JP2001279519A - 赤外線照射によって合成繊維の延伸点位置近傍を精密に計測・制御するシステム - Google Patents

赤外線照射によって合成繊維の延伸点位置近傍を精密に計測・制御するシステム

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JP2001279519A
JP2001279519A JP2000134038A JP2000134038A JP2001279519A JP 2001279519 A JP2001279519 A JP 2001279519A JP 2000134038 A JP2000134038 A JP 2000134038A JP 2000134038 A JP2000134038 A JP 2000134038A JP 2001279519 A JP2001279519 A JP 2001279519A
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Yutaka Ogoshi
豊 大越
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Ueda Textile Science Foundation
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Abstract

(57)【要約】 【課題】合成繊維もしくはモノフィラメントを溶融紡糸
もしくは延伸する工程において、延伸点近傍の糸直径・
糸速度・糸温度・分子配向等、もしくはそれらの時間的
変動を精密に計測すると共に、延伸点位置をより精密に
制御して均質な構造の合成繊維を製造する。 【解決手段】強力な赤外線光束を走行中の糸条に照射す
ることによって、繊維を急速かつ均一に加熱して延伸
し、延伸点位置を精密に固定するとともに、測定結果を
レーザー出力にフィードバックさせて延伸点位置を制御
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、強力な赤外線光
束を合成繊維糸条に照射することによって延伸点近傍の
精密測定を可能にした計測システムと、この計測結果を
利用して繊維構造・物性を精密に制御するシステムに関
する。
【0002】
【従来の技術】合成繊維もしくはモノフィラメントを紡
糸・延伸によって生産する工程において、糸直径・糸速
度・糸温度・分子配向等、もしくはこれらから間接的に
導出される伸長粘度や歪速度、結晶化速度等の情報を精
密に計測し、最適に制御することは、根本的に重要なこ
とである。然るに、紡糸線上でいわゆるネック状変形を
引き起こす高速溶融紡糸工程や2次延伸工程では、構造
形成がごく短い延伸点の近傍に集中し、しかもこの延伸
点の位置が変動するため、精密な計測・制御が困難であ
った。特に高速の紡糸・延伸工程では延伸点の変動が大
きくなりやすい一方、構造形成自体はより高速になるた
め、製品の均一性を確保しながら高速生産することは、
困難になりやすかった。
【0003】従来、合成高分子の繊維製造過程では、繊
維の加熱は接触式ヒーターで直接、もしくは非接触式ヒ
ーターで加熱帯域中の雰囲気温度を制御することにより
間接的に制御されてきた。加熱帯域の雰囲気としては、
加熱空気およびスチーム等が挙げられる。これらの方法
では、熱の移動は主に繊維表面を介しての熱伝達によっ
て行われるため、熱移動の効率が悪く、急速な加熱は難
しい。また、熱移動が繊維表面を介するため、一般に均
一な加熱は難しく、特に急速加熱を目的として加熱帯の
雰囲気温度を高温に設定した場合には、繊維断面内に顕
著な温度差が生じ、不均一な変形や不均質な構造を招き
やすい。
【0004】特に繊維の延伸工程は、高分子の大変形に
より、低分子配向・低結晶化度の繊維が高分子配向・高
結晶化度のいわゆる“繊維構造”を形成する工程であ
り、カタストロフィックな要素を伴うため、変形点(以
後、“延伸点”と呼ぶ)の位置が不安定になりやすかっ
た。この不安定性の大きな原因は繊維軸方向および繊維
半径方向への温度分布にある。すなわち、繊維表面への
熱伝達量を増すほど繊維軸方向への加熱速度は速くなる
が、この場合一般に繊維の半径方向への温度分布も大き
くなってしまう。このため、これまで一般に繊維軸方向
への高速加熱と繊維半径方向への均一加熱は両立せず、
高速で走行する糸条の、延伸点近傍での糸直径・糸速度
・糸温度・分子配向等の情報を精密に測定することは困
難であった。このため、測定結果をフィードバックして
繊維構造を精密に制御することもまた、困難である。
【0005】糸条を第1引き取りローラーと第2引き取
りローラーの間で延伸する工程、紡糸口金より溶融紡出
した糸条を一旦冷却して固化し、引き続き第1引き取り
ローラーと第2引き取りローラーの間で延伸する直接紡
糸・延伸工程、もしくはこれらを想定した試験的合成繊
維延伸装置において、第1引き取りローラーと第2「引
き取りローラーの間に高温に加熱したピンを設置し、こ
のピン上で延伸することによりピン表面近傍に延伸点位
置を固定する、いわゆる“ピン延伸”が行われているケ
ースも多い。しかしピン延伸の場合、繊維の加熱はピン
表面から繊維表面への熱伝達に頼っており、繊維表面か
ら繊維内部への熱移動は熱伝導に依存していた。このた
め、繊維内部での断面内温度が不均一になりやすく、均
一な延伸は難しい。このため延伸点近傍での糸直径・糸
速度・糸温度・分子配向等も不均一・不安定になりやす
く、精密な計測・制御はやはり困難である。
