JP2001269159A - 粳米麹、その製造方法及び用途 - Google Patents
粳米麹、その製造方法及び用途Info
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Abstract
麹と、該粳米麹を用いて製造された風味豊かな飲食品を
提供する。 【解決手段】 粳米を焙炒処理した後、加水、蒸きょう
し、常法により製麹して得られる粳米麹。前記方法によ
る当該粳米麹の製造方法。当該粳米麹を使用して製造し
てなる飲食品。蒸きようして得られる水分が、36%w
/w以上46%w/w未満である蒸米を、常法により製
麹することが好ましい。粳米麹1部に水5部を加え、5
5℃で24時問自己消化させた時、固形分の可溶化率が
77%w/w以上である粳米麹が好ましい。 【効果】 風味豊かな高品質な収量の優れた飲食品を得
ることができる。
Description
理、加水、蒸きょうした後、製麹してなる粳米麹、その
製造方法、及び該粳米麹を使用してなる飲食品に関す
る。
醸造調味料の製造に必須の原料であり、他の食品原料と
混合後、醸造及び/又は熟成させると、非常に複雑な好
ましい風味を醸し出す。また、米麹自体の自己消化物も
化学調味料や香料等だけでは作り出すことのできない風
味を持つことから、米麹は高品質な本物感を与える食品
素材として醸造分野以外でも広く使用されている。一般
に、米麹の製造方法としては、粳玄米を必要に応じて適
宜精米、洗米、浸漬後、水切りをして蒸きょう、放冷、
種付けを行い製麹する方法が知られている〔「調味料・
香辛料の事典」、1991年7月15日発行、発行者
(株)朝倉出版、第309頁〕。更に、粳玄米を精米、
洗米、浸漬後、蒸きょうの代わりに焙炒処理を行い製麹
させる方法(特許第2645339号)も知られてい
る。しかしながら、従来の方法では麹米の可溶化率が低
く、菌糸の破精込みや自己消化時の溶解性、風味等の点
でいまだ不十分であり、充分満足できる品質の粳米麹は
提供されていないのが現状である。
れた粳米麹の要望は強いにも関わらず、いまだ十分満足
できる方策は見出されていない。本発明はこのような現
状にかんがみてなされたものであり、高品質で、自己消
化時の可溶化率が高い粳米麹と、該粳米麹を用いて製造
された風味豊かな飲食品を提供することを目的とする。
発明の第1の発明は、粳米を順次焙炒処理、加水、蒸き
ょうした後、常法により製麹してなる粳米麹に関し、第
2の発明は、第1の発明の粳米麹の製造方法に関し、第
3の発明は、第1の発明の粳米麹を使用して製造してな
る風味豊かな飲食品に関する。
得られた粳米麹の利用方法について鋭意検討を行った。
その結果、粳米を焙炒処理した後、加水、蒸きょうし、
常法に従って製麹して得られる粳米麹が高品質で、自己
消化時の可溶化率が高いものであり、この粳米麹を使用
することによって風味豊かな飲食品が得られることを見
出し本発明の完成に至った。
明する。まず、本発明における粳米とは、いわゆる粳種
に属する米をいう。粳米は、玄米、精白米いずれでもよ
い。また、粳米の形状は、丸米又は破砕米等のいずれの
形状でも良いが、焙炒工程や製麹工程での米の歩留まり
や操作性を考慮すると丸米がより好ましい。精米歩合は
得られる麹の使用目的等により適宜設定すれば良く、特
に限定はされないが、一般的には30〜95%w/wの
範囲内で、好ましくは75〜90%w/wである。ま
た、粳米の加水の時期は適宜設定すれば良いが、後の製
麹工程における操作性を考慮にいれると、焙炒処理後に
行うのが好ましい。
前の処理方法として、まず第1に焙炒処理を行う。本発
明における焙炒処理とは、粳米を熱風で流動させたり、
放熱容器を回転させながらかくはんし熱を粳米へ均一に
照射しても良いが、特にこれらに限定されない。バッチ
法、連続法等のいずれも採用することができる。しかし
ながら、安定した品質と処理量を増やす目的では連続法
が好ましい。焙炒処理時の加熱はガス、電気及び石油等
の熱源が使用でき、焙炒処理中一定の温度が粳米に供給
できれば良いが、一般的には熱源としてガスが採用され
