、産業用繊維として使用され
る。
【0034】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに詳細に説明
する。なお、実施例中の物性値は以下に述べる方法で測
定した。 (1)ポリエステル繊維の固有粘度[η] オルソクロロフェノールを溶媒として25℃で測定し
た。 (2)ポリエステル繊維中の金属含有量 繊維をアセトンで洗浄・乾燥した後IPC発光分光分析
装置により求めた。検出下限は0.1ppmであった。 (3)ポリエステル繊維の色調 スガ試験機(株)社製の色差計(SMカラーコンピュー
タ型式SM−3)を用いて、ハンター値(L、a、b
値)として測定した。 (4)ポリエステル繊維のカルボキシル末端基量 Mauriceらの方法[Anal.Chim.Act
a,22,p363(1960)]によった。 (5)ポリエステル繊維のジエチレングリコール量 ポリエステル繊維をアルカリ溶解し、溶液を液体クロマ
トグラフィーにてジエチレングリコール量(DEG量)
を測定した。 (6)ポリエステル繊維の強伸度 東洋ボールドウイン(株)社製テンシロン引張り試験器
により、試長250mm、引張り速度300mm/分で
S−S曲線を求め強伸度を算出した。 (7)口金の堆積物の観察 繊維の紡出から72時間後の口金孔周辺の堆積物量を、
長焦点顕微鏡を用いて観察した。堆積物がほとんど認め
られない状態を○、堆積物は認められるものの操業可能
な状態を△、堆積物が認められ頻繁に糸切れが発生する
状態を×として判定した。 (8)パック内圧 紡糸機に設置された圧力計にて、パック取付から21日
後のパック内部の圧力を測定し、パック取付直後のパッ
ク内圧との差圧を示した。 (9)糸切れ 吐出ポリマー1t当たりの紡糸時糸切れ回数を測定し
た。
【0035】実施例1 (チタノシリケートの調整)WO/29297号公報記
載の方法に従い、調整した。窒素雰囲気下でテトラエト
キシシラン62.5g(300ミリモル)およびエタノ
ール115ミリリットルをフラスコ(500ミリリット
ル)に秤量し室温下300rpmで攪拌した。これにテ
トラ−i−プロピルチタネート2.56g(9ミリモ
ル)とイソプロピルアルコール46ミリリットルの混合
物を室温下10分間かけて添加した。ついでこの混合物
を70℃まで加熱し3時間保持した後、室温まで冷却し
た。
【0036】水115ミリリットル及びドデシルアミン
15.0gをセパラブルフラスコに秤量し400rpm
で攪拌した中に、上記調整したバイメタリックアルコキ
サイド溶液を約1時間かけて添加した。ついで4時間攪
拌を継続させた後に約1日静置した。得られた沈殿物を
濾別し、水で1回洗浄した後、80℃で減圧乾燥した。
得られた固体を窒素雰囲気下500℃で1時間焼成した
後、引き続き空気流通下650℃で4時間焼成し、チタ
ノシリケート17.5gを得た。
【0037】上記チタノシリケートを、円筒形の金型に
セットして10t/cm2の圧力を5分間かけた後、円
筒状の成型体を粉砕した。粉砕されたチタノシリケート
の粒状物をふるいにかけ、約1mmの粒径のペレットを
集めた。
【0038】(ポリエステルの合成)高純度テレフタル
酸とエチレングリコールから常法に従って製造した、触
媒を含有しないオリゴマーを250℃で溶融し、該溶融
物に上記チタノシリケートのペレットを0.5wt%添
加した。その後、低重合体を30rpmで攪拌しなが
ら、反応系を250℃から285℃まで徐々に昇温する
とともに、圧力を40Paまで下げた。最終温度、最終
圧力到達までの時間はともに60分とした。所定の攪拌
トルクとなった時点で反応系を窒素パージし常圧に戻し
重縮合反応を停止し、冷水にストランド状に吐出、直ち
にカッティングしてポリエステルのペレットを得た。な
お、反応容器底面には50メッシュの金網が設置されて
おり、ポリマー吐出時には該金網によって固体触媒ペレ
ットを回収した。
【0039】(溶融紡糸)このペレットを乾燥した後、
エクストルーダ型紡糸機に供給し、紡糸温度295℃で
溶融紡糸した。このときフィルターとして絶対濾過精度
10μmの金属不織布を使用し、0.3mmφの丸孔を
48備えた口金を用いた。口金から吐出した糸をチムニ
ー冷却風を当てて冷却固化し、給油した後、引き取り速
度3000m/分で引き取った。
【0040】表1に示すように、得られた繊維の化学・
物理的特性は良好であり、溶融紡糸工程においても比較