【0006】また、糸条を第1引き取りローラーと第2
引き取りローラーの間で延伸する工程、紡糸口金より溶
融紡出した糸条を一旦冷却して固化し、引き続き第1引
き取りローラーと第2引き取りローラーの間で延伸する
直接紡糸・延伸工程、もしくはこれらを想定した試験的
合成繊維延伸装置において、第1引き取りローラー上を
加熱し、これに巻き付けて加熱した糸条を第2引き取り
ローラーで延伸して巻き取る延伸方法は通常“ローラー
延伸”と呼ばれる。このローラー延伸工程において、実
際に繊維が延伸される位置(延伸点位置)は第1引き取
りローラーからの剥離点近傍である。ローラー延伸工程
は、糸条をローラーに数回から数十回巻き付けることに
よってローラー表面繊維表面との接触時間を長くとるこ
とができ、小さな表面摩擦係数で充分な張力を得ること
ができると共に、ローラー表面からの熱伝達によって加
熱するために充分な時間を確保できるため、延伸工程の
高速化に対応しやすい。ただし、延伸点以前で必要以上
に長時間ガラス転移温度近傍に保温することは、延伸前
の繊維構造を変化させてしまい、好ましくないため、第
1引き取りローラーの設定温度は繊維の延伸温度よりも
高く設定され、繊維温度が所定の延伸温度に達するため
に必要十分な巻き付け回数が選ばれる。一方、ローラー
延伸の場合は糸条とローラー表面との摩擦力と張力との
バランスによって延伸点が決定されており、ピン延伸と
比較して一般に遙かに大きな直径のローラー近傍で延伸
されるため、糸条からローラー表面に加わる垂直効力が
小さく、糸張力の微小なばらつきや湿度等による接触状
態の微小な変化の影響を受けて延伸点が大きく変動しや
すい。また、接触状態や表面状態の影響を受けてローラ
ー表面と糸条間での熱伝達が変動し、繊維温度や加熱履
歴が変動することも延伸点の変動要因になる。特に高速
で延伸する場合にこの変動が大きくなりやすく、延伸点
近傍での糸直径・糸速度・糸温度・分子配向等の精密計
測・制御は困難である。延伸点位置の固定のため、延伸
点近傍に高温のスチーム等を吹き付けることによって熱
伝達効率を高め、延伸点位置の変動を抑える方法もある
(例えばUSPatent No.4,113,82
1)。この方法は延伸点位置の変動範囲を小さくするた
めには一定の効果があるが、あくまでも繊維表面への熱
伝達速度を増すための方法であり、繊維内部を直接加熱
するわけではない。繊維内部での熱伝導速度には違いが
無いため、熱伝達速度を増加させることは、繊維内部で
の温度分布を大きくすることを意味し、延伸点近傍での
糸直径・糸速度・糸温度・分子配向等の精密計測・制御
には向かない。
【0007】さらに、糸条を第1引き取りローラーと第
2引き取りローラーの間で延伸する工程、紡糸口金より
溶融紡出した糸条を一旦冷却して固化し、引き続き第1
引き取りローラーと第2引き取りローラーの間で延伸す
る直接紡糸・延伸工程、もしくはこれらを想定した試験
的合成繊維延伸装置において、第1引き取りローラーと
第2引き取りローラー間に設置された水やオイル等の液
体熱媒中、もしくは空気や水蒸気等の気体熱媒中で熱伝
達により糸条を加熱し、延伸する方法も行われる。この
延伸法の場合、延伸点位置は糸条への熱伝達、熱媒温
度、張力等によって決まり、熱媒の微小な温度ムラ、速
度揺らぎ、張力変動などに影響を受けやすく、一般にロ
ーラー延伸よりもさらに延伸点位置の固定が困難であ
る。
【0008】糸条を均一に加熱するために熱伝達ではな
く遠赤外線の熱放射を利用する方法が、特開平4−28
1011号公報や特開平5−132816号公報におい
て提案されており、糸条の均一加熱に一定の効果がある
ことが実証されている。しかし、これらとそれ以前の従
来技術との差異は、熱移動方式を熱伝達から熱放射に変
えた点のみであり、糸条の加熱には従来の加熱筒と同等
の大きさの装置を用い、糸条の走行方向に対して従来の
延伸・熱処理法で用いられてきているのと同程度の長さ
を加熱している。このため、この方法は延伸点位置の精
密な固定に利用することはできない。また、延伸点を動
的に精密制御することに関する言及は無い。
【0009】また、糸条に炭酸ガスレーザーによる赤外
線光束を照射して高配向度かつ低比重のポリエステル繊
維を製造する方法が、特開昭61−75811号公報に
おいて提案されている。この発明では、レーザー光照射
の目的はあくまでも高配向度かつ低比重のポリエステル
繊維を製造することにあり、延伸点を精密に固定するた
めの方法としての記述および実施例は見当たらない。ま
た、延伸点を動的に精密制御することに関する言及も見
られない。また、光導波路等の無機繊維製造過程におい
て、延伸のためにレーザー照射光を利用することは概知
であり、例えばAustralas.Conf.Hea
tMass Transfer,2nd 225,(1
977)等の報告がある。しかし、これらの繊維の延伸
機構は、合成繊維材料として使用される高分子に特有
な、分子配向・配向結晶化といった構造変化を伴う繊維
構造形成が起こっているわけではないため、合成繊維材
料についてのものとは根本的に異なる。例えば、合成繊
維材料の高速溶融紡糸工程もしくは延伸工程において、
延伸後の繊維が固化するための主要な原因は、分子配向
および配向結晶化による材料の硬化であるが、無機繊維
の延伸においては、これらの寄与はごく小さい。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、赤外線照
射による合成繊維およびモノフィラメントの製造に関し
て研究しており、走行中の糸条に対して強力な赤外線光