ている。また、熱源にセラミック放熱体を使用して、遠
赤外線照射しても良い。焙炒処理条件としては、温度が
100〜400℃の範囲内で、時間は数秒〜十数分が適
当であるが、好ましくは150℃〜300℃での処理が
より好ましい。例えば、比較的低温で時間をかけて焙炒
処理する(例えば240℃、70秒)方が、焙炒処理粳
米は細かく砕け難い。但し、低温でも長時間焙炒処理し
続けると、焦げ臭等が発生するので、例えば焙炒処理温
度が200℃の場合、焙炒処理時間は数秒〜5分程度が
好ましいがこの限りではなく、粳米の種類等により適宜
条件を設定できる。また、焙炒処理後の米を高温のまま
放置すると、余熱の影響で目的とする米とは異なった品
質の原料米となるため、必要に応じて空冷等の冷却工程
をとることが望ましい。この焙炒処理で粳米が熱変性を
受けて、粳米の組織が多孔質なものとなって製麹時の麹
菌々糸の破精込みが良くなることとなる。すなわち、焙
炒工程は本発明の製麹方法の根幹をなす工程である。
えばよい。加水方法としては、例えば浸漬タンクに必要
な水分になるまで浸漬して引上げる方法や、原料米の入
ったドラム型回転式タンクに必要量の水を投入し、タン
クを回転させながら加水する方法、散水して加水する方
法、又は加水後、再乾燥する方法等があるが、この限り
でない。また、加水処理時の水温については、特に限定
はないが焙炒処理粳米に短時間で加水したい時は高温
(40〜50℃)で、比較的時間をかけて加水したいと
きは低温(10〜20℃)で吸水させるとよい。加水す
る時間は特に限定はなく、原料米が均一に水分を吸収で
きればよい。
質になることによって焙炒処理粳米の吸水性が大幅に向
上することを以下の実験例1で詳しく述べる。 (実験例1)市販の粳玄米(日本晴)を精米歩合90%
に精米後、熱風発生機[(株)竹網製作所、TSK―6
0型]を使用して240℃、70秒間焙炒処理した後、
0〜270分間吸水させた時の米の重量を測定し、水分
を算出した。加水による粳米水分の変化を図1に示す。
図1の横軸は浸漬時間(分)を、縦軸は加水後の焙炒処
理米の水分(%w/w)を、四角でつながれた線は焙炒
処理した粳米を使用した場合を、三角でつながれた線は
未焙炒処理の粳米を使用した場合を表わしている。
歩合90%の粳米を水に浸漬した場合、水分35%w/
wが上限であった。これに対して同じ粳米を240℃で
120秒間焙炒処理すると、水分63%w/wまで吸水
させることが可能となった。
種付け前の引込み時の粳米の水分は麹の物性や操作性に
影響を及ぼさない範囲で高めた方が好都合である。その
点、焙炒処理をした粳米は、非焙炒処理の粳米に比べて
水分の設定範囲を広げることが可能となる。
米を加水後蒸きょうする。この蒸きょう工程であるが、
焙炒処理後の粳米中のでんぷんのα化率を上げ、α化を
促進することによって、粳米麹の利用率を上げることが
可能となる。蒸きょうは常法に従い、こしきや加圧連続
蒸きょう装置を使用し、常圧下又は加圧下で飽和及び/
又は不飽和蒸気で行えばよく、特に限定はない。例え
ば、100℃常圧で60分間蒸きょうすればよい。
法に従って、蒸し米に種もやしを接種後、30〜40℃
で相対湿度90%以上として、46時間程度培養するこ
とが一般的であるが、特に限定されるものではない。使
用する種もやしについては、食品に使用可能なものであ
れば特に限定されないが、一般的にはアスペルギルス属
のかび(主に黄麹菌、黒麹菌及び白麹菌)、クモノスカ
ビ、ケカビ及び紅麹菌等が使用できる。
ことを以下の実験例2で詳しく述べる。 (実験例2)表1に示す粳米麹の製麹手順に従って製麹
を行った。
、及び粳米麹の焙炒処理は240℃、70秒間、
実験例1で使用した熱風発生機を用いて行った。粳米麹
の乾燥は、40℃で17時間行った。次に、表1に示
した水分になるまでそれぞれ加水後、粳米麹、、
及びについては60分間、100℃で常圧蒸きょうし
た。これらすべてに種付け(黄麹菌を使用)を行い、常
法に従って製麹し、粳米麹を得た。出麹後、約3時間枯
らした後、米麹の分析に供した。第4回改正国税庁所定