例1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。
【0041】実施例2〜3 チタノシリケートの添加量を変更してPETを重縮合す
る以外は実施例1と同様の方法によった。実施例2、3
は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、比較例1、2
に比べて優れた製糸安定性を有していた。
【0042】実施例4〜5 チタノシリケートの粒状物の大きさを変更する以外は実
施例1と同様の方法によった。実施例4、5は良好な繊
維の化学・物理的特性を有し、溶融紡糸工程においても
比較例1、2に比べて優れた製糸安定性を有していた。
【0043】実施例6〜7 チタノシリケートを調整する際、実施例6ではテトラ−
i−プロピルチタネートを0.17g(0.6ミリモ
ル)、実施例7では4.27g(15ミリモル)を使用
する以外は、実施例1と同様の方法によった。実施例
6、7は良好な繊維の化学・物理的特性を有し、溶融紡
糸工程においても比較例1、2に比べて優れた製糸安定
性を有していた。
【0044】実施例8、9 製糸の際の紡糸速度を変更する以外は、実施例1と同様
の方法によった。実施例8、9は良好な繊維の化学・物
理的特性を有し、溶融紡糸工程においても優れた製糸安
定性を有していた。
【0045】実施例10 室温にてCp2 TiCl2 (Cp=シクロペンタジエニ
ル配位子)のジクロロメタン溶液にトリメチルアミンを
添加し、更にモービル社製MCM41ゼオライトを加
え、攪拌した。18時間後に不溶物を分離し、ジクロロ
メタンで洗浄した。この方法で得られたチタン化合物担
持ゼオライトを用いる以外は実施例1と同様の方法によ
った。実施例10は良好な繊維の化学・物理的特性を有
し、溶融紡糸工程においても優れた製糸安定性を有して
いた。
【0046】比較例1、2 チタノシリケートの変わりに、三酸化アンチモン、三酸
化ゲルマニウムの所定量を添加した以外は、実施例1と
同様の方法によった。比較例1、2はカルボキシル末端
基量やDEG量が多く、繊維の強度・伸度ともに低いも
のとなり、満足のいく化学・物理的特性の繊維を得るこ
とができなかった。また、溶融紡糸工程においてもパッ
ク圧の上昇が大きく、口金堆積物も多いなどに起因して
製糸安定性は悪かった。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】本発明のポリエステル繊維の製造方法に
よれば、ポリマー中に実質的に触媒を含有しないため、
従来より優れた製糸安定性を達成するポリエステル繊維
を得ることができる。
フロントページの続き Fターム(参考) 4J029 AA03 AB07 AC01 AD01 AE02 BA03 BA05 BA08 BC06A BD07A CB06A CG09X HA01 HB01 JA091 JA111 JF321 JF361 JF471 KH05 4L035 AA06 BB31 BB33 BB55 GG02

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重縮合触媒の金属元素換算での含有率が2
    ppm以下であるポリエステル組成物を、繊維状に成型
    することを特徴とするポリエステル繊維の製造方法。
  2. 【請求項2】重合触媒としてポリエステル溶融体に不溶
    な触媒を用いることを特徴とする請求項1記載のポリエ
    ステル繊維の製造方法。
  3. 【請求項3】ポリエステルがポリエチレンテレフタレー
    トであることを特徴とする請求項1または2記載のポリ
    エステル繊維の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006176601A (ja) * 2004-12-21 2006-07-06 Bussan Nanotech Research Institute Inc 重合触媒、それを用いて得られた重合体、およびその高分子複合体
JP2013502475A (ja) * 2009-08-20 2013-01-24 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア ポリエステルアルコールの製造方法

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