束を照射することによって、合成繊維もしくはモノフィ
ラメントを急速かつ均一に加熱し、外力によって瞬間的
に伸長することによって、延伸点位置を精密に固定する
ことができるため、延伸点近傍での糸直径・糸速度・糸
温度・分子配向等の精密測定が可能になるとともに、糸
直径・糸速度・糸温度プロフィール変動をレーザー出力
にフィードバックすることによって、延伸点位置を精密
に制御できることをつきとめた。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、糸条を第1引
き取りローラーと第2引き取りローラーの間で延伸する
工程、紡糸口金より溶融紡出した糸条を引き取りローラ
ーにより延伸する溶融紡糸工程もしくはモノフィラメン
ト製造工程、紡糸口金より溶融紡出した糸条を一旦冷却
して固化し、引き続き第1引き取りローラーと第2引き
取りローラーの間で延伸する直接紡糸・延伸工程、もし
くはこれらを想定した試験的合成繊維延伸装置におい
て、走行中の合成繊維糸条もしくはフィラメントに強力
な赤外線光束を照射し、繊維を急速かつ均一に加熱して
軟化させ、外力によって変形させることによって、延伸
点位置を精密に固定し、延伸点近傍での糸直径・糸速度
・糸温度・分子配向・伸長粘度・歪速度・弾性率・歪を
精密に測定するものである。
【0012】また、本発明の他の態様は、測定された糸
直径・糸速度・糸温度の変動を照射レーザーの出力にフ
ィードバックすることにより、延伸点位置を精密に制御
するものである。延伸点位置を精密に制御することによ
って繊維に加えられる歪速度プロフィールと熱履歴をも
制御できるため、精密に構造・物性を制御された合成繊
維を製造することができる。
【0013】赤外線光束を糸条に照射する以前に、糸条
を軟化温度以下の温度まで余熱することにより、照射す
る赤外線光束の出力を小さくできる。糸条の余熱方法と
しては、第1引き取りローラーを加熱する方法、液体も
しくは気体の熱媒を用いる方法、熱板等の接触による方
法等がある。また、別の光源もしくは光路を経た赤外線
光束を照射することによって、糸条を余熱することも可
能である。すなわち、第1の赤外線光束照射によって糸
条を余熱した後、第2の赤外線光束を照射することによ
って、第2の照射位置近傍に延伸点の位置を固定するこ
とができる。
【0014】糸条の走行速度は毎秒0.1m以上で、か
つ糸条に対する赤外線光束の照射時間が0.1秒を超え
ないことが好適である。ただし、この照射時間には、前
項で述べた余熱のための赤外光束の照射時間は含まな
い。また、精密な測定のためには、延伸点位置の変動幅
は、1mm(典型的には0.3mm)を超えないか、も
しくは延伸後の糸条が10ms(典型的には3ms)の
時間内に走行する距離を超えないことが望ましい。この
ためには延伸前の合成繊維もしくはモノフィラメント分
子配向度は0.1以下、典型的には0.01以下であ
り、かつ延伸倍率は4倍以上、典型的には5倍以上であ
ることが望ましい。ここで延伸点位置の変動幅とは、延
伸点の位置が所定の区間内に留まっている時間の割合が
90%以上に達する区間の幅を意味する。本発明におけ
る赤外線とは、波長範囲0.7μm〜100μmの電磁
波をいう。また、本発明における糸条とは、単一の繊
維、繊維束、もしくはモノフィラメントをいう。さら
に、本発明における照射範囲とは、糸条に照射される赤
外線光束の強度が、糸条中で照射強度が最大になる位置
での強度と比較して1/e以上である範囲をいう。た
だし、ここでのeは自然対数の底を意味する。また、本
発明でいう延伸点とは、糸条を第1引き取りローラーと
第2引き取りローラーとの間で延伸する工程において、
糸条の変形が主に起こっている部分を意味し、主な変形
が始まる位置である延伸開始点から、主な延伸が終了す
る延伸終了点までの区間である。本発明では、糸条に加
えられた真歪の量が、当該延伸過程で加えられる全真歪
量の20%に達する点を延伸開始点と定義し、この点で
延伸点を代表する。すなわち、本発明における延伸点と
は、この様に定義された延伸開始点のことを意味する。
【0015】強力な赤外線光束を直接もしくは光学系を
介して糸条に照射することによって、急速かつ均一な昇
温が可能となる。ここで光学系とは集光のためのレン
ズ、反射鏡、もしくは光ファイバー等の導波路を意味す
る。こうした加熱方式とすることによって、主に熱伝達
に依存していた従来の方法に比べて熱エネルギーを糸条
の微小空間に集中でき、急速かつ均一な加熱によって延
伸点の位置を精密に固定することが可能となったため、
延伸点近傍の糸直径・糸速度・糸温度・分子配向等、も
しくはそれらの時間的変動量を、精密に測定できること
を特徴とする計測システムを構築することが可能になっ
た。
【0016】赤外線の光源としては、合成繊維糸条を照
射範囲中で所定温度まで充分加熱できるだけのエネルギ
ーが発生可能で、糸条が吸収する赤外線を発するものを
使用する。赤外線エネルギーの量は、赤外線の波長、赤
外線の糸条への吸収効率、および糸条の直径、糸速度、
密度、熱容量に依存する。赤外線照射による温度上昇を
ΔTと表現すると、糸条の走行が定常状態になっている
と仮定できるとき、一般にΔT=Q/WCの関係があ
る。ここでQは照射により糸条が単位時間に吸収するエ
ネルギー量、Wは糸条の質量流量、Cは糸条の比熱であ
る。糸条に照射される単位時間あたりの赤外線エネルギ
ーをiとすると、Q=Ki、ただしKは糸条による赤外
線エネルギーの吸収率である。典型的条件として、K=
0.6、糸直径0.1mm、糸速度5m/s、比熱1.