分析法注解(1993)に従って分析した粳米麹の分析
値を表2に示す。更に、これらの粳米麹10gに対して
水50mlを混合し、55℃、24時間の自己消化試験
を行った結果を表3に示す。
は粳米麹として有用な酵素力価を有しており、特にみ
りん用として十分な酵素力価であった。しかし、粳米麹
は製麹中に破砕が進行し易く、操作が困難であった。
それに対して粳米麹(本発明品)及び粳米麹(本発
明品)は製麹中に破砕が進行し難く、操作も容易であっ
た。
る数値を意味する〔但し、乾燥重量g:105℃、24
時間後の重量である。〕。 (数1) 可溶化率(%)={1−(自己消化後の残渣の乾燥重量
g/ 麹の乾燥重量g)}×100
(本発明品)及び粳米麹は引き込み時の粳米水分が同
程度であるにもかかわらず、粳米麹(本発明品)は粳
米麹より可溶化率が約31%高かった。また、粳米麹
は粳米麹よりも引き込み時の粳米水分が約9%高い
にもかかわらず、可溶化率が約23%低かった。このこ
とから、粳米麹の可溶化率を高めるためには、単に引き
込み時の粳米の水分を高めるだけでは駄目であり、焙炒
処理、加水後に蒸きょうするのが望ましいことがわか
る。一方、粳米麹(本発明品)及び粳米麹は引き込
み時の粳米水分が同程度であるにもかかわらず、粳米麹
(本発明品)は粳米麹よりも可溶化率が高かった。
すなわち、蒸米の水分を高めることは粳米麹の乾燥法
でも可能であるが、同じ水分の粳米で製麹した場合、得
られた粳米麹の可溶化率は焙炒処理、加水及び蒸きょう
を施したものの方が優れていることがわかる。以上よ
り、可溶化率が77%w/w以上、更に好ましくは80
%w/w以上という溶けの良い粳米麹を得るには、粳米
を焙炒処理、加水更に蒸きょうするのが良いと言える。
込み時の粳蒸米の水分と得られた粳米麹の性能について
以下の実験例3で詳しく述べる。 (実験例3)精米歩合90%の粳米を使用し、焙炒処理
は240℃、70秒間、実験例1で使用した熱風発生機
を用いて行った。この焙炒処理粳米に対して30、
35、40、及び45%w/wの水分になるまでそ
れぞれ加水した後、60分間、100℃で常圧蒸きょう
して粳蒸米を得た。これらすべての粳蒸米にみりん用も
やし(黄麹菌を使用)を種付けし、常法に従って製麹し
て粳米麹を得た。出麹後、約3時間枯らした後、米麹の
分析に供した。第4回改正国税庁所定分析法注解(19
93)に従って分析した粳米麹の分析結果を表4に示
す。更に、これらの粳米麹10gに対して水50mlを
混合し、55℃、24時間の自己消化試験を行った結果
を表5に示す。
の操作性に優れ、製麹適性が良かった。また、表4に示
すように、酵素活性及び菌体量も飲食品用の麹として十
分なものであった。一方、粳米麹は製麹中に粘性が高
くなり、製麹中及び製麹後の操作性が悪かったので分析
を行わなかった。
(数1)で算出される数値を意味する。
の粳米麹は引き込み時の粳蒸米の水分が高い程、可溶化
率が高くなり、特に引き込み時の粳蒸米の水分38%w
/w(粳米麹)及び42%w/w(粳米麹)では粳
米麹の可溶化率が80%w/w以上になっている。
引き込み時の粳蒸米の水分が36%w/w以上46%w
/w未満、更に好ましくは、38%w/w以上46%w
/w未満であれば粳米麹の可溶化率が高く、しかも製麹
中及び製麹後の操作性に優れた粳米麹を得ることができ
る。
時の粳蒸米の水分である。
であり、加水時期、加水量に、特に限定はない。例え
ば、引き込み前の粳蒸米に加水を行い前記の水分になる
ように調整することができる。
良いので、製品としての歩留まりが向上する。
しては、通常、米麹を使用して製造される飲食品であれ
ば特に限定されないが、みりん、清酒、本直し、赤酒、
味噌、酢及び発酵調味料等の醸造物が挙げられ、更に、
甘酒、粕漬け、漬物、菓子類、米飯類及び水畜産加工品
等が特に好適な対象となる。更に、麹自身を乾燥、凍結
させたものや、自己消化させた液及びこの消化液を乾燥
したものも本発明の飲食品である。
説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