17kJ/kg・K、密度1.32Mg/mを仮定す
ると、ΔT=10iになる。すなわち、糸条に1Wの赤
外線が照射されたとき、糸条の温度は10ケルビンだけ
上昇する。赤外線照射によって走行中の糸条を加熱する
場合、光学系と繊維直径を最適化することによって、繊
維断面内の温度分布を微小にすることができる。このた
め、繊維表面からの熱伝導に依存している従来の加熱方
法と比較して、より短い時間で均一に加熱できる。ま
た、上記で明らかなように、加熱量(温度上昇量)は、
糸条に照射されるエネルギー、糸条の走行速度、糸条の
エネルギー吸収率、糸条の直径および密度に依存する。
したがって、これらを制御することによって、糸条の温
度プロフィールを制御することが可能であり、間接的に
直径プロフィールや速度プロフィールを制御できる。特
に延伸点の位置は、糸条の温度が軟化点を越える位置に
強く依存するため、糸条の温度・直径変動によって延伸
点位置も変動しやすい。この様な外乱に対する延伸点の
変動を最小にするためには、延伸点近傍での照射強度変
化が大きい方が望ましい。すなわち、糸条温度が糸条の
軟化温度に達する点付近を境に、ステップ的に照射強度
を増加させれば、延伸点をこの点付近に固定することが
できる。照射範囲の狭い赤外光束と照射範囲の広い赤外
光束を併用することによって、この様な強度分布を作る
ことができる。また、単一光源でも、強度プロフィール
を利用して延伸点を固定することができる。すなわち、
糸条に照射される赤外光強度の増加率が最も大きいの
は、照射強度プロフィールの送出し側変曲点であるた
め、糸条が軟化温度に達する位置がこの点の近傍になる
ように延伸条件を設定すれば、延伸点位置を最も良好に
固定することができる。本発明の制御システムは、糸条
に照射される赤外光束の強度を動的に制御することによ
って、延伸点位置の変動を最小に抑えることを目的とし
たものである。基本的な制御原理としては、糸直径もし
くは糸速度を反映する測定出力によって、延伸点位置が
下流側に移動していることが判明した場合、もしくは糸
温度が低下した場合には、赤外光束の強度を増加させ、
逆の場合には強度を低下させる。実際には後述の応答遅
れおよび系の慣性が存在するため、適切な制御システム
および制御パラメータを選定することが望ましい。この
制御システムの応答速度は、電気的な因子と、機械的な
因子によって決定される。このうち電気的な因子とは、
糸直径・速度・温度を測定してから赤外光束の強度が変
化するまでの時間的遅れであり、センサーの応答時間、
演算系の所要時間、赤外光源の制御に要する時間が含ま
れる。電気的な遅れ時間は、適切なセンサーおよび制御
回路を用いることによって、1ms以下にすることが容
易である。一方機械的な因子としては、糸条の走行速度
およびこれに由来する慣性が問題となる。走行中の糸条
に赤外光束を照射して延伸する場合、赤外光の照射範囲
内で糸条の温度が急速に上昇して軟化点を越え、変形・
固化する。従って、機械的な遅れ時間としては、糸条に
赤外光が照射され始めてから延伸点で変形し始めるまで
の所要時間が基準になる。
【0017】赤外線の光源としては、高温の発熱体を利
用した連続スペクトル光源、レーザー発振を利用したコ
ヒーレント光源を使用することができるが、本発明にお
ける延伸点位置の精密固定のためには、レーザー発振を
利用したコヒーレント光源を使用することが好適であ
る。これは、光源の平行性が高いために集光や平行光束
の形成が容易であること、および大きな出力が得られる
ことが主な理由である。レーザー発振を利用した光源に
は、気体、固体、半導体、色素、エキシマー、自由電子
を放出源としたものがある。このうち、発振波長が赤外
線領域であり、大きな出力が得られるレーザー光源とし
ては、二酸化炭素気体を放出源とする発振波長9〜12
μmのもの、Nd3+を微量加えたイットリウムアルミ
ニウムガーネット(3Y・5Al)を放出
源とする発振波長0.9〜1.2μmのもの等が挙げら
れる。このうち、二酸化炭素気体を放出源とする発振波
長9〜12μmのレーザー光源は、多くの合成繊維材料
が強い吸収を示す波長帯であるため、赤外線エネルギー
の吸収効率が高く、本発明の実施に有効である。またこ
の光源は、出力に比して安価でかつ安定した性能が保持
できるため、好適である。この光源は、封入型の比較的
低出力のものでも数十ワット、高出力のものでは数百ワ
ットから1キロワットを超えるものまでが製造されてお
り、このレーザー光源を本発明の実施に用いることがで
きる。レーザー発振の発振形式としては、連続発振する
ことが好ましいが、連続発振でなくても、糸条の走行速
度に対して充分高周波で発振するようにすればよい。例
えば、糸条の走行速度が毎秒50mで、加熱領域の走行
方向への長さが1mmの場合なら、100kHz以上の
周波数で発振すれば実用上連続発振と見なすことができ
る。また、主たる加熱のための光源の強度プロフィール
は、できるだけガウス分布に近いものが好ましい。
【0018】赤外線を集光するためには、赤外線を反射
する反射鏡を利用する方法や、赤外線の屈折を利用して
赤外線を集光するレンズを用いる方法、内部反射により
エネルギーを微少空間に集中する光ファイバー等の導波
路を用いる方法がある。反射鏡の材質としては赤外線に
対して反射率の高い物質が適しており、屈折用のレンズ
もしくは導波路の材質としては赤外線を透過する物質で
ある必要がある。前者の例としては金属の鏡面を挙げる
ことができ、後者の例としては、必要とする波長範囲に
も依存するが、波長が9〜12μm程度ならばセレン化
亜鉛、ケイ素、ゲルマニウム、カルコゲナイドガラスな
ど、波長が0.9〜1.2μm程度ならば石英やフッ化
リチウム、フッ化バリウム、フッ化物ガラスなどが挙げ
られる。
【0019】糸条に赤外線を照射する位置での光束の形
状を円形にする場合は、反射鏡もしくはレンズの表面形
状はほぼ球面もしくは放物面のものを用いれば良く、直
線状の形状にする場合はシリンダーレンズやシリンダー
ミラーを用いれば良い。両者を併用すれば、任意の縦横
比をもつ楕円形断面をもつ光束が得られる。また、導波
路を用いる場合は、糸条近傍に設置した導波路の出射口
サイズを変えることにより、照射部位でのエネルギー分
布を制御することができる。照射部位における光束の糸
条に平行な方向へのサイズを制御することにより、糸条
に移動する熱エネルギーのプロフィールを制御すること
ができる。また、照射部位における光束の糸条に垂直な
方向へのサイズを制御することにより、照射幅を制御す
ることができる。前者は糸条の加熱プロフィールの制御
に有効である。また、照射サイズは糸条と赤外線光軸の
なす角を変えることによっても調整できる。糸条と赤外
線光軸のなす角を変える場合、焦点に近い側の方が糸条
に与えられる熱エネルギー量が多いので、糸条に移動す
る熱エネルギーのプロフィールを制御するのに利用する
ことができる。また、この操作により、第1引き取りロ
ーラーの近傍での照射も容易になる。また、糸条と遮光
板との間に反射鏡、レンズ系もしくは光ファイバー等の
導波路を設置することにより、光源と反対方向から同時
に赤外線を照射することもできる。材料の赤外線吸収率
が小さい場合、もしくは逆に赤外線吸収率が大きすぎて
光源側の温度が高くなる場合などに特に有効である。反
射鏡等を用いることにより、糸条に吸収される放射エネ
ルギーの割合を高められるだけに留まらず、周囲から均
等に加熱できるため、糸条の断面内温度をより均一にす
ることができる。
【0020】レーザー光源とレンズを用いた計測・制御
システムの例を図1及び図3に示す。図1は糸条の軸方
向、図3は繊維軸および赤外線の光軸と垂直な方向から
見た図である。糸条は第1引き取りローラー7から第2
引き取りローラー8に向かって走行する。この図ではレ
ンズ2により赤外線を焦点3に集光している。集光方式
には反射鏡もしくは光ファイバー等の導波路を使っても
良い。繊維自体の直径および繊維のぶれ範囲5を考慮
し、糸条4の位置は焦点3から離してある。この図では
糸条の位置は焦点の後方だが、前方であってもかまわな
い。遮光板6は糸条に吸収されなかった赤外線を吸収す
るために設けてあり、空冷もしくは水冷されている。材
料としては煉瓦等の耐熱素材、もしくは表面を祖面化
し、耐熱塗料を塗布した金属等が適している。9の測定
装置は、延伸点近傍での糸速度、糸温度、糸直径、分子
配向等の、時間および位置による変化を測定するための
もので有り、各装置について好適な位置に配置し、微調
整できる様になっている。位置による変化を測定するた
め、各測定装置は糸条の走行方向に対して平行移動が可
能であることが望ましい。また10の線は、延伸点位置
を制御するために、測定された糸直径・糸速度・糸温度
のプロフィール変動をレーザー出力にフィードバックす
ることを意味する。また、図2には、赤外線光束の伝播
・集光方式として光導波路と略回転楕円体型反射鏡を用
いた、計測・制御システムの例を示す。この図で示され
る装置を用いることにより、図1に示すものよりも集光
効率が高いだけでなく、周囲から均等に加熱できるため
に、糸条の断面内温度をより均一にすることができる。
このシステムの場合、測定にも光導波路を用いることが
好適である。
【0021】本発明の計測・制御システムが適用できる
繊維材料は、赤外線を吸収して軟化温度以上まで昇温可
能な高分子材料であれば特に種類は問わない。この様な
材料としては、ポリエステル類、ナイロン類、ポリエチ
レン類、ポリビニルアルコール類、ポリエーテルケトン
類などが挙げられる。
【0022】以下、実施例を挙げて説明するが、本発明
はこれに限定されない。なお、以下の各実施例において
は、すべてIV=0.642g/dlのポリエチレンテ
レフタレートを使用し、紡糸温度280℃、ノズル直径
0.5mm、1hole(L/D=5)、吐出量毎分
4.95g、巻き取り速度毎分250mの条件で製造し
た、複屈折0.001のモノフィラメント繊維を用い
た。繊維の屈折率は干渉顕微鏡によって測定した。浸漬
液にはヨウ化メチレン、アルファブロムナフタリン、ブ
ロモベンゼンの混合物を使用し、アッベ型屈折計により
屈折率を測定した。ポリエチレンテレフタレートについ
て報告されている固有複屈折は0.23程度であり、延
伸前の繊維の複屈折0.001は分子配向度0.004
程度に相当する。実施例にはいずれも、二酸化炭素気体
を放出源とするレーザー発振光源を使用した。光源の波
長は10.6μm、ビーム径5.0mm、ビーム広がり
角1.0mradであり、ビームをレンズで集光してい
る。糸条は焦点の後方に位置させ、レーザーの光軸と垂
直方向に走行させた。
【0023】
【実施例1】レーザー出力22.5W、糸の供給速度毎
秒0.13m、糸の巻き取り速度毎秒0.8mで6倍に
延伸した際の、延伸点近傍の画像を、ナック社製高速度
カメラMEMRECCAMCi−4型を使用して撮影し
た。レーザー照射位置でのビーム直径は約4mmであ
り、レーザー光強度プロフィールの送出し側変曲点は、
糸条とレーザー光軸の交点を原点として、送出し側に約
1.0mmの位置に有る。図4は1コマの露光時間1/
6000秒で毎秒2000コマ撮影した延伸点近傍の画
像のうち1コマを、二値化して示したものである。黒い
部分が糸であり、ネック状の延伸点を明瞭に観測するこ
とができる。糸条は図の左側から右側に向かって走行し
ているが、延伸点位置の変動はほぼ0.1mmの範囲に
収まっているため、延伸点近傍での直径変化を精密に測
定することが可能である。この直径変化から、延伸点近
傍での歪と歪速度を求めることができる。さらに、糸条
の張力を測定すれば、張力と直径より任意の位置での応
力を算出できるため、見かけ上の伸長粘度を求めること
もできる。また、変形領域での糸条を弾性体とみなせ
ば、見かけ上の弾性率を算出することもできる。得られ
た歪速度と伸長粘度を図5に、真歪と弾性率を図6に、
それぞれ示す。延伸点近傍において、赤外光束で均一に
暖められた糸条は、軟化点に達すると外力により変形を
開始する。この際、延伸初期では見かけ上の弾性率およ
び伸長粘度が低下し、歪速度が急増するが、伸長粘度が
約6kPaで最小値を示し、その後増加に転じるのに伴
って、歪速度は減少し、最終的には固化する。伸長粘度
の低下要因としては変形による発熱で軟化すること、増
加原因としては分子鎖の配向を想定することができる。
これに対して見かけ上の弾性率はほぼ100MPaの一
定値に収束し、延伸点近傍での変形挙動が、見かけ上、