間、実験例1で使用した熱風発生機を用いて焙炒処理を
行い、続いて加水、蒸きょう(100℃常圧60分
間)、冷却して得た水分38%w/wの粳蒸米にみりん
用黄麹菌の種付けを行い、常法に従って製麹して粳米麹
を得た(本発明品)。また、同じ粳米2,000gを水
温12℃の水で洗米し、30分間浸漬後、3時間水切り
を行い、蒸きょう、冷却後、水分32%w/wの粳米に
みりん用黄麹菌の種付けを行い、常法に従って製麹して
粳米麹を得た(対照品)。得られた粳米麹を第4回改正
国税庁所定分析法注解(1993)に従って分析した分
析値を表6に示す。
(数1)で算出される数値を意味する。
に繁殖して破精廻りが良く、菌糸は米粒の内部まで破精
込んでおり、対照品と比較して優れていた。更に、表6
からも明らかなように、本発明品は対照品よりも酸性プ
ロテアーゼ活性、α−アミラーゼ活性及び可溶化率が高
い優れた粳米麹となっていた。
品)を使用して、表7の仕込み配合に従ってみりんを試
醸した。
了後、上槽した時の液収量及び得られたみりんの分析値
を表8に示す。分析方法は実施例1と同様に行った。更
に、官能検査を行った結果を表9に示す。
が重厚で高級みりんらしい。 (**)0点;味が良くない〜3点;味が濃厚でふくら
みがあり高級みりんらしい。 (***)0点;風味が良くない〜3点;風味が良く、
バランスがとれている。 上記表9の数値は、パネラー5人の合計点である。
米麹を用いたみりんは対照品の粳米麹を用いたみりんよ
りもアミノ態窒素及び全窒素含量が高く、官能検査にお
いても味が濃厚で、上品な甘味を有し、バランスがとれ
ているという評価を得ており、更に上槽液収量も上回る
優れたものであった。
品)を使用して、表10の仕込み配合にしたがって清酒
を試醸した。掛米は、精白歩合75%の粳白米を用い
て、常法に従って蒸きょう(100℃常圧、60分間)
したものを用いた。
了後、上槽した時の液収量及び得られた清酒の分析値を
表11に示す。分析方法は実施例1と同様に行った。更
に、官能検査を行った結果を表12に示す。
比べて上槽液収量が優れているものであった。
が良い。 (**)0点;味が良くない〜3点;味が良い。 (***)0点;風味が良くない〜3点;風味が良く、
バランスがとれている。上記表12の数値は、パネラー
5人の合計点である。
粳米麹を用いた清酒と比較して香、味共に優れており、
バランスのとれた上槽液収量が多い清酒であった。
順次焙炒処理、加水、蒸きょうを施した後、製麹するこ
とによって得られる粳米麹であり、この粳米麹は原料の
利用率が高くて経済的であり、この粳米麹を用いると風
味豊かな高品質な収量の優れた飲食品を得ることができ
る。
Claims (6)
- 【請求項1】 粳米を焙炒処理した後、加水、蒸きょう
し、常法により製麹して得られる粳米麹。 - 【請求項2】 粳米を焙炒処理した後、加水、蒸きょう
して得られる水分が36%w/w以上46%w/w未満
である蒸米を、常法により製麹して得られる請求項1記
載の粳米麹。 - 【請求項3】 粳米麹1部に水5部を加え、55℃で2
4時間自己消化させた時、固形分の可溶化率が77%w
/w以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の
粳米麹。 - 【請求項4】 粳米を焙炒処理した後、加水、蒸きょう
し、常法により製麹することを特徴とする粳米麹の製造
方法。 - 【請求項5】 請求項1、2又は3に記載の粳米麹を使
用して製造してなる飲食品。 - 【請求項6】 請求項1、2又は3に記載の粳米麹を使
用して製造してなる飲食品が、みりんである請求項5記
載の飲食品。
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JP2000090312A JP4204171B2 (ja) | 2000-03-29 | 2000-03-29 | 粳米麹、その製造方法及び用途 |
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