弾性的であることを示す。また図6より、この実施例で
の延伸開始点位置は、レーザー光軸を基準として糸条の
送出し側に1.08mmの点付近にある。以上の様に、
延伸点近傍での変形挙動から歪・歪速度・伸長粘度・弾
性率等を算出できるのは、第1には延伸点の位置がたい
へん精密に固定されているからであり、この結果、露光
時間である1/6000秒の間に、糸条は供給側で22
μm、巻き取り側で133μmも移動しているにもかか
わらず、画像はごく鮮明であり、このため10μm単位
で精密に直径を読み取ることができる。また第2には、
原理上、糸条の断面内での温度差が小さいことを保証さ
れているからである。断面内での温度差が大きい場合、
例え変形プロフィールから見かけ上の伸長粘度や弾性率
等を見積もったとしても、その値の物理的な意味が不明
確であるために物性値として扱うことはできず、また当
然のことながら測定結果のばらつきも大きくなる。これ
に対し、本方法で測定した値は、実施例6で述べるよう
に、各点での温度を精密に推定することが可能であり、
断面内での温度差も小さいことが保証されているため、
各点までの正確な温度プロフィール・歪プロフィールに
対応する物性値として扱って差し支えない。従って、本
発明により、歪速度10000s−1以上に達する超高
速伸長変形に対する過渡応答特性を測定することができ
た。
【0024】
【実施例2】実施例1と同様にして、レーザー出力のみ
を、15Wから25Wまで変化させて高速度カメラで画
像を取り込み、これから延伸点位置とその変動幅を測定
した結果を、図7に示す。レーザー光強度プロフィール
の送出し側変曲点の位置を破線で示した。いずれの出力
でも、延伸点位置の変動は約0.1mmであるため、延
伸点位置を精密に測定することができる。延伸点の位置
はレーザー光軸の送出し側1.0mm付近にある照射強
度プロフィールの変曲点の周辺であり、この周辺に延伸
点が位置する様にすることが、延伸点を良好に固定する
ために適していることを示している。延伸点位置は、レ
ーザー出力が大きいほどより供給側(図の左側)に移動
する。これは、出力が大きいほどより早い時点で糸条温
度が繊維の軟化温度(この場合はガラス転移温度)に達
し、変形が始まるためである。また、出力を15Wから
25Wに階段状に変化させた場合、延伸点の位置は5m
s程度の時間で新しい平衡位置に移動し、15ms程度
の時間で安定した。この実施例について、糸条がレーザ
ー照射領域に入ってから延伸点に達するまでの時間は約
7msである。平衡位置への移動時間およびその位置で
の安定に要する時間は、糸条がレーザー照射領域に入っ
てから延伸点に達するまでの時間のそれぞれ0.7倍お
よび2倍程度の時間に相当し、充分に早い応答性を示す
ことが証明された。従って、レーザーの出力を制御する
ことによって、延伸点位置をより精密に制御することが
できる。実際に、延伸点近傍からの光量をフォトダイオ
ードによって測定し、この出力をレーザー出力にフィー
ドバックすることによって、延伸点位置をより精密に制
御することができた。特に紡糸時のドローレゾナンス等
に伴う直径のパルス的な変動に対して効果的であり、制
御しない場合には0.5〜1.0mmも有った延伸点位
置の変動幅を、半分程度に減少させることができた。延
伸条件の変動は、繊維中に構造上の弱点を作ることにな
り、特に高強度化の上では好ましくない。従って、この
延伸点位置制御システムを用いることによって、高度に
均質化された、弱点の少ない合成繊維を作製することが
可能であり、高強度の繊維を製造できる。
【0025】
【実施例3】実施例1と同様にして、糸条の供給速度の
みを、毎分6mから14mまで変化させて高速度カメラ
で画像を取り込み、これから延伸点位置とその変動幅を
測定した結果を、図8に示す。レーザー光強度プロフィ
ールの送出し側変曲点の位置を破線で示した。糸条の供
給速度が大きいほど、延伸点位置は巻き取り側(図の右
側)に移動する。これは、糸条の供給速度が大きいほ
ど、糸条温度が繊維の軟化温度に達するまでに走行する
距離が長くなるためである。糸条の供給速度が毎分10
m以下では、延伸点位置の変動は約0.1mm以下であ
るが、毎分12mを越えると急激に不安定になる。延伸
点位置が安定している条件では、延伸点の位置は照射強
度プロフィールの変曲点の周辺であり、この周辺に延伸
点が位置する様にすることが、延伸点を良好に固定する
ために適していることを証明している。一方、不安定に
なる条件では、延伸点の位置は、照射強度プロフィール
が最大値を示すレーザー光軸に近いため、延伸点前後で
の照射強度の増加率が小さく、場合によってはむしろ減
少している。以上の結果より、延伸点の良好な固定のた
めには、延伸点近傍での照射強度の増加率はなるべく大
きい方が望ましい。
【0026】
【実施例4】実施例1と同様にして、レーザー光束の照
射範囲直径のみを、2mmから5mmまで変化させて高
速度カメラで画像を取り込み、これから延伸点位置とそ
の変動幅を測定した結果を、図9に示す。レーザー光強
度プロフィールの送出し側変曲点の位置を破線で示し
た。糸条の供給速度が大きいほど、延伸点位置は巻き取
り側(図の右側)に移動する。また、同じ供給速度で比
較した場合、照射範囲内での延伸点の相対的な位置は、
レーザー光束の照射範囲直径が大きいほど巻き取り側
(図の右側)に移動する。これは、照射範囲直径に対す
る相対的な糸条速度は照射範囲に反比例するのに対し、
赤外光束の照度は照射範囲の2乗に反比例するため、糸
条温度が繊維の軟化温度に達するまでに照射範囲内を走
行する相対的な距離が、短くなるためである。延伸点の
位置がレーザー光強度プロフィールの送出し側変曲点の
位置に近い条件では、延伸点位置は安定であるのに対
し、延伸点の位置がレーザー光軸(すなわち強度プロフ
ィールが最大値を示す位置)に近い条件では、延伸点は
不安定になる。以上の結果も、延伸点の良好な固定のた
めに、延伸点前後での照射強度増加率はなるべく大きい
方が望ましいことを示している。ただし、8の条件の様
に、照射範囲直径が糸条の供給速度に対して相対的に小
さすぎる場合には、延伸点の位置がレーザー光強度プロ
フィールの送出し側変曲点付近にあっても、ドローレゾ
ナンス等による直径のパルス的な増加によって延伸点が
瞬間的にレーザー光軸付近まで移動しやすく、やや不安
定である。この様な例においては、延伸点位置の移動を
レーザー出力にフィードバックさせることによって、延
伸点位置が光軸付近に達しないように制御することが、
たいへん有効である。
【0027】
【実施例5】レーザー出力22.5W、照射直径4.2
mm、糸条供給速度毎秒0.192m、糸条巻き取り速
度毎秒1.06mで延伸した場合の糸速度プロフィール
を図10に示す。この測定データは、同一出願人、同一
発明者が平成11年10月12日に出願し、同13日に
受け付けられた特許願(特平願11−325879)に
添付した図6に記述されているものの一部に基本的に等
しく、位置の較正を施したものである。糸速度はTSI
社製レーザードップラー速度計LS50PT型により測
定した。糸速度は、炭酸ガスレーザーの光軸の1mm前
付近で急激に供給速度から巻き取り速度へとジャンプし
ている。このことは、この付近に急激な直径変化が起こ
っていることを示しているのみならず、延伸点開始点お
よび延伸終了点がこの近傍の0.5mm程度以下の区間
に固定されていることが確かめられた。ただし、この実
施例で用いたレーザードップラー速度計は、測定範囲幅
が約3mmあるため、延伸点位置および延伸点の変動幅
の正確な決定には向かない。実施条件が実施例1に類似
していることから、実際には実施例1と同様、延伸点位
置は0.1mm程度の区間内に固定されていると見なす
べきであろう。
【0028】
【実施例6】実施例1と同様の条件について測定した、
延伸点近傍での糸条の実測温度と推定温度を図11に示
す。実測温度は、ジャパンセンサー社製TMZ7N2−
1型放射温度計によって測定した。較正によって導出し
た、同装置の位置分解能および温度精度も、誤差棒とし
て図中に示してある。延伸点位置の変動が0.1mm程
度に抑えられているため、レーザー照射範囲に入ると糸
温度が急速に上昇し、さらに延伸点位置付近で瞬間的に
上昇している様子が、精密に測定できている。推定温度
は、糸条に照射されたレーザー光、糸条の塑性変形、結
晶化、および熱伝達による冷却を考慮して計算したもの
である。レーザー光による昇温は、実際に利用している
光源の出力分布に近いガウス型の出力分布を仮定し、レ
ーザー光と同じ波長の赤外光に対する吸収係数の実験値
から求めた糸条への吸収率を使って算出した。糸条の塑
性変形は、実測した糸張力と供給速度および巻き取り速
度から算出した。結晶化による発熱は、1次元不均一核
生成を仮定したアブラミ式を仮定し、延伸前後の繊維に
ついて示差走査熱量測定によって測定した結晶化度の違
いと、結晶成長速度として毎秒10000の値を使用し
た。熱伝達による冷却の寄与は小さいが、ヌッセルト数
(Nu)をレイノルズ数(Re)の関数として、Nu=
0.42Re^0.334という経験的な実験式を使用
した。推定温度に特に大きな影響を及ぼすレーザー出
力、吸収率、糸張力、結晶化度には実測値を用いてお
り、定量的な比較が可能である。延伸点前で幾分実測さ
れた温度の方が高いが、延伸点以降では、実測温度と推
定温度は良く一致している。この測定結果より、レーザ
ー出力と糸張力値によって糸温度を精密に制御できるこ
とが確かめられた。
【0029】
【発明の効果】以上のように、合成繊維もしくはモノフ
ィラメントの溶融紡糸工程、延伸工程、直接紡糸・延伸
工程、もしくはこれらを想定した試験的合成繊維延伸装
置において、走行中の合成繊維糸条に強力な赤外線光束
を照射することによって、糸条を急速かつ均一に加熱し
て軟化させ、加熱後の糸条を瞬間的に伸長することによ
って、延伸点の位置を精密に固定し、延伸点近傍の糸直
径・糸速度・糸温度・分子配向等、もしくはそれらの時
間的変動を精密に測定することができる。また、測定し
た糸直径・糸速度もしくは糸温度のプロフィールに対応
する出力値を、レーザー出力にフィードバックすること
によって、延伸点位置をさらに精密に制御することがで
き、より精密に構造・物性を制御した繊維の作製に用い
ることができる。
【0030】
【図面の簡単な説明】
【図1】 糸条の走行軸および赤外線の光軸と垂直な方
向から見た、延伸点位置近傍を精密に計測・制御するた
めのシステムの例。糸条の矢印は走行方向を意味してい
る。
【符号の説明】
1 赤外線源 2 レンズ 3 焦点 4 糸条 5 糸条のぶれ範囲 6 遮光板 7 第1引き取りローラー 8 第2引き取りローラー
【図2】 糸条の走行軸および赤外線の光軸と垂直な方
向から見た、光導波路と略回転楕円体型反射鏡を用いた
糸条急加熱装置の概略図。糸条の矢印は走行方向を意味
している。
【符号の説明】
2 光導波路(赤外線光源からの光束を導く) 3 光導波路の出射点かつ略回転楕円体型反射鏡の焦点
1 4 糸条(略回転楕円体型反射鏡の焦点2近傍を通
る。) 5 糸条のぶれ範囲 6 略回転楕円体型反射鏡 7 第1引き取りローラー 8 第2引き取りローラー
【図3】 糸条の走行軸方向から見た、延伸点位置近傍
を精密に計測・制御するためのシステムの例。測定装置
から下方向引かれた矢印は測定方向を、左下方向に引か
れた矢印は出力をフィードバック制御することを、それ
ぞれ意味している。
【符号の説明】
1 赤外線源 2 レンズ 3 焦点 4 糸条 5 糸条のぶれ範囲 6 遮光板 9 測定装置(高速度カメラ、糸温度計、糸速度計、光
量計等) 10 フィードバック制御系
【図4】 実施例1 糸の変形プロフィール。露光時間
1/6000秒で撮影した延伸点近傍の画像を、二値化
して示した。黒い部分が糸である。糸の供給速度毎秒
0.13m、糸の巻き取り速度毎秒0.8m。糸条は画
面左側から右側に向かって走行している。延伸点位置の
変動幅は約0.1mm。
【図5】 実施例1の変形プロフィールから見かけ伸長
粘度および歪速度を求め、レーザー光軸を基準とした位
置に対してプロットしたもの。白丸が見かけ伸長粘度
(左軸)、黒丸が歪速度(右軸)をそれぞれ表す。延伸
点近傍では、変形開始後、見かけ粘度が低下し、歪速度
が急増するが、見かけ粘度が約6kPaの最小値を示し
た後に再び急増するのに伴い、変形が完了している。見
かけ伸長粘度が低下する要因としては変形の発熱で糸温
度が上昇すること、急増する原因としては分子鎖の伸び
きりを考えることができる。
【図6】 実施例1の変形プロフィールから、見かけ上
の弾性率および真歪を求め、レーザー光軸を基準とした
位置に対してプロットしたもの。白丸が見かけ上の弾性
率(左軸)、黒丸がその点での真歪(右軸)をそれぞれ
表す。延伸変形開始後、見かけ上の弾性率は低下してほ
ぼ一定値を示す様になる。
【図7】 実施例2 延伸点位置およびその変動範囲。
横軸は炭酸ガスレーザーの光軸位置を原点とし、糸条の
走行方向に沿った位置、縦軸はレーザーの出力。横線
は、各出力での延伸点位置とその変動幅を意味する。延
伸点の変動範囲はいずれの出力でも0.1mm程度で良
好に固定されている。また、レーザー出力が大きいほ
ど、延伸点は糸の供給側(図の左側)に移動する。縦の
破線は、レーザー光強度プロフィールの送出し側変曲点
の位置を示している。
【図8】 実施例3 延伸点位置およびその変動範囲。
横軸は炭酸ガスレーザーの光軸位置を原点とし、糸条の
走行方向に沿った位置、縦軸はレーザーの出力。横線
は、各出力での延伸点位置とその変動幅を意味する。ま
た縦の破線は、レーザー光強度プロフィールの送出し側
変曲点の位置を示している。
【図9】 実施例4 延伸点位置およびその変動範囲。
横軸は炭酸ガスレーザーの光軸位置を原点とし、糸条の
走行方向に沿った位置、縦軸はレーザーの照射範囲直径
を表す。横線は、各出力での延伸点位置とその変動幅を
意味する。また破線は、レーザー光強度プロフィールの
送出し側変曲点の位置を示している。
【符号の説明】
1 糸条の供給速度毎分5m:安定 2 糸条の供給速度毎分6m:安定 3 糸条の供給速度毎分6m:安定 4 糸条の供給速度毎分8m:安定 5 糸条の供給速度毎分10m:安定 6 糸条の供給速度毎分12m:不安定 7 糸条の供給速度毎分14m:不安定 8 糸条の供給速度毎分14m:やや不安定 9 レーザー光強度プロフィールの送出し側変曲点の位
置 10 レーザー照射範囲外
【図10】 実施例5 糸速度プロフィールの測定結
果。横軸は炭酸ガスレーザーの光軸位置を原点とし、糸
条の走行方向に沿った距離、縦軸は糸速度。各点を中心
として±1.5mmの範囲での、3秒間の糸速度の最頻
値に相当する。
【図11】 実施例6 糸温度プロフィールおよびその
推定結果。横軸は炭酸ガスレーザーの光軸位置を原点と
し、糸条の走行方向に沿った距離、縦軸は糸温度。破線
は延伸点の位置、また赤外線の照射範囲も図示してあ
る。点は実測温度、実線は推定温度を表す。また実測温
度の誤差棒は、該当する温度における温度精度と、位置
分解能を意味している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3B154 AA06 AB02 AB04 BA53 BB09 BB12 BB18 BC42 BF04 BF14 BF23 CA01 CA02 CA09 CA12 CA29 CA33 DA05 4L036 AA01 MA04 MA33 MA34 PA03 PA12 UA21 UA25 4L045 AA05 BA01 BA60 DA42 DA46 DA60 DC02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糸条を第1引き取りローラーと第2引き
    取りローラーの間で延伸する工程、紡糸口金より溶融紡
    出した糸条を引き取りローラーにより延伸する溶融紡糸
    工程もしくはモノフィラメント製造工程、紡糸口金より
    溶融紡出した糸条を一旦冷却して固化し、引き続き第1
    引き取りローラーと第2引き取りローラーの間で延伸す
    る直接紡糸・延伸工程、もしくはこれらを想定した試験
    的合成繊維延伸装置において、走行中の合成繊維糸条に
    強力な赤外線光束を照射することによって合成繊維を急
    速かつ均一に加熱して軟化させた後、外力によって変形
    させることによって延伸点位置を精密に固定し、延伸点
    近傍の糸直径・糸速度・糸温度・分子配向・伸長粘度・
    歪速度・弾性率・歪量、もしくはそれらの時間的変動量
    を精密に測定することを特徴とする計測システム。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の計測システムで得られた
    糸直径・糸速度もしくは糸温度のプロフィール変動をレ
    ーザー出力にフィードバックすることによって、延伸点
    の位置をさらに精密に制御し、均質な繊維構造・物性の
    繊維を製造することを特徴とする制御システム。
  3. 【請求項3】 延伸点位置の変動幅が、1mmを超えな
    いか、もしくは延伸後の糸条が10msの時間内に走行
    する距離を超えない、請求項1〜2記載の計測・制御シ
    ステム。
  4. 【請求項4】 延伸後の糸条の走行速度が毎秒0.1m
    以上であり、かつ糸条に対する赤外線光束の照射時間が
    0.1秒を超えない、請求項1〜3記載の計測・制御シ
    ステム。
  5. 【請求項5】 延伸点位置が、赤外線光束強度プロフィ
    ールの増加率が極大になる点近傍になる様に延伸条件を
    設定した、請求項1〜4記載の計測・制御システム。
  6. 【請求項6】 延伸前の糸条の分子配向度が0.1以
    下、典型的には0.01以下で、延伸倍率が4倍以上、
    典型的には5倍以上である、請求項1〜5記載の計測・
    制御システム。
  7. 【請求項7】 レーザー発振を利用したコヒーレント光
    源を使用する、請求項1〜6記載の計測・制御システ
    ム。
  8. 【請求項8】 赤外線光束の集光に略回転楕円体型反射
    鏡を用いた、請求項1〜7記載の計測・制御システム。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN118149741A (zh) * 2024-05-13 2024-06-07 江苏恒力化纤股份有限公司 一种在纤维拉伸过程中确定拉伸点位置的方法及应用